説明

故障解析のための方法およびシステム

本発明は、例えば集積回路(IC)といったような、モールド組成物内に封入されたデバイスの繊細な構造を露出させるための方法およびシステムに関するものである。レーザーを使用することにより、モールド組成物を蒸発させて除去することができ、これにより、直下の構造を露出させることができる。レーザービームを、デバイスの表面上にわたって所望ラスターパターンでもって走査することができる。あるいは、デバイスを、レーザービームに対して相対的に、所望パターンに沿って駆動することができる。蒸発除去プロセスによって放射されたレーザープルームに関してスペクトル解析を行うことにより、蒸発除去された材料の組成を決定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年7月15日付けで出願された“FAILURE ANALYSIS METHODS AND SYSTEMS” と題する米国特許予備出願第60/487,870号明細書の優先権を主張するものである。この文献の記載内容は、参考のため、その全体がここに組み込まれる。
【0002】
本発明は、電気的デバイスおよび電気回路に関する故障解析を行うに際して除去用レーザーを使用するための方法およびシステムに関するものである。
【背景技術】
【0003】
典型的な集積回路(IC)の基本的構造は、矩形の半導体ダイまたは半導体チップと、このダイまたはチップを取り囲んでいるとともにこのダイまたはチップに対して接続された多数の細いワイヤリードと、ワイヤリードに対して接続されるとともにワイヤリードを取り囲んでいるより厚い金属トレースからなる周囲フレームと、を備えている。フレームは、ICの複数の外部ピンを形成する。外部ピンを除いては、アセンブリ全体は、典型的には、モールド組成物をなすパッケージ内に封入されている。ICが回路基板上に搭載される際には、典型的には、ICのピンが、回路基板上の対応するパッドに対して半田付けされる。
【0004】
回路基板上に搭載された複雑なICは、種々様々な理由によって故障することがあり得る。このような理由には、特に、内部ダイまたは内部チップの故障、ダイに対して取り付けられた多数の細いワイヤリードの故障、および、ダイとワイヤリードと周囲ピンフレームとの間における多数の接続箇所の故障、がある。大量生産された多数のICの1つのICさえの故障原因の究明は、将来的な故障防止に関する有益な情報をもたらし得るとともに、IC製造プロセスを改良することができる。
【0005】
多くの場合、ICの故障原因を識別するための唯一の方法は、ICの内部を、特に、ダイや、ワイヤリードや、ピンフレームや、これらの間の半田付け箇所、といったようなところを、目視検査することである。さらに、内部ポイントに対しての物理的なアクセスが、また、問題点を分離するために必要とされることがあり得る。例えば、物理的なアクセスにより、アナライザーを使用してICの各部分を電気的に調査することができ、これにより、各部分の機能を判定することができる。X線や超音波による撮影技術は、視覚的な情報を提供し得るものではあるけれども、これら手法では、内部ポイントに対しての物理的なまたは電気的なアクセスを行うことができない。
【0006】
ICダイとこれに関連するワイヤおよび/またはピンフレームとを囲んでいるモールド組成物を除去することにより、重大な潜在的故障箇所に対しての視覚的アクセスと物理的アクセスとの双方を行うことができる。しかしながら、その場合には、さらなる損傷を引き起こさないような手法が困難であることがわかっており、不可能でさえある。従来的な手法では、非常に細いリードあるいはダイを破損することが知られており、これでは、故障の原因を決定することができない。さらに、故障解析を行う場合には、多くの場合、ICを露出させた状態で、ICに通電して動作させることが望ましい。モールド組成物の除去によってICが損傷してしまい、ICが動作不能となるのであれば、そのような分析は、不可能である。
【0007】
したがって、ICのモールド組成物を除去することができ、これにより、ICの内部構造を損傷させることなく、ICの内部構造に対して物理的にかつ視覚的にアクセスし得るような、方法およびシステムが、要望されている。
【0008】
IC故障の他の潜在的な原因は、モールド組成物自体に関連する。多くの場合、モールド組成物の組成内の不純物や不整合に基づき、『ホットスポット』すなわち高温領域が発生し、ICの一部または全部を故障させたり劣化させたりする原因となる。そのようなホットスポットを防止することは、通常動作時に例えばファンやヒートシンクといったような補助的冷却手段をしばしば必要とするような高速で複雑なICにおいては、特に重要である。将来的なデバイスのモールド組成物においてそのような欠陥を回避するためには、故障したデバイスのモールド組成物の組成を分析して、そのような欠陥が存在している場合に、そのような欠陥の性質とそのような欠陥の位置とを決定することが、望ましいことである。従来技術においては、満足のいくそのような方法やシステムは、存在しない。
【0009】
従来技術においては十分に解決されていないような、電気的回路の故障解析に関連する他の問題点は、故障したデバイスが搭載されている回路基板の正確な切断を必要とする。回路基板上に搭載される例えばICといったような素子に関して故障解析を実行する場合、多くの場合、回路基板から素子を取り外すことが必要とされる、また、そのようなことが望ましい。従来技術における方法においては、例えば細かいダイヤモンドソーやウォータジェットといったようなツールを使用して素子の周囲において回路基板をカットする。そのような機械を使用して行われるカットの幅は、典型的には、0.127mm(0.005インチ)〜0.762mm(0.030インチ)である。さらに、カットというそのような機械的方法は、実質的な振動を導入する。このような振動は、周囲の素子や、回路基板に対する接続箇所を、損傷させるおそれがある。カット箇所に隣接した領域や素子に対するこのような潜在的な損傷は、また、大きな基板から1つまたは複数のより小さな回路基板を分離させるような例えばシンギュレーションといったような製造プロセスに関して、関連する。回路基板の密度を最大化するためには、多くの場合、複数の素子を回路基板のエッジ近傍に配置する必要がある。大きなカット幅を有しているとともにカット近傍箇所の素子に対して損傷を引き起こし得るような従来的カットプロセスでは、回路基板のエッジ近傍に素子を配置することを、制限してしまう。
【0010】
回路基板に搭載される素子の密度がさらに増大していることのために、非常に細いカットを行い得るとともにカット箇所の周囲領域に対する損傷を最小化し得るような、回路基板のカット方法が要望されている。
【特許文献1】米国特許予備出願第60/487,870号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ICや回路基板や均等物の故障解析を行ったりまたカットを行ったりするための様々な新規な方法およびシステムにおいて有利にはレーザーを使用することにより、従来技術における上記制限を克服するものである。
【0012】
本発明の例示としての第1実施形態においては、レーザーを使用することにより、繊細な内部ダイやワイヤリードや半田付け箇所やモールド組成物内に封入された他のすべての重要な構造を損傷させることなく、ICのモールド組成物を蒸発除去することができる。これにより、それら構造を、視覚的な分析や電気的な分析に供することができる。レーザービームは、適切な光学系を使用することにより、ICの表面に対応した平面上へと焦点合わせすることができる。これにより、IC表面からモールド組成物を除去することができる。焦点合わせされたレーザービームは、例えばラスターパターンといったような所定パターンでもって、IC表面の選択された領域にわたって走査される。これにより、層上でもってモールド組成物を除去し、各経路ごとに組成物内の奥深くへと侵入することができる。他の実施形態においては、レーザービームが静止され、かつ、ICが、位置決めテーブルによって所望パターンに沿って前後方向に駆動される。
【0013】
また、本発明によるシステムにおいては、選択された深さにまで、モールド組成物の選択された部分を除去することができる。本発明によるシステムにおいては、画像データに基づく位置情報を併用することにより、デバイスのうちの、興味対象をなす小さな部分を、識別して露出させることができる。
【0014】
本発明によるシステムを使用することにより、例えばワイヤリードの脱離や半田付け不良や内部素子または内部接続の他の損傷箇所も含めた多くのタイプの故障を検出することができる。
【0015】
上記欠陥に加えて、本発明によるシステムは、さらに、ICの電気的構成部材を封入しているモールド組成物の欠陥を検出して解析することができる。本発明の他の実施形態においては、検出器およびスペクトルアナライザーを使用することによって、蒸発除去プロセス時に放出されるレーザープルームを分析することができる。これにより、蒸発除去された材料の組成に関する情報を得ることができる。除去されたモールド組成物の組成を捕捉する(あるいは、獲得する)ことにより、使用者に対して三次元表示を提示することができる。
【0016】
本発明のさらに他の見地においては、ICや回路基板等といったようなものの選択された部分を精度良くカットするためのシステムが、提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明によるシステム100の例示としての第1実施形態を示すブロック図である。例えば集積回路(IC)101といったような分析対象をなすデバイスが、プラットホーム105上に配置されている。デバイス上にわたっては、一対をなす反射パドル151,152によっておよびレンズ部材140によって、レーザー110により生成されたレーザービーム107が走査されておりまた焦点合わせされている。動作は、コントローラ120によって制御される。コントローラ120は、使用者に対する入出力を行い得るよう、ユーザインターフェース130に対して接続することができる。例えば、コントローラ120とユーザインターフェース130とは、ワークステーションやパソコン等といったようなものの一部とすることができる。あるいは、コントローラ120やユーザインターフェース130は、個別的に収容されたものとすることができる。
【0018】
動作時には、IC101は、静止したものとされる。ビーム107が、選択されたパターンに沿って、ICの表面の選択された部分上にわたって移動する。すべての瞬間において、レーザービーム107は、IC101の表面上の1箇所を衝撃する。しかしながら、人間の目には、ビームは、IC101の表面上にわたってのビーム107の走査速度に応じて、IC101の表面上へと入射するようなラインあるいは矩形として見えることができる。ビーム107がIC101の表面を衝撃した際には、モールド組成物のうちの、衝撃箇所に位置した少量部分が蒸発しこれにより除去される。ビーム107をICの表面上にわたって走査することにより、モールド組成物を、ビーム107を走査したパターンに沿って除去することができる。レーザービーム107がトレースするパターン(あるいは、蒸発させるパターン)は、様々な幾何形状(例えば、矩形、円形)のものとされたデバイス101の表面の任意の所望部分であっても処理対象とし得るように、選択することができる。パターンは、好ましくは、パターンに沿ってレーザーが通過するたびごとに一様な厚さの材料層を除去し得るように、選択される。パターンに沿ってレーザーが連続的に通過させた場合には、材料層が連続的に除去される。各材料層が除去されたときには、レーザーは、デバイス101の新たに露出された表面上へと向けられ、これにより、次なる層が除去される。蒸発プロセスは、任意の時点で停止することができる。したがって、デバイス101の所望領域からの材料除去に加えて、システムは、さらに、所望深さまでへの材料除去を行うことができる。
【0019】
レーザー110によって生成されたレーザービーム107は、まず最初に、アクチュエータ161により第1軸線回りに回転駆動される反射パドル151によって、偏向される。パドル151は、このパドル151に対して実質的に垂直な向きとされた反射パドル152上へと、ビーム107を偏向させる。パドル152は、レンズ部材140上へと、ビームを偏向させる。典型的には、アクチュエータ161は、パドル151を、揺動パターンでもって回転駆動する。これにより、ビームは、パドル152上において直線的に移動することとなる。同様に、アクチュエータ162は、パドル152を、揺動パターンでもって回転駆動する。これにより、ビームは、レンズ部材140上において二次元ラスターパターンに沿って移動することとなる。反射パドル151,152は、好ましくは、薄くかつ質量の小さなものとされる。アクチュエータ161,162は、好ましくは、高速の検流計モータとされる。低質量反射部材と高速モータとの組合せにより、焦点合わせされたレーザービームは、最大で、1秒あたり25.4mmの数千倍といったような速度で(1秒あたり数千インチといったような速度で)、移動することができる。アクチュエータ161,162は、コントローラ120によって制御される。パドル151,152やアクチュエータ161,162やすべての必要な制御回路や関連するソフトウェアも含めて、本発明において使用し得るレーザー走査用サブシステムは、米国マサチューセッツ州 Cambridge 所在の Cambridge Technology, Inc. 社によって市販されている。
【0020】
パドル151,152の向きにかかわらず、また、レーザービーム107が通過する経路の長さにかかわらず、レンズ部材140は、レーザービームを、単一の平面上に焦点合わせするように機能する。レンズ部材140は、例えば、所定角度でもってレーザービーム入力を受領しかつレンズの出力側においては平面上においてレーザービームを焦点合わせするような、『フラットフィールドレンズ』または『テレスコーピックレンズ』とすることができる。そのような光学系は、ドイツ国の Sil and Rodenstock 社から入手することができる。
【0021】
レーザービーム107を、IC101の表面上にわたって高速で移動させることにより、レーザービームが各ポイントに滞在する時間は、非常に短い。このため、蒸発除去プロセスによって露出させようとしている繊細な直下構造に対してレーザーが引き起こしかねない損傷を、最小化することができる。よって、形成される熱影響領域(heat affected zone,HAZ)は、非常に小さいものとされる(例えば、1μm未満)。ICの実質的にすべてのモールド組成物を、除去することができ、電気的に無傷な状態でもって、また、電気導通状態であってさえ、素子の機能的『スケルトン』を残すことができる。
【0022】
他の考慮点は、使用されるレーザー放射の波長である。特に、グリーン(〜532nm)、UV(〜266nm)、IR(〜1,064nm)およびCO (〜10,640nm)という波長を、使用することができる。応用に際しての最良の波長は、蒸発除去の対象をなす材料のタイプや、露出されるべき直下構造の組成、に依存する。通常的なモールド組成物を使用したICに関しては、IR波長であると、より脆弱な直下を損傷させることなく、すなわち、ダイをICピンに対して取り付けている細い銅ワイヤを破損させることなく、うまく動作することが判明した。ICに関しては、また、約1319nmという波長を有したレーザーを、使用することもできる。なぜなら、主にシリコンから構成されたダイを破損する傾向がないからである。細いワイヤは、例えばグリーンといったような他の波長と比較した場合、IR波長すなわち1319nmという波長においては、より小さな影響しか受けない。例えば、銅は、IR波長を反射する傾向がある。したがって、IR波長を使用することにより、HAZという観点において、素子に対する損傷を低減させることができる。よって、露出されるべきデバイスの組成に基づいてレーザー波長を適切に選択することにより、本発明によるプロセスを最適化することができる。本発明は、特定波長のレーザーに限定されるものではない。
【0023】
レーザー110は、Qスイッチレーザーとすることができ、コントローラ120によって制御することができる。特に、レーザー110としては、米国ニューヨーク州 East Setauket 所在の Quantronix Corporation社から入手可能であるような、ダイオードによってポンピングされる25ワットのIRレーザーや、ランプによってポンピングされる75ワットのIRレーザーを、使用することができる。
【0024】
図2は、本発明によるシステムの第2実施形態200を示している。この実施形態においては、例えばIC201といったような、露出対象をなすデバイスは、X−Y位置決めテーブル205上に配置されている。X−Y位置決めテーブル205は、一組をなす2つのアクチュエータ261,262によって駆動される。レーザー210は、レーザービーム207を生成する。このレーザービーム207は、IC201の表面を衝撃する。この実施形態においては、レーザー210は静止している。一方、IC201が、所望パターンに沿ってレーザーに対して相対移動可能とされている。これにより、レーザービーム207は、その所望パターンに従ってモールド組成物を蒸発除去することができる。アクチュエータ261,262は、DCサーボモータとすることができる。あるいは、アクチュエータ261,262は、他の適切なデバイスことができる。アクチュエータ261,262は、コントローラ220によって制御される。第1実施形態の場合におけるレーザー走査用反射部材と比較して典型的にはX−Y位置決めテーブル205の方がより大きな質量を有していることのために、レーザービームに対してデバイスを相対的に移動させ得る速度は、図1の実施形態の場合よりも、実質的に遅い。その結果、IC201上の各ポイント上におけるレーザービーム207の滞在時間と、蒸発パターンをなす各経路を通過するのに要する時間とは、図1の実施形態の場合に達成し得る時間と比較して、典型的には実質的に大きい。
【0025】
本発明のさらなる見地においては、デバイスを封入しているモールド組成物の組成を分析するための方法が提供される。本発明によるシステムにおいては、レーザーがモールド組成物を蒸発除去させる際には、蒸発光すなわち放射光すなわち『レーザープルーム』が放出される。放射光のスペクトルは、蒸発除去対象をなすモールド組成物の組成に関して、特有のものである。放射光のスペクトル解析を行うことによって、レーザーが通過したパターンに沿っての各ポイントで除去されたモールド組成物の組成を、決定することができ、これにより、除去されたモールド組成物の容積内での組成イメージを提供し得るようマッピングを行うことができる。
【0026】
図1に示すように、検出器185が、蒸発除去プロセスによって放射された光を検出するために、設けられている。検出器185は、放射された光のスペクトルを分析するためのスペクトルアナライザー180に対して、接続されている。アナライザー180は、コントローラ120に対してあるいはヒューマンインターフェース130に対して、接続するすることができる。同様の構成は、図2のシステムにおいても、実施することができる。本発明において使用し得るスペクトル解析システムは、米国フロリダ州 Dunedin所在のOcean Optics Inc. 社から入手可能である。
【0027】
図3は、例示としてのモールド組成物が蒸発除去される場合に放射され得るような、例示としてのスペクトル300を示している。予想されるスペクトル値の包絡線310を、対象をなすモールド組成物に関して決定することができる。そのようなスペクトル包絡線310は、例えば、モールド組成物の製造業者が提供することができる。様々なモールド組成物に関し、スペクトル包絡線310を収集して保有しておくことができる。
【0028】
図3において符号325によって図示されているように、特定の組成物に関して検出されたスペクトル300が、対応するスペクトル包絡線310から逸脱している場合には、偏差を、使用者に対して通知して報告することができる。加えて、そのような偏差が生じた場合、組成物のうちの、そのような偏差を引き起こしている層を捕捉することによって、偏差を引き起こしている異常箇所の深さ(つまり、z座標方向における深さ)に関する表示を得ることができる。さらに、偏差が引き起こされた時点での層内の位置(つまり、x座標とy座標との方向における位置)を捕捉することによって、そのような偏差を引き起こしているようなモールド組成物内における異常箇所の空間的位置を、決定することができる。このようにして得られたスペクトルおよび位置情報を使用することによって、モールド組成物の容積内において検出された異常箇所も含めて、蒸発除去されたモールド組成物の容積に関しての三次元表示を形成することができる。例示としてのそのような表示が、図4に示されている。図4に示すように、本発明による蒸発除去プロセスによって除去された材料の容積401は、異常箇所425を有しているものとして、示されている。異常箇所の位置を決定することに加えて、例えば寸法や容積に関する測定手段といったような、さらなる測定手段を提供することができる。
【0029】
モールド組成物内の異常箇所に関する空間的情報の提供に加えて、そのような異常箇所の組成を、それら異常箇所に関するスペクトル特性という形態でもって、使用者に対して知らせることができる。また、システムは、異常箇所の存在の有無にかかわらず、使用することができる。これにより、容積全体にわたって、モールド組成物の組成を提供することができる。
【0030】
上述したように、本発明によるシステムは、デバイス内における所望深さにわたって、デバイスのうちの、選択された形状をなす選択された部分から、材料を除去することができる。この能力により、デバイスを解析するのに必要な時間を低減することができる。なぜなら、デバイスのうちの、興味のある部分に対してのみ、プロセスを制限し得るからである。さらに、この能力と、他の情報源からの情報と、を組み合わせることによって、興味のある領域を精度良く特定して識別することができる。例えば、X線または超音波による撮影デバイスからの画像データを併用した場合には、画像データ内で識別されたような興味対象をなす異常箇所の座標を、本発明によるシステムの中で使用することができる。これにより、モールド組成物のうちの、興味対象領域に対してアクセスするのに必要な該当部分だけを、除去することができる。この能力は、また、画像データがモールド組成物中の異常箇所の存在を指摘した場所において、使用することもできる。この場合、画像データを使用することにより、(検査のために封入電気構造を露出させるという目的のためではなく)興味対象領域のところにおいてモールド組成物をスペクトル的に分析する目的のために、興味対象領域からモールド組成物を除去することができる。
【0031】
本発明のさらなる見地においては、図5は、システムの例示としての他の実施形態500を示している。このシステム500は、回路基板501の選択された部分をカットする(あるいは、貫通させつつカットする)ためのものである。選択された素子を回路基板501から切り離し得ることに加えて、図5のシステムを使用することにより、素子や回路基板501自体を切断することができる。これにより、選択された部分における断面を見せることができる。システム500は、可視システム590、X−Y位置決めテーブル505、レーザー510、コントローラ520、および、ヒューマンインターフェース530、を備えている。回路基板501は、位置決めテーブル505上に配置されている。可視システム590は、回路基板の画像を撮影するものであり、その画像をヒューマンインターフェース530上に表示することができる。その後、使用者は、一組をなす複数の画面上操作ツールを使用することによって、カットすべきまたは切り離すべき領域の周囲の二次元形状(直線や、円弧や、長方形、円など、あるいは、これらの組合せ)を描くことができる。使用者は、また、カットの深さを指定することができる。あるいは、システムは、回路基板501を厚さ全体にわたって切断することができる。その後、カットシステムは、選択された形状に沿って、回路基板をカットし、所望部分を無傷な状態で切り離すことができる。所望深さまでのカットを行うに際し、あるいは、回路基板を完全に貫通したカットを行うに際し、複数の経路が必要とされることもあり得る。
【0032】
システム500は、0.0508mm(0.002インチ)という幅といったように、最小のカットを行うことができる。これにより、敏感な素子のごく近傍においても、カットを行うことができる。ICも含めて素子自体を切断するすなわち『切り裂く』ことさえ可能である。これにより、素子の内部の正確な断面を提供することができる。レーザーカットプロセスにおいては、熱影響領域(HAZ)が小さいことのために、解析対象をなす領域に対してあるいは解析対象をなす素子に対して損傷を与えることなく、カットを行うことができる。システム500のHAZは、約1μm未満といった程度である。これは、0.127mm(0.005インチ)〜0.762mm(0.030インチ)といったような機械的カットの場合と比較されるべきである。
【0033】
例示としての図5のシステムにおいては、レーザーを静止状態として回路基板を移動させているけれども、本発明の範囲内においては、代替可能な実施形態として、回路基板を静止状態として、レーザーを移動させることができるあるいはレーザービームを走査することができる。
【0034】
例えばICといったような電気的デバイスの解析に加えて、本発明は、構造を損傷させることなく封入構造の内部を露出されるという任意の様々な応用に対して、適用することができる。さらに、本発明によるシステムは、レーザー蒸発によって除去されることとなる組成物の組成を決定することが要望された場合にも、使用することができる。さらに、本発明によるシステムは、上述したように、適切なレーザーを使用することによって、広範な材料に対して適用することができる。
【0035】
本発明につき、いくつかの特定の好ましい実施形態について上述のように説明したけれども、上記説明は、例示に過ぎないものであって、特許請求の範囲によって規定されるような本発明の範囲を限定するものではないことは、理解されるであろう。実際、上述のものに対して追加し得るような本発明の様々な修正は、上記説明に基づきおよび図面の図示に基づき、当業者には明らかであろう。そのような修正は、特許請求の範囲内に包含されるべきものである。
【0036】
また、上記において例示したすべての数値が、概略的なものであるとともに、例示に過ぎないことは、理解されるであろう。
【0037】
本明細書の全般にわたって引用したすべての特許や特許出願や刊行物の開示は、参考のため、それらの全体がここに組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明によるシステムの例示としての第1実施形態を示すブロック図であって、レーザービームが、レーザー蒸発による除去対象をなす封入材料を備えたデバイス上にわたって、所望パターンでもって、走査される。
【図2】本発明によるシステムの例示としての第2実施形態を示すブロック図であって、レーザービームが、レーザー蒸発による除去対象をなす封入材料を備えたデバイス上へと案内されるようになっているとともに、デバイスが、レーザーに対して相対移動するものとされ、これにより、デバイスの選択された領域から材料を除去し得るものとされている。
【図3】例示としての材料の蒸発の際に放出される光のスペクトルを示すグラフであって、このスペクトルが、例示としての材料に関連すると予想される包絡線に対して、重ね合わされる。
【図4】蒸発によって除去された材料ブロックを例示する3次元的図示であって、本発明による解析方法を使用して内部に検出され異常箇所を備えている。
【図5】本発明によるシステムの例示としての実施形態を示すブロック図であって、レーザービームが、ICまたは回路基板上へと案内され、これにより、ICまたは回路基板を複数の部分へとカットし得るものとされている。
【符号の説明】
【0039】
100 システム
101 集積回路(IC)
105 プラットホーム
107 レーザービーム
110 レーザー
140 レンズ部材
200 システム
201 IC
205 X−Y位置決めテーブル
207 レーザービーム
210 レーザー
500 システム
501 回路基板
510 レーザー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料によって封入された構造を露出させるための方法であって、
レーザービームを生成し;
材料によって封入された構造上へと、前記レーザービームを案内し;
前記構造を損傷させることなく、前記レーザービームによって、前記材料を蒸発除去する;
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
前記レーザービームと、前記封入された前記構造と、の間にわたって相対変位を行い、これにより、所定領域上にわたって前記材料を蒸発除去することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、
前記レーザービームを、前記封入された前記構造上にわたって走査することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2記載の方法において、
前記封入された前記構造を移動させ、前記レーザービームを固定することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、
前記材料の蒸発除去によって生成されたプルームを解析し、これにより、前記材料の組成を決定することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法において、
前記レーザービームの位置を決定し、これにより、前記材料の組成に関しての空間的表現を得ることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、
前記封入された前記構造を、集積回路とすることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項3記載の方法において、
前記レーザービームを、1つまたは複数の電流駆動ミラーを使用することによって、走査することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法において、
前記レーザービームが、266nm〜10,640nmという範囲の波長を有していることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項3記載の方法において、
前記レーザービームを、平面内において焦点合わせすることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法において、
前記レーザービームを、フラットフィールドレンズとテレセントリックレンズとの少なくとも一方を使用することによって、平面内において焦点合わせすることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1記載の方法において、
前記材料の蒸発除去により、1μmを超えないような熱影響領域を形成することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−534930(P2007−534930A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520412(P2006−520412)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/023232
【国際公開番号】WO2005/010945
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(506015579)コントロール・システメーション・インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】