説明

操作レバー装置

【課題】本発明は、操作レバーの操作が円滑に行われ、作業が無駄なく行われる操作レバー装置を提供する。
【解決手段】操作レバー装置19は、操作ハンドル18にブラケット52を介して揺動自在に配置された操作レバー38と、ブラケット52に取付けられた一方の支点部71を中心に、他方に加わる操作レバー38の操作力で揺動して、押し引きケーブル41を引くリンク機構55と、を備え、操作レバー38の戻る力をリンク機構55に加えるリンク戻し部材76を備えている。リンク戻し部材76は、操作レバー38に固定される固定部91と、固定部91に連なり他方に当接する先端部92と、からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耕耘機や二輪車のクラッチを作動させるために握る操作レバー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
耕耘機の操作ハンドルとともに握ることで、クラッチを作動させる操作レバー装置では、操作レバーの握り代を小さくし、逆に、ケーブルのストロークを大きくしたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実開昭64−114号公報(第1図)
【0003】
次に、特許文献1を簡単に説明する。
図8は、従来の技術である特許文献1の説明図であり、従来の操作レバー装置201は、操作レバー202を握ると、リンク203が支軸204を中心に矢印A1の方向へ揺動して、ケーブル205(ケーブルインナー206)を矢印A2の方向へ引くので、ケーブル205のストロークは大きくなる。
【0004】
しかし、特許文献1の操作レバー装置201では、操作レバー202を握った後に、操作レバー202から指を離しても、ケーブル205(ケーブルインナー206)の戻りが遅くなることがある。具体的には、操作レバー202を二点鎖線で示しているように握って、リンク203を矢印A1の方向へ上げると、リンク203に掛止しているケーブル205は支軸204に接近して、リンク203に平行するような状態となる。その結果、ケーブル205(ケーブルインナー206)を戻すばね力による戻す力(リンク203に生じるトルク)が小さくなり、操作レバー202が実線で示す位置に戻っても、リンク203は戻らないで、二点鎖線で示している位置に止まることがある若しくは、リンク203の戻りが遅れるという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、操作レバーの操作が円滑に行われ、作業が無駄なく行われる操作レバー装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、操作ハンドルにブラケットを介して揺動自在に配置された操作レバーと、ブラケットに取付けられた一方の支点部を中心に、他方に加わる操作レバーの操作力で揺動して、押し引きケーブルを引くリンク機構と、を備えた操作レバー装置において、操作レバーの戻る力をリンク機構に加えるリンク戻し部材を備えていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、リンク戻し部材は、操作レバーに固定される固定部と、固定部に連なり他方に当接する先端部と、からなることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、先端部は、押し引きケーブルを最大に引いたリンク機構の他方の上方近傍に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明では、操作ハンドルに固定されたブラケットに揺動自在に取付けられた操作レバーと、ブラケットに取付けられた一方の支点部を中心に、他方に加わる操作レバーの操作力で揺動して、押し引きケーブルを引くリンク機構と、を備えた操作レバー装置において、操作レバーの戻る力をリンク機構に加えるリンク戻し部材を備えているので、操作者が操作レバーを握り操作した後、操作レバーから指を離すと、操作レバーがリンク戻し部材を、押し引きケーブルを引いたリンク機構に当て、押し引きケーブルを戻す方向へ向けてリンク機構を押して戻す。従って、操作レバーの操作を円滑に行うことができるとともに、作業を無駄なく行うことができるという利点がある。
【0010】
請求項2に係る発明では、リンク戻し部材は、操作レバーに固定される固定部と、固定部に連なり他方に当接する先端部と、からなるので、押し引きケーブルの戻りの力が加わり難い状態まで揺動したリンク機構に対して、先端部によってリンク機構に戻す力が加わり、リンク機構を強制的に確実に戻すことができる。従って、操作レバーの操作をより円滑に行うことができるとともに、作業をより無駄なく行うことができるという利点がある。
【0011】
請求項3に係る発明では、先端部は、押し引きケーブルを最大に引いたリンク機構の他方の上方近傍に配置されているので、リンク機構に戻る力を伝えるリンク戻し部材の形状は簡単になるとともに、軽量化を図ることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は、本発明の操作レバー装置を備えた歩行型管理機の側面図である。
図2は、図1の2矢視図であり、歩行型管理機の操作ハンドルの平面図である。
【0013】
歩行型管理機10は、基台11の上部11aに搭載されたエンジン12と、基台11の後部11bに設けられたトランスミッションケース13と、トランスミッションケース13内に設けられた変速機構(図示せず)と、この変速機構にエンジン12の駆動力を伝えるベルト伝達機構15と、トランスミッションケース13の下端部13aに設けられたロータリ作業部16と、トランスミッションケース13の後端部に設けられた抵抗棒17と、トランスミッションケース13の上端部に設けられた操作ハンドル18と、操作ハンドル18に配置された操作レバー装置19と、を備える。
【0014】
エンジン12は、エンジン本体21の上部に燃料タンク22、エアクリーナ23及び排気マフラー24を備える。
基台11は、前端部11cにフロントカウンタウエイト25が設けられている。フロントカウンタウエイト25を設けることで、歩行型管理機10のバランスを良好に確保する。
【0015】
ベルト伝達機構15は、エンジン12の出力軸27に駆動プーリ28が設けられ、変速機構の入力軸31に従動プーリ32が設けられ、駆動プーリ28及び従動プーリ32に伝動ベルト33が巻回されたものである。
よって、出力軸27の回転をベルト伝達機構15を介して入力軸31に伝えることができる。
【0016】
入力軸31が回転することで、入力軸31の回転が変速機構を介してロータリ作業部16に伝わる。
ロータリ作業部16が回転することで、耕耘爪35が回転して土壌を耕耘する。耕耘爪35による耕深量は、抵抗棒17を土中に差し込むことで調整する。
【0017】
操作ハンドル18は、左グリップ37の近傍に操作レバー装置19の操作レバーであるところのクラッチ操作レバー38が設けられている。
クラッチ操作レバー38は、押し引きケーブルであるところのクラッチ操作ケーブル41及びスプリング42を介してベルト伝達機構15のクラッチアーム43に連結されている。47はクラッチ手段、42は緩衝用のスプリングである。
【0018】
クラッチ操作レバー38に操作力Ff(図6(a)参照)をかけて、クラッチ操作レバー38をクラッチオフ位置Cs(図3参照)からクラッチオン位置Cd(図3参照)まで引き上げることで、ベルト伝達機構15がクラッチオフ状態からクラッチオン状態に切り替わる。
一方、クラッチ操作レバー38から操作力を除くことで、クラッチ操作レバー38がクラッチオフ位置Csに戻り、ベルト伝達機構15がクラッチオン状態からクラッチオフ状態に切り替わる。
【0019】
図3は、図2の3−3線断面図であり、操作レバー装置19の断面を示している。
図4は、図3の4−4線断面図であり、操作レバー装置19の断面を示している。
操作レバー装置19は、操作ハンドル18の管本体51に固定されたブラケット52と、ブラケット52の上部中央に支点軸53で揺動自在に取付けられたクラッチ操作レバー38と、ブラケット52の上部後部に支点軸54で揺動自在に取付けられたリンク機構55と、リンク機構55に当接するように操作ハンドル18に固定されたリンク引き部材56と、からなる。
【0020】
ブラケット52は、上端に操作ハンドル18の管本体51に溶接で固定している固定部61が形成され、前端にクラッチ操作ケーブル41の端部62を締結しているケーブル取付け部63が形成され、下部中央にクラッチ操作レバー38をクラッチオフ位置(待機位置)Csで保持するストッパ部65が形成されている。
【0021】
図5は、本発明の操作レバー装置の分解図である。図3、図4を併用して説明する。
クラッチ操作レバー38は、ブラケット52に支持している支持部66と、支持部66に連ねて形成され、指をかける指掛け握り部67とからなる。具体的には、支持部66の上部先端に支点軸53が嵌合している支点部71が形成され、支持部66の前端にブラケット52のストッパ部65に当接する当接部72が形成され、当接部72の後方(矢印a1の方向)にリンク引き部材56が取付けられている引き部材取付け部73が形成され、支持部66の下端にガイド部74が形成され、ガイド部74の終端部75にリンク戻し部材76が取付けられ、指掛け握り部67の後部に握り規制部77が形成されている。Cdはクラッチ操作レバー38が左グリップ37に当接するクラッチオン位置(操作限界位置)、Seはクラッチ操作レバー38の握り代である。
【0022】
リンク機構55は、支点軸54で取付けられ、断面コ字形のリンク支点部83が形成され、リンク支点部83に連ねてクラッチ操作ケーブル41のケーブル端部を掛止しているケーブル掛止部84が形成され、ケーブル掛止部84に連ねてローラ支持部85が形成され、ローラ支持部85にローラ86がローラ軸87で回転自在に取付けられている。Wsはリンク機構55のクラッチ接続位置、Wkはクラッチ操作ケーブル(押し引きケーブル)41を最大に引いた位置であるところのリンク機構55のクラッチ切り位置である。
【0023】
リンク戻し部材76は、クラッチ操作レバー(操作レバー)38に固定される固定部91と、固定部91に連なり他方(ローラ86)を押す先端部92と、からなる。先端部92は、クラッチ操作レバー(操作レバー)38が操作限界位置(クラッチオン位置)Cdまで握られたときに、ローラ86と左グリップ37との間(図6の状態)に介在するように配置されている。
【0024】
ガイド部74は、クラッチ操作レバー38が操作限界位置(クラッチオン位置)Cdに向かって揺動(矢印a2の方向)するのに伴い、リンク引き部材56の引き力に続いて、ローラ86にケーブル引き力(矢印a3の方向)を加え続けて、リンク機構55を揺動(矢印a3の方向)させる走行部94が形成されている。95はガイド部74に連なる支持部66の底に開けた水抜き孔である。
【0025】
図6(a)、(b)は、本発明の操作レバー装置を操作した状態を示している図である。(a)は操作レバー装置の側面図、(b)は(a)のb−b線断面図である。
【0026】
(a)において、クラッチ操作レバー38を待機位置(クラッチオフ位置)Csから左グリップ37に当接する操作限界位置(クラッチオン位置)Cdまで握ると、リンク機構55は、クラッチ操作ケーブル(押し引きケーブル)41を最大に引いた位置であるところのクラッチ切り位置Wkに達する。Sは押し引きケーブル41の最大ストロークである。
【0027】
(b)において、支点軸54には、凹部96(図3、図5も参照)を形成した。その結果、クラッチ操作ケーブル(押し引きケーブル)41を最大ストロークSだけ最大に引いたときに、クラッチ操作ケーブル(押し引きケーブル)41と支点軸54との干渉を防止することができる。また、クラッチ操作ケーブル(押し引きケーブル)41のストロークを大きくすることができる。
【0028】
次に、本発明の操作レバー装置の作用を説明する。
図7(a)、(b)は、本発明の操作レバー装置が備える操作レバー及びリンク機構の戻りの機構を説明する図である。図1、図6を併用して説明する。
【0029】
まず、図6(a)に示しているように、操作者がクラッチ操作レバー38を待機位置(クラッチオフ位置)Csから左グリップ37に当接する操作限界位置(クラッチオン位置)Cdまで握るとともに操作力Ffで握ると、リンク機構55は、クラッチ手段47の図に示していないばねに抗して、クラッチ操作ケーブル(押し引きケーブル)41を最大に引いた位置(クラッチ切り位置)Wkに達するので、ベルト伝達機構15のクラッチ手段47は切れて駆動力を伝達しない。すなわち、操作レバー(クラッチ操作レバー)38の握り代Seを小さくし、押し引きケーブル41の最大ストロークSを大きくすることができる。
【0030】
図6に示すように、リンク機構55が、クラッチ操作ケーブル41を最大に引いた位置(クラッチ切り位置)Wkに達すると、クラッチ操作ケーブル41は、リンク機構55の中心線Eとほぼ平行になるので、クラッチ手段47のばね(図に示していない)によってリンク機構55に生じるトルクは小さくなり、リンク機構55はクラッチ接続位置Wsへ向けて揺動し難くなる。
【0031】
図7(a)において、クラッチ操作レバー38から指を離すと、クラッチ操作レバー38の自重によって、クラッチ操作レバー38は、支点軸53を中心にして矢印b1のように下がる(戻る)ので、角度θだけ下がった(戻った)ときに、リンク戻し部材76がローラ86に当接して、クラッチ操作レバー38の戻る力でローラ86を矢印b2のように押し始める。
【0032】
(b)に示しているように、その結果、リンク機構55は、強制的にクラッチ接続位置Wsへ向かって矢印b3のように戻り(揺動し)始める。戻るリンク機構55が、クラッチ操作ケーブル(押し引きケーブル)41を最大に引いた位置(クラッチ切り位置)Wkから約角度αに達すると、クラッチ手段47のばね(図に示していない)によるリンク機構55に生じるトルクTtは大きくなるので、クラッチ手段47のばねの力でリンク機構55はクラッチ接続位置Wsまで揺動して戻る。その際、リンク機構55のローラ86はガイド部74を押すので、クラッチ操作レバー38はクラッチオフ位置(待機位置)Csまで戻される。
つまり、クラッチ操作レバー(操作レバー)38の戻りにリンク機構55の戻りを応答よく追従させることができる。
【0033】
このように、操作レバー装置19では、操作レバーの戻る力をリンク機構に加えるリンク戻し部材79を備えているので、操作レバー(クラッチ操作レバー)38の握り代Seを小さくし、押し引きケーブル41の最大ストロークSを大きくする機能を損なうことなく、クラッチ操作レバー(操作レバー)38の戻りにリンク機構55並びにクラッチ操作ケーブル41の戻りを応答よく追従させることができる。従って、操作レバー38の操作を円滑に行うことができるとともに、作業(例えば、耕耘作業)を無駄なく行うことができる。
【0034】
尚、本発明の操作レバー装置は、実施の形態では歩行型管理機に用いられたが、自動二輪車などケーブルを引く形態を備えた装置に採用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の操作レバー装置は、歩行型管理機のクラッチレバーに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の操作レバー装置を備えた歩行型管理機の側面図
【図2】図1の2矢視図
【図3】図2の3−3線断面図
【図4】図3の4−4線断面図
【図5】本発明の操作レバー装置の分解図
【図6】本発明の操作レバー装置を操作した状態を示している図
【図7】本発明の操作レバー装置が備える操作レバー及びリンク機構の戻りの機構を説明する図
【図8】従来の技術の基本構成を説明する図
【符号の説明】
【0037】
18…操作ハンドル、19…操作レバー装置、38…操作レバー(クラッチ操作レバー)、41…押し引きケーブル(クラッチ操作ケーブル、52…ブラケット、55…リンク機構、71…支点部、76…リンク機構、91…固定部、92…先端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作ハンドルにブラケットを介して揺動自在に配置された操作レバーと、
前記ブラケットに取付けられた一方の支点部を中心に、他方に加わる前記操作レバーの操作力で揺動して、押し引きケーブルを引くリンク機構と、を備えた操作レバー装置において、
前記操作レバーの戻る力を前記リンク機構に加えるリンク戻し部材を備えていることを特徴とする操作レバー装置。
【請求項2】
前記リンク戻し部材は、前記操作レバーに固定される固定部と、固定部に連なり前記他方に当接する先端部と、からなることを特徴とする請求項1記載の操作レバー装置。
【請求項3】
前記先端部は、前記押し引きケーブルを最大に引いた前記リンク機構の他方の上方近傍に配置されていることを特徴とする請求項2記載の操作レバー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−46929(P2008−46929A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−222732(P2006−222732)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】