説明

放射線源と蛍光材料を含む照明システム

放射線源と、この放射線源によって放射された光の一部を吸収して、その吸収した光の波長と異なる波長の光を放射できる少なくとも1種のリン光体を含む蛍光材料とを含む照明システムであって、前記少なくとも1種のリン光体が、一般式(Sr1-x-y-zCaxBay)aSibAlcNdOe:Ybz(式中、0≦x≦1;0≦y≦1;0.001<z<0.2;0<a<2;0<b≦2;0<c≦2;0<d<7;0<e<2)の黄色-赤色発光イッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートである照明システムは、特に放射線源としての発光ダイオードに関連して高い光度と演色評価数を有する光源を提供することができる。一般式(Sr1-x-y-zCaxBay)aSibAlcNdOe:Ybz(式中、0≦x≦1;0≦y≦1;0.001<z<0.2;0<a≦2;0<b≦2;0<c<2;0<d<7;0<e<2)の赤色から黄色を発光するイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートは、電磁スペクトルの近UVから青色範囲の一次放射線によって効率的に励起しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔発明の背景〕
本発明は、一般的に、放射線源とリン光体を含む蛍光材料とを含む照明システムに関する。本発明は、該照明システムで使用するためのリン光体にも関する。
さらに詳細には、本発明は、ルミネッセンスダウン変換と、紫外又は青色放射線を放射する放射線源をもとにした加法混色とによって特有の着色光(白色光を含む)を生成するためのリン光体を含む照明システム及び蛍光材料に関する。放射線源としての発光ダイオードを特に熟慮する。
最近、放射線源として発光ダイオードを用いて白色発光照明システムを製造する種々の試みが為されている。赤色、緑色及び青色発光ダイオードの配列によって白色光を生成する場合、発光ダイオードのトーン、ルミネッセンス及び他の因子の変異のため所望トーンの白色光を生成できないという問題があった。
この問題を解決するため、以前に種々の照明システムが開発されており、このシステムは、リン光体を含む蛍光材料を用いて発光ダイオードの色を変換して可視白色光照明を提供する。
以前の白色光照明システムは、特に三色(RGB)アプローチ、すなわち3色、つまり赤、緑及び青色の混合に基づき、この場合、出力光の成分はリン光体及び/又はLEDの一次発光によって与えられる。或いは、二番目の単純な解決法では、二色(BY)アプローチ、すなわち黄色と青色の混合に基づき、この場合、出力光の黄色二次成分は黄色リン光体によって与えられ、青色成分はリン光体により、又は青色LEDの一次発光によって与えられる。
【0002】
特に、例えば米国特許第5,998,925号で開示されているような二色アプローチは、Y3Al5O12:Ce(YAG-Ce3+)リン光体と結合したInGaNベース半導体の青色発光ダイオードを使用する。YAG-Ce3+リン光体をInGaN LED上に被覆し、該LEDから放射された青色光の一部が該リン光体によって黄色に変換される。LEDから放射された青色光の別の部分はリン光体を透過する。従って、このシステムは、LEDから放射される青色光と、リン光体から放射される黄色光の両方を発する。青色と黄色の混合発光帯は、中間70代の典型的なCRIの観察者及び約6000K〜約8000Kの範囲の色温度Tcによって白色として知覚される。
米国特許第5,998,925号のLEDの懸念は、“白色”出力光が真の演色にとって望ましくない色バランスを有することである。
真の演色にとって示性数は演色評価数(color-rendering index)(CRI)である。演色評価数の測定は、照明システムの演色を黒体ラジエーターの演色とどうやって比較するかの相対的な測定である。照明システムによって照射されている一組の試験色の色座標が、黒体ラジエーターによって照射されている同一試験色の座標と同じ場合、CRIは100に等しい。
真の演色は、通常、人間の可視環境の種々の情報を与えるという役割を有する色として重要な性質である。色は、道路上又はトンネル内で車を運転しているカードライバーが受ける可視情報にとって特に大きい役割を有する。例えば、低いCRIのランプで照明されている道路上及びトンネル内では、道路表面上に印してある白線と黄線を区別することが困難である。
また、色の認識で重要なことは、表面色の赤を赤色と認識することである。特に、赤は、危険、禁止、停止及び消化のような重要な意味の信号とされる。従って、安全という観点から可視環境を改良するのに重要な点は、赤色表面を増強する照明である。
このような状況で前述した二色放射線型の(BY)-ベース光源を使用する場合、可視光スペクトル(647〜700nm範囲)の赤色領域内のスペクトルの欠如のため、危険を示すたに重要な色である赤色を認識する確率が低減するという問題が生じる。出力白色光における赤色欠損は、照射された赤色物体が、よくバランスのとれた色の特徴を有する白色光下で現れるであろう色の強度より低い色の強度で現れるようにする。
【0003】
〔発明の簡単な概要〕
従って、近UVから青色範囲の放射線源によって励起しやすく、かつ黄色から赤色の可視範囲で発光する新しいリン光体を提供することが要望されている。
一般的な目的のための照明システムにとって望ましい特徴は、経済的費用でも高い輝度である。
従って、本発明は、放射線源と、この放射線源によって放射された光の一部を吸収して、その吸収した光の波長と異なる波長の光を放射できる少なくとも1種のリン光体を含む蛍光材料とを含む照明システムを提供する。ここで、前記少なくとも1種のリン光体は、下記一般式のイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートである:
(Sr1-x-y-zCaxBay)aSibAlcNdOe:Ybz(式中、0≦x≦1;0≦y≦1;0.001≦z≦0.2;0<a≦2;0<b≦2;0<c≦2;0<d≦7;0<e≦2)。
【0004】
本発明の照明システムは、色に関してよくバランスのとれた複合白色出力光を提供できる。特に、この複合白色出力光は、通常の照明システムより大量の赤色範囲の発光を有する。この特徴は、該デバイスを、真の演色が必要な用途にとって理想的にする。
本発明のこのような用途として、とりわけ、交通照明、街路照明、安全照明及び自動車工場の照明、並びに車及び交通用の信号照明が挙げられる。
放射線源として特に考えられるものは発光ダイオードである。
【0005】
本発明の第一局面により、放射線源として420〜480nmの範囲のピーク発光波長を有する青色発光ダイオードと、一般式(Sr1-x-y-zCaxBay)aSibAlcNdOe:Ybz(式中、0≦x≦1;0≦y≦1;0.001≦z≦0.2;0<a≦2;0<b≦2;0<c≦2;0<d≦7;0<e≦2)のイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートである少なくとも1種のリン光体を含む蛍光材料とを含む白色光照明システムが提供される。
このような照明システムは、操業中に白色光を提供するだろう。LEDによって放射された青色光がリン光体を励起させ、該リン光体に黄色光を放射させる。LEDによって放射された青色光は該リン光体を透過し、該リン光体によって放射された黄色光と混ざる。見る人は、この青色と黄色の混合光を白色光として知覚する。
必須因子は、前記イッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケート型の黄色から赤色のリン光体が非常に広帯域なので、全スペクトル領域にわたっても十分な比率の発光を有することである。
【0006】
第一局面の一実施形態により、本発明は、放射線源として460〜480nmの範囲のピーク発光波長を有する青色発光ダイオードと、一般式(Sr1-x-y-zCaxBay)aSibAlcNdOe:Ybz(式中、0≦x≦1;0≦y≦1;0.001≦z≦0.2;0<a≦2;0<b≦2;0<c≦2;0<d≦7;0<e≦2)のイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケート及び少なくとも1種の第2のリン光体を含む蛍光材料とを含む白色光照明システムが提供される。
前記蛍光材料がイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケート型のリン光体と少なくとも1種の第2のリン光体のリン光体ブレンドを含む場合、本発明の白色光照明システムの演色がさらに改良される。
特に、この実施形態の蛍光材料は、一般式(Sr1-x-y-zCaxBay)aSibAlcNdOe:Ybz(式中、0≦x≦1;0≦y≦1;0.001≦z≦0.2;0<a≦2;0<b≦2;0<c≦2;0<d≦7;0<e≦2)のイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートと、赤色リン光体とを含むリン光体ブレンドでよい。
該赤色リン光体は、群(Ca1-xSrx)S:Eu(式中、0≦x≦1)及び(Sr1-x-yBaxCay)2-zSi5-aAlaN8-aOa:Euz(式中、0≦a<5、0<x≦1、0≦y≦1かつ0<z≦1)から選択されるEu(II)-活性化リン光体の群から選択される。
そうでなければ、蛍光材料は、一般式(Sr1-x-y-zCaxBay)aSibAlcNdOe:Ybz(式中、0≦x≦1;0≦y≦1;0.001≦z≦0.2;0<a≦2;0<b≦2;0<c≦2;0<d≦7;0<e≦2)のイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートと、黄色から緑色のリン光体とを含むリン光体ブレンドでよい。このような黄色から緑色のリン光体は、(Ba1-xSrx)2SiO4:Eu(0≦x≦1)、SrGa2S4:Eu、SrSi2N2O2:Eu、Ln3Al5O12:Ce(Lnはランタン及びすべてのランタニド金属を含む)、及びY3Al5O12:Ceを含む群から選択される。
このような追加のリン光体を含む蛍光材料の発光スペクトルは、LEDの青色光及び本発明のイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケート型リン光体の黄色から赤色の光と共に、必要な色温度で良い演色の高品質白色光を得るのに適切な波長を有する。
【0007】
本発明の別の実施形態によれば、白色光照明システムであって、放射線源が、200〜420nmのUV範囲のピーク発光波長の発光を有する発光ダイオードから選択され、かつ蛍光材料が、一般式(Sr1-x-y-zCaxBay)aSibAlcNdOe:Ybz(式中、0≦x≦1;0≦y≦1;0.001≦z≦0.2;0<a≦2;0<b≦2;0<c≦2;0<d≦7;0<e≦2)のイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートである少なくとも1種のリン光体と第2のリン光体とを含む、白色光照明システムが提供される。
特に、この実施形態の蛍光材料は、一般式(Sr1-x-y-zCaxBay)aSibAlcNdOe:Ybz(式中、0≦x≦1;0≦y≦1;0.001≦z≦0.2;0<a≦2;0<b≦2;0<c≦2;0<d≦7;0<e≦2)のイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートと、青色リン光体とを含む白色発光リン光体ブレンドを含みうる。
このような青色リン光体は、BaMgAllo017:Eu、Ba5SiO4(C1,Br)6:Eu、CaLn2S4:Ce(Lnはランタン及びすべてのランタニド金属を含む)及び(Sr,Ba,Ca)5(PO4)3Cl:Euを含む群から選択される。
【0008】
本発明の第ニ局面は、赤色から黄色の光を放射する照明システムを提供する。本発明の出願は、安全照明並びに車及び交通用の信号照明を包含する。
特に黄色から赤色の光の照明システムであって、放射線源が400〜490nmの範囲のピーク発光波長の発光を有する青色発光ダイオードから選択され、かつ蛍光材料が一般式(Sr1-x-y-zCaxBay)aSibAlcNdOe:Ybz(式中、0≦x≦1;0≦y≦1;0.001≦z≦0.2;0<a≦2;0<b≦2;0<c≦2;0<d≦7;0<e≦2)のイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートである少なくとも1種のリン光体を含む、照明システムが熟考される。
また、黄色から赤色の光の照明システムであって、放射線源が200〜400nmのUV範囲のピーク発光波長の発光を有する発光ダイオードから選択され、かつ蛍光材料が一般式(Sr1-x-y-zCaxBay)aSibAlcNdOe:Ybz(式中、0≦x≦1;0≦y≦1;0.001≦z≦0.2;0<a≦2;0<b≦2;0<c≦2;0<d≦7;0<e≦2)のイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートである少なくとも1種のリン光体を含む、照明システムも熟考される。
【0009】
本発明の別の局面は、放射線源によって放射された光の一部を吸収して、その吸収した光の波長と異なる波長の光を放射できるリン光体であって、前記リン光体が一般式(Sr1-x-y-zCaxBay)aSibAlcNdOe:Ybz(式中、0≦x≦1;0≦y≦1;0.001≦z≦0.2;0<a≦2;0<b≦2;0<c≦2;0<d≦7;0<e≦2)のイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートである、リン光体を提供する。
該蛍光材料は、200nm〜400nmの波長を有するUV-A放射で励起しうるが、およそ400〜490nmの波長を有する青色発光ダイオードによって放射された青色光によって、さらに高効率で励起される。従って、該蛍光材料は、窒化物半導体発光成分の青色光を白色光に変換するための理想的な特徴を有する。
このリン光体は広帯域エミッターであり、その可視発光が非常に広いので、該可視発光が優先的に位置する80nmの波長範囲がない。このイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートリン光体は、非常に効率的に、可視スペクトルの赤色から黄色のスペクトル範囲の広域帯を発光する。全変換効率は90%まででありうる。
【0010】
リン光体のさらなる重要な特徴として以下のものが挙げられる:1)典型的デバイスの操作温度(例えば80℃)におけるルミネッセンスの熱的消光に対する耐性;2)デバイス製作で使う封入樹脂を妨害する反応性の欠如;3)可視スペクトル内のデッド吸収を最小限にするのに適した吸収プロフィール;4)デバイスの操作寿命にわたって時間的に安定した発光出力;5)リン光体の励起及び発光特性の組成的に制御されるチューニング。
このイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケート型リン光体は、コアクチベーターとしてユーロピウム(II)及び他のカチオン(カチオンの混合物を含む)をも含みうる。
特に、本発明は、特有のリン光体組成物Sr2Si2N2O2:Ybz(式中0.001≦z≦0.2)に関し、この組成物は、80〜90%の高量子効率、200nm〜500nmの範囲における60〜80%の高吸光度、約615〜625nmのピーク波長を有する発光スペクトル、及び室温〜100℃における熱的消光によるルミネッセンスルーメン出力の10%未満の低損失を示す。
特有のリン光体組成物Sr2Si2N2O2:Ybz(式中0.001≦z≦0.2)は、低い色温度と改良された演色を有する白色発光リン光体変換LEDにおけるリン光体として特に有益である。
Sr2Si2N2O2:Ybz(式中0.001≦z≦0.2)のユーロピウム(II)との共ドーピングが、542nmと620nmに2つのピーク波長領域を含む発光スペクトルを有するルミネッセンス材料をもたらす。
このリン光体は、元素アルミニウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ガドリニウム及びルテニウムのフッ化物及び正リン酸塩、アルミニウム、イットリウム及びランタンの酸化物、並びにアルミニウムの窒化物の群から選択されるコーティングを有してよい。
【0011】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、放射線源を含有するいずれの構成でもよい照明システムにおけるリン光体としてのイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートに焦点を合わせる。前記放射線源としては、限定するものではないが、放電ランプ、蛍光ランプ、LED、LD及びX線管が挙げられる。本明細書では、用語“放射線”は、好ましくは電磁スペクトルのUV及び可視領域の放射線を包含する。
本リン光体の使用は数々の照明で考えられるが、本発明は、発光ダイオード、特にUV発光ダイオード及び青色発光ダイオードに特に言及して記載し、かつその特定の用途を供給する。
本発明の蛍光材料は、イッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートとして構成される。該リン光体は一般式(Sr1-x-y-zCaxBay)aSibAlcNdOe:Ybz(式中、0≦x≦1;0≦y≦1;0.001≦z≦0.2;0<a≦2;0<b≦2;0<c≦2;0<d≦7;0<e≦2)に一致する。この分類のリン光体材料は、置換オキソニトリドシリケートの活性化ルミネッセンスに基づく。
一般式(Sr1-x-y-zCaxBay)aSibAlcNdOe:Ybz(式中、0≦x≦1;0≦y≦1;0.001≦z≦0.2;0<a≦2;0<b≦2;0<c≦2;0<d≦7;0<e≦2)のリン光体は、SiON3-四面体から成り、連結して二次元の枠組みを形成している(Si2N2O2)2-単位の層状態で主成分がケイ素、窒素及び酸素のホスト格子を構成している。N原子が3個のSi原子を架橋し、該Si原子の末端にO原子が結合している。Al-O-単位がSi-N-単位と置き換わってもよい。6個の酸素原子が、ゆがんだ三方晶プリズム様式で、ストロンチウム、カルシウム及びバリウムのアルカリ土類カチオン並びにイッテルビウム及び究極的にはコアクチベーターと配位結合する。
図4は、基礎ホスト格子Sr2Si2N2O2の結晶構造を示しており、ストロンチウムカチオンがイッテルビウム(II)-カチオンと置き換わってもよい。
当該材料のホスト格子は、例えば、イッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートSr2Si2N2O2:Ybのような5元素(2カチオン)オキソニトリドシリケートでよく、或いは例えば、イッテルビウム(II)-活性化カルシウム-ストロンチウム-オキソニトリドシリケート(Sr,Ca)2Si2N2O2:Ybのような5元素より多い元素を含んでよい。
特に、基礎ホスト格子内において、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムの二価アルカリ土類金属イオンの、二価貴金属、例えばユーロピウム(II)による置換が可能である。
イッテルビウム(II)の比率zは、好ましくは0.001<z<0.2の範囲内である。
イッテルビウム(II)の比率zが0.001以下の場合、イッテルビウム(II)-カチオンによる光ルミネッセンスの励起発光中心の数が減少するのでルミネッセンスが減少し、zが0.2を超えると、密度消光が起こる。密度消光は、発光強度の低減を意味し、蛍光材料のルミネッセンスを増加するために添加される活性化剤の濃度が最適レベルを超えて増加すると起こる。
【0012】
イッテルビウム-活性化オキソニトリドシリケート中のいくつかのイッテルビウムをコアクチベーターとしてユーロピウム(II)で置換すると、通常可視スペクトルの橙色から黄色の領域に集中している、イッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートリン光体由来の典型的な広帯域二次発光の代わりに、可視スペクトルの赤色領域に集中する二次発光をユーロピウムが生じさせるという効果がある。
このイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートリン光体は、電磁スペクトルの可視部より高エネルギーの電磁スペクトル部に反応性である。特に、本発明のリン光体は、200〜400nmのような波長のUV-発光を供給する放射線源、例えばUV-LEDによって特に励起しうるが、400〜490nmの波長を有する青色を供給する放射線源、例えば青色を発光するLEDによって、より高い効率で励起される。従って、本蛍光材料は、窒化物半導体発光ダイオードの青色光を白色光に変換するための理想的な特徴を有する。
【0013】
本発明のイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートリン光体の製造方法は特に限定されないが、イッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケート蛍光材料を与える出発原料の混合物を燃やすことによって製造できる。
例えば、SrSi2N2O2:Yb2+で表される好ましい化合物の1つは、出発原料として酸化イッテルビウム、炭酸ストロンチウム及び窒化ケイ素を秤量かつコンパウンドしてSrSi2N2O2:Yb2%までのモル比を得てから燃やす方法で製造される。
99.9%以上の高純度を有し、平均粒径が1μm以下の微粒子の形態の出発原料を好ましく使用することができる。
まず第一に、出発原料(すなわちアルカリ土類の炭酸塩、イッテルビウム化合物、例えば酸化物、及びケイ素-窒素化合物、例えばケイ素ジイミド又は窒化ケイ素)を、ボールミル、V-型ミキサー、スターラー等のような種々の公知のいずれかの混合法を利用する乾式及び/又は湿式プロセスによってよく混ぜ合わせる。
得られた混合物を、アルミナるつぼ及びタングステンボートのような耐熱容器に入れてから電気炉内で燃やす。燃焼の好ましい温度は、1,200〜1,500℃の範囲である。
燃焼雰囲気は特に限定されないが、例えば、窒素及びアルゴン等のような不活性ガスと、0.1〜10体積%の比率の水素とを含む雰囲気のような還元雰囲気内で燃焼を行うことが好ましい。燃焼時間は、種々の条件、例えば容器に装填する混合物の量、燃焼温度及び生成物を炉から取り出すときの温度によって決まるが、一般的に2〜4時間の範囲内である。
【0014】
上記方法で得られた材料を、例えば、ボールミル、ジェットミル等を用いて粉砕することができる。さらに、洗浄及び分類を行うことができる。結果の顆粒状リン光体の結晶化度を高めるため、再燃焼が勧められる。
次に、生成ルミネッセンス材料を粉砕し、水とエタノールで洗浄し、乾燥させて篩う。黄色粉末が得られ、UV及び青色励起下で621nmにて効率的に発光する。色点はx=0.578かつy=0.418にある。ルーメン当量は266lm/Wである。
燃焼後、該粉末を粉末X線回折(Cu、Kα-線)で特徴づけすると、すべての化合物が生成したことを示した。図2は、SrSi2N2O2のX線回折データを示し、図3はSrSi2N2O2:Yb2+のX線回折データを示す。
イッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケート型の各リン光体は、電磁スペクトルのUVA又は青色範囲の放射線で励起されると、黄色から赤色の蛍光を発する。
本明細書の添付図面の図5に、SrSi2N2O2:Yb2+の励起、発光及び反射スペクトルを示す。
該励起スペクトルから、イッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートリン光体SrSi2N2O2:Yb2+は、254nm〜460nmの波長の放射線で効率的に励起されうることも分かる。
365nmの波長の放射線で励起されると、SrSi2N2O2:Yb2+が広帯域の発光を与え、その615〜625nmのピーク波長が700nmに減退していくことが分かる。
【0015】
好ましくは、本発明のイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケート型リン光体は、元素アルミニウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ガドリニウム及びルテニウムのフッ化物及び正リン酸塩、アルミニウム、イットリウム及びランタンの酸化物並びにアルミニウムの窒化物によって形成される群から選択される1つ以上の化合物の薄く均質の保護層でコーティングされうる。
この保護層の厚さは慣習的に0.001〜0.2μmであり、非常に薄いので、放射線源の放射線はエネルギーの実質的損失なしで透過できる。例えば湿式コーティング法として気相からの蒸着によって、これら材料のコーティングをリン光体粒子上に施すことができる。
【0016】
本発明は、放射線源と、少なくとも1種の一般式(Sr1-x-y-zCaxBay)aSibAlcNdOe:Ybz(式中、0≦x≦1;0≦y≦1;0.001≦z≦0.2;0<a≦2;0<b≦2;0<c≦2;0<d≦7;0<e≦2)のイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートを含む蛍光材料とを含む照明システムにも関する。
放射線源として、半導体光放射エミッター及び電気的励起に応じて光線を発する他のデバイスが挙げられる。半導体光放射エミッターとして、発光ダイオードLEDチップ、発光ポリマー(LEP)、有機発光デバイス(OLED)、高分子発光デバイス(PLED)等が挙げられる。
さらに、本発明のリン光体組成物と共に放射線源として使うため、放電ランプ及び蛍光ランプ、例えば低圧放電及び高圧放電水銀ランプ、イオウ放電ランプ、並びに分子ラジエーターをもとにした放電ランプで見られる発光成分のような発光成分も考慮される。
本発明の好ましい実施形態では、放射線源は発光ダイオード(LED)である。
【0017】
本発明では、発光ダイオードとイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートリン光体組成物とを含むいずれの構成の照明システムも考慮されるが、好ましくは、上述したように、組み合わせて、LEDが放射する一次UV又は青色光で照射されたときに特有の色又は白色光を達成できる他の周知のリン光体を追加する。
以下、図1に示される放射線源と蛍光材料を含むこのような照明システムの一実施形態の詳細な構成について説明する。
図1は蛍光材料を含むコーティングを有するチップ型発光ダイオードの概略図を示す。このデバイスは、放射線源としてチップ型発光ダイオード(LED)1を含む。発光ダイオードダイスは反射カップ鉛フレーム2内に配置される。ダイス1は、結合ワイヤー7を介して第1端子6に連結され、かつ第2電気端子6に直接結合されている。反射カップの凹所は、本発明の蛍光材料を含むコーティング材料で充填され、反射カップ内に埋め込まれたコーティング層を形成している。リン光体3、4は別々に、又は混合物で適用される。
コーティング材料は典型的にリン光体又はリン光体ブレンドを封入するためのポリマー5を含む。この実施形態では、リン光体又はリン光体ブレンドは、封入体に対して高い安定特性を示すべきである。好ましくは、ポリマーは有意な光散乱を防止するため光学的にクリアである。LED業界ではLED照明システムを製造するための種々のポリマーが知られている。
一実施形態では、ポリマーはエポキシ及びシリコーン樹脂から成る群より選択される。ポリマー前駆体である液体にリン光体混合物を添加して封入を達成することができる。例えば、リン光体混合物は顆粒状粉末でよい。ポリマー前駆液体中にリン光体粒子を導入すると、スラリー(すなわち、粒子の懸濁液)が形成される。重合すると、リン光体混合物は、封入によって適所に強固に固定される。一実施形態では、蛍光材料とLEDダイスを両方ともポリマーに封入する。
透明なコーティング材料は、光拡散性粒子、有利にはいわゆるディフューザーを含みうる。このようなディフューザーの例は、鉱物フィラー、特にCaF2、TiO2、SiO2、CaCO3若しくはBaSO4又はいずれかの他の有機顔料である。これら材料を簡単なやり方で上記樹脂に添加することができる。
【0018】
操作では、電力をダイスに供給してダイスを活性化する。活性化されると、ダイスは一次光、例えば青色光を放射する。放射された一次光の一部が完全又は部分的に、コーティング層内の蛍光材料によって吸収される。すると、蛍光材料が二次光、すなわち一次光の吸収に応じて、十分に広帯域(特に赤色の有意な比率を有する)の長いピーク波長を有する、変換された光、主に黄色光を放射する。放射された一次光の残りの未吸収部分は、二次光と共に蛍光層を透過する。封入は、出力光として一般的な方向に未吸収一次光と二次光を方向づける。従って、出力光は、ダイスから放射された一次光と、蛍光層から放射された二次光とで構成される複合光である。
本発明の照明システムの出力光の色温度又は色点は、スペクトル分布及び一次光と比較した二次光の強度によって変化するだろう。
第一に、一次光の色温度又は色点は発光ダイオードの適切な選択によって変化しうる。
第二に、二次光の色温度又は色点はルミネッセンス材料中のリン光体、その大きさ及びその濃度の適切な選択によって変化しうる。さらに、これらの取り決めは有利には、ルミネッセンス材料にリン光体ブレンドを使用する可能性を与え、結果として、有利には所望の色相をさらに正確に設定することができる。
【0019】
本発明の一局面によれば、照明システムの出力光は“白色”光に見えるようなスペクトル分布を有しうる。
第一局面では、本発明の白色発光照明システムは、有利には、青色発光ダイオードによって放射された青色放射線を補色の波長範囲に変換して二色白色光を形成するようなルミネッセンス材料を選択することによって製造される。
この場合、イッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートリン光体を含むルミネッセンス材料を用いて黄色光が生成される。さらに、第2の蛍光材料を用いてこの照明システムの演色を改良することもできる。
特に良い結果は、その発光最大値が400〜490nmにある青色LEDで達成される。特にイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートの励起スペクトルを考慮すると、445〜468nmが最適であることが分かった。
【0020】
本発明の白色発光照明システムは、特に好ましくは、無機ルミネッセンス材料SrSi2N2O2:Yb2+を、ルミネッセンス変換封入又は層を生成するために使用するシリコン樹脂と混合することによって実現される。
462nmのInGaN発光ダイオードによって放射された青色放射線の一部が無機ルミネッセンス材料SrSi2N2O2:Yb2+によって橙色スペクトル領域にシフトされ、結果として、青色に対して補色である波長範囲にシフトされる。人間の観察者は、青色の一次光と黄色発光リン光体の二次光との組合せを白色光として知覚する。
図6は、蛍光材料として、462nmで一次発光を有する青色発光InGaNダイスとSrSi2N2O2:Yb2+とを含み、一緒に、高品質の白色感覚を与える全体的なスペクトルを形成する、このような照明システムの発光スペクトルを示す。
先行技術のLEDによって生成される白色出力光のスペクトル分布と比較する場合、スペクトル分布の見掛けの差異は、可視スペクトルの赤色領域内にあるピーク波長のシフトである。従って、本照明システムによって生成される白色出力光は、先行技術のLEDによって生成される出力光に比し、有意な追加量の赤色を有する。
【0021】
第二実施形態では、本発明の白色発光照明システムは、有利には、青色発光ダイオードによって放射された青色放射線が補色の波長範囲に変換されて、多色白色光を形成するようなルミネッセンス材料を選択することによって製造される。この場合、イッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートリン光体と第2のリン光体のブレンドを含むルミネッセンス材料を用いて黄色光が生成される。
青色発光LEDと黄色から赤色発光イッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートリン光体と共に、全スペクトル範囲をカバーする追加の赤色及び緑色広帯域エミッターリン光体を使用することによって、一様な高演色の白色発光を得ることが可能である。
有用な第2のリン光体とその光学特性を下表2にまとめる。
【0022】
表2:

【0023】
ルミネッセンス材料は、2種のリン光体、すなわち黄色から赤色のイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートリン光体と、群(Ca1-xSrx)S:Eu(式中、0≦x≦1)及び(Sr1-x-yBaxCay)2Si5-aAlaN8-aOa:Eu(式中、0≦a<5、0<x≦1かつ0≦y≦1)から選択される赤色リン光体とのブレンドでよい。
ルミネッセンス材料は、2種のリン光体、例えば、黄色から赤色のイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートリン光体と、(Ba1-xSrx)2SiO4:Eu(式中、0≦x≦1)、SrGa2S4:Eu及びSrSi2N2O2:Euを含む群から選択される緑色リン光体とのブレンドでよい。
ルミネッセンス材料は、3種のリン光体、例えば、黄色から赤色のイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートリン光体と、群(Ca1-xSrx)S:Eu(式中、0≦x≦1)及び(Sr1-x-yBaxCay)2Si5-aAlaN8-aOa:Eu(式中、0≦a<5、0<x≦1かつ0≦y≦1)から選択される赤色リン光体と、(Ba1-xSrx)2SiO4:Eu(式中、0≦x≦1)、SrGa2S4:Eu及びSrSi2N2O2:Euを含む群から選択される黄色から緑色のリン光体とのブレンドでよい。
【0024】
本発明の白色発光照明システムは、特に好ましくは、3種のリン光体の混合物を含む無機ルミネッセンス材料を、ルミネッセンス変換封入又は層を生成するために使用するシリコン樹脂と混合することによって実現される。第1リン光体(1)は黄色発光オキソニトリドシリケートSrSi2N2O2:Yb2+、第2リン光体(2)は赤色発光CaS:Eu、かつ第3リン光体(3)はSrSi2N2O2:Eu型の緑色発光リン光体である。
462nmのInGaN発光ダイオードによって放射された青色放射線の一部は、無機ルミネッセンス材料SrSi2N2O2:Yb2+によって黄色スペクトル領域にシフトされ、結果として、青色に対して補色である波長範囲にシフトされる。462nmのInGaN発光ダイオードによって放射された青色放射線の別の部分は、無機ルミネッセンス材料CaS:Euによって赤色スペクトル領域にシフトされる。462nmのInGaN発光ダイオードによって放射された青色放射線のさらに別の部分は、無機ルミネッセンス材料SrSi2N2O2:Euによって緑色スペクトル領域にシフトされる。人間の観察者は、青色の一次光とリン光体ブレンドの多色二次光との組合せを白色光として知覚する。
この場合、このようにして生成される白色光の色相(CIE色度図における色点)は、混合物と濃度についての適切なリン光体の選択によって変化しうる。
第三実施形態では、本発明の白色発光照明システムは、有利には、UV発光ダイオードによって放射されたUV放射線が補色の波長範囲に変換されて二色白色光を形成するようなルミネッセンス材料を選択することによって製造される。この場合、ルミネッセンス材料によって黄色及び青色光が生成される。黄色光は、イッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートリン光体を含むルミネッセンス材料によって生成される。青色光は、BaMgAllo017:Eu、Ba5SiO4(C1,Br)6:Eu、CaLn2S4:Ce及び(Sr,Ba,Ca)5(PO4)3Cl:Euを含む群から選択される青色リン光体を含むルミネッセンス材料によって生成される。
その発光最大値が200〜400nmにあるUVA発光ダイオードと関連して特に良い結果が達成される。特にイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートの励起スペクトルを考慮すると、365nmが最適であることが分かった。
【0025】
第四実施形態では、本発明の白色発光照明システムは、有利には、UV発光ダイオードによって放射されたUV放射線が補色の波長範囲に変換されて、多色白色光(例えば加法三色、例えば青、緑及び赤によって)を形成するようなルミネッセンス材料を選択することによって製造される。
この場合、ルミネッセンス材料によって、黄色から赤色、緑色及び青色の光が生成される。
さらに、第2の赤色蛍光材料を用いて、この照明システムの演色を改良することもできる。
UV発光LED及び黄色から赤色発光イッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートリン光体と共に、全スペクトル範囲をカバーする青色及び緑色の広帯域エミッターリン光体を使用することによって、一様な高演色の白色光を生じさせることが可能である。
ルミネッセンス材料は、3種のリン光体、すなわち黄色から赤色のイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートリン光体と、BaMgAllo017:Eu、Ba5SiO4(C1,Br)6:Eu、CaLn2S4:Ce及び(Sr,Ba,Ca)5(PO4)3Cl:Euを含む群から選択される青色リン光体と、(Ba1-xSrx)2SiO4:Eu(式中、0≦x≦1)、SrGa2S4:Eu及びSrSi2N2O2:Euを含む群から選択される黄色から緑色のリン光体とのブレンドでよい。
この場合、このようにして生成される白色光の色相(CIE色度図における色点)は、混合物と濃度についての適切なリン光体の選択によって変化しうる。
【0026】
本発明のさらなる局面により、“黄色から赤色”の光であるように見えるスペクトル分布を有する出力光を放射する照明システムが熟考される。
例えば、UVA発光LED又は青色発光LEDのような一次UVA又は青色放射線源による刺激用の黄色から赤色の成分として、リン光体としてイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートを含む蛍光材料が特によく適する。
これにより、電磁スペクトルの黄色から赤色の領域で発光する照明システムを実行することができる。
第五局面では、本発明の黄色発光照明システムは、有利には、青色発光ダイオードによって放射された青色放射線が補色の波長範囲に変換されて、二色の黄色から赤色の光を形成するようなルミネッセンス材料を選択することによって製造される。
この場合、イッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートリン光体を含むルミネッセンス材料によって、黄色から赤色の光が生成される。
このLED-リン光体システムの色出力はリン光体層の厚さに非常に敏感であり、リン光体層が厚く、かつ過剰の黄色イッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートリン光体を含む場合、この厚いリン光体層を少量の青色LED光しか透過しないだろう。LED-リン光体混合システムは、該リン光体の黄色から赤色の二次光によって支配されるので、黄色から赤色に見えるだろう。従って、リン光体層の厚さは、このシステムの色出力に影響を及ぼす重要な変量である。
この場合、このようにして生成される黄色から赤色の光の色相(CIE色度図における色点)は、混合物と濃度についての適切なリン光体の選択によって変化しうる。
特に良い結果は、その発光最大値が400〜480nmにある青色LEDで達成される。特にオキソニトリドシリケートの励起スペクトルを考慮すると、445〜465nmが最適であることが分かった。
【0027】
本発明の黄色から橙色発光照明システムは、特に好ましくは、無機ルミネッセンス材料SrSi2N2O2:Yb2+を、ルミネッセンス変換封入又は層を生成するために使用するシリコン樹脂と混合することによって実現される。
462nmのInGaN発光ダイオードによって放射された青色放射線は、無機ルミネッセンス材料SrSi2N2O2:Yb2+によって、黄色から橙色のスペクトル領域にシフトされ、結果として、青色に対して補色である波長範囲にシフトされる。人間の観察者は、青色の一次光と橙色発光リン光体の過剰な二次光との組合せを黄色から橙色の光として知覚する。
第六実施形態では、本発明の黄色から赤色発光照明システムは、有利には、UV発光ダイオードによって放射されたUV放射線が、全体的に、単色の黄色から赤色の光に変換されるようなルミネッセンス材料を選択することによって製造される。この場合、該ルミネッセンス材料によって、黄色から赤色の光が生成される。
本発明の黄色発光照明システムは、特に好ましくは、無機ルミネッセンス材料SrSi2N2O2:Yb2+を、ルミネッセンス変換封入又は層を生成するために使用するシリコン樹脂と混合することによって実現される。UV発光ダイオードによって放射されたUV放射線の一部は、無機ルミネッセンス材料SrSi2N2O2:Yb2+によって橙色スペクトル領域にシフトされる。人間の観察者は、UVA一次放射線と、橙色発光リン光体の二次光との組合せを黄色から橙色の光として知覚する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】LED構造によって放射された光の経路に配置された本発明のリン光体を含む二色白色LEDランプの概略図を示す。
【図2】Cu Kα照射によって測定したSrSi2N2O2のXRDパターンを示す。
【図3】Cu Kα照射によって測定したSrSi2N2O2:Yb2+のXRDパターンを示す。
【図4】ホスト格子SrSi2N2O2の層構造を示す。
【図5】SrSi2N2O2:Yb2+の励起、発光及び反射スペクトルを示す。
【図6】蛍光材料として青色LEDとSrSi2N2O2:Yb2+を含む照明システムのスペクトルラジアンス(radiance)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源と、この放射線源によって放射された光の一部を吸収して、その吸収した光の波長と異なる波長の光を放射できる少なくとも1種のリン光体を含む蛍光材料とを含む照明システムであって、前記少なくとも1種のリン光体が、一般式(Sr1-x-y-zCaxBay)aSibAlcNdOe:Ybz(式中、0≦x≦1;0≦y≦1;0.001≦z≦0.2;0<a≦2;0<b≦2;0<c≦2;0<d≦7;0<e≦2)のイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートである照明システム。
【請求項2】
前記放射線源が発光ダイオードである、請求項1に記載の照明システム。
【請求項3】
前記放射線源が、400〜490nmの範囲のピーク発光波長の発光を有する青色発光ダイオードから選択され、かつ前記蛍光材料が、一般式(Sr1-x-y-zCaxBay)aSibAlcNdOe:Ybz(式中、0≦x≦1;0≦y≦1;0.001≦z≦0.2;0<a≦2;0<b≦2;0<c≦2;0<d≦7;0<e≦2)のイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートを含む、請求項1に記載の照明システム。
【請求項4】
前記放射線源が、400〜490nmの範囲のピーク発光波長の発光を有する発光ダイオードから選択され、かつ前記蛍光材料が、一般式(Sr1-x-y-zCaxBay)aSibAlcNdOe:Ybz(式中、0≦x≦1;0≦y≦1;0.001≦z≦0.2;0<a≦2;0<b≦2;0<c≦2;0<d≦7;0<e≦2)のイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートと第2のリン光体を含む、請求項1に記載の照明システム。
【請求項5】
前記第2のリン光体が、群(Ca1-xSrx)S:Eu(式中、0≦x≦1)及び(Sr1-x-yBaxCay)2-zSi5-aAlaN8-aOa:Euz(式中、0≦a<5、0<x≦1、0≦y≦1かつ0<z≦0.09)から選択される赤色リン光体である、請求項4に記載の照明システム。
【請求項6】
前記第2のリン光体が、(Ba1-xSrx)2SiO4:Eu(0≦x≦1)、SrGa2S4:Eu、SrSi2N2O2:Eu、Ln3Al5O12:Ce(Lnはランタン及びすべてのランタニド金属を含む)、及びY3Al5O12:Ceを含む群から選択される黄色から緑色のリン光体である、請求項4に記載の照明システム。
【請求項7】
前記放射線源が、200〜400nmのUV範囲のピーク発光波長の発光を有する発光ダイオードから選択され、かつ前記蛍光材料が一般式(Sr1-x-y-zCaxBay)aSibAlcNdOe:Ybz(式中、0≦x≦1;0≦y≦1;0.001≦z≦0.2;0<a≦2;0<b≦2;0<c≦2;0<d≦7;0<e≦2)のイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートを含む、請求項1に記載の照明システム。
【請求項8】
前記放射線源が、200〜400nmのUV範囲のピーク発光波長の発光を有する発光ダイオードから選択され、かつ前記蛍光材料が一般式(Sr1-x-y-zCaxBay)aSibAlcNdOe:Ybz(式中、0≦x≦1;0≦y≦1;0.001≦z≦0.2;0<a≦2;0<b≦2;0<c≦2;0<d≦7;0<e≦2)のイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートと第2のリン光体を含む、請求項1に記載の照明システム。
【請求項9】
前記第2のリン光体が、BaMgAllo017:Eu、Ba5SiO4(C1,Br)6:Eu、CaLn2S4:Ce、(Sr,Ba,Ca)5(PO4)3Cl:Eu及びLaSi3N5:Ceの群から選択される青色リン光体である、請求項8に記載の照明システム。
【請求項10】
前記第2のリン光体が、群(Ca1-xSrx)S:Eu(式中、0≦x≦1)及び(Sr1-x-yBaxCay)2-zSi5-aAlaN8-aOa:Euz(式中、0≦a<5、0<x≦1、0≦y≦1かつ0<z≦0.09)から選択される赤色リン光体である、請求項8に記載の照明システム。
【請求項11】
前記第2のリン光体が、(Ba1-xSrx)2SiO4:Eu(0≦x≦1)、SrGa2S4:Eu、SrSi2N2O2:Eu、Ln3Al5O12:Ce(Lnはランタン及びすべてのランタニド金属を含む)、及びY3Al5O12:Ceを含む群から選択される黄色から緑色のリン光体である、請求項8に記載の照明システム。
【請求項12】
放射線源によって放射された光の一部を吸収して、その吸収した光の波長と異なる波長の光を放射できるリン光体であって、前記リン光体が一般式(Sr1-x-y-zCaxBay)aSibAlcNdOe:Ybz(式中、0≦x≦1;0≦y≦1;0.001≦z≦0.2;0<a≦2;0<b≦2;0<c≦2;0<d≦7;0<e≦2)のイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートである、リン光体。
【請求項13】
前記リン光体が、さらにコアクチベーターを含む、請求項12に記載のリン光体。
【請求項14】
前記リン光体が、一般式SrSi2N2O2:Yb2+のイッテルビウム(II)-活性化オキソニトリドシリケートである、請求項12に記載のリン光体。
【請求項15】
前記リン光体が、元素アルミニウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ガドリニウム及びルテニウムのフッ化物及び正リン酸塩、アルミニウム、イットリウム及びランタンの酸化物、並びにアルミニウムの窒化物の群から選択されるコーティングを有する、請求項12に記載のリン光体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−521994(P2008−521994A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543948(P2007−543948)
【出願日】平成17年11月23日(2005.11.23)
【国際出願番号】PCT/IB2005/053880
【国際公開番号】WO2006/059260
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】