説明

整流器

【課題】 簡易な構成で、低損失で交流を整流することができる整流器を提供することである。
【解決手段】 p型半導体からなるベースBとサブエミッタSは、互いに接しないようにして、n型半導体からなるコレクタCに接合されている。n型半導体からなるエミッタEは、ベースBに接合されている。ベースB−エミッタE間には抵抗器Rが接続され、サブエミッタSにはバイアス用電源VBの正極が接続され、エミッタEには負極が接続される。コレクタCとエミッタEが実質的に同電位となったとき、ベースB−サブエミッタS間が導通して抵抗器Rに電圧降下が生じるが、コレクタC−エミッタE間は導通しない。コレクタCを基準としたエミッタEの電圧が更に低下すると、コレクタC−エミッタE間が導通する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、整流器に関し、特に、低損失で交流を整流するための整流器に関する。
【0002】
【従来の技術】交流電圧を直流電圧に変換する整流回路は、従来より、シリコンダイオード、ショットキーバリアダイオード等を用いて構成されている。しかし、これらダイオードを用いた整流回路では、ダイオードの順方向電圧が0.4V〜1.0V程度であり、整流回路を構成するダイオードでの電圧降下、即ち、損失が大きく、整流の効率が低いという問題があった。
【0003】この問題を解決する手法として、バイポーラトランジスタやFET(Field Effect Transistor)が備える電流路を流れる電流やそれらの両端間の電圧を検出して、それらのバイポーラトランジスタやFETをオン及びオフする同期整流の技術がある。トランジスタを用いて同期整流を行う場合は、トランジスタが、整流する対象の電圧の印加を検知したり、負荷への電流の流入を検知したりすることにより、トランジスタの電流路のオン及びオフのタイミングが決定されている。
【0004】整流する対象の電圧が印加されたことを検知するには、コンパレータや演算増幅器を用いる手法がある。また、負荷への電流の流入を検知する手法としては、電流トランスを用いる手法や、抵抗器を用いる手法がある。電流トランスを用いる手法では、負荷への電流供給路に電流トランスの一次巻線を挿入して、該電流トランスの二次巻線から、負荷に流れる電流に比例した大きさの信号を取り出す。また、抵抗器を用いる手法では、負荷への電流供給路に抵抗器を挿入し、該抵抗器の両端間の電圧を計測することによって負荷に流れる電流を検出する。
【0005】なお、電流トランスや抵抗器を用いて電流を検知する手法は、トランジスタの電流路のオン及びオフのタイミングを決定する目的に限られず、電流を検出する手法として広く用いられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上述のいずれの手法においても、コンパレータ、演算増幅器、電流トランスあるいは抵抗器が付加される結果、回路構成は複雑となっていた。
【0007】また、上述のいずれの手法においても、コンパレータ、演算増幅器、電流トランスあるいは抵抗器は、これら自体が電力を消費するため、損失が発生する。このため、この損失が無視し得る範囲内に止まるようにするため、電流トランスの消費電力を十分に小さくしたり、抵抗器の抵抗値を十分小さくする必要がある。
【0008】しかし、電流トランスの感度を高めるためには、電流トランスの二次巻線の巻数を増やす必要があり、電流トランスの二次巻線の巻数が増大すると、二次トランス自体による電力の損失が増加する。また、負荷への電流供給路に挿入された抵抗器の両端間の電圧は、この抵抗器の抵抗値の大きさに比例して増大する。しかし、この抵抗器による損失も、抵抗値が大きくなるほど増大する。
【0009】また、電流トランスは、電源からみて誘導性負荷として作用するため、電流トランスの二次巻線に現れる電圧の位相は、電源から供給される電圧の位相と異なる値となる。そして、この位相のずれは、負荷のインピーダンスや電源から供給される電圧の周波数に依存して変化する。このため、電流トランスの二次巻線に現れる電圧を用いて、整流を行うトランジスタのオン及びオフのタイミングを決定することはきわめて困難である。
【0010】また、コンパレータや演算増幅器の入力端は、トランジスタの制御端(すなわち、バイポーラトランジスタのベースや、電界効果トランジスタのゲート)に接続されている。トランジスタの制御端は耐圧が小さく、整流する対象の電圧が瞬間的にこのトランジスタの耐圧の定格を超える等の原因で、容易に破壊に至る。
【0011】また、バイポーラトランジスタを整流に用いる場合、バイポーラトランジスタの電流路(すなわち、エミッタ−コレクタ間)のオン抵抗の値を十分に低くするためには、バイポーラトランジスタのベースに十分なベース電流を流す必要がある。しかし、ベース電流を増大させるほど、バイポーラトランジスタ自身による損失もまた増大する。
【0012】この発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、簡易な構成で、低損失で交流を整流することができる整流器と、そのような整流器の製造を容易にするトランジスタとを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、この発明の第1の観点にかかる整流器は、第1導電型の第1の半導体層と、前記第1の半導体層に接合された、第2導電型の第2の半導体層と、前記第2の半導体層に接しないようにして前記第1の半導体層に接合された、第2導電型の第3の半導体層と、前記第2の半導体層に接合された第1導電型の第4の半導体層と、を備え、前記第1、第2及び第4の半導体層が、前記第1、第2及び第4の半導体層をそれぞれコレクタ、ベース及びエミッタとする第1のバイポーラトランジスタとして機能し、前記第1、第2及び第3の半導体層が、前記第1、第2及び第3の半導体層をそれぞれベース、コレクタ及びエミッタとする第2のバイポーラトランジスタとして機能するトランジスタと、前記第2及び第4の半導体層の間に接続されたインピーダンス源と、前記第1及び第4の半導体層が実質的に同電位となったとき、前記第2のバイポーラトランジスタのコレクタ及びエミッタと前記インピーダンス源とを含む電流路に電流が流れるようにし、且つ、前記第1の半導体層の電位を基準とした前記第4の半導体層の電圧が所定の条件を満たすようになったとき、前記第1のバイポーラトランジスタのエミッタ及びコレクタを含む電流路がオンするような電圧が前記インピーダンス源の両端間に発生するように、前記第1、第2及び第3の半導体層の電位を決定するバイアス用電圧源と、を有することを特徴とする。
【0014】このような整流器によれば、第1の半導体層の電位を基準とした第4の半導体層の電圧が所定の条件を満たすようになったとき、第1のバイポーラトランジスタがオンする。オン状態にあるバイポーラトランジスタのコレクタ−エミッタ間の電圧はほぼ0ボルトであるため、このような整流器は、簡単な構成でありながら、低損失で交流を整流する。
【0015】また、この発明の第2の観点にかかるトランジスタは、第1導電型の第1の半導体層と、前記第1の半導体層に接合された、第2導電型の第2の半導体層と、前記第2の半導体層に接しないようにして前記第1の半導体層に接合された、第2導電型の第3の半導体層と、前記第2の半導体層に接合された第1導電型の第4の半導体層と、を備え、前記第1、第2及び第4の半導体層が、前記第2の半導体層をベースとする第1のバイポーラトランジスタとして機能し、前記第1、第2及び第3の半導体層が、前記第1の半導体層をベースとする第2のバイポーラトランジスタとして機能する、ことを特徴とする。
【0016】このようなバイポーラトランジスタが、第2及び第4の半導体層の間に接続されたインピーダンス源と、第1及び第4の半導体層が実質的に同電位となったとき、第2のバイポーラトランジスタのコレクタ及びエミッタとインピーダンス源とを含む電流路に電流が流れるようにし、且つ、第1の半導体層の電位を基準とした第4の半導体層の電圧が所定の条件を満たすようになったとき、第1のバイポーラトランジスタのエミッタ及びコレクタを含む電流路がオンするような電圧がインピーダンス源の両端間に発生するように、第1、第2及び第3の半導体層の電位を決定するバイアス用電圧源とにより整流器を構成すれば、この整流器は、第1の半導体層の電位を基準とした第4の半導体層の電圧が所定の条件を満たすようになったとき、第1のバイポーラトランジスタがオンする。オン状態にあるバイポーラトランジスタのコレクタ−エミッタ間の電圧はほぼ0ボルトであるため、このようなバイポーラトランジスタから構成される整流器は、簡単な構成でありながら、低損失で交流を整流する。
【0017】第1の半導体層から放出される多数キャリアは、第1及び第2のバイポーラトランジスタがオン状態にあるとき、第2及び第3の半導体層に引き寄せられる。しかし、前記第2の半導体層は、前記第1及び第4の半導体層を実質的に最短距離で結ぶ線分上に配置され、前記第3の半導体層は、前記第1及び第4の半導体層を実質的に最短距離で結ぶ線分上に位置しないように配置されているものとすれば、第2の半導体層が、第3の半導体層より強くこの多数キャリアを引き寄せるので、この多数キャリアの流れは、その大部分が第1のバイポーラトランジスタのコレクタ電流となる。従ってインピーダンス源による不要な電力消費が抑制される。
【0018】また、前記第3の半導体層はメッシュ状に形成されており、前記第3の半導体層が形成するメッシュは、前記第2の半導体層に接しないようにして、且つ、前記第1及び第2の半導体層を直線的に結ぶ線分上に位置するようにして、前記第1の半導体層内に埋設されているものとすれば、第3の半導体層が引き寄せた多数キャリアは、第3の半導体層が形成するメッシュを通過して第2の半導体層により引き寄せられるので、この多数キャリアの流れは、その大部分が第1のバイポーラトランジスタのコレクタ電流となる。従って、インピーダンス源による不要な電力消費も抑制される。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、この発明の実施の形態を説明する。図1は、この発明の実施の形態にかかる整流器の構成を示す回路図である。図示するように、この整流器は、トランジスタTRと、抵抗器Rと、バイアス用電源VBとより構成される。
【0020】トランジスタTRは、図1に示すように、エミッタE、サブエミッタS、ベースB及びコレクタCを備えており、コレクタC、ベースB及びエミッタEが第1のバイポーラトランジスタQ1(以下、バイポーラトランジスタQ1と呼ぶ)を形成し、ベースB、コレクタC及びサブエミッタSが第2のバイポーラトランジスタQ2(以下、バイポーラトランジスタQ2と呼ぶ)を形成する。
【0021】なお、コレクタC、ベースB及びエミッタEは、それぞれ、バイポーラトランジスタQ1のエミッタ、ベース及びコレクタとして機能する。また、ベースB、コレクタC及びサブエミッタSは、それぞれ、バイポーラトランジスタQ2のコレクタ、ベース及びエミッタとして機能する。
【0022】コレクタCはn型半導体領域(以下、n型領域と呼ぶ)からなり、ベースB及びサブエミッタSに接合されていて、外部接続用のコレクタ端子tCが接続されている。
【0023】ベースB及びサブエミッタSは、いずれもp型半導体領域(以下、p型領域と呼ぶ)からなり、互いが直接に接することなく、各々コレクタCに接合されている。ベースBには、外部接続用のベース端子tBが接続されており、サブエミッタSには、外部接続用のサブエミッタ端子tSが接続されている。
【0024】エミッタEは、n型領域からなり、コレクタCにもサブエミッタSにも接することなく、ベースBに接合されている。ベースBには、外部接続用のベース端子tBが接続されている。
【0025】トランジスタTRのエミッタ端子tEは、この整流器のアノードをなし、トランジスタTRのコレクタ端子tCは、この整流器のカソードをなす。
【0026】抵抗器Rは、トランジスタTRのベース端子tBとエミッタ端子tEとの間に接続されている。バイアス用電源VBの正極はサブエミッタ端子tSに接続されており、バイアス用電源VBの負極は、エミッタ端子tEに接続されている。
【0027】バイアス用電源VBの電圧及び抵抗器Rの抵抗値は、バイポーラトランジスタQ2がオン状態になったとき、抵抗器Rの両端間に発生する電位差が、バイポーラトランジスタQ1をオンさせるための実質的に最小の電位差となるように選ばれている。
【0028】また、バイアス用電源VBの電圧は、バイアス用電源VBの両端から直流電圧が供給された状態で、この整流器のアノードの電位が、カソードの電位と実質的に同電位のときバイポーラトランジスタQ2がオフし、この整流器のアノードの電位が、カソードの電位よりわずかに高くなったとき、バイポーラトランジスタQ2がオンするように選ばれている。
【0029】図1の整流器において、バイアス用電源VBの両端から直流電圧が供給された状態で、この整流器のアノード及びカソードがいずれも開放されていたとする。この場合、バイポーラトランジスタQ2のベースであるコレクタCには、実質的に電流が流れない。従って、バイポーラトランジスタQ2はオフする。
【0030】従って、バイポーラトランジスタQ2のコレクタであるベースBと、バイポーラトランジスタQ2のエミッタであるサブエミッタSとの間には、実質的に電流が流れない。このため、抵抗器Rにも実質的に電流が流れず、従って抵抗器Rの両端間には実質的に電圧降下が発生しない。
【0031】このため、バイポーラトランジスタQ1のベースであるベースBとバイポーラトランジスタQ1のエミッタであるエミッタEとの間の電圧はほぼ0となり、従ってバイポーラトランジスタQ1はオフする。すなわち、この整流器のアノード及びカソードの間は、実質的に遮断される。
【0032】次に、バイアス用電源VBの両端から直流電圧が供給された状態で、この整流器のアノードの電位が、カソードの電位よりわずかに高くなったとする。この場合、サブエミッタS(バイポーラトランジスタQ2のエミッタ)の電位を基準としたコレクタC(バイポーラトランジスタQ2のベース)の電圧は、バイアス用電源VBの負極を基準とした正極の電圧よりわずかに高くなる。この結果、サブエミッタS(バイポーラトランジスタQ2のエミッタ)からコレクタC(バイポーラトランジスタQ2のベース)へとベース電流が流れ、バイポーラトランジスタQ2はオンする。
【0033】従って、バイポーラトランジスタQ2のコレクタであるベースBと、バイポーラトランジスタQ2のエミッタであるサブエミッタSとの間、及び抵抗器Rにはコレクタ電流が流れる。このため、抵抗器Rの両端間には、バイポーラトランジスタQ1がオンするのにやや足らない程度の電圧降下が発生する。従って、バイポーラトランジスタQ1は引き続きオフし続け、この整流器のアノード及びカソードの間は、引き続き実質的に遮断される。
【0034】そして、この整流器のカソードの電位を基準としたアノードの電圧を更に高くしたとする。この場合も、飽和しているトランジスタQ2のコレクタ電流を流している抵抗器Rの両端間の電圧はほぼ一定に保たれるため、バイポーラトランジスタのコレクタ(トランジスタTRのコレクタC)の電位を基準としたベース(トランジスタTRのベースB)の電圧は相対的に上昇し、バイポーラトランジスタQ1がオンするのに足る程度の値となる。
【0035】従って、バイポーラトランジスタQ1は、そのコレクタ(コレクタC)がエミッタとして機能し、エミッタ(エミッタE)がコレクタとして機能した状態でオンし、この整流器のアノード及びカソードの間は実質的に導通する。
【0036】なお、この電流検出器の構成は上述のものに限られない。例えば、トランジスタTRの構成は上述のものに限られない。具体的には、コレクタC、ベースB、サブエミッタS及びエミッタEの導電型(不純物型)は、それぞれn型、p型、p型及びn型である必要はなく、それぞれ、p型、n型、n型及びp型としてもよい。この場合におけるトランジスタTRの動作は、第1及び第2のバイポーラトランジスタをオン状態とするためにベースBやコレクタCに流すべき電流の向きが逆になる点を除き、コレクタC、ベースB、サブエミッタS及びエミッタEの導電型がそれぞれn型、p型、p型及びn型である上述の構成のトランジスタTRの動作と実質的に同一である。
【0037】また、ベースBとサブエミッタSの不純物濃度をほぼ同程度とすれば、バイポーラトランジスタQ2のコレクタ−エミッタ間の耐圧が高くなる。
【0038】また、トランジスタTRのベースB−エミッタE間の接合面の面積は、図2に示すように、ベースB−コレクタC間の接合面の面積より小さくなっていてもよい。図2の構成においては、エミッタEからベースBを介してコレクタCに注入するキャリアの量は、わずかなベース電流により制御することができる。すなわち、トランジスタTRのベースBの入力インピーダンスは大きくなり、また電流増幅率が大きくなる。なお、エミッタEからベースBに流れ込んだ少数キャリアはベースBに幅広く拡散し、コレクタCに流れるコレクタ電流として吸収される。
【0039】また、ベースB−エミッタE間の接合面の面積を小さくすることにより、これらの部分が形成するコンデンサが有する接合容量も小さくなる。このため、図1のトランジスタTRでは、良好な周波数特性を得ること(すなわち、高いトランジション周波数を得ること)もできる。従来の大電力用トランジスタは、電流増幅率が小さく周波数特性も悪いという欠点があった。これに対し、図2に示すトランジスタTRは、大電力用であっても小電力用並に制御が容易であるので、電力制御用として幅広く使用できる。
【0040】また、トランジスタTRは、図3に示すように、基板上にプレーナ型に集積されていてもよい。
【0041】図3の構成において、トランジスタTRのコレクタCは、n型半導体からなる基板より構成されている。
【0042】また、トランジスタTRのベースB及びサブエミッタSは、基板にリンなどからなるp型不純物を拡散して生成されるp型半導体層より構成される。ただし、ベースBは、コレクタCとエミッタEとを実質的に最短距離で結ぶ線分上に位置するように集積され、サブエミッタSは、コレクタCとエミッタEとを実質的に最短距離で結ぶ線分上に位置しないように集積されている。
【0043】また、トランジスタTRのエミッタEは、トランジスタTRのベースBの表面に砒素などからなるn型不純物を拡散して生成されるn型半導体層より構成される。
【0044】トランジスタTRのコレクタC、ベースB、サブエミッタS及びエミッタEの表面には、例えば金属等の導体から構成されるコンタクトが各々接続されている。そのうち、コレクタCに接続されているものがコレクタ端子tCを構成し、ベースBに接続されているものがベース端子tBを構成し、サブエミッタSに接続されているものがサブエミッタ端子tSを構成し、エミッタEに接続されているものがエミッタ端子tEを構成する。
【0045】図3の構成においては、コレクタCから放出される多数キャリアである電子は、バイポーラトランジスタQ1及びQ2がオン状態にあるとき、サブエミッタS及びベースBに引き寄せられる。しかし、ベースBは、サブエミッタSより強くこの電子を引き寄せるので、この電子の流れは、その大部分がトランジスタQ1のコレクタ電流となる。従って、トランジスタQ2のコレクタ電流の増加が抑制され、抵抗器Rによる不要な電力消費も抑制される。
【0046】また、トランジスタTRは、図4に示す構成を有していてもよい。図4の構成において、トランジスタTRのコレクタCは、図3の構成と同様、n型半導体からなる基板より構成されている。
【0047】また、トランジスタTRのサブエミッタSは、図示するようにp型半導体からなるメッシュを形成している。このメッシュは、ベースB及びコレクタCを直線的に結ぶ線分上に位置するようにして、且つ、ベースBと接しないようにして、且つ、一部がコレクタCから露出するようにして、コレクタC内に埋設されている。サブエミッタSは、たとえば、コレクタCにp型不純物をイオン注入することにより形成される。
【0048】また、トランジスタTRのベースBは、基板にp型不純物を拡散して生成されるp型半導体層より構成される。ベースBは、コレクタCとエミッタEとを実質的に最短距離で結ぶ線分上に位置するように集積されている。
【0049】また、トランジスタTRのエミッタEは、図3の構成と同様、トランジスタTRのベースBの表面にn型不純物を拡散して生成されるn型半導体層より構成される。
【0050】図4の構成においても、図示するように、トランジスタTRのコレクタC、ベースB、サブエミッタS及びエミッタEの表面には、導体から構成されるコンタクトが各々接続されている。そのうち、コレクタCに接続されているものがコレクタ端子tCを構成し、ベースBに接続されているものがベース端子tBを構成し、サブエミッタSに接続されているものがサブエミッタ端子tSを構成し、エミッタEに接続されているものがエミッタ端子tEを構成する。
【0051】図4の構成においても、コレクタCから放出される多数キャリアである電子は、バイポーラトランジスタQ1及びQ2がオン状態にあるとき、サブエミッタS及びベースBに引き寄せられる。しかし、図4の構成において、サブエミッタSが引き寄せた電子は、サブエミッタSが形成するメッシュを通過してベースBにより引き寄せられるので、この電子の流れは、その大部分がトランジスタQ1のコレクタ電流となる。従って、トランジスタQ2のコレクタ電流の増加が抑制され、従って抵抗器Rによる不要な電力消費も抑制される。
【0052】図3や図4に示すように、トランジスタTRが、単一の基板上に集積されることにより、この整流器はモノリシック半導体集積回路より構成されることとなるので、この整流器を含んだ装置の構成が物理的に簡略化され、装置のサイズも小さくなる。なお、更に、抵抗器Rが、薄膜抵抗器や拡散抵抗器から構成されていてもよい。
【0053】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれば、簡易な構成で、低損失で交流を整流することができる整流器と、そのような整流器の製造を容易にするトランジスタとが実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態にかかる整流器の構成を示す回路図である。
【図2】図1の整流器のトランジスタの変形例の構成を示す模式的断面図である。
【図3】図1の整流器のトランジスタの変形例の構成を示す模式的断面図である。
【図4】図1の整流器のトランジスタの変形例の構成を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
TR トランジスタ
B ベース
E エミッタ
C コレクタ
S サブエミッタ
tB ベース端子
tC コレクタ端子
tE エミッタ端子
tS サブエミッタ端子
R 抵抗器
VB バイアス用電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】第1導電型の第1の半導体層と、前記第1の半導体層に接合された、第2導電型の第2の半導体層と、前記第2の半導体層に接しないようにして前記第1の半導体層に接合された、第2導電型の第3の半導体層と、前記第2の半導体層に接合された第1導電型の第4の半導体層と、を備え、前記第1、第2及び第4の半導体層が、前記第1、第2及び第4の半導体層をそれぞれコレクタ、ベース及びエミッタとする第1のバイポーラトランジスタとして機能し、前記第1、第2及び第3の半導体層が、前記第1、第2及び第3の半導体層をそれぞれベース、コレクタ及びエミッタとする第2のバイポーラトランジスタとして機能するトランジスタと、前記第2及び第4の半導体層の間に接続されたインピーダンス源と、前記第1及び第4の半導体層が実質的に同電位となったとき、前記第2のバイポーラトランジスタのコレクタ及びエミッタと前記インピーダンス源とを含む電流路に電流が流れるようにし、且つ、前記第1の半導体層の電位を基準とした前記第4の半導体層の電圧が所定の条件を満たすようになったとき、前記第1のバイポーラトランジスタのエミッタ及びコレクタを含む電流路がオンするような電圧が前記インピーダンス源の両端間に発生するように、前記第1、第2及び第3の半導体層の電位を決定するバイアス用電圧源と、を有することを特徴とする整流器。
【請求項2】前記第2の半導体層は、前記第1及び第4の半導体層を実質的に最短距離で結ぶ線分上に配置され、前記第3の半導体層は、前記第1及び第4の半導体層を実質的に最短距離で結ぶ線分上に位置しないように配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の整流器。
【請求項3】前記第3の半導体層はメッシュ状に形成されており、前記第3の半導体層が形成するメッシュは、前記第2の半導体層に接しないようにして、且つ、前記第1及び第2の半導体層を直線的に結ぶ線分上に位置するようにして、前記第1の半導体層内に埋設されている、ことを特徴とする請求項1に記載の整流器。
【請求項4】第1導電型の第1の半導体層と、前記第1の半導体層に接合された、第2導電型の第2の半導体層と、前記第2の半導体層に接しないようにして前記第1の半導体層に接合された、第2導電型の第3の半導体層と、前記第2の半導体層に接合された第1導電型の第4の半導体層と、を備え、前記第1、第2及び第4の半導体層が、前記第2の半導体層をベースとする第1のバイポーラトランジスタとして機能し、前記第1、第2及び第3の半導体層が、前記第1の半導体層をベースとする第2のバイポーラトランジスタとして機能する、ことを特徴とするトランジスタ。
【請求項5】前記第2の半導体層は、前記第1及び第4の半導体層を実質的に最短距離で結ぶ線分上に配置され、前記第3の半導体層は、前記第1及び第4の半導体層を実質的に最短距離で結ぶ線分上に位置しないように配置されている、ことを特徴とする請求項4に記載のトランジスタ。
【請求項6】前記第3の半導体層はメッシュ状に形成されており、前記第3の半導体層が形成するメッシュは、前記第2の半導体層に接しないようにして、且つ、前記第1及び第2の半導体層を直線的に結ぶ線分上に位置するようにして、前記第1の半導体層内に埋設されている、ことを特徴とする請求項4に記載のトランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2000−340575(P2000−340575A)
【公開日】平成12年12月8日(2000.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−147375
【出願日】平成11年5月27日(1999.5.27)
【出願人】(000102728)株式会社エヌ・ティ・ティ・データ (438)
【Fターム(参考)】