説明

新規の複素環式の置換されたアミド、その製造および使用

【課題】カルパイン阻害剤は既に文献に記載されているが、記載されているものは専ら不可逆的な阻害剤またはペプチド阻害剤のいずれかであって、一般に、不可逆的な阻害剤はアルキル化剤であり、これらが生物中で非選択的に反応するか、または不安定であるという欠点がある。
【解決手段】一般式(I)で示され、式中、変数および置換基が発明の詳細な説明中に記載される意味を有する新規のアミドおよびその互変異性形および異性体形、可能なエナンチオマー形およびジアステレオマー形ならびに可能な生理学的に認容性の塩によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素、特にシステインプロテアーゼ、例えばカルパイン(=カルシウム−依存性システインプロテアーゼ)およびそのイソ酵素およびカテプシン、例えばカテプシンBおよびLの阻害剤である新規のアミドに関する。
【背景技術】
【0002】
カルパインはシステインプロテアーゼグループからの細胞内タンパク質分解酵素であり、多くの細胞に見いだされる。カルパインは高められたカルシウム濃度によって活性化され、その際、μモル濃度のカルシウムイオンで活性化されるカルパインIまたはμカルパインと、ミリモル濃度のカルシウムイオンで活性化されるカルパインIIまたはmカルパインとが区別される(P. Johnson, Int. J. Biochem. 1990, 22 (8), 811-22)。更にカルパインイソ酵素は今日では自明であると見なされている(K. Suzuki et al., Biol. Chem. Hoppe-Seyler, 1995, 376 (9), 523-9)。
【0003】
カルパインは種々の生理学的プロセスに重要な役割を果たすと想定されている。これらは調節タンパク質、例えばプロテインキナーゼC、細胞骨格タンパク質、例えばMAP2およびスペクトリン、筋タンパク質の分解、リウマチ様関節炎におけるタンパク質分解、血小板の活性化に関与するタンパク質、ニューロペプチド代謝、マイトシスにおけるタンパク質およびM.J.バレット他のライフサイエンス(M. J. Barrett et al., Life Sci. 1991, 48, 1659-69)およびK.K.ワン他の製剤学におけるトレンド(K. K. Wang et al. and Trend in Pharmacol. Sci., 1994, 15, 412-9)に列記されるタンパク質を含む。
【0004】
カルパインの高められたレベルは種々の病態生理学的プロセス、例えば心臓の虚血(例えば心不全)、腎臓の虚血または中枢神経系の虚血(例えば脳卒中)、炎症、筋ジストロフィー、目の白内障、中枢神経系への損傷(例えば外傷)、アルツハイマー病等(前記のK.K.ワン参照)において測定されている。これらの疾患と永続的に高められる細胞内カルシウムレベルとが関係あると推定される。これらのレベルは、過剰亢進状態でありかつもはや生理学的制御を行えないカルシウム依存性プロセスを引き起こす。相応してカルパインの過剰亢進は他の病態生理学的プロセスを誘発することがある。
【0005】
従ってカルパイン酵素の阻害剤が前記の疾患の治療に有用でありうることは自明のこととされている。このことは種々の調査によって立証されている。こうしてソイン−チュル ホン他の脳卒中1994(Seung-Chyul Hong et al., Stroke 1994, 25 (3), 663-9)およびR.T.バルツス他の神経学的リサーチ(R. T. Bartus et al., Neurological Res. 1995, 17, 249-58)はカルパイン阻害剤が急性神経変性障害または脳卒中後に生じる虚血において神経保護作用を有することを証明している。同様に実験的な脳外傷の後に、カルパイン阻害剤は記憶能力欠損および引き起こった神経運動障害の回復を改善した(K. E. Saatman et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1996, 93, 3428-3433)。C.L.エーデルシュタイン他(C. L. Edelstein et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1995, 92, 7662-6)によってカルパイン阻害剤が低酸素症によって損傷を受けた腎臓に保護作用を有することが見いだされた。ヨシダ、ケン イシイ他(Yoshida, Ken Ischi et al., Jap. Circ. J. 1995, 59 (1), 40-8)によってカルパイン阻害剤が虚血または再潅流によってもたらされる心臓障害の後に有利な作用を有することが証明された。カルパイン阻害剤はβ−AP4タンパク質の放出を阻害するので、これらがアルツハイマー病の治療剤として潜在的な使用を有することがあると提案されている(J. Higaki et al., Neuron, 1995, 14, 651-59)。またカルパイン阻害剤はインターロイキン−1αの放出を阻害する(N. Watanabe et al., Cytokine 1994, 6 (6), 597-601)。更にカルパイン阻害剤は腫瘍細胞に対して細胞障害効果を有する(E. Shiba et al. 20th Meeting Int. Ass. Breast Cancer Res., Sendai Jp, 1994, 25.-28. Sept., Int. J. Oncol. 5(Suppl.), 1994, 381)。
【0006】
カルパイン阻害剤の他の可能な使用はK.K.ワンの製剤学におけるトレンド(K. K. Wang, Trends in Pharmacol. Sci., 1994, 15, 412-8)に列記されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】P. Johnson, Int. J. Biochem. 1990, 22 (8), 811-22
【非特許文献2】K. Suzuki et al., Biol. Chem. Hoppe-Seyler, 1995, 376 (9), 523-9
【非特許文献3】M. J. Barrett et al., Life Sci. 1991, 48, 1659-69
【非特許文献4】K. K. Wang et al. and Trend in Pharmacol. Sci., 1994, 15, 412-9
【非特許文献5】Seung-Chyul Hong et al., Stroke 1994, 25 (3), 663-9
【非特許文献6】R. T. Bartus et al., Neurological Res. 1995, 17, 249-58
【非特許文献7】K. E. Saatman et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1996, 93, 3428-3433
【非特許文献8】C. L. Edelstein et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1995, 92, 7662-6
【非特許文献9】Yoshida, Ken Ischi et al., Jap. Circ. J. 1995, 59 (1), 40-8
【非特許文献10】J. Higaki et al., Neuron, 1995, 14, 651-59
【非特許文献11】N. Watanabe et al., Cytokine 1994, 6 (6), 597-601
【非特許文献12】E. Shiba et al. 20th Meeting Int. Ass. Breast Cancer Res., Sendai Jp, 1994, 25.-28. Sept., Int. J. Oncol. 5(Suppl.), 1994, 381
【非特許文献13】K. K. Wang, Trends in Pharmacol. Sci., 1994, 15, 412-8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
カルパイン阻害剤は既に文献に記載されている。しかしながら、記載されているものは専ら不可逆的な阻害剤またはペプチド阻害剤のいずれかである。一般に、不可逆的な阻害剤はアルキル化剤であり、これらが生物中で非選択的に反応するか、または不安定であるという欠点がある。このようにこれらの阻害剤はしばしば不所望な副作用、例えば毒性を示し、従って使用が制限されるか、または全く使用できないかである。挙げることのできる不可逆的な阻害剤の例はE64エポキシド(E. B. McGowan et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 1989, 158, 432-5)、α−ハロゲンケトン(H. Angliker et al., J. Med. Chem. 1992, 35, 216-20)またはジスルフィド(R. Matsueda et al., Chem. Lett. 1990, 191-194)である。
【0009】
システインプロテアーゼ、例えばカルパインの多くの公知の可逆的阻害剤はペプチドアルデヒド、特にジペプチドおよびトリペプチドアルデヒド、例えばZ−Val−Phe−H(MDL28170)(S. Mehdi, Tends in Biol. Sci. 1991, 16, 150-3)である。生理学的条件下でペプチドアルデヒドは、その高度の反応性のためこれらがしばしば不安定であり、迅速に代謝され、かつ毒性作用を引き起こしうる非特異的反応に加担する傾向があるという欠点がある(J. A. Fehrentz and B. Castro, Synthesis 1983, 676-78)。
【0010】
JP08183771号(CA1996,605307)およびEP520336号はピペリジン−4−イルカルボキサミドおよび1−カルボニルピペリジン−4−イルカルボキサミドから誘導され、かつカルパイン阻害剤であるアルデヒドを記載している。しかしながら前記の明細書に請求されている一般構造Iの複素芳香族で置換されたアミドから得られたアルデヒドは以前から記載されている。
【0011】
またペプチドケトン誘導体はシステインプロテアーゼ、特にカルパインの阻害剤である。例えばケト基が求電子性基、例えばCFによって活性化されるケトン誘導体はセリンプロテアーゼの阻害剤であると知られている。CFまたは類似の基によって活性化されるケトンを有する誘導体は、システインプロテアーゼの場合には特別活性ではないか、または全く活性でない(M. R. Angelastro et al., J. Med. Chem. 1990, 33, 11-13)。意想外にもカルパインの効果的な阻害剤であるとさえ知られているケトン誘導体だけが一方でα位の離脱基が不可逆的な阻害をもたらし、他方でカルボン酸誘導体がケト基を活性化する(M. R. Angelastro et al.参照、前記参照、WO92/11850参照; WO92/12140参照; WO94/00095参照およびWO95/00535参照)。しかしながらこれらのケトアミドおよびケトエステルのペプチド誘導体だけが効果的であるとさえ報告されている(Zhaozhao Li et al., J. Med. Chem. 1993, 36, 3472-80; S. L. Harbenson et al., J. Med. Chem. 1994, 37, 2918-29およびM. R. Angelastro et al.参照、前記参照)。
【0012】
ケトベンズアミドは既に文献で開示されている。従ってケトエステルPhCO−Abu−COOCHCHはWO91/09801号、WO94/00095号およびWO92/11850号に記載されている。しかしながらM.R.アンジェラストロ他のJ.Med.Chem(M. R. Angelastro et al., J. Med. Chem. 1990, 33, 11-13)においては、類似のフェニル誘導体Ph−CONH−CH(CHPh)−CO−COCOOCHが唯一の弱いカルパイン阻害剤であると判明した。該阻害剤はJ.P.ブルクハルトのテトラヘドロン(J. P. Burkhardt, Tetrahedron Lett., 1988, 3433-36)に記載されている。しかしながら置換ベンズアミドの重要性は全く調査されてもいない。
【0013】
幾つかの脳卒中のような療法において、活性化合物は、例えば注入溶液として静脈内適用される。このために、注入溶液を調製するのに十分に水溶性である利用可能な物質(この場合にはカルパイン阻害剤)を有する必要がある。しかしながら記載されている多くのカルパイン阻害剤は、これらが水に僅かに可溶性であるか、または水不溶性であり、従って静脈内適用に適当でないという欠点がある。この性質の活性化合物は、水溶性を媒介する目的の補助物質を使用して適用できるにすぎない(R. T. Bartus et al. J. Cereb. Blood Flow Metab. 1994, 14, 537-544参照)。しかしながらこれらの補助物質、例えばポリエチレングリコールは屡々不随の作用を有するか、または事実許容性であり得ない。従って補助物質の不在下に水溶性である非ペプチド性カルパイン阻害剤を提供することは非常に有利である。このような阻害剤は以前にも記載されておらず、従って新規である。
【0014】
置換された非ペプチド性のアルデヒド、ケトカルボン酸エステルおよびケトアミド誘導体が本発明に記載されている。これらの化合物は新規であり、意想外にも剛構造フラグメント(rigid structual fragment)を導入することによってカルパインのようなシステインプロテアーゼの潜在的な非ペプチド性の阻害剤が得られる可能性が証明された。更に酸と結合する塩は、一般式Iの本発明の化合物の場合に可能であり、該化合物の全ては少なくとも1つの脂肪族アミン基を有する。多数のこれらの物質は0.5%溶液としてpH=4〜5で水溶性を示し、結果として、例えば脳卒中療法の場合に必要とされるような静脈内適用のために所望のプロフィールを有する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は一般式I:
【化1】

のアミドおよびその互変異性体形および異性体形、可能なエナンチオマー形およびジアステレオマー形、可能な生理学的に認容性の塩に関し、この変数および置換基は以下の意味を有する:
Aは縮合環、例えば
【化2】

であり、
Bはフェニル、ナフチル、ピリジル、ピリミジル、ピラジル、ピリダジル、キノリル、キナジル、キノキサリル、チエニル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、フラニルおよびインドリルであり、
は水素、分枝鎖状または非分枝鎖状のC〜C−アルキル、分枝鎖状または非分枝鎖状のO−C〜C−アルキル、C〜C−アルケニル、C〜C−アルキニル、C〜C−アルキルフェニル、C〜C−アルケニルフェニル、C〜C−アルキニルフェニル、OH、Cl、F、Br、I、CF、NO、NH、CN、COOH、COO−C〜C−アルキル、NHCO−C〜C−アルキル、NHCO−フェニル、CONHR11、NHSO−C〜C−アルキル、NHSO−フェニル、SO−C〜C−アルキルおよびSO−フェニルであり、
は分枝鎖状または非分枝鎖状であり、かつ2個以下のR基によって置換されているフェニル、シクロヘキシル、ピリジル、チエニル、インドリルまたはナフチル環を有していてよいC〜C−アルキルであり、
は水素、COORおよびCO−Zであり、ここでZはNRおよび
【化3】

であり、
は水素または(CHNR、O(CHNRまたは
【化4】

であり、
は、直鎖状または分枝鎖状であり、かつ1個または2個のR10基によって自体付加的に置換されていてよいフェニル環によって置換されていてよいC〜C−アルキルであり、
は水素または分枝鎖状または非分枝鎖状であるC〜C−アルキルであり、
は水素または分枝鎖状または非分枝鎖状であり、かつ付加的にR10基を有していてよいフェニル環またはピリジン環または
【化5】

によって置換されていてよいC〜C−アルキルであり、
は直鎖状または分枝鎖状であり、かつ1個または2個のR10基によって自体付加的に置換されていてよいフェニル環によって置換されていてよいC〜C−アルキルであり、
は直鎖状または分枝鎖状であり、かつ1個または2個のR10基によって自体付加的に置換されていてよいフェニル環によって置換されていてよいC〜C−アルキルであり、
10は水素、分枝鎖状または非分枝鎖状であるC〜C−アルキル、−O−C〜C−アルキル、OH、Cl、F、Br、I、CF、NO、NH、CN、CONH、COOH、COO−C〜C−アルキル、−NHCO−C〜C−アルキル、−NHCO−フェニル、−NHSO−C〜C−アルキル、−NHSO−フェニル、−SO−C〜C−アルキルおよび−SO−フェニルであってよく、
11は水素、分枝鎖状または非分枝鎖状であるC〜C−アルキルであり、
15は水素であるか、またはRの意味を有し、
mは1,2,3,4,5または6の数であり、
nは0,1または2であり、
oは0,1,2,3または4である。
【0016】
式Iの化合物はラセミ体、エナンチオマー的に純粋な化合物またはジアステレオマーとして使用できる。エナンチオマー的に純粋な化合物が望ましいのであれば、これらを、例えば適当な光学活性塩基または酸を使用して式Iの化合物またはその中間体の古典的なラセミ分割を実施することによって得ることができる。他方でエナンチオマー化合物を市販の化合物、例えば光学活性アミノ酸、例えばフェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンを使用することによって製造することもできる。
【0017】
また本発明は式Iの化合物に対して共鳴または互変異性である化合物、例えば式Iのアルデヒドまたはケト基がエノール互変異性体として存在する化合物に関する。
【0018】
更に本発明は化合物Iの生理学的に認容性の塩に関し、該塩は化合物Iと適当な酸または塩基とを反応させることによって得られる。適当な酸および塩基の例は薬剤研究の進展、1966、ビルクホイザー出版、第10巻、224〜285ページ(Fortschritte der Arzneimittelforschung[Advances inDrug Research], 1966, Birkhaeuser Verlag, Vol. 10, pp. 224-285)に列記されている。これらは、例えば塩化水素酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、リン酸、メタンスルホン酸、酢酸、ギ酸、マレイン酸、フマル酸等、ならびに水酸化ナトリウム、水酸化リチウムおよび水酸化カリウムのそれぞれを含む。
【0019】
本発明によるアミドIは合成反応式1に概略が記載される種々の方法で製造できる。
【0020】
合成反応式1
【化6】

【0021】
カルボン酸IIを適当なアミノアルコールIIIと結合させて、相応のアミドIVを形成する。C.R.ラロック、包括的な有機変換、VCH出版、1989,972頁以降(C. R. Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publisher, 1989, pages 972 ff.)またはホウベン−ヴァイル、有機化学の手法、第4版、E5、チャプターV(Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, 4th Edition, E5, Chap. V)に記載される慣用のペプチドカップリング法がこの反応のために使用される。IIの"活性化された"酸誘導体を使用することが有利であり、その際酸基COOHはCOL基に変換される。Lは離脱基、例えばCl、イミダゾールおよびN−ヒドロキシベンゾトリアゾールである。次いでこの活性化した酸をアミンと反応させて、アミドIVを得る。該反応は無水の不活性溶剤、例えば塩化メチレン、テトラヒドロフランおよびジメチルホルムアミド中で−20〜+25℃の温度で実施する。
【0022】
これらのアルコール誘導体IVを酸化して、本発明によるアルデヒド誘導体Iを得る。種々の慣用の酸化反応(C.R.ラロック、包括的な有機変換、VCH出版、1989,604頁以降参照)、例えばスヴェルン酸化(Swern oxidation)およびスヴェルン類似酸化(T. T. Tidwell, Synthesis 1990, 857-70)、次亜塩素酸ナトリウム/TEMPO(S. L. Harbenson et al., 前記参照)またはデス−マルチン(Des-Martin)(J. Org. Chem. 1983, 48, 4155)を前記の目的のために使用できる。前記の反応を、酸化剤、例えばDMSO/py×SOまたはDMSO/塩化オキサリルを含有する不活性の非プロトン性溶剤、例えばジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランまたは塩化メチレン中で−50〜+25℃の温度でその方法(前記の文献参照)に依存して実施するのが有利である。
【0023】
選択的にカルボン酸IIをアミノヒドロオキサミド酸誘導体IVと反応させてベンズアミドVIIを形成することができる。次いで反応を、IVを製造するのと同様に実施する。ヒドロオキサミド酸誘導体VIを、保護されたアミノ酸Vからこれをヒドロキシルアミンと反応させることによって得ることができる。既に記載されているアミド製造法を前記の場合も同様に使用できる。保護基Y、例えばBocを、例えばトリフルオロ酢酸を使用して慣用の方法で除去する。得られたアミドヒドロオキサミド酸VIIを本発明によるアルデヒドIに還元することによって変換できる。このために水素化アルミニウムリチウムを、例えば還元剤として−60〜0℃の温度で、かつ不活性溶剤、例えばテトラヒドロフランまたはエーテル中で使用する。
【0024】
後者の方法に類似して、カルボン酸または酸誘導体、例えば同様に還元によって本発明によるアルデヒドIに変換できるエステルIX(Y=OR’、SR’)を製造できる。これらの方法はC.R.ラロック、包括的な有機変換、VCH出版、1989,619〜26ページに記載されている。
【0025】
ケトアミドまたはケトエステルを有する新規の複素環的に置換されたアミドIを合成反応式2および3に概略した種々の方法で製造できる。
【0026】
場合によりカルボン酸エステルIIaは酸または塩基、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを使用して水性媒体または水および有機溶剤、例えばアルコールおよびテトラヒドロフランからなる混合物中で、かつ室温または高められた温度、例えば25〜100℃で変換する。
【0027】
これらの酸IIをα−アミノ酸誘導体に、例えばホウベン−ヴァイル、有機化学の手法、第4版、E5、チャプターVおよびC.R.ラロック、包括的な有機変換、VCH出版、1989,Ch.9に記載される慣用の条件を使用して結合させる。
【0028】
例えばカルボン酸IIを"活性化された"酸誘導体IIb=Y−COLに変換し、その際Lは離脱基、例えばCl、イミダゾールおよびN−ヒドロキシベンゾトリアゾールであり、これらの活性化された酸誘導体を引き続きアミノ酸誘導体HN−CH(R)−COORを添加することによって誘導体XIに変換する。この反応は無水の不活性溶剤、例えば塩化メチレン、テトラヒドロフランおよびジメチルホルムアミド中で−20〜+25℃の温度で実施する。
【0029】
合成反応式2
【化7】

【0030】
一般にエステルである誘導体XIを前記の加水分解と類似にケトカルボン酸XIIに変換する。ケトエステルI’をダーキン−ウェスト反応(Dakin-West reaction)と類似の反応で製造し、その際ツァオツァオ リー他の方法(Zhaozhao Li et al., J. Med. Chem. 1993, 36, 3472-80)を使用する。この方法において、XIIのようなカルボン酸を高められた温度(50〜100℃)で、かつ溶剤、例えばテトラヒドロフラン中でシュウ酸モノエステルクロリドと反応させ、次いで得られた生成物を塩基、例えばナトリウムエトキシドとエタノール中で、かつ25〜80℃の温度において反応させて、本発明によるケトエステルI’を得る。ケトエステルI’は、例えば前記のように加水分解して、本発明によるケトカルボン酸を得ることができる。
【0031】
またケトベンズアミドIへの変換をツァオツァオ リー他の方法(前記参照)と類似に実施する。I’中のケト基を1,2−エタンジチオールを添加し、かつルイス酸触媒、例えば三フッ化ホウ素エーテレートを使用して不活性溶剤、例えば塩化メチレン中で、かつ室温で保護し、その際ジチアンが形成する。これらの誘導体をアミンと極性溶剤、例えばアルコール中で0〜80℃の温度で反応させて、ケトアミドI(R=CONR)が形成する。
【0032】
合成反応式3
【化8】

【0033】
選択的な方法を反応式3に記載する。ケトカルボン酸IIをアミノヒドロキシカルボン酸誘導体XIII(XIIIの製造に関する、S. L. Harbenson et al., J. Med. Chem. 1994, 37, 2918-29)またはJ.P.ブルクハルト他、テトラヘドロンLett。1988,29,3433−3436(J. P. Burkhardt et al. Tetrahedron Lett)と慣用のペプチドカップリング法(前記のホウベン−ヴァイルを参照)を使用して反応させ、その際アミドXIVが形成する。これらのアルコール誘導体XIVを酸化して、本発明によるカルボン酸誘導体Iが得られる。種々の慣用の酸化反応(C.R.ラロック、包括的な有機変換、VCH出版、1989,604頁以降参照)、例えばスヴェルン酸化およびスヴェルン類似酸化、有利には場合によりジメチルスルホキシドを添加した溶剤、例えば塩化メチルまたはテトラヒドロフラン中のジメチルスルホキシド/ピリジン−三酸化硫黄複合体を室温または−50〜25℃で(T. T. Tidwell, Synthesis 1990, 857-70)または次亜塩素酸ナトリウム/TEMPO(S. L. Harbenson et al., 前記参照)をこの目的のために使用できる。
【0034】
XIVをα−ヒドロキシエステル(X=O−アルキル)である場合に、次いでこれらのエステルを加水分解して、前記と類似の方法を使用するが、有利には室温で水/テトラヒドロフラン混合物中の水酸化リチウムを使用してカルボン酸XVを得る。他のエステルまたはアミドXVIを、アルコールまたはアミンと既に記載されているカップリング条件下に反応させることによって製造する。もう一度、アルコール誘導体XVIを酸化して、本発明によるケトカルボン酸誘導体Iを得る。
【0035】
カルボン酸エステルIIの幾つかの製造は既に記載されており;他は慣用の化学的方法を使用して製造する。
【0036】
A−B結合を、ハロゲン芳香族化合物と相応のアミンとをDMF、THFまたはBuOH中の炭酸カリウムおよび18−クラウン−6の存在下に反応させることによって形成する。ジアルキルアミノアルキル置換基を、アルデヒド誘導体の相応のアミンによる水素化ホウ素、例えばBH−ピリジン錯体またはNaBHCNの存在下での還元的アミノ化によって得る(A. F. Abdel-Magid, C. A. Maryanoff, K. G. Carson, Tetrahedron Lett. 10990, 31, 5595; A. E. Moormann, Synth. Commun. 1993, 23, 789)。
【0037】
本発明中に含まれる複素環で置換されたアミドIはシステインプロテアーゼ、特にシステインプロテアーゼ、例えばカルパインIおよびIIならびにカテプシンBおよびLの阻害剤である。
【0038】
複素環で置換されたアミドIの阻害作用を文献において慣用の酵素試験を使用して確認した。その際酵素活性の50%を阻害する阻害剤濃度(IC50)を効力の基準として測定する。この評価を使用して、カルパインI、カルパインIIおよびカテプシンBにおけるアミドIの阻害作用を測定した。
【0039】
カテプシンB試験
カテプシンBの阻害をS.ハスナイン他によって記載される方法(S. Hasnain et al., J. Biol. Chem. 1993, 268, 235-40)と類似の方法を使用して測定した。
【0040】
阻害剤およびDMSOから調製した2μLの阻害剤溶液(最終濃度:100μM〜0.01μM)をカテプシンB(ヒトの肝臓のカテプシンB(カルビオケム(Calbiochem))、500μMバッファー中の5単位に希釈した)88μLに添加した。この混合物を室温(25℃)で60分間プレインキュベートし、次いで10mMのZ−Arg−Arg−pNA(10%のDMSOを含有するバッファー中)10μLを添加することによって反応を開始させた。反応をマイクロタイタープレートリーダー(microtiter plate reader)中で405nmで30分間観察した。次いでIC50を最大傾斜から決定した。
【0041】
カルパインIおよびカルパインII試験
カルパイン阻害剤の阻害特性を50mMのトリス塩酸pH7.5;0.1MのNaCl;1mMのジチオトレイトール;0.11mMのCaClの組成を有するバッファー中で、かつフッ素発生カルパイン基質Suc−Leu−Tyr−AMC(DMSO中に溶解させた25mM、バヒェム/スイス(Bachem/Switzerland))を使用して試験した。ヒトのμカルパインを赤血球から単離して数回のクロマトグラフィー工程(DEAEセファロース、フェニルセファロース、スーパーデックス200(Superdex 200)およびブルーセファロース)後にSDS−PAGE、ウェスタンブロット分析およびN−末端配列決定によって評価して>95%の純度を有する酵素が得られた。開裂生成物7−アミノ−4−メチルクマリン(AMC)の蛍光をスペックス−フルオロログ蛍光計(Spex-Fluorolog Fluorimeter)においてλex=380nmおよびλem=460nmで観察した。基質の開裂は60分間の測定期間にわたり線形であり、カルパインの自己触媒活性は試験を12℃の温度で実施した場合は低かった。阻害剤およびカルパイン基質をDMSO中の溶液の形でアッセイに添加した。その際、DMSOの最終濃度は2%を超過すべきでない。
【0042】
1つのアッセイにおいて、10μlの基質(最終濃度250μM)および10μlのμカルパイン(最終濃度2μg/ml、すなわち18nM)をバッファーを含有する1mlのキュベットに添加した。基質のカルパインを媒介する開裂を15〜20分間測定した。10μlの阻害剤(DMSO中50〜100μMの溶液)を次いで添加し、かつ開裂の阻害を更に40分間測定した。
【0043】
値を可逆的阻害に関する古典的な方程式:
(酵素学における方法)K=I/(v/v)−1;
[式中、I=阻害剤濃度、v=阻害剤を添加する前の初速度、v=平衡時の反応速度]を使用して測定した。
【0044】
速度はv=AMCの放出/時間、すなわち強度/時間から計算する。
【0045】
カルパインは細胞内のシステインプロテアーゼである。カルパイン阻害剤は細胞膜を透過して、細胞内タンパク質を分解するカルパインを妨げうる必要がある。幾つかの公知のカルパイン阻害剤、例えばE64およびロイペプチンは細胞膜の透過が困難であり、従ってこれらは良好なカルパイン阻害剤であるけれど細胞に与える影響は乏しい。目的は膜を良好に透過できる化合物を見いだすことである。カルパイン阻害剤の膜透過能力を証明するためにヒトの血小板が使用される。
【0046】
血小板におけるチロシンキナーゼpp60srcのカルパインを媒介する分解
血小板の活性化の後に、チロシンキナーゼpp60srcをカルパインによって開裂させる。これはオダ他によってJ.Biol.Chem.,1993,Vol.268,12603−12608において詳細に調査されている。これに関連して、カルパインの阻害剤であるカルペプチンがpp60srcの開裂を妨げうることを示した。本発明の物質の細胞効力を前記の文献で使用された方法の後に試験した。ヒトの新鮮なクエン酸処理した血液を200gで15分間遠心分離した。血小板リッチな血漿をプールし、血小板バッファー(血小板バッファー:68mMのNaCl、2.7mMのKCl、0.5mMのMgCl×6HO、0.24mMのNaHPO×HO、12mMのNaHCO、5.6mMのグルコース、1mMのEDTA、pH7.4)で1:1に希釈した。遠心分離および血小板バッファーでの洗浄工程後に血小板を10細胞/mlの濃度に調整した。ヒトの血小板を室温で単離した。
【0047】
試験アッセイにおいて、単離した血小板(2×10)を、種々の濃度の阻害剤(DMSO中に溶解した)と一緒に37℃で5分間プレインキュベートした。次いで血小板を1μMのイオノホアA23187および5mMのCaClで活性化した。5分間のインキュベート後に、血小板を簡単に13000rpmで遠心分離し、かつペレットをSDSサンプルバッファー(SDSサンプルバッファ:20mMのトリス塩酸、5mMのEDTA、5mMのEGTA、1mMのDTT、0.5mMのPMSF、5μgのロイペプチン/ml、10μgのペプスタチン/ml、10%のグリセロールおよび1%のSDS)中に取った。タンパク質を12%ゲル中で分画し、かつpp60srcおよびその52kDaおよび47kDaの開裂生成物をウェスタンブロットによって同定した。ウサギの抗Cys−src(pp60c-src)ポリクローナル抗体をバイオモル ファインケミカル(Biomol Feinchemikalien)(ハンブルク)から入手した。この一次抗体をヤギHRP−結合した二次抗体(ベーリンガーマンハイム、FRG)を使用して検出した。ウェスタンブロットは公知の方法を使用して実施した。
【0048】
pp60srcの開裂を、コントロールとして活性化していない血小板(コントロール1:非開裂)およびイオノホア処理およびカルシウム処理した血小板(コントロール2:100%の開裂に相当する)を使用してデンシトメトリーによって定量した。ED50値は呈色反応の強度を50%低下させる阻害剤の濃度である。
【0049】
皮質性ニューロンにおけるグルタメート誘発性細胞死
試験は、Choi D.W.,Maulucci-Gedde M.AおよびKriegstein A.R.,"皮質細胞培養におけるグルタメートの細胞毒性(Glutamate neurotoxicity in cortical cell culture)".J.Neurosci.1989,7,357-368に記載のように実施した。
【0050】
皮質の2つの半分(halves)を15日齢のマウス胚から解剖し、個々の細胞を酵素(トリプシン)的に単離した。これらの細胞(グリア細胞および皮質性ニューロン)を24ウェルプレート中に配分する。3日後(ラミニン被覆プレート)または7日(オルニチン被覆プレート)後にマイトシス処理をFDU(5−フルオロ−2−デオキシウリジン)を使用して実施した。細胞の調製の15日後に、細胞死をグルタメートの添加によって誘発した(15分)。カルパイン阻害剤をグルタメートの除去後に添加した。24時間後に、細胞の損傷を細胞培養上清において乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を測定することによって確認する。
【0051】
カルパインもまたアポトーシス性細胞死に役割を担うことが推定される(M. K. T. Squier et al. J. Cell. Physiol. 1994. 159, 229-237; T. Patel et al. Faseb Journal 1996, 590, 587-597)。従って細胞死はカルシウムによってカルシウムイオノホアの存在下にヒトの細胞系が示す別の形式で誘発される。カルパイン阻害剤は細胞中に透過し、細胞中でカルパインを阻害して、誘発される細胞死を妨げる必要がある。
【0052】
NT2細胞におけるカルシウム誘発性細胞死
ヒトの細胞系NT2において、細胞死をイオノホアA23187の存在下にカルシウムによって誘発できる。実験の20時間前に、細胞を10細胞/ウェルの割合でマイクロタイタープレートにプレーティングした。時間経過後に、細胞を2.5μMのイオノホアおよび5mMのカルシウムの存在下に種々の濃度の阻害剤と一緒にインキュベートした。5時間後にXTT(細胞増殖キット(Cell Proliferation Kit II)、ベーリンガーマンハイム)0.05mlを反応混合物に添加した。光学密度を約17時間後に製造者の教示に従ってSLTイージーリーダーEAR400(SLT Easy Reader EAR 400)中で測定した。細胞が死ぬ半値の光学密度を阻害剤を含有しない2つの細胞含有コントロールから、これらの細胞をイオノホアの不在または存在下のいずれかでインキュベートして計算した。
【0053】
中枢神経系(CNS)に過度興奮または毒性作用の状態をもたらすグルタメートの高められた活性は、幾つかの神経学的疾患または精神障害を引き起こす。グルタメートは種々の受容体を経由してその作用を誘発する。これらの2種の受容体を、その特異的アゴニストに鑑みてそれぞれNMDA受容体およびAMPA受容体と呼称する。従ってこれらのグルタメート誘発性作用に対するアンタゴニストを前記の疾患を治療するため、特に神経変性疾患、例えばハンチントン舞踏病およびパーキンソン病ならびに低酸素症、無酸素症および虚血および脳卒中および外傷の後に引き起こされる疾患による神経毒性疾患に対する治療的使用のため、または抗てんかん剤として使用することができる(Arzneim. Forschung 1990, 40, 511-514; TIPS, 1990, 11, 334-338; Drugs of the Future 1989, 14, 1059-1071)。
【0054】
興奮性アミノ酸によって引き起こされる脳の過度興奮に対する保護(マウスにおけるNMDA拮抗作用およびAMPA拮抗作用)
興奮性アミノ酸EAA(Excitatory Amino Acids)の大脳内適用は短時間の痙攣および動物(マウス)の死を引き起こす非常に大規模な過度興奮を誘発する。これの症状は、中枢神経系に作用する活性化合物(EAAアンタゴニスト)の全身性、例えば腹腔内適用によって阻害できる。中枢神経系におけるEAA受容体の過剰活性が種々の神経学的疾患の病因に重要な役割を担うので、インビボで証明されているEAA拮抗作用は、前記のCNS疾患の治療に該物質を使用できることを暗示している。該物質の効力を、測定物質の前記の腹腔内適用がNMDAまたはAMPAの規定の用量の適用によって50%の無症状の動物をもたらすED50値の決定によって測定した。
【0055】
複素環で置換されたアミドIはシステイン誘導体、例えばカルパインIおよびカルパインIIならびにカテプシンBおよびカテプシンLの阻害剤であり、かつ従ってカルパインまたはカテプシン酵素の高められた活性に関連する疾患のコントロールのために使用できる。従って、本発明のアミドIは、虚血、外傷、くも膜下出血および脳卒中の後に起こる神経変性疾患の治療および神経変性疾患、例えば多発梗塞性痴呆、アルツハイマー病およびハンチントン病の治療ならびにてんかんの治療および更に心臓の虚血後の心臓の損傷の治療、腎臓の虚血後の腎臓の損傷、骨格筋の損傷、筋ジストロフィー、平滑筋細胞の増殖により起こる損傷、冠状血管痙攣、脳血管痙攣、目の白内障および血管形成術後の血管の再狭窄の治療のために使用できる。更にアミドIは腫瘍およびその転移の化学療法において、かつ炎症およびリウマチ性疾患の場合のようなインターロイキン1レベルの増大がある疾患の治療のために使用できる。
【0056】
本発明による医薬品調剤は慣用の医薬品助剤の他に治療的有効量の化合物Iを含有する。
【0057】
例えば粉末、軟膏またはスプレーでの局所的外用のために、活性化合物は慣用の濃度で存在してよい。一般に活性化合物は0.001〜1質量%、有利には0.001〜0.1質量%の量で存在する。
【0058】
内用のためには、調剤は個々の用量で適用する。個々の用量においては、体重のkgあたり0.1〜100mgを適用する。調剤は一日に疾患の状態および重度に依存して1回以上で適用してよい。
【0059】
活性化合物の他に、本発明による医薬品調剤は所望の様式の適用に応じて慣用の賦形剤および希釈剤を含有する。医薬品技術において慣用の助剤、例えばエタノール、イソプロパノール、硬化ひまし油、硬化含水ひまし油、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコステアレート、エトキシ化脂肪アルコール、パラフィン油、ワセリンおよびラノリンを局所外用のために使用してよい。内用のための適当な助剤の例はラクトース、プロピレングリコール、エタノール、デンプン、タルクおよびポリビニルピロリドンである。
【0060】
酸化防止剤、例えばトコフェロールおよびブチル化ヒドロキシアニソールおよびブチル化ヒドロキシトルエン、矯味剤添加物、安定化剤、乳化剤および滑沢剤が存在してよい。
【0061】
活性化合物の他に調剤中に存在する物質および医薬品調剤の製造において使用される物質は毒性学的に無害であり、各活性化合物に相容性である。医薬品調剤は、例えば活性化合物と他の慣用の賦形剤および希釈剤とを混合することによって慣用の方法において製造される。
【0062】
医薬品調剤は種々の方法、例えば経口適用、非経口適用、例えば注入によって静脈内に、皮下的に、腹腔内的に、かつ局所的に適用できる。このように可能な調剤形は錠剤、エマルジョン剤、注入液剤、注射液剤、ペースト剤、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、ローション剤、粉剤およびスプレー剤である。
【実施例】
【0063】
例1
2−(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2−イル)ニコチン[N−(1−カルバモイル−1−オキソ−3−フェニルプロパン−2−イル)]アミド
a)2−(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2−イル)ニコチン酸エチル
4.0g(19.4ミリモル)の2−クロロニコチン酸エチルを、3.2g(19.4ミリモル)の1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン塩酸塩および5.36gの炭酸カリウムと一緒に撹拌しながら50mlのDMF中で3時間110℃で加熱した。次いで水を添加し、全体をエーテルで抽出した;次いでエーテル相を塩化アンモニウムで洗浄し、乾燥させ、かつ蒸発させた。粗製生成物をクロマトグラフィー(シリカゲル/ヘプタン−酢酸エチル 20−1)で精製し、4.8g(87%)の収率が得られた。
【0064】
b)2−(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2−イル)ニコチン酸
4.8gの中間体1aを2Nの水酸化ナトリウム溶液およびエタノールを使用して沸点で加水分解した(2時間)。混合物を水で希釈し、次いで酢酸エチルで抽出した;次いで水相を酢酸を使用してpH4−5に酸性化した。3.3g(81%)全体を、吸引によって得られた沈殿物の濾過および酢酸エチルによる再度の水相の抽出によって得た。融点150−152℃。
【0065】
c)2−(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2−イル)ニコチン[N−(1−カルバモイル−1−オール−3−フェニルプロパン−2−イル)]アミド
1.65g(6.5ミリモル)の中間体1cをまず、1.0ml(7.2ミリモル)のトリエチルアミンおよび0.88(6.5ミリモル)の1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール(HOBT)と一緒に0℃で50mlのDMF中に導入し、かつ1.5g(6.5ミリモル)の3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブチルアミド塩酸塩、2.7ml(19.5ミリモル)のトリエチルアミンおよび1.37g(7.2ミリモル)のN’−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)を添加した。混合物を室温で一晩撹拌した後に、水およびエーテルを添加し、かつ固体を吸引によって濾過し、2.4g(85%)の収率が得られた。融点237−239℃。
【0066】
d)2−(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2−イル)ニコチン[N−(1−カルバモイル−1−オキソ−3−フェニルプロパン−2−イル)]アミド
1.3g(3.0ミリモル)の中間体1cを、1.9ml(13.6ミリモル)のトリエチルアミンと一緒に0℃で30mlのDMSO中に溶解させ、かつ1.92g(12ミリモル)のピリジン−SO錯体を添加した。混合物を一晩撹拌した後に、炭酸水素ナトリウム希溶液を添加し、全体を酢酸エチルで3回抽出した。合した酢酸エチル相を乾燥後に蒸発させ、かつ残留物を塩化メチレンと撹拌した;次いで固体を吸引によって濾過し、真空中で乾燥させた。
収率:400mg(理論値の31%)
融点163−165℃
H NMR(DMSO−D):δ=2.8−3.2(6H)、4.3(2H)、5.4(1H)、6.8−7.5(11H)、7.8−8.1(3H)、9.0(1H)ppm。
【0067】
例2〜例5は類似の方法で製造した。
【0068】
例2
2−(1,2,3,4−テトラヒドロ−6,7−ジメトキシイソキノリン−2−イル)ニコチン[N−(1−カルバモイル−1−オキソ−3−フェニルプロパン−2−イル)]アミド
融点214−216℃
H NMR(DMSO−D):δ=2.7−3.5(6H)、3.8(6H)、4.3(2H)、5.5(1H)、6.7−7.5(9H)、7.9−8.1(2H)、9.0(1H)ppm。
【0069】
例3
2−(1,2,3,4−テトラヒドロ−6,7−ジメトキシイソキノリン−2−イル)ニコチン[N−(1−カルバモイル−1−オキソヘキサン−2−イル)]アミド
融点182℃
H NMR(DMSO−D):δ=0.9−1.8(9H)、2.8(2H)、3.5−3.7(8H)、4.3(2H)、5.1(1H)、6.7−6.9(3H)、7.7−8.2(4H)、9.0(1H)ppm。
【0070】
例4
2−(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2−イル)ベンズ[N−(1−カルバモイル−1−オキソ−3−フェニルプロパン−2−イル)]アミド
融点156−158℃
H NMR(DMSO−D):δ=2.3−3.2(6H)、4.0−4.3(2H)、5.3(1H)、6.9−8.0(15H)、10.0(1H)ppm。
【0071】
例5
4−(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−2−イル)ニコチン[N−(1−カルバモイル−1−オキソ−3−フェニルプロパン−2−イル)]アミド
融点160−162℃
H NMR(DMSO−D):δ=2.7−3.5(6H)、4.2−4.5(2H)、5.5(1H)、7.0−7.4(11H)、7.9−8.1(3H)、9.1(1H)ppm。
【0072】
他の例を以下の表に挙げる(例1〜例250)
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

【0075】
【表4】

【0076】
【表5】

【0077】
【表6】

【0078】
【表7】

【0079】
【表8】

【0080】
【表9】

【0081】
【表10】

【0082】
【表11】

【0083】
【表12】

【0084】
【表13】

【0085】
【表14】

【0086】
【表15】

【0087】
【表16】

【0088】
【表17】

【0089】
【表18】

【0090】
【表19】

【0091】
【表20】

【0092】
【表21】

【0093】
【表22】

【0094】
【表23】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I:
【化1】

[式中、
Aは縮合環、例えば
【化2】

を示し、
Bはフェニル、ナフチル、ピリジル、ピリミジル、ピラジル、ピリダジル、キノリル、キナジル、キノキサリル、チエニル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、フラニルおよびインドリルであり、
は水素、分枝鎖状または非分枝鎖状のC〜C−アルキル、分枝鎖状または非分枝鎖状のO−C〜C−アルキル、C〜C−アルケニル、C〜C−アルキニル、C〜C−アルキルフェニル、C〜C−アルケニルフェニル、C〜C−アルキニルフェニル、OH、Cl、F、Br、I、CF、NO、NH、CN、COOH、COO−C〜C−アルキル、NHCO−C〜C−アルキル、NHCO−フェニル、CONHR11、NHSO−C〜C−アルキル、NHSO−フェニル、SO−C〜C−アルキルおよびSO−フェニルであり、
は分枝鎖状または非分枝鎖状であり、かつ付加的に最大2個のR基によって置換されているフェニル環、シクロヘキシル環、ピリジル環、チエニル環、インドリル環またはナフチル環を有していてよいC〜C−アルキルであり、
は水素、COORおよびCO−Zであり、その際、ZはNRおよび
【化3】

であり、
は水素または(CHNR、O(CHNRまたは
【化4】

であり、
は直鎖状または分枝鎖状であり、1個または2個のR10基によって置換されていてよいフェニル環によって置換されていてよいC〜C−アルキルであり、
は水素、分枝鎖状または非分枝鎖状のC〜C−アルキルであり、
は水素、分枝鎖状または非分枝鎖状であり、かつR10基を有してよいフェニル環またはピリジン環によるか、または
【化5】

によって付加的に置換されていてよいC〜C−アルキルであり、
は直鎖状または分枝鎖状であり、1個または2個のR10基によって置換されていてよいフェニル環によって置換されていてよいC〜C−アルキルであり、
は直鎖状または分枝鎖状であり、かつ付加的に1個または2個のR10基によって置換されていてよいフェニル環によって置換されていてよいC〜C−アルキルであり、
10は水素、分枝鎖状または非分枝鎖状のC〜C−アルキル、−O−C〜C−アルキル、OH、Cl、F、Br、I、CF、NO、NH、CN、CONH、COOH、COO−C〜C−アルキル、−NHCO−C〜C−アルキル、−NHCO−フェニル、−NHSO−C〜C−アルキル、−NHSO−フェニル、−SO−C〜C−アルキルおよび−SO−フェニルであってよく、
11は水素、分枝鎖状または非分枝鎖状のC〜C−アルキルであり、
15は水素であるか、またはRの意味を有し、
mは1、2、3、4、5または6の数であり、
nは0、1または2の数であり、
oは0、1、2、3または4である]のアミドおよびその互変異性体形および異性体形、可能なエナンチオマー形およびジアステレオマー形、ならびに可能な生理学的に認容性の塩。
【請求項2】
Bがフェニルであり、かつRがCONRであるという差異を有する、請求項1記載の式Iの複素環で置換されたアミド。
【請求項3】
Bがピリジルであり、RがHであり、かつRがHである、請求項1記載の式Iの複素環で置換されたアミド。
【請求項4】
Bがピリジルであり、RがHであり、RがCONHである、請求項1記載の式Iの複素環で置換されたアミド。
【請求項5】
Aが縮合環、例えば
【化6】

を意味し、Bがピリジルであり、RがHであり、RがHである、請求項1記載の式Iの複素環で置換されたアミド。
【請求項6】
Aが縮合環、例えば
【化7】

であり、Bがピリジルであり、RがHであり、RがCONHである、請求項1記載の式Iの複素環で置換されたアミド。
【請求項7】
疾患の治療のための、請求項1から5までのいずれか1項記載の式Iのアミドの使用。
【請求項8】
システインプロテアーゼの阻害剤としての、請求項1から5までのいずれか1項記載の式Iのアミドの使用。
【請求項9】
システインプロテアーゼ、例えばカルパインおよびカテプシン、特にカルパインIおよびIIならびにカテプシンBおよびLの阻害剤としての、請求項6記載の使用。
【請求項10】
高められたカルパイン活性が生じる疾患を治療するための医薬品として製造するための、請求項1から5までのいずれか1項記載の式Iのアミドの使用。
【請求項11】
神経変性疾患およびニューロン損傷を治療するための医薬品を製造するための、請求項1から5までのいずれか1項記載の式Iのアミドの使用。
【請求項12】
神経変性疾患および虚血、外傷および大量の出血によって誘発されるニューロンの損傷を治療するための、請求項9記載の使用。
【請求項13】
脳卒中および頭蓋脳外傷の治療のための、請求項10記載の使用。
【請求項14】
アルツハイマー病およびハンチントン病の治療のための、請求項10記載の使用。
【請求項15】
てんかんの治療のための請求項10記載の使用。
【請求項16】
医薬品の製造および心臓の虚血後の心臓への損傷、腎臓の虚血後の腎臓への損傷、骨格筋の損傷、筋ジストロフィー、平滑筋細胞の増殖によって引き起こされる損傷、冠状血管痙攣、脳血管痙攣、目の白内障ならびに血管形成術後の血管の再狭窄の治療のための、請求項1から5までのいずれか1項記載の式Iの化合物の使用。
【請求項17】
腫瘍およびその転移の治療のための医薬品を製造するための、請求項1から5までのいずれか1項記載の式Iのアミドの使用。
【請求項18】
高められたインターロイキン1濃度が生ずる疾患を治療するための医薬品を製造するための、請求項1から5までのいずれか1項記載の式Iのアミドの使用。
【請求項19】
炎症およびリウマチ性疾患のような免疫学的疾患の治療のための、請求項1から5までのいずれか1項記載のアミドの使用。
【請求項20】
個々の用量あたり、慣用の医薬品助剤の他に請求項1から5までのいずれか1項記載の少なくとも1種のアミドIを含有する、経口的、非経口的および腹腔内的な使用のための医薬品調剤。

【公開番号】特開2011−63604(P2011−63604A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250318(P2010−250318)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【分割の表示】特願2000−550829(P2000−550829)の分割
【原出願日】平成11年5月25日(1999.5.25)
【出願人】(502159343)アボット ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (24)
【氏名又は名称原語表記】Abbott GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Max−Planck−Ring 2, D−65205 Wiesbaden, Germany
【Fターム(参考)】