説明

攪拌装置及び自動分析装置

【課題】音波の伝搬経路に沿った圧電基板や容器壁の発熱を抑制した攪拌装置及び自動分析装置を提供すること。
【解決手段】液体を保持する容器5と、圧電基板23a上に複数の櫛歯状電極からなる振動子が形成され、容器に接触した状態で音波を発生させる表面弾性波素子23とを備え、表面弾性波素子が発生した音波によって容器に保持された液体を攪拌する攪拌装置20及び自動分析装置。容器又は表面弾性波素子23は、表面弾性波素子が発生した音波のうち反射しながら容器の壁内又は圧電基板内を伝搬する音波の伝搬方向に直交する面に対して傾斜又は湾曲した反射端面23e或いは伝搬する音波を乱反射させる反射端面が容器の壁又は圧電基板23aに形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、攪拌装置及び自動分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動分析装置は、検体と試薬を含む液体試料を攪拌して反応させ、反応液の光学的特性を測定することにより、検体中の成分濃度等を分析している。このとき、液体試料を攪拌する攪拌装置は、いわゆるキャリーオーバーを回避すべく検体と試薬を含む液体試料に音波発生手段が発生した音波を照射することによって非接触で攪拌する攪拌装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された攪拌装置で使用する音波発生手段は、圧電基板上に櫛歯状電極(IDT)からなる振動子が形成され、容器の壁面に取り付けて使用され、振動子が音波を発生させる。
【0003】
【特許文献1】特開2006−90791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された攪拌装置は、音波発生手段を駆動することによって振動子が発熱すると共に、音波が伝搬する圧電基板や容器の壁が音波の伝搬経路に沿って発熱し、攪拌対象である液体試料の温度が過度に上昇することがあった。この場合、圧電基板や容器の壁は、攪拌対象である液体試料と接する等、液体試料に接近した位置にあることから液体試料への熱的影響が大きいうえ、液体試料が微量になる程、液体試料の熱容量が小さくなるため、液体試料の温度上昇が大きくなってしまうという問題があった。特に、生化学分析装置は、血液等の生体試料を分析することから液体試料の温度上昇によって攪拌対象が変性し、検体の正確な分析に支障を生ずる可能性があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、音波の伝搬経路に沿った圧電基板や容器壁の発熱を抑制した攪拌装置及び自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明者らは圧電基板や容器壁の音波の伝搬経路に沿った発熱について検討を重ねた。その結果、例えば、反射しながら伝搬経路に沿って圧電基板内を伝搬した音波が音響インピーダンスの不連続面である圧電基板の端面で反射し、180°伝搬方向が変わると、この反射音波と振動子から出射されて伝搬してくる出射音波とが干渉し、音波の伝搬経路に沿った発熱が干渉しない場合よりも大きくなる現象が見られた。この干渉に伴う発熱現象は、容器壁面内を伝搬する音波の場合にも見られた。
【0007】
本発明は、上述の知見に基づいてなされたもので、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の攪拌装置は、液体を保持する容器と、圧電基板上に複数の櫛歯状電極からなる振動子が形成され、前記容器に接触した状態で音波を発生させる音波発生手段と、を備え、前記音波発生手段が発生した音波によって前記容器に保持された液体を攪拌する攪拌装置において、前記容器又は前記音波発生手段は、前記音波発生手段が発生した音波のうち反射しながら前記容器の壁内又は前記圧電基板内を伝搬する音波の伝搬方向に直交する面に対して傾斜又は湾曲した反射端面或いは前記伝搬する音波を乱反射させる反射端面が前記容器の壁又は前記圧電基板に形成されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の攪拌装置の一態様は、上記の発明において、前記反射端面は、少なくとも前記複数の櫛歯状電極の交叉幅を音波の伝搬方向へ延長した音波の伝搬領域において、前記圧電基板内を伝搬する音波の伝搬方向に直交する面に対して傾斜した傾斜面又は接線が傾斜した湾曲面からなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の攪拌装置の一態様は、上記の発明において、前記容器は、前記壁から突出し、前記壁内を伝搬する音波が音響インピーダンスの境界部によって前記容器から遠ざかる方向へ導かれる誘導部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の攪拌装置の一態様は、上記の発明において、前記誘導部は、前記伝搬する音波を乱反射させる反射端面が突出した端部に形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の自動分析装置は、複数の異なる液体を攪拌して反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記反応液を分析する自動分析装置であって、前記攪拌装置を用いて検体と試薬とを攪拌し、反応液を光学的に分析することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の攪拌装置の容器又は音波発生手段は、音波発生手段が発生した音波のうち反射しながら容器の壁内又は圧電基板内を伝搬する音波の伝搬方向に直交する面に対して傾斜又は湾曲した反射端面或いは伝搬する音波を乱反射させる反射端面が容器の壁又は圧電基板に形成され、本発明の自動分析装置は、上述の攪拌装置を備えているので、容器の壁内又は圧電基板内を伝搬する音波と反射端面で反射した音波とが干渉しない、又は干渉が抑制されるので、音波の干渉に伴う音波の伝搬経路に沿った圧電基板や容器壁の発熱を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(実施の形態1)
以下、本発明の攪拌装置及び自動分析装置にかかる実施の形態1について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明の攪拌装置を備えた実施の形態1の自動分析装置を示す概略構成図である。図2は、実施の形態1の自動分析装置及び攪拌装置の構成を示すブロック図である。図3は、実施の形態1の自動分析装置で使用される攪拌装置の表面弾性波素子と、表面弾性波素子を取り付けた反応容器とを示す斜視図である。図4は、表面弾性波素子が取り付けられ、実施の形態1の自動分析装置で使用される反応容器を送電体と共に示す斜視図である。
【0014】
自動分析装置1は、図1及び図2に示すように、試薬テーブル2,3、反応テーブル4、検体容器移送機構8、分析光学系12、洗浄機構13、制御部15及び攪拌装置20を備えている。
【0015】
試薬テーブル2,3は、図1に示すように、それぞれ周方向に配置される複数の試薬容器2a,3aを保持し、駆動手段に回転されて試薬容器2a,3aを周方向に搬送する。
【0016】
反応テーブル4は、図1に示すように、複数の反応容器5が周方向に沿って配列され、試薬テーブル2,3の駆動手段とは異なる駆動手段によって正転或いは逆転されて反応容器5を搬送する。反応テーブル4は、一周期で時計方向に(1周−1反応容器)/4周回転し、四周期で(1周−1反応容器)周回転する。
【0017】
反応容器5は、容量が数nL〜数十μLと微量な容器であり、分析光学系12の発光部12aから出射された分析光(340〜800nm)に含まれる光の80%以上を透過する透明素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。反応容器5は、図3及び図4に示すように、側壁5a,5bと底壁とによって液体を保持する水平断面が四角形の液体保持部が形成され、液体保持部の上部に開口5cを有する四角筒形状のキュベットである。反応容器5は、側壁5aに取り付けられる表面弾性波素子23と共に攪拌装置20を構成しており、液体保持部の内面には検体や試薬等の液体に対する親和性処理が施されている。反応容器5は、表面弾性波素子23を進行方向に向けて反応テーブル4に配置され、反応テーブル4の近傍に設けた試薬分注機構6,7によって試薬テーブル2,3の試薬容器2a,3aから試薬が分注される。
【0018】
ここで、試薬分注機構6,7は、それぞれ水平面内を矢印方向に回動するアーム6a,7aに試薬を分注するプローブ6b,7bが設けられ、洗浄水によってプローブ6b,7bを洗浄する洗浄手段を有している。
【0019】
検体容器移送機構8は、図1に示すように、フィーダ9に配列した複数のラック10を矢印方向に沿って1つずつ移送する移送手段であり、ラック10を歩進させながら移送する。ラック10は、検体を収容した複数の検体容器10aを保持している。ここで、検体容器10aは、検体容器移送機構8によって移送されるラック10の歩進が停止するごとに、水平方向に回動する駆動アーム11aとプローブ11bとを有する検体分注機構11によって検体が各反応容器5へ分注される。このため、検体分注機構11は、洗浄水によってプローブ11bを洗浄する洗浄手段を有している。
【0020】
分析光学系12は、試薬と検体とが反応した反応容器5内の液体を分析するための分析光(340〜800nm)を出射するもので、図1に示すように、発光部12a,分光部12b及び受光部12cを有している。発光部12aから出射された分析光は、反応容器5内の液体を透過し、分光部12bと対向する位置に設けた受光部12cによって受光される。受光部12cは、制御部15と接続され、受光した分析光の光量信号を制御部15へ出力する。
【0021】
洗浄機構13は、ノズル13aによって反応容器5内の液体を吸引して排出した後、ノズル13aから洗剤や洗浄水等の洗浄液を注入し、吸引する動作を複数回繰り返すことにより、分析光学系12による測光が終了した反応容器5内を洗浄する。
【0022】
制御部15は、例えば、マイクロコンピュータ等が使用され、図1及び図2に示すように、自動分析装置1の各構成部と接続されてこれらの作動を制御すると共に、発光部12aの出射光量と受光部12cが受光した光量に基づく反応容器5内の液体の吸光度に基づいて検体の成分濃度等を分析する。制御部15は、キーボード等の入力部16から入力される分析指令に基づいて自動分析装置1の各構成部の作動を制御しながら分析動作を実行させると共に、分析結果や警告情報の他、入力部16から入力される表示指令に基づく各種情報等をディスプレイパネル等の表示部17に表示する。
【0023】
攪拌装置20は、表面弾性波素子23を駆動して発生する音波によって反応容器5に保持された液体を攪拌するもので、反応容器5の他に、図1及び図2に示すように、送電体21と表面弾性波素子23とを有している。
【0024】
送電体21は、反応テーブル4外周の互いに対向する位置に反応容器5と水平方向に対向させて配置され、数MHz〜数百MHz程度の高周波交流電源から供給される電力を表面弾性波素子23に送電する。送電体21は、駆動回路とコントローラとを備えており、図4に示すように、表面弾性波素子23の電気端子23dに当接するブラシ状の接触子21aを有している。このとき、送電体21は、図1に示すように、配置決定部材22に支持されており、反応テーブル4の回転が停止したときに接触子21aから電気端子23dに電力を送電する。
【0025】
配置決定部材22は、送電体21から電気端子23dに電力を送電する送電時に、送電体21を移動させて送電体21と電気端子23dとの反応テーブル4の周方向並びに半径方向における相対配置を調整するもので、例えば、2軸ステージが使用される。具体的には、配置決定部材22は、反応テーブル4が回転し、送電体21から電気端子23dに電力を送電していない非送電時は作動を停止し、送電体21と電気端子23dとの間を一定の距離に保持している。
【0026】
そして、反応テーブル4が回転を停止すると、配置決定部材22は、制御部15の制御の下に送電体21を移動させ、送電体21と電気端子23dとが対向するように反応テーブル4の周方向に沿った位置を調整すると共に、相対配置を決定する。これにより、反応テーブル4が回転を停止すると、送電体21は、接触子21aが電気端子23dに接触し、接触子21aから電気端子23dに電力を送電する。
【0027】
表面弾性波素子23は、図3及び図5に示すように、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)等からなる圧電基板23aの一方の面に複数の櫛歯状電極(IDT)からなる振動子23bが設けられると共に、バスバー23cの端部に受電手段となる電気端子23dが設けられた音波発生手段である。振動子23bは、送電体21から送電された電力によって音波を発生する。表面弾性波素子23は、振動子23b及び電気端子23dを外側に向け、エポキシ樹脂や紫外線硬化樹脂等の音響整合層を介して反応容器5の側壁5aに取り付けられる。
【0028】
このとき、表面弾性波素子23は、図5に示すように、反射しながら圧電基板23a内を伝搬する音波の伝搬方向Dp1,Dp2に直交する面に対して圧電基板23aの幅方向に傾斜した傾斜面からなる反射端面23eが形成されている。即ち、表面弾性波素子23は、振動子23bを構成する複数の櫛歯状電極を反射端面23eに対して傾斜させて形成することにより、複数の櫛歯状電極の配列方向を反射端面23eに対して傾斜させている。また、反射端面23eは、音響インピーダンスが大きく異なる圧電基板23aと大気との境界であることから、音響インピーダンスの不連続面となる。
【0029】
ここで、表面弾性波素子23は、振動子23bとして櫛歯状電極(IDT)を使用するので、構造が簡単で小型な構成とすることができる。このため、電気端子23dを含めて表面弾性波素子23は、分析光学系12による測光を妨げないように、図3に示すように、測光用の窓となる側壁5bを避けて側壁5aに取り付けることが望ましい。
【0030】
以上のように構成される自動分析装置1は、制御部15の制御の下に作動し、回転する反応テーブル4によって周方向に沿って搬送されてくる複数の反応容器5に試薬分注機構6,7が試薬容器2a,3aから試薬を順次分注する。試薬が分注された反応容器5は、検体分注機構11によってラック10に保持された複数の検体容器10aから検体が順次分注される。
【0031】
そして、試薬と検体が分注された反応容器5は、反応テーブル4が停止する都度、攪拌装置20によって順次攪拌されて試薬と検体とが反応し、反応テーブル4が再び回転したときに分析光学系12を通過する。このとき、反応容器5内の反応液は、受光部12cで測光され、制御部15によって成分濃度等が分析される。そして、反応液の測光が終了した反応容器5は、洗浄機構13によって洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0032】
このとき、攪拌装置20は、送電体21から電力を送電して表面弾性波素子23を駆動すると、図6に示すように、振動子23bの発生した音波(バルク波)が圧電基板23a及び側壁5aを伝搬して反応容器5に保持された液体試料Ls中へ入射し、液体試料Ls中に音響流を発生させて液体試料Lsを攪拌する。この場合、振動子23bが発生した音波(バルク波)には、反射しながら圧電基板23a内を伝搬する音波WbA、反射しながら側壁5a内を伝搬する音波WbB及び液体試料Ls中へ入射する音波WbCがある。これらの音波のうち、音波WbCのみが液体試料Lsの攪拌に寄与し、音波WbA,WbBは圧電基板23a内及び側壁5a内を多重反射しながら伝搬することで減衰してゆく。なお、図6に示す攪拌装置20は、圧電基板23aと側壁5aとの間に配置される音響整合層を省略しており、以下の説明で使用する他の図面においても音響整合層を省略している。
【0033】
ここで、図7は、圧電基板24a内を伝搬する音波の伝搬方向Dp1,Dp2に直交する面と反射端面24eとが並行する表面弾性波素子24と反応容器5の側壁5aとにおける音波及び音波の伝搬方向をモデル的に示す図である。図7を参照して、本明細書において使用する振動子23bが発生した出射音波の伝搬方向Dp及び反射音波の伝搬方向Drについて説明しておく。図7において、振動子24bが発生した音波(バルク波)のうち反射しながら圧電基板24a内を伝搬する出射音波WbA及び反射しながら側壁5a内を伝搬する出射音波WbBは、振動子24bに対応する位置を基準として複数の櫛歯状電極の配列方向に沿って長手方向へ右方及び左方へ伝搬し、圧電基板24aや側壁5aの端面で反射して反射音波となる。
【0034】
このとき、本明細書においては、出射音波WbA,WbBの伝搬方向の一方を伝搬方向Dp1とし、180°伝搬方向が異なる他方を伝搬方向Dp2と呼ぶ。また、圧電基板24aや側壁5aの端面で反射した音波を反射音波WbAR,WbBRと呼び、図6,図7並びに以下の説明で使用する図面では破線で示すと共に、伝搬方向を符号Dr1,Dr2と表わす。但し、線が錯綜するため、図7には伝搬方向Dr2は記載していない。更に、出射音波WbA,WbBの伝搬方向Dp1,Dp2や反射音波WbAR,WbBRの伝搬方向Dr1,Dr2は、単に方向を示すのみで音波の大きさや強さを示すものではなく、以下に説明する変形例や他の実施の形態においても同様である。
【0035】
そして、図5に示した表面弾性波素子23は、振動子23bが発生した音波のうち圧電基板23a内を反射しながら伝搬する音波の伝搬方向Dp1,Dp2に直交する面に対して傾斜した反射端面23eが形成されている。このため、攪拌装置20を駆動すると、図8に示すように、振動子23bが発生した音波は、反射しながら圧電基板23a内を伝搬方向Dp1,Dp2へ伝搬する。そして、音波は、反射端面23eで反射すると、伝搬方向Dp1,Dp2とは異なる伝搬方向Dr1,Dr2に沿って伝搬してゆく。
【0036】
このため、反射端面23eで反射した反射音波と、振動子23bから出射されて圧電基板23a内を伝搬方向Dp1,Dp2に沿って伝搬してくる出射音波とは、干渉しない。このため、攪拌装置20は、表面弾性波素子23を駆動することによって発生した音波の伝搬経路に沿って圧電基板23aに多少の発熱はあるものの、反射音波と出射音波とが干渉しないので、音波の干渉による音波の伝搬経路に沿った圧電基板23aの発熱を抑制することができる。
【0037】
このとき、攪拌装置が、表面弾性波素子23に代えて、反射しながら圧電基板24a内を伝搬する音波の伝搬方向に直交する面と反射端面24eとが並行する図9に示す従来の表面弾性波素子24を使用したとする。すると、表面弾性波素子24を使用した攪拌装置では、反射しながら圧電基板24a内を伝搬方向Dp1,Dp2に沿って伝搬した音波が音響インピーダンスの不連続面である反射端面24eで反射すると、伝搬方向Dp1,Dp2と180°伝搬方向が異なる逆向きの伝搬方向Dr1,Dr2に沿って伝搬してゆく。このため、反射音波と出射音波とが干渉し、圧電基板24aは、音波の伝搬経路に沿って前述の表面弾性波素子23の圧電基板23a以上に発熱する。ここで、表面弾性波素子24を含め、以下に説明する表面弾性波素子は、表面弾性波素子23と対応する構成要素には対応する符号を使用している。
【0038】
即ち、表面弾性波素子24を使用した攪拌装置は、圧電基板24aについて見ると、図10及び図11に示すように、圧電基板24a内を反射しながら伝搬する音波WbAと反射端面24eで反射した反射音波WbARとが干渉する結果、音波WbA,WbARの伝搬経路上にある圧電基板24aの領域Aiが音波の干渉がない圧電基板23a以上に発熱する。
【0039】
また、反応容器5の側壁5aについて見ると、表面弾性波素子24を使用した攪拌装置は、図12及び図13に示すように、圧電基板24aから伝搬して側壁5a内を反射しながら伝搬する音波WbBと反射端面24eで反射した反射音波WbBRとが干渉する結果、音波WbB,WbBRの伝搬経路上にある側壁5aの領域Aiが音波の干渉がない場合以上に発熱する。
【0040】
以上のように、反射しながら圧電基板24a内を伝搬する音波の伝搬方向に直交する面に並行する反射端面24eを有する表面弾性波素子24を用いた攪拌装置に対し、実施の形態1の攪拌装置20は、反射しながら圧電基板23a内を伝搬する音波の伝搬方向に直交する面に対して傾斜した反射端面23eが形成された表面弾性波素子23を使用している。
【0041】
このため、攪拌装置20は、表面弾性波素子23を駆動することによって発生した音波の伝搬経路に沿って圧電基板23aが発熱するが、反射音波と出射音波とが干渉しないので、表面弾性波素子24を用いた攪拌装置に比べて音波の干渉による音波の伝搬経路に沿った圧電基板23aの発熱を抑制することができる。
【0042】
なお、表面弾性波素子23の反射端面23eは、図5に示すように、少なくとも振動子23bを構成する複数の櫛歯状電極が交叉する交叉幅Cwを音波の伝搬方向へ延長した音波の伝搬領域が圧電基板23a内を伝搬する音波の伝搬方向に直交する面に対して傾斜した傾斜面になっていればよい。
【0043】
(変形例1)
ここで、攪拌装置20で使用する音波発生手段は、図14に示す表面弾性波素子25のように、反応容器5の底壁5dに取り付けてもよい。表面弾性波素子25は、発生した音波のうち反射しながら圧電基板25a内を伝搬する音波の伝搬方向に直交する面に対して傾斜した反射端面25e(図15参照)が圧電基板25aに形成されている。このように、側壁5a(図10参照)に表面弾性波素子25が取り付け不可能な場合も、表面弾性波素子25を底壁5dに取り付けることで同様の効果を得ることができ、攪拌装置20は、設計上音波発生手段を配置する部位の選択肢が増す。
【0044】
図15は、表面弾性波素子25と圧電基板25a内を反射しながら伝搬する出射音波の伝搬方向Dp1及び反射音波の伝搬方向Dr1とを模式的に示す図である。このとき、表面弾性波素子25を使用した攪拌装置は、表面弾性波素子25を駆動すると、圧電基板25a内を反射しながら伝搬方向Dp1に沿って伝搬した出射音波は、音響インピーダンスの不連続面である反射端面25eにおいて反射すると、伝搬方向Dp1とは異なる伝搬方向Dr1へ伝搬してゆく。
【0045】
従って、表面弾性波素子25は、反射端面25eで反射して伝搬方向Dr1へ伝搬する反射音波と、圧電基板25a内を伝搬方向Dp1に沿って伝搬してくる出射音波とが干渉しない。このため、表面弾性波素子25を使用した攪拌装置20は、表面弾性波素子25を駆動することによって発生した音波の伝搬経路に沿って圧電基板25aが発熱するが、反射音波と出射音波とが干渉しないので、音波の干渉による音波の伝搬経路に沿った圧電基板25aの発熱を抑制することができる。
【0046】
ここで、図16は、反射しながら圧電基板26a内を伝搬する音波の伝搬方向に直交する面と反射端面26eとが並行する従来の表面弾性波素子26を用いた攪拌装置を駆動した際の、表面弾性波素子26と圧電基板26a内を反射しながら伝搬する出射音波の伝搬方向Dp1,Dp2及び反射音波の伝搬方向Dr1,Dr2とを模式的に示す図である。また、図17は、駆動によって発熱状態にある表面弾性波素子26を熱赤外線サーモグラフィ装置によって撮像したカラー映像の図である。
【0047】
図17に示すように、反射しながら圧電基板26a内を伝搬方向Dp1,Dp2に沿って伝搬する出射音波は、音響インピーダンスの不連続面である反射端面26eで反射すると、伝搬方向が180°変化し、伝搬方向Dp1,Dp2とは逆向きの伝搬方向Dr1,Dr2に沿って伝搬してゆく。このため、表面弾性波素子26は、反射音波と出射音波とが音波の伝搬経路上で干渉し、振動子26bと反射端面26eとの間の音波の伝搬経路に沿った領域Hにおける圧電基板26aの発熱が顕著であることが読み取れる。
【0048】
一方、図18は、駆動によって発熱状態にある表面弾性波素子25を熱赤外線サーモグラフィ装置によって撮像したカラー映像の図であり、圧電基板25a中央の音波の伝搬方向Dp1に沿った部分が高温になっていることが読み取れる。このとき、圧電基板25aの発熱部分を詳細に見るため、図18のコントラストを変更した図19に示す白黒映像の図を見ると、圧電基板25aは、出射音波が反射端面25eで異なる方向へ反射しており、出射音波の伝搬方向Dp1に沿った伝搬経路の方が、反射音波の伝搬方向Dr1に沿った伝搬経路よりも高温になっていることが分かる。しかしながら、圧電基板25aは、図17の圧電基板26aと比べ、伝搬経路上の温度が低く、発熱が抑制されていることが分かる。
【0049】
(変形例2)
また、攪拌装置20で使用する音波発生手段は、発生した音波のうち反射しながら圧電基板内を伝搬する音波の伝搬方向に直交する面に対して傾斜又は湾曲した反射端面が圧電基板に形成されていればよい。そのため、音波の伝搬方向に直交する面に対して傾斜した反射端面に代えて、図20に示す表面弾性波素子27のように、音波の伝搬方向に直交する面に対して音波の伝搬方向に凸に湾曲した反射端面27eを圧電基板27aに形成してもよい。
【0050】
このとき、反射端面27eは、図20に示すように、少なくとも振動子27bを構成する複数の櫛歯状電極が交叉する交叉幅Cwを音波の伝搬方向Dp1,Dp2へ延長した音波の伝搬領域において、圧電基板27a内を伝搬する音波の伝搬方向Dp1,Dp2に直交する面に対して接線Tが傾斜した湾曲凸面とする。このため、表面弾性波素子27は、例えば、伝搬方向Dp1へ伝搬する出射音波が、反射端面27eにおいて伝搬方向Dp1とは異なる伝搬方向Dr1へ反射されて出射音波と反射音波とが干渉することがないので、出射音波と反射音波との干渉による音波の伝搬経路に沿った圧電基板27aの発熱が抑制される。
【0051】
また、図21に示す表面弾性波素子28のように、音波の伝搬方向に直交する面に対して音波の伝搬方向に凹に湾曲した反射端面28eを圧電基板28aに形成してもよい。このとき、反射端面28eは、図21に示すように、少なくとも振動子28bを構成する複数の櫛歯状電極が交叉する交叉幅Cwを音波の伝搬方向Dp1へ延長した音波の伝搬領域において、圧電基板28a内を伝搬する音波の伝搬方向Dp1に直交する面に対して接線Tが傾斜した湾曲凹面とする。
【0052】
反射端面28eをこのような湾曲凹面にすると、表面弾性波素子28は、表面弾性波素子27と同様にして、出射音波と反射音波との干渉による音波の伝搬経路に沿った圧電基板28aの発熱が抑制される。ここで、図21は、伝搬方向Dp1へ延長した音波の伝搬領域上における接線Tのみを示したが、180°伝搬方向が異なる伝搬方向Dp2へ延長した音波の伝搬領域において、圧電基板28a内を伝搬する音波の伝搬方向Dp2に直交する面に対しても接線が傾斜した湾曲凹面とすることはいうまでもない。
【0053】
但し、図22に示す表面弾性波素子29のように、反射端面29eが湾曲凸面であっても、少なくとも振動子29bを構成する複数の櫛歯状電極が交叉する交叉幅Cwを音波の伝搬方向Dp1,Dp2へ延長した音波の伝搬領域において、圧電基板29a内を伝搬する音波の伝搬方向Dp1,Dp2に直交する面に対して接線Tが傾斜しないものは、攪拌装置20では使用しない。これは、表面弾性波素子29は、接線Tが振動子29bを構成する複数の櫛歯状電極と平行になることから、出射音波と反射音波とが音波の伝搬経路上で干渉し、この干渉によって圧電基板29aが音波の伝搬経路に沿って干渉しない場合以上に発熱するからである。この関係は、反射端面を湾曲凹面とする場合も同じである。
【0054】
また、反射端面を湾曲凸面とする場合、図23に示す表面弾性波素子31のように、圧電基板31aが楕円形に成形され、振動子31bが一方の焦点(F1)に配置されていると、振動子31bが発生した音波が反射端面31eで反射した場合に反射音波が圧電基板31a内の他方の焦点(F2)に集束して互いに干渉し、圧電基板31aの局所的な発熱が発生する。このため、反射端面を湾曲凸面とする場合、少なくとも振動子31bを構成する複数の櫛歯状電極が交叉する交叉幅を音波の伝搬方向へ延長した音波の伝搬領域において、圧電基板31a内を伝搬する音波の伝搬方向に直交する面に対して接線が傾斜していても、圧電基板31aを楕円形に成形し、振動子31bを一方の焦点に配置することは避ける。
【0055】
(変形例3)
更に、攪拌装置20で使用する音波発生手段は、出射音波と反射音波との干渉を抑制することができれば、図24に示す表面弾性波素子32のように、出射音波の伝搬方向Dpに直交する面を乱反射面とした反射端面32eを圧電基板32aに形成してもよい。このような反射端面32eを形成すると、表面弾性波素子32は、図25に示すように、例えば、伝搬方向Dp1に伝搬する出射音波が、反射端面32eにおいて伝搬方向Dr1,Dr2,………Dr(n-1),Drnへ乱反射し、音波の伝搬経路上における反射音波と出射音波との干渉が抑制される。これは、伝搬方向Dp1と180°伝搬方向が異なる伝搬方向Dp2に伝搬する出射音波においても同様である。
【0056】
このため、表面弾性波素子32を使用した攪拌装置20は、反射音波と出射音波との干渉が抑えられるので、音波の干渉による音波の伝搬経路に沿った圧電基板32aの発熱を抑制することができる。この場合、反射端面32eは、例えば、圧電基板32aに薬品による化学的処理やサンドブラスト等の物理的処理を施すことによって乱反射面に加工する。
【0057】
(実施の形態2)
次に、本発明の攪拌装置及び自動分析装置にかかる実施の形態2について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図26は、実施の形態2の自動分析装置で使用される攪拌装置の表面弾性波素子と、表面弾性波素子を取り付けた反応容器とを示す斜視図である。図27は、図26の反応容器を縦方向に切断し、表面弾性波素子の圧電基板内における音波の反射を説明する要部断面図である。実施の形態1の攪拌装置は、使用する表面弾性波素子における圧電基板端面の幅方向の形状によって圧電基板の発熱を抑制したが、実施の形態2の攪拌装置は、表面弾性波素子における圧電基板端面の厚さ方向の形状によって圧電基板の発熱を抑制している。ここで、以下に説明する各実施の形態の自動分析装置及び攪拌装置は、実施の形態1の自動分析装置1及び攪拌装置20と同一のものを使用するので説明を省略している。
【0058】
実施の形態2の自動分析装置で使用される攪拌装置20は、図26に示す表面弾性波素子34を反応容器5の側壁5aに取り付けて用いている。
【0059】
表面弾性波素子34は、図26及び図27に示すように、振動子34bが発生した音波のうち圧電基板34a内を反射しながら伝搬する音波の伝搬方向Dp1,Dp2に直交する面に対し厚さ方向に傾斜した反射端面34eが形成されている。
【0060】
従って、攪拌装置20を駆動すると、表面弾性波素子34は、図27に示すように、振動子34bが発生した出射音波WbAが圧電基板34a内を反射しながら伝搬し、反射端面34eで反射して反射音波WbARとして出射音波WbAとは異なる方向へ伝搬してゆく。
【0061】
このため、表面弾性波素子34は、反射端面34eで反射した反射音波WbARと、振動子34bから出射されて圧電基板34a内を伝搬方向Dp1,Dp2に沿って伝搬してくる出射音波WbAとが干渉しない。従って、表面弾性波素子34は、反射端面34e近傍の音波の伝搬経路において、音波の干渉による圧電基板34aの発熱を抑制することができる。
【0062】
但し、表面弾性波素子34は、図27及び図28に示すように、反応容器5の側壁5aと反射端面34eとが大気中でなす角度をθ1、振動子34bが発生した出射音波WbAの圧電基板34aへの放射角をα1としたとき、角度θ1を放射角α1と異なる角度に設定する。表面弾性波素子34は、角度θ1が放射角α1と等しいと、図28に示すように、出射音波WbAが反射端面34eに垂直に入射し、180°異なる方向に反射される。このため、表面弾性波素子34は、反射音波WbARと出射音波WbAとが反射端面34e近傍で干渉し、圧電基板34aの伝搬経路上の領域Aiが発熱してしまう。
【0063】
また、圧電基板34aが、図29に示す形状の場合、角度θ1が放射角180°−α1と等しいと、反射音波WbARと出射音波WbAとが反射端面34e近傍で干渉し、圧電基板34aの伝搬経路上の領域が発熱してしまう。
【0064】
なお、ここでは、側壁5aと反射端面34eとが大気中でなす角度θ1が2箇所とも放射角α1又は放射角180°−α1と等しい場合について説明したが、角度θ1の一方が放射角α1と等しく、角度θ1の他方が放射角180°−α1と等しい場合であっても、上述の説明と同様に、圧電基板34aの伝搬経路上の領域が発熱してしまう。
【0065】
なお、図27は、反応容器5についてはハッチングを付したが、圧電基板34aについては図面における線の錯綜を回避して出射音波WbA,反射音波WbAR,角度θ1及び放射角α1等を明示するためハッチングを省略している。そして、以下の説明で使用する図面においても、図面中における線の錯綜を回避する場合には、必要に応じてハッチングの前部又は一部を省略している。
【0066】
(変形例1)
ここで、攪拌装置20で使用する音波発生手段は、図30に示す表面弾性波素子34のように、反応容器5の底壁5dに取り付けて使用してもよい。これにより、攪拌装置20は、設計上、表面弾性波素子34の配置の自由度が増す。
【0067】
(変形例2)
また、攪拌装置20で使用する音波発生手段は、厚さ方向に傾斜した反射端面に代えて、図31に示す表面弾性波素子35のように、厚さ方向外方へ凸に湾曲した反射端面35eを圧電基板35aに形成してもよい。
【0068】
このような反射端面35eを形成すると、表面弾性波素子35は、図31に示すように、反射しながら圧電基板35a内を伝搬する出射音波WbAが、反射端面35eにおいて反射すると、出射音波WbAとは異なる方向へ反射される。このため、表面弾性波素子35は、出射音波WbAと反射音波WbARとが伝搬経路上で干渉することがないので、出射音波WbAと反射音波WbARとの干渉による音波の伝搬経路に沿った圧電基板35aの発熱が抑制される。
【0069】
但し、表面弾性波素子35は、図32に示すように、出射音波WbAが反射端面35eに垂直に入射する入射点における接線T1と反応容器5の側壁5aとが大気中でなす角度をθ2(<90°)とし、振動子35bが発生した出射音波WbAの側壁5aへの放射角をα1としたとき、角度θ2が放射角α1と異なる角度(θ2≠α1)に設定する。これは、出射音波WbAが反射端面35eに垂直に入射すると、180°異なる方向に反射され、反射音波WbARと出射音波WbAとが反射端面35e近傍で干渉し、圧電基板35aの伝搬経路上の領域Aiが発熱sするからである。このとき、出射音波WbAが反射端面35eに垂直に入射する条件は、図32に示すように、θ2+(90°−α1)=90°からθ2=α1となる。
【0070】
一方、同様の理由から、表面弾性波素子35は、出射音波WbAが反射端面35eに垂直に入射する入射点における接線T2と反応容器5の側壁5aとが大気中でなす角度をθ3(>90°)とし、振動子35bが発生した出射音波WbAの放射角をα1としたとき、角度θ3を180°−α1と異なる角度(θ3≠180°−α1)に設定する。
【0071】
また、図33に示す表面弾性波素子36のように、厚さ方向内方へ凹に湾曲した反射端面36eを圧電基板36aに形成してもよい。この場合、反射端面36eに関する接線の傾斜角度は、表面弾性波素子35と同様に決定される。
【0072】
(変形例3)
更に、攪拌装置20で使用する音波発生手段は、圧電基板における出射音波と反射音波との干渉を抑制することができれば、図34に示す表面弾性波素子37のように、出射音波の伝搬方向Dpに直交する面を乱反射面とした反射端面37eを圧電基板37aに形成してもよい。このような反射端面37eを形成すると、表面弾性波素子37は、図35に示すように、例えば、圧電基板37a内を上方に伝搬する出射音波WbAが、反射端面37eにおいて乱反射して反射方向の異なる複数の反射音波WbARとなるので、音波の伝搬経路上における反射音波と出射音波との干渉が抑制される。これは、伝搬方向が180°異なる圧電基板37a内を下方に伝搬する出射音波WbAにおいても同様である。
【0073】
このため、表面弾性波素子37を使用した攪拌装置20は、反射音波と出射音波との干渉が抑えられるので、音波の干渉による音波の伝搬経路に沿った圧電基板37aの発熱を抑制することができる。
【0074】
(実施の形態3)
次に、本発明の攪拌装置及び自動分析装置にかかる実施の形態3について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図36は、実施の形態3の自動分析装置で使用される攪拌装置の表面弾性波素子と、表面弾性波素子を取り付けた反応容器とを示す斜視図である。図37は、図36に示す反応容器の正面図である。実施の形態1,2の攪拌装置は、使用する表面弾性波素子における圧電基板の形状によって圧電基板の発熱を抑制したが、実施の形態3の攪拌装置は、反応容器の壁面の形状によって壁面の発熱を抑制している。
【0075】
実施の形態3の自動分析装置で使用される攪拌装置20は、図36に示すように、表面弾性波素子24を反応容器5Aの側壁5aに取り付けて用いている。
【0076】
反応容器5Aは、図36に示すように、反射しながら側壁5b内を伝搬する音波の伝搬方向に直交する面に対して反応容器5Aの壁面の幅方向に傾斜した傾斜面からなる反射端面5eが底壁5dに形成されている。即ち、反応容器5Aは、対向する側壁5b下部の長さを異ならせることによって底壁5dを傾斜させ、側壁5aの下部に反射端面5eを形成している。
【0077】
従って、攪拌装置20を駆動すると、表面弾性波素子24は、振動子24bが発生した音波のうち、圧電基板24aから側壁5aに伝搬し、図37に示すように、反射しながら側壁5a内を伝搬方向Dp2に沿って伝搬する音波が反射端面5eで反射し、伝搬方向とは異なる伝搬方向Dr2に沿って伝搬してゆく。
【0078】
このため、反応容器5Aは、反射端面5eで反射した反射音波と、振動子24bから出射されて側壁5a内を伝搬方向Dp2に沿って伝搬してくる出射音波とが干渉しない。従って、攪拌装置20を駆動した際、反応容器5Aは、反射端面5e近傍の音波の伝搬経路における音波の干渉による側壁5aの発熱を抑制することができる。
【0079】
なお、攪拌装置20で使用する反応容器5Aは、反射しながら側壁5a内を伝搬する音波の伝搬方向に直交する面に対して反応容器5Aの壁面の幅方向に傾斜した傾斜面からなる反射端面であれば、図38に示すように、側壁5aの上部に反射端面5eを形成してもよい。この場合、反応容器5Aは、2つの側壁5aに反射端面5eを形成してあるが、表面弾性波素子24を取り付けた側壁5aのみに反射端面5eを形成してもよい。
【0080】
(変形例1)
ここで、攪拌装置20で使用する反応容器は、反射しながら側壁5b内を伝搬する音波の伝搬方向に直交する面に対して反応容器の壁面の幅方向に傾斜又は湾曲した反射端面が形成されていれば、図39に示す反応容器5Bのように、側壁5bの幅方向に湾曲した湾曲面からなる反射端面5fを底壁5dに形成してもよい。即ち、反応容器5Bは、底壁5dを側壁5bの幅方向に湾曲させ、側壁5aの下部に幅方向に湾曲させた反射端面5fが形成されている。
【0081】
従って、攪拌装置20を駆動すると、表面弾性波素子24は、振動子24bが発生した音波のうち、圧電基板24aから側壁5aに伝搬し、図40に示すように、反射しながら側壁5a内を伝搬方向Dp2に沿って伝搬する音波が反射端面5fで反射し、伝搬方向とは異なる伝搬方向Dr2に沿って伝搬してゆく。
【0082】
このため、反応容器5Bは、反射端面5fで反射した反射音波と、振動子24bから出射されて側壁5a内を伝搬してくる出射音波とが干渉しない。従って、攪拌装置20を駆動した際、反応容器5Bは、反射端面5f近傍の音波の伝搬経路における音波の干渉による音波の伝搬経路に沿った側壁5aの発熱を抑制することができる。
【0083】
また、反応容器5Bは、反射しながら側壁5a内を伝搬する音波の伝搬方向に直交する面に対して反応容器5Bの壁面の幅方向に傾斜した湾曲面からなる反射端面であれば、図41に示すように、表面弾性波素子24を取り付けた側壁5aの上部を上方へ伸ばし、側壁5aの上部を幅方向に湾曲させて反射端面5fを形成してもよい。
【0084】
(変形例2)
また、攪拌装置20で使用する反応容器は、出射音波と反射音波との干渉を抑制することができれば、図42に示す反応容器5Cのように、出射音波の伝搬方向Dpに直交する面を乱反射面とした反射端面5gを側壁5aの上下の端面に形成してもよい。このような反射端面5gを形成すると、反応容器5Cは、図43に示すように、例えば、側壁5a内を上方の伝搬方向Dp1に伝搬する出射音波が、反射端面5gで伝搬方向Dr1,Dr2,………Dr(n-1),Drnへ乱反射し、音波の伝搬経路上における反射音波と出射音波との干渉が抑制される。これは、伝搬方向が180°異なる側壁5a内を下方に伝搬する出射音波においても同様である。
【0085】
このため、反応容器5Cを使用した攪拌装置20は、反射音波と出射音波との干渉が抑えられるので、音波の干渉による音波の伝搬経路に沿った側壁5aの発熱を抑制することができる。
【0086】
(変形例3)
更に、攪拌装置20で使用する反応容器は、反応容器の壁における出射音波と反射音波との干渉を抑制することができれば、図44に示す反応容器5Dのように、長円形の円筒形状として長円形の底壁5dの長手方向両側を反射端面5hとすると共に、長円形の底壁5dの下面に表面弾性波素子24を取り付けてもよい。
【0087】
底壁5dを長円形にすると、攪拌装置20を駆動した際に、反応容器5Dは、表面弾性波素子24の振動子24bから出射され、底壁5d内を反射しながら伝搬方向Dp1,Dp2に伝搬する出射音波が反射端面5hで反射されると、伝搬方向Dp1,Dp2とは異なる伝搬方向Dr1,Dr2に沿って伝搬してゆく。
【0088】
このため、反応容器5Dは、反射端面5hで反射した反射音波と、振動子24bから出射されて側壁5a内を伝搬してくる出射音波とが干渉しない。従って、攪拌装置20を駆動した際、反応容器5Dは、反射端面5h近傍の音波の伝搬経路における音波の干渉による音波の伝搬経路に沿った底壁5dの発熱を抑制することができる。
【0089】
このとき、攪拌装置20で使用する反応容器5Dは、実施の形態1の変形例2に係る表面弾性波素子29で説明したように、振動子24bを構成する複数の櫛歯状電極が交叉する交叉幅を音波の伝搬方向Dp1,Dp2へ延長した音波の伝搬領域において、圧電基板24a内を伝搬する音波の伝搬方向Dp1,Dp2に直交する面に対して反射端面5hの接線が傾斜するもののみを使用し、接線が傾斜しないものは使用しない。また、反応容器5Dは、側壁5a,5bによって四角筒形状に成形し、底壁5dのみを長円形に成形してもよい。このようにすると、反応容器5Dの加工が容易になる。
【0090】
(実施の形態4)
次に、本発明の攪拌装置及び自動分析装置にかかる実施の形態4について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図45は、実施の形態4の自動分析装置で使用される攪拌装置の表面弾性波素子と、表面弾性波素子を取り付けた反応容器とを示す斜視図である。実施の形態3の攪拌装置は、使用する反応容器における壁面の幅方向の形状によって壁面の発熱を抑制したが、実施の形態4の攪拌装置は、反応容器における壁面の厚さ方向の形状によって壁面の発熱を抑制している。
【0091】
実施の形態4の攪拌装置20は、図45に示す反応容器5Eを使用する。反応容器5Eは、表面弾性波素子24を取り付けた側壁5aと底壁5dとの交叉部に容器内側に傾斜する傾斜面からなる反射端面5iが形成されている。反射端面5iは、反射しながら側壁5b内を伝搬する音波の伝搬方向に直交する面に対して側壁5aの厚さ方向に傾斜している。
【0092】
従って、攪拌装置20を駆動すると、振動子24bが発生した音波のうち、圧電基板24aから側壁5aに伝搬し、図46に示すように、反射しながら側壁5a内を伝搬する出射音波WbBは、反射端面5iで反射する。このとき、圧電基板24aから側壁5aに入射する音波の放射角をα2とし、反射端面5iの底壁5d下面に対してなす角度をβ1とすると、出射音波WbBが反射端面5iに垂直に入射する条件は、図46に示すように、α2+β1=90°からβ1=90°−α2となる。
【0093】
このため、反応容器5Eは、側壁5aに入射する音波の放射角α2に対して、反射端面5iの角度β1をβ1≠90°−α2に設定する。このように設定した反応容器5Eを使用した攪拌装置20は、表面弾性波素子24を駆動した際、側壁5a内を伝搬する出射音波WbBが反射端面5iにおいて反射すると、出射音波WbBとは異なる方向へ反射される。この結果、反応容器5Eは、出射音波WbBと反射音波WbBRとが伝搬経路上で干渉することがないので、出射音波WbBと反射音波WbBRとの干渉による音波の伝搬経路に沿った側壁5aの発熱が抑制される。
【0094】
ここで、反応容器5Eは、図47に示すように、底壁5dに表面弾性波素子24を取り付けてもよい。これにより、攪拌装置20は、設計上、反応容器5Eに表面弾性波素子24を配置する際の自由度が増す。
【0095】
また、反応容器5Eは、出射音波と反射音波との干渉による音波の伝搬経路に沿った側壁5aの発熱を抑制することができれば、図48に示すように、反射端面5iを側壁5aの上部内側に形成してもよい。このとき、図49に示すように、圧電基板24aから側壁5aに入射する音波の放射角をα2とし、反射端面5iの側壁5aに対してなす角度をβ2とする。すると、出射音波WbBが反射端面5iに垂直に入射する条件(β2+(90°−α2)=90°)を考慮して、反応容器5Eは、反射端面5iの角度β2をβ2≠α2に設定する。
【0096】
また、音波の放射角α2に対して反射端面5iの角度β2を、β2<90°、β2≠α2,180°−α2と設定すると、反応容器5Eは、出射音波と反射音波との干渉による音波の伝搬経路に沿った側壁5aの発熱側壁5aの発熱を抑制することができるという効果に加え、反射端面5iが反応容器5Eの内側に向かって傾斜していることから、試薬や検体等、液体試料Lsの液滴Drが導入し易くなるという利点がある。
【0097】
(変形例1)
ここで、攪拌装置20で使用する反応容器は、傾斜面からなる反射端面に代えて、図50に示す反応容器5Fのように、表面弾性波素子24を取り付けた側壁5aと底壁5dとの交叉部に容器内側に湾曲する湾曲面からなる反射端面5jを形成してもよい。即ち、反応容器5Bは、側壁5aの下部に厚さ方向に湾曲する反射端面5jが形成されている。
【0098】
従って、攪拌装置20を駆動すると、表面弾性波素子24は、振動子24bが発生して圧電基板24aから側壁5aに伝搬し、図50に示すように、反射しながら側壁5a内を伝搬する出射音波WbBが反射端面5jで反射し、反射音波WbBRが出射音波WbBとは異なる方向に伝搬してゆく。
【0099】
このため、反応容器5Fは、反射端面5jで反射した反射音波WbBRと、振動子24bから出射されて側壁5a内を伝搬してくる出射音波WbBとが干渉しない。従って、攪拌装置20を駆動した際、反応容器5Fは、音波の干渉による反射端面5j近傍の音波の伝搬経路に沿った側壁5aの発熱を抑制することができる。
【0100】
但し、反応容器5Fは、図50に示すように、圧電基板24aから側壁5aに入射する音波の放射角をα2とし、反射端面5jに入射する音波の接線Tが底壁5dを延長した線となす角度をβ3とすると、出射音波WbBが反射端面5jに垂直に入射する条件(β3+α2=90°)を考慮して、反射端面5iの角度β3をβ3+α2≠90°に設定する。
【0101】
(変形例2)
また、攪拌装置20で使用する反応容器は、出射音波と反射音波との干渉を抑制することができれば、図51に示す反応容器5Gのように、交叉する部分の側壁5a及び底壁5dの矢印で示す範囲の表面を乱反射面とした反射端面5kを形成してもよい。このような反射端面5kを形成すると、反応容器5Gは、図51に示すように、例えば、側壁5a内を下方へ伝搬してくる出射音波WbBが、反射端面5kで乱反射される。このため、反応容器5Gは、音波の伝搬経路上における反射音波WbBRと出射音波WbBとの干渉が抑制される。
【0102】
このため、反応容器5Gを使用した攪拌装置20は、反射音波と出射音波との干渉が抑えられるので、音波の干渉による音波の伝搬経路に沿った側壁5aの発熱を抑制することができる。
【0103】
(実施の形態5)
次に、本発明の攪拌装置及び自動分析装置にかかる実施の形態5について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図52は、実施の形態5の自動分析装置で使用される攪拌装置の表面弾性波素子と、表面弾性波素子を取り付けた反応容器とを示す斜視図である。図53は、表面弾性波素子の中央で縦方向に切断した反応容器の断面図である。実施の形態3,4の攪拌装置は、使用する反応容器の壁面に関する形状によって壁面の発熱を抑制したが、実施の形態5の攪拌装置は、音波を反応容器から遠ざける方向へ導く誘導部を設けることによって壁面の発熱を抑制している。
【0104】
実施の形態5の攪拌装置20は、図52に示す反応容器5Hを使用する。反応容器5Eは、図52及び図53に示すように、表面弾性波素子24を取り付けた側壁5a下部に側壁5aから外方へ突出する突縁状の誘導部5mが設けられ、底面部材51によって底壁が形成されている。誘導部5mは、側壁5a内を伝搬する音波を反応容器5Hから遠ざかる方向へ導く部分であり、側壁5aと同じ素材から成形され、端面には乱反射面からなる反射端面5nが形成されている。底面部材51は、外方に向かって低くなる傾斜面が周囲に形成された四角形状の部材であり、側壁5a,5bの下部に接着層52によって接着されている。このとき、接着層52は、誘導部5m側の面が音響インピーダンスの境界部となる。
【0105】
従って、反応容器5Hは、誘導部5m,底面部材51,接着層52の音響インピーダンスをそれぞれZ1,Z2,Z3とし、音波の波長を、接着層52の厚さをLとしたときに、側壁5a内を伝搬してくる音波を底面部材51ではなく反応容器5Hから遠ざかる誘導部5mへ伝搬させるには、次式の関係を満たす必要がある。
【0106】
Z3≠(Z1+Z2)/2
Z1<Z2<Z3, 又はZ3<Z1<Z2, 又はZ2<Z1<Z3, 又はZ3<Z2<Z1
L≠(λ/2)・n (nは自然数)
【0107】
但し、誘導部5mと底面部材51は、同一素材であってもよいので、音響インピーダンスについては以下の式を満たせばよい。
【0108】
Z1=Z2<Z3, 又はZ3<Z1=Z2
【0109】
従って、攪拌装置20を駆動すると、振動子24bが発生した音波のうち、図54に示すように、圧電基板24aから側壁5aに伝搬し、反射しながら側壁5a内を伝搬する出射音波WbBは、音響インピーダンスの相違によって接着層52の表面で反射され、反応容器5Hから遠ざかる誘導部5mへ伝搬する。このようにして誘導部5mへ伝搬した出射音波WbBは、反射端面5nで乱反射される。このため、反応容器5Hは、誘導部5mの伝搬経路上における反射音波WbBRと出射音波WbBとの干渉が抑制される。
【0110】
このため、反応容器5Hを使用した攪拌装置20は、出射音波WbBが反応容器5Hから遠ざかる誘導部5mへ導かれるうえ、誘導部5mにおける反射音波と出射音波との干渉が抑えられるので、音波の干渉による音波の伝搬経路に沿った誘導部5mの発熱を抑制することができる。
【0111】
このとき、図54に示すように、圧電基板24aから側壁5aに入射する音波の放射角をα2とし、誘導部5mと底面部材51との間に配置した接着層52が底面部材51下面に対してなす角度をβ4とすると、出射音波WbBが接着層52に垂直に入射する条件は、(90°−α2)+β4=180°からβ4=α2+90°となる。
【0112】
このため、反応容器5Hは、側壁5aに入射する音波の放射角α2に対して、接着層52が底面部材51下面に対してなす角度β4をβ4≠α2+90°に設定する。このように設定した反応容器5Hを使用した攪拌装置20は、表面弾性波素子24を駆動した際、側壁5a内を伝搬する出射音波WbBが接着層52において反射すると、出射音波WbBとは異なる方向へ反射される。この結果、反応容器5Hは、出射音波WbBと反射音波WbBRとが伝搬経路上で干渉しないうえ、反射音波WbBRが反射端面5nで乱反射されて音波の干渉が抑制されるので、音波の伝搬経路に沿った誘導部5mの発熱が抑制される。
【0113】
(変形例1)
ここで、攪拌装置20で使用する反応容器は、図55に示す反応容器5Iのように、2つの側壁5aの下部に誘導部材53を設けてもよい。誘導部材53は、側壁5a内を伝搬する音波を反応容器5Iから遠ざかる方向へ導く部分で、斜めに切断した接着面53aが一方に形成され、他方の端面には乱反射面からなる反射端面53bが形成されている。また、反応容器5Iは、底壁5dの側面に接着面53aに対応して傾斜させた傾斜面5pが形成されている。反応容器5Iは、傾斜面5pと接着面53aとの間が接着層54によって接着されている。
【0114】
従って、反応容器5Iは、側壁5a,誘導部材53,接着層54の音響インピーダンスをそれぞれZ1,Z4,Z3とし、音波の波長を、接着層54の厚さをLとしたときに、接着層54が音響インピーダンスの境界部となり、側壁5a内を伝搬してくる音波が反応容器5Iから遠ざかる誘導部材53へ伝搬するようにするには、次式の関係を満たす必要がある。
【0115】
Z3=(Z1+Z4)/2
L=(λ/2)・n (nは自然数)
【0116】
従って、攪拌装置20を駆動すると、表面弾性波素子24は、振動子24bが発生して圧電基板24aから側壁5aに伝搬し、図56に示すように、反射しながら側壁5a内を伝搬する出射音波WbBが接着層54を透過し、誘導部材53へと伝搬してゆく。このとき、出射音波WbBの一部は、接着層54で反射されて底壁5d側へ伝搬する。
【0117】
そして、誘導部材53へ伝搬した出射音波WbBは、反射端面53bで乱反射されるため、反射音波と出射音波との干渉が抑制される。このため、攪拌装置20を駆動した際、反応容器5Iは、音波の干渉による音波の伝搬経路に沿った誘導部材53の発熱を抑制することができる。
【0118】
このとき、反応容器5Iは、図56に示すように、圧電基板24aから側壁5aに入射する音波の放射角をα2とし、接着層54が底壁5d下面となす角度をβ5とすると、出射音波WbBが接着層54に垂直に入射する条件(β5−90°=α2)を考慮して、接着層54の角度β5をβ5=90°+α2に設定する。
【0119】
(変形例2)
ここで、攪拌装置20で使用する反応容器は、図57及び図58に示す反応容器5Jのように、誘導部5mと底壁5dとの間に半円形の溝からなる凹部5qを設けてもよい。反応容器5Jは、凹部5qが音響インピーダンスの境界部として音波の反射端面となるので、反射しながら側壁5a内を伝搬する出射音波を、音響インピーダンスの相違によって誘導部5mへ導くことができる。
【0120】
従って、攪拌装置20を駆動すると、表面弾性波素子24は、振動子24bが発生して圧電基板24aから側壁5aに伝搬し、図59に示すように、反射しながら側壁5a内を伝搬する出射音波WbBが凹部5qで音響インピーダンスの相違によって反射し、反射音波WbBRが出射音波WbBとは異なる方向に伝搬してゆく。
【0121】
このため、反応容器5Jは、凹部5qで反射した反射音波WbBRと、振動子24bから出射されて側壁5a内を伝搬してくる出射音波WbBとが干渉しない。しかも、誘導部5m側へ導かれた音波は、図59に示すように、反射端面5nで乱反射されるため、反射音波WbBR相互の干渉並びに反射音波WbBRと出射音波WbBとの干渉が抑制される。従って、攪拌装置20を駆動した際、反応容器5Jは、音波の干渉による音波の伝搬経路に沿った誘導部5mの発熱を抑制することができる。
【0122】
但し、反応容器5Jは、図59に示すように、圧電基板24aから側壁5aに入射する音波の放射角をα2とし、凹部5qに入射する出射音波WbBの接線Tが誘導部5mの底面となす角度をβ6とすると、出射音波WbBが凹部5qに垂直に入射する条件(180−β6)+α2=90°)を考慮して、接線Tの角度β6をβ6≠90+α2°に設定する。
【0123】
ここで、反応容器5Jは、音響インピーダンスの境界部として音波の反射端面となれば、半円形の溝からなる凹部5qに代えて、図60に示すように、誘導部5mと底壁5dとの間に三角形の溝からなる凹部5rを設けてもよい。この場合、反応容器5Jは、凹部5rの斜面で反射した反射音波WbBRと、振動子24bから出射されて側壁5a内を伝搬してくる出射音波WbBとが干渉しない。しかも、誘導部5m側へ導かれた音波は、反射端面5nで乱反射されるため、反射音波WbBR相互の干渉並びに反射音波WbBRと出射音波WbBとの干渉が抑制され、誘導部5mの発熱を抑制することができる。このとき、凹部5rの斜面が誘導部5mの底面となす角度は、上述の垂直入射の条件と同様にして決めることができる。
【0124】
なお、本発明の攪拌装置で使用する反応容器は、実施の形態1〜5で説明した各態様の形状を複数組み合わせて使用してもよい。
【0125】
また、本発明の自動分析装置は、2つの試薬テーブル2,3を有するものについて説明したが、試薬テーブルは1つであってよい。更に、本発明の自動分析装置は、1つの自動分析装置をユニットとして複数ユニット備えたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の攪拌装置を備えた実施の形態1の自動分析装置を示す概略構成図である。
【図2】実施の形態1の自動分析装置及び攪拌装置の構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1の自動分析装置で使用される攪拌装置の表面弾性波素子と、表面弾性波素子を取り付けた反応容器とを示す斜視図である。
【図4】表面弾性波素子が取り付けられ、実施の形態1の自動分析装置で使用される反応容器を送電体と共に示す斜視図である。
【図5】実施の形態1の攪拌装置で使用する表面弾性波素子を正面側から見た斜視図である。
【図6】実施の形態1の攪拌装置における表面弾性波素子が出射した音波の態様を説明する要部断面図である。
【図7】表面弾性波素子と反応容器の側壁とにおける音波及び音波の伝搬方向をモデル的に示す図である。
【図8】実施の形態1の攪拌装置において、表面弾性波素子が出射した出射音波と反射音波との関係を説明する反応容器の正面図である。
【図9】従来の表面弾性波素子が出射した出射音波と反射音波との関係を説明する反応容器の斜視図である。
【図10】従来の表面弾性波素子の圧電基板内における音波の反射を説明する要部断面図である。
【図11】図10のA部拡大図である。
【図12】従来の表面弾性波素子を用いた攪拌装置における反応容器の側壁内における音波の反射を説明する要部断面図である。
【図13】図12のB部拡大図である。
【図14】実施の形態1の攪拌装置で使用する表面弾性波素子を底面に取り付けた反応容器を下方から見た斜視図である。
【図15】表面弾性波素子と圧電基板内を反射しながら伝搬する出射音波の伝搬方向及び反射音波の伝搬方向とを模式的に示す図である。
【図16】従来の表面弾性波素子を用いた攪拌装置を駆動した際の、表圧電基板内を反射しながら伝搬する出射音波と反射音波の伝搬方向とを模式的に示す図である。
【図17】発熱状態にある図16の表面弾性波素子を熱赤外線サーモグラフィ装置によって撮像したカラー映像の図である。
【図18】発熱状態にある図14の表面弾性波素子を熱赤外線サーモグラフィ装置によって撮像したカラー映像の図である。
【図19】図18に示すカラー映像のコントラストを変更した白黒映像の図である。
【図20】実施の形態1の攪拌装置で使用する表面弾性波素子の変形例1を反応容器と共に示す正面図である。
【図21】変形例2に係る表面弾性波素子の他の例を反応容器と共に示す正面図である。
【図22】変形例2から除外される表面弾性波素子の例を示す表面弾性波素子の正面図である。
【図23】変形例2から除外される表面弾性波素子の他の例を示す表面弾性波素子の正面図である。
【図24】変形例3に係る表面弾性波素子を反応容器と共に示す正面図である。
【図25】図25のC部拡大図である。
【図26】実施の形態2の自動分析装置で使用される攪拌装置の表面弾性波素子と、表面弾性波素子を取り付けた反応容器とを示す斜視図である。
【図27】図26の反応容器を縦方向に切断し、表面弾性波素子の圧電基板内における音波の反射を説明する要部断面図である。
【図28】図27のD部拡大図である。
【図29】反応容器の側壁と表面弾性波素子の反射端面とが大気中でなす他の角度を説明する反応容器の要部断面図である。
【図30】実施の形態2の攪拌装置で使用する音波発生手段の変形例1を示す要部断面図である。
【図31】音波発生手段の変形例2を示す要部断面図である。
【図32】変形例2に係る音波発生手段の反射端面を拡大して形状を説明する説明図である。
【図33】音波発生手段の変形例2の他の例を示す要部断面図である。
【図34】音波発生手段の変形例3を示す要部断面図である。
【図35】図34のE部を拡大し、反射端面及び反射端面における出射音波の乱反射を示す図である。
【図36】実施の形態3の自動分析装置で使用される攪拌装置の表面弾性波素子と、表面弾性波素子を取り付けた反応容器とを示す斜視図である。
【図37】図36に示す反応容器の正面図である。
【図38】図36に示す反応容器の他の例を示す斜視図である。
【図39】実施の形態3の攪拌装置で使用する反応容器の変形例1を示す斜視図である。
【図40】変形例1の反応容器を使用した攪拌装置を駆動した際の、出射音波の伝搬方向と反射音波の伝搬方向を示す反応容器の正面図である。
【図41】変形例1に係る反応容器の他の例を示す斜視図である。
【図42】変形例2に係る反応容器を示す正面図である。
【図43】図42のF部を拡大し、反射端面及び反射端面における出射音波の伝搬方向と乱反射した反射音波の伝搬方向とを示す図である。
【図44】変形例3に係る反応容器を底面から見た斜視図である。
【図45】実施の形態4の自動分析装置で使用される攪拌装置の表面弾性波素子と、表面弾性波素子を取り付けた反応容器とを示す斜視図である。
【図46】反射しながら側壁内を伝搬する出射音波の側壁への放射角と反射端面の傾斜角度との関係を説明する要部断面図である。
【図47】図45に示す反応容器の他の例を示す斜視図である。
【図48】図45に示す反応容器の更に他の例を示す斜視図である。
【図49】図48に示す反応容器において、反射しながら側壁内を伝搬する出射音波の側壁への放射角と反射端面の傾斜角度との関係を説明する要部断面図である。
【図50】実施の形態4の攪拌装置で使用する反応容器の変形例1を示す斜視図である。
【図51】実施の形態4の攪拌装置で使用する反応容器の変形例2を示す斜視図である。
【図52】実施の形態5の自動分析装置で使用される攪拌装置の表面弾性波素子と、表面弾性波素子を取り付けた反応容器とを示す斜視図である。
【図53】表面弾性波素子の中央で縦方向に切断した反応容器の断面図である。
【図54】図52の反応容器において、反射しながら側壁内を伝搬する出射音波が誘導部へ導かれる様子と、出射音波の側壁への放射角と接着層の傾斜角度との関係を説明する要部断面図である。
【図55】変形例1に係る反応容器の断面図である。
【図56】反射しながら側壁内を伝搬する出射音波が誘導部へ導かれる様子と、出射音波の側壁への放射角と接着層の傾斜角度との関係を説明する図55に示す反応容器の要部断面図である。
【図57】変形例2に係る反応容器の斜視図である。
【図58】変形例2に係る反応容器の断面図である。
【図59】反射しながら側壁内を伝搬する出射音波が誘導部へ導かれる様子と、出射音波の側壁への放射角と半円形の溝からなる凹部における接線の傾斜角度との関係を説明する図58に示す反応容器の要部断面図である。
【図60】変形例2に係る反応容器の凹部の他の例を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0127】
1 自動分析装置
2,3 試薬テーブル
4 反応テーブル
5 反応容器
5a 側壁
5d 底壁
5e,5f 反射端面
5g,5h 反射端面
5i,5j 反射端面
5k,5n 反射端面
5m 誘導部
5q,5r 凹部
5A〜5J 反応容器
6,7 試薬分注機構
8 検体容器移送機構
9 フィーダ
10 ラック
11 検体分注機構
12 分析光学系
13 洗浄機構
15 制御部
16 入力部
17 表示部
20 攪拌装置
21 送電体
22 配置決定部材
23 表面弾性波素子
23a 圧電基板
23b 振動子
23e 反射端面
24,25 表面弾性波素子
24a,25a 圧電基板
24b,25b 振動子
24e,25e 反射端面
27,28 表面弾性波素子
27a,28a 圧電基板
27b,28b 振動子
27e,28e 反射端面
32 表面弾性波素子
32a 圧電基板
32b 振動子
32e 反射端面
34,35 表面弾性波素子
34a,35a 圧電基板
34b,35b 振動子
34e,35e 反射端面
36,37 表面弾性波素子
36a,37a 圧電基板
36b,37b 振動子
36e,37e 反射端面
51 底面部材
52,54 接着層
53 誘導部材
53b 反射端面
Dp1,Dp2 出射音波の伝搬方向
Dr1,Dr2 反射音波の伝搬方向
WbA,WbB 出射音波
WbAR,WbBR 反射音波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を保持する容器と、
圧電基板上に複数の櫛歯状電極からなる振動子が形成され、前記容器に接触した状態で音波を発生させる音波発生手段と、
を備え、前記音波発生手段が発生した音波によって前記容器に保持された液体を攪拌する攪拌装置において、
前記容器又は前記音波発生手段は、前記音波発生手段が発生した音波のうち反射しながら前記容器の壁内又は前記圧電基板内を伝搬する音波の伝搬方向に直交する面に対して傾斜又は湾曲した反射端面或いは前記伝搬する音波を乱反射させる反射端面が前記容器の壁又は前記圧電基板に形成されていることを特徴とする攪拌装置。
【請求項2】
前記反射端面は、少なくとも前記複数の櫛歯状電極の交叉幅を音波の伝搬方向へ延長した音波の伝搬領域において、前記圧電基板内を伝搬する音波の伝搬方向に直交する面に対して傾斜した傾斜面又は接線が傾斜した湾曲面からなることを特徴とする請求項1に記載の攪拌装置。
【請求項3】
前記容器は、前記壁から突出し、前記壁内を伝搬する音波が音響インピーダンスの境界部によって前記容器から遠ざかる方向へ導かれる誘導部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の攪拌装置。
【請求項4】
前記誘導部は、前記伝搬する音波を乱反射させる反射端面が突出した端部に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の攪拌装置。
【請求項5】
複数の異なる液体を攪拌して反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記反応液を分析する自動分析装置であって、請求項1〜4のいずれか一つに記載の攪拌装置を用いて検体と試薬とを攪拌し、反応液を光学的に分析することを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−224601(P2008−224601A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66949(P2007−66949)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】