説明

改良されたディーゼル排気フィルター

針状セラミック(例えば針状ムライトなど)で形成された、硬質多孔質壁部材を有するタイプの改良されたディーゼル排気フィルター素子であって、多孔質壁部材が第一の側面と第二の側面を有し、多孔質壁部材は貴金属触媒及びNOx吸着剤で被覆されており、その結果、ディーゼルエンジンからの排気ガスが、硬質多孔質壁部材を第一の側面から第二の側面へと通過し、排気ガスが過剰な酸素、NOx及び煤を含むときは、排気ガス中の煤は硬質多孔質壁内に捕捉されて触媒により二酸化炭素に酸化され、NOは触媒によりNO2に酸化され、次いでNO2はNOx吸着剤により吸着され、またその排気ガスが過剰の炭化水素及び一酸化炭素を含むときは、その結果NOx吸着剤が再生され、残りの炭化水素及び一酸化炭素は触媒により窒素と二酸化炭素に転化される。更に硬質多孔質壁の表面上に、沈殿した金属イオンを付着させる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権主張)
本出願は2003年8月29日に出願された米国仮出願第60/499130号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は排気ガスフィルターの分野におけるものであり、更に詳しくは、本発明はディーゼルエンジン用の排気ガスフィルターの分野におけるものである。
【背景技術】
【0003】
触媒コンバータは、ガソリンエンジンを有する自動車やトラックからの窒素酸化物、炭化水素及び一酸化炭素の放出を制御するものとしてよく知られている。排気ガスは、触媒で被覆されたペレット又はハニカムの形態の固体物質を通して流される。それらの汚染性のガス(offensive gasses)は触媒に拡散し、触媒により非汚染性又は低汚染性のガス、例えば水蒸気、窒素及び二酸化炭素に転化される。そのような触媒コンバータは、ディーゼルエンジンを有する自動車やトラックからの放出を制御することにおいては、そのディーゼルエンジンからの排気がガソリンエンジンからの排気よりも遥かに多量の煤及び過剰の酸素を含むため効果的ではない。
【0004】
ディーゼルエンジン用の排気フィルターが開発されてきた。例えば特許文献1(引用によってその全てをここに組み込む)には、針状ムライト(acicular mullite)フィルター媒体を含む再生可能な排気ガスフィルターが開示されている。排気ガスは針状ムライトフィルター媒体を通って煤の粒子が捕獲される。周期的に、捕獲された煤粒子が強熱されてフィルターを再生する。
【0005】
Corningにより報告されたように、窒素酸化物吸着ユニット及びディーゼル酸化ユニットは、ディーゼルエンジンからの煤、窒素酸化物及び炭化水素の放出を制御するため、粒子フィルターユニットの下流に用いられてきた(非特許文献1)。ディーゼル排気フィルターの主体の一般的な取扱については、非特許文献2の教本、特にその8章と9章に記載されている。
【0006】
特許文献2には、貴金属触媒及び窒素酸化物吸着剤の混合物で被覆された硬質多孔質壁フィルター素子を有するディーゼル排気ガスの浄化システムが開示されており、それによって、ディーゼルエンジンからの排気ガスが、通常の稼動条件下でその硬質多孔質壁を通るときに、排気ガス中の煤が硬質多孔質壁で捕獲されて触媒により二酸化炭素に酸化され、同時に窒素酸化物は触媒によりNO2に酸化され、そのNO2は次いで窒素酸化物吸着剤により吸着される。特許文献2のシステムは、過剰な炭化水素と一酸化炭素を含有する排気ガスを、その吸着剤がNOxを放出することによって再生され、そのNOxと残留の炭化水素及び一酸化炭素は触媒により窒素と二酸化炭素に転化されるようにすることによって、再生させる。
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,098,455号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2001/0032459号明細書
【非特許文献1】Johnson,T.,“Developing Trends−Diesel Emission Control Update”,2001年8月7日
【非特許文献2】Heck and Farrauto,“Catalytic Air Pollution Control−Commercial Technology”,2002年、ISBN0−471−43624−0
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2のシステムは、本技術分野における重要な進歩ではあるが、用いられている多孔質壁(コーディエライト)は、所望のものより多孔質性が劣り(背圧を制御するためにはより大きなユニットが必要)、そして特許文献2に従った装置の全体としてのコスト効率は所望のものより小さかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ディーゼルエンジンの排気からの煤、窒素酸化物、一酸化炭素及び炭化水素の放出を制御するための、改良された全体的性能とコスト特性を有する、単一のユニットを提供する。更に詳しくは、硬質多孔質壁部材を有するタイプの改良されたディーゼル排気フィルター素子であって、その多孔質壁部材が第一の側面と第二の側面を有し、その多孔質壁部材は貴金属触媒及びNOx吸着剤で被覆されており、その結果、ディーゼルエンジンからの排気ガスが、その多孔質壁部材を第一の側面から第二の側面へと通過し、排気ガスが過剰な酸素、NOx及び煤を含んでいるときは、排気ガス中の煤は硬質多孔質壁内で捕捉されて触媒により二酸化炭素に酸化され、NOは触媒によりNO2に酸化され、次いでそのNO2はNOx吸着剤により吸着され;また排気ガスが過剰の炭化水素及び一酸化炭素を含むときは、NOx吸着剤が再生され、残りの炭化水素及び一酸化炭素は触媒により窒素と二酸化炭素に転化されるディーゼル排気フィルター素子である。その改良点は、硬質多孔質壁に針状セラミック(例えば針状ムライト)を使用することを含む。
【0010】
関連する態様において、本発明は、硬質多孔質壁部材を有するタイプの改良されたディーゼル排気フィルター素子であって、その多孔質壁部材が第一の側面と第二の側面を有し、その結果、ディーゼルエンジンからの排気ガスが、硬質多孔質壁部材をその第一の側面から第二の側面へと通過するとき、排気ガス中の煤は硬質多孔質壁内で捕捉される。改良点は、硬質多孔質壁が三層を含み、その第一の層は硬質多孔質壁の第一の側面に隣接し、第一の層はディーゼル酸化触媒を含み、第三の層は硬質多孔質壁の第二の側面に隣接し、第三の層は三元触媒(three way catalyst)を含み、第二の層は第一の層と第三の層の間にあり、第二の層が窒素酸化物吸着剤を含み、第二の層が針状セラミックを含むことである。
【0011】
また別の関連する態様において、本発明は、硬質多孔質壁部材を有するタイプの改良されたディーゼル排気フィルター素子であって、多孔質壁部材が第一の側面と第二の側面を有し、その結果、ディーゼルエンジンからの排気ガスが、硬質多孔質壁部材を第一の側面から第二の側面へと通過するとき、排気ガス中の煤は硬質多孔質壁の上又は内部で捕捉される。改良点は、硬質多孔質壁が二層を含み、第一の層はその硬質多孔質壁の第一の側面に隣接し、第一の層はディーゼル酸化触媒を含み、第二の層は第一の層と硬質多孔質壁の第二の側面の間にあり、第二の層が窒素酸化物吸着剤及び三元触媒を含み、第二の層が針状ムライトのような針状セラミックを含むことである。
【0012】
本発明はまた、硬質多孔質壁、例えば針状セラミックなどの表面上に、沈殿金属イオンを付着(deposit)させる方法である。その方法には4つの工程が含まれる。第一の工程は、溶媒中に、金属イオン、ゲル化剤及び沈殿剤を含む液体溶液を生成し、ゲル化剤の濃度は高温で液体溶液をゲル化させるのに十分な濃度であり、沈殿剤は高温では不安定で、沈殿剤が分解して、金属イオンの少なくとも一部を沈殿させ、沈殿金属イオンを生成させる生成物を生成する。第二の工程は、硬質多孔質壁の孔の体積の少なくとも一部を、液体溶液で満たして、充満構造を形成する。第三の工程は、充満構造の温度を上昇させて、液体溶液をゲル化させ、金属イオンを沈殿させる。第四の工程は、充満構造の温度を更に上昇させて、溶媒及びゲル化剤を充満構造から蒸発させ、硬質多孔質壁の表面の少なくとも一部の上に、沈殿金属イオンを残す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1を参照するに、本発明に従って作製されたディーゼル排気フィルター10が示される。針状セラミックを含む硬質多孔質流路壁12が、排出流路16と吸入流路14とを分離する。吸入流路はそれらの下流端部をプラグ18で塞ぐことにより形成され、一方、排出流路はそれらの上流端部をプラグ20で塞ぐことにより形成される。
【0014】
図2を参照するに、ディーゼルフィルターの上流端部を図示する図面は、その側面から観察したものである。吸入流路の上流端部22は流路壁12で囲まれていることがわかる。排出流路の上流端部のプラグ20も流路壁で囲まれている。図2を見ればわかるように、隣接する吸入流路と排出流路は、横列と共に縦列に沿って交互に配置されている。
【0015】
流路の詳細を図示する図3を参照するに、吸入流路14の上流端部22にガスが流入し、壁12を通って流れ、そして排出流路16の下流端部24から出て行くのがわかる。本発明のこの態様において、流路の端部を封止するプラグはどの流路が吸入流路として作用し、どの流路が排出流路として作用するかを決定する。吸入流路はフィルターの上流端部で流路端部を開放状態に形成され、一方、フィルターの下流端部で、同じ流路の端部が封止状態に形成される。この場合、ガスはその流路の上流端部に流入し、その流路の囲周壁を通して流される。同様に、排出流路はフィルターの上流端部で流路端部が封止状態に形成され、一方、フィルターの下流端部でその同じ流路の端部が開放状態に形成される。この場合、囲周壁を通って排出流路に流れ込んだガスはその流路の下流端部の外へ自由に流れ出ることが可能となり、一方、その上流端部の外へ流れることが阻止される。
【0016】
フィルター10の壁12はディーゼル排気ガスの煤粒子を捕集して保持し、同時にガスそれ自体が、過度の抵抗なしに、壁を通って流れることを可能にする。フィルター10は、必然的に、そこを流れる排気ガスの流れに一定量の抵抗を与える。この抵抗は、少しの程度まで、排気ガスがそれに沿って流れる狭い流路の制約された性質にもよるが、そのガスが流される流路壁12の限られた透過性に大きく依存する。フィルター10を通る排気ガスの流れに対する抵抗の結果として、フィルター10の上流端部から下流端部までの圧力降下を生じさせる。ディーゼルエンジンの用途では、この圧力降下は、エンジンの、エンジン効率を低下させ、ひいてはエンジンの停止の原因となる高い背圧が掛かるので望ましくない。この背圧は、本発明では、排気ガスの流れに対して、壁12が十分な透過性を有すると共に、壁12の表面積が十分に大きいものを使用することにより、受忍可能な低いレベルに維持される。
【0017】
壁12は針状セラミック、例えば針状ムライトを含む。多孔質媒体の空孔の平均孔径及び孔径分布は重要である。孔径が大きすぎれば、壁12を通過して捕集されない煤粒子が多くなりすぎる。一方、多孔質媒体の孔径が小さすぎれば、受忍可能な背圧のために必要な壁12の面積(従ってフィルター10の体積及び重量)が相対的に大きくなる。好ましくは、多孔質媒体の多孔度(即ち、開放孔である多孔質媒体の容積%)が比較的大きく、例えば50%より大きく、壁の所定の面積がより効率的に用いられる。平均孔径は約10〜20μmの間であることが好ましい。
【0018】
壁12の厚さもまた考慮されるべき要因である。壁12が厚くなればなるほど(壁12の所定の面積について)、排気ガスがそこにあるいずれかの触媒に曝される時間が長くなる。しかしながら、相対的に厚い壁12はまた相対的に高い背圧をもたらす。好ましくは、壁12の厚さは約1/4mm〜10mmの範囲である。
【0019】
壁12の多孔質媒体用の好ましい材料は、特許文献1に開示されているような、溶融延伸されたムライト結晶の交絡した網状構造体である。そのようなムライトは「針状ムライト(acicular mullite)」と呼ばれる。針状ムライトは、優れた強度、優れた耐熱性及び優れた透過性を有することができるので、本発明における多孔質媒体として大いに好ましい。
【0020】
本発明のフィルターの、特定の幾何学的形状は必須ではないということは理解されるべきである。例えば、本発明のフィルターは、外殻と管の形態であって、その管を多孔質媒体で形成することができる。あるいは(それに限定されるものではないが)、本発明の多孔質媒体は、容器の中に配列され封止された螺旋状に巻かれたシートの形態であることができる。従って、本発明においては、排気ガスがフィルターの硬質多孔質壁部材を通って流れるものである限り、任意の幾何学的形状を使用することができる。
【0021】
図4を参照するに、図4には本発明の一態様40が示されており、そこでは、ディーゼルの酸化、NOxの吸着及び三元触媒の機能が、針状ムライト41上の単一の被膜42を用いて達成される。被膜42は特許文献2に記載された任意の物質であることができる。言い換えれば、被膜42は、ディーゼル酸化触媒(好ましくは、28.3L当たり5〜150gの範囲の白金)、NOx吸着剤(好ましくは、相対的に高レベル、例えば10体積%での酸化バリウム)並びに三元触媒(好ましくは白金0.1〜10g/L、ロジウム0.02〜2g/L及びパラジウム0.1〜10g/Lと共に、その他の成分、例えばアルミナ、活性アルミナ、酸化セリウム及び酸化ジルコニウムなどの混合物、例えば米国特許第4,965,243号及び第4,714,694号の各明細書を参照されたい)として作用するための、貴金属触媒(好ましくは貴金属の混合物)を含む。本発明では、酸化硫黄(SOx)吸着剤も使用することができる。例えば図4に示されるシステムでは、その入口側を、SOx吸着剤を含む層で被覆しておくことができる。
【0022】
図5を参照するに、図5には本発明の大いに好ましい一態様50が示されており、ディーゼルの酸化、NOxの吸着及び三元触媒の機能が別々の層を用いて達成される。中間層は、アルミナ、白金及び酸化バリウムの混合物52で被覆された針状ムライト51を含み、酸化バリウムはNOx吸着剤として作用する。上層は、ディーゼル酸化触媒として作用する白金54(又はその他適宜の貴金属触媒)で含浸及び被覆された(好ましくは、白金濃度はフィルター素子28.3L当たり5〜150gである)、多孔質アルミナ粒子53により構成されている。下層は、貴金属触媒で構成される混合物56(好ましくは白金0.1〜10g/L、ロジウム0.02〜2g/L及びパラジウム0.1〜10g/Lと共に、その他の成分、例えば活性アルミナ、酸化セリウム及び酸化ジルコニウムなどの混合物、例えば米国特許第4,965,243号明細書を参照されたい)で含浸及び被覆された、多孔質アルミナ粒子55により構成されている。図5に示される態様は、稼動効率及び高価な貴金属の経済的利用の両方で大いに効果的である。
【0023】
図6を参照するに、図6には本発明の一態様60が示されており、そこでは、NOxの吸着及び三元触媒の機能が、針状ムライト61上の混合被膜62を用いて達成され、同時にディーゼル酸化の機能は多孔質アルミナ粒子63中に含浸され、且つその上に被覆された貴金属触媒の被膜64を用いて達成される。被膜62には、NOx吸着剤(好ましくはアルミナと、比較的高レベル、例えば10体積%の酸化バリウムとの混合物)、及び三元触媒(好ましくは白金0.1〜10g/L、ロジウム0.02〜2g/L及びパラジウム0.1〜10g/Lと共に、その他の成分、例えば活性アルミナ、酸化セリウム及び酸化ジルコニウムなどの混合物、例えば米国特許第4,965,243号明細書を参照されたい)が含まれる。被膜64は貴金属触媒(好ましくはフィルター素子28.3L当たり濃度5〜150gを有する白金)で構成される。図6に示される態様もまた、稼動効率及び高価な貴金属の経済的利用の両方で大いに効果的である。
【0024】
図7を参照するに、図7には本発明の別の大いに好ましい一態様70が示されており、ディーゼルの酸化、NOxの吸着及び三元触媒の機能が別々の層を用いて達成される。中間層はアルミナ、白金及び酸化バリウムの混合物73で被覆された針状ムライト71により構成されており、酸化バリウムはNOx吸着剤として作用する。上層は、ディーゼル酸化触媒として作用する白金72(又はその他適宜の貴金属触媒)で被覆された、針状ムライト71により構成されている(好ましくは、白金濃度は上層28.3L当たり5〜150gである)。下層は、貴金属触媒で構成される混合物74(好ましくは白金0.1〜10g/L、ロジウム0.02〜2g/L及びパラジウム0.1〜10g/Lと共に、その他の成分、例えば活性アルミナ、酸化セリウム及び酸化ジルコニウムなどの混合物、例えば米国特許第4,965,243号明細書を参照されたい)で被覆された、針状ムライト71により構成されている。図7に示される態様は、稼動効率及び高価な貴金属の経済的利用の両方で大いに効果的である。
【実施例】
【0025】
実施例1
針状ムライトを含む硬質多孔質壁部材を有する、寸法が2.5cm×2.5cm×7.7cm(長さ)のディーゼル排気フィルターを、特許文献1の教示に従って作製する。8重量%“Methocel A15LV”溶液(The Dow Chemical Company,Midland,MI,USA)3.0g及び26.7重量%コロイダルアルミナ懸濁液(“Dispal 18N4−80”、Sasol North America,Inc.,Houston,TX,USA)30.0gを含む液体溶液を製造する。その溶液の13.2gをフィルターに塗布し、そのディーゼル排気フィルターの多孔質壁をその液体で満たす。その溶液がそのディーゼル排気フィルター中に均一に分配された後、フィルターはオーブン中において115℃で乾燥する。ディーゼル排気フィルターは、次いでオーブン中において500℃で1時間焼成する。焼成に続いて、焼成フィルターは硝酸白金溶液(Heraeus Metal Processing,Inc.,Santa Fe Springs,CA,USA)中に浸漬することにより、白金0.091gを焼成フィルターに適用する。115℃で乾燥後、フィルターは、水10.0g及び硝酸バリウム(Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,WI,USA)1.56gの80℃の溶液に含浸し、次いで115℃で乾燥する。乾燥フィルターは600℃で1時間焼成して、窒素酸化物を吸着するディーゼル排気フィルターを形成する。ディーゼル排気フィルターの吸入流路は、次いで、フィルターの一端、通路(way)の90%を、湿式含浸により製造された白金1重量%坦持γ−アルミナ(“Catalox SBa−150,Sasol North America,Inc.,Houston,TX,USA)20.0g、“Dispal 18N4−80”(Sasol North America,Inc.,Houston,TX,USA)2.0g、8重量%“Methocel A15LV”(The Dow Chemical Company,Midland,MI,USA)2.0g及び水77gのウォッシュコートの懸濁液中に含浸することによって被覆して、ディーゼル排気フィルターの多孔質壁の吸入側のみをその粒子で被覆し、ディーゼル酸化触媒層を形成する。このフィルターはオーブン中115℃で乾燥する。ディーゼル排気フィルターの排出流路は、同様に、その通路の90%のフィルターの反対側の端を、白金1.2%坦持γ−アルミナ(“Catalox SBa−150,Sasol North America,Houston,TX,USA)13.33g、ロジウム0.24重量%坦持CeO2:ZrO22:1共沈殿物6.67g、“Dispal 18N−4”(Sasol North America,Inc.,Houston,TX,USA)2.0g、8重量%“Methocel A15LV”(The Dow Chemical Company,Midland,MI,USA)2.0g及び水77gから製造されたウォッシュコートの懸濁液中に含浸することによって被覆して、ディーゼル排気フィルターの多孔質壁の排出側がその粒子で被覆し、三元触媒層を形成する。フィルターが乾燥した後、ディーゼル排気フィルターはオーブン中600℃で1時間焼成して、図5に示すような、多孔質壁部材を有する本発明のディーゼル排気フィルターの一態様を作製した。
【0026】
実施例2
針状ムライトを含む硬質多孔質壁部材を有する、寸法が2.5cm×2.5cm×7.7cm(長さ)のディーゼル排気フィルターを、特許文献1の教示に従って作製する。8重量%“Methocel A15LV”溶液(The Dow Chemical Company,Midland,MI,USA)3.0g及び26.7重量%コロイダルアルミナ懸濁液(“Dispal 18N4−80”、Sasol North America,Inc.,Houston,TX,USA)30.0gを含む液体溶液を製造する。その溶液の13.2gを、フィルターに塗布し、そのディーゼル排気フィルターの多孔質壁をその液体で満たす。この溶液をディーゼル排気フィルター中に均一に分配させた後、フィルターはオーブン中115℃で乾燥する。このディーゼル排気フィルターは、次いでオーブン中500℃で1時間焼成する。焼成に続いて、その焼成フィルターを硝酸白金溶液(Heraeus Metal Processing,Inc.,Santa Fe Springs,CA,USA)中に含浸することにより、白金0.091gを焼成フィルターに適用する。115℃で乾燥後、フィルターは、水10.0g及び硝酸バリウム(Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,WI,USA)1.56gの80℃の溶液に含浸し、次いで115℃で乾燥する。乾燥フィルターは600℃で1時間焼成して、窒素酸化物を吸着するディーゼル排気フィルターを形成させる。このディーゼル排気フィルターの吸入流路は、フィルターの一端、通路(way)の80%を、湿式浸漬により製造された白金1重量%坦持γ−アルミナ(“Catalox SBa−150,Sasol North America,Inc.,Houston,TX,USA)20.0g、“Dispal 18N4−80”(Sasol North America,Inc.,Houston,TX,USA)2.0g、8重量%“Methocel A15LV”(The Dow Chemical Company,Midland,MI,USA)2.0g及び水77gのウォッシュコートの懸濁液中に含浸することによって被覆して、ディーゼル排気フィルターの多孔質壁の吸入側のみを粒子で被覆し、ディーゼル酸化触媒層を形成する。このフィルターはオーブン中115℃で乾燥し、次いで600℃で焼成して、図6に示すような、多孔質壁部材を有する本発明の1つのディーゼル排気フィルターの態様を作製した。
【0027】
実施例3
針状ムライトを含む硬質多孔質壁部材を有する2.5Lのディーゼル排気フィルターが、特許文献1の教示に従って作製する。水650g中に、“Methocel A15LV”(The Dow Chemical Company,Midland,MI,USA)10g、コロイダルアルミナ粒子(“Dispal 18N4−80”,Sasol North America,Inc.,Houston, TX,USA)160g、硝酸白金(Heraeus Metal Processing,Inc.,Santa Fe Springs,CA,USA)10g、硝酸ロジウム(Heraeus Metal Processing,Inc.,Santa Fe Springs,CA,USA)1g、及び尿素(Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,WI,USA)50gを含む液体溶液を製造する。ディーゼル排気フィルターをその液体溶液中に浸漬し、そのディーゼル排気フィルターの多孔質壁をその液体で満たす。このディーゼル排気フィルターは、次いでプラスチック製袋の中に封入し、水浴中95℃で1日加熱して、メトセルがゲル化し、尿素がアンモニアと二酸化炭素に分解し、それによりアルミナ、ロジウムイオン及び白金イオンが針状ムライト上に沈積する。次いでディーゼル排気フィルターはプラスチック製袋から取り出し、オーブン中105℃で1日加熱して水を除去する。次にそのディーゼル排気フィルターは、オーブン中500℃で1時間加熱してその部材を焼成する。焼成されたフィルターは、次いで水500g中酢酸バリウム100gの溶液に浸漬し、115℃でオーブン乾燥し、次に600℃で1時間焼成して、窒素酸化物吸着剤と三元触媒との組合せ層を形成する。ディーゼル排気フィルターの吸入流路は、次いで、白金を坦持した平均粒径40μmのアルミナ粒子(platinum on forty micrometer average diameter alumina particle)のウォッシュコートの懸濁液で濯ぎ(フィルター28.3L当たり白金50g)、ディーゼル排気フィルターの吸入流路側の多孔質壁をそのアルミナ粒子で被覆して、図6に示すようなシステムを形成する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明に従って作製されたディーゼルフィルター/触媒コンバータの側面の部分断面図を示し、流路及び流路端のプラグと共に流路を隔てる壁の断面が見える。
【図2】図2は図1のディーゼルフィルター/触媒コンバータの端面図を示し、交互にプラグで塞がれ又は塞がれていない流路の端部を見せている。
【図3】図3はその流路をより明瞭に図示し、またディーゼル排気ガスの流れ方向を図示する。
【図4】図4は白金、ロジウム、パラジウム及び酸化バリウムを含む混合物で被覆された針状ムライトを含む、硬質多孔質壁構造を図示する。
【図5】図5はアルミナ、白金及び酸化バリウムで被覆された針状ムライトを含む硬質多孔質壁構造を図示し、アルミナ粒子の上層には白金が含浸され、アルミナ粒子の下層には白金とロジウムが含浸されている。
【図6】図6は酸化バリウム、白金及びロジウムを含む混合物で被覆された針状ムライトを含む、硬質多孔質壁構造を図示し、アルミナ粒子の上層には白金が含浸されている。
【図7】図7は中間層はアルミナ及び酸化バリウムで被覆され、上層は白金で被覆され、且つ下層は白金、ロジウム及びパラジウムで被覆された針状ムライトを含む硬質多孔質壁構造を図示したものである。
【符号の説明】
【0029】
10 ディーゼル排気フィルター
12 硬質多孔質流路壁
14 吸入流路
16 排出流路
18 プラグ
20 プラグ
22 吸入流路の上流端部
24 排出流路の下流端部
40 本発明の一態様
41 針状ムライト
42 単一の被膜
50 本発明の好ましい態様
51 針状ムライト
52 アルミナ、白金及び酸化バリウムの混合物
53 多孔質アルミナ粒子
54 白金
55 多孔質アルミナ粒子
56 貴金属触媒を含む混合物
60 本発明の一態様
61 針状ムライト
62 混合被膜
63 多孔質アルミナ粒子
64 貴金属触媒の被膜
70 本発明の別の好ましい一態様
71 針状ムライト
72 白金
73 アルミナ、白金及び酸化バリウムの混合物
74 貴金属触媒を含む混合物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質多孔質壁部材を有するタイプの改良されたディーゼル排気フィルター素子であって、多孔質壁部材が第一の側面と第二の側面とを有し、多孔質壁部材が貴金属触媒及びNOx吸着剤で被覆されており、その結果、ディーゼルエンジンからの排気ガスが、硬質多孔質壁部材を第一の側面から第二の側面へ通過し、排気ガスが過剰な酸素、NOx及び煤を含むときは、排気ガス中の煤を、その硬質多孔質壁内に捕捉して触媒により二酸化炭素に酸化し、NOは触媒によりNO2に酸化し、次いでNO2はNOx吸着剤で吸着し、そして排気ガスが過剰の炭化水素及び一酸化炭素を含むときは、NOx吸着剤が再生され、残りの炭化水素及び一酸化炭素は触媒により窒素と二酸化炭素に転化される、改良ディーゼル排気フィルター素子において、改良点が硬質多孔質壁が針状セラミックを含むことにある改良されたディーゼル排気フィルター素子。
【請求項2】
NOx吸着剤がバリウム塩を含む請求項1に記載の改良されたディーゼル排気フィルター素子。
【請求項3】
貴金属触媒が白金、ロジウム及びパラジウムの少なくとも1種を含む請求項2に記載の改良されたディーゼル排気フィルター素子。
【請求項4】
針状セラミックが針状ムライトを含む請求項1に記載の改良されたディーゼル排気フィルター素子。
【請求項5】
針状セラミックが針状ムライトを含む請求項3に記載の改良されたディーゼル排気フィルター素子。
【請求項6】
硬質多孔質壁部材を有するタイプの改良されたディーゼル排気フィルター素子であって、多孔質壁部材が第一の側面と第二の側面とを有し、その結果、ディーゼルエンジンからの排気ガスが、その硬質多孔質壁部材を第一の側面から第二の側面へ通過するとき、排気ガス中の煤をその硬質多孔質壁内に捕捉するディーゼル排気フィルター素子において、改良点が、硬質多孔質壁が三層を含み、第一の層が多孔質壁の第一の側面に隣接し、第一の層はディーゼル酸化触媒を含み、第三の層は硬質多孔質壁の第二の側面に隣接し、第三の層は三元触媒を含み、第二の層は第一の層と第三の層の間にあり、第二の層が窒素酸化物吸着剤を含み、第二の層が針状セラミックを含むことにある改良されたディーゼル排気フィルター素子。
【請求項7】
針状セラミックが針状ムライトであり、ディーゼル酸化触媒が白金を含み、窒素酸化物吸着剤がバリウム塩を含み、且つ三元触媒が白金、ロジウム及びパラジウムの1種又はそれ以上を含む請求項6に記載の改良されたディーゼル排気フィルター素子。
【請求項8】
硬質多孔質壁部材を有するタイプの改良されたディーゼル排気フィルター素子であって、多孔質壁部材が第一の側面と第二の側面を有し、その結果、ディーゼルエンジンからの排気ガスが、多孔質壁部材の第一の側面から第二の側面へと通過するとき、排気ガス中の煤を硬質多孔質壁の上及びその内部に捕捉するディーゼル排気フィルター素子において、その改良点が硬質多孔質壁が二層を含み、その第一の層が多孔質壁の第一の側面に隣接し、第一の層がディーゼル酸化触媒を含み、第二の層が第一の層と硬質多孔質壁の第二の側面の間にあり、第二の層が窒素酸化物吸着剤及び三元触媒を含み、第二の層が針状セラミックを含むことにある改良されたディーゼル排気フィルター素子。
【請求項9】
第一の層が白金を含み、そして第二の層がバリウム塩と白金、ロジウム又はパラジウムの少なくとも1種とを含み、そして針状セラミックが針状ムライトである請求項8に記載の改良されたディーゼル排気フィルター素子。
【請求項10】
硬質多孔質壁の表面上に、沈殿した金属イオンを付着させる方法であって、(a)溶媒中に、金属イオン、ゲル化剤及び沈殿剤の液体溶液を生成せしめ、ゲル化剤の濃度は高温でその液体溶液をゲル化させるのに十分な濃度であり、沈殿剤は高温では不安定で、沈殿剤が分解して、金属イオンの少なくとも一部を沈殿させ、沈殿金属イオンを生成させる生成物を生成せしめ;(b)硬質多孔質壁の孔の体積の少なくとも一部を、溶媒中の金属イオン、ゲル化剤及び沈殿剤の液体溶液で満たして、充満構造を形成し;(c)充満構造の温度を上昇させて、溶媒中の金属イオン、ゲル化剤及び沈殿剤の液体溶液をゲル化させかつ金属イオンを沈殿させ;(d)充満構造の温度を更に上昇させて、溶媒及びゲル化剤を充満構造から蒸発させ、硬質多孔質壁の表面の少なくとも一部の上に、沈殿金属イオンを残す方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−503983(P2007−503983A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524875(P2006−524875)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/027852
【国際公開番号】WO2005/021138
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】