説明

携帯情報機器

【課題】情報を迅速かつ確実に消去可能な携帯情報機器を提供する。
【解決手段】機器本体1と、使用時に機器本体1に装着される付帯物2と、機器本体1の付帯物2が装着される部分に設けられ、磁性体の磁化状態により情報を保持する固体磁気メモリ3と、付帯物2を機器本体1に装着したときに固体磁気メモリ3に対向する部分を含む付帯物2に設けられた、磁気シールド4とを含む携帯情報機器を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話やノートパソコン等の携帯情報機器に係わり、内部のメモリに情報を記録することが可能であり、磁性体の磁化状態によって情報を保持する記憶素子をメモリに使用した携帯情報機器に係わる。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やノートパソコン等、携帯情報機器は広く普及しているが、その中には機密情報や個人情報等の重要な情報が多く含まれている。
それらの携帯情報機器を、廃棄、或いは中古として販売、もしくは、レンタルとして貸し出す場合には、機密情報や個人情報を消去する必要がある。
【0003】
情報を消去する方法としては、情報消去のためのプログラムを実行して、情報を全て上書きする等の方法が行われている(例えば、非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「携帯電話データ消去ソフトのご案内」、[online]、エコケー株式会社、[平成22年6月24日検索]、インターネット<URL:http://ecok.co.jp/service/typeR.ppt#256,1>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年携帯情報機器の記録容量が増加しているため、プログラムによって情報を上書きする方法では、情報の消去に長い時間がかかる。
【0006】
また、近年使用されるようになった、フラッシュメモリをハードディスクの代わりとして使用するSSD(Solid State Drive)では、記録メモリに直接アクセスできないため、完全に消去されているのかを確認できない。
【0007】
さらにまた、携帯情報機器が故障等で、通電や起動ができない場合には、情報の消去は不可能である。
【0008】
上述した問題の解決のために、本発明においては、情報を迅速かつ確実に消去可能な携帯情報機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の携帯情報機器は、機器本体と、使用時に機器本体に装着される付帯物と、機器本体の付帯物が装着される部分に設けられ、磁性体の磁化状態により情報を保持する固体磁気メモリとを含む。
さらに、付帯物を機器本体に装着したときに固体磁気メモリに対向する部分を含む付帯物に設けられた、磁気シールドとを含む。
【0010】
上述の本発明の携帯情報機器の構成によれば、固体磁気メモリが機器本体の付帯物が装着される部分に設けられ、付帯物の装着したときに固体磁気メモリに対向する部分を含む付帯物に磁気シールドが設けられている。
これにより、機器の使用時に付帯物を装着すると、機器本体の固体磁気メモリに対向して磁気シールドが配置されることになり、固体磁気メモリに記録された情報が外部磁界で消去されることがないように、磁気シールドで保護することが可能になる。
また、付帯物を機器本体から取り出すと、固体磁気メモリが磁気シールドで保護されなくなるので、磁界を加えて、容易に短時間で、固体磁気メモリの情報を消去することができる。
【発明の効果】
【0011】
上述の本発明によれば、容易に短時間で、固体磁気メモリの情報を消去することができるので、機密情報や個人情報等の消去を迅速確実に行うことが可能になる。
また、磁界を加えて、通電することなく容易に情報の消去を行うことができるので、通電や起動ができない場合でも情報を消去することが可能になる。
【0012】
従って、本発明により、携帯情報機器の廃棄や再利用の際の機密情報や個人情報の消去の労力が低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】A〜C 本発明の第1の実施の形態の携帯情報端末の概略構成図である。
【図2】A〜C 本発明の第1の実施の形態の携帯情報端末の情報の消去方法の一形態を説明する図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態の携帯情報端末の情報の消去方法の他の形態を説明する図である。
【図4】A、B 本発明の第2の実施の形態の携帯情報端末の概略構成図である。
【図5】C、D 本発明の第2の実施の形態の携帯情報端末の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態とする)について説明する。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.本発明の概要
2.第1の実施の形態
3.第2の実施の形態
【0015】
<1.本発明の概要>
上述した目的を達成するために、検討を重ねた結果、MRAM等の固体磁気メモリを用いて情報を記録して、外部磁場によって固体磁気メモリの内容を消去すれば、迅速かつ確実に情報を消去できることを見出した。
【0016】
本発明では、情報携帯機器において、機密情報や個人情報等の情報を記録するメモリとして、MRAM等の固体磁気メモリを使用する。
固体磁気メモリは、単独で使用してもよい。
また、固体磁気メモリ単独では容量が不十分な場合には、前述した重要な情報を暗号化して、フラッシュメモリ等の大容量メモリに記録して、その暗号キーのみを固体磁気メモリに記録してもよい。
【0017】
現在市販されているMRAMは、外部磁場に対して十分な耐性を確保するために、磁気シールドをメモリパッケージに内蔵している。
これに対して、磁気シールドのない、或いは、磁気シールドの効果を弱めて用いれば、磁気メモリ内の情報を、容易な方法で生成できる外部磁場によって、容易に消去することが可能である。
しかしながら、磁気シールドの効果が弱い状態では、通常の使用に支障をきたすため、何らかの方法で、磁気のシールドを行う必要がある。
【0018】
そこで、磁気シールドを、通常の使用では取り外すことのない、バッテリーや携帯電話の加入者識別用のSIMカード(Subscriber Identity Module Card)等の付帯物に付加すればよい。
或いは、それら付帯物を装着する際に、磁気メモリ上に磁気シールド部分が移動して、シールド効果を発揮するような機構を有すればよい。
【0019】
磁気シールドの材料としては、軟磁性で飽和磁束密度が大きい、NiFe合金やCoFe合金、或いは、非晶質合金等が適している。
磁気シールドをバッテリー等の付帯物と別に具備しても良いし、バッテリー等の付帯物の容器を軟磁性材料で構成して磁気シールドとしても良い。
【0020】
しかし、SIMカード等の小さなものには、磁気シールドを付けるのは難しい。
また、SIMカード等の場合、機器間の互換性を確保する必要がある。
従って、SIMカードに直接磁気シールドを付けるよりも、SIMカードを装着する際に使用するホルダーを軟磁性体で構成して磁気シールドとするのが適している。
【0021】
上述したことから、本発明では、機器本体と、使用時に機器本体に装着される付帯物とから成る携帯情報機器において、機器本体の付帯物が装着される部分に、磁性体の磁化状態により情報を保持する固体磁気メモリを設ける。
さらに、付帯物の、機器本体に装着したときに固体磁気メモリに対向する部分を含んで、磁気シールドを設ける。磁気シールドは、固体磁気メモリに対向する部分のみに形成されていても良く、固体磁気メモリに対向する部分と他の部分にわたって形成されていても良く、付帯物全体にわたって形成されていてもよい。
【0022】
例えば、前記付帯物を、機器本体に電源を供給するバッテリーとして、このバッテリーの部材に磁気シールドを設けることができる。
また例えば、前記付帯物を、機器本体に装着する、カード及びこのカードを保持するカードホルダーとして、カードホルダーを軟磁性体で形成して磁気シールドを構成することができる。カードとしては、前述したSIMカード等が挙げられる。
【0023】
本発明の携帯情報機器の情報の消去は、以下のような方法によって行うことができる。
まず、携帯情報機器から、磁気シールドを具備する付帯物、例えば、バッテリーを取り外す。
その後、固体磁気メモリの情報を消去するのに十分な強度の磁場を発生する機器を用いて、固体磁気メモリを磁場に暴露する。
これにより、固定磁気メモリに記録された情報が消去される。
【0024】
情報の消去のための磁場は、固体磁気メモリ以外の部分に余分な磁場がかからないように、磁気ヨークで磁場を集中させられるものが適している。
また、磁場の発生源は、永久磁石でも良いし、電磁石でも良い。
【0025】
本発明の携帯情報機器では、機器の使用時には、付帯物を機器本体に装着するので、機器本体の固定磁気メモリに対向して磁気シールドが配置され、固体磁気メモリに記録された情報を磁気シールドで保護することが可能になる。
また、情報を消去する際には、付帯物を機器本体から取り出せば、固体磁気メモリが磁気シールドで保護されなくなる。これにより、磁界を加えて、容易に短時間で、固体磁気メモリの情報を消去することができる。
【0026】
容易に短時間で、固体磁気メモリの情報を消去することができるので、機密情報や個人情報等の消去を迅速確実に行うことが可能になる。
また、磁界を加えて、通電することなく容易に情報の消去を行うことができるので、通電や起動ができない場合でも情報を消去することが可能になる。
従って、本発明の携帯情報機器により、携帯情報機器の廃棄や再利用の際の機密情報や個人情報の消去の労力が低減できる。
【0027】
<2.第1の実施の形態>
続いて、本発明の具体的な実施の形態を説明する。
本発明の第1の実施の形態として、携帯情報端末の概略構成図を、図1A〜図1Cに示す。
図1Aは、携帯情報端末本体とバッテリーとを分離した状態の斜視図であり、図1Bは、バッテリーを携帯情報端末本体に装着した状態の斜視図であり、図1Cは図1Bの状態の断面図である。
【0028】
図1Aに示すように、携帯情報端末本体1には、バッテリー2を装着するための空間である凹部1Aを有している。
そして、この凹部1Aの底面に、固体磁気メモリ3が埋め込まれて形成されている。
【0029】
一方、バッテリー2の底面に、磁気シールド4が形成されている。
そして、この磁気シールド4は、図1Bに示すようにバッテリー2を携帯情報端末本体に装着したときに、固定磁気メモリ3の上を磁気シールド4が完全に覆うように、バッテリー2の底面に形成されている。
これにより、図1Aに示すバッテリー2を分離した状態から、図1Bに示すようにバッテリーを装着すると、磁気シールド4が固体磁気メモリ3に接近した状態で固体磁気メモリの上を覆うので、固体磁気メモリ3にかかる外部磁場を低減することができる。
【0030】
本実施の形態の携帯情報端末において、情報の消去は、例えば、以下に説明するようにして行うことができる。
【0031】
まず、情報の消去方法の一形態を、図2A〜図2Cを参照して説明する。
図2Aは、携帯情報端末からバッテリーを取り外した携帯情報端末本体1と、情報消去装置10とを並べて示した斜視図である。
情報消去装置10は、直方体形状の部材の上に、永久磁石11が取り付けられ、この永久磁石11の図中手前側及び奥側の端部から、直方体形状の部材の内部を通って、部材の底面に向けて、永久磁石10の磁束を集める磁気ヨーク12が形成されている。
情報消去装置10の直方体形状の部材は、携帯情報端末本体1のバッテリーを装着するための凹部に装着できるような寸法となっている。
【0032】
この情報消去装置10を携帯情報端末本体1に装着した状態の斜視図を図2Bに示し、図2Bの固体磁気メモリ3を含む断面図を図2Cに示す。
情報消去装置10を携帯情報端末本体1に装着した状態では、磁気ヨーク12が携帯情報端末本体1の固体磁気メモリ3の端部付近にまで伸びている。これにより、磁気ヨーク12から発生する磁場を、効率良く固体磁気メモリ3に印加して、固体磁気メモリ3の情報を消去することができる。
【0033】
また、情報の消去方法の他の形態として、他の構成の情報消去装置20を用いて、携帯情報端末本体1に情報消去装置20を装着した状態の断面図を、図3に示す。
図3に示す情報消去装置20では、携帯情報端末本体1に装着するための部材の底面に、永久磁石21が設けられている。
これにより、情報消去装置20を携帯情報端末本体1に装着したときには、固体磁気メモリ3に接近して、永久磁石21が配置されるので、永久磁石21からの磁場を効率良く固体磁気メモリ3に印加して、固体磁気メモリ3の情報を消去することができる。
【0034】
上述の本実施の形態の携帯情報端末の構成によれば、携帯情報端末本体1のバッテリー2が装着される部分に固体磁気メモリ3が設けられ、バッテリー2の装着時に固体磁気メモリ3に対向する部分に、磁気シールド4が設けられている。
これにより、携帯情報端末の使用時には、バッテリー2を携帯情報端末本体1に装着するので、固体磁気メモリ3に対向して磁気シールド4が配置され、固体磁気メモリ3に記録された情報を磁気シールド4で保護することができる。
また、バッテリー2を携帯情報端末本体1から取り出せば、固体磁気メモリ3が磁気シールド4で保護されなくなるので、情報消去装置10,20等により磁界を加えて、容易に短時間で、固体磁気メモリ3の情報を消去することができる。
【0035】
即ち、本実施の形態の携帯情報端末によれば、機密情報や個人情報等の消去を迅速確実に行うことが可能になる。
また、磁界を加えて、通電することなく容易に情報の消去を行うことができるので、通電や起動ができない場合でも情報を消去することが可能になる。
従って、携帯情報端末の廃棄や再利用の際の機密情報や個人情報の消去の労力が低減できる。
【0036】
<3.第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態として、携帯情報端末の概略構成図を、図4A〜図5Dに示す。
本実施の形態の携帯情報端末は、SIMカードのホルダーに磁気シールド機能を持たせた構成である。
【0037】
まず、図4Aは、SIMカード34を軟磁性体で作られたカードホルダー33から取り出した状態の斜視図を示している。
携帯端末本体31の内部に、カードホルダー33とSIMカード34とを差し込むための空間が形成されており、この空間の底面に、固体磁気メモリ32が形成されている。
図4Aに示す状態では、固体磁気メモリ32とシールド機能を有するカードホルダー33とが分離しているので、固体磁気メモリ32に対してカードホルダー33の磁気シールド効果はほとんど生じない。そのため、外部磁場によって、容易に固体磁気メモリ32の情報を消去することができる。
【0038】
次に、図4Bは、カードホルダー33にSIMカード34を載せた状態の斜視図を示している。
このようにカードホルダー33にSIMカード34を載せた状態から、カードホルダー33を携帯端末本体31の空間に挿入することにより、SIMカード34を携帯端末本体に装着することができる。
【0039】
そして、図5Cは、カードホルダー33を挿入して、SIMカード34を使用できるようにした状態の斜視図を示している。また、図5Dは、図5Cの状態の固体磁気メモリ32の部分の断面図を示している。
図5C及び図5Dに示すように、携帯情報端末本体31の空間内に、カードホルダー33とSIMカード34が挿入されており、SIMカード34が使用可能になっている。
そして、軟磁性体で作られたカードホルダー33が、固体磁気メモリ32の上に接近して配置されている。これにより、カードホルダー33の磁気シールド効果によって、固体磁気メモリ32の情報が消去されないように、保護することができる。
【0040】
上述の本実施の形態の携帯情報端末の構成によれば、携帯情報端末本体31のSIMカード33及びカードホルダー34が装着される部分に固体磁気メモリ32が設けられている。
そして、カードホルダー34が軟磁性体からなり、磁気シールドを構成し、SIMカード33及びカードホルダー34の装着時に固体磁気メモリ32にカードホルダー34が対向する。
これにより、携帯情報端末の使用時には、SIMカード33及びカードホルダー34を携帯情報端末本体31に装着するので、固体磁気メモリ32に対向して磁気シールドとなるカードホルダー34が配置される。そして、固体磁気メモリ32に記録された情報をカードホルダー34で保護することができる。
また、SIMカード33及びカードホルダー34を携帯情報端末本体31から取り出せば、固体磁気メモリ33がカードホルダー34による磁気シールドで保護されなくなる。そして、磁界を加えて、容易に短時間で、固体磁気メモリ32の情報を消去することができる。
【0041】
即ち、本実施の形態の携帯情報端末によれば、機密情報や個人情報等の消去を迅速確実に行うことが可能になる。
また、磁界を加えて、通電することなく容易に情報の消去を行うことができるので、通電や起動ができない場合でも情報を消去することが可能になる。
従って、携帯情報端末の廃棄や再利用の際の機密情報や個人情報の消去の労力が低減できる。
【0042】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
【符号の説明】
【0043】
1,31 携帯端末本体、2 バッテリー、3,32 固体磁気メモリ、4 磁気シールド、10,20 情報消去装置、11,21 永久磁石、12 磁気ヨーク、33 SIMカード、34 カードホルダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器本体と、
使用時に前記機器本体に装着される付帯物と、
前記機器本体の前記付帯物が装着される部分に設けられ、磁性体の磁化状態により情報を保持する固体磁気メモリと、
前記付帯物を前記機器本体に装着したときに前記固体磁気メモリに対向する部分を含む前記付帯物に設けられた、磁気シールドとを含む
携帯情報機器。
【請求項2】
前記付帯物が前記機器本体に電源を供給するバッテリーであり、前記バッテリーの部材に前記磁気シールドが設けられている、請求項1に記載の携帯情報機器。
【請求項3】
前記付帯物がカード及び前記カードを保持するカードホルダーであり、前記カードホルダーが軟磁性体から成り前記磁気シールドを構成する、請求項1に記載の携帯情報機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−8760(P2012−8760A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143410(P2010−143410)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】