説明

操舵補助装置のウォーム支持構造

【課題】歯打ち音の発生を抑制しつつコストダウンを図る上で有利な操舵補助装置のウォーム支持構造を提供すること。
【解決手段】ウォーム10の他方の軸部1006は、インナーブッシュ22、ベアリング24、アウターブッシュ26、付勢部材32を介してハウジング14のブッシュ装着部28で回転可能に支持されている。アウターブッシュ26は合成樹脂製で、外周円筒面2602と、内周円筒面2604とを有している。外周円筒面2602は、ブッシュ装着用円筒面2802に係合する第1外周円筒面2602Aと、第1外周円筒面2602Aよりも小さい半径で形成された第2外周円筒面2602Bとを有している。アウターブッシュ26は、ブッシュ装着用円筒面2802内に組み込まれ、付勢部材32によりべアリング24はウォームホイール12の側へ付勢されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車の操舵補助装置に関し、より詳細には操舵補助装置のウォーム支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の操舵補助装置として、例えば、電動パワーステアリング装置が従来から提供されている。
この種の電動パワーステアリング装置では、電動モータの出力をウォームおよびウォームホイールを介して減速して操舵機構に伝達し、ステアリング操作をトルクアシストするようにしている。
一方、ウォームとウォームホイールとの噛み合いにはバックラッシが必要となるが、走行時にこのバックラッシに起因した歯打ち音(ラトル音)が発生する。
【0003】
そこで従来では、ウォームを回転可能支持するベアリングを、板ばねを介してハウジングで支持し、板ばねによりウォームをウォームホイール方向に付勢し、歯打ち音の発生を抑制するようにしている(特許文献1〜4参照)。
【特許文献1】特開2006−175891
【特許文献2】特許第3788576
【特許文献3】特許第3951913
【特許文献4】特開2002−96749
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構成では、ベアリングとして高い精度のものが必要となり、また、板ばねには特殊な材料を必要とするため、自動車の操舵補助装置のコストダウンを図る上で不利があった。
本発明はかかる事情に鑑み成されたものであり、本発明の目的は、歯打ち音の発生を抑制しつつコストダウンを図る上で有利な操舵補助装置のウォーム支持構造およびそれに用いるブッシュを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、ウォームホイールに噛合するウォームの両端の軸部がハウジング内に支持された操舵補助装置のウォーム支持構造において、前記両端の軸部のうちの一方の軸部は、前記ハウジングに形成されたブッシュ装着部に装着された第1のブッシュと、前記第1のブッシュと前記一方の軸部との間に介装されたベアリングとを介して支持され、前記第1のブッシュは合成樹脂材料で形成され、前記ブッシュ装着部は、ブッシュ装着用円筒面を有し、前記第1のブッシュは、外周円筒面と、前記ベアリングを支持する内周円筒面とを有し、前記外周円筒面と前記内周円筒面とは同芯的関係にあり、前記外周円筒面は、前記ブッシュ装着用円筒面に係合する第1外周円筒面と、前記第1外周円筒面よりも小さい半径で形成された第2外周円筒面とを有し、前記ブッシュ装着用円筒面内において、前記第1外周円筒面が前記ウォームホイールに接近離間する方向に移動可能に組み込まれ、前記第1のブッシュは、前記第2外周円筒面に形成された切り欠き部を有し、該切り欠き部が前記ウォームホイールとは反対側に向けられて前記第1のブッシュが前記ブッシュ装着用円筒面に組み込まれており、前記第1のブッシュの前記切り欠き部と前記ハウジングの前記ブッシュ装着用円筒面との間に介装した付勢部材によって前記ベアリングを前記ウォームホイールの側へ付勢していることを特徴とする。
また、本発明は、ウォームホイールに噛合するウォームの両端の軸部がハウジング内に支持された操舵補助装置のウォーム支持構造において、前記両端の軸部のうちの一方の軸部は、前記ハウジングに形成されたブッシュ装着部に装着された第1のブッシュと、前記第1のブッシュと前記一方の軸部との間に介装されたベアリングとを介して支持され、前記第1のブッシュは合成樹脂材料で形成され、前記ブッシュ装着部は、ブッシュ装着用円筒面を有し、前記第1のブッシュは、前記ブッシュ装着用円筒面に嵌合する外周円筒面と、内周面とを有し、前記内周面は、前記外周円筒面と同芯的関係にある内周円筒面と、前記内周円筒面の互いに対向する箇所に互いに平行する平面で設けられた平面部とを有し、前記ベアリングは、前記平面部が平行する方向に沿って移動可能に前記内周面内に配設され、前記第1のブッシュは、前記ベアリングの移動方向と、前記ウォームホイールに離間接近する方向とが一致するように前記ブッシュ装着用円筒面に組み込まれており、前記第1のブッシュの前記内周円筒面と前記ベアリングとの間に介装した付勢部材によって前記ベアリングを前記ウォームホイールの側へ付勢していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の操舵補助装置のウォーム支持構造によれば、ウォームの一端を支持するベアリングとハウジングとの間に介装した第1のブッシュは、ベアリングとハウジングとの空間を充填するようにして装着されるため、ウォームの軸心をウォームホイールに対して相対的に移動させることに伴なう異音の発生が確実に防止される。
また、操舵補助装置の作動中にウォームホイールの歯面からウォームの歯面へ作用する衝撃力が付勢部材によって緩衝されるため、ウォームホイールの歯面とウォームの歯面との衝突による歯打ち音も小さく抑えられると共に、ウォームを支持するベアリングには、ウォームの軸方向に予圧が与えられているので、ベアリングのガタをなくし得、ガタに起因する異音の発生を防止することができる。
請求項1記載の発明によれば、第1のブッシュの切り欠き部とハウジングのブッシュ装着部との間に付勢部材を介装したことにより、ベアリングと付勢部材とを切り離し、ベアリングと付勢部材の振動による打音を吸収することができる。
また、請求項4記載の発明によれば、第1のブッシュの内周円筒面とベアリングとの間に付勢部材を介装したことにより、ベアリングと付勢部材の振動による打音を第1のブッシュ内で吸収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明の実施の形態について添付図面を参照しつつ説明する。
図1は第1の実施の形態の操舵補助装置の要部断面図、図2はモータの動力が入力される側のウォームの一端の支持構造の説明図、図3は本発明が適用されたウォームの支持構造の説明図、図4はアウターブッシュ、付勢部材の説明図、図5は付勢部材の側面図、図6は第1の実施の形態の変形例の要部断面図を示す。
図1に示すように、第1の実施の形態の自動車の操舵補助装置8である電動パワーステアリング装置では、操舵補助用のモータの動力が、ウォーム10およびウォームホイール12を介して減速され操舵機構に伝達される。
操舵補助装置8はウォーム10を回転可能に支持するハウジング14を有している。
ウォーム10は、歯部1002と、歯部1002の両端の軸部1004、1006とを有している。
図2に示すように、モータの動力が入力される側の軸部1004には、その外周面に第3のブッシュとしての合成樹脂製のインナーブッシュ16が嵌合され、この軸部1004は、インナーブッシュ16の外周面に圧入嵌合されるとともにハウジング14の軸受部20に固定されたベアリング18に回転可能に支持されている。
インナーブッシュ16は、筒部1602と、筒部1602の一方の端部に半径方向外方に環状に拡がるように形成された鍔部1604とを有している。
鍔部1604は、インナーブッシュ16が軸部1004の外周面に嵌合された際、軸部1004に設けられたフランジ1010に当接している。
ベアリング18のインナレースはインナーブッシュ16の筒部1602に嵌合され、ベアリング18のアウタレースはハウジング14の軸受部20に嵌合されて配設されている。
【0008】
図3に示すように、ウォーム10の他方の軸部1006には、その外周面に嵌合固定された第2のブッシュとしての、例えば天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタンゴム、アクリルゴム、ポリエステルエラストマーなどの弾性材料製のインナーブッシュ22と、該インナーブッシュ22の外周面に嵌合されたベアリング24と、該ベアリング24の外周面を囲繞してハウジング14のブッシュ装着部28に固定された第1のブッシュとしての、例えばポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂などの合成樹脂製のアウターブッシュ26とが配されており、他方の軸部1006は、該インナーブッシュ22、ベアリング24、アウターブッシュ26、付勢部材32を介してハウジング14のブッシュ装着部28で回転可能に支持されている。
インナーブッシュ22は、筒部2202と該筒部2202の一方の端部に半径方向外方に環状に拡がるように形成された鍔部2204とを有しており、該鍔部2204は、該インナーブッシュ22が軸部1006の外周面に嵌合された際、軸部1006に設けられたフランジ1012に当接して配されている。
【0009】
なお、ウォーム10がハウジング14に組み付けられると、ウォーム10の両端の軸部1004及び1006の外周面に夫々嵌合固定されたインナーブッシュ16及び22の鍔部1604及び2204は、それぞれウォーム10の軸方向に締め代を有しているので、ベアリング18及び24に鍔部1604及び2204とフランジ1010及び1012との間で予圧を与えることができ、結果としてベアリング18及び24のガタをなくし得、ガタに起因する異音の発生を防止することができる。
なお、本実施の形態においては、インナーブッシュ16の鍔部1604にウォーム10の軸方向の締め代を有している例を説明したが、図6に示すように、筒部1602と鍔部1604を夫々別体にて形成し、鍔部1604にウェーブワッシャ(波座金)、スプリングワッシャ(ばね座金)、皿バネ等をバネ部材を使用することもできる。
【0010】
ブッシュ装着部28は、ブッシュ装着用円筒面2802と、環状の端面2804とを有している。
ブッシュ装着用円筒面2802に、図3に示すように、半径方向外側に窪む凹部2806が設けられている。
【0011】
アウターブッシュ26は、例えばポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂などの合成樹脂材料で形成されている。
図3、図4に示すように、アウターブッシュ26は、外周円筒面2602と、ベアリング24を支持する内周円筒面2604とを有し、外周円筒面2602と内周円筒面2604とは同芯的関係にある。
ベアリング24のインナレースはインナーブッシュ22の筒部2202に嵌合され、ベアリング24のアウタレースがアウターブッシュ26の内周円筒面2604に嵌合されて配設されている。
外周円筒面2602は、ブッシュ装着用円筒面2802に係合する第1外周円筒面2602Aと、第1外周円筒面2602Aよりも小さい半径で形成された第2外周円筒面2602Bとを有している。
第1外周円筒面2602Aに、凹部2806に係合してアウターブッシュ26の回転を阻止する凸部2603が設けられている。
第2外周円筒面2602Bに、切り欠き部30が設けられている。
アウターブッシュ26は、ブッシュ装着用円筒面2802内において、第1外周円筒面2602Aがウォームホイール12に接近離間する方向に移動可能に組み込まれている。
また、アウターブッシュ26には、その厚さ方向の両端にそれぞれ端面が形成されると共に、軸部1006の端部寄りに位置する端面側の内周円筒面2604の端部に、半径方向内側に突出しつつ周方向に延在する第1鍔部2610が設けられている。
【0012】
切り欠き部30は、第2外周円筒面2602Bの一部を仮想平面で切断することで形成され、アウターブッシュ26がブッシュ装着用円筒面2802に嵌合された際に、三日月状の空間がそれらアウターブッシュ26とブッシュ装着用円筒面2802との間に形成されるように設けられている。この切り欠き部30の底部3002は細長い矩形状の平面部を成している。更に、底部3002の4辺から起立し外周円筒面2602に繋がる側面部3004が設けられ、底部3002と側面部3004とにより切り欠き部30が形成されている。
【0013】
切り欠き部30には、付勢部材32である板ばねが配設される。
すなわち、付勢部材32である板ばねの第1部分3202が切り欠き部30の底部3002に当接し、切り欠き部30に収容されて配設され、付勢部材32の姿勢の安定化が図られている。
付勢部材32は、板ばねに限られず、例えば、ゴムなどの弾性材料で形成することも可能である。
本実施の形態では、図5に示すように、板ばねにより付勢部材32が構成され、この板ばねは、切り欠き部30の底部3002に当接する細長の平板状の第1部分3202と、この第1部分3202の長手方向の端部から屈曲部を介して連結され湾曲板状に延在してブッシュ装着用円筒面2802に当接する第2部分3204とを有している。
【0014】
そして、凸部2603が凹部2806に係合し、第1外周円筒面2602Aがブッシュ装着用円筒面2802に係合し、切り欠き部30がウォームホイール12とは反対側に向けられ、アウターブッシュ26が、ベアリング24とハウジング14との間の空間を充填するようにハウジング14に装着される。これにより、アウターブッシュ26の切り欠き部30とブッシュ装着用円筒面2802との間に介装した付勢部材32によってベアリング24をウォームホイール12の側へ付勢している。
【0015】
本実施の形態によれば、次のような効果が奏される。
(1)ウォーム10の一端を支持するベアリング24とハウジング14との間に介装した第1のブッシュとしてのアウターブッシュ26は、ベアリング24とハウジング14との空間を充填するようにして装着されるため、ウォーム10の軸心をウォームホイール12に対して相対的に移動させることに伴なう異音の発生が確実に防止される。
また、操舵補助装置の作動中にウォームホイール12の歯面からウォーム10の歯面へ作用する衝撃力が付勢部材32によって緩衝されるため、ウォームホイール12の歯面とウォーム10の歯面との衝突による歯打ち音も小さく抑えられると共に、ウォーム10を支持するベアリング24には、ウォーム10の軸方向に予圧が与えられているので、ベアリング24のガタをなくし得、ガタに起因する異音の発生を防止することができる。
(2)第1のブッシュとしてのアウターブッシュ26の切り欠き部30とハウジング14のブッシュ装着部48との間に付勢部材32を介装したことにより、ベアリング24と付勢部材32とを切り離し、ベアリング24と付勢部材32の振動による打音を吸収することができる。
(3)このウォームの支持構造の寸法精度は主としてアウターブッシュ26の寸法精度によって決まるが、アウターブッシュ26の形状は簡明でしかも対称性の高いものであるため、高い寸法精度を有するアウターブッシュ26を低コストで製造することができ、ひいては、高精度のウォーム支持構造を低コストで製造することが可能である。
(4)ウォーム10を支持するベアリング18及び24には、ウォーム10の軸方向に予圧が与えられているので、ベアリング18及び24のガタをなくし得、ガタに起因する異音の発生を防止することができる。
【0016】
次に第2の実施の形態について説明する。
図7は第2の実施の形態の操舵補助装置の要部断面図、図8は第2の実施の形態のウォームの支持構造の説明図、図9(A)はアウターブッシュの側面図、(B)は内周円筒面4604Aと、平面部4604Bと、付勢部材50との関係図、図10は付勢部材の側面図、図11は第2の実施の形態の変形例の要部断面図を示す。なお第1の実施の形態と同様な箇所、部材に同一の符号を付してその説明を省略する。
図7に示すように、第2の実施の形態の自動車の操舵補助装置8である電動パワーステアリング装置では、操舵補助用のモータの動力が、ウォーム10およびウォームホイール12を介して減速され操舵機構に伝達される。
操舵補助装置8はウォーム10を回転可能に支持するハウジング14を有している。
ウォーム10は、歯部1002と、歯部1002の両端の軸部1004、1006とを有している。
【0017】
モータの動力が入力される側の軸部1004には、その外周面に第3のブッシュとしての合成樹脂製のインナーブッシュ40が嵌合され、この軸部1004は、インナーブッシュ40の外周面に圧入嵌合されるとともにハウジング14の軸受部20に固定されたベアリング18に回転可能に支持されている。
インナーブッシュ40は、筒部4002と、筒部4002の一方の端部に半径方向外方に環状に拡がるように形成された鍔部4004とを有している。
鍔部4004は、インナーブッシュ40が軸部1004の外周面に嵌合された際、軸部1004に設けられたフランジ1010に当接している。
ベアリング18のインナレースはインナーブッシュ40の筒部4002に嵌合され、ベアリング18のアウタレースはハウジング14の軸受部20に嵌合されて配設されている。
【0018】
図8に示すように、ウォーム10の他方の軸部1006には、その外周面に嵌合固定された第2のブッシュとしての、例えば例えば天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタンゴム、アクリルゴム、ポリエステルエラストマーなどの弾性材料製のインナーブッシュ42と、該インナーブッシュ42の外周面に嵌合されたベアリング44と、該ベアリング44の外周面を囲繞してハウジング14のブッシュ装着部48に固定された第1のブッシュとしての、例えばポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂などの合成樹脂材料製のアウターブッシュ46とが配されており、他方の軸部1006は、該インナーブッシュ42、ベアリング44、アウターブッシュ46、付勢部材50を介してハウジング14のブッシュ装着部48で回転可能に支持されている。
インナーブッシュ42は、筒部4202と該筒部4202の一方の端部に半径方向外方に環状に拡がるように形成された鍔部4204とを有しており、該鍔部4204は、該インナーブッシュ42が軸部1006の外周面に嵌合された際、軸部1006に設けられた段部1012に当接して配されている。
なお、ウォーム10がハウジング14に組み付けられると、ウォーム10の両端の軸部1004及び1006の外周面に夫々嵌合固定されたインナーブッシュ40及び42の鍔部4004及び4204は、それぞれウォーム10の軸方向に締め代を有しているので、ベアリング18及び44に鍔部4004及び4204とフランジ1010及び段部1012との間で予圧を与えることができ、結果としてベアリング18及び44のガタをなくし得、ガタに起因する異音の発生を防止することができる。
なお、本実施の形態においては、インナーブッシュ40の鍔部4004にウォーム10の軸方向の締め代を有している例を説明したが、図11に示すように、筒部4002と鍔部4004を夫々別体にて形成し、鍔部1604にウェーブワッシャ(波座金)、スプリングワッシャ(ばね座金)、皿バネ等のバネ部材を使用することもできる。
【0019】
第2の実施の形態では、ベアリング44のインナレースはインナーブッシュ42の筒部4202に嵌合され、ベアリング44のアウタレースが付勢部材50を介してアウターブッシュ46に配設されている。より詳細には、アウターブッシュ46とベアリング44との間に付勢部材50が介装され、この付勢部材50によってベアリング44をウォームホイール12の側へ付勢している。
【0020】
アウターブッシュ46は、例えばポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂などの合成樹脂材料で形成されている。
図8、図9に示すように、アウターブッシュ46は、ブッシュ装着用円筒面4802に嵌合する外周円筒面4602と、内周面4604とを有している。
内周面4604は、外周円筒面4602と同芯的関係にある内周円筒面4604Aと、内周円筒面4604Aの互いに対向する箇所に互いに平行する平面で設けられた平面部4604Bとを有している。
内周円筒面4604Aに凹部4606が形成されている。凹部4606は、ウォームホイール12とは反対に位置するアウターブッシュ46の内周円筒面4604の箇所に位置している。
【0021】
付勢部材50は、例えば、ゴムや板ばねなどの弾性材料で構成することができるが、本実施の形態のように、板ばねにより構成することが特に好ましい。
付勢部材50を構成している板ばねは、図9(B)に示すように、円筒面状に延在しベアリング44のアウタレースの外周面に巻回され互いに対向する平面部4604Bの間に移動可能に挟持される第1部分5002と、アウターブッシュ46の凹部4606の底部に当接する第2部分5004とを有している。
また、アウターブッシュ46の厚さ方向の両端にそれぞれ端面が位置しており、軸部1006の端部寄りに位置する端面側の内周円筒面4604の端部に、半径方向内側に突出しつつ周方向に延在する第1鍔部4610が設けられている。
【0022】
第2の実施の形態では、ベアリング44は、平面部4604Bが平行する方向に沿って移動可能に内周面4604に配設され、アウターブッシュ46は、ベアリング44の移動方向と、ウォームホイール12に離間接近する方向とが一致するようにブッシュ装着用円筒面4802に組み込まれ、付勢部材50によってベアリング44をウォームホイール12の側へ付勢している。
【0023】
本実施の形態によれば、次のような効果が奏される。
(1)ウォーム10の一端を支持するベアリング44とハウジング14との間に介装した第1のブッシュとしてのアウターブッシュ46は、ベアリング44とハウジング14との空間を充填するようにして装着されるため、ウォーム10の軸心をウォームホイール12に対して相対的に移動させることに伴なう異音の発生が確実に防止される。
また、操舵補助装置の作動中にウォームホイール12の歯面からウォーム10の歯面へ作用する衝撃力が付勢部材50によって緩衝されるため、ウォームホイール12の歯面とウォーム10の歯面との衝突による歯打ち音も小さく抑えられると共に、ウォーム10を支持するベアリング44には、ウォーム10の軸方向に予圧が与えられているので、ベアリング44のガタをなくし得、ガタに起因する異音の発生を防止することができる。
(2)アウターブッシュ46の内周面4604とベアリング44との間に付勢部材50を介装したことにより、ベアリング44と付勢部材50の振動による打音をアウターブッシュ46内で吸収することができる。
(3)ウォーム10を支持するベアリング18及び44には、ウォーム10の軸方向に予圧が与えられているので、ベアリング18及び44のガタをなくし得、ガタに起因する異音の発生を防止することができる。
【0024】
以上に説明したように、本実施の形態に係る操舵補助装置8のウォーム支持構造によれば、ウォーム10とウォームホイール12との間の芯間調整の機能を有し、低コストでウォーム支持構造を製造することが可能となり、そのウォーム支持構造は、高度の異音発生防止性能を有するものとなり、コストダウンを図りつつ歯打ち音(ラトル音)の発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施の形態の操舵補助装置の要部断面図である。
【図2】モータの動力が入力される側のウォームの一端の支持構造の説明図である。
【図3】本発明が適用されたウォームの支持構造の説明図である。
【図4】アウターブッシュ、付勢部材の説明図である。
【図5】付勢部材の側面図である。
【図6】第1の実施の形態の変形例の要部断面図である。
【図7】第2の実施の形態の操舵補助装置の要部断面図である。
【図8】第2の実施の形態のウォームの支持構造の説明図である。
【図9】(A)はアウターブッシュの側面図、(B)は内周円筒面4604Aと、平面部4604Bと、付勢部材50との関係図である。
【図10】付勢部材の側面図である。
【図11】第2の実施の形態の変形例の要部断面図である。
【符号の説明】
【0026】
8……操舵補助装置、10……ウォーム、1004、1006……軸部、12……ウォームホイール、14……ハウジング、16、22、40、42……インナーブッシュ、18、24、44……ベアリング、22……インナーブッシュ、26、46……アウターブッシュ、28、48……ブッシュ装着部、30……切り欠き部、32、50……付勢部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォームホイールに噛合するウォームの両端の軸部がハウジング内に支持された操舵補助装置のウォーム支持構造において、
前記両端の軸部のうちの一方の軸部は、前記ハウジングに形成されたブッシュ装着部に装着された第1のブッシュと、前記第1のブッシュと前記一方の軸部との間に介装されたベアリングとを介して支持され、
前記第1のブッシュは合成樹脂材料で形成され、
前記ブッシュ装着部は、ブッシュ装着用円筒面を有し、
前記第1のブッシュは、外周円筒面と、前記ベアリングを支持する内周円筒面とを有し、前記外周円筒面と前記内周円筒面とは同芯的関係にあり、
前記外周円筒面は、前記ブッシュ装着用円筒面に係合する第1外周円筒面と、前記第1外周円筒面よりも小さい半径で形成された第2外周円筒面とを有し、前記ブッシュ装着用円筒面内において、前記第1外周円筒面が前記ウォームホイールに接近離間する方向に移動可能に組み込まれ、
前記第1のブッシュは、前記第2外周円筒面に形成された切り欠き部を有し、該切り欠き部が前記ウォームホイールとは反対側に向けられて前記第1のブッシュが前記ブッシュ装着用円筒面に組み込まれており、
前記第1のブッシュの前記切り欠き部と前記ハウジングの前記ブッシュ装着用円筒面との間に介装した付勢部材によって前記ベアリングを前記ウォームホイールの側へ付勢している、
ことを特徴とする操舵補助装置のウォーム支持構造。
【請求項2】
前記付勢部材は板ばねで構成されていることを特徴とする請求項1記載の操舵補助装置のウォーム支持構造。
【請求項3】
前記板ばねは、前記第1のブッシュの前記切り欠き部の底部に当接する第1部分と、前記ハウジングの前記ブッシュ装着用円筒面に当接する第2部分とを有する、
ことを特徴とする請求項2記載の操舵補助装置のウォーム支持構造。
【請求項4】
ウォームホイールに噛合するウォームの両端の軸部がハウジング内に支持された操舵補助装置のウォーム支持構造において、
前記両端の軸部のうちの一方の軸部は、前記ハウジングに形成されたブッシュ装着部に装着された第1のブッシュと、前記第1のブッシュと前記一方の軸部との間に介装されたベアリングとを介して支持され、
前記第1のブッシュは合成樹脂材料で形成され、
前記ブッシュ装着部は、ブッシュ装着用円筒面を有し、
前記第1のブッシュは、前記ブッシュ装着用円筒面に嵌合する外周円筒面と、内周面とを有し、
前記内周面は、前記外周円筒面と同芯的関係にある内周円筒面と、前記内周円筒面の互いに対向する箇所に互いに平行する平面で設けられた平面部とを有し、
前記ベアリングは、前記平面部が平行する方向に沿って移動可能に前記内周面内に配設され、
前記第1のブッシュは、前記ベアリングの移動方向と、前記ウォームホイールに離間接近する方向とが一致するように前記ブッシュ装着用円筒面に組み込まれており、
前記第1のブッシュの前記内周円筒面と前記ベアリングとの間に介装した付勢部材によって前記ベアリングを前記ウォームホイールの側へ付勢している、
ことを特徴とする操舵補助装置のウォーム支持構造。
【請求項5】
前記付勢部材は板ばねで構成されていることを特徴とする請求項4記載の操舵補助装置のウォーム支持構造。
【請求項6】
前記第1のブッシュの前記内周円筒面の一部に凹部が形成され、
前記板ばねは、円筒面状に延在し前記ベアリングの外周面に巻回され前記互いに対向する平面部の間に移動可能に挟持される第1部分と、前記第1のブッシュの前記凹部の底部に当接する第2部分とを有する、
ことを特徴とする請求項5記載の操舵補助装置のウォーム支持構造。
【請求項7】
前記ウォームは、前記両端の軸部の間に歯部を有し、
前記ウォームの両端の軸部にそれぞれ第2のブッシュと第3のブッシュとが嵌合され、
前記第2のブッシュは前記ベアリングにより支持されており、
前記第3のブッシュは前記ベアリングとは別のベアリングにより支持されており、
前記第2のブッシュと前記第3のブッシュの前記歯部寄りの箇所に半径方向外方に環状に拡がる鍔部が形成され、
前記ウォームの組み付け時に前記第2のブッシュの前記鍔部および前記第3のブッシュの前記鍔部は、前記ハウジングと前記ベアリングを介して前記ウォームの軸方向に締め付けられている、
ことを特徴とする請求項1乃至6に何れか1項記載の操舵補助装置のウォーム支持構造。
【請求項8】
前記ウォームは、前記両端の軸部の間に歯部を有し、
前記ウォームの両端の軸部にそれぞれ第2のブッシュと第3のブッシュとが嵌合され、
前記第2のブッシュは前記ベアリングにより支持されており、
前記第3のブッシュは前記ベアリングとは別のベアリングにより支持されており、
前記第2のブッシュの前記歯部寄りの箇所に半径方向外方に環状に拡がる鍔部が形成され、
前記第3のブッシュは筒状を呈し、前記第3のブッシュの前記歯部寄りの箇所に、前記第3のブッシュの半径方向外側で環状に拡がる前記第3のブッシュとは別の部材で構成された環板状のばね部材が配置され、
前記ウォームの組み付け時に前記第2のブッシュの前記鍔部および前記ばね部材は、前記ハウジングと前記ベアリングを介して前記ウォームの軸方向に締め付けられている、
ことを特徴とする請求項1乃至5に何れか1項記載の操舵補助装置のウォーム支持構造。
【請求項9】
前記ブッシュ装着部の前記ブッシュ装着用円筒面に、半径方向外側に窪む凹部が設けられ、
前記第1のブッシュの前記外周円筒面に、前記凹部に係合して前記第1のブッシュの回転を阻止する凸部が設けられている、
請求項1乃至8に何れか1項記載の操舵補助装置のウォーム支持構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−287647(P2009−287647A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139795(P2008−139795)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】