説明

摺動機構及び撮像装置

【課題】 摺動部材と抜止部材とを連結する治具が必要無く、連結作業のばらつきによる摺動部材の板状部材の厚さ方向のガタ付きが発生せず、摺動部材と抜止部材との連結を解除することが可能な摺動機構又は撮像装置の提供。
【解決手段】 摺動部材3の係止爪33と、抜止部材7の被係止部とを係止して摺動部材3と抜止部材7とを連結するようにした。また、摺動部材3の一端側と他端側との形状を異ならせた。また、板状部材5に設けられた溝部内に摺動部材3を配し、摺動部材3は、溝部の側壁部と対向する面に凸部34を備えるようにした。溝部の端部の縁にリブを設けるようにした。溝部の端部と摺動部材3の端部とを同様の形状にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、略矩形の貫通孔が形成された板状部材の一面側に配された摺動部材と、板状部材の他面側に配され、貫通孔を通じて摺動部材に連結してある抜止部材とを備える摺動機構、及びこの摺動機構を備える撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ(デジタルビデオカメラを含む)又はカメラ(デジタルカメラを含む)等の撮像装置は、遠くの被写体を大きく撮像できるズーム機能を備えるものがあり、該ズーム機能の操作部に摺動機構を適用した撮像装置が従来からある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図7は従来の操作部の平面図であり、図8は図7のVIII−VIII線による断面図である。
【0004】
図において80は操作部(摺動部材,ズーム操作部材)であり、操作部80は、矩形の板状をなす基部82を備えている。基部82の一面には、滑り止めの凹凸が形成された指当接部88が長手方向の略中央に凸設され、基部82の他面には、角柱状をなす連結部83が凸設してある。操作部80は、撮像装置のハウジングを構成する板状部材9の一面(外面)側に設けられた溝部90の長手方向の中央部に配され、操作部80の連結部83は、溝部90の底部に形成されて溝部90の長手方向に長い矩形の貫通孔91を挿通している。溝部90は長手方向の両端部が半円形状をしており、操作部80は溝部90の長手方向の一側又は他側へ摺動することが可能に構成されている。
【0005】
板状部材9の他面(内面)側には、コイルスプリング84が貫通孔91の近傍で貫通孔91の長手方向と略平行に配されている。コイルスプリング84の両端部は、貫通孔91の長手方向と略平行な直線上に位置するように、板状部材9の他面に所定の間隔を有して設けられた2つの突条92,92の互いに対向する端部に夫々当接している(図8には一方の端部及び突条92を図示)。
【0006】
コイルスプリング84は、矩形の板状をなす抜止部材81に一体形成された箱部85内に導入され、コイルスプリング84の両端部夫々に対向する箱部85の壁86,86には、突条92,92に対応した切欠きが設けてある(図8には一方の壁86を図示)。
【0007】
抜止部材81には、操作部80の連結部83に対応した嵌合孔87が設けてあり、嵌合孔87には、連結部83が嵌め合わされ、抜止部材81と連結部83とが溶着されている。該溶着により操作部80と抜止部材81とが連結され、抜止部材81により操作部80が溝部90内で長手方向へ摺動可能に保持された構成となっている。
【0008】
このような構成により、ズーム機能を操作するために、操作部80を溝部90の中央部から長手方向の一側(又は他側)へ摺動させた場合、抜止部材81が連動し、コイルスプリング84の一端部側にある突条92(又は他端部側にある突条92)と、コイルスプリング84の他端部に対向する箱部85の壁86(又は一端部に対向する箱部85の壁86)との間でコイルスプリング84が圧縮される。操作部80を摺動させるために加えた力を除けば、コイルスプリング84の付勢力が箱部85の壁86を介して操作部80に作用し、操作部80が溝部90の中央部まで後退する。
【特許文献1】特開平10−200844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図7及び図8で示した従来の摺動機構は、操作部80と抜止部材81との連結を、嵌合孔87に連結部83を嵌め合わせて溶着することにより行うから、溶着治具及び受け治具が必要であり、コストが高いという問題があった。
【0010】
また、溶着時の連結作業のばらつきにより、操作部80に板状部材9の厚さ方向のガタ付きが発生する場合があるという問題があった。
【0011】
また、操作部80の連結部83と抜止部材81とを溶着した後、例えば、操作部80に傷が付いて外観不良が発生した場合、操作部80のみを交換することが非常に困難であるという問題があった。
【0012】
また、操作部80は、基部82の長手方向の一端側と他端側とを反対にして組付けることが可能であるが、操作部80の一端側に広角側を示すWの文字を刻印すると共に、他端側に望遠側を示すTの文字を刻印した場合に、操作部80の一端側と他端側とを反対にして組付けたときには、操作部80の表示と撮像装置の動作とがアンマッチになるという問題があった。
【0013】
さらに、操作部80の摺動方向の端部と、溝部90の長手方向の端部とが同様の形状にされていないため、操作部80を摺動した場合に、基部82の角部が溝部90の端部の半円形状の部分に当接し、操作部80が溝部90の端までストロークしないという問題があった。
【0014】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、摺動部材と抜止部材とを係止によって連結することが可能な構成にすることにより、摺動部材と抜止部材とを連結するための治具が必要無く、連結作業のばらつきにより摺動部材に板状部材の厚さ方向のガタ付きが発生せず、摺動部材と抜止部材とを連結した後も、摺動部材と抜止部材との係止を解除して摺動部材を容易に交換することが可能な摺動機構又は撮像装置を提供することを目的とする。
【0015】
また本発明は、摺動部材の一端側と他端側との形状を異ならせることにより、摺動部材の組付け間違いを目視によって容易に発見することが可能な摺動機構又は撮像装置を提供することを目的とする。
【0016】
また本発明は、溝部の側壁部と摺動部材との隙間が狭くなるように構成することにより、摺動部材と抜止部材とを係止によって連結することが可能な構成にした場合に、溝部の側壁部の方へ押圧する力が摺動部材に加えられたときでも、摺動部材の倒れ角度が小さく、摺動部材と抜止部材との係止が解除されない摺動機構又は撮像装置を提供することを目的とする。
【0017】
また本発明は、摺動部材と板状部材との間に針状物を差込み難く構成することにより、摺動部材と抜止部材とを係止によって連結することが可能な構成にした場合に、例えば、幼児が悪戯で摺動部材と板状部材との間に針状物を差込もうとしたときでも差込むことができず、摺動部材と抜止部材との係止が解除されない摺動機構又は撮像装置を提供することを目的とする。
【0018】
さらに本発明は、溝部の長手方向の端部と、摺動部材の摺動方向の端部とを同様の形状にすることにより、摺動部材のストローク長さを溝部内で最大にすることが可能な摺動機構又は撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る摺動機構は、略矩形の貫通孔が形成された板状部材の一面側に配され、前記貫通孔に摺動可能に取付けてある摺動部材と、前記板状部材の他面側に配され、前記貫通孔を通じて前記摺動部材に連結してある抜止部材とを備え、前記摺動部材を前記貫通孔の長手方向の中央部に向けて付勢するように構成してある摺動機構において、前記摺動部材は、前記貫通孔の長手方向の一端側と他端側との形状を異ならせてあり、しかも前記貫通孔を挿通する係止爪を備え、前記抜止部材は、前記係止爪に係止される被係止部を備えることを特徴とする。
【0020】
本発明においては、貫通孔を挿通する摺動部材の係止爪と、抜止部材が備える被係止部とを係止することにより、板状部材の一面側に配された摺動部材と、板状部材の他面側に配された抜止部材とが連結される。この連結は、手作業にて行うことができ、摺動部材と抜止部材とを連結するための治具が不要である。また、摺動部材の板状部材の厚さ方向のガタ付きの発生は、摺動部材及び抜止部材の寸法精度に依存し、連結作業のばらつきに依存しない。さらに、係止爪と被係止部との係止を解除した場合には、摺動部材と抜止部材との連結が解除される。また、本発明においては、摺動部材は貫通孔の長手方向の一端側と他端側との形状を異ならせてある構成としてあり、摺動部材の一端側と他端側とを反対にして組付けた場合は、摺動部材を反対にして組付けたことを目視で識別することができる。
【0021】
本発明に係る摺動機構においては、前記貫通孔は、前記板状部材の前記一面側に形成された溝部の底部に、長手方向が前記溝部の長手方向と略同一になるように形成してあり、前記摺動部材は、前記溝部に収容され、溝部の側壁部に対向する面に凸部を備えることを特徴とする。
【0022】
本発明においては、摺動部材は、溝部の側壁部に対向する面に凸部を備える構成としてあり、溝部の側壁部と摺動部材との隙間が狭くなり、摺動部材が溝部の側壁部の方へ押圧された場合でも、摺動部材の倒れ角度が小さくなる。
【0023】
本発明に係る摺動機構は、略矩形の貫通孔が形成された板状部材の一面側に配され、前記貫通孔に摺動可能に取付けてある摺動部材と、前記板状部材の他面側に配され、前記貫通孔を通じて前記摺動部材に連結してある抜止部材とを備え、前記摺動部材を前記貫通孔の長手方向の中央部に向けて付勢するように構成してある摺動機構において、前記貫通孔は、前記板状部材の前記一面側に形成された溝部の底部に、長手方向が前記溝部の長手方向と略同一になるように形成してあり、前記摺動部材は、前記溝部に収容され、溝部の側壁部に対向する面に設けてある凸部と前記貫通孔を挿通する係止爪とを備え、前記抜止部材は、前記係止爪に係止される被係止部を備えることを特徴とする。
【0024】
本発明においては、貫通孔を挿通する摺動部材の係止爪と、抜止部材の被係止部とを係止して摺動部材と抜止部材とを連結した構成としてあり、係止爪と被係止部との係止が手作業にて行え、治具が不要となる。また、摺動部材と抜止部材との連結作業のばらつきに起因した摺動部材の板状部材の厚さ方向のガタ付きが発生しない。さらに、係止爪と被係止部との係止を解除して摺動部材と抜止部材との連結を解除することができる。また、本発明においては、摺動部材は、溝部の側壁部に対向する面に凸部を備える構成としてあり、摺動部材が溝部の側壁部の方へ押圧された場合でも、摺動部材の倒れ角度が小さくなる。
【0025】
本発明に係る摺動機構においては、前記溝部の長手方向の端部の縁にリブを設けてあることを特徴とする。
【0026】
本発明においては、溝部の長手方向の端部の縁にリブを設けてある構成としてあり、例えば、幼児が悪戯で摺動部材と溝部の底部との間に針状物を差込もうとした場合でも、針状物がリブに当接して溝部の底部に対する針状物の角度が起き上がり、摺動部材と溝部の底部との間に針状物を差込むことができない。
【0027】
本発明に係る摺動機構においては、前記溝部の長手方向の端部と、前記摺動部材の摺動方向の端部とは、同様の形状にしてあることを特徴とする。
【0028】
本発明においては、溝部の長手方向の端部と、摺動部材の摺動方向の端部とを同様の形状にした構成としてあり、摺動部材を溝部の端まで摺動させることができる。
【0029】
本発明に係る撮像装置は、撮像に関する操作部を備える撮像装置において、前記発明の何れか一つに記載の摺動機構を備え、該摺動機構の前記摺動部材を前記操作部としてあることを特徴とする。
【0030】
本発明においては、前述した本発明に係る摺動機構を何れか一つ備え、該摺動機構の摺動部材を操作部とした構成としてあり、操作部の連結に治具が不要である。また、連結作業に依存した操作部の板状部材の厚さ方向のガタ付きが発生せず、操作部と抜止部材との連結の解除も行える。
【0031】
本発明に係る撮像装置は、略矩形の貫通孔が形成されたハウジングの外面側に配され、前記貫通孔に摺動可能に取付けてあるズーム操作部材と、前記ハウジングの内面側に配され、前記貫通孔を通じて前記ズーム操作部材に連結してある抜止部材とを備え、前記ズーム操作部材を前記貫通孔の長手方向の中央部に向けて付勢するように構成してある撮像装置において、前記ズーム操作部材は、前記貫通孔を挿通する係止爪を備え、前記抜止部材は、前記係止爪に係止される被係止部を備えることを特徴とする。
【0032】
本発明においては、貫通孔を挿通するズーム操作部材の係止爪と、抜止部材の被係止部とを係止してズーム操作部材と抜止部材とを連結した構成としてあり、係止爪と被係止部との係止が手作業にて行え、治具が不要となる。また、ズーム操作部材と抜止部材との連結作業のばらつきに起因したズーム操作部材のハウジングの厚さ方向のガタ付きが発生しない。さらに、係止爪と被係止部との係止を解除してズーム操作部材と抜止部材との連結を解除することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る摺動機構においては、摺動部材は、貫通孔を挿通する係止爪を備え、抜止部材は、係止爪に係止される被係止部を備えたから、係止爪と被係止部とを手作業で係止して摺動部材と抜止部材とを連結することができる。従って、摺動部材と抜止部材との連結の為の治具が必要なくなってコストが低くなり、連結作業のばらつきに起因した摺動部材の板状部材の厚さ方向のガタ付きが発生せず、摺動部材と抜止部材とを連結した後も、係止爪と被係止部との連結を解除して摺動部材を容易に交換することができる。
【0034】
また、本発明に係る摺動機構においては、摺動部材は、貫通孔の長手方向の一端側と他端側との形状を異ならせたから、摺動部材の一端側と他端側とを反対にして組付けたか否かを目視によって識別することができ、摺動部材の組付け間違いを容易に発見することができる。
【0035】
また、本発明に係る摺動機構においては、摺動部材は、溝部の側壁部に対向する面に凸部を備えるから、溝部の側壁部と摺動部材との隙間が狭く、摺動部材が溝部の側壁部の方へ押圧された場合でも、摺動部材の倒れ角度が小さく、係止爪と被係止部との係止が解除されることがない。
【0036】
また、本発明に係る摺動機構においては、溝部の長手方向の端部の縁にリブを設けてあるから、例えば、幼児が悪戯で摺動部材と溝部の底部との間に針状物を差込もうとした場合に、針状物がリブに当接して針状物の角度が起き上がり、摺動部材と溝部の底部との間に針状物を差込むことができない。従って、例えば、幼児の悪戯による針状物を差込んでの係止爪と被係止部との係止の解除を防止することができる。
【0037】
また、本発明に係る摺動機構においては、溝部の長手方向の端部と、摺動部材の摺動方向の端部とは、同様の形状にしてあるから、摺動部材を溝部の端まで摺動させることができ、摺動部材のストローク長さを溝部内で最大にすることができる。
【0038】
また、本発明に係る撮像装置においては、前述した本発明に係る摺動機構を何れか一つ備え、該摺動機構の摺動部材を操作部としてあるから、操作部に関するコストを抑制することができ、操作部と抜止部材との連結作業のばらつきに起因した操作部の板状部材の厚さ方向のガタ付きが発生せず、操作部と抜止部材とを連結した後も、操作部と抜止部材との連結を解除して操作部を容易に交換することができる。
【0039】
さらに、本発明に係る撮像装置においては、ズーム操作部材は、貫通孔を挿通する係止爪を備え、抜止部材は、係止爪に係止される被係止部を備えたから、係止爪と被係止部とを手作業で係止してズーム操作部材と抜止部材とを連結することができる。従って、ズーム操作部材と抜止部材との連結の為の治具が必要なくなってコストが低くなり、連結作業のばらつきに起因したズーム操作部材のハウジングの厚さ方向のガタ付きが発生せず、ズーム操作部材と抜止部材とを連結した後も、係止爪と被係止部との連結を解除してズーム操作部材を容易に交換することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は、本発明に係る撮像装置であるビデオカメラの斜視図である。
【0041】
図において1はビデオカメラ(撮像装置)であり、ビデオカメラ1は、矩形をなして適宜の厚みとされ、撮像用のレンズ群22を有する撮像部2を備えている。撮像部2の一面側には、撮像部2に対して開閉可能に構成された液晶モニタ20が設けられ、撮像部2の他面側には、撮像部2に対応した形状及び大きさを有し、撮像部2の厚みより薄く構成された把持部21が並設されている。把持部21は、撮像部2の他面の中央部を回転中心として所定の角度内で回転することが可能に構成されており、該構成により、低く構えた撮像から高く構えた撮像まで把持部21を持ち替えずに行えるようにしてある。また、把持部21には、ズーム機能を操作する操作部(摺動部材,ズーム操作部材)3が設けられており、操作部3には、本発明に係る摺動機構が適用されている。
【0042】
図2は操作部3の近傍の平面図であり、図3は本発明に係る摺動機構の構成部品を把持部21のハウジングの内部側から見た分解斜視図である。
【0043】
操作部3は、合成樹脂により形成され、矩形の板状をなす基部30を備えている。基部30の一面には、滑り止めの凹凸が形成された指当接部31が長手方向の一側へ偏倚した位置にて凸設してある。また、基部30の一端部35の一面側には、望遠側を示すTの文字が刻印してあり、他端部36の一面側には、広角側を示すWの文字が刻印してある。基部30の他面の中央部には、角柱状をなして可撓性を有する腕部の先端に掛止部が設けられた2つの係止爪33,33が、基部30の長手方向に略直交する方向へ所定の間隔を隔てて並設してあり、前記掛止部は、腕部から互いに離反する方向へ突出している。
【0044】
このような操作部3は、前述した把持部21のハウジングを構成する板状部材5の一面(外面)53側に設けられた溝部50の長手方向の中央部に、長手方向を合わせると共に、基部30の他面が溝部50の底部58に当接するように配される。溝部50の底部58には、長手方向を溝部50の長手方向と略同一にし、長手方向の中央部59を溝部50の中央部と略同一にした矩形をなす2つの貫通孔51,51が係止爪33,33に対応して並設してある。
【0045】
板状部材5の他面(内面)57側には、コイルスプリング6が貫通孔51,51の間で溝部50の長手方向と略平行に配されている。コイルスプリング6の両端部は、溝部50の長手方向と略平行な直線上に位置するように所定の間隔を有して板状部材5の他面57に設けられた2つの突条52,52の互いに対向する端部に夫々当接してあり、突条52,52の幅寸法は、コイルスプリング6の外径寸法より小さくしてある。
【0046】
コイルスプリング6は、板状をなす抜止部材7の中央部に設けられた箱部70内に導入され、コイルスプリング6の両端部夫々に対向する箱部70の壁71,71には、突条52,52に対応した切欠きが設けてある。箱部70の両側夫々には、操作部3の係止爪33,33に対応した位置に嵌合孔72,72が設けてあり、嵌合孔72,72の中途には段差(被係止部)73,73が設けてある(図4参照)。抜止部材7には、溝部50の長手方向に略直交する方向へ突出する係止突起74が設けてあり、係止突起74は、ズーム倍率を変更する変更手段、例えば、レンズ群22の一部のレンズを移動させるモータ81に繋がる操作スイッチ8の操作レバー80に係止される。
【0047】
図4は、操作部3と抜止部材7との組付手順の説明図である。
【0048】
以上の構成により、係止爪33,33が板状部材5の貫通孔51,51を挿通するように操作部3を溝部50の長手方向の中央部に配し、係止爪33,33が抜止部材7の嵌合孔72,72に嵌合するように、しかも板状部材5の突条52,52に挾持されたコイルスプリング6が抜止部材7の箱部70内に導入されるように抜止部材7を板状部材5の他面57に当接することにより、操作部3と抜止部材7との組付けが行われる。この組付けにより、係止爪33,33が嵌合孔72,72の中途に設けてある段差73,73に係止して操作部3と抜止部材7とが連結され、操作部3が溝部50の長手方向の一側又は他側へ摺動することが可能に保持される。
【0049】
このように摺動することが可能に保持された操作部3を溝部50の長手方向の中央部から長手方向の一側へ摺動させた場合、抜止部材7が同方向へ連動する。抜止部材7が連動することにより、コイルスプリング6の一端部側にある突条52と、コイルスプリング6の他端部に対向する箱部70の壁71との間でコイルスプリング6が圧縮される。操作部3を溝部50の長手方向の中央部から長手方向の他側へ摺動させた場合も、抜止部材7が同方向へ連動し、コイルスプリング6の他端部側にある突条52と、コイルスプリング6の一端部に対向する箱部70の壁71との間でコイルスプリング6が圧縮される。このとき、抜止部材7は、操作スイッチ8の操作レバー80を操作しており、該操作によりモータ81が駆動されてズーム倍率が変更される。
【0050】
操作部3を溝部50の長手方向の一側又は他側へ摺動させるために加えた力を除けば、コイルスプリング6の付勢力が箱部70の壁71に作用して抜止部材7及び操作部3を溝部50の長手方向の中央部(貫通孔51,51の長手方向の中央部59)まで後退させる。このとき、抜止部材7の後退に応じて操作スイッチ8の操作レバー80が中立位置に戻され、モータ81が停止し、ズーム倍率の変更が停止する。
【0051】
本発明に係る摺動機構は、操作部3が係止爪33,33を備え、抜止部材7が段差73,73を備え、係止爪33,33と段差73,73との係止により操作部3と抜止部材7とを連結する構成としたから、操作部3の係止爪33,33を抜止部材7の嵌合孔72,72に嵌め合わせることで、係止爪33,33と段差73,73とが係止し、操作部3と抜止部材7とが連結される。この連結は手作業にて行えるから、操作部3と抜止部材7とを連結するための治具が必要無く、本発明に係る摺動機構を低コストで構成することができる。
【0052】
また、本発明に係る摺動機構は、係止爪33,33の腕部を撓ませて係止爪33,33と段差73,73との係止を解除することにより、操作部3と抜止部材7とを分離することができるから、例えば、操作部3に傷が付いて外観不良になった場合に、板状部材5及び抜止部材7を無駄にすることなく、操作部3のみを交換することができる。
【0053】
さらに、本発明に係る摺動機構は、係止爪33,33と段差73,73との係止により操作部3と抜止部材7とが連結されるから、操作部3の板状部材5の厚さ方向のガタ付きの有無は、係止爪33,33及び段差73,73の寸法精度に左右され、連結作業に関係するばらつきに左右されない。従って、操作部3及び抜止部材7の寸法管理により、操作部3の板状部材5の厚さ方向のガタ付きの有無を管理することができるから、ガタ付き防止の管理が行い易い。
【0054】
さらにまた、本発明に係る摺動機構は、操作部3の基部30の一面に凸設した指当接部31を長手方向の一側へ偏倚してあるから、操作部3は、長手方向の一端側と他端側との形状が異なり、操作部3の一端部35と他端部36とを反対にして組付けた場合に、組付け間違いを目視によって容易に発見することができる。
【0055】
ところで、本発明に係る摺動機構は、その他にも特徴的な構成を備え、前述した効果以外にも優れた効果を奏する。
【0056】
例えば、操作部3は、溝部50の側壁部54,54に対向する面に凸部34,34を備える(図3、図4参照)。このような構成により、図4(b)に示したように、側壁部54,54と操作部3との隙間Sが狭くなるから、操作部3が一方の側壁部54に向けて押圧された場合でも、操作部3の倒れ角度が小さく、係止爪33,33と段差73,73との係止が解除されることがない。
【0057】
また、本発明に係る摺動機構は、図5に示したように、溝部50の長手方向の端部55,55の縁夫々にリブ56,56を設けてある。このような構成により、例えば、幼児が悪戯で操作部3と溝部50の底部58との間に針状物Pを差込もうとした場合でも、針状物Pがリブ56,56に当接して溝部50の底部58に対する針状物Pの角度θが起き上がるから、操作部3と溝部50の底部58との間に針状物Pを差込むことができず、係止爪33,33と段差73,73との係止が解除されることがない。
【0058】
さらに、本発明に係る摺動機構は、溝部50の長手方向の端部55,55と、操作部3の摺動方向の端部35,36とを同様の形状にしてある(図2参照)。このような構成により、操作部3は、溝部50の端まで摺動することができ、溝部50内でのストローク長さを最大にすることができる。
【0059】
以上、本発明に係る摺動機構又は撮像装置を説明したが、本発明に係る摺動機構又は撮像装置は、前述した構成に限定されず、種々の変形例の適用が可能である。
【0060】
例えば、本発明に係る摺動機構は、係止爪33,33と段差73,73との係止によって操作部3と抜止部材7とを連結した構成を特徴とし、前述したその他の特徴的な構成を備えないようにしてもよい。
【0061】
また、本発明に係る摺動機構は、係止爪33,33と段差73,73との係止によって操作部3と抜止部材7とを連結した構成と、操作部3の摺動方向の一端側と他端側との形状を異ならせた構成とを特徴とし、前述したその他の特徴的な構成を備えないようにしてもよい。
【0062】
さらに、本発明に係る摺動機構は、係止爪33,33と段差73,73との係止によって操作部3と抜止部材7とを連結した構成と、操作部3が凸部34,34を有する構成とを特徴とし、前述したその他の特徴的な構成を備えないようにしてもよい。
【0063】
さらにまた、本発明に係る摺動機構は、係止爪33,33と段差73,73との係止によって操作部3と抜止部材7とを連結した構成と、操作部3の摺動方向の一端側と他端側との形状を異ならせた構成と、操作部3が凸部34,34を有する構成とを特徴とし、前述したその他の特徴的な構成を備えないようにしてもよい。
【0064】
また、本発明に係る摺動機構は、係止爪33,33と段差73,73との係止によって操作部3と抜止部材7とを連結した構成と、操作部3が凸部34,34を有する構成と、溝部50の端部55,55の縁にリブ56,56を設けてある構成とを特徴とし、前述したその他の特徴的な構成を備えないようにしてもよい。
【0065】
さらに、本発明に係る摺動機構は、係止爪33,33と段差73,73との係止によって操作部3と抜止部材7とを連結した構成と、操作部3の摺動方向の一端側と他端側との形状を異ならせた構成と、操作部3が凸部34,34を有する構成と、溝部50の端部55,55の縁にリブ56,56を設けてある構成とを特徴とし、前述したその他の特徴的な構成を備えないようにしてもよい。
【0066】
さらにまた、本発明に係る摺動機構は、係止爪33,33と段差73,73との係止によって操作部3と抜止部材7とを連結した構成と、操作部3が凸部34,34を有する構成と、溝部50の端部55,55と操作部3の端部35,36とを同様の形状にしてある構成とを特徴とし、前述したその他の特徴的な構成を備えないようにしてもよい。
【0067】
また、本発明に係る摺動機構は、係止爪33,33と段差73,73との係止によって操作部3と抜止部材7とを連結した構成と、操作部3の摺動方向の一端側と他端側との形状を異ならせた構成と、操作部3が凸部34,34を有する構成と、溝部50の端部55,55と操作部3の端部35,36とを同様の形状にしてある構成とを特徴とし、前述したその他の特徴的な構成を備えないようにしてもよい。
【0068】
さらに、本発明に係る摺動機構は、係止爪33,33と段差73,73との係止によって操作部3と抜止部材7とを連結した構成と、操作部3が凸部34,34を有する構成と、溝部50の端部55,55の縁にリブ56,56を設けてある構成と、溝部50の端部55,55と操作部3の端部35,36とを同様の形状にしてある構成とを特徴とし、前述したその他の特徴的な構成を備えないようにしてもよい。
【0069】
さらにまた、本発明に係る摺動機構は、係止爪33,33を操作部3に設け、段差73,73を抜止部材7に設けたが、係止爪33,33を抜止部材7に設け、段差73,73を操作部3に設けてもよい。
【0070】
また、本発明に係る摺動機構は、図6に示したように、突条52を1つとして該突条52をコイルスプリング6の一端部に当接すると共に、抜止部材7の箱部70の壁71をコイルスプリング6の他端部に当接し、壁71のコイルスプリング6側の反対側に設けたストッパにより、抜止部材7と操作部3とが、溝部50の長手方向の一側にのみ摺動するように構成してもよい。
【0071】
さらに、以上で説明した実施の形態では、ズーム機能を操作する操作部3に本発明に係る摺動機構を適用したが、本発明に係る摺動機構は、ズーム機能を操作する操作部3に限定されず、略矩形の貫通孔51が形成された板状部材5の一面53側に配され、貫通孔51に摺動可能に取付けてある摺動部材3と、板状部材5の他面57側に配され、貫通孔51を通じて摺動部材3に連結してある抜止部材7とを備え、摺動部材3を貫通孔51の長手方向の中央部59に向けて付勢するように構成してある摺動機構に適用することが可能である。
【0072】
さらにまた、以上で説明した実施の形態では、本発明に係る撮像装置をビデオカメラ1として説明したが、本発明に係る撮像装置は、ビデオカメラ1に限定されず、銀塩カメラ又はデジタルカメラ等を含む撮像装置に適用することが可能である。
【0073】
また、本発明に係る摺動機構又は撮像装置は、本発明の趣旨に逸脱しない範囲にて一部の構成を追加、削除又は変更することも可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係る撮像装置であるビデオカメラの斜視図である。
【図2】操作部の近傍の平面図である。
【図3】本発明に係る摺動機構の分解斜視図である。
【図4】操作部と抜止部材との組付手順の説明図である。
【図5】操作部の近傍の断面図である。
【図6】突条及び抜止部材が異なる変形例の構成を説明する説明図である。
【図7】従来の操作部の平面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線による断面図である。
【符号の説明】
【0075】
1 ビデオカメラ(撮像装置)
3 操作部(摺動部材,ズーム操作部材)
5 板状部材(ハウジング)
7 抜止部材
33 係止爪
34 凸部
35 一端部
36 他端部
50 溝部
51 貫通孔
53 一面
54 側壁部
55 端部
56 リブ
57 他面
58 底部
59 中央部
73 段差(被係止部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略矩形の貫通孔が形成された板状部材の一面側に配され、前記貫通孔に摺動可能に取付けてある摺動部材と、前記板状部材の他面側に配され、前記貫通孔を通じて前記摺動部材に連結してある抜止部材とを備え、前記摺動部材を前記貫通孔の長手方向の中央部に向けて付勢するように構成してある摺動機構において、
前記摺動部材は、前記貫通孔の長手方向の一端側と他端側との形状を異ならせてあり、しかも前記貫通孔を挿通する係止爪を備え、
前記抜止部材は、前記係止爪に係止される被係止部を備える
ことを特徴とする摺動機構。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記板状部材の前記一面側に形成された溝部の底部に、長手方向が前記溝部の長手方向と略同一になるように形成してあり、
前記摺動部材は、前記溝部に収容され、溝部の側壁部に対向する面に凸部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の摺動機構。
【請求項3】
略矩形の貫通孔が形成された板状部材の一面側に配され、前記貫通孔に摺動可能に取付けてある摺動部材と、前記板状部材の他面側に配され、前記貫通孔を通じて前記摺動部材に連結してある抜止部材とを備え、前記摺動部材を前記貫通孔の長手方向の中央部に向けて付勢するように構成してある摺動機構において、
前記貫通孔は、前記板状部材の前記一面側に形成された溝部の底部に、長手方向が前記溝部の長手方向と略同一になるように形成してあり、
前記摺動部材は、前記溝部に収容され、溝部の側壁部に対向する面に設けてある凸部と前記貫通孔を挿通する係止爪とを備え、
前記抜止部材は、前記係止爪に係止される被係止部を備える
ことを特徴とする摺動機構。
【請求項4】
前記溝部の長手方向の端部の縁にリブを設けてあることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の摺動機構。
【請求項5】
前記溝部の長手方向の端部と、前記摺動部材の摺動方向の端部とは、同様の形状にしてあることを特徴とする請求項2乃至4の何れか一つに記載の摺動機構。
【請求項6】
撮像に関する操作部を備える撮像装置において、
請求項1乃至5の何れか一つに記載の摺動機構を備え、該摺動機構の前記摺動部材を前記操作部としてあることを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
略矩形の貫通孔が形成されたハウジングの外面側に配され、前記貫通孔に摺動可能に取付けてあるズーム操作部材と、前記ハウジングの内面側に配され、前記貫通孔を通じて前記ズーム操作部材に連結してある抜止部材とを備え、前記ズーム操作部材を前記貫通孔の長手方向の中央部に向けて付勢するように構成してある撮像装置において、
前記ズーム操作部材は、前記貫通孔を挿通する係止爪を備え、
前記抜止部材は、前記係止爪に係止される被係止部を備える
ことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−12463(P2006−12463A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184139(P2004−184139)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】