放熱構造体
【課題】軽量、かつ、高い放熱性能を持った放熱構造体を実現すること。
【解決手段】発熱体の少なくとも一部と接触するように配され、比重が1.0〜2.0の熱伝導性樹脂組成物から成る放熱構造体であって、発熱体からの発熱量1Wに対する発熱体と放熱構造体の接触面積S1が1〜10cm2であり、かつ、発熱体からの発熱量1Wに対する放熱構造体の表面積のうち、外気との接触面積S2が10〜50cm2であることを特徴とする放熱構造体。
【解決手段】発熱体の少なくとも一部と接触するように配され、比重が1.0〜2.0の熱伝導性樹脂組成物から成る放熱構造体であって、発熱体からの発熱量1Wに対する発熱体と放熱構造体の接触面積S1が1〜10cm2であり、かつ、発熱体からの発熱量1Wに対する放熱構造体の表面積のうち、外気との接触面積S2が10〜50cm2であることを特徴とする放熱構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子(LED素子、レーザーダイオード、EL素子等)、能動受光素子(CCD等)、中央演算装置(CPU)、画像演算装置(GPU)、インバータ素子(IGBT、FET等)、モーター類、ヒーター素子等、発熱を伴うデバイス類の実装された機器、器具等の放熱対策として用いられる放熱構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子/電気機器の中には発熱密度の高いデバイス(LED素子、レーザーダイオード、CPU、MPU等)が多数実装されており、これらデバイス駆動に高い信頼性を確保するための温度コントロール、すなわち放熱対策が極めて重要になってきている。
これらの放熱対策としては、熱伝導率の高い金属(銅、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金等)を押出成形法やダイキャスト成形法等を用いて成形してなる放熱構造体(フィン型ヒートシンク等)を発熱源近傍に配して、外界空気に効率的に熱放散する経路設計を行うことが一般的であった。(例えば特許文献1〜3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−159012号公報
【特許文献2】特開平10−092986号公報
【特許文献3】特開2004−071599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これら従来の放熱対策は、高い放熱性能を実現する上で、放熱面積確保のために外寸法及び容積が増大してしまったり、比重の大きい金属を使用しているために重量が増大してしまったりする課題がある。本発明はこれらの事情に鑑み、軽量、かつ、高い放熱性能を持った放熱構造体を実現することを課題として、為されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、発熱体の少なくとも一部と接触するように配され、比重が1.0〜2.0の熱伝導性樹脂組成物から成る放熱構造体であって、発熱体からの発熱量1Wに対する発熱体と放熱構造体の接触面積S1が1〜10cm2であり、かつ、発熱体からの発熱量1Wに対する放熱構造体の表面積のうち、外気との接触面積S2が10〜50cm2であることを特徴とする放熱構造体である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の放熱構造体は、軽量、かつ、高い放熱性能を実現することができ、重量制限のある機器類の放熱対策に特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の放熱構造体の一例(上面図・正面から見た断面図・フィン部の断面図)
【図2】本発明の放熱構造体と発熱体の接触部の一例(正面からみた断面図)
【図3】本発明の放熱構造体のLED照明具への応用例(正面からみた断面図)
【図4】本発明の放熱構造体の一例(上面図・正面から見た断面図)
【図5】本発明の放熱構造体の一例(上面図・正面から見た断面図)
【図6】本発明の放熱構造体の一例(上面図・正面から見た断面図)
【図7】本発明の放熱構造体の一例(上面図・正面から見た断面図)
【図8】本発明の放熱構造体中の凹凸部形状の一例(正面図・上面・側面から見た断面図)
【図9】本発明の放熱構造体中の凹凸部形状の一例(正面図・上面・側面から見た断面図)
【図10】本発明の放熱構造体中の凹凸部形状の一例(正面図・上面・側面から見た断面図)
【図11】本発明の放熱構造体の一例(上面図・正面から見た断面図・フィン部の断面図)
【図12】本発明の放熱構造体の一例(上面図・正面から見た断面図・電気絶縁層部の断面図)
【図13】本発明の放熱構造体中のフィン凹凸部の各部寸法に関する説明図(上面からみた断面図)
【図14】本発明の放熱構造体の一例(上面図・正面から見た断面図・フィン部の断面図)
【図15】本発明の放熱構造体の一例(上面図・正面から見た断面図・フィン部の断面図)
【図16】本発明の放熱構造体の一例(上面図・正面から見た断面図・フィン部の断面図)
【図17】本発明の放熱構造体の一例(上面図・正面から見た断面図・フィン部の断面図)
【図18】本発明の放熱構造体の一例(上面図・正面から見た断面図・フィン部の断面図)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について順次詳述する。
[放熱構造体]
本発明の放熱構造体は少なくともその一部が発熱体近傍に配置され、その接触面から発熱体の熱が伝達された後、放熱構造体を通じて熱を輸送し、最終的に放熱構造体の表面から外部空気等に熱を放散する機能を有する構造体である。本発明の放熱構造体の好ましい態様であるLED素子の放熱筐体として用いるケースで説明すると、LED実装基板側から一旦放熱筺体内部へ放熱された熱を、本発明の放熱構造体を通じて輸送し、その表面から外部空気等に熱を放散するものである。発熱体と放熱構造体の接触面積を増やすことにより、発熱体と放熱構造体の界面の伝熱性を高めることができ、また、放熱構造体と外気との接触面積を増やすことにより、放熱構造体と外気の界面の伝熱性を高めることができ、優れた放熱性能を示す。一方で、それらを実現するためには、接触面積確保のために外寸法及び容積が増大してしまうために、放熱構造体には比重の小さい材料を使用することが好ましい。
【0009】
従って、本発明の放熱構造体は、発熱体の少なくとも一部と接触するように配され、比重が1.0〜2.0の熱伝導性樹脂組成物から成る放熱構造体であって、発熱体からの発熱量1Wに対する発熱体と放熱構造体の接触面積S1が1〜10cm2であり、かつ、発熱体からの発熱量1Wに対する放熱構造体の表面積のうち、外気との接触面積S2が10〜50cm2である。なお、ここでいう発熱量Q[W]とは発熱デバイスの消費電力[W]の内、伝導熱に変換された熱量であり、予め発熱デバイス固有の変換率を調べておくことで、算出することができる。
【0010】
本発明の放熱構造体は、比重が1.0以上2.0以下の熱伝導性樹脂組成物を材料とする。比重が1.0未満の場合は、実質的に後述する熱伝導性フィラーが熱伝導性樹脂組成物内に殆ど混合されていない状態であり、十分な放熱性を得ることができない。また、比重が2.0より大きい場合は、放熱構造体の重量が大きくなり過ぎて、軽量化の要求に応えることができない。比重は好ましくは1.2以上1.8以下、より好ましくは1.3以上1.7以下である。なお、熱伝導性樹脂組成物の詳細については後述する。
【0011】
本発明の放熱構造体は、発熱体からの発熱量1Wに対する発熱体と放熱構造体の接触面積S1が1〜10cm2である。S1が1cm2未満の場合は、発熱量1Wに対する発熱体と放熱構造体の接触面積S1が小さく、接触面の熱抵抗が大きくなり過ぎるため、十分な放熱性を得ることができない。また、S1が10cm2より大きい場合は、実質的に放熱構造体の重量が大きくなってしまうため、軽量化の要求に応えることができないことがある。発熱量1Wに対するS1は、好ましくは2cm2以上9cm2以下、より好ましくは3cm2以上8cm2以下である。
【0012】
本発明の放熱構造体は、接触部が発熱体の少なくとも一部と接触するように配されているが、発熱量1Wに対する発熱体と放熱構造体の接触面積S1が本発明の範囲内であれば、接触部の形状は特に限定はなく、多種の形状が可能である。より具体的に幾つかの例を挙げると、図1、4、5はドーナツ型の接触部を持った放熱構造体、図6、7は円盤型の接触部を持った放熱構造体である。また、接触部の形状は接触面の熱抵抗をさらに小さくするために、平坦であることが好ましい。さらに、発熱体と放熱構造体は、熱放熱グリース、放熱シート等を介して、接触面の熱抵抗をさらに小さくすることも好ましい。なお、LED素子のように発熱量に対して小さいデバイス、すなわち、接触面積が小さいデバイスからの熱を放熱する場合には、LED素子をアルミニウム等の熱伝導率の高い材料で形成された面積の大きい基板に実装することで、LED素子からの発熱を基板上で均一化することができるため、このLED実装基板を発熱体とみなす。
【0013】
本発明の放熱構造体は、発熱体からの発熱量1Wに対する放熱構造体の表面積のうち、外気との接触面積S2が10〜50cm2である。S2が10cm2未満の場合は、発熱量1Wに対する外気との接触面積S2が小さく、放熱構造体の表面と外気との間の熱抵抗が大きくなり過ぎるため、十分な放熱性を得ることができない。また、S2が50cm2より大きい場合は、実質的に放熱構造体の重量が大きくなってしまうため、軽量化の要求に応えることができないことがある。発熱量1Wに対するS2は、好ましくは15cm2以上45cm2以下、より好ましくは20cm2以上40cm2以下である。
【0014】
本発明の放熱構造体は、発熱量1Wに対するS2が放熱構造体の表面積のうち、外気との接触面積S2が本発明の範囲内であれば、形状に特に制約はないが、外気との接触面積S2を確保するために、必要に応じフィン形状を付与することが好ましい。外気との接触面積の増加割合は、フィンの凹凸部の形状、サイズ、形成密度等によって決定される。すなわち、凹部の谷幅、凸部の山幅、凸部の高さ、凹凸部の曲率(全体もしくは部分的に曲面が配される場合)等が主な支配要因となる。
【0015】
高い放熱性能を実現するためには、フィンが凹凸を有する場合の凹部の平均谷幅は1〜20mmであることが好ましく、より好ましくは2〜10mm、さらに好ましくは3〜5mmである。凹部の平均谷幅が1mm未満では、外気との伝熱においては、凹部が狭すぎるために十分な空気の対流が起こらないために、放熱効率が悪くなる。逆に20mmを超える場合は、放熱構造体と外気との接触面積S2が十分な大きさとならず、十分な放熱性を得ることができない。なお、後述するが、凹部の形状パターンは特に限定はなく、多種の形状が可能である。その際、例えば凹凸の断面形状が三角形や半円形の連続であり最下部に平坦部分がない場合など、凹部の谷幅が連続的に変化する場合は、その凹部の谷幅の平均値を平均谷幅とする。
【0016】
フィンが凹凸を有する場合の凸部の平均山幅は0.5〜5mmであることが好ましく、より好ましくは0.8〜4mm、さらに好ましくは1〜3mmである。凸部の平均山幅が0.5mm未満では、凸部の先端まで十分に伝熱が為されず、十分な放熱性が得られない。逆に5mmを超える場合は、放熱構造体と外気との接触面積S2が十分な大きさとならず、十分な放熱性を得ることができない。
【0017】
凸部の平均高さは凹部の平均谷幅の1〜10倍であることが好ましく、好ましくは2〜8倍、さらに好ましくは3〜6倍である。凸部の平均高さが凹部平均谷幅の1倍未満では、放熱構造体と外気との接触面積S2が十分な大きさとならず、十分な放熱性が得られない。逆に10倍を超える場合は、凹部で十分な空気の対流が起こりにくいために、放熱効率が悪くなる。なお、後述するが、凸部の形状パターンは特に限定はなく、多種の形状が可能である。その際、例えば突起断面形状が三角形や半円形といった凸部の山幅が連続的に変化する場合は、その凸部の山幅の平均値を平均山幅とする。
【0018】
なお、フィンの凹凸部の形状や配列パターンは特に限定はなく、多種の形状、配列が可能である。凹凸部は連続的に連なった形でも、単独突起状でも良い。前者の場合、その配列方向は放熱構造体表面のいずれの方向でもよく、直線状に配列しても、曲線状に配列しても構わない。後者の場合、円柱形状、半球形状、多角形状等の一定の規則性を持って配列しても良いし、また規則性を持たずランダムに配列されてもよい。さらに、凹凸部の高さ、山幅、谷幅の寸法は連続的に変化させてもよい。より具体的に幾つかの例を挙げると、図8、9は連続直線型、図10は単独突起型である。
【0019】
放熱構造体の成形方法は特に限定はなく、多種の方法での成形が可能であるが、発熱体との接触部の平坦度、生産効率を鑑みると、射出成形法による成形が好ましい。
また、放熱構造体の外層または内層には、図11、12に例示するように、必要に応じて、電気絶縁層を設けることもできる。外層または内層を電気絶縁性の高い材料(特に体積抵抗が1011cm・Ω以上の層、より好ましくは体積抵抗が1013cm・Ω以上の層)で形成することによって、放熱構造体の電気的安全性が高まる(絶縁耐圧や静電耐圧の増大、漏れ電流低減等)ので用途に応じて好ましく用いられる。また、電気絶縁層は、より好ましくは熱伝導率の高い層であることが好ましく、少なくとも層内の一方向に対する熱伝導率が0.5W/m・K以上であることが好ましく、より好ましくは1W/m・K以上である。
【0020】
[熱伝導性樹脂組成物]
本発明の放熱構造体を形成する熱伝導性樹脂組成物は、熱伝導性フィラーを含有し、少なくとも一方向における熱伝導率が2W/m・K以上であることが好ましい。熱伝導率が2W/m・K未満では放熱構造体内の熱抵抗が大きくなってしまい、十分な放熱性が確保できないことがある。熱伝導率は好ましくは5W/m・K以上、より好ましくは10W/m・K以上である。熱伝導性樹脂組成物の熱伝導率の上限は実質40W/m・Kである。
【0021】
本発明の放熱構造体の成形に好適な熱伝導性樹脂組成物としては、マトリクス樹脂100体積部に対し、熱伝導性フィラーの含有量が10〜200体積部である樹脂組成物が好ましい。熱伝導性フィラーの含有量が10体積部未満だと高い熱伝導性が得られ難い。逆に熱伝導性フィラーの含有量が200体積部を超えると、熱伝導性フィラーを樹脂に分散させ、均一な熱伝導性樹脂組成物を得るのが困難になりやすく、また樹脂の流動性が不十分となりやすい。熱伝導フィラーの含有量は好ましくは20〜100体積部である。
【0022】
熱伝導性フィラーとマトリクス樹脂との混合は、単軸型の溶融混練装置、二軸型の溶融混練装置等の公知の溶融混練装置を用いて実施できる。
熱伝導性フィラーとしては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛などの金属酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物、窒化ホウ素、窒化アルミニウムなどの金属窒化物、酸化窒化アルミニウムなどの金属酸窒化物、炭化珪素などの金属炭化物、金、銀、銅、アルミニウムなどの金属もしくは金属合金、炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、ダイヤモンドなどの炭素材料などが挙げられ、2種類以上併用することも可能である。
【0023】
熱伝導性樹脂組成物の熱伝導率を高めるにはピッチ系黒鉛化短繊維を用いるのが好ましく、その中でもメソフェーズピッチを出発材料とした黒鉛結晶構造の非常に発達したピッチ系黒鉛化短繊維を用いることが特に好ましい。すなわち熱伝導性フィラーとして、主として、メソフェーズピッチを原料としたピッチ系黒鉛化短繊維を用いる放熱構造体が本発明の好ましい態様である。ここで主としてとは、全熱伝導性フィラー中、メソフェーズピッチが60〜100体積%、より好ましくは80〜100体積%である。黒鉛化短繊維の熱伝導性は黒鉛結晶の格子構造を伝播するフォノン振動に主に由来するため、熱伝導性を高めるには黒鉛結晶の結晶性を高めること、すなわち黒鉛結晶の格子構造ができるだけ欠陥少なく、かつ大きく広がるようにすることが好ましい。
【0024】
本発明に用いられるピッチ系黒鉛化短繊維はいわゆるミルドファイバーに該当し、その平均繊維長L1は、より好ましくは20〜500μmであることが好ましい。ここで、平均繊維長は個数平均繊維長とし、顕微鏡下で所定本数を測定し、その平均値から求めることができる。L1が20μmより小さい場合、当該短繊維同士が接触しにくくなり、高い熱伝導率を有する熱伝導性組成物を得にくくなることがある。逆にL1が500μmより大きくなる場合、マトリクス樹脂とピッチ系黒鉛化短繊維を混練する際の粘度が高くなり、ハンドリングが困難になることがある。より好ましくは、30〜300μmの範囲である。この様なピッチ系黒鉛化短繊維を得る手法として特に制限はないが、切断式、衝突式、衝撃式、気流式等の粉砕機が好適に用いられ、回転数、滞留時間、気流噴出圧、供給量等の条件を調節することにより平均繊維長を制御することができる。また、粉砕処理後のピッチ系炭素短繊維から、振動、スクリーン等による篩分け、遠心分離等の分級操作を行って、短い繊維長、または長い繊維長のピッチ系炭素短繊維を除去することにより、平均繊維長をさらに精密制御することができる。
【0025】
本発明に用いられるピッチ系黒鉛化短繊維は、黒鉛結晶からなり、六角網面の成長方向に由来する結晶子サイズが少なくとも20nm以上であることが好ましく、より好ましくは30nm以上、さらに好ましくは40nm以上である。結晶子サイズは六角網面の成長方向のいずれも、黒鉛化度(黒鉛結晶の結晶性)の高低に対応するものであり、熱物性を発現するためには、一定サイズ以上が必要である。六角網面の成長方向の結晶子サイズは、X線回折法で求めることができる。測定手法は集中法とし、解析手法としては学振法が好適に用いられる。六角網面の成長方向の結晶子サイズは、(110)面からの回折線を用いて求めることができる。
【0026】
また黒鉛化度を示す他のパラメータとして、黒鉛結晶の層間隔があり、層間隔が小さいほど結晶性が高い。黒鉛結晶の層間隔は、例えばd002のX線回折線に基づく計算値として、少なくとも0.3420nm以下であることが好ましく、より好ましくは0.3395nm以下、さらに好ましくは0.3370nm以下であることが好ましい。
【0027】
またグラフェンシート端面構造は、黒鉛化の前に粉砕を実施するか、黒鉛化の後に粉砕を実施するかにより、大きく異なる。すなわち、黒鉛化後に粉砕処理を行った場合、黒鉛化で成長したグラフェンシートが切断破断され、グラフェンシート端面が開いた状態になり易い。一方、黒鉛化前に粉砕処理を行った場合、黒鉛の成長過程でグラフェンシート端面がU字上に湾曲し、湾曲部分がピッチ系黒鉛化短繊維端部に露出した構造になり易い。このため、グラフェンシート端面閉鎖率が80%を超えるようなピッチ系黒鉛化短繊維を得るためには、粉砕を行った後に黒鉛化処理することが好ましい。
【0028】
本発明に用いられるピッチ系黒鉛化短繊維は走査型電子顕微鏡での側面の観察表面が実質的に平坦であることが好ましい。ここで、実質的に平坦であるとは、フィブリル構造のような激しい凹凸をピッチ系黒鉛化短繊維に有しないことを意味する。ピッチ系黒鉛化短繊維の表面に激しい凹凸のような欠陥が存在する場合には、マトリクスとの混練に際して表面積の増大に伴う粘度の増大を引き起こし、成形性を悪化させる。よって、表面凹凸のような欠陥はできるだけ小さい状態が望ましい。より具体的には、走査型電子顕微鏡において1000倍で観察した像での観察視野に、凹凸のような欠陥が10箇所以下であることとする。この様なピッチ系黒鉛化短繊維を得る手法としては、粉砕処理を行った後に黒鉛化処理を実施することによって、好ましく得ることができる。
【0029】
熱伝導性樹脂組成物には、熱伝導性フィラー以外に、さらに、成形性、機械物性、難燃性、その他の特性をより高めるために、ガラス繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼化アルミニウムウィスカ、窒化ホウ素ウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、アスベスト繊維、石膏繊維、金属繊維などの繊維状フィラー、ならびに、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ガラスビーズ、ガラスフレーク及びセラミックビーズ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの非繊維状フィラーも必要に応じて適宜添加することが可能である。これらは中空のものであってもよく、さらにはこれらを2種類以上併用することも可能である。ただ、上記化合物は、密度がピッチ系黒鉛化短繊維より大きなものが多く、軽量化を目的とするときには、添加量や添加比率に気を配る必要がある。
【0030】
マトリクスとする樹脂については、例えばポリエステル類及びその共重合体(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート)、ポリスチレン類(ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレンなど)及びその共重合体(スチレン−アクリロニトリル共重合体、ABS樹脂、AES樹脂など)、ポリメチルメタクリレート類及びその共重合体(特にシクロ環およびその誘導体からなる構造を含むもの)、ポリ乳酸樹脂およびその共重合体、ポリアクリロニトリル類及びその共重合体、環状ポリオレフィン類およびその共重合体(特にシクロ環を含む樹脂、例えばJSR製 登録商標「アートン」、三井化学製 登録商標「アペル」、日本ゼオン製 登録商標「ゼオネックス」等)、ポリメチルペンテン類およびその共重合体(例えば三井化学製 登録商標「TPX」等)、ポリフェニレンエーテル(PPE)類及びその共重合体(変性PPE樹脂なども含む)、脂肪族ポリアミド類及びその共重合体、ポリイミド類及びその共重合体、ポリアミドイミド類及びその共重合体、ポリカーボネート類及びその共重合体、ポリフェニレンスルフィド類及びその共重合体、ポリサルホン類及びその共重合体、ポリエーテルサルホン類及びその共重合体、ポリエーテルニトリル類及びその共重合体、ポリエーテルケトン類及びその共重合体、ポリエーテルエーテルケトン類及びその共重合体、ポリケトン類及びその共重合体、エラストマー、液晶性ポリエステル類などの液晶性ポリマー等が挙げられる。これらから一種を単独で用いても、二種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
【0031】
また熱伝導樹脂組成物には必要に応じ、輻射率(赤外線放射率)を向上する添加剤や、各種着色剤、難燃剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤等の添加物を添加しても良い。
【0032】
なお、放熱構造体を前述の熱伝導性炭素繊維(特にピッチ系黒鉛化短繊維)を含む熱伝導樹脂組成物を用いて射出成形する場合には、樹脂射出金型におけるゲート部を、放熱の対象となる発熱体(発熱デバイス等)近傍に配置することが好ましい。すなわち熱伝導性炭素繊維の配向方向は熱伝導樹脂組成物の流動方向と一致する為、発熱体近傍にゲートを設けることで、発熱体の放熱方向と熱伝導性炭素繊維の配向方向(熱伝導樹脂の熱伝導率が最大となる方向)をほぼ一致させることができ、より効率的な放熱が可能となる場合がある。
【0033】
[放熱構造体の応用用途]
本発明の放熱構造体の具体的用途として、図3にLED照明具への応用例を例示した。なお、放熱構造体の用途はこれら例示以外のシステム、構造を有するLED照明具にも応用可能であるし、またLED照明具のみに限定されるものではなく、発熱体、発熱デバイス類の放熱を必要とする機器、器具において広く応用できるものである。
【0034】
LED素子の実装されたLED実装基板は熱伝導接着層もしくは放熱シート等を介して、放熱構造体の一部に接着固定されており、この接触面でLED実装基板から放熱構造体への伝熱が行われ、その後、放熱構造体の中を熱が移動していき、放熱構造体の表面から外部空気に放熱される。また、電源部を内部に持つLED照明具においては、LED素子だけではなく、電源部も発熱体となり、放熱構造体を介して、外部空気へ放熱されることとなる。本発明では、LED素子から直接の放熱構造体への熱輸送、及び、放熱構造体から外気への熱輸送を効率的に実施することが特徴である。
【0035】
一方で、LED照明具の全体寸法、形状は各用途での要求に従い、おのずと制約がある為、放熱構造体にはできるだけサイズが小さくコンパクトなもの、そしてできるだけ軽量なものが求められ、本発明では、比重が1.0以上2.0以下の熱伝導性樹脂組成物から成ることを特徴としている。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
なお、本実施例における各値は、以下の方法に従って求めた。
(1)ピッチ系黒鉛化短繊維の平均繊維径は、JIS R7607に準じ、光学顕微鏡下でスケールを用いて60本測定し、その平均値から求めた。
(2)ピッチ系黒鉛化短繊維の平均繊維長は、粒度・形状測定器(株式会社セイシン企業製PITA−1)を用いて1500本測定し、その平均値から求めた。
(3)ピッチ系黒鉛化短繊維の成長方向の結晶子サイズは、X線回折に現れる(110)面からの反射を測定し、学振法にて求めた。
(4)ピッチ系黒鉛化短繊維の端面は、透過型電子顕微鏡で100万倍の倍率で観察し、400万倍に写真上で拡大し、グラフェンシートを確認した。
(5)ピッチ系黒鉛化短繊維の表面は走査型電子顕微鏡で1000倍の倍率で観察し、凹凸を確認した。
(6)熱伝導性樹脂組成物の熱伝導率は、4mm厚の熱伝導性樹脂組成物の成形体から3mm×10mmの短冊状にサンプルを切り出し、横に並べて一体化させ、ネッチ製LFA−447を用いて面内方向の熱伝導率を求めた。
(7)熱伝導性樹脂組成物の比重は、4mm厚の熱伝導性樹脂組成物の成形体から3mm×10mmの短冊状にサンプルを切り出し、横に並べて一体化させ、電子比重計を用いて確認した。
(8)発熱量[W]は、本実施例で用いたLED素子の消費電力[W]と伝導熱変換率70%の積より算出した。
【0037】
[参考例1]メソフェーズ系ピッチ黒鉛化短繊維の製造
縮合多環炭化水素化合物よりなるピッチを主原料とした。光学的異方性割合は100%、軟化点が283℃であった。直径0.2mmの孔を持つ口金を使用し、孔の両横のスリットから加熱空気を毎分5500mの線速度で噴出させて、溶融ピッチを牽引して平均直径11.1μmのピッチ系短繊維を作製した。この時の紡糸温度は328℃であり、溶融粘度は13.5Pa・sであった。紡出された繊維をベルト上に捕集してマットとし、さらにクロスラッピングで目付350g/m2のピッチ系炭素繊維前駆体からなるピッチ系炭素繊維前駆体ウェブとした。
このピッチ系炭素繊維前駆体ウェブを空気中で170℃から300℃まで平均昇温速度5℃/分で昇温して不融化処理し、さらに800℃で焼成処理を行った。このピッチ系炭素繊維ウェブを一軸回転式粉砕機で粉砕し、3000℃で黒鉛化処理を施した。
得られたピッチ系黒鉛化短繊維の平均繊維径は8.2μmであった。六角網面の積層厚み方向に由来する結晶子サイズは70nm、平均繊維長は140μmであった。また、ピッチ系黒鉛化短繊維の端面は透過型顕微鏡の観察によりグラフェンシートが閉じていることを確認した。さらに、表面は走査型電子顕微鏡の観察により、凹凸は1個であり実質的に平坦であった。
【0038】
[参考例2]熱伝導性樹脂組成物
参考例1で得たピッチ系黒鉛化短繊維50体積部、ポリカーボネート樹脂(帝人化成株式会社製パンライト(登録商標)L−1250WP)100体積部を二軸混練装置を用いて溶融混練し、熱伝導性樹脂のペレットを得た。このペレットを用いて射出成形機(東芝機械製EC40NII)を用いて厚み4mmの熱伝導性成形品を得た。熱伝導性成形品の熱伝導率は15.3W/m・Kであった。また、熱伝導性成形品の比重は1.51であった。
【0039】
[参考例3]熱伝導性樹脂組成物
窒化ホウ素(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製PT−110)25体積部、ポリカーボネート樹脂(帝人化成株式会社製パンライト(登録商標)L−1250WP)100体積部を二軸混練装置を用いて溶融混練し、熱伝導性樹脂のペレットを得た。このペレットを用いて射出成形機(東芝機械製EC40NII)を用いて厚み4mmの熱伝導性成形品を得た。熱伝導性成形品の熱伝導率は1.9W/m・Kであった。また、熱伝導性成形品の比重は1.40であった。
【0040】
[実施例1]
参考例2の熱伝導性樹脂組成物(熱伝導率15.3W/m・K、比重1.51)を用いて射出成形を行い、図1に図示する放熱構造体を作製した。放熱構造体の重量は67gであった。
次にこの放熱構造体をLED素子の放熱用部品として組み込んだLED照明具を作製した。すなわち図3に図示する要領で、LED素子(記号7)としては伝導熱変換率が70%のものを4素子使用し、投入電力は2.0W/素子(4素子で計8W)とした。またLED実装基板(記号6)としては厚み約1mm、直径60mmのALベース基板を用いた。
LED素子を実装したALベース基板は市販の熱伝導シーリング剤(記号4、信越化学工業製、縮合型RTVシリコーンゴム KE−3466、熱伝導率1.9W/m・K)を平均約50μmの厚みで塗布し、前記放熱構造体に接触固定した。そのときのLED実装基板と放熱構造体の接触面積は25cm2であり、発熱量1Wに対する接触面積S1は4.5cm2であった。また、放熱構造体の表面積のうち、外気との接触面積は200cm2であり、発熱量1Wに対する放熱構造体と外気との接触面積S2は35.7cm2であった。
光透過性カバー(記号8)はアクリル樹脂をブロー成形することにより作製し、口金にはJIS規格のE26口金を用いた。
本LED照明具の点灯試験を周囲温度25℃に調整された室内で行い、LED素子のカソード側ハンダ接合部の近傍にK型熱電対を固定し、LED素子の発熱状態を測定した。この結果、電力投入60分後のLED素子のカソード部温度は約72℃であった。
【0041】
[実施例2]
放熱構造体の表面積のうち、外気との接触面積が270cm2となるようにフィンの凸部の高さ(記号17)を1.5倍に変更した以外は、実施例1と同様の放熱構造体を作製した(図14)。そのときの放熱構造体の重量は89gであった。また、放熱構造体以外は実施例1と同様の方法でLED照明具を作製した。発熱量1Wに対する接触面積S1は4.5cm2、発熱量1Wに対する放熱構造体と外気との接触面積S2は48.2cm2であった。
本LED照明具の点灯試験を周囲温度25℃に調整された室内で行い、LED素子のカソード側ハンダ接合部の近傍にK型熱電対を固定し、LED素子の発熱状態を測定した。この結果、電力投入60分後のLED素子のカソード部温度は約69℃であった。
【0042】
[実施例3]
発熱体と放熱構造体の接触面積が50cm2となるように接触部の直径を1.35倍に変更した以外は、実施例1と同様の放熱構造体を作製した(図15)。そのときの放熱構造体の重量は91gであった。また、発熱体と放熱構造体の接触面積が50cm2となるように、直径80mmのALベース基板を用いた以外は実施例1と同様の方法でLED照明具を作製した。発熱量1Wに対する接触面積S1は9.8cm2、発熱体1Wに対する放熱構造体と外気の接触面積S2は35.7cm2であった。
本LED照明具の点灯試験を周囲温度25℃に調整された室内で行い、LED素子のカソード側ハンダ接合部の近傍にK型熱電対を固定し、LED素子の発熱状態を測定した。この結果、電力投入60分後のLED素子のカソード部温度は約67℃であった。
【0043】
[実施例4]
参考例3の熱伝導性樹脂組成物を用いること以外は、実施例1と同様の放熱構造体を作製した。そのときの放熱構造体の重量は62gであった。また、放熱構造体以外は実施例1と同様の方法でLED照明具を作製した。発熱量1Wに対する接触面積S1は4.5cm2、発熱体1Wに対する放熱構造体と外気の接触面積S2は35.7cm2であった。
本LED照明具の点灯試験を周囲温度25℃に調整された室内で行い、LED素子のカソード側ハンダ接合部の近傍にK型熱電対を固定し、LED素子の発熱状態を測定した。この結果、電力投入60分後のLED素子のカソード部温度は約93℃であった。
【0044】
[比較例1]
放熱構造体の形成材料にアルミダイキャストADC12(熱伝導率96W/m・K、比重2.7)を用いること以外は、実施例1と同様の放熱構造体を作製した。そのときの放熱構造体の重量は120gであった。また、放熱構造体以外は実施例1と同様の方法でLED照明具を作製した。発熱量1Wに対する接触面積S1は4.5cm2、発熱体1Wに対する放熱構造体と外気の接触面積S2は35.7cm2であった。
本LED照明具の点灯試験を周囲温度25℃に調整された室内で行い、LED素子のカソード側ハンダ接合部の近傍にK型熱電対を固定し、LED素子の発熱状態を測定した。この結果、電力投入60分後のLED素子のカソード部温度は約67℃であった。なおこのLED照明具は重量制限のために既存汎用取付具に取付けができない場合があった。
【0045】
[比較例2]
放熱構造体の形成材料にポリカーボネート樹脂(帝人化成株式会社製パンライト(登録商標)L−1250WP)(熱伝導率0.2W/m・K、比重1.2)を用いること以外は、実施例1と同様の放熱構造体を作製した。そのときの放熱構造体の重量は53gであった。また、放熱構造体以外は実施例1と同様の方法でLED照明具を作製した。発熱量1Wに対する接触面積S1は4.5cm2、発熱体1Wに対する放熱構造体と外気の接触面積S2は35.7cm2であった。
本LED照明具の点灯試験を周囲温度25℃に調整された室内で行い、LED素子のカソード側ハンダ接合部の近傍にK型熱電対を固定し、LED素子の発熱状態を測定しようとしたが、温度がLED素子の耐熱温度を超えたため、測定を中止した。
【0046】
[比較例3]
放熱構造体の表面積のうち、外気との接触面積が55cm2となるようにフィン部を無くすように変更した以外は、実施例1と同様の放熱構造体を作製した(図4)。そのときの放熱構造体の重量は57gであった。また、放熱構造体以外は実施例1と同様の方法でLED照明具を作製した。発熱量1Wに対する接触面積S1は4.5cm2、発熱体1Wに対する放熱構造体と外気の接触面積S2は9.8cm2であった。
本LED照明具の点灯試験を周囲温度25℃に調整された室内で行い、LED素子のカソード側ハンダ接合部の近傍にK型熱電対を固定し、LED素子の発熱状態を測定した。この結果、電力投入60分後のLED素子のカソード部温度は約101℃であった。
【0047】
[比較例4]
放熱構造体の表面積のうち、外気との接触面積が350cm2となるようにフィンの凸部の高さ(記号17)を1.5倍に、フィンの枚数を1.5倍に変更した以外は、実施例1と同様の放熱構造体を作製した(図16)。そのときの放熱構造体の重量は114gであった。また、放熱構造体以外は実施例1と同様の方法でLED照明具を作製した。発熱量1Wに対する接触面積S1は4.5cm2、発熱量1Wに対する放熱構造体と外気との接触面積S2は62.5cm2であった。
本LED照明具の点灯試験を周囲温度25℃に調整された室内で行い、LED素子のカソード側ハンダ接合部の近傍にK型熱電対を固定し、LED素子の発熱状態を測定した。この結果、電力投入60分後のLED素子のカソード部温度は約66℃であった。なお、このLED照明具は重量制限のために既存汎用取付具に取付けができない場合があった。
【0048】
[比較例5]
発熱体と放熱構造体の接触面積が5cm2となるように接触部の直径を0.5倍に変更した以外は、実施例1と同様の放熱構造体を作製した(図17)。そのときの放熱構造体の重量は63gであった。また、放熱構造体以外は実施例1と同様の方法でLED照明具を作製した。発熱量1Wに対する接触面積S1は0.9cm2、発熱体1Wに対する放熱構造体と外気の接触面積S2は35.7cm2であった。
本LED照明具の点灯試験を周囲温度25℃に調整された室内で行い、LED素子のカソード側ハンダ接合部の近傍にK型熱電対を固定し、LED素子の発熱状態を測定した。この結果、電力投入60分後のLED素子のカソード部温度は約96℃であった。
【0049】
[比較例6]
発熱体と放熱構造体の接触面積が75cm2となるように接触部の直径を1.67倍に変更した以外は、実施例1と同様の放熱構造体を作製した(図18)。そのときの放熱構造体の重量は115gであった。また、放熱構造体以外は実施例1と同様の方法でLED照明具を作製した。発熱量1Wに対する接触面積S1は13.5cm2、発熱体1Wに対する放熱構造体と外気の接触面積S2は35.7cm2であった。
本LED照明具の点灯試験を周囲温度25℃に調整された室内で行い、LED素子のカソード側ハンダ接合部の近傍にK型熱電対を固定し、LED素子の発熱状態を測定した。この結果、電力投入60分後のLED素子のカソード部温度は約65℃であった。なお、このLED照明具は重量制限のために既存汎用取付具に取付けができない場合があった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の放熱構造体は、発光素子(LED素子、レーザーダイオード、EL素子等)、能動受光素子(CCD等)、中央演算装置(CPU)、画像演算装置(GPU)、インバータ素子(IGBT、FET等)、モーター類、ヒーター素子等、発熱を伴うデバイス類の実装された機器、器具等の放熱対策として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 接触部
2 ベース部
3 フィン部
4 熱伝導接着層
5 発熱体(LED素子実装基板等)
6 LED実装基板
7 LED素子
8 光透過性カバー
9 電源基板
10 電気絶縁ケース
11 口金(電源ソケット接続用)
12 電気絶縁層
13 凸部
14 凹部
15 凸部の山幅
16 凹部の谷幅
17 凸部の高さ
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子(LED素子、レーザーダイオード、EL素子等)、能動受光素子(CCD等)、中央演算装置(CPU)、画像演算装置(GPU)、インバータ素子(IGBT、FET等)、モーター類、ヒーター素子等、発熱を伴うデバイス類の実装された機器、器具等の放熱対策として用いられる放熱構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子/電気機器の中には発熱密度の高いデバイス(LED素子、レーザーダイオード、CPU、MPU等)が多数実装されており、これらデバイス駆動に高い信頼性を確保するための温度コントロール、すなわち放熱対策が極めて重要になってきている。
これらの放熱対策としては、熱伝導率の高い金属(銅、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金等)を押出成形法やダイキャスト成形法等を用いて成形してなる放熱構造体(フィン型ヒートシンク等)を発熱源近傍に配して、外界空気に効率的に熱放散する経路設計を行うことが一般的であった。(例えば特許文献1〜3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−159012号公報
【特許文献2】特開平10−092986号公報
【特許文献3】特開2004−071599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これら従来の放熱対策は、高い放熱性能を実現する上で、放熱面積確保のために外寸法及び容積が増大してしまったり、比重の大きい金属を使用しているために重量が増大してしまったりする課題がある。本発明はこれらの事情に鑑み、軽量、かつ、高い放熱性能を持った放熱構造体を実現することを課題として、為されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、発熱体の少なくとも一部と接触するように配され、比重が1.0〜2.0の熱伝導性樹脂組成物から成る放熱構造体であって、発熱体からの発熱量1Wに対する発熱体と放熱構造体の接触面積S1が1〜10cm2であり、かつ、発熱体からの発熱量1Wに対する放熱構造体の表面積のうち、外気との接触面積S2が10〜50cm2であることを特徴とする放熱構造体である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の放熱構造体は、軽量、かつ、高い放熱性能を実現することができ、重量制限のある機器類の放熱対策に特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の放熱構造体の一例(上面図・正面から見た断面図・フィン部の断面図)
【図2】本発明の放熱構造体と発熱体の接触部の一例(正面からみた断面図)
【図3】本発明の放熱構造体のLED照明具への応用例(正面からみた断面図)
【図4】本発明の放熱構造体の一例(上面図・正面から見た断面図)
【図5】本発明の放熱構造体の一例(上面図・正面から見た断面図)
【図6】本発明の放熱構造体の一例(上面図・正面から見た断面図)
【図7】本発明の放熱構造体の一例(上面図・正面から見た断面図)
【図8】本発明の放熱構造体中の凹凸部形状の一例(正面図・上面・側面から見た断面図)
【図9】本発明の放熱構造体中の凹凸部形状の一例(正面図・上面・側面から見た断面図)
【図10】本発明の放熱構造体中の凹凸部形状の一例(正面図・上面・側面から見た断面図)
【図11】本発明の放熱構造体の一例(上面図・正面から見た断面図・フィン部の断面図)
【図12】本発明の放熱構造体の一例(上面図・正面から見た断面図・電気絶縁層部の断面図)
【図13】本発明の放熱構造体中のフィン凹凸部の各部寸法に関する説明図(上面からみた断面図)
【図14】本発明の放熱構造体の一例(上面図・正面から見た断面図・フィン部の断面図)
【図15】本発明の放熱構造体の一例(上面図・正面から見た断面図・フィン部の断面図)
【図16】本発明の放熱構造体の一例(上面図・正面から見た断面図・フィン部の断面図)
【図17】本発明の放熱構造体の一例(上面図・正面から見た断面図・フィン部の断面図)
【図18】本発明の放熱構造体の一例(上面図・正面から見た断面図・フィン部の断面図)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について順次詳述する。
[放熱構造体]
本発明の放熱構造体は少なくともその一部が発熱体近傍に配置され、その接触面から発熱体の熱が伝達された後、放熱構造体を通じて熱を輸送し、最終的に放熱構造体の表面から外部空気等に熱を放散する機能を有する構造体である。本発明の放熱構造体の好ましい態様であるLED素子の放熱筐体として用いるケースで説明すると、LED実装基板側から一旦放熱筺体内部へ放熱された熱を、本発明の放熱構造体を通じて輸送し、その表面から外部空気等に熱を放散するものである。発熱体と放熱構造体の接触面積を増やすことにより、発熱体と放熱構造体の界面の伝熱性を高めることができ、また、放熱構造体と外気との接触面積を増やすことにより、放熱構造体と外気の界面の伝熱性を高めることができ、優れた放熱性能を示す。一方で、それらを実現するためには、接触面積確保のために外寸法及び容積が増大してしまうために、放熱構造体には比重の小さい材料を使用することが好ましい。
【0009】
従って、本発明の放熱構造体は、発熱体の少なくとも一部と接触するように配され、比重が1.0〜2.0の熱伝導性樹脂組成物から成る放熱構造体であって、発熱体からの発熱量1Wに対する発熱体と放熱構造体の接触面積S1が1〜10cm2であり、かつ、発熱体からの発熱量1Wに対する放熱構造体の表面積のうち、外気との接触面積S2が10〜50cm2である。なお、ここでいう発熱量Q[W]とは発熱デバイスの消費電力[W]の内、伝導熱に変換された熱量であり、予め発熱デバイス固有の変換率を調べておくことで、算出することができる。
【0010】
本発明の放熱構造体は、比重が1.0以上2.0以下の熱伝導性樹脂組成物を材料とする。比重が1.0未満の場合は、実質的に後述する熱伝導性フィラーが熱伝導性樹脂組成物内に殆ど混合されていない状態であり、十分な放熱性を得ることができない。また、比重が2.0より大きい場合は、放熱構造体の重量が大きくなり過ぎて、軽量化の要求に応えることができない。比重は好ましくは1.2以上1.8以下、より好ましくは1.3以上1.7以下である。なお、熱伝導性樹脂組成物の詳細については後述する。
【0011】
本発明の放熱構造体は、発熱体からの発熱量1Wに対する発熱体と放熱構造体の接触面積S1が1〜10cm2である。S1が1cm2未満の場合は、発熱量1Wに対する発熱体と放熱構造体の接触面積S1が小さく、接触面の熱抵抗が大きくなり過ぎるため、十分な放熱性を得ることができない。また、S1が10cm2より大きい場合は、実質的に放熱構造体の重量が大きくなってしまうため、軽量化の要求に応えることができないことがある。発熱量1Wに対するS1は、好ましくは2cm2以上9cm2以下、より好ましくは3cm2以上8cm2以下である。
【0012】
本発明の放熱構造体は、接触部が発熱体の少なくとも一部と接触するように配されているが、発熱量1Wに対する発熱体と放熱構造体の接触面積S1が本発明の範囲内であれば、接触部の形状は特に限定はなく、多種の形状が可能である。より具体的に幾つかの例を挙げると、図1、4、5はドーナツ型の接触部を持った放熱構造体、図6、7は円盤型の接触部を持った放熱構造体である。また、接触部の形状は接触面の熱抵抗をさらに小さくするために、平坦であることが好ましい。さらに、発熱体と放熱構造体は、熱放熱グリース、放熱シート等を介して、接触面の熱抵抗をさらに小さくすることも好ましい。なお、LED素子のように発熱量に対して小さいデバイス、すなわち、接触面積が小さいデバイスからの熱を放熱する場合には、LED素子をアルミニウム等の熱伝導率の高い材料で形成された面積の大きい基板に実装することで、LED素子からの発熱を基板上で均一化することができるため、このLED実装基板を発熱体とみなす。
【0013】
本発明の放熱構造体は、発熱体からの発熱量1Wに対する放熱構造体の表面積のうち、外気との接触面積S2が10〜50cm2である。S2が10cm2未満の場合は、発熱量1Wに対する外気との接触面積S2が小さく、放熱構造体の表面と外気との間の熱抵抗が大きくなり過ぎるため、十分な放熱性を得ることができない。また、S2が50cm2より大きい場合は、実質的に放熱構造体の重量が大きくなってしまうため、軽量化の要求に応えることができないことがある。発熱量1Wに対するS2は、好ましくは15cm2以上45cm2以下、より好ましくは20cm2以上40cm2以下である。
【0014】
本発明の放熱構造体は、発熱量1Wに対するS2が放熱構造体の表面積のうち、外気との接触面積S2が本発明の範囲内であれば、形状に特に制約はないが、外気との接触面積S2を確保するために、必要に応じフィン形状を付与することが好ましい。外気との接触面積の増加割合は、フィンの凹凸部の形状、サイズ、形成密度等によって決定される。すなわち、凹部の谷幅、凸部の山幅、凸部の高さ、凹凸部の曲率(全体もしくは部分的に曲面が配される場合)等が主な支配要因となる。
【0015】
高い放熱性能を実現するためには、フィンが凹凸を有する場合の凹部の平均谷幅は1〜20mmであることが好ましく、より好ましくは2〜10mm、さらに好ましくは3〜5mmである。凹部の平均谷幅が1mm未満では、外気との伝熱においては、凹部が狭すぎるために十分な空気の対流が起こらないために、放熱効率が悪くなる。逆に20mmを超える場合は、放熱構造体と外気との接触面積S2が十分な大きさとならず、十分な放熱性を得ることができない。なお、後述するが、凹部の形状パターンは特に限定はなく、多種の形状が可能である。その際、例えば凹凸の断面形状が三角形や半円形の連続であり最下部に平坦部分がない場合など、凹部の谷幅が連続的に変化する場合は、その凹部の谷幅の平均値を平均谷幅とする。
【0016】
フィンが凹凸を有する場合の凸部の平均山幅は0.5〜5mmであることが好ましく、より好ましくは0.8〜4mm、さらに好ましくは1〜3mmである。凸部の平均山幅が0.5mm未満では、凸部の先端まで十分に伝熱が為されず、十分な放熱性が得られない。逆に5mmを超える場合は、放熱構造体と外気との接触面積S2が十分な大きさとならず、十分な放熱性を得ることができない。
【0017】
凸部の平均高さは凹部の平均谷幅の1〜10倍であることが好ましく、好ましくは2〜8倍、さらに好ましくは3〜6倍である。凸部の平均高さが凹部平均谷幅の1倍未満では、放熱構造体と外気との接触面積S2が十分な大きさとならず、十分な放熱性が得られない。逆に10倍を超える場合は、凹部で十分な空気の対流が起こりにくいために、放熱効率が悪くなる。なお、後述するが、凸部の形状パターンは特に限定はなく、多種の形状が可能である。その際、例えば突起断面形状が三角形や半円形といった凸部の山幅が連続的に変化する場合は、その凸部の山幅の平均値を平均山幅とする。
【0018】
なお、フィンの凹凸部の形状や配列パターンは特に限定はなく、多種の形状、配列が可能である。凹凸部は連続的に連なった形でも、単独突起状でも良い。前者の場合、その配列方向は放熱構造体表面のいずれの方向でもよく、直線状に配列しても、曲線状に配列しても構わない。後者の場合、円柱形状、半球形状、多角形状等の一定の規則性を持って配列しても良いし、また規則性を持たずランダムに配列されてもよい。さらに、凹凸部の高さ、山幅、谷幅の寸法は連続的に変化させてもよい。より具体的に幾つかの例を挙げると、図8、9は連続直線型、図10は単独突起型である。
【0019】
放熱構造体の成形方法は特に限定はなく、多種の方法での成形が可能であるが、発熱体との接触部の平坦度、生産効率を鑑みると、射出成形法による成形が好ましい。
また、放熱構造体の外層または内層には、図11、12に例示するように、必要に応じて、電気絶縁層を設けることもできる。外層または内層を電気絶縁性の高い材料(特に体積抵抗が1011cm・Ω以上の層、より好ましくは体積抵抗が1013cm・Ω以上の層)で形成することによって、放熱構造体の電気的安全性が高まる(絶縁耐圧や静電耐圧の増大、漏れ電流低減等)ので用途に応じて好ましく用いられる。また、電気絶縁層は、より好ましくは熱伝導率の高い層であることが好ましく、少なくとも層内の一方向に対する熱伝導率が0.5W/m・K以上であることが好ましく、より好ましくは1W/m・K以上である。
【0020】
[熱伝導性樹脂組成物]
本発明の放熱構造体を形成する熱伝導性樹脂組成物は、熱伝導性フィラーを含有し、少なくとも一方向における熱伝導率が2W/m・K以上であることが好ましい。熱伝導率が2W/m・K未満では放熱構造体内の熱抵抗が大きくなってしまい、十分な放熱性が確保できないことがある。熱伝導率は好ましくは5W/m・K以上、より好ましくは10W/m・K以上である。熱伝導性樹脂組成物の熱伝導率の上限は実質40W/m・Kである。
【0021】
本発明の放熱構造体の成形に好適な熱伝導性樹脂組成物としては、マトリクス樹脂100体積部に対し、熱伝導性フィラーの含有量が10〜200体積部である樹脂組成物が好ましい。熱伝導性フィラーの含有量が10体積部未満だと高い熱伝導性が得られ難い。逆に熱伝導性フィラーの含有量が200体積部を超えると、熱伝導性フィラーを樹脂に分散させ、均一な熱伝導性樹脂組成物を得るのが困難になりやすく、また樹脂の流動性が不十分となりやすい。熱伝導フィラーの含有量は好ましくは20〜100体積部である。
【0022】
熱伝導性フィラーとマトリクス樹脂との混合は、単軸型の溶融混練装置、二軸型の溶融混練装置等の公知の溶融混練装置を用いて実施できる。
熱伝導性フィラーとしては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛などの金属酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物、窒化ホウ素、窒化アルミニウムなどの金属窒化物、酸化窒化アルミニウムなどの金属酸窒化物、炭化珪素などの金属炭化物、金、銀、銅、アルミニウムなどの金属もしくは金属合金、炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、ダイヤモンドなどの炭素材料などが挙げられ、2種類以上併用することも可能である。
【0023】
熱伝導性樹脂組成物の熱伝導率を高めるにはピッチ系黒鉛化短繊維を用いるのが好ましく、その中でもメソフェーズピッチを出発材料とした黒鉛結晶構造の非常に発達したピッチ系黒鉛化短繊維を用いることが特に好ましい。すなわち熱伝導性フィラーとして、主として、メソフェーズピッチを原料としたピッチ系黒鉛化短繊維を用いる放熱構造体が本発明の好ましい態様である。ここで主としてとは、全熱伝導性フィラー中、メソフェーズピッチが60〜100体積%、より好ましくは80〜100体積%である。黒鉛化短繊維の熱伝導性は黒鉛結晶の格子構造を伝播するフォノン振動に主に由来するため、熱伝導性を高めるには黒鉛結晶の結晶性を高めること、すなわち黒鉛結晶の格子構造ができるだけ欠陥少なく、かつ大きく広がるようにすることが好ましい。
【0024】
本発明に用いられるピッチ系黒鉛化短繊維はいわゆるミルドファイバーに該当し、その平均繊維長L1は、より好ましくは20〜500μmであることが好ましい。ここで、平均繊維長は個数平均繊維長とし、顕微鏡下で所定本数を測定し、その平均値から求めることができる。L1が20μmより小さい場合、当該短繊維同士が接触しにくくなり、高い熱伝導率を有する熱伝導性組成物を得にくくなることがある。逆にL1が500μmより大きくなる場合、マトリクス樹脂とピッチ系黒鉛化短繊維を混練する際の粘度が高くなり、ハンドリングが困難になることがある。より好ましくは、30〜300μmの範囲である。この様なピッチ系黒鉛化短繊維を得る手法として特に制限はないが、切断式、衝突式、衝撃式、気流式等の粉砕機が好適に用いられ、回転数、滞留時間、気流噴出圧、供給量等の条件を調節することにより平均繊維長を制御することができる。また、粉砕処理後のピッチ系炭素短繊維から、振動、スクリーン等による篩分け、遠心分離等の分級操作を行って、短い繊維長、または長い繊維長のピッチ系炭素短繊維を除去することにより、平均繊維長をさらに精密制御することができる。
【0025】
本発明に用いられるピッチ系黒鉛化短繊維は、黒鉛結晶からなり、六角網面の成長方向に由来する結晶子サイズが少なくとも20nm以上であることが好ましく、より好ましくは30nm以上、さらに好ましくは40nm以上である。結晶子サイズは六角網面の成長方向のいずれも、黒鉛化度(黒鉛結晶の結晶性)の高低に対応するものであり、熱物性を発現するためには、一定サイズ以上が必要である。六角網面の成長方向の結晶子サイズは、X線回折法で求めることができる。測定手法は集中法とし、解析手法としては学振法が好適に用いられる。六角網面の成長方向の結晶子サイズは、(110)面からの回折線を用いて求めることができる。
【0026】
また黒鉛化度を示す他のパラメータとして、黒鉛結晶の層間隔があり、層間隔が小さいほど結晶性が高い。黒鉛結晶の層間隔は、例えばd002のX線回折線に基づく計算値として、少なくとも0.3420nm以下であることが好ましく、より好ましくは0.3395nm以下、さらに好ましくは0.3370nm以下であることが好ましい。
【0027】
またグラフェンシート端面構造は、黒鉛化の前に粉砕を実施するか、黒鉛化の後に粉砕を実施するかにより、大きく異なる。すなわち、黒鉛化後に粉砕処理を行った場合、黒鉛化で成長したグラフェンシートが切断破断され、グラフェンシート端面が開いた状態になり易い。一方、黒鉛化前に粉砕処理を行った場合、黒鉛の成長過程でグラフェンシート端面がU字上に湾曲し、湾曲部分がピッチ系黒鉛化短繊維端部に露出した構造になり易い。このため、グラフェンシート端面閉鎖率が80%を超えるようなピッチ系黒鉛化短繊維を得るためには、粉砕を行った後に黒鉛化処理することが好ましい。
【0028】
本発明に用いられるピッチ系黒鉛化短繊維は走査型電子顕微鏡での側面の観察表面が実質的に平坦であることが好ましい。ここで、実質的に平坦であるとは、フィブリル構造のような激しい凹凸をピッチ系黒鉛化短繊維に有しないことを意味する。ピッチ系黒鉛化短繊維の表面に激しい凹凸のような欠陥が存在する場合には、マトリクスとの混練に際して表面積の増大に伴う粘度の増大を引き起こし、成形性を悪化させる。よって、表面凹凸のような欠陥はできるだけ小さい状態が望ましい。より具体的には、走査型電子顕微鏡において1000倍で観察した像での観察視野に、凹凸のような欠陥が10箇所以下であることとする。この様なピッチ系黒鉛化短繊維を得る手法としては、粉砕処理を行った後に黒鉛化処理を実施することによって、好ましく得ることができる。
【0029】
熱伝導性樹脂組成物には、熱伝導性フィラー以外に、さらに、成形性、機械物性、難燃性、その他の特性をより高めるために、ガラス繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼化アルミニウムウィスカ、窒化ホウ素ウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、アスベスト繊維、石膏繊維、金属繊維などの繊維状フィラー、ならびに、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ガラスビーズ、ガラスフレーク及びセラミックビーズ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの非繊維状フィラーも必要に応じて適宜添加することが可能である。これらは中空のものであってもよく、さらにはこれらを2種類以上併用することも可能である。ただ、上記化合物は、密度がピッチ系黒鉛化短繊維より大きなものが多く、軽量化を目的とするときには、添加量や添加比率に気を配る必要がある。
【0030】
マトリクスとする樹脂については、例えばポリエステル類及びその共重合体(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート)、ポリスチレン類(ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレンなど)及びその共重合体(スチレン−アクリロニトリル共重合体、ABS樹脂、AES樹脂など)、ポリメチルメタクリレート類及びその共重合体(特にシクロ環およびその誘導体からなる構造を含むもの)、ポリ乳酸樹脂およびその共重合体、ポリアクリロニトリル類及びその共重合体、環状ポリオレフィン類およびその共重合体(特にシクロ環を含む樹脂、例えばJSR製 登録商標「アートン」、三井化学製 登録商標「アペル」、日本ゼオン製 登録商標「ゼオネックス」等)、ポリメチルペンテン類およびその共重合体(例えば三井化学製 登録商標「TPX」等)、ポリフェニレンエーテル(PPE)類及びその共重合体(変性PPE樹脂なども含む)、脂肪族ポリアミド類及びその共重合体、ポリイミド類及びその共重合体、ポリアミドイミド類及びその共重合体、ポリカーボネート類及びその共重合体、ポリフェニレンスルフィド類及びその共重合体、ポリサルホン類及びその共重合体、ポリエーテルサルホン類及びその共重合体、ポリエーテルニトリル類及びその共重合体、ポリエーテルケトン類及びその共重合体、ポリエーテルエーテルケトン類及びその共重合体、ポリケトン類及びその共重合体、エラストマー、液晶性ポリエステル類などの液晶性ポリマー等が挙げられる。これらから一種を単独で用いても、二種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
【0031】
また熱伝導樹脂組成物には必要に応じ、輻射率(赤外線放射率)を向上する添加剤や、各種着色剤、難燃剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤等の添加物を添加しても良い。
【0032】
なお、放熱構造体を前述の熱伝導性炭素繊維(特にピッチ系黒鉛化短繊維)を含む熱伝導樹脂組成物を用いて射出成形する場合には、樹脂射出金型におけるゲート部を、放熱の対象となる発熱体(発熱デバイス等)近傍に配置することが好ましい。すなわち熱伝導性炭素繊維の配向方向は熱伝導樹脂組成物の流動方向と一致する為、発熱体近傍にゲートを設けることで、発熱体の放熱方向と熱伝導性炭素繊維の配向方向(熱伝導樹脂の熱伝導率が最大となる方向)をほぼ一致させることができ、より効率的な放熱が可能となる場合がある。
【0033】
[放熱構造体の応用用途]
本発明の放熱構造体の具体的用途として、図3にLED照明具への応用例を例示した。なお、放熱構造体の用途はこれら例示以外のシステム、構造を有するLED照明具にも応用可能であるし、またLED照明具のみに限定されるものではなく、発熱体、発熱デバイス類の放熱を必要とする機器、器具において広く応用できるものである。
【0034】
LED素子の実装されたLED実装基板は熱伝導接着層もしくは放熱シート等を介して、放熱構造体の一部に接着固定されており、この接触面でLED実装基板から放熱構造体への伝熱が行われ、その後、放熱構造体の中を熱が移動していき、放熱構造体の表面から外部空気に放熱される。また、電源部を内部に持つLED照明具においては、LED素子だけではなく、電源部も発熱体となり、放熱構造体を介して、外部空気へ放熱されることとなる。本発明では、LED素子から直接の放熱構造体への熱輸送、及び、放熱構造体から外気への熱輸送を効率的に実施することが特徴である。
【0035】
一方で、LED照明具の全体寸法、形状は各用途での要求に従い、おのずと制約がある為、放熱構造体にはできるだけサイズが小さくコンパクトなもの、そしてできるだけ軽量なものが求められ、本発明では、比重が1.0以上2.0以下の熱伝導性樹脂組成物から成ることを特徴としている。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
なお、本実施例における各値は、以下の方法に従って求めた。
(1)ピッチ系黒鉛化短繊維の平均繊維径は、JIS R7607に準じ、光学顕微鏡下でスケールを用いて60本測定し、その平均値から求めた。
(2)ピッチ系黒鉛化短繊維の平均繊維長は、粒度・形状測定器(株式会社セイシン企業製PITA−1)を用いて1500本測定し、その平均値から求めた。
(3)ピッチ系黒鉛化短繊維の成長方向の結晶子サイズは、X線回折に現れる(110)面からの反射を測定し、学振法にて求めた。
(4)ピッチ系黒鉛化短繊維の端面は、透過型電子顕微鏡で100万倍の倍率で観察し、400万倍に写真上で拡大し、グラフェンシートを確認した。
(5)ピッチ系黒鉛化短繊維の表面は走査型電子顕微鏡で1000倍の倍率で観察し、凹凸を確認した。
(6)熱伝導性樹脂組成物の熱伝導率は、4mm厚の熱伝導性樹脂組成物の成形体から3mm×10mmの短冊状にサンプルを切り出し、横に並べて一体化させ、ネッチ製LFA−447を用いて面内方向の熱伝導率を求めた。
(7)熱伝導性樹脂組成物の比重は、4mm厚の熱伝導性樹脂組成物の成形体から3mm×10mmの短冊状にサンプルを切り出し、横に並べて一体化させ、電子比重計を用いて確認した。
(8)発熱量[W]は、本実施例で用いたLED素子の消費電力[W]と伝導熱変換率70%の積より算出した。
【0037】
[参考例1]メソフェーズ系ピッチ黒鉛化短繊維の製造
縮合多環炭化水素化合物よりなるピッチを主原料とした。光学的異方性割合は100%、軟化点が283℃であった。直径0.2mmの孔を持つ口金を使用し、孔の両横のスリットから加熱空気を毎分5500mの線速度で噴出させて、溶融ピッチを牽引して平均直径11.1μmのピッチ系短繊維を作製した。この時の紡糸温度は328℃であり、溶融粘度は13.5Pa・sであった。紡出された繊維をベルト上に捕集してマットとし、さらにクロスラッピングで目付350g/m2のピッチ系炭素繊維前駆体からなるピッチ系炭素繊維前駆体ウェブとした。
このピッチ系炭素繊維前駆体ウェブを空気中で170℃から300℃まで平均昇温速度5℃/分で昇温して不融化処理し、さらに800℃で焼成処理を行った。このピッチ系炭素繊維ウェブを一軸回転式粉砕機で粉砕し、3000℃で黒鉛化処理を施した。
得られたピッチ系黒鉛化短繊維の平均繊維径は8.2μmであった。六角網面の積層厚み方向に由来する結晶子サイズは70nm、平均繊維長は140μmであった。また、ピッチ系黒鉛化短繊維の端面は透過型顕微鏡の観察によりグラフェンシートが閉じていることを確認した。さらに、表面は走査型電子顕微鏡の観察により、凹凸は1個であり実質的に平坦であった。
【0038】
[参考例2]熱伝導性樹脂組成物
参考例1で得たピッチ系黒鉛化短繊維50体積部、ポリカーボネート樹脂(帝人化成株式会社製パンライト(登録商標)L−1250WP)100体積部を二軸混練装置を用いて溶融混練し、熱伝導性樹脂のペレットを得た。このペレットを用いて射出成形機(東芝機械製EC40NII)を用いて厚み4mmの熱伝導性成形品を得た。熱伝導性成形品の熱伝導率は15.3W/m・Kであった。また、熱伝導性成形品の比重は1.51であった。
【0039】
[参考例3]熱伝導性樹脂組成物
窒化ホウ素(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製PT−110)25体積部、ポリカーボネート樹脂(帝人化成株式会社製パンライト(登録商標)L−1250WP)100体積部を二軸混練装置を用いて溶融混練し、熱伝導性樹脂のペレットを得た。このペレットを用いて射出成形機(東芝機械製EC40NII)を用いて厚み4mmの熱伝導性成形品を得た。熱伝導性成形品の熱伝導率は1.9W/m・Kであった。また、熱伝導性成形品の比重は1.40であった。
【0040】
[実施例1]
参考例2の熱伝導性樹脂組成物(熱伝導率15.3W/m・K、比重1.51)を用いて射出成形を行い、図1に図示する放熱構造体を作製した。放熱構造体の重量は67gであった。
次にこの放熱構造体をLED素子の放熱用部品として組み込んだLED照明具を作製した。すなわち図3に図示する要領で、LED素子(記号7)としては伝導熱変換率が70%のものを4素子使用し、投入電力は2.0W/素子(4素子で計8W)とした。またLED実装基板(記号6)としては厚み約1mm、直径60mmのALベース基板を用いた。
LED素子を実装したALベース基板は市販の熱伝導シーリング剤(記号4、信越化学工業製、縮合型RTVシリコーンゴム KE−3466、熱伝導率1.9W/m・K)を平均約50μmの厚みで塗布し、前記放熱構造体に接触固定した。そのときのLED実装基板と放熱構造体の接触面積は25cm2であり、発熱量1Wに対する接触面積S1は4.5cm2であった。また、放熱構造体の表面積のうち、外気との接触面積は200cm2であり、発熱量1Wに対する放熱構造体と外気との接触面積S2は35.7cm2であった。
光透過性カバー(記号8)はアクリル樹脂をブロー成形することにより作製し、口金にはJIS規格のE26口金を用いた。
本LED照明具の点灯試験を周囲温度25℃に調整された室内で行い、LED素子のカソード側ハンダ接合部の近傍にK型熱電対を固定し、LED素子の発熱状態を測定した。この結果、電力投入60分後のLED素子のカソード部温度は約72℃であった。
【0041】
[実施例2]
放熱構造体の表面積のうち、外気との接触面積が270cm2となるようにフィンの凸部の高さ(記号17)を1.5倍に変更した以外は、実施例1と同様の放熱構造体を作製した(図14)。そのときの放熱構造体の重量は89gであった。また、放熱構造体以外は実施例1と同様の方法でLED照明具を作製した。発熱量1Wに対する接触面積S1は4.5cm2、発熱量1Wに対する放熱構造体と外気との接触面積S2は48.2cm2であった。
本LED照明具の点灯試験を周囲温度25℃に調整された室内で行い、LED素子のカソード側ハンダ接合部の近傍にK型熱電対を固定し、LED素子の発熱状態を測定した。この結果、電力投入60分後のLED素子のカソード部温度は約69℃であった。
【0042】
[実施例3]
発熱体と放熱構造体の接触面積が50cm2となるように接触部の直径を1.35倍に変更した以外は、実施例1と同様の放熱構造体を作製した(図15)。そのときの放熱構造体の重量は91gであった。また、発熱体と放熱構造体の接触面積が50cm2となるように、直径80mmのALベース基板を用いた以外は実施例1と同様の方法でLED照明具を作製した。発熱量1Wに対する接触面積S1は9.8cm2、発熱体1Wに対する放熱構造体と外気の接触面積S2は35.7cm2であった。
本LED照明具の点灯試験を周囲温度25℃に調整された室内で行い、LED素子のカソード側ハンダ接合部の近傍にK型熱電対を固定し、LED素子の発熱状態を測定した。この結果、電力投入60分後のLED素子のカソード部温度は約67℃であった。
【0043】
[実施例4]
参考例3の熱伝導性樹脂組成物を用いること以外は、実施例1と同様の放熱構造体を作製した。そのときの放熱構造体の重量は62gであった。また、放熱構造体以外は実施例1と同様の方法でLED照明具を作製した。発熱量1Wに対する接触面積S1は4.5cm2、発熱体1Wに対する放熱構造体と外気の接触面積S2は35.7cm2であった。
本LED照明具の点灯試験を周囲温度25℃に調整された室内で行い、LED素子のカソード側ハンダ接合部の近傍にK型熱電対を固定し、LED素子の発熱状態を測定した。この結果、電力投入60分後のLED素子のカソード部温度は約93℃であった。
【0044】
[比較例1]
放熱構造体の形成材料にアルミダイキャストADC12(熱伝導率96W/m・K、比重2.7)を用いること以外は、実施例1と同様の放熱構造体を作製した。そのときの放熱構造体の重量は120gであった。また、放熱構造体以外は実施例1と同様の方法でLED照明具を作製した。発熱量1Wに対する接触面積S1は4.5cm2、発熱体1Wに対する放熱構造体と外気の接触面積S2は35.7cm2であった。
本LED照明具の点灯試験を周囲温度25℃に調整された室内で行い、LED素子のカソード側ハンダ接合部の近傍にK型熱電対を固定し、LED素子の発熱状態を測定した。この結果、電力投入60分後のLED素子のカソード部温度は約67℃であった。なおこのLED照明具は重量制限のために既存汎用取付具に取付けができない場合があった。
【0045】
[比較例2]
放熱構造体の形成材料にポリカーボネート樹脂(帝人化成株式会社製パンライト(登録商標)L−1250WP)(熱伝導率0.2W/m・K、比重1.2)を用いること以外は、実施例1と同様の放熱構造体を作製した。そのときの放熱構造体の重量は53gであった。また、放熱構造体以外は実施例1と同様の方法でLED照明具を作製した。発熱量1Wに対する接触面積S1は4.5cm2、発熱体1Wに対する放熱構造体と外気の接触面積S2は35.7cm2であった。
本LED照明具の点灯試験を周囲温度25℃に調整された室内で行い、LED素子のカソード側ハンダ接合部の近傍にK型熱電対を固定し、LED素子の発熱状態を測定しようとしたが、温度がLED素子の耐熱温度を超えたため、測定を中止した。
【0046】
[比較例3]
放熱構造体の表面積のうち、外気との接触面積が55cm2となるようにフィン部を無くすように変更した以外は、実施例1と同様の放熱構造体を作製した(図4)。そのときの放熱構造体の重量は57gであった。また、放熱構造体以外は実施例1と同様の方法でLED照明具を作製した。発熱量1Wに対する接触面積S1は4.5cm2、発熱体1Wに対する放熱構造体と外気の接触面積S2は9.8cm2であった。
本LED照明具の点灯試験を周囲温度25℃に調整された室内で行い、LED素子のカソード側ハンダ接合部の近傍にK型熱電対を固定し、LED素子の発熱状態を測定した。この結果、電力投入60分後のLED素子のカソード部温度は約101℃であった。
【0047】
[比較例4]
放熱構造体の表面積のうち、外気との接触面積が350cm2となるようにフィンの凸部の高さ(記号17)を1.5倍に、フィンの枚数を1.5倍に変更した以外は、実施例1と同様の放熱構造体を作製した(図16)。そのときの放熱構造体の重量は114gであった。また、放熱構造体以外は実施例1と同様の方法でLED照明具を作製した。発熱量1Wに対する接触面積S1は4.5cm2、発熱量1Wに対する放熱構造体と外気との接触面積S2は62.5cm2であった。
本LED照明具の点灯試験を周囲温度25℃に調整された室内で行い、LED素子のカソード側ハンダ接合部の近傍にK型熱電対を固定し、LED素子の発熱状態を測定した。この結果、電力投入60分後のLED素子のカソード部温度は約66℃であった。なお、このLED照明具は重量制限のために既存汎用取付具に取付けができない場合があった。
【0048】
[比較例5]
発熱体と放熱構造体の接触面積が5cm2となるように接触部の直径を0.5倍に変更した以外は、実施例1と同様の放熱構造体を作製した(図17)。そのときの放熱構造体の重量は63gであった。また、放熱構造体以外は実施例1と同様の方法でLED照明具を作製した。発熱量1Wに対する接触面積S1は0.9cm2、発熱体1Wに対する放熱構造体と外気の接触面積S2は35.7cm2であった。
本LED照明具の点灯試験を周囲温度25℃に調整された室内で行い、LED素子のカソード側ハンダ接合部の近傍にK型熱電対を固定し、LED素子の発熱状態を測定した。この結果、電力投入60分後のLED素子のカソード部温度は約96℃であった。
【0049】
[比較例6]
発熱体と放熱構造体の接触面積が75cm2となるように接触部の直径を1.67倍に変更した以外は、実施例1と同様の放熱構造体を作製した(図18)。そのときの放熱構造体の重量は115gであった。また、放熱構造体以外は実施例1と同様の方法でLED照明具を作製した。発熱量1Wに対する接触面積S1は13.5cm2、発熱体1Wに対する放熱構造体と外気の接触面積S2は35.7cm2であった。
本LED照明具の点灯試験を周囲温度25℃に調整された室内で行い、LED素子のカソード側ハンダ接合部の近傍にK型熱電対を固定し、LED素子の発熱状態を測定した。この結果、電力投入60分後のLED素子のカソード部温度は約65℃であった。なお、このLED照明具は重量制限のために既存汎用取付具に取付けができない場合があった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の放熱構造体は、発光素子(LED素子、レーザーダイオード、EL素子等)、能動受光素子(CCD等)、中央演算装置(CPU)、画像演算装置(GPU)、インバータ素子(IGBT、FET等)、モーター類、ヒーター素子等、発熱を伴うデバイス類の実装された機器、器具等の放熱対策として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 接触部
2 ベース部
3 フィン部
4 熱伝導接着層
5 発熱体(LED素子実装基板等)
6 LED実装基板
7 LED素子
8 光透過性カバー
9 電源基板
10 電気絶縁ケース
11 口金(電源ソケット接続用)
12 電気絶縁層
13 凸部
14 凹部
15 凸部の山幅
16 凹部の谷幅
17 凸部の高さ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体の少なくとも一部と接触するように配され、比重が1.0〜2.0の熱伝導性樹脂組成物から成る放熱構造体であって、発熱体からの発熱量1Wに対する発熱体と放熱構造体の接触面積S1が1〜10cm2であり、かつ、発熱体からの発熱量1Wに対する放熱構造体の表面積のうち、外気との接触面積S2が10〜50cm2であることを特徴とする放熱構造体。
【請求項2】
熱伝導性フィラーを含有し、少なくとも一方向における熱伝導率が2W/m・K以上の熱伝導性樹脂組成物からなる請求項1に記載の放熱構造体。
【請求項3】
熱伝導性樹脂組成物は、マトリクス樹脂100体積部に対して10〜200体積部の熱伝導性フィラーを含有する請求項1または2に記載の放熱構造体。
【請求項4】
熱伝導性フィラーとして、主として、メソフェーズピッチを原料としたピッチ系黒鉛化短繊維を用いる請求項2または3に記載の放熱構造体。
【請求項5】
発熱体がLED素子もしくはLED実装基板である、請求項1〜4のいずれかに記載の放熱構造体。
【請求項6】
請求項5に記載の放熱構造体をLED素子の放熱部品に用いたLED照明具。
【請求項1】
発熱体の少なくとも一部と接触するように配され、比重が1.0〜2.0の熱伝導性樹脂組成物から成る放熱構造体であって、発熱体からの発熱量1Wに対する発熱体と放熱構造体の接触面積S1が1〜10cm2であり、かつ、発熱体からの発熱量1Wに対する放熱構造体の表面積のうち、外気との接触面積S2が10〜50cm2であることを特徴とする放熱構造体。
【請求項2】
熱伝導性フィラーを含有し、少なくとも一方向における熱伝導率が2W/m・K以上の熱伝導性樹脂組成物からなる請求項1に記載の放熱構造体。
【請求項3】
熱伝導性樹脂組成物は、マトリクス樹脂100体積部に対して10〜200体積部の熱伝導性フィラーを含有する請求項1または2に記載の放熱構造体。
【請求項4】
熱伝導性フィラーとして、主として、メソフェーズピッチを原料としたピッチ系黒鉛化短繊維を用いる請求項2または3に記載の放熱構造体。
【請求項5】
発熱体がLED素子もしくはLED実装基板である、請求項1〜4のいずれかに記載の放熱構造体。
【請求項6】
請求項5に記載の放熱構造体をLED素子の放熱部品に用いたLED照明具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−79794(P2012−79794A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221396(P2010−221396)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】
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