説明

放射線撮影装置及びその方法並びにプログラム

【課題】 放射線発生装置との煩雑な接続なしに放射線発生装置と撮像手段の同期動作が可能となる放射線撮影装置を提供する。
【解決手段】 放射線撮影装置は、放射線発生装置から放射された放射線パルスに基づいて放射線画像を撮像する撮像手段と、前記放射線パルスを検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果に基づいて前記撮像手段を制御する制御手段と、を備える。前記制御手段は、前記検出手段の検出結果に基づいて前記放射線パルスのパルス幅および周期を演算する演算手段を有し、前記演算手段で演算した前記放射線パルスの前記パルス幅及び前記周期に基づいて、前記撮像手段を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線等を用いた放射線撮影を行う放射線撮影装置及びその方法並びにプログラムに関するものである。ここで、本明細書では、放射線崩壊によって放出される粒子(光子を含む)の作るビームであるα線、β線、γ線などの他に、同程度以上のエネルギーを有するビーム、例えばX線や粒子線、宇宙線なども、放射線に含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来の放射線撮影装置を含む放射線撮影システムの概略構成を示す図である。また、図5は、従来の放射線撮影装置に用いられる撮像手段の模式的回路図である。さらに図6は、従来の放射線撮影装置の駆動タイミング例を示す図である。
【0003】
図4に示すように、従来の放射線撮影システム400は、放射線発生装置401、撮像手段402、放射線I/F403、制御手段404で構成されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3を参照。)。撮像手段402は制御手段404とケーブル405cで接続されており、撮像手段402には制御手段404から駆動パルスなどの制御信号が供給される。また放射線発生装置401と制御手段404は放射線I/F403を介して接続されている。このとき放射線発生装置401と放射線I/F403との間はケーブル405bで接続されている。また、放射線I/F403と制御手段404との間はそれぞれケーブル405aで接続されている。
【0004】
特許文献4などに開示されている従来の放射線撮影装置に用いられる撮像手段402について、図5を用いて説明する。撮像手段402はアモルファスシリコンを用いてそれぞれ形成されるPIN型フォトダイオードなどの光電変換素子と薄膜トランジスタ(TFT)などのスイッチング素子で構成される画素を二次元に配列し、マトリクス駆動を行うエリアセンサ501を有している。各画素のPIN型フォトダイオードの共通電極側には電源からバイアス電圧Vsが印加される。また各画素のTFTのゲート電極は共通ゲートラインVg1〜3に接続されており、共通ゲートラインは図示しないシフトレジスタなどで構成されるゲート駆動装置502に接続される。一方各TFTのソース電極は共通データラインSig1〜3に接続され、入力アンプ504、サンプルホールド505、アナログマルチプレクサ506、出力アンプ507、LPF回路508などで構成される読み出し装置503で画像信号として出力される。
【0005】
次に、図6のタイミング図を用いて従来の放射線撮影システム400の動作について説明する。図6においてRES、Vg1、Vg2、Vg3、SMPLの各信号は図4の制御手段404から撮像手段402に供給される制御信号であり、図5にも示されている。ここで、RESは共通データラインおよび入力アンプ504のリセット、Vg1〜Vg3は各共通ゲートラインのTFTのゲートに印加する信号、SMPLはサンプルホールド505の容量へ電荷を転送するための信号である。アナログ出力は読み出し装置503から出力される被写体の情報を含む出力信号である。
【0006】
従来の放射線撮影システム400は、放射線発生装置401と撮像手段402とを同期して動作させるために、共通の制御手段404を用いて放射線発生装置401及び撮像手段402にそれぞれ制御信号を与えている。これによって、制御手段404から放射線I/F403に与えられる放射線制御信号Aと、制御手段404から撮像手段402に与えられる放射線制御信号Cと、を同期させることができる。
【特許文献1】特開平08−130682号公報
【特許文献2】特開平08−257026号公報
【特許文献3】特開2001−296363号公報
【特許文献4】特表平05−503770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、放射線I/F403にはリレー等の素子が用いられるため、タイミング遅延が生じうる。そのため、放射線制御信号Aは、所定期間(例えば図6の期間D)遅延した放射線制御信号Bとして、放射線発生装置401に与えられる場合がある。この場合、放射線発生装置401は、放射線制御信号Aよりも所定期間遅延した放射線制御信号Bに従って、撮像手段402に対しパルス状の放射線を発生することになる。
【0008】
パルス放射線照射の放射線撮影システムの場合、図6に示したA−B間、A’−B’間の読み出し期間中は放射線照射が禁止される場合がある。そのため、制御手段404は、上記放射線パルスの遅延などを鑑みたタイミングマージンを設定し、撮像手段402に対してRES、Vg1、Vg2、Vg3、SMPLなどの制御信号を供給しなければならなかった。
【0009】
また、放射線I/Fに用いられるリレー素子は、遅延が大きくまた不安定であるため、精密なタイミングの制御が困難であり、タイミングの制約を受けやすい。この制約のために高速の読み出しが余儀なくされ、その結果としてノイズ帯域に不利となる場合があった。
【0010】
また、放射線発生装置と撮像手段とを同期させずに、連続放射線を被写体に照射して撮影する方法もあるが、被写体の動きがぼやけて画質を低下させてしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述した課題を考慮してなされたもので、放射線発生装置と撮像手段との同期動作をより確実に機能させることができる放射線撮影装置を提供することを目的とする。
【0012】
この発明は、上述した課題を解決すべくなされたものである。本発明の第1の側面に係る放射線撮影装置においては、放射線発生装置から放射された放射線パルスに基づいて放射線画像を撮像する撮像手段と、前記放射線パルスを検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果に基づいて前記撮像手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記検出手段の検出結果に基づいて前記放射線パルスのパルス幅および周期を演算する演算手段を有し、前記演算手段で演算した前記放射線パルスの前記パルス幅及び前記周期に基づいて、前記撮像手段を制御することを特徴とする。
【0013】
ここで、制御手段による撮像手段の制御には、例えば撮像手段において格子状に配列された各画素から放射線の受光量に応じた画素信号を読み出すための制御信号を出力することが含まれる。また、上記放射線パルスは、放射線発生装置から照射されるものである。
【0014】
本発明の第2の側面に係る放射線撮影システムにおいては、放射線発生装置と上記の放射線撮影装置と、を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の第3の側面に係る放射線撮影方法においては、放射線画像を撮像する撮像手段に放射線パルスを照射する照射工程と、前記放射線パルスを検出する検出工程と、前記検出する工程での検出結果に基づいて前記撮像手段を制御する制御工程と、を含み、前記制御工程では、前記検出工程での検出結果に基づいて前記放射線パルスのパルス幅および周期を演算し、前記演算した放射線パルスの前記パルス幅及び前記周期に基づいて、前記撮像手段を制御することを特徴とする。
【0016】
本発明の第4の側面に係るプログラムにおいては、上記の放射線撮影方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0017】
本発明の第5の側面に係るコンピュータ可読記憶媒体においては、上記のプログラム格納したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によって、放射線パルスを照射する放射線発生装置との煩雑な接続やインターフェイスを設けることなく、放射線発生装置が照射する放射線パルスのタイミングと撮像手段における撮像動作タイミングとの同期動作をより確実に機能させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。尚、本実施形態においては放射線としてX線を例にあげて説明するが、これに限定されず、α線、β線、γ線などが含まれうる。
【0020】
図1は、本発明の好適な一実施形態における放射線撮影装置の概略構成を示す図である。
【0021】
図1において、100は放射線撮影装置であり、撮像手段102、放射線パルス検出手段103、及び制御手段104を含む。放射線発生装置101は、放射線撮影装置100の撮像手段102に対して、パルス状の放射線(以下、放射線パルスとする)を照射する。このように、放射線撮影装置100及び放射線発生装置101を含む放射線撮影システムが構成される。撮像手段102は、制御手段104からの制御信号に応じたタイミングで、放射線発生装置101から照射される放射線の強弱を感知して放射線画像を撮像する。放射線パルス検出手段103は、放射線発生装置101から照射される放射線パルスの変化を検出して、検出信号を制御手段104へ出力する。
【0022】
従来の図4の放射線撮影システムと比較すると、本実施形態における放射線撮影システムは従来の放射線撮影システムと異なる以下の特徴を有する。
【0023】
まず、本実施形態における放射線撮影システムでは、放射線発生装置101と放射線撮影装置100の制御手段104がケーブルで接続されておらず、これらの装置間で通信を行う必要もない。また、本実施形態における放射線撮影システムは、放射線パルス検出手段103が設けられている。放射線パルス検出手段103が出力する放射線パルスの変化の検出信号は制御手段104へ入力される。制御手段104は、放射線パルス検出手段103での検出結果に基づいて撮像手段102を制御することができる。放射線パルス検出手段103は、結晶シリコンを用いて形成されるPIN型フォトダイオードを含むフォトタイマなどで構成することができ、放射線発生装置101が照射する放射線パルスの立ち上がりと立下りを高精度に検出可能である。なお、本実施形態においては、放射線パルス検出手段103と制御手段104との間の接続、および制御手段104と撮像手段102との間の接続を、ケーブル105を用いて行っている。しかしながら、本発明の好適な実施の形態において、これらの接続はケーブルに限るものではなく、無線LANや赤外線通信等の無線通信を用いても良い。
【0024】
次に、図1に示した撮像手段102の詳細な構成例を示し説明する。
【0025】
図3は、図1に示した撮像手段102の詳細な構成例を示す図である。図3において、エリアセンサ201は、アモルファスシリコンを用いて形成されるPIN型フォトダイオードPD等の変換素子及び薄膜トランジスタ(TFT)T1などのスイッチング素子で構成される画素が二次元に配列され、マトリクス駆動を行う。エリアセンサ201が備える各画素のPIN型フォトダイオードPDの共通電極側には電源からバイアス電圧Vsが印加されている。また各画素のTFT・T1のゲート電極は共通ゲートラインVg1〜3に接続されており、共通ゲートラインVg1〜3はゲート駆動装置202に接続される。ゲート駆動装置202は、例えばシフトレジスタなどで構成される。
【0026】
一方、各TFT・T1のソース電極は共通データラインSig1〜3に接続され、読み出し装置203へ画素信号が出力される。読み出し装置203は、入力アンプ204、サンプルホールド205、アナログマルチプレクサ206、出力アンプ207、LPF回路208、及び抵抗値制御部209を含み、共通データラインSig1〜3より入力される画素信号を基に、画像信号を生成してアナログで出力する。
【0027】
図3に示した撮像手段102において、図5に示した従来の撮像手段と異なる特徴について説明する。まず、読み出し装置203の出力アンプ207に接続されたローパスフィルタ(以下LPFと略記する)回路208を有し、LPF回路208が可変抵抗を有する点と、LPF回路208の可変抵抗回路の抵抗値が抵抗値制御部209による制御により変更できる点が異なる。これにより、読み出し装置203の出力アンプ207に接続されたLPF回路208のカットオフ周波数が、抵抗値制御部209の制御に応じて制御可能である。具体的には、図1の制御手段104からの制御信号に応じて抵抗値制御部209は動作する。言い換えると、制御手段104は、撮像手段102の出力信号に対する周波数帯域の制限処理を制御できる。例えば、制御手段104は、エリアセンサ201の駆動スピードに応じて、LPF回路208の周波数帯域を変化させることができる。これにより、撮像手段102の出力信号のノイズ低減を実現できる。なお、本実施形態ではエリアセンサを変換素子であるアモルファスシリコンを用いて形成されたPIN型フォトダイオードとスイッチング素子であるTFTとで構成するもので説明した。しかしながら、本発明の好適な実施の形態はこれに限定されるものではなく、光電変換素子としてPIN型フォトダイオードの代わりにアモルファスシリコンを用いて形成されたMIS型センサを用いても良い。また放射線撮影装置を形成する場合は、エリアセンサ上にヨウ化セシウムなどの放射線を光電変換素子が検知可能な波長帯域の光に変換する波長変換体であるシンチレータを配置することが望ましい。この場合、変換素子は光電変換素子とシンチレータにより構成される。また、変換素子としてヨウ化鉛、ヨウ化水銀、アモルファスセレン、ガリウム砒素など放射線を直接電荷に変換する材料を用いて構成してもよい。さらに、光電変換素子を用いたエリアセンサの材料はアモルファスシリコンに限定されるものではなく、多結晶シリコンや単結晶シリコンを用いてもよい。単結晶シリコンを用いてエリアセンサを構成する場合には、例えばCCDやCMOSセンサなどの変換素子を用いることができる。
【0028】
次に、図3で説明した撮像手段102の動作について説明する。
【0029】
図2は、図3で説明した撮像手段102の駆動タイミング例を示す図である。図2に示すように、本実施形態の放射線発生装置101は周期的に放射線パルスを発生する。本実施形態における放射線撮影装置100は、この放射線パルスを連続的に読み出すことが可能である。放射線パルス検出手段103は、図2に示す、最初の放射線パルス(実際の放射線照射)の立ち上がりT1、最初の放射線パルスの立下りT2、次の放射線パルスの立ち上がりT1’などを検出する。この検出信号を受信した制御手段104は、放射線発生装置101からの放射線パルスのパルス幅やパルスの周期を計算する機能(演算手段)を有する。次に、制御手段104は、計算した放射線パルスのパルス幅及びパルスの周期に基づき、撮像手段102の駆動を図2に示すように制御する。具体的には、制御手段104は、撮像手段102に対してRES、Vg1、Vg2、Vg3、SMPLなどの制御信号を供給することで、撮像手段102を駆動している。例えば、制御手段104は、求めた放射線パルスのパルス幅やパルスの周期に応じて、撮像手段102のフレームレートを制御する。
【0030】
まず、制御手段104は、期間T1’〜T2’の放射線パルスが立ち上がっている期間中は撮像手段102を蓄積状態とする。次に、制御手段104は、放射線パルス立下りタイミングT2’と次の放射線パルスにおける立ち上がりタイミングT1’’との間で画素信号の読み出し処理が完了するように駆動スピードを制御する。すなわちRESによるリセット動作、Vg1〜3による電荷転送動作、SMPLによるサンプルホールドがT2’とT1’’の間で完了するようにする。またあわせて読み出し装置203の出力アンプ207に接続されるLPF回路208の周波数帯域を駆動スピードに応じて変化させる。これにより、駆動スピードに応じてLPF回路208で決定される出力アンプ207の周波数帯域を変化させることができ、出力信号のノイズ低減を実現できる。
【0031】
ここで、図7に本実施形態の制御手段104の具体的な構成例を示す。放射線パルス立ち上がり時間メモリ106および放射線パルス立下り時間メモリ107は、それぞれ図2に示す時刻T1、T1’、T1’’、T1’’’・・・およびT2、T2’、T2’’、T2’’’・・・を順次記憶及び更新し、演算手段108に入力する。これらメモリからの情報に基づいて、演算手段108は、パルス周期及びパルス幅を算出し、駆動タイミング生成手段109にエリアセンサ駆動のための信号を生成させる。ここで、図7において、駆動タイミング生成手段109は、RES、Vg1〜3、SMPL、LPF帯域制御信号を生成しているが、これらの信号のみに限定されるものではない。例えば、ゲート駆動装置202をシフトレジスタで構成する場合はVg1〜3の代わりにスタートパルス、シフトクロック、イネーブル信号などを生成してもよい。さらに、本実施形態においては、制御手段104と撮像手段102を別に設けているが、制御手段の一部あるいはすべての機能を撮像手段に内蔵してもよい。昨今の医療現場においては、カセッテと呼ばれる可搬型の撮像手段が用いられる場合がある。したがって、本発明の制御手段104の一部あるいはすべての機能を撮像手段104に内蔵することはより望ましい。ここで、図8は本発明の好適な実施の形態に係る放射線撮影装置を用いた放射線撮影システムを示す図である。6040は可搬型の撮像手段である。また6050は移動可能なモバイル型の放射線発生装置である。6060はモバイル型の放射線発生装置6050から発生された放射線、6061は患者あるいは被験者者、6062は患者あるいは被験者の胸部である。また更に、6070は撮像手段6040からの電気信号を画像処理するイメージプロセッサ、6080は画像処理された画像情報を表示するディスプレイ、6090は画像情報を伝送するための電話回線などの伝送手段である。また、6100は画像情報をフィルム6110に出力するためのフィルムプロセッサなどの現像手段である。放射線パルス検出手段は6040の可搬型撮像手段に内蔵されることが望ましい。また制御手段104の機能の一部またはすべてはイメージプロセッサ6070の内部に設けても良いし、可搬型撮像手段6040に内蔵してもよい。可搬性の観点では制御手段104の機能が可搬型撮像手段6040に内蔵されることがより望ましい。
【0032】
以上の処理を、放射線撮影装置100は、期間T1’’〜T2’’の放射線パルスや期間T1’’’〜T2’’’の放射線パルスにも適時行う。これにより、本実施形態における放射線撮影装置100は、制御手段104と放射線発生装置101との間をケーブルなどで接続することなく、放射線発生装置101が照射する放射線パルスと同期させて撮像手段102を駆動して放射線画像を読み出すことが可能となる。すなわち、従来必要であった放射線発生装置101と制御手段104を接続するためのケーブル及び放射線I/Fが不要となり、放射線撮像システムをよりシンプルに構成できる。また、従来の放射線I/Fでは対応できない場合があったが、本実施形態の放射線撮影装置100は、メーカの違いなどにより仕様が異なる放射線発生装置に対しても対応可能である。
【0033】
本実施形態における放射線撮影装置100のような構成は、放射線発生装置101との煩雑なケーブル接続が不要なため、可搬型の放射線撮影装置に適用しても好適である。また、本実施形態では放射線パルス検出手段103を撮像手段102の近傍に設けているが、放射線発生装置101の近傍あるいは被写体近傍に設けても良い。また放射線パルス検出手段103を撮像手段102の内部に設けても良いし、あるいは撮像手段102自身の少なくとも一部の出力を利用して放射線パルスの検出を行っても良い。
【0034】
また、本実施形態における放射線撮影装置100においては、放射線発生装置101が出力する周期的な放射線パルスのタイミングに対して従来の図6に示す期間Dのような遅延が生じないので、タイミングの制約が低減され、撮像手段102において従来のような高速読み出しが不要となる。これにより、蓄積や画素信号の読み出しに十分な時間を確保できるので、従来よりS/N比の良好な(ノイズが低減されている)放射線画像を撮影可能な放射線撮影装置を提供することができる。また、本実施形態の放射線撮影システムでは、放射線I/Fを利用していないので、従来のように放射線I/F(リレー素子)の遅延が大きいことによるタイミング誤差が生じることもない。さらに、本実施形態の制御手段104の構成によれば、パルス周期およびパルス幅をリアルタイムで演算することで、撮像手段の駆動をリアルタイムで制御することが可能となる。診断に用いる放射線発生装置のパルス周期、パルス幅は発生装置の特性、あるいは診断の仮定において変化する場合がある。本発明の好適な実施の形態によればリアルタイムで撮像手段の駆動を変更可能なため、上述のような放射線発生装置のパルス周期、パルス幅の変化にも対応可能であるため、使い勝手がよい。
【0035】
また、上述した実施形態において制御手段104の演算機能等は、ハードウェアにより実現したが、この限りではなく、各処理機能を実現する為のプログラムをメモリから読み出してCPU(中央演算装置)が実行することによりその機能を実現させてもよい。すなわち、制御手段104のハードウェア構成として、CPU及びメモリを少なくとも含む構成としてもよい。
【0036】
また、本発明の好適な実施の形態は、上述した構成に限定されるものではなく、制御手段104の各処理の少なくとも一部の機能を専用のハードウェアで実現してもよい。また、上述したメモリは、典型的にはコンピュータ読取可能な記録媒体であり、例えば、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリやROMなどが含まれる。しかしながら、メモリは、光磁気ディスク装置、HDD(ハードディスクドライブ)、CD−ROM等の読み出しのみが可能な記録媒体、RAM以外の揮発性のメモリ、あるいはこれらの組合せによるコンピュータ読み取り、書き込み可能な記録媒体より構成されてもよい。
【0037】
また、制御手段104の各機能を実現する為のプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各処理を行っても良い。なお、コンピュータシステムには、OSなどのソフトウェアだけでなく、周辺機器等のハードウェアが含まれうる。具体的には、記憶媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書きこまれる。その後、そのプログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行う。本発明では、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含むものである。
【0038】
また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体には、典型的にはフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置が含まれる。しかしながら、コンピュータ読み取り可能な記録媒体には、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものが含まれてもよい。
【0039】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する伝送媒体には、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体が含まれる。
【0040】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現する為のものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組合せで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0041】
また、上記のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体等のプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。上記のプログラム、記録媒体、伝送媒体およびプログラムプロダクトは、本発明の範疇に含まれる。
【0042】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の変形も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、X線,γ線などの放射線を検出する放射線検出装置に好適に用いられ、医療画像診断装置、非破壊検査装置、放射線を用いた分析装置などに応用される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の好適な一実施形態に係る放射線撮影装置の概略構成を示す図である。
【図2】撮像手段102の駆動タイミング例を示す図である。
【図3】図1に示した撮像手段102の詳細な構成例を示す図である。
【図4】従来の放射線撮影装置を含む放射線撮影システムの概略構成を示す図である。
【図5】従来の放射線撮影装置に用いられる撮像手段の模式的回路図である。
【図6】従来の放射線撮影装置の駆動タイミング例を示す図である。
【図7】本発明の好適な実施の形態に係る制御手段104の具体的な構成例を示す図である。
【図8】本発明の好適な実施の形態に係る放射線撮影装置を用いた放射線撮影システムを示す図である。
【符号の説明】
【0045】
100 放射線撮影装置
101 放射線発生装置
102 撮像手段
103 放射線パルス検出手段
104 制御手段
105a,105b ケーブル
106 放射線パルス立ち上がり時間メモリ
107 放射線パルス立ち下がり時間メモリ
108 演算手段
109 駆動タイミング発生手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線発生装置から放射された放射線パルスに基づいて放射線画像を撮像する撮像手段と、前記放射線パルスを検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果に基づいて前記撮像手段を制御する制御手段と、を有する放射線撮像装置において、
前記制御手段は、前記検出手段の検出結果に基づいて前記放射線パルスのパルス幅および周期を演算する演算手段を有し、前記演算手段で演算した前記放射線パルスの前記パルス幅及び前記周期に基づいて前記撮像手段を制御することを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記演算手段で演算した前記パルス幅及び前記周期に基づいて、前記撮像手段のフレームレートを制御する請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項3】
前記撮像手段は、該撮像手段の出力信号の特定の周波数帯域を制限するフィルタ手段を有し、前記制御手段は、前記演算手段で演算した前記パルス幅及び前記周期に基づいて、前記特定の周波数帯域を制限する制御信号を前記フィルタ手段へ出力する請求項2に記載の放射線撮像装置。
【請求項4】
前記検出手段は、前記撮像手段の近傍に設けられている請求項1から3のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項5】
前記検出手段は、前記放射線発生装置の近傍に設けられている請求項1から3のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項6】
前記検出手段は、前記撮像手段の一部として設けられている請求項1から3のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項7】
前記検出手段は、前記撮像手段の出力信号を用いて前記放射線パルスの変化タイミングを検出する請求項1から6のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の放射線撮像装置と、前記放射線パルスを発生する放射線発生装置と、を備えることを特徴とする放射線撮像システム。
【請求項9】
前記撮像手段は可搬型の撮像手段であり、前記放射線発生装置はモバイル型の放射線発生装置である請求項8に記載の放射線撮像システム。
【請求項10】
放射線画像を撮像する撮像手段に放射線パルスを照射する照射工程と、
前記放射線パルスを検出する検出工程と、
前記検出工程での検出結果に基づいて前記放射線パルスのパルス幅および周期を演算し、前記演算した放射線パルスの前記パルス幅及び前記周期に基づいて前記撮像手段を制御する制御工程と、
を含む放射線撮影方法。
【請求項11】
放射線画像を撮像する撮像手段に放射線パルスを照射させるための処理と、
前記放射線パルスを検出手段により検出させるための処理と、
前記検出手段から得られた検出結果に基づいて前記放射線パルスのパルス幅および周期を演算手段にて演算させ、前記演算された放射線パルスの前記パルス幅及び前記周期に基づいて前記撮像手段を制御手段にて制御させるための処理と、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のプログラムを格納したことを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−122667(P2006−122667A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−275949(P2005−275949)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】