説明

搬送装置

【課題】搬送装置、搬送ロボットにおいて、ア−ム収納時の平面的な干渉領域を省スペ−スにする。
【解決手段】アーム2を、鉛直方向に延在するアームカバ6と、アームカバ6下方の開口部33から出入可能であって、鉛直方向の上方にのみ湾曲可能なアーム体31と、アームカバ6内に設けられ、開口部33からアームカバ6内上方との間で、アーム体31を水平と垂直の姿勢に案内するガイド13〜15と、アーム体31の一端を支持してアーム体31を鉛直方向に動作させる駆動機構7と、で構成し、アーム体31が、駆動機構によってアームカバ6内で引き上げられた際、アームカバ6内で鉛直方向の姿勢となるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置等に用いられ、シリコンウェハ等の被加工物を搬送する搬送装置の機構に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程では、シリコンウェハ等の被加工物にエッチング、CVD、アッシング、RTP等のプロセスが施されていく。これらのプロセスを行うにあたり、被加工物の搬送装置は必要不可欠である。従来の搬送装置には、水平多関節形のリンクタイプのロボットが一般的に使用されている。図5は水平多関節形のロボットを示している。水平多関節形ロボットの場合、被加工物の搬送距離に応じた長さを有する複数の水平多関節アーム25が互いに回転自在に接続されている。しかし、水平多関節アーム25を折り曲げた時に左右方向に張り出し、旋回時の干渉領域26が発生する。この為、搬送装置の設置面積には干渉領域26が最低限必要となる。
また、水平多関節形ロボット以外の従来の搬送装置として、スライドアーム型ロボットも開発されている。図6はスライドアーム型ロボットを示している。(a)が上面図、(b)が側面図である。多段に積載された複数の多段スライドアーム28が互いに直線状にスライドして水平方向に伸縮して被加工物を搬送する。この機構の場合、水平多関節形ロボットよりも干渉領域は小さくすることができるが、水平多関節アーム25同様、被加工物の搬送距離に応じて多段スライドアーム28の長さが必要で、多段スライドアーム28を多段に縮小させてもアームの長さによる干渉領域26が最低限必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、半導体製造装置としては装置を省スペ−スで設置することが要求されている。すなわち、省スペースな搬送装置を用いて装置全体を省スペースにて設置できるようにすることで、半導体製造工場のクリーンルームの容積を小さくしてランニングコストを下げることが望まれている。これに対し、従来技術の搬送装置では干渉領域が小さくならないという問題があった。
本発明はこのような問題点を解決する為になされたものであり、干渉領域が省スペ−スなロボット搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題を解決するため、本発明は次のように構成した。
請求項1記載の発明は、被加工物を搭載するハンドと、前記ハンドを支持するアームと、前記アームを支持するボディと、を備えた搬送装置において、前記アームが、前記ボディ上に搭載され、鉛直方向に延在するアームカバと、前記アームカバ下方の開口部から出入可能であって、前記鉛直方向の上方にのみ湾曲可能なアーム体と、前記アームカバ内に設けられ、前記開口部から前記アームカバ内上方との間で、前記アーム体を水平と垂直の姿勢に案内するガイドと、前記アーム体の一端を支持して前記アーム体を鉛直方向に動作させる駆動機構と、を備え、前記アーム体が、前記駆動機構によって前記アームカバ内で引き上げられた際、前記アームカバ内で鉛直方向の姿勢となることを特徴とする搬送装置とするものである。
請求項2記載の発明は、前記アーム体は、互いに回転可能な複数のアームピースが連結されて構成されていることを特徴とする請求項1記載の搬送装置とするものである。
請求項3記載の発明は、前記アームピースのそれぞれは、一端が凹形状、他端が凸形状で形成されていて、隣り合う前記アームピースの前記凹形状と前記凸形状とが組み合わされ、これらがヒンジシャフトによって互いに回転可能に接続されていることを特徴とする請求項2記載の搬送装置とするものである。
請求項4記載の発明は、前記ガイドは、ベアリング内蔵の回転型のゴムローラであって、前記アーム体に当接しながら回転して前記アーム体を案内することを特徴とする請求項1記載の搬送装置とするものである。
請求項5記載の発明は、前記駆動機構は、前記ボディ内に設けられた回転型サーボモータと、前記サーボモータの回転によって回転する第1プーリと、前記アームカバ内の上部に設置された第2プーリと、前記第1及び第2プーリに巻装された第1タイミングベルトと、を備え、前記第1タイミングベルトと前記アーム体の一端とが接続されて構成されたことを特徴とする請求項1記載の搬送装置とするものである。
請求項6記載の発明は、前記駆動機構は、前記ボディ内に設けられた回転型サーボモータと、前記サーボモータの回転によって回転するボールネジと、を備え、前記ボールネジの移動ナットと前記アーム体の一端とが接続されて構成されたことを特徴とする請求項1記載の搬送装置とするものである。
請求項7記載の発明は、前記駆動機構は、前記サーボモータの出力軸と連動して回転する2次シャフトと、前記2次シャフトに設けられた第3プーリと、前記アーム体を前記水平の姿勢に案内するガイドの部分において前記アーム体の下面に当接するローラと、前記第3プーリと前記ローラとに巻装された第2タイミングベルトと、をさらに備えたことを特徴とする請求項5又は6記載の搬送装置とするものである。
請求項8記載の発明は、前記ボディに、前記アームを旋回させる旋回機構が設けられたことを特徴とする請求項1記載の搬送装置とするものである。
請求項9記載の発明は、前記ボディの側面或いは下面に、前記ボディを走行させる走行機構が設けられたことを特徴とする請求項1記載の搬送装置とするものである。
請求項10記載の発明は、請求項1記載の搬送装置によって前記被加工物が搬送されることを特徴とする半導体製造装置とするものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明による搬送装置は、ア−ム収納時にア−ムを平面方向(水平方向)から上下方向(垂直方向)へ移動させることにより、アームの干渉領域が平面視において小さくなる為、省スペースの搬送装置を提供できる。
すなわち、本発明の搬送装置では平面視において、アーム収納時にアーム体を上下方向に案内する部分とハンドのみが占有する面積しかなくなるので、従来タイプに比べ干渉領域を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の方法の具体的実施例について、図1〜図7に基づいて説明する。
【実施例1】
【0007】
図1は、本発明の搬送装置の上面図を示している。(a)が後述するアームを伸長させたときの図、(b)がアームを縮めたときの図である。搬送装置1は、円筒状あるいは箱体状のボディ4と、ボディ4の上部に搭載されたアーム2と、アーム2の先端に設けられたハンド5と、から概ね構成されている。ボディ4の下部又は側面部には、図示しない走行機構が設けられることがあり、搬送装置1全体を走行させる場合がある。ハンド5はシリコンウェハ、マスク、液晶基板などの被加工物3が載置可能であり、ハンド5に搭載された被加工物3が搬送装置1によって所望の位置へと搬送される。
【0008】
図2及び図3を用いてアーム2について詳細に説明する。図2はアーム2の側断面図である。図3はアーム2の正面図、すなわちアーム2をハンド5側から見た図であって、一部を透視している。
アーム2の駆動源はボディ4の内部に収納された回転型のサーボモータ7である。サーボモータ7の出力軸にはカップリング8が固定され、モータの回転がシャフト状の駆動シャフト9へと伝達される。駆動シャフト9の先端付近にプーリ10が取付けられており、これにタイミングベルト11が巻装されている。
一方、ボディ4の上部には箱体状のアームカバ6が搭載されていて、これが垂直方向に延びている。アームカバ6内部の上端付近にもプーリ10が回転可能に固定されている。タイミングベルト11はこれら2つのプーリ10に巻装されていて、所定の張力で張られている。また、タイミングベルト11にはベルト固定部12が固定されている。
アームカバ6の内部には、タイミングベルト11に沿うように垂直ガイド13が配置されている。垂直ガイド13はベアリング内蔵のゴムロ−ラが多数上下に配置されたものであって、後述するアーム体31を上下にほぼ垂直に案内するものである。アームカバ6の垂直ガイド13の下方には曲線ガイド14が設置されている。曲線ガイド14は垂直ガイド13から連続的に配置されている。曲線ガイド14は垂直ガイド13と同様なベアリング内蔵のゴムローラであって、後述するアーム体31を垂直方向から徐々に水平方向に案内するものである。さらにアームカバ6の下部であって、曲線ガイド14の横には、曲線ガイド14から連続的に水平ガイド15が配置されている。水平ガイド15も垂直ガイド13らと同様なベアリング内蔵のゴムローラであって、後述するアーム体31を水平方向に案内するものである。アームカバ6の下部側面には開口部33が形成されていて、水平ガイド15が開口部33近辺まで配置されている。
【0009】
上記アーム体31について図4を用いて詳細に説明する。図4(a)はアーム体31の一部の上面図であって一部を断面化している。同図(b)はアーム体31の一部の側面図である。図のように、アーム体31は多数のアームピース20が連結された構成になっている。各々のアームピース20はヒンジシャフト22で互いに回転可能に連結されている。アームピース20の各々の一端は凹部が設けられ、他端に凸部が形成されている。隣り合うアームピース20の凹部と凸部とが合致するように組合され、ヒンジシャフト22によって連結されているため、隣り合うアームピース20は互いに回転可能である。一方、同図(b)のようにアームピース20の下面にはストッパ24が形成されている。ストッパ24は上記凸部側に連結された隣のアームピース20の下面の一部に入り込むような突起である。従って、同図(b)の2つのアームピース20を左からアームピース20a、アームピース20bとすると、アームピース20bは、図の反時計回りには回転可能であるが、アームピース20aのストッパ24により時計回りには回転できない。また、アームピース20aのストッパ24によりアームピース20bが停止したとき、アームピース20a、20bは同一方向に並んだ状態になる。
以上のアームピース20が多数連結されたアーム体31が、図1のように、垂直ガイド13、曲線ガイド14、水平ガイド15によって案内されるように収容されている。そして、アーム体31の一端が、上記ベルト固定部12に固定されている。従って、サーボモータ7が回転してタイミングベルト11が回転し、これに伴ってベルト固定部12が下降すると、アーム体31は垂直ガイド13らに案内されながら下降する。このとき、アーム体31の他端は水平ガイド15によって案内されながら、開口部33から水平方向へ突出する。サーボモータ7を逆転させると、アーム体31は開口部33に収納される。ここで、各々のアームピース20のストッパ24は、アーム体31が開口部33から突出したときにアームピース20の互いの下面に位置するので、開口部33から突出した部分のアーム体31は水平状態を維持する。アーム体31の他端にはハンド5が搭載されていて、ハンド5に搭載された被加工物3は水平状態に維持される。
【0010】
なお、曲線ガイド14の部分においては、アーム体31のアームピース20によって形成される湾曲曲線と曲線ガイド14のゴムローラによって形成される湾曲曲線が異なる為に、アーム体31と曲線ガイド14との間に若干のスキマを設ける必要がある。すなわち、曲線ガイド14の部分でアーム体31と曲線ガイド14との隙間に遊びが生じる。この対策として以下のようにアーム体31の引き出し機構を設けている。
図1及び図2のように、駆動シャフト9の中ほどに設けたかさ歯車16により駆動シャフト9の回転力を分岐する。かさ歯車16によって回転する2次シャフト21はアーム体31の水平方向への伸長方向とは垂直に設けられている。2次シャフト21にはプーリ17が設けられていて、これにタイミングベルト18が巻装されている。一方、水平ガイド15の下部にはゴムローラ19が回転可能に設けられていて、これとアーム体31の下面とが当接する。タイミングベルト18はゴムローラ19にも巻装されている。以上の構成により、アーム体31の他端においてもアーム体31の動作を付勢するため、アーム体31は安定した動作をすることが可能となる。
【0011】
なお、搬送装置1のボディ4の下部には、アーム2を水平面で旋回させる図示しない旋回機構を備えていて、アーム2全体を旋回させることができる。
また、上記で説明したタイミングベルト11らによるアーム体31の上下機構は、実施例に限定されるものではなく、例えばボールネジによる構成であってもよい。
【0012】
このように、本発明の搬送装置1は、アーム2のアーム体31をアームカバ6に収納する際に、アーム体31を平面方向(水平方向)から上下方向へ収納できるので、アームの干渉領域を省スペ−スにすることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明の機構は省スペ−スにて設置可能な為、半導体のような被加工物を搬送する搬送装置に限らず、省スペ−スの搬送を目的とする各種物品搬送装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の搬送装置を示す図。
【図2】本発明の搬送装置のアーム部の側断面を示す図
【図3】本発明の搬送装置のアーム部の正面を示す図
【図4】本発明の搬送装置のアーム体のアームピースを示す図
【図5】従来の水平多関節形アームを備えた搬送装置の図
【図6】従来のスライド型アームを備えた搬送装置の図
【符号の説明】
【0015】
1 搬送装置
2 アーム
3 被加工物
4 ボディ
5 ハンド
6 アームカバ
7 サーボモータ
8 カップリング
9 駆動シャフト
10 プ−リ
11 タイミングベルト
12 ベルト固定部
13 垂直ガイド
14 曲線ガイド
15 水平ガイド
16 かさ歯車
17 プ−リ
18 タイミングベルト
19 ゴムロ−ラ
20 アームピース
21 2次シャフト
22 ヒンジシャフト

24 ストッパ

31 アーム体

33 開口部

25 水平多関節アーム
26 干渉領域

28 多段スライドアーム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を搭載するハンドと、前記ハンドを支持するアームと、前記アームを支持するボディと、を備えた搬送装置において、
前記アームが、
前記ボディ上に搭載され、鉛直方向に延在するアームカバと、
前記アームカバ下方の開口部から出入可能であって、前記鉛直方向の上方にのみ湾曲可能なアーム体と、
前記アームカバ内に設けられ、前記開口部から前記アームカバ内上方との間で、前記アーム体を水平と垂直の姿勢に案内するガイドと、
前記アーム体の一端を支持して前記アーム体を鉛直方向に動作させる駆動機構と、を備え、
前記アーム体が、前記駆動機構によって前記アームカバ内で引き上げられた際、前記アームカバ内で鉛直方向の姿勢となることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記アーム体は、互いに回転可能な複数のアームピースが連結されて構成されていることを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記アームピースのそれぞれは、一端が凹形状、他端が凸形状で形成されていて、隣り合う前記アームピースの前記凹形状と前記凸形状とが組み合わされ、これらがヒンジシャフトによって互いに回転可能に接続されていることを特徴とする請求項2記載の搬送装置。
【請求項4】
前記ガイドは、ベアリング内蔵の回転型のゴムローラであって、前記アーム体に当接しながら回転して前記アーム体を案内することを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項5】
前記駆動機構は、前記ボディ内に設けられた回転型サーボモータと、前記サーボモータの回転によって回転する第1プーリと、前記アームカバ内の上部に設置された第2プーリと、前記第1及び第2プーリに巻装された第1タイミングベルトと、を備え、前記第1タイミングベルトと前記アーム体の一端とが接続されて構成されたことを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項6】
前記駆動機構は、前記ボディ内に設けられた回転型サーボモータと、前記サーボモータの回転によって回転するボールネジと、を備え、前記ボールネジの移動ナットと前記アーム体の一端とが接続されて構成されたことを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項7】
前記駆動機構は、前記サーボモータの出力軸と連動して回転する2次シャフトと、前記2次シャフトに設けられた第3プーリと、前記アーム体を前記水平の姿勢に案内するガイドの部分において前記アーム体の下面に当接するローラと、前記第3プーリと前記ローラとに巻装された第2タイミングベルトと、をさらに備えたことを特徴とする請求項5又は6記載の搬送装置。
【請求項8】
前記ボディに、前記アームを旋回させる旋回機構が設けられたことを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項9】
前記ボディの側面或いは下面に、前記ボディを走行させる走行機構が設けられたことを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項10】
請求項1記載の搬送装置によって前記被加工物が搬送されることを特徴とする半導体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−170567(P2009−170567A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5205(P2008−5205)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】