説明

改善された性能を有する液浸トップコート材料

【課題】 現像液に良く解け、液浸流体に対する耐性を有し、フォトレジストと適合し、TARCとしても用いることのできる、フォトレジスト材料の上面に塗布するためのトップコート材料を提供すること。
【解決手段】 トップコート材料は、少なくとも1つの溶媒と、アルカリ性水溶液現像液に対して少なくとも3000Å/秒の溶解速度を有するポリマーとを含む。このポリマーは、次の2つの構造、
【化1】


のうちの1つを含むヘキサフルオロアルコールのモノマー・ユニットを含み、ここで、nは整数である。トップコート材料は、それがフォトレジスト層上に塗布されるリソグラフィ・プロセスに用いることができる。トップコート材料は、好ましくは水に不溶性であり、そのため画像形成媒体として水を用いる液浸リソグラフィ法に特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トップコート材料及びそれらのリソグラフィ・プロセスにおける使用法に関する。より詳細には、本発明は、少なくとも1つの溶媒と、アルカリ性水溶液現像液に対して少なくとも3000Å/秒の溶解速度を有するポリマーとを含むトップコート材料を対象とする。本発明のトップコート材料は、露光ツールのレンズ構造体とフォトレジスト・コーティングされたウェハとの間に露光媒体として水などの液体を使用する液浸リソグラフィに特に有用である。
【背景技術】
【0002】
従来、トップコート材料は、フォトレジスト上面の上の反射防止膜としてフォトリソグラフィに使用されている。上面反射防止コート(TARC)材料は、露光中、フォトレジスト層内で生じる光の多重干渉を防止することができる。結果として、フォトレジスト膜の厚さのばらつきによって生じるフォトレジスト・パターンの幾何学的構造部の限界寸法(CD)のばらつきを最小限にすることができる。
【0003】
トップコートの反射防止効果の利点を十分に活用するためには、トップコート材料の屈折率(n)は、およそ、露光媒体の屈折率(n)と下層のフォトレジストの屈折率(n)との積の平方根とすべきである。「ドライ」リソグラフィのように露光媒体が空気である場合には、空気の屈折率がほぼ1であるので、トップコート材料の最適の屈折率(n)は、およそ、下層のフォトレジストの屈折率(n)の平方根とすべきである。
【0004】
処理を容易にするために、古典的なTARC材料は、水と塩基水溶液現像液の両方に可溶性であるように設計され、その結果、それら材料は水溶液から直接塗布することができ、次いで現像段階中に塩基水溶液現像液によって除去することができる。
【0005】
最適な屈折率及び溶解度に関するこれら2つの要件を満たす多数のトップコート材料が開発されている。例えば、特許文献1及び特許文献2は、高分子接合剤(バインダー)とフッ化炭素(フルオロカーボン)化合物を含み、1.3〜1.4の程度のほぼ理想的な屈折率を有する水溶性のTARC材料を開示している。特許文献3もまた、湿式プロセスによって除去可能なTARC材料を開示している。特許文献4は同様に、部分的にフッ素化された化合物を含み、やはり水溶性のTARCを開示している。特許文献5は、フォトレジストを露光するのに用いられる露光波長よりも長い最大吸収波長を有する光吸収性化合物を含むTARC材料を開示している。このTARCはまた、水溶性とすることができる。最後に、特許文献6は、有機及び無機塩基の蒸気による汚染を防ぐために、酸触媒レジスト組成物に対する保護膜として用いるための保護材料を開示している。TARCであると明確には開示されていないが、その保護膜は水溶性とすることもできる。
【0006】
液浸リソグラフィは、より小さな構造体をプリント(転写)するために光学リソグラフィの使用法を拡張する可能性を提供する。液浸リソグラフィにおいて、空気は、レンズとウェハの間で水のような液体媒体に置き換えられる。空気より高い屈折率を有する媒体を使用することにより、より大きな開口数(NA)をもたらされ、それ故により小さな構造体の印刷を可能にする。非特許文献1を参照されたい。また非特許文献2を参照されたい。
【0007】
液浸リソグラフィが直面する技術的課題の1つは、フォトレジスト構成成分と液浸媒体との間の拡散である。即ち、液浸リソグラフィ・プロセスの間、フォトレジスト構成成分は液浸媒体内に浸出し、液浸媒体はフォトレジスト膜内に浸透する。こうした拡散は、フォトジスト性能に有害であり、レンズのひどい損傷、或いは4000万ドルのリソグラフィ・ツールの汚染を生じる可能性がある。トップコート材料は、下側のフォトレジスト層からの材料の拡散を無くすためにフォトレジスト層の上面に塗布することができる。トップコート材料はまたTARC層としても機能できることが好ましい。
【0008】
水は193nmの液浸リソグラフィの露光媒体として提案されているので、上述のような古典的な水溶性TARC材料は、そのような技法のためのトップコートとして使用することはできない。現在利用可能なその他の市販の材料は、半導体製造ラインと適合性がないか、又はフォトレジストのリソグラフィ性能に影響を与える溶媒を必要とする。65nm及びそれ以下の設計グラウンド・ルールにおける半導体デバイスの製造に必要な193nmの液浸リソグラフィの配備を確実にするためには、新規なトップコート材料が必要である。
【0009】
液浸リソグラフィが直面する深刻な技術的課題は、フォトレジスト表面における泡又はその他の小粒子もしくはこれら両方の存在である。フォトレジスト表面における小さな泡又は粒子もしくはこれら両方の存在は印刷され得る画像欠陥を生じる。この影響を防止するための1つの方法は、十分な厚さのトップコートを塗布することであり、その結果、泡又は小粒子もしくはこれら両方はレンズの焦点面から外れてリソグラフィで印刷可能ではなくなる。この厚いコーティングは、その場(in situ)ペリクルと記述することができる。本願の目的のためには、こうしたコーティングは単にペリクルと称されることになる。さらに、厚いトップコート材料は、先行技術の薄いトップコート材料に比べて、レジスト構成成分の液浸媒体への溶出を減少させることができる。先行技術の液浸トップコート材料は下層にある露出されたフォトレジストよりも現像液への溶解速度が遅いので、こうしたトップコート膜は必然的に非常に薄くなり、フォトレジスト現像ステップの間に現像液で迅速に剥離することができる。トップコート膜が迅速に除去されない場合、フォトレジスト性能は劣化の影響を受けることになる。そのため、表面の泡又は粒子もしくはこれら両方をリソグラフィ・プロセスの焦点面外に移動させるのに十分厚いトップコート膜は、この厚いトップコート膜がそれでも通常の現像条件下で迅速に剥離できない限り、液浸リソグラフィへの使用には受け入れられない。
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,744,537号
【特許文献2】米国特許第6,057,080号
【特許文献3】米国特許第5,879,853号
【特許文献4】米国特許第5,595,861号
【特許文献5】米国特許第6,274,295号
【特許文献6】米国特許第5,240,812号
【特許文献7】米国特許第6,534,239号
【特許文献8】米国特許第6,635,401号
【特許文献9】米国特許出願第10/663,553号
【非特許文献1】“Technology Backgrounder:Immersion Lithography、”ICKnowledge.com刊行、http://www.icknowledge.com、2003年5月28日
【非特許文献2】L.Geppert、“Chip Making’s Wet New World、”IEEE Spectrum、41巻、5号、2004年5月、29〜33頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、現像液に良く溶け、液浸流体に対して耐性があり、フォトレジストとの適合性を有し、TARCとしても使用できるような所望の光学特性を有するトップコート材料の必要性が残されている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、本発明は、フォトレジスト材料の上面に塗布するためのトップコート材料を対象とする。トップコート材料は、少なくとも1つの溶媒と、アルカリ性水溶液現像液に対して少なくとも3000Å/秒の溶解速度を有するポリマーとを含む。本発明のポリマーは、次の2つの構造、
【化1】

のうちの1つを含むヘキサフルオロアルコールのモノマー・ユニットを含有し、ここでnは整数である。
【0013】
別の態様において、本発明は、基板上にパターン付けされた材料層を形成する方法を対象とし、この方法は、表面上に材料層を有する基板を準備するステップと、その基板上にフォトレジスト組成物を堆積させて前記材料層の上にフォトレジスト層を形成するステップと、そのフォトレジスト層の上に上述のトップコート材料を塗布して、コーティングされた基板を形成するステップと、そのコーティングされた基板を画像形成用放射にパターン状に露光するステップと、そのコーティングされた基板をアルカリ性水溶液現像液に接触させるステップであって、その際、前記のトップコート材料及びフォトレジスト層の一部分は同時にコーティングされた基板から除去されて、パターン付けされたフォトレジスト層を材料層上に形成するステップと、前記のフォトレジスト層のパターンを材料層に転写するステップとを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、少なくとも1つの溶媒と、アルカリ性水溶液現像液に対して少なくとも3000Å/秒の溶解速度を有するポリマーとを含むトップコート材料を対象とする。ポリマーは、内部にヘキサフルオロアルコール部分を有する繰り返しユニットを含む。トップコートは、塩基水溶液現像液に高度に可溶であるが水には不溶であって、193nmの液浸リソグラフィ用に使用できることが好ましい。さらに、本発明のトップコート材料は、TARCとして機能するように調整することができるので、画像形成のより良好なプロセス制御を達成することができる。露光媒体として水を使用する193nmの液浸リソグラフィに対しては、TARC材料の最適の屈折率は約1.5から約1.7までである。
【0015】
本発明はまた、nを整数とする次の2つの構造、
【化2】

のうちの1つを有するヘキサフルオロアルコールのモノマー・ユニットを含有するポリマーと、少なくとも1つの溶媒とを含むトップコート材料を対象とする。
上に示されるモノマー・ユニット(I)は、ビス−ヘキサフルオロアルコール・モノマーであり、モノマー・ユニット(II)はモノ−ヘキサフルオロアルコール・モノマーである。
【0016】
本発明はまた、ヘキサフルオロアルコール基により分散されたシクロヘキサノールメタクリレート(ビスシクロヘキシルHFAMA)モノマーと、コポリマーの50モル%までを構成する1つ又は複数のコモノマーとを含んだ、コポリマーを含むトップコート材料を対象とする。このコポリマーがビスシクロヘキシルHFAMAのモノマー及び1つより多くのコモノマーを含む場合、この1つより多くのコモノマーは同じであっても、又は異なっていてもよい。前記の1つ又は複数のコモノマーは、メタクリレート又はアクリレートもしくはこれら両方を含むが、これらに限定されない。好ましいメタクリレート・コモノマーとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、脂環式メタクリレート、又は非環式アルキル置換メタクリレートが挙げられるが、ここでアルキル基及び脂環部分は、独立に1個から12個までの炭素原子を有すことができる。さらに、その他のメタクリレート・モノマー、例えば、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、又はヒドロキシ置換脂環式メタクリレート若しくは非環式ヒドロキシアルキル置換メタクリレート、ここでアルキル基及び脂環部分は、独立に1個から12個までの炭素原子を有すことができるが、これらのメタクリレート・モノマーをトップコート・ポリマーの機械的性能即ち下層にあるフォトレジスト・ポリマーとの接着性を改善するために組み込むことができる。好ましいアクリレート・コモノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、脂環式アクリレート、非環式アルキル置換アクリレート、アクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシ置換脂環式アクリレート、及び非環式ヒドロキシアルキル置換アクリレートが挙げられるが、ここでアルキル基及び脂環部分は、独立に1個から12個までの炭素原子を有する。好適なコモノマーにはまた、上述のメタクリレート及びアクリレート・コモノマーに対する任意の類似のメタクリレート又はアクリレートが含まれることが当業者には理解されるであろう。モノマー・ユニット(I)及び1つのコモノマーを含むコポリマーの構造を以下に示す。上述のコポリマーは、モノマー・ユニット(I)と、同じ又は異なるコモノマー・ユニットとすることができる1つより多くのコモノマーとを含むことができることが当業者には理解されるであろう。
【化3】

ここで、RはCからC12までの非環式アルキル、CからC12までの脂環式アルキル、ヒドロキシ置換のCからC12までの非環式アルキル、又はヒドロキシ置換のCからC12までの脂環式アルキルであり、nは整数であり、mはnに等しいか又はそれ以下の整数である。
【0017】
本発明はさらに、フォトレジスト上への本発明のトップコート材料のコーティングを対象とするが、このコーティングは、表面の泡、小粒子又はその他の汚染物質をリソグラフィ・プロセスの焦点面の外に移動させるのに十分厚いものである。これは、フォトレジスト露光及び現像のステップ中に欠陥が生じるのを防ぐ。「厚い」とは、フォトレジストの約10〜20倍の厚さを意味する。トップコート材料の典型的な厚さは約1ミクロンから約10ミクロンまでである。
【0018】
上述の少なくとも1つの溶媒は、下層のフォトレジスト材料と混和しない(混合できない)ことが好ましい。好適な溶媒としては、炭化水素アルコール、例えば1−ブタノール、2−エチルヘキサノール、メタノール、エタノール、1−プロパノール、エチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、及び4個から8個までの炭素原子を有するその他の炭化水素アルコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
本発明のポリマーは、塩基水溶液現像液に良く溶けるが、水には不溶であることが好ましく、その結果、トップコート材料は、レジストの現像ステップ中に従来のフォトレジスト現像液で迅速に剥離することができる。厚いコーティングに使用するために、本発明のポリマーは、本発明のコーティングの厚い膜の除去時間が標準的な現像と適合できるような高いポリマー溶解速度を有することが非常に好ましい。即ち、厚い膜は、標準現像時間よりも迅速に剥離することができる。
【0020】
さらに、本発明のポリマーは、フォトレジスト材料のパターン付けを可能にするために下層のフォトレジスト材料に対する適切な露光放射に対して実質的に光学的に透明であるのが好ましい。厚いコーティングに使用するために、本発明のポリマーは、193nmにおいて実質的に光学的に透明であることが非常に好ましい。
【0021】
本発明のポリマーは約1.2から約1.8までの範囲の屈折率を有することが好ましい。露光媒体として水を用いる193nmの液浸リソグラフィに関しては、本発明のポリマーの屈折率は、約1.5から約1.7までの範囲にあることが非常に好ましい。
【0022】
本発明のポリマーは、約3Kダルトンから約500Kダルトンまでの範囲で調節可能なポリマー分子量を有し、固形含量の高いスピン・キャスティングが可能な適切な粘性を有する溶液の調合を可能にする。コーティングの機械的な耐久性はポリマー分子量の増加に伴って改善されるので、本発明のポリマーは、厚いコーティングに使用するためには20Kダルトンから500Kダルトンまでの高いポリマー分子量を有することが特に好ましい。コモノマーはまた、改善された機械的耐久性を有するコポリマー材料を調製するため、及びコーティングの屈折率を調整するために添加することができる。
【0023】
ガラス転移温度(Tg)が低いと、フォトレジスト構成成分のトップコート層への拡散が増大してフォトレジストの画像形成性能を悪化させるので、本発明の好ましいトップコート材料は高いTgを有するポリマーである。「高い」とは、Tgがフォトレジスト処理温度にほぼ等しいことを意味する。ポリマーは、必要なレジスト処理温度よりも高いTgを有することがより好ましい。ポリマーは約130℃に等しいか又はより高いTgを有することが最も好ましい。
【0024】
1つの例示的な実施形態において、フルオロアルコール系トップコート・ポリマーは、ポリ(1−メタクロイル−ビス−3,5−ヘキサフルオロイソプロパノール−シクロヘキサノール)(以下、「MBHFAC」)である。別の実施形態においては、フルオロアルコール系トップコート・ポリマーは、ポリ(ノルボルニルヘキサフルオロアルコール)(以下、「NBHFA」)である。これらの2つの材料は、次の構造を有し、ここでnは整数である。
【化4】

【0025】
この種類のフルオロアルコールの光学特性は、液浸用途に好適である。例えば、193nmにおいて、これらのホモポリマーの吸光度は、それぞれ0.126/ミクロン及び0.021/ミクロンである。いずれかの材料の約3ミクロン厚までの膜は、依然として、液浸トップコートとして使用するために193nmにおいて適切な透明性を有する。この種類のポリマーの屈折率は、約1.55から約1.6までであり、約1.7の屈折率を有する193nm用フォトレジストと組み合わされる場合には、ほぼ理想的な反射防止コーティングを与える。さらに、両種類のポリマー構造は、トップコート材料の光学特性を最適化するために容易に変えることができる。
【0026】
好ましい実施形態においては、本発明のトップコート材料はフォトレジストの厚さの約10〜20倍の厚さでコーティングされるので、厚いトップコート(本明細書ではペリクルとも記述される)の高い溶解速度が重要である。図1は、0.26Nのテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)における両種類のポリマーの溶解速度を示す。NBHFAポリマーのより遅い溶解速度に対しても、3ミクロン厚の膜は通常の現像条件下で10秒以内に溶解し、標準的な60秒の現像時間のプロセスにおける使用に容認できることに留意されたい。メタクリレート系ポリマー(MBHFAC)はさらに速い溶解速度を有する。さらに、上述のビスヘキサフルオロアルコールのモノマー・ユニット(I)を含むポリマーは、実質的により高いTgを有するので、フォトレジスト層からトップコート層への小分子の構成成分の拡散を抑えることでより良好な画像形成性能を付与する。
【0027】
両ポリマーの分子量は広い範囲にわたって調節することができる。例えば、3Kダルトンのような低い分子量及び500Kダルトンのような高い分子量が容易に調製できる。種々の分子量及びポリマー組成物の混合物は、溶解及びキャスティングの特性を変えるために用いることができる。より高い分子量では、ポリマーの溶解速度が遅くなる可能性があるが、それでも本発明のトップコート材料は、下層のパターン付けされたフォトレジスト膜の現像と干渉することなく剥離することが可能である。さらに、両ポリマーは、キャスティング溶媒として使用するのに好適な炭化水素アルコールに容易に溶け得る。
【0028】
下図の構造は、先行技術のトップコート材料のポリマー組成を示す。先行技術の材料は、イソプロピルヘキサフルオロアルコールメタクリレート(IpHFAMA)のモノマーを組み込み、70:20:10のモル比でのIpHFAMA/HADMA/HEMAの組成を有する。先行技術のポリマーのTgは約100℃であり、下層のフォトレジスト膜の処理温度より低い。
【化5】

【0029】
下図の構造は本発明のポリマーの一実施形態を示すが、これはビスシクロヘキシルHFAMAのモノマーを組み込み、70:20:10のモル比でのビスシクロヘキシルHFAMA/HADMA/HEMAの組成を有する。先行技術の材料とは対照的に、ビスシクロヘキシルHFAMAのモノマーを組み込む本発明のポリマーは、160℃のTgを有し、これは必要なフォトレジスト処理温度より十分に高い。
【化6】

【0030】
図2及び図3は、約160nmでコーティングされ、次いで2.2ミクロンの本発明のトップコートでコーティングされ、画像形成され、及び現像された2つの市販フォトレジストからのフォトレジスト線のフォトレジスト画像のSEM写真を示す。図2及び図3のSEMによれば、本発明のトップコート材料を利用したパターンは、ほぼ完璧な四角形プロファイルを示す。
【0031】
本発明の別の態様においては、トップコート材料は、基板上にパターン付けされた材料層を形成する方法に用いることができる。材料層は、例えば高性能集積回路デバイス及び関連するチップ・キャリア・パッケージの製造に用いられるような、例えば、セラミック、誘電体、金属又は半導体層とすることができる。
【0032】
前記の方法においては、フォトレジスト組成物は、初めに既知の手段によって基板上に堆積させて材料の上にフォトレジスト層を形成させる。フォトレジスト層を有する基板は、次いでベーク(塗布後ベーク、以下「PAB」)してフォトレジスト組成物からあらゆる溶媒を除去し、フォトレジスト層の密着性を改善することができる。典型的なPABベーク温度は約80℃から約150℃までである。典型的なフォトレジストの厚さは約100nmから約500nmまでである。任意の適切なレジスト組成物、例えば、特許文献7及び特許文献8、並びに特許文献9に開示されているレジスト組成物を用いることができる。
【0033】
次に、本発明のトップコート材料をフォトレジスト層に塗布して、コーティングされた基板を形成する。20〜30重量%のポリマー溶液に対しては、2〜5K RPMのスピン速度により1〜3ミクロン厚のコーティングを得ることができる。5インチのウェハに対しては、投与(ディスペンス)体積は室温で1〜3ミリリットルの範囲内とすることができる。次に、コーティングされた基板をベーク(ソフトベーク)し、トップコート材料からあらゆる溶媒を除去してコーティング層の密着性を改善することができる。典型的なソフトベーク温度は約90℃である。典型的なソフトベーク時間は約90秒である。コーティングされた基板は次いで、適切な放射源に対して、パターン付けされたマスクを通して露光される。1つの例示的な実施形態において、画像形成用放射は193nm放射である。別の実施形態においては、画像形成用放射は157nm放射である。別の実施形態においては、画像形成用放射は248nm放射である。コーティングされた基板はまた、液浸リソグラフィを用いてこれらの画像形成用放射に露光することができ、その際、画像形成媒体は露光前にコーティングされた基板に塗布される。好ましい実施形態においては、画像形成媒体は水である。露光された基板は次いで、ベーク(露光後ベーク)してフォトレジストとコーティング層との密着性を改善させることができる。典型的な露光後ベーク温度は、フォトレジストの特性によって決定される。当業者は過度の実験を行うことなく必要な条件を確定することができる。
【0034】
露光された基板は、次いで塩基水溶液現像液、例えば0.263Nテトラメチルアンモニウムヒドロキシドと接触させて、トップコート材料及びフォトレジスト層の一部分を同時にコーティング基板から除去する。現像液との接触により、材料層上にパターン付けされたフォトレジスト層が形成される。
【0035】
次に、フォトレジスト層のパターンは、下にある基板上の材料層に転写することができる。通常、転写は反応性イオン・エッチング又は何らかの他のエッチング法によって達成される。本発明の方法は、集積回路デバイスの設計に用い得るような、パターン付けされた材料層構造体、例えば金属配線ライン、コンタクト又はビアのためのホール、絶縁領域(例えば、ダマシン・トレンチ又は浅いトレンチ分離)、キャパシタ構造体のためのトレンチなどを作成するために使用することができる。
【0036】
これら(セラミック、誘電体、金属又は半導体)の構造体を製造するためのプロセスは、一般にパターン付けされるべき基板の材料層又は領域を準備するステップと、この材料層又は領域の上にフォトレジスト層を塗布するステップと、フォトレジスト層の上にトップコート層を塗布するステップと、このトップコート及びフォトレジスト層を放射でパターン状に露光するステップと、露光されたレジストを露光後ベークするステップと、露光されたトップコート及びフォトレジストを現像液と接触させてパターンを現像するステップと、フォトレジスト層の下にある層をパターン内のスペース部分でエッチングしてパターン付けされた材料層又は基板を形成するステップと、基板からあらゆる残留フォトレジストを除去するステップとを含む。幾つかの場合には、ハードマスクをフォトレジスト層の下に用いて、さらに下にある材料層又は領域へのパターンの転写を促進するようにすることができる。本発明はいずれかの特定のリソグラフィ法又はデバイス構造体に限定されないことを理解されたい。
【0037】
以下の非限定的な実施例は、本発明をさらに説明するために与えられる。これらの実施例は例証のためだけに与えられるので、そこで具体化される本発明はそれらに限定されるべきではない。
【実施例1】
【0038】
ポリ(1−メタクロイル−ビス−3,5−ヘキサフルオロイソプロパノール−シクロヘキサノール)の合成。100mLの3つ口フラスコにマグネチック・スターラ、温度制御加熱マントル、内部熱電対温度計、及び窒素ガス流入管付きフリードリッヒ冷却器を装備した。このフラスコに、7.5グラム(15ミリモル)の1−メタクロイル−ビス−3,5−ヘキサフルオロイソプロパノール−シクロヘキサノール、1−ドデカンチオール(0.151グラム、0.75ミリモル)、及び22.5グラムのメチルエチルケトンを充填した。反応混合物を窒素フラッシュし、内部温度75℃まで加熱した。次いで重合開始剤ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(Waco Chemicals製V−601)(0.207グラム、0.9ミリモル)を反応混合物に添加し、それを窒素フラッシュし、次いで窒素雰囲気下で20時間還流加熱した。この混合物を室温まで冷却し、2.0リットルの迅速攪拌中のヘキサンにゆっくり添加した。生成したポリマー固体を濾過で集め、100mL部のヘキサンで3回洗浄し、次いで500ミリトール未満の真空オーブン内で3日間乾燥させた。乾燥ポリマーで6.62gの収量が得られた。このポリマーの分子量は6.2Kダルトン(ポリスチレン標準に対するテトラヒドロフラン中のGPC)であった。
【実施例2】
【0039】
前記の反応容器に10グラム(20ミリモル)の1−メタクロイル−ビス−3,5−ヘキサフルオロイソプロパノール−シクロヘキサノール、及び30グラムのメチルエチルケトンを充填したこと以外は上記と同様に反応を行った。反応混合物を窒素フラッシュし、内部温度75℃まで加熱した。次いで重合開始剤ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(Waco Chemicals製V−601)(0.138グラム、0.6ミリモル)を反応混合物に添加し、それを窒素フラッシュし、次いで窒素雰囲気下で20時間還流加熱した。ヘキサン中で沈殿させ、濾過及び乾燥の後、約150KダルトンのGPC Mwを有するポリマーが8.92グラム得られた。
【実施例3】
【0040】
前記の反応容器に8グラム(16ミリモル)の1−メタクロイル−ビス−3,5−ヘキサフルオロイソプロパノール−シクロヘキサノール、0.40グラムのメチルメタクリレート(0.4ミリモル)、及び30グラムのアセトンを充填したこと以外は上記と同様に反応を行った。反応混合物を窒素フラッシュし、内部温度56℃まで加熱した。次いで重合開始剤ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(Waco Chemicals製V−601)(0.092グラム、0.4ミリモル)を反応混合物に添加し、それを窒素フラッシュし、次いで窒素雰囲気下で20時間還流加熱した。ヘキサン中で沈殿させ、濾過及び乾燥の後、約250Kダルトンを超えるGPC Mwを有するポリマーが8.16グラム得られた。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、集積回路の製造に有用であり、特にリソグラフィ・プロセスに有用であり、より詳細には液浸リソグラフィに有用なトップコート材料に関する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】MBHFAC及びNBHFAを含有する本発明のトップコート材料の溶解速度を示す、時間(秒)に対して厚さ(nm)をプロットしたグラフである。
【図2】画像形成前にフォトレジスト層の上面に塗布された2.2ミクロンの本発明のトップコートを利用して、193nmにおいて水液浸で画像形成され、現像された市販のフォトレジストのSEMを示す。
【図3】画像形成前にフォトレジスト層の上面に塗布された2.2ミクロンの本発明のトップコートを利用して、193nmにおいて水液浸で画像形成され、現像された市販のフォトレジストのSEMを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトレジスト材料の上面に塗布するためのトップコート材料であって、少なくとも1つの溶媒と、アルカリ性水溶液現像液に対して少なくとも3000Å/秒の溶解速度を有するポリマーとを含むトップコート材料。
【請求項2】
前記ポリマーは、nは整数とする次の2つの構造、
【化1】

のうちの1つを含むヘキサフルオロアルコールのモノマー・ユニットを含有する、請求項1に記載のトップコート材料。
【請求項3】
前記ポリマーは、nを整数とする次の構造、
【化2】

を有するヘキサフルオロアルコールのモノマーと、50モル%までの1つ又は複数のメタクリレート又はアクリレート・コモノマーとを含むコポリマーである、請求項1に記載のトップコート材料。
【請求項4】
前記1つ又は複数のメタクリレート・コモノマーは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、脂環式メタクリレート、非環式アルキル置換メタクリレート、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシ置換脂環式メタクリレート、及び非環式ヒドロキシアルキル置換メタクリレートから成る群から選択され、アルキル基及び脂環部分は、独立に1個から12個までの炭素原子を有する、請求項3に記載のトップコート材料。
【請求項5】
前記1つ又は複数のアクリレート・コモノマーは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、脂環式アクリレート、非環式アルキル置換アクリレート、アクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシ置換脂環式アクリレート、及び非環式ヒドロキシアルキル置換アクリレートから成る群から選択され、アルキル基及び脂環部分は、独立に1個から12個までの炭素原子を有する、請求項3に記載のトップコート材料。
【請求項6】
そこに存在する泡又は小粒子がリソグラフィにより印刷されないように、1ミクロンから10ミクロンまでの厚さを有する、請求項1に記載のトップコート材料。
【請求項7】
前記少なくとも1つの溶媒は、前記フォトレジスト材料と混和しない、請求項1に記載のトップコート材料。
【請求項8】
前記少なくとも1つの溶媒は、炭化水素アルコールである、請求項1に記載のトップコート材料。
【請求項9】
前記少なくとも1つの溶媒は、1−ブタノール、メタノール、エタノール、1−プロパノール、エチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、及び4個から8個までの炭素原子を有するその他の炭化水素アルコールから成る群から選択される、請求項1に記載のトップコート材料。
【請求項10】
前記ポリマーは水に不溶である、請求項1に記載のトップコート材料。
【請求項11】
前記ポリマーは、下にある前記フォトレジスト材料のための適切な露光放射に対して実質的に光学的に透明である、請求項1に記載のトップコート材料。
【請求項12】
前記ポリマーは、1.2から1.8までの範囲の屈折率を有する、請求項1に記載のトップコート材料。
【請求項13】
前記ポリマーは、1.5から1.7までの範囲の屈折率を有する、請求項1に記載のトップコート材料。
【請求項14】
前記ポリマーは、3Kダルトンから500Kダルトンまでの範囲の調節可能な分子量を有する、請求項1に記載のトップコート材料。
【請求項15】
前記ポリマーは、前記フォトレジストの処理温度に等しいか又はそれより高いTgを有する、請求項1に記載のトップコート材料。
【請求項16】
前記ポリマーは、130℃の又はそれより高いTgを有する、請求項1に記載のトップコート材料。
【請求項17】
基板上にパターン付けされた材料層を形成する方法であって、
表面上に材料層を有する基板を準備するステップと、
前記基板上にフォトレジスト組成物を堆積させて前記材料層上にフォトレジスト層を形成するステップと、
前記フォトレジスト層上にトップコート材料を塗布してコーティングされた基板を形成するステップであって、前記トップコート材料は、nを整数とする次の2つの構造、
【化3】

の内の1つを含むヘキサフルオロアルコールのモノマー・ユニットを含有するポリマーを含む、ステップと、
前記コーティングされた基板を画像形成用放射でパターン状に露光するステップと、
前記コーティングされた基板をアルカリ性水溶液現像液と接触させるステップであって、前記トップコート材料及び前記フォトレジスト層の一部分は、前記コーティングされた基板から同時に除去されてパターン付けされたフォトレジスト層を前記材料層上に形成する、ステップと、
前記フォトレジスト層の前記パターンを前記材料層に転写するステップと
を含む方法。
【請求項18】
前記トップコート材料及び前記フォトレジスト層の一部分は、前記レジスト層をアルカリ性水溶液現像液と接触させることによって除去される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記アルカリ性水溶液現像液は、0.263Nのテトラメチルアンモニウムヒドロキシドである、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記材料層は、セラミック、誘電体、金属及び半導体層から成る群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記画像形成用放射は193nm放射である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記画像形成用放射は157nm放射である、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記画像形成用放射は248nm放射である、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記コーティングされた基板を画像形成用放射でパターン状に露光する前に、画像形成媒体を前記コーティングされた基板に塗布するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記画像形成媒体は水である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記フォトレジスト層の前記パターンは、前記パターン付けされたフォトレジスト層で覆われていない前記材料層の一部分を除去することによって、前記材料層に転写される、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
前記材料層の一部分は、前記パターン付けされたフォトレジスト層で覆われていない領域内の前記材料層をエッチングすることによって除去される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記材料層の一部分は、反応性イオン・エッチングを用いて除去される、請求項26に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−532067(P2008−532067A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556415(P2007−556415)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/006225
【国際公開番号】WO2006/091648
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】