新規な選択的エストロゲンレセプターモジュレーターの開発
本開示は、新規のクラスの選択的エストロゲンレセプターモジュレーター(SERM)に関する。この開示はまた、以前に知られていない膜結合エストロゲンレセプターの同定を包含する。この開示されたSERM(有用な組成物における開示された新規な化合物の薬学的処方物を含む)を作製するための方法および使用するための方法が開示される。本発明の新規の非ステロイド性SERMは、ホルモン置換療法の陰性の作用または公知の選択的エストロゲンレセプターモジュレーターの陰性の作用を誘導することなく、ホルモン置換療法の所望の効果を惹起する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(政府の支援の認定)
本発明は、基金番号NS35944、NS38809、DA05158、DA10703、およびDK57574の下での政府の支援を用いてなされた。政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0002】
(関連出願の引用)
本願は、2004年10月20日に出願された米国出願番号___に対して優先権を主張し、この出願は、2003年10月21日に出願された米国仮出願番号60/513,235の利益を主張し、その開示は、その全体が本明細書中に援用される。
【0003】
(分野)
本開示は、新規の化合物およびその使用方法(選択的エストロゲンレセプターモジュレーターおよびこのような選択的なエストロゲンレセプターモジュレーターを作製するための方法を包含する)に関する。
【背景技術】
【0004】
(背景)
エストロゲンは、重要なクラスのステロイドホルモンであり、このステロイドホルモンは、ヒトにおける基礎的な性的特徴の発達および維持を刺激する。さらに、エストロゲンは、種々の多様な生物学的プロセスに影響することが示されている。エストロゲンの付随的な作用(骨密度の維持、中枢神経系の機能の維持および記憶の保持が挙げられる)の多くはポジティブである。しかし、エストロゲンはまた、深刻なネガティブな作用(乳癌および子宮内膜癌の発達を促進することが挙げられる)を有することが示されている。
【0005】
米国において平均寿命がほぼ80年であることに基づき、女性は、閉経後状態に人生の約3分の1を送ることを期待し得る。女性のエストロゲンレベルは、閉経の間に劇的に低下し、そして月経の閉止した女性は、しばしば、エストロゲン産生の減少に関連する、多くの副作用を経験する。これらの状態を処置するために、医師は、しばしば、ホルモン置換療法(これは、主として、プロゲスチンと組み合わせたエストロゲンの投与からなる)を処方する。
【0006】
現在のホルモン置換療法に関連する、より深刻な副作用(虚血性の発作、心筋梗塞、血栓塞栓症、脳血管疾患、および子宮内膜腫の危険性の増大が挙げられる)に鑑み、有効な非ストロイド性のエストロゲンおよび抗エストロゲン性の化合物を同定するための、かなりの量の研究が実行されている。
【0007】
最も効力のあるエストロゲンである、17β−エストラジオールの作用を、模倣するかまたはブロックするかのいずれかをなす、多数の化合物が記載されている。エストロゲンレセプターに結合し、かつ17β−エストラジオールと同一の生物学的作用の多くを刺激する化合物は、「エストラゲンレセプターアゴニスト」と呼ばれる。17β−エストラジオールがエストロゲンレセプターに結合するのを阻害する化合物、またはエストロゲンレセプターに結合する17β−エストラジオールの作用を妨害する化合物は、「エストロゲンレセプターアンタゴニスト」と呼ばれる。異なる効力で、異なるエストロゲンレセプターに影響する化合物は、代表的には、選択的エストロゲンレセプターモジュレーター(SERM)と呼ばれる。SERMは、アゴニストまたはアンタゴニストのいずれかとして作用し、1種以上のエストロゲンレセプターを選択的に調節し得る。特定のSERM化合物は、混合されたエストロゲン活性と抗エストロゲン活性とを有し、そしてある組織ではエストロゲンレセプターアゴニストとして作動し、そして他の組織では、エストロゲンレセプターアンタゴニストとして作動する。
【0008】
エストロゲン(例えば、17β−エストラジオール)は、2種の核内エストロゲンレセプター、(ER)αまたは(ER)β、の一方に結合することにより、その作用を発揮すると考えられている。(ER)αおよび(ER)βは、さまざまな組織中で見出され、そしてさまざまな生物学的役割を有することが示されているので、研究者らは、(ER)αまたは(ER)βのいずれかに選択的に結合することにより応答を達成する、SERMの開発に焦点を当てている。
【0009】
(ER)αおよび(ER)βに対して異なる活性を示す非ステロイド性SERMの2つの例は、タモキシフェンおよびラロキシフェンである。タモキシフェンおよびラロキシフェンは、骨粗しょう症、心臓血管疾患および乳がんの処置および/または予防、さらには、種々の他の疾患状態の処置および/または予防のために開発されている。両化合物は、血漿コレステロールレベルに対する陽性の作用および特定の型の癌の発生数が大幅に低減したことと組み合わせて、骨鉱質密度に対する骨防御作用を示すことが示されている。不幸にも、タモキシフェンおよびラロキシフェンは、両方とも、副作用(例えば、顔面紅潮)を誘導し、そしてタモキシフェンは、生命を脅かす障害(例えば、子宮内膜癌)を促進する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、ホルモン置換療法の陰性の作用または公知の選択的エストロゲンレセプターモジュレーターの陰性の作用を誘導することなく、ホルモン置換療法の所望の効果を惹起する、新規の非ステロイド性SERMを包含する。
【0011】
(要旨)
本開示は、新規の化合物、組成物、ならびに、上記化合物および組成物を作製および使用するための方法を包含する。一般的には、開示される化合物は、選択的なエストロゲンレセプターモジュレーター(SERM)として機能する。一つの局面では、この化合物は、式Iを有し、そしてこれらの水和物、および薬学的に受容可能なプロドラッグおよび塩を包含する。さらに、開示された式の、キラル形態、ジアステレオマー形態、および幾何異性体形態のすべてが意図される。
【0012】
【化21】
式1に関連して、Rは、Mに関してEまたはZであり得、そしてRは、水素または低級脂肪族基を表し;Xは、オルト位、メタ位、またはパラ位の水素、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、スルフヒドリル、チオエーテル、アミノ(−NR2R3、ここで、R2およびR3は、独立して、水素もしくは低級アルキルである)またはハロゲンであり;Mは、ケトン基、アミド基またはスルホンアミド基を含む。Arは、芳香族基を表し、そして任意の芳香族基(フェニル、ビフェニル、1−ナフチル、2−ナフチルが挙げられるが、これらに限定されず、そして、ヘテロアリール基(例えば、例示の目的で、フラン基、チオフェン基、ピロール基、イミダゾール基、オキサゾール基、チアゾール基、ピリジン基、およびキノリン基)が挙げられる)であり得る。
Yは、Mに対して任意の位置(例えば、オルト位、メタ位、またはパラ位にて)にて結合され得る。一つの局面では、Yは、ヘテロ原子(例えば、窒素または酸素)である。式2に従う開示されたSERMの特定の実施形態では、Yは、フェニル基を表す。
【0013】
【化22】
式1および式2の参照を続けて、Gは、リンカー基(例えば、低級アルキル基、炭化水素鎖、オリゴエチレングリコール鎖など)を含む。Gが低級アルキル基を含む式2の一つの実施形態では、Gは、エチル基である。Zは、代表的には、ヘテロ原子を含む。特定の実施形態では、Zは、電荷を帯びた部分(例えば、アニオン性基(例えば、ボロン酸基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、またはカルボキシ基))を含む。Zがカチオン性の基を含む例では、このカチオン性の基は、アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基またはピペリジノ基)であり得る。他の例では、Zは、ヒドロキシル基を包含し得る。式Y−G−Zにより表される基の例としては、Yがヘテロ原子(例えば、酸素)であり、そして式−G−Zは、以下:
【0014】
【化23】
のうちの一つ(これらに限定されない)を表すものが挙げられる。
【0015】
図1および図2に関して、Mは、代表的には、アミドケトン基またはスルホンアミド基のうちの一つであり、そしてより代表的には、−C(O)−;−C(O)−NR1−、または−SO2NR1−のうちの一つを表し、ここで、R1は、水素、低級アルキル基またはアラルキル基である。従って、このような化合物の例は、式3により表され得、ここで、Qは、代表的には、アミド結合またはスルホンアミド結合を形成する(Qは、−SO2−またはCOを表す)。
【0016】
【化24】
従って、式3に従う化合物は、例えば、式4または式5を有し得る。式4および式5に関して、R、X、R1およびYは、式1に関して上に規定されるとおりである。
【0017】
【化25】
上の式に示されるように、上記開示された化合物としては、ビニルケトン誘導体、アクリルアミド誘導体およびビニルスルホンアミド誘導体が挙げられる。さらに、上の構造に例示されるように、ビニル基についての立体配置は、EまたはZであり得る。
【0018】
この開示の一つの局面は、新規の選択的エストロゲンレセプターモジュレーターを合成するための方法を包含する。別の実施形態では、この方法は、式6に従う開始物質を提供する工程を包含し、ここで、Gは、カルボキシ基、活性化カルボキシ基、スルホン酸基または活性化スルホン酸基である。活性化カルボンキシ基およびスルホン酸基としては、アミンまたはアミン等価物と反応し、式3または式4に従うアミドまたはスルホンアミドを形成し得る任意の基が挙げられる。代表的には、活性化カルボキシ基としては、ハロゲン化アシルおよび活性化エステルが挙げられる。特定の例では、Yは、求核試薬との反応のためにインサイチュで活性化されているカルボキシ基である。同様に、代表的な活性化スルホン酸基としては、スルホニルハライド(例えば、塩化スルホニル)が挙げられる。このような活性化スルホン酸基は、種々のアミン(一級アミンおよび二級アミン)をアシル化するために使用され得る。
【0019】
【化26】
例えば、新規のエストロゲンレセプターモジュレーターを合成するための方法の一つの実施形態が、スキーム1に図示されている。スキーム1の式7に関して、可変物Yは、アニオンまたはアニオン等価物(例えば、ハロゲン)を示し、これらは、リチウム−ハロゲン交換条件に供され得、対応するカルボアニオンを与え得る。このカルボアニオンは、式8に図示されるようなカルボキシ基を導入するために使用され得る。このカルボキシ基は、例えば、保護されたカルボキシ等価物(例えば、保護されたクロロ蟻酸誘導体)として導入され得る。このような試薬の例の一つは、クロロ蟻酸アリルであり、これは、式8のカルボキシ基を導入するために使用され得る。式8に従う化合物は、多目的な合成中間体である。なぜなら、このような化合物は、任意の一級アミンまたは二級アミンとカップリングし、式9に従う化合物を提供し得るからである。従って、R1およびR2が、独立して、水素、脂肪族基、アリール基またはアラルキル基から選択される、式9に従う化合物は、式8に従う化合物と、式:R1R2NHを有する、対応する一級アミンまたは二級アミンとを反応させることにより、調製され得る。代表的には、R1およびR2のうちの少なくとも一方は、アリール基を含み、そしてアリール基を含む適切なアミンの例としては、R1およびR2のうち少なくとも一方がフェニル基またはフェニル誘導体であるものが挙げられる。
【0020】
一般的に言えば、現在開示されている方法に従う、式8を有する化合物の式9を有する化合物への転換は、反応のためにカルボキシ基を活性化するカップリング試薬の使用を包含する。このようなカップリング試薬の例としては、カルボジイミド、ウロニウム塩、ホスホニウム塩などが挙げられるが、これらに限定されない。カルボジイミドの例としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、および1−(3−ジメチル−アミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI)が挙げられるが、これらに限定されない。ウロニウム塩の例としては、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)および2−(1H−ベンゾトリアゾール)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩(TBTU)が挙げられる。ホスホニウム塩の例としては、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBop)およびブロモ−トリス−ピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBrop)が挙げられる。この転換はまた、必要に応じて、添加剤(例えば、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)および/またはN−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt))を使用し得る。一つの実施形態では、開示された合成、HBTUは、DMAPの存在下で使用され、式8を有する化合物にアミンをカップリングし得る。
【0021】
【化27】
この方法の別の局面が、スキーム2に図示される。スキーム2に関して、この方法は、式11に従う、ビニルスルホン酸を提供する工程、および1級アミンまたは2級アミン(R1R2NH)をカップリングし、式12に従うスルホンアミドを提供する工程を包含する。このカップリング反応は、例えば、DCC、DIC、EDCI、HBTU、TBTU、PyBopまたはPyBropの存在下で達成され得る。この転換はまた、必要に応じて、添加剤(例えば、DMAPおよび/またはHOBt)を使用し得る。
【0022】
【化28】
本開示に包含される特定の新規の化合物は、以前に同定されていない膜結合エストロゲンレセプターに結合する。さらに、これらの化合物の特定の例は、古典的な核内レセプターである(ER)αおよび(ER)βに結合するよりも大きな親和性で、膜結合エストロゲンレセプターに選択的に結合する。従って、この開示の一つの局面は、膜結合エストロゲンレセプターの選択的アゴニストまたは選択的アンタゴニストを提供するための方法を包含する。
【0023】
この開示はまた、種々の障害、特にエストロゲン欠乏により特徴付けられるもの(例えば、卵巣摘出、卵巣不全、または閉経に関連するもの)を処置するための方法および組成物を包含する。このような状態および障害としては、一般的に、自律神経機能障害、認知障害、運動機能障害、気分障害、摂食障害および心臓血管障害として記載されるもの、ならびに種々の型の障害が挙げられる。一つの局面では、開示された化合物は、特定の型の損傷に対して予防的効果を発揮する。例えば、この化合物は、神経保護薬(neuroprotectant)として使用され得る。実際に、本明細書中で同定される膜結合エストロゲンレセプターをアゴナイズする化合物は、神経保護薬として作用し、虚血性発作に応答する神経細胞死を減少させ、再灌流障害を阻害する。
【0024】
特定の組成物は、少なくとも1種の式Iに従う化合物、ならびに第2の治療上の化合物を含有する。第2の化合物はまた、エストロゲンレセプターに結合し得る。例えば、一つの実施形態において、第2の化合物は、SERMであり、そして別の実施形態では、第2の化合物は、エストロゲン(例えば、17β−エストラジオール)、またはプロゲステロン(例えば、プロゲスチン)である。
【0025】
(発明の詳細な説明)
以下の用語および方法の説明が、本発明の化合物、組成物、および方法をより十分に記載するために提供され、そして本開示の実行において、当業者を導くために、提供される。本開示において使用される専門用語は、特定の実施形態および実施例を記載することのみを目的とするものであり、そして限定を意図しないこともまた理解される。
【0026】
本明細書は、以下の略語および省略形を含む;
BAPTA:1,2−ビス−(o−アミノフェノキシエタン)−N,N,N’,N’−四酢酸
CTX:コレラトキシン
DAG:ジアシルグリセロール
DCM:ジクロロメタン
ddH2O:脱イオン蒸留水
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
EGTA:エチレングリコール四酢酸
EtOAc:酢酸エチル
ERK:細胞外シグナル関連キナーゼ
GIRK:Gタンパク質共役型内向き整流性(inwardly−rectifying)K+チャネル
Hex:ヘキサン
MAPKまたはMAPキナーゼ:マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ
PLC:ホスホリパーゼC
PKA:プロテインキナーゼA
PKC:プロテインキナーゼC
POMC:プロオピオメラノコルチン
SERM:選択的エストロゲンレセプターモジュレーター
TTX:テトロドトキシン。
【0027】
本明細書中では、範囲は、「約」一つの特定値から、および/または「約」別の特定値まで、として表され得る。このような範囲が表される場合、別の実施形態は、上記一つの特定値から、および/または他の特定値まで、を含む。同様に、修飾語「約」の使用により、値が近似値として表現される場合、特定値が別の実施形態を形成することが理解される。他の終末点に関連してと、他の終末点とは独立して、との両方の意味で、上記範囲の各終末点が重要であることがさらに理解される。
【0028】
開示された化合物は、キラル化合物(例えば、非対称な4置換炭素原子を含むもの)を包含する。このような化合物は、ラセミ形態で単離されるか、または光学活性な形態で単離され得る。光学活性な形態の化合物の合成の仕方が当業者に公知である。化合物のラセミ混合物の分割による、光学的に活性な化合物の調製の仕方もまた周知である。他に特に示されなければ、開示された構造のキラル形態、ジアステレオマー形態、および幾何異性体形態のすべてが意図される。
【0029】
この明細書および添付の特許請求の範囲において、以下の意味を有すると理解されるべき多くの用語が参照される:
「必要に応じた」または「必要に応じて」は、後に記載された事象または環境が、生じ得るが、生じる必要はないこと、および上記記載が、上記事象または環境が生じる例および上記事象または環境が生じない例を含むことを意味する。
【0030】
本開示を通じて使用される可変物(例えば、R、G、M、Q、X、YおよびZ)は、以前に定義されたのと同一の可変物である(逆に示唆された場合を除く)。
【0031】
用語「エストロゲンレセプターアゴニスト」とは、エストロゲンレセプターに作用し、かつ、17β−エストラジオールと同一の生物学的作用のうちの、少なくとも数種を有する化合物をいう。エストロゲンレセプターに作用し、17β−エストラジオールの作用をブロックする化合物は、「エストロゲンレセプターアンタゴニスト」と呼ばれる。代表的には、本明細書中に開示される化合物は、部分アゴニストまたは部分アンタゴニストであり、このことは、本明細書中に開示される化合物が、17β−エストラジオールの作用のいくつかを模倣するか、またはブロックすることもあれば、そうでないこともあることを意味する。いくつかの場合、この化合物は、混合されたアゴニスト/アンタゴニスト活性を示し、ここで、この化合物は、特定の組織では、エストロゲンレセプターアゴニストとして作用するが、他の組織では、エストロゲンレセプターアンタゴニストとして作用する。本明細書中に開示されるこのような化合物の例は、一種のエストロゲンレセプターに、他のエストロゲンレセプターより高い親和性で、選択的に結合することにより、部分アゴニスト活性を示す。このような選択性を示す化合物は、「選択的エストロゲンレセプターモジュレーター」、すなわち、「SERM」と呼ばれる。
【0032】
「ホルモン置換療法」とは、被験体中でのエストロゲンの産生が低減することまたは不十分であること(例えば、閉経において見られる)に応答して与えられる処置をいう。ホルモン置換療法は、しばしば、老化、卵巣摘出または早発性卵巣機能不全に応答して着手される。ホルモン置換療法は、しばしば、エストロゲン欠乏に関連する二次作用(例えば、骨粗しょう症、心疾患、顔面紅潮および気分障害)のうちの1種以上の処置を補助するために使用される。
【0033】
「誘導体」とは、親化合物に由来する化合物もしくは化合物の一部、または親化合物に理論上由来し得る化合物もしくは化合物の一部をいう。
【0034】
用語「アルキル基」とは、1炭素〜24炭素の、分枝した飽和炭化水素基、または1炭素〜24炭素の、分枝していない飽和炭化水素基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなど)をいう。「低級アルキル」基は、1個〜10個の炭素原子を有する、分枝した飽和炭化水素または分枝していない飽和炭化水素である。
【0035】
用語「アルケニル基」とは、2個〜24個の炭素原子の、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む構造式の、炭化水素基をいう。
【0036】
用語「アルキニル基」とは、2個〜24個の炭素原子の、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む構造式の、炭化水素基をいう。
【0037】
用語「ハロゲン化アルキル基」とは、上に記載されたようなアルキル基の上に存在する1個以上の水素原子が、ハロゲン(F、Cl、Br、I)で置換されたアルキル基をいう。
【0038】
用語「シクロアルキル基」とは、少なくとも3個の炭素原子で構成される非芳香族炭素ベースの環をいう。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。用語「ヘテロシクロアルキル基」は、環の炭素原子のうち、少なくとも1個がヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、硫黄またはリンであるが、これらに限定されない)で置換されている、上で記載されるようなシクロアルキル基である。
【0039】
用語「エチレングリコール鎖」または「オリゴエチレングリコール鎖」とは、反復エチレングリコール単位を有する基をいう。このエチレングリコール鎖は、任意の長さであり得るが、代表的には、2〜約100のエチレングリコール単位、そしてより代表的には、2〜約70のエチレングリコール単位を含む。最も代表的には、オリゴエチレングリコール鎖は、約2〜約20のエチレングリコール単位を含む。
【0040】
用語「脂肪族基」としては、上で記載されたような、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン化アルキル基、およびシクロアルキル基が挙げられる。「低級脂肪族」基は、1個〜10個の炭素原子を有する、分枝した構造または分枝していない構造である。
【0041】
用語「アリール基」とは、任意の炭素ベースの芳香族基(ベンゼン、ナフタレンなどが挙げられるが、これらに限定されない)をいう。用語「芳香族」はまた、「ヘテロアリール基」を包含し、この「ヘテロアリール基」とは、芳香族基の環内に組み込まれた少なくとも1個のヘテロ原子を有する芳香族基をいう。このようなヘテロ原子の例としては、限定されないが、窒素、酸素、硫黄、およびリンが挙げられるが、これらに限定されない。このアリール基は、1個以上の基(アルキル基、アルキニル基、アルケニル基、アリール基、ハライド基、ニトロ基、アミノ基、エステル基、ケトン基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、カルボン酸基、もしくはアルコキシ基が挙げられるが、これらに限定されない)で置換されていてもよいし、このアリール基は、置換されていなくてもよい。
【0042】
用語「アラルキル」とは、上記アリール基に結合した、上で記載されたようなアルキル基を有するアリール基をいう。アラルキル基の例は、ベンジル基である。
【0043】
用語「アルキルアミノ」は、少なくとも1個の水素原子が、アミノ基で置き換えられた、上に記載されたようなアルキル基を包含する。
【0044】
用語「ヘテロ原子」とは、炭素原子以外の原子をいうことが、当業者により理解される。ヘテロ原子の例としては、ホウ素、窒素、酸素、リンおよび硫黄が挙げられる。
【0045】
従って、本明細書中で用いられる場合、用語「炭化水素鎖」とは、代表的には、炭素原子の鎖をいい、代表的には、2個〜約22個の炭素原子を含む。この鎖は、脂肪族基およびアリール基を含み得、そして直鎖、分枝鎖および/または環状の基を含み得る。
【0046】
用語「ヒドロキシル基」は、式−OHにより表される。用語「アルコキシ基」は、式−ORにより表され、ここで、Rは、アルキル基であり得、必要に応じて、上述のように、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、またはヘテロシクロアルキル基で置換され得る。
【0047】
用語「ヒドロキシアルキル基」とは、少なくとも1個の水素原子がヒドロキシル基で置換されたアルキル基をいう。用語「アルコキシアルキル基」とは、少なくとも1個の水素原子が、上に記載されるようなアルコキシ基で置換されたアルキル基をいう。利用可能な場合には、ヒドロキシアルキル基またはアルコキシアルキル基のアルキル部分は、アリール、アラルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシを有し得る。
【0048】
用語「アミン基」は、式−NRR’により表され、ここで、RおよびR’は、独立して、水素または上に記載されたような、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、またはヘテロシクロアルキル基であり得る。
【0049】
用語「アミド基」は、式−C(O)NRR’により表され、ここで、RおよびR’は、独立して、水素、上に記載されたような、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、またはヘテロシクロアルキル基であり得る。
【0050】
用語「エステル」は、式−OC(O)Rにより表され、ここで、Rは、上に記載されたような、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、またはヘテロシクロアルキル基であり得る。
【0051】
用語「カーボネート基」は、式−OC(O)ORにより表され、ここで、Rは、上に記載されたような、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、またはヘテロシクロアルキル基であり得る。
【0052】
用語「カルボン酸」は、式−C(O)OHにより表される。
【0053】
用語「アルデヒド」は、式−C(O)Hにより表される。
【0054】
用語「ケト基」は、式−C(O)Rにより表され、ここで、Rは、上で記載されるような、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、またはヘテロシクロアルキル基であり得る。
【0055】
用語「カルボニル基」は、式C=Oにより表される。
【0056】
「カチオン性基」または「カチオン性部分」とは、正に荷電した基または正に荷電し得る基をいう。例えば、カチオン性基は、生理学的に適切なpHにてプロトン化され得るアミンであり得る。カチオン性基の第2の例は、正に荷電した第4級アミンである。
【0057】
開示された化合物はまた、塩(いくつかの塩形成基が存在する場合、混合された塩および/または分子内塩を含む)を包含する。この塩は、一般的には薬学的に受容可能な、無毒性の塩である。塩を形成する酸性の基の例としては、カルボキシル基、リン酸基、ボロン酸基が挙げられるが、これらに限定されず、これらは、適切な塩基と塩を形成し得る。これらの塩としては、例えば、元素の周期表のIA族、IB族、IIA族、およびIIB族の金属に由来する、無毒性の金属カチオンが挙げられ得る。一つの実施形態では、アルカリ金属カチオン(例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、もしくはカリウムイオン)、またはアルカリ土類金属カチオン(例えば、マグネシウムイオン、もしくはカルシウムイオン)が使用され得る。この塩はまた、亜鉛カチオンまたはアンモニウムカチオンであり得る。この塩はまた、適切な有機アミン(例えば、非置換の、もしくはヒドロキシル置換された、モノアルキルアミン、ジアルキルアミンもしくはトリアルキルアミン(特に、モノアルキルアミン、ジアルキルアミンもしくはトリアルキルアミン))あるいは4級アンモニウム化合物とともに(例えば、N−メチル−N−エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノ−(2−ヒドロキシ−低級アルキル)アミン、ビス−(2−ヒドロキシ−低級アルキル)アミン、またはトリス−(2−ヒドロキシ−低級アルキル)アミン(例えば、モノ−、ビス−、もしくはトリス−(2−ヒドロキシエチル)アミン、2−ヒドロキシ−tert−ブチルアミン、もしくはトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン)、N,N−ジ−低級アルキル−N−(ヒドロキシ−低級アルキル)アミン(例えば、N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミンもしくはトリ−(2−ヒドロキシエチル)アミン、もしくはN−メチル−D−グルカミン)、または4級アンモニウム化合物(例えば、テトラブチルアンモニウム塩)とともに)形成され得る。
【0058】
特定の化合物は、鉱酸と酸−塩基塩を形成し得る、少なくとも1個の塩基性の基を保有する。塩基性の基の例としては、アミノ基またはイミノ基が挙げられるが、これらに限定されない。このような塩基性の基と塩を形成し得る無機酸の例としては、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸またはリン酸)が挙げられるが、これらに限定されない。塩基性の基はまた、有機カルボン酸、有機スルホン酸、有機スルホ酸(sulfo acid)もしくは有機リン酸、またはN−置換スルファミン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、グルカル酸、グルクロン酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、サリチル酸、2−フェノキシ安息香酸、2−アセトキシ安息香酸、エンボニック酸(embonic acid)、ニコチン酸またはイソニコチン酸と塩を形成し得るが、さらに、アミノ酸(例えば、α−アミノ酸)、およびメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシメタンスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、4−メチルベンゼンスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、2−ホスホグリセリン酸もしくは3−ホスホグリセリン酸、グルコース−6−リン酸またはN−シクロヘキシルスルファミン酸(シクラメートの形成を伴う)または他の酸性有機化合物(例えば、アスコルビン酸)とも塩を形成し得る。
【0059】
用語「エーテル基」は、式R(O)R’により表され、ここでRおよびR’は、独立して、上に記載されたような、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、またはヘテロシクロアルキル基であり得る。
【0060】
用語「ハライド」とは、F、Cl、Br、またはIをいう。
【0061】
用語「ウレタン」およびカルバメートは、式OC(O)NRR’により表され、ここで、RおよびR’は、独立して、水素、上に記載されたような、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、ヘテロシクロアルキル基であり得る。
【0062】
上に記載された基は、必要に応じて、1個以上の置換基で置換され得る。分子内の特定の位置での任意の置換基または可変物の定義は、この分子について他の場所での定義から独立している。適切な置換基の例としては、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、オキソ、アルカノイル、アルカノイルオキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、アルカノイルアミノ、アロイルアミノ、アラルカノイルアミノ、置換されたアルカノイルアミノ、アロイルアミノ、アラルカノイルアミノ、置換されたアルカノイルアミノ、置換されたアリールアミノ、置換されたアラルカノイルアミノ、チオール、スルフィド、チオノ、スルホニル、スルホンアミド、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルバミル、置換されたカルバミルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
用語「プロドラッグ」は、このプロドラッグが被験体に投与された場合に、本発明の活性な親薬物をインビボで放出する、共有結合された任意のキャリアを含有することが意図される。プロドラッグは、薬の特性(例えば、溶解度およびバイオアベイラビリティー)を増強することが公知であるので、本明細書中に開示される化合物は、プロドラッグの形態で送達され得る。従って、また企図されるのは、本願発明の化合物のプロドラッグ、プロドラッグを含有する組成物、およびこのようなプロドラッグを送達する方法である。開示された化合物のプロドラッグは、代表的には、慣用的な操作によって修飾が切断されるか、またはインビボで修飾が切断されるかのいずれかで、親化合物が得られる様式で、化合物中に存在する官能基を修飾する工程により調製される。プロドラッグとしては、ヒドロキシ基、アミノ基、またはスルフヒドリル基を有する化合物が挙げられ、上記ヒドロキシ基、アミノ基、スルフヒドリル基またはスルフヒドリル基は、切断されるとそれぞれ対応するヒドロキシル基、遊離アミノ基、または遊離スルフヒドリル基が得られる、任意の基で官能基化されている。プロドラッグの例としては、酢酸基、ギ酸基、および/または安息香酸基でアシル化された、ヒドロキシ基、アミノ基および/またはスルフヒドリル基を有する化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
開示された化合物の保護された誘導体もまた、企図される。開示された化合物の使用が適切な種々の誘導体が、GreeneおよびWuts、Protective Groups in Organic Synthesis;第3版;John WileyおよびSons、New York 1999において開示されている。
【0065】
本明細書中に記載されている化合物の置換基および置換パターンは、化学的に安定である化合物を提供し得るように、当業者により選択されること、ならびに当該分野で公知の技術およびさらに本開示において記載される方法によって容易に合成され得ることが、理解される。本発明の好ましい実施形態が、ここで詳細に参照される。
【0066】
(I.好ましい化合物の選択)
エストロゲンレセプターを調節するための好ましい化合物は、代表的には、1種以上のエストロゲンレセプターを、アゴナイズするか、またはアンタゴナイズする際の潜在能力および選択性に関して、選択される。代表的には、開示された化合物は、膜結合エストロゲンレセプターに選択的に結合し、そして(結合する場合には)核内エストロゲンレセプターである、(ER)αおよび(ER)βに、より低い親和性で結合する。以下の方法および実施例の節に記載されているように、そして一般的に公知であるように、標的エストロゲンレセプターに対する特定の化合物の効力は、インビトロで決定され得、そして開示されたインビトロでの方法は、新規のSERMをスクリーニングし、そして同定するために使用され得る。さらに、種々の状態および障害(閉経に関連する状態、もしくはエストロゲン欠乏により特徴付けられる他の状態(例えば、卵巣摘出、卵巣不全もしくは閉経))を処置するか、またはこれらに対して保護するための特定の化合物が提供される。このような状態の例としては、顔面紅潮、認知衰弱(cognitive decline)、骨粗しょう症、鬱、虚血性脳損傷およびアテローム性動脈硬化症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
開示された化合物が顔面紅潮を阻害または改善する能力は、例えば、モルヒネ中毒のラットがナロキソンを用いて、モルヒネに対する急性の禁断症状を経験する場合に生じる、尾部の皮膚温度の上昇を、鈍化させる薬剤の能力を測定する標準的なアッセイにおいて決定され得る。Merchenthalerら、The effect of estrogens and antiestrogens in a rat model for hot flush.Maturitas 1998,30,307−316を参照のこと(これは、本明細書中で参考として援用される)。また、Berendsenら、Effect of tibolone and raloxifene on the tail temperature of oestrogen−deficient rats.Eur.J.Pharmacol.2001,419,47−54;およびPanら、A comparison of oral micronized estradiol with soy phytoestrogen effects on tail skin temperatures of ovariectomized rats.Menopause 2001,8,171−174を参照のこと。Berendsenの刊行物およびPanの刊行物の両方が、本明細書中に参考として援用される。
【0068】
特定の開示された化合物は、多発性硬化症の処置に対して有用である。多発性硬化症の症状を処置または抑制するための好ましい化合物は、Polanczykら、Am.J.Pathol.2003,163,1599−1605により記載される、実験的な自己免疫脳脊髄炎マウスモデルを使用することにより選択され得る。このPolanczykの刊行物は、本明細書中に参考として援用される。
【0069】
摂食障害(例えば、神経性食欲不振および/または神経性大食症)を処置するのに有用な、開示された化合物は、当業者に公知であるような、単純な栄養補給アッセイ(single feeding assay)を用いて同定され得る。
【0070】
学習および記憶に対する開示された化合物の効果は、Stackmanら、J.Neuroscience 2002,22,10163−10171により記載されたプロトコールに従って、モリス水迷路および物体認識アッセイを用いて、評価され得る。Stackmanらの刊行物が本明細書中に参考として援用される。
【0071】
開示された化合物の神経保護活性はまた、例えば、グルタミン酸塩チャレンジ(glutamate challenge)を用いた、標準的なインビトロでの薬理学的アッセイにおいて、評価され得る。Zaulyanovら、Cellular & Molecular Neurobiology 1999,19:705−718;およびProkaiら、Journal of Medicinal Chemistry 2001,44,110−114を参照のこと。Zaulyanovら、およびProkaiらの刊行物は、本明細書中に参考として援用される。
【0072】
開示された化合物はまた、全体的な大脳虚血に関連する損傷からニューロンを保護する能力に関して評価され得る。化合物は、Vogelら、Anesthesiology 2003,99,112−121により記載される、心停止および心肺蘇生術アッセイを用いて、このような損傷を低減する能力について評価され得る。一局面では、上記化合物は、蘇生後に投与された場合でさえ、ニューロンへの損傷を低減し得る。Vogelらの刊行物は、本明細書中に参考として援用される。
【0073】
神経保護はまた、マウスにおいて、Dubalら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.2001,98,1952−1957;およびJ.Neurosci.1999,6385−6393により記載されるプロトコールに従って、中大脳動脈閉塞手順を用いて評価され得る。エストロゲン欠乏により特徴付けられる障害の異なるモデル中での開示された化合物を評価するためのさらなるアッセイが、以下の方法および実施例の節に記載されている。
【0074】
化合物の使用は、エストロゲン欠乏を伴う状態に必ずしも限定されない。このような状態および障害を処置または予防するための治療の効力を特徴付けるための技術およびアッセイは、周知であり、そして例えば、Malamasら、およびMewshawらにより、それぞれ米国特許出願公開第2003/0171412号明細書および同第2003/0181519号明細書に記載される。Malamasら、およびMewshawらの刊行物は両方とも、本明細書中に参考として援用される。
【0075】
(II.薬学的組成物)
本開示の別の局面は、被験体への投与のために調製される薬学的組成物を包含し、そしてこの組成物は、現在開示されている1種以上の化合物の治療上有効な量を含有する。開示された化合物の治療上有効な量は、投与ルート、被験体である哺乳動物の型、および処置される被験体の身体的な特徴に依存する。考慮され得る特定の因子としては、疾患の重症度および段階、体重、食事ならびに併用薬(concurrent medication)が挙げられる。これらの因子と、開示された化合物の治療上有効な量を決定する工程との関係は、当業者に理解される。
【0076】
投与される化合物の治療上有効な量は、上に記述された所望の効果および因子に依存して変動し得る。代表的には、投薬量は、被験体の体重の、約0.01mg/kgと100mg/kgとの間であり、そしてより代表的には、被験体の体重の、約0.01mg/kgと10mg/kgとの間である。一つの局面では、治療上有効な量は、インビトロで有効であると見出される濃度付近の被験体の標的組織中の治療用薬剤のインビボでの濃度を達成するように選択され得る。
【0077】
一つの実施形態では、開示されたSERMは、本明細書中に開示されるさらなる化合物、および/または他の治療用薬剤(例えば、他のSERM、抗がん剤もしくは抗増殖剤)と組み合わせて使用される。例えば、開示された化合物は、化学療法剤(例えば、タモキシフェン、タキソール、エポチロン(epothilone)、メトトレキサートなど)とともに使用され得る。一つの局面では、開示されたSERMは、ステロイドホルモン(例えば、エストロゲン(17β−エストラジオールが挙げられる)、プロゲステロンなど)と組み合わせて使用される。このエストロゲンまたはプロゲステロンは、天然に存在し得るか、または合成エストロゲンもしくは合成プロゲステロンであり得る。異なる治療用薬剤が、組み合わせて使用される場合、治療用薬剤は、一緒に投与されてもよいし、別々に投与されてもよい。治療用薬剤は、単独で投与され得るが、より代表的には、選択された投与ルートおよび標準的な薬学的診療(pharamaceutical practice)を基本に選択される薬学的キャリアとともに投与される。
【0078】
本明細書中に記載される任意のSERMは、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わされ得、薬学的組成物を形成する。薬学的キャリアは、当業者に公知である。これらは、最も代表的には、ヒトに対する投与のための組成物の標準的なキャリア(溶剤(例えば、滅菌水、生理食塩水、または生理的なpHでの緩衝化溶液)が挙げられる)である。この組成物はまた、筋肉内投与されるか、経皮投与されるか、またはエアロゾルの形態で投与され得る。他の化合物は、当業者により使用される標準的な手順に従って投与される。
【0079】
薬学的送達が意図される分子は、薬学的組成物に処方され得る。薬学的組成物は、選択した分子に加えて、キャリア、増粘剤、希釈剤、緩衝液、保存剤、界面活性剤などを含有する。薬学的組成物はまた、1種以上のさらなる活性成分(例えば、抗菌剤、抗炎症剤、麻酔薬など)を含有し得る。薬学的処方物は、さらなる成分(例えば、キャリア)を含有し得る。これらの処方物にとって有用な、薬学的に受容可能なキャリアは、従来のものである。E.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.,Easton,PA,第15版(1975)は、本明細書中に開示される化合物の薬学的送達に適した組成物および処方物を記載する。
【0080】
一般的に、このキャリアの性質は、使用される特定の投与様式に依存する。例えば、非経口処方物は、通常は、注射可能な流体(薬学的に受容可能でかつ生理学的に受容可能な流体(例えば、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、デキストロース水溶液、グリセロールなど)が挙げられる)をビヒクルとして含有する。固形組成物(例えば、散剤、丸剤、錠剤、またはカプセル剤の形態)の、従来の無毒性の固体のキャリアとしては、例えば、薬学的等級の、マンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムが挙げられ得る。生物学的に中性のキャリアに加えて、投与されるべき薬学的組成物は、少量の無毒性の補助剤(例えば、加湿剤、乳化剤、保存剤、およびpH緩衝化剤など(例えば、酢酸ナトリウムもしくはモノラウリン酸ソルビタン)を含有し得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、開示されたSERMの有効量を含有する薬学的調製物の徐放は、有益であり得る。緩徐な放出(slow−release)の処方物は、当業者に公知である。例として、ポリマー(例えば、ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン−セバシン酸)またはレシチンの懸濁液が、徐放を提供するために使用され得る。
【0082】
いくつかの実施形態において、SERM送達が注射薬物蓄積および/またはインプラント薬物蓄積(implanted drug depot)(例えば、多小胞リポソーム(例えば、Depo泡沫(SkyePharma,Inc,San Diego,CA)の多小胞リポソーム)を含む)を介することが具体的に企図される(例えば、Chamberlainら、Arch.Neuro.1993,50,261−264;Katriら、J.Pharm.Sci.1998,87,1341−1346;Yeら、J.Control Release 2000,64,155−166;およびHowell,Cancer J.2001,7,219−227を参照のこと)。
【0083】
(III.開示された化合物を使用するための方法)
開示された化合物は、被験体中のエストロゲンレセプターを選択的に調節するために使用され得、それゆえ種々の障害(エストロゲン欠乏により特徴付けられるもの)を処置するのに有用である。さらに、開示された特定の化合物は、1種以上のエストロゲンレセプターに対して選択性を示すので、上記化合物は、状態(自律神経機能障害、認知衰弱、運動機能障害、気分障害、摂食障害および心臓血管障害ならびに異なる型の障害として記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない)を処置するために使用され得る。一般的に、上記化合物は、現在のホルモン置換療法において使用されるステロイドホルモン(例えば、エストロゲン、または合成エストロゲン)に関連する深刻な副作用と同一の副作用の発生を誘導せず、ホルモン置換療法にとって有用である。この開示された化合物はまた、副作用(例えば、現在公知のSERM(例えば、タモキシフェンもしくはラロキシフェン)を用いた処置において直面する副作用(例えば、顔面紅潮)を回避する。より具体的には、開示された化合物は、障害(例えば、虚血誘導性神経死、頭部損傷、アルツハイマー病、温度調節障害(例えば、顔面紅潮)、睡眠周期分裂(sleep cycle disruption)、パーキンソン病、晩発性ジスキネジア、鬱、精神分裂病、神経性食欲不振、神経性大食症、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、長期QTL症候群(例えば、ロマノ−ウォード症候群またはトルサード・ド・ポワント症候群)、骨粗しょう症、慢性関節リューマチ、変形性関節症、骨折、および多発性硬化症が挙げられるが、これらに限定されない)を処置するために使用され得る。一つの実施形態では、特定の化合物は、流体のバランスを調節することにより(例えば、ナトリウムまたはクロライドの上皮輸送をブロックすることにより)血管拡張を促進するために使用され得る。理論に限定されるわけではなく、この化合物は、マキシ−Kチャンネル(maxi−K channel)を活性化することにより機能すると考えられる。Valverdeら、Science 1999,285,1929−1931を参照のこと。
【0084】
別の実施形態では、開示された化合物は、自己免疫疾患、特に男性よりも女性に頻繁に生ずる自己免疫疾患を処置するために使用され得る。このような疾患の例としては、多発性硬化症、慢性間接リューマチ、グレーヴス病、全身性エリテマトーデス、および重症筋無力症が挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態では、開示された化合物は、被験体の免疫の能力を維持または増強するために機能する。さらに、開示された化合物は、特定の型の損傷に対して、予防的な効果を発揮する。例えば、上記化合物は、神経保護薬として使用され得る。実際に、本明細書中で同定される膜結合エストロゲンレセプターをアゴナイズする化合物は、虚血性発作に応答する神経保護薬として作用し、再灌流障害を阻害する。
【0085】
さらに、開示された化合物が1種以上の特定の型のエストロゲンレセプターを選択的に調節する能力のために、開示された化合物は、異なる生理学的効果を媒介する異なるエストロゲンレセプターの寄与を同定するために、使用され得る。開示された化合物はまた、これらの薬剤が作用する、特定のクラスの膜結合レセプターに結合し、かつ、これを調節するために使用され得る。実際、実用的な実施形態の開示された選択的エストロゲンレセプターモジュレーターは、膜結合レセプターに関しては、17β−エストラジオールより10倍高い効力を有し、そして核内エストロゲンレセプターである、(ER)αおよび(ER)βに関しては、17β−エストラジオールより100万倍低い効力を有した。
【0086】
開示された化合物の別の適用は、アフィニティークロマトグラフィーである。現在開示されている化合物の例が、新規の、膜結合エストロゲンレセプターに結合するので、この化合物は、レセプターを精製するか、またはサンプルからこのレセプターを除去するために使用され得る。上記化合物を使用するために、上記化合物は、代表的には、当業者に公知の固形支持体に結合される。上記化合物は、直接的に結合されるか、またはリンカー分子を介して結合され得る。開示された化合物との使用が適切な、例示的なアフィニティークロマトグラフィー技術は、Current Protocols in Protein Science,John Wiley & Sons(J.E.Coliganら、編)に開示される。
【0087】
(IV.合成)
本明細書中に開示される化合物、およびこの開示を考慮すれば医化学分野の当業者に非常に明白になるこのような化合物のアナログが、当業者に周知の多くの方法で調製され得る。特定の化合物を作製するための例示的な方法は、以下に記載される。開示された試薬および反応に鑑み、上記分子の官能性を考慮すれば、これらの方法が、以下に明示的に記載されていない化合物の合成に対して一般化可能であることは、有機化学分野の当業者に理解される。開示された状態を考慮すれば、当業者は、本明細書中に開示される特定の状態に適合しない官能基を有し得る類似の化合物を調製するための代替の方法を認識する。
【0088】
所定の変換において存在する官能基に依存して、変換の間にその基をマスクするための、種々の基に対する保護基が好まれ得る。種々の官能性に対する適切な保護基は、GreeneおよびWuts、Protective Groups in Organic Synthesis;第3版;John Wiley & Sons、New York(1999)に記載されている。
【0089】
開示された化合物を合成するための方法の一つの実施形態が、以下のスキーム3に例示される。スキーム3に関して、この方法は、化合物2を提供する工程、および化合物2を化合物4へと転換する工程を包含する。化合物2は、Weathermanら、Chemistry&Biology 2001,8,427−436により報告されるプロトコールに従って調製された。実用的な実施例では、化合物2は、リチウム−ハロゲン交換条件に供され、続いて、クロロ蟻酸アリルと反応して、化合物4を与える。化合物6は、アリルエステル基のパラジウム−触媒切断を介して調製された。実用的な実施例では、触媒性Pd(PPh3)4がPhSiH3と一緒に使用され、化合物6を生み出した。化合物6は、種々のN−置換アクリルアミド中間体を調製するために使用され得る多様な中間体である。例えば、任意の一級アミンまたは二級アミンが、化合物6とのアミド結合形成反応を介して組み込まれ得る。スキーム3において例示される方法は、E異性体およびZ異性体(それぞれ化合物8および化合物9)の両方を生み出す。
【0090】
【化29】
さらなるSERMが、スキーム4に従って調製され得る。スキーム4に関して、化合物10は、ジフェニルアセチレンから調製され得る。(エチルに加えて)種々のアルキル基が、種々の技術によりこの工程で導入され得る。化合物10において導入されたヨード基は、カルボキシ基(例えば、カルボキシメチルエステル12)を導入するために使用され得、このカルボキシ基は、対応するカルボン酸7へと容易に転換される。カルボン酸7は、種々の一級アミンおよび二級アミンと反応し得、対応するアミド(例えば、8および対応するZ異性体9)が得られる。
【0091】
【化30】
二置換アクリルアミド誘導体は、スキーム5に例示される方法に従って調製され得る。スキーム5に関して、18のビス−アリル化で20が生じる。20とベンズアルデヒドとのアルドール反応で、22が生じ、これが脱離を経て、E異性体およびZ異性体の混合物としての24が得られる。アリル保護基の切断で26が生じ、続いて、アミド結合の形成が生じ、E異性体およびZ異性体(それぞれ、28および30)を形成する。
【0092】
【化31】
スキーム6は、ビニルケトン由来のSERMを合成するための方法の実施形態を記載する。スキーム6に関して、化合物32のアルキル化は、種々の基を導入するために使用され得る多様な反応である。例えば、Rとしては、ヒドロキシ基、保護されたヒドロキシ基、カルボキシ基、保護されたカルボキシ基、アミン、または保護されたアミノ基が挙げられ得るが、これらに限定されない。実用的な実施例では、Rは、ジメチルアミノ基またはピペリジノ基であった。中間体34は、化合物2より調製される化合物のリチウムアニオンと反応し(スキーム3)、脱保護の後、E異性体およびZ異性体(それぞれ38および40)が得られる。
【0093】
【化32】
【実施例】
【0094】
(V.方法および実施例)
前述の開示は、以下の非限定的な実施例において、さらに説明される。
【0095】
(実施例1)
この実施例は、2−(4−tert−ブトキシフェニル)−3−フェニルペンタ−2−エン酸アリルエステル(4)の合成を記載する。
【0096】
【化33】
n−ブチルリチウム(6.68mL、16.7mmol;2.5M)を、−78℃にまで冷却した無水THF(75mL)中の臭化ビニル2(3.00g、8.35mmol)溶液中に滴下した。15分間攪拌した後、クロロ蟻酸アリル(4.43mL、41.8mmol)をニートで滴下した。これを、−78℃から室温にまで、4時間かけて攪拌した。飽和炭酸水素ナトリウムを添加し、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、そして減圧下で濃縮し、黄色の油状物を得た。粗製生成物を、カラムクロマトグラフィー(5%EtOAc/Hex)で精製し、4を、収率59%で淡黄色油状物(1.80g、4.94mmol)として得た。E−異性体のRf=0.20およびZ−異性体のRf=0.14(5% EtOAc/Hex)。
【0097】
【化34】
(実施例2)
この実施例は、2−(4−tert−ブトキシフェニル)−3−フェニルペンタ−2−エン酸(6)の合成を記載する。
【0098】
【化35】
無水ジクロロメタン(10mL)中の化合物4(0.16g、0.439mmol)の溶液に、PhSiH3(0.11mL、0.878mmol)を添加し、続いてPd(PPh3)4(10mg、8.78μmol)を添加した。この反応を室温で、アルゴン下で30分間攪拌した。これを、ddH2Oでクエンチし、1M HClを用いて、pHを2にまで低下させ、ジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そして減圧下で濃縮した。粗製黄色油状物を、カラムクロマトグラフィー(35%EtOAc/Hex)で精製し、収率99%で、白色固形物(0.14g、0.432mmol)を得た。
E−異性体のRf=0.33およびZ−異性体のRf=0.49(10%MeOH/CHCl3)。
【0099】
【化36】
(実施例3)
この実施例は、2−(4−tert−ブトキシフェニル)−3−フェニルペンタ−2−エン酸[4−(2−ジメチルアミノエトキシ)フェニルアミド(7)の合成を記載する。
【0100】
【化37】
HBTU(25.7mg、0.0617mmol)およびDMAP(0.4mg、3.09μmol)を、予め0℃にまで冷却されたジクロロメタン(1mL)中の化合物3(20.0mg、0.0617mmol)の溶液に添加した。この反応を、0℃にて30分間攪拌させ、そして室温にてさらに30分間攪拌した。次いで、0℃に再度冷却し、そしてアミン塩酸塩(14.7mg、0.0679mmol)を添加し、続いて、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)(0.04mL、0.247mmol)を滴下した。この反応を、室温にて30分間攪拌し、次いで、飽和塩化アンモニウムでクエンチし、ジクロロメタンで抽出した。合わせた有機層を、飽和炭酸水素ナトリウムで1回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、そして減圧下で濃縮した。粗製生成物を、カラムクロマトグラフィー(10%MeOH/CHCl3)により精製し、84%の収率で、白色泡状物(25.4mg、0.519mmol)を得た。E−異性体のRf=0.15およびZ−異性体のRf=0.33(10%MeOH/CHCl3)。
【0101】
【化38】
(実施例4)
この実施例は、(E,Z)−2−(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルペンタ−2−エン酸[4−(2−ジメチルアミノエトキシ)−フェニル]アミド(8および9)の合成を記載する。
【0102】
【化39】
化合物7(25.3mg,0.0514mmol)を、無水ジクロロメタン(0.47mL)中に溶解し、0℃にまで冷却した。2,2,2−トリフルオロエタノール(0.37mL)およびトリフルオロ酢酸(0.74mL)を添加し、そして反応混合物を0℃から10℃まで、1.5時間にわたって攪拌した。この時間の後、この溶液を1MのHClに注ぎ、CH2Cl2で抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、そしてこの溶液を減圧下で除去した。この粗製生成物を、カラムクロマトグラフィー(15% MeOH/CHCl3)で精製し、97%収率で、白色泡状物(21.5mg、0.499mmol)を得た。E−異性体8のRf=0.18およびZ−異性体9のRf=0.22(15% MeOH/CHCl3)。
【0103】
【化40】
(実施例5)
この実施例は、1−ヨード−1,2−ジフェニルブタ−1−エン(10)の合成を記載する。
【0104】
【化41】
塩化ジエチルアルミニウム(9.78g、0.393mol)を、無水ジクロロメタン(200mL)中の二塩化ビス(シクロペンタジエニル)チタニウム(21.8mL、0.0393mol;1.8M)の溶液に添加し、そしてこの混合物をアルゴン雰囲気下で、室温で10分間攪拌した。ジフェニルアセチレン(5.0g、0.0281mol)を、ゆっくりと添加し、そして5時間攪拌した。この反応混合物を、−78℃にまで冷却し、そしてジクロロメタン(70mL)で希釈した。N−ヨードスクシンイミド(NIS)(14.5g、0.0645mol)を、添加後の温度を−78℃に保つようにゆっくりと添加し、そしてこの反応を一晩室温で攪拌した。翌日、これをヘキサン(100mL)中に注ぎ、3N NaOH(200mL)中の5% Na2SO3を添加し、そして濾過した。濾過後、この2層を分離し、有機層を5% Na2SO3(200mL)で洗浄し、続いて3N HCl(200mL)および飽和NaHCO3(100mL)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そして減圧下で濃縮した。粗製生成物を、ヘキサン中でカラムクロマトグラフィーにより精製し、76%の収率で、淡褐色油状物(7.15g、0.0214mol)として10を得た。
【0105】
【化42】
(実施例6)
この実施例は、2,3−ジフェニルペンタ−2−エン酸メチルエステル(12)の合成を記載する。
【0106】
【化43】
メタノール(5mL)、DIEA(0.17mL、0.987mmol)およびPdCl2(PPh3)2(107mg、0.153mmol)を、無水DMF中に溶解したヨウ化ビニル10(300mg、0.898mmol)に添加した。一酸化炭素で5分間泡立て、そして反応混合物を、80℃で、CO雰囲気下で3日間攪拌した。この冷却した反応混合物を、酢酸エチルで希釈し、ddH2Oで洗浄し、この層を分離し、そして有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして濾過し、そして減圧下で濃縮した。この粗製生成物を、クロロホルム中でカラムクロマトグラフィーで精製し、83%の収率で生成物(198mg、0.743mmol)を得た。E−異性体のRf=0.47およびZ−異性体のRf=0.53(CHCl3)。
【0107】
【化44】
(実施例7)
この実施例は、2,3−ジフェニルペンタ−2−エン酸(14)の合成を記載する。
【0108】
【化45】
メタノール(4mL)およびTHF(9mL)中の化合物12(50mg,0.188mmol)の溶液に、0.2MのKOH溶液(9.4mL、1.88mmol)を滴下した。次いで、この反応を2日間加熱還流した。翌日、これを1NのHCl(10mL)中に注ぎ、10分間攪拌し、CHCl3で抽出し、硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させ、濾過し、そして減圧下で濃縮した。この粗製生成物をカラムクロマトグラフィー(5% MeOH/CHCl3)により精製し、68%収率で、白色固形物(32mg、0.127mmol)を得た。E−異性体のRf=0.33およびZ−異性体のRf=0.47(5%のMeOH/CHCl3)。
【0109】
【化46】
(実施例8)
この実施例は、E−2,3−ジフェニルペンタ−2−エン酸[4−(2−ジメチルアミノエトキシ)−フェニル]アミドおよびZ−2,3−ジフェニルペンタ−2−エン酸[4−(2−ジメチルアミノエトキシ)−フェニル]アミド(16および17)の合成を記載する。
【0110】
【化47】
化合物16および17を、(E異性体およびZ異性体の混合物としての)化合物14(29mg、0.115mmol)、HBTU(48mg、0.126mmol)、DMAP(0.7mg、5.7μmol)、アミン塩酸塩(27mg、0.126mmol)、およびDIEA(0.08mL、0.459mmol)を用いて、化合物8および9(実施例4)について記載したように合成し、32%の収率で、所望の生成物17(19mg、0.0488mmol)を得、そして60%の収率で、所望の生成物16(29mg、0.070mmol)を得た。E−異性体16のRf=0.15およびZ−異性体17のRf=0.10(5%のMeOH/CHCl3)。
【0111】
【化48】
(実施例9)
この実施例は、(4−アリルオキシフェニル)酢酸アリルエステル(20)の合成を記載する。
【0112】
【化49】
水素化ナトリウム(1.90g、0.0789mmol)を無水DMF(70mL)中に懸濁し、0℃にまで冷却した。4−ヒドロキシフェニル酢酸18(5.00g、0.329mmol)をDMF(30mL)中に溶解し、冷却した水素化ナトリウム懸濁液に添加し、そして室温で2時間攪拌した。この時間の後、この反応物を0℃にまで再度冷却し、そして臭化アリル(11.3mL、0.131mmol)を添加した。4.5時間室温で攪拌した後、これを飽和ブライン中に注ぎ、エーテルで抽出し、10%のKOH、次いでブラインで有機層を洗浄した。この有機層を、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そして減圧下で濃縮した。この粗製生成物を、カラムクロマトグラフィー(CHCl3)により精製し、65%の収率で油状物(4.97g、0.0214mmol)を得た。Rf0.68(CHCl3)。
【0113】
【化50】
(実施例10)
この実施例は、2−(4−アリルオキシ−フェニル)−3−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオン酸アリルエステル(22)の合成を記載する。
【0114】
【化51】
LHMDS(9.47mL、9.47mmol)を、予め−78℃に冷却した無水THF(120mL)中の20(2.00g、8.61mmol)の溶液に添加した。ベンズアルデヒド(0.88mL、8.61mmol)を、THF中に溶解し、そして冷却混合物中に添加した。この反応を、−20℃にまで暖め、そして一晩攪拌した。翌日、これを飽和塩化アンモニウムでクエンチし、EtOAcで水層を抽出し、有機層と合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そして減圧下で濃縮した。この粗製生成物を、カラムクロマトグラフィー(10% EtOAc/Hex)により精製し、69%の収率で、化合物22(2.01g、5.94mmol)を得た。Rf0.16(10% EtOAc/Hex)。
【0115】
【化52】
(実施例11)
この実施例は、化合物2−(4−アリルオキシフェニル)−3−フェニルアクリル酸アリルエステル(24)の合成を記載する。
【0116】
【化53】
0℃に冷却したジクロロメタン(10mL)中の22(1.00g、2.96mmol)の溶液に、トリエチルアミン(TEA)(1.2mL、8.87mmol)を添加し、続いて、塩化メシル(MsCl)(0.46mL、5.91mmol)を添加した。この反応を2時間攪拌し、次いで、エーテルで希釈し、セライトのプラグを通して濾過し、そして減圧下で濃縮した。粗製メシラートを、無水THF(40mL)中で希釈し、0℃にまで冷却し、そして1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)(1.3mL、8.87mmol)を添加した。室温にて2時間攪拌した後、10% HClを添加し、クロロホルムで抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム、およびブラインで洗浄し、次いで有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そして減圧下で濃縮した。この粗製生成物を、カラムクロマトグラフィー(15% EtOAc/Hex)により精製し、収率95%で10(0.90g,2.81mmol)を得た。Rf0.59(15% EtOAc/Hex)。
【0117】
【化54】
(実施例12)
この実施例は、2−(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルアクリル酸(26)の合成を記載する。
【0118】
【化55】
PhSiH3(0.78mL、6.24mmol)を、THF(35mL)中の24の溶液に添加し、続いて、Pd(PPh3)4を室温で添加した。この反応を、アルゴン下で15分間、室温で攪拌した。これを、ddH2Oを添加することによりクエンチし、1N HClを添加し、このpHを2にまで低下させ、ジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そして減圧下で濃縮した。この粗製混合物を、カラムクロマトグラフィー(1:1のEtOAc/Hex)により精製し、収率71%で、26(266.9mg、1.11mmol)を得た。Rf0.33(5%EtOAc/Hex)。
【0119】
【化56】
(実施例13)
この実施例は、E−N−[4−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−フェニル]−2−(4−ヒドロキシ−フェニル)−3−フェニル−アクリルアミド、およびZ−N−[4−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−フェニル]−2−(4−ヒドロキシ−フェニル)−3−フェニル−アクリルアミド(それぞれ28および30)の合成を記載する。
【0120】
【化57】
化合物28および30を、化合物26(266mg、1.11mmol)、HBTU(462mg、1.22mmol)、DMAP(6.8mg、55.4μmol)、アミン塩酸塩(264mg,1.22mmol)およびDIEA(0.77mL、4.43mmol)を用いて、化合物8および9(実施例4)について記載したように合成し、16%の収率で、所望の生成物(72mg、0.178mmol)を得た。Rf0.27(10% MeOH/CHCl3)。
【0121】
【化58】
(実施例14)
この実施例は、4−(2−ジメチルアミノエトキシ)ベンゾエート(42)の合成を記載する。
【0122】
【化59】
THF(80mL)中のメチル−4−ヒドロキシベンゾエート32(3.00g、19.7mmol)の溶液に、塩化ジメチルアミノエチル(2.84g、19.7mmol)、炭酸セシウム(34.78g、9.86mmol)、ヨウ化カリウム(65.5mg、0.394mmol)を添加し、そして一晩還流しつつ攪拌した。室温にまで冷却した後、ddH2Oを添加し、クロロホルムで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そして減圧下で濃縮した。この粗製生成物を、カラムクロマトグラフィー(10% MeOH/CHCl3)により精製し、79%の収率で12a(3.47g、15.5mmol)を得た。Rf0.31(10% MeOH/CHCl3)。
【0123】
【化60】
(実施例15)
この実施例は、4−(2−ピペリジン−1−イルエトキシ)ベンゾエート(44)の合成を記載する。
【0124】
【化61】
メチル−4−ヒドロキシベンゾエート(4.00g、2.62mmol)、1−(2−クロロエチル)ピペリジン塩酸塩(4.76g、2.62mmol)、炭酸カリウム(18.16g、13.14mmol)、ヨウ化カリウム(43.6mg、0.526mmol)およびDMF(100mL)を用いる、化合物42(実施例14)と同一の手順。この粗製生成物を、カラムクロマトグラフィー(5% MeOH/CHCl3)により精製し、80%の収率で、化合物44(5.54g、2.10mmol)を得た。
【0125】
【化62】
(実施例16)
この実施例は、4−(2−ジメチルアミノエトキシ)−N−メトキシ−N−メチルベンズアミド(46)の合成を記載する。
【0126】
【化63】
化合物44(2.69g、12.0mmol)および塩酸メチルメトキシアミン(1.82g、18.7mmol)を、無水THF(100mL)中に懸濁し、そして−20℃にまで冷却した。塩化イソプロピルマグネシウム(17.6mL)を滴下し、その間、温度を−10℃未満に維持した。この反応を、室温にまで暖め、そして一晩攪拌した。飽和塩化アンモニウムを添加し、エーテルで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そして減圧下で濃縮した。粗製生成物を、カラムクロマトグラフィー(10%MeOH/CHCl3)により精製し、67%の収率で、化合物46(2.04g、8.09mmol)を得た。Rf0.26(10%MeOH/CHCl3)。
【0127】
【化64】
(実施例17)
この実施例は、N−メトキシ−N−メチル−4−(2−ピペリジン−1−イルエトキシ)ベンズアミド(48)の合成を記載する。
【0128】
【化65】
従った手順は、化合物46に関する手順と同一であり、化合物44(2.00g、7.60mmol)、塩酸メチルメトキシアミン(1.15g、11.77mmol)、塩化イソプロピルマグネシウム(11.36mL、2.0M THF)およびTHF(80mL)を用いた。この粗製生成物を、カラムクロマトグラフィー(10%MeOH/CHCl3)により精製し、91%の収率で、化合物48(2.01g、6.88mmol)を得た。Rf0.41(10%MeOH/CHCl3)。
【0129】
【化66】
(実施例18)
この実施例は、2−(4−tert−ブトキシフェニル)−1−[4−(2−ジメチルアミノエトキシ)−フェニル]−3−フェニルペンタ−2−エン−1−オン(50)の合成を記載する。
【0130】
【化67】
THF(10mL)中の臭化ビニル2(200mg、0.556mmol)の溶液を、−78℃にまで冷却し、そしてt−ブチルリチウム(0.69mL、1.16mmol)を添加した。45分間の攪拌後、化合物46(140mg、0.556mmol)を添加し、そして−78℃から室温まで、3時間にわたって攪拌した。この反応を、飽和塩化アンモニウムでクエンチし、クロロホルムで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして減圧下で濃縮した。この粗製混合物を、カラムクロマトグラフィー(10%MeOH/CHCl3)により精製し、10%の収率で、化合物50(22mg、0.0466mmol)を異性体の混合物として得た。Rf0.49(10%MeOH/CHCl3)。
【0131】
【化68】
(実施例19)
この実施例は、2−(4−tert−ブトキシフェニル)−3−フェニル−1−[4−(2−ピペリジン−1−イルエトキシ)−フェニル]ペンタ−2−エン−1−オン(52)の合成を記載する。
【0132】
【化69】
化合物50を調製するために使用される手順に従い、臭化ビニル(200mg、0.556mmol)、THF(10mL)、t−ブチルリチウム(0.65mL、1.11mmol)および化合物48(163mg、0.556mmol)を使用した。この粗製化合物を、カラムクロマトグラフィー(10% MeOH/CHCl3)により精製し、10%の収率で、化合物52を異性体混合物として得た。Rf0.44(10% MeOH/CHCl3)。
【0133】
【化70】
(実施例20)
この実施例は、1−[4−(2−ジメチルアミノエトキシ)−フェニル]−2−(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルペンタ−2−エン−1−オン(54)の合成を記載する。
【0134】
【化71】
50の脱保護について、8および9(実施例4)を調製するために使用したのと同一の手順を使用した。以下の量の試薬を使用した:50(22mg、0.0464mmol)、トリフルオロエタノール(0.34mL)、トリフルオロ酢酸(0.66mL)、およびジクロロメタン(0.66mL)。この粗製生成物を、分取TLC(10%MeOH/CHCl3)を用いて精製し、収率58%で、54を異性体の混合物(11mg、0.265mmol)として得た。Rf0.26(10% MeOH/CHCl3)。
【0135】
【化72】
(実施例21)
この実施例は、2−(4−ヒドロキシ−フェニル)−3−フェニル−1−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−ペンタ−2−エン−1−オン(56)の合成を記載する。
【0136】
【化73】
52の脱保護に関して、8および9(実施例4)を調製するために使用したのと同一の手順を使用した。以下の試薬の量を使用した:52(28mg、0.0547mmol)、トリフルオロエタノール(0.40mL)、トリフルオロ酢酸(0.78mL)、およびジクロロメタン(0.78mL)。粗製生成物を、分取TLC(10%MeOH/CHCl3)を用いて精製し、収率54%で、56を異性体の混合物(13mg、0.286mmol)として得た。Rf0.11(10% MeOH/CHCl3)。
【0137】
【化74】
(実施例22)
この実施例は、以前にまだ同定されていない膜結合エストロゲンレセプターの同定および特性決定、ならびにSERMの同定および評価のためのアッセイを記載する。
【0138】
(SERMのアッセイおよびスクリーニングのための一般的な方法)
雌性Topekaモルモット(400g〜600g)(これらは、Oregon Health Sciences Universityの飼育施設で飼育された)および雌性の多彩なモルモット(400g〜500g、Elm Hill、MA)を使用した。このモルモットを、一定の温度(26℃)および光の下に維持した(06:30〜20:30の間)。動物を個々に収容し、食物と水を無制限に提供した。実験の5日〜7日前に、ケタミン/キシラジン(それぞれ、33mg/kgおよび6mg/kg;皮下)の麻酔薬の下でこの動物から卵巣を摘出し、そしてゴマ油のビヒクル(0.1mL、皮下)を実験の24時間前に上記動物に与えた。血清エストロゲン濃度を、実験日に収集した体幹血液からラジオイムノアッセイにより決定し(Wagnerら、2001)、そして血清エストロゲン濃度は、10pg/mL未満であった。さらなる群の動物(n=6)を卵巣摘出し、そして1週間後に、屠殺の24時間前に、油状物のビヒクル、安息香酸エストラジオール(油状物中に25μg)または化合物8(実施例4、油状物中に25μg)を注射した。
【0139】
これらの研究において、野生型C57BL/6マウスを、Jackson Laboratoriesから得た。すべての動物を、制御温度(25℃)下で維持し、そして光周期の条件(14時間の明期、10時間の暗期;明期は、0700〜2100)で維持し、食物および水を無制限に提供した。成熟マウスを、イソフルラン麻酔の下で卵巣摘出し、そして1週間回復させた。この時点で、この動物に、2日間、油状物ビヒクル、安息香酸エストラジオール(EB;1μg)または化合物8(2μgもしくは5μg)を注射し、麻酔をかけ、そして24時間後に、断頭により殺した。後の組織学的分析のために、子宮を収集し、秤量し、4%のパラホルムアルデヒドで固定した(データは示さず)。
【0140】
(市販薬物:)
薬物は、他に明記しなければ、Calbiochem(LaJolla,CA,USA)より購入した。テトロドトキシン(TTX;Alomone、Jerusalem,Israel)を、Milli−Q H2O中に溶解し、そして0.1%の酢酸でさらに希釈した(最終濃度1mM;pH4−5)。17β−エストラジオール(17β−エストラジオール)を、Steraloids(Wilton,NH,USA)より購入し、再結晶して純度を確保し、そして100%エタノール中に溶解して、ストックの濃度を1mMにした。17α−エストラジオール(1mM、Steraloids)、抗エストロゲン:ICI 182,780(10mM,Tocris Cookson,Ballwin,MO)、および選択的エストロゲンレセプターモジュレーターである4−OH−タモキシフェン(10mM、Steraloids)、ラロキシフェン(10mM、Eli Lilly、Indianapolis,IN)ならびに化合物8(10mM)をまた、100%のエタノール中に溶解した。17β−エストラジオール、17−ヘミコハク酸:BSA(17β−エストラジオール−BSA、1mM、Steraloids)をH2O中に溶解した。プロテインキナーゼAのインヒビター、H−89二塩酸塩(10mM)、プロテインキナーゼAの活性化剤であるフォルスコリン(50mM)、プロテインキナーゼCのインヒビターである塩酸ビスインドリルマレイミドI(BIS、100μM)、Gou6976(2mM)、およびロッテリン(rottlerin)(10mM)、ホスホリパーゼCインヒビターであるU73122(20mM)、より活性の低いアナログU73343(20mM)およびMEK1インヒビターであるPD98059(50mM)を、DMSO中に溶解した。プロテインキナーゼA抑制性ペプチドである6−22 Amide(1mM)、プロテインキナーゼAインヒビター:Rp−cAMPS(50mM)、およびコレラトキシンAサブユニット(1μg/μL)を、H2O中に溶解した。GqのαサブユニットのC末端を模倣するように設計されたGq結合タンパク質、およびGsのαサブユニットのC末端を模倣するように設計されたGsのα結合タンパク質を、PeptidoGenic Research(Livermore,CA)により合成した。Gqペプチドのペプチド配列は、Ac−LGLNLKEYNLV−OHであり、そしてGsペプチドのペプチド配列は、CRMHLRQYELLであった。このペプチドはまた、H2O中に溶解した。BAPTAテトラナトリウム塩(1,2−ビス−(o−アミノフェノキシエタン)−N,N,N’,N’−四酢酸)を、10mMの濃度にて、内液(internal solution)中に溶解した。ストック溶液のアリコートを、必要とされるまで十分貯蔵した。
【0141】
(統計学的分析:)
一元分散分析(およびpost hoc(Newman−Keuls)対分析(paired analysis))を用いて、群間の比較のための統計的分析を行った。誤差の可能性が5%未満である場合、偏差を統計上有意であるとみなした。
【0142】
(組織の調製:)
実験日に、この動物を断頭し、この動物の脳を頭蓋から除去し、そして視床下部を解剖した。得られた視床下部のブロックを、プラスチックの切断プラットフォーム上に載せ、次いで、このプラスチックの切断プラットフォームを、氷冷し、酸素付加(95% O2、5% CO2)した人工脳脊髄液(aCSF、mM単位:NaCl、124;NaHCO3 26;デキストロース、10;HEPES、10;KCl,5;NaH2PO4、2.6;MgSO4、2;CaCl2,1)で十分に満たしたビブラトーム中に固定した。弓状物を通して、冠状の切片(350μm)4枚に切り取った。このスライスを、酸素付加したaCSFを含有するマルチウェル補助的チャンバーに移し、そして約2時間後の電気生理学的記録まで、そこに維持した。
【0143】
(電気生理学:)
電圧クランプにおける細胞全体パッチ記録を、以前に記載されたように遂行した(Wagnerら、2001)。手短に言えば、スライスを、暖め(35℃)、酸素付加したaCSFで灌流されたチャンバー中に維持し、この酸素付加したaCSFは、同一の成分および各々の濃度(CaCl2を除く。CaCl2の濃度は、2mMまで上昇した)を含有した。人工的なCSF(aCSF)およびあらゆる薬物溶液を、1.5mL/分の速度で蠕動ポンプを介して灌流した。aCSFを含む十分なストック溶液で希釈することにより、薬物溶液を20mLのシリンジ中に調製し、そしてこの流れを、三方コックを介して制御した。
【0144】
細胞全体の記録のために、電極をホウケイ酸ガラスから組み立てた(World Precision Instruments,Inc.Sarasota,FL,USA;1.5mm O.D.)。次いで、組み立てた電極を、内液(0.5%のビオシチンを含有し、以下(mM単位):K+、グルコン酸、128;NaCl、10;MgCl2、1;EGTA、11;HEPES、10;ATP、1.2;GTP、0.4からなり;pHを、1NのKOHで7.3−7.4に調節し;272〜315mOsm)で満たした。Axopatch 1D前置増幅器(Axon Instruments,Union City,CA)を使用して、電圧のパルスを増幅し、そして電極を通過させた。生じた電流の偏位を、デジタルオシロスコープ(Tektronix 2230、Beaverton,OR,USA)を用いてモニタリングした。電流の偏位(deflection)の減少の際に、ポリエチレンチューブにより電極に接続された5mLのシリンジを介して陰圧を付与し、シール(>1GΩ)を形成した。シールの形成に続いて、吸入、これに続いて、少なくとも4分間〜6分間の、1μM TTXの灌流により、細胞内アクセスを達成し、自発発火(spontaneous firing)およびシナプス性電位をブロックし、その後、GABABレセプターアゴニストであるバクロフェンを適用した(図1)。バクロフェンに対するすべての応答を、外向き電流(V保持=−60mV)として電位クランプ中で測定し、そして記録中ずっとアクセス抵抗が10%未満の変化を示した細胞(アクセス抵抗は、20MΩ〜30MΩの範囲であった)のみを本研究に包含した。膜電流は、pClamp7.0(Axon Instruments,Union City,CA)に結合されたDigidata 1200インターフェースを介してアナログ−デジタル転換を経た。この電流の低パスフィルタリングを、2KHzの周波数で行った。液間の電位は、−10mVであり、そして後のデータ分析のために較正した。
【0145】
(視床下部弓状ニューロンのPost−hoc同定:)
電気的生理学的記録に続いて、このスライスを、Sorensen’sリン酸化緩衝液(pH7.4)中で120分間、4%のパラホルムアルデヒドで固定し、Sorensen’sリン酸化緩衝液に溶解した20%のスクロース中で一晩液浸し、次いで、O.C.T.包埋媒質中で凍結し、そして免疫細胞学に関して、前に記載されたように調製した(KellyおよびRonnekleiv、1994)。手短に言えば、冠状断面(20μm)を低温槽上で刻み(Leitz Model 1720Digital Cryostat)、そしてFisher SuperFrost Plusスライドの上に載せた。断面を、0.1Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)で5分間洗浄し、次いで、ストレプトアビジン−Cy2(Jackson ImmunoResearch Laboratories,PA)(1:1000)を2時間適用した。この反応を、緩衝液で洗浄することにより終了した。このスライスをNikon Eclipse 800蛍光顕微鏡(Nikon Instruments,Melville,NY)を用いて、注射ニューロンについてスキャンした。ビオシチンで満たしたニューロンの位置確認の後、適切な断片を含むスライドを、蛍光免疫組織化学を用いて、以前に記載のようにチロシンヒドロキシラーゼ(TH)またはβ−エンドルフィンの存在について調査分析した(KellyおよびRonnekleiv、1994)。手短に言えば、ビオシチン同定ニューロン有する断面を、モノクローナルTH抗体(1:10,000)(Diasorin,Stillwater,MN)またはポリクローナルβ−エンドルフィン抗体(1:5,000)(Daveら、1985)と一緒に一晩インキュベートし、0.1Mのリン酸緩衝液で洗浄し、続いて、それぞれヤギ抗マウスIgG−Cy3(1:500)またはロバ抗ウサギIgG−Cy3(1:500)(Jackson ImmunoResearch Laboratories,PA)とともにインキュベートした。断面を、リン酸ナトリウム緩衝液で洗浄し、そして5%のN−プロピル没食子酸塩を含有するグリセロールグリシン緩衝液を使用して、カバーガラスをつけた。免疫染色した細胞を、Nikon顕微鏡を用いて撮影した。図2を参照のこと。
【0146】
(エストロゲンレセプター結合アッセイ:)
エストロゲンレセプター(ER)αおよび(ER)βに対する化合物の相対的な結合親和性を、市販された全長形態の(ER)αおよび(ER)β(PanVera Corp,Madison,WI,USA)の両方と一緒に、スピンカラムアッセイを用いて決定した。溶液の最終濃度が15nMになるようにレセプターを4℃で添加した(この溶液は、10mM Tris,pH7.5,10% グリセロール、2mM DTTおよび1mg/mL BSAならびに3nM[2,4,6,7,16,17−3H]エストラジオールを含有した)。この溶液の100μLを、エタノール中のリガンド(1μL)に添加し、ピペッティングにより穏やかに混和し、そして4℃で一晩インキュベートした。次いで、この混合物を、G−25 Sephadex(Harvard Apparatus Inc.)を含有するミクロスピンカラムへと適用し、このカラムを、製造業者の指示に従って、結合緩衝液(トリチウム化したエストラジオールは含まず)で平衡化した。結合されたエストラジオールを、2000×gで4分間、室温でスピンすることにより、遊離リガンドから単離した。次いで、この濾液を、2.5mLのシンチラント(scintillant)に添加し、そして液体シンチレーションカウンターで計測した。結合曲線を、Prism(GraphPad Software,San Diego,CA)統計分析ソフトウェアパックを用いた単結合部位競合モデルとフィットさせた。EC50値から、標準偏差を、0.2log単位未満であると決定した。次いで、相対的な結合親和性の百分率を、未標識のエストラジオールに対して決定されたIC50を、リガンドのIC50で除し、そして100を乗じることにより、決定した。
【0147】
(分散した単一細胞RT−PCR:)
モルモットの350μmの冠状視床下部スライスを、尾から吻にまで、ビブラトーム上で刻み、酸素付加したaCSFを含有する補助的チャンバー中に置いた。このスライスを、分散の前にチャンバー中で1時間〜2時間回復させた。視床下部の弓状核を、顕微解剖し、そして2−3mLのHank平衡塩類溶液(HBSS(mM単位);1mg/mLのプロテアーゼXIVを含有するDEPC−処理した水(Sigma、St.Louis,MO)中の、CaCl2、1.26;MgSO4、1;KCl,5.37;KH2PO4、0.44;NaCl、136.89;Na2HPO4、0.34;D−グルコース、5.55;Hepes,15)2−3mL中で、約15分間、37℃でインキュベートした。次いで、この組織を1容積の低カルシウムaCSFで4回洗浄し、そしてHBSSで2回洗浄した。この細胞を、火であぶって清潔にした(flame−polished)パスツールピペットを用いたすりつぶし(trituration)により単離し、ディッシュ上に分散し、そして連続的にHBSSで1.5mL/nの速度で灌流した。細胞を、Nikon倒立顕微鏡を用いて可視化し、そして個々のニューロンをパッチし、そして陰圧を付与することによりパッチピペット中に収集した。このピペットの中身を、シリコン化微小遠心用チューブへと発射し、このシリコン化微小遠心用チューブは、5μLの以下の溶液:0.5μLの10×緩衝液(100mMのTris−HCl、500mM KCl、1% Triton−X 100;Promega,Madison,WI)、15U RNasin(Promega)、0.5μL 100mM DTTおよびDEPC−処置水を含有した。
【0148】
さらに、視床下部の組織を、ホモジェナイズし、そして全RNAを、製造業者のプロトコールに従ってRNeasyキット(Qiagen、Valencia,CA)を用いて抽出した。収集した細胞溶液および25ngの視床下部全RNA(1μL)を、5分間65℃で変性させ、5分間氷上で冷却し、次いで、50U MuLV逆転写酵素(Applied Biosystems,Foster City,CA)、1.5μLの10×緩衝液、2mMのMgCl2、0.2μLのデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)、15UのRNasin、10mMのDTT、100ngのランダムヘキサマーおよびDEPC処理水を最終容積が20μLになるように添加することにより、一本鎖cDNAを細胞のRNAから合成した。ネガティブなコントロールとして使用される細胞のRNAおよび組織のRNAを、上記のように処理したが、逆転写酵素はなしにした。この反応混合物を、42℃で60分間インキュベートし、99℃で5分間変性させ、そして氷上で5分間冷却した。
【0149】
PCRを、各RT反応からのcDNAテンプレート(3μL)を用いて、PCR反応容積を30μLにして実行し、このPCR反応容積(30μL)は、3μLの10×緩衝液、2.4μLのMgCl2(TH、POMC、GABAB−R2、PKCδ、アデニリルシクラーゼVIIおよびGAPDHのために、最終濃度2mM)、または3.6μLのMgCl2(GADのために最終濃度3mM)、0.2mM dNTP、0.2μMのフォワードプライマーおよびリバースプライマー、2ユニットのTaq DNAポリメラーゼ(Promega)、ならびに0.22μgのTaqStart Antibody(Clontech,Palo Alto,CA)を含有した。Taq DNAポリメラーゼおよびTaqStart Antibodyを合わせ、室温で5分間インキュベートし、反応内容物の残りをチューブに添加し、そして94℃で2分間インキュベートした。次いで、各反応を、60サイクル(GAPDHに関しては、35サイクル)の増幅を、以下のプロトコール:94℃、45秒;55℃(GAD)、57℃(PKCδ)、58℃(GABAB−R2)、60℃(THおよびアデニリルシクラーゼVII)、61℃(POMC)、63℃(GAPDH)45秒;72℃、1分10秒;最終72℃で5分間伸張、に従って行った。10マイクロリットルのPCR生成物を、エチジウムブロマイドを用いて、1.5%のアガロースゲル上で可視化した。
【0150】
プライマーはすべて、Invitrogen(Carlsbad,CA)により合成し、以下の通りであった;モルモットGAD65;207bp生成物、フォワードプライマー
【0151】
【化75】
リバースプライマー
【0152】
【化76】
モルモットTH;223bpの生成物、フォワードプライマー
【0153】
【化77】
リバースプライマー
【0154】
【化78】
モルモットGABAB−R2;241bpの生成物、フォワードプライマー
【0155】
【化79】
リバースプライマー
【0156】
【化80】
モルモットPOMC(登録番号S78260);344bpの生成物、フォワードプライマー(塩基40〜塩基60)
【0157】
【化81】
リバースプライマー(塩基383〜塩基363)
【0158】
【化82】
モルモットGAPDH;212bpの生成物(登録番号CPU51572)、フォワードプライマー
【0159】
【化83】
リバースプライマー
【0160】
【化84】
。ヒトのプロテインキナーゼCδ;251bpの生成物(登録番号L07861)フォワードプライマー(塩基1127〜塩基1147)
【0161】
【化85】
リバースプライマー(塩基1377〜塩基1357)
【0162】
【化86】
。モルモットのアデニリルシクラーゼVII;235bpの生成物、フォワードプライマー
【0163】
【化87】
リバースプライマー
【0164】
【化88】
。
【0165】
(17β−エストラジオールおよびSERMは、視床下部ドパミンニューロンおよびプロ−オピオメラノコルチン(POMC)ニューロンにおいて、迅速にGABAB応答を減衰する)
以下のデータは、17β−エストラジオールおよびSERMが、視床下部ニューロンにおいて、迅速にバクロフェン誘導型GABAB応答を減衰することを示し、これは、これらの化合物が、非転写性の事象を通して神経伝達に影響することを示す。細胞全体の記録を、卵巣摘出された雌性モルモットの弓状ニューロン(n=195)について作成した。図1は、細胞全体パッチ、電圧クランプ研究(V保持=−60V)における、薬物投与のプロトコールを例示するための図である。シールが形成され、そして細胞全体の立体配置が得られた後、スライスをTTX(1μM)で5分間灌流した。第1のGABABレセプター媒介性応答を、(EC50濃度50μMにて)GABABアゴニストのバクロフェンを灌流することにより生成し、ついに、安定状態の外向き電流を得た(第1の応答、R1)。バクロフェンの洗浄の後、この電流は、薬物投与前の静止レベルにまで回帰した。次いで、この細胞を、17β−エストラジオールおよび/または他の薬物で15分間処理し、そしてバクロフェン(5μM)で再度灌流し、そして第2の応答(R2)を測定した。17β−エストラジオールおよび/または他の薬物のバクロフェン応答に対する効果を、R2/R1のパーセントとして表現する。これらのニューロンのサブグループ(n=55)を、二重標識免疫細胞学を用いて同定した(データおよび画像は示さず)。これで、上記細胞の41%がTH−ポジティブ(すなわち、ドパミンニューロン)であり、そして39%がβ−エンドルフィン−ポジティブ(すなわち、POMCニューロン)であることがわかった。さらに、GAD65の、二重免疫細胞学的染色およびインサイチュのハイブリダイゼーションに基づき、弓状ドパミンニューロンのサブグループは、GABAを共発現し(Ronnekleiv、未公開の知見)、これは、scRT−PCRのデータ(以下を参照)により立証した。電気生理学的分析のために、GΩのシールまたはよりよいシールを有する細胞のみをこの研究に含めた。平均的な静止膜電位が、0pAの保持電流で、−54.3±0.4mVであり、そして平均的な入力抵抗は、1.9±0.3GΩであった。さらに、A12ドパミンニューロンの50%は、T型のCa2+電流および過分極活性化された、カチオン電流(Ih)(Looseら、1990)を示した。POMCニューロンの71%が、Ihおよび一時的な外向きK+電流(IA)(Kellyら、1990)を示した。従って、細胞全体のパッチの記録を用いて測定される受動的な膜の特性は、単一の電極電位クランプ記録を用いて得られる結果に類似する(Looseら、1990;Kellyら、1990)。
【0166】
細胞全体の記録方法を使用して、GABABレセプターアゴニストのバクロフェンによる、17β−エストラジオールのGタンパク質共役型内向き整流性K+チャネル(GIRK)のコンダクタンスの活性化に対する迅速な効果を測定した。17β−エストラジオールは、視床下部の弓状ニューロンにおいて、オピオイドレセプター媒介性の応答およびGABABレセプター媒介性の応答の両方を迅速に減衰する(Lagrangeら、1994;Lagrangeら、1996;Lagrangeら、1997)。従って、GABAB応答の17β−エストラジオールのモジュレーションを測定するために、図1に記載のプロトコールに従って、バクロフェンのEC50濃度(5μM)を用いた。強固な外向き電流を、バクロフェンに対する応答(これは、洗い流し後に弱まる)において測定した(図5のグラフAおよび図6)。バクロフェンの適用により、20分後に、同一の強固な応答が生起し、これは、脱感作およびランダウンが5μMのバクロフェンの連続的な適用に応答して生じないことを示した。しかし、17β−エストラジオール(100nM)を、暫定期間の間に(すなわち、第1のバクロフェンの適用の洗い流し後)適用した場合、バクロフェンの第2の適用に対する応答の、41%の有意な減少があった(p<0.005)(図5のグラフBおよび図6)。100nMの17β−エストラジオールの適用の前またはその間に生じた電流/電圧の関係は、このステロイドが、バクロフェン媒介性の応答についての逆の電位を変化させないことを示した:コントロールEバクロフェン=−88.8±3.6mV、n=13;これに対し、100nMの17β−エストラジオールの適用の後のEバクロフェン=−85.4±3.9mV、n=12(図3Aおよび図3B)。17β−エストラジオールの作用は、立体特異的であったので、その結果、生物学的に不活性な立体異性体である17β−エストラジオール(100nM)は、バクロフェンの応答にまったく効果がなかった(図5のグラフCおよび図6)。さらに、17β−エストラジオールとともに灌流した場合、17β−エストラジオールの作用を、抗エストロゲンICI182,780によりブロックした(図6)。ICI182,780のみを用いた処置では、バクロフェン応答にまったく効果がなかった(データは示さず)。
【0167】
この以前に同定されていなかったエストロゲンレセプターを、膜不透過性エストロゲン結合体である17β−エストラジオール−BSAを用いることにより、膜結合していると決定した。17β−エストラジオール−BSA(100nM)は、バクロフェン応答を阻害するのに十分に有効であって、これは、このエストロゲンレセプター媒介性の応答が原形質膜で開始されることを示唆する(図5のグラフDおよび図6)。17β−エストラジオール−BSAの調製の完全性を、このスライスの灌流液の17β−エストラジオールのラジオイムノアッセイを行うことにより、立証した。未結合の17β−エストラジオールは、この媒体中には検出されず(データは示さず)、これは、17β−エストラジオール−BSA結合体が、遊離17β−エストラジオール不純物を含まないことを示唆した。
【0168】
以前に同定されていない、膜結合エストロゲンレセプターを、いくつかのSERMを用いることにより特徴付けた。タモキシフェン(1μM)は、不活性(コントロールとの比較においてp>0.05)であり、そしてGIRKのバクロフェン活性化の際に17β−エストラジオールの効果を減衰しなかった(17β−エストラジオールについてのR2/R1:58.6±3.4%、n=10;それに対して、タモキシフェン+17β−エストラジオール:60.4±6.6%、n=5)。しかし、4−OHタモキシフェン(1μM)は、バクロフェン応答を25%だけブロックすることにより、17β−エストラジオールの作用を部分的に模倣した(図6)。図6に関して、17β−エストラジオール(100nM)は、GABABレセプター媒介性外向き電流を41%だけ減衰した。17β−エストラジオールのバクロフェン応答に対する阻害的作用を、エストロゲンレセプターアンタゴニストICI182,780(1μM)によりブロックした。ウシ血清アルブミンに結合したエストロゲン(17β−エストラジオール−BSA、100nM)、4−OHタモキシフェン(1μM)、ラロキシフェン(1μM)、GW5638(1μM)および化合物8(10nM)はまた、バクロフェン応答を阻害したが、17α−エストラジオール(1μM)は、効果なしであった。バーは、群ごとに試験された4個〜11個の細胞の平均値±S.E.M.を表す(***p<0.005、**p<0.01、*p<0.05、これに対して、ビヒクル−コントロール群)。4−OHタモキシフェンは、常にオレフィン異性体のE/Z混合物として存在するので(Katzenellenbogenら、1985)、これらの異性体のうち一方のみが、この新規のエストロゲン応答を媒介するのに活性であり得る。ラロキシフェン(1μM)(ヒドロキシル化された芳香族環を有する別のSERM)は、バクロフェン応答を抑制する効力という観点で完全に17β−エストラジオールの作用を模倣した(図6)。これに対して、ヒドロキシル化されていないSERMであるGW−5638(これは、構造的にタモキシフェンのトリフェニルエチレンのコア部分に類似する)は、バクロフェンによるGIRKチャンネルの活性化を阻害するのに17β−エストラジオールよりも有意に効力があることを見出した(図6)。
【0169】
(化合物8は、迅速な応答を選択的に減衰させる核内ER活性を欠くSERMである:)
上に言及される化合物のすべては、核内エストロゲンレセプターに対して、親和性の高いリガンドであり、これは、観察上の薬理学(observed pharmacology)の解釈を複雑にし、核内エストロゲンレセプターについての役割をはっきりと排除することを困難にする。しかし、化合物8(実施例4)は、核内エストロゲンレセプター(ER)αまたはERβについての結合親和性が、17β−エストラジオールのそれに比して約100万分の1に低下している(表1)。さらに、4−OHタモキシフェンとは異なり、化合物8は、幾何的に(geometrically)安定であり、そしてE/Zオレフィン異性体の混合物としては存在しない。さらに、化合物8は、17β−エストラジオールの用量の5倍でも、対子宮作用がまったくなく(図6Aおよび図6B)、8が、核内エストロゲンレセプターにより媒介される4−OHタモキシフェン様エストロゲン活性を有さないことをインビボで確証づける。しかし、細胞全体の電気生理学的アッセイにおいて、10nMの8は、100nMの17β−エストラジオールと同程度に、上記GABAB応答を減衰させるのに有効であった(図6)。
【0170】
【表1】
(17β−エストラジオールのGABAB応答に対する迅速な作用は、プロテインキナーゼA(PKA)を必要とする:)
17β−エストラジオール媒介性の、GABABの調節において、特定のシグナル伝達タンパク質の関与することを、異なる経路をブロックすることにより決定した。例えば、PKA経路の活性化が必要とされるならば、17β−エストラジオールのGABAB応答に対する効果は、PKAの阻害によりブロックされるべきであり、PKAの刺激により模倣されるべきである。従って、選択的なPKAインヒビターおよび選択的なPKA活性化剤を、PKAが関与していることを示すために使用した。例えば、図8のグラフAおよび図9に示されるように、フォルスコリン(10μM)は、17β−エストラジオールの作用を模倣し、GABABの応答を減衰し得る。他方で、特定のPKAインヒビターH89(10μM)は、17β−エストラジオールが誘導する、GABAB応答の抑制をブロックした(図8のグラフBおよび図9)。
【0171】
GABAB応答の17β−エストラジオールのモジュレーションにおけるPKAの関与を、ニューロン上でのPKAの活性化をブロックする特定のPKA阻害性ペプチドPKI(プロテインキナーゼAインヒビターである、6−22アミド、20μM)または加水分解不可能なcAMPアナログであるRp−cAMP(200μM)の作用によりさらに確証づけた。PKIまたはRp−cAMPを用いた透析の約15分後に、17β−エストラジオール誘導型のGABAB応答の低減が台無しになった(図8のグラフCおよび図9)。vibrio choleraeにより分泌される細菌体外毒素であるコレラトキシン(CTX)は、Gタンパク質GsをADP−リボシル化し、これにより明らかに不可逆的な様式でアデニリルシクラーゼの活性を刺激化することにより、種々の組織中での細胞内cAMPレベルを高める。CTXの活性ユニットを用いた、個々の細胞への細胞内透析は、GABAB応答のエストロゲンによる迅速な阻害を遮断した(図8のグラフDおよび図9)。これらの結果は、GABAB応答の17β−エストラジオールによる抑制が、PKAの活性化を必要とすることを示唆する。図9は、試験されたPKA薬物の効果の概要を述べている。このPKA活性化剤のフォルスコリンは、17β−エストラジオールの効果を模倣し得、特定のPKAインヒビターである、H89(10μM)、Rp−cAMPSおよびPKAIは、この作用をブロックし得る。CTX−Aは、17β−エストラジオールによるバクロフェン応答の減衰を遮断し得るが、変性したCTX−Aは、遮断し得ない。バーは、群ごとに試験された4個〜11個の細胞の平均値±S.E.M.を表す(***p<0.005、*および#p<0.05、これに対し、ビヒクルのコントロール;CTX−A+17β−エストラジオール対変性したCTX−A+17β−エストラジオール、p<0.05)。
【0172】
(GABAB応答の減衰は、プロテインキナーゼCδ(PKCδ)を必要とする:)
数個の選択的PKCインヒビターの効果により示されるように、PKCはまた、17β−エストラジオールの、GABAB応答のモジュレーションに関与している。第1のインヒビター、ビスインドールマレイミド(BIS)は、従来の形態のPKCと、新規の形態のPKCと、異常な形態のPKCとの区別をしない、PKCの選択的インヒビターである。第2に、Gou6976は、従来のPKC異性体の選択的なインヒビターである(Martiny−Baronら、1993;Wayら、2000)。BISを用いたニューロンの処置により、17β−エストラジオールの効果がほぼ排除された(図10のグラフAおよび図11)。対照的に、Gou6976の処置は、効果なしであった(図11)。実際に、細胞内EGTAを10mMの1,2−ビス−(o−アミノフェノキシエタン)−N,N,N’,N’−四酢酸(BAPTA)(EGTAと類似のCa2+親和性を有するが速度がずっと速いカルシウム緩衝液)で置き換えた後でも、GABAB応答のエストロゲン阻害がさらに観察された(図10のグラフBおよび図11)。PKCの従来の異性体は、このレベルのカルシウム緩衝液を用いれば、活性である可能性が低いので、これらの結果は、エストロゲンの作用を媒介する際の、Ca2+非依存性の新規のPKC異性体の役割をさらに支持する。最終的に、選択的PKCδインヒビターであるロッテリン(5μM)は、17β−エストラジオールの、視床下部のニューロンにおいてGABAB応答を阻害する能力を完全にブロックした(図10、グラフCおよび図11)。図11は、試験されたPKCインヒビターの効果の概要を述べている。バーは、群ごとに試験された4個〜11個の細胞の平均値±S.E.M.を表す(***p<0.005、**p<0.01、*p<0.05、これに対して、ビヒクル−コントロール群)。
【0173】
(17β−エストラジオールによるGABAB応答の阻害は、Gαqを必要とする:)
さらなる結果は、17β−エストラジオールによるバクロフェン誘導型GABAB応答の阻害がメッセンジャータンパク質Gαqを必要とすることを示している。特定のPKCインヒビターであるBISは、17β−エストラジオールの作用をブロックするが、フォルスコリン(10μM)は、BIS遮断の存在下でエストロゲンの効果を模倣することを見出した(図10のグラフDおよび図11)。従って、PKCの作用は、PKAの活性の上流である。実際に、GABAB応答のエストロゲンレセプター媒介性阻害は、GαqのC末端結合部位を模倣するペプチド(11アミノ酸)で弓状ニューロンを処置することにより示されるように、Gαqの活性化に依存する(Akhterら、1998)。このペプチドは、Gタンパク質共役型レセプターとGαqタンパク質との相互作用をブロックする。このペプチド(200μM)で透析した細胞(図12のグラフAおよび図13)では、上記17β−エストラジオール媒介性のGABAB応答の低減が、GαsのC末端ドメインを模倣するコントロールのペプチド(11アミノ酸)で透析された細胞(図12のグラフBおよび図13)と比較した場合、有意にブロックされた。従って、Gαqは、17β−エストラジオール媒介性の迅速な阻害に主要な役割を果たす。
【0174】
さらに、ホスホリパーゼC(PLC)の活性化(ホスホリパーゼCは、周知のGαqエフェクターである)もまた、役割を果たす。実際に、PLCβの活性化は、広汎なスペクトルのPLCインヒビターであるU73122(10μM)を用いたニューロンの処置により示されるように、GABAB応答のエストロゲン誘導型阻害に必要とされている。U73122(10μM)を、細胞外沐浴培地中で灌流した場合、エストロゲン媒介性GABAB応答の低減をブロックした(図12のグラフCおよび図13)が、より活性の低いPLCインヒビターであるU73343は、同一濃度でまったく効果なしであった(図12のグラフDおよび図13)。図13に関して、バーは、群ごとに試験された4個〜11個の細胞の平均値±S.E.M.を表す(***p<0.005、**p<0.01、これに対して、ビヒクル−コントロール群;U73122+17β−エストラジオール対U73343+17βエストラジオール、p<0.05;Gqペプチド+17β−エストラジオール対Gsペプチド+17β−エストラジオール、p<0.05)。
【0175】
(GABAB応答の減衰は、マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼを必要としない)
MAPキナーゼ活性の阻害は、バクロフェン応答のエストロゲンモジュレーションを妨害しない。最近の研究により、初代ニューロン性皮質培養物(neuronal cortical culture)において、そして器官型の大脳皮質外植片培養物において、17β−エストラジオールが迅速にMAPキナーゼ経路を活性化することがわかった(Watterら、1997;Singhら、1999;Singhら、2000)。しかし、MAPキナーゼのインヒビターであるPD98059(10μM,ピペット中)またはU0126(5μM)を用いた処理は、バクロフェン応答の17β−エストラジオール阻害に影響しなかった(17β−エストラジオールについてのR2/R1;58.6±3.4%、n=10;これに対して、PD98059+17β−エストラジオール:66.1±11.8%、n=5)。
【0176】
(弓状(GABA、ドパミン、およびPOMC)ニューロンにおける、GABABレセプター、PKCδおよびアデニリルシクラーゼVIIの転写物の発現)
弓状ニューロンにおける、GABABレセプター、PKCδおよびアデニリルシクラーゼVIIの転写物の発現を、75個の弓状に分散した弓状ニューロンから、単一細胞RT−PCRを用いて決定した。結果により、このニューロンの90%(TH発現ニューロンおよびPOMC発現ニューロンを含む)が、GAD65転写物を発現することが判明した(データは示さず)。最も重要なことには、このニューロンの92%が、GABABR2転写物を発現し、これがバクロフェンの応答速度の90%に相関する。さらに、単一細胞RT−PCRの結果により、ドパミンニューロンおよびPOMCニューロンが、PKCδ転写物およびアデニリルシクラーゼVII転写物を発現することが判明している。一群の細胞(n=22)では、PKCδおよびアデニリルシクラーゼVIIの転写物は、大多数(70%)のTHニューロンで発現された(GAD65を共発現するものを含む)(図14A)。THおよびGADは、この母集団のニューロンの60%において共局在した。個々のニューロンに由来するcDNAの量に限りがあるために、POMCの発現を、別の群の細胞(n=29)で決定し、これにより、PKCδおよびアデニリルシクラーゼのVII転写物が、POMCニューロンの大多数(75%)で発現した(GAD65を共発現するものを含む)ことがわかった(図14B)。POMCおよびGADは、この母集団のニューロンの28%において共局在した。従って、上記単一細胞のRT−PCRのデータにより、ドパミンニューロンおよびPOMCニューロンが迅速なエストロゲンシグナル伝達のための重要な転写物を発現するという電気生理学的知見が確証される。GAPDH転写物を、逆転写酵素(RT)反応に関して、内部コントロールと同一の細胞で分析した。一つの細胞は、ネガティブコントロール(−RT)として、RTを含まなかった。基礎の視床下部組織(basal hypothalamic tissue)(組織コントロール、+)のRNAはまた、RTの存在下で逆転写された。RTなし(−)の組織コントロールを、各試行に含めた。さらに、以下のコントロールを含めた;分散された細胞ミリューおよび水ブランクからのHank平衡塩類溶液(HBSS)(これらは、RT−PCRに従えば(データは示さず)、両方ともネガティブであった)。
【0177】
(独特の膜エストロゲンレセプターは、17β−エストラジオールの迅速な効果を媒介する)
前述の結果は、膜エストロゲンレセプターが同定されたことを示している。例えば、エストロゲンは、GABABレセプターアゴニストであるバクロフェンの作用を抑制し、GABAニューロン、POMCニューロンおよびドパミンニューロンにおけるGIRKチャンネルを活性化する。この17β−エストラジオールの作用は迅速であり、17β−エストラジオールの添加の数分以内に、測定可能な抑制が生ずる。この応答の動態は、古典的な核内エストロゲンレセプターである、(ER)αまたは(ER)βのうちの一つ(これらは、転写調節により作用する)ではなく、膜17β−エストラジオールレセプターによる応答の仲介を示唆する。
【0178】
この迅速なエストロゲン応答について観察される薬理学は、新規の膜貫通エストロゲンレセプターの関与をさらに支持する。この膜不透過性の17β−エストラジオール−BSA結合体は、膜結合レセプター(このレセプターのホルモン結合部位は、原形質膜の細胞外表面からアクセス可能である)について期待されているように、遊離17β−エストラジオールに対して同一の応答を与える。この17β−エストラジオールの応答は、D−環のヒドロキシル基の立体配置に関して、立体特異的である;17β−エストラジオールは、迅速な応答を惹起する一方で、17α−エストラジオールは、不活性である。これは、注目に値する。なぜなら、17α−エストラジオールは、17β−エストラジオールと比較して効力がわずかに減少したにもかかわらず、核内エストロゲンレセプターのアゴニストとして機能するからである(Barkhemら、1998)。SERM 4−OHタモキシフェン、ラロキシフェン、およびGW−5638はすべて、この応答を媒介する際に、17β−エストラジオールのように振舞う一方、上記ステロイド性抗エストロゲンICI−182,780は、17β−エストラジオール応答をアンタゴナイズする。最も重要なことに、核内エストロゲンレセプターに関して、エストロゲン活性を欠く(すなわち、抗エストロゲン活性の)新規のSERM8は、17β−エストラジオールよりも強力な、この迅速な17β−エストラジオール応答の活性化剤であり、10分の1の濃度でも、17β−エストラジオールよりも強力である。さらに、この膜ERは、薬理学的(Schild)分析により示されるように、エストロゲンに対して、ナノモル濃度未満(subnanomolar)の親和性を有する(Lagrangeら、1997)。これらの結果は、この迅速な応答の薬理学が異なり、そして8の場合には、核内エストロゲンレセプターのものと分離可能であることを実証している(Razandiら、1999;Levin、2001;ChamblissおよびShaul,2002)。
【0179】
最近、Toran−Allerandおよびその同僚(Toran−Allerandら、2002)が、高親和性の飽和可能なエストロゲンレセプター、「ERX」を同定しており、このERXは、発達中の新皮質ニューロンにおけるキャベロア(caveloar)様の微小ドメインに結合する。この膜結合レセプターは、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)、細胞外シグナル関連キナーゼ(ERK)1およびERK2の活性化と共役しており、これらは、ニューロンの発達および生存にとって重要であると考えられる(Wattersら、1997;Singhら、1999;Singhら、2000;Fitzpatrickら、2002)。ERXはまた、MAPキナーゼ経路を活性化するのに17α−エストラジオールが17β−エストラジオールと効力が等しいという点で、特有の薬理学を有する(Toran−Allerandら、2002;Wadeら、2001)。しかし、本明細書中に述べられているように、17α−エストラジオールについては、GABAB応答に関しても、μ−オピオイド応答に関しても、効力が観察されなかった。このμ−オピオイド応答は、視床下部ニューロンにおいて、GIRKのチャンネルの同一のファミリーに共役している(Lagrangeら、1997)。同様に、GuおよびMoss(GuおよびMoss、1996)は、17α−エストラジオールが、海馬のCA1錐体状ニューロンにおいて、17β−エストラジオールのグルタミン酸塩(カイニン酸塩)媒介性の電流を増強する作用を模倣しないことを発見した。同様に、Mermelsteinら(1996)は、17α−エストラジオールが、17β−エストラジオールよりも、新線条体ニューロンにおいてL型のカルシウム電流を低減する効力がずっと弱いことを発見した。従って、PKC−PKA経路を介して、ニューロンにおけるチャンネル活性を調節する膜エストロゲンレセプターは、増殖および生存を促進するERK1/2の活性化に共役するレセプターとは薬理学的に異なる。
【0180】
(17β−エストラジオールは、PKCδおよびPKAを活性化し、視床下部ニューロンにおいて、GPCRとK+チャンネルとの共役を変化させる)
本明細書中に詳述したデータは、視床下部ニューロンにおいて、エストロゲンに対する迅速な応答のためのシグナル伝達経路が、図15に記載されるものに従うことを示す。図15に関して、事象の順序は;(1)17β−エストラジオールは、新規の膜貫通エストロゲンレセプターに結合する;(2)リガンド結合により、Gαqが活性化する;(3)活性化Gαqが、今度はPLCを活性化する;(4)活性化PLCが、DAGを遊離させる;(5)遊離DAGが、PKCδを刺激する;(6)PKCδアデニリルシクラーゼ(VII)を活性化する;(7)cAMPレベルが上昇する;(8)cAMPがPKAを刺激する;(9)PKAが、K+チャンネルの機能にとって重要な膜標的をリン酸化する、である。
【0181】
プロテインキナーゼの経路が、CNSニューロンにおいて、GABABレセプター媒介性シグナル伝達に影響するという、図15に示される経路についてのさらなる証拠が発見されている。プロテインキナーゼCの活性化は、海馬のCA1錐体状ニューロン(DutarおよびNicoll、1988)において、GIRKのチャンネルのGABABレセプターの活性化を抑制し、そしてGABABレセプター媒介性の、小脳スライスからのノルエピネフリン放出の阻害を減衰する(Taniyamaら、1992)。
【0182】
現在、PKCファミリーの12の公知のメンバーが存在する(Wayら、2000)。このファミリーは、配列ホモロジーおよび生化学的調節に基づき、3群に分類される。クラスA、すなわち従来のPKC(PKCα、βI、βIIおよびγ)は、周知のCa2+依存的なPKCである。クラスB、すなわち新規のPKC(PKCδ、ε、θ、η)は、Ca2+非依存性である。最後に、クラスCのPKC、すなわち異型のPKC(PKCζおよびτ/λ)は、最も発散したクラスである。異型のPKCもまた、Ca2+非依存性であり、そしてジアシルグリセロールを活性化のために必要としない(Wayら、2000)。エストロゲンの、視床下部ニューロンにおける迅速なGABAB抑制性の作用は、広汎なスペクトルのPKCインヒビターであるBISに感受性であるが、Gou6976には感受性でなく、従来のPKCクラスに属しないPKCの関与を暗示する。さらに、GABAB応答のエストロゲンの阻害は、細胞内記録パッチのピペットにおいて、10mMのBAPTAの封入により変更されず、Ca2+依存性の、従来のPKCが関与していないことを確証付けている。しかし、選択的なPKCδインヒビターであるロッテリンは、17β−エストラジオールの作用をブロックし、これは、この新規のクラスのPKCが迅速な17β−エストラジオール応答のメディエーターであることを示した。さらに、本明細書中に記載される弓状ニューロンにおけるPKCδ転写物の発現に関するscRT−PCRのデータは、GABAB応答の17β−エストラジオール媒介性阻害にPKCδを関係付ける。同様に、PKCδは、エストロゲン媒介性のK+チャンネルの阻害および雌性の遠位結腸上皮細胞における液体の保持に関与しているが、上流のシグナル伝達経路は、公知でない(Doolanら、2000)。
【0183】
(PKC活性化は、PKA活性化の上流である;)
17β−エストラジオール媒介性のGABAB阻害におけるPKC活性化は、PKA活性化の上流である。例えば、BISの内部灌流は、17β−エストラジオールによるバクロフェン応答の阻害を完全にブロックしたが、バス灌流(bath perfusion)により適用されたフォルスコリンによるバクロフェン応答の阻害を減衰しなかった。PKCは、アデニリルシクラーゼを活性化することが公知であり(Jacobowitzら、1993;YoshimuraおよびCooper、1993;LinおよびChen,1998);さらに、アデニリルシクラーゼ(AC)が、Gαsでもフォルスコリンでもなく、PKCにより活性化される場合、アデニリルシクラーゼは、Gαiによる阻害に抵抗性である(Pieroniら、1993)。今日まで、9種のACイソ酵素(ACのI型〜IX型)がクローン化されている。注目すべきことに、AC VIIは、他のアデニリルシクラーゼの配列には存在しない、PKCδの潜在的な結合部位(これは、PKCδが直接的にAC VIIをリン酸化するのを可能にする)を有する(Nelsonら、2003)。皮質、海馬、線条、および小脳におけるGABAニューロンは、AC VIIに対して免疫反応性であり(Monsら、1998)、そして、本明細書中に開示されているように、視床下部のGABAニューロン、THニューロン、およびPOMCニューロンは、AC VII転写物を発現する。
【0184】
(Gαqは、PLCを介して、17β−エストラジオールによるGABAB応答の阻害を媒介する:)
本明細書中に記載される結果により、膜ERが、特異的に、メッセンジャーGαqと共役していること、およびこのメッセンジャータンパク質が、17β−エストラジオールによるGABAB応答の阻害に関与していることがわかる。この結論は、Gαqのペプチドフラグメントを用いた細胞内透析が、Gタンパク質とのレセプター相互作用をブロックした場合に観察される結果により確証付けられる。このGαqペプチドは、皮質錐体状ニューロンにおけるGαqシグナル伝達経路(Carrら、2002)をブロックするために使用されている。さらに、エストロゲン媒介性のGABAB応答の低減は、より活性の低いインヒビターであるU73343で灌流された細胞と比較して、ホスホリパーゼCインヒビターであるU73122により、有意に低減した。従って、メッセンジャーGαqは、17β−エストラジオールによるGABAB応答の阻害に関与している。
【0185】
ほとんどのPKCは、ジアシルグリセロールにより活性化され、そしてCa2+の存在を必要とするPKCも存在する。従って、PKCは、ホスホリパーゼC(PLC)−イノシトール三リン酸/ジアシルグリセロールシグナル伝達カスケードの下流である。異なる形態のPLCが種々のメッセンジャー(Gαq、Gβγ(PLCβ)、およびチロシンキナーゼ(PLCγ)が挙げられる)により活性化され得るので、このPKCファミリーは、多様な一続きのシグナル伝達カスケードに関与する(TanakaおよびNishizuka,1994;Battaini,2001)。
【0186】
(実施例23)
この実施例は、Schild分析を用いたエストロゲンレセプターアンタゴニストの同定およびアンタゴニストの効力の決定を記載する。この分析に対する一般的なプロトコールは、Lagrangeら、1997に開示されている。蓄積的な濃度−応答曲線を、上述の細胞全体の電気生理的アッセイにおける、選択的エストロゲンレセプターアゴニストである化合物8の、濃度の増加を適用することにより生み出す。バクロフェン濃度の増加を、薬物誘導型の外向き電流が新規の定常レベルに到達するまで、適用する。バクロフェンおよび化合物8の両方のEC50値を、SigmaPlot(Jandel Scientific,Costa Madre,CA)ソフトウェアを用いて算出し、ロジスティック方程式に最も適合する値を決定する。次いで、細胞を、潜在的なエストロゲンレセプターアンタゴニストの1nM溶液で洗い流す。次いで、(上記最初の濃度−応答曲線の生成において適用したように)化合物8の濃度の増加を適用し、第2の応答曲線を生成する。次いで、この細胞を、潜在的なアンタゴニスト溶液(2nm)で処置し、濃度応答曲線を繰り返す。このプロセスを、潜在的なアンタゴニストの濃度の増加とともに繰り返し、複数の濃度応答曲線を生成する。化合物8および提案されたアンタゴニストが、本明細書中に開示される、以前に同定されてない膜結合エストロゲンレセプターに結合する場合、このデータの線形回帰適合度(linear regression fit){log(用量比−1)対−log[アンタゴニスト濃度]}で、−1.0の傾きが得られる。
【0187】
(実施例24)
この実施例は、開示された化合物の心臓保護活性の評価を記載し、そして新規の心臓保護用選択的エストロゲンレセプターモジュレーターを同定するための方法を提供する。生後4−7週間の、アポリポプロテインE−欠損C57/B1J(apo E KO)マウス(Taconic Farmsより入手可能)の卵巣を摘出する。この動物を、体重により無作為化し、群に分ける(1群あたり、n=12−15のマウス)。プロトコール(ここで、消費量は、週単位で測定されており、それに従って、適用される用量は、動物の体重に基づく)を用いて、このマウスを、食餌中の開示された化合物または硫酸17β−エストラジオール(1mg/kg/日)で処置する。使用された食餌は、Purinaにより調製され、0.50%のコレステロール、20%のラード、および25IU/KGのビタミンEを含有する、Western式食餌(57U5)である。このマウスには、12週間の期間、この方法論を用いて投薬する/餌を与える。コントロールの動物には、Western式の食餌を与え、そして化合物は与えない。この研究期間の終わりに、この動物を安楽死させ、血漿サンプルを得る。まず、生理食塩水を用いて、次いで、中性緩衝化ホルマリン溶液(10%)を用いて、心臓をインサイチュで灌流する。
【0188】
全コレステロールおよびトリグリセリドを、それぞれBoehringer MannheimおよびWako Biochemicalsから市販されているキットを用いて、酵素的な方法を用いて決定する。血漿リポタンパク質の分離および定量を行い、そして各クロマトグラムのピークのそれぞれの相対的な百分率面積に全コレステロール値を乗ずることにより、各リポタンパク質画分を定量する。
【0189】
大動脈のアテローム性動脈硬化症を、注意深く大動脈を単離する工程および取り扱う前に注意深くこの血管をホルマリン固定液中に48時間〜72時間配置する工程により、定量する。アテローム性動脈硬化症の病巣を、Oil Red O染色を用いて同定する。この血管を、短時間脱色し、次いで、イメージ化する。この病巣を定量し、そして血管についての評価、特に、腕頭幹の近位末端から左鎖骨下動脈までの大動脈弓内に含まれる領域に沿った正面についての評価を行う。大動脈アテローム性動脈硬化症のデータは、この規定された管腔領域内に、病巣関与の百分率として厳密に表現され得る。
【0190】
(実施例25)
この実施例は、酸素奪取/灌流に応答して、開示された化合物を用いる、予防的な神経保護の評価を記載し、そして新規の神経保護的な選択的エストロゲンレセプターモジュレーターを同定するための方法を提供する。気候馴化の後の、雌性Mongolianアレチネズミ(例えば、Charles RiverLaboratories,Kingston,NYから入手可能)を、イソフルランで麻酔し、そして卵巣を摘出する(第0日)。翌朝(第1日)、アレチネズミを、ビヒクル(10% EtOH/コーン油)、17β−エストラジオール(1mg/kg、皮下)または本明細書中に開示された化合物のいずれかで皮下処置する。第6日に先立ち、このアレチネズミに一晩絶食させ(一貫した虚血性損傷を促進し)、次いで、全身の虚血性外科手術に供する。この手術は、上記アレチネズミをイソフルランで麻酔し、正中頚部切開を介して共通の頚動脈を可視化し、そして同時に両動脈を微小動脈瘤クリップ(micro−aneurysm clip)で5分間遮断することにより進行する。遮断の後に、このクリップを除去し、小脳の灌流を可能にし、そして頚部切開を創傷クリップで閉じる。第12日に、アレチネズミを、致死量のCO2に曝し、この脳をドライアイス上で凍結させ、−80℃で貯蔵する。
【0191】
神経保護の程度を、ニューログラニン(neurogranin)のmRNAのインサイチュハイブリダイゼーション分析により評価する。手短に言えば、ゼラチン被覆スライド上で20μMの冠状低温断面を回収し、乾燥させ、そして−80℃で貯蔵する。処理の際に、この乾燥したスライドボックスを、室温にまで温め、このスライドを4%のパラホルムアルデヒドで固定した後、無水酢酸で処置し、次いで、クロロホルムおよびエタノールで脱脂質化および脱水する。次いで、加工した断面を載せたスライドを、50%ホルムアルデヒドハイブリダイゼーションミックス中のNeurograninアンチセンスまたはセンス(コントロール)のリボプローブ(35S−UTP標識化NG−241;塩基99−340)の200μL(6×106DPM/スライド)でハイブリダイズし、加湿したスライドチャンバー中で、カバースリップなしで55℃で一晩インキュベートした。翌朝、このスライドをラック中に収集し、2×SSC(0.3M NaCl、0.03M クエン酸ナトリウム;pH7.0)/10mM DTTに液浸し、RNaseA(20μg/ml)で処理し、そして67℃で0.1×SSCで洗浄し(2×30分)、非特異的な標識を除去する。脱水後、このスライドは、BioMax(BMR−1;Kodak)X線フィルムに一晩供する。
【0192】
損傷後のCA1領域の神経損失の程度を定量的に評価し、そして17β−エストラジオールおよび上記開示された化合物の効力を評価するために、ニューログラニンのハイブリダイゼーションのシグナルのレベルを使用する。ニューログラニンmRNAを、これらの研究のために選択する。なぜなら、ニューログラニンmRNAは、海馬ニューロン(CA1を含む)において高く発現されているが、この脳領域のグリア細胞および他の細胞型では存在しないからである。従って、存在するニューログラニンmRNAの量の測定は、生存ニューロンを示す。ニューログラニンハイブリダイゼーションシグナルの相対的な光学密度の測定は、コンピューターベースのイメージ分析システムを用いて、フィルムオートラジオグラムより得られる(C−Imaging Inc.,Pittsburgh,Pa)。動物あたり6断面(40μm、ばらばら)からの結果を平均化し、そして統計的に評価する。実数値を、平均値±S.E.M.として報告する。一元分散分析を使用し、ニューログラニンmRNAのレベルにおける偏差を試験し、そして得られた断面に偏差がないことのすべての記載は、p>0.05であることを示す。
【0193】
(実施例26)
この実施例は、開示された化合物を使用して達成される認知増強(cognition enhancement)の評価を記載する。卵巣摘出したラット(n=50)を、各々5日間連続で10分間、8アームのラジアルアーム(radial arm)迷路に慣らす。習慣形成(habituation)および試験に先立ち、動物から水奪取する。各アームの末端に設置した100μLのアリコートの水は、増強として役立つ。ラジアルアーム迷路における、獲得−移動(win−shift)課題の獲得を、餌をつけた一つのアームにこの動物がアクセス可能にすることにより達成する。飲水後、この動物は、アームから出て、再度中心コンパ−トメントに入り、ここで、この動物は、以前に訪れたアームまたは新規のアームにアクセス可能である。この動物が新規のアームに入ることを選択する場合、正しい応答を記録する。各動物に、一日ごとに5回の試行を、3日間与える。最終の獲得試行後、上記動物を以下の4群のうちの1群に割り当てる;(1)ネガティブコントロ−ル:10%のDMSO/ゴマ油のビヒクルを、毎日1回、6日間(1μg/kg、皮下)注射する。(2)ポジティブコントロ−ル:安息香酸17β−エストラジオールを、2日間注射し、そして第2の注射の後、4日間試験する(安息香酸17β−エストラジオールを、ラットあたり、10μg/0.1mL)。(3)17β−エストラジオールを、6日間、毎日注射する(20μg/kg、皮下)。(4)試験化合物:6日間毎日注射する(用量は変動し得る)。注射はすべて獲得の最終日の試験後に開始する。群1、3、および4の最終的な注射は、作業記憶を試験する2時間前に開始する。
【0194】
作業記憶についての試験は、15秒、30秒、または60秒の遅れを利用するサンプル非適合課題(DNMS)である。この課題は、獲得課題のバリエーションであり、このバリエーションでは、ラットは、中心部の競技場に置かれ、前と同様に一つのアームに入ることが可能である。一度このラットが第1のアームの途中まで横断すれば、第2のアームを開け、そして再度このラットがこのアームを選択することが必要とされる。ラットがこの第2のアームを途中まで移動した場合、両側のドアが閉まり、そして遅れが開始する。一度この遅れが終了すれば、もとの2個のドア、および第3の新規のドアが同時に開く。この動物が、第3の、新規のアームを途中まで通過した場合、正しい応答を記録する。この動物が第1または第2のいずれかのアームを途中まで移動した場合、誤った応答を記録する。各動物に、3回の遅れ間隔の各々について、5回の試行を行い、被験体につき、各動物について全部で15回の試行を行う。
【0195】
【化89】
【0196】
【化90】
【0197】
【化91】
【0198】
【化92】
【0199】
【化93】
【0200】
【化94】
種々の変更およびバリエーションが、本開示の範囲および精神から逸脱せず、本発明の化合物、組成物、および方法に対してなされることは、当業者には明らかである。化合物、組成物および方法の他の実施形態は、本明細書の考慮および本明細書中に開示された手順の実行から当業者に明らかである。本明細書および実施例が例示としてみなされるのみであり、本発明の真の範囲および精神が添付の特許請求の範囲に示されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0201】
【図1】図1は、細胞全体のパッチ、電圧クランプ研究における、薬物投与のプロトコールを例示するための図である。
【図2】図2は、13分間の細胞全体パッチクランプの記録の後のビオシチン標識の程度を例示する、ビオシチンで満たされたニューロンの例を示す画像である。
【図3】図3Aは、バクロフェン(5μM)I/V前およびバクロフェン(5μM)I/V後のドパミンニューロンからの関係を例示するグラフである。図3Bは、バクロフェンI/V前の関係およびバクロフェンI/V後の関係のグラフであり、この関係は、別の細胞における17β−エストラジオール処置に続き、バクロフェン応答について同一の逆電位を図示する。
【図4】図4Aは、エストロゲンに応答した紡錘状弓状ドパミンニューロンのビオチン−ストレプトアビジン−Cy2標識を示す画像である。図4Bは、図4Aに画像化されたニューロン中のチロシンヒドロキシラーゼ(TH)の免疫細胞学的染色を示す画像である。図4Cは、小さな錐体状弓状POMCニューロンの、ビオシチン−ストレプトアビジン−Cy2標識を示す画像である。図4Dは、図4Cにおいて画像化されたニューロン中のβ−エンドルフィンの免疫細胞学的染色を示す画像である。
【図5】図5は、ステロイド処置前およびステロイド処置後のGABAB応答の代表的なトレースを含む。
【図6】図6は、バクロフェン応答に対する17β−エストラジオールおよびSERMの効果の概要を述べた棒グラフを含む。
【図7】図7Aは、17β−エストラジオール処理後の子宮の大きさと本明細書中で開示される例示的なSERMを用いた処理後の子宮の大きさを比較し、そして17β−エストラジオール処置マウスでは、油状物ビヒクル処置または本明細書中に開示される例示的なSERMを用いた処理と比較すれば、安息香酸エストラジオール(EB)の後に、子宮の大きさが著しく増大したことを示す。図7Bは、油状物処置したマウスの子宮の重さおよびSERM処置したマウスの子宮の重さに対して、EB処置したマウスの子宮の重さを記録した棒グラフである(1群あたりn=マウス3匹〜5匹)。
【図8】図8は、PKA活性化剤またはPKAインヒビターの存在下でのバクロフェン応答の代表的なトレースを含み、17β−エストラジオールのGABAB応答の減衰作用がプロテインキナーゼAを必要とすることを示す。
【図9】図9は、プロテインキナーゼA(PKA)薬物のバクロフェン応答に対する効果の概要を述べた棒グラフである。
【図10】図10は、PKCインヒビターの存在下でのバクロフェン応答の代表的なトレースを含む。
【図11】図11は、プロテインキナーゼC(PKC)インヒビターのバクロフェン応答に対する効果の概要を述べた棒グラフである。
【図12】図12は、ホスホリパーゼC(PLC)およびGαqインヒビターの存在下でのバクロフェン応答の代表的なトレースを含む。
【図13】図13は、PLCおよびGαqインヒビターの効果の概要を述べた棒グラフである。
【図14】図14Aは、単一の弓状ニューロンが、TH、GAD,PKCδ、AC VIIおよびGAPDHのmRNAを発現することを例示する代表的なゲルである。図14Bは、単一の弓状ニューロンが、POMC、GAD、PKCδ、AC VIIおよびGAPDHのmRNAを発現することを例示する代表的なゲルである。
【図15】図15は、視床下部ニューロンにおいて、速効型エストロゲンレセプター対遅効型エストロゲンレセプターが、神経伝達物質調節性の、Gタンパク質共役型レセプターのモジュレーションを、膜結合エストロゲンレセプターを介して媒介することを示す概略図である。
【技術分野】
【0001】
(政府の支援の認定)
本発明は、基金番号NS35944、NS38809、DA05158、DA10703、およびDK57574の下での政府の支援を用いてなされた。政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0002】
(関連出願の引用)
本願は、2004年10月20日に出願された米国出願番号___に対して優先権を主張し、この出願は、2003年10月21日に出願された米国仮出願番号60/513,235の利益を主張し、その開示は、その全体が本明細書中に援用される。
【0003】
(分野)
本開示は、新規の化合物およびその使用方法(選択的エストロゲンレセプターモジュレーターおよびこのような選択的なエストロゲンレセプターモジュレーターを作製するための方法を包含する)に関する。
【背景技術】
【0004】
(背景)
エストロゲンは、重要なクラスのステロイドホルモンであり、このステロイドホルモンは、ヒトにおける基礎的な性的特徴の発達および維持を刺激する。さらに、エストロゲンは、種々の多様な生物学的プロセスに影響することが示されている。エストロゲンの付随的な作用(骨密度の維持、中枢神経系の機能の維持および記憶の保持が挙げられる)の多くはポジティブである。しかし、エストロゲンはまた、深刻なネガティブな作用(乳癌および子宮内膜癌の発達を促進することが挙げられる)を有することが示されている。
【0005】
米国において平均寿命がほぼ80年であることに基づき、女性は、閉経後状態に人生の約3分の1を送ることを期待し得る。女性のエストロゲンレベルは、閉経の間に劇的に低下し、そして月経の閉止した女性は、しばしば、エストロゲン産生の減少に関連する、多くの副作用を経験する。これらの状態を処置するために、医師は、しばしば、ホルモン置換療法(これは、主として、プロゲスチンと組み合わせたエストロゲンの投与からなる)を処方する。
【0006】
現在のホルモン置換療法に関連する、より深刻な副作用(虚血性の発作、心筋梗塞、血栓塞栓症、脳血管疾患、および子宮内膜腫の危険性の増大が挙げられる)に鑑み、有効な非ストロイド性のエストロゲンおよび抗エストロゲン性の化合物を同定するための、かなりの量の研究が実行されている。
【0007】
最も効力のあるエストロゲンである、17β−エストラジオールの作用を、模倣するかまたはブロックするかのいずれかをなす、多数の化合物が記載されている。エストロゲンレセプターに結合し、かつ17β−エストラジオールと同一の生物学的作用の多くを刺激する化合物は、「エストラゲンレセプターアゴニスト」と呼ばれる。17β−エストラジオールがエストロゲンレセプターに結合するのを阻害する化合物、またはエストロゲンレセプターに結合する17β−エストラジオールの作用を妨害する化合物は、「エストロゲンレセプターアンタゴニスト」と呼ばれる。異なる効力で、異なるエストロゲンレセプターに影響する化合物は、代表的には、選択的エストロゲンレセプターモジュレーター(SERM)と呼ばれる。SERMは、アゴニストまたはアンタゴニストのいずれかとして作用し、1種以上のエストロゲンレセプターを選択的に調節し得る。特定のSERM化合物は、混合されたエストロゲン活性と抗エストロゲン活性とを有し、そしてある組織ではエストロゲンレセプターアゴニストとして作動し、そして他の組織では、エストロゲンレセプターアンタゴニストとして作動する。
【0008】
エストロゲン(例えば、17β−エストラジオール)は、2種の核内エストロゲンレセプター、(ER)αまたは(ER)β、の一方に結合することにより、その作用を発揮すると考えられている。(ER)αおよび(ER)βは、さまざまな組織中で見出され、そしてさまざまな生物学的役割を有することが示されているので、研究者らは、(ER)αまたは(ER)βのいずれかに選択的に結合することにより応答を達成する、SERMの開発に焦点を当てている。
【0009】
(ER)αおよび(ER)βに対して異なる活性を示す非ステロイド性SERMの2つの例は、タモキシフェンおよびラロキシフェンである。タモキシフェンおよびラロキシフェンは、骨粗しょう症、心臓血管疾患および乳がんの処置および/または予防、さらには、種々の他の疾患状態の処置および/または予防のために開発されている。両化合物は、血漿コレステロールレベルに対する陽性の作用および特定の型の癌の発生数が大幅に低減したことと組み合わせて、骨鉱質密度に対する骨防御作用を示すことが示されている。不幸にも、タモキシフェンおよびラロキシフェンは、両方とも、副作用(例えば、顔面紅潮)を誘導し、そしてタモキシフェンは、生命を脅かす障害(例えば、子宮内膜癌)を促進する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、ホルモン置換療法の陰性の作用または公知の選択的エストロゲンレセプターモジュレーターの陰性の作用を誘導することなく、ホルモン置換療法の所望の効果を惹起する、新規の非ステロイド性SERMを包含する。
【0011】
(要旨)
本開示は、新規の化合物、組成物、ならびに、上記化合物および組成物を作製および使用するための方法を包含する。一般的には、開示される化合物は、選択的なエストロゲンレセプターモジュレーター(SERM)として機能する。一つの局面では、この化合物は、式Iを有し、そしてこれらの水和物、および薬学的に受容可能なプロドラッグおよび塩を包含する。さらに、開示された式の、キラル形態、ジアステレオマー形態、および幾何異性体形態のすべてが意図される。
【0012】
【化21】
式1に関連して、Rは、Mに関してEまたはZであり得、そしてRは、水素または低級脂肪族基を表し;Xは、オルト位、メタ位、またはパラ位の水素、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、スルフヒドリル、チオエーテル、アミノ(−NR2R3、ここで、R2およびR3は、独立して、水素もしくは低級アルキルである)またはハロゲンであり;Mは、ケトン基、アミド基またはスルホンアミド基を含む。Arは、芳香族基を表し、そして任意の芳香族基(フェニル、ビフェニル、1−ナフチル、2−ナフチルが挙げられるが、これらに限定されず、そして、ヘテロアリール基(例えば、例示の目的で、フラン基、チオフェン基、ピロール基、イミダゾール基、オキサゾール基、チアゾール基、ピリジン基、およびキノリン基)が挙げられる)であり得る。
Yは、Mに対して任意の位置(例えば、オルト位、メタ位、またはパラ位にて)にて結合され得る。一つの局面では、Yは、ヘテロ原子(例えば、窒素または酸素)である。式2に従う開示されたSERMの特定の実施形態では、Yは、フェニル基を表す。
【0013】
【化22】
式1および式2の参照を続けて、Gは、リンカー基(例えば、低級アルキル基、炭化水素鎖、オリゴエチレングリコール鎖など)を含む。Gが低級アルキル基を含む式2の一つの実施形態では、Gは、エチル基である。Zは、代表的には、ヘテロ原子を含む。特定の実施形態では、Zは、電荷を帯びた部分(例えば、アニオン性基(例えば、ボロン酸基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、またはカルボキシ基))を含む。Zがカチオン性の基を含む例では、このカチオン性の基は、アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基またはピペリジノ基)であり得る。他の例では、Zは、ヒドロキシル基を包含し得る。式Y−G−Zにより表される基の例としては、Yがヘテロ原子(例えば、酸素)であり、そして式−G−Zは、以下:
【0014】
【化23】
のうちの一つ(これらに限定されない)を表すものが挙げられる。
【0015】
図1および図2に関して、Mは、代表的には、アミドケトン基またはスルホンアミド基のうちの一つであり、そしてより代表的には、−C(O)−;−C(O)−NR1−、または−SO2NR1−のうちの一つを表し、ここで、R1は、水素、低級アルキル基またはアラルキル基である。従って、このような化合物の例は、式3により表され得、ここで、Qは、代表的には、アミド結合またはスルホンアミド結合を形成する(Qは、−SO2−またはCOを表す)。
【0016】
【化24】
従って、式3に従う化合物は、例えば、式4または式5を有し得る。式4および式5に関して、R、X、R1およびYは、式1に関して上に規定されるとおりである。
【0017】
【化25】
上の式に示されるように、上記開示された化合物としては、ビニルケトン誘導体、アクリルアミド誘導体およびビニルスルホンアミド誘導体が挙げられる。さらに、上の構造に例示されるように、ビニル基についての立体配置は、EまたはZであり得る。
【0018】
この開示の一つの局面は、新規の選択的エストロゲンレセプターモジュレーターを合成するための方法を包含する。別の実施形態では、この方法は、式6に従う開始物質を提供する工程を包含し、ここで、Gは、カルボキシ基、活性化カルボキシ基、スルホン酸基または活性化スルホン酸基である。活性化カルボンキシ基およびスルホン酸基としては、アミンまたはアミン等価物と反応し、式3または式4に従うアミドまたはスルホンアミドを形成し得る任意の基が挙げられる。代表的には、活性化カルボキシ基としては、ハロゲン化アシルおよび活性化エステルが挙げられる。特定の例では、Yは、求核試薬との反応のためにインサイチュで活性化されているカルボキシ基である。同様に、代表的な活性化スルホン酸基としては、スルホニルハライド(例えば、塩化スルホニル)が挙げられる。このような活性化スルホン酸基は、種々のアミン(一級アミンおよび二級アミン)をアシル化するために使用され得る。
【0019】
【化26】
例えば、新規のエストロゲンレセプターモジュレーターを合成するための方法の一つの実施形態が、スキーム1に図示されている。スキーム1の式7に関して、可変物Yは、アニオンまたはアニオン等価物(例えば、ハロゲン)を示し、これらは、リチウム−ハロゲン交換条件に供され得、対応するカルボアニオンを与え得る。このカルボアニオンは、式8に図示されるようなカルボキシ基を導入するために使用され得る。このカルボキシ基は、例えば、保護されたカルボキシ等価物(例えば、保護されたクロロ蟻酸誘導体)として導入され得る。このような試薬の例の一つは、クロロ蟻酸アリルであり、これは、式8のカルボキシ基を導入するために使用され得る。式8に従う化合物は、多目的な合成中間体である。なぜなら、このような化合物は、任意の一級アミンまたは二級アミンとカップリングし、式9に従う化合物を提供し得るからである。従って、R1およびR2が、独立して、水素、脂肪族基、アリール基またはアラルキル基から選択される、式9に従う化合物は、式8に従う化合物と、式:R1R2NHを有する、対応する一級アミンまたは二級アミンとを反応させることにより、調製され得る。代表的には、R1およびR2のうちの少なくとも一方は、アリール基を含み、そしてアリール基を含む適切なアミンの例としては、R1およびR2のうち少なくとも一方がフェニル基またはフェニル誘導体であるものが挙げられる。
【0020】
一般的に言えば、現在開示されている方法に従う、式8を有する化合物の式9を有する化合物への転換は、反応のためにカルボキシ基を活性化するカップリング試薬の使用を包含する。このようなカップリング試薬の例としては、カルボジイミド、ウロニウム塩、ホスホニウム塩などが挙げられるが、これらに限定されない。カルボジイミドの例としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、および1−(3−ジメチル−アミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI)が挙げられるが、これらに限定されない。ウロニウム塩の例としては、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)および2−(1H−ベンゾトリアゾール)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩(TBTU)が挙げられる。ホスホニウム塩の例としては、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBop)およびブロモ−トリス−ピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBrop)が挙げられる。この転換はまた、必要に応じて、添加剤(例えば、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)および/またはN−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt))を使用し得る。一つの実施形態では、開示された合成、HBTUは、DMAPの存在下で使用され、式8を有する化合物にアミンをカップリングし得る。
【0021】
【化27】
この方法の別の局面が、スキーム2に図示される。スキーム2に関して、この方法は、式11に従う、ビニルスルホン酸を提供する工程、および1級アミンまたは2級アミン(R1R2NH)をカップリングし、式12に従うスルホンアミドを提供する工程を包含する。このカップリング反応は、例えば、DCC、DIC、EDCI、HBTU、TBTU、PyBopまたはPyBropの存在下で達成され得る。この転換はまた、必要に応じて、添加剤(例えば、DMAPおよび/またはHOBt)を使用し得る。
【0022】
【化28】
本開示に包含される特定の新規の化合物は、以前に同定されていない膜結合エストロゲンレセプターに結合する。さらに、これらの化合物の特定の例は、古典的な核内レセプターである(ER)αおよび(ER)βに結合するよりも大きな親和性で、膜結合エストロゲンレセプターに選択的に結合する。従って、この開示の一つの局面は、膜結合エストロゲンレセプターの選択的アゴニストまたは選択的アンタゴニストを提供するための方法を包含する。
【0023】
この開示はまた、種々の障害、特にエストロゲン欠乏により特徴付けられるもの(例えば、卵巣摘出、卵巣不全、または閉経に関連するもの)を処置するための方法および組成物を包含する。このような状態および障害としては、一般的に、自律神経機能障害、認知障害、運動機能障害、気分障害、摂食障害および心臓血管障害として記載されるもの、ならびに種々の型の障害が挙げられる。一つの局面では、開示された化合物は、特定の型の損傷に対して予防的効果を発揮する。例えば、この化合物は、神経保護薬(neuroprotectant)として使用され得る。実際に、本明細書中で同定される膜結合エストロゲンレセプターをアゴナイズする化合物は、神経保護薬として作用し、虚血性発作に応答する神経細胞死を減少させ、再灌流障害を阻害する。
【0024】
特定の組成物は、少なくとも1種の式Iに従う化合物、ならびに第2の治療上の化合物を含有する。第2の化合物はまた、エストロゲンレセプターに結合し得る。例えば、一つの実施形態において、第2の化合物は、SERMであり、そして別の実施形態では、第2の化合物は、エストロゲン(例えば、17β−エストラジオール)、またはプロゲステロン(例えば、プロゲスチン)である。
【0025】
(発明の詳細な説明)
以下の用語および方法の説明が、本発明の化合物、組成物、および方法をより十分に記載するために提供され、そして本開示の実行において、当業者を導くために、提供される。本開示において使用される専門用語は、特定の実施形態および実施例を記載することのみを目的とするものであり、そして限定を意図しないこともまた理解される。
【0026】
本明細書は、以下の略語および省略形を含む;
BAPTA:1,2−ビス−(o−アミノフェノキシエタン)−N,N,N’,N’−四酢酸
CTX:コレラトキシン
DAG:ジアシルグリセロール
DCM:ジクロロメタン
ddH2O:脱イオン蒸留水
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
EGTA:エチレングリコール四酢酸
EtOAc:酢酸エチル
ERK:細胞外シグナル関連キナーゼ
GIRK:Gタンパク質共役型内向き整流性(inwardly−rectifying)K+チャネル
Hex:ヘキサン
MAPKまたはMAPキナーゼ:マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ
PLC:ホスホリパーゼC
PKA:プロテインキナーゼA
PKC:プロテインキナーゼC
POMC:プロオピオメラノコルチン
SERM:選択的エストロゲンレセプターモジュレーター
TTX:テトロドトキシン。
【0027】
本明細書中では、範囲は、「約」一つの特定値から、および/または「約」別の特定値まで、として表され得る。このような範囲が表される場合、別の実施形態は、上記一つの特定値から、および/または他の特定値まで、を含む。同様に、修飾語「約」の使用により、値が近似値として表現される場合、特定値が別の実施形態を形成することが理解される。他の終末点に関連してと、他の終末点とは独立して、との両方の意味で、上記範囲の各終末点が重要であることがさらに理解される。
【0028】
開示された化合物は、キラル化合物(例えば、非対称な4置換炭素原子を含むもの)を包含する。このような化合物は、ラセミ形態で単離されるか、または光学活性な形態で単離され得る。光学活性な形態の化合物の合成の仕方が当業者に公知である。化合物のラセミ混合物の分割による、光学的に活性な化合物の調製の仕方もまた周知である。他に特に示されなければ、開示された構造のキラル形態、ジアステレオマー形態、および幾何異性体形態のすべてが意図される。
【0029】
この明細書および添付の特許請求の範囲において、以下の意味を有すると理解されるべき多くの用語が参照される:
「必要に応じた」または「必要に応じて」は、後に記載された事象または環境が、生じ得るが、生じる必要はないこと、および上記記載が、上記事象または環境が生じる例および上記事象または環境が生じない例を含むことを意味する。
【0030】
本開示を通じて使用される可変物(例えば、R、G、M、Q、X、YおよびZ)は、以前に定義されたのと同一の可変物である(逆に示唆された場合を除く)。
【0031】
用語「エストロゲンレセプターアゴニスト」とは、エストロゲンレセプターに作用し、かつ、17β−エストラジオールと同一の生物学的作用のうちの、少なくとも数種を有する化合物をいう。エストロゲンレセプターに作用し、17β−エストラジオールの作用をブロックする化合物は、「エストロゲンレセプターアンタゴニスト」と呼ばれる。代表的には、本明細書中に開示される化合物は、部分アゴニストまたは部分アンタゴニストであり、このことは、本明細書中に開示される化合物が、17β−エストラジオールの作用のいくつかを模倣するか、またはブロックすることもあれば、そうでないこともあることを意味する。いくつかの場合、この化合物は、混合されたアゴニスト/アンタゴニスト活性を示し、ここで、この化合物は、特定の組織では、エストロゲンレセプターアゴニストとして作用するが、他の組織では、エストロゲンレセプターアンタゴニストとして作用する。本明細書中に開示されるこのような化合物の例は、一種のエストロゲンレセプターに、他のエストロゲンレセプターより高い親和性で、選択的に結合することにより、部分アゴニスト活性を示す。このような選択性を示す化合物は、「選択的エストロゲンレセプターモジュレーター」、すなわち、「SERM」と呼ばれる。
【0032】
「ホルモン置換療法」とは、被験体中でのエストロゲンの産生が低減することまたは不十分であること(例えば、閉経において見られる)に応答して与えられる処置をいう。ホルモン置換療法は、しばしば、老化、卵巣摘出または早発性卵巣機能不全に応答して着手される。ホルモン置換療法は、しばしば、エストロゲン欠乏に関連する二次作用(例えば、骨粗しょう症、心疾患、顔面紅潮および気分障害)のうちの1種以上の処置を補助するために使用される。
【0033】
「誘導体」とは、親化合物に由来する化合物もしくは化合物の一部、または親化合物に理論上由来し得る化合物もしくは化合物の一部をいう。
【0034】
用語「アルキル基」とは、1炭素〜24炭素の、分枝した飽和炭化水素基、または1炭素〜24炭素の、分枝していない飽和炭化水素基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなど)をいう。「低級アルキル」基は、1個〜10個の炭素原子を有する、分枝した飽和炭化水素または分枝していない飽和炭化水素である。
【0035】
用語「アルケニル基」とは、2個〜24個の炭素原子の、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む構造式の、炭化水素基をいう。
【0036】
用語「アルキニル基」とは、2個〜24個の炭素原子の、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む構造式の、炭化水素基をいう。
【0037】
用語「ハロゲン化アルキル基」とは、上に記載されたようなアルキル基の上に存在する1個以上の水素原子が、ハロゲン(F、Cl、Br、I)で置換されたアルキル基をいう。
【0038】
用語「シクロアルキル基」とは、少なくとも3個の炭素原子で構成される非芳香族炭素ベースの環をいう。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。用語「ヘテロシクロアルキル基」は、環の炭素原子のうち、少なくとも1個がヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、硫黄またはリンであるが、これらに限定されない)で置換されている、上で記載されるようなシクロアルキル基である。
【0039】
用語「エチレングリコール鎖」または「オリゴエチレングリコール鎖」とは、反復エチレングリコール単位を有する基をいう。このエチレングリコール鎖は、任意の長さであり得るが、代表的には、2〜約100のエチレングリコール単位、そしてより代表的には、2〜約70のエチレングリコール単位を含む。最も代表的には、オリゴエチレングリコール鎖は、約2〜約20のエチレングリコール単位を含む。
【0040】
用語「脂肪族基」としては、上で記載されたような、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン化アルキル基、およびシクロアルキル基が挙げられる。「低級脂肪族」基は、1個〜10個の炭素原子を有する、分枝した構造または分枝していない構造である。
【0041】
用語「アリール基」とは、任意の炭素ベースの芳香族基(ベンゼン、ナフタレンなどが挙げられるが、これらに限定されない)をいう。用語「芳香族」はまた、「ヘテロアリール基」を包含し、この「ヘテロアリール基」とは、芳香族基の環内に組み込まれた少なくとも1個のヘテロ原子を有する芳香族基をいう。このようなヘテロ原子の例としては、限定されないが、窒素、酸素、硫黄、およびリンが挙げられるが、これらに限定されない。このアリール基は、1個以上の基(アルキル基、アルキニル基、アルケニル基、アリール基、ハライド基、ニトロ基、アミノ基、エステル基、ケトン基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、カルボン酸基、もしくはアルコキシ基が挙げられるが、これらに限定されない)で置換されていてもよいし、このアリール基は、置換されていなくてもよい。
【0042】
用語「アラルキル」とは、上記アリール基に結合した、上で記載されたようなアルキル基を有するアリール基をいう。アラルキル基の例は、ベンジル基である。
【0043】
用語「アルキルアミノ」は、少なくとも1個の水素原子が、アミノ基で置き換えられた、上に記載されたようなアルキル基を包含する。
【0044】
用語「ヘテロ原子」とは、炭素原子以外の原子をいうことが、当業者により理解される。ヘテロ原子の例としては、ホウ素、窒素、酸素、リンおよび硫黄が挙げられる。
【0045】
従って、本明細書中で用いられる場合、用語「炭化水素鎖」とは、代表的には、炭素原子の鎖をいい、代表的には、2個〜約22個の炭素原子を含む。この鎖は、脂肪族基およびアリール基を含み得、そして直鎖、分枝鎖および/または環状の基を含み得る。
【0046】
用語「ヒドロキシル基」は、式−OHにより表される。用語「アルコキシ基」は、式−ORにより表され、ここで、Rは、アルキル基であり得、必要に応じて、上述のように、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、またはヘテロシクロアルキル基で置換され得る。
【0047】
用語「ヒドロキシアルキル基」とは、少なくとも1個の水素原子がヒドロキシル基で置換されたアルキル基をいう。用語「アルコキシアルキル基」とは、少なくとも1個の水素原子が、上に記載されるようなアルコキシ基で置換されたアルキル基をいう。利用可能な場合には、ヒドロキシアルキル基またはアルコキシアルキル基のアルキル部分は、アリール、アラルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシを有し得る。
【0048】
用語「アミン基」は、式−NRR’により表され、ここで、RおよびR’は、独立して、水素または上に記載されたような、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、またはヘテロシクロアルキル基であり得る。
【0049】
用語「アミド基」は、式−C(O)NRR’により表され、ここで、RおよびR’は、独立して、水素、上に記載されたような、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、またはヘテロシクロアルキル基であり得る。
【0050】
用語「エステル」は、式−OC(O)Rにより表され、ここで、Rは、上に記載されたような、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、またはヘテロシクロアルキル基であり得る。
【0051】
用語「カーボネート基」は、式−OC(O)ORにより表され、ここで、Rは、上に記載されたような、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、またはヘテロシクロアルキル基であり得る。
【0052】
用語「カルボン酸」は、式−C(O)OHにより表される。
【0053】
用語「アルデヒド」は、式−C(O)Hにより表される。
【0054】
用語「ケト基」は、式−C(O)Rにより表され、ここで、Rは、上で記載されるような、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、またはヘテロシクロアルキル基であり得る。
【0055】
用語「カルボニル基」は、式C=Oにより表される。
【0056】
「カチオン性基」または「カチオン性部分」とは、正に荷電した基または正に荷電し得る基をいう。例えば、カチオン性基は、生理学的に適切なpHにてプロトン化され得るアミンであり得る。カチオン性基の第2の例は、正に荷電した第4級アミンである。
【0057】
開示された化合物はまた、塩(いくつかの塩形成基が存在する場合、混合された塩および/または分子内塩を含む)を包含する。この塩は、一般的には薬学的に受容可能な、無毒性の塩である。塩を形成する酸性の基の例としては、カルボキシル基、リン酸基、ボロン酸基が挙げられるが、これらに限定されず、これらは、適切な塩基と塩を形成し得る。これらの塩としては、例えば、元素の周期表のIA族、IB族、IIA族、およびIIB族の金属に由来する、無毒性の金属カチオンが挙げられ得る。一つの実施形態では、アルカリ金属カチオン(例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、もしくはカリウムイオン)、またはアルカリ土類金属カチオン(例えば、マグネシウムイオン、もしくはカルシウムイオン)が使用され得る。この塩はまた、亜鉛カチオンまたはアンモニウムカチオンであり得る。この塩はまた、適切な有機アミン(例えば、非置換の、もしくはヒドロキシル置換された、モノアルキルアミン、ジアルキルアミンもしくはトリアルキルアミン(特に、モノアルキルアミン、ジアルキルアミンもしくはトリアルキルアミン))あるいは4級アンモニウム化合物とともに(例えば、N−メチル−N−エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノ−(2−ヒドロキシ−低級アルキル)アミン、ビス−(2−ヒドロキシ−低級アルキル)アミン、またはトリス−(2−ヒドロキシ−低級アルキル)アミン(例えば、モノ−、ビス−、もしくはトリス−(2−ヒドロキシエチル)アミン、2−ヒドロキシ−tert−ブチルアミン、もしくはトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン)、N,N−ジ−低級アルキル−N−(ヒドロキシ−低級アルキル)アミン(例えば、N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミンもしくはトリ−(2−ヒドロキシエチル)アミン、もしくはN−メチル−D−グルカミン)、または4級アンモニウム化合物(例えば、テトラブチルアンモニウム塩)とともに)形成され得る。
【0058】
特定の化合物は、鉱酸と酸−塩基塩を形成し得る、少なくとも1個の塩基性の基を保有する。塩基性の基の例としては、アミノ基またはイミノ基が挙げられるが、これらに限定されない。このような塩基性の基と塩を形成し得る無機酸の例としては、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸またはリン酸)が挙げられるが、これらに限定されない。塩基性の基はまた、有機カルボン酸、有機スルホン酸、有機スルホ酸(sulfo acid)もしくは有機リン酸、またはN−置換スルファミン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、グルカル酸、グルクロン酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、サリチル酸、2−フェノキシ安息香酸、2−アセトキシ安息香酸、エンボニック酸(embonic acid)、ニコチン酸またはイソニコチン酸と塩を形成し得るが、さらに、アミノ酸(例えば、α−アミノ酸)、およびメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシメタンスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、4−メチルベンゼンスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、2−ホスホグリセリン酸もしくは3−ホスホグリセリン酸、グルコース−6−リン酸またはN−シクロヘキシルスルファミン酸(シクラメートの形成を伴う)または他の酸性有機化合物(例えば、アスコルビン酸)とも塩を形成し得る。
【0059】
用語「エーテル基」は、式R(O)R’により表され、ここでRおよびR’は、独立して、上に記載されたような、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、またはヘテロシクロアルキル基であり得る。
【0060】
用語「ハライド」とは、F、Cl、Br、またはIをいう。
【0061】
用語「ウレタン」およびカルバメートは、式OC(O)NRR’により表され、ここで、RおよびR’は、独立して、水素、上に記載されたような、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、ヘテロシクロアルキル基であり得る。
【0062】
上に記載された基は、必要に応じて、1個以上の置換基で置換され得る。分子内の特定の位置での任意の置換基または可変物の定義は、この分子について他の場所での定義から独立している。適切な置換基の例としては、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ハロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、オキソ、アルカノイル、アルカノイルオキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、アルカノイルアミノ、アロイルアミノ、アラルカノイルアミノ、置換されたアルカノイルアミノ、アロイルアミノ、アラルカノイルアミノ、置換されたアルカノイルアミノ、置換されたアリールアミノ、置換されたアラルカノイルアミノ、チオール、スルフィド、チオノ、スルホニル、スルホンアミド、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルバミル、置換されたカルバミルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
用語「プロドラッグ」は、このプロドラッグが被験体に投与された場合に、本発明の活性な親薬物をインビボで放出する、共有結合された任意のキャリアを含有することが意図される。プロドラッグは、薬の特性(例えば、溶解度およびバイオアベイラビリティー)を増強することが公知であるので、本明細書中に開示される化合物は、プロドラッグの形態で送達され得る。従って、また企図されるのは、本願発明の化合物のプロドラッグ、プロドラッグを含有する組成物、およびこのようなプロドラッグを送達する方法である。開示された化合物のプロドラッグは、代表的には、慣用的な操作によって修飾が切断されるか、またはインビボで修飾が切断されるかのいずれかで、親化合物が得られる様式で、化合物中に存在する官能基を修飾する工程により調製される。プロドラッグとしては、ヒドロキシ基、アミノ基、またはスルフヒドリル基を有する化合物が挙げられ、上記ヒドロキシ基、アミノ基、スルフヒドリル基またはスルフヒドリル基は、切断されるとそれぞれ対応するヒドロキシル基、遊離アミノ基、または遊離スルフヒドリル基が得られる、任意の基で官能基化されている。プロドラッグの例としては、酢酸基、ギ酸基、および/または安息香酸基でアシル化された、ヒドロキシ基、アミノ基および/またはスルフヒドリル基を有する化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
開示された化合物の保護された誘導体もまた、企図される。開示された化合物の使用が適切な種々の誘導体が、GreeneおよびWuts、Protective Groups in Organic Synthesis;第3版;John WileyおよびSons、New York 1999において開示されている。
【0065】
本明細書中に記載されている化合物の置換基および置換パターンは、化学的に安定である化合物を提供し得るように、当業者により選択されること、ならびに当該分野で公知の技術およびさらに本開示において記載される方法によって容易に合成され得ることが、理解される。本発明の好ましい実施形態が、ここで詳細に参照される。
【0066】
(I.好ましい化合物の選択)
エストロゲンレセプターを調節するための好ましい化合物は、代表的には、1種以上のエストロゲンレセプターを、アゴナイズするか、またはアンタゴナイズする際の潜在能力および選択性に関して、選択される。代表的には、開示された化合物は、膜結合エストロゲンレセプターに選択的に結合し、そして(結合する場合には)核内エストロゲンレセプターである、(ER)αおよび(ER)βに、より低い親和性で結合する。以下の方法および実施例の節に記載されているように、そして一般的に公知であるように、標的エストロゲンレセプターに対する特定の化合物の効力は、インビトロで決定され得、そして開示されたインビトロでの方法は、新規のSERMをスクリーニングし、そして同定するために使用され得る。さらに、種々の状態および障害(閉経に関連する状態、もしくはエストロゲン欠乏により特徴付けられる他の状態(例えば、卵巣摘出、卵巣不全もしくは閉経))を処置するか、またはこれらに対して保護するための特定の化合物が提供される。このような状態の例としては、顔面紅潮、認知衰弱(cognitive decline)、骨粗しょう症、鬱、虚血性脳損傷およびアテローム性動脈硬化症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
開示された化合物が顔面紅潮を阻害または改善する能力は、例えば、モルヒネ中毒のラットがナロキソンを用いて、モルヒネに対する急性の禁断症状を経験する場合に生じる、尾部の皮膚温度の上昇を、鈍化させる薬剤の能力を測定する標準的なアッセイにおいて決定され得る。Merchenthalerら、The effect of estrogens and antiestrogens in a rat model for hot flush.Maturitas 1998,30,307−316を参照のこと(これは、本明細書中で参考として援用される)。また、Berendsenら、Effect of tibolone and raloxifene on the tail temperature of oestrogen−deficient rats.Eur.J.Pharmacol.2001,419,47−54;およびPanら、A comparison of oral micronized estradiol with soy phytoestrogen effects on tail skin temperatures of ovariectomized rats.Menopause 2001,8,171−174を参照のこと。Berendsenの刊行物およびPanの刊行物の両方が、本明細書中に参考として援用される。
【0068】
特定の開示された化合物は、多発性硬化症の処置に対して有用である。多発性硬化症の症状を処置または抑制するための好ましい化合物は、Polanczykら、Am.J.Pathol.2003,163,1599−1605により記載される、実験的な自己免疫脳脊髄炎マウスモデルを使用することにより選択され得る。このPolanczykの刊行物は、本明細書中に参考として援用される。
【0069】
摂食障害(例えば、神経性食欲不振および/または神経性大食症)を処置するのに有用な、開示された化合物は、当業者に公知であるような、単純な栄養補給アッセイ(single feeding assay)を用いて同定され得る。
【0070】
学習および記憶に対する開示された化合物の効果は、Stackmanら、J.Neuroscience 2002,22,10163−10171により記載されたプロトコールに従って、モリス水迷路および物体認識アッセイを用いて、評価され得る。Stackmanらの刊行物が本明細書中に参考として援用される。
【0071】
開示された化合物の神経保護活性はまた、例えば、グルタミン酸塩チャレンジ(glutamate challenge)を用いた、標準的なインビトロでの薬理学的アッセイにおいて、評価され得る。Zaulyanovら、Cellular & Molecular Neurobiology 1999,19:705−718;およびProkaiら、Journal of Medicinal Chemistry 2001,44,110−114を参照のこと。Zaulyanovら、およびProkaiらの刊行物は、本明細書中に参考として援用される。
【0072】
開示された化合物はまた、全体的な大脳虚血に関連する損傷からニューロンを保護する能力に関して評価され得る。化合物は、Vogelら、Anesthesiology 2003,99,112−121により記載される、心停止および心肺蘇生術アッセイを用いて、このような損傷を低減する能力について評価され得る。一局面では、上記化合物は、蘇生後に投与された場合でさえ、ニューロンへの損傷を低減し得る。Vogelらの刊行物は、本明細書中に参考として援用される。
【0073】
神経保護はまた、マウスにおいて、Dubalら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.2001,98,1952−1957;およびJ.Neurosci.1999,6385−6393により記載されるプロトコールに従って、中大脳動脈閉塞手順を用いて評価され得る。エストロゲン欠乏により特徴付けられる障害の異なるモデル中での開示された化合物を評価するためのさらなるアッセイが、以下の方法および実施例の節に記載されている。
【0074】
化合物の使用は、エストロゲン欠乏を伴う状態に必ずしも限定されない。このような状態および障害を処置または予防するための治療の効力を特徴付けるための技術およびアッセイは、周知であり、そして例えば、Malamasら、およびMewshawらにより、それぞれ米国特許出願公開第2003/0171412号明細書および同第2003/0181519号明細書に記載される。Malamasら、およびMewshawらの刊行物は両方とも、本明細書中に参考として援用される。
【0075】
(II.薬学的組成物)
本開示の別の局面は、被験体への投与のために調製される薬学的組成物を包含し、そしてこの組成物は、現在開示されている1種以上の化合物の治療上有効な量を含有する。開示された化合物の治療上有効な量は、投与ルート、被験体である哺乳動物の型、および処置される被験体の身体的な特徴に依存する。考慮され得る特定の因子としては、疾患の重症度および段階、体重、食事ならびに併用薬(concurrent medication)が挙げられる。これらの因子と、開示された化合物の治療上有効な量を決定する工程との関係は、当業者に理解される。
【0076】
投与される化合物の治療上有効な量は、上に記述された所望の効果および因子に依存して変動し得る。代表的には、投薬量は、被験体の体重の、約0.01mg/kgと100mg/kgとの間であり、そしてより代表的には、被験体の体重の、約0.01mg/kgと10mg/kgとの間である。一つの局面では、治療上有効な量は、インビトロで有効であると見出される濃度付近の被験体の標的組織中の治療用薬剤のインビボでの濃度を達成するように選択され得る。
【0077】
一つの実施形態では、開示されたSERMは、本明細書中に開示されるさらなる化合物、および/または他の治療用薬剤(例えば、他のSERM、抗がん剤もしくは抗増殖剤)と組み合わせて使用される。例えば、開示された化合物は、化学療法剤(例えば、タモキシフェン、タキソール、エポチロン(epothilone)、メトトレキサートなど)とともに使用され得る。一つの局面では、開示されたSERMは、ステロイドホルモン(例えば、エストロゲン(17β−エストラジオールが挙げられる)、プロゲステロンなど)と組み合わせて使用される。このエストロゲンまたはプロゲステロンは、天然に存在し得るか、または合成エストロゲンもしくは合成プロゲステロンであり得る。異なる治療用薬剤が、組み合わせて使用される場合、治療用薬剤は、一緒に投与されてもよいし、別々に投与されてもよい。治療用薬剤は、単独で投与され得るが、より代表的には、選択された投与ルートおよび標準的な薬学的診療(pharamaceutical practice)を基本に選択される薬学的キャリアとともに投与される。
【0078】
本明細書中に記載される任意のSERMは、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わされ得、薬学的組成物を形成する。薬学的キャリアは、当業者に公知である。これらは、最も代表的には、ヒトに対する投与のための組成物の標準的なキャリア(溶剤(例えば、滅菌水、生理食塩水、または生理的なpHでの緩衝化溶液)が挙げられる)である。この組成物はまた、筋肉内投与されるか、経皮投与されるか、またはエアロゾルの形態で投与され得る。他の化合物は、当業者により使用される標準的な手順に従って投与される。
【0079】
薬学的送達が意図される分子は、薬学的組成物に処方され得る。薬学的組成物は、選択した分子に加えて、キャリア、増粘剤、希釈剤、緩衝液、保存剤、界面活性剤などを含有する。薬学的組成物はまた、1種以上のさらなる活性成分(例えば、抗菌剤、抗炎症剤、麻酔薬など)を含有し得る。薬学的処方物は、さらなる成分(例えば、キャリア)を含有し得る。これらの処方物にとって有用な、薬学的に受容可能なキャリアは、従来のものである。E.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.,Easton,PA,第15版(1975)は、本明細書中に開示される化合物の薬学的送達に適した組成物および処方物を記載する。
【0080】
一般的に、このキャリアの性質は、使用される特定の投与様式に依存する。例えば、非経口処方物は、通常は、注射可能な流体(薬学的に受容可能でかつ生理学的に受容可能な流体(例えば、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、デキストロース水溶液、グリセロールなど)が挙げられる)をビヒクルとして含有する。固形組成物(例えば、散剤、丸剤、錠剤、またはカプセル剤の形態)の、従来の無毒性の固体のキャリアとしては、例えば、薬学的等級の、マンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムが挙げられ得る。生物学的に中性のキャリアに加えて、投与されるべき薬学的組成物は、少量の無毒性の補助剤(例えば、加湿剤、乳化剤、保存剤、およびpH緩衝化剤など(例えば、酢酸ナトリウムもしくはモノラウリン酸ソルビタン)を含有し得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、開示されたSERMの有効量を含有する薬学的調製物の徐放は、有益であり得る。緩徐な放出(slow−release)の処方物は、当業者に公知である。例として、ポリマー(例えば、ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン−セバシン酸)またはレシチンの懸濁液が、徐放を提供するために使用され得る。
【0082】
いくつかの実施形態において、SERM送達が注射薬物蓄積および/またはインプラント薬物蓄積(implanted drug depot)(例えば、多小胞リポソーム(例えば、Depo泡沫(SkyePharma,Inc,San Diego,CA)の多小胞リポソーム)を含む)を介することが具体的に企図される(例えば、Chamberlainら、Arch.Neuro.1993,50,261−264;Katriら、J.Pharm.Sci.1998,87,1341−1346;Yeら、J.Control Release 2000,64,155−166;およびHowell,Cancer J.2001,7,219−227を参照のこと)。
【0083】
(III.開示された化合物を使用するための方法)
開示された化合物は、被験体中のエストロゲンレセプターを選択的に調節するために使用され得、それゆえ種々の障害(エストロゲン欠乏により特徴付けられるもの)を処置するのに有用である。さらに、開示された特定の化合物は、1種以上のエストロゲンレセプターに対して選択性を示すので、上記化合物は、状態(自律神経機能障害、認知衰弱、運動機能障害、気分障害、摂食障害および心臓血管障害ならびに異なる型の障害として記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない)を処置するために使用され得る。一般的に、上記化合物は、現在のホルモン置換療法において使用されるステロイドホルモン(例えば、エストロゲン、または合成エストロゲン)に関連する深刻な副作用と同一の副作用の発生を誘導せず、ホルモン置換療法にとって有用である。この開示された化合物はまた、副作用(例えば、現在公知のSERM(例えば、タモキシフェンもしくはラロキシフェン)を用いた処置において直面する副作用(例えば、顔面紅潮)を回避する。より具体的には、開示された化合物は、障害(例えば、虚血誘導性神経死、頭部損傷、アルツハイマー病、温度調節障害(例えば、顔面紅潮)、睡眠周期分裂(sleep cycle disruption)、パーキンソン病、晩発性ジスキネジア、鬱、精神分裂病、神経性食欲不振、神経性大食症、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、長期QTL症候群(例えば、ロマノ−ウォード症候群またはトルサード・ド・ポワント症候群)、骨粗しょう症、慢性関節リューマチ、変形性関節症、骨折、および多発性硬化症が挙げられるが、これらに限定されない)を処置するために使用され得る。一つの実施形態では、特定の化合物は、流体のバランスを調節することにより(例えば、ナトリウムまたはクロライドの上皮輸送をブロックすることにより)血管拡張を促進するために使用され得る。理論に限定されるわけではなく、この化合物は、マキシ−Kチャンネル(maxi−K channel)を活性化することにより機能すると考えられる。Valverdeら、Science 1999,285,1929−1931を参照のこと。
【0084】
別の実施形態では、開示された化合物は、自己免疫疾患、特に男性よりも女性に頻繁に生ずる自己免疫疾患を処置するために使用され得る。このような疾患の例としては、多発性硬化症、慢性間接リューマチ、グレーヴス病、全身性エリテマトーデス、および重症筋無力症が挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態では、開示された化合物は、被験体の免疫の能力を維持または増強するために機能する。さらに、開示された化合物は、特定の型の損傷に対して、予防的な効果を発揮する。例えば、上記化合物は、神経保護薬として使用され得る。実際に、本明細書中で同定される膜結合エストロゲンレセプターをアゴナイズする化合物は、虚血性発作に応答する神経保護薬として作用し、再灌流障害を阻害する。
【0085】
さらに、開示された化合物が1種以上の特定の型のエストロゲンレセプターを選択的に調節する能力のために、開示された化合物は、異なる生理学的効果を媒介する異なるエストロゲンレセプターの寄与を同定するために、使用され得る。開示された化合物はまた、これらの薬剤が作用する、特定のクラスの膜結合レセプターに結合し、かつ、これを調節するために使用され得る。実際、実用的な実施形態の開示された選択的エストロゲンレセプターモジュレーターは、膜結合レセプターに関しては、17β−エストラジオールより10倍高い効力を有し、そして核内エストロゲンレセプターである、(ER)αおよび(ER)βに関しては、17β−エストラジオールより100万倍低い効力を有した。
【0086】
開示された化合物の別の適用は、アフィニティークロマトグラフィーである。現在開示されている化合物の例が、新規の、膜結合エストロゲンレセプターに結合するので、この化合物は、レセプターを精製するか、またはサンプルからこのレセプターを除去するために使用され得る。上記化合物を使用するために、上記化合物は、代表的には、当業者に公知の固形支持体に結合される。上記化合物は、直接的に結合されるか、またはリンカー分子を介して結合され得る。開示された化合物との使用が適切な、例示的なアフィニティークロマトグラフィー技術は、Current Protocols in Protein Science,John Wiley & Sons(J.E.Coliganら、編)に開示される。
【0087】
(IV.合成)
本明細書中に開示される化合物、およびこの開示を考慮すれば医化学分野の当業者に非常に明白になるこのような化合物のアナログが、当業者に周知の多くの方法で調製され得る。特定の化合物を作製するための例示的な方法は、以下に記載される。開示された試薬および反応に鑑み、上記分子の官能性を考慮すれば、これらの方法が、以下に明示的に記載されていない化合物の合成に対して一般化可能であることは、有機化学分野の当業者に理解される。開示された状態を考慮すれば、当業者は、本明細書中に開示される特定の状態に適合しない官能基を有し得る類似の化合物を調製するための代替の方法を認識する。
【0088】
所定の変換において存在する官能基に依存して、変換の間にその基をマスクするための、種々の基に対する保護基が好まれ得る。種々の官能性に対する適切な保護基は、GreeneおよびWuts、Protective Groups in Organic Synthesis;第3版;John Wiley & Sons、New York(1999)に記載されている。
【0089】
開示された化合物を合成するための方法の一つの実施形態が、以下のスキーム3に例示される。スキーム3に関して、この方法は、化合物2を提供する工程、および化合物2を化合物4へと転換する工程を包含する。化合物2は、Weathermanら、Chemistry&Biology 2001,8,427−436により報告されるプロトコールに従って調製された。実用的な実施例では、化合物2は、リチウム−ハロゲン交換条件に供され、続いて、クロロ蟻酸アリルと反応して、化合物4を与える。化合物6は、アリルエステル基のパラジウム−触媒切断を介して調製された。実用的な実施例では、触媒性Pd(PPh3)4がPhSiH3と一緒に使用され、化合物6を生み出した。化合物6は、種々のN−置換アクリルアミド中間体を調製するために使用され得る多様な中間体である。例えば、任意の一級アミンまたは二級アミンが、化合物6とのアミド結合形成反応を介して組み込まれ得る。スキーム3において例示される方法は、E異性体およびZ異性体(それぞれ化合物8および化合物9)の両方を生み出す。
【0090】
【化29】
さらなるSERMが、スキーム4に従って調製され得る。スキーム4に関して、化合物10は、ジフェニルアセチレンから調製され得る。(エチルに加えて)種々のアルキル基が、種々の技術によりこの工程で導入され得る。化合物10において導入されたヨード基は、カルボキシ基(例えば、カルボキシメチルエステル12)を導入するために使用され得、このカルボキシ基は、対応するカルボン酸7へと容易に転換される。カルボン酸7は、種々の一級アミンおよび二級アミンと反応し得、対応するアミド(例えば、8および対応するZ異性体9)が得られる。
【0091】
【化30】
二置換アクリルアミド誘導体は、スキーム5に例示される方法に従って調製され得る。スキーム5に関して、18のビス−アリル化で20が生じる。20とベンズアルデヒドとのアルドール反応で、22が生じ、これが脱離を経て、E異性体およびZ異性体の混合物としての24が得られる。アリル保護基の切断で26が生じ、続いて、アミド結合の形成が生じ、E異性体およびZ異性体(それぞれ、28および30)を形成する。
【0092】
【化31】
スキーム6は、ビニルケトン由来のSERMを合成するための方法の実施形態を記載する。スキーム6に関して、化合物32のアルキル化は、種々の基を導入するために使用され得る多様な反応である。例えば、Rとしては、ヒドロキシ基、保護されたヒドロキシ基、カルボキシ基、保護されたカルボキシ基、アミン、または保護されたアミノ基が挙げられ得るが、これらに限定されない。実用的な実施例では、Rは、ジメチルアミノ基またはピペリジノ基であった。中間体34は、化合物2より調製される化合物のリチウムアニオンと反応し(スキーム3)、脱保護の後、E異性体およびZ異性体(それぞれ38および40)が得られる。
【0093】
【化32】
【実施例】
【0094】
(V.方法および実施例)
前述の開示は、以下の非限定的な実施例において、さらに説明される。
【0095】
(実施例1)
この実施例は、2−(4−tert−ブトキシフェニル)−3−フェニルペンタ−2−エン酸アリルエステル(4)の合成を記載する。
【0096】
【化33】
n−ブチルリチウム(6.68mL、16.7mmol;2.5M)を、−78℃にまで冷却した無水THF(75mL)中の臭化ビニル2(3.00g、8.35mmol)溶液中に滴下した。15分間攪拌した後、クロロ蟻酸アリル(4.43mL、41.8mmol)をニートで滴下した。これを、−78℃から室温にまで、4時間かけて攪拌した。飽和炭酸水素ナトリウムを添加し、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、そして減圧下で濃縮し、黄色の油状物を得た。粗製生成物を、カラムクロマトグラフィー(5%EtOAc/Hex)で精製し、4を、収率59%で淡黄色油状物(1.80g、4.94mmol)として得た。E−異性体のRf=0.20およびZ−異性体のRf=0.14(5% EtOAc/Hex)。
【0097】
【化34】
(実施例2)
この実施例は、2−(4−tert−ブトキシフェニル)−3−フェニルペンタ−2−エン酸(6)の合成を記載する。
【0098】
【化35】
無水ジクロロメタン(10mL)中の化合物4(0.16g、0.439mmol)の溶液に、PhSiH3(0.11mL、0.878mmol)を添加し、続いてPd(PPh3)4(10mg、8.78μmol)を添加した。この反応を室温で、アルゴン下で30分間攪拌した。これを、ddH2Oでクエンチし、1M HClを用いて、pHを2にまで低下させ、ジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そして減圧下で濃縮した。粗製黄色油状物を、カラムクロマトグラフィー(35%EtOAc/Hex)で精製し、収率99%で、白色固形物(0.14g、0.432mmol)を得た。
E−異性体のRf=0.33およびZ−異性体のRf=0.49(10%MeOH/CHCl3)。
【0099】
【化36】
(実施例3)
この実施例は、2−(4−tert−ブトキシフェニル)−3−フェニルペンタ−2−エン酸[4−(2−ジメチルアミノエトキシ)フェニルアミド(7)の合成を記載する。
【0100】
【化37】
HBTU(25.7mg、0.0617mmol)およびDMAP(0.4mg、3.09μmol)を、予め0℃にまで冷却されたジクロロメタン(1mL)中の化合物3(20.0mg、0.0617mmol)の溶液に添加した。この反応を、0℃にて30分間攪拌させ、そして室温にてさらに30分間攪拌した。次いで、0℃に再度冷却し、そしてアミン塩酸塩(14.7mg、0.0679mmol)を添加し、続いて、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)(0.04mL、0.247mmol)を滴下した。この反応を、室温にて30分間攪拌し、次いで、飽和塩化アンモニウムでクエンチし、ジクロロメタンで抽出した。合わせた有機層を、飽和炭酸水素ナトリウムで1回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、そして減圧下で濃縮した。粗製生成物を、カラムクロマトグラフィー(10%MeOH/CHCl3)により精製し、84%の収率で、白色泡状物(25.4mg、0.519mmol)を得た。E−異性体のRf=0.15およびZ−異性体のRf=0.33(10%MeOH/CHCl3)。
【0101】
【化38】
(実施例4)
この実施例は、(E,Z)−2−(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルペンタ−2−エン酸[4−(2−ジメチルアミノエトキシ)−フェニル]アミド(8および9)の合成を記載する。
【0102】
【化39】
化合物7(25.3mg,0.0514mmol)を、無水ジクロロメタン(0.47mL)中に溶解し、0℃にまで冷却した。2,2,2−トリフルオロエタノール(0.37mL)およびトリフルオロ酢酸(0.74mL)を添加し、そして反応混合物を0℃から10℃まで、1.5時間にわたって攪拌した。この時間の後、この溶液を1MのHClに注ぎ、CH2Cl2で抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、そしてこの溶液を減圧下で除去した。この粗製生成物を、カラムクロマトグラフィー(15% MeOH/CHCl3)で精製し、97%収率で、白色泡状物(21.5mg、0.499mmol)を得た。E−異性体8のRf=0.18およびZ−異性体9のRf=0.22(15% MeOH/CHCl3)。
【0103】
【化40】
(実施例5)
この実施例は、1−ヨード−1,2−ジフェニルブタ−1−エン(10)の合成を記載する。
【0104】
【化41】
塩化ジエチルアルミニウム(9.78g、0.393mol)を、無水ジクロロメタン(200mL)中の二塩化ビス(シクロペンタジエニル)チタニウム(21.8mL、0.0393mol;1.8M)の溶液に添加し、そしてこの混合物をアルゴン雰囲気下で、室温で10分間攪拌した。ジフェニルアセチレン(5.0g、0.0281mol)を、ゆっくりと添加し、そして5時間攪拌した。この反応混合物を、−78℃にまで冷却し、そしてジクロロメタン(70mL)で希釈した。N−ヨードスクシンイミド(NIS)(14.5g、0.0645mol)を、添加後の温度を−78℃に保つようにゆっくりと添加し、そしてこの反応を一晩室温で攪拌した。翌日、これをヘキサン(100mL)中に注ぎ、3N NaOH(200mL)中の5% Na2SO3を添加し、そして濾過した。濾過後、この2層を分離し、有機層を5% Na2SO3(200mL)で洗浄し、続いて3N HCl(200mL)および飽和NaHCO3(100mL)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そして減圧下で濃縮した。粗製生成物を、ヘキサン中でカラムクロマトグラフィーにより精製し、76%の収率で、淡褐色油状物(7.15g、0.0214mol)として10を得た。
【0105】
【化42】
(実施例6)
この実施例は、2,3−ジフェニルペンタ−2−エン酸メチルエステル(12)の合成を記載する。
【0106】
【化43】
メタノール(5mL)、DIEA(0.17mL、0.987mmol)およびPdCl2(PPh3)2(107mg、0.153mmol)を、無水DMF中に溶解したヨウ化ビニル10(300mg、0.898mmol)に添加した。一酸化炭素で5分間泡立て、そして反応混合物を、80℃で、CO雰囲気下で3日間攪拌した。この冷却した反応混合物を、酢酸エチルで希釈し、ddH2Oで洗浄し、この層を分離し、そして有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして濾過し、そして減圧下で濃縮した。この粗製生成物を、クロロホルム中でカラムクロマトグラフィーで精製し、83%の収率で生成物(198mg、0.743mmol)を得た。E−異性体のRf=0.47およびZ−異性体のRf=0.53(CHCl3)。
【0107】
【化44】
(実施例7)
この実施例は、2,3−ジフェニルペンタ−2−エン酸(14)の合成を記載する。
【0108】
【化45】
メタノール(4mL)およびTHF(9mL)中の化合物12(50mg,0.188mmol)の溶液に、0.2MのKOH溶液(9.4mL、1.88mmol)を滴下した。次いで、この反応を2日間加熱還流した。翌日、これを1NのHCl(10mL)中に注ぎ、10分間攪拌し、CHCl3で抽出し、硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させ、濾過し、そして減圧下で濃縮した。この粗製生成物をカラムクロマトグラフィー(5% MeOH/CHCl3)により精製し、68%収率で、白色固形物(32mg、0.127mmol)を得た。E−異性体のRf=0.33およびZ−異性体のRf=0.47(5%のMeOH/CHCl3)。
【0109】
【化46】
(実施例8)
この実施例は、E−2,3−ジフェニルペンタ−2−エン酸[4−(2−ジメチルアミノエトキシ)−フェニル]アミドおよびZ−2,3−ジフェニルペンタ−2−エン酸[4−(2−ジメチルアミノエトキシ)−フェニル]アミド(16および17)の合成を記載する。
【0110】
【化47】
化合物16および17を、(E異性体およびZ異性体の混合物としての)化合物14(29mg、0.115mmol)、HBTU(48mg、0.126mmol)、DMAP(0.7mg、5.7μmol)、アミン塩酸塩(27mg、0.126mmol)、およびDIEA(0.08mL、0.459mmol)を用いて、化合物8および9(実施例4)について記載したように合成し、32%の収率で、所望の生成物17(19mg、0.0488mmol)を得、そして60%の収率で、所望の生成物16(29mg、0.070mmol)を得た。E−異性体16のRf=0.15およびZ−異性体17のRf=0.10(5%のMeOH/CHCl3)。
【0111】
【化48】
(実施例9)
この実施例は、(4−アリルオキシフェニル)酢酸アリルエステル(20)の合成を記載する。
【0112】
【化49】
水素化ナトリウム(1.90g、0.0789mmol)を無水DMF(70mL)中に懸濁し、0℃にまで冷却した。4−ヒドロキシフェニル酢酸18(5.00g、0.329mmol)をDMF(30mL)中に溶解し、冷却した水素化ナトリウム懸濁液に添加し、そして室温で2時間攪拌した。この時間の後、この反応物を0℃にまで再度冷却し、そして臭化アリル(11.3mL、0.131mmol)を添加した。4.5時間室温で攪拌した後、これを飽和ブライン中に注ぎ、エーテルで抽出し、10%のKOH、次いでブラインで有機層を洗浄した。この有機層を、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そして減圧下で濃縮した。この粗製生成物を、カラムクロマトグラフィー(CHCl3)により精製し、65%の収率で油状物(4.97g、0.0214mmol)を得た。Rf0.68(CHCl3)。
【0113】
【化50】
(実施例10)
この実施例は、2−(4−アリルオキシ−フェニル)−3−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオン酸アリルエステル(22)の合成を記載する。
【0114】
【化51】
LHMDS(9.47mL、9.47mmol)を、予め−78℃に冷却した無水THF(120mL)中の20(2.00g、8.61mmol)の溶液に添加した。ベンズアルデヒド(0.88mL、8.61mmol)を、THF中に溶解し、そして冷却混合物中に添加した。この反応を、−20℃にまで暖め、そして一晩攪拌した。翌日、これを飽和塩化アンモニウムでクエンチし、EtOAcで水層を抽出し、有機層と合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そして減圧下で濃縮した。この粗製生成物を、カラムクロマトグラフィー(10% EtOAc/Hex)により精製し、69%の収率で、化合物22(2.01g、5.94mmol)を得た。Rf0.16(10% EtOAc/Hex)。
【0115】
【化52】
(実施例11)
この実施例は、化合物2−(4−アリルオキシフェニル)−3−フェニルアクリル酸アリルエステル(24)の合成を記載する。
【0116】
【化53】
0℃に冷却したジクロロメタン(10mL)中の22(1.00g、2.96mmol)の溶液に、トリエチルアミン(TEA)(1.2mL、8.87mmol)を添加し、続いて、塩化メシル(MsCl)(0.46mL、5.91mmol)を添加した。この反応を2時間攪拌し、次いで、エーテルで希釈し、セライトのプラグを通して濾過し、そして減圧下で濃縮した。粗製メシラートを、無水THF(40mL)中で希釈し、0℃にまで冷却し、そして1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)(1.3mL、8.87mmol)を添加した。室温にて2時間攪拌した後、10% HClを添加し、クロロホルムで抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム、およびブラインで洗浄し、次いで有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そして減圧下で濃縮した。この粗製生成物を、カラムクロマトグラフィー(15% EtOAc/Hex)により精製し、収率95%で10(0.90g,2.81mmol)を得た。Rf0.59(15% EtOAc/Hex)。
【0117】
【化54】
(実施例12)
この実施例は、2−(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルアクリル酸(26)の合成を記載する。
【0118】
【化55】
PhSiH3(0.78mL、6.24mmol)を、THF(35mL)中の24の溶液に添加し、続いて、Pd(PPh3)4を室温で添加した。この反応を、アルゴン下で15分間、室温で攪拌した。これを、ddH2Oを添加することによりクエンチし、1N HClを添加し、このpHを2にまで低下させ、ジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そして減圧下で濃縮した。この粗製混合物を、カラムクロマトグラフィー(1:1のEtOAc/Hex)により精製し、収率71%で、26(266.9mg、1.11mmol)を得た。Rf0.33(5%EtOAc/Hex)。
【0119】
【化56】
(実施例13)
この実施例は、E−N−[4−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−フェニル]−2−(4−ヒドロキシ−フェニル)−3−フェニル−アクリルアミド、およびZ−N−[4−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−フェニル]−2−(4−ヒドロキシ−フェニル)−3−フェニル−アクリルアミド(それぞれ28および30)の合成を記載する。
【0120】
【化57】
化合物28および30を、化合物26(266mg、1.11mmol)、HBTU(462mg、1.22mmol)、DMAP(6.8mg、55.4μmol)、アミン塩酸塩(264mg,1.22mmol)およびDIEA(0.77mL、4.43mmol)を用いて、化合物8および9(実施例4)について記載したように合成し、16%の収率で、所望の生成物(72mg、0.178mmol)を得た。Rf0.27(10% MeOH/CHCl3)。
【0121】
【化58】
(実施例14)
この実施例は、4−(2−ジメチルアミノエトキシ)ベンゾエート(42)の合成を記載する。
【0122】
【化59】
THF(80mL)中のメチル−4−ヒドロキシベンゾエート32(3.00g、19.7mmol)の溶液に、塩化ジメチルアミノエチル(2.84g、19.7mmol)、炭酸セシウム(34.78g、9.86mmol)、ヨウ化カリウム(65.5mg、0.394mmol)を添加し、そして一晩還流しつつ攪拌した。室温にまで冷却した後、ddH2Oを添加し、クロロホルムで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そして減圧下で濃縮した。この粗製生成物を、カラムクロマトグラフィー(10% MeOH/CHCl3)により精製し、79%の収率で12a(3.47g、15.5mmol)を得た。Rf0.31(10% MeOH/CHCl3)。
【0123】
【化60】
(実施例15)
この実施例は、4−(2−ピペリジン−1−イルエトキシ)ベンゾエート(44)の合成を記載する。
【0124】
【化61】
メチル−4−ヒドロキシベンゾエート(4.00g、2.62mmol)、1−(2−クロロエチル)ピペリジン塩酸塩(4.76g、2.62mmol)、炭酸カリウム(18.16g、13.14mmol)、ヨウ化カリウム(43.6mg、0.526mmol)およびDMF(100mL)を用いる、化合物42(実施例14)と同一の手順。この粗製生成物を、カラムクロマトグラフィー(5% MeOH/CHCl3)により精製し、80%の収率で、化合物44(5.54g、2.10mmol)を得た。
【0125】
【化62】
(実施例16)
この実施例は、4−(2−ジメチルアミノエトキシ)−N−メトキシ−N−メチルベンズアミド(46)の合成を記載する。
【0126】
【化63】
化合物44(2.69g、12.0mmol)および塩酸メチルメトキシアミン(1.82g、18.7mmol)を、無水THF(100mL)中に懸濁し、そして−20℃にまで冷却した。塩化イソプロピルマグネシウム(17.6mL)を滴下し、その間、温度を−10℃未満に維持した。この反応を、室温にまで暖め、そして一晩攪拌した。飽和塩化アンモニウムを添加し、エーテルで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そして減圧下で濃縮した。粗製生成物を、カラムクロマトグラフィー(10%MeOH/CHCl3)により精製し、67%の収率で、化合物46(2.04g、8.09mmol)を得た。Rf0.26(10%MeOH/CHCl3)。
【0127】
【化64】
(実施例17)
この実施例は、N−メトキシ−N−メチル−4−(2−ピペリジン−1−イルエトキシ)ベンズアミド(48)の合成を記載する。
【0128】
【化65】
従った手順は、化合物46に関する手順と同一であり、化合物44(2.00g、7.60mmol)、塩酸メチルメトキシアミン(1.15g、11.77mmol)、塩化イソプロピルマグネシウム(11.36mL、2.0M THF)およびTHF(80mL)を用いた。この粗製生成物を、カラムクロマトグラフィー(10%MeOH/CHCl3)により精製し、91%の収率で、化合物48(2.01g、6.88mmol)を得た。Rf0.41(10%MeOH/CHCl3)。
【0129】
【化66】
(実施例18)
この実施例は、2−(4−tert−ブトキシフェニル)−1−[4−(2−ジメチルアミノエトキシ)−フェニル]−3−フェニルペンタ−2−エン−1−オン(50)の合成を記載する。
【0130】
【化67】
THF(10mL)中の臭化ビニル2(200mg、0.556mmol)の溶液を、−78℃にまで冷却し、そしてt−ブチルリチウム(0.69mL、1.16mmol)を添加した。45分間の攪拌後、化合物46(140mg、0.556mmol)を添加し、そして−78℃から室温まで、3時間にわたって攪拌した。この反応を、飽和塩化アンモニウムでクエンチし、クロロホルムで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして減圧下で濃縮した。この粗製混合物を、カラムクロマトグラフィー(10%MeOH/CHCl3)により精製し、10%の収率で、化合物50(22mg、0.0466mmol)を異性体の混合物として得た。Rf0.49(10%MeOH/CHCl3)。
【0131】
【化68】
(実施例19)
この実施例は、2−(4−tert−ブトキシフェニル)−3−フェニル−1−[4−(2−ピペリジン−1−イルエトキシ)−フェニル]ペンタ−2−エン−1−オン(52)の合成を記載する。
【0132】
【化69】
化合物50を調製するために使用される手順に従い、臭化ビニル(200mg、0.556mmol)、THF(10mL)、t−ブチルリチウム(0.65mL、1.11mmol)および化合物48(163mg、0.556mmol)を使用した。この粗製化合物を、カラムクロマトグラフィー(10% MeOH/CHCl3)により精製し、10%の収率で、化合物52を異性体混合物として得た。Rf0.44(10% MeOH/CHCl3)。
【0133】
【化70】
(実施例20)
この実施例は、1−[4−(2−ジメチルアミノエトキシ)−フェニル]−2−(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルペンタ−2−エン−1−オン(54)の合成を記載する。
【0134】
【化71】
50の脱保護について、8および9(実施例4)を調製するために使用したのと同一の手順を使用した。以下の量の試薬を使用した:50(22mg、0.0464mmol)、トリフルオロエタノール(0.34mL)、トリフルオロ酢酸(0.66mL)、およびジクロロメタン(0.66mL)。この粗製生成物を、分取TLC(10%MeOH/CHCl3)を用いて精製し、収率58%で、54を異性体の混合物(11mg、0.265mmol)として得た。Rf0.26(10% MeOH/CHCl3)。
【0135】
【化72】
(実施例21)
この実施例は、2−(4−ヒドロキシ−フェニル)−3−フェニル−1−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−ペンタ−2−エン−1−オン(56)の合成を記載する。
【0136】
【化73】
52の脱保護に関して、8および9(実施例4)を調製するために使用したのと同一の手順を使用した。以下の試薬の量を使用した:52(28mg、0.0547mmol)、トリフルオロエタノール(0.40mL)、トリフルオロ酢酸(0.78mL)、およびジクロロメタン(0.78mL)。粗製生成物を、分取TLC(10%MeOH/CHCl3)を用いて精製し、収率54%で、56を異性体の混合物(13mg、0.286mmol)として得た。Rf0.11(10% MeOH/CHCl3)。
【0137】
【化74】
(実施例22)
この実施例は、以前にまだ同定されていない膜結合エストロゲンレセプターの同定および特性決定、ならびにSERMの同定および評価のためのアッセイを記載する。
【0138】
(SERMのアッセイおよびスクリーニングのための一般的な方法)
雌性Topekaモルモット(400g〜600g)(これらは、Oregon Health Sciences Universityの飼育施設で飼育された)および雌性の多彩なモルモット(400g〜500g、Elm Hill、MA)を使用した。このモルモットを、一定の温度(26℃)および光の下に維持した(06:30〜20:30の間)。動物を個々に収容し、食物と水を無制限に提供した。実験の5日〜7日前に、ケタミン/キシラジン(それぞれ、33mg/kgおよび6mg/kg;皮下)の麻酔薬の下でこの動物から卵巣を摘出し、そしてゴマ油のビヒクル(0.1mL、皮下)を実験の24時間前に上記動物に与えた。血清エストロゲン濃度を、実験日に収集した体幹血液からラジオイムノアッセイにより決定し(Wagnerら、2001)、そして血清エストロゲン濃度は、10pg/mL未満であった。さらなる群の動物(n=6)を卵巣摘出し、そして1週間後に、屠殺の24時間前に、油状物のビヒクル、安息香酸エストラジオール(油状物中に25μg)または化合物8(実施例4、油状物中に25μg)を注射した。
【0139】
これらの研究において、野生型C57BL/6マウスを、Jackson Laboratoriesから得た。すべての動物を、制御温度(25℃)下で維持し、そして光周期の条件(14時間の明期、10時間の暗期;明期は、0700〜2100)で維持し、食物および水を無制限に提供した。成熟マウスを、イソフルラン麻酔の下で卵巣摘出し、そして1週間回復させた。この時点で、この動物に、2日間、油状物ビヒクル、安息香酸エストラジオール(EB;1μg)または化合物8(2μgもしくは5μg)を注射し、麻酔をかけ、そして24時間後に、断頭により殺した。後の組織学的分析のために、子宮を収集し、秤量し、4%のパラホルムアルデヒドで固定した(データは示さず)。
【0140】
(市販薬物:)
薬物は、他に明記しなければ、Calbiochem(LaJolla,CA,USA)より購入した。テトロドトキシン(TTX;Alomone、Jerusalem,Israel)を、Milli−Q H2O中に溶解し、そして0.1%の酢酸でさらに希釈した(最終濃度1mM;pH4−5)。17β−エストラジオール(17β−エストラジオール)を、Steraloids(Wilton,NH,USA)より購入し、再結晶して純度を確保し、そして100%エタノール中に溶解して、ストックの濃度を1mMにした。17α−エストラジオール(1mM、Steraloids)、抗エストロゲン:ICI 182,780(10mM,Tocris Cookson,Ballwin,MO)、および選択的エストロゲンレセプターモジュレーターである4−OH−タモキシフェン(10mM、Steraloids)、ラロキシフェン(10mM、Eli Lilly、Indianapolis,IN)ならびに化合物8(10mM)をまた、100%のエタノール中に溶解した。17β−エストラジオール、17−ヘミコハク酸:BSA(17β−エストラジオール−BSA、1mM、Steraloids)をH2O中に溶解した。プロテインキナーゼAのインヒビター、H−89二塩酸塩(10mM)、プロテインキナーゼAの活性化剤であるフォルスコリン(50mM)、プロテインキナーゼCのインヒビターである塩酸ビスインドリルマレイミドI(BIS、100μM)、Gou6976(2mM)、およびロッテリン(rottlerin)(10mM)、ホスホリパーゼCインヒビターであるU73122(20mM)、より活性の低いアナログU73343(20mM)およびMEK1インヒビターであるPD98059(50mM)を、DMSO中に溶解した。プロテインキナーゼA抑制性ペプチドである6−22 Amide(1mM)、プロテインキナーゼAインヒビター:Rp−cAMPS(50mM)、およびコレラトキシンAサブユニット(1μg/μL)を、H2O中に溶解した。GqのαサブユニットのC末端を模倣するように設計されたGq結合タンパク質、およびGsのαサブユニットのC末端を模倣するように設計されたGsのα結合タンパク質を、PeptidoGenic Research(Livermore,CA)により合成した。Gqペプチドのペプチド配列は、Ac−LGLNLKEYNLV−OHであり、そしてGsペプチドのペプチド配列は、CRMHLRQYELLであった。このペプチドはまた、H2O中に溶解した。BAPTAテトラナトリウム塩(1,2−ビス−(o−アミノフェノキシエタン)−N,N,N’,N’−四酢酸)を、10mMの濃度にて、内液(internal solution)中に溶解した。ストック溶液のアリコートを、必要とされるまで十分貯蔵した。
【0141】
(統計学的分析:)
一元分散分析(およびpost hoc(Newman−Keuls)対分析(paired analysis))を用いて、群間の比較のための統計的分析を行った。誤差の可能性が5%未満である場合、偏差を統計上有意であるとみなした。
【0142】
(組織の調製:)
実験日に、この動物を断頭し、この動物の脳を頭蓋から除去し、そして視床下部を解剖した。得られた視床下部のブロックを、プラスチックの切断プラットフォーム上に載せ、次いで、このプラスチックの切断プラットフォームを、氷冷し、酸素付加(95% O2、5% CO2)した人工脳脊髄液(aCSF、mM単位:NaCl、124;NaHCO3 26;デキストロース、10;HEPES、10;KCl,5;NaH2PO4、2.6;MgSO4、2;CaCl2,1)で十分に満たしたビブラトーム中に固定した。弓状物を通して、冠状の切片(350μm)4枚に切り取った。このスライスを、酸素付加したaCSFを含有するマルチウェル補助的チャンバーに移し、そして約2時間後の電気生理学的記録まで、そこに維持した。
【0143】
(電気生理学:)
電圧クランプにおける細胞全体パッチ記録を、以前に記載されたように遂行した(Wagnerら、2001)。手短に言えば、スライスを、暖め(35℃)、酸素付加したaCSFで灌流されたチャンバー中に維持し、この酸素付加したaCSFは、同一の成分および各々の濃度(CaCl2を除く。CaCl2の濃度は、2mMまで上昇した)を含有した。人工的なCSF(aCSF)およびあらゆる薬物溶液を、1.5mL/分の速度で蠕動ポンプを介して灌流した。aCSFを含む十分なストック溶液で希釈することにより、薬物溶液を20mLのシリンジ中に調製し、そしてこの流れを、三方コックを介して制御した。
【0144】
細胞全体の記録のために、電極をホウケイ酸ガラスから組み立てた(World Precision Instruments,Inc.Sarasota,FL,USA;1.5mm O.D.)。次いで、組み立てた電極を、内液(0.5%のビオシチンを含有し、以下(mM単位):K+、グルコン酸、128;NaCl、10;MgCl2、1;EGTA、11;HEPES、10;ATP、1.2;GTP、0.4からなり;pHを、1NのKOHで7.3−7.4に調節し;272〜315mOsm)で満たした。Axopatch 1D前置増幅器(Axon Instruments,Union City,CA)を使用して、電圧のパルスを増幅し、そして電極を通過させた。生じた電流の偏位を、デジタルオシロスコープ(Tektronix 2230、Beaverton,OR,USA)を用いてモニタリングした。電流の偏位(deflection)の減少の際に、ポリエチレンチューブにより電極に接続された5mLのシリンジを介して陰圧を付与し、シール(>1GΩ)を形成した。シールの形成に続いて、吸入、これに続いて、少なくとも4分間〜6分間の、1μM TTXの灌流により、細胞内アクセスを達成し、自発発火(spontaneous firing)およびシナプス性電位をブロックし、その後、GABABレセプターアゴニストであるバクロフェンを適用した(図1)。バクロフェンに対するすべての応答を、外向き電流(V保持=−60mV)として電位クランプ中で測定し、そして記録中ずっとアクセス抵抗が10%未満の変化を示した細胞(アクセス抵抗は、20MΩ〜30MΩの範囲であった)のみを本研究に包含した。膜電流は、pClamp7.0(Axon Instruments,Union City,CA)に結合されたDigidata 1200インターフェースを介してアナログ−デジタル転換を経た。この電流の低パスフィルタリングを、2KHzの周波数で行った。液間の電位は、−10mVであり、そして後のデータ分析のために較正した。
【0145】
(視床下部弓状ニューロンのPost−hoc同定:)
電気的生理学的記録に続いて、このスライスを、Sorensen’sリン酸化緩衝液(pH7.4)中で120分間、4%のパラホルムアルデヒドで固定し、Sorensen’sリン酸化緩衝液に溶解した20%のスクロース中で一晩液浸し、次いで、O.C.T.包埋媒質中で凍結し、そして免疫細胞学に関して、前に記載されたように調製した(KellyおよびRonnekleiv、1994)。手短に言えば、冠状断面(20μm)を低温槽上で刻み(Leitz Model 1720Digital Cryostat)、そしてFisher SuperFrost Plusスライドの上に載せた。断面を、0.1Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)で5分間洗浄し、次いで、ストレプトアビジン−Cy2(Jackson ImmunoResearch Laboratories,PA)(1:1000)を2時間適用した。この反応を、緩衝液で洗浄することにより終了した。このスライスをNikon Eclipse 800蛍光顕微鏡(Nikon Instruments,Melville,NY)を用いて、注射ニューロンについてスキャンした。ビオシチンで満たしたニューロンの位置確認の後、適切な断片を含むスライドを、蛍光免疫組織化学を用いて、以前に記載のようにチロシンヒドロキシラーゼ(TH)またはβ−エンドルフィンの存在について調査分析した(KellyおよびRonnekleiv、1994)。手短に言えば、ビオシチン同定ニューロン有する断面を、モノクローナルTH抗体(1:10,000)(Diasorin,Stillwater,MN)またはポリクローナルβ−エンドルフィン抗体(1:5,000)(Daveら、1985)と一緒に一晩インキュベートし、0.1Mのリン酸緩衝液で洗浄し、続いて、それぞれヤギ抗マウスIgG−Cy3(1:500)またはロバ抗ウサギIgG−Cy3(1:500)(Jackson ImmunoResearch Laboratories,PA)とともにインキュベートした。断面を、リン酸ナトリウム緩衝液で洗浄し、そして5%のN−プロピル没食子酸塩を含有するグリセロールグリシン緩衝液を使用して、カバーガラスをつけた。免疫染色した細胞を、Nikon顕微鏡を用いて撮影した。図2を参照のこと。
【0146】
(エストロゲンレセプター結合アッセイ:)
エストロゲンレセプター(ER)αおよび(ER)βに対する化合物の相対的な結合親和性を、市販された全長形態の(ER)αおよび(ER)β(PanVera Corp,Madison,WI,USA)の両方と一緒に、スピンカラムアッセイを用いて決定した。溶液の最終濃度が15nMになるようにレセプターを4℃で添加した(この溶液は、10mM Tris,pH7.5,10% グリセロール、2mM DTTおよび1mg/mL BSAならびに3nM[2,4,6,7,16,17−3H]エストラジオールを含有した)。この溶液の100μLを、エタノール中のリガンド(1μL)に添加し、ピペッティングにより穏やかに混和し、そして4℃で一晩インキュベートした。次いで、この混合物を、G−25 Sephadex(Harvard Apparatus Inc.)を含有するミクロスピンカラムへと適用し、このカラムを、製造業者の指示に従って、結合緩衝液(トリチウム化したエストラジオールは含まず)で平衡化した。結合されたエストラジオールを、2000×gで4分間、室温でスピンすることにより、遊離リガンドから単離した。次いで、この濾液を、2.5mLのシンチラント(scintillant)に添加し、そして液体シンチレーションカウンターで計測した。結合曲線を、Prism(GraphPad Software,San Diego,CA)統計分析ソフトウェアパックを用いた単結合部位競合モデルとフィットさせた。EC50値から、標準偏差を、0.2log単位未満であると決定した。次いで、相対的な結合親和性の百分率を、未標識のエストラジオールに対して決定されたIC50を、リガンドのIC50で除し、そして100を乗じることにより、決定した。
【0147】
(分散した単一細胞RT−PCR:)
モルモットの350μmの冠状視床下部スライスを、尾から吻にまで、ビブラトーム上で刻み、酸素付加したaCSFを含有する補助的チャンバー中に置いた。このスライスを、分散の前にチャンバー中で1時間〜2時間回復させた。視床下部の弓状核を、顕微解剖し、そして2−3mLのHank平衡塩類溶液(HBSS(mM単位);1mg/mLのプロテアーゼXIVを含有するDEPC−処理した水(Sigma、St.Louis,MO)中の、CaCl2、1.26;MgSO4、1;KCl,5.37;KH2PO4、0.44;NaCl、136.89;Na2HPO4、0.34;D−グルコース、5.55;Hepes,15)2−3mL中で、約15分間、37℃でインキュベートした。次いで、この組織を1容積の低カルシウムaCSFで4回洗浄し、そしてHBSSで2回洗浄した。この細胞を、火であぶって清潔にした(flame−polished)パスツールピペットを用いたすりつぶし(trituration)により単離し、ディッシュ上に分散し、そして連続的にHBSSで1.5mL/nの速度で灌流した。細胞を、Nikon倒立顕微鏡を用いて可視化し、そして個々のニューロンをパッチし、そして陰圧を付与することによりパッチピペット中に収集した。このピペットの中身を、シリコン化微小遠心用チューブへと発射し、このシリコン化微小遠心用チューブは、5μLの以下の溶液:0.5μLの10×緩衝液(100mMのTris−HCl、500mM KCl、1% Triton−X 100;Promega,Madison,WI)、15U RNasin(Promega)、0.5μL 100mM DTTおよびDEPC−処置水を含有した。
【0148】
さらに、視床下部の組織を、ホモジェナイズし、そして全RNAを、製造業者のプロトコールに従ってRNeasyキット(Qiagen、Valencia,CA)を用いて抽出した。収集した細胞溶液および25ngの視床下部全RNA(1μL)を、5分間65℃で変性させ、5分間氷上で冷却し、次いで、50U MuLV逆転写酵素(Applied Biosystems,Foster City,CA)、1.5μLの10×緩衝液、2mMのMgCl2、0.2μLのデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)、15UのRNasin、10mMのDTT、100ngのランダムヘキサマーおよびDEPC処理水を最終容積が20μLになるように添加することにより、一本鎖cDNAを細胞のRNAから合成した。ネガティブなコントロールとして使用される細胞のRNAおよび組織のRNAを、上記のように処理したが、逆転写酵素はなしにした。この反応混合物を、42℃で60分間インキュベートし、99℃で5分間変性させ、そして氷上で5分間冷却した。
【0149】
PCRを、各RT反応からのcDNAテンプレート(3μL)を用いて、PCR反応容積を30μLにして実行し、このPCR反応容積(30μL)は、3μLの10×緩衝液、2.4μLのMgCl2(TH、POMC、GABAB−R2、PKCδ、アデニリルシクラーゼVIIおよびGAPDHのために、最終濃度2mM)、または3.6μLのMgCl2(GADのために最終濃度3mM)、0.2mM dNTP、0.2μMのフォワードプライマーおよびリバースプライマー、2ユニットのTaq DNAポリメラーゼ(Promega)、ならびに0.22μgのTaqStart Antibody(Clontech,Palo Alto,CA)を含有した。Taq DNAポリメラーゼおよびTaqStart Antibodyを合わせ、室温で5分間インキュベートし、反応内容物の残りをチューブに添加し、そして94℃で2分間インキュベートした。次いで、各反応を、60サイクル(GAPDHに関しては、35サイクル)の増幅を、以下のプロトコール:94℃、45秒;55℃(GAD)、57℃(PKCδ)、58℃(GABAB−R2)、60℃(THおよびアデニリルシクラーゼVII)、61℃(POMC)、63℃(GAPDH)45秒;72℃、1分10秒;最終72℃で5分間伸張、に従って行った。10マイクロリットルのPCR生成物を、エチジウムブロマイドを用いて、1.5%のアガロースゲル上で可視化した。
【0150】
プライマーはすべて、Invitrogen(Carlsbad,CA)により合成し、以下の通りであった;モルモットGAD65;207bp生成物、フォワードプライマー
【0151】
【化75】
リバースプライマー
【0152】
【化76】
モルモットTH;223bpの生成物、フォワードプライマー
【0153】
【化77】
リバースプライマー
【0154】
【化78】
モルモットGABAB−R2;241bpの生成物、フォワードプライマー
【0155】
【化79】
リバースプライマー
【0156】
【化80】
モルモットPOMC(登録番号S78260);344bpの生成物、フォワードプライマー(塩基40〜塩基60)
【0157】
【化81】
リバースプライマー(塩基383〜塩基363)
【0158】
【化82】
モルモットGAPDH;212bpの生成物(登録番号CPU51572)、フォワードプライマー
【0159】
【化83】
リバースプライマー
【0160】
【化84】
。ヒトのプロテインキナーゼCδ;251bpの生成物(登録番号L07861)フォワードプライマー(塩基1127〜塩基1147)
【0161】
【化85】
リバースプライマー(塩基1377〜塩基1357)
【0162】
【化86】
。モルモットのアデニリルシクラーゼVII;235bpの生成物、フォワードプライマー
【0163】
【化87】
リバースプライマー
【0164】
【化88】
。
【0165】
(17β−エストラジオールおよびSERMは、視床下部ドパミンニューロンおよびプロ−オピオメラノコルチン(POMC)ニューロンにおいて、迅速にGABAB応答を減衰する)
以下のデータは、17β−エストラジオールおよびSERMが、視床下部ニューロンにおいて、迅速にバクロフェン誘導型GABAB応答を減衰することを示し、これは、これらの化合物が、非転写性の事象を通して神経伝達に影響することを示す。細胞全体の記録を、卵巣摘出された雌性モルモットの弓状ニューロン(n=195)について作成した。図1は、細胞全体パッチ、電圧クランプ研究(V保持=−60V)における、薬物投与のプロトコールを例示するための図である。シールが形成され、そして細胞全体の立体配置が得られた後、スライスをTTX(1μM)で5分間灌流した。第1のGABABレセプター媒介性応答を、(EC50濃度50μMにて)GABABアゴニストのバクロフェンを灌流することにより生成し、ついに、安定状態の外向き電流を得た(第1の応答、R1)。バクロフェンの洗浄の後、この電流は、薬物投与前の静止レベルにまで回帰した。次いで、この細胞を、17β−エストラジオールおよび/または他の薬物で15分間処理し、そしてバクロフェン(5μM)で再度灌流し、そして第2の応答(R2)を測定した。17β−エストラジオールおよび/または他の薬物のバクロフェン応答に対する効果を、R2/R1のパーセントとして表現する。これらのニューロンのサブグループ(n=55)を、二重標識免疫細胞学を用いて同定した(データおよび画像は示さず)。これで、上記細胞の41%がTH−ポジティブ(すなわち、ドパミンニューロン)であり、そして39%がβ−エンドルフィン−ポジティブ(すなわち、POMCニューロン)であることがわかった。さらに、GAD65の、二重免疫細胞学的染色およびインサイチュのハイブリダイゼーションに基づき、弓状ドパミンニューロンのサブグループは、GABAを共発現し(Ronnekleiv、未公開の知見)、これは、scRT−PCRのデータ(以下を参照)により立証した。電気生理学的分析のために、GΩのシールまたはよりよいシールを有する細胞のみをこの研究に含めた。平均的な静止膜電位が、0pAの保持電流で、−54.3±0.4mVであり、そして平均的な入力抵抗は、1.9±0.3GΩであった。さらに、A12ドパミンニューロンの50%は、T型のCa2+電流および過分極活性化された、カチオン電流(Ih)(Looseら、1990)を示した。POMCニューロンの71%が、Ihおよび一時的な外向きK+電流(IA)(Kellyら、1990)を示した。従って、細胞全体のパッチの記録を用いて測定される受動的な膜の特性は、単一の電極電位クランプ記録を用いて得られる結果に類似する(Looseら、1990;Kellyら、1990)。
【0166】
細胞全体の記録方法を使用して、GABABレセプターアゴニストのバクロフェンによる、17β−エストラジオールのGタンパク質共役型内向き整流性K+チャネル(GIRK)のコンダクタンスの活性化に対する迅速な効果を測定した。17β−エストラジオールは、視床下部の弓状ニューロンにおいて、オピオイドレセプター媒介性の応答およびGABABレセプター媒介性の応答の両方を迅速に減衰する(Lagrangeら、1994;Lagrangeら、1996;Lagrangeら、1997)。従って、GABAB応答の17β−エストラジオールのモジュレーションを測定するために、図1に記載のプロトコールに従って、バクロフェンのEC50濃度(5μM)を用いた。強固な外向き電流を、バクロフェンに対する応答(これは、洗い流し後に弱まる)において測定した(図5のグラフAおよび図6)。バクロフェンの適用により、20分後に、同一の強固な応答が生起し、これは、脱感作およびランダウンが5μMのバクロフェンの連続的な適用に応答して生じないことを示した。しかし、17β−エストラジオール(100nM)を、暫定期間の間に(すなわち、第1のバクロフェンの適用の洗い流し後)適用した場合、バクロフェンの第2の適用に対する応答の、41%の有意な減少があった(p<0.005)(図5のグラフBおよび図6)。100nMの17β−エストラジオールの適用の前またはその間に生じた電流/電圧の関係は、このステロイドが、バクロフェン媒介性の応答についての逆の電位を変化させないことを示した:コントロールEバクロフェン=−88.8±3.6mV、n=13;これに対し、100nMの17β−エストラジオールの適用の後のEバクロフェン=−85.4±3.9mV、n=12(図3Aおよび図3B)。17β−エストラジオールの作用は、立体特異的であったので、その結果、生物学的に不活性な立体異性体である17β−エストラジオール(100nM)は、バクロフェンの応答にまったく効果がなかった(図5のグラフCおよび図6)。さらに、17β−エストラジオールとともに灌流した場合、17β−エストラジオールの作用を、抗エストロゲンICI182,780によりブロックした(図6)。ICI182,780のみを用いた処置では、バクロフェン応答にまったく効果がなかった(データは示さず)。
【0167】
この以前に同定されていなかったエストロゲンレセプターを、膜不透過性エストロゲン結合体である17β−エストラジオール−BSAを用いることにより、膜結合していると決定した。17β−エストラジオール−BSA(100nM)は、バクロフェン応答を阻害するのに十分に有効であって、これは、このエストロゲンレセプター媒介性の応答が原形質膜で開始されることを示唆する(図5のグラフDおよび図6)。17β−エストラジオール−BSAの調製の完全性を、このスライスの灌流液の17β−エストラジオールのラジオイムノアッセイを行うことにより、立証した。未結合の17β−エストラジオールは、この媒体中には検出されず(データは示さず)、これは、17β−エストラジオール−BSA結合体が、遊離17β−エストラジオール不純物を含まないことを示唆した。
【0168】
以前に同定されていない、膜結合エストロゲンレセプターを、いくつかのSERMを用いることにより特徴付けた。タモキシフェン(1μM)は、不活性(コントロールとの比較においてp>0.05)であり、そしてGIRKのバクロフェン活性化の際に17β−エストラジオールの効果を減衰しなかった(17β−エストラジオールについてのR2/R1:58.6±3.4%、n=10;それに対して、タモキシフェン+17β−エストラジオール:60.4±6.6%、n=5)。しかし、4−OHタモキシフェン(1μM)は、バクロフェン応答を25%だけブロックすることにより、17β−エストラジオールの作用を部分的に模倣した(図6)。図6に関して、17β−エストラジオール(100nM)は、GABABレセプター媒介性外向き電流を41%だけ減衰した。17β−エストラジオールのバクロフェン応答に対する阻害的作用を、エストロゲンレセプターアンタゴニストICI182,780(1μM)によりブロックした。ウシ血清アルブミンに結合したエストロゲン(17β−エストラジオール−BSA、100nM)、4−OHタモキシフェン(1μM)、ラロキシフェン(1μM)、GW5638(1μM)および化合物8(10nM)はまた、バクロフェン応答を阻害したが、17α−エストラジオール(1μM)は、効果なしであった。バーは、群ごとに試験された4個〜11個の細胞の平均値±S.E.M.を表す(***p<0.005、**p<0.01、*p<0.05、これに対して、ビヒクル−コントロール群)。4−OHタモキシフェンは、常にオレフィン異性体のE/Z混合物として存在するので(Katzenellenbogenら、1985)、これらの異性体のうち一方のみが、この新規のエストロゲン応答を媒介するのに活性であり得る。ラロキシフェン(1μM)(ヒドロキシル化された芳香族環を有する別のSERM)は、バクロフェン応答を抑制する効力という観点で完全に17β−エストラジオールの作用を模倣した(図6)。これに対して、ヒドロキシル化されていないSERMであるGW−5638(これは、構造的にタモキシフェンのトリフェニルエチレンのコア部分に類似する)は、バクロフェンによるGIRKチャンネルの活性化を阻害するのに17β−エストラジオールよりも有意に効力があることを見出した(図6)。
【0169】
(化合物8は、迅速な応答を選択的に減衰させる核内ER活性を欠くSERMである:)
上に言及される化合物のすべては、核内エストロゲンレセプターに対して、親和性の高いリガンドであり、これは、観察上の薬理学(observed pharmacology)の解釈を複雑にし、核内エストロゲンレセプターについての役割をはっきりと排除することを困難にする。しかし、化合物8(実施例4)は、核内エストロゲンレセプター(ER)αまたはERβについての結合親和性が、17β−エストラジオールのそれに比して約100万分の1に低下している(表1)。さらに、4−OHタモキシフェンとは異なり、化合物8は、幾何的に(geometrically)安定であり、そしてE/Zオレフィン異性体の混合物としては存在しない。さらに、化合物8は、17β−エストラジオールの用量の5倍でも、対子宮作用がまったくなく(図6Aおよび図6B)、8が、核内エストロゲンレセプターにより媒介される4−OHタモキシフェン様エストロゲン活性を有さないことをインビボで確証づける。しかし、細胞全体の電気生理学的アッセイにおいて、10nMの8は、100nMの17β−エストラジオールと同程度に、上記GABAB応答を減衰させるのに有効であった(図6)。
【0170】
【表1】
(17β−エストラジオールのGABAB応答に対する迅速な作用は、プロテインキナーゼA(PKA)を必要とする:)
17β−エストラジオール媒介性の、GABABの調節において、特定のシグナル伝達タンパク質の関与することを、異なる経路をブロックすることにより決定した。例えば、PKA経路の活性化が必要とされるならば、17β−エストラジオールのGABAB応答に対する効果は、PKAの阻害によりブロックされるべきであり、PKAの刺激により模倣されるべきである。従って、選択的なPKAインヒビターおよび選択的なPKA活性化剤を、PKAが関与していることを示すために使用した。例えば、図8のグラフAおよび図9に示されるように、フォルスコリン(10μM)は、17β−エストラジオールの作用を模倣し、GABABの応答を減衰し得る。他方で、特定のPKAインヒビターH89(10μM)は、17β−エストラジオールが誘導する、GABAB応答の抑制をブロックした(図8のグラフBおよび図9)。
【0171】
GABAB応答の17β−エストラジオールのモジュレーションにおけるPKAの関与を、ニューロン上でのPKAの活性化をブロックする特定のPKA阻害性ペプチドPKI(プロテインキナーゼAインヒビターである、6−22アミド、20μM)または加水分解不可能なcAMPアナログであるRp−cAMP(200μM)の作用によりさらに確証づけた。PKIまたはRp−cAMPを用いた透析の約15分後に、17β−エストラジオール誘導型のGABAB応答の低減が台無しになった(図8のグラフCおよび図9)。vibrio choleraeにより分泌される細菌体外毒素であるコレラトキシン(CTX)は、Gタンパク質GsをADP−リボシル化し、これにより明らかに不可逆的な様式でアデニリルシクラーゼの活性を刺激化することにより、種々の組織中での細胞内cAMPレベルを高める。CTXの活性ユニットを用いた、個々の細胞への細胞内透析は、GABAB応答のエストロゲンによる迅速な阻害を遮断した(図8のグラフDおよび図9)。これらの結果は、GABAB応答の17β−エストラジオールによる抑制が、PKAの活性化を必要とすることを示唆する。図9は、試験されたPKA薬物の効果の概要を述べている。このPKA活性化剤のフォルスコリンは、17β−エストラジオールの効果を模倣し得、特定のPKAインヒビターである、H89(10μM)、Rp−cAMPSおよびPKAIは、この作用をブロックし得る。CTX−Aは、17β−エストラジオールによるバクロフェン応答の減衰を遮断し得るが、変性したCTX−Aは、遮断し得ない。バーは、群ごとに試験された4個〜11個の細胞の平均値±S.E.M.を表す(***p<0.005、*および#p<0.05、これに対し、ビヒクルのコントロール;CTX−A+17β−エストラジオール対変性したCTX−A+17β−エストラジオール、p<0.05)。
【0172】
(GABAB応答の減衰は、プロテインキナーゼCδ(PKCδ)を必要とする:)
数個の選択的PKCインヒビターの効果により示されるように、PKCはまた、17β−エストラジオールの、GABAB応答のモジュレーションに関与している。第1のインヒビター、ビスインドールマレイミド(BIS)は、従来の形態のPKCと、新規の形態のPKCと、異常な形態のPKCとの区別をしない、PKCの選択的インヒビターである。第2に、Gou6976は、従来のPKC異性体の選択的なインヒビターである(Martiny−Baronら、1993;Wayら、2000)。BISを用いたニューロンの処置により、17β−エストラジオールの効果がほぼ排除された(図10のグラフAおよび図11)。対照的に、Gou6976の処置は、効果なしであった(図11)。実際に、細胞内EGTAを10mMの1,2−ビス−(o−アミノフェノキシエタン)−N,N,N’,N’−四酢酸(BAPTA)(EGTAと類似のCa2+親和性を有するが速度がずっと速いカルシウム緩衝液)で置き換えた後でも、GABAB応答のエストロゲン阻害がさらに観察された(図10のグラフBおよび図11)。PKCの従来の異性体は、このレベルのカルシウム緩衝液を用いれば、活性である可能性が低いので、これらの結果は、エストロゲンの作用を媒介する際の、Ca2+非依存性の新規のPKC異性体の役割をさらに支持する。最終的に、選択的PKCδインヒビターであるロッテリン(5μM)は、17β−エストラジオールの、視床下部のニューロンにおいてGABAB応答を阻害する能力を完全にブロックした(図10、グラフCおよび図11)。図11は、試験されたPKCインヒビターの効果の概要を述べている。バーは、群ごとに試験された4個〜11個の細胞の平均値±S.E.M.を表す(***p<0.005、**p<0.01、*p<0.05、これに対して、ビヒクル−コントロール群)。
【0173】
(17β−エストラジオールによるGABAB応答の阻害は、Gαqを必要とする:)
さらなる結果は、17β−エストラジオールによるバクロフェン誘導型GABAB応答の阻害がメッセンジャータンパク質Gαqを必要とすることを示している。特定のPKCインヒビターであるBISは、17β−エストラジオールの作用をブロックするが、フォルスコリン(10μM)は、BIS遮断の存在下でエストロゲンの効果を模倣することを見出した(図10のグラフDおよび図11)。従って、PKCの作用は、PKAの活性の上流である。実際に、GABAB応答のエストロゲンレセプター媒介性阻害は、GαqのC末端結合部位を模倣するペプチド(11アミノ酸)で弓状ニューロンを処置することにより示されるように、Gαqの活性化に依存する(Akhterら、1998)。このペプチドは、Gタンパク質共役型レセプターとGαqタンパク質との相互作用をブロックする。このペプチド(200μM)で透析した細胞(図12のグラフAおよび図13)では、上記17β−エストラジオール媒介性のGABAB応答の低減が、GαsのC末端ドメインを模倣するコントロールのペプチド(11アミノ酸)で透析された細胞(図12のグラフBおよび図13)と比較した場合、有意にブロックされた。従って、Gαqは、17β−エストラジオール媒介性の迅速な阻害に主要な役割を果たす。
【0174】
さらに、ホスホリパーゼC(PLC)の活性化(ホスホリパーゼCは、周知のGαqエフェクターである)もまた、役割を果たす。実際に、PLCβの活性化は、広汎なスペクトルのPLCインヒビターであるU73122(10μM)を用いたニューロンの処置により示されるように、GABAB応答のエストロゲン誘導型阻害に必要とされている。U73122(10μM)を、細胞外沐浴培地中で灌流した場合、エストロゲン媒介性GABAB応答の低減をブロックした(図12のグラフCおよび図13)が、より活性の低いPLCインヒビターであるU73343は、同一濃度でまったく効果なしであった(図12のグラフDおよび図13)。図13に関して、バーは、群ごとに試験された4個〜11個の細胞の平均値±S.E.M.を表す(***p<0.005、**p<0.01、これに対して、ビヒクル−コントロール群;U73122+17β−エストラジオール対U73343+17βエストラジオール、p<0.05;Gqペプチド+17β−エストラジオール対Gsペプチド+17β−エストラジオール、p<0.05)。
【0175】
(GABAB応答の減衰は、マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼを必要としない)
MAPキナーゼ活性の阻害は、バクロフェン応答のエストロゲンモジュレーションを妨害しない。最近の研究により、初代ニューロン性皮質培養物(neuronal cortical culture)において、そして器官型の大脳皮質外植片培養物において、17β−エストラジオールが迅速にMAPキナーゼ経路を活性化することがわかった(Watterら、1997;Singhら、1999;Singhら、2000)。しかし、MAPキナーゼのインヒビターであるPD98059(10μM,ピペット中)またはU0126(5μM)を用いた処理は、バクロフェン応答の17β−エストラジオール阻害に影響しなかった(17β−エストラジオールについてのR2/R1;58.6±3.4%、n=10;これに対して、PD98059+17β−エストラジオール:66.1±11.8%、n=5)。
【0176】
(弓状(GABA、ドパミン、およびPOMC)ニューロンにおける、GABABレセプター、PKCδおよびアデニリルシクラーゼVIIの転写物の発現)
弓状ニューロンにおける、GABABレセプター、PKCδおよびアデニリルシクラーゼVIIの転写物の発現を、75個の弓状に分散した弓状ニューロンから、単一細胞RT−PCRを用いて決定した。結果により、このニューロンの90%(TH発現ニューロンおよびPOMC発現ニューロンを含む)が、GAD65転写物を発現することが判明した(データは示さず)。最も重要なことには、このニューロンの92%が、GABABR2転写物を発現し、これがバクロフェンの応答速度の90%に相関する。さらに、単一細胞RT−PCRの結果により、ドパミンニューロンおよびPOMCニューロンが、PKCδ転写物およびアデニリルシクラーゼVII転写物を発現することが判明している。一群の細胞(n=22)では、PKCδおよびアデニリルシクラーゼVIIの転写物は、大多数(70%)のTHニューロンで発現された(GAD65を共発現するものを含む)(図14A)。THおよびGADは、この母集団のニューロンの60%において共局在した。個々のニューロンに由来するcDNAの量に限りがあるために、POMCの発現を、別の群の細胞(n=29)で決定し、これにより、PKCδおよびアデニリルシクラーゼのVII転写物が、POMCニューロンの大多数(75%)で発現した(GAD65を共発現するものを含む)ことがわかった(図14B)。POMCおよびGADは、この母集団のニューロンの28%において共局在した。従って、上記単一細胞のRT−PCRのデータにより、ドパミンニューロンおよびPOMCニューロンが迅速なエストロゲンシグナル伝達のための重要な転写物を発現するという電気生理学的知見が確証される。GAPDH転写物を、逆転写酵素(RT)反応に関して、内部コントロールと同一の細胞で分析した。一つの細胞は、ネガティブコントロール(−RT)として、RTを含まなかった。基礎の視床下部組織(basal hypothalamic tissue)(組織コントロール、+)のRNAはまた、RTの存在下で逆転写された。RTなし(−)の組織コントロールを、各試行に含めた。さらに、以下のコントロールを含めた;分散された細胞ミリューおよび水ブランクからのHank平衡塩類溶液(HBSS)(これらは、RT−PCRに従えば(データは示さず)、両方ともネガティブであった)。
【0177】
(独特の膜エストロゲンレセプターは、17β−エストラジオールの迅速な効果を媒介する)
前述の結果は、膜エストロゲンレセプターが同定されたことを示している。例えば、エストロゲンは、GABABレセプターアゴニストであるバクロフェンの作用を抑制し、GABAニューロン、POMCニューロンおよびドパミンニューロンにおけるGIRKチャンネルを活性化する。この17β−エストラジオールの作用は迅速であり、17β−エストラジオールの添加の数分以内に、測定可能な抑制が生ずる。この応答の動態は、古典的な核内エストロゲンレセプターである、(ER)αまたは(ER)βのうちの一つ(これらは、転写調節により作用する)ではなく、膜17β−エストラジオールレセプターによる応答の仲介を示唆する。
【0178】
この迅速なエストロゲン応答について観察される薬理学は、新規の膜貫通エストロゲンレセプターの関与をさらに支持する。この膜不透過性の17β−エストラジオール−BSA結合体は、膜結合レセプター(このレセプターのホルモン結合部位は、原形質膜の細胞外表面からアクセス可能である)について期待されているように、遊離17β−エストラジオールに対して同一の応答を与える。この17β−エストラジオールの応答は、D−環のヒドロキシル基の立体配置に関して、立体特異的である;17β−エストラジオールは、迅速な応答を惹起する一方で、17α−エストラジオールは、不活性である。これは、注目に値する。なぜなら、17α−エストラジオールは、17β−エストラジオールと比較して効力がわずかに減少したにもかかわらず、核内エストロゲンレセプターのアゴニストとして機能するからである(Barkhemら、1998)。SERM 4−OHタモキシフェン、ラロキシフェン、およびGW−5638はすべて、この応答を媒介する際に、17β−エストラジオールのように振舞う一方、上記ステロイド性抗エストロゲンICI−182,780は、17β−エストラジオール応答をアンタゴナイズする。最も重要なことに、核内エストロゲンレセプターに関して、エストロゲン活性を欠く(すなわち、抗エストロゲン活性の)新規のSERM8は、17β−エストラジオールよりも強力な、この迅速な17β−エストラジオール応答の活性化剤であり、10分の1の濃度でも、17β−エストラジオールよりも強力である。さらに、この膜ERは、薬理学的(Schild)分析により示されるように、エストロゲンに対して、ナノモル濃度未満(subnanomolar)の親和性を有する(Lagrangeら、1997)。これらの結果は、この迅速な応答の薬理学が異なり、そして8の場合には、核内エストロゲンレセプターのものと分離可能であることを実証している(Razandiら、1999;Levin、2001;ChamblissおよびShaul,2002)。
【0179】
最近、Toran−Allerandおよびその同僚(Toran−Allerandら、2002)が、高親和性の飽和可能なエストロゲンレセプター、「ERX」を同定しており、このERXは、発達中の新皮質ニューロンにおけるキャベロア(caveloar)様の微小ドメインに結合する。この膜結合レセプターは、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)、細胞外シグナル関連キナーゼ(ERK)1およびERK2の活性化と共役しており、これらは、ニューロンの発達および生存にとって重要であると考えられる(Wattersら、1997;Singhら、1999;Singhら、2000;Fitzpatrickら、2002)。ERXはまた、MAPキナーゼ経路を活性化するのに17α−エストラジオールが17β−エストラジオールと効力が等しいという点で、特有の薬理学を有する(Toran−Allerandら、2002;Wadeら、2001)。しかし、本明細書中に述べられているように、17α−エストラジオールについては、GABAB応答に関しても、μ−オピオイド応答に関しても、効力が観察されなかった。このμ−オピオイド応答は、視床下部ニューロンにおいて、GIRKのチャンネルの同一のファミリーに共役している(Lagrangeら、1997)。同様に、GuおよびMoss(GuおよびMoss、1996)は、17α−エストラジオールが、海馬のCA1錐体状ニューロンにおいて、17β−エストラジオールのグルタミン酸塩(カイニン酸塩)媒介性の電流を増強する作用を模倣しないことを発見した。同様に、Mermelsteinら(1996)は、17α−エストラジオールが、17β−エストラジオールよりも、新線条体ニューロンにおいてL型のカルシウム電流を低減する効力がずっと弱いことを発見した。従って、PKC−PKA経路を介して、ニューロンにおけるチャンネル活性を調節する膜エストロゲンレセプターは、増殖および生存を促進するERK1/2の活性化に共役するレセプターとは薬理学的に異なる。
【0180】
(17β−エストラジオールは、PKCδおよびPKAを活性化し、視床下部ニューロンにおいて、GPCRとK+チャンネルとの共役を変化させる)
本明細書中に詳述したデータは、視床下部ニューロンにおいて、エストロゲンに対する迅速な応答のためのシグナル伝達経路が、図15に記載されるものに従うことを示す。図15に関して、事象の順序は;(1)17β−エストラジオールは、新規の膜貫通エストロゲンレセプターに結合する;(2)リガンド結合により、Gαqが活性化する;(3)活性化Gαqが、今度はPLCを活性化する;(4)活性化PLCが、DAGを遊離させる;(5)遊離DAGが、PKCδを刺激する;(6)PKCδアデニリルシクラーゼ(VII)を活性化する;(7)cAMPレベルが上昇する;(8)cAMPがPKAを刺激する;(9)PKAが、K+チャンネルの機能にとって重要な膜標的をリン酸化する、である。
【0181】
プロテインキナーゼの経路が、CNSニューロンにおいて、GABABレセプター媒介性シグナル伝達に影響するという、図15に示される経路についてのさらなる証拠が発見されている。プロテインキナーゼCの活性化は、海馬のCA1錐体状ニューロン(DutarおよびNicoll、1988)において、GIRKのチャンネルのGABABレセプターの活性化を抑制し、そしてGABABレセプター媒介性の、小脳スライスからのノルエピネフリン放出の阻害を減衰する(Taniyamaら、1992)。
【0182】
現在、PKCファミリーの12の公知のメンバーが存在する(Wayら、2000)。このファミリーは、配列ホモロジーおよび生化学的調節に基づき、3群に分類される。クラスA、すなわち従来のPKC(PKCα、βI、βIIおよびγ)は、周知のCa2+依存的なPKCである。クラスB、すなわち新規のPKC(PKCδ、ε、θ、η)は、Ca2+非依存性である。最後に、クラスCのPKC、すなわち異型のPKC(PKCζおよびτ/λ)は、最も発散したクラスである。異型のPKCもまた、Ca2+非依存性であり、そしてジアシルグリセロールを活性化のために必要としない(Wayら、2000)。エストロゲンの、視床下部ニューロンにおける迅速なGABAB抑制性の作用は、広汎なスペクトルのPKCインヒビターであるBISに感受性であるが、Gou6976には感受性でなく、従来のPKCクラスに属しないPKCの関与を暗示する。さらに、GABAB応答のエストロゲンの阻害は、細胞内記録パッチのピペットにおいて、10mMのBAPTAの封入により変更されず、Ca2+依存性の、従来のPKCが関与していないことを確証付けている。しかし、選択的なPKCδインヒビターであるロッテリンは、17β−エストラジオールの作用をブロックし、これは、この新規のクラスのPKCが迅速な17β−エストラジオール応答のメディエーターであることを示した。さらに、本明細書中に記載される弓状ニューロンにおけるPKCδ転写物の発現に関するscRT−PCRのデータは、GABAB応答の17β−エストラジオール媒介性阻害にPKCδを関係付ける。同様に、PKCδは、エストロゲン媒介性のK+チャンネルの阻害および雌性の遠位結腸上皮細胞における液体の保持に関与しているが、上流のシグナル伝達経路は、公知でない(Doolanら、2000)。
【0183】
(PKC活性化は、PKA活性化の上流である;)
17β−エストラジオール媒介性のGABAB阻害におけるPKC活性化は、PKA活性化の上流である。例えば、BISの内部灌流は、17β−エストラジオールによるバクロフェン応答の阻害を完全にブロックしたが、バス灌流(bath perfusion)により適用されたフォルスコリンによるバクロフェン応答の阻害を減衰しなかった。PKCは、アデニリルシクラーゼを活性化することが公知であり(Jacobowitzら、1993;YoshimuraおよびCooper、1993;LinおよびChen,1998);さらに、アデニリルシクラーゼ(AC)が、Gαsでもフォルスコリンでもなく、PKCにより活性化される場合、アデニリルシクラーゼは、Gαiによる阻害に抵抗性である(Pieroniら、1993)。今日まで、9種のACイソ酵素(ACのI型〜IX型)がクローン化されている。注目すべきことに、AC VIIは、他のアデニリルシクラーゼの配列には存在しない、PKCδの潜在的な結合部位(これは、PKCδが直接的にAC VIIをリン酸化するのを可能にする)を有する(Nelsonら、2003)。皮質、海馬、線条、および小脳におけるGABAニューロンは、AC VIIに対して免疫反応性であり(Monsら、1998)、そして、本明細書中に開示されているように、視床下部のGABAニューロン、THニューロン、およびPOMCニューロンは、AC VII転写物を発現する。
【0184】
(Gαqは、PLCを介して、17β−エストラジオールによるGABAB応答の阻害を媒介する:)
本明細書中に記載される結果により、膜ERが、特異的に、メッセンジャーGαqと共役していること、およびこのメッセンジャータンパク質が、17β−エストラジオールによるGABAB応答の阻害に関与していることがわかる。この結論は、Gαqのペプチドフラグメントを用いた細胞内透析が、Gタンパク質とのレセプター相互作用をブロックした場合に観察される結果により確証付けられる。このGαqペプチドは、皮質錐体状ニューロンにおけるGαqシグナル伝達経路(Carrら、2002)をブロックするために使用されている。さらに、エストロゲン媒介性のGABAB応答の低減は、より活性の低いインヒビターであるU73343で灌流された細胞と比較して、ホスホリパーゼCインヒビターであるU73122により、有意に低減した。従って、メッセンジャーGαqは、17β−エストラジオールによるGABAB応答の阻害に関与している。
【0185】
ほとんどのPKCは、ジアシルグリセロールにより活性化され、そしてCa2+の存在を必要とするPKCも存在する。従って、PKCは、ホスホリパーゼC(PLC)−イノシトール三リン酸/ジアシルグリセロールシグナル伝達カスケードの下流である。異なる形態のPLCが種々のメッセンジャー(Gαq、Gβγ(PLCβ)、およびチロシンキナーゼ(PLCγ)が挙げられる)により活性化され得るので、このPKCファミリーは、多様な一続きのシグナル伝達カスケードに関与する(TanakaおよびNishizuka,1994;Battaini,2001)。
【0186】
(実施例23)
この実施例は、Schild分析を用いたエストロゲンレセプターアンタゴニストの同定およびアンタゴニストの効力の決定を記載する。この分析に対する一般的なプロトコールは、Lagrangeら、1997に開示されている。蓄積的な濃度−応答曲線を、上述の細胞全体の電気生理的アッセイにおける、選択的エストロゲンレセプターアゴニストである化合物8の、濃度の増加を適用することにより生み出す。バクロフェン濃度の増加を、薬物誘導型の外向き電流が新規の定常レベルに到達するまで、適用する。バクロフェンおよび化合物8の両方のEC50値を、SigmaPlot(Jandel Scientific,Costa Madre,CA)ソフトウェアを用いて算出し、ロジスティック方程式に最も適合する値を決定する。次いで、細胞を、潜在的なエストロゲンレセプターアンタゴニストの1nM溶液で洗い流す。次いで、(上記最初の濃度−応答曲線の生成において適用したように)化合物8の濃度の増加を適用し、第2の応答曲線を生成する。次いで、この細胞を、潜在的なアンタゴニスト溶液(2nm)で処置し、濃度応答曲線を繰り返す。このプロセスを、潜在的なアンタゴニストの濃度の増加とともに繰り返し、複数の濃度応答曲線を生成する。化合物8および提案されたアンタゴニストが、本明細書中に開示される、以前に同定されてない膜結合エストロゲンレセプターに結合する場合、このデータの線形回帰適合度(linear regression fit){log(用量比−1)対−log[アンタゴニスト濃度]}で、−1.0の傾きが得られる。
【0187】
(実施例24)
この実施例は、開示された化合物の心臓保護活性の評価を記載し、そして新規の心臓保護用選択的エストロゲンレセプターモジュレーターを同定するための方法を提供する。生後4−7週間の、アポリポプロテインE−欠損C57/B1J(apo E KO)マウス(Taconic Farmsより入手可能)の卵巣を摘出する。この動物を、体重により無作為化し、群に分ける(1群あたり、n=12−15のマウス)。プロトコール(ここで、消費量は、週単位で測定されており、それに従って、適用される用量は、動物の体重に基づく)を用いて、このマウスを、食餌中の開示された化合物または硫酸17β−エストラジオール(1mg/kg/日)で処置する。使用された食餌は、Purinaにより調製され、0.50%のコレステロール、20%のラード、および25IU/KGのビタミンEを含有する、Western式食餌(57U5)である。このマウスには、12週間の期間、この方法論を用いて投薬する/餌を与える。コントロールの動物には、Western式の食餌を与え、そして化合物は与えない。この研究期間の終わりに、この動物を安楽死させ、血漿サンプルを得る。まず、生理食塩水を用いて、次いで、中性緩衝化ホルマリン溶液(10%)を用いて、心臓をインサイチュで灌流する。
【0188】
全コレステロールおよびトリグリセリドを、それぞれBoehringer MannheimおよびWako Biochemicalsから市販されているキットを用いて、酵素的な方法を用いて決定する。血漿リポタンパク質の分離および定量を行い、そして各クロマトグラムのピークのそれぞれの相対的な百分率面積に全コレステロール値を乗ずることにより、各リポタンパク質画分を定量する。
【0189】
大動脈のアテローム性動脈硬化症を、注意深く大動脈を単離する工程および取り扱う前に注意深くこの血管をホルマリン固定液中に48時間〜72時間配置する工程により、定量する。アテローム性動脈硬化症の病巣を、Oil Red O染色を用いて同定する。この血管を、短時間脱色し、次いで、イメージ化する。この病巣を定量し、そして血管についての評価、特に、腕頭幹の近位末端から左鎖骨下動脈までの大動脈弓内に含まれる領域に沿った正面についての評価を行う。大動脈アテローム性動脈硬化症のデータは、この規定された管腔領域内に、病巣関与の百分率として厳密に表現され得る。
【0190】
(実施例25)
この実施例は、酸素奪取/灌流に応答して、開示された化合物を用いる、予防的な神経保護の評価を記載し、そして新規の神経保護的な選択的エストロゲンレセプターモジュレーターを同定するための方法を提供する。気候馴化の後の、雌性Mongolianアレチネズミ(例えば、Charles RiverLaboratories,Kingston,NYから入手可能)を、イソフルランで麻酔し、そして卵巣を摘出する(第0日)。翌朝(第1日)、アレチネズミを、ビヒクル(10% EtOH/コーン油)、17β−エストラジオール(1mg/kg、皮下)または本明細書中に開示された化合物のいずれかで皮下処置する。第6日に先立ち、このアレチネズミに一晩絶食させ(一貫した虚血性損傷を促進し)、次いで、全身の虚血性外科手術に供する。この手術は、上記アレチネズミをイソフルランで麻酔し、正中頚部切開を介して共通の頚動脈を可視化し、そして同時に両動脈を微小動脈瘤クリップ(micro−aneurysm clip)で5分間遮断することにより進行する。遮断の後に、このクリップを除去し、小脳の灌流を可能にし、そして頚部切開を創傷クリップで閉じる。第12日に、アレチネズミを、致死量のCO2に曝し、この脳をドライアイス上で凍結させ、−80℃で貯蔵する。
【0191】
神経保護の程度を、ニューログラニン(neurogranin)のmRNAのインサイチュハイブリダイゼーション分析により評価する。手短に言えば、ゼラチン被覆スライド上で20μMの冠状低温断面を回収し、乾燥させ、そして−80℃で貯蔵する。処理の際に、この乾燥したスライドボックスを、室温にまで温め、このスライドを4%のパラホルムアルデヒドで固定した後、無水酢酸で処置し、次いで、クロロホルムおよびエタノールで脱脂質化および脱水する。次いで、加工した断面を載せたスライドを、50%ホルムアルデヒドハイブリダイゼーションミックス中のNeurograninアンチセンスまたはセンス(コントロール)のリボプローブ(35S−UTP標識化NG−241;塩基99−340)の200μL(6×106DPM/スライド)でハイブリダイズし、加湿したスライドチャンバー中で、カバースリップなしで55℃で一晩インキュベートした。翌朝、このスライドをラック中に収集し、2×SSC(0.3M NaCl、0.03M クエン酸ナトリウム;pH7.0)/10mM DTTに液浸し、RNaseA(20μg/ml)で処理し、そして67℃で0.1×SSCで洗浄し(2×30分)、非特異的な標識を除去する。脱水後、このスライドは、BioMax(BMR−1;Kodak)X線フィルムに一晩供する。
【0192】
損傷後のCA1領域の神経損失の程度を定量的に評価し、そして17β−エストラジオールおよび上記開示された化合物の効力を評価するために、ニューログラニンのハイブリダイゼーションのシグナルのレベルを使用する。ニューログラニンmRNAを、これらの研究のために選択する。なぜなら、ニューログラニンmRNAは、海馬ニューロン(CA1を含む)において高く発現されているが、この脳領域のグリア細胞および他の細胞型では存在しないからである。従って、存在するニューログラニンmRNAの量の測定は、生存ニューロンを示す。ニューログラニンハイブリダイゼーションシグナルの相対的な光学密度の測定は、コンピューターベースのイメージ分析システムを用いて、フィルムオートラジオグラムより得られる(C−Imaging Inc.,Pittsburgh,Pa)。動物あたり6断面(40μm、ばらばら)からの結果を平均化し、そして統計的に評価する。実数値を、平均値±S.E.M.として報告する。一元分散分析を使用し、ニューログラニンmRNAのレベルにおける偏差を試験し、そして得られた断面に偏差がないことのすべての記載は、p>0.05であることを示す。
【0193】
(実施例26)
この実施例は、開示された化合物を使用して達成される認知増強(cognition enhancement)の評価を記載する。卵巣摘出したラット(n=50)を、各々5日間連続で10分間、8アームのラジアルアーム(radial arm)迷路に慣らす。習慣形成(habituation)および試験に先立ち、動物から水奪取する。各アームの末端に設置した100μLのアリコートの水は、増強として役立つ。ラジアルアーム迷路における、獲得−移動(win−shift)課題の獲得を、餌をつけた一つのアームにこの動物がアクセス可能にすることにより達成する。飲水後、この動物は、アームから出て、再度中心コンパ−トメントに入り、ここで、この動物は、以前に訪れたアームまたは新規のアームにアクセス可能である。この動物が新規のアームに入ることを選択する場合、正しい応答を記録する。各動物に、一日ごとに5回の試行を、3日間与える。最終の獲得試行後、上記動物を以下の4群のうちの1群に割り当てる;(1)ネガティブコントロ−ル:10%のDMSO/ゴマ油のビヒクルを、毎日1回、6日間(1μg/kg、皮下)注射する。(2)ポジティブコントロ−ル:安息香酸17β−エストラジオールを、2日間注射し、そして第2の注射の後、4日間試験する(安息香酸17β−エストラジオールを、ラットあたり、10μg/0.1mL)。(3)17β−エストラジオールを、6日間、毎日注射する(20μg/kg、皮下)。(4)試験化合物:6日間毎日注射する(用量は変動し得る)。注射はすべて獲得の最終日の試験後に開始する。群1、3、および4の最終的な注射は、作業記憶を試験する2時間前に開始する。
【0194】
作業記憶についての試験は、15秒、30秒、または60秒の遅れを利用するサンプル非適合課題(DNMS)である。この課題は、獲得課題のバリエーションであり、このバリエーションでは、ラットは、中心部の競技場に置かれ、前と同様に一つのアームに入ることが可能である。一度このラットが第1のアームの途中まで横断すれば、第2のアームを開け、そして再度このラットがこのアームを選択することが必要とされる。ラットがこの第2のアームを途中まで移動した場合、両側のドアが閉まり、そして遅れが開始する。一度この遅れが終了すれば、もとの2個のドア、および第3の新規のドアが同時に開く。この動物が、第3の、新規のアームを途中まで通過した場合、正しい応答を記録する。この動物が第1または第2のいずれかのアームを途中まで移動した場合、誤った応答を記録する。各動物に、3回の遅れ間隔の各々について、5回の試行を行い、被験体につき、各動物について全部で15回の試行を行う。
【0195】
【化89】
【0196】
【化90】
【0197】
【化91】
【0198】
【化92】
【0199】
【化93】
【0200】
【化94】
種々の変更およびバリエーションが、本開示の範囲および精神から逸脱せず、本発明の化合物、組成物、および方法に対してなされることは、当業者には明らかである。化合物、組成物および方法の他の実施形態は、本明細書の考慮および本明細書中に開示された手順の実行から当業者に明らかである。本明細書および実施例が例示としてみなされるのみであり、本発明の真の範囲および精神が添付の特許請求の範囲に示されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0201】
【図1】図1は、細胞全体のパッチ、電圧クランプ研究における、薬物投与のプロトコールを例示するための図である。
【図2】図2は、13分間の細胞全体パッチクランプの記録の後のビオシチン標識の程度を例示する、ビオシチンで満たされたニューロンの例を示す画像である。
【図3】図3Aは、バクロフェン(5μM)I/V前およびバクロフェン(5μM)I/V後のドパミンニューロンからの関係を例示するグラフである。図3Bは、バクロフェンI/V前の関係およびバクロフェンI/V後の関係のグラフであり、この関係は、別の細胞における17β−エストラジオール処置に続き、バクロフェン応答について同一の逆電位を図示する。
【図4】図4Aは、エストロゲンに応答した紡錘状弓状ドパミンニューロンのビオチン−ストレプトアビジン−Cy2標識を示す画像である。図4Bは、図4Aに画像化されたニューロン中のチロシンヒドロキシラーゼ(TH)の免疫細胞学的染色を示す画像である。図4Cは、小さな錐体状弓状POMCニューロンの、ビオシチン−ストレプトアビジン−Cy2標識を示す画像である。図4Dは、図4Cにおいて画像化されたニューロン中のβ−エンドルフィンの免疫細胞学的染色を示す画像である。
【図5】図5は、ステロイド処置前およびステロイド処置後のGABAB応答の代表的なトレースを含む。
【図6】図6は、バクロフェン応答に対する17β−エストラジオールおよびSERMの効果の概要を述べた棒グラフを含む。
【図7】図7Aは、17β−エストラジオール処理後の子宮の大きさと本明細書中で開示される例示的なSERMを用いた処理後の子宮の大きさを比較し、そして17β−エストラジオール処置マウスでは、油状物ビヒクル処置または本明細書中に開示される例示的なSERMを用いた処理と比較すれば、安息香酸エストラジオール(EB)の後に、子宮の大きさが著しく増大したことを示す。図7Bは、油状物処置したマウスの子宮の重さおよびSERM処置したマウスの子宮の重さに対して、EB処置したマウスの子宮の重さを記録した棒グラフである(1群あたりn=マウス3匹〜5匹)。
【図8】図8は、PKA活性化剤またはPKAインヒビターの存在下でのバクロフェン応答の代表的なトレースを含み、17β−エストラジオールのGABAB応答の減衰作用がプロテインキナーゼAを必要とすることを示す。
【図9】図9は、プロテインキナーゼA(PKA)薬物のバクロフェン応答に対する効果の概要を述べた棒グラフである。
【図10】図10は、PKCインヒビターの存在下でのバクロフェン応答の代表的なトレースを含む。
【図11】図11は、プロテインキナーゼC(PKC)インヒビターのバクロフェン応答に対する効果の概要を述べた棒グラフである。
【図12】図12は、ホスホリパーゼC(PLC)およびGαqインヒビターの存在下でのバクロフェン応答の代表的なトレースを含む。
【図13】図13は、PLCおよびGαqインヒビターの効果の概要を述べた棒グラフである。
【図14】図14Aは、単一の弓状ニューロンが、TH、GAD,PKCδ、AC VIIおよびGAPDHのmRNAを発現することを例示する代表的なゲルである。図14Bは、単一の弓状ニューロンが、POMC、GAD、PKCδ、AC VIIおよびGAPDHのmRNAを発現することを例示する代表的なゲルである。
【図15】図15は、視床下部ニューロンにおいて、速効型エストロゲンレセプター対遅効型エストロゲンレセプターが、神経伝達物質調節性の、Gタンパク質共役型レセプターのモジュレーションを、膜結合エストロゲンレセプターを介して媒介することを示す概略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】
に従う化合物であって、ここで、Rは、Hまたは低級脂肪族基であり;Mは、ケトン基、アミド基またはスルホンアミド基を含み;Arは、芳香族基であり;Xは、ヒドロキシ、アルコキシ、またはハロゲンであり;Yは、ヘテロ原子を含み;Gは、リンカー基であり;そしてZは、カルボキシ基、ヒドロキシ基またはアミノ基である、化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、該化合物が、式
【化2】
を有する、化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、該化合物が、式
【化3】
を有する、化合物。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、Arが、フェニル基である、化合物。
【請求項5】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、該化合物が、式
【化4】
を有する、化合物。
【請求項6】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、該化合物が、式
【化5】
を有する、化合物。
【請求項7】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、Mが、アミド基を含む、化合物。
【請求項8】
請求項7に記載の化合物であって、ここで、該化合物が、式
【化6】
を有し、ここで、R1が、水素、低級アルキル基またはアラルキル基である、化合物。
【請求項9】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、Gが、低級アルキル基である、化合物。
【請求項10】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、Zが、荷電した基を含む、化合物。
【請求項11】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、Zが、カチオン性の基を含む、化合物。
【請求項12】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、Zが、アミノ基を含む、化合物。
【請求項13】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、Yが、酸素であり、そして−G−Zが、以下
【化7】
からなる群より選択される式を有する、化合物。
【請求項14】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、Rが、水素または低級アルキルである、化合物。
【請求項15】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、Xが、ヒドロキシ基である、化合物。
【請求項16】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、Xが、水素である、化合物。
【請求項17】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、該化合物が、式
【化8】
を有する、化合物。
【請求項18】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、該化合物が、式
【化9】
を有する、化合物。
【請求項19】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、該化合物が、式
【化10】
を有する、化合物。
【請求項20】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、該化合物が、式
【化11】
を有する、化合物。
【請求項21】
式
【化12】
に従う、第1の化合物または該化合物の薬学的に受容可能な塩の薬学的に有効な量および薬学的キャリアを含有する組成物であって、ここで、Rが、Hまたは低級脂肪族基であり;Mが、ケトン基、アミド基またはスルホンアミド基を含み;Arが、芳香族基であり;Xが、ヒドロキシ、アルコキシ、またはハロゲンであり;Yが、ヘテロ原子を含み;Gが、リンカー基であり;そしてZが、カルボキシ基、ヒドロキシ基またはアミノ基である、組成物。
【請求項22】
請求項21に記載の組成物であって、ここで、少なくとも1種の化合物が、式
【化13】
を有する、組成物。
【請求項23】
請求項21に記載の組成物であって、ここで、前記化合物が、式
【化14】
を有する、組成物。
【請求項24】
請求項21に記載の組成物であって、ここで、前記化合物が、式
【化15】
を有する、組成物。
【請求項25】
請求項21に記載の組成物であって、ここで、前記化合物が、式
【化16】
を有する、組成物。
【請求項26】
請求項21に記載の組成物であって、ここで、前記化合物が、式
【化17】
を有し、ここで、R1が、水素、低級アルキル基、またはアラルキル基である、組成物。
【請求項27】
請求項21に記載の組成物であって、ここで、前記化合物が、式
【化18】
を有する、組成物。
【請求項28】
請求項21に記載の組成物であって、ここで、前記化合物が、式
【化19】
を有する、組成物。
【請求項29】
請求項21に記載の組成物であって、該組成物が、薬学的に有効な量の第2の化合物をさらに含有する、組成物。
【請求項30】
請求項29に記載の組成物であって、ここで、前記第2の化合物が、式
【化20】
を有し、ここで、Rが、Hまたは低級脂肪族基であり;Mが、ケトン基、アミド基、またはスルホンアミド基を含み;Arが、芳香族基であり;Xが、ヒドロキシ、アルコキシ、またはハロゲンであり;Yが、ヘテロ原子を含み;Gが、リンカー基であり;そしてZが、カルボキシ基、ヒドロキシ基またはアミノ基である、組成物。
【請求項31】
膜結合エストロゲンレセプターをアゴナイズまたはアンタゴナイズするための方法であって、該方法が、該レセプターと請求項1の化合物とを接触させる工程を包含する、方法。
【請求項32】
被験体中のエストロゲン欠乏により特徴付けられる状態を処置するための方法であって、該方法は、有効量の請求項1に記載の少なくとも第1の化合物を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、ここで、前記エストロゲン欠乏により特徴付けられる状態が、卵巣不全である、方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法であって、ここで、前記エストロゲン欠乏により特徴付けられる状態が、閉経である、方法。
【請求項35】
請求項32に記載の方法であって、ここで、前記状態が、自律神経機能障害、睡眠周期分裂、認知障害、運動機能障害、気分障害、摂食障害または心臓血管障害を包含する、方法。
【請求項36】
請求項32に記載の方法であって、ここで、前記状態が、虚血誘導性神経死、頭部損傷、アルツハイマー病、顔面紅潮、パーキンソン病、遅発性ジスキネジー、鬱、精神分裂病、神経性食欲不振、神経性大食症、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、長期QTL症候群、ロマノ−ウォード症候群またはトルサード・ド・ポワント症候群、骨粗しょう症、慢性関節リューマチ、変形性関節症、骨折、多発性硬化症またはこれらの組み合わせからなる群より選択される、方法。
【請求項37】
請求項32に記載の方法であって、該方法が、請求項32において投与される前記化合物とは異なる有効量の第2の化合物を前記被験体に投与する工程をさらに包含し、そして前記第2の化合物が、請求項32において投与される化合物と組み合わせて治療上の効果を提供する、方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法であって、ここで、前記第2の化合物が、ステロイドホルモンである、方法。
【請求項39】
請求項37に記載の方法であって、ここで、前記第2の化合物が、選択的なエストロゲンレセプターモジュレーターである、方法。
【請求項40】
請求項32に記載の方法であって、ここで、前記第2の化合物が、請求項1に記載の化合物の式を有する、方法。
【請求項41】
請求項32に記載の方法であって、ここで、該方法が、膜結合エストロゲンレセプターをアゴナイズまたはアンタゴナイズする工程を包含する、方法。
【請求項42】
請求項41に記載の方法であって、ここで、該方法が、前記膜結合エストロゲンレセプターをアゴナイズする工程を包含する、方法。
【請求項43】
ホルモン置換療法を提供するための方法であって、該方法が、有効量の、請求項1に記載の少なくとも第1の化合物を前記被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項1】
式:
【化1】
に従う化合物であって、ここで、Rは、Hまたは低級脂肪族基であり;Mは、ケトン基、アミド基またはスルホンアミド基を含み;Arは、芳香族基であり;Xは、ヒドロキシ、アルコキシ、またはハロゲンであり;Yは、ヘテロ原子を含み;Gは、リンカー基であり;そしてZは、カルボキシ基、ヒドロキシ基またはアミノ基である、化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、該化合物が、式
【化2】
を有する、化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、該化合物が、式
【化3】
を有する、化合物。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、Arが、フェニル基である、化合物。
【請求項5】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、該化合物が、式
【化4】
を有する、化合物。
【請求項6】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、該化合物が、式
【化5】
を有する、化合物。
【請求項7】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、Mが、アミド基を含む、化合物。
【請求項8】
請求項7に記載の化合物であって、ここで、該化合物が、式
【化6】
を有し、ここで、R1が、水素、低級アルキル基またはアラルキル基である、化合物。
【請求項9】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、Gが、低級アルキル基である、化合物。
【請求項10】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、Zが、荷電した基を含む、化合物。
【請求項11】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、Zが、カチオン性の基を含む、化合物。
【請求項12】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、Zが、アミノ基を含む、化合物。
【請求項13】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、Yが、酸素であり、そして−G−Zが、以下
【化7】
からなる群より選択される式を有する、化合物。
【請求項14】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、Rが、水素または低級アルキルである、化合物。
【請求項15】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、Xが、ヒドロキシ基である、化合物。
【請求項16】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、Xが、水素である、化合物。
【請求項17】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、該化合物が、式
【化8】
を有する、化合物。
【請求項18】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、該化合物が、式
【化9】
を有する、化合物。
【請求項19】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、該化合物が、式
【化10】
を有する、化合物。
【請求項20】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、該化合物が、式
【化11】
を有する、化合物。
【請求項21】
式
【化12】
に従う、第1の化合物または該化合物の薬学的に受容可能な塩の薬学的に有効な量および薬学的キャリアを含有する組成物であって、ここで、Rが、Hまたは低級脂肪族基であり;Mが、ケトン基、アミド基またはスルホンアミド基を含み;Arが、芳香族基であり;Xが、ヒドロキシ、アルコキシ、またはハロゲンであり;Yが、ヘテロ原子を含み;Gが、リンカー基であり;そしてZが、カルボキシ基、ヒドロキシ基またはアミノ基である、組成物。
【請求項22】
請求項21に記載の組成物であって、ここで、少なくとも1種の化合物が、式
【化13】
を有する、組成物。
【請求項23】
請求項21に記載の組成物であって、ここで、前記化合物が、式
【化14】
を有する、組成物。
【請求項24】
請求項21に記載の組成物であって、ここで、前記化合物が、式
【化15】
を有する、組成物。
【請求項25】
請求項21に記載の組成物であって、ここで、前記化合物が、式
【化16】
を有する、組成物。
【請求項26】
請求項21に記載の組成物であって、ここで、前記化合物が、式
【化17】
を有し、ここで、R1が、水素、低級アルキル基、またはアラルキル基である、組成物。
【請求項27】
請求項21に記載の組成物であって、ここで、前記化合物が、式
【化18】
を有する、組成物。
【請求項28】
請求項21に記載の組成物であって、ここで、前記化合物が、式
【化19】
を有する、組成物。
【請求項29】
請求項21に記載の組成物であって、該組成物が、薬学的に有効な量の第2の化合物をさらに含有する、組成物。
【請求項30】
請求項29に記載の組成物であって、ここで、前記第2の化合物が、式
【化20】
を有し、ここで、Rが、Hまたは低級脂肪族基であり;Mが、ケトン基、アミド基、またはスルホンアミド基を含み;Arが、芳香族基であり;Xが、ヒドロキシ、アルコキシ、またはハロゲンであり;Yが、ヘテロ原子を含み;Gが、リンカー基であり;そしてZが、カルボキシ基、ヒドロキシ基またはアミノ基である、組成物。
【請求項31】
膜結合エストロゲンレセプターをアゴナイズまたはアンタゴナイズするための方法であって、該方法が、該レセプターと請求項1の化合物とを接触させる工程を包含する、方法。
【請求項32】
被験体中のエストロゲン欠乏により特徴付けられる状態を処置するための方法であって、該方法は、有効量の請求項1に記載の少なくとも第1の化合物を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、ここで、前記エストロゲン欠乏により特徴付けられる状態が、卵巣不全である、方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法であって、ここで、前記エストロゲン欠乏により特徴付けられる状態が、閉経である、方法。
【請求項35】
請求項32に記載の方法であって、ここで、前記状態が、自律神経機能障害、睡眠周期分裂、認知障害、運動機能障害、気分障害、摂食障害または心臓血管障害を包含する、方法。
【請求項36】
請求項32に記載の方法であって、ここで、前記状態が、虚血誘導性神経死、頭部損傷、アルツハイマー病、顔面紅潮、パーキンソン病、遅発性ジスキネジー、鬱、精神分裂病、神経性食欲不振、神経性大食症、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、長期QTL症候群、ロマノ−ウォード症候群またはトルサード・ド・ポワント症候群、骨粗しょう症、慢性関節リューマチ、変形性関節症、骨折、多発性硬化症またはこれらの組み合わせからなる群より選択される、方法。
【請求項37】
請求項32に記載の方法であって、該方法が、請求項32において投与される前記化合物とは異なる有効量の第2の化合物を前記被験体に投与する工程をさらに包含し、そして前記第2の化合物が、請求項32において投与される化合物と組み合わせて治療上の効果を提供する、方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法であって、ここで、前記第2の化合物が、ステロイドホルモンである、方法。
【請求項39】
請求項37に記載の方法であって、ここで、前記第2の化合物が、選択的なエストロゲンレセプターモジュレーターである、方法。
【請求項40】
請求項32に記載の方法であって、ここで、前記第2の化合物が、請求項1に記載の化合物の式を有する、方法。
【請求項41】
請求項32に記載の方法であって、ここで、該方法が、膜結合エストロゲンレセプターをアゴナイズまたはアンタゴナイズする工程を包含する、方法。
【請求項42】
請求項41に記載の方法であって、ここで、該方法が、前記膜結合エストロゲンレセプターをアゴナイズする工程を包含する、方法。
【請求項43】
ホルモン置換療法を提供するための方法であって、該方法が、有効量の、請求項1に記載の少なくとも第1の化合物を前記被験体に投与する工程を包含する、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2007−509858(P2007−509858A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536795(P2006−536795)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/034921
【国際公開番号】WO2005/041946
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(500025503)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (26)
【出願人】(506124239)オレゴン ヘルス アンド サイエンス ユニバーシティ (8)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/034921
【国際公開番号】WO2005/041946
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(500025503)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (26)
【出願人】(506124239)オレゴン ヘルス アンド サイエンス ユニバーシティ (8)
【Fターム(参考)】
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