説明

支持装置

【課題】コントロールケーブルにおけるストロークロスの低減と振動伝達の抑制とを両立させることができる支持装置を提供する。
【解決手段】支持装置10は、ハブ12とクッション14とハウジング17(ブラケット18と取付け板16によって構成)とを備えている。この支持装置10では、クッション14とハウジング17が以下の3つの条件を満たすように設定されている。(1)ブラケット18のクッション体積率Kが、67.0〜73.5%である。(2)クッション14の動倍率が、1.3〜1.8である。(3)クッション14の厚みLが、クッション14をブラケット18に収容していない状態において、3.0〜14.0mmである。支持装置10では、上記(1)〜(3)に設定されることで、ATケーブルにおけるストロークロスの低減と振動伝達の抑制とを両立させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コントロールケーブルの端部を支持する支持装置に関する。特に、自動車のシフトレバーとトランスミッションの間に配索されるコントロールケーブルの端部を支持する支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シフトレバーの動作をトランスミッションに伝達するコントロールケーブルが知られている。コントロールケーブルは、筒状のアウターケーブルと、そのアウターケーブルに挿通されたインナーケーブルを有している。インナーケーブルは、運転者によって入力されたシフトレバーの動作(変位)をトランスミッションへと伝達する。トランスミッションは、伝達された変位に基づいてギアを切換える。インナーケーブルの伝達ロス(いわゆる、ストロークロス)が大きいと、シフトレバーの変位がトランスミッションに正確に伝達されない。そのため、支持装置には、コントロールケーブルの端部を強固(変位不能)に支持し、ストロークロスを低減することが望まれる。
一方、アウターケーブルは、その一端が支持装置を介してエンジンルーム内のケーブル固定用部材に固定される。このため、エンジンの振動がコントロールケーブルを介してシフトレバー側に伝達され、車内の騒音(異音)の原因となる。そのため、支持装置には、コントロールケーブルの端部を柔らかく(変位可能)支持し、コントロールケーブルを介して振動が伝達されることを抑制することが望まれる。
【0003】
上述の2つの要望を満たすために、特許文献1の支持装置が提案されている。特許文献1の支持装置では、アウターケーブルの端部が弾性部材を介してハウジングに取付けられている。弾性部材のハウジングと当接する面には複数個の突起が形成されている。ハウジングとの当接面に複数の突起を形成することで、ストロークロスを低減でき、かつ、振動の伝達を抑制することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−019977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示すような弾性部材の形状の改良による対策のみでは、ストロークロスの低減と振動伝達の抑制の双方を十分に達成できていない。すなわち、ストロークロスを十分に低減できるようにすると、振動の伝達を十分に抑制することができない場合があった。振動の伝達が十分に抑制できない場合には、所望の重量のダンパーをコントロールケーブルに接続する作業が必要となる。
【0006】
本明細書では、ストロークロスを十分に低減すると共に振動伝達を十分に抑制することができる支持装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示される支持装置は、コントロールケーブルのいずれか一方の端部を支持する。コントロールケーブルは、インナーケーブルが挿通されているアウターケーブルを有し、シフトレバーとトランスミッションの間に配索されてシフトレバーの動作をトランスミッションに伝達する。
この支持装置は、ハブと弾性部材とハウジングとを備えている。ハブは、アウターケーブルの端部に取付けられ、その外周にフランジを有している。弾性部材は、ハブの外周を取り囲むように配され、フランジの表面と裏面の両側からフランジに当接している。ハウジングは、弾性部材を収容する収容部を有している。
【0008】
この支持装置では、収容部は、フランジの表面に対向する第1内周面と、フランジの裏面に対向する第2内周面を有している。弾性部材は、収容部に収容された状態で第1内周面及び第2内周面に当接している。この支持装置は、以下の3つの特徴を有している。
(1)「収容部の内周面とハブの外周面との間にできる空間の体積」に対する「収容部に収容された状態で、かつ、外力が作用しない状態の弾性部材の体積」の比である体積率が、67.0〜73.5%である。
(2)弾性部材の動倍率が、1.3〜1.8である。
(3)弾性部材のフランジの表面に当接する面から収容部の第1内周面に当接する面までの第1厚みと、弾性部材のフランジの裏面に当接する面から収容部の第2内周面に当接する面までの第2厚みと、を加えた合計の厚みが、弾性部材を収容部に収容していない状態において、3.0〜14.0mmである。
【0009】
この支持装置では、上記の3つの条件を満足することで、ストロークロスを十分に低減しつつ、振動伝達を十分に抑制することができる。これによって、従来はダンパーを接続することが必要とされた車種についても、この支持装置を用いることでダンパーを不要とすることができる。その結果、ダンパーを不要とすることができる車種を拡大することができる。
【0010】
上記した弾性部材には、収容部の第1内周面に当接する面と第2内周面に当接する面の少なくとも一方に、互いに間隔を空けて複数個の突起が配置されていてもよい。上記した弾性部材はさらに、フランジの表面又は裏面に当接する面に、互いに間隔を空けて複数個の突起が配置されていてもよい。弾性部材に突起を形成することで、振動伝達をさらに抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】支持装置10を用いたATケーブル30の様子を模式的に示す図。
【図2】支持装置10を、ケーブル軸線を通る面で切断したときの断面図。
【図3】クッション14の断面図。
【図4】図3のIV部を拡大して示す図。
【図5】ブラケット18を図1の左側より見た図。
【図6】図5のVI−VI線断面図。
【図7】クッション体積率Kを説明するための図。
【図8】クッション体積率Kを説明するための図。
【図9】クッション体積率KとストロークロスS及び振動倍率Dの関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
下記に詳細に説明する実施例に記載されている技術の一部を列挙する。
(形態1) 弾性部材は、フランジの表面に当接する第1弾性部材と、フランジの裏面に当接する第2弾性部材とによって構成されている。
(形態2) 弾性部材のハブの円筒部(フランジ以外の部分)に接する面には、互いに間隔を空けて配置された複数個の突起が形成されている。
(形態3) 弾性部材の収容部の側壁面に当接する面には、互いに間隔を空けて配置された複数個の突起が形成されている。
【実施例1】
【0013】
自動車のシフトレバーとオートマチック・トランスミッション(以後、トランスミッションと略して称す)の間に配索されるオートマチック・トランスミッション・ケーブル(以後、ATケーブルと略して称す)の端部を支持する支持装置について、図面を参照しながら説明する。図1に示すように、ATケーブル30は、インナーケーブル29とアウターケーブル34を備えている。アウターケーブル34は、樹脂性のライナー31と、樹脂性のライナー31の外周を被覆する被覆部32を有している。被覆部32は、ストランド線及び樹脂被覆によって構成されている。インナーケーブル29は、アウターケーブル34内に挿通され、アウターケーブル34内を進退動可能となっている。インナーケーブル29の一端には入力ロッド20が接続されており、その他端には出力ロッド23が接続されている。
【0014】
入力ロッド20の先端には穴部20aが形成されている。穴部20aには、シフトレバー(図示されていない)が接続されている。出力ロッド23の先端は、リンク部材22を介してエンジンルームに配されたトランスミッション(図示されていない)に接続されている。運転者によってシフトレバーに入力された動作(変位)は、入力ロッド20を介してインナーケーブル29に伝達される。インナーケーブル29に伝達された変位は、出力ロッド23及びリンク部材22を介してトランスミッションに伝達される。
【0015】
アウターケーブル34の入力ロッド20側の端部は、支持装置11により支持されている。支持装置11は、シフトレバー装置のハウジングに固定されている。アウターケーブル34の出力ロッド23側の端部は、支持装置10により支持されている。支持装置10は、エンジンルーム内のケーブル固定用部材26に固定されている。アウターケーブル34の中間部位は、止め具24及びリテーナ28によって車体の所定箇所にクランプされている。なお、支持装置11は、従来公知の支持装置と同一構造であるため、以下の説明では、支持装置10について説明する。
【0016】
図2を参照して、本実施例の支持装置10の構造について説明する。支持装置10は、主に、ハブ12とクッション14(弾性部材の一例)とハウジング17によって構成されている。ハウジング17は、取付け板16とブラケット18を有している。
ハブ12は、本体部12aとガイドパイプ12cによって構成されている。本体部12aの一端には、ガイドパイプ12cが略同軸に固定されている。本体部12aとガイドパイプ12cは、インサート成形によって一体に成形されている。本体部12aとガイドパイプ12cは、共に筒状形状をしており、本体部12aとガイドパイプ12cには、双方を連通する貫通孔12dが形成されている。図1に示すように、ATケーブル30がハブ12に接続されると、インナーケーブル29が貫通孔12dに挿通され、アウターケーブル34は、ガイドパイプ12cの側(図1の右側)から貫通孔12dに挿入されてガイドパイプ12cに固定される。また、本体部12aには、フランジ12bが形成されている。フランジ12bは、本体部12aの外周に形成されており、本体部12aの径方向に放射状に形成されている。
【0017】
クッション14は、フランジ12bを取り囲むようにハブ12(本体部12a)の外周に配されている。クッション14は、第1クッション14aと第2クッション14bによって構成されている。第1クッション14aと第2クッション14bは、対称に配置された同一形状及び同一素材の弾性部材である(即ち、同一部材である)。第1クッション14aは、フランジ12bの表面12e、フランジ12bに対してトランスミッション側にある本体部12aの外周面、フランジ12bの表面12eに対向する取付け板16の裏面16a(第1内周面の一例)、及び、ブラケット18の側壁面18bに当接している。第2クッション14bは、フランジ12bの裏面12f、フランジ12bに対してシフトレバー側にある本体部12aの外周面、フランジ12bの裏面12fに対向するブラケット18の内周面18a(第2内周面の一例)、及び、ブラケット18の側壁面18bに当接している。第1クッション14aと第2クッション14bは、フランジ12bの外側にも配置され、フランジ12bの外周面に当接するとともに、フランジ12bの外側においてお互いに当接している。
【0018】
図3及び図4を参照して、第1,2クッション14a,14bの構造について説明する。なお、既述したように、第1クッション14aと第2クッション14bは同一部材であるため、ここでは第2クッション14bについてのみ説明する。
第2クッション14bは、フランジ12bの裏面12fと接する第1表面40と、本体部12aの外周面(ただし、フランジ12bを除く)と接する第2表面44と、収容部19の内周面18aと接する第3表面50と、収容部19の側壁面18bと接する第4表面54を有している。第1表面40には、互いに間隔を空けて配置された複数個の第1突起42が形成されている。第2表面44には、互いに間隔を空けて配置された複数個の第2突起46が形成されている。第3表面50には、互いに間隔を空けて配置された複数個の第3突起52が形成されている。第4表面54には、互いに間隔を空けて配置された複数個の第4突起56が形成されている。
【0019】
本実施例では、クッション14a,14bに突起42、46、52、56を形成することで、クッション14a,14bとハブ12との接触面積が小さくされ、また、クッション14a,14bとハウジング17との接触面積が小さくされる。このため、エンジンエルーム内のケーブル固定用部材26からハウジング17に伝達された振動が、クッション14a,14b及びハブ12を介してATケーブル30に伝達されることが抑制される。
【0020】
なお、クッションに突起を形成すると、クッションが変形し易くなり、ストロークロスが大きくなり易い。本実施例のクッション14a,14bでは、シフトレバーの操作力(ATケーブル30の軸線方向の力)が作用する表面40,50に突起42,52を形成することで、シフトレバーの操作力を突起42,52で好適に受けることができる。このため、クッション14a,14bの変形が抑えられ、ストロークロスを小さく抑えることができる。
【0021】
図5及び図6を参照して、ブラケット18の構造について説明する。ブラケット18は、鉄等の金属で形成されており、クッション14を収容する収容部19を有している。クッション14が収容部19に収容されると、クッション14はハブ12の外周(フランジ12bの表面12e及び裏面12fを含む)に当接する。収容部19は、表面側(図6の左側)に開口している。収容部19の底面、すなわち、収容部19の内周面18aには、開口60よりも開口面積の小さい開口穴62が形成されている。
図5に示すように、ブラケット18の収容部19周辺には、ブラケット18を取付け板16に固定するための取付け穴64、66、68が形成されている。また、ブラケット18には、ブラケット18を取付け板16に固定する際に、ブラケット18と取付け板16の相対位置を決定するための位置決め穴70が形成されている。
【0022】
取付け板16は、鉄等の金属で形成されており、ブラケット18の位置決め穴70に対応する位置決めピンが設けられている。また、取付け板16には、ブラケット18の取付け穴64、66、68に対応する取付け穴が設けられている。ブラケット18を取付け板16に取付ける際には、まず、ブラケット18の位置決め穴70に取付け板16の位置決めピンが挿し込まれるように両者の位置調整をし、次いで、ボルト・ナット等の固定治具を用いてブラケット18と取付け板16の取付け穴を固定する。取付け板16は、エンジンルーム内のケーブル固定用部材26に取付けられる。
【0023】
本実施例の支持装置10では、ATケーブル30のストロークロスの低減と、振動の伝達の抑制という2つの要望を満たすために、クッション14とハウジング17が下記の3つの特徴を有している。
【0024】
(1)クッション14の動倍率が、1.3〜1.8に設定される。動倍率とは、静バネ定数に対する動バネ定数の比を表し、その値が小さいほど振動を抑える効果が高い。すなわち、静バネ定数に対して動バネ定数が小さいということは、静的な荷重に対しては大きなバネ定数となり、動的な荷重に対しては小さなバネ定数となる。このため、動倍率が小さいほど、振動を抑える効果が高く、また、ストロークロスを低減する効果も高いこととなる。ただし、動倍率が小さいほど成形が困難となる。本実施例では、成形可能な範囲において、クッション14の動倍率を通常より低い範囲(動倍率=1.3〜1.8)に設定する。すなわち、動倍率を1.8以下とすることで振動を抑える効果を高めつつ、動倍率を1.3以上とすることで成形性を確保する。これにより、ストロークロスを抑えながら、エンジンの振動がシフトレバーに伝達することを抑制する効果を向上させている。
【0025】
(2)クッション14を収容部19に収容していない状態において、第1クッション14aと第2クッション14bの第1突起42の表面から第3突起52の表面までの厚みL1を合計した厚みが、3.0〜14.0mmに設定される。クッション14の厚みは、その厚みが厚いほど振動を抑制する効果を向上させることができる。その一方、クッション14の厚みが厚すぎると、シフトレバーの変位が伝わりにくくなり、ATケーブル30のストロークロスが低減してしまう。すなわち、クッション14の厚みが厚くなると、シフトレバーを操作する際の操作力によりクッション14が変形する量が大きくなり、ストロークロスが大きくなる。本実施例では、クッション14の厚みを、通常より厚くなるように設定する(厚み=3.0〜14.0mm)。すなわち、厚みを3.0mm以上とすることで振動抑制の効果を充分に発揮し、厚みを14.0mm以下とすることでストロークロスを低減する。これにより、ATケーブル30のストロークロスの低減と振動伝達の抑制の両者の向上を図っている。
【0026】
(3)ハウジング17のクッション体積率Kが、67.0〜73.5%に設定される。クッション体積率Kは、下記のように設定されるパラメータである。図7に示すように、収容部19の体積のうち、開口60から内周面18aまでの範囲X内にある空間(以下、全空間という)の体積を全空間体積V1とする。上記全空間内に収容され、ハブ12の外周面よりも内部側の空間(以下、ハブ空間という)の体積をハブ体積V2とする。この場合、全空間体積V1とハブ体積V2の差分体積V3(これは、ハブ12の外周面と収容部19の内周面18a及び側壁面18bとの間の空間の体積に等しい)は、V1−V2と表される(図7の斜線部)。図8に示すように、収容部19にクッション14が収容されると、クッション14の一部は、全空間からハブ空間を引いた空間(以下、差分空間という)内に収容される。クッション14は、収容部19に圧縮された状態で収容される。このため、クッション14のうち差分空間に収容される部位の体積は、クッション14に外力が作用しない状態では差分体積V3より小さく、その体積をクッション体積V4とする(図8の斜線部)。クッション体積率Kは、差分体積V3、クッション体積V4を用いて、K=V4/V3=V4/(V1−V2)と設定される。
【0027】
単にクッション14の動倍率を通常より低い範囲に設定し、また、上記の厚みを通常より厚くしただけでは、振動抑制効果を向上させることができるものの、ATケーブルのストロークロスを増大させてしまう。本実施例では、クッション14の動倍率を通常より低い範囲に設定するとともに、上記の厚み範囲を通常より厚い範囲とし、かつ、収容部19に収容されるクッション14の体積率を変化させた。クッション14の動倍率とクッション14の体積率と上記の厚みを適切な範囲に設定することで、ATケーブル30のストロークロスと振動伝達を同時に抑制することに成功した。
本実施例では、クッション体積率Kが67.0〜73.5%に設定されている。クッション体積率Kは、その値が大きいほど収容部19にクッション14が高密(緻密)に充填され、ATケーブル30の変位を伝導しやすい。一方、クッション体積率Kの値が小さいほど収容部19とクッション14の間に隙間が形成され、ATケーブル30に伝達される振動を低減することができる。本実施例では、クッション体積率Kを通常(従来の支持装置ではクッション体積率K=65%程度)に比べて高い範囲に設定する。これによって、ATケーブルのストロークロスを低減する効果を向上させる。これと同時に動倍率及び上記厚みを適切な範囲とすることで、ATケーブル30に伝達される振動の抑制を図っている。
【0028】
表1、図9に、クッション体積率Kを、67.0〜73.5%を含む範囲で変化させた場合の支持装置10のストロークロスSと振動倍率Dの測定結果を示す。なお、表1、図9では、ハブ体積V2及びクッション体積V4を一定に保ち、全空間体積V1を変化させてクッション体積率Kを変化させた。測定に用いたクッション14の動倍率は1.4とし、クッション14の厚みは12.0mmとした。ここで、ストロークロスSと振動倍率Dは、下記に示す方法によって測定した。
【0029】
ストロークロスSの測定では、ハブ12の表面または裏面のいずれか一方に一定の大きさの静荷重(15kgf)を加え、静荷重を加えた側の面の第1変位s1と、その逆側の面の第2変位s2を測定し、第1変位s1から第2変位s2を引いた差分変位を求める。この測定では、ハブ12の表面に静荷重を加えた場合の第1差分変位S1と、ハブ12の裏面に静荷重を加えた場合の第2差分変位S2とを求め、第1差分変位S1と第2差分変位S2との平均差分変位をストロークロスSとして算出する。
【0030】
振動倍率Dの測定では、支持装置10をATケーブル30の一端に接続し、アウターケーブル34の他端側に衝撃(インパルス衝撃)を加える。そして、支持装置10を介してインナーケーブル29の一端側に伝達した振動を測定する。より具体的には、インナーケーブル29に伝達された振動の周波数毎の振幅比率(測定された振動の振幅/入力された振動の振幅)を測定する。次いで、エンジンから入力される振動の周波数帯について振幅比率の平均値を算出し、その平均値を振動倍率Dとする。
【0031】
【表1】

【0032】
本実施例の支持装置10では、クッション体積率Kを67.0%以上とすることで、ストロークロスSが1.18よりも小さく抑えられる。この「1.18」という数値は、確実な操作を担保する観点から自動車のコントロールケーブルに設計上要求される要求値である。そのため、シフトレバーによってエンジンのギアを切換える際に、エンジンのギアが正しく切換わらないことが防止される。また、クッション体積率Kが73.5%以下とすることで、振動倍率Dが36.9dBよりも小さく抑えられる。これによって、従来の支持装置を用いた場合にはATケーブルにダンパーを接続することが必要とされた車種(この車種では、ATケーブルにダンパーを接続した状態で振動倍率が36.9dBとなっていた。)についても、ダンパー無しで振動倍率を充分に低減でき、ATケーブルにダンパーを接続する必要がなくなる。その結果、ダンパーを無くすことにより質量低減され、またATケーブル30の質量低減により配索に必要な作業を簡略化することができ、さらにコスト低減にもなる。
【0033】
以上に説明したように、本実施例の支持装置10では、相互に関係するクッション体積率K、クッション14の動倍率、クッション14の厚みLの3つのパラメータを適切な範囲に設定する。これによって、ATケーブルのストロークロスの低減と振動伝達の抑制を両立することができ、従来はダンパーが必要とされた車種についてもダンパーを不要することができる。
【0034】
以上、本明細書によって開示される支持装置の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
上述した実施例では、支持装置10を取付け板16を介してエンジンルーム内のケーブル固定用部材26に固定したが、取付け板16は必ずしも必要がない。ブラケット18をエンジンルーム内のケーブル固定用部材26に直接固定するようにしてもよい。また、上述した実施例では、トランスミッション側の端部のみを本願に係る支持装置で支持したが、シフトレバー側の端部を本願に係る支持装置で支持するようにしてもよい。あるいは、トランスミッション側の端部とシフトレバー側の端部の両者を支持するようにしもよい。
【0035】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0036】
10、11 支持装置
12 ハブ
12a 本体部
12b フランジ
12c ガイドパイプ
14 クッション
16 取付け板
17 ハウジング
18 ブラケット
19 収容部
20 入力ロッド
22 リンク部材
23 出力ロッド
28 リテーナ
29 インナーケーブル
30 ATケーブル
31 ライナー
32 被覆部
34 アウターケーブル
40 第1表面
42 第1突起
44 第2表面
46 第2突起
50 第3表面
52 第3突起
54 第4表面
56 第4突起
L 厚み
K クッション体積率
S ストロークロス
D 振動倍率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナーケーブルが挿通されているアウターケーブルを有しており、シフトレバーとトランスミッションの間に配索されてシフトレバーの動作をトランスミッションに伝達するコントロールケーブルのいずれか一方の端部を支持する支持装置であって、
アウターケーブルの端部に取付けられ、その外周にフランジを有するハブと、
ハブの外周を取り囲むように配され、フランジの表面と裏面の両側からフランジに当接する弾性部材と、
弾性部材を収容する収容部を有するハウジングと、を備えており、
収容部は、フランジの表面に対向する第1内周面と、フランジの裏面に対向する第2内周面を有しており、
弾性部材は、収容部に収容された状態では、収容部の第1内周面に当接するとともに収容部の第2内周面に当接し、
「収容部の内周面とハブの外周面との間にできる空間の体積」に対する「収容部に収容された状態で、かつ、外力が作用しない状態の弾性部材の体積」の比である体積率が、67.0〜73.5%であり、
弾性部材の動倍率が、1.3〜1.8であり、
弾性部材のフランジの表面に当接する面から収容部の第1内周面に当接する面までの第1厚みと、弾性部材のフランジの裏面に当接する面から収容部の第2内周面に当接する面までの第2厚みと、を加えた合計の厚みが、弾性部材を収容部に収容していない状態において、3.0〜14.0mmであることを特徴とする支持装置。
【請求項2】
弾性部材には、収容部の第1内周面に当接する面と第2内周面に当接する面の少なくとも一方において、互いに間隔を空けて複数個の突起が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の支持装置。
【請求項3】
弾性部材のフランジの表面又は裏面に当接する面には、互いに間隔を空けて複数個の突起が配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−27169(P2011−27169A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173133(P2009−173133)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000210986)中央発條株式会社 (173)
【Fターム(参考)】