説明

放電灯点灯装置

【課題】 不具合動作時にインバータを停止できる放電灯点灯装置を提供する。
【解決手段】 放電灯点灯装置は、直流電源1の直流電圧を交流電圧に変換し前記交流電圧を変圧器で昇圧した交流電圧により放電灯5a、5bを点灯せしめるインバータ2と、放電灯5a、5bまたは前記変圧器2次側に流れる電流の検出値に基づいてインバータ2を制御し前記変圧器2次側に流れる電流を一定に保つための帰還電流制御回路7とを備え、放電灯5a、5bまたは前記変圧器2次側に流れる電流が設定範囲外の値となったときインバータ2の動作を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不具合動作時にインバータを停止できる1灯または多灯放電灯点灯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放電灯点灯装置は、入力される直流電圧を交流電圧に変換した後、放電灯に印加して点灯させる。この時、1本または直列接続で2本以上を有する放電灯を点灯させる装置において、変圧器の断線、放電灯点灯装置と放電灯を結ぶ高電圧部とGND間の短絡、放電灯点灯装置と放電灯を結ぶコネクタの半接触等によるアーク放電、2本以上直列接続された放電灯間の接続部の断線、放電灯点灯装置と放電灯を結ぶコネクタの未接続といった不具合時でも近接容量の影響により変圧器の2次側に電流が流れる場合がある。
【0003】
このような異常動作を検知出来ないと、インバータの動作を停止できず、不具合動作が継続して発生し、インバータの部品破壊を起こす恐れがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、放電灯に流れる電流又は変圧器2次側に流れる電流を用いて、上記したような不具合動作時にインバータを停止できる放電灯点灯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、直流電源の直流電圧を交流電圧に変換し前記交流電圧を変圧器で昇圧した交流電圧により放電灯を点灯せしめるインバータと、前記放電灯または前記変圧器2次側に流れる電流の検出値に基づいて前記インバータを制御し前記変圧器2次側に流れる電流を一定に保つための帰還電流制御回路とを備え、前記放電灯または前記変圧器2次側に流れる電流が設定範囲外の値となったとき前記インバータの動作を停止させる放電灯点灯装置により、達成される。
【0006】
ここで、前記放電灯または前記変圧器2次側に流れる電流を電圧に変換し、前記電圧が上限比較基準電圧または下限比較基準電圧を超えたときに、前記放電灯または前記変圧器2次側に流れる電流が設定範囲外の値となったと判断することができる。また、前記上限比較基準電圧が前記直流電源の直流電圧の変化に応じて変化するようにすることができる。さらに、前記放電灯は1本または2本以上直列接続された放電灯とすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、放電灯を流れる電流または変圧器2次側の電流を検知して正常動作時の値に対し不具合時にその値が通常よりも変化したことを検出し、動作を停止させることで不具合を未然に防ぐことができる。即ち、本発明を用いることで、上記したような不具合を検知し、安全に回路を動作停止させることができる。この発明は、放電灯を流れる電流または変圧器2次側電流の変化の検知精度が必要の無い場合には、定電圧から基準電圧を作り、また、放電灯を流れる電流または変圧器2次側電流の変化の検知精度を上げたい場合には、入力電圧の変化に応じて基準電圧を変化させる回路を追加することで、検知の精度を上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下では、添付した図面を参考として本発明の実施例について説明する。しかし、本発明は多様な違う形態に実現可能なため、ここで説明する実施例に限定されるわけではない。
【実施例1】
【0009】
本発明の実施例1を図1を用いて説明する。図中、1は直流電源、2はインバータ、3は入力電圧分圧手段、4は変圧器2次側電流の電圧変換および分圧手段、5a,5bは放電灯、6は比較回路、7は帰還電流制御回路、70は比較器、8a、8bはコネクタ、Vref1は比較回路6の上限比較基準電圧、Vref2は比較回路6の下限比較基準電圧である。インバータ2は直流電源1の出力を交流電力に変換し昇圧して放電灯5a,5bに供給する。放電灯5a,5bはこれにより点灯する。この時、点灯に必要とされる電力は直流電源1から供給される。帰還電流制御回路7はインバータ2から出力される変圧器2次側電流Ifb1、Ifb2をフィードバックする事でこれを一定に保つ働きがある。これにより放電灯5a、5bは正常な状態で点灯し続ける。さらに放電灯5a、5bが正常な状態で点灯している期間は、放電灯5a、5bに与える交流電圧や電流が一定なので、その消費電力は一義的に定まる。変圧器2次側電流Ifb1、Ifb2が一定である為、正常点灯時の出力電圧Vd1,Vd2はある一定の電圧になる。この出力電圧Vd1、Vd2を比較回路6の上限比較基準電圧Vref1と比較回路6の下限比較基準電圧Vref2との電圧範囲の中間に位置するように変圧器2次側電流の電圧変換および分圧手段4にて設定する。また、比較回路6から帰還電流制御回路7の動作異常信号入力部71へ入力している信号Vsは、帰還電流制御回路7内の比較器70により異常検出基準電圧Verと比較し、正常点灯時Vs<Verになるように設定する。
【0010】
異常時の動作説明として、放電灯点灯装置と放電灯を結ぶコネクタ8a、8bの未接続の場合を示す。コネクタ未接続の場合、変圧器2次側電流が近接容量に流れる電流しか流れないことにより、変圧器2次側電流Ifb1、Ifb2の電圧変換および分圧手段4から出力される電圧Vd1、Vd2が下がり、比較回路6の下限比較基準電圧Vref2の電圧よりも下がる。ここで、近接容量とは、例えば放電灯と放電灯の周りにある金属との間に出来る容量をいう。この時、即ちコネクタ8a、8bの未接続時に、比較回路6から帰還電流制御回路7の動作異常信号入力部71へ入力している信号Vsが、Vs<VerからVs≧Verに変化することで動作停止回路72の作動により帰還電流制御回路7の動作が停止しインバータ2の動作を停止させる。その他の不具合(変圧器の断線、放電灯点灯装置と放電灯を結ぶ高電圧部とGND間の短絡、放電灯点灯装置と放電灯を結ぶコネクタの半接触等によるアーク放電、2本以上直列接続された放電灯間の接続部の断線)も同様に変圧器2次側出力電流Ifb1、Ifb2の値が上昇、又は低下し、上限比較基準電圧Vref1、又は下限比較基準電圧Vref2を超える事で、比較器回路6から帰還電流制御回路7の動作異常信号入力部71に入力している信号VsをVs<VerからVs≧Verに変化させ、インバータ2の動作停止を行わせる。
【0011】
本発明の詳しい実施例を図2(a)、(b)を用いて説明する。図2(b)中、インバータ2は、MOSFET22、23と、変圧器24、25、コンデンサ26、27,28とを備えて構成される。変圧器2次側電流Ifb1、Ifb2は、それぞれ変圧器24の2次側低圧側出力部29および変圧器25の2次側低圧側出力部30の部分に流れる電流である。また、図2(a)中、10,11,12,13は比較器、14,15,16,17は分圧抵抗、18は帰還電流制御回路7内異常検出基準電圧Ver以上の直流電圧源、19はトランジスタ、20,21はダイオードである。その他、図1と同じ番号が付してあるものは図1に準ずる。変圧器2次側出力電流Ifb1、Ifb2をダイオード20,21で平滑し抵抗14,15,16,17で電圧に変換し分圧した出力電圧Vd1,Vd2を、正常動作時に上限比較基準電圧Vref1と下限比較基準電圧Vref2との中間電圧になるように設定する。また、比較回路6から帰還電流制御回路7の動作異常信号入力部71へ入力している信号Vsは、正常動作時抵抗31,32の分圧でVs<Verになるように設定する。上記のような不具合が発生した場合、出力電圧Vd1またはVd2の値が変動し比較器10,11,12,13で比較回路の上限比較基準電圧Vref1と下限比較基準電圧Vref2との比較により、Vref1よりVd1またはVd2が上昇、あるいはVref2よりVd1またはVd2が低下した場合、比較器10,11,12,13のいずれかの出力がハイインピーダンスから低(Low)となり、トランジスタ19をONさせる。これによりトランジスタ19のコレクタに接続されている直流電源18の電圧が信号VsとしてVs<VerからVs≧Verになり帰還電流制御回路7の動作異常信号入力部71に印加され、動作停止回路72の作動により帰還電流制御回路7の動作が停止しインバータ2の動作が停止する。
【0012】
本発明は図3に示すように実施例1においてU字型放電灯を使用した場合も効果に変わりは無い。本例は、図1および図2に示す直列接続された2本の放電灯5a、5bおよびコネクタ8a、8bを1本のU字型放電灯5cおよびコネクタ8c、8cに変えた他は、図1および図2に示す構成と同じである。
【実施例2】
【0013】
本発明の実施例2を図4を用いて説明する。本実施例は複数のインバータとそれに接続される複数の放電灯を有する。図中、1は直流電源、2a,2bはインバータ、3a,3bは入力電圧分圧手段、4a,4bは変圧器の2次側に流れる電流の電圧変換および分圧手段、5d,5e,5f,5gは放電灯、6a,6bは比較回路、7a,7bは帰還電流制御回路、8d、8e、8f、8gはコネクタ、Vref1a,Vref1bは比較回路の上限比較基準電圧、Vref2a,Vref2bは比較回路の下限比較基準電圧である。インバータ2は直流電源1の出力をインバータ2で交流電力に変換し昇圧して放電灯5d,5e,5f,5gに供給する。放電灯5d,5e,5f,5gはこれにより点灯する。この時、点灯に必要とされる電力は直流電源1から供給される。帰還電流制御回路7a、7bはインバータ2a、2bから出力される変圧器2次側出力電流Ifb1a、Ifb1b、Ifb2a、Ifb2bをフィードバックする事でこれを一定に保つ働きがある。これにより放電灯5d、5e、5f、5gは正常な状態で点灯し続ける。さらに放電灯5d,5e,5f,5gが正常な状態で点灯している期間は、放電灯5d,5e,5f,5gに与える交流電圧や電流が一定なので、その消費電力は一義的に定まる。変圧器2次側出力電流Ifb1a、Ifb1b、Ifb2a、Ifb2bが一定である為、正常点灯時の出力電圧Vd1a,Vd1b,Vd2a,Vd2bはある一定の電圧になる。このVd1a,Vd1b,Vd2a,Vd2bを比較回路6a,6bの上限比較基準電圧Vref1a,Vref1bと比較回路6a,6bの下限比較基準電圧Vref2a,Vref2bとの電圧範囲の中間に位置するように変圧器2次側電流の電圧変換および分圧手段4a,4bにて設定する。
【0014】
異常時の動作説明として、放電灯点灯装置と放電灯5d,5eを結ぶコネクタ8d、8eの未接続の場合(放電灯5d,5eの未接続)、変圧器2次側電流が近接容量に流れる電流しか流れないことにより、変圧器2次側出力電流Ifb1a、Ifb2aの電圧変換および分圧手段4aから出力される出力電圧Vd1a、Vd2aが下がり、比較回路6aで比較回路の下限比較基準電圧Vref2bの電圧よりも下がる。この時、比較回路6aから帰還電流制御回路7aの動作異常信号入力部71aへ出力されている電圧が信号VsaとしてVsa<VerからVsa≧Verに変化することで、実施例1の場合と同様に帰還電流制御回路7aの動作が停止し、インバータ2aの動作を停止させる。この事情は放電灯点灯装置と放電灯5f,5gを結ぶコネクタ8f、8gの未接続の場合(放電灯5f,5gの未接続)も同様である。この場合も上記と同様にして、比較回路6bから帰還電流制御回路7bの動作異常信号入力部71bへ出力されている電圧が信号VsbとしてVsb<VerからVsb≧Verに変化することで、実施例1の場合と同様に帰還電流制御回路7bの動作が停止し、インバータ2bの動作を停止させる。その他の不具合(変圧器の断線、放電灯点灯装置と放電灯を結ぶ高電圧部とGND間の短絡、放電灯点灯装置と放電灯を結ぶコネクタの半接触等によるアーク放電、2本以上直列接続された放電灯間の接続部の断線)の場合も同様に、変圧器2次側出力電流値Ifb1a又はIfb1b、Ifb2a又はIfb2bが上昇、又は低下し、変圧器2次側電流の電圧変換および分圧手段4a又は4bの出力電圧Vd1a又はVd1b、Vd2a又はVd2bが変動し比較回路6a,6bで上下基準電圧の範囲外に変化することで帰還電流制御回路7a,7bが停止することによりインバータ2a,2bの動作を停止させる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明は、不具合動作時にインバータを停止できる1灯または多灯放電灯点灯装置に関するものであり、産業上の利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1による放電灯点灯装置の回路図である。
【図2】(a)、(b)は本発明の実施例1による放電灯点灯装置の詳しい回路図である。
【図3】本発明の実施例1におけるU字管放電灯使用時の放電灯点灯装置の回路図である。
【図4】本発明の実施例2による複数のインバータおよび放電灯使用時の放電灯点灯装置の回路図である。
【符号の説明】
【0017】
1・・・直流電源
2,2a,2b・・・インバータ
3,3a,3b・・・入力電圧分圧手段
4,4a,4b・・・変圧器2次側電流の電圧変換および分圧手段
5a,5b,5c,5d,5e,5f,5g・・・放電灯
6,6a,6b・・・比較回路
7,7a,7b・・・帰還電流制御回路
8a,8b,8c,8d,8e,8f,8g・・・コネクタ
10,11,12,13,70・・・比較器
14,15,16,17,31,32・・・抵抗
18・・・直流電圧源
19・・・トランジスタ
20,21・・・ダイオード
22,23・・・MOS FET
24,25・・・変圧器
26,27,28・・・コンデンサ
29,30・・・変圧器2次側低圧側出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の直流電圧を交流電圧に変換し前記交流電圧を変圧器で昇圧した交流電圧により放電灯を点灯せしめるインバータと、前記放電灯または前記変圧器2次側に流れる電流の検出値に基づいて前記インバータを制御し前記変圧器2次側に流れる電流を一定に保つための帰還電流制御回路とを備え、前記放電灯または前記変圧器2次側に流れる電流が設定範囲外の値となったとき前記インバータの動作を停止させることを特徴とする、放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記放電灯または前記変圧器2次側に流れる電流を電圧に変換し、前記電圧が上限比較基準電圧または下限比較基準電圧を超えたときに、前記放電灯または前記変圧器2次側に流れる電流が設定範囲外の値となったと判断することを特徴とする、請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記上限比較基準電圧が前記直流電源の直流電圧の変化に応じて変化することを特徴とする、請求項2記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記放電灯が1本または2本以上直列接続された放電灯からなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の放電灯点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−335216(P2007−335216A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−165418(P2006−165418)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(000005474)日立ライティング株式会社 (130)
【Fターム(参考)】