説明

撮像装置

【課題】ユーザに適正な露出設定を認識しやすくするための露出ガイドの表示が可能な撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像装置は、被写体像を撮像して画像データを生成する撮像手段と、画像データに基づいて目標露出値を算出し、ユーザにより設定された第1の撮影パラメータの値に基づいて目標露出値が得られるように露出制御を行う制御手段と、表示手段とを備える。制御手段は、目標露出値を得るために第1の撮影パラメータが取り得る範囲である第1の適正範囲を算出し、さらに、目標露出値と、ユーザにより設定された第1の撮影パラメータの値とに基づいて第2の撮影パラメータの値を算出する。表示手段は、ユーザにより設定された第1の撮影パラメータの値と、第1の適正範囲を示す情報と、算出された第2の撮影パラメータの値とを含む露出ガイド情報(800)を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体を撮像して出力する撮像装置に関し、特にユーザが適切な露出設定を行うためのガイドを表示可能な撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絞りおよびシャッタスピードのいずれか一方の露出条件をユーザがその好みに応じて手動で設定することができ、他方の露出条件を、適正な露出設定を得られるように、撮像装置がユーザにより設定された露出条件に基づき自動的に設定する撮像装置がある。このような撮像装置においては、さらに露出状態を表示可能なものがあり(例えば、特許文献1参照)、それによりユーザは設定された露出状態を確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−333706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来の撮像装置では、ユーザが絞りおよびシャッタスピードの一方を決定すると、他方が撮像装置により自動的に設定されるが、そのときにユーザの露出設定値および被写体の条件によっては、露出が適切な露出範囲の範囲外になってしまう場合もある。そのような場合、ユーザは、どの程度設定を変更すれば、適正な露出設定が得られるかを知ることは困難であった。
【0005】
例えば、絞り優先モードにおいて、ユーザが絞り値をF2に設定したとする。このとき被写体の輝度が大きすぎると、シャッタスピードをその従来の撮像装置で設定可能な最も速い値にしたとしても露出オーバーとなってしまうことがある。そのようなとき、一般のユーザは絞りをどこまで絞れば適正な露出設定となるかを迅速に認識することはできず、シャッタチャンスを逃してしまう可能性があった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、ユーザが適正な露出設定を認識しやすい露出ガイドを表示可能な撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る撮像装置は、被写体像を撮像して画像データを生成する撮像手段と、画像データに基づいて目標露出値を算出し、ユーザにより設定された第1の撮影パラメータの値に基づいて目標露出値が得られるように露出制御を行う制御手段と、表示手段とを備える。制御手段は、目標露出値を得るために第1の撮影パラメータが取り得る範囲である第1の適正範囲を算出し、さらに、目標露出値と、ユーザにより設定された第1の撮影パラメータの値とに基づいて第2の撮影パラメータの値を算出する。表示手段は、ユーザにより設定された第1の撮影パラメータの値と、第1の適正範囲を示す情報と、算出された第2の撮影パラメータの値とを含む露出ガイド情報を表示する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の撮像装置によれば、絞り値やシャッタスピードに代表される、露出を決定するパラメータの設定状態を、適正露出が得られる組み合わせの範囲と共に示す露出ガイド情報を表示する。これにより、適正露出を得られないパラメータをユーザが設定した場合であっても、露出ガイド情報により、ユーザは適正露出を得るための値を認識することが容易となる。したがって、ユーザは、その情報を元に、適正な露出設定を素早く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】デジタルカメラの構成を示すブロック図
【図2】デジタルカメラにおける、露出制御から露出ガイド表示までの全体的な動作を示すフローチャート
【図3】Ev補正量を説明するための図
【図4】Ev値、Av値およびTv値の関係を示すダイアグラム
【図5】露出制御動作を示すフローチャート
【図6】デジタルカメラの撮影パラメータの設定可能範囲を説明した図
【図7】Aモードにおいて目標Ev値を得るためのAv値の設定可能範囲、およびユーザにより設定されたAv値に対応するTv値を決定する処理を示すフローチャート
【図8】Sモードにおいて目標Ev値を得るためのTv値の設定可能範囲、およびユーザにより設定されたTv値に対応するAv値を決定する処理を示すフローチャート
【図9】露出ガイドの例を示す図
【図10】Aモード(Ev=13)における露出ガイドの表示例を示す図
【図11】Sモード(Ev=13)における露出ガイドの表示例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0011】
I.実施の形態1
以下に説明する実施の形態のデジタルカメラは、ユーザが絞り値やシャッタスピードを決定する際の参考情報として、これらのパラメータの設定状況を、適正露出が得られる組み合わせの範囲と共に表示部に表示する。これにより、ユーザはひと目で適正露出を得るためのパラメータの組み合わせを認識できる。また、現在の設定では適正露出が得られない場合であったとしても、ユーザはどのくらい設定を変更すれば適正露出が得られるかを瞬時に認識することができる。以下、本実施形態のデジタルカメラの構成および動作を詳細に説明する。
【0012】
1.デジタルカメラの構成
図1は、デジタルカメラの構成を示すブロック図である。デジタルカメラ100は、光学系110を介して形成された被写体像をCCDイメージセンサ120で撮像する。CCDイメージセンサ120は、撮像した被写体像に基づく画像データを生成する。撮像により生成された画像データは前処理部(AFE:Analog Front End)121や画像処理部130において各種の画像処理が施される。画像処理された画像データはフラッシュメモリ160やメモリカード192に記録される。フラッシュメモリ160やメモリカード192に記録された画像データは、操作部180がユーザによる再生を指示する操作を受け付けたときに、表示部(LCD)等の表示部170に再生表示される。
【0013】
光学系110は、フォーカスレンズ111、ズームレンズ112、絞り113およびシャッタ114を含む。光学系110は、光学式手ぶれ補正レンズOIS(Optical Image Stabilizer)を含んでいてもよい。なお、光学系110を構成する各種レンズは何枚から構成されるものでも、何群から構成されるものでもよい。
【0014】
フォーカスレンズ111は、焦点距離の調節に用いられる。ズームレンズ112は拡大縮小倍率の調節に用いられる。絞り113は、CCDイメージセンサに入射する光量の調節に用いられる。絞り113の設定可能な絞り値の範囲はF4〜F22とする。シャッタ114は、CCDイメージセンサ120に入射する光の露出時間を調節する。シャッタ114の設定可能なシャッタスピードの範囲は、60秒〜1/4000秒とする。フォーカスレンズ111、ズームレンズ112、絞り113およびシャッタ114は、それぞれに対応したDCモータやステッピングモータ等の駆動手段(図示せず)により、コントローラ150から送信された制御信号に応じて駆動される。
【0015】
CCDイメージセンサ120は、光学系110を通して形成された被写体像を撮像して画像データを生成する。CCDイメージセンサ120は、一定時間毎(例えば、1/30秒毎)に新しいフレームの画像データを生成する。また、CCDイメージセンサ120は、電子シャッタ動作により露出光量を調節する。なお、CCDイメージセンサ120に代えて、例えばCMOSイメージセンサやNMOSイメージセンサなど、他の撮像素子を用いても良い。
【0016】
前処理部121は、CCDイメージセンサ120で生成された画像データに対して、相関二重サンプリング、ゲイン調整等の所定の処理を実行する。ゲイン調整においては、ISO感度に応じたゲインが設定される。また、前処理部121は、アナログ形式の画像データからデジタル形式の画像データへの変換を行う。その後、前処理部121は画像データを画像処理部130に出力する。
【0017】
画像処理部130は、画像データに対して各種の画像処理を施す。各種の画像処理としては、ガンマ補正、ホワイトバランス補正、YC変換処理、電子ズーム処理、圧縮処理、伸張処理等が含まれるが、これらに限定されるものではない。また、これらの処理の一部を欠いてもよい。画像処理部130は、ハードワイヤードな電子回路で構成してもよいし、これらの処理を行うためのプログラムを実行するマイクロコンピュータ等で構成してもよい。また画像処理部130はコントローラ150等と共に1つの集積回路で構成されてもよい。
【0018】
操作部180は、デジタルカメラ100の外装に備わっているボタンやレバー、ダイヤル等を含み、ユーザによる操作を受け付ける。例えば、レリーズボタンやズームレバー、モードダイヤル、コマンドダイヤル、十字ボタン、電源スイッチ等が操作部180にあたる。また、レンズ鏡筒に設けられたフォーカスリングおよびズームリング、表示部170に設けられたタッチパネルも操作部180に含まれる。操作部180はユーザによる操作を受け付けると、操作に応じた動作指示信号をコントローラ150に送信する。
【0019】
表示部170は、デジタルカメラ100の背面に備わる。表示部170は、画像処理部130にて処理された画像データに基づく画像を表示する。表示部170が表示する画像には、スルー画像や記録画像がある。表示部170は、CCDイメージセンサ120により一定時間毎に生成される画像をスルー画像として略リアルタイムで表示できる。ユーザは、表示部170に表示されるスルー画像を参照することにより、被写体の構図を確認しながら撮影できる。記録画像は、メモリカード192やフラッシュメモリ160に記録された画像である。表示部170は、ユーザの操作に応じて、メモリカード192やフラッシュメモリ160に記録された画像データに基づく画像を表示する。また表示部170は画像の他、各撮影パラメータによって決まる現在の露出状態を、設定可能な撮影パラメータの範囲と共に露出ガイドとして表示することができる。撮影パラメータには、絞り値およびシャッタスピードが含まれるが、ISO感度や露出補正値等を含んでいてもよい。表示部170は、露出ガイドをスルー画像の上に重畳して表示する。表示部170は露出ガイドの他、デジタルカメラ100の各種設定条件等を表示可能である。
【0020】
コントローラ150は、デジタルカメラ100全体の動作を統括制御する。コントローラ150は、プログラム等の情報を格納するROM(図示せず)や、プログラム等の情報を処理するCPU(図示せず)等により構成される。ROMは、フォーカス制御や露出制御に関するプログラムの他、デジタルカメラ100全体の動作を統括制御するためのプログラムを格納している。またROMは、CCDイメージセンサ120が起動した後、最初に撮像を実行するときの絞り値やシャッタスピードに関する撮像初期データ、適正露出を得るための目標輝度値に関するデータ、APEX(Additive System of Photographic Exposure )システムにおける露出値(Ev)と、絞り値(Av)と、シャッタスピード(Tv)との関係を示すダイアグラムの情報等を格納している。なお、APEXシステムにおいては、被写界輝度(Bv)、ISO感度(Sv)も含め、次式が成り立つ。
Ev=Av+Tv=Bv+Sv (1)
【0021】
コントローラ150は、表示部170にメニューを表示させるように制御可能である。ユーザは表示部170に表示されたメニューを見ながら操作部180を操作することにより各種設定を行う。コントローラ150は、ユーザがメニューにより設定した内容を取得する。
【0022】
例えば、コントローラ150は、ユーザが操作部180を操作することにより設定した撮影モードを取得する。撮影モードには、Pモード(プログラムAEモード)、Aモード(絞り優先AEモード)、Sモード(シャッタスピード優先AEモード)、Mモード(マニュアル露出モード)を含むが、他の撮影モードを含んでもよい。なお、本実施の形態では、AモードおよびSモードにおいて露出ガイドを表示部に表示するものとし、主にこの2つのモードでの動作について説明する。
【0023】
各モードにおいて、撮影パラメータは、ユーザ及び/またはコントローラ150により設定される。ユーザが設定すべき撮影パラメータは、操作部180を介してユーザにより設定され得る。その場合、ユーザ操作により設定されたパラメータを用いて、コントローラ150は残りの撮影パラメータを算出する。コントローラ150は、撮影モードに応じて撮影パラメータを設定する。例えば、Pモードでは、スルー画像の輝度値に応じてコントローラ150が絞り値およびシャッタスピード等を算出する。Aモードでは、ユーザが設定した絞り値を用い、これとスルー画像の輝度値等に応じて、コントローラ150がシャッタスピード等を算出する。Sモードでは、コントローラ150が、ユーザが設定したシャッタスピード、およびスルー画像の輝度値等に応じて、絞り値等を算出する。Mモードでは、すべての撮影パラメータをユーザが設定する。
【0024】
各モードにおいて、ISO感度は、ユーザが操作部180を操作して設定するものとする。コントローラ150は設定されたISO感度に応じて、前処理部121のゲイン制御におけるゲインを設定する。なお本実施の形態では、ISO感度はユーザが設定するものとするが、Pモード、AモードおよびSモードにおいて、コントローラ150がISO感度を制御するようにすることもできる。
【0025】
コントローラ150は、設定された各撮影パラメータに基づいて露出ガイドの画像データを生成し、表示部170に表示させる。
【0026】
コントローラ150は、ハードワイヤードな電子回路で構成してもよいし、マイクロコンピュータなどで構成してもよい。また、画像処理部130などと共に1つの集積回路として構成してもよい。また、ROMはコントローラ150の内部構成である必要はなく、コントローラ150の外部に備わったものでもよい。
【0027】
バッファメモリ140は、画像処理部130やコントローラ150のワークメモリとして機能する記憶手段である。バッファメモリ140はDRAM(Dynamic Random Access Memory)などで実現できる。
【0028】
フラッシュメモリ160は、画像データ等を記録するための内部メモリとして機能する。コントローラ150は、画像処理部130で処理される画像データをフラッシュメモリ160またはメモリカード192に記録する。
【0029】
カードスロット191は、メモリカード192を装着するための接続手段である。カードスロット191は、メモリカード192と電気的及び機械的に接続可能である。カードスロット191は、メモリカード192を制御する機能を備えてもよい。
【0030】
メモリカード192は、内部にフラッシュメモリ等の記憶素子を備えた外部メモリである。メモリカード192は、画像処理部130で処理される画像データなどのデータを記録可能である。本実施の形態では、外部メモリの一例としてメモリカードを示すが、光ディスク、HDD等の記録媒体を外部メモリとして使用してもよい。また、デジタルカメラ100の外部と通信するための通信インタフェース(無線または有線)をコントローラ150に接続し、画像データを外部に伝送するように構成してもよい。
【0031】
1−1.用語の対応
CCDイメージセンサ120は撮像手段の一例である。コントローラ150は制御手段の一例である。デジタルカメラ100は撮像装置の一例である。表示部170は表示手段の一例である。絞り値及びシャッタスピードは第1及び第2のパラメータの一例である。不適正露出領域810は不適正範囲の一例である。手振れ領域809は手振れ範囲の一例である。
【0032】
2.デジタルカメラの動作
以下、デジタルカメラ100の動作について図面を用いて説明する。
【0033】
2−1.動作フロー
最初に、デジタルカメラ100における露出制御および露出ガイド表示についての動作について説明する。以下では、ユーザが撮影モードとしてAモードおよびSモードのいずれかを選択して撮影を行うときの動作について説明する。
【0034】
図2は、撮影モードがAモードおよびSモードのうちいずれかであるときの、露出制御から露出ガイド表示までの全体的な動作を示すフローチャートである。まず、ユーザは撮影に先立って、操作部180を操作して撮影モードを設定する。操作部180が撮影モード専用のモードダイヤルまたはボタンを備えていれば、ユーザはモードダイヤルまたはボタンを操作する。専用のモードダイヤルまたはボタンがなければ、ユーザは操作部180のメニューボタンを押してメニューを表示させ、メニュー上で撮影モードを設定する。コントローラ150は、ユーザにより設定された撮影モードを示す情報を取得する(S101)。
【0035】
次に、ユーザは撮影動作としてデジタルカメラ100を被写体に向け、被写体の明るさに応じて操作部180を操作して絞り値やシャッタスピード等の撮影パラメータを設定する。具体的には、撮影モードがAモード(絞り優先AEモード)であれば、ユーザは絞り値を設定し、Sモード(シャッタスピード優先AEモード)であれば、ユーザはシャッタスピードを設定する。ユーザが特に操作をしなければ、絞り値やシャッタスピードは変更されない。コントローラ150は、ユーザにより設定された、絞り値やシャッタスピード等の撮影パラメータを示す情報を取得する(S102)。また、ユーザは必要に応じてズームやフォーカスの調整を行う。このユーザ操作に応じて、コントローラ150は適宜光学系110を制御する。
【0036】
コントローラ150は、各モードに応じて適切な露出制御を行う(S103)。具体的には、Aモード(絞り優先AEモード)では、コントローラ150は、ユーザが設定した絞り値と、スルー画像の輝度値等とに応じてシャッタスピード等を算出する。Sモード(シャッタスピード優先AEモード)では、コントローラ150は、ユーザが設定したシャッタスピードと、スルー画像の輝度値等とに応じて、絞り値等を算出する。この露出制御の動作の詳細については後述する。
【0037】
続いて、現在の絞り値およびシャッタスピードに基づいて露出ガイドの表示を行う。露出ガイドは撮影モードにより表示内容が異なる。そのため、コントローラ150は、現在設定されている撮影モードを判断する(S104)。現在の撮影モードがAモードであれば、Aモードに対する露出ガイドの表示を行う(S105)。撮影モードがSモードであれば、Sモードに対する露出ガイドの表示を行う(S106)。露出ガイドとは、適正露出を得るための、絞り値とシャッタスピードの設定値の範囲を示す表示である(図9参照)。露出ガイドを参照することで、ユーザは一目で適正露出を得るためのパラメータの範囲を認識でき、適正な露出設定を素早く行うことが可能となる。露出ガイドの詳細については後述する。
【0038】
次に、露出ガイドの表示を終了すべきか否かを判断する(S107)。終了すべきタイミングとしては、1)ユーザがレリーズボタンを押して撮影を開始したタイミング、2)ユーザが撮影モードをAモードおよびSモード以外に変更したタイミング、3)ユーザがメニューボタンを押してガイド表示を開始してから一定時間が経過したタイミング、等が含まれる。
【0039】
露出ガイドの表示を終了すべきと判断した場合(S107において“Y”)、露出ガイドの表示を終了(表示部170において非表示)し処理を終了する。一方、露出ガイドの表示を継続すべきと判断した場合(S107において“N”)、コントローラ150は、ユーザによって撮影モードが変更されたか否かを判断し(S108)、変更された場合(S108において“Y”)は、制御はS101へ戻る。一方、変更されていない場合(S108において“N”)は、制御はS102に戻る。これらの動作は、CCDイメージセンサ120が被写体を撮像して画像データを出力する期間である、1/30秒毎に行われる。
【0040】
2−2.露出制御動作
2−2−1.露出制御動作全体のフロー
デジタルカメラ100の露出制御動作について、図3、図4および図5を用いて説明する。図3は、目標輝度値と現在の輝度値との差分ΔYに対して決定されるEv補正量を説明するための図である。横軸にΔY、縦軸にEv補正量をとっている。図4は、APEXシステムにおけるEv値、Av値およびTv値の関係を示すダイアグラムである。横軸にTv値、縦軸にAv値をとっている。同図ではTv値と実際のシャッタスピード(秒)との対応、Av値と実際の絞り値(F値)との対応も示している。右上がりの各斜線は同じEv値を示しており、そのEv値を図の上部および右側に示している。なお、図中の太い折れ線は、本デジタルカメラ100に設定されたPモードにおけるプログラムラインを示している。
【0041】
図5は、露出制御動作を示すフローチャートである。コントローラ150は、画像データが生成される1フレーム期間、すなわち1/30秒毎に、このフローチャートに従って、適正な露出が得られるように露出値を補正する。以下、図5に示すフローを具体的に説明する。
【0042】
コントローラ150は、新しいフレームの画像データが生成される度に、画像データから輝度情報を取得する(S201)。輝度情報の算出方法としては、画像中央部の所定範囲における各画素の平均輝度を輝度情報とする方法(スポット測光)や、画像データ全体を複数のブロックに分割し、各ブロックの平均輝度に基づいて、これらを加重平均して輝度情報とする方法(マルチ測光)等がある。輝度情報の算出方法はユーザがメニューから設定することができる。または、いずれかの算出方法にあらかじめ決めておいてもよい。
【0043】
コントローラ150は、取得した現在の輝度情報の示す値(以下「輝度値」と呼ぶ)がROMに格納されている目標輝度値になるよう、Ev値を制御することにより露出制御を行う。なお、目標輝度値はROMに格納された値を用いるとしたが、デジタルカメラ100が露出補正機能を有する場合、目標輝度値はこの露出補正機能により修正され得る。
【0044】
コントローラ150はまず、現在のEv値を取得する(S202)。現在のEv値は、現在のAv値とTv値により定まる。なお、電源を投入した直後、すなわちCCDイメージセンサ120が画像データ生成を開始する当初のEv値は、ROMに格納されている絞り値およびシャッタスピードに関する初期データに基づいて設定されるものとする。
【0045】
コントローラ150は、目標輝度値と現在の輝度値との差分ΔYを求め(S203)、図3に示す関係に基づいてΔYからEv補正量を求める(S204)。そして現在のEv値とEv補正量とから補正後のEv値(目標Ev値または目標露出値)を算出する(S205)。
【0046】
コントローラ150は、図4のダイアグラムを参照して、補正後のEv値(目標Ev値)を得るためのAv値およびTv値、すなわち絞り値およびシャッタスピードを決定する(S206)。AモードおよびSモードの各々におけるAv値およびTv値の決定方法の詳細については後述する。
【0047】
なお、Pモードにおいては、ダイアグラム上のプログラムラインに従って露出制御を行う。具体的には、コントローラ150が決定した補正後のEv値のラインとプログラムラインとの交点からAv値およびTv値を求める。例えば、現在のEv値が13であれば、プログラム線図に従えばAv値は7、Tv値は6である。そして、目標輝度値と現在の輝度値との差分ΔYに基づいて算出したEv補正量が−2であれば、補正後のEv値(目標Ev値)は11(=13−2)となる。よって、その補正後のEv値を得るために、Av値を6、Tv値を5に補正すればよいことがわかる。
【0048】
決定した補正後のEv値に対してAv値およびTv値を決定する際には、Ev値から絞り値とシャッタスピードの組み合わせを見つけるためのダイアグラムを参照し、デジタルカメラ100が取り得る撮影パラメータの範囲内で目標Ev値が得られるパラメータの組み合わせの中からひとつを選択すればよい。デジタルカメラ100が取り得る撮影パラメータの範囲すなわち撮影パラメータの設定可能範囲としては、絞り値がF4〜F22、シャッタスピードが60秒〜1/4000秒の範囲であり、すなわち、Av値が4〜9、Tv値が−6〜12の範囲である。これらの設定可能範囲に関する情報はROMに格納されており、コントローラ150はこれらの情報を適宜ROMより読み出して使用する。
【0049】
図6は、ISO感度がISO100の場合の、デジタルカメラ100の撮影パラメータの設定可能範囲(以下「カメラ設定可能範囲」と呼ぶ)をダイアグラム上に網掛けで示した図である。同図より、デジタルカメラ100において、ISO感度がISO100の場合、絞り値の設定可能範囲は、F4〜F22(Av値で4〜9)であり、シャッタスピードの設定可能範囲は1/4000〜60秒(Tv値で12〜−6)である。このような設定可能範囲は、デジタルカメラ100を構成するハードウェア要素の光学的または機械的な性能により定まる。
【0050】
コントローラ150は、以上のようにして決定したパラメータに従って、絞り113、シャッタ114、CCDイメージセンサ120を駆動するための信号をそれぞれの駆動部(図示せず)に送信する。以上のようにして決定した適正露出が得られる撮影パラメータがカメラ設定可能範囲内にあれば、その撮影パラメータに従った動作を1フレーム期間毎に行うことにより画像データの輝度値が目標輝度値となり、適正露出となるように露出設定がなされる。
【0051】
以下、AモードおよびSモードの各モードにおけるAv値およびTv値の決定方法について詳細に説明する。さらに、露出ガイド表示における各撮影パラメータの設定可能範囲の決定方法についても説明する。
【0052】
2−2−2.AモードにおけるTv値等のパラメータの決定
最初に、Aモード(絞り優先AEモード)におけるAv値の設定可能範囲およびTv値の決定方法について説明する。
【0053】
図7は、Aモードにおいて目標Ev値を得るためのAv値の設定可能範囲、および設定されたAv値に対応するTv値を決定する処理を示すフローチャートである。Aモードにおいては、Av値はユーザが設定した値に固定されるので、コントローラ150はTv値を決定する。また、コントローラ150は、ユーザの設定とは関係なく、目標Ev値を得るために設定可能なAv値の範囲についても決定する。以下では、具体例として目標Ev値が13であり、ユーザが設定した絞り値がF5.6(Av値が5)であるものとして説明する。
【0054】
まずコントローラ150は、図6のダイアグラムから目標Ev値に対応するAv値及びTv値それぞれの設定可能範囲を求める(S301)。Av値およびTv値の設定可能範囲は、図6において網掛け部分であるので、網掛けの領域内で目標Ev値が得られるAv値およびTv値の取り得る範囲(上限値、下限値)を求めればよい。Av値の上限値をAvmax、下限値をAvmin、Tv値の上限値をTvmax、下限値をTvminとすると、Ev値が13のとき、図6から、Avmin=4(このときTvmax=9)、Avmax=9(このときTvmin=4)であることがわかる。なお、Av値およびTv値の設定可能範囲を求めることは、Av値およびTv値の設定不可能な範囲を求めることに等しいことは言うまでもない。
【0055】
次に、現在ユーザによって設定されている絞り値に対応するAv値が設定可能範囲内、すなわち、Avmin以上かつAvmax以下の範囲内にあるかどうかを判断する(S302)。この範囲内であれば(S302において“Y”)、図6のダイアグラムから、目標Ev値およびユーザにより設定されたAv値の組み合わせに対応するTv値を求め(S303)、処理を終了する。
【0056】
一方、現在ユーザによって設定されている絞り値に対応するAv値が設定可能範囲外であれば(S302において“N”)、ユーザが設定したAv値を用いたときに、カメラ設定可能範囲内で最も目標Ev値に近いEv値が得られるTv値を求め(S304)、処理を終了する。
【0057】
本例の場合、Avmin=4、Avmax=9であり、ユーザが設定した絞り値はAv値として5であり、これは範囲内であるので、コントローラ150はダイアグラムから、Ev値が13及びAv値が5の組み合わせに対応するTv値として8を取得する。
【0058】
以上の処理により、Aモードにおいて、目標Ev値(=13)を得るための、Av値の設定可能範囲(Avmax=9、Avmin=4)、及び設定されたAv値に対応するTv値(=8)が求まる。
【0059】
2−2−3.SモードにおけるAv値等のパラメータの決定
次に、Sモード(シャッタスピード優先AEモード)におけるTv値の設定可能範囲およびAv値の決定方法について説明する。
【0060】
図8は、Sモードにおいて目標Ev値を得るためのTv値の設定可能範囲、および設定されたTv値に対応するAv値を決定する処理を示すフローチャートである。Sモードにおいては、Tv値はユーザが設定した値に固定されるので、コントローラ150はAv値を決定する。また、コントローラ150は、ユーザの設定とは関係なく、目標Ev値を得るために設定可能なTv値の範囲についても決定する。以下では、具体例として目標Ev値が13であり、ユーザが設定したシャッタスピードが1/2000秒(Tv値が11)であるものとして説明する。
【0061】
まずコントローラ150は、図6のダイアグラムから目標Ev値に対応するAv値及びTv値それぞれの設定可能範囲(上限値、下限値)を求める(S401)。Av値の上限値をAvmax、下限値をAvmin、Tv値の上限値をTvmax、下限値をTvminとすると、Ev値が13のとき、Avmin=4(このときTvmax=9)、Avmax=9(このときTvmin=4)であることがわかる。
【0062】
次に、現在ユーザによって設定されているシャッタスピードに対応するTv値が設定可能範囲内に、すなわち、Tvmin以上かつTvmax以下の範囲内にあるかどうかを判断する(S402)。この範囲内であれば(S402において“Y”)、図6のダイアグラムから、目標Ev値およびユーザにより設定されたTv値の組み合わせに対応するAv値を求め(S403)、処理を終了する。
【0063】
一方、現在ユーザによって設定されているシャッタスピードに対応するTv値が設定可能範囲外であれば(S402において“N”)、ユーザが設定したTv値を用いたときの、カメラ設定可能範囲内で最も目標Ev値に近いEv値が得られるAv値を求め(S404)、処理を終了する。例えば、本例では、Tv値の設定可能範囲は4から9であり、ユーザが設定したシャッタスピードに対応するTv値は11であるため、ユーザが設定したTv値は設定可能範囲外である。よって、コントローラ150は、図6のダイアグラムから、Tv値を11として、Ev値が最も目標Ev値である13に近くなる、カメラ設定可能範囲内のAv値である4を選択する。なお、このときのEv値は15となり、目標Ev値である13よりも大きくなる。これはすなわち、ユーザが設定したシャッタスピードでは適正露出は得られず、得られるEv値は目標Ev値よりも大きな値となるため、露出アンダーとなることを意味する。なお、得られるEv値が目標Ev値よりも小さいときは、露出オーバーであることを意味する。
【0064】
以上の処理により、Sモードにおいて、目標Ev値(=13)を得るための、Tv値の設定可能範囲(Tvmax=9、Tvmin=4)、及び設定されたTv値に対応するAv値(=4)が求まる。
【0065】
2−3.露出ガイドの表示
露出制御動作によって、目標Ev値を得るためのAv値およびTv値が決定されると、コントローラ150は、これらの撮影パラメータによって決定される現在の露出状態を、設定可能な撮影パラメータの範囲とともに示す画像を生成し、これを露出ガイドとして表示部170に表示させる。以下、この露出ガイドについて説明する。
【0066】
図9は、露出ガイドの表示例を示した図である。図9は、一例としてAモードにおける露出ガイド800を示している。コントローラ150は、露出ガイド800の表示イメージを生成し、画像データに重畳して表示部170上に表示させる。
【0067】
露出ガイド800は、上段にシャッタスピード表示領域801を、下段に、絞り値表示領域803を含む。シャッタスピード表示領域801は水平方向に延びた数直線を含み、その数直線の中央に現在設定されているシャッタスピードの値が配置され、その前後に、設定可能な複数のシャッタスピードの値が配置される。絞り値表示領域803は水平方向に延びた数直線を含み、その数直線の中央に現在設定されている絞り値(F値)が配置され、その前後に、設定可能な複数の絞り値(F値)が配置される。
【0068】
シャッタスピード表示領域801におけるシャッタスピードの値と、絞り値表示領域803における絞り値とは、上下に隣接するように並べて配置されている。なお、上下に隣接して配置されるシャッタスピードと絞り値の対は、目標露出値を実現するための組み合わせである。
【0069】
このように、各々の表示領域801、803では、現在の設定値と、その前後の一定範囲が表示される。図9に示す露出ガイド800から、ユーザは、現在の設定として、シャッタスピードが1/250秒であり、絞り値(F値)がF5.6であることを瞬時に認識できる。
【0070】
以上のように、シャッタスピード表示領域801に示されるシャッタスピードと、絞り値表示領域803に示される絞り値(F値)とは、それらが目標露出値が得られるシャッタスピードと絞り値の組み合わせとなるように、上下に対応付けて並べて配置されている。こうすることにより、ユーザは、適正露出が得られるパラメータの範囲(適正露出領域)と合わせて、適正露出を与える撮影パラメータの組み合わせを瞬時に認識できる。したがって、例えば、背景のボケ具合をより大きくした絵作りをするために被写界深度をより浅くしたい場合、すなわち、絞り値をより小さくしたい場合に、ユーザは、露出ガイド800を参照することで、適切な絞り値を容易かつ迅速に認識することができ、素早く対応することができる。
【0071】
シャッタスピード表示領域801の左には、上段がシャッタスピードの表示であることを示す”SS”のアイコン802が設けられ、同様に絞り値表示領域803の左には、下段が絞り値の表示であることを示す”F”のアイコン804が設けられている。
【0072】
絞り値がユーザにより設定されるAモードにおいて、絞り値表示領域803では、右に行くほど、絞り値が大きくなる(絞りを絞っている)ように各絞り値が表示される。すなわち、他の撮影パラメータを変化させないで絞り値のみを操作した場合に、右に行くほど露出が減少するように絞り値を表示している。なお、Aモードにおいて、シャッタスピード表示領域801は、絞り値表示領域803の値と対応させた値を表示させる結果、右に行くほどシャッタスピードが遅くなる(その値が大きくなる)ように、各シャッタスピードの値が表示される。
【0073】
一方、シャッタスピードがユーザにより設定されるSモードにおいて、絞り値及びシャッタスピードの設定値は、Aモードの場合と、変化の方向を左右逆にして表示される。すなわち、Sモードにおいて、シャッタスピード表示領域801では、右に行くほどシャッタスピードが速くなる(その値が小さくなる)ように表示される。すなわち、他の撮影パラメータを変化させないでシャッタスピードのみを操作した場合に、右に行くほど露出が減少するようにシャッタスピードの値を表示している。なお、Sモードにおいて、絞り値表示領域803では、シャッタスピード表示領域801の値と対応させた値を表示させる結果、右に行くほど絞り値が小さくなる(絞りを開く)ように、各絞り値の値を表示している。
【0074】
このようにAモードとSモードとで、表示される絞り値及びシャッタスピードの設定値の並びを逆にして表示するのは、ユーザの操作上の利便性を考慮したためである。以下、これを説明する。ユーザは、Aモードにおいては絞り値を選択し、Sモードにおいてはシャッタスピードを選択する。いずれのモードにおいても、ユーザ操作により選択されるパラメータの並びと、露出が減少(または増加)する方向とを合致させることで、数値選択操作を行う際のユーザの操作感を統一することができる。例えば、ダイヤルの回転操作によって絞り値またはシャッタスピードの設定値を変更できる場合、絞り値及びシャッタスピードの設定値の並びを露出の変化方向と合致させることで、ダイヤルの操作方向(回転方向)と、設定値の表示の変化方向(スクロールの方向)とが合致し、ユーザにとって感覚的な操作が実行し易くなる。
【0075】
適正露出が得られている限りにおいて、シャッタスピード表示領域801および絞り値表示領域803は、ユーザがいずれかの値を変更するのに伴い同じ方向へ同じ量だけ移動(スクロール)することになる。
【0076】
露出ガイド800の左下には、現在の撮影モードを示す撮影モードアイコン805が表示される。図9では、Aモードを示す“A”が表示されている。露出ガイド800の右下には、現在のISO感度を示すISO感度アイコン806が表示される。シャッタスピード表示領域801および絞り値表示領域803の中央部807には、現在設定されているシャッタスピード(1/250秒を示す「250」)および絞り値(F5.6を示す「5.6」)が表示される。
【0077】
また、シャッタスピード表示領域801および絞り値表示領域803において、カメラ設定可能範囲外の領域(以下「設定不可能領域」という。)808については、カメラ設定可能範囲の領域と区別できるように着色(図9ではドットの網掛け)されている。例えば、設定不可能領域808は赤色で表示される。設定不可能領域808とは、絞り値またはシャッタスピードについて、設定値を設定できない領域である。換言すれば、設定不可能領域808は、デジタルカメラ100の絞り値またはシャッタスピードの設定可能範囲の下限値に満たない領域またはその上限値を越えた領域である。
【0078】
図10は、Aモードにおける露出ガイドの別の表示例を示す図である。なお、図9では、表示部170全体の表示イメージを示したが、図10では、露出ガイドおよびその周辺のOSD表示のみを示している。
【0079】
前述の露出制御動作の説明において例示したように、Aモードにおいて目標Ev値が13、ユーザが設定した絞り値がF5.6(Av値が5)であるときには、シャッタスピードは、コントローラ150によって1/250秒(Tv値が8)に決定される。このとき、絞り値の設定可能範囲はF4〜F22(Avmax=9、Avmin=4)である。すなわち、絞り値の設定可能範囲はカメラ設定可能範囲全域である。図10(a)はこのときの露出ガイド800の表示状態を示す図である。中央部807には、ユーザが設定した絞り値F5.6と、それに対応して決定されたシャッタスピード1/250秒とが上下に並んで表示されている。
【0080】
ここで、ユーザが操作部180を操作して絞り値を大きくしていき、最終的にF16(Av値=8)に変更したとする。するとコントローラ150はすでに説明した露出制御動作にしたがって、ユーザの操作に合わせて順次シャッタスピードを求める。絞り値が変更されるのに伴い、絞り値表示領域803の表示は左へスクロールし、それに連動してシャッタスピード表示領域801の表示も左へスクロールする。そして最終的に、図10(b)に示すように、中央部807には絞り値16とシャッタスピード1/30秒(Tv値は5)が上下に並んで表示された状態となる。
【0081】
シャッタスピードが遅くなると、撮影した画像に手振れの影響が出てぶれた画像となるおそれがある。そこで、手振れの影響が出る可能性がある領域をユーザが容易に認識できるように、手振れの影響が出る可能性がある領域(以下「手振れ領域」という。)について着色表示をしてもよい。すなわち、手振れ領域809は、設定不可能領域808と区別できるように着色される。図10(b)では、手振れ領域809について斜線格子の網掛けハッチングが施されている。なお、この例では以下のようにして手振れ領域809を求めている。光学系110の焦点距離が35mmフィルム換算で30mmであるとする。コントローラ150は、焦点距離の情報をズームレンズ112の位置情報から取得する。コントローラ150は、シャッタスピードがこの焦点距離の逆数より遅い領域を手振れ領域と判定し、その手振れ領域を他の領域と区別できるように表示している。また、デジタルカメラ100が光学式手ぶれ補正レンズ(OIS)を備えている場合には、その補正性能に基づいて手ぶれ領域を算出するようにしてもよい。
【0082】
図11は、Sモードにおける露出ガイドの表示例を示す図である。図9では表示部170全体の表示イメージを示したが、図11では露出ガイドおよびその周辺のOSD表示のみを示している。
【0083】
露出制御動作の説明において例示したように、Sモードにおいて目標Ev値が13、ユーザが設定したシャッタスピードが1/2000秒(Tv値が11)であるときには、絞り値は4(Av値が4)となる。また、シャッタスピードの設定可能範囲は1/15秒〜1/500秒(Tvmax=9、Tvmin=4)である。すなわち、適正露出が得られるシャッタスピードの設定可能範囲は、カメラ設定可能範囲のうちの一部である。図11(a)はこのときの露出ガイドの表示状態を示す図である。中央部807には、ユーザが設定したシャッタスピード1/2000秒と、それに対応して決定した絞り値F4が上下に並んで表示されている。また、適正露出を得るためのシャッタスピードの設定可能範囲外の領域(以下「不適正露出領域」という。)810について着色表示されている。このように、不適正露出領域810は、設定不可能領域808や手振れ領域809とは区別できるよう表示(着色等)される。図11では不適正露出領域810について斜線の網掛けとしている。不適正露出領域810は、前述したように露出アンダーである領域である。
【0084】
ユーザは、露出ガイド800の表示を見て現在のシャッタスピードが不適切であることを認識することができる。さらにユーザは、露出ガイド800におけるシャッタスピードの不適正露出領域810に基づき、シャッタスピードに対する不適正な領域が1/500秒より速い領域であり、適正露出を得るためにはシャッタスピードを1/500秒かそれより遅くすればよいことが一目でわかる。
【0085】
その後、ユーザは操作部180を操作してシャッタスピードを順次遅くしていくことができる。コントローラ150はすでに説明した露出制御動作にしたがって、ユーザの操作に合わせて順次絞り値を求める。シャッタスピードの変更に伴い、シャッタスピード表示領域801は左へスクロールする。しかしながら、シャッタスピードが不適正露出領域810、すなわち1/500秒より速い領域にある間は、絞り値として下限であるF4が選択されるため、絞り値表示領域803はスクロールせず静止したままである。そして、シャッタスピードが1/500秒に設定されると、絞り値はF4のままであるが、適正露出が得られる範囲に入ったことがわかる。図11(b)は、このように、シャッタスピードがユーザにより1/500秒に設定され、絞り値としてF4が自動設定されたときの露出ガイドの表示状態を示す図である。
【0086】
ユーザがさらにシャッタスピードを遅くして1/250秒にすると、シャッタスピード1/250秒は適正露出の範囲内であるので、絞り値も連動してF5.6となる。図11(c)は、このときの露出ガイドの表示状態を示す図である。
【0087】
さらに、ユーザがシャッタスピードを遅くして1/30秒にすると、シャッタスピード1/30秒は適正露出の範囲内であるので、絞り値も連動してF16となる。図11(d)は、このときの露出ガイドの表示状態を示す図である。この図では、シャッタスピードが1/30秒より遅い領域が手振れ領域809として表示され、また1/15秒より遅い領域が不適正露出領域810bとして表示される。ここでの不適正露出領域810bは、露出オーバーの領域である。不適正露出領域810bを、図11(a)の不適正露出領域810(露出アンダー)と同じように着色表示してもよいし、区別するように着色表示してもよい。
【0088】
3.まとめ
以上のように、本実施形態のデジタルカメラ100は、被写体像を撮像して画像データを生成するCCD120と、画像データに基づいて目標露出値を算出し、ユーザにより設定された第1の撮影パラメータ(例えば、絞り値及びシャッタスピードの一方)の値に基づいて目標Ev値が得られるように露出制御を行うコントローラ150と、表示部170とを備える。コントローラ150は、目標Ev値を得るために第1の撮影パラメータが取り得る範囲である第1の適正範囲を算出し、さらに、目標Ev値と、ユーザにより設定された第1の撮影パラメータの値とに基づいて第2の撮影パラメータ(例えば、絞り値及びシャッタスピードの他方)の値を算出する。表示部170は、ユーザにより設定された第1の撮影パラメータの値と、第1の適正範囲を示す情報と、算出された第2の撮影パラメータの値とを含む露出ガイド800を表示する。
【0089】
以上の構成により、絞り値やシャッタスピードに代表される、露出を決定する撮影パラメータの設定状態が、適正露出が得られるパラメータの範囲と共に表示部170に表示される。これにより、適正露出を得られないパラメータをユーザが設定した場合であっても、ユーザは一目で適正露出を得るための値を把握でき、その情報を元に適正な露出設定を素早く行うことができる。
【0090】
II.他の実施形態
実施の形態1のデジタルカメラ100は、撮影パラメータによって決まる現在の露出状態を、設定可能な撮影パラメータの範囲と共に露出ガイド800として表示部170に表示させるようにしたが、露出ガイド800に他の情報を含めてもよい。例えば、絞り値に応じた画像のボケ度合いを示す指標を表示するようにしてもよい。ボケ度合いを示す指標は、デジタルカメラ100の焦点距離、撮影距離(被写体までの距離)および絞り値に基づいて算出できる。
【0091】
また、実施の形態1では、露出補正について特に言及していないが、デジタルカメラ100は露出補正機能を有していても良い。露出補正機能によれば、ユーザが操作部180を操作して露出補正値を設定した場合、その設定値に応じて目標輝度値が補正される。具体的には、露出補正値が正の値に設定された場合(すなわち、最終的に得られる画像データがより明るくなるように設定された場合)、その設定値の絶対値に応じて目標輝度値を高く補正する。逆に、露出補正値が負の値に設定された場合(すなわち、最終的に得られる画像データがより暗くなるように設定された場合)、その設定値の絶対値に応じて目標輝度値を低く補正する。他の動作については実施の形態1と同様である。
【0092】
また、実施の形態1のデジタルカメラ100はISO感度をユーザの設定した値で固定していたが、露出制御において、ISO感度を制御するようにしてもよい。例えば、ISO感度を1段階上げることにより、目標Ev値を1大きくすることができる。したがって、例えば現在のEv値が13、目標Ev値が12、ISO感度が100である場合は、Av値およびTv値を変更せずにISO感度を1段階上げて200とすれば、目標Ev値が13となって適正露出とすることができる。
【0093】
また、実施の形態1では、露出ガイド800は、絞り値とシャッタスピードの2つのパラメータを上下に配して表示したが、さらに別のパラメータを配置してもよい。例えば、さらにISO感度を、絞り値とシャッタスピードと関連づけて表示するようにしてもよい。
【0094】
また、実施の形態1では、露出ガイド800の表示において、操作対象のパラメータ単体について右に行くほど露出が少なくなるように設定値(シャッタスピード、絞り値)を配置したが、逆に右に行くほど露出が多くなるように設定値を配置してもよい。また、AモードとSモードとで設定値の並び順を同じにしてもよい。
【0095】
また、実施の形態1では、露出ガイド800の表示イメージを生成し、画像データに重畳して表示部170にて表示させるものとしたが、画像データを表示するための表示部とは別に露出ガイド用の表示部を設けてもよい。
【0096】
また、実施の形態1において、設定可能な絞り値の範囲をF4〜F22とし、設定可能なシャッタスピードの範囲を60秒〜1/4000秒としたが、これは一例であり、設定可能な範囲はこれらに限らず、どのような範囲が設定可能であっても構わない。
【0097】
また、実施の形態1では、シャッタスピード表示領域801および絞り値表示領域803において、対応する設定値(シャッタスピードおよび絞り値)が上下に隣接するように並べて配置されており、各々の表示領域801、803は、その中央に現在の設定値が配置され、その前後の一定範囲が表示されるものとした。しかし、表示領域801、803における設定値の表示形態はこれに限定されない。現在のモード(AモードまたはSモード)においてユーザによって設定された撮影パラメータ(Aモードであれば絞り値、Sモードであればシャッタスピード)が、目標露出値が得られる値の範囲と共に表示されるのであれば、任意の表示形態を採用できる。例えばSモードであれば、適正露出が得られるシャッタスピードの範囲と、現在ユーザが設定しているシャッタスピードとが表示されていれば、実施の形態1と同様の効果が得られる。しかしながら、コントローラ150によって自動的に設定される撮影パラメータも合わせて表示するようにすれば、さらにその設定により得られる画像データがどのようになるかをユーザが予測しやすくなり、より望ましい。例えばコントローラ150によって算出された絞り値の値が合わせて表示されれば、ユーザは得られる画像データのボケ具合を予測できるため、望ましい。
【0098】
また、実施の形態1のデジタルカメラ100は、AモードまたはSモードにおいてユーザによって設定された撮影パラメータ(Aモードであれば絞り値、Sモードであればシャッタスピード)を、目標露出値が得られる値の範囲と共に表示した。しかし、撮影モードは、AモードまたはSモードに限られず、任意の撮影モードにおいて、現在の設定値を目標露出値が得られる値の範囲と共に表示するようにしてもよい。例えば、撮影モードがMモードのときに、絞り値およびシャッタスピードのうち一方または両方について、現在の設定値を目標露出値が得られる値の範囲と共に表示するようにしてもよい。
【0099】
実施の形態1では、レンズがカメラ本体内に組み込まれた一体型のデジタルカメラについて説明したが、カメラ本体に対してレンズを着脱することができる交換レンズ式のデジタルカメラであっても、実施の形態1の思想は同様に適用できる。なお、交換レンズ式のデジタルカメラの場合、撮影パラメータの設定可能範囲に関する情報は交換レンズ(交換レンズ内のROM)から取得できる。
【0100】
また、露出ガイド800において、ユーザが設定する撮影パラメータの背景の表示は不透明にしてもよい。これにより、撮影パラメータの値を背景の画像と区別し易くなり、撮影パラメータの値の視認性を向上できる。また、ユーザが設定する撮影パラメータ以外の撮影パラメータの背景の表示を半透明にしてもよい。これにより、現在ユーザが設定中の撮影パラメータの値の視認性を向上できると共に、スルー画像の視認性も向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、適正露出を与える、絞り値やシャッタスピードのようなパラメータをユーザが容易に認識できるガイドを表示することが可能である。このため、ユーザは一目で適正露出を得るためのパラメータの範囲を認識でき、適正な露出設定を素早く行うことができる。よって、本発明は、ユーザによる露出設定を行う機能を有するデジタルカメラやビデオカメラ等の撮像装置に有用である。
【符号の説明】
【0102】
111 フォーカスレンズ
112 ズームレンズ
113 絞り
114 シャッタ
120 CCDイメージセンサ
121 前処理部
130 画像処理部
150 コントローラ
160 フラッシュメモリ
170 表示部
180 操作部
800 露出ガイド
808 設定不可能領域
809 手振れ領域
810 不適正露出領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体像を撮像して画像データを生成する撮像手段と、
前記画像データに基づいて目標露出値を算出し、ユーザにより設定された第1の撮影パラメータに基づいて前記目標露出値が得られるように露出制御を行う制御手段と、
表示手段と、を備え、
前記制御手段は、前記目標露出値を得るために第1の撮影パラメータが取り得る範囲である第1の適正範囲を算出し、さらに、前記目標露出値と、前記ユーザにより設定された第1の撮影パラメータとに基づいて第2の撮影パラメータを算出し、
前記表示手段は、前記ユーザにより設定された第1の撮影パラメータと、前記第1の適正範囲を示す情報と、前記算出された第2の撮影パラメータとを含む露出ガイド情報を表示する、
撮像装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記目標露出値が得られない第1の撮影パラメータの範囲である第1の不適正範囲を求め、
前記露出ガイド情報はさらに前記第1の不適正範囲を示す情報を含み、前記第1の不適正範囲を示す情報は前記第1の適正範囲を示す情報と区別して表示される、
請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1の撮影パラメータが設定不可能な範囲を求め、
前記露出ガイド情報は、前記第1の撮影パラメータが設定不可能な範囲を示す情報を含み、前記第1の撮影パラメータが設定不可能な範囲を示す情報は、前記第1の適正範囲を示す情報と区別して表示される、
請求項1記載の撮像装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第2の撮影パラメータが設定不可能な範囲を求め、
前記露出ガイド情報は、前記第2の撮影パラメータが設定不可能な範囲を示す情報を含む、請求項1記載の撮像装置。
【請求項5】
前記制御手段は、手ぶれの可能性のある第1の撮影パラメータの範囲である手振れ範囲を算出し、
前記露出ガイド情報はさらに前記手ぶれ範囲を示す情報を含み、前記手ぶれ範囲を示す情報は前記第1の適正範囲と区別して表示される、
請求項1記載の撮像装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記被写体像を形成する光学系の焦点距離に基づいて、前記手ぶれ範囲を算出する、請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記露出ガイド情報は、前記ユーザにより設定された第1の撮影パラメータとその前後の値とが示された第1の数直線と、前記第2の撮影パラメータが示された第2の数直線とを含む、請求項1記載の撮像装置。
【請求項8】
前記露出ガイド情報において、前記目標露出値を与える第1の撮影パラメータと第2の撮影パラメータの対が隣接して表示されるように、前記第1の数直線および前記第2の数直線が並べて配置される、請求項7記載の撮像装置。
【請求項9】
前記表示手段により表示される、前記露出ガイド情報における前記第1の撮影パラメータ及び第1の適正範囲の背景が不透明である、請求項1記載の撮像装置。
【請求項10】
前記第1の撮影パラメータとして、複数種類の露出に関する設定値の中から1つの種類の設定値を選択的に設定でき、
前記露出ガイド情報において、前記ユーザにより設定された第1の撮影パラメータと、前記第1の適正範囲に含まれる複数の第1の撮影パラメータとが、一次元的に配置され、
前記第1の撮影パラメータは、前記設定値の種類に関わらず一定方向において第1の撮影パラメータの各値が与える露出が減少していくように、並べて配置される、
請求項1記載の撮像装置。
【請求項11】
前記第1の撮影パラメータは絞り値及びシャッタスピードのいずれか一方であり、前記第2の撮影パラメータは絞り値及びシャッタスピードの他方である、請求項1記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−70175(P2011−70175A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189822(P2010−189822)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】