説明

撮影装置および撮影装置を備えた遠隔計測装置

【課題】高温、高輝度の被写体の撮影に好適な撮影装置および撮影装置を備えた遠隔計測装置を提供すること。
【解決手段】撮影装置は、カメラと、予め設定されたシャッタースピードで被写体を繰り返し撮影指示するカメラ制御手段と、撮影された画像の所定の領域の輝度の平均値を求める手段と、輝度平均値が所定の範囲内にあるか否かを判定する手段と、輝度平均値が所定の範囲内にあると判定された場合に直近に撮影された画像を出力する手段とを備える。遠隔計測装置は、この撮影装置と、出力画像から被写体の所定の箇所の長さを読み取る手段と、読み取った長さを常温時の長さに補正する補正手段とを備える。予め定められた一定の輝度、温度の状態において画像の撮影および計測が行われるので、常に最良の画像が取得でき、計測値を確実に取得できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影装置および撮影装置を備えた遠隔計測装置に関するものであり、特に、高温、高輝度の被写体の撮影に好適な撮影装置およびこの撮影装置を備えた遠隔計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高温、高輝度の被写体の撮影のための撮影装置において、各種の技術が提案されている。下記特許文献1には高温、高輝度の被写体の撮影のための撮影装置の一例が開示されている。この撮影装置は、高輝度被写体又は高温度被写体を撮像したことによる赤外線撮像部の故障を防止した赤外線カメラを提供するものである。
【0003】
この赤外線カメラは、赤外線撮像部と、入射する光を遮断するためのシャッタ機構と、入射する光の絞りを調節する光学絞り機構と、画像信号生成部と、赤外線撮像部からの電気信号を画像信号生成部の利得より低い利得で増幅した後A/D変換し、A/D変換した赤外線信号が予め定められた閾値以上になった時に、外部からの前記赤外線撮像部へ入射する光を遮断又は絞るために前記シャッタ機構又は光学絞り機構に入射光制御信号を送る入射光制御信号生成部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−278036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば高温に熱した金属を金型で押して成形する熱間鍛造品のプレス加工においては、金型の交換時などにおいて、上下の金型がどの程度ずれているかを測定して金型の位置を修正する必要がある。このために、試験的にプレスを行って出来たワーク(被加工物)のずれ寸法を測る必要がある。しかし、プレス直後のワークは例えば1200度以上あり、高温、高輝度の状態であるので、ノギス等を当てて測ることが出来ない。そこで、常温まで冷えるのを待っていると非常に時間がかかり、装置の稼働率が低下してしまうという問題点があった。また、ある程度冷めた状態でノギスで測定した場合においても、常温時における測定値に補正しなければならないが、このためには同時にワークの温度も測定する必要があるという問題点もあった。
【0006】
そこで、被接触でワークのずれ寸法を測定するために、ワークの所望の箇所の画像を撮影し、画像処理によってずれ寸法を読み取ることが考えられる。また、撮影時のワークは高温と常温の中間の温度であるために、常温時の寸法に温度補正を行う必要があり、このために、画像と共に温度も読み取る必要がある。
【0007】
しかし、前記したような従来の撮影方法においては、画像を得ることが目的であるため、カメラ内部でシャッタースピードや絞りを自動的に調節して撮影が行われるので、画像が得られてもシャッタースピードや絞りがその都度異なり、その画像の輝度から被写体の温度を推定することが困難であるという問題点があった。
【0008】
本発明の目的は、前記のような従来技術の問題点を解決し、高温、高輝度の被写体の撮影に好適な撮影装置および撮影装置を備えた遠隔計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の撮影装置は、高温の被写体を撮影する撮影装置において、被写体の可視光画像を撮影するカメラ手段と、判定手段によって輝度平均値が所定の範囲内にあると判定されるまで、前記カメラ手段を用いて予め設定されたシャッタースピードで被写体を繰り返し撮影指示するカメラ制御手段と、前記カメラ手段において撮影された画像の所定の領域の輝度の平均値を求める輝度平均値生成手段と、前記輝度平均値が所定の範囲内にあるか否かを判定する輝度判定手段と、前記輝度判定手段によって前記輝度平均値が所定の範囲内にあると判定された場合に直近に撮影された画像を出力する画像出力手段とを備えたことを最も主要な特徴とする。
【0010】
また、本発明の撮影装置は、高温の被写体を撮影する撮影装置において、被写体の赤外線画像を撮影する赤外線カメラ手段と、撮影指示手段が撮影開始信号を出力するまで、前記赤外線カメラ手段を用いて被写体の赤外線画像を繰り返し撮影指示する赤外線カメラ制御手段と、前記赤外線カメラ手段において撮影された画像の所定の領域の温度を読み取り、温度の平均値が所定の範囲内になったら撮影開始信号を出力する撮影指示手段と、被写体の可視光画像を撮影するカメラ手段と、前記撮影開始信号に基づいて予め設定されたシャッタースピードで被写体を撮影指示するカメラ制御手段と、撮影された画像を出力する画像出力手段とを備えたことを最も主要な特徴とする。
【0011】
また、上記した撮影装置において、更に、被写体の種類に応じて前記カメラ手段を移動させる移動手段を備えた点にも特徴がある。また、上記した撮影装置において、前記輝度判定手段が、前記輝度平均値が所定の範囲よりも暗いと判定した場合には、前記カメラ手段に1段階遅いシャッタースピードを設定するシャッタースピード変更手段を備えた点にも特徴がある。
【0012】
また、本発明の遠隔計測装置は、上記した撮影装置と、出力画像から被写体の所定の箇所の長さを読み取る長さ読み取り手段と、読み取った長さを常温時の長さに補正する補正手段とを備えたことを最も主要な特徴とする。
【0013】
また、上記した遠隔計測装置において、前記被写体は高温でプレス加工された金属製品であり、前記カメラ手段は、前記金属製品の端面の画像を撮影し、前記長さ読み取り手段は、端面における上下の型のずれの長さを読み取る点にも特徴がある。
【発明の効果】
【0014】
本発明の撮影装置およびこの撮影装置を備えた遠隔計測装置には以下のような効果がある。
(1)撮影をする際に予め定められた一定の輝度あるいは温度の状態において画像の撮影および計測を行うので、常に最良の画像が取得でき、計測値を確実に取得できる。
(2)撮影をする際に予め定められた一定の輝度あるいは温度の状態において画像の撮影および計測を行うので、計測値の温度補正が容易であり、かつ補正の精度も向上する。
(3)撮影をする際の輝度あるいは温度を段階的に複数個設けることにより、より広い温度範囲において撮影および測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本発明の撮影装置を含む遠隔計測装置の実施例1の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は本発明の撮影装置において撮影した被写体端部の画像例を示す説明図である。
【図3】図3は本発明の遠隔計測装置の実施例1の処理の内容を示すフローチャートである。
【図4】図4は本発明の遠隔計測装置の実施例2の構成を示すブロック図である。
【図5】図5は本発明の遠隔計測装置の実施例3の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は本発明の遠隔計測装置の実施例2の処理の内容を示すフローチャートである。
【図7】図7は本発明の遠隔計測装置の実施例4の処理の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、この発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は本発明の撮影装置を含む遠隔計測装置の実施例1の構成を示すブロック図である。画像処理装置20には、複数のカメラ12〜15および入力装置21、出力装置22が接続されている。
【0018】
画像処理装置20は、本発明の撮影装置の機能および遠隔計測装置の機能の両方を実行する。画像処理装置20は、例えば標準的なインターフェイス機能を備えた周知のパソコンに、後述する本発明の機能を実現するプログラムを作成し、インストールすることによって実現できる。入力装置21は例えば周知のキーボードあるいはマウスであってもよく、出力装置22は例えば周知の液晶表示装置であってもよい。
【0019】
ワーク(被加工物、高温状態でプレス加工された金属製品)10は図示しないワークセット台の所定の位置に所定の向き、例えばワークの表面における上下の金型の境目の線22が水平になるように搭載される。
【0020】
被写体の可視光画像を撮影するカメラ手段であるカメラ12〜15はそれぞれ画像処理装置20であるパソコンと接続可能なデジタルインターフェイス機能を備え、画像処理装置20からシャッタースピードなどの設定や撮影の制御および撮影した画像の読み取りが可能なデジタル静止画カメラである。絞りは固定でよい。
【0021】
レンズ16〜19は通常のカメラ用レンズであり、フォーカス調整は手動であってもよい。またレンズには赤外線カットフィルターが装着されている。なお、カメラの撮像素子を赤外線から保護するために機械的シャッターを備えてもよい。
【0022】
カメラ12〜15は例えば図1に示すように配置する。即ち、ワーク10のそれぞれの端面において、端面の中心を通る垂線上で端面から一定の距離の位置にカメラ12およびカメラ14を配置し、端面を正面から撮影する。また、端面と平行で端面を通る直線上で端面から一定の距離の位置にカメラ13およびカメラ15を配置し、端面を水平側面から撮影する。
【0023】
複数種類のワーク10を扱う場合に、例えばそれぞれのワークの長さが異なる場合には、一方の端面の位置を合わせてワークセット台に置けば一方の端面については2台のカメラ12、13を共用できるが、他方の端面については、例えば異なる位置毎に、端面と平行で端面を通る直線上で端面から一定の距離の位置にカメラ15を設置し、ワーク種別によって切り替えて使用する。他方の端面を正面から撮影するカメラ14は複数台設置できないので、焦点深度の深いレンズを使用するか、ワーク毎に画像処理装置20が焦点を予め定められた距離に移動させる。
【0024】
図2は本発明の撮影装置において撮影した被写体端部の画像例を示す説明図である。図2(a)は例えばカメラ12あるいは14において撮影された端面の画像を画像処理した後の画像例であり、斜線部分が端面である。本発明においては端面を所定のシャッタースピードで繰り返し撮影し、端面内の所定の領域26における画素の輝度の平均値を求め、この平均値が所定の範囲内に入った場合に、直近に撮影された画像を出力する。所定の領域26には背景が含まれないように予め設定する。
【0025】
上下の金型の端面と平行なずれ寸法Dは、例えば以下のようにして求める。まず端面の中心座標Cを求める。中心座標Cは端面部分の画素の座標値の平均値として求めることができる。次に、水平より少し上方向および水平より少し下方向における中心Cから端面の縁までの距離AおよびBを求める。ずれ寸法Dは、D=|A−B|(AとBの差の絶対値)として求められる。
【0026】
図2(b)は例えばカメラ13あるいは15において撮影された端部の側面画像を画像処理した後の画像例であり、斜線部分が端部である。端部側面の所定の領域26における画素の輝度の平均値を求め、この平均値が所定の範囲内に入った場合に、直近に撮影された画像を出力する。所定の領域26には背景が含まれないように予め設定する。
【0027】
上下の金型の端面と垂直なずれ寸法Gは、例えば以下のようにして求める。まず、端部側面画像の中央より少し上および中央より少し下において、任意の垂直線から端部の縁までの距離(縁の水平位置座標)EおよびFを求める。ずれ寸法Gは、G=|E−F|(EとFの差の絶対値)として求められる。
【0028】
図3は本発明の遠隔計測装置の実施例1の処理の内容を示すフローチャートである。この処理は画像処理装置20の周知の処理装置によって実行される。S10においては、入力装置21からワーク種別を指定する情報が入力されたか否かによって、ワーク種別が指定されたか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS10に戻って処理を繰り返すが、肯定の場合にはS11に移行する。S11においてはワーク種別指定情報を読み込み、必要に応じて使用するカメラの切り替え、あるいはカメラの焦点距離の制御等を行う。
【0029】
S12においてはカメラの番号を示す変数nに1をセットする。S13においてはカメラn(nは変数、以下同様)は撮影完了か、即ちカメラnの撮影完了フラグがオンか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS14に移行するが、肯定の場合にはS18に移行する。
【0030】
S14においてはカメラnを制御して予め設定されている所定のシャッタースピードでワーク10を撮影し、画像を読み込んで保存する。この際の絞りは予め定められた値に固定しておく。S14は、判定手段によって輝度平均値が所定の範囲内にあると判定されるまで、カメラ手段を用いて予め設定されたシャッタースピードで被写体を繰り返し撮影指示するカメラ制御手段に相当する。
【0031】
S15においては撮影された画像の中の所定エリア26の輝度の平均値を求める。S15は、カメラ手段において撮影された画像の所定の領域の輝度の平均値を求める輝度平均値生成手段に相当する。
【0032】
S16においては求められた輝度の平均値が所定の値である上限値よりも大きいか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS17に移行するが、肯定の場合にはS18に移行する。輝度が例えば8ビット(0〜255)で表わされている場合には、上限値は例えば130〜160程度であってもよい。S16は、輝度平均値が所定の範囲内にあるか否かを判定する輝度判定手段に相当する。
【0033】
S17においてはカメラnの撮影完了フラグをオンに設定する。S18においては変数nに1を加算する。S19においてはnが4(使用するカメラの総数)より大きいか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS13に移行するが、肯定の場合にはS20に移行する。S20においては撮影が全てのカメラにおいて完了したか否か、即ち全てのカメラの撮影完了フラグがオンであるか否が判定され、判定結果が否定の場合にはS12に移行するが、肯定の場合にはS21に移行する。
【0034】
S21においては各カメラの直近の撮影画像に対して周知のノイズ除去、2値化等の画像処理を行って端面画像を出力する。S21は、輝度判定手段によって輝度平均値が所定の範囲内にあると判定された場合に直近に撮影された画像を出力する画像出力手段に相当し、S10からS21までの処理が本発明の撮影装置の機能を含んでいる。
【0035】
S22においては、図2に関する説明に記載したような方法でワーク端面画像から位置ずれ量(D、Gなど)を計測する。S22は、出力画像から被写体の所定の箇所の長さを読み取る長さ読み取り手段、より具体的にはカメラ手段によって撮影された金属製品の端面の画像から、端面における上下の型のずれの長さを読み取る長さ読み取り手段に相当する。
【0036】
S23においてはずれ量の温度補正を行う。S23は、読み取った長さを常温時の長さに補正する補正手段に相当する。本発明においては、絞り固定、かつ特定のシャッタースピードで撮影を行い、所定のエリアの輝度の平均値が一定の範囲内にある画像を採用する。この時のワーク10の輝度は常に一定の範囲内にあり、ワーク10の輝度と温度は1対1に対応するので、結局、画像が撮影された時のワーク10の温度は常に一定の範囲内にあることになる。
【0037】
そこで、例えば常温時のワークのずれ寸法DLをノギス等で計測して、画像から計測したずれ寸法の補正係数k=DL/Dを算出しておけば、これ以降は、画像から計測したずれ寸法DやGにこの補正係数kを乗算することによって常温時のずれ寸法に補正できる。S24においては補正した位置ずれ量を出力装置22に出力(表示)する。
【0038】
1つのワーク10においても端部形状や近傍の体積はそれぞれの端部毎に異り、例えば近傍の体積が大きいほど冷める速度が遅くなり、ワーク10のそれぞれの端部においては温度および輝度がそれぞれ異なる速度で低下していく。従って、本発明においては各カメラの制御はそれぞれ独立して行われ、ワークの輝度が計測に最適な輝度になった時点で撮影された計測に最適な画像が出力される。
【0039】
実施例1においては、常に計測に最適な輝度の画像が得られ、かつ撮影時のワーク10は常に一定の温度範囲内にあるので、計測および補正が容易であると共に計測精度が向上する。
【実施例2】
【0040】
図4は本発明の遠隔計測装置の実施例2の構成を示すブロック図である。実施例1は通常の可視光で撮影するカメラを用いてワーク10の温度を推定するものであったが、実施例2は通常のカメラに加えて赤外線カメラを使用し、赤外線カメラの画像からワーク10の温度を読み取るようにしたものである。
【0041】
実施例2の遠隔計測装置は図1に示した実施例1の構成に加えて被写体であるワーク10の赤外線画像を撮影する赤外線カメラ25を備えている。赤外線カメラ25のレンズ26は赤外線のみを通すフィルターを備えている。実施例2においては赤外線カメラは1台のみ設け、例えばワークの中央部あるいは特定の端面の所定の範囲を撮影する。なお、赤外線カメラを計測する各端面毎に設けてもよい。
【0042】
図6は本発明の遠隔計測装置の実施例2の処理の内容を示すフローチャートである。S30、S31の処理は実施例1の図3のS10、11の処理と同一である。S32においては赤外線カメラ25でワーク10の所定の範囲を撮影する。S33においては予め定められているワーク10の背景を含まない所定エリアの各画素の輝度を読み取り、温度値に変換する。そして、所定エリアの各画素毎の温度の平均値を求める。
【0043】
S34においては温度の平均値が所定値(上限値)よりも大きいか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS35に移行するが、肯定の場合にはS32に移行して赤外線カメラによる撮影を繰り返す。S35においては各カメラ12〜15を制御して予め設定されている所定のシャッタースピードでワーク10を撮影し、画像を読み込んで保存する。この際の絞りは予め定められた値に固定しておく。S36〜S39の処理は図3のS21〜24の処理と同一である。
【0044】
S32〜34の処理は、撮影指示手段が撮影開始信号を出力するまで、赤外線カメラ手段を用いて被写体の赤外線画像を繰り返し撮影指示する赤外線カメラ制御手段に相当する。また、S33の処理は、赤外線カメラ手段において撮影された画像の所定の領域の温度を読み取り、温度の平均値が所定の範囲内になったら撮影開始信号を出力する撮影指示手段に相当する。
【0045】
実施例2においては赤外線カメラによって直接ワーク10の表面温度を計測するので、撮影時の温度が取得でき、容易に寸法の温度補正を行うことができる。
【実施例3】
【0046】
図5は本発明の遠隔計測装置の実施例3の構成を示すブロック図である。実施例3は実施例1の構成に加えて、被写体の種類に応じてカメラ手段を移動させる移動手段を備えたものである。各カメラ12、13、14はそれぞれ1次元方向に移動可能なカメラ移動台30、31、32に搭載されている。
【0047】
カメラ移動台30、31、32はそれぞれ画像処理装置20からの制御に基づいて各カメラを所定の位置に移動させることができる。このため、端部側面を撮影するカメラ13は1台あれば全ての側面を撮影可能である。また、ワーク10の一方の端面の位置を決めておけばカメラ12は固定であってもよい。更に、他方の端面用のカメラ14については常に端面から一定の距離の位置に移動できるので、焦点距離を固定とすることができる。
【0048】
なお、カメラ移動台は必要に応じて2次元あるいは3次元方向に移動可能であってもよい。更に、例えばカメラを多関節型のロボットアームに取り付け、任意の位置で任意の方向を撮影可能とすれば、カメラは1台でもよい。
【実施例4】
【0049】
図7は本発明の遠隔計測装置の実施例4の処理の内容を示すフローチャートである。実施例4は、実施例1の変形例であり、ハードウェアは図1に示した実施例1と同一である。実施例1においては、所定の輝度より暗くなったら画像を出力する構成になっているが、プレスから時間が経ち、温度および輝度が低下したワークについては計測に最適な画像が得られず、また温度補正の誤差も大きくなるという課題がある。実施例4は、撮影した画像の輝度が下限値よりも小さい場合には、シャッタースピードを予め定められた1段階遅くして(長くして)撮影をやり直すものである。
【0050】
S40〜S46の処理は実施例1の図3のS10〜S16の処理と概ね同一である。但し、S41においては、各カメラ毎にシャッタースピードの初期値を設定しておき、S44においては、カメラは設定されているシャッタースピードにてワークを撮影し、画像をシャッタースピードの値と共に保存する。
【0051】
S47においては、輝度が所定の下限値よりも小さいか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS50に移行するが、肯定の場合にはS48に移行する。輝度が例えば8ビット(0〜255)で表わされている場合には、下限値は例えば100程度であってもよい。
【0052】
S48においてはシャッタースピードを1段階遅く(例えば元のシャッタースピードの2倍の長さに)する。S47、S48の処理は、輝度判定手段が輝度平均値が所定の範囲よりも暗いと判定した場合には、カメラ手段に1段階遅いシャッタースピードを設定するシャッタースピード変更手段に相当する。S49においてはシャッタースピードが下限か否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS44に移行するが、肯定の場合には撮影不可能であるのでエラー表示を行い、処理を終了する。
【0053】
S50においては輝度が所定の範囲内に入るように撮影ができたので、カメラnの撮影完了フラグをオンに設定する。S51においては変数nの値に1を加算する。S52においては変数nがカメラの台数4より大きいか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS43に移行するが、肯定の場合にはS53に移行する。
【0054】
S53においては全てのカメラにおいて撮影が完了したか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS42に移行するが、肯定の場合にはS54に移行する。S54、S55の処理は図3のS21、22の処理と同一である。
【0055】
S56においては画像と共に保存されているシャッタースピードの情報と対応する補正係数を読み出してずれ寸法に乗算することにより、温度補正を行う。このため、撮影される可能性のある各シャッタースピード毎に予め補正係数を求めて、画像処理装置20に入力しておく。S57の処理は図3のS24の処理と同一である。
【0056】
実施例1においては、シャッタースピードを固定しているので、ワークの輝度が低下していく期間において撮影機会はある期間に限られ、撮影時の温度の設定を低くすると、その温度になるまでの待ち時間が増加し、逆に温度を高くすると、プレス加工してからワークをワークセット台に搭載するまでの制限時間が短くなり、冷めすぎて最良の画像が得られない恐れがあるという課題があったが、実施例4においては、冷めた場合には順次シャッタースピードを下げていくので、最良の画像が得られ、温度補正も容易である。
【0057】
以上、実施例について説明したが、本発明には以下のような変形例も考えられる。カメラが加熱するのを防ぐために、カメラ全体を透明窓付きの容器等に収納して強制空冷してもよい。また、撮影時に可視光のストロボ照明を使用してもよい。実施例4の場合には、照明を使用すれば、常温まで冷めたワークでも撮影および計測が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、高温、高輝度の任意の被写体の撮影および寸法の計測に適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
10…被写体(ワーク)
11…端面
12、13、14、15…カメラ
16、17、18、19…レンズ
20…画像処理装置
21…出力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温の被写体を撮影する撮影装置において、
被写体の可視光画像を撮影するカメラ手段と、
判定手段によって輝度平均値が所定の範囲内にあると判定されるまで、前記カメラ手段を用いて予め設定されたシャッタースピードで被写体を繰り返し撮影指示するカメラ制御手段と、
前記カメラ手段において撮影された画像の所定の領域の輝度の平均値を求める輝度平均値生成手段と、
前記輝度平均値が所定の範囲内にあるか否かを判定する輝度判定手段と、
前記輝度判定手段によって前記輝度平均値が所定の範囲内にあると判定された場合に直近に撮影された画像を出力する画像出力手段と
を備えたことを特徴とする撮影装置。
【請求項2】
高温の被写体を撮影する撮影装置において、
被写体の赤外線画像を撮影する赤外線カメラ手段と、
撮影指示手段が撮影開始信号を出力するまで、前記赤外線カメラ手段を用いて被写体の赤外線画像を繰り返し撮影指示する赤外線カメラ制御手段と、
前記赤外線カメラ手段において撮影された画像の所定の領域の温度を読み取り、温度の平均値が所定の範囲内になったら撮影開始信号を出力する撮影指示手段と、
被写体の可視光画像を撮影するカメラ手段と、
前記撮影開始信号に基づいて予め設定されたシャッタースピードで被写体を撮影指示するカメラ制御手段と、
撮影された画像を出力する画像出力手段と
を備えたことを特徴とする撮影装置。
【請求項3】
更に、被写体の種類に応じて前記カメラ手段を移動させる移動手段を備えたことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の撮影装置。
【請求項4】
前記輝度判定手段が、前記輝度平均値が所定の範囲よりも暗いと判定した場合には、前記カメラ手段に1段階遅いシャッタースピードを設定するシャッタースピード変更手段を備えたことを特徴とする請求項1または3のいずれかに記載の撮影装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された撮影装置と、
出力画像から被写体の所定の箇所の長さを読み取る長さ読み取り手段と、
読み取った長さを常温時の長さに補正する補正手段と
を備えたことを特徴とする遠隔計測装置。
【請求項6】
前記被写体は高温でプレス加工された金属製品であり、前記カメラ手段は、前記金属製品の端面の画像を撮影し、前記長さ読み取り手段は、端面における上下の型のずれの長さを読み取ることを特徴とする請求項5に記載の遠隔計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−44289(P2012−44289A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181488(P2010−181488)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【出願人】(593070631)有限会社シマテック (13)
【Fターム(参考)】