説明

撮像装置

【課題】臨場感のあるパノラマ映像の再生を行う。
【解決手段】撮像装置を水平方向に振りながら複数の入力画像(静止画像)を撮影し、複数の入力画像を合成することでパノラマ画像を生成する。複数の入力画像を撮影する際、マイク部の出力信号を記録しておく。パノラマ画像の再生時には、パノラマ画像内に抽出枠を設定し、パノラマ画像上で抽出枠を移動させながら抽出枠内の画像を表示部に更新表示させることで、パノラマ画像の全体を、一定時間(PREP)をかけて再生する。この際、記録音響信号に基づくリンク音響信号を同時に再生する。例えば、楽器321の表示時には楽器321の発生音が同時に再生されるように、人物323の表示時には人物323の発生音が同時に再生されるように、指向性制御を利用してリンク音響信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ等の撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラを左右又は上下に動かしながら複数の静止画像を撮影し、撮影した静止画像をつなぎ合わせて合成することで広視野角のパノラマ画像(パノラマ映像)を生成する方法が知られている。
【0003】
パノラマ画像は動画像ではなく静止画像の一種であるため、再生時において、パノラマ画像を再生する際、通常、音響信号の再生は成されない。但し、パノラマ画像の元となる複数の静止画像の撮影後に、音声メモをパノラマ画像に付与する編集機能は存在する。
【0004】
尚、下記特許文献1には、反射鏡によって入力された全周囲の画像を撮影する撮影手段と、前記撮影手段により入力された画像をパノラマ画像に変形する展開手段と、を備えたシステムが示されており、当該システムでは、音源方向(話者位置)の検出等を行うために、画像撮影時における音響信号を画像と共に記録させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−81644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
画像撮影後に付与される上記音声メモは、画像撮影時のカメラ周辺音とは関係のないものであるため、当該音声メモをパノラマ画像と同時に再生したとしても、視聴者は画像撮影時の臨場感を得がたい。
【0007】
そこで本発明は、パノラマ画像の再生時において強い臨場感を視聴者に与えることのできる撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る撮像装置は、撮影領域内の被写体の撮影を行う撮像部と、マイクロホンから成るマイク部と、前記撮影領域が互いに異なる状態で前記撮像部により撮影された複数の入力画像を合成することによりパノラマ画像を生成する画像合成部と、前記複数の入力画像の撮影期間中における前記マイク部の出力に基づく音響信号を、前記パノラマ画像の画像信号と共に記録する記録媒体と、前記パノラマ画像を部分画像ごとに表示部に更新表示させることで、前記パノラマ画像の全体を再生する再生制御部と、を備えた撮像装置において、前記マイク部の出力から指向性を有する音響信号である指向性音響信号を生成する音響信号処理部を更に備え、前記再生制御部は、前記パノラマ画像を再生する際、前記記録媒体に記録された音響信号に基づく出力音響信号として前記指向性音響信号を同時に再生することを特徴とする。
【0009】
画像撮影時における音響信号から得た指向性音響信号をパノラマ画像と共に再生することで、強い臨場感を視聴者に与えることが可能となる。
【0010】
より具体的には例えば、前記撮影範囲内の前記被写体には、音源として機能する被写体が含まれ、再生期間中において前記音源が前記表示部にて表示されるとき、前記音源からの音が強調して再生されるように、前記音響信号処理部は前記指向性音響信号を生成してもよい。
【0011】
これにより、表示映像に合わせた音響信号再生が可能となり、臨場感のあるパノラマ画像再生が可能となる。
【0012】
換言すれば例えば、再生期間は、時系列順に並ぶ第1、第2、・・・第n再生時刻から成り(nは2以上の整数)、前記再生制御部は、前記第1、第2、・・・第n再生時刻において、前記パノラマ画像の第1部分画像、第2部分画像、・・・第n部分画像を、順次、前記表示部に更新表示させ、前記第1部分画像〜前記第n部分画像は互いに異なり、前記再生期間中において第i部分画像が前記表示部にて表示されるとき(iは1以上n以下の整数)、前記第i部分画像に描画される音源から到来した音が強調して再生されるように、前記音響信号処理部は前記指向性音響信号を生成してもよい。
【0013】
また例えば、前記パノラマ画像の第1部分画像、第2部分画像、・・・第n部分画像をn枚の静止画像として前記パノラマ画像から抽出して、前記n枚の静止画像から成る動画像を生成する動画像生成部を当該撮像装置に更に設け(nは2以上の整数)、前記動画像を前記記録媒体に記録するようにしてもよい。例えば、前記第1部分画像〜前記第n部分画像は互いに異なる。
【0014】
これにより、動画像の記録信号を受けた任意の動画像再生装置上で、撮像装置にて実現指されるものと同様のパノラマ画像再生が可能となる。
【0015】
そして例えば、前記動画像を前記記録媒体に記録する際、前記出力音響信号も前記動画像に関連付けて前記記録媒体に記録しても良い。
【0016】
これにより、動画像及び出力音響信号の記録信号を受けた任意の動画像再生装置上で、表示映像に合わせた音響信号再生が可能となり、臨場感のあるパノラマ画像再生が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、パノラマ画像の再生時において強い臨場感を視聴者に与えることのできる撮像装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る撮像装置の概略全体ブロック図である。
【図2】図1の撮像部の内部構成図である。
【図3】図1のマイク部とマイク部の後段部位とを示す図である。
【図4】図1に示される撮像装置の外観斜視図である。
【図5】指向性制御によって生成可能な音響信号のポーラパターン例を示す図(a)及び(b)と、音源の角度を説明するための図(c)である。
【図6】図1の撮像装置の前方に広がる全景を示す図である。
【図7】パノラマ画像の生成に関与する部位のブロック図である。
【図8】複数の入力画像を示す図である。
【図9】複数の入力画像の撮影期間を説明するための図である。
【図10】複数の入力画像の具体例を示す図である。
【図11】パン操作の影響を説明するための図である。
【図12】パノラマ画像の例を示す図(a)と、パノラマ画像における左側領域内の画像、中央領域内の画像及び右側領域内の画像を示す図(b)である。
【図13】リンク音響信号の生成に関与する部位のブロック図である。
【図14】再生制御部と再生制御部の後段部位を示す図である。
【図15】パノラマ画像の再生期間を説明するための図である。
【図16】パノラマ画像に抽出枠が設定される様子を示す図である。
【図17】パノラマ画像から抽出された複数の部分画像の例を示す図である。
【図18】強調対象領域の意義を説明するための図である。
【図19】撮影期間中の3つの時刻に対応する撮影領域及び強調対象領域を示す図である。
【図20】再生期間中の表示映像と出力音声の例を示す図である。
【図21】再生期間が3等分される様子を示す図である。
【図22】再生期間を3等分することで得た3つの分割期間に対応する、3つのエリアを示す図である。
【図23】撮影期間中の撮影画像と入力音声の例を示す図(a)と、再生期間中の表示映像と出力音声の例を示す図(b)である。
【図24】動画像生成部を示す図である。
【図25】マイクロホンと撮像装置の筐体との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、物理量、状態量又は部材等を参照する記号又は符号を付記することによって該記号又は符号に対応する情報、物理量、状態量又は部材等の名称を省略又は略記することがある。例えば、入力画像を記号I[1]によって表す場合、入力画像I[1]を、例えば画像I[1]と表記する場合もある。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る撮像装置1の概略全体ブロック図である。撮像装置1は、静止画像を撮影及び記録可能なデジタルスチルカメラ、又は、静止画像及び動画像を撮影及び記録可能なデジタルビデオカメラである。撮像装置1は、携帯電話機などの携帯端末に搭載されるものであっても良い。
【0021】
撮像装置1には、撮像部11、AFE12、画像処理部13、マイク部14、音響信号処理部15、表示部16、スピーカ部17、操作部18、記録媒体19及び主制御部20が設けられている。表示部16及びスピーカ部17は、撮像装置1と異なる外部の再生機器(不図示;テレビ受信機など)に設けられたものあっても良い。
【0022】
図2に、撮像部11の内部構成図を示す。撮像部11は、光学系35と、絞り32と、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどから成る撮像素子33と、光学系35や絞り32を駆動制御するためのドライバ34と、を有している。光学系35は、ズームレンズ30及びフォーカスレンズ31を含む複数枚のレンズから形成される。ズームレンズ30及びフォーカスレンズ31は光軸方向に移動可能である。ドライバ34は、主制御部20からの制御信号に基づいてズームレンズ30及びフォーカスレンズ31の各位置並びに絞り32の開度を駆動制御することにより、撮像部11の焦点距離(画角)及び焦点位置並びに撮像素子33への入射光量(換言すれば、絞り値)を制御する。
【0023】
撮像素子33は、光学系35及び絞り32を介して入射した被写体を表す光学像を光電変換し、該光電変換によって得られた電気信号をAFE12に出力する。AFE12は、撮像部11(撮像素子33)から出力されるアナログ信号を増幅し、増幅されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。AFE12は、このデジタル信号をRAWデータとして画像処理部13に出力する。AFE12における信号増幅の増幅度は、主制御部20によって制御される。
【0024】
画像処理部13は、AFE12からのRAWデータに基づいて、撮像部11によって撮影された画像(以下、撮影画像とも言う)を表す画像信号を生成する。ここで生成される画像信号には、例えば、輝度信号及び色差信号が含まれる。但し、RAWデータそのものも画像信号の一種であり、撮像部11から出力されるアナログ信号も画像信号の一種である。尚、本明細書では、或る画像の画像信号のことを単に画像と言うこともある。従って、例えば、入力画像の生成、取得、記録、加工、変形、編集又は保存とは、入力画像の画像信号の生成、取得、記録、加工、変形、編集又は保存を意味する。
【0025】
マイク部14は、撮像装置1の周辺音を音響信号に変換する。マイク部14を、複数のマイクロホンにて形成することができる。ここでは、図3に示す如く、マイク部14が2つのマイクロホン14L及び14Rから成るものとする。A/D変換器51L及び51Rを、音響信号処理部15に設けておくことができる。図4に、撮像装置1の外観斜視図を示す。マイクロホン14L及び14Rは、撮像装置1の筐体上の互いに異なる位置に配置される。図4には、撮像装置1によって撮影される物体である、撮像装置1の被写体も示されている。被写体の撮影画像が表示部16に表示されることで、ユーザは撮像装置1の撮影領域(換言すれば撮影範囲)等を確認することができる。
【0026】
図4に示す如く、撮像装置1にて撮影可能な被写体が存在する方向を前方と定義し、その逆の方向を後方と定義する。前方及び後方は、撮像部11の光軸に沿った方向である。また、右及び左とは、後方側から前方側を見たときの右及び左を意味するものとする。
【0027】
マイクロホン14L及び14Rの夫々は、自身が収音した音をアナログの音響信号に変換して出力する。図3のA/D変換器51L及び51Rは、夫々、マイクロホン14L及び14Rから出力されるアナログの音響信号を所定のサンプリング周期(例えば48キロヘルツ)にてデジタルの音響信号に変換して出力する。A/D変換器51Lの出力信号を特に左原信号と呼び、A/D変換器51Rの出力信号を特に右原信号と呼ぶ。
【0028】
音響信号処理部15は、左原信号及び右原信号に必要な音響信号処理を施すことができる。この処理内容については後述する。
【0029】
表示部16は、液晶ディスプレイパネル等の表示画面を有する表示装置であり、主制御部20の制御の下、撮影画像や記録媒体19に記録されている画像などを表示する。本実施形態で述べる表示及び表示画面とは、特に記述なき限り、表示部16における表示及び表示画面を指す。スピーカ部17は、1又は複数のスピーカから成り、マイク部14にて生成された音響信号、音響信号処理部15にて生成された音響信号、記録媒体19から読み出された音響信号など、任意の音響信号を音として再生出力する。操作部18は、機械式ボタン、タッチパネル等から成り、ユーザからの様々な操作を受け付ける。操作部18に対する操作内容は、主制御部20等に伝達される。記録媒体19は、カード状半導体メモリや磁気ディスク等の不揮発性メモリであり、主制御部20による制御の下、撮影画像などを記憶する。主制御部20は、操作部18への操作内容に従いつつ、撮像装置1内の各部位の動作を統括的に制御する。
【0030】
撮像装置1の動作モードには、静止画像又は動画像を撮影可能な撮影モードと記録媒体19に記録された静止画像又は動画像を表示部16上で再生可能な再生モードとが含まれる。撮影モードでは、所定のフレーム周期にて周期的に被写体の撮影が行われ、撮像部11から(より詳細にはAFE12から)被写体の撮影画像列を表すRAWデータが出力される。撮影画像列に代表される画像列とは、時系列で並ぶ静止画像の集まりを指す。
【0031】
マイクロホン14L及び14Rとして、指向性を有さない無指向性マイクロホンを採用することができる。マイクロホン14L及び14Rが無指向性マイクロホンである場合、左原信号及び右原信号は無指向性の音響信号(指向性を有さない音響信号)である。音響信号処理部15は、公知の指向性制御を用いて無指向性の左原信号及び右原信号から、任意の方向に指向軸を持つ音響信号を生成することができる。
【0032】
この指向性制御を、例えば、左原信号又は右原信号を遅延させる遅延処理と、左原信号又は右原信号を所定割合だけ減衰させる減衰処理と、遅延処理及び/又は減衰処理を経た左原信号及び右原信号の一方から他方を減算する減算処理と、によって実現することができる。例えば、左原信号及び右原信号に対する指向性制御によって、図5(a)のポーラパターン310を持つ音響信号、即ち、左斜め後方45°の方向に死角を有する音響信号を生成することができる。ポーラパターン310を持つ音響信号は、右斜め前方45°の方向に指向軸を有する音響信号である、即ち、撮像装置1の右斜め前方45°に位置する音源から撮像装置1に到来した音の成分に対して最も高い指向性(感度)を持った音響信号である。逆に例えば、左原信号及び右原信号に対する指向性制御によって、図5(b)のポーラパターン311を持つ音響信号、即ち、右斜め後方45°の方向に死角を有する音響信号を生成することができる。ポーラパターン311を持つ音響信号は、左斜め前方45°の方向に指向軸を有する音響信号である、即ち、撮像装置1の左斜め前方45°に位置する音源から撮像装置1に到来した音の成分に対して最も高い指向性(感度)を持った音響信号である。
【0033】
また、図5(c)に示すような、X軸及びY軸を座標軸としたXY座標面(XY座標系)を定義する。X軸は、マイクロホン14Lの中心とマイクロホン14Rの中心とを通る軸であり、それらの中心の中間に原点Oが位置する。Y軸は、原点OにてX軸と直交する。Y軸に沿った方向は、撮像部11の光軸(撮像素子33にとっての光軸)の方向と一致する。X軸及びY軸は水平面と平行であるとする。原点Oからマイクロホン14Rに向かう方向(即ち、撮像装置1の右方向)がX軸の正方向であるとし、原点Oから撮像装置1の前方に向かう方向がY軸の正方向であるとする。線分313は、原点Oと任意の音源である音源SSとを結ぶ線分である。X軸と線分313との成す角度をθで表す。但し、角度θは、原点Oとマイクロホン14Rの中心とを結ぶ線分から反時計周り方向に線分313を見たときの、X軸及び線分313間の角度であるとする。反時計周り方向とは、原点Oからマイクロホン14Rの中心に伸びる線分を、撮像装置1の前方側に回転させる方向を指す。音源SSの角度θは、音源SSが位置する方向(即ち、音源SSについての音源方向)を表す。
【0034】
図6に、本実施形態で想定される、撮像装置1の前方側の全景を示す。符号320が付された実線枠内の絵が、撮像装置1の前方に広がる全景である。撮像装置1から見て、全景320の左側、中央付近及び右側には、夫々、被写体321、322及び323が存在している。被写体321、322及び323は、夫々、楽器、椅子及び人物である。楽器である被写体321及び人物である被写体323は、音を発生する音源としての機能も持つ。一方、椅子である被写体322は音源としての機能を持たない。
【0035】
全景320の全体を同時に撮影画角内に収めることはできないが、ユーザが全景320の全体が写し出された画像の取得を希望していたとする。撮影画角とは、撮像部11を用いた撮影における画角を指す。撮像装置1には、撮像装置1を振りながら得た複数の撮影画像から全景320を表すパノラマ画像を生成する機能が備えられている。
【0036】
図7に、パノラマ画像の生成に関与する部位のブロック図を示す。入力画像取得部61及び画像合成部62を、図1の画像処理部13に設けておくことができる。
【0037】
入力画像取得部61は、撮像部11の出力信号に基づく複数の入力画像を取得する。撮像部11は周期的に又は間欠的に撮影領域内の被写体を撮影することで被写体の撮影画像列を取得することができ、この撮影画像列が複数の入力画像として取得される。各々の入力画像は、撮像部11を用いて撮影領域内の被写体を撮影することで得た静止画像(即ち、被写体の撮影画像)である。撮影領域とは、撮像部11の視野に収まる、実空間上の領域を指す。入力画像取得部61は、AFE12の出力信号を直接AFE12から受けることで各入力画像を取得することができる。或いは、撮影モードにおいて被写体の各撮影画像を一旦記録媒体19に記録しておき、その後、再生モードにおいて記録媒体19から読み出した被写体の各撮影画像を入力画像取得部61に与えることで入力画像取得部61に各入力画像を取得させても良い。
【0038】
図8に示す如く、複数の入力画像を記号I[1]〜I[m]によって表す(mは2以上の整数)。入力画像の撮影時における撮影画角は、入力画像I[1]〜I[m]間で不変であるとする。また、図9に示す如く、入力画像I[1]〜I[m]の撮影期間を記号PSHで表す。撮影期間PSHは、時刻tから時刻tまでの期間である。ユーザは、操作部18に対する所定操作によって撮影期間PSHの開始及び終了を指示することができる(即ち、時刻t及びtを指定することができる)。時系列順に並ぶ時刻t〜tは、撮影期間PSHに属する。時刻tは、入力画像I[i]の撮影時刻を表す(iは整数)。より具体的には例えば、時刻tは、入力画像I[i]の画像信号を撮像素子33から得るための、撮像素子33の露光期間の開始時刻、中央時刻又は終了時刻である。時刻ti+1は、時刻tよりも後の時刻である。時刻t及びtはそれぞれ時刻t及びtと一致していても良いし、或いは、時刻tよりも所定時間だけ早い時刻が時刻tであると共に時刻tよりも所定時間だけ遅い時刻が時刻tであっても良い。
【0039】
例えば、撮像装置1にパン操作を行いながら得たm枚の撮影画像が入力画像I[1]〜I[m]として取得される。より具体的には例えば、ユーザは、時刻tにおいて被写体321を撮影領域内に収めた状態で操作部18に設けられたシャッタボタン(不図示)を押し、その後、シャッタボタンを押し続けた状態で、撮影領域内に収まる被写体が被写体321から被写体322、323へと順次移り変わるように、撮像装置1にパン操作を行う。そして、撮影領域の中央付近に被写体323が収まった時点で、シャッタボタンを押す操作を解除する。この解除の時点が時刻tに相当する。シャッタボタンが押し続けられている期間中、撮像部11は周期的に被写体の撮影を繰り返し行い、これによって時系列に並ぶ複数の撮影画像(被写体の撮影画像)を得る。入力画像取得部61は、この複数の撮影画像を、入力画像I[1]〜I[m]として得ることができる。
【0040】
或いは例えば、時刻t〜tの1つ1つがユーザによって指定されても良い。この場合、ユーザは、撮影領域内に収まる被写体が被写体321から被写体322、323へと順次移り変わるように撮像装置1にパン操作を行いながら、時刻t、t、・・・及びtにおいて、1回ずつシャッタボタンを押す。
【0041】
図10に、入力画像I[1]〜I[m]の例である入力画像I[1]〜I[7]を示す。図10の例では、m=7である。i及びjが互いに異なる整数である場合、入力画像I[i]の撮影時における撮影領域と入力画像I[j]の撮影時における撮影領域とは互いに異なる。被写体321〜323の内、入力画像I[1]の撮影時には被写体321のみが撮影領域内に収まっており、入力画像I[4]の撮影時には被写体322のみが撮影領域内に収まっており、入力画像I[7]の撮影時には被写体323のみが撮影領域内に収まっている。
【0042】
撮影期間PSH中において撮像装置1に成されるパン操作は、図11(a)に示す如く、原点O(図5(c)も参照)を通る鉛直線を回転軸として撮像装置1を水平方向に回転させる操作に相当し、当該パン操作によって撮像部11の光軸に相当するY軸は水平面上で回転する。今、時刻tにおけるY軸をY[t]にて表すと共に、図11(b)に示す如く時刻tにおけるY軸(即ちY[t])と時刻tにおけるY軸(即ちY[t])との成す角度をφにて表す。φは0°である。ここでは、変数iが増大するにつれて角度φは単調増加するものとする。入力画像I[1]〜I[7]の撮影時には、“0°=φ<φ<φ<φ<φ<φ<φ<360°”が成立している。
【0043】
図7の画像合成部62は、撮影領域が互いに異なる状態で撮像部11により撮影された複数の入力画像、即ち、入力画像I[1]〜I[m]を合成することによりパノラマ画像(合成結果画像)を生成する。パノラマ画像の画角は、入力画像I[1]〜I[m]の夫々の画角よりも大きい。画像合成部62は、入力画像I[1]〜I[m]の共通の被写体が重なり合うように入力画像I[1]〜I[m]を貼り合わせて合成することでパノラマ画像を生成する。このような合成は、一般にイメージモザイキングと呼ばれており、公知のイメージモザイキングの方法を、画像合成部62の画像合成処理に利用することができる。
【0044】
図12(a)の画像420は、入力画像I[1]〜I[7]に基づくパノラマ画像の例を示している。パノラマ画像420の全画像領域を左側領域、中央領域及び右側領域にて3等分した場合、例えば図12(b)に示す如く、左側領域内の画像、中央領域内の画像及び右側領域内の画像は、夫々、図10の入力画像I[1]、I[4]及びI[7]に相当する。
【0045】
入力画像I[1]〜I[m]の取得後の任意のタイミングでパノラマ画像を生成することができる。従って例えば、撮影モードにおいて入力画像I[1]〜I[m]を取得した後、即時、撮影モードにおいてパノラマ画像を生成するようにしても良い。或いは、撮影モードにおいて入力画像I[1]〜I[m]を記録媒体19に記録しておき、その後、再生モードにおいて記録媒体19から読み出した入力画像I[1]〜I[m]に基づきパノラマ画像を生成するようにしても良い。撮影モード又は再生モードにおいて生成したパノラマ画像の画像信号を記録媒体19に記録することができる。
【0046】
一方、撮像装置1は、パノラマ画像と共に再生することのできる音響信号を記録及び生成する機能を備える。図13は、この機能の実現に特に関与する部位のブロック図である。入力音響信号取得部66及びリンク音響信号生成部67を、図1の音響信号処理部15に設けておくことができる。
【0047】
入力音響信号取得部66は、入力音響信号を取得してリンク音響信号生成部67に出力する。入力音響信号は、撮影期間PSH中における左原信号及び右原信号から成る。リンク音響信号生成部67は、入力音響信号から、出力音響信号とも言うべきリンク音響信号を生成する(リンク音響信号の詳細については後述)。
【0048】
入力音響信号の取得後の任意のタイミングでリンク音響信号を生成することができる。従って例えば、撮影モードにおいて入力音響信号を取得した後、即時、撮影モードにおいてリンク音響信号を生成するようにしても良い。或いは、撮影モードにおいて入力音響信号を記録媒体19に記録しておき、その後、再生モードにおいて記録媒体19から読み出した入力音響信号に基づきリンク音響信号を生成するようにしても良い。撮影モード又は再生モードにおいて生成したリンク音響信号を記録媒体19に記録することができる。
【0049】
入力画像I[1]〜I[m]の画像信号と入力音響信号又はリンク音響信号とを互いに関連付けて記録媒体19に記録することができ、パノラマ画像の画像信号と入力音響信号又はリンク音響信号とを互いに関連付けて記録媒体19に記録することができる。例えば、撮影モードにてリンク音響信号及びパノラマ画像を生成する場合においては、リンク音響信号をパノラマ画像に関連付けた状態でパノラマ画像と共に記録媒体19に記録すると良い。或いは例えば、再生モードにてリンク音響信号及びパノラマ画像を生成する場合においては、撮影モードにおいて入力音響信号及び入力画像I[1]〜I[m]を互いに関連付けた状態で記録媒体19に記録しておき、再生モードにおいて記録媒体19から入力音響信号及び入力画像I[1]〜I[m]を読み出して、読み出した入力音響信号及び入力画像I[1]〜I[m]からリンク音響信号及びパノラマ画像を生成すればよい。再生モードにおいて生成したリンク音響信号及びパノラマ画像も記録媒体19に記録することができる。
【0050】
撮像装置1は、パノラマ画像を特徴的な方法によって再生することができる。上述の構成及び動作を基本とする、パノラマ画像の再生方法及び利用方法を、以下の第1実施例〜第3実施例において説明する。矛盾なき限り、複数の実施例を組み合わせることも可能である。
【0051】
<<第1実施例>>
第1実施例を説明する。第1実施例では、再生モードの一種であるパノラマ再生モードにおける撮像装置1の動作を説明する。第1実施例並びに後述の第2及び第3実施例では、説明の具体化のため、入力画像I[1]〜I[m]として図10の入力画像I[1]〜I[7]が得られ、入力画像I[1]〜I[7]に基づき図12(a)のパノラマ画像420が得られたことを想定する。
【0052】
図14の再生制御部71を、図1の画像処理部13又は主制御部20によって実現することができる、或いは、画像処理部13と主制御部20の組み合わせによって実現することができる。再生制御部71は、パノラマ画像420の再生を制御する。再生制御部71には、パノラマ画像420の画像信号とリンク音響信号とが入力される。但し、図13のリンク音響信号生成部67を再生制御部71内に設け、再生制御部71内でリンク音響信号を生成するようにしても良い。
【0053】
図15及び図16等を参照して、パノラマ再生モードの動作を説明する。パノラマ画像420の全体は、所定の時間長さを有する再生期間PREPをかけて再生される。図15に示す如く、再生期間PREPの開始時刻及び終了時刻を夫々r及びrにて表す。時系列順に並ぶ時刻(再生時刻)r〜rは、再生期間PREPに属する(nは2以上の整数)。時刻ri+1は、時刻rよりも後の時刻である。時刻r及びrはそれぞれ時刻r及びrと一致していても良いし、或いは、時刻rよりも所定時間だけ早い時刻が時刻rであると共に時刻rよりも所定時間だけ遅い時刻が時刻rであっても良い。
【0054】
再生制御部71によるパノラマ画像420の再生をスライド再生と呼ぶ。スライド再生において再生制御部71は、図16に示す如くパノラマ画像420内に抽出枠440を設定し、再生期間PREP中においてパノラマ画像420上で抽出枠440を移動させながら抽出枠440内の画像を表示部16に更新表示させる。抽出枠440は矩形枠であって、抽出枠440のアスペクト比を表示部16の表示画面のアスペクト比に合わせることができる。ここでは、説明の便宜上、抽出枠440のアスペクト比及び画角は各入力画像のアスペクト比及び画角と一致するものとする。時刻rにおける抽出枠440の左端はパノラマ画像420の左端と一致する一方で時刻rにおける抽出枠440の右端はパノラマ画像420の右端と一致し、再生期間PREP中における抽出枠440の移動方向はパノラマ画像420の左端から右端に向かう方向である。従って単純な例では、時刻rにおいて表示部16に表示される表示(以下、表示画像という)は入力画像I[i]と一致する。抽出枠440を少数の画素単位(例えば数画素〜数十画素単位)で移動させ、移動のたびに表示画像を更新すれば、滑らかな映像変化が得られる。上記のような更新表示により、再生期間PREPをかけてパノラマ画像420の全体が再生される。
【0055】
再生期間PREP中の各時刻における抽出枠440内の画像を部分画像と呼び、時刻rにおける抽出枠440内の画像を第i部分画像と呼ぶ。そうすると、再生制御部71は、時刻r、r、・・・rにおいて、パノラマ画像420の第1部分画像、第2部分画像、・・・第n部分画像を、順次更新しながら、表示画像として表示部16に表示させることになる。第1部分画像〜第n部分画像の夫々はパノラマ画像420の一部であって、第1部分画像〜第n部分画像は互いに異なる。図17の画像J[1]〜J[7]は、夫々、第1〜第7部分画像の例である。図17の第i部分画像J[i]は、図10の入力画像I[i]と同じ画像である。
【0056】
再生制御部71は、表示部16を用いて上記の如くパノラマ画像420をスライド再生する際、記録媒体19に記録された音響信号に基づくリンク音響信号を、スピーカ部17を用いて同時に再生する。上述の説明から理解されるように、記録媒体19に記録された音響信号はリンク音響信号そのものでありうる。
【0057】
リンク音響信号生成部67(図13参照)は、指向性制御を用いて入力音響信号から指向性を有する音響信号である指向性音響信号を生成し、該指向性音響信号をリンク音響信号として出力することができる。図18に示す如く(図5(c)も参照)、θ≦θ≦θを満たす音源SSが位置する、実空間上の領域を強調対象領域と呼ぶ。そうすると、具体的には、強調対象領域外に位置する音源SSからの音に対する感度よりも、強調対象領域内に位置する音源SSからの音に対して高い感度を持つ指向性音響信号を生成すると良い。即ち、強調対象領域内の音源SSが位置している方向に指向軸を持つ指向性音響信号を生成すると良い。θ及びθは、0°≦θ<90°<θ≦180°を満たす。更に、90°−θ=θ−90°、が満たされてもよく、典型的には例えば、角度(θ−θ)を撮像部11の撮影画角と一致させても良い。以下では、角度(θ−θ)が撮像部11の撮影画角に一致しているものとする。
【0058】
尚、リンク音響信号は、ステレオ信号(例えば、図5(a)のポーラパターン310を有する音響信号と図5(b)のポーラパターン311を有する音響信号とから成るステレオ信号)であっても良いし、モノラル信号であっても良い。
【0059】
撮影期間PSH中のパン操作によるY軸の回転に伴って(図11(a)及び(b)参照)、強調対象領域も撮影期間PSH中において刻々と変化する。例えば、図19(a)に示す如く撮影期間PSHにおける時刻tでは、被写体321〜323の内、被写体321のみが撮影領域内に収まると共に強調対象領域に収まり、図19(b)に示す如く撮影期間PSHにおける時刻tでは、被写体321〜323の内、被写体322のみが撮影領域内に収まると共に強調対象領域に収まり、図19(c)に示す如く撮影期間PSHにおける時刻tでは、被写体321〜323の内、被写体323のみが撮影領域内に収まると共に強調対象領域に収まる。
【0060】
再生期間PREPの長さ(より具体的には例えば、時刻r及びr間の時間長さ)は、音響信号の記録時間の長さ、即ち撮影期間PSHの長さ(より具体的には例えば、時刻t及びt間の時間長さ)と一致させることが望ましく、この一致が実現されるように抽出枠440の移動速度を決定することが望ましい。再生期間PREPの長さを音響信号の記録時間の長さ(撮影期間PSHの長さ)と一致させた場合、撮影期間PSH中の左原信号及び右原信号に基づく、撮影期間PSHの長さ分のリンク音響信号が再生期間PREPにおいて再生されることになる。
【0061】
上記のようなスライド再生によれば、例えば、図20に示す如く、最初は楽器321の映像再生に合わせて楽器321による音楽が再生され、表示画像が全景320の右側に移動するにつれ(抽出枠440がパノラマ画像420の右側に移動するにつれ)、観客としての人物323の発声音や拍手の音が再生されるようになる。
【0062】
入力音響信号に対する指向性制御では、入力音響信号の内、特定の方向から到来する音の信号成分が他の信号成分よりも強調され、強調後の入力音響信号が指向性音響信号として生成される。従って、第1実施例における再生方法を以下のように表現することができる(この表現は後述の第2実施例にも適用される)。再生期間PREPにおいて音源としての被写体(楽器)321が表示されているタイミングにおいては、表示されていない被写体323からの音と比べて、被写体321からの音が強調されてスピーカ部17から出力され、再生期間PREPにおいて音源としての被写体(人物)323が表示されているタイミングにおいては、表示されていない被写体321からの音と比べて、被写体323からの音が強調されてスピーカ部17から出力される。
【0063】
或いは、第1実施例における再生方法を以下のように表現することもできる(この表現は後述の第2実施例にも適用される)。再生期間PREPにおいて音源の画像信号を含む第i部分画像が表示部されるとき(ここにおけるiは1以上n以下の整数)、第i部分画像に描画される音源からの音が強調されてスピーカ部17より出力される。即ち例えば、時刻rにおいて図17の部分画像J[1]が表示されるとき、部分画像J[1]に描画されない音源323からの音(即ち、人物の発生音)と比べて、部分画像J[1]に描画される音源321からの音(即ち、楽器の発生音)が強調されてスピーカ部17から出力され、時刻rにおいて図17の部分画像J[7]が表示されるとき、部分画像J[7]に描画されない音源321からの音(即ち、楽器の発生音)と比べて、部分画像J[7]に描画される音源323からの音(即ち、人物の発生音)が強調されてスピーカ部17から出力される。
【0064】
第1実施例によれば、パノラマ映像とも言うべきパノラマ画像の再生時において、表示映像に合わせた音響信号再生が可能となり、臨場感のあるパノラマ画像再生が可能となる。
【0065】
<<第2実施例>>
第2実施例を説明する。第2実施例及び後述の第3実施例は、第1実施例を基礎とする実施例であり、第2及び第3実施例において特に説明しない事項に関しては、矛盾なき限り、第1実施例の記載を第2及び第3実施例に適用することができる。第2実施例においても、パノラマ再生モードにおける撮像装置1の動作を説明する。
【0066】
第2実施例では、再生期間PREPが複数の期間に分割される。ここでは、説明の具体化のため、図21に示す如く、再生期間PREPが3つの分割期間PREP1、PREP2及びPREP3に等分割されるものとする。分割期間PREP2は分割期間PREP1の後の期間であり、分割期間PREP3は分割期間PREP2の後の期間である。
【0067】
パノラマ画像420のスライド再生の方法は第1実施例に示したそれと同様である。従って、再生期間PREPの前半部分では被写体321が表示され、再生期間PREPの中央部分では被写体322が表示され、再生期間PREPの後半部分では被写体323が表示される(図20参照)。尚、再生期間PREPの後半部分は、再生期間PREPの前半部分よりも時間的に後の部分であり、再生期間PREPの中央部分は、再生期間PREPの前半部分と再生期間PREPの後半部分との間の部分である。ここでは、分割期間PREP1において図22(a)のエリア511内の被写体が表示され、分割期間PREP1において図22(b)のエリア512内の被写体が表示され、分割期間PREP3において図22(c)のエリア513内の被写体が表示されるものとする。図22(a)〜(c)における斜線領域が、夫々、エリア511〜513に相当する。被写体321〜323の内、エリア511内には被写体321のみが存在し、エリア512内には被写体322のみが存在し、エリア513内には被写体323のみが存在する。
【0068】
エリア511は、分割期間PREP1に対応する撮影時の期間(即ち、撮影期間PSHの前半部分)において撮像部11の撮影領域内に収められたエリアであり、エリア512は、分割期間PREP2に対応する撮影時の期間(即ち、撮影期間PSHの中央部分)において撮像部11の撮影領域内に収められたエリアであり、エリア513は、分割期間PREP3に対応する撮影時の期間(即ち、撮影期間PSHの後半部分)において撮像部11の撮影領域内に収められたエリアである。尚、撮影期間PSHの後半部分は、撮影期間PSHの前半部分よりも時間的に後の部分であり、撮影期間PSHの中央部分は、撮影期間PSHの前半部分と撮影期間PSHの後半部分との間の部分である。
【0069】
図13のリンク音響信号生成部67は、指向性制御を用いて撮影期間PSH中の全体の入力音響信号より、エリア511内に位置する音源からの音響信号を第1方向信号として抽出する。同様に、生成部67は、指向性制御を用いて撮影期間PSH中の全体の入力音響信号より、エリア512内に位置する音源からの音響信号を第2方向信号として抽出し、指向性制御を用いて撮影期間PSH中の全体の入力音響信号より、エリア513内に位置する音源からの音響信号を第3方向信号として抽出する。第1〜第3方向信号はリンク音響信号に含められる。
【0070】
図14の再生制御部71は、パノラマ画像420のスライド再生を行う際、被写体321の表示が成される分割期間PREP1において第1方向信号をスピーカ部17にて再生させ、被写体322の表示が成される分割期間PREP2において第2方向信号をスピーカ部17にて再生させ、被写体323の表示が成される分割期間PREP3において第3方向信号をスピーカ部17にて再生させる。
【0071】
上記の方法による具体的な再生動作例を、図23(a)及び(b)を参照して説明する。撮影期間PSHにおいては、上述のパン操作によって撮影領域内に収まる被写体が被写体321から被写体322、323へと順次移り変わる。この際、図23(a)に示す如く、人物としての被写体323からの音が撮影期間PSHの前半部分にだけ発生し、楽器としての被写体321からの音が撮影期間PSHの後半部分にだけ発生したことを想定する。被写体323からの音及び被写体321からの音は入力音響信号として取得される。
【0072】
このような入力音響信号が取得された場合、撮影期間PSH中の後半部分の入力音響信号から、エリア511内に位置する音源からの音響信号(即ち楽器321の発生音による音響信号)が指向性制御によって第1方向信号として抽出され、撮影期間PSH中の前半部分の入力音響信号から、エリア513内に位置する音源からの音響信号(即ち人物323の発生音による音響信号)が指向性制御によって第3方向信号として抽出される。そして、パノラマ画像420のスライド再生が行われる際、図23(b)に示す如く、楽器321の表示が成される分割期間PREP1において第1方向信号(即ち楽器321の発生音による音響信号)がスピーカ部17にて再生され、人物323の表示が成される分割期間PREP3において第3方向信号(即ち人物323の発生音による音響信号)がスピーカ部17にて再生される。
【0073】
上述したように、撮像部11の光軸に相当するY軸は撮影期間PSH中において回転し、これに伴ってマイクロホン14L及び14Rが配置されるX軸(図5(c)参照)も回転する。従って、各方向信号を抽出するためには、撮影期間PSH中の各時刻におけるY軸とエリア511〜513との位置関係を知る必要がある。リンク音響信号生成部67は、当該位置関係を、撮影期間PSH中に得られた角速度センサ情報より知ることができる。即ち、角速度センサ情報(撮影期間PSH中に得られた角速度センサ情報)を用いた指向性制御により、入力音響信号から各方向信号を抽出することができる。各方向信号の生成を任意のタイミングにおいて実行可能とするために、角速度センサ情報を入力音響信号に関連付けて記録媒体19に記録しておくことができる。
【0074】
撮像装置1に、撮像装置1の筐体の角速度を検出する角速度センサ(不図示)及び角度検出部(不図示)を設けておくことができる。当該角速度センサは、パン操作における角速度、即ち、原点Oを通る鉛直線を回転軸としてY軸を水平面上で回転させるときにおける撮像装置1の筐体の角速度を、少なくとも検出可能である(図11(a)及び(b)参照)。上記角速度センサ情報は、当該角速度センサの検出結果を表す情報である。角度検出部は、角速度センサ情報に基づき、撮影期間PSH中の任意の時刻における角度φを求めることができる。生成部67は、角度検出部によって求められた角度φを用いて、各方向信号の抽出を行うことができる。
【0075】
第1実施例と同様、再生制御部71は、表示部16を用いてパノラマ画像420をスライド再生する際、記録媒体19に記録された音響信号に基づくリンク音響信号を、スピーカ部17を用いて同時に再生する。リンク音響信号に含められる第1〜第3方向信号は、指向性制御を用いて入力音響信号から生成される指向性音響信号の一種である。上述したように、入力音響信号に対する指向性制御では、入力音響信号の内、特定の方向から到来する音の信号成分が他の信号成分よりも強調され、強調後の入力音響信号が指向性音響信号として生成される。第1、第2、第3方向信号においては、夫々、エリア511、512、513に位置する被写体からの音が強調されている(但し、第2実施例の想定下ではエリア512内の被写体は音を発しない)。
【0076】
第1実施例と同様、第2実施例によっても、パノラマ映像とも言うべきパノラマ画像の再生時において、表示映像に合わせた音響信号再生が可能となり、臨場感のあるパノラマ画像再生が可能となる。
【0077】
<<第3実施例>>
第3実施例を説明する。上述の第1及び第2実施例に係るスライド再生では、パノラマ画像420の第1部分画像、第2部分画像、・・・第n部分画像を、順次、表示画像として表示部16に表示させている。但し、このようなスライド再生は、スライド再生が元々可能な撮像装置1又はスライド再生用の専用ソフトウェアが搭載された機器では実行可能であるものの、パーソナルコンピュータ等の汎用機器においては実行困難である。
【0078】
そこで、第3実施例では、第1〜第n部分画像から成る動画像を生成する。図24には、図1の画像処理部13又は主制御部20に設けておくことのできる動画像生成部76が示されている。
【0079】
動画像生成部76は、パノラマ画像420から第1〜第n部分画像をn枚の静止画像として抽出し、そのn枚の静止画像(即ち第1〜第n部分画像)から成る動画像600を生成する。動画像600は、第1〜第n部分画像を、第1番目〜第n番目のフレームとして有する動画像である。撮像装置1は、動画像600の画像信号を、動画像用の画像ファイル形式にて記録媒体19に記録することができる。動画像600の各フレームの画像サイズが所望の画像サイズ(例えば、640×480画素の解像度を持つVGAサイズ)となるように、動画像生成部76は、第1〜第n部分画像の画像サイズを決定することができる。
【0080】
撮像装置1は、動画像600の画像信号とリンク音響信号を互いに関連付けて記録媒体19に記録しても良い。具体的には例えば、動画像600の画像信号とリンク音響信号を格納した動画像ファイルを生成し、当該動画像ファイルを記録媒体19に記録しても良い。第1又は第2実施例にて述べたリンク音響信号を動画像600に関連付けて記録媒体19に記録することが可能である。動画像を音響信号と共に再生可能な任意の電子機器(例えば、携帯情報端末、パーソナルコンピュータ、テレビ受信機)に対して上記動画像ファイルを与えると、当該電子機器上において、動画像600がリンク音響信号と共に再生され、これによって第1又は第2実施例で述べたものと同様の映像及び音の同時再生が成される。
【0081】
<<変形等>>
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。上述の実施形態に適用可能な注釈事項として、以下に、注釈1〜注釈5を記す。各注釈に記載した内容は、矛盾なき限り、任意に組み合わせることが可能である。
【0082】
[注釈1]
上述の実施形態では、マイク部14を形成するマイクロホンの個数が2つであることを想定しているが、マイク部14は互いに異なる位置に配置された3以上のマイクロホンから形成されても良い。
【0083】
[注釈2]
或いは、上述の第1実施例において、マイク部14は、指向性を有する単一の有指向性マイクロホンのみにて形成されていても良い。第1実施例において、マイク部14が単一の有指向性マイクロホンのみにて形成される場合の構成及び動作を説明する。この場合、例えば、図3のマイク部14からマイクロホン14Rを割愛し、有指向性マイクロホンをマイクロホン14Lとして用いる。そして、有指向性マイクロホンとしてのマイクロホン14Lの出力に基づく左原信号の内、撮影期間PSH中における左原信号が、入力音響信号として入力音響信号取得部66(図13参照)に取得される。有指向性マイクロホンとしてのマイクロホン14Lを、有指向性マイクロホン14Lとも呼ぶ。
【0084】
有指向性マイクロホン14Lは、例えば(図18参照)、強調対象領域外に位置する音源SSからの音に対する感度よりも、強調対象領域内に位置する音源SSからの音に対して高い感度を持つ(即ち、強調対象領域内の音源SSが位置している方向に指向軸を持つ)。そうすると、図13のリンク音響信号生成部67は、有指向性マイクロホン14Lの出力に基づく入力音響信号そのもの(即ち、撮影期間PSH中における左原信号そのもの)をリンク音響信号として生成することができ、これによって第1実施例と同様の音響信号再生が可能となる。即ち例えば、撮影期間PSH中の左原信号(有指向性マイクロホン14Lの出力音響信号)に基づく、撮影期間PSHの長さ分のリンク音響信号が再生期間PREPにおいて再生されることになり、図20に示すものと同様の画像再生及び音響信号再生が可能となる。
【0085】
[注釈3]
或いは、上述の第1実施例において、マイク部14は、指向性を有さない単一の無指向性マイクロホンのみにて形成されていても良い。第1実施例において、マイク部14が単一の無指向性マイクロホンのみにて形成される場合の構成及び動作を説明する。この場合、例えば、図3のマイク部14からマイクロホン14Rを割愛し、無指向性マイクロホンをマイクロホン14Lとして用いる。そして、無指向性マイクロホンとしてのマイクロホン14Lの出力に基づく左原信号の内、撮影期間PSH中における左原信号が、入力音響信号として入力音響信号取得部66(図13参照)に取得される。無指向性マイクロホンとしてのマイクロホン14Lを、無指向性マイクロホン14Lとも呼ぶ。
【0086】
マイク部14を無指向性マイクロホン14Lのみにて形成する場合における、無指向性マイクロホン14Lと撮像装置1の筐体1との位置関係例を、図25に示す。図25の例において、無指向性マイクロホン14Lの後方側には筐体1が位置しているため、撮像装置1の後方側から到来する音は筐体1によって遮蔽されて無指向性マイクロホン14Lに収音されにくい。結果、無指向性マイクロホン14Lは、筐体1と協働して、有指向性マイクロホンと等価な機能を持つようになる。
【0087】
即ち例えば、無指向性マイクロホン14Lは、筐体1と協働して実質的に、強調対象領域外に位置する音源SSからの音に対する感度よりも、強調対象領域内に位置する音源SSからの音に対して高い感度を持つ(即ち、強調対象領域内の音源SSが位置している方向に指向軸を持つ)。そうすると、図13のリンク音響信号生成部67は、無指向性マイクロホン14Lの出力に基づく入力音響信号そのもの(即ち、撮影期間PSH中における左原信号そのもの)をリンク音響信号として生成することができ、これによって第1実施例と同様の音響信号再生が可能となる。即ち例えば、撮影期間PSH中の左原信号(無指向性マイクロホン14Lの出力音響信号)に基づく、撮影期間PSHの長さ分のリンク音響信号が再生期間PREPにおいて再生されることになり、図20に示すものと同様の画像再生及び音響信号再生が可能となる。
【0088】
尚、図4に示す如く、表示部16の筐体である第1筐体と表示部16以外の部材の筐体である第2筐体とを接合することで撮像装置1の全筐体が形成される場合、筐体1は第1筐体であっても良い。また、図4に示す状況とは異なるが、マイク部14にマイクロホン14L及び14Rが含まれる場合においても、マイクロホン14L及び14Rを第1筐体に設けるようにしても良い。
【0089】
[注釈4]
撮像装置1の運動をカメラ運動と呼ぶ。上述の実施形態では、撮影期間PSH中におけるカメラ運動の例としてパン操作による回転運動を示しているが、撮影期間PSH中におけるカメラ運動には、パン操作による回転運動の他にも、チルト操作による回転運動や任意の方向への平行移動が含まれうる。
【0090】
[注釈5]
図1の撮像装置1を、ハードウェア、或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって構成することができる。ソフトウェアを用いて撮像装置1を構成する場合、ソフトウェアにて実現される部位についてのブロック図は、その部位の機能ブロック図を表すことになる。ソフトウェアを用いて実現される機能をプログラムとして記述し、該プログラムをプログラム実行装置(例えばコンピュータ)上で実行することによって、その機能を実現するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 撮像装置
11 撮像部
13 画像処理部
14 マイク部
14L、14R マイクロホン
15 音響信号処理部
62 画像合成部
67 リンク音響信号生成部
71 再生制御部
76 動画像生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影領域内の被写体の撮影を行う撮像部と、
マイクロホンから成るマイク部と、
前記撮影領域が互いに異なる状態で前記撮像部により撮影された複数の入力画像を合成することによりパノラマ画像を生成する画像合成部と、
前記複数の入力画像の撮影期間中における前記マイク部の出力に基づく音響信号を、前記パノラマ画像の画像信号と共に記録する記録媒体と、
前記パノラマ画像を部分画像ごとに表示部に更新表示させることで、前記パノラマ画像の全体を再生する再生制御部と、を備えた撮像装置において、
前記マイク部の出力から指向性を有する音響信号である指向性音響信号を生成する音響信号処理部を更に備え、
前記再生制御部は、前記パノラマ画像を再生する際、前記記録媒体に記録された音響信号に基づく出力音響信号として前記指向性音響信号を同時に再生する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記撮影範囲内の前記被写体には、音源として機能する被写体が含まれ、
再生期間中において前記音源が前記表示部にて表示されるとき、前記音源からの音が強調して再生されるように、前記音響信号処理部は前記指向性音響信号を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
再生期間は、時系列順に並ぶ第1、第2、・・・第n再生時刻から成り(nは2以上の整数)、
前記再生制御部は、前記第1、第2、・・・第n再生時刻において、前記パノラマ画像の第1部分画像、第2部分画像、・・・第n部分画像を、順次、前記表示部に更新表示させ、
前記第1部分画像〜前記第n部分画像は互いに異なり、
前記再生期間中において第i部分画像が前記表示部にて表示されるとき(iは1以上n以下の整数)、前記第i部分画像に描画される音源から到来した音が強調して再生されるように、前記音響信号処理部は前記指向性音響信号を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記パノラマ画像の第1部分画像、第2部分画像、・・・第n部分画像をn枚の静止画像として前記パノラマ画像から抽出して、前記n枚の静止画像から成る動画像を生成する動画像生成部を更に備え(nは2以上の整数)、前記動画像を前記記録媒体に記録し、
前記第1部分画像〜前記第n部分画像は互いに異なる
ことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の撮像装置。
【請求項5】
前記動画像を前記記録媒体に記録する際、前記出力音響信号も前記動画像に関連付けて前記記録媒体に記録する
ことを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図21】
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【図24】
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【図5】
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【図19】
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【図20】
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【図22】
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【図23】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−178807(P2012−178807A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41961(P2011−41961)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】