説明

携帯機器

【課題】複数のキーが設けられた携帯機器において、キー部分の局所的な温度上昇を抑える。
【解決手段】携帯機器としてのPDAは、基板20と、基板20の第1の主表面S1に設けられた発熱性の半導体素子30と、基板20の第2の主表面S2に設けられた複数のスイッチ22と、基板20の第2の主表面S2側に位置するキーマット40と、基板20の第2の主表面S2と対向するキーマット40の一方の主表面から複数のスイッチ22のそれぞれに向けて突出する複数の突起部42と、キーマット40の他方の主表面側に位置し、キーマット40に対して押下げ可能なキー16と、キーマット40およびキー16よりも高熱伝導性の材料からなり、スイッチ22とキー16の押下げ操作面16aとの間に設けられ、基板20の第2の主表面S2の面方向に広がる放熱体60と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人用携帯情報端末(PDA)、デジタルスチルカメラ(DSC)、デジタルビデオカメラ(DVC)、電子辞書、ノートパソコンなどの携帯機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯情報端末(PDA)などの携帯機器には、その筐体表面に複数のキーが設けられ、このキーを押下することで、携帯機器の操作を行うことができるようになっている。
【0003】
このようなキーの構造に関して、次のような構造が開示されている(特許文献1参照)。すなわち、中央スイッチとその周囲に配設された複数の周囲スイッチに対向して配置される一体的構成のボタンキーであって、このボタンキーの中央部分の押下操作によって中央スイッチを作動させ、周辺部分の押下操作によって周辺スイッチを作動させる構成である。このような構成において、ボタンキーから各スイッチに対応して突設された複数の押圧突起部のうち、周囲の押圧突起部に対して、中央の押圧突起部の高さを若干高く形成している。これにより、ボタンキーの中央部分を押下した際に中央スイッチのみを作動させ、周囲の押圧突起部が対応する周囲スイッチを作動させないようにしている。
【特許文献1】特開2001−312944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、これらの携帯機器には、携帯機器を動作させるためのCPUなどの半導体素子が搭載されている。この半導体素子は、携帯機器の動作中に熱を発するものが多い。発熱性の半導体素子から発せられた熱は、基板上のスイッチからスイッチに対向配置された押圧突起部を介してキー側に伝わる。これにより、特に発熱源となる半導体素子に近いキー部分が局所的に高温になる。そのため当該キーの操作により、ユーザは手あるいは指に汗をかくこととなり、ユーザに不快感を与えるおそれがあった。
【0005】
また、携帯機器のユーザが把持する部分にキーが配設されている場合には、携帯機器本体とユーザの手との間に汗が介在して携帯機器のグリップ性が低下し、携帯機器の操作性が低下してしまうおそれがあった。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数のキーが設けられた携帯機器において、キー部分の局所的な温度上昇を抑える技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は携帯機器である。この携帯機器は、基板と、基板の第1の主表面に設けられた発熱性の半導体素子と、基板の第2の主表面に設けられ、押圧により接点を接続させる複数のスイッチと、基板の第2の主表面側に位置し、弾性部材からなるキーマットと、基板の第2の主表面と対向するキーマットの一方の主表面から複数のスイッチのそれぞれに向けて突出する複数の突起部と、キーマットの他方の主表面側に位置し、キーマットに対して押下げ可能なキーと、キーマットおよびキーよりも高熱伝導性の材料からなり、スイッチとキーの押下げ操作面との間に設けられ、基板の第2の主表面の面方向に広がる放熱体と、を備える。
【0008】
この態様によれば、半導体素子から発せられ、基板から突起部を介してキーマットに伝導された熱は、キー側よりも放熱体側により多く伝導され、放熱体内を通って周囲に分散される。そのため、半導体素子に近いキー部分の局所的な温度上昇を抑えることができる。
【0009】
本発明の他の態様もまた、携帯機器である。この携帯機器は、基板と、基板の第1の主表面側に設けられた発熱体としての電源と、基板の第2の主表面に設けられ、押圧により接点を接続させる複数のスイッチと、基板の第2の主表面側に位置し、弾性部材からなるキーマットと、基板の第2の主表面と対向するキーマットの一方の主表面から複数のスイッチのそれぞれに向けて突出する複数の突起部と、キーマットの他方の主表面側に位置し、キーマットに対して押下げ可能なキーと、キーマットおよびキーよりも高熱伝導性の材料からなり、スイッチとキーの押下げ操作面との間に設けられ、基板の第2の主表面の面方向に広がる放熱体と、を備える。
【0010】
この態様によれば、半導体素子から発せられ、基板から突起部を介してキーマットに伝導された熱は、キー側よりも放熱体側により多く伝導され、放熱体内を通って周囲に分散される。そのため、半導体素子に近いキー部分の局所的な温度上昇を抑えることができる。
【0011】
上記態様において、放熱体は、キーマットの他方の主表面側に設けられていてもよい。
【0012】
また、上記態様において、放熱体は、キーマットの一方の主表面側に設けられていてもよい。
【0013】
また、上記態様において、放熱体は、キーマットに埋設されていてもよい。
【0014】
また、上記態様において、放熱体は、キーマットに対してキーを支持していてもよい。 また、上記態様において、放熱体は、突起部に対応する位置に貫通孔を有していてもよい。
【0015】
また、上記態様において、キーは、複数のキーからなるテンキーであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数のキーが設けられた携帯機器において、キー部分の局所的な温度上昇を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0018】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る携帯機器としての個人用携帯情報端末(PDA)10の外観構成を示す模式図である。なお、本実施形態では携帯機器としてPDAを例に示すが、たとえば、デジタルスチルカメラ(DSC)、デジタルビデオカメラ(DVC)、電子辞書、ノートパソコンといった携帯機器であってもよい。
【0019】
図1に示すように、PDA10は、表示部12と操作部14とをヒンジ部11で連結した構造を備え、表示部12と操作部14とがヒンジ部11を介して回動可能に形成されている。表示部12には液晶ディスプレイ(LCD)などからなる表示パネル13が設けられている。操作部14には、PDA10の各種の動作の実行を指示したり、文字などを入力するための複数のキー16が配列されている。
【0020】
図2は、図1に示すPDA10のA−A線分で切断した概略部分断面図である。
【0021】
図2に示すように、PDA10の操作部14の筐体15内には、第1の主表面S1に発熱性の半導体素子30が設けられた基板20が配置されている。基板20の第1の主表面S1と反対側の第2の主表面S2には、押圧により接点を接続させる複数のスイッチ22が設けられている。基板20の第2の主表面S2側には弾性部材からなるキーマット40が配置されている。基板20の第2の主表面S2と対向するキーマット40の一方の主表面には、複数のスイッチ22のそれぞれに向けて突出する複数の突起部42が設けられ、キーマット40の他方の主表面にはキーマット40に対して押下げ可能な複数のキー16が設けられている。キー16は、筐体15に穿設された貫通孔15aから筐体15外に露出している。スイッチ22とキー16の押下げ操作面16a(図中の上面)との間には、基板20の第2の主表面S2の面方向に広がる放熱体60が設けられている。また、基板20の第1の主表面S1側には、電源としてのバッテリ70が配置されている。
【0022】
基板20の第1の主表面S1に設けられた発熱性の半導体素子30としては、たとえばPDA10の動作制御を行うCPU、その他のプロセッサ、LCDコントローラなどが挙げられる。
【0023】
基板20の第2の主表面S2に設けられた複数のスイッチ22は、いわゆるメタルドームスイッチ(皿バネ式スイッチ)であり、接点電極(図示せず)上にメタルドーム(皿バネ)が設けられた構成である。キー16の押下げ操作にともなう後述の突起部42の下方向への移動によりメタルドームが押圧されると、メタルドームは接点電極側に弾性変形し、接点電極に接触する。接点電極へのメタルドームの接触離間により、スイッチ22のオン/オフ操作が行われる。なお、スイッチ22の構成は特にこれに限定されず、いわゆるメンブレンスイッチなどであってもよい。
【0024】
基板20の第2の主表面S2側には、キーマット40が配置されている。キーマット40は、シリコンゴムなどの弾性部材からなる。キーマット40の図中下面側には、複数のスイッチ22のそれぞれに向けて突出する複数の突起部42が一体的に設けらている。また、キーマット40の図中上面側には複数の突起部42のそれぞれに対応する、キーマット40に対して押下げ可能な複数のキー16が設けられている。キー16は、たとえばプラスチック、ゴムなどの樹脂材料からなり、たとえば接着剤によりキーマット40に固着される。キー16の配設方法としては特にこれに限定されず、図3に示すように、キー16とキーマット40とが一体成形された形状であってもよい。この場合、キー16およびキーマット40とは、たとえばポリカーボネートを用いて形成されてもよい。
【0025】
キー16が押下されると、キーマット40は弾性変形してたわみ、これにより突起部42が下方向(基板20側方向)に移動する。突起部42の移動によってメタルドームが押圧されて接点電極側に弾性変形し、これによりスイッチ22がオンされる。また、キー16の押下が解除されると、キーマット40は弾性で原状復帰する。またこれによりスイッチ22のメタルドームの押圧も解除され、メタルドームは自身の弾性で原状復帰し、スイッチ22はオフされる。
【0026】
放熱体60は、スイッチ22とキー16の押下げ操作面16aとの間に設けられている。放熱体60が設けられることで、キーマット40に伝導された熱はキー16側よりも放熱体60側により多く伝導させることができる。本実施形態では、放熱体60は、キーマット40の基板20と反対側の主表面側、すなわちキーマット40と筐体15との間に、基板20の第2の主表面S2の面方向に広がるように設けられている。放熱体60の形状あるいは設けられる範囲については、図4(A)〜(C)に示すものが例として挙げられる。図4(A)〜(C)は、放熱体60の配置を説明するための模式平面図である。図4(A)に示すように、たとえば放熱体60は井形状であり、キーマット40上のキー16が設けられていない領域に延在している。あるいは図4(B)に示すように、放熱体60は突起部42に対応する位置に突起部42の形状に対応する貫通孔を有しており、キーマット40のほぼ全面に設けられている。あるいはまた図4(C)に示すように、放熱体60は突起部42に対応する位置に、キー16の押し下げ操作面16aに印字された文字の形状に対応する貫通孔を有しており、キーマット40のほぼ全面に設けられている。PDA10には、基板20に設けられたLEDなどの光源(図示せず)から照射された光によってキー16の押下げ操作面16aを光らせる構成を備えたものがあるが、この場合には、上述のように突起部42とキー16との同軸上に放熱体60を設けないことで、基板20側からキー16への光の照射を妨げないようにすることができる。
【0027】
あるいは放熱体60は、基板20の面方向における発熱性の半導体素子30からの距離が所定範囲内にある領域に設けてもよい。ここで、半導体素子30からの距離とは、たとえば半導体素子30の中心点からの距離、あるいは温度が最も高くなるホットスポットからの距離である。またここで、所定範囲とは、放熱体60を設けなかった場合に、半導体素子30から発せられた熱が突起部42を介してキー16に伝導されて、キー16が所定温度以上、たとえばキー16の操作時などにキー16に手、指あるいは頬などの皮膚に触れて熱いと感じる温度以上となる範囲である。この温度は、たとえば6時間接触した状態で低温火傷が発生するおそれのある温度である約45℃、あるいは1時間接触した状態で低温火傷が発生するおそれのある温度である約47℃、あるいは1分間接触した状態で低温火傷が発生するおそれのある温度である約50℃、あるいは1秒間接触した状態で低温火傷が発生するおそれのある温度である約70℃以上である。あるいは所定範囲とは、たとえば基板20の面方向における半導体素子30、チップ、配線層、封止層、接続電極などを含むパッケージの存在する範囲である。あるいは、半導体素子30からの距離が近いスイッチほど、半導体素子30から伝導される熱量が大きくなるため、放熱体60を、基板20の面方向における半導体素子30からの距離が最短の突起部42と、この突起部42に隣接する突起部42との間に設けてもよい。またここで、発熱性の半導体素子30としては、上述のようにCPUや、LCDコントローラなど複数存在する場合があるが、その場合には、最も高熱を発する半導体素子30に対して、上述の構成をとるようにしてもよい。本実施形態のPDAの場合、最も高熱を発する半導体素子はCPUである。
【0028】
放熱体60は、キーマット40およびキー16よりも高熱伝導性の材料からなり、たとえば熱伝導率の高い銅などからなる。放熱体60は、たとえば銅箔を接着剤でキーマット40側あるいは筐体15側に固着することで設けることができる。または、キーマット40あるいは筐体15に無電解めっき法により銅めっき層として設けることができる。または、銅ペーストの塗布により設けることもできる。放熱体60の厚さは、0.1mm程度である。さらに放熱体60は、金属の細線が編み込まれたメッシュ状であってもよく、あるいはパンチングなどにより肉抜きされていてもよい。これにより、放熱体60が設けられたことによる携帯機器の重量化を軽減することができる。携帯機器の重量化の軽減という観点から、放熱体60がメッシュ状である場合には、金属の細線が粗く編み込まれていることが好ましい。
【0029】
図5および図6は、複数のキー16がキーシート17であり、キーシート17が筐体の一部を構成する構造を示す概略部分断面図であり、図7は、複数のキー16が筐体の一部を構成する場合の構造を示す概略部分断面図である。図5〜7においては、筐体15およびバッテリ70を省略している。
【0030】
図5に示すように、複数のキー16が一体的に形成されたシート形状のキーシート17の場合であっても、放熱体60をキーマット40とキーシート17との間に設けることができる。また、図6に示すように、キーシート17の放熱体配置領域に凹部を設け、当該凹部内に放熱体60を配置する構造であってもよく、これによれば、放熱体60が設けられたことによる携帯機器の大型化(厚型化)を軽減することができる。また、図7に示すように複数のキー16それぞれの間隔が密となっていて、複数のキー16が筐体の一部を構成する場合であっても、放熱体60をキーマット40とキー16との間に設けることができる。
【0031】
このように、本実施形態では、キーマット40と筐体15との間に、キーマット40およびキー16よりも高熱伝導性の材料からなる放熱体60を設けている。したがって、半導体素子30から発せられ、基板20から突起部42を介してキーマット40に伝導された熱は、キー16側よりも放熱体60側により多く伝導される。そして、放熱体60は基板20の第2の主表面S2の面方向に広がるように設けられているため、放熱体60に伝導された熱は、放熱体60内を通って周囲に分散される。これにより、キー16部分、特に半導体素子30に近いキー16部分の局所的な温度上昇を抑えることができる。また、これによりキー操作によるユーザの手、あるいは指における発汗が抑えられ、ユーザがより快適に携帯機器を操作することができるようになる。さらには携帯機器のグリップ性の低下も抑制され、携帯機器の操作性が向上する。
【0032】
なお、図5および図7に示す構造において、放熱体60はキーマット40に対してキーシート17あるいはキー16を支持している。その結果、キーマット40とキー16あるいはキーシート17との間における、突起部42に対応する領域には、空間が設けられている。当該空間が設けられたことによって、基板20から突起部42を介してキーマット40に伝導された熱は直線的にキー16あるいはキーシート17に伝導されず、周囲の放熱体60に迂回してキー16あるいはキーシート17により伝導されることとなる。そのため、半導体素子30に近いキー16あるいはキーシート17部分の局所的な温度上昇をさらに抑えることができる。
【0033】
(実施形態2)
上述した実施形態1では、キーマット40と筐体15との間に放熱体60を設けたが、以下に示すような構成としてもよい。
【0034】
図8および図9は、本実施形態に係る携帯機器の概略部分断面図である。本実施形態に係る携帯機器は、図1に示すPDA10と同一であり、図8および図9は、図1に示すA−A線分と同じ位置で切断した断面を示し、筐体15およびバッテリ70を省略している。
【0035】
図8および図9に示すように、放熱体60は、基板20の第2の主表面S2と対向するキーマット40の主表面側、すなわち基板20とキーマット40との間に、基板20の第2の主表面S2の面方向に広がるように設けられている。
【0036】
このように、本実施形態では、基板20とキーマット40との間に、キーマット40およびキー16よりも高熱伝導性の材料からなる放熱体60を設けている。したがって、半導体素子30から発せられ、基板20から突起部42を介してキーマット40に伝導された熱は、キー16側よりも放熱体60側により多く伝導される。そして、放熱体60は基板20の第2の主表面S2の面方向に広がるように設けられているため、放熱体60に伝導された熱は、放熱体60内を通って周囲に分散される。これにより、半導体素子30に近いキー16部分の局所的な温度上昇を抑えることができる。また、これによりキー操作によるユーザの手、あるいは指における発汗が抑えられ、ユーザがより快適に携帯機器を操作することができるようになる。さらには携帯機器のグリップ性の低下も抑制され、携帯機器の操作性が向上する。
【0037】
(実施形態3)
上述した実施形態1では、キーマット40と筐体15との間に放熱体60を設け、実施形態2では、基板20とキーマット40との間に放熱体60を設けたが、以下に示すような構成としてもよい。
【0038】
図10は、本実施形態に係る携帯機器の概略部分断面図である。本実施形態に係る携帯機器は、図1に示すPDA10と同一であり、図10は、図1に示すA−A線分と同じ位置で切断した断面であり、背面側の筐体15およびバッテリ70を省略している。
【0039】
図10に示すように、放熱体60は、キーマット40内に埋設され、基板20の第2の主表面S2の面方向に広がるように設けられている。なお、キー16の形状は、図10に示すものではなく、キーシート17であってもよい。
【0040】
このように、本実施形態では、キーマット40内に、キーマット40およびキー16よりも高熱伝導性の材料からなる放熱体60を設けている。したがって、半導体素子30から発せられ、基板20から突起部42を介してキーマット40に伝導された熱は、キー16側よりも放熱体60側にさらにより多く伝導される。そして、放熱体60は基板20の第2の主表面S2の面方向に広がるように設けられているため、放熱体60に伝導された熱は、放熱体60内を通って周囲に分散される。これにより、半導体素子30に近いキー16部分の局所的な温度上昇を抑えることができる。また、これによりキー操作によるユーザの手、あるいは指における発汗が抑えられ、ユーザがより快適に携帯機器を操作することができるようになる。さらには携帯機器のグリップ性の低下も抑制され、携帯機器の操作性が向上する。
【0041】
(実施形態4)
上述の各実施形態では、携帯機器としてPDA10を例に説明したが、本実施形態では、携帯電話機を例に説明する。
【0042】
図11は、本実施形態に係る携帯機器としての携帯電話機100の外観構成を示す模式図である。
【0043】
図11に示すように、携帯電話機100は、表示部102と操作部104とをヒンジ部101で連結した構造を備え、表示部102と操作部104とはヒンジ部101を介して回動可能に形成されている。表示部102には文字や画像等の情報を表示する表示パネル103や、スピーカ部106が設けられている。操作部104には、携帯電話機100の各種の動作の実行を指示したり文字などを入力するための複数のキー16や、マイク部108が設けられている。
【0044】
図12は、本実施形態に係る携帯電話機100の操作部104の主要構成部分の分解斜視図である。
【0045】
図12に示すように、ベースとなる基板20の第2の主表面S2に、押圧により接点を接続させる複数のスイッチ22が設けられている。また基板20の第2の主表面S2側には弾性部材からなるキーマット40が配置されている。基板20の第2の主表面S2と対向するキーマット40の一方の主表面(図中下側)には、複数のスイッチ22のそれぞれに向けて突出する複数の突起部(図示せず)が設けられ、キーマット40の他方の主表面(図中上側)にはキーマット40に対して押下げ可能な複数のキー16が設けられている。また、基板20における第2の主表面S2の反対側には、半導体素子およびバッテリ(図示せず)が配置されている。
【0046】
本実施形態に係る携帯電話機100についても、上述の各実施形態の構成を適用することが可能であり、図2、3および5〜10は、図11に示す携帯電話機100のB−B線分で切断した概略部分断面図に相当する。携帯電話機100における発熱性の半導体素子30としては、たとえば増幅器(パワーアンプ)、MSM(Mobile Station Modem)(登録商標)などが挙げられる。
【0047】
ここで、ユーザが携帯電話機100で通話する場合、ユーザはスピーカ部106を耳に、マイク部108を口に当てた状態で通話する。このとき、操作部104に設けられた複数のキー16、特にテンキー16b部分が、ユーザの頬やその周辺部に当接した状態となる。一方、携帯電話機100を用いた通話は数時間に及ぶ場合もある。そのため、操作部104内に配置された半導体素子からの熱でテンキー16bが局所的に高温になった場合は、高温になったテンキー16bがユーザの頬やその周辺部に当接した状態が長時間続き、ユーザの頬やその周辺部に、いわゆる低温火傷の症状が現れるおそれがある。
【0048】
しかしながら、本実施形態に係る携帯電話機100に、上述の各実施形態の構成を適用することで、半導体素子からの熱は周囲に分散され、テンキー16bの局所的な温度上昇を抑えることができる。そのため、上述の各実施形態における効果に加えて、携帯電話機100の安全性が向上するという効果が得られる。
【0049】
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうるものである。
【0050】
たとえば、上述の各実施形態に示される構成は、図13に示すデジタルスチルカメラ、図14に示すデジタルビデオカメラ、図15に示す非折りたたみ型の電子辞書、電子手帳などの携帯機器にも適用可能である。図2、3および5〜10は、各図に示すC−C線分で切断した概略部分断面図に相当する。デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラにおける発熱性の半導体素子30としては、たとえば動作制御を行うCPU、電源ユニット、CCD、CCD駆動回路などが挙げられる。また、電子辞書や電子手帳における発熱性の半導体素子30としては、たとえば動作制御を行うCPU、その他のプロセッサ、LCDコントローラなどが挙げられる。なお、半導体素子30はこれら以外のものであってもよい。デジタルスチルカメラおよびデジタルビデオカメラ、電子辞書および電子手帳に搭載される発熱性の半導体素子のうち、最も高熱を発する半導体素子は、CPUである。
【0051】
また、上述の各実施形態では、発熱体として半導体素子を例に説明したが、たとえば電源としてのバッテリも発熱体となり得る。図16に示すように、バッテリ70が基板20の第1の主表面S1側に配置される構成において、バッテリ70は、複数のスペーサ71を介して基板20に設けられている。この場合、バッテリ70から発せられた熱は、スペーサ71を介して基板20側に伝導されるが、上述の各実施形態の構成を適用することで、バッテリ70からの熱は周囲に分散され、キー16部分の局所的な温度上昇を抑えることができる。また、これによりキー操作によるユーザの手あるいは指における発汗が抑えられ、ユーザがより快適に携帯機器を操作することができるようになる。さらには携帯機器のグリップ性の低下も抑制され、携帯機器の操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施形態1に係る個人用携帯情報端末(PDA)の外観構成を示す模式図である。
【図2】図1に示すPDA10のA−A線分で切断した概略部分断面図である。
【図3】キーとキーマットとが一体成形された形状を示す概略部分断面図である。
【図4】放熱体の配置を説明するための模式平面図である。
【図5】キーシートが筐体の一部を構成する構造を示す概略部分断面図である。
【図6】キーシートが筐体の一部を構成する構造を示す概略部分断面図である。
【図7】複数のキーが筐体の一部を構成する場合の構造を示す概略部分断面図である。
【図8】実施形態2に係る携帯機器の概略部分断面図である。
【図9】携帯機器の概略部分断面図である。
【図10】実施形態3に係る携帯機器の概略部分断面図である。
【図11】実施形態4に係る携帯電話機の外観構成を示す模式図である。
【図12】携帯電話機の操作部の主要構成部分の分解斜視図である。
【図13】デジタルスチルカメラの外観構成を示す模式図である。
【図14】デジタルビデオカメラの外観構成を示す模式図である。
【図15】非折りたたみ型の電子辞書や電子手帳などの携帯機器の外観構成を示す模式図である。
【図16】バッテリが基板の第1の主表面側に配置された構成を示す概略部分断面図である。
【符号の説明】
【0053】
10 PDA、 11 ヒンジ部、 12 表示部、 14 操作部、 15 筐体、 15a 貫通孔、 16 キー、 16a 操作面、 16b テンキー、 17 キーシート、 20 基板、 22 スイッチ、 30 半導体素子、 40 キーマット、 42 突起部、 60 放熱体、 70 バッテリ、 71 スペーサ、 100 携帯電話機、 101 ヒンジ部、 102 表示部、 104 操作部、 106 スピーカ部、 108 マイク部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の第1の主表面に設けられた発熱性の半導体素子と、
前記基板の第2の主表面に設けられ、押圧により接点を接続させる複数のスイッチと、
前記基板の前記第2の主表面側に位置し、弾性部材からなるキーマットと、
前記基板の前記第2の主表面と対向する前記キーマットの一方の主表面から前記複数のスイッチのそれぞれに向けて突出する複数の突起部と、
前記キーマットの他方の主表面側に位置し、前記キーマットに対して押下げ可能なキーと、
前記キーマットおよび前記キーよりも高熱伝導性の材料からなり、前記スイッチと前記キーの押下げ操作面との間に設けられ、前記基板の前記第2の主表面の面方向に広がる放熱体と、
を備えたことを特徴とする携帯機器。
【請求項2】
基板と、
前記基板の第1の主表面側に設けられた発熱体としての電源と、
前記基板の第2の主表面に設けられ、押圧により接点を接続させる複数のスイッチと、
前記基板の前記第2の主表面側に位置し、弾性部材からなるキーマットと、
前記基板の前記第2の主表面と対向する前記キーマットの一方の主表面から前記複数のスイッチのそれぞれに向けて突出する複数の突起部と、
前記キーマットの他方の主表面側に位置し、前記キーマットに対して押下げ可能なキーと、
前記キーマットおよび前記キーよりも高熱伝導性の材料からなり、前記スイッチと前記キーの押下げ操作面との間に設けられ、前記基板の前記第2の主表面の面方向に広がる放熱体と、
を備えたことを特徴とする携帯機器。
【請求項3】
前記放熱体は、前記キーマットの前記他方の主表面側に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の携帯機器。
【請求項4】
前記放熱体は、前記キーマットの前記一方の主表面側に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の携帯機器。
【請求項5】
前記放熱体は、前記キーマットに埋設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の携帯機器。
【請求項6】
前記放熱体は、前記キーマットに対して前記キーを支持していることを特徴とする請求項3に記載の携帯機器。
【請求項7】
前記放熱体は、前記突起部に対応する位置に貫通孔を有していることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の携帯機器。
【請求項8】
前記キーは、複数のキーからなるテンキーであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の携帯機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−110890(P2009−110890A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284594(P2007−284594)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】