説明

改質ヒュームドシリカを含む中間層

本発明は、多層グレージングパネルに使用されるポリマー中間層を含む。本発明の中間層は、熱可塑性ポリマー、可塑剤、および疎水特性を付与するために改質されたヒュームドシリカを含む。このような成分を取り入れた中間層は、改善された引張弾性率、耐湿気性、クリープ性能、防食効果、ガラス接着性を有し、これに限らないが音響用途を含む様々な用途に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層グレージングパネル中間層の分野に存在し、より詳しくは、本発明は、改質されたポリマー組成物を含む多層グレージングパネル中間層の分野に存在する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(ビニルブチラール)(PVB)は、安全ガラスまたはポリマー積層板などの光透過積層板における中間層として使用され得るポリマーシートの製造において一般に使用される。安全ガラスは、2枚のガラスの間に配置された可塑化ポリ(ビニルブチラール)シートを含む透明積層板のことをしばしば指す。安全ガラスは、建築および自動車の開口部に透明な仕切りを設けるためにしばしば使用される。その主たる機能は、開口部を貫通させることまたはガラスの破片を分散させることなく、物体の衝撃により引き起こされるものなどのエネルギーを吸収し、したがって、閉じ込められた領域内の物体または人に対する破損または外傷を最小にすることである。また、安全ガラスを使用して、音響雑音を減衰させること、UVおよび/またはIR光透過を低減させること、および/または窓開口部の外観および美的魅力を増強させることなどの、別の有益な効果をもたらすことができる。
【0003】
雑音の減衰が望まれる用途で特に有用な中間層は、比較的低いガラス転移温度を有するように、しばしば考案される。しかし、低いガラス転移温度を達成するために通常使用される組成が変化するために、中間層は望ましいものより低い引張弾性率をしばしば有し、いくつかの用途における使用では中間層を不適切なまたは望ましくないものにし得る。
【0004】
この問題を克服するために用いられてきた様々な技法の中には、低いガラス転移温度を有する中間層の成分の1種または複数種の改質が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
当技術分野において必要とされるものは、雑音抑制が望ましい多層グレージング用途およびこの他の用途において音響減衰品質を維持しながら、中間層の取り扱いを容易にするように考案された中間層である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、多層グレージングパネルに使用されるポリマー中間層を含む。本発明の中間層は、熱可塑性ポリマー、可塑剤、および疎水特性を付与するために改質されたヒュームドシリカを含む。このような成分を取り入れた中間層は、改善された引張弾性率、耐湿気性、クリープ性能、防食効果、ガラス接着性を有し、これに限らないが音響用途を含む様々な用途に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、ヒュームドシリカ剤と、中間層およびこれらの中間層を含む多層グレージングパネルにおけるヒュームドシリカ剤の使用とを含む。本明細書においては、「多層グレージング中間層」は、2層以上を有するグレージング、例えば、中間層が間に配置された2枚のガラス板において使用され得る中間層を意味する。中間層は、単一ポリマー層または組み合わされた多層からなり得る。グレージングパネルは、例えば、自動車の風防ガラスおよび建築用途において使用され得る。
【0008】
本明細書において開示されるように、改質ヒュームドシリカは、多層グレージングパネル用途で使用するために、中間層として、または中間層内部の層として、有用なポリマーシート内に取り入れられる。以下に詳細に説明するように、本発明のポリマーシートは、適切ないずれの熱可塑性ポリマーでも含むことができ、および好ましい実施形態においては、ポリマーシートはポリ(ビニルブチラール)を含む。
【0009】
本発明の様々な実施形態において、改質ヒュームドシリカは、中間層に取り込まれているポリマーシート内に配置されている。これらの実施形態では、中間層は、単一ポリマーシートのみを含むことができ、またはポリマーシートを含む多層中間層であり得る。多層中間層が使用される実施形態は、当技術分野において周知のものを含み、例えば、これに限らないが、一緒に積層されて単一中間層を形成する2つ以上のポリマーシートを有する中間層と、以下で詳細に説明されることになる、1つまたは複数のポリマーフィルムと一緒に積層された、1つまたは複数のポリマーシートを有する中間層とを含む。これらの実施形態のいずれにおいても、改質ヒュームドシリカは、ポリマーシート層のいずれか1つまたは複数の層内に配置することができ、様々な層は、同一であることも異なることもできる。
【0010】
例示的な多層中間層構造体は、以下のものを含む:
(ポリマーシート)(ポリマーシート/ポリマーフィルム/ポリマーシート)
ここで、nは1から10であり、様々な実施形態においては、5未満であり、pは1から5であり、様々な実施形態においては、3未満である。
【0011】
本発明の中間層は、多層グレージングパネル中に取り入れることができ、様々な実施形態においては、ガラスの2層の間に取り入れられる。このような構造体の用途には、特に、自動車の風防ガラスおよび建築用のガラスが含まれる。
【0012】
本発明の様々な実施形態において、改質ヒュームドシリカを含む中間層がバイレイヤにおいて使用される。本明細書においては、バイレイヤは、上に中間層が配置された剛性基板(例えば、ガラスまたはアクリル樹脂など)を有する多層構造体である。代表的なバイレイヤ構造体は:(ガラス)//(ポリマーシート)//(ポリマーフィルム)である。バイレイヤ構造体は、例えばこれに限らないが:
(ガラス)//((ポリマーシート)//(ポリマーフィルム))
(ガラス)//(ポリマーシート)//(ポリマーフィルム)
を含み、ここで、hは1から10であり、様々な実施形態においては、3未満であり、gは1から5であり、様々な実施形態においては、3未満である。
【0013】
さらなる実施形態では、今述べたような中間層は、多層グレージングパネルの片面に追加されて破片保護の役割を果たすことができ、例えばこれに限らないが:
(多層グレージングパネル)//((ポリマーシート)//(ポリマーシート))
(多層グレージングパネル)//(ポリマーシート)//(ポリマーフィルム)
などであり、ここで、hは1から10であり、様々な実施形態においては、3未満であり、gは1から5であり、様々な実施形態においては、3未満である。
【0014】
従来の、非改質ヒュームドシリカは、水素/酸素炎におけるクロロシランの高温加水分解を使用して、通常形成される。その結果得られた粒子は、ほぼ球形であり、ほとんど純粋のSiOを含み、一緒に焼結して分岐凝集体を形成し、冷却したのち、機械的に絡み合わせられて集塊を形成する。このようにして製造されたヒュームドシリカは、粒子の表面上に存在するヒドロキシル基を通常有することになり、ヒュームドシリカに親水性を付与する。
【0015】
本発明のヒュームドシリカは、凝集粒子に疎水性を付与するために、従来のヒュームドシリカから改質される。改質は、ヒュームドシリカの表面上のヒドロキシル基を適切なアルキル化合物で置換するために、適切ないずれの手段または化学反応でも使用することを含み得る。本発明の様々な実施形態において、ジメチルジクロロシランおよびヘキサメチルジシラザン、またはシリコーン溶液などのシランは、ヒュームドシリカと反応させられて、凝集粒子の表面でヒドロキシル基と置換されたメチル基を有する、改質ヒュームドシリカを形成する。その結果得られたメチル化ヒュームドシリカは疎水性を有し、ポリマーシート内で使用される場合、ポリマーシートのヘーズまたは黄色度を許容できないほど増大させることなく、引張弾性率を改善する。別の実施形態においては、別のアルキル基がヒドロキシル基と置換され得る。アルキル基の例には、これに限らないが、メチル、エチル、プロピル、ベンジル、およびペンチルが含まれる。
【0016】
改質ヒュームドシリカの全炭素含有量は、重量比基準で、少なくとも0.2、少なくとも0.5または少なくとも0.8または0.2−1.0、または0.5−1.0であり得る。平均凝集体長さは、例えば、0.1−1.0ミクロン、0.1−0.5ミクロン、または0.15−0.35ミクロンであり得る。改質ヒュームドシリカは、例えば、CAB−O−SIL TS−610として、キャボット(Cabot)コーポレーション(ベレリカ、マサチューセッツ州)から市販されている。
【0017】
本発明の改質ヒュームドシリカは、必要に応じて、ポリマー溶融体に添加され、ヒュームドシリカを含むポリマーシートを製造することができる。様々な実施形態において、本発明の改質ヒュームドシリカは、樹脂100部当たり少なくとも0.1から10部(「樹脂100当たりの部」またはphr)、0.1から15phr、または5から10phrでポリマー溶融体中に取り入れられる。必要に応じて、別の量を用いて所望の結果を実現することができる。
【0018】
本発明の様々な実施形態において、改質ヒュームドシリカは、上で与えられた濃度で取り入れられ、可塑剤は、ヒュームドシリカに与えられた範囲とのいずれの組合せにおいても、15−75または20から60phrでポリマー溶融体中に取り入れられる。
【0019】
様々な実施形態において、前述の改質ヒュームドシリカを含む本発明のポリマーシートは、40℃未満、35℃未満または30℃未満のガラス転移温度を有することができる。
【0020】
本発明のさらなる実施形態において、改質ヒュームドシリカを有するポリマーシートは、シリカとポリ(ビニルブチラール)との間にできた網目構造のために、高温におけるクリープ性能を高めている。さらに、本発明のポリマーシートを用いて作製された積層板は、改質ヒュームドシリカの疎水性のために、耐湿気性を改善している。さらに、本発明の改質ヒュームドシリカを取り入れたポリマーシートは、ガラスに対する接着性を改善している。
【0021】
様々な実施形態において、前述の改質ヒュームドシリカを含む本発明のポリマーシートは、少なくとも8メガパスカル、10メガパスカル、または12メガパスカルの引張弾性率を有することができ、これらの引張弾性率は、ガラス転移温度に関して上で与えられた値のいずれかと組み合わされて、様々な実施形態を形成することができる。また、本発明のポリマーシートは、1%を下回るヘーズと、改質ヒュームドシリカを欠いている同等のシートと比較して変化していない黄色度値とを有することができる。
【0022】
ポリマーフィルム
本明細書においては、「ポリマーフィルム」は、性能増強層として機能する、比較的薄い、剛性ポリマー層を意味する。本明細書においては、ポリマーフィルムは、ポリマーフィルムがこれ自体で、必要な耐貫通性およびガラス保持特性を多層グレージング構造体に付与するのではなく、どちらかと言えば、赤外線吸収特性などの性能改善をもたらすという点で、ポリマーシートとは異なる。ポリ(エチレンテレフタレート)は、ポリマーフィルムとして最も一般的に使用される。
【0023】
様々な実施形態において、ポリマーフィルム層は、0.013mmから0.20mm、好ましくは0.025mmから0.1mmまたは0.04mmから0.06mmの厚さを有する。このポリマーフィルム層は、場合により表面処理または被覆されて、接着性または赤外線反射などの1つまたは複数の特性を改善することができる。これらの機能的遂行層には、例えば、太陽光に曝された場合、太陽赤外線を反射し、可視光を透過させる多層スタックが含まれる。この多層スタックは、当技術分野において知られており(例えば、WO88/01230および米国特許第4799745号を参照されたい。)、例えば、1つまたは複数のオングストローム厚さの金属層および1つまたは複数(例えば、2つ)の順番に堆積された、光学的に協力する誘電体層を含むことができる。また周知のように、(例えば、米国特許第4017661号および第4786783号を参照されたい。)、金属層を、随伴ガラス層のいずれかを除霜または防曇するために、場合により電気的に抵抗加熱することができる。
【0024】
本発明において使用することができ、米国特許第6797396号に記載されている、ポリマーフィルムのさらなるタイプは、金属層によって引き起こされ得る干渉を生じさせることなく、赤外線を反射する機能を果たす多数の非金属層を構成する。
【0025】
このポリマーフィルム層は、いくつかの実施形態においては、好ましくは光学的に透明であり(すなわち、層の一方の側に隣接する物体を、他方の側から層を通してみる特定の観察者の目が、心地よく見ることができる。)、通常、隣接ポリマーシートの引張弾性率よりも大きい、いくつかの実施形態においては著しく大きい、引張弾性率を組成に関係なく有する。様々な実施形態において、このポリマーフィルム層は、熱可塑性材料を含む。適切な特性を有する熱可塑性材料の中には、ナイロン、ポリウレタン、アクリル、ポリカーボネート、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、酢酸セルロースおよび三酢酸セルロース、塩化ビニルポリマーおよびコポリマーなどがある。様々な実施形態において、このポリマーフィルム層は、顕著な特性を有する再延伸熱可塑性フィルムなどの、ポリエステル(例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(エチレンテレフタレート)グリコール(PETG))を含む材料を含む。様々な実施形態において、ポリ(エチレンフタレート)が使用され、様々な実施形態において、このポリエチレンテレフタレートは、2軸方向に延伸されて強度を向上させ、熱的に安定化されて、高温に曝された際に低収縮特性をもたらす(例えば、150℃で30分保持した後の収縮は、両方向とも2%未満)。
【0026】
本発明において使用することができるポリ(エチレンテレフタレート)フィルムの、様々な被覆および表面処理技法は、欧州出願公開第0157030号に開示されている。本発明のポリマーフィルムもまた、当技術分野において知られている、ハードコートおよび/または防曇層を含むことができる。
【0027】
ポリマーシート
以下のセクションにおいては、本明細書の別の場所に記載されている改質ヒュームドシリカを含む、本発明のポリマーシートを形成するために使用され得る、ポリ(ビニルブチラール)などの、様々な材料について説明する。
【0028】
本明細書においては、「ポリマーシート」は、積層グレージングパネルに十分な耐貫通性およびガラス保持特性を付与する中間層として使用するのに、単独でまたは2層以上の層のスタックの状態で適している薄層に、適切ないずれかの方法によって形成される、いずれの熱可塑性ポリマー組成物をも意味する。可塑化されたポリ(ビニルブチラール)は、ポリマーシートを形成するために最も一般的に使用される。
【0029】
本明細書においては、「樹脂」は、酸触媒作用および引き続き行われるポリマー前駆体の中和に由来する混合物から取り出されるポリマー(例えば、ポリ(ビニルブチラール))成分のことを言う。樹脂は、ポリマーに加えてアセテート、塩およびアルコールなどの他の成分を一般に含有するものである。本明細書においては、「溶融体」は、可塑剤および場合によりこの他の添加剤を有する樹脂の、溶融された混合物のことを言う。
【0030】
本発明のポリマーシートは、適切ないずれのポリマーをも含むことができ、上に例示されたような好ましい実施形態においては、ポリマーシートはポリ(ビニルブチラール)を含む。ポリ(ビニルブチラール)をポリマーシートのポリマー成分として含む、本明細書において与えられた本発明の実施形態のいずれにおいても、ポリマー成分がポリ(ビニルブチラール)からなるまたは実質的になる別の実施形態が含まれる。これらの実施形態において、本明細書において開示された、可塑剤を含む添加剤の変形形態のいずれも、ポリ(ビニルブチラール)からなるまたは実質的になるポリマーを有するポリマーシートに使用することができる。
【0031】
一実施形態において、ポリマーシートは、部分的にアセタール化されたポリ(ビニルアルコール)を基材とするポリマーを含む。別の実施形態において、ポリマーシートは、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(エチレン−コ−ビニルアセテート)、ポリ(エチレン−コ−エチルアクリレート)、部分的に中和されたエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマー(デュポンからのSurlyn(登録商標)など)のイオノマー、ポリエチレン、ポリエチレンコポリマー、ポリウレタン、またはポリ(シクロヘキサンジメチレンテレフタレート−コ−エチレンテレフタレート)コポリエステルからなる群から選択されたポリマーを含む。様々な実施形態において、ポリマーシートは、ポリ(ビニルブチラール)、ポリウレタン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(エチレンビニルアセテート)、またはこれらの組合せを含む。さらなる実施形態において、ポリマーシートは、ポリ(ビニルブチラール)および1種または複数の別のポリマーを含む。適切なガラス転移温度を有する他のポリマーを使用することもできる。好ましい範囲、数値および/または方法が、ポリ(ビニルブチラール)について、(例えば、これに限らないが、可塑剤、成分の百分率、厚さおよび特性増強添加剤について)、具体的に与えられる本明細書におけるセクションのいずれにおいても、これらの範囲は、また、ポリマーシートにおける有用な成分として本明細書において開示された他のポリマーおよびポリマーブレンドに対しても、該当する場合は適用される。
【0032】
ポリ(ビニルブチラール)を含む実施形態に関して、ポリ(ビニルブチラール)は、当業者に知られている、周知のアセタール化法によって製造することができる(例えば、米国特許第2282057号および第2282026号を参照されたい。)。一実施形態において、B.E.Wade(2003)による、Encyclopedia of Polymer Science & Technology、第3版、第8巻、381−399頁の、Vinyl Acetal Polymersに記載の溶媒法を使用することができる。別の実施形態において、前記文献に記載の水性法を使用することができる。ポリ(ビニルブチラール)は、例えば、Butvar(商標)樹脂としてソルチア社(Solutia Inc.、セントルイス、ミズリー州)から様々な形態で市販されている。
【0033】
様々な実施形態において、ポリ(ビニルブチラール)を含むポリマーシート樹脂は、ポリ(ビニルアルコール)として計算された、10から35重量%(wt.%)のヒドロキシル基、ポリ(ビニルアルコール)として計算された13から30wt.%のヒドロキシル基、またはポリ(ビニルアルコール)として計算された15から22wt.%のヒドロキシル基を含む。また、ポリマーシート樹脂は、ポリ酢酸ビニルとして計算された、15wt.%未満の残留エステル基、13wt.%、11wt.%、9wt.%、7wt.%、5wt.%、または3wt.%未満の残留エステル基を含むことができ、残部は、アセタール、好ましくはブチルアルデヒドアセタールであるが、場合により少量の他のアセタール基、例えば、2−エチルヘキサナル基を含む(例えば、米国特許第5137954号を参照されたい。)。
【0034】
様々な実施形態において、ポリマーシートは、1モル当たり少なくとも30000、40000、50000、55000、60000、65000、70000、120000、250000または少なくとも350000グラム(g/molまたはダルトン)の分子量を有するポリ(ビニルブチラール)を含む。ジアルデヒドまたはトリアルデヒドの少量をアセタール化ステップの間に添加して、分子量を少なくとも350000g/molに増加させることができる(例えば、米国特許第4902464号、第4874814号、第4814529号および第4654179号を参照されたい。)。本明細書においては、用語「分子量」は、重量平均分子量を意味する。
【0035】
本発明のポリマーシートにおいて、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、およびマグネシウム塩を含む様々な接着調節剤を使用することができる。本発明の実施形態で使用することのできるマグネシウム塩には、これに限らないが、サリチル酸マグネシウム、ニコチン酸マグネシウム、マグネシウムジ−(2−アミノベンゾエート)、マグネシウムジ−(3−ヒドロキシ−2−ナフトエート)、およびマグネシウムビス(2−エチルブチレート)(ケミカルアブストラクト番号79992−76−0)などの、米国特許第5728472号に開示されているものが含まれる。本発明の様々な実施形態において、マグネシウム塩は、マグネシウムビス(2−エチルブチレート)である。
【0036】
他の添加剤をポリマーシートに取り入れて、最終製品におけるポリマーシートの性能を増強することができる。このような添加剤には、これに限らないが、当技術分野において知られている、染料、顔料、安定剤(例えば、紫外線安定剤)、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、追加のIR吸収剤、難燃剤、前述の添加剤の組合せなどが含まれる。
【0037】
本発明のポリマーシートの様々な実施形態において、ポリマーシートは、20から60、25から60、20から80、10から70、または10から100部の可塑剤phrを含むことができる。勿論、特定の用途に適した、他の量を使用することができる。いくつかの実施形態において、可塑剤は、20個未満、15個未満、12個未満、または10個未満の炭素原子を有する炭化水素セグメントを有する。可塑剤の量を調節して、ポリ(ビニルブチラール)シートのガラス転移温度(T)に変化をもたらすことができる。一般に、可塑剤をより大量添加するとTを低下させる。
【0038】
適切ないずれかの可塑剤を本発明のポリマー樹脂に添加して、ポリマーシートを形成することができる。本発明のポリマーシートにおいて使用される可塑剤は、特に、多塩基酸または多価アルコールのエステルを含むことができる。適切な可塑剤には、例えば、トリエチレングリコールジ−(2−エチルブチレート)、トリエチレングリコールジ−(2−エチルヘキサノエート)、トリエチレングリコールジヘプタノエート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ジヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート、ヘキシルシクロヘキシルアジペート、ヘプチルアジペートおよびノニルアジペートの混合物、ジイソノニルアジペート、ヘプチルノニルアジペート、ジブチルセバケート、油で改質されたセバシン酸アルキドなどのポリマー可塑剤、米国特許第3841890号において開示されているようなホスフェートとアジペートの混合物および米国特許第4144217号に開示されているようなアジペートおよび前述したものの混合物および組合せが含まれる。使用され得る他の可塑剤は、米国特許第5013779号に開示されているような、CからCのアルキルアルコールおよびCからC10の環式アルコールならびにCからCのアジペートエステル(ヘキシルアジペートなど)から製造された混合アジペートである。様々な実施形態において使用される可塑剤は、ジヘキシルアジペートおよび/またはトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートである。
【0039】
ポリ(ビニルブチラール)ポリマー、可塑剤、およびいずれかの添加剤を、当業者に知られている方法によって、熱的に処理し、シート形状に構成することができる。ポリ(ビニルブチラール)シートを形成する1つの例示的な方法は、樹脂、可塑剤および添加剤を含む溶融されたポリ(ビニルブチラール)を、この溶融体をダイ(例えば、1つの寸法がこれと垂直な寸法よりも実質的に大きい開口部を有するダイ)に強制的に通すことにより、押出すことを含む。ポリ(ビニルブチラール)シートを形成する別の例示的な方法は、溶融体をダイからローラー上に流し出し、樹脂を凝固させ、次いで凝固した樹脂をシートとして取り出すことを含む。様々な実施形態において、ポリマーシートは、例えば、0.1から2.5mm、0.2から2.0mm、0.25から1.75mmおよび0.3から1.5mmの厚さを有することができる。
【0040】
ガラス層を含む前述のそれぞれの実施形態について、適切な場合は、非ガラスグレージングタイプの材料が、ガラスの代わりに用いられる別の実施形態がある。このようなグレージング層の例には、例えば、60℃または70℃を超える高いガラス転移温度を有する剛性プラスチック、例えば、ポリカーボネートおよびポリアルキルメタクリレート、特にアルキル部位に1から3個の炭素原子を有するものが含まれる。
【0041】
また、いかなる組合せの、本明細書において開示された本発明の、ポリマーシートおよび中間層のいずれのスタックまたはロールでも、本発明に含まれる。
【0042】
また、本発明は、本発明の中間層のいずれかを含む、風防ガラス、窓、およびこの他の完成されたグレージング製品を含む。
【0043】
本発明は、本明細書に記載の本発明のポリマーシートのいずれかを用いて、本発明の中間層またはグレージングパネルを形成することを含む、中間層およびグレージングパネルを製造する方法を含む。
【0044】
様々なポリマーシートおよび/または積層ガラス特性と、本発明に使用するための測定技法とを述べることにする。
【0045】
ポリマーシートを含む積層ガラスの透明度は、試料によって散乱された光を、入射光と対比して定量化したものであるヘーズ値を測定することによって求めることができる。%ヘーズは、以下の技法により測定することができる。ヘーズの量を測定するための装置、ヘーズメータ、型式D25((ハンタアソシエート(Hunter Associates)(レストン、バージニア州))から入手可能である。)は、視野角2°にて光源Cを用いてASTM D1003−61(再承認1977)−手順Aに従って使用することができる。本発明の様々な実施形態において、%ヘーズは5%未満、3%未満および1%未満である。
【0046】
パメル(pummel)接着性は、以下の技法に従って測定することができ、本明細書において「パメル」を参照してポリマーシートのガラスに対する接着性を定量する場合は、以下の技法を用いてパメルを求める。2層のガラス積層板試料を、標準のオートクレーブ積層条件によって作製する。積層板を約−17.8℃(0°F)まで冷却し、手を使用してハンマーでパメルして、ガラスを破壊する。次いで、ポリ(ビニルブチラール)シートに接着されていないすべての破損ガラスを除去し、ポリ(ビニルブチラール)シートに接着されている残りのガラスの量を、目視により1組の標準と比較する。標準は、様々な程度のガラスが、ポリ(ビニルブチラール)シートに接着されたまま残っている尺度に対応する。特に、ゼロのパメル標準においては、ポリ(ビニルブチラール)シートに接着されたまま残っているガラスは存在しない。10のパメル標準においては、100%のガラスがポリ(ビニルブチラール)シートに接着されたまま残っている。本発明の積層ガラスパネルに関しては、様々な実施形態が、少なくとも3、少なくとも5、少なくとも8、少なくとも9、または10のパメルを有する。別の実施形態は、8および10を含めて8から10の間のパメルを有する。
【0047】
ポリマーシートの「黄色度指数」は、以下に従って測定することができる:実質的に平坦で並行である滑らかなポリマー表面を有する、1cmの厚さのポリマーシートの透明な、鋳込成形の円板を形成する。指数は、ASTM法D1925、「Standard Test Method for Yellowness Index of Plastics」に従って、可視スペクトルの分光光度透過率から測定される。値は、測定された試料の厚さを用いて1cm厚さに補正される。本発明の様々な実施形態において、ポリマーシートは、12以下、10以下、または8以下の黄色度指数を有することができる。
【0048】
可視透過率は、パーキンエルマーコーポレーション(Perkin Elmer Corporation)により製造されたラムダ900(Lambda 900)などの紫外−可視−近赤外分光光度計を用いて、国際標準ISO10526−1999に記載の方法により定量化される。
【0049】
ガラス積層板の端部白色化は、積層板の15.24cm角の断片を、50℃で95%相対湿度の、高温多湿環境に曝すことにより、測定される。試験期間は4週間以上である。白色化帯は、白色が曝露時間と共に発達させられ、拡大させられていく積層板の端部からの距離として、周期的(2週間および4週間)に測定される。
【0050】
滑りは、垂直に立てた状態で、ガラス層の中の唯1層のみにより支持されている積層板の15.24cm角の断片を装着し、この積層板を100℃の温度に100時間以上曝すことにより測定する。いずれの時点においても滑りは、支持されていないガラス層が、出発位置に対して下方に移動した距離であり、試料が作製された際に、ガラスの2つの部分が完全に位置合わせされている場合は、この距離は通常ゼロである。
【0051】
引張強度、伸び、および割線係数は、MTS Sintech 1/GTユニバーサル試験装置を用い、ASTM D412の方法に従って測定する。すべての試料は、測定前に、21℃、51%相対湿度において24時間コンディショニングする。
【0052】
(実施例)
【実施例1】
【0053】
10−21重量%のビニルアルコール含有量および0.5−4重量%の酢酸ビニル残基を有する100部のポリ(ビニルブチラール)樹脂を、可塑剤としてのトリエチレングリコールジ−(2−エチルヘキサノエート)30−75部と混合する。チヌビン(Tinuvin)326(2−tert−ブチル−6−(5−クロロ−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−フェノール0.25重量部−Ciba Specialty Chemicalsから入手可能)が添加され、得られた混合物を用いて対照として使用するポリマーシートを形成する。この混合物は、実験室の押出機から押出され、180℃の温度でシートを形成する。
【0054】
上記のパラグラフで与えられたものと同一の成分が再び組み合わされ、3個の混合物は、改質ヒュームドシリカ(CAB−O−SIL TS−610−キャボットコーポレーション(ベレリカ、マサチューセッツ州)から入手可能)を、1.2、1.8、または2.0重量%添加することにより、別々に形成される。3個の混合物は、実験室の押出機から押出され、180℃の温度で3個の試験シートを形成する。
【0055】
対照ポリマーシートおよび試験ポリマーシートの1つは、機械的引張り特性について試験される。試験条件は、ASTM D412法CTH(21℃/50%相対湿度)に従った。
【0056】
改質ヒュームドシリカを含むポリマーシートは、改質ヒュームドシリカを含有していない対照試料と比較して、10−30%の引張応力の増加を示す。
【0057】
【表1】

【実施例2】
【0058】
対照ポリマーシートおよび試験ポリマーシートの1つは、2枚のガラス板の間にそれぞれ積層され、高温および湿度で試験される。ガラス積層板は、50℃および95%の相対湿度の環境に4週間曝露される。湿気の浸透により引き起こされる積層板の端部白色化帯は、改質ヒュームドシリカを含む中間層を取り入れた積層ガラスにおいて、大幅に低減される。
【0059】
【表2】

【実施例3】
【0060】
対照ポリマーシートおよび試験ポリマーシートの1つは、%可視光透過率、ヘーズ、および黄色度について試験される。1%未満の積層板ヘーズは、高度な光学的透明度であると見なされる。
【0061】
【表3】

【実施例4】
【0062】
対照ポリマーシートおよび試験ポリマーシートの1つについて、パメル試験を実施する。結果は、改質ヒュームドシリカを含むポリマーシートについて、優れたガラス接着性を示す。
【0063】
【表4】

【実施例5】
【0064】
滑り試験は、2つの積層板について実施される。結果は、改質ヒュームドシリカを含むポリマーシートにおいて優れた滑り抵抗を示す。
【0065】
【表5】

【0066】
本発明により、光学的品質を許容できないほど低下させることなく、物理的特性を改善した改質ヒュームドシリカを有する、ポリ(ビニルブチラール)シートなどの、中間層を提供することが今や可能である。
【0067】
本発明を例示的な実施形態を参照して説明してきたが、当業者は、本発明の範囲を逸脱することなく、様々に変更し得ることおよび同等物を本発明の要素の代わりにし得ることを理解されよう。加えて、特定の状況または材料を本発明の教示に適合させるために、本発明の本質的な範囲を逸脱することなく、多くの変更をし得る。したがって、本発明は、本発明を実施するために企図された最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲に当てはまるすべての実施形態を含むものであることが意図されている。
【0068】
さらに、本発明のいずれかの単一成分に与えられた、範囲、数値または特性のいずれでも、本発明の他の成分のいずれかに与えられた範囲、数値または特性のいずれとも、交換可能な場合は交換して使用し、本明細書全体を通じて与えられたような、成分のそれぞれの数値を限定している実施形態を構成することができることが理解されよう。例えば、与えられた範囲のいずれかにある可塑剤を含むことに加えて、与えられた範囲のいずれかにある改質ヒュームドシリカを含む、ポリマーシートを形成し、必要に応じて、本発明の範囲内にあるが、列記するとすれば極めて煩わしいことになる、多くの置換品を形成することができる。
【0069】
要約またはいずれかの特許請求の範囲の範囲内で与えられたいずれの図参照番号も、説明する目的だけのものであり、特許請求された発明を、いずれかの図に示された1つの特定の実施形態に限定するものであると解釈されるべきではない。
【0070】
図は、特段の指示がない限り、縮尺して描かれてはいない。
【0071】
本明細書において参照された、定期刊行物の論文、特許、特許出願および書籍を含むそれぞれの参考資料は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマー;および
ヒュームドシリカを含み、前記ヒュームドシリカがアルキル化されている、
多層グレージングにおいて使用するための中間層。
【請求項2】
前記ヒュームドシリカが、少なくとも0.5重量%の炭素含有量を有する、請求項1の中間層。
【請求項3】
前記ヒュームドシリカがメチル化されている、請求項1の中間層。
【請求項4】
前記ヒュームドシリカが、0.15から0.35ミクロンの平均凝集体長さを有する、請求項1の中間層。
【請求項5】
前記ヒュームドシリカが、0.2から0.3ミクロンの平均凝集体長さを有する、請求項1の中間層。
【請求項6】
実質的に単一のポリマーシートからなる、請求項1の中間層。
【請求項7】
複数のポリマーシートを含む、請求項1の中間層。
【請求項8】
前記可塑剤を樹脂100部当たり10から70部および前記ヒュームドシリカを樹脂100部当たり0.05から15部含有するポリマーシートを含む、請求項1の中間層。
【請求項9】
前記可塑剤を樹脂100部当たり20から60部および前記ヒュームドシリカを樹脂100部当たり0.1から10部含有するポリマーシートを含む、請求項1の中間層。
【請求項10】
前記熱可塑性ポリマーが、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(エチレン−コ−ビニルアセテート)、ポリ(エチレン−コ−エチルアクリレート)、部分的に中和されたエチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーのイオノマー、ポリエチレン、ポリエチレンコポリマー、ポリウレタン、およびポリ(シクロヘキサンジメチレンテレフタレート−コ−エチレンテレフタレート)コポリエステルからなる群から選択されたポリマーを含む、請求項1の中間層。
【請求項11】
ポリ(ビニルブチラール);
可塑剤;および
ヒュームドシリカを含み前記ヒュームドシリカがアルキル化されている、
ポリマーシートを含む、
多層グレージングにおいて使用するための中間層であり、前記中間層が40℃未満のガラス転移温度を有するポリマーシートを備えている、中間層。
【請求項12】
前記ヒュームドシリカが、少なくとも0.5重量%の炭素含有量を有する、請求項11の中間層。
【請求項13】
前記ヒュームドシリカがメチル化されている、請求項11の中間層。
【請求項14】
前記ヒュームドシリカが、0.15から0.35ミクロンの平均凝集体長さを有する、請求項11の中間層。
【請求項15】
前記ヒュームドシリカが、0.2から0.3ミクロンの平均凝集体長さを有する、請求項11の中間層。
【請求項16】
実質的に単一のポリマーシートからなる、請求項11の中間層。
【請求項17】
複数のポリマーシートを含む、請求項11の中間層。
【請求項18】
前記可塑剤を樹脂100部当たり10から70部および前記ヒュームドシリカを樹脂100部当たり0.05から15部含有するポリマーシートを含む、請求項11の中間層。
【請求項19】
前記可塑剤を樹脂100部当たり20から60部および前記ヒュームドシリカを樹脂100部当たり0.1から10部含有するポリマーシートを含む、請求項11の中間層。
【請求項20】
中間層を備えた多層ガラスパネルであり、前記中間層が、
熱可塑性ポリマー;および
ヒュームドシリカを含み、前記ヒュームドシリカがアルキル化されている、多層ガラスパネル。

【公表番号】特表2009−540065(P2009−540065A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514558(P2009−514558)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/070812
【国際公開番号】WO2007/143746
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(500276390)ソリユテイア・インコーポレイテツド (43)
【Fターム(参考)】