携帯機及びインピーダンス補正方法
【課題】メカニカルキーの収納の有無に拠らず、無線信号の送受信状態を高いレベルで維持しうる携帯機を提供すること。
【解決手段】アンテナ１ａを介して無線信号を送受信する送受信回路１ｓ，１ｒを有するとともに非常用のメカニカルキー１０を収納部１０ａに取り出し可能に収納した携帯機である。収納部１０ａへのメカニカルキー１０の収納の有無を検出するプッシュスイッチＳＷ２と、アンテナ１ａと送受信回路１ｓ，１ｒとの間のインピーダンスを調整するインピーダンス整合回路１ｍと、プッシュスイッチＳＷ２に電気的に接続され、メカニカルキー１０の収納の有無に応じて、インピーダンス整合回路１ｍを制御してアンテナ１ａと送受信回路１ｓ，１ｒとの間のインピーダンスを補正する携帯機側制御装置（ＣＰＵ）１ｃとを備えている。
【解決手段】アンテナ１ａを介して無線信号を送受信する送受信回路１ｓ，１ｒを有するとともに非常用のメカニカルキー１０を収納部１０ａに取り出し可能に収納した携帯機である。収納部１０ａへのメカニカルキー１０の収納の有無を検出するプッシュスイッチＳＷ２と、アンテナ１ａと送受信回路１ｓ，１ｒとの間のインピーダンスを調整するインピーダンス整合回路１ｍと、プッシュスイッチＳＷ２に電気的に接続され、メカニカルキー１０の収納の有無に応じて、インピーダンス整合回路１ｍを制御してアンテナ１ａと送受信回路１ｓ，１ｒとの間のインピーダンスを補正する携帯機側制御装置（ＣＰＵ）１ｃとを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、携帯機に関し、詳しくは、車両搭載装置の無線通信制御に使用され、アンテナを介して無線信号を送受信するとともに非常用のメカニカルキーを取り出し可能に収納した携帯機、及び、該携帯機に使用されるインピーダンス補正方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、車両のユーザに所持され、車両搭載装置の無線通信制御に使用される送受信装置としての携帯機は、通信対象としての当該車両との間で良好な無線通信を行いうるように、インピーダンス整合回路（例えば、特許文献１参照）を備えている。
【０００３】
図４に示すように、この種の携帯機１´には、その携帯機側制御装置１ｃによって送信回路１ｓ及び受信回路１ｒ（送受信回路１ｓ，１ｒ）を制御し、双方のアンテナ１ａ，２ａを介して車両２に設けられた車両側制御装置２ｃと無線通信を行い、当該車両２のドアを遠隔で施解錠制御させるものがある。
【０００４】
前記携帯機側制御装置１ｃには、前記送受信回路１ｓ，１ｒが接続され、さらに当該装置１ｃは、前記送受信回路１ｓ，１ｒを切替信号に基づき切り替える送受信切替回路１ｅ、及び前記送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａの両インピーダンスを整合するインピーダンス整合回路１０ｍを介して当該アンテナ１ａに接続されている。
【０００５】
そして、前記携帯機側制御装置１ｃには、さらに、携帯機１´のケース表面（図示略）に設けられた施解錠スイッチＳＷ１が電気的に接続されている。そして、該施解錠スイッチＳＷ１が操作されることで、前記送信回路１ｓからアンテナ１ａを介して車両側制御装置２ｃに施解錠信号が送信され、さらに該装置２ｃに制御可能に接続されたドア施解錠制御装置２ｄに作動指令信号が送信され、車両２のドアを施解錠させる。
【０００６】
このような携帯機１´には、何らかの原因で当該携帯機１´による無線通信が車両２のドアの施解錠操作に使用できなくなったときに、当該ドアを手動で施解錠するために用いる非常用のメカニカルキーを収納部に収納可能に構成されているものがある（例えば、特許文献２参照）。
【特許文献１】特開２００４−３０４５２１号公報
【特許文献２】特開２００４−３０８３６８号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
ところが、こうした携帯機１´では、当該メカニカルキーが導体である金属により形成されていること等が原因となり、サイズの小型化やデザインの特殊化等の仕様によっては、メカニカルキーを収納することで、アンテナ１ａのアンテナ特性、例えば、インピーダンスＺａ［Ω］、送受信効率、指向性が変化し、これにより当該携帯機１´と前記車両側制御装置２ｃ（車両２）との間での無線信号の送受信状態を悪化させる場合がある。
【０００８】
上記アンテナ特性の内、アンテナ１ａのインピーダンスＺａについては、従来の携帯機１´に設けられたインピーダンス整合回路１０ｍでは、当該携帯機１´の仕様に応じて値が固定されているため、メカニカルキーを収納することで見かけ上変化する当該インピーダンスＺａを補正できず、前述した無線信号の送受信状態の悪化を抑制できないことがあった。さらに、その他のアンテナ特性の変化について、即ち、メカニカルキーを収納することで、アンテナの送受信効率が変化（低下）する場合や、アンテナ（無線信号）の指向性が変化する場合についても、従来の携帯機１´では実質的な対応がなされていないのが実情である。
【０００９】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、メカニカルキーの収納の有無に拠らず、無線信号の送受信状態を高いレベルで維持しうる携帯機、及び、該携帯機に使用されるインピーダンス補正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
上記問題点を解決するために、請求項１に記載の発明は、車両搭載装置の無線通信制御に使用され、アンテナを介して無線信号を送信する送信回路又は受信する受信回路を有するとともに非常用のメカニカルキーを収納部に取り出し可能に収納した携帯機であって、前記収納部への前記メカニカルキーの収納の有無を検出するキー収納有無検出手段と、前記アンテナと送信回路又は受信回路との間のインピーダンスを調整するインピーダンス調整手段と、前記キー収納有無検出手段に電気的に接続され、前記メカニカルキーの収納の有無に応じて前記インピーダンス調整手段を制御し、前記アンテナと送信回路又は受信回路との間のインピーダンスを補正する携帯機側制御手段とを備えたこと、を要旨とする。
【００１１】
同構成によれば、キー収納有無検出手段によりメカニカルキーの収納部への収納を検知し、インピーダンス調整手段及び携帯機側制御装置により当該収納時に変化するアンテナと送信回路又は受信回路との間のインピーダンスを補正することで、メカニカルキーの収納部への収納の有無に拠らず、携帯機による無線信号の送受信状態を高いレベルで維持することができるようになる。そしてこれにより、携帯機の設計上の自由度が高められ、サイズの小型化やデザインの特殊化等の多様な仕様に柔軟に対応できる携帯機が開発できるようになる。
【００１２】
請求項２に記載の発明は、請求項１に記載の携帯機において、前記キー収納有無検出手段が、前記収納部に配設され、前記メカニカルキーの接触・非接触によりオン・オフ状態となるプッシュスイッチにより構成されていること、を要旨とする。
【００１３】
同構成によれば、キー収納有無検出手段が、携帯機の収納部に配設され、メカニカルキーの接触・非接触によりオン・オフ状態となるプッシュスイッチにより構成されているので、当該プッシュスイッチに収納部に収納されたメカニカルキーが接触して操作されることで、メカニカルキーの収納の有無を的確に検知することができる。
【００１４】
請求項３に記載の発明は、請求項２に記載の携帯機において、前記プッシュスイッチが、当該収納部に沿う複数箇所に配設され、前記各プッシュスイッチのオン・オフ状態に基づいて、前記メカニカルキーの収納の有無、及び、前記収納部に対するメカニカルキーの収納深さを検知するようにしたこと、を要旨とする。
【００１５】
同構成によれば、キー収納有無検出手段としてのプッシュスイッチが、携帯機の収納部に沿う複数箇所に配設され、各プッシュスイッチのオン・オフ状態に基づいて、メカニカルキーの収納の有無、及び、当該収納部に対するメカニカルキーの収納深さを検知するようにした。このため、メカニカルキーの収納の有無のみならず、メカニカルキーが収納部の中途に挿入されている状態で無線通信が行われる場合を含め、当該メカニカルキーの収納部における収納深さに応じて変化しうる送信回路又は受信回路とアンテナとの間のインピーダンスの補正を行うことが可能となる。また、一の仕様の携帯機で複数長さのメカニカルキーを共用することが可能となり、携帯機の設計上の自由度が向上するようにもなる。
【００１６】
請求項４に記載の発明は、請求項１〜請求項３のいずれか一項に記載の携帯機において、前記インピーダンス調整手段により、前記アンテナに対してインダクタを並列接続させ、前記メカニカルキーの収納時に変化する前記アンテナの静電容量を補正するか、又は、前記アンテナに対してコンデンサを直列接続させ、前記メカニカルキーの収納時に変化する前記アンテナのインダクタンスを補正するようにしたこと、を要旨とする。
【００１７】
同構成によれば、インピーダンス調整手段により、アンテナに対してインダクタを並列接続させ、メカニカルキーの収納時に変化するアンテナの静電容量を補正するか、又は、アンテナに対してコンデンサを直列接続させ、メカニカルキーの収納時に変化するアンテナのインダクタンスを補正するようにした。このため、メカニカルキーの収納時にアンテナのインピーダンスの成分としての静電容量又はインダクタンスが変化する各場合に応じて、アンテナと送信回路又は受信回路との間のインピーダンスを確実に適正化することができるようになる。
【００１８】
請求項５に記載の発明は、請求項１〜請求項４のいずれか一項に記載の携帯機において、前記携帯機側制御手段が、前記送信回路又は受信回路を制御し、前記メカニカルキーの収納時に低下する前記アンテナの送受信効率を補償するようにしたこと、を要旨とする。
【００１９】
同構成によれば、携帯機側制御装置が、送信回路又は受信回路を制御し、メカニカルキーの収納時に低下するアンテナの送受信効率を補償するようにしたので、アンテナと送信回路又は受信回路との間のインピーダンスを補正するだけでは対処できない送受信特性の低下を抑制し、携帯機による無線信号の送受信状態をより広い範囲で適正化することができるようになる。
【００２０】
請求項６に記載の発明は、請求項１〜請求項５のいずれか一項に記載の携帯機において、異なる指向特性を有する少なくとも２つのアンテナと、前記各アンテナを切り替えるアンテナ切替手段とを備え、前記携帯機側制御手段が、前記メカニカルキーの収納の有無に応じて前記アンテナ切替手段を制御し、前記各アンテナを切り替えることで前記メカニカルキーの収納時に変化する前記無線信号の指向性を補正するようにしたこと、を要旨とする。
【００２１】
同構成によれば、携帯機側制御装置が、メカニカルキーの収納の有無に応じて、異なる指向特性を有する少なくとも２つのアンテナを切り替えるアンテナ切替手段を制御し、メカニカルキーの収納時に変化する無線信号の指向性を補正するようにしたので、アンテナのインピーダンスや送受信効率に加え、さらに指向性を含めた無線信号の送受信状態を適正化することができる。
【００２２】
請求項７に記載の発明は、車両搭載装置の無線通信制御に使用され、アンテナを介して送信する送信回路又は受信する受信回路を有するとともに非常用のメカニカルキーを取り出し可能に収納した携帯機において、前記アンテナと送信回路又は受信回路との間のインピーダンスを補正するために用いるインピーダンス補正方法であって、前記メカニカルキーの収納の有無を検出するキー収納有無検出ステップと、前記メカニカルキーの収納の有無に応じて、前記アンテナと送信回路又は受信回路との間のインピーダンスを補正するインピーダンス補正ステップとを備えたこと、を要旨とする。
【００２３】
同構成によれば、キー収納有無検出ステップにより、メカニカルキーの収納部への収納を検知し、インピーダンス補正ステップにより当該収納時に変化するアンテナと送信回路又は受信回路との間のインピーダンスを補正することで、携帯機による無線信号の送受信状態を高いレベルで維持することができるようになる。
【発明の効果】
【００２４】
本発明によれば、メカニカルキーの収納の有無に拠らず、無線信号の送受信状態を高いレベルで維持しうる携帯機が提供できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２５】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。以下の各実施形態の携帯機１は、図４で示した従来技術の携帯機１と同様な構成及び機能を備えており、以下に示す場合を除き、共通する箇所には同一又は対応する符号を付す等してその説明を省略する。
【００２６】
＜第１実施形態＞
図１（ａ）に示すように、本実施形態の携帯機１において、その携帯機側制御手段としての携帯機側制御装置１ｃ（以下、「ＣＰＵ１ｃ」という。）には、送信回路１ｓ及び受信回路１ｒ（送受信回路１ｓ，１ｒ）が接続されている。さらに当該ＣＰＵ１ｃは、該送受信回路１ｓ，１ｒをＣＰＵ１ｃからの切替信号に基づき切り替える送受信切替回路１ｅ、及び前記送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間のインピーダンスＺを調整するインピーダンス調整手段としてのインピーダンス整合回路１ｍを介して当該アンテナ１ａに接続されている。ここで、インピーダンス整合回路１ｍは、前記送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間のインピーダンスＺを補正し、携帯機１と車両２の車両側制御装置２ｃとの間での無線信号（電波）の送受信状態を適正化する。詳しくは、このインピーダンス整合回路１ｍは、アンテナ１ａ（出力インピーダンス）と送受信回路１ｓ，１ｒ（入力インピーダンス）の両インピーダンスを整合すべく、送信回路１ｓに接続されたインダクタＬ１と一端が接地されたコンデンサＣ１とが接続されてなるＬＣ回路網を備えている（図２（ａ）及び図２（ｂ）参照）。
【００２７】
本実施形態の携帯機１では、このように、送信回路１ｓと受信回路１ｒとで一つのアンテナ１ａ及びインピーダンス整合回路１ｍを共用するようにしているので、送受信で同一の周波数ｆ［Ｈｚ］の無線信号が使用される。
【００２８】
また、図１（ｂ）に示すように、本実施形態の携帯機１は、ケース１ｂと、該ケース１ｂに収容され、電池（直流電源）１２により駆動される回路基板１１とを備えている。そして、この回路基板１１には、上述したＣＰＵ１ｃ、送信回路１ｓ及び受信回路１ｒ、送受信切替回路１ｅ、インピーダンス整合回路１ｍ、並びにアンテナ１ａが配設されている。
【００２９】
本実施形態の携帯機１では、何らかの原因で当該携帯機１による無線通信が車両２のドアの施解錠操作に使用できなくなったときに、当該ドアを手動で施解錠するために用いる非常用のメカニカルキー１０がケース１ｂに設けられた収納部１０ａに取り出し可能に収納されている。このメカニカルキー１０は、導体である金属（例えば、鉄・クロム合金）により直線状に形成されている。また、前記収納部１０ａは、メカニカルキー１０の形状に合わせ、ケース１ｂ内部に向け、直線状に延びるように形成されている。
【００３０】
前記ＣＰＵ１ｃには、図１（ａ）を参照して、さらに、携帯機１のケース１ｂの表面（図示略）に設けられた施解錠スイッチＳＷ１が電気的に接続されている。そして、該施解錠スイッチＳＷ１が操作されることで、前記送信回路１ｓからアンテナ１ａ，２ａを介して車両２の車両側制御装置２ｃに施解錠信号が送信され、さらに該装置２ｃに制御可能に接続された車両搭載装置としてのドア施解錠制御装置２ｄに作動指令信号が送信され、当該車両２のドアを施解錠させる。一方、車両２から携帯機１へは、例えば、携帯機１の存在を確認するためのＷＡＫＥ信号、携帯機１からの認証用ＩＤコード信号の送信を要求するためのリクエスト信号等が送信される。
【００３１】
本実施形態の携帯機１では、前記メカニカルキー１０を収納部１０ａに収納することで見かけ上変化するアンテナ１ａのインピーダンスＺａを補正し、送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間で最も効率のよい電力の伝送が行われるようにする。換言すれば、前記メカニカルキー１０を収納部１０ａに収納することで変化するアンテナ１ａのコンデンサ成分（静電容量）を補正し、送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間で最も効率のよい電力の伝送が行われるようにする。
【００３２】
具体的には、図１（ａ）及び図１（ｂ）に示すように、前記収納部１０ａにおいては、キー収納有無検出手段としてのプッシュスイッチＳＷ２がその底部に配設されている。このプッシュスイッチＳＷ２は、前記メカニカルキー１０が挿入されていない状態ではオフの状態にあり、メカニカルキー１０が収納部１０ａに収納（挿入）されると、その先端により押圧され、オンの状態となるように構成されている。このようにして、プッシュスイッチＳＷ２に収納部１０ａに収納されたメカニカルキー１０が接触して操作されることで、当該メカニカルキー１０の収納の有無が的確に検知される（キー収納有無検出ステップ）。そして、該プッシュスイッチＳＷ２は、前記ＣＰＵ１ｃに電気的に接続され、そのオン・オフ状態の情報が入力されるようになっている。以上のようにして、本実施形態の携帯機１では、収納部１０ａへのメカニカルキー１０の収納の有無がＣＰＵ１ｃによって認識されるようになっている。
【００３３】
前記インピーダンス整合回路１ｍは、前記ＣＰＵ１ｃから制御信号が入力されて制御され、前記送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間のインピーダンスＺを補正し、携帯機１と車両側制御装置２ｃとの間での無線信号の送受信状態を適正化する。
【００３４】
詳しくは、該インピーダンス整合回路１ｍは、図２（ａ）及び図２（ｂ）に示すように、前記したＬＣ回路網に加え、さらにアンテナ１ａ（インピーダンスＺａ）と、前記コンデンサＣ１との間に接続され、一端が接地された開閉スイッチＳＷの他端と直列接続されたインダクタＬ２を備えている。この開閉スイッチＳＷは、前記ＣＰＵ１ｃによって開閉制御されるようになっている。
【００３５】
そして、前記メカニカルキー１０が収納部１０ａに収納されていない状態では、前記プッシュスイッチＳＷ２はオフ状態となっており、図２（ａ）を参照して、前記開閉スイッチＳＷはＣＰＵ１ｃにより制御されて開（オフ）状態になっている。この状態では、インダクタＬ１とコンデンサＣ１とが接続されてなる前記ＬＣ回路網により、送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間のインピーダンスＺの調整が行われ、送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間で最も効率のよい電力の伝送が行われる。即ち、前記送受信切替回路１ｅ（図１（ａ）参照）が切り替えられることで送信回路１ｓが使用され、アンテナ１ａより無線信号が送信される場合では、送信回路１ｓから出力される信号が、その強度レベルを低下させずに最も効率よく当該アンテナ１ａまで伝送されるようにする。また、前記送受信切替回路１ｅが切り替えられることで受信回路１ｒが使用され、アンテナ１ａより無線信号を受信する場合では、該受信した信号が、その強度レベルを低下させずに最も効率よく受信回路１ｒまで伝送されるようにする。
【００３６】
一方、前記メカニカルキー１０が収納部１０ａに収納され、アンテナ１ａのインピーダンスＺａが、該収納に起因するコンデンサＣ２の分だけ変化すると、該収納が前記プッシュスイッチＳＷ２がオン状態となることで検知される。そして、図２（ｂ）を参照して、前記開閉スイッチＳＷはＣＰＵ１ｃにより制御されて閉（オン）状態となる。そしてこの状態では、コンデンサＣ２とインダクタＬ２とが並列接続されて並列共振するようになり、当該並列接続部位のインピーダンスが開放レベルまで高められるため、前述した図２（ａ）に示す状態と同様、前記ＬＣ回路網により送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間のインピーダンスＺの調整が行われる（インピーダンス補正ステップ）。この結果、送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間のインピーダンスＺが補正され、即ち、コンデンサＣ２の発生がキャンセルされ、送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間で最も効率のよい電力の伝送が行われる。
【００３７】
尚、図２（ｂ）の状態では、車両２に設けられた車両側制御装置２ｃ（図１（ａ）参照）との間での通信に使用される無線信号の周波数は前述のとおりｆ［Ｈｚ］であるので、下式（１）の関係が成立する。
【００３８】
ｆ＝１／{２π・√（Ｌ２・Ｃ２）}［Ｈｚ］・・・（１）
ここで、式（１）をＬ２について解くと、下式（２）のようになる。
Ｌ２＝（１／Ｃ２）・（１／２πｆ）２［Ｆ］・・・（２）
上式（２）によって、コンデンサＣ２の静電容量Ｃ２［Ｆ］は実測により既知であるので、本実施形態においてインピーダンス整合回路１ｍに配設すべきインダクタＬ２の誘導係数Ｌ２［Ｈ］が求められる。
【００３９】
本実施形態の携帯機１によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
（１）プッシュスイッチＳＷ２によりメカニカルキー１０の収納部１０ａへの収納を検知し、インピーダンス整合回路１ｍ及びＣＰＵ１ｃにより当該収納時に変化するアンテナと送受信回路１ｓ，１ｒとの間のインピーダンスＺを補正することで、携帯機１による無線信号の送受信状態を高いレベルで維持することができるようになる。そしてこれにより、携帯機１の設計上の自由度が高められ、サイズの小型化やデザインの特殊化等の多様な仕様に柔軟に対応できる携帯機１が開発できるようになる。
【００４０】
（２）インピーダンス整合回路１ｍにおいて、アンテナ１ａに対してインダクタＬ２を並列接続させ、メカニカルキー１０の収納時に変化するアンテナ１ａの静電容量を補正するようにした。このため、メカニカルキー１０の収納時にアンテナ１ａのインピーダンスＺａの成分としての静電容量が変化する場合に、アンテナ１ａと送受信回路１ｓ，１ｒとの間のインピーダンスＺを確実に適正化することができるようになる。
【００４１】
＜第２実施形態＞
本実施形態の携帯機１は、上記第１実施形態の携帯機１と同様な構成及び機能を備えており、以下に特に示す場合を除き、共通する箇所には同一又は対応する符号を付す等してその説明を省略する。
【００４２】
本実施形態の携帯機１では、第１実施形態の携帯機１と同様、前記メカニカルキー１０を収納部１０ａに収納することで見かけ上変化するアンテナ１ａのインピーダンスＺａを補正し、送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間で最も効率のよい電力の伝送が行われるようにする。詳しくは、前記メカニカルキー１０を収納部１０ａに収納することで変化するアンテナ１ａのインダクタンス成分（誘導係数）を補正し、送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間で最も効率のよい電力の伝送が行われるようにする。
【００４３】
このため、前記インピーダンス整合回路１ｎは、図３（ａ）及び図３（ｂ）に示すように、前記したＬＣ回路網に加え、さらにアンテナ１ａ（インピーダンスＺａ）と、前記コンデンサＣ１との間に両端が接続され、開閉スイッチＳＷと並列接続されたコンデンサＣ２´を備えている。この開閉スイッチＳＷは、前記ＣＰＵ１ｃによって開閉制御されるようになっている。
【００４４】
そして、前記メカニカルキー１０が収納部１０ａに収納されていない状態では、前記プッシュスイッチＳＷ２はオン状態となっており、図３（ａ）を参照して、前記開閉スイッチＳＷはＣＰＵ１ｃにより制御されて閉（オン）状態になっている。この状態では、コンデンサＣ２´は開閉スイッチＳＷにより短絡されており、インダクタＬ１とコンデンサＣ１とが接続されてなる前記ＬＣ回路網によって、送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間のインピーダンスＺの調整が行われ、送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間で最も効率のよい電力の伝送が行われる。即ち、前記送受信切替回路１ｅ（図１（ａ）参照）が切り替えられることで送信回路１ｓが使用され、アンテナ１ａより無線信号が送信される場合では、送信回路１ｓから出力される信号が、その強度レベルを低下させずに最も効率よく当該アンテナ１ａまで伝送されるようにする。また、前記送受信切替回路１ｅが切り替えられることで受信回路１ｒが使用され、アンテナ１ａより無線信号を受信する場合では、該受信した信号が、その強度レベルを低下させずに最も効率よく受信回路１ｒまで伝送されるようにする。
【００４５】
一方、前記メカニカルキー１０が収納部１０ａに収納され、アンテナ１ａのインピーダンスＺａが、該収納に起因するインダクタＬ２´の分だけ変化すると、該収納が前記プッシュスイッチＳＷ２により検知され、図３（ｂ）を参照して、前記開閉スイッチＳＷはＣＰＵ１ｃにより制御されて開（オフ）状態となる。そしてこの状態では、コンデンサＣ２´とインダクタＬ２´とが直列接続されて直列共振するようになり、当該直列接続部位のインピーダンスが短絡レベルまで低下するため、前述した図３（ａ）に示す状態と同様、前記ＬＣ回路網により送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間のインピーダンスＺの調整が行われる（インピーダンス補正ステップ）。この結果、送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間のインピーダンスＺが補正され、即ち、インダクタＬ２´の発生がキャンセルされ、送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間で最も効率のよい電力の伝送が行われる。
【００４６】
尚、図３（ｂ）の状態では、車両２に設けられた車両側制御装置２ｃ（図１（ａ）参照）との間での通信に使用される無線信号の周波数は前述のとおりｆ［Ｈｚ］であるので、下式（１１）の関係が成立する。
【００４７】
ｆ＝１／{２π・√（Ｌ２´・Ｃ２´）}［Ｈｚ］・・・（１１）
ここで、式（１１）をＣ２´について解くと、下式（１２）のようになる。
Ｃ２´＝（１／Ｌ２´）・（１／２πｆ）２［Ｆ］・・・（１２）
上式（１２）によって、インダクタＬ２´の誘導係数Ｌ２´［Ｈ］は実測により既知であるので、本実施形態においてインピーダンス整合回路１ｎに配設すべきコンデンサＣ２´の静電容量Ｃ２´［Ｆ］が求められる。
【００４８】
本実施形態の携帯機１によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
（３）プッシュスイッチＳＷ２によりメカニカルキー１０の収納部１０ａへの収納を検知し、インピーダンス整合回路１ｎ及びＣＰＵ１ｃにより当該収納時に変化するアンテナと送受信回路１ｓ，１ｒとの間のインピーダンスＺを補正することで、携帯機１による無線信号の送受信状態を高いレベルで維持することができるようになる。そしてこれにより、携帯機１の設計上の自由度が高められ、サイズの小型化やデザインの特殊化等の多様な仕様に柔軟に対応できる携帯機１が開発できるようになる。
【００４９】
（４）インピーダンス整合回路１ｎにおいて、アンテナ１ａに対してコンデンサＣ２´を直列接続させ、メカニカルキー１０の収納時に変化するアンテナ１ａのインダクタンスを補正するようにした。このため、メカニカルキー１０の収納時にアンテナ１ａのインピーダンスＺａの成分としてのインダクタンスが変化する場合に、アンテナ１ａと送受信回路１ｓ，１ｒとの間のインピーダンスＺを確実に適正化することができるようになる。
【００５０】
尚、上記各実施形態は以下のように変形してもよい。
・上記各実施形態では、送信回路１ｓと受信回路１ｒとで一つのアンテナ１ａ及びインピーダンス整合回路１ｍ（１ｎ）を共用するようにしたが、本発明の技術的思想はこれに限られず、送信回路１ｓと受信回路１ｒとでそれぞれ専用のアンテナを使用し、これに伴いインピーダンス整合回路１ｍ（１ｎ）も各々独立したものとすることができる。
【００５１】
・上記各実施形態では、非常用のメカニカルキー１０はケース１ｂから完全に分離可能に構成したが、本発明の技術的思想には、非常用のメカニカルキー１０をケース１ｂと一体的に構成したもの、例えば、同メカニカルキー１０がケース１ｂに設けられた収納部に対し、同ケース１ｂの一部に設けた支軸を中心に回転可能に収納されるものも含まれる。
【００５２】
・上記各実施形態では、携帯機１の収納部１０ａへのメカニカルキー１０の収納の有無を検出するキー収納有無検出手段としてプッシュスイッチＳＷ２を用いたが、該キー収納有無検出手段としては、その他の機械式スイッチを用いることもできる。さらに、機械式スイッチ以外に、例えば、磁気スイッチを使用することもできる。さらにまた、このようなスイッチに代えて各種のセンサを用いることも可能である。
【００５３】
・上記各実施形態では、キー収納有無検出手段としてプッシュスイッチＳＷ２を、携帯機１の収納部１０ａの一箇所（底部）のみに配設した。しかしこれに限られず、当該プッシュスイッチＳＷ２を、該収納部１０ａに沿う２箇所以上の複数箇所に配設し、該各プッシュスイッチＳＷ２，…のオン・オフ状態に基づき、メカニカルキー１０の収納の有無に加え、前記収納部１０ａに対するメカニカルキー１０の収納深さを検知するようにすることも可能である。このため、メカニカルキー１０の収納の有無のみならず、メカニカルキー１０が収納部１０ａの中途に挿入されている状態で無線通信が行われる場合を含め、当該メカニカルキー１０の収納部における収納深さに応じて変化しうる送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間のインピーダンスＺの補正を行うことが可能となる。また、一の仕様の携帯機１に複数長さのメカニカルキー１０を共用することが可能となり、携帯機１の設計上の自由度が向上するようにもなる。
【００５４】
・上記各実施形態では、送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間に接続したインピーダンス整合回路１ｍ（１ｎ）を使用し、メカニカルキー１０を収納することにより変化する当該インピーダンスＺを補正することで、無線信号の送受信状態の悪化を抑制するようにした。しかしこれに限られず、該インピーダンスＺの補正に加え、メカニカルキー１０の収納時に送信効率自体の低下が起こる場合、即ち、アンテナ１ａにおいて無線信号の送信に寄与する電力（電圧）が低下する場合や、受信効率自体の低下が起こる場合、即ち、アンテナ１ａから供給され、受信回路１ｒにおいて検出される無線信号の強度レベル（電力、電圧）が低下する場合において、ＣＰＵ１ｃにより送受信回路１ｓ，１ｒを制御し、それらアンテナ１ａの送受信効率の低下を補償することも可能である。これにより、アンテナ１ａと送受信回路１ｓ，１ｒとの間のインピーダンスＺを補正するだけでは対処できない送受信特性の低下を抑制し、携帯機１による無線信号の送受信状態をより広い範囲で適正化することができるようになる。
【００５５】
・上記各実施形態では、送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間に接続したインピーダンス整合回路１ｍ（１ｎ）を使用し、メカニカルキー１０を収納することにより変化する当該インピーダンスＺを補正することで、無線信号の送受信状態の悪化を抑制するようにした。しかしこれに限られず、メカニカルキー１０の収納時に変化する無線信号の指向性が変化し、これによって携帯機１と車両２との間での無線信号の送受信状態が悪化する場合において、例えば、異なる指向特性を有する２つのアンテナと、該各アンテナを切り替えるアンテナ切替手段としてのアンテナ切替回路とを携帯機１に具備させるとともに、ＣＰＵ１ｃによりメカニカルキー１０の収納の有無に応じて当該アンテナ切替回路を制御して前記各アンテナを切り替えさせ、これによりメカニカルキー１０の収納時に変化する無線信号の指向性を補正するようにしてもよい。これにより、アンテナ１ａのインピーダンスや送受信効率に加え、さらに指向性を含めた無線信号の送受信状態を適正化することができる。
【図面の簡単な説明】
【００５６】
【図１】（ａ）は、本発明の各実施形態に係る携帯機及び車両において、相互の無線通信に使用される電気的構成を示すブロック図、（ｂ）は、同携帯機の構成図。
【図２】（ａ）は、本発明の第１実施形態に係る携帯機において、メカニカルキーの非収納時のインピーダンス整合回路の整合状態を示すブロック図、（ｂ）は、同携帯機において、メカニカルキーの収納時のインピーダンス整合回路の状態を示すブロック図。
【図３】（ａ）は、本発明の第２実施形態に係る携帯機において、メカニカルキーの非収納時のインピーダンス整合回路の整合状態を示すブロック図、（ｂ）は、同携帯機において、メカニカルキーの収納時のインピーダンス整合回路の状態を示すブロック図。
【図４】従来例に係る携帯機及び車両において、相互の無線通信に使用される電気的構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【００５７】
１（１´）…携帯機、１ａ…（携帯機側）アンテナ、１ｃ…ＣＰＵ（携帯機側制御装置）、１ｍ，１ｎ…インピーダンス整合回路、１ｓ…送信回路、１ｒ…受信回路、１０…メカニカルキー、１０ａ…収納部、２…車両、ＳＷ２…プッシュスイッチ、Ｚａ…（アンテナ１ａの）インピーダンス。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、携帯機に関し、詳しくは、車両搭載装置の無線通信制御に使用され、アンテナを介して無線信号を送受信するとともに非常用のメカニカルキーを取り出し可能に収納した携帯機、及び、該携帯機に使用されるインピーダンス補正方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、車両のユーザに所持され、車両搭載装置の無線通信制御に使用される送受信装置としての携帯機は、通信対象としての当該車両との間で良好な無線通信を行いうるように、インピーダンス整合回路（例えば、特許文献１参照）を備えている。
【０００３】
図４に示すように、この種の携帯機１´には、その携帯機側制御装置１ｃによって送信回路１ｓ及び受信回路１ｒ（送受信回路１ｓ，１ｒ）を制御し、双方のアンテナ１ａ，２ａを介して車両２に設けられた車両側制御装置２ｃと無線通信を行い、当該車両２のドアを遠隔で施解錠制御させるものがある。
【０００４】
前記携帯機側制御装置１ｃには、前記送受信回路１ｓ，１ｒが接続され、さらに当該装置１ｃは、前記送受信回路１ｓ，１ｒを切替信号に基づき切り替える送受信切替回路１ｅ、及び前記送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａの両インピーダンスを整合するインピーダンス整合回路１０ｍを介して当該アンテナ１ａに接続されている。
【０００５】
そして、前記携帯機側制御装置１ｃには、さらに、携帯機１´のケース表面（図示略）に設けられた施解錠スイッチＳＷ１が電気的に接続されている。そして、該施解錠スイッチＳＷ１が操作されることで、前記送信回路１ｓからアンテナ１ａを介して車両側制御装置２ｃに施解錠信号が送信され、さらに該装置２ｃに制御可能に接続されたドア施解錠制御装置２ｄに作動指令信号が送信され、車両２のドアを施解錠させる。
【０００６】
このような携帯機１´には、何らかの原因で当該携帯機１´による無線通信が車両２のドアの施解錠操作に使用できなくなったときに、当該ドアを手動で施解錠するために用いる非常用のメカニカルキーを収納部に収納可能に構成されているものがある（例えば、特許文献２参照）。
【特許文献１】特開２００４−３０４５２１号公報
【特許文献２】特開２００４−３０８３６８号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
ところが、こうした携帯機１´では、当該メカニカルキーが導体である金属により形成されていること等が原因となり、サイズの小型化やデザインの特殊化等の仕様によっては、メカニカルキーを収納することで、アンテナ１ａのアンテナ特性、例えば、インピーダンスＺａ［Ω］、送受信効率、指向性が変化し、これにより当該携帯機１´と前記車両側制御装置２ｃ（車両２）との間での無線信号の送受信状態を悪化させる場合がある。
【０００８】
上記アンテナ特性の内、アンテナ１ａのインピーダンスＺａについては、従来の携帯機１´に設けられたインピーダンス整合回路１０ｍでは、当該携帯機１´の仕様に応じて値が固定されているため、メカニカルキーを収納することで見かけ上変化する当該インピーダンスＺａを補正できず、前述した無線信号の送受信状態の悪化を抑制できないことがあった。さらに、その他のアンテナ特性の変化について、即ち、メカニカルキーを収納することで、アンテナの送受信効率が変化（低下）する場合や、アンテナ（無線信号）の指向性が変化する場合についても、従来の携帯機１´では実質的な対応がなされていないのが実情である。
【０００９】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、メカニカルキーの収納の有無に拠らず、無線信号の送受信状態を高いレベルで維持しうる携帯機、及び、該携帯機に使用されるインピーダンス補正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
上記問題点を解決するために、請求項１に記載の発明は、車両搭載装置の無線通信制御に使用され、アンテナを介して無線信号を送信する送信回路又は受信する受信回路を有するとともに非常用のメカニカルキーを収納部に取り出し可能に収納した携帯機であって、前記収納部への前記メカニカルキーの収納の有無を検出するキー収納有無検出手段と、前記アンテナと送信回路又は受信回路との間のインピーダンスを調整するインピーダンス調整手段と、前記キー収納有無検出手段に電気的に接続され、前記メカニカルキーの収納の有無に応じて前記インピーダンス調整手段を制御し、前記アンテナと送信回路又は受信回路との間のインピーダンスを補正する携帯機側制御手段とを備えたこと、を要旨とする。
【００１１】
同構成によれば、キー収納有無検出手段によりメカニカルキーの収納部への収納を検知し、インピーダンス調整手段及び携帯機側制御装置により当該収納時に変化するアンテナと送信回路又は受信回路との間のインピーダンスを補正することで、メカニカルキーの収納部への収納の有無に拠らず、携帯機による無線信号の送受信状態を高いレベルで維持することができるようになる。そしてこれにより、携帯機の設計上の自由度が高められ、サイズの小型化やデザインの特殊化等の多様な仕様に柔軟に対応できる携帯機が開発できるようになる。
【００１２】
請求項２に記載の発明は、請求項１に記載の携帯機において、前記キー収納有無検出手段が、前記収納部に配設され、前記メカニカルキーの接触・非接触によりオン・オフ状態となるプッシュスイッチにより構成されていること、を要旨とする。
【００１３】
同構成によれば、キー収納有無検出手段が、携帯機の収納部に配設され、メカニカルキーの接触・非接触によりオン・オフ状態となるプッシュスイッチにより構成されているので、当該プッシュスイッチに収納部に収納されたメカニカルキーが接触して操作されることで、メカニカルキーの収納の有無を的確に検知することができる。
【００１４】
請求項３に記載の発明は、請求項２に記載の携帯機において、前記プッシュスイッチが、当該収納部に沿う複数箇所に配設され、前記各プッシュスイッチのオン・オフ状態に基づいて、前記メカニカルキーの収納の有無、及び、前記収納部に対するメカニカルキーの収納深さを検知するようにしたこと、を要旨とする。
【００１５】
同構成によれば、キー収納有無検出手段としてのプッシュスイッチが、携帯機の収納部に沿う複数箇所に配設され、各プッシュスイッチのオン・オフ状態に基づいて、メカニカルキーの収納の有無、及び、当該収納部に対するメカニカルキーの収納深さを検知するようにした。このため、メカニカルキーの収納の有無のみならず、メカニカルキーが収納部の中途に挿入されている状態で無線通信が行われる場合を含め、当該メカニカルキーの収納部における収納深さに応じて変化しうる送信回路又は受信回路とアンテナとの間のインピーダンスの補正を行うことが可能となる。また、一の仕様の携帯機で複数長さのメカニカルキーを共用することが可能となり、携帯機の設計上の自由度が向上するようにもなる。
【００１６】
請求項４に記載の発明は、請求項１〜請求項３のいずれか一項に記載の携帯機において、前記インピーダンス調整手段により、前記アンテナに対してインダクタを並列接続させ、前記メカニカルキーの収納時に変化する前記アンテナの静電容量を補正するか、又は、前記アンテナに対してコンデンサを直列接続させ、前記メカニカルキーの収納時に変化する前記アンテナのインダクタンスを補正するようにしたこと、を要旨とする。
【００１７】
同構成によれば、インピーダンス調整手段により、アンテナに対してインダクタを並列接続させ、メカニカルキーの収納時に変化するアンテナの静電容量を補正するか、又は、アンテナに対してコンデンサを直列接続させ、メカニカルキーの収納時に変化するアンテナのインダクタンスを補正するようにした。このため、メカニカルキーの収納時にアンテナのインピーダンスの成分としての静電容量又はインダクタンスが変化する各場合に応じて、アンテナと送信回路又は受信回路との間のインピーダンスを確実に適正化することができるようになる。
【００１８】
請求項５に記載の発明は、請求項１〜請求項４のいずれか一項に記載の携帯機において、前記携帯機側制御手段が、前記送信回路又は受信回路を制御し、前記メカニカルキーの収納時に低下する前記アンテナの送受信効率を補償するようにしたこと、を要旨とする。
【００１９】
同構成によれば、携帯機側制御装置が、送信回路又は受信回路を制御し、メカニカルキーの収納時に低下するアンテナの送受信効率を補償するようにしたので、アンテナと送信回路又は受信回路との間のインピーダンスを補正するだけでは対処できない送受信特性の低下を抑制し、携帯機による無線信号の送受信状態をより広い範囲で適正化することができるようになる。
【００２０】
請求項６に記載の発明は、請求項１〜請求項５のいずれか一項に記載の携帯機において、異なる指向特性を有する少なくとも２つのアンテナと、前記各アンテナを切り替えるアンテナ切替手段とを備え、前記携帯機側制御手段が、前記メカニカルキーの収納の有無に応じて前記アンテナ切替手段を制御し、前記各アンテナを切り替えることで前記メカニカルキーの収納時に変化する前記無線信号の指向性を補正するようにしたこと、を要旨とする。
【００２１】
同構成によれば、携帯機側制御装置が、メカニカルキーの収納の有無に応じて、異なる指向特性を有する少なくとも２つのアンテナを切り替えるアンテナ切替手段を制御し、メカニカルキーの収納時に変化する無線信号の指向性を補正するようにしたので、アンテナのインピーダンスや送受信効率に加え、さらに指向性を含めた無線信号の送受信状態を適正化することができる。
【００２２】
請求項７に記載の発明は、車両搭載装置の無線通信制御に使用され、アンテナを介して送信する送信回路又は受信する受信回路を有するとともに非常用のメカニカルキーを取り出し可能に収納した携帯機において、前記アンテナと送信回路又は受信回路との間のインピーダンスを補正するために用いるインピーダンス補正方法であって、前記メカニカルキーの収納の有無を検出するキー収納有無検出ステップと、前記メカニカルキーの収納の有無に応じて、前記アンテナと送信回路又は受信回路との間のインピーダンスを補正するインピーダンス補正ステップとを備えたこと、を要旨とする。
【００２３】
同構成によれば、キー収納有無検出ステップにより、メカニカルキーの収納部への収納を検知し、インピーダンス補正ステップにより当該収納時に変化するアンテナと送信回路又は受信回路との間のインピーダンスを補正することで、携帯機による無線信号の送受信状態を高いレベルで維持することができるようになる。
【発明の効果】
【００２４】
本発明によれば、メカニカルキーの収納の有無に拠らず、無線信号の送受信状態を高いレベルで維持しうる携帯機が提供できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２５】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。以下の各実施形態の携帯機１は、図４で示した従来技術の携帯機１と同様な構成及び機能を備えており、以下に示す場合を除き、共通する箇所には同一又は対応する符号を付す等してその説明を省略する。
【００２６】
＜第１実施形態＞
図１（ａ）に示すように、本実施形態の携帯機１において、その携帯機側制御手段としての携帯機側制御装置１ｃ（以下、「ＣＰＵ１ｃ」という。）には、送信回路１ｓ及び受信回路１ｒ（送受信回路１ｓ，１ｒ）が接続されている。さらに当該ＣＰＵ１ｃは、該送受信回路１ｓ，１ｒをＣＰＵ１ｃからの切替信号に基づき切り替える送受信切替回路１ｅ、及び前記送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間のインピーダンスＺを調整するインピーダンス調整手段としてのインピーダンス整合回路１ｍを介して当該アンテナ１ａに接続されている。ここで、インピーダンス整合回路１ｍは、前記送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間のインピーダンスＺを補正し、携帯機１と車両２の車両側制御装置２ｃとの間での無線信号（電波）の送受信状態を適正化する。詳しくは、このインピーダンス整合回路１ｍは、アンテナ１ａ（出力インピーダンス）と送受信回路１ｓ，１ｒ（入力インピーダンス）の両インピーダンスを整合すべく、送信回路１ｓに接続されたインダクタＬ１と一端が接地されたコンデンサＣ１とが接続されてなるＬＣ回路網を備えている（図２（ａ）及び図２（ｂ）参照）。
【００２７】
本実施形態の携帯機１では、このように、送信回路１ｓと受信回路１ｒとで一つのアンテナ１ａ及びインピーダンス整合回路１ｍを共用するようにしているので、送受信で同一の周波数ｆ［Ｈｚ］の無線信号が使用される。
【００２８】
また、図１（ｂ）に示すように、本実施形態の携帯機１は、ケース１ｂと、該ケース１ｂに収容され、電池（直流電源）１２により駆動される回路基板１１とを備えている。そして、この回路基板１１には、上述したＣＰＵ１ｃ、送信回路１ｓ及び受信回路１ｒ、送受信切替回路１ｅ、インピーダンス整合回路１ｍ、並びにアンテナ１ａが配設されている。
【００２９】
本実施形態の携帯機１では、何らかの原因で当該携帯機１による無線通信が車両２のドアの施解錠操作に使用できなくなったときに、当該ドアを手動で施解錠するために用いる非常用のメカニカルキー１０がケース１ｂに設けられた収納部１０ａに取り出し可能に収納されている。このメカニカルキー１０は、導体である金属（例えば、鉄・クロム合金）により直線状に形成されている。また、前記収納部１０ａは、メカニカルキー１０の形状に合わせ、ケース１ｂ内部に向け、直線状に延びるように形成されている。
【００３０】
前記ＣＰＵ１ｃには、図１（ａ）を参照して、さらに、携帯機１のケース１ｂの表面（図示略）に設けられた施解錠スイッチＳＷ１が電気的に接続されている。そして、該施解錠スイッチＳＷ１が操作されることで、前記送信回路１ｓからアンテナ１ａ，２ａを介して車両２の車両側制御装置２ｃに施解錠信号が送信され、さらに該装置２ｃに制御可能に接続された車両搭載装置としてのドア施解錠制御装置２ｄに作動指令信号が送信され、当該車両２のドアを施解錠させる。一方、車両２から携帯機１へは、例えば、携帯機１の存在を確認するためのＷＡＫＥ信号、携帯機１からの認証用ＩＤコード信号の送信を要求するためのリクエスト信号等が送信される。
【００３１】
本実施形態の携帯機１では、前記メカニカルキー１０を収納部１０ａに収納することで見かけ上変化するアンテナ１ａのインピーダンスＺａを補正し、送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間で最も効率のよい電力の伝送が行われるようにする。換言すれば、前記メカニカルキー１０を収納部１０ａに収納することで変化するアンテナ１ａのコンデンサ成分（静電容量）を補正し、送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間で最も効率のよい電力の伝送が行われるようにする。
【００３２】
具体的には、図１（ａ）及び図１（ｂ）に示すように、前記収納部１０ａにおいては、キー収納有無検出手段としてのプッシュスイッチＳＷ２がその底部に配設されている。このプッシュスイッチＳＷ２は、前記メカニカルキー１０が挿入されていない状態ではオフの状態にあり、メカニカルキー１０が収納部１０ａに収納（挿入）されると、その先端により押圧され、オンの状態となるように構成されている。このようにして、プッシュスイッチＳＷ２に収納部１０ａに収納されたメカニカルキー１０が接触して操作されることで、当該メカニカルキー１０の収納の有無が的確に検知される（キー収納有無検出ステップ）。そして、該プッシュスイッチＳＷ２は、前記ＣＰＵ１ｃに電気的に接続され、そのオン・オフ状態の情報が入力されるようになっている。以上のようにして、本実施形態の携帯機１では、収納部１０ａへのメカニカルキー１０の収納の有無がＣＰＵ１ｃによって認識されるようになっている。
【００３３】
前記インピーダンス整合回路１ｍは、前記ＣＰＵ１ｃから制御信号が入力されて制御され、前記送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間のインピーダンスＺを補正し、携帯機１と車両側制御装置２ｃとの間での無線信号の送受信状態を適正化する。
【００３４】
詳しくは、該インピーダンス整合回路１ｍは、図２（ａ）及び図２（ｂ）に示すように、前記したＬＣ回路網に加え、さらにアンテナ１ａ（インピーダンスＺａ）と、前記コンデンサＣ１との間に接続され、一端が接地された開閉スイッチＳＷの他端と直列接続されたインダクタＬ２を備えている。この開閉スイッチＳＷは、前記ＣＰＵ１ｃによって開閉制御されるようになっている。
【００３５】
そして、前記メカニカルキー１０が収納部１０ａに収納されていない状態では、前記プッシュスイッチＳＷ２はオフ状態となっており、図２（ａ）を参照して、前記開閉スイッチＳＷはＣＰＵ１ｃにより制御されて開（オフ）状態になっている。この状態では、インダクタＬ１とコンデンサＣ１とが接続されてなる前記ＬＣ回路網により、送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間のインピーダンスＺの調整が行われ、送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間で最も効率のよい電力の伝送が行われる。即ち、前記送受信切替回路１ｅ（図１（ａ）参照）が切り替えられることで送信回路１ｓが使用され、アンテナ１ａより無線信号が送信される場合では、送信回路１ｓから出力される信号が、その強度レベルを低下させずに最も効率よく当該アンテナ１ａまで伝送されるようにする。また、前記送受信切替回路１ｅが切り替えられることで受信回路１ｒが使用され、アンテナ１ａより無線信号を受信する場合では、該受信した信号が、その強度レベルを低下させずに最も効率よく受信回路１ｒまで伝送されるようにする。
【００３６】
一方、前記メカニカルキー１０が収納部１０ａに収納され、アンテナ１ａのインピーダンスＺａが、該収納に起因するコンデンサＣ２の分だけ変化すると、該収納が前記プッシュスイッチＳＷ２がオン状態となることで検知される。そして、図２（ｂ）を参照して、前記開閉スイッチＳＷはＣＰＵ１ｃにより制御されて閉（オン）状態となる。そしてこの状態では、コンデンサＣ２とインダクタＬ２とが並列接続されて並列共振するようになり、当該並列接続部位のインピーダンスが開放レベルまで高められるため、前述した図２（ａ）に示す状態と同様、前記ＬＣ回路網により送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間のインピーダンスＺの調整が行われる（インピーダンス補正ステップ）。この結果、送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間のインピーダンスＺが補正され、即ち、コンデンサＣ２の発生がキャンセルされ、送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間で最も効率のよい電力の伝送が行われる。
【００３７】
尚、図２（ｂ）の状態では、車両２に設けられた車両側制御装置２ｃ（図１（ａ）参照）との間での通信に使用される無線信号の周波数は前述のとおりｆ［Ｈｚ］であるので、下式（１）の関係が成立する。
【００３８】
ｆ＝１／{２π・√（Ｌ２・Ｃ２）}［Ｈｚ］・・・（１）
ここで、式（１）をＬ２について解くと、下式（２）のようになる。
Ｌ２＝（１／Ｃ２）・（１／２πｆ）２［Ｆ］・・・（２）
上式（２）によって、コンデンサＣ２の静電容量Ｃ２［Ｆ］は実測により既知であるので、本実施形態においてインピーダンス整合回路１ｍに配設すべきインダクタＬ２の誘導係数Ｌ２［Ｈ］が求められる。
【００３９】
本実施形態の携帯機１によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
（１）プッシュスイッチＳＷ２によりメカニカルキー１０の収納部１０ａへの収納を検知し、インピーダンス整合回路１ｍ及びＣＰＵ１ｃにより当該収納時に変化するアンテナと送受信回路１ｓ，１ｒとの間のインピーダンスＺを補正することで、携帯機１による無線信号の送受信状態を高いレベルで維持することができるようになる。そしてこれにより、携帯機１の設計上の自由度が高められ、サイズの小型化やデザインの特殊化等の多様な仕様に柔軟に対応できる携帯機１が開発できるようになる。
【００４０】
（２）インピーダンス整合回路１ｍにおいて、アンテナ１ａに対してインダクタＬ２を並列接続させ、メカニカルキー１０の収納時に変化するアンテナ１ａの静電容量を補正するようにした。このため、メカニカルキー１０の収納時にアンテナ１ａのインピーダンスＺａの成分としての静電容量が変化する場合に、アンテナ１ａと送受信回路１ｓ，１ｒとの間のインピーダンスＺを確実に適正化することができるようになる。
【００４１】
＜第２実施形態＞
本実施形態の携帯機１は、上記第１実施形態の携帯機１と同様な構成及び機能を備えており、以下に特に示す場合を除き、共通する箇所には同一又は対応する符号を付す等してその説明を省略する。
【００４２】
本実施形態の携帯機１では、第１実施形態の携帯機１と同様、前記メカニカルキー１０を収納部１０ａに収納することで見かけ上変化するアンテナ１ａのインピーダンスＺａを補正し、送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間で最も効率のよい電力の伝送が行われるようにする。詳しくは、前記メカニカルキー１０を収納部１０ａに収納することで変化するアンテナ１ａのインダクタンス成分（誘導係数）を補正し、送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間で最も効率のよい電力の伝送が行われるようにする。
【００４３】
このため、前記インピーダンス整合回路１ｎは、図３（ａ）及び図３（ｂ）に示すように、前記したＬＣ回路網に加え、さらにアンテナ１ａ（インピーダンスＺａ）と、前記コンデンサＣ１との間に両端が接続され、開閉スイッチＳＷと並列接続されたコンデンサＣ２´を備えている。この開閉スイッチＳＷは、前記ＣＰＵ１ｃによって開閉制御されるようになっている。
【００４４】
そして、前記メカニカルキー１０が収納部１０ａに収納されていない状態では、前記プッシュスイッチＳＷ２はオン状態となっており、図３（ａ）を参照して、前記開閉スイッチＳＷはＣＰＵ１ｃにより制御されて閉（オン）状態になっている。この状態では、コンデンサＣ２´は開閉スイッチＳＷにより短絡されており、インダクタＬ１とコンデンサＣ１とが接続されてなる前記ＬＣ回路網によって、送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間のインピーダンスＺの調整が行われ、送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間で最も効率のよい電力の伝送が行われる。即ち、前記送受信切替回路１ｅ（図１（ａ）参照）が切り替えられることで送信回路１ｓが使用され、アンテナ１ａより無線信号が送信される場合では、送信回路１ｓから出力される信号が、その強度レベルを低下させずに最も効率よく当該アンテナ１ａまで伝送されるようにする。また、前記送受信切替回路１ｅが切り替えられることで受信回路１ｒが使用され、アンテナ１ａより無線信号を受信する場合では、該受信した信号が、その強度レベルを低下させずに最も効率よく受信回路１ｒまで伝送されるようにする。
【００４５】
一方、前記メカニカルキー１０が収納部１０ａに収納され、アンテナ１ａのインピーダンスＺａが、該収納に起因するインダクタＬ２´の分だけ変化すると、該収納が前記プッシュスイッチＳＷ２により検知され、図３（ｂ）を参照して、前記開閉スイッチＳＷはＣＰＵ１ｃにより制御されて開（オフ）状態となる。そしてこの状態では、コンデンサＣ２´とインダクタＬ２´とが直列接続されて直列共振するようになり、当該直列接続部位のインピーダンスが短絡レベルまで低下するため、前述した図３（ａ）に示す状態と同様、前記ＬＣ回路網により送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間のインピーダンスＺの調整が行われる（インピーダンス補正ステップ）。この結果、送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間のインピーダンスＺが補正され、即ち、インダクタＬ２´の発生がキャンセルされ、送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間で最も効率のよい電力の伝送が行われる。
【００４６】
尚、図３（ｂ）の状態では、車両２に設けられた車両側制御装置２ｃ（図１（ａ）参照）との間での通信に使用される無線信号の周波数は前述のとおりｆ［Ｈｚ］であるので、下式（１１）の関係が成立する。
【００４７】
ｆ＝１／{２π・√（Ｌ２´・Ｃ２´）}［Ｈｚ］・・・（１１）
ここで、式（１１）をＣ２´について解くと、下式（１２）のようになる。
Ｃ２´＝（１／Ｌ２´）・（１／２πｆ）２［Ｆ］・・・（１２）
上式（１２）によって、インダクタＬ２´の誘導係数Ｌ２´［Ｈ］は実測により既知であるので、本実施形態においてインピーダンス整合回路１ｎに配設すべきコンデンサＣ２´の静電容量Ｃ２´［Ｆ］が求められる。
【００４８】
本実施形態の携帯機１によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
（３）プッシュスイッチＳＷ２によりメカニカルキー１０の収納部１０ａへの収納を検知し、インピーダンス整合回路１ｎ及びＣＰＵ１ｃにより当該収納時に変化するアンテナと送受信回路１ｓ，１ｒとの間のインピーダンスＺを補正することで、携帯機１による無線信号の送受信状態を高いレベルで維持することができるようになる。そしてこれにより、携帯機１の設計上の自由度が高められ、サイズの小型化やデザインの特殊化等の多様な仕様に柔軟に対応できる携帯機１が開発できるようになる。
【００４９】
（４）インピーダンス整合回路１ｎにおいて、アンテナ１ａに対してコンデンサＣ２´を直列接続させ、メカニカルキー１０の収納時に変化するアンテナ１ａのインダクタンスを補正するようにした。このため、メカニカルキー１０の収納時にアンテナ１ａのインピーダンスＺａの成分としてのインダクタンスが変化する場合に、アンテナ１ａと送受信回路１ｓ，１ｒとの間のインピーダンスＺを確実に適正化することができるようになる。
【００５０】
尚、上記各実施形態は以下のように変形してもよい。
・上記各実施形態では、送信回路１ｓと受信回路１ｒとで一つのアンテナ１ａ及びインピーダンス整合回路１ｍ（１ｎ）を共用するようにしたが、本発明の技術的思想はこれに限られず、送信回路１ｓと受信回路１ｒとでそれぞれ専用のアンテナを使用し、これに伴いインピーダンス整合回路１ｍ（１ｎ）も各々独立したものとすることができる。
【００５１】
・上記各実施形態では、非常用のメカニカルキー１０はケース１ｂから完全に分離可能に構成したが、本発明の技術的思想には、非常用のメカニカルキー１０をケース１ｂと一体的に構成したもの、例えば、同メカニカルキー１０がケース１ｂに設けられた収納部に対し、同ケース１ｂの一部に設けた支軸を中心に回転可能に収納されるものも含まれる。
【００５２】
・上記各実施形態では、携帯機１の収納部１０ａへのメカニカルキー１０の収納の有無を検出するキー収納有無検出手段としてプッシュスイッチＳＷ２を用いたが、該キー収納有無検出手段としては、その他の機械式スイッチを用いることもできる。さらに、機械式スイッチ以外に、例えば、磁気スイッチを使用することもできる。さらにまた、このようなスイッチに代えて各種のセンサを用いることも可能である。
【００５３】
・上記各実施形態では、キー収納有無検出手段としてプッシュスイッチＳＷ２を、携帯機１の収納部１０ａの一箇所（底部）のみに配設した。しかしこれに限られず、当該プッシュスイッチＳＷ２を、該収納部１０ａに沿う２箇所以上の複数箇所に配設し、該各プッシュスイッチＳＷ２，…のオン・オフ状態に基づき、メカニカルキー１０の収納の有無に加え、前記収納部１０ａに対するメカニカルキー１０の収納深さを検知するようにすることも可能である。このため、メカニカルキー１０の収納の有無のみならず、メカニカルキー１０が収納部１０ａの中途に挿入されている状態で無線通信が行われる場合を含め、当該メカニカルキー１０の収納部における収納深さに応じて変化しうる送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間のインピーダンスＺの補正を行うことが可能となる。また、一の仕様の携帯機１に複数長さのメカニカルキー１０を共用することが可能となり、携帯機１の設計上の自由度が向上するようにもなる。
【００５４】
・上記各実施形態では、送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間に接続したインピーダンス整合回路１ｍ（１ｎ）を使用し、メカニカルキー１０を収納することにより変化する当該インピーダンスＺを補正することで、無線信号の送受信状態の悪化を抑制するようにした。しかしこれに限られず、該インピーダンスＺの補正に加え、メカニカルキー１０の収納時に送信効率自体の低下が起こる場合、即ち、アンテナ１ａにおいて無線信号の送信に寄与する電力（電圧）が低下する場合や、受信効率自体の低下が起こる場合、即ち、アンテナ１ａから供給され、受信回路１ｒにおいて検出される無線信号の強度レベル（電力、電圧）が低下する場合において、ＣＰＵ１ｃにより送受信回路１ｓ，１ｒを制御し、それらアンテナ１ａの送受信効率の低下を補償することも可能である。これにより、アンテナ１ａと送受信回路１ｓ，１ｒとの間のインピーダンスＺを補正するだけでは対処できない送受信特性の低下を抑制し、携帯機１による無線信号の送受信状態をより広い範囲で適正化することができるようになる。
【００５５】
・上記各実施形態では、送受信回路１ｓ，１ｒとアンテナ１ａとの間に接続したインピーダンス整合回路１ｍ（１ｎ）を使用し、メカニカルキー１０を収納することにより変化する当該インピーダンスＺを補正することで、無線信号の送受信状態の悪化を抑制するようにした。しかしこれに限られず、メカニカルキー１０の収納時に変化する無線信号の指向性が変化し、これによって携帯機１と車両２との間での無線信号の送受信状態が悪化する場合において、例えば、異なる指向特性を有する２つのアンテナと、該各アンテナを切り替えるアンテナ切替手段としてのアンテナ切替回路とを携帯機１に具備させるとともに、ＣＰＵ１ｃによりメカニカルキー１０の収納の有無に応じて当該アンテナ切替回路を制御して前記各アンテナを切り替えさせ、これによりメカニカルキー１０の収納時に変化する無線信号の指向性を補正するようにしてもよい。これにより、アンテナ１ａのインピーダンスや送受信効率に加え、さらに指向性を含めた無線信号の送受信状態を適正化することができる。
【図面の簡単な説明】
【００５６】
【図１】（ａ）は、本発明の各実施形態に係る携帯機及び車両において、相互の無線通信に使用される電気的構成を示すブロック図、（ｂ）は、同携帯機の構成図。
【図２】（ａ）は、本発明の第１実施形態に係る携帯機において、メカニカルキーの非収納時のインピーダンス整合回路の整合状態を示すブロック図、（ｂ）は、同携帯機において、メカニカルキーの収納時のインピーダンス整合回路の状態を示すブロック図。
【図３】（ａ）は、本発明の第２実施形態に係る携帯機において、メカニカルキーの非収納時のインピーダンス整合回路の整合状態を示すブロック図、（ｂ）は、同携帯機において、メカニカルキーの収納時のインピーダンス整合回路の状態を示すブロック図。
【図４】従来例に係る携帯機及び車両において、相互の無線通信に使用される電気的構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【００５７】
１（１´）…携帯機、１ａ…（携帯機側）アンテナ、１ｃ…ＣＰＵ（携帯機側制御装置）、１ｍ，１ｎ…インピーダンス整合回路、１ｓ…送信回路、１ｒ…受信回路、１０…メカニカルキー、１０ａ…収納部、２…車両、ＳＷ２…プッシュスイッチ、Ｚａ…（アンテナ１ａの）インピーダンス。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
車両搭載装置の無線通信制御に使用され、アンテナを介して無線信号を送信する送信回路又は受信する受信回路を有するとともに非常用のメカニカルキーを収納部に取り出し可能に収納した携帯機であって、
前記収納部への前記メカニカルキーの収納の有無を検出するキー収納有無検出手段と、
前記アンテナと送信回路又は受信回路との間のインピーダンスを調整するインピーダンス調整手段と、
前記キー収納有無検出手段に電気的に接続され、前記メカニカルキーの収納の有無に応じて前記インピーダンス調整手段を制御し、前記アンテナと送信回路又は受信回路との間のインピーダンスを補正する携帯機側制御手段とを備えたことを特徴とする携帯機。
【請求項２】
請求項１に記載の携帯機において、
前記キー収納有無検出手段が、前記収納部に配設され、前記メカニカルキーの接触・非接触によりオン・オフ状態となるプッシュスイッチにより構成されている携帯機。
【請求項３】
請求項２に記載の携帯機において、
前記プッシュスイッチが、当該収納部に沿う複数箇所に配設され、
前記各プッシュスイッチのオン・オフ状態に基づいて、前記メカニカルキーの収納の有無、及び、前記収納部に対するメカニカルキーの収納深さを検知するようにした携帯機。
【請求項４】
請求項１〜請求項３のいずれか一項に記載の携帯機において、
前記インピーダンス調整手段により、前記アンテナに対してインダクタを並列接続させ、前記メカニカルキーの収納時に変化する前記アンテナの静電容量を補正するか、又は、
前記アンテナに対してコンデンサを直列接続させ、前記メカニカルキーの収納時に変化する前記アンテナのインダクタンスを補正するようにした携帯機。
【請求項５】
請求項１〜請求項４のいずれか一項に記載の携帯機において、
前記携帯機側制御手段が、前記送信回路又は受信回路を制御し、前記メカニカルキーの収納時に低下する前記アンテナの送受信効率を補償するようにした携帯機。
【請求項６】
請求項１〜請求項５のいずれか一項に記載の携帯機において、
異なる指向特性を有する少なくとも２つのアンテナと、
前記各アンテナを切り替えるアンテナ切替手段とを備え、
前記携帯機側制御手段が、前記メカニカルキーの収納の有無に応じて前記アンテナ切替手段を制御し、前記各アンテナを切り替えることで前記メカニカルキーの収納時に変化する前記無線信号の指向性を補正するようにした携帯機。
【請求項７】
車両搭載装置の無線通信制御に使用され、アンテナを介して無線信号を送信する送信回路又は受信する受信回路を有するとともに非常用のメカニカルキーを取り出し可能に収納した携帯機において、前記アンテナと送信回路又は受信回路との間のインピーダンスを補正するために用いるインピーダンス補正方法であって、
前記メカニカルキーの収納の有無を検出するキー収納有無検出ステップと、
前記メカニカルキーの収納の有無に応じて、前記アンテナと送信回路又は受信回路との間のインピーダンスを補正するインピーダンス補正ステップとを備えたことを特徴とするインピーダンス補正方法。
【請求項１】
車両搭載装置の無線通信制御に使用され、アンテナを介して無線信号を送信する送信回路又は受信する受信回路を有するとともに非常用のメカニカルキーを収納部に取り出し可能に収納した携帯機であって、
前記収納部への前記メカニカルキーの収納の有無を検出するキー収納有無検出手段と、
前記アンテナと送信回路又は受信回路との間のインピーダンスを調整するインピーダンス調整手段と、
前記キー収納有無検出手段に電気的に接続され、前記メカニカルキーの収納の有無に応じて前記インピーダンス調整手段を制御し、前記アンテナと送信回路又は受信回路との間のインピーダンスを補正する携帯機側制御手段とを備えたことを特徴とする携帯機。
【請求項２】
請求項１に記載の携帯機において、
前記キー収納有無検出手段が、前記収納部に配設され、前記メカニカルキーの接触・非接触によりオン・オフ状態となるプッシュスイッチにより構成されている携帯機。
【請求項３】
請求項２に記載の携帯機において、
前記プッシュスイッチが、当該収納部に沿う複数箇所に配設され、
前記各プッシュスイッチのオン・オフ状態に基づいて、前記メカニカルキーの収納の有無、及び、前記収納部に対するメカニカルキーの収納深さを検知するようにした携帯機。
【請求項４】
請求項１〜請求項３のいずれか一項に記載の携帯機において、
前記インピーダンス調整手段により、前記アンテナに対してインダクタを並列接続させ、前記メカニカルキーの収納時に変化する前記アンテナの静電容量を補正するか、又は、
前記アンテナに対してコンデンサを直列接続させ、前記メカニカルキーの収納時に変化する前記アンテナのインダクタンスを補正するようにした携帯機。
【請求項５】
請求項１〜請求項４のいずれか一項に記載の携帯機において、
前記携帯機側制御手段が、前記送信回路又は受信回路を制御し、前記メカニカルキーの収納時に低下する前記アンテナの送受信効率を補償するようにした携帯機。
【請求項６】
請求項１〜請求項５のいずれか一項に記載の携帯機において、
異なる指向特性を有する少なくとも２つのアンテナと、
前記各アンテナを切り替えるアンテナ切替手段とを備え、
前記携帯機側制御手段が、前記メカニカルキーの収納の有無に応じて前記アンテナ切替手段を制御し、前記各アンテナを切り替えることで前記メカニカルキーの収納時に変化する前記無線信号の指向性を補正するようにした携帯機。
【請求項７】
車両搭載装置の無線通信制御に使用され、アンテナを介して無線信号を送信する送信回路又は受信する受信回路を有するとともに非常用のメカニカルキーを取り出し可能に収納した携帯機において、前記アンテナと送信回路又は受信回路との間のインピーダンスを補正するために用いるインピーダンス補正方法であって、
前記メカニカルキーの収納の有無を検出するキー収納有無検出ステップと、
前記メカニカルキーの収納の有無に応じて、前記アンテナと送信回路又は受信回路との間のインピーダンスを補正するインピーダンス補正ステップとを備えたことを特徴とするインピーダンス補正方法。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図２】
【図３】
【図４】
【公開番号】特開２００９−１７７６４２（Ｐ２００９−１７７６４２Ａ）
【公開日】平成２１年８月６日（２００９．８．６）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−１５６０６（Ｐ２００８−１５６０６）
【出願日】平成２０年１月２５日（２００８．１．２５）
【出願人】（０００００３５５１）株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２１年８月６日（２００９．８．６）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年１月２５日（２００８．１．２５）
【出願人】（０００００３５５１）株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Ｆターム（参考）】
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