説明

支持板剥離装置

【課題】ウエハの剥離面を劣化させることなく、ウエハを支持する支持板をウエハから剥離する処理を実現する支持板剥離装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る支持板剥離装置は、薄化されたウエハからウエハを支持する支持板を剥離させて、ウエハの剥離面を洗浄液で洗浄した後、当該剥離面に残留する接着剤を除去する除去手段を備えていることを特徴とし、洗浄液では除去しきれなかったウエハの剥離面の接着剤を除去し、剥離工程を良好に完了させることができる支持板剥離装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤によってウエハに貼着された支持板を当該ウエハから剥離する支持板剥離装置に関し、より詳細には、支持板が剥離された後のウエハの剥離面に残留している接着剤を除去する除去手段を備えた支持板剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、デジタルAV機器およびICカード等の高機能化に伴い、搭載される半導体シリコンチップ(以下、チップ)を小型化および薄板化することによって、パッケージ内にチップを高集積化する要求が高まっている。パッケージ内のチップの高集積化を実現するためには、チップの厚さを150μm以下にまで薄くする必要がある。
【0003】
しかしながら、チップのベースとなる半導体ウエハ(以下、ウエハ)は、研削することにより肉薄となるため、その強度は弱くなり、ウエハにクラックまたは反りが生じやすくなる。また、薄化することによって強度が弱くなったウエハを自動搬送することは困難であるため、人手によって搬送しなければならず、その取り扱いが煩雑であった。
【0004】
そのため、研削するウエハに支持板(以下、サポートプレート)と呼ばれる、ガラス、硬質プラスチック等からなるプレートを貼り合わせることによって、ウエハの強度を保持し、クラックの発生およびウエハの反りを防止するウエハサポートシステムが開発されている。ウエハサポートシステムによりウエハの強度を維持することができるため、薄化した半導体ウエハの搬送を自動化することができる。
【0005】
ウエハとサポートプレートとは、粘着テープ、熱可塑性樹脂、接着剤等を用いて貼り合わせられている。その後、ウエハをダイシングする前にサポートプレートをウエハから剥離する。ウエハとサポートプレートとの貼り合わせに粘着テープを用いる場合は、ウエハをサポートプレートから引き剥がす、熱可塑性樹脂を用いる場合は樹脂を加熱して樹脂を溶解させる、接着剤を用いる場合は溶解液を用いて接着剤を溶解させること等によって、ウエハをサポートプレートから剥離する。たとえば、特許文献1には、接着剤を用いてウエハとサポートプレートとを貼り合わせ、溶剤により接着剤を溶解させてウエハをサポートプレートから剥離する技術が開示されている。サポートプレートを剥離する際には、サポートプレートがその最上に位置するよう積層体を保持し、サポートプレートの貫通孔を介して基板とサポートプレートとを貼りつけている接着剤を溶解する溶剤が供給される。
【0006】
上述のように、ウエハをサポートプレートから剥離する際には、ウエハの膜厚に応じて、ウエハの他方の面を、ダイシングテープなどの他の支持体に貼り合わせた後に剥離が行われる。これは、ウエハの膜厚が小さいため、ウエハ自体の強度が低く、クラックが生じやすいためである。つまり、ダイシングテープ、ウエハおよびサポートプレートからなる積層体を一旦形成した後に、サポートプレートからウエハが剥離されることになる。
【特許文献1】特開2006−135272号公報(2006年5月25日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のようにサポートプレートがウエハから剥離されると、当該ウエハの剥離面を、洗浄液を用いて洗浄することが知られている。これにより、従来は、溶剤によって溶解しきれずに残っている接着剤を取り除くことができると考えられていた。ところが、今回、本願発明者らは、洗浄液によって洗浄した後もなお、接着剤が、ウエハの剥離側の面に残ってしまう傾向があることを見出した。このような接着剤の残渣は、ますます高性能化が求められているウエハにとって、性能の向上を大きく妨げる原因となる。
【0008】
そこで、本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、サポートプレートを剥離し、洗浄液によって洗浄した後もなおウエハの剥離面に残っている接着剤を、当該剥離面から除去することが可能な支持板剥離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる支持板剥離装置は、接着剤によって支持板に貼着されたウエハを当該支持板から剥離するための剥離手段と、当該剥離手段によって剥離された上記ウエハにおける上記支持板と対向する面に付着している上記接着剤を、溶剤で洗浄する洗浄手段とを備えた支持板剥離装置であって、上記洗浄手段によって洗浄された後の上記ウエハにおける当該面に残留している接着剤を、ドライ処理によって除去する除去手段を更に備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる支持板剥離装置によれば、接着剤層を溶解して、ダイシングテープに固定された薄化されたウエハからサポートプレートを剥離し、その後に、洗浄液による洗浄によっても除去しきれなかった接着剤の残渣を、除去手段によるドライ処理によって除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
〔第1の実施形態〕
以下、図面を参照しつつ本発明に係る支持板剥離装置の一実施形態について説明する。
【0012】
本実施形態における支持板剥離装置(以下、サポートプレート剥離装置)は、接着剤によって支持板(以下、サポートプレート)に貼着されたウエハを当該サポートプレートから剥離するための剥離手段と、当該剥離手段によって剥離された上記ウエハにおける上記サポートプレートと対向する面に付着している上記接着剤を、溶剤で洗浄する洗浄手段と、上記洗浄手段によって洗浄された後の上記ウエハにおける当該面(以下、剥離面)に残留している接着剤を、ドライ処理によって除去する除去手段とを備えている。
【0013】
以下では、先ず、本実施形態のサポートプレート剥離装置によって剥離されるサポートプレートを有した処理対象積層体について説明する。
【0014】
<処理対象積層体>
図1(a)及び(b)は、処理対象積層体の構成を示した図であり、図2は、処理対象積層体の形成工程を説明した図である。
【0015】
図1(a)は、処理対象積層体6の斜視図である。図1(b)は、図1(a)に示した切断線A−A’において、処理対象積層体6を切断した状態を示す矢視断面図である。処理対象積層体6は、図1(b)に示すように、ウエハWと、サポートプレート2と、接着剤層3と、ダイシングテープ4と、ダイシングフレーム5とを有している。ウエハWが、接着剤層3によってサポートプレート2に貼着されている。具体的には、次の通りである。
【0016】
ウエハWは、サポートプレート2を貼着する面に回路(素子)が形成された基板であり、半導体などの従来周知の材質の基板を用いることができる。ウエハWの膜厚は、後述する研削処理が施されて薄化され、0μmを超え、150μm以下となっている。好ましくは、10〜150μmの範囲である。
【0017】
サポートプレート2は、厚膜のウエハから薄化されたウエハWを形成する工程でウエハWを支持する役割を果たす部材である。サポートプレート2は、例えば、図1(a)及び(b)に示すようにウエハWよりも径が大きく(半径2mm)、厚み500〜1000μmの鉄−ニッケル合金(ニッケル36%の合金:インバー)を用いることができる。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばウエハWと同径としたものであってもよく、また、材質をセラミックスやガラスとしたものであってもよい。
【0018】
サポートプレート2には、図1(b)に示すように、サポートプレート2を厚さ方向に貫通する貫通穴2aが複数設けられている。貫通穴2aは、ウエハWに貼着されたサポートプレート2をウエハWから剥離する際に、接着剤層3を溶解させるための溶剤をサポートプレート2とウエハWとの間の接着剤層3に供給するための穴である。貫通穴2aは、例えば、直径0.5mmで、サポートプレート2に0.7mmピッチで形成されている。貫通穴2aの直径及び形成ピッチは上記のものに限定されるものではないが、直径0.3mm〜0.5mm、貫通孔のピッチとしては0.5mm〜1.0mmが適当である。
【0019】
ダイシングテープ4は、ベースフィルムが、PVC(ポリ塩化ビニル)やポリオレフィン、ポリプロピレン等の樹脂フィルムが用いられ、その片面には、ウエハWを貼り着けることができるように粘着層が形成されている。また、図1(b)に示すように、ダイシングテープ4は、後述するウエハWと比して、その表面積が大きい。そのため、ダイシングテープ4の上にウエハWを貼り着けたとき、ウエハWの外縁にダイシングテープ4の一部が露出することになる。
【0020】
ダイシングフレーム5は、ダイシングテープ4の弛みを防止する役割を果たす。
【0021】
次に、処理対象積層体6の形成工程について説明する。
【0022】
処理対象積層体6の形成にあたっては、図2に示すように、先ず、ウエハWにおけるサポートプレート貼着面(のちの剥離面)W−aに接着剤液3’を塗布する(図2の(a))。塗布には例えばスピンナーを用いることができるが、これに限定されるものではない。接着剤液としては、後述する剥離処理に用いられる溶剤に対して、サポートプレート2を剥離することができる程度の溶解性を有するものであるとともに、後述するような、剥離後のウエハの剥離面に残留する接着剤を除去する処理によって除去することができる性質のものであればよい。具体的には、ノボラックタイプのフェノール樹脂系材料系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、あるいはポリビニールアルコール系接着剤などを用いることができる。
【0023】
次いで、上記の接着剤液を予備乾燥させて流動性を低減させ、接着剤層3としての形状維持を可能とする。予備乾燥にはオーブンを用いて例えば80℃で5分間加熱する。接着剤層3の厚みはウエハWの表面に形成した回路の凹凸に応じて決定する。尚、一回の塗布では必要な厚みを出せない場合には、塗布と予備乾燥を複数回繰り返して行なう。この場合、最上層以外の接着剤層の予備乾燥は接着剤に流動性を残さないように乾燥の度合いを強める。
【0024】
以上によって所定厚みの接着剤層3が形成されたウエハWに、サポートプレート2を貼り付ける(図2の(b))。ウエハWとサポートプレート2との貼り付けは、貼付け機を用いて行なうことができる。貼付け機の構成は特に限定されるものでないが、ウエハWとサポートプレート2とを互いに所定の位置に対向配置して、押圧することによって、貼り合わせるように構成されていればよい。また、貼付け機には、押圧時にサポートプレート2を加熱するための手段が設けられていても良い。
【0025】
次に、ウエハWの裏面W−bをグラインダー10で研削することによって、ウエハWの薄板化を行なう(図2の(c))。
【0026】
薄板化したウエハWの裏面W−bに必要に応じて回路などを形成した後、当該裏面W−bをダイシングテープ4と対向させて、ダイシングテープ4上に固定する(図2の(d))。
【0027】
以上のような構成の処理対象積層体を、本実施形態におけるサポートプレート剥離装置は処理対象とする。
【0028】
次に、このサポートプレート剥離装置の構成を説明するとともに、その剥離処理について説明する。
【0029】
<サポートプレート剥離装置>
図3は、本実施形態のサポートプレート剥離装置の構成を示す図である。サポートプレート剥離装置は、図1(a)及び(b)に示した、薄化されたウエハWの剥離面W−aに貼着されたサポートプレート2を当該ウエハWから剥離するために用いられる。そのため、サポートプレート剥離装置80は、図3に示すように、処理対象積層体6が収納されている処理対象積層体収納部20と、剥離手段30と、搬送手段40と、洗浄手段50と、除去手段60と、を少なくとも備えている。
【0030】
(剥離手段)
上記剥離手段30は、接着剤層3を溶解することができる溶剤を接着剤層3に供給するための構成であるとともに、接着剤層3が溶解した後、もしくは接着力を十分に低下させた後に、図1の(b)に示した薄板化されたウエハWの剥離面W−aに貼着されたサポートプレート2を、当該剥離面W−aから剥離する。
【0031】
具体的には、剥離手段30は、溶解処理体30aと、サポートプレート搬送体30bとを有している。
【0032】
溶解処理体30aは、溶剤注入プレート32と、溶剤注入プレート32を保持し、上下方向への移動を可能にする保持移動手段34と、処理対象積層体6が載置される処理台36を含む。さらに、図1に示すように、平面視したときに、溶剤注入プレート32が、処理台36と重ならない位置で、待機することができるよう、溶剤注入プレート32の平面内(水平面内)における移動を可能にする水平移動手段38と、を含むことが好ましい。この態様によれば、処理対象積層体6が処理台36に置かれた場合に、意図しない溶剤の供給が起きることを抑制することができる。
【0033】
つまり、溶剤注入プレート32は、処理対象積層体6が、処理台36上に配置される前は、処理位置とは異なる待機位置39で待機しており、処理対象積層体6が処理台36に配置された後に、水平移動手段38により処理対象積層体6の真上に移動し、ついで、保持移動手段34により、処理対象積層体6との離間距離が適切な距離になるよう移動され処理が行なわれる。
【0034】
溶剤注入プレート32は、処理対象積層体6と対応する対向面を有し、対向面には、サポートプレート2の貫通穴を介して溶剤を供給するための溶剤供給孔(図示せず)と、供給した溶剤を吸引するための溶剤吸引孔(図示せず)とが設けられている。このとき、溶剤注入プレート32は、平面視したときにサポートプレート2の外側において露出しているダイシングテープ4(図1(b)参照)に溶剤が付着することのないよう、溶剤を供給できる限り、その構造に特に制限はない。たとえば、対向面において、中心に溶剤供給孔を、中心から最も離れた位置に上述の溶剤吸引孔をそれぞれ設けて、溶剤を供給しつつ、吸引することでダイシングテープ4に付着しないようにすることができる。他の例としては、溶剤注入プレート32の外周に処理対象積層体6との距離を縮めるよう凸部を設けることで、溶剤の飛散を物理的に抑制することもできる。また、溶剤注入プレート32には、接着剤への溶剤の浸透を促進するため、超音波発生器が取り付けられていてもよい。
【0035】
ウエハWから剥離可能な状態になったサポートプレート2は、上記サポートプレート搬送体30bによって、サポートプレートを収納するためのサポートプレート収納部70に搬送される。
【0036】
溶剤としては、接着剤液に使用されている溶剤のような従来周知ものを使用することができ、例えば、水;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールまたはジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテルまたはモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類およびその誘導体;ジオキサンのような環式エーテル類;および乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類、またはこれらの混合物などを挙げることができる。これらは接着剤に応じて用いればよい。特に、アクリル系接着剤を用いている場合には、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、2-ヘプタノン(MAK)を溶剤として用いることが好ましく、ポリビニルアルコール系接着剤を用いている場合には水を溶剤として用いることが好ましい。
【0037】
尚、処理効率を向上させるため、溶解処理体30aは、サポートプレート剥離装置に複数設けられていることが好ましい。また、複数設けられる場合には、効率のよい処理を行なうために、溶解処理体30a同士を、図3に示すように搬送手段40の走行路46を挟むように配置するのが好ましい。
【0038】
このように剥離手段30によってサポートプレート2が剥離されたウエハWは、搬送手段40によって、洗浄手段50へと搬送される。ここで、搬送手段40について説明する。
【0039】
(搬送手段)
搬送手段40は、処理対象積層体6を保持して剥離手段30へ搬送する機能、ウエハWを剥離手段30から洗浄手段50へ搬送する機能、及び、ウエハWを洗浄手段50から除去手段60へ搬送する機能を有する。
【0040】
搬送手段40は、搬送ロボット42と、直線走行を実現するための走行路46を有する。搬送ロボット42は、具体的には、搬送ロボット42の軸を中心として回転可能であり、2つの連結アーム44aおよびハンド44bを有する。連結アーム44aは、関節での回転動作により伸縮動作をする。ハンド44bは、連結アーム44aの先端に設けられ、処理対象積層体6またはウエハWを保持する役割を果たす。搬送ロボット42は、連結アーム44aの伸縮動作と軸42aを中心とした回転動作とにより、水平面内での処理対象積層体6またはウエハWの移動を可能にする。
【0041】
次に、洗浄手段50について説明する。
【0042】
(洗浄手段)
上記洗浄手段50は、第1洗浄ユニット52および第2洗浄ユニット54を有する。
【0043】
第1洗浄ユニット52は、ウエハW上に存在している接着剤の残りを除去することを主な目的とし、第2洗浄ユニット54では、さらなる洗浄および乾燥を行なうことを主な目的としている。このように、洗浄ユニットを複数設けることにより、より高度な洗浄(清浄な面を得るための洗浄)を実現することができる。
【0044】
第1洗浄ユニット52は、洗浄プレート56と、洗浄プレート56を保持し、上下方向に移動可能な保持移動手段57と、を含む。洗浄プレート56は、ウエハWの処理面と対向する面を有する対向プレートである。対向面には、洗浄液をウエハWに供給するための洗浄液供給孔(図示せず)と、供給した洗浄液を吸引するために洗浄液吸引孔(図示せず)が設けられている。また、洗浄プレート56の対抗面は、ウエハWの処理面とほぼ同形の大きさを有することが好ましい。これにより、ウエハWの処理面の全面に対して同時に洗浄処理を行なうことができ、効率よく、面内におけるむらのない洗浄処理を行なうことができる。
【0045】
第1洗浄ユニット52での処理は、ウエハWと洗浄プレート56とを、向かい合わせた後、洗浄液を供給(滴下)しつつ、吸引を同時に行なえばよい(洗浄処理)。これにより、洗浄液がダイシングテープに飛散することを抑制することができる。洗浄液としては上記溶剤から好ましいものを用いればよい。
【0046】
また、第1洗浄ユニット52は、剥離手段30と同様に、水平移動可能な水平移動手段58を含むことが好ましい。このように水平移動手段58を有することにより、平面視したときに、処理台55と重ならない位置で洗浄プレート56を待機させることができる。本実施形態では、水平移動手段が、直線の走行路58aと、走行路58aに沿った移動機構を有する場合を例示する。しかし、水平移動手段としては、待機位置と処理位置との間で洗浄プレート56を移動することができる限り、これに限定されるものではない。
【0047】
第2洗浄ユニット54は、第1洗浄ユニット52において、洗浄が終了したウエハWをさらに洗浄し、最終的には乾燥させる役割を果たす。第2洗浄ユニット54は、カップ洗浄を実行できる構成を有する限り、特に限定されることはない。
【0048】
第1洗浄ユニット52から第2洗浄ユニット54へのウエハWの搬送も、上記搬送手段40によって行なう。そして、第2洗浄ユニット54による処理が完了したウエハWは、搬送手段40によって保持され、除去手段60に搬送される。
【0049】
剥離手段30及び洗浄手段50による、ここまでの処理によって、サポートプレート2をウエハWの剥離面W−aから剥離することができ、サポートプレート2とウエハWとの間の接着剤層3は、ウエハWの剥離面W−aからある程度取り除かれた状態を実現することができる。ところが、本願発明者らは、ウエハWの剥離面W−aに、上記洗浄液による洗浄でも取り除くことができない接着剤層3由来の接着剤があり、これがウエハWの性能向上の妨げとなっていることを見出した。そこで、図3に示す除去手段60を具備することによって、ウエハWの剥離面W−aに残留している接着剤を除去することに成功し、本発明を完成させた。
【0050】
(除去手段)
上記除去手段60は、上記洗浄手段50による洗浄後に、ウエハWの剥離面W−aに残留している接着剤を、ドライ処理によって除去するように構成されている。
【0051】
図4に示すように、除去手段60は、上記洗浄手段50による洗浄後にウエハWの剥離面W−aに対して、プラズマ処理を行なうことができるように構成されている。
【0052】
具体的には、除去手段は、酸素プラズマを発生させて、ウエハWの剥離面W−aに残留している接着剤を除去する(除去処理)。尚、本発明は、酸素プラズマに限定されるものではないが、除去効率が高いため、酸素プラズマを用いることが好ましい。
【0053】
このように除去手段によって、ウエハWの剥離面W−aに残留している接着剤が除去されると、図示しないダイシング装置によってダイシングされ、個々のチップとなる。
【0054】
尚、本実施形態のサポートプレート剥離装置は、さらに、図3に示すように、位置合せ部71を備えていても良い。位置合せ部71は、処理対象積層体収納部20から取り出した処理対象積層体6を剥離手段30に搬送する前に、位置合せを行い、剥離手段30において、適切な位置に処理対象積層体6が配置されるようにする。位置合せ部71は、搬送手段40の走行路46に沿って(走行路46に面して)設置すると、ロボットの走行方向(X)、アームの伸ばし方向(Y)、ロボットの回転(θ)の3点にて位置決めができるので、高い精度の位置決めができて好ましい。なお、スペースの効率面や位置合せ後に搬送する複数の剥離手段との距離が等しいなどの利点を考慮し、位置合せ部71を搬送手段40の走行路46の延長線上に配置することも好ましい。
【0055】
以下、本実施形態を実施例に基づいて詳細に説明する。尚、本発明の構成は以下の構成に限定されるものではない。
【0056】
<実施例(1)>
本実施形態におけるサポートプレート剥離装置の一実施例として、以下のような手法によって洗浄処理及び除去処理を行ない、処理後のウエハ表面の残渣を評価した。
【0057】
(1−1)処理対象積層体
本実施例では、直径200mmのベアシリコン基板を、図1(b)のウエハWとして用いた。ベアシリコン基板の片面に、アクリル系の接着剤を層厚15μmとなるよう塗布して接着剤層3(図1(b))を形成した。尚、本実施例では、便宜上、図1(b)に示したダイシングテープ4及びダイシングフレーム5は用いていない。
【0058】
また、本実施例では、洗浄液によってベアシリコン基板の片面を洗浄した後のものを処理対象積層体として用いた。そのため、図1(b)のサポートプレート2も用いておらず、シリコン基板の薄化も行なっていない。
【0059】
(1−2)洗浄手段
PGMEAを洗浄液として用いて、上述した処理対象積層体の接着剤層3形成面の中心部分に滴下(30ml/分)し、処理対象積層体をスピンさせながら行なうスピン洗浄を行なった。スピンは、処理対象積層体の接着剤層3形成面とは反対側の面を、回転台に載置して、処理対象積層体の厚さ方向に沿った軸を回転軸として回転させることによって行なった。洗浄時間は5分間とした。
【0060】
(1−3)除去手段
除去手段を用いて、酸素プラズマ処理を行なった。酸素プラズマ処理は、処理室内の温度を60℃、真空度を63Pa、酸素ガスを1L/分、RF出力を300Wとする条件下において行なった。処理時間は1分とした。
【0061】
以上の各処理を経て得られたベアシリコン基板の片面の接着剤残渣を、X線光電子分光分析装置(XPS)を用いてスポットサイズ800μmにて表面分析を行って評価した。本実施例では、XPSを用いて、ベアシリコン基板の片面の残渣炭素を測定した。
【0062】
表1は、有機成分である接着剤に由来する炭素のピークが現れる285eV付近のピーク強度の酸素プラズマ処理時間依存性について示したものである。表1から、本実施例の除去手段を用いて酸素プラズマ処理することにより、処理開始から1分後には残渣をほぼ除去できることを確認した。これは、図1(a)及び(b)に示したようなダイシングテープに固定された薄化されたウエハから、溶剤を用いてサポートプレートを剥離し、その後の洗浄液による洗浄によってもウエハの剥離面から除去しきれなかった接着剤の残渣を除去できることを意味する。
【0063】
【表1】

【0064】
以上のことから、本実施形態におけるサポートプレート剥離装置によれば、接着剤層を溶解して、ダイシングテープに固定された薄化されたウエハからサポートプレートを剥離し、その後に、洗浄液による洗浄によっても除去しきれなかった接着剤の残渣を、酸素プラズマをウエハの剥離面に供給するという簡易な手法によって除去することができる。このことは、ウエハの性能劣化を抑制し、信頼性の高いウエハの提供に寄与することができることを意味する。
【0065】
〔第2の実施形態〕
以下に、本発明に係る支持板剥離装置の第2の実施形態であるサポートプレート剥離装置について、図面を参照しつつ説明する。
【0066】
上述した第1の実施形態のサポートプレート剥離装置に設られている除去手段は、ウエハの剥離面に対してプラズマ処理を施す構成であるのに対して、本実施形態のサポートプレート剥離装置に設けられている除去手段は、ウエハの剥離面に対してオゾン処理を施すように構成されている。そこで、以下では、他の構成については説明を省略し、除去手段の構成のみを説明する。
【0067】
オゾン処理とは、オゾンを発生させて、分解して活性酸素を発生させ、この活性酸素によって、ウエハの剥離面に残留する接着剤を分解・除去する処理のことをいう。オゾンの発生方法は、特に限定されるものではなく、例えば、処理室内の空気中に含まれる酸素を紫外線照射によってオゾンに変えてもよく、あるいは、オゾンを供給する装置を用いて、処理室内にオゾンを直接導入してもよい。
【0068】
本実施形態のサポートプレート剥離装置に設られている除去手段として、紫外線(UV)ランプを用いて活性酸素を発生させる構成を用いる場合、UVランプとしては、波長172〜300nmの紫外線を照射できるものが好ましい。
【0069】
以下、本実施形態を実施例に基づいて詳細に説明する。尚、本発明の構成は以下の構成に限定されるものではない。
【0070】
<実施例(2)>
本実施形態におけるサポートプレート剥離装置の一実施例として、以下のような手法によって洗浄処理及び除去処理を行ない、処理後のウエハ表面の残渣を評価した。
【0071】
(2−1)処理対象積層体
本実施例では、上記した実施例(1)のベアシリコン基板の代わりに、直径150mmのシリコンウェハ表面に真空スパッタリング方式によってアルミを蒸着させたものを、図1(b)のウエハWとして用いた以外は、実施例(1)の処理対象積層体と同じものを用いた。
【0072】
(2−2)洗浄手段
また、洗浄手段による洗浄も上記した実施例(1)と同じ条件とした。
【0073】
(2−3)除去手段
除去手段を用いて、オゾン処理を行なった。オゾン処理は、UVオゾン洗浄装置(テクノビジョン製:モデルUV−208型)を用いて行ない、装置内部(処理室)に処理対象積層体を配置してオゾン処理を行なった。処理室内の温度は室温とした。オゾン処理では、2種類の波長のUV照射が行なわれることによってオゾンの発生と分解を行い、発生させた活性酸素により、処理対象積層体の残渣除去を行う。具体的には、第1段階として波長185nmの紫外線を処理室内に照射しオゾンを発生させる。続いて、第2段階として波長254nmの紫外線を照射することでオゾンを分解し、活性酸素を発生させる。
【0074】
アルミ表面膜ウエハの片面の接着剤残渣は、実施例(1)と同じく、X線光電子分光分析装置(XPS)を用いてスポットサイズ800μmにて表面分析を行って評価した。
【0075】
表2は、有機成分である接着剤に由来する炭素のピークが現れる285eV付近のピーク強度の酸素プラズマ処理時間依存性について示したものである。表2から、本実施例の除去手段を用いてオゾン処理することにより、処理開始から2分後には残渣をほぼ除去できることを確認した。これは、図1(a)及び(b)に示したようなダイシングテープに固定された薄化されたウエハからサポートプレートを剥離し、その後の洗浄液による洗浄によっても除去しきれなかった接着剤の残渣を除去できることを意味する。
【0076】
【表2】

【0077】
以上のことから、本実施形態におけるサポートプレート剥離装置によれば、接着剤層を溶解して、ダイシングテープに固定された薄化されたウエハからサポートプレートを剥離し、その後に、洗浄液による洗浄によっても除去しきれなかった接着剤の残渣を、オゾン処理という簡易な手法によって除去することができる。このことは、ウエハの性能劣化を抑制し、信頼性の高いウエハの提供に寄与することができることを意味する。
【0078】
〔第3の実施形態〕
以下に、本発明に係る支持板剥離装置の第3の実施形態であるサポートプレート剥離装置について、図面を参照しつつ説明する。
【0079】
上述した第1の実施形態のサポートプレート剥離装置に設られている除去手段は、ウエハの剥離面に対してプラズマ処理を施す構成であるのに対して、本実施形態のサポートプレート剥離装置に設けられている除去手段は、ウエハの剥離面に対して紫外線処理を施すように構成されている。そこで、以下では、他の構成については説明を省略し、除去手段の構成のみを説明する。
【0080】
紫外線処理とは、紫外線照射装置(例えば、UVランプ)から紫外線(UV)をウエハの剥離面に、もしくは剥離面近傍に照射することによって、ウエハの剥離面に残留する接着剤を除去する処理のことをいう。
【0081】
ここで、上記した第2の実施形態において、紫外線照射によってオゾンを発生させて、オゾンの分解によって生じた活性酸素によって、ウエハの剥離面に残留する接着剤を分解・除去する構成について説明したが、本実施形態の除去手段は、UVを照射することによって、上記したオゾン処理と同じメカニズムでウエハの剥離面に残留する接着剤を活性酸素によって分解・除去する構成も含まれるが、オゾン及び活性酸素が発生しない条件下にてUVを照射することによって当該接着剤を除去する構成も含まれる。
【0082】
すなわち、本実施形態のサポートプレート剥離装置に設られている除去手段は、UVランプを具備している。UVランプは、洗浄液によってウエハの剥離面が洗浄された後の処理対象積層体を収容することができる処理室の内部に配置するか、もしくは処理室に設けた窓の外側に配置することができる。これにより、ウエハの剥離面に、もしくは剥離面近傍にUVを照射できるように構成されている。
【0083】
UVランプとしては、波長172〜300nmの紫外線を照射できるものが好ましい。
【0084】
以上のことから、本実施形態におけるサポートプレート剥離装置によれば、接着剤層を溶解して、ダイシングテープに固定された薄化されたウエハからサポートプレートを剥離し、その後に、洗浄液による洗浄によっても除去しきれなかった接着剤の残渣を、UV処理という簡易な手法によって除去することができる。このことは、ウエハの性能劣化を抑制し、信頼性の高いウエハの提供に寄与することができることを意味する。
【0085】
尚、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明に係る支持板剥離装置によれば、接着剤によってウエハに貼着された支持板を、当該ウエハから剥離させた際にも、ウエハの剥離面に接着剤を残留させることなく、良好に剥離工程を完了させることができる。本発明は、たとえば、微細化された半導体装置の製造に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明に係る支持板剥離装置の一実施形態であるサポートプレート剥離装置の処理対象である処理対象積層体の構成を示したものであり、(a)は斜視図であり、(b)は(a)に示す切断線A−A’において処理対象積層体を切断した状態を示した矢視断面図である。
【図2】図1に示した処理対象積層体の形成工程を説明した斜視図である。
【図3】本発明に係る支持板剥離装置の一実施形態であるサポートプレート剥離装置の一部の構成を示す図である。
【図4】本発明に係る支持板剥離装置の一実施形態であるサポートプレート剥離装置の一部の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0088】
2 サポートプレート(支持板)
2a 貫通穴
3 接着剤層
3’ 接着剤液
4 ダイシングテープ
5 ダイシングフレーム
6 処理対象積層体
10 グラインダー
20 処理対象積層体収納部
30 剥離手段
30a 溶解処理体
30b サポートプレート搬送体
32 溶剤注入プレート
34 保持移動手段
36 処理台
38 水平移動手段
39 待機位置
40 搬送手段
42 搬送ロボット
44a 連結アーム
44b ハンド
46 走行路
50 洗浄手段
52 第1洗浄ユニット
54 第2洗浄ユニット
55 処理台
56 洗浄プレート
57 保持移動手段
58 水平移動手段
58a 走行路
60 除去手段
70 サポートプレート収納部
71 位置合せ部
80 サポートプレート剥離装置(支持板剥離装置)
W ウエハ
W−a 剥離面
W−b 裏面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤によって支持板に貼着されたウエハを当該支持板から剥離するための剥離手段と、当該剥離手段によって剥離された上記ウエハにおける上記支持板と対向する面に付着している上記接着剤を、溶剤で洗浄する洗浄手段とを備えた支持板剥離装置であって、
上記洗浄手段によって洗浄された後の上記ウエハにおける当該面に残留している接着剤を、ドライ処理によって除去する除去手段を更に備えていることを特徴とする支持板剥離装置。
【請求項2】
上記除去手段は、上記ウエハにおける当該面に対して、紫外線処理、プラズマ処理またはオゾン処理を施すことによって、残留している接着剤を除去するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の支持板剥離装置。
【請求項3】
上記除去手段は、上記プラズマ処理として酸素プラズマを発生させるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の支持板剥離装置。
【請求項4】
剥離対象となる上記ウエハにおける当該面の裏面には、ダイシングフレームによって保持されたダイシングテープが貼着されると共に、上記ウエハの厚さが、0を越え、150μm以下であることを特徴とする請求項1から3までの何れか1項に記載の支持板剥離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−3748(P2010−3748A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159297(P2008−159297)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】