説明

放射線検査装置

【課題】原子炉構造物での亀裂の検出等、表面形状の解析が、クラッド等で覆われた場合であってもより高い精度で行える放射線検査装置を提供する。
【解決手段】対向する検査部位6からの放射線の強度を検出位置と対応させて検出する二次元放射線検出器2と、この二次元放射線検出器2の出力信号から放射線強度の二次元位置分布を算出する信号処理部3と、この信号処理部3での処理結果を記憶する情報記憶部4と、この情報記憶部4に記憶された情報に基づく解析を行い検査部位6の表面形状についての解析結果を出力する演算解析部5を備えるもので、信号処理部3が、放射線の強度を放射線の個数に換算する演算手段を備えており、演算された放射線個数による放射線強度の二次元位置分布を算出するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば表面がクラッド等で覆われた原子炉構造物の亀裂検査に用いる放射線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、原子力発電所の原子炉構造物の亀裂検査としては、超音波を用いた方法やカメラで撮影した映像による目視検査の方法がある。しかし、超音波を用いるものでは、検査範囲が狭く、広範囲の検査には時間を要し、またカメラによる目視検査では、原子炉構造物の表面がクラッド等で覆われている場合には亀裂検査を行うことができない。
【0003】
このため、検査部位にX線を所定の角度で入射するように照射し、反射線量率を計測することで、塗膜やライニング被膜の上からでも金属表面の検査が行える方法(例えば、特許文献1参照)や、放射化した原子炉構造物からの放射線(5.8keVのX線や1.3MeVのγ線)の強度を、検出位置と対応させて二次元放射線検出器で検出することにより、クラッド等で覆われた場合でも構造物表面の亀裂の検査が行える方法(例えば、特許文献2参照)等が提示されている。
【0004】
しかし、原子力発電所の原子炉構造物等では、特に、構造物表面形状の解析精度を向上させ、亀裂の検出や亀裂発生の予知がより高い精度で行えるようすることが強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−125608号公報
【特許文献2】特開2007−240253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような状況に鑑みて本発明はなされたもので、その目的とするところは、原子炉構造物等での亀裂発生の虞がある部位の検出、あるいは亀裂の検出などの表面形状の解析が、クラッド等で覆われた場合であってもより高い精度で行える放射線検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の放射線検査装置は、対向する検査部位からの放射線の強度を検出位置と対応させて検出する二次元放射線検出器と、この二次元放射線検出器の出力信号から前記放射線強度の二次元位置分布を算出する信号処理部と、この信号処理部での処理結果を記憶する情報記憶部と、この情報記憶部に記憶された情報に基づく解析を行い前記検査部位の表面形状についての解析結果を出力する演算解析部を備える放射線検査装置であって、前記信号処理部が、前記放射線の強度を放射線の個数に換算する演算手段を備え、演算された放射線個数による前記放射線強度の二次元位置分布を算出することを特徴とするものである。
【0008】
また、対向する検査部位からの放射線の強度を検出位置と対応させて検出する二次元放射線検出器と、この二次元放射線検出器の出力信号から前記放射線強度の二次元位置分布を算出する信号処理部と、この信号処理部での処理結果を記憶する情報記憶部と、この情報記憶部に記憶された情報に基づく解析を行い前記検査部位の表面形状についての解析結果を出力する演算解析部を備える放射線検査装置であって、前記演算解析部が、前記情報記憶部に記憶された前記放射線強度の二次元位置分布上に設定した平行な複数本の直線、または曲線上の放射線強度を各線に沿ってそれぞれ積分する演算手段を有すると共に、算出された各積分値の分布をもとに前記検査部位の表面形状の解析を行うことを特徴とするものである。
【0009】
また、対向する検査部位からの放射線の強度を検出位置と対応させて検出する二次元放射線検出器と、この二次元放射線検出器の出力信号から所定の放射線を弁別すると共に弁別された放射線の強度の二次元位置分布を算出する信号処理部と、この信号処理部での処理結果を記憶する情報記憶部と、この情報記憶部に記憶された情報に基づく解析を行い、前記検査部位の表面形状についての解析結果を出力する演算解析部を備える放射線検査装置であって、前記信号処理部が、放射化された前記検査部位から放射され前記二次元放射線検出器で検出され出力された放射線のうちの511keVのγ線を弁別するエネルギ弁別機能を有し、かつ弁別された前記511keVのγ線の強度と二次元位置分布を算出することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、原子炉構造物等で、亀裂を検出したり、あるいは亀裂発生の虞がある部位を検出して事前に亀裂発生を予知したりするなどの表面形状の解析が、表面がクラッド等で覆われた場合であっても、より高い精度で行うことができる等の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態である装置の概略を示す構成図である。
【図2】本発明の第2の実施形態である装置の概略を示す構成図である。
【図3】本発明の第2の実施形態における演算解析部での演算を説明するための図で、図3(a)はコントラスト画像上への直線の設定状態を示す図、図3(b)は積分値の強度分布図である。
【図4】本発明の第3の実施形態である装置の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0013】
先ず第1の実施形態を図1により説明する。図1は装置の概略を示す構成図である。
【0014】
図1において、1は放射線検査装置で、例えば二次元に広がった検出面2aを有すると共にX線及びγ線に対して感度を有し、放射線の強度を検出位置と対応させて検出する二次元放射線検出器2と、この二次元放射線検出器2が出力した放射線強度と対応する検出位置の出力信号から放射線強度の二次元位置分布を算出する信号処理部3と、この信号処理部3での処理結果を記憶する情報記憶部4と、この情報記憶部4に記憶された情報に基づく解析を行い、亀裂の有無等、検査対象の表面形状についての解析結果を出力する演算解析部5を備えて構成されている。また、6は、検査対象の原子炉構造物等の表面がクラッド6aで覆われた二次元面の検査部位であり、7は、検査部位6にX線8を照射するよう配置されたX線発生装置である。
【0015】
信号処理部3は、二次元放射線検出器2からの放射線強度を放射線の個数に換算する演算手段を備えており、さらに、演算された放射線個数による放射線強度の二次元位置分布を算出するように構成されている。なお、放射線強度の放射線個数への換算は、例えば、放射線の発生個数が明らかな校正用放射線源を用い、校正用放射線源からの放射線を二次元放射線検出器2へ入射させ、放射線個数と放射線強度との間の比例係数を得る。その後、得られた比例係数をもとに、二次元放射線検出器2が測定した検査部位6の放射線強度を放射線個数に換算するようになっている。
【0016】
そして、上記のように構成された放射線検査装置1による、例えば原子力発電所の原子炉構造物等における検査部位6の表面形状の放射線検査は、次のように行なわれる。
【0017】
先ず、二次元放射線検出器2を、検査対象の原子炉構造物等の表面がクラッド6aで覆われた検査部位6に対し、検出面2aが所定離間距離を設けて対向するように配置する。次に、X線発生装置7から検査部位6にX線8を照射し、照射X線8が検査部位6で散乱した散乱X線9を二次元放射線検出器2によって、その放射線強度と対応する位置を検出する。この時、散乱X線9は、検査部位6に亀裂6f等の形状変化部分が存在すると、その部分での放射線強度が変化し、その強度変化が検出される。こうした検出は検査部位6の所定範囲について行い、二次元放射線検出器2で検出した検査部位6の各放射線強度とそれらの検出位置は、信号処理部3に出力される。
【0018】
続く、信号処理部3では、二次元放射線検出器2からの各放射線強度を、予め算出した比例係数を用いてそれぞれ放射線個数に換算し、対応する検出位置をもちいて放射線個数の二次元位置分布を算出する。算出された放射線個数の二次元位置分布を放射線個数と共に情報記憶部4に記憶させる。その後、演算解析部5において、情報記憶部4に記憶させた放射線個数と、その二次元位置分布に基づき、放射線個数の標準偏差等を求める統計処理を行い、放射線強度の位置による変化が、検出された放射線個数の統計揺らぎの範囲外の有意な変化であるものかどうかの判別を行う。判別の結果、有意である場合には、それが表面をクラッド6aで覆われている検査部位6の形状変化、例えば亀裂6f等が存在するものであるとの解析結果を出力する。
【0019】
以上のように、上記構成とすることで、検出結果の統計処理により、放射線強度の変化が小さい場合でも判別が容易に行え、散乱X線9の強度が弱い環境下においても、表面がクラッド6aで覆われた検査部位6の形状変化、例えば亀裂6f等の検出における誤検出を少なくすることができ、亀裂6f等の検査精度を向上させることができる。また、放射線個数の統計揺らぎが算出できることから、亀裂6f等の検出に要する最低限の測定時間を導出でき、検査の高速化が図れることができる。
【0020】
なお、放射線強度の放射線個数への換算処理は、放射線強度の二次元位置分布を算出する前に、放射線1個、1個の検出時に行ってもよい。換算の方法としては、放射線の数を計数し、計数値をそのまま放射線の個数とすることで行う。
【0021】
また、原子力発電所の原子炉構造物等の検査部位6が放射化して自発的にX線及びγ線10を放出している場合には、X線発生装置7からの照射X線8による散乱X線9と同時に、自発X線及びγ線10が二次元放射線検出器2で検出されることになる。このため、予め検査部位6の自発X線及びγ線10の放射線強度と検出位置を対応させて求めておき、検査時に二次元放射線検出器2が検出した散乱X線9と自発X線及びγ線10の放射線強度と二次元位置分布と、自発X線及びγ線10の放射線強度と二次元位置分布の差を求めて散乱X線9の放射線強度と二次元位置分布を得、得られた散乱X線9の放射線強度を放射線個数に換算するようにしてもよい。
【0022】
さらに、X線発生装置7を用いず、放射化した検査部位6が放出する自発的なX線及びγ線10の放射線強度と対応する位置を二次元放射線検出器2で検出し、例えば検出した自発X線及びγ線10のいずれか一方の放射線の強度を放射線個数に換算し、換算によって得られた放射線個数と二次元位置分布を用いて検査部位6の形状変化、例えば亀裂6f等の有無を解析するようにしてもよい。
【実施例2】
【0023】
次に第2の実施形態を図2及び図3により説明する。図2は装置の概略を示す構成図であり、図3は演算解析部での演算を説明するための図で、図3(a)はコントラスト画像上への直線の設定状態を示す図、図3(b)は積分値の強度分布図である。
【0024】
ある。なお、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、第1の実施形態と異なる本実施形態の構成について説明する。
【0025】
図2及び図3において、11は放射線検査装置で、二次元放射線検出器2と、この二次元放射線検出器2が出力した放射線強度と対応する検出位置の出力信号から放射線強度の二次元位置分布を算出する信号処理部12と、この信号処理部12での処理結果を記憶する情報記憶部4と、この情報記憶部4に記憶された情報に基づく解析を行い、亀裂の有無等、検査対象の表面形状についての解析結果を出力する演算解析部13を備えて構成されている。
【0026】
演算解析部13は、情報記憶部4に記憶された放射線強度とその二次元位置分布の情報をもとに、放射線強度の二次元位置分布上に設定した平行な複数本の直線、または曲線上の放射線強度を各線に沿ってそれぞれ積分する演算手段を有しており、次のような演算、解析を行うようになっている。
【0027】
すなわち、放射線強度の二次元位置分布を、放射線強度をコントラストで表したコントラスト画像として平面化し、平面化したコントラスト画像上に設定した位置に、適宜に設定した長さの直線あるいは曲線、例えば図3(a)に直線の設定状態を示すように、直線Aを設定すると共に、直線Aに平行な複数本の直線A,A,…,A,…,Aを所定の間隔で設定する。そして、各直線A,A,A,…,A,…,A上の放射線強度を各線に沿ってそれぞれ積分し、各積分値I,I,I,…,I,…,Iを得る。さらに、得られた各積分値I,I,I,…,I,…,Iを、直線A,A,…,A,…,Aを設定した所定の間隔で配列して積分値による強度分布を算出し、図3(b)に示す強度分布図を得る。
【0028】
その後、算出された強度分布の形状を解析し、例えば直線Aにおいて形状が大きく変化する部分Fについて、その形状、大きさを予め設定した判断基準と比較し、判断基準を超えるものであった場合には、亀裂部分であると判断することで亀裂6fの検出を行うようになっている。
【0029】
そして、上記のように構成された放射線検査装置11による、例えば原子力発電所の原子炉構造物等における表面がクラッド6aで覆われた検査部位6の表面形状の放射線検査は、次のように行なわれる。
【0030】
先ず、二次元放射線検出器2を、検査対象の検査部位6に対して検出面2aが所定離間距離を設けて対向するように配置する。次に、X線発生装置7から検査部位6にX線8を照射し、照射X線8が検査部位6で散乱した散乱X線9を二次元放射線検出器2によって、その放射線強度と対応する位置を検出する。二次元放射線検出器2で検出した検査部位6の各放射線強度とそれらの検出位置は、信号処理部12に出力される。
【0031】
続く、信号処理部12では、二次元放射線検出器2からの各放射線強度と対応する検出位置とにより放射線強度の二次元位置分布を算出する。
【0032】
算出された放射線強度の二次元位置分布を放射線強度と共に情報記憶部4に記憶させる。その後、演算解析部13において、情報記憶部4に記憶させた放射線強度と、その二次元位置分布に基づいて、放射線強度をコントラストで表し平面化したコントラスト画像を形成し、平面化したコントラスト画像上に設定した位置に、長さを所定長さとした直線Aを設定する。さらに、直線Aに平行な複数本の直線A,A,…,A,…,Aを所定の間隔でコントラスト画像上に設定する。
【0033】
続いて、各直線A,A,A,…,A,…,A上の放射線強度を各線に沿ってそれぞれ積分し、各積分値I,I,I,…,I,…,Iを得、得られた各積分値I,I,I,…,I,…,Iを、直線A,A,…,A,…,Aを設定した所定の間隔で配列して積分値による強度分布を算出する。そして算出された強度分布の形状を解析して、分布形状が変化する部分があるか否かを見、さらに、例えば直線Aの形状が変化する部分Fを見出した場合には、その部分Fについて、その形状、大きさを予め設定した判断基準と比較し、判断基準を超えるものを亀裂部分であると判断し、亀裂6fの存在を位置情報と共に出力する。なお、こうした解析処理を、コントラスト画像上への直線あるいは曲線の設定位置を変え、検査範囲全体を網羅するように行う。
【0034】
以上のように、上記構成とすることで、放射線強度を積分し、積分値の変化を調べることで判別が容易に行えるようになり、散乱X線9の強度が弱い環境下においても、表面がクラッド6aで覆われた検査部位6の形状変化、例えば亀裂6f等の検出における誤検出を少なくすることができ、亀裂6f等の検査精度を向上させることができる。
【0035】
なお、原子力発電所の原子炉構造物等の検査部位6が放射化して自発的にX線及びγ線10を放出している場合には、X線発生装置7からの照射X線8による散乱X線9と同時に、自発X線及びγ線10が二次元放射線検出器2で検出されることになる。このため、予め検査部位6の自発X線及びγ線10の放射線強度と検出位置を対応させて求めておき、検査時に二次元放射線検出器2が検出した散乱X線9と自発X線及びγ線10の放射線強度と二次元位置分布と、自発X線及びγ線10の放射線強度と二次元位置分布の差を求めて散乱X線9の放射線強度と二次元位置分布を得るようにしてもよい。
【0036】
また、X線発生装置7を用いず、放射化した検査部位6が放出する自発的なX線及びγ線10の放射線強度と対応する位置を二次元放射線検出器2で検出し、例えば検出した自発X線及びγ線10のいずれか一方の放射線の強度と二次元位置分布を用いて検査部位6の形状変化、例えば亀裂6f等の有無を解析するようにしてもよい。
【実施例3】
【0037】
次に第3の実施形態を図4により説明する。図4は装置の概略を示す構成図である。なお、上記の各実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、上記実施形態と異なる本実施形態の構成について説明する。
【0038】
図4において、21は放射線検査装置で、二次元放射線検出器2と、この二次元放射線検出器2が出力した放射線強度と対応する検出位置の出力信号から放射線強度の二次元位置分布を算出する信号処理部22と、この信号処理部22での処理結果を記憶する情報記憶部4と、この情報記憶部4に記憶された情報に基づく解析を行い、亀裂の有無等、検査対象の表面形状についての解析結果を出力する演算解析部23を備えて構成されている。
【0039】
信号処理部23は、二次元放射線検出器2からの放射線強度の出力信号から、エネルギが511keVのγ線を選択して入力させるエネルギ弁別機能を有しており、さらに、エネルギ弁別された511keVのγ線の二次元位置分布を算出するように構成されている。
【0040】
一方、原子力発電所の原子炉構造物等が放射化して自発的にX線及びγ線10を放出している場合、主として構造物の放射化によってFe-55とCo-60が生成され、Co-60からのγ線のエネルギは約1.3MeVであり、電子・陽電子生成に必要なエネルギ(〜1.02MeV)よりも高い。したがって、Co-60からのγ線は、構造物内を飛行する間に電子・陽電子生成の反応面積に従う確率で陽電子に変換される。その際、陽電子は、構造物中の格子欠陥、すなわち、将来、亀裂生成が予想される亀裂発生の虞のある部分6xに捕獲され、エネルギが511keVの陽電子消滅γ線10xを放出して消滅する。
【0041】
このため、エネルギ弁別機能を有する信号処理部23では、二次元放射線検出器2からの入力信号のうちのエネルギが511keVの陽電子消滅γ線10xを弁別し、そのエネルギ弁別された511keVのγ線の放射線強度と、二次元位置分布を算出処理し、処理結果である格子欠陥の二次元位置分布を情報記憶部4に出力することになる。
【0042】
そして、上記のように構成された放射線検査装置21による、例えば原子力発電所の原子炉構造物等における表面がクラッド6aで覆われた放射化している検査部位6の表面形状の放射線検査は、次のように行なわれる。
【0043】
先ず、二次元放射線検出器2を、検査対象の検査部位6に対して検出面2aが所定離間距離を設けて対向するように配置する。次に、二次元放射線検出器2によって、放射化した検査部位6からの自発的なX線及びγ線10の放射線強度と対応する位置を検出する。二次元放射線検出器2で検出した検査部位6の各放射線強度とそれらの検出位置は、信号処理部22に出力される。
【0044】
続く、信号処理部22では、二次元放射線検出器2からの各放射線のうちから、Co-60からのエネルギの高いγ線が格子欠陥で捕獲され放出されたエネルギが511keVの陽電子消滅γ線10xをエネルギ弁別し、エネルギ弁別された511keVのγ線の放射線強度と、二次元位置分布を算出する。そして、算出された放射線強度の二次元位置分布を放射線強度と共に情報記憶部4に記憶させる。
【0045】
その後、演算解析部23において、情報記憶部4に記憶させた放射線強度と、その二次元位置分布を解析し、分布形状が変化する部分があるか否かの検出を行う。そして、検出した変化部分について、その形状、大きさを予め設定した判断基準と比較し、判断基準を超える場合には、それを亀裂発生の虞のある部分6xであると判断し、亀裂発生の虞のある部分6xの存在を位置情報と共に出力する。
【0046】
以上のように、上記構成とすることで、エネルギが511keVのγ線の放射線強度の変化を、その位置情報と共に調べることで亀裂発生の虞のある部分6xを検出することが容易に行えるようになり、また、検査部位6の表面がクラッド6aで覆われていても、亀裂発生の予知を行うことができる。
【0047】
なお、信号処理部22については、第1の実施形態における信号処理部3のように、放射線強度を放射線の個数に換算する演算手段を備えるように構成して、エネルギ弁別した後の511keVのγ線の放射線強度を放射線の個数に換算した後、演算された放射線個数による放射線強度の二次元位置分布を算出するようにし、また、演算解析部23についても、第1の実施形態における演算解析部5のように、個数換算された放射線強度について標準偏差等を求める統計処理を行えるように構成するようにしてもよい。
【0048】
このようにすることで、第1の実施形態におけると同様に、統計処理による判別が容易に行えるようになり、亀裂発生の虞のある部分6xを放射線強度が弱い環境下においても高い精度で検出でき、亀裂発生の予知を高い検査精度のもとに行うことができる。
【0049】
また、演算解析部23を、第2の実施形態における演算解析部13のように、エネルギ弁別した後の511keVのγ線の放射線強度について、二次元位置分布上に設定した平行な複数本の直線、または曲線上の放射線強度を各線に沿ってそれぞれ積分する演算手段を有する構成としてもよい。
【0050】
このようにすることで、第2の実施形態におけると同様に、二次元位置分布上に設定した線上の511keVのγ線の放射線強度を各線に沿ってそれぞれ積分して得た各積分値による強度分布の形状を解析することができ、分布形状の変化から亀裂発生の虞のある部分6xを放射線強度が弱い環境下においても高い精度で検出でき、亀裂発生の予知を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0051】
2…二次元放射線検出器
3,12,22…信号処理部
4…情報記憶部
5,13,23…演算解析部
6…検査部位
6a…クラッド
6f…亀裂
6x…亀裂発生の虞のある部分
9…散乱X線
10…X線及びγ線
10x…陽電子消滅γ線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する検査部位からの放射線の強度を検出位置と対応させて検出する二次元放射線検出器と、この二次元放射線検出器の出力信号から前記放射線強度の二次元位置分布を算出する信号処理部と、この信号処理部での処理結果を記憶する情報記憶部と、この情報記憶部に記憶された情報に基づく解析を行い、前記検査部位の表面形状についての解析結果を出力する演算解析部を備える放射線検査装置であって、
前記信号処理部が、前記放射線の強度を放射線の個数に換算する演算手段を備え、演算された放射線個数による前記放射線強度の二次元位置分布を算出することを特徴とする放射線検査装置。
【請求項2】
対向する検査部位からの放射線の強度を検出位置と対応させて検出する二次元放射線検出器と、この二次元放射線検出器の出力信号から前記放射線強度の二次元位置分布を算出する信号処理部と、この信号処理部での処理結果を記憶する情報記憶部と、この情報記憶部に記憶された情報に基づく解析を行い、前記検査部位の表面形状についての解析結果を出力する演算解析部を備える放射線検査装置であって、
前記演算解析部が、前記情報記憶部に記憶された前記放射線強度の二次元位置分布上に設定した平行な複数本の直線、または曲線上の放射線強度を各線に沿ってそれぞれ積分する演算手段を有すると共に、算出された各積分値の分布をもとに前記検査部位の表面形状の解析を行うことを特徴とする放射線検査装置。
【請求項3】
対向する検査部位からの放射線の強度を検出位置と対応させて検出する二次元放射線検出器と、この二次元放射線検出器の出力信号から所定の放射線を弁別すると共に弁別された放射線の強度の二次元位置分布を算出する信号処理部と、この信号処理部での処理結果を記憶する情報記憶部と、この情報記憶部に記憶された情報に基づく解析を行い、前記検査部位の表面形状についての解析結果を出力する演算解析部を備える放射線検査装置であって、
前記信号処理部が、放射化された前記検査部位から放射され前記二次元放射線検出器で検出され出力された放射線のうちの511keVのγ線を弁別するエネルギ弁別機能を有し、かつ弁別された前記511keVのγ線の強度と二次元位置分布を算出することを特徴とする放射線検査装置。
【請求項4】
前記信号処理部が、弁別された前記511keVのγ線の強度を放射線の個数に換算する演算手段を備え、演算された放射線個数による前記511keVのγ線の強度と二次元位置分布を算出することを特徴とする請求項3記載の放射線検査装置。
【請求項5】
前記演算解析部が、前記情報記憶部に記憶された前記511keVのγ線の強度の二次元位置分布上に平行な複数本の直線、または曲線を設定して、設定した各線上の放射線強度を各線に沿ってそれぞれ積分する演算手段を有すると共に、算出された各積分値の分布をもとに前記検査部位の表面形状の解析を行うことを特徴とする請求項3記載の放射線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−243361(P2010−243361A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93182(P2009−93182)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】