説明

断熱ホース及びその製造方法

【課題】曲げた際にも可撓性内管の内層がホース内部にはみ出さず、流体の流動抵抗の増加が少ないような断熱ホース及びその製造方法を提供する。
【解決手段】断熱ホースの製造方法において、軟質樹脂により円筒状の内層を形成する工程A、内層に対してホース外周側に突出する硬質樹脂製の補強体を、内層に螺旋状に捲回一体化し、内層と硬質樹脂補強体により可撓性内管を形成する工程B、に引き続き、可撓性内管の外側に、弾力性を有する断熱性条帯を螺旋状に捲回し、その断面がホース軸方向と略平行となり、その隣接する側縁同士が互いに対向し、断熱性条帯の内周面と前記内層の外周面との間には空隙部が形成され、かつ、硬質樹脂補強体と接する部分の断熱性条帯が厚み方向に圧縮されるように断熱層を形成する工程C、最外側に断熱性条帯を固定する外層を形成する工程Dによって断熱ホースを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は断熱ホース及びその製造方法に関する。特に可撓性を有する内管を断熱材で被覆した断熱ホースおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空調機の断熱ドレンホースやその他各種機器において、ホース壁面を断熱材(断熱部材又は断熱エレメント)で被覆した断熱ホースが使用されている。公知の断熱ホースとして、特許文献1や特許文献2に示すような断熱ホースが知られている。
【0003】
特許文献1には、可撓性内管(いわゆるコンジットホース)の外周を、内部に断熱材を装入した袋状条帯で捲回被覆して断熱層を形成した断熱ホースが開示されている。また、特許文献2には、ホース内層に芯材又は硬質部材(補強体)を螺旋状に捲回一体化した可撓性内管の外周(外周面)に、半溶融状態の発泡合成樹脂の条帯を螺旋状に捲回して断熱層を形成した断熱ホースが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−325336号公報
【特許文献2】特開平11−90972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のようなコンジットホースを可撓性内管に採用した場合には、管の内面に存在する凹凸の影響により、内部を流通する流体(空気・水など)の流動抵抗が高くなる傾向があり、その改善が望まれていた。
【0006】
また、特許文献2に開示されたような断熱ホースにおいては、ホースを曲げた際に、可撓性内管の芯材又は硬質部材の間のホース内層が、ホース内部に向かって、襞折状にはみ出すことがあった。そのようになると、ホース内周の断面積が不足するため、内部を流通する流体の流動抵抗が増加して、所望する性能を達成できなくなる虞があった。特に、ホースの外径の設計上の要件が厳しい場合には、所望する断熱性能と流動抵抗を達成することが困難であった。
【0007】
したがって、本発明は、曲げた際にも可撓性内管の内層がホース内部にはみ出さず、流体の流動抵抗の増加が少ないような断熱ホース及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ホース内層(即ち、内壁、可撓性内管)に螺旋状に捲回一体化された硬質補強体(硬質部材)の外周に、弾力性を有する断熱材(断熱部材又は断熱エレメント)を捲回配置して、前記硬質補強体(硬質部材)を縮径方向に付勢すると、ホースを曲げた際の可撓性内管内層のホース内部へのはみ出しを防止できることを知見し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は、可撓性内管の外側に断熱層を有する断熱ホースの製造方法であって、軟質樹脂によりホース内壁面となる円筒状の内層(即ち、内壁、内管)を形成する工程A、内層に対してホース外周側に突出する硬質樹脂製の補強体(硬質部材)を、内層に螺旋状に捲回一体化し、内層と硬質樹脂補強体により可撓性内管を形成する工程B、可撓性内管の外側に、弾力性を有する断熱性条帯を螺旋状に捲回して、断熱層を形成する工程C、断熱層の外側に、断熱性条帯を固定する外層を形成する工程Dを備え、上記工程Cにおいて、(C−1)断熱性条帯はその断面がホース軸方向と略平行となり、(C−2)その隣接する側縁同士が互いに対向するように捲回され、(C−3)硬質樹脂補強体と接する部分の断熱性条帯が硬質樹脂補強体を縮径方向に付勢するように厚み方向に圧縮され、並びに(C−4)非接触部分の内周面が前記内層の外周面との間に空隙部を形成するように捲回されていることを特徴とする断熱ホースの製造方法である。
【0010】
本発明の方法では、工程Cにおいて、断熱性条帯に張力を与えて断熱ホースを製造してもよい。また、工程Cにおいて、あらかじめ厚み方向に圧縮しておいた断熱性条帯を螺旋状に捲回し、捲回後に圧縮を回復させて断熱ホースを製造してもよい。また、工程Cにおいて、断熱性条帯を、硬質樹脂補強体が捲回される螺旋の向きと同じ向きの螺旋状に捲回して断熱ホースを製造することが好ましい。本発明には、可撓性内管の外側に断熱層を有する断熱ホースが含まれる。前記ホースにおいて、前記可撓性内管は円筒状の内層と、補強体(硬質部材)とで構成される。前記円筒状の内層は軟質樹脂で構成され、かつ内壁又は内管を形成する。前記補強体は硬質樹脂で構成され、この内層に螺旋状に捲回一体化されているとともに、前記内層に対してホース外周側に突出している。前記断熱層は、前記可撓性内管の外側に螺旋状に捲回され、かつ弾力性を有する断熱性条帯で構成されている。前記断熱ホースは、さらに、断熱層の外側に形成された、断熱性条帯を固定する外層を備えている。前記断熱性条帯が、その断面がホース軸方向と略平行に、その隣接する側縁同士が互いに対向して捲回され、前記補強体と接する部分の断熱性条帯が前記補強体を縮径方向に付勢して、断熱性条帯が厚み方向に圧縮されているとともに、前記補強体との非接触部分で、前記断熱性条帯の内周面と前記内層の外周面との間に空隙部が形成されている。また、前記ホースにおいては、断熱性条帯の螺旋状捲回方向と補強体の螺旋状捲回方向とが同じでもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、ホースを曲げた際にホース内層がひだ状にホース内側にはみ出すことを少なくでき、ホース内を通流する流体の流動抵抗が増加しにくい断熱ホース提供することができる。
【0012】
さらに、本発明の好ましい様態によると、そのようなホースを確実かつ効率的に製造できるという効果が得られ、本発明の他の好ましい様態によると、ホース内層の内側へのはみ出しを予防する効果を更に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明により得られる断熱ホースの構造を示す図である。
【図2】図1のホース断面部分の拡大図である。
【図3】本発明の断熱ホースの製造方法を示す概略図である。
【図4】本発明の断熱ホースの別の製造方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の製造方法によって得られる断熱ホース1の構造を示す図であり、図2はその部分断面の拡大図である。
【0015】
断熱ホース1は、可撓性内管2と、その外周に捲回された断熱性条帯3(以下、単に「断熱材(断熱部材又は断熱エレメント)3」とも表記する)と、その外周に形成された外層4とからなる。
【0016】
可撓性内管2は、ホース内壁面となる軟質樹脂製の内層5と、内層5の外周に螺旋状に捲回された硬質樹脂製の補強体6とからなる。軟質塩化ビニル樹脂などの軟質熱可塑性樹脂からなる内層5は、その内周面がホースの軸線に沿って概ね平滑な円筒状となるように形成されている。硬質塩化ビニル樹脂などの硬質熱可塑性樹脂からなる補強体6は、逆Tの字型の断面を有し、内層5の外周面よりもホース外側に向かって突出するように、内層5の外側に捲回・一体化されている。本実施形態においては、補強体6が2条の螺旋状の形態で、内層5に埋設又は重ねながら内層5を形成する条帯で覆われている。
【0017】
断熱材3は、略長方形状の断面を有する発泡樹脂の条帯である。前記条帯は弾力性を有する。本実施形態においては、架橋発泡ポリエチレンである。好ましい断熱性と弾力性を付与するため、発泡倍率が10〜50%又は2〜10倍程度、特に好ましくは20〜40%又は2.5〜5倍程度の発泡樹脂であることが好ましい。また、発泡体の気泡の構造としては、連続気泡構造が主であるものよりも、独立気泡構造が主であるものを使用するのが好ましい。連続気泡構造が主であるような発泡体を使用する場合には、発泡樹脂条帯の表面にスキン層を有するように使用することが好ましい。本実施形態においては、発泡倍率30%又は3.3倍程度で、独立気泡構造に近い気泡構造を有する架橋発泡ポリエチレンを使用する。
【0018】
断熱材3は、その断面がホース軸線と略平行になるように、可撓性内管2の外周に螺旋状に捲回され、断熱材3即ち発泡樹脂条帯の隣接する側縁部が互いに突き合わせられるようにされて、断熱層を形成している。断熱材3の隣接する側縁部は互いに密着するように突き合わせられていることが断熱性の点では好ましいが、側縁部が互いに対向するようにされていれば、側縁部の間に隙間があってもよい。
【0019】
さらに、後述する製造方法によって、断熱材3は、硬質樹脂補強体6に接する部分では断熱材の厚み方向に圧縮され、かつ隣接する硬質樹脂補強体6、6の中間の部分、すなわち硬質補強体と非接触である部分において、内層5の外周面との間に空隙部7が形成されるように、可撓性内管2の外周に捲回設置されている。
【0020】
外層4は、軟質塩化ビニル樹脂などの軟質熱可塑性樹脂からなるフィルム状の層であり、可撓性内管2に捲回された断熱材3がばらばらにならないように固定している。
【0021】
以下に、断熱ホース1を製造する製造方法について、図3により説明する。断熱ホース1は公知のホース成形軸10上に、各層を構成する材料をテープ(条帯)状、あるいはひも状に供給しながら、ホース成形軸10上で螺旋状に捲回一体化していくことにより製造される。
【0022】
ホース内層5を形成する樹脂材料を、溶融状態で幅広のテープ状に押し出し(即ちテープ51)、半溶融状態で、成形軸10の上流側に供給し、テープ51の隣接する側縁部分同士が互いに重なり合うように螺旋状に捲回し、内面がほぼ平滑な円筒状の内層5を形成する。
【0023】
その下流側で、補強体6を形成する樹脂材料を、溶融状態で補強体6の断面形状に押し出し、半溶融状態で成形軸10に供給し、テープ51又は内層5に螺旋状に捲回し一体化する。その際、ホース内層5となるテープ51の先行する捲回テープの幅方向の上流部(上流域)と、後続する捲回テープの幅方向の下流部(下流域)とにより形成されるオーバーラップ(重ね合わせ)域に、二条の補強体を後続するテープでカバー又は包み込まれる前記域に位置させながら補強体6が供給されると、補強体6をテープ51の重ね合わせ域に埋設でき、後続するテープでカバー又は包み込むことができる。半溶融状態のホース内層5や補強体6は互いに融着して、可撓性内管2が形成される。
【0024】
引き続き、可撓性内管2の外周に、断熱材3を螺旋状に捲回する。断熱材3は、その断面がホース軸線と略平行になるように捲回され、隣接する側縁部が互いに突き合わせられるように、あらかじめ所定の厚さのシート状に成形された発泡樹脂シートを所定の幅にスリット加工しておいたものを供給する。断熱材3を捲回する工程においては、断熱材3に張力(テンション)を加え、断熱材3が硬質補強体6と接する部分で断熱材3が厚み方向に圧縮され、かつ、隣接する補強体6、6の中間の非接触部分では、内層5の外周面と断熱材3の内周面の間に空間(空隙)7が存在するように、張力を調節して断熱材3を捲回する。この際、断熱材3の側縁部が、隣接する補強体6,6のホース軸方向中間部で互いに対向するように配置することが好ましい。
【0025】
引き続き、断熱材3の外周に、外層4を形成する。外層4を形成する樹脂材料を、溶融状態で幅広のテープ状に押し出し(即ちテープ41)、半溶融状態で断熱材3の外周に供給し、テープ41の隣接する側縁部分同士が互いに重なり合うように螺旋状に捲回する。半溶融条帯のテープ41は、その重ね合わせ部が互いに融着して、外層4を形成する。
【0026】
以上のような工程により製造された断熱ホースには、以下のような構造の変化と作用効果が生ずる。
【0027】
全工程の前半の可撓性内管2の製造工程においては、内層5の内面が平滑な円筒状に形成された可撓性内管2が得られるが、その後の断熱材の捲回工程によって、可撓性内管2の内層5の形状に変化が現れる。即ち、断熱材3が、硬質補強体6によって厚み方向に圧縮されるように捲回されているので、その反作用力により、硬質補強体6には、全周にわたって径方向に圧縮する(即ち縮径する)ような力が作用する。この力によって、硬質補強体6は、ホース軸方向には若干伸びながら、ホースの径方向には若干縮むよう、その螺旋の形状を変化させる。一方、ホース内層5の補強体6,6の中間の非接触部分においては、空隙7の存在により断熱材3とは離間しているため、径方向に圧縮するような力が作用せず、したがって、成形されたままの径・周長を維持しようとする。その結果、ホース内層5は、硬質補強体6が一体化された部分では比較的径方向に内側に入り、硬質補強体6、6の中間の部分では比較的径方向に外側に出る傾向に変形する。
【0028】
このように製造されたホースに伸縮や曲げなどの変形が与えられた際の内層5の変形を以下に説明する。伸縮や曲げに伴って、硬質補強体6,6の間隔が狭まるようになると、その間に配設された内層5にたるみが生ずることになるが、内層5には上記説明のように、硬質補強体6が一体化された部分で径方向内側に入り、硬質補強体6、6の中間の部分では径方向外側に出る傾向の形状があらかじめ与えられているので、中間の部分に生ずるたるみを、確実に径方向外側に向かって生じさせることができる。
【0029】
したがって、本発明の製造方法により製造された断熱ホースによれば、曲げた際にも可撓性内管の内層がホース内部にはみ出すことを確実に防止でき、流体の流動抵抗の増加が防止できる。
【0030】
また、ホース内層5と断熱材3とは互いに離間しているため、内層5がたるむときに、内層5の変形が断熱材3によって阻害されることが防止され、より小さな力で断熱ホースを曲げることができる、即ち断熱ホースの可撓性を高めることができる、という効果も得られる。
【0031】
以上、本発明の断熱ホースの製造方法について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その性質を大きく変えない範囲で、以下のような改変を加えて実施することもできる。
【0032】
上記実施形態においては、断熱材3の捲回工程において、断熱材3に張力を加えることにより、断熱材3の補強体6との接触部を厚み方向に圧縮したが、他の方法によることもできる。例えば、発泡樹脂製の断熱材3を可撓性内管2の外周に捲回する直前で、厚み方向にローラによって圧縮し、圧縮した状態で可撓性内管2の外周に捲回して、捲回後に断熱材3の圧縮が自然に回復するようにすることでも、同様の構造の断熱ダクトを得ることができる。このような方法により断熱材の捲回を行う場合には、断熱材として、スキン層を有する連続気泡構造が主たる気泡構造の発泡樹脂条帯を使用することが特に好ましい。
【0033】
また、上記実施形態においては、発泡樹脂からなる断熱材について説明したが、適度な断熱性と弾力性を有する断熱材料であれば、他の材料を使用しても良い。例えば、他の樹脂発泡体や、嵩高い不織布などの繊維集合体や、袋状条帯内部に断熱材料を装入した断熱材などを使用してもよい。
【0034】
また、上記実施形態においては、一本のホース成形軸上で、一連の工程を連続して行い、断熱ホースを製造する方法について説明したが、これら工程、特に前半の可撓性内管2の製造工程と後半の断熱層・外層形成工程を分けて実施することもできる。即ち、第1のホース成形軸上で、可撓性内管2の形成工程(内層5の形成及び補強体6の形成一体化工程)までを行って、まず可撓性内管2を得る。その後、図4のように、得られた可撓性内管2を好ましくは定尺にカットして、回転送り出し装置11に供給し、可撓性内管2を回転させながら、ホース支持ローラ12に向かって、ホース長さ方向に送り出す。さらに、送り出されつつある可撓性内管2に、断熱材3や、外層4を形成するテープ材料41を供給して、捲回一体化し、断熱ホース1を得ることができる。
【0035】
このように、工程を分割して行えば、可撓性内管2を成形する工程と、断熱層や外層を形成する工程との間で、送りピッチや回転速度、送り速度を独立して決定できるようになるので、より効率的に断熱ホースの製造を行うことができる。
【0036】
また、このように、工程を分割して行う場合でも、可撓性内管が有する螺旋の巻き方向(右巻き/左巻き)と、断熱材3を捲回する螺旋の巻き方向(右巻き/左巻き)とが互いに同じになるように捲回することが好ましい。これらを同じ方向に捲回することで、硬質補強体6の螺旋形状(又は螺旋状に捲回された硬質補強体6)の変形がより促進され、ホースを曲げた際のホース内層のホース内側へのはみ出しが、より確実に防止される。
【0037】
本発明により製造される断熱ホース1の可撓性内管2については、以下のように種々の改変を加えることが可能である。補強体6は必ずしも内層5に埋設されている必要はなく、内層5の外周面に接着や融着により一体化されるものであってもよい。また、補強体6の断面形状は、必ずしも上記実施例のような逆T字型である必要はなく、断熱材3を捲回した際に、補強体部分で断熱材3が厚み方向に圧縮され、隣接する補強体6、6の中間の部分で内層と断熱材3との間に空隙部が生ずるように、補強体6の外周部が内層5の外周面よりも所定の高さだけホース外側に突出するような断面を有する補強体であれば、その断面は、三角形、円形、半円、長方形といった形状であってもよい。また、補強体6は中空のものであってもよく、その内部に鋼線などの金属線を導入したものであってもよい。
【0038】
また、内層5は、必ずしも半溶融状態のテープ51の側縁が重ね合わせられて形成されたものである必要はなく、例えば、テープの隣接する側縁が互いに突き合わせられるように螺旋状に捲回し、突き合わせ部分に又は突き合わせ部分を横断して配設された硬質補強体6によって接着一体化して形成したものであってもよい。
【0039】
また、上記実施の形態では、硬質補強体6が2条の螺旋状に配置され、断熱材3が幅方向で、2条の補強体6を覆うような実施形態について説明したが、本発明は、これに限られず、硬質補強体6の条数を変更することもできる。3条以上に多条化することがホースの成形速度の観点から好ましい。また、一本のホース成形軸上で可撓性内管2と断熱材3の捲回を同時に行う場合には、形成される硬質補強体6の条数と断熱材3の幅でカバーされる条数とが等しいことが好ましいが、可撓性内管2の形成と断熱材3の捲回工程を独立して行う場合には、より多数の硬質補強体6、6をカバーできる幅広の断熱材を使用して、断熱材捲回工程・外層形成工程を更に効率化することも可能である。
【0040】
本発明により製造される断熱ホース1の外層4についても、断熱材3を確実に固定できるものであれば種々の形態のものが採用できる。即ち、上述した外層を構成するテープ41の重ね合わせ部分を互いに溶着させてもよいし、接着剤や粘着剤によって接着してもよい。また、断熱材3が固定できれば、外層4は必ずしも断熱材3の外周面全体を覆うものである必要はなく、例えば、断熱材3の隣接し突き合わせられる側端縁にまたがるように断熱材3よりも細幅の粘着テープを捲回して、断熱材3を固定する外層としてもよい。また、外層4を捲回する際に、テープ41に張力を与えて、外層4によって断熱材3を締め付けるようにしても良く、そうすれば、本発明の効果がより確実に発揮される。
【0041】
本発明に係る断熱ホースの内層5、硬質補強体6、外層4には、上記実施形態に示した塩化ビニル樹脂だけでなく、多様な熱可塑性樹脂材料が使用できる。内層5や外層4を形成する材料としては、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの低密度ポリエチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂など、比較的低硬度の熱可塑性樹脂や、オレフィン系熱可塑性エラストマ、スチレン系熱可塑性エラストマ、ポリウレタン系熱可塑性エラストマなどの熱可塑性エラストマが使用できる。硬質補強体6を形成する材料としては、高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂などの比較的高硬度の熱可塑性樹脂が使用できる。内層5と硬質6の材料は、互いに熱溶着可能な材料を選択することが好ましく、外層4の材料は好ましくは断熱材3と熱融着可能な材料を選択することが好ましい。
【0042】
また、内層5を形成する材料の熱膨張率が、硬質補強体6を形成する材料の熱膨張率よりも低くなるように材料の選択を行うことが好ましい。このような材料の選択を行うことにより、ホース形成軸10上で形成された可撓性内管2が冷却される際に、硬質補強体6が内層5よりも大きく収縮する傾向を示すので、断熱材3によって硬質補強体6を径方向に圧迫して内壁に好ましい変形(又は形状の変化、即ち硬質補強体6と内層とが一体化した部分の内側への変形及び補強体の中間部分の外側への変形)を促す効果を、より際立たせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、ホースを曲げた際にも可撓性内管の内層がホース内部にはみ出さず、ホース内を流れる流体の流動抵抗の増加が少ないような断熱ホースを提供することができ、特に配管スペースが制限された断熱ホースが必要な分野において有用である。
【符号の説明】
【0044】
1…断熱ホース
2…可撓性内管
3…断熱材
4…外層
5…内層
6…硬質樹脂補強体
7…空隙部
10…ホース成形軸
11…送り出し装置
12…送りローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性内管の外側に断熱層を有する断熱ホースの製造方法であって、
軟質樹脂によりホース内壁面となる円筒状の内層を形成する工程A、
内層に対してホース外周側に突出する硬質樹脂製の補強体を、内層に螺旋状に捲回一体化し、内層と硬質樹脂補強体により可撓性内管を形成する工程B、
可撓性内管の外側に、弾力性を有する断熱性条帯を螺旋状に捲回して、断熱層を形成する工程C、
断熱層の外側に、断熱性条帯を固定する外層を形成する工程Dを備え、
上記工程Cにおいて、
(C−1)前記断熱性条帯の断面がホース軸方向と略平行となり、
(C−2)その隣接する側縁同士が互いに対向するように捲回され、
(C−3)硬質樹脂補強体と接する部分の断熱性条帯が硬質樹脂補強体を縮径方向に付勢するように厚み方向に圧縮され、並びに
(C−4)非接触部分の内周面が前記内層の外周面との間に空隙部を形成するように捲回されていることを特徴とする断熱ホースの製造方法。
【請求項2】
工程Cにおいて、断熱性条帯に張力を与えることを特徴とする請求項1に記載の断熱ホースの製造方法。
【請求項3】
工程Cにおいて、あらかじめ厚み方向に圧縮しておいた断熱性条帯を螺旋状に捲回し、捲回後に圧縮を回復させることを特徴とする請求項1に記載の断熱ホースの製造方法。
【請求項4】
工程Cにおいて、断熱性条帯を、硬質樹脂補強体が捲回される螺旋の向きと同じ向きの螺旋状に捲回したことを特徴とする請求項1に記載の断熱ホースの製造方法。
【請求項5】
可撓性内管の外側に断熱層を有する断熱ホースであって、
前記可撓性内管が、円筒状の内層と補強体で構成され、
前記内層は軟質樹脂で構成され、かつホース内壁面を形成し、
前記補強体は硬質樹脂で構成されているとともに、前記内層に螺旋状に捲回一体化され、かつ前記内層に対してホース外周側に突出しており、
前記断熱層が、前記可撓性内管の外側に螺旋状に捲回され、かつ弾力性を有する断熱性条帯で構成され、
断熱ホースが、さらに、断熱層の外側に形成され、かつ断熱性条帯を固定する外層を備えており、
前記断熱性条帯が、その断面がホース軸方向と略平行に、その隣接する側縁同士が互いに対向して捲回され、前記補強体と接する部分の断熱性条帯が前記補強体を縮径方向に付勢して、断熱性条帯が厚み方向に圧縮されているとともに、前記補強体との非接触部分で、前記断熱性条帯の内周面と前記内層の外周面との間に空隙部が形成されていることを特徴とする断熱ホース。
【請求項6】
断熱性条帯の螺旋状捲回方向と補強体の螺旋状捲回方向とが同じであることを特徴とする請求項5に記載の断熱ホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−287770(P2009−287770A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101306(P2009−101306)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000108498)タイガースポリマー株式会社 (187)
【Fターム(参考)】