説明

新規分岐グルカン並びにその製造方法および用途

【課題】耐老化性を有し、風味改善作用等を有する分岐メガロ糖の提供。
【解決手段】重合度11〜35のグルカンであって、少なくとも非還元末端に分岐構造を有するグルカン。分岐構造は、α−1,4−グルコシド結合以外のグルコシド結合により非還元末端に結合した1個以上のグルコース残基により構成される。またシクロデキストリン生成酵素と糖転移作用を有する酵素とを、デンプン原料に作用させて製造される。シクロデキストリン生成酵素は、パエニバチルスエスピー(Paenibacillus sp.)等由来のものであり、糖転移作用を有する酵素が、α−グルコシダーゼ、6−α−グルコシルトランスフェラーゼ、デキストリンデキストラナーゼ、または環状マルトシルマルトース生成酵素である。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、少なくとも非還元末端に分岐構造を有するグルカンおよびその製造方法に関する。本発明はまた、前記分岐グルカンの用途並びにそれを含有する食品および医薬品に関する。
【0002】
背景技術
デンプンはグルコースを唯一の構成糖とする天然多糖であり、α−1,4−結合からなる主鎖に同様なグルカン鎖が多数α−1,6−結合により結合し、分岐構造が形成された房状構造を有するアミロペクチンと分岐構造を持たない直鎖状のアミロースからなる。デンプンは一般的に水に不溶であるが、熱による変性、あるいは酸や酵素によりある程度加水分解して低分子化することにより水溶性となる。その後、分解を進めることにより、デキストリン、マルトオリゴ糖、ブドウ糖が得られ、これらは一般にデンプン糖と呼ばれる。デンプンの分解度合いはグルコース等量(DE)により表現される。デキストリンはデンプンを比較的軽度に分解して得られるが、DEが10以下のものはデキストリン、10〜20のものはマルトデキストリンと呼称される。
【0003】
DEが異なるデンプン分解物はそのDEに依存して物性が異なる。すなわち、分解度が高いほど甘味度が高く、最もDEが高いブドウ糖において最大となる。一方、DEが低いものほど原料であるデンプン本来の性質である老化性が強く、水溶液中では老化により凝集し、白色沈澱を生じる。また、この老化性は分岐構造が少ないほど顕著であり、分岐構造を持たないアミロースは著しく老化するため、水溶液状態では保存することはできない。また、溶液の粘性についてもDEに強く依存する。すなわち、DEが高いものほど水溶液の粘度が低く、DEが低いものほど粘性が高い。このことから、低DEのデキストリンを水分活性が低く、微生物による汚染が問題とならない程度まで濃縮すると溶液の粘度が高すぎるため、操作性が低下する。反対に、操作性に問題ない程度に低粘度な溶液とした場合は、水分活性が高く、微生物汚染により長期保存には適さない。すなわち、デンプンを飲食物の原料として利用する場合、液状品とすることは老化性、粘度、および保存安定性の観点から非現実的であるといえる。このため、デンプンやデキストリンは一般に粉末状の形態で流通している。
【0004】
飲食物でデンプン質を利用する場合、デンプンやデキストリンの老化性が品質に影響を与えることが多い。すなわち、飲料では老化による不溶化による白濁、食品では食感の劣化などである。このため、耐老化性に優れたデンプンやデキストリンが求められ、様々な検討がされてきた。耐老化性に優れ、保存安定性が優れたデンプン糖を製造するには老化性を示さない程度、すなわち重合度10以下までデンプンを分解する、あるいは密な分岐構造を有するようにデンプンを処理する必要があった。例えば、デンプンをβ−アミラーゼにより限界まで分解させた後、生じるマルトースを除去して得られるβ−リミットデキストリンは短鎖の分岐構造を多数有しており、低DEでも耐老化性に優れる特性を有する。しかし、β−リミットデキストリンを工業的に製造するにはマルトースを分画により除去する必要があった。
【0005】
このため、分画などの操作を必要とせず、より簡素にデンプンを改良するためにデンプン液化液に分岐構造を付加する酵素を作用させ、デンプンの非還元末端に分岐構造を付加することにより、耐老化性を高める技術が開発されている(特開2006−312705号公報(特許文献1)および特開2001−294601号公報(特許文献2))。あるいは、デンプン液化液に、デンプンの分岐鎖を合成する枝作り酵素(ブランチング酵素)、4−α−グルカノトランスフェラーゼまたはシクロデキストリン生成酵素を作用させることにより、水溶性の大環状グルカンを形成させる方法が提案されている (特開平8−134104号公報(特許文献3))。さらに、大麦由来の枝作り酵素(SBE−II)とホスホリラーゼを利用し、グルコース−1−リン酸とマルトオリゴ糖を基質として、グルコース重合度6または7を中心とする分岐構造を有する分岐澱粉を形成させる方法が提案されている (特開2002−78497号公報(特許文献4))。
【0006】
近年、飲料の多様化から味質改善やエネルギー補給などの目的でデキストリン類が添加される場合が多く見受けられる。このような飲料を製造する際、作業性の観点から原料として液状品が求められるケースがある。しかし、上記のようにデンプン質は分子量が大きく、水分活性が微生物の繁殖がない程度に低く、保存安定性に問題ない程度まで濃縮した液糖とした場合は粘度が高すぎるため、操作性が悪いという問題があった。老化に伴う白濁も問題となるが、上記のように耐老化性を高めたデンプンであっても同様に粘度が高すぎるため、液状品の原料として供給することはできない。一方、老化性および操作性が問題とならない程度まで分解度を高めたデンプン糖では、甘味度が高く、茶飲料など低甘味飲料では使用が制限されてしまう。このため、粉末状態だけでなく液状品としても操作性に優れ、また低甘味な糖質の提供が望まれていた。
【0007】
ところで、ポリフェノール類は分子内に複数のフェノール性ヒドロキシル基を持つ植物成分であり、カテキンやアントシアニン、クロロゲン酸などが代表的なポリフェノール類として知られている。ポリフェノール類には、多くの健康増進に有利な生理作用があることが報告されており、例えば、カテキンには抗酸化作用、抗菌作用、脂質代謝改善作用、血圧上昇抑制作用、血糖値上昇抑制作用、消臭作用、抗アレルギー作用などを有する。このような生理活性を利用し、カテキンを高濃度含む緑茶飲料やニアウォーターが健康飲料として広く販売されている。
【0008】
しかし、様々な生理機能が知られているがほとんどのポリフェノール類は強い苦味・渋味を呈する。すなわち、ポリフェノール類の強い苦味・渋味のため、高濃度にポリフェノール類を含有せしめた飲食物では、その苦味・渋味により飲食しづらいものとなる。このため、ポリフェノール類には様々な有益な生理機能があるにも関わらず、高濃度摂取することが困難であることが問題である。
【0009】
そこで、ポリフェノール類の味質改善方法として従来から種々の改善策が提案されてきた。例えば、ポリフェノール類の一種であるカテキン類を含有する容器詰飲料に関して、特開2004−254511号公報(特許文献5)においてβ−シクロデキストリンを使用する方法が開示されている。しかしながら、β−シクロデキストリンはADI値(一日許容摂取量)が5mg/kg/日と定められており、使用量が制限されるという課題があり、更にシクロデキストリンを配合することにより飲食物の旨味までも低減してしまうという問題があった。
【0010】
特開2006−280254号公報(特許文献6)では分岐構造を有する3〜4糖を有効成分とする風味調整剤を使用しカテキン類の苦味および/または渋味を抑制する方法が開示されている。しかしながら、糖は低分子であるほど甘味が強く、低分子である3〜4糖を多く含有することで甘味の付与が避けられず、緑茶飲料といった低甘味飲食物には使用が制限されていた。
【0011】
また、特開2008−61593号公報(特許文献7)ではマルトヘキサオースおよび/またはマルトヘプタオースを1.5〜6質量%の範囲で配合することによりポリフェノール類の苦味や渋味を低減させる方法が開示されている。しかしながら、この文献で使用されるマルトヘキサオースおよびマルトヘプタオース含有シラップは低分子糖も含有し、甘味を感じやすいために上記と同様な理由で緑茶飲料などの低甘味飲料ではその使用量が制限されるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−312705号公報
【特許文献2】特開2001−294601号公報
【特許文献3】特開平8−134104号公報
【特許文献4】特開2002−78497号公報
【特許文献5】特開2004−254511号公報
【特許文献6】特開2006−280254号公報
【特許文献7】特開2008−61593号公報
【発明の概要】
【0013】
本発明者らは、糖転移作用を有する酵素をシクロデキストリン生成酵素と共にデンプン液化液に作用させると、シクロデキストリンをほとんど生成させずに、非還元末端に分岐構造を有する重合度11〜35程度のグルカンを製造できることを見いだした。本発明者らは、また、非還元末端に分岐構造を有する重合度11〜35程度のグルカンが、直鎖状マルトデキストリンと比べて極めて高い耐老化性を有するとともに、風味改善や食感の改善等に極めて有効であることを見いだした。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0014】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)重合度11〜35のグルカンであって、少なくとも非還元末端に分岐構造を有するグルカン、またはその還元物(以下「本発明によるメガロ糖」という)。
(2)α−1,4−グルコシド結合により構成されたグルカンと、その非還元末端に結合した分岐構造とからなる、(1)に記載のグルカンまたはその還元物。
(3)分岐構造が、α−1,4−グルコシド結合以外のグルコシド結合により非還元末端に結合した1個以上のグルコース残基により構成される、(2)に記載のグルカンまたはその還元物。
(4)(1)〜(3)のいずれか一項に記載のグルカンまたはその還元物を固形分当たり10〜60質量%含有する液糖または粉糖。
(5)シクロデキストリン生成酵素と糖転移作用を有する酵素とを、デンプン原料に作用させる工程を含んでなる、(1)〜(3)のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または(4)に記載の液糖もしくは粉糖の製造法。
(6)シクロデキストリン生成酵素と糖転移作用を有する酵素に加えて、枝切り酵素を更に作用させる、(5)に記載の製造法。
(7)シクロデキストリン生成酵素が、パエニバチルス エスピー (Paenibacillus sp.)、バチルス コアギュランス (Bacillus coagulans)、バチルス ステアロサーモフィルス (Bacillus stearothermophilus)、またはバチルス マゼランス (Bacillus macelans) 由来のものである、(5)または(6)に記載の製造法。
(8)糖転移作用を有する酵素が、α−グルコシダーゼ、6−α−グルコシルトランスフェラーゼ、デキストリンデキストラナーゼ、または環状マルトシルマルトース生成酵素である、(5)または(6)に記載の製造法。
(9)α-グルコシダーゼが、アスペルギルス ニガー (Aspergillus niger) またはアクレモニウム エスピー (Acremonium sp.) 由来のものである(8)に記載の製造法。
(10)枝切り酵素が、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、(6)に記載の製造法。
(11)枝切り酵素が、マイロイデス オドラータス (Myroides odoratus)由来イソアミラーゼ、シュードモナス アミロデラモサ (Pseudomonas amyloderamosa) 由来イソアミラーゼ、およびクレブシエラ プネウモニアエ(Klebsiella pneumoniae)由来プルラナーゼ、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、(6)に記載の製造法。
(12)(1)〜(3)のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または(4)に記載の液糖もしくは粉糖を含んでなる、食品添加剤または製剤用添加剤。
(13)(1)〜(3)のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または(4)に記載の液糖もしくは粉糖を含んでなる、食品用風味改善剤または製剤用マスキング剤。
(14)風味改善が、苦味および/または渋味の低減、酸味の低減、エグ味および/または嫌味の低減、コク味の増強、不快臭の低減、またはアルコール感の低減である、(13)に記載の風味改善剤。
(15)風味改善が、苦味および/または渋味の低減である、(14)に記載の風味改善剤。
(16)(1)〜(3)のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または(4)に記載の液糖もしくは粉糖を含んでなる、食感改善剤。
(17)食感改善が、パサパサ感の抑制、しっとり感の付与、またはふんわりした食感の維持である、(16)に記載の食感改善剤。
(18)(1)〜(3)のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または(4)に記載の液糖もしくは粉糖を含んでなる、氷の均一的凍結剤。
(19)(1)〜(3)のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または(4)に記載の液糖もしくは粉糖を含んでなる、食品の照りおよび/またはつや向上剤。
(20)(1)〜(3)のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または(4)に記載の液糖もしくは粉糖を食品に添加することを含んでなる、風味の改善方法または風味が改善された食品の製造方法。
(21)(1)〜(3)のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または(4)に記載の液糖もしくは粉糖を、苦味および/または渋味を有する食品に添加することを含んでなる、苦味および/または渋味の低減化方法または苦味および/または渋味が低減された食品の製造方法。
(22)苦味および/または渋味を有する食品が、ポリフェノール類含有食品である、(21)に記載の苦味および/または渋味の低減化方法または苦味および/または渋味が低減された食品の製造方法。
(23)ポリフェノール類含有食品が、茶系飲料、果実飲料、炭酸飲料、野菜飲料、スポーツ飲料、乳性飲料、アルコール飲料、その他の飲料、アイスクリーム、ゼリー、ムース、飴菓子、ガム、フィリング、健康食品、またはサプリメントである、(22)に記載の苦味および/または渋味の低減化方法または苦味および/または渋味が低減された食品の製造方法。
(24)(1)〜(3)のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または(4)に記載の液糖もしくは粉糖を、医薬品に添加することを含んでなる、不快な味のマスキング方法または不快な味がマスキングされた医薬品の製造方法。
(25)(1)〜(3)のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または(4)に記載の液糖もしくは粉糖を食品に添加することを含んでなる、食感の改善方法または食感が改善された食品の製造方法。
(26)添加物が均一に溶解または分散した水に、(1)〜(3)のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または(4)に記載の液糖もしくは粉糖を添加して凍結させることを含んでなる、氷の均一的凍結方法または均一的に凍結した氷の製造方法。
(27)(1)〜(3)のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または(4)に記載の液糖もしくは粉糖を食品に添加することを含んでなる、食品の照りおよび/またはつやの向上方法または照りおよび/またはつやが向上した食品の製造方法。
(28)(1)〜(3)のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または(4)に記載の液糖もしくは粉糖を、乳タンパク質含有飲料に添加することを含んでなる、乳タンパク質の凝集および/または沈殿の抑制方法または乳タンパク質の凝集および/または沈殿が抑制された乳タンパク質含有飲料の製造方法。
(29)(1)〜(3)のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または(4)に記載の液糖もしくは粉糖を含んでなる、食品。
(30)(1)〜(3)のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または(4)に記載の液糖もしくは粉糖を含んでなる、ポリフェノール類含有食品。
(31)ポリフェノール類0.13質量%に対して、(1)〜(3)のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物を1.6〜50質量%含有する、(30)に記載のポリフェノール類含有食品。
(32)ポリフェノール類含有食品が、茶系飲料、果実飲料、炭酸飲料、野菜飲料、スポーツ飲料、乳性飲料、アルコール飲料、その他の飲料、アイスクリーム、ゼリー、ムース、飴菓子、ガム、フィリング、健康食品、またはサプリメントである、(31)に記載のポリフェノール類含有食品。
(33)(1)〜(3)のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または(4)に記載の液糖もしくは粉糖を含んでなる氷、またはそれを含有してなる食品。
(34)(1)〜(3)のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または(4)に記載の液糖もしくは粉糖を含んでなる、医薬品。
(35)(1)〜(3)のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または(4)に記載の液糖もしくは粉糖を含んでなる、乳タンパク質含有飲料。
(36)経腸栄養剤または経口栄養剤である、(35)に記載の乳タンパク質含有飲料。
【0015】
本発明による分岐メガロ糖は、優れた耐老化性を有するとともに、保存安定性や操作性にも優れている。本発明による分岐メガロ糖は、また、不快な味をマスキングするなど風味改善作用を有する。本発明による分岐メガロ糖は更に、糖類などの混合成分を含有する水に添加した場合に氷の均一性を向上・促進させる作用を有する。本発明による分岐メガロ糖はまた、食品の照りやつやを向上させる作用を有する。本発明による分岐メガロ糖は、更にまた、低甘味であるとともに、食品に添加しても食品本来の風味に影響を与えない。本発明による分岐メガロ糖は、また、乳タンパク質の凝集や沈殿を防止し、乳タンパク質を安定して存在させることができる。従って、本発明による分岐メガロ糖およびその還元物並びにそれを含有する液糖および粉糖は、食品添加物や製剤用添加剤として幅広く実用可能である。
【0016】
本発明による製造方法によれば、本発明による分岐メガロ糖を簡便かつ高収率で製造できる。従って、本発明による製造方法は、本発明による分岐メガロ糖の工業生産に途を拓くものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による分岐メガロ糖の耐老化性を示した図である。1:α−グルコシダーゼ未添加区、2:α−グルコシダーゼ添加区。
【図2】本発明による分岐メガロ糖の耐老化性をコーンシラップとの対比で示した図である。1:分岐メガロ糖含有シラップ、2:コーンシラップ。
【発明の具体的説明】
【0018】
分岐メガロ糖およびその製造
本発明による分岐メガロ糖は、直鎖状グルカンと分岐構造とからなる重合度11〜35のグルカンであって、少なくとも直鎖状グルカンの非還元末端に分岐構造が導入されたグルカンである。ここで、「直鎖状グルカン」とは、単一のグルコシド結合によりグルコース分子が結合して構成された直鎖状のグルカンを意味する。
【0019】
本発明による分岐メガロ糖の具体例としては、α−1,4−グルコシド結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度11〜35の分岐メガロ糖が挙げられる。本発明による分岐メガロ糖の更なる具体例としては、α−1,4−グルコシド結合により構成された直鎖状グルカンと、その直鎖状グルカンの非還元末端のみに導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度11〜35の分岐メガロ糖が挙げられる。
【0020】
本発明において「分岐構造」とは、α−1,4−グルコシド結合以外のグルコシド結合により直鎖状グルカンに結合した1個以上のグルコース残基からなるグルカン残基を意味する。α−1,4−グルコシド結合以外のグルコシド結合としては、α−1,6−グルコシド結合、α−1,3−グルコシド結合、α−1,2−グルコシド結合が挙げられる。
【0021】
後述するように、本発明による製造方法で使用される糖転移作用を有する酵素を選択することによって、非還元末端に導入される分岐構造を変化させることができる。分岐構造のグルカン残基を構成するグルコース残基の個数は本発明による分岐メガロ糖の重合度を満たす限り特に限定されないが、好ましくは、1〜数個、より好ましくは、1〜6個、1〜4個、1〜3個、または1〜2個とすることができる。
【0022】
分岐構造が2糖単位で構成されたグルカン残基の場合には、その分岐構造としてはコージビオース、ニゲロース、マルトース、イソマルトース構造が挙げられ、より具体的には、直鎖状グルカンの非還元末端にα−1,4−結合以外の結合様式でコージビオース、ニゲロース、マルトース、またはイソマルトースが結合した構造が挙げられる。分岐構造が3糖以上のグルカン残基の場合には、その分岐構造としては、イソマルトトリオース、ニゲロトリオースなど単一なグルコシド結合のみから構成されるグルカンや、パノースなど複数のグルコシド結合により構成されたグルカンが挙げられ、より具体的には、直鎖状グルカンの非還元末端にα−1,4−結合以外の結合様式で、イソマルトトリオース、ニゲロトリオースなど単一なグルコシド結合のみから構成されるグルカンや、パノースなど複数のグルコシド結合により構成されたグルカンが結合した構造が挙げられる。
【0023】
本発明において「還元末端」とは、還元性を示す糖残基を意味する。本発明において「非還元末端」とは、還元性を示さない糖残基、すなわち、「還元末端」以外の末端糖残基を意味する。
【0024】
本発明において「重合度」とは、グルカンを構成するグルコース残基の個数を指し、直鎖状グルカンを構成するグルコース残基の個数のみならず、分岐構造を構成するグルコース残基の個数を含む。分岐糖類の重合度は、高速液体クロマトグラフィー (HPLC)法によって測定することができる。
【0025】
本発明によるメガロ糖の重合度は11〜35であるが、重合度を15〜35の範囲とすることもできる。なお、本明細書では、重合度11〜35のグルカンを単に「メガロ糖」ということがある。
【0026】
本発明において「還元物」とは、糖の還元末端のグルコシル基のアルデヒド基が還元され、水酸基となっているものを言う。
【0027】
糖の還元物を得る方法は当業者に周知であり、使用可能な還元方法を例示すれば、ヒドリド還元剤を用いる方法、プロトン性溶媒中の金属を用いる方法、電解還元方法、接触水素化反応方法等が挙げられる。本発明においては、少量の還元物を調製する場合にはヒドリド還元剤を用いる方法が簡便且つ特殊な装置を必要とせず便利であり、一方で、工業的に大規模に実施する場合には、経済性優れ、副生成物も少ないという点から、接触水素化反応を用いる方法が好ましい。
【0028】
接触水素化反応とは、触媒の存在下、不飽和有機化合物の二重結合部に水素を添加する反応であり、一般に水添反応とも言われている。本発明による還元物の製造方法を具体的に説明すると、本発明による分岐メガロ糖を水に溶解し、そこにラネーニッケル触媒を適量加え、水素ガスを添加し、高温条件下で還元する。次に、脱色・脱イオン処理して、分岐メガロ糖還元糖組成物を得る。
【0029】
接触水素化反応において使用し得る触媒としては、公知の水添触媒なら特に限定されないが、例えば、ラネーニッケル、還元ニッケル、珪藻土、アルミナ、軽石、シリカゲル、酸性白土などの種々の担体に担持したニッケル−担体触媒などのニッケル触媒;ラネーコバルト、還元コバルト、コバルト−担体触媒などのコバルト触媒;ラネー銅、還元銅、銅−担体触媒などの銅触媒;パラジウム黒、酸化パラジウム、コロイドパラジウム、パラジウム−炭素、パラジウム−硫酸バリウム、パラジウム−酸化マグネシウム、パラジウム−アルミナなどのパラジウム触媒;白金黒、コロイド白金、酸化白金、硫化白金、白金−炭素などの白金−担体触媒等の白金触媒;コロイドロジウム、ロジウム−炭素、酸化ロジウムなどのロジウム触媒;ルテニウム触媒などの白金族触媒;酸化二レニウム、レニウム−炭素などのレニウム触媒;銅クロム酸化物触媒;三酸化モリブデン触媒;酸化バナジウム触媒;酸化タングステン触媒;銀触媒などが挙げられる。これらの触媒の内では、ラネーニッケル、還元ニッケル、ニッケル珪藻土を用いることが好ましく、より好ましくは、ラネーニッケルである。
【0030】
また、水素の圧力は通常10〜250kg/cm、好ましく50〜200kg/cmの範囲である。また、反応温度は触媒量、溶媒種別により異なるが、通常80〜200℃の範囲であることが好ましく、90〜160℃がより好ましい。
【0031】
なお、本明細書において「本発明による分岐メガロ糖」というときは、還元物をも含む意味で用いられるものとする。
【0032】
本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖は、シクロデキストリン生成酵素および糖転移作用を有する酵素を、デンプン原料に作用させることにより製造することができる。
【0033】
本発明による製造方法では、デンプン原料に、シクロデキストリン生成酵素および糖転移作用を有する酵素を一緒に作用させることが好ましい。
【0034】
以下に拘束される訳ではないが、分岐メガロ糖の生成機構は次のようなものであると考えられる。すなわち、デンプン原料に含まれるデキストリンの非還元末端、あるいはシクロデキストリン生成酵素の加水分解、カップリング、不均化反応のいずれかにおいて低分子化されたデキストリンの非還元性末端にα−グルコシダーゼが作用してα−1,4−結合を切断し、グルコシル基を他のあるいは同一の非還元性末端のグルコシル基にα−1,6−結合、α−1,2−結合、あるいはα−1,3−結合で付加する。これにより非還元性末端に分岐構造を有するメガロ糖が生じる。反応初期はこのような分岐メガロ糖が反応系内に存在しないため、シクロデキストリン生成酵素は反応初期にはシクロデキストリンを生じる。しかし、反応後期では大半のマルトデキストリンの非還元性末端に分岐鎖が付加されるため、このような分岐構造を有する糖質はシクロデキストリン生成酵素の環状化反応の基質とはならない。このため、シクロデキストリン生成酵素によるシクロデキストリン生成反応は反応初期にしか起こらず、また、シクロデキストリン生成酵素のカップリング反応により生じたシクロデキストリンが開環され、α−グルコシダーゼによる糖転移反応の基質として供給される。その結果、反応初期に生じたシクロデキストリンは反応後期にはほぼ完全に分解し、反応後期にはシクロデキストリンはほとんど残存しない。枝切り酵素を反応液中に共存させた場合には、デンプン分岐鎖を切断し、直鎖状のデキストリンを供給するため、シクロデキストリン生成酵素によるデンプンの低分子化を促進する他、このような直鎖状のデキストリンはカップリング反応における受容体分子としても働くため、反応を効率的に進めることが可能となると考えられる。
【0035】
デンプン原料から分岐メガロ糖を生成させる酵素反応は、酵素反応が進行する温度で実施することができ、通常、60℃付近までの温度範囲で実施することができる。好適な反応温度は、30〜55℃である。デンプン原料から分岐メガロ糖を生成させる酵素反応は、酵素反応が進行するpHで実施することができ、通常、pH5〜9の範囲で実施することができる。好適な反応pHは、pH5.5〜7の範囲である。酵素の使用量と反応時間とは密接に関係しており、目的とする酵素反応の進行により適宜反応時間を調節することができる。
【0036】
本発明における製造方法ではデンプン原料としてデンプン液化液を用いることができる。原料として用いられるデンプン液化液のデンプン濃度は、酵素反応の効率やデンプンの溶解度等の観点から、10〜45質量%とすることができる。但し、デンプン部分分解物を原料とする場合は基質濃度が45質量%を越えても反応を良好に進行させることができる。デンプン液化液のDEは、通常DE2〜25の範囲とすることが好ましく、より好ましくはDE3〜10の範囲である。本発明による製造方法での酵素反応に際しては、オリゴ糖の遊離を防ぐため、液化酵素を失活させることが好ましい。本発明における製造方法では、デンプン原料としてデンプン糊化物を用いてもよい。
【0037】
本発明による製造方法で酵素反応に用いられるシクロデキストリン生成酵素の添加量は、反応効率および製造コストの観点から、対基質(固形)1g当たり0.2〜10単位とすることができる。ここで、シクロデキストリン生成酵素1単位とは後述するシクロデキストリン生成酵素の活性測定方法の条件下において、1分間に1mgのβ−シクロデキストリンを生成するのに必要な酵素量をいう。
【0038】
本発明による製造方法で酵素反応に用いられる糖転移作用を有する酵素のうちα−グルコシダーゼの添加量は、反応効率および製造コストの観点から、対基質(固形)1g当たり0.01〜30単位とすることができる。ここで、α−グルコシダーゼ1単位とは後述するα−グルコシダーゼの活性測定方法の条件下において、1分間に1μmolのマルトースを加水分解するのに必要な酵素量をいう。
【0039】
α−グルコシダーゼ以外の糖転移作用を有する酵素の添加量については、酵素反応や反応条件は周知であることから、当業者であれば、α−グルコシダーゼの添加量に従ってその添加量を決定できる。
【0040】
本発明による製造方法では、シクロデキストリン生成酵素と糖転移作用を有する酵素に加えて、枝切り酵素を更に作用させることができる。枝切り酵素を作用させた場合は、分岐メガロ糖生成反応後に残存する重合度35を超えるデキストリン成分の残存量が少なく、分岐メガロ糖生成量が高まることから、効率的に分岐メガロ糖を製造するためには枝切り酵素を使用することが好ましい。
【0041】
枝切り酵素は、シクロデキストリン生成酵素および糖転移作用を有する酵素と一緒に、デンプン原料に作用させることが好ましい。
【0042】
本発明による製造方法で酵素反応に用いられる枝切り酵素のうちイソアミラーゼの添加量は、反応効率および製造コストの観点から、対基質(固形)1g当たり10〜1000単位とすることができる。本発明による製造方法で酵素反応に用いられる枝切り酵素のうちプルラナーゼの添加量は、反応性および製造コストの観点から、対基質(固形)当たり0.001〜0.1質量%とすることができる。ここで、イソアミラーゼ1単位とは、後述するイソアミラーゼの活性測定方法の条件下において610nmの吸光度を0.01増加させる酵素力価である。
【0043】
イソアミラーゼおよびプルラナーゼ以外の枝切り酵素の添加量については、当業者であれば、イソアミラーゼやプルラナーゼの添加量に従ってその添加量を決定できる。
【0044】
本発明による製造方法の原料となるデンプンの由来は特に限定されないが、例えば、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、米デンプン、餅米デンプン、小麦デンプン、サゴヤシデンプンなどの地上デンプンや、馬鈴薯デンプン、甘藷デンプン、タピオカ澱デンプン、くずデンプンなどの地下デンプンを用いることができる。さらに、デンプンから得られたアミロース、アミロペクチン、デンプン部分分解物などを原料とすることも可能である。これらのデンプンは液化あるいは糊化して本発明による製造方法に使用することができる。例えば、デンプンにアミラーゼなどの液化酵素を作用させて得られたデンプン液化液を本発明による製造方法のデンプン原料として用いることができる。デンプンの液化の方法や糊化の方法は当業者に周知であり、いずれの方法をも用いることができる。
【0045】
本発明による製造方法に用いる酵素は、分岐メガロ糖を調製できる限り、精製酵素であっても粗酵素であっても良く、また、遊離の酵素であっても、固定化された酵素であってもよい。固定化酵素の場合、反応の形式は、バッチ式、半連続式および連続式のいずれでもよい。固定化方法としては、担体結合法、(例えば、共有結合法、イオン結合法、あるいは物理的吸着法)、架橋法あるいは包括法(格子型あるいはマイクロカプセル型)など、公知の方法を使用することができる。
【0046】
本発明による製造方法に用いる「シクロデキストリン生成酵素」は、市販のものを用いても、微生物から単離したものを用いてもよい。単離源となる微生物は、天然由来の微生物に加えて、シクロデキストリン生成酵素産生能を有する組換え微生物や、天然由来の微生物を変異させた変異株であってもよい。「シクロデキストリン生成酵素」の微生物起源は特に限定されないが、例えば、パエニバチルス エスピー (Paenibacillus sp.)、バチルス コアギュランス (Bacillus coagulans)、バチルス ステアロサーモフィルス (Bacillus stearothermophilus)、およびバチルス マゼランス (Bacillus macelans) 由来のものを用いることができる。
【0047】
本発明による製造方法に用いる「糖転移作用を有する酵素」としては、α−グルコシダーゼ、6−α−グルコシルトランスフェラーゼ、デキストリンデキストラナーゼ、および環状マルトシルマルトース生成酵素が挙げられる。
【0048】
α-グルコシダーゼは、市販のものを用いても、微生物から単離したものを用いてもよい。単離源となる微生物は、天然由来の微生物に加えて、α−グルコシダーゼ生成酵素産生能を有する組換え微生物や、天然由来の微生物を変異させた変異株であってもよい。α−グルコシダーゼの微生物起源は特に限定されないが、例えば、アスペルギルス ニガー (Aspergillus niger) およびアクレモニウム エスピー (Acremonium sp.) 由来のものを用いることができる。
【0049】
本発明による製造方法に用いる「枝切り酵素」としては、イソアミラーゼ、プルラナーゼが挙げられ、長鎖な分岐鎖を切断しやすいイソアミラーゼを使用することが好ましい。
【0050】
イソアミラーゼは、市販のものを用いても、微生物から単離したものを用いてもよい。
単離源となる微生物は、天然由来の微生物に加えて、イソアミラーゼ産生能を有する組換え微生物や、天然由来の微生物を変異させた変異株であってもよい。イソアミラーゼの微生物起源は特に限定されないが、例えば、マイロイデス オドラータス (Myroides odoratus)およびシュードモナス アミロデラモサ (Pseudomonas amyloderamosa)由来のものを用いることができる。
【0051】
プルラナーゼは、市販のものを用いても、微生物から単離したものを用いてもよい。単離源となる微生物は、天然由来の微生物に加えて、プルラナーゼ産生能を有する組換え微生物や、天然由来の微生物を変異させた変異株であってもよい。プルラナーゼの微生物起源は特に限定されないが、例えば、クレブシエラ プネウモニアエ (Klebseilla pneumoniae) やバチルス ブレビス (Bacillus brevis)由来のものを用いることができる。プルラナーゼとしては市販酵素を利用する場合には、好ましくは、天野エンザイム社製プルラナーゼ「アマノ」3を使用することができる。
【0052】
本発明による製造方法を実施すると、反応物中に本発明による分岐メガロ糖を得ることができる。反応物中に存在するメガロ糖の非還元末端に分岐構造が導入されているかは、マルトデキストリンやデンプンの非還元性末端から2糖単位でα−1,4−結合を加水分解するβ−アミラーゼにより加水分解を受けないことにより確認することができる。使用できるβ−アミラーゼは、特に限定されないが、例えば、大豆由来のβ−アミラーゼを使用することができる。なお、β−アミラーゼと同様にマルトデキストリンやデンプンの非還元性末端よりα−1,4−結合を加水分解するグルコアミラーゼを使用することも可能ではあるが、この酵素はα−1,6−結合分解能も有するため、β−アミラーゼを使用することが好ましい。
【0053】
本発明による製造方法では、糖転移酵素としてアクレモニウム エスピー由来のα−グルコシダーゼを使用すると、グルコース残基がα−1,3−グルコシド結合により非還元末端に結合した分岐メガロ糖を製造することができる。この場合、分岐メガロ糖が有する分岐構造は、グルコースがα−1,3−結合により分岐した構造、マルトースがα−1,3−結合により分岐した構造、ニゲロースがα−1,3−結合により分岐した構造、マルトトリオースがα−1,3−結合により分岐した構造、マルトシル−α−1,3−グルコースがα−1,3−結合により分岐した構造、ニゲロシル−α−1,4−グルコースがα−1,3−結合により分岐した構造、ニゲロトリオースがα−1,3−結合により分岐した構造が挙げられる。4糖以上の分岐構造が結合する場合には、その分岐構造は、基質の直鎖状グルカンの非還元末端にα−1,3−結合により結合するグルカンであって、分岐構造を構成するグルコシド結合がα−1,4−結合および/またはα−1,3−結合からなるグルカンであってもよい。
【0054】
本発明による製造方法においてアクレモニウム エスピー由来のα−グルコシダーゼを使用した場合には、本発明による分岐メガロ糖を高収率で製造することができ、特に、重合度15〜35の比較的重合度が高い分岐メガロ糖を高効率で製造することができる。
【0055】
本発明による製造方法では、また、糖転移酵素としてアスペルギルス ニガー由来のα−グルコシダーゼを使用すると、グルコース残基がα−1,6−グルコシド結合により非還元末端に結合した分岐メガロ糖を製造することができる。この場合、分岐メガロ糖が有する分岐構造は、グルコースがα−1,6−結合により分岐した構造、マルトースがα−1,6−結合により分岐した構造、イソマルトースがα−1,6−結合により分岐した構造、マルトトリオースがα−1,6−結合により分岐した構造、イソパノースがα−1,6−結合により分岐した構造、パノースがα−1,6−結合により分岐した構造、イソマルトトリオースがα−1,6−結合により分岐した構造が挙げられる。4糖以上の分岐構造が結合する場合には、その分岐構造は、基質の直鎖状グルカンの非還元末端にα−1,6−結合により結合するグルカンであって、分岐構造を構成するグルコシド結合がα−1,4−結合および/またはα−1,6−結合からなるグルカンであってもよい。なお、アスペルギルス ニガー由来のα−グルコシダーゼを用いた場合はごく微量ではあるがα−1,2−結合やα−1,3−結合が分岐構造中に含まれることがある。
【0056】
糖転移酵素として6−α−グルコシルトランスフェラーゼを使用した場合には、直鎖状グルカンの非還元末端にα−1,6−結合によりグルコースが1分子結合した分岐メガロ糖が得られる。
【0057】
糖転移酵素としてデキストリンデキストラナーゼを使用した場合には、直鎖状グルカンの非還元末端にグルコース1〜6残基からなる分岐構造がα−1,6−結合により結合した分岐メガロ糖が得られる。この分岐構造のグルカンは主としてα−1,6−結合から構成されるが、わずかにα−1,4−結合が含まれることがある。
【0058】
糖転移酵素として環状マルトシルマルトース生成酵素を使用した場合は、直鎖状グルカンの非還元末端にマルトースまたはマルトシル−α−1,6−マルトースがα−1,6−結合により結合した分岐メガロ糖が得られる。
【0059】
本発明では、酵素反応により得られた生成物を、そのまま分岐メガロ糖製品とすることもできる。また、必要に応じて、酵素反応により得られた生成物を遠心分離あるいは濾過等により不溶物を除去し、水溶性画分を濃縮することで、目的とする本発明による分岐メガロ糖の溶液を得ることもできる。あるいは、必要に応じて活性炭により脱色させたもの、適当なイオン交換樹脂によりイオン性成分を除去したものを濃縮してもよい。保存性やその後の用途においては、脱色、イオン除去したものを微生物の繁殖が問題とならない程度の水分活性となるまで濃縮することが好適である。または、用途によっては利用しやすいように、乾燥し、粉末として得ることもできる。乾燥は、通常、凍結乾燥あるいは噴霧乾燥やドラム乾燥などの方法が利用できる。乾燥物は、必要により粉砕することが望ましい。
【0060】
従って、本発明によれば、本発明による分岐メガロ糖を固形分当たり10〜60質量%、好ましくは、15〜55質量%含有する液糖および粉糖が提供される。なお、本明細書において「粉糖」は粉飴を含む意味で用いられるものとする。
【0061】
本発明の酵素反応により得られる生成物は、通常、本発明による分岐メガロ糖と共に少量のシクロデキストリン、デキストリン、または重合度10以下のオリゴ糖、あるいはこれらの混合物を含有している。この生成物はそのまま後述するような食品などの用途に用いることができるが、必要に応じてこれらの成分を除去し、精製した分岐メガロ糖を得てもよい。あるいは、これらの生成物から重合度5未満のオリゴ糖を除去してもよい。分岐メガロ糖の単離・精製方法およびオリゴ糖の分離・除去方法としては、ゲルろ過クロマトグラフィーなど当業者に周知の糖類の精製方法を使用できる。なお、本発明の酵素反応により得られる生成物には、デンプン原料に由来する分岐構造を非還元末端に加えて直鎖状グルカンの中間部分、すなわち、末端残基以外の糖残基、に有する分岐メガロ糖が僅かに含まれており、そのような分岐メガロ糖も本発明の範囲内であることはいうまでもない。
【0062】
このようにして得られる本発明による分岐メガロ糖は、その溶液を低温下あるいは固形分75質量%程度の高濃度溶液として放置しても通常のデキストリンと比較して、老化による白濁が観察されず、顕著な耐老化性を有するという特徴を有する。また、固形分75質量%程度の溶液状態での粘性が低く、操作性に優れるという特徴も有する。また、糖化反応後のグルコースを始めとする低分子オリゴ糖成分の含有量が少なく、水飴としては極めて低甘味であることも特徴である。
【0063】
また、本発明による分岐オリゴ糖を含有する液糖および粉糖であって、重合度4以下のオリゴ糖を除去した液糖および粉糖は、耐老化性を有することはもちろんのこと、低甘味であるとともに、風味改善に用いることができる点で有利である。
【0064】
分岐メガロ糖の用途
[食品への用途]
本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖は、食品に添加して使用することができる。従って、本発明によれば、本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖を含んでなる食品添加剤が提供される。本発明による本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖を添加することができる食品は特に限定されないが、例示すれば、茶系飲料、果実飲料、炭酸飲料、野菜飲料、スポーツ飲料、乳性飲料、アルコール飲料、その他の飲料や、アイスクリーム、氷菓、ゼリー、ムース、飴菓子、ガム、フィリング、健康食品、サプリメント、パン類、クッキー類、米飯、ケーキ類、麺類、冷凍食品、凍結飲料が挙げられる。
【0065】
本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖は、風味改善効果や食感改善効果を有するとともに、低甘味という特徴を有する。従って、本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖を食品に添加することにより、食品本来の風味を損なわずに食品の風味や食感を改善できる点で有利である。
【0066】
本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖は、また、添加物が溶解または分散した水を均一に凍結させる効果を有する。従って、本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖を、添加物が溶解または分散した水に添加することにより、添加物が均一に分散した氷を製造できる点で有利である。
【0067】
本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖は、また、食品の照りやつやを向上させることができる。従って、本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖を食品に添加することにより、照りやつやが向上した商品を提供できる点で有利である。
【0068】
本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖は、また、乳タンパク質の凝集や沈殿を抑制することができる。従って、本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖を乳タンパク質含有飲料に添加することにより、乳タンパク質の凝集や沈殿が抑制され、乳タンパク質が安定化された乳タンパク質含有飲料を提供できる点で有利である。
【0069】
本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖の食品への添加方法は当業者であればその食品の製造方法に従って適宜選択することができ、食品の製造原料に予め配合して製造しても、食品の製造工程中あるいは製造後に配合して製造してもよい。
【0070】
[医薬品への用途]
本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖は、また、医薬品に添加して使用することができる。従って、本発明によれば、本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖を含んでなる製剤用添加剤が提供される。本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖を添加することができる医薬品は特に限定されないが、例えば、経口投与用製剤が挙げられ、好ましくは、錠剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、液剤、シロップ剤(ドライシロップ剤を含む)、カプセル剤、トローチ剤などである。
【0071】
本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖は、風味改善効果を有する。従って、本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖を医薬品に添加することにより、有効成分や他の添加成分の味を矯正あるいはマスキングできるとともに、賦形剤としても利用できる点で有利である。
【0072】
医薬製剤の製造方法や医薬品の原料となる製剤用添加剤は当業者に周知であり、本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖を、有効成分や他の製剤用添加剤と混合等することにより、常法に従って製造することができる。
【0073】
[風味の改善]
本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖は、後述する配合例に示すように、食品等の風味を改善することができる。従って、本発明によれば、本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖を含んでなる風味改善剤および製剤用マスキング剤が提供される。
【0074】
ここで、風味改善としては、食品や食品添加物に特有の不快な味や臭いの改善が挙げられ、例えば、苦味および/または渋味の低減(例えば、ポリフェノール類の苦味や渋味の低減)、酸味の低減(例えば、酢や酸味剤に由来する酸味の緩和)、エグ味および/または嫌味の低減(例えば、グルコン酸など保存剤の不快な味の低減)、アルコール感の低減(例えば、ウォッカ、ウイスキーなどのアルコール感の低減)、酸臭その他不快臭の低減(例えば、グルコノデルタラクトン臭(グルコン酸臭)やデキストリン臭の低減)が挙げられる。風味改善としては、また、コク味の増強(例えば、果汁感や乳味感の増強)が挙げられる。本発明による風味改善剤により風味が改善される物としては、前記の食品が挙げられる。
【0075】
また、医薬製剤において矯正あるいはマスキングされる味としては、有効成分や他の製剤用添加剤に特有の不快な味(例えば、苦味、渋味、酸味、エグ味)が挙げられる。
【0076】
本発明による分岐メガロ糖は、苦味および/または渋味を効果的に低減することから、本発明による風味改善剤は、好ましくは、苦味および/または渋味の低減剤として用いることができる。
【0077】
特に、本発明による分岐メガロ糖は、ポリフェノール類に起因する苦味および/または渋味を効果的に低減することから、本発明による風味改善剤は、好ましくは、ポリフェノール類の苦味および/または渋味の低減剤として用いることができる。
【0078】
ポリフェノール類とは分子内に複数のフェノール性ヒドロキシル基を持つ成分を意味し、例えば、カテキン、アントシアニン、クロロゲン酸などが挙げられる。ポリフェノール類には生体に好ましい様々な生理機能が知られているが、ほとんどのポリフェノール類は強い苦味や渋味を呈するため、高濃度の摂取が困難である。本発明による分岐メガロ糖はポリフェノール類に起因する苦味および/または渋味を効果的に低減することから、本発明による風味改善剤はポリフェノール類の高濃度摂取を可能にする点で有利である。
【0079】
本発明による分岐メガロ糖はまた、低甘味であることから、本発明による風味改善剤を食品に添加した場合でも、食品本来の風味を損なわずに風味を改善できる点で有利である。
【0080】
本発明によれば、本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖を食品に添加することを含んでなる、風味の改善方法および風味が改善された食品の製造方法が提供される。
【0081】
本発明によれば、また、本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖を苦味および/または渋味を有する食品に添加することを含んでなる、苦味および/または渋味の低減化方法並びに苦味および/または渋味が低減された食品の製造方法が提供される。前述のように、本発明による分岐メガロ糖は、ポリフェノール類に由来する苦味および/または渋味を効果的に低減することから、苦味および/または渋味を有する食品としては、ポリフェノール類含有食品が挙げられる。
【0082】
ポリフェノール類含有食品としては、ポリフェノール類を含有するものであれば特に限定されず、元々ポリフェノール類を含有している食品はもちろんのこと、ポリフェノール類が添加された食品も該当する。また、食品の形態も特に限定されず、固形はもちろんのこと、半固形、液状のものも含まれる。ポリフェノール類含有食品の具体例としては、茶系飲料(緑茶飲料、紅茶飲料、ウーロン茶飲料など)、果実飲料、炭酸飲料、野菜飲料、スポーツ飲料、乳性飲料、アルコール飲料などの飲料や、アイスクリーム、ゼリー、ムース、飴菓子、ガム、フィリング、健康食品、サプリメントなどが挙げられる。なお、本発明において「食品」とは飲料も含む意味で用いられるものとする。
【0083】
本発明によれば、本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖を、医薬品に添加することを含んでなる、不快な味のマスキング方法または不快な味がマスキングされた医薬品の製造方法が提供される。
【0084】
[食感の改善]
本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖は、また、食品等の食感を改善することができる。従って、本発明によれば、本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖を含んでなる食感改善剤が提供される。
【0085】
ここで、食感改善としては、パサパサ感の抑制、しっとり感の付与、ふんわりした食感の維持が挙げられる。本発明による風味改善剤により食感が改善される物としては、前記の食品のうち食感の改善が求められる食品が挙げられ、そのような食品の例としては、パン類、クッキー類、米飯、ケーキ類、麺類、冷凍食品が挙げられる。
【0086】
本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖は食感改善を目的として食品に添加することができるが、前記の風味改善をも目的として添加してもよいことは言うまでもない。例えば、本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖を米飯に添加した場合には、パサつきの防止という食感改善効果が得られるが、米飯に添加される日持ち向上剤(例えば、グルコノデルタラクトンやグルコン酸)など他の添加剤の嫌味や不快臭を低減することが可能となる。
【0087】
本発明によれば、本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖を食品に添加することを含んでなる、食感の改善方法および食感が改善された食品の製造方法が提供される。
【0088】
[氷の均一的凍結]
添加物を含有する水を凍結させると、氷結晶は添加物を排除しながら成長するため添加物が偏在する氷ができる。このような添加物が偏在した氷は、色、味付け、食感などに偏りやむらが生じており、商品価値を低下させることになる。
【0089】
本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖は、添加物が溶解または分散した水を均一に凍結させることができる。従って、本発明によれば、本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖を含んでなる、氷の均一的凍結剤が提供される。本発明による氷の均一的凍結剤を用いて添加物を含有する水を凍結させることにより、偏りやむらのない均一な色彩、食感、味覚等を有する氷菓を製造することができる。
【0090】
ここで、氷の「均一的凍結」とは、添加物を含有する水を添加物が均一に溶解または分散した状態で凍結させることを意味する。
【0091】
また、水に含まれる「添加物」としては、糖類、塩類、果汁、色素、植物エキス、茶、コーヒー、香料、香辛料、タンパク質、アミノ酸、ゲル化剤、酸味料、食物繊維などが挙げられる。なお、「添加物が溶解または分散した水」には、果汁そのものや植物エキスそのものなど、水以外の成分が元々混合している溶液をも含む意味で用いられることは言うまでもない。
【0092】
本発明によれば、添加物が均一に溶解または分散した水に、本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖を添加して凍結させることを含んでなる、氷の均一的凍結方法または均一的に凍結した氷の製造方法が提供される。
【0093】
本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖を添加することにより、添加物が均一に溶解または分散した状態で水を凍結させることができる。従って、例えば、得られた氷を冷菓とすれば、偏りやむらのない均一な色彩、食感、味覚等を有する氷菓を提供することができる。また、本発明による氷の均一的凍結剤を、果汁飲料やスポーツ飲料などの飲料に添加して凍結させれば、それらを一部解凍した場合でも均一な溶液となる飲料を提供することができる。
【0094】
本発明による氷の製造方法により製造された氷は、そのままで、あるいは加工して、例えば、シャーベット、かき氷、かちわり氷、アイスキャンディー、シェイク、ソルベットなどの氷菓;果汁飲料、スポーツ飲料、アミノ酸飲料などの飲料;ゼリーやヨーグルトなどの冷菓子類として提供することができる。
【0095】
[照り・つやの向上]
本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖は、また、食品の照りやつやを向上させることができる。従って、本発明によれば、本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖を含んでなる、食品の照りおよび/またはつや向上剤が提供される。ここで、本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖により食品の照りおよび/またはつやの向上が期待される食品としては食肉が挙げられ、好ましくは、鶏肉である。
【0096】
本発明によれば、本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖を食品に添加することを含んでなる、食品の照りおよび/またはつやの向上方法または照りおよび/またはつやが向上した食品の製造方法が提供される。これらの方法では、例えば、本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖を食品に予め塗布し、その食品を焼成してもよい。食品を焼成した後、本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖を再度塗布して焼成してもよい。例えば、照り焼きを提供する場合には、照り焼きのタレに本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖を添加し、そのタレに食品を浸漬した後、焼成してもよい。あるいは、本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖を焼成前に食品の表面に直接吹き付けて使用してもよい。
【0097】
[乳タンパク質含有飲料への添加]
本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖は、乳タンパク質含有飲料に添加して使用することができる。本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖を乳タンパク質含有飲料に添加しても乳タンパク質が凝集・沈殿せず、乳タンパク質を飲料中において安定化させることができる。すなわち、本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖を乳タンパク質含有飲料に使用すると乳タンパク質の凝集・沈殿を回避することができる。また、本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖は、単糖、二糖、オリゴ糖等と比較して、溶液中で低浸透圧である。従って、本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖は、好ましくは、乳タンパク質を含有する経腸栄養剤や経口栄養剤に添加して使用することができる。
【0098】
本発明によれば、本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖を乳タンパク質含有飲料に添加することを含んでなる、乳タンパク質の凝集および/または沈殿が抑制された乳タンパク質含有飲料の製造方法が提供される。これらの方法における本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖の添加時期は特に限定されず、乳タンパク質と一緒に添加しても、乳タンパク質とは別に添加してもよい。
【0099】
[食品、医薬品等]
本発明による食品添加剤や本発明による風味改善剤、食感改善剤、氷の均一的凍結剤、照りおよび/またはつや向上剤、および乳タンパク質の凝集および/または沈殿抑制剤は、食品に添加されて使用できる。従って、本発明の別の面によれば、本発明による食品添加剤や本発明による風味改善剤、食感改善剤、氷の均一的凍結剤、照りおよび/またはつや向上剤、または乳タンパク質の凝集および/または沈殿抑制剤を含んでなる食品が提供される。
【0100】
本発明の更に別の面によれば、本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖を含んでなる食品が提供される。
【0101】
この場合、提供される食品は、好ましくは、ポリフェノール類含有食品であってもよく、具体例や好ましい例は前述の通りである。
【0102】
ポリフェノール類含有食品に本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖を使用する場合には、例えば、甘味を必要とする飲食物を対象とする場合、本発明による分岐メガロ糖に砂糖、異性化糖、高甘味度甘味料といった甘味の強い組成物を混合して使用することができる。一方、緑茶飲料や惣菜といった甘味の好まれない飲食物に使用する場合は分岐メガロ糖単独もしくは分岐メガロ糖と多糖やタンパク質、油脂等を混合して使用することができる。
【0103】
本発明による食品の好ましい態様によれば、ポリフェノール類0.13質量%に対して、本発明による分岐メガロ糖を1.6〜50質量%含有するポリフェノール類含有食品が提供される。
【0104】
また、提供される食品は乳タンパク質含有飲料であってもよく、より好ましくは、乳タンパク質を含有する経腸栄養剤や経口栄養剤である。
【0105】
本発明による製剤用添加剤や製剤用マスキング剤は医薬品に配合されて使用できる。従って、本発明の別の面によれば、本発明による製剤用添加剤や本発明による製剤用マスキング剤を含んでなる医薬品が提供される。
【0106】
本発明の更に別の面によれば、本発明による分岐メガロ糖並びにそれを含有する液糖および粉糖を含んでなる医薬品が提供される。
【実施例】
【0107】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、本明細書において「固形分」当たりの割合や「固形分」の含有割合に言及した場合には、固形成分の質量に基づいて定められた割合を意味するものとする。
【0108】
試験例1:糖化酵素の活性測定
1−1:シクロデキストリン生成酵素の活性測定
糖化反応に使用したシクロデキストリン生成酵素(CGTase)を以下に示す。
・パエニバチルス エスピー由来のCGTase:ナガセケムテックス社製アルカリCDアミラーゼ
・バチルス コアギュランス由来のCGTase:ナガセケムテックス社製ネオCDアミラーゼ
・バチルス ステアロサーモフィルス由来のCGTase:林原生物化学研究所製Thermophilic CGTase
・バチルス マゼランス由来のCGTase:アマノエンザイム社製のコンチザイム
酵素反応は、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)に溶解した1%可溶性デンプン(ナカライテスク社)0.9mlに適宜水で希釈した酵素溶液0.1mlを添加し、40℃に10分間保持した。これに40mM水酸化ナトリウム水溶液を2.5ml添加して反応を停止した。生成したβ−シクロデキストリンをフェノールフタレイン法により測定した。すなわち、0.1mg/mlフェノールフタレインおよび2.5mM炭酸ナトリウムからなる溶液0.3mlを上記溶液に添加し、攪拌後550nmの吸光度を測定した。0〜0.1mg/mlの範囲で作成したβ−シクロデキストリンの標準曲線に基づき生成したβ−シクロデキストリン量を求めた。
【0109】
1−2:α−グルコシダーゼの活性測定
糖化反応に使用したα−グルコシダーゼを以下に示す。
・アスペルギルス ニガー由来のα−グルコシダーゼ:アマノエンザイム社製トランスグルコシダーゼアマノ
・アクレモニウム エスピー由来のα−グルコシダーゼ:キリンフードテック社製テイスターゼ
酵素反応は、50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.2)に溶解した0.25%マルトース80μlに0.05%トリトンX−100を含む10mM酢酸ナトリウム緩衝液 (pH4.2)で適宜希釈した酵素溶液20μlを添加し、37℃に10分間保持した。
反応10分で反応液50μlを抜き出し、2Mトリス塩酸緩衝液(pH7.0)100μlと混合して反応を停止した。これにグルコースCII−テストワコー(和光純薬社)を40μl添加した後、室温に1時間保持して発色させ、490nmの吸光度を測定した。
生成したグルコース量を0〜0.01%の範囲で作成したグルコースの標準曲線に基づき算出した。
【0110】
1−3:イソアミラーゼの活性測定
糖化反応に使用したイソアミラーゼを以下に示す。
・マイロイデス オドラータス由来のイソアミラーゼ:合同酒精社製GODO−FIA
・シュードモナス アミロデラモサ由来のイソアミラーゼ:林原生物科学研究所製のイソアミラーゼ
反応は、20mM塩化カルシウムを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)100μlに5mg/mlワキシーコーンスターチ(日本食品化工社)350μlを添加し、45℃に5分間保持したものに同緩衝液にて適宜希釈した酵素溶液100μl添加して45℃に15分間保持した。これに反応失活用ヨウ素液(6.35mg/mlヨウ素および83mg/mlヨウ化カリウムからなる溶液2mlと0.1N塩酸8mlを混合したもの)500μlを添加して反応を停止した。この反応停止液を室温に15分間保持し、これに純水10ml添加したものの610nmの吸光度を測定した。
【0111】
試験例2:分岐メガロ糖の調製
デンプン液化液にシクロデキストリン生成酵素、α−グルコシダーゼおよび枝切り酵素を作用させることにより得られる反応生成物の構造と物性を調べた。
【0112】
2−1:シクロデキストリン生成酵素とα−グルコシダーゼによる分岐メガロ糖の生成
30質量%DE6.5コーンスターチ液化液を温度53℃、pH6.0に調整し、これにパエニバシルス エスピーのシクロデキストリン生成酵素を対固形分1g当たり1単位、マイロイデス オドラータスのイソアミラーゼを対固形分1g当たり100単位、アマノエンザイム社製プルラナーゼ「アマノ」3を対固形分当たり0.01%、アクレモニウム エスピーのα−グルコシダーゼを対固形分1g当たり0〜0.65単位添加して72時間糖化した。
【0113】
上記反応液を用いて分岐メガロ糖の生成を以下の方法で確認した。すなわち、5質量%に調整した糖液1mLに1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)に溶解した10mg/mL β−アミラーゼ#1500(ナガセケムテックス社)50μLを添加し、55℃にて1時間程度作用させ、煮沸失活させた。これをアンバーライトMB4(オルガノ社)にて脱塩した後、0.45μmフィルターにてろ過したものを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供した。HPLC条件としては、カラムにMCI GEL CK02AS
(φ20×250mm、三菱化学社)を用い、移動相を超純水とし、カラム温度85℃、流速1.0ml/分とした。分析では、20μL程度をクロマトグラフィーに供した。
いずれの条件でも、得られるクロマトグラムのピーク面積より各重合度成分の含有量を求めることができ、重合度11以上の糖質の含有量を分岐メガロ糖含有量として算出した。
【0114】
得られたα−グルコシダーゼ各添加量における反応液にβ−アミラーゼ処理を行ったところ、表1に示したように、α−グルコシダーゼの添加量が多いほど、β−アミラーゼ処理後に残存する重合度11〜35の分岐メガロ糖画分の含有量が高いことが明らかになった。α−グルコシダーゼ未添加区では、β−アミラーゼ処理後にβ−限界デキストリンと考えられるデキストリン画分のみが残存し、重合度11〜35のメガロ糖成分はほぼ完全にβ−アミラーゼにより分解した。このことから、α−グルコシダーゼを共存させてシクロデキストリン生成酵素をデンプン液化液に作用させることにより、非還元性末端に分岐構造を有する分岐メガロ糖が得られることが明らかになった。
【表1】

(上記表中、表中の成分以外は重合度10以下の低分子オリゴ糖であり、デキストリンは重合度35を超える高分子成分を指す。)
【0115】
また、図1に示すように、反応72時間後のα−グルコシダーゼ未添加区では糖化反応中の基質のデンプンの老化が著しく、反応中に白濁する現象が認められたが、α−グルコシダーゼ添加区では反応液の透明性が保たれていた。このことから、分岐メガロ糖は非還元性末端の分岐構造により耐老化性に優れることが確認された。
【0116】
2−2:シクロデキストリン生成酵素とα−グルコシダーゼによる分岐メガロ糖生成反応における枝切り酵素の影響
シクロデキストリン生成酵素とα−グルコシダーゼによる分岐メガロ糖生成反応における枝切り酵素の影響を調べた。すなわち、シクロデキストリン生成酵素とα−グルコシダーゼに加えて、イソアミラーゼ、プルラナーゼあるいはこの両者をデンプン液化液に添加したものを未添加区と比較した。
【0117】
イソアミラーゼ添加区にはシュードモナス アミロデラモサ由来のものを対固形分1g当たり200単位、プルラナーゼ添加区にはプルラナーゼ「アマノ」3、を対固形分当たり0.02%添加した。シクロデキストリン生成酵素にはパエニバシルス エスピー由来のものを用い、これをそれぞれ対固形分1g当たり2単位添加した。また、α−グルコシダーゼにはアクレモニウム エスピー由来のものを用い、これをそれぞれ対固形分1g当たり0.65単位添加した。
【0118】
基質には30質量%DE6.5のコーンスターチ液化液を用い、この温度53℃、pH6.0に調整し、上記各酵素をそれぞれ添加して72時間糖化した。
【0119】
得られた反応液を上記と同様にβ−アミラーゼ処理を行った。その結果を表2に示した。
【表2】

(上記表中、表中の成分以外は重合度10以下の低分子オリゴ糖であり、デキストリンは重合度35を超える高分子成分を指す。)
【0120】
枝切り酵素未添加区では、重合度35以上のデキストリン成分が反応後に残存した。一方、枝切り酵素添加区ではこのデキストリン成分の残存量が少なく、特にイソアミラーゼ添加区においてデキストリン成分の残存量が少なく、分岐メガロ糖成分が未添加区と比較して多かった。このことから、分岐メガロ糖の製造には枝切り酵素、特にイソアミラーゼの添加が有効であることが明らかになった。
【0121】
試験例3:分岐メガロ糖の耐老化性の確認
分岐メガロ糖を含有する液糖の液状品での保存安定性を調べることを目的として、分岐メガロ糖含有シラップを調製し、老化による白濁の有無により耐老化性を評価した。
【0122】
30質量%DE6.5コーンスターチ液化液を温度53℃、pH6.0に調整し、これにパエニバシルス エスピーのシクロデキストリン生成酵素を対固形分1g当たり1単位、マイロイデス オドラータスのイソアミラーゼを対固形分1g当たり100単位、プルラナーゼ「アマノ」3を対固形分当たり0.01%、アクレモニウム エスピーのα−グルコシダーゼを対固形分1g当たり0.65単位添加して72時間糖化した。
【0123】
得られた糖化反応液(後記製造例5のシラップと同等)を80℃で30分間加熱処理を行い、α−アミラーゼ製剤である大和化成社製のクライスターゼL1を対固形分当たり0.005%添加して、ヨード反応が消失するまで反応させた。これのpHを4.0として酵素を失活させた後、ろ過、イオン交換精製、活性炭処理して中性糖を精製した。イオン交換精製にはアンバーライトMB3、活性炭処理には精製白鷺(キリンフードテック社)を使用した。精製後の糖液をBx75に濃縮して得られた液糖を室温に1ヶ月間保持した。得られた糖液の糖組成を表3に示した。
【0124】
デンプンのα−アミラーゼ分解物(コーンシラップ)を分岐メガロ糖含有シラップとの保存安定性の比較対照とした。すなわち、22.5質量%DE6.5コーンスターチ液化液にクライスターゼL1を対固形分当たり0.005%、プルラナーゼ「アマノ」3を対固形分当たり0.04%、マイロイデス オドラータスのイソアミラーゼを対固形分1g当たり400単位添加して36時間pH6.0、53℃で36時間糖化した。これを80℃に加温した後、クライスターゼL1を対固形分当たり0.005%追添加してヨード反応が消失するまで保持した。得られた反応液より中性糖を上記と同様に精製、濃縮した。得られた糖液の糖組成を表3に示した。
【表3】

(上記表中、表中の成分以外は重合度10以下の低分子オリゴ糖である。メガロ糖は重合度11〜35の糖質を指し、カッコ内は分岐メガロ糖含量を示す。デキストリンは重合度35を超える高分子成分を指す。)
【0125】
また、図2に示すように、コーンシラップでは老化のため、保存後1ヶ月で白色沈澱を生じ、糖液が白濁した。しかし、分岐メガロ糖含有シラップはDP10〜35程度の糖質の含有量が、コーンシラップと比較して高いにも関わらず、いずれも保存1ヵ月後に白濁を生じなかった。
【0126】
以上の結果から、分岐メガロ糖は耐老化性に優れ、液状品としての保存安定性が高いことが明らかになった。
【0127】
試験例4:分岐メガロ糖含有シラップの粘度の測定
試験例3で製造した分岐メガロ糖含有シラップ(製造例5のシラップと同等)の粘度を測定し、既存オリゴ糖シラップと比較した。すなわち、試験例3で調製した分岐メガロ糖含有シラップの10℃〜60℃における粘度を測定した。シラップの濃度をBx70とした。粘度の測定には東機産業社製VISCOMETER TVB−10を用い、ローターの回転数を60rpmとし、測定時間を40秒間とした。サンプル300mLを300mL容トールビーカーに入れ、測定サンプルとした。各温度における分岐メガロ糖含有シラップの粘度は、既存高分子マルトオリゴ糖含有シラップである日本食品化工社製フジオリゴG67と比較して高かったものの、固形分70%においても操作性に問題ない程度の粘度であった。
【0128】
試験例5:分岐メガロ糖含有シラップの甘味度の測定
試験例3で製造した分岐メガロ糖含有シラップ(製造例5のシラップと同等)の甘味度をPauliの全系列法(澱粉糖関連工業分析法 澱粉糖技術部会編 61〜62頁)により測定した。すなわち、0.6〜1.4%の範囲、0.2%間隔で調製した砂糖水溶液と固形分10%の分岐メガロ糖含有シラップの甘味度を「強」、「等」、「弱」で10人のパネラーに評価させた。得られた試験結果を基に、次式により甘味度を算出した。
Eo=(Do+i/2)−Σgr・i/n
Eu=(Du−i/2)+Σkl・i/n
Em=(Eo+Eu)/2
S=Em/N・100
Do=標準糖液の最も低い濃度; Du=標準糖液の最も高い濃度; i=標準糖液の濃度間隔; Σgr=「強」と判定した人数; Σkl=「弱」と判定した人数; n=パネラー数; S=甘味度; N=試料濃度(%)
【0129】
その結果、分岐メガロ糖含有シラップの甘味度は10.7となり、既存の液糖と比較して極めて甘味度が低いことが明らかになった。
【0130】
製造例1:分岐メガロ糖の製造(1)
(1)分岐メガロ糖の製造
30%(w/w)DE6.5コーンスターチ液化液を温度53℃、pH6.0に調整し、これにパエニバシルス エスピーのシクロデキストリン生成酵素を対固形当たり1単位、マイロイデス オドラータスのイソアミラーゼを対固形分1g当たり100単位、プルラナーゼ「アマノ」3を対固形分当たり0.01%、アスペルギルス ニガーのα−グルコシダーゼを対固形分1g当たり3.75単位添加して72時間糖化した。これを80℃に加温し、クライスターゼL1を対固形分当たり0.005%添加してヨード反応が消失するまで作用させた。このpHを4.0として酵素を失活させたものに、活性炭を添加して常法にしたがって脱色し、珪藻土によりろ過してろ液を得た。これを常法にしたがイオン交換樹脂によりイオン性成分を除去し、中性糖を得た。これに上記と同様に再度活性炭処理を行うことにより脱色し、珪藻土により濾過してろ液を得た。これを減圧下で固形分75%となるまで濃縮した。以上の操作により、分岐メガロ糖含有シラップを対固形分当たり約90%の収率で得た。なお、本品はメガロ糖を対固形分当たり20.3%含有しており、β−アミラーゼ処理により分岐メガロ糖含有量を測定したところ、重合度11〜35の分岐メガロ糖を対固形分当たり17.9%含有していた。
【0131】
(2)分岐メガロ糖の分岐構造の解析1
上記(1)においてアスペルギルス ニガーを使用して得られた分岐メガロ糖の分岐構造の結合様式を解析した。すなわち、上記(1)において得られた糖液を凍結乾燥後、粉末状にし、得られた粉末5mgを減圧下105℃で数時間保持することにより乾燥し、これにDMSO0.5mLを添加して溶解した。これに微粉砕したNaOH60mgを添加して時々攪拌しながら室温に1時間保持した。次いでヨードメタン0.3mLを添加し、室温に1時間保持した後に60℃に1時間保持した。これに水1mLを添加して反応を停止し、クロロホルム1mLを添加して攪拌した。水層を除去し、新たに水1mLを添加、攪拌する操作を5回繰り返し、クロロホルム層を回収した。次いで、無水NaSOを添加して乾燥させ、60℃にてクロロホルムを蒸発させた。これに4Mトリフルオロ酢酸1mLを加えて100℃に4時間保持した。これをナス型フラスコに移してロータリーエバポレーターにて乾固させ、水0.5mLを加えて溶解し、アンモニア水を3滴加えてアルカリ性にした。次いでホウ素化水素化ナトリウム10mgを添加して室温に一晩保持した。これに酢酸を加えて反応を停止し、メタノールを加えて乾固させた。メタノールを添加して乾固させる操作を5回繰り返し、ピリジンおよび無水酢酸をそれぞれ2mLずつ添加して100℃に4時間保持した。これに水を加えて反応を停止し、クロロホルムにより抽出を行った。水層を除去し、新たに水1mLを添加、攪拌する操作を5回繰り返し、クロロホルム層を回収した。得られた試料をガスクロマトグラフィーに供し、部分メチル化単糖のアルジトールアセタートの解析を行った。ガスクロマトグラフィーではカラムにTC−17(0.25mmx30m;GLサイエンス製)を用い、カラム温度を50℃に1分間保持した後、1分間当たり10℃ずつカラム温度を280℃まで上昇させた。サンプル注入温度を300℃とした。検出をFIDにより行い、検出温度を300℃とした。キャリアーガスにはヘリウムを使用し、流速を2.5mL/分とした。
【0132】
その結果、アスペルギルス ニガー由来のα−グルコシダーゼを使用して得られた分岐メガロ糖に由来する部分メチル化誘導体として、1,5−ジ−O−アセチル−2,3,4,6−テトラ−O−メチルヘキシトール、1,5,6−トリ−O−アセチル−2,3,4−トリ−O−メチルヘキシトールおよび1,4,5−トリ−O−アセチル−2,3,6,−トリ−O−メチルヘキシトールが検出された。このことから、製造例1(1)で得られた分岐メガロ糖の分岐構造はα−1,6−結合であることが明らかになった。
【0133】
(3)分岐メガロ糖の分岐構造の解析2
上記(1)において得られた分岐メガロ糖を10%(w/v)となるように調整し、この水溶液1Lに1M酢酸緩衝液(pH5.5)を5ml、アマノエンザイム社製AMT 1.2Lを4.6mlおよびナガセケムテックス社製ベータ−アミラーゼ#1500を0.1g添加し、53℃にて5時間反応させた。この反応により、直鎖糖を3糖以下に低分子化し、また、分岐メガロ糖の還元末端の直鎖部分を加水分解することにより、非還元末端部分を含む糖をオリゴ糖化した。得られた反応液を0.45μmフィルターによりろ過したものを濃縮し、分画原資とした。これをカーボン−セライトカラムクロマトグラフィーに供した。本クロマトグラフィーでは0−3%のn−ブタノールの直線濃度勾配により糖を溶出させた。得られた5糖画分をそれぞれイオン交換樹脂にて脱塩後、0.45μmフィルターによりろ過したものを凍結乾燥した。このうち5mgを上記と同様にメチル化分析に供した。
【0134】
その結果、製造例1(1)で得られた分岐メガロ糖に由来する分岐5糖(5糖画分)では、還元末端側4残基に由来する1,5,6−トリ−O−アセチル−2,3,4−トリ−O−メチルヘキシトールおよび1,4,5−トリ−O−アセチル−2,3,6−トリ−O−メチルヘキシトールのピーク面積の比が1:3となった。これは本分岐糖の還元末端側のグルコシル基の結合比を示しており、非還元末端側の分岐構造が平均してグルコシル基1残基からなることを意味している。
【0135】
製造例2:分岐メガロ糖の製造(2)
30%(w/w)DE6.5コーンスターチ液化液を温度53℃、pH6.0に調整し、これにバチルス コアギュランスのシクロデキストリン生成酵素を対固形分1g当たり1単位、マイロイデス オドラータスのイソアミラーゼを対固形分1g当たり100単位、プルラナーゼ「アマノ」3を対固形分当たり0.01%、アスペルギルス ニガーのα−グルコシダーゼを対固形分1g当たり3.75単位添加して60時間糖化した。以後の操作を製造例1と同様に行い、固形分75%の分岐メガロ糖含有シラップを対固形分当たり約90%の収率で得た。なお、本品はメガロ糖を対固形分当たり17.5%含有しており、分岐メガロ糖を対固形分当たり15.9%含有していた。
【0136】
製造例3:分岐メガロ糖の製造(3)
30%(w/w)DE6.5コーンスターチ液化液を温度53℃、pH6.0に調整し、これにバチルス ステアロサーモフィルスのシクロデキストリン生成酵素を対固形分1g当たり1単位、マイロイデス オドラータスのイソアミラーゼを対固形分1g当たり100単位、プルラナーゼ「アマノ」3を対固形分当たり0.01%、アスペルギルス ニガーのα−グルコシダーゼを対固形分1g当たり3.75単位添加して60時間糖化した。以後の操作を製造例1と同様に行い、固形分75%の分岐メガロ糖含有シラップを対固形分当たり約90%の収率で得た。なお、本品はメガロ糖を対固形分当たり18.3%含有しており、分岐メガロ糖を対固形分当たり15.5%含有していた。
【0137】
製造例4:分岐メガロ糖の製造(4)
30%(w/w)DE6.5コーンスターチ液化液を温度53℃、pH6.0に調整し、これにバチルス マゼランスのシクロデキストリン生成酵素を対固形分1g当たり1単位、マイロイデス オドラータスのイソアミラーゼを対固形分1g当たり100単位、プルラナーゼ「アマノ」3を対固形分当たり0.01%、アスペルギルス ニガーのα−グルコシダーゼを対固形分1g当たり3.75単位添加して60時間糖化した。以後の操作を製造例1と同様に行い、固形分75%の分岐メガロ糖含有シラップを対固形分当たり約90%の収率で得た。なお、本品はメガロ糖を対固形分当たり15.3%含有しており、分岐メガロ糖を対固形分当たり14.3%含有していた。
【0138】
製造例5:分岐メガロ糖の製造(5)
(1)分岐メガロ糖の製造
30%(w/w)DE6.5コーンスターチ液化液を温度53℃、pH6.0に調整し、これにパエニバシルス エスピーのシクロデキストリン生成酵素を対固形分1g当たり1単位、マイロイデス オドラータスのイソアミラーゼを対固形分1g当たり100単位、プルラナーゼ「アマノ」3を対固形分当たり0.01%、アクレモニウム エスピーのα−グルコシダーゼを対固形分1g当たり0.65単位添加して60時間糖化した。以後の操作を製造例1と同様に行い、固形分75%の分岐メガロ糖含有シラップを対固形分当たり約90%の収率で得た。なお、本品はメガロ糖を対固形分当たり81.3%含有しており、分岐メガロ糖を対固形分当たり56.1%含有していた。
【0139】
(2)分岐メガロ糖の分岐構造の解析1
(1)においてアクレモニウム エスピー由来のα−グルコシダーゼを使用して得られた分岐メガロ糖の分岐構造の結合様式を解析した。分岐メガロ糖の調製及びメチル化分析は、製造例1(2)と同様に行った。
【0140】
その結果、アクレモニウム エスピー由来のα−グルコシダーゼを使用して得られた分岐メガロ糖に由来する部分メチル化誘導体として、1,5−ジ−O−アセチル−2,3,4,6−テトラ−O−メチルヘキシトール、1,3,5−トリ−O−アセチル−2,4,6−トリ−O−メチルヘキシトールおよび1,4,5−トリ−O−アセチル−2,3,6−トリ−O−メチルヘキシトールが検出された。このことから、製造例5(1)で得られた分岐メガロ糖の分岐構造はα−1,3−結合であることが明らかになった。
【0141】
(3)分岐メガロ糖の分岐構造の解析2
上記(1)において得られた分岐メガロ糖を10%(w/v)となるように調整し、この水溶液1Lに1M酢酸緩衝液(pH5.5)を5ml、アマノエンザイム社製AMT 1.2Lを4.6mlおよびナガセケムテックス社製ベータ−アミラーゼ#1500を0.1g添加し、53℃にて5時間反応させた。この反応により、直鎖糖を3糖以下に低分子化し、また、分岐メガロ糖の還元末端の直鎖部分を加水分解することにより、非還元末端部分を含む糖をオリゴ糖化した。得られた反応液を0.45μmフィルターによりろ過したものを濃縮し、分画原資とした。これをカーボン−セライトカラムクロマトグラフィーに供した。本クロマトグラフィーでは0−3%のn−ブタノールの直線濃度勾配により糖を溶出させた。得られた5糖画分をそれぞれイオン交換樹脂にて脱塩後、0.45μmフィルターによりろ過したものを凍結乾燥した。このうち5mgを上記と同様にメチル化分析に供した。
【0142】
その結果、製造例5(1)で得られた分岐メガロ糖に由来する分岐5糖(5糖画分)では、還元末端側4残基からの1,3,5−トリ−O−アセチル−2,4,6−トリ−O−メチルヘキシトールおよび1,4,5−トリ−O−アセチル−2,3,6−トリ−O−メチルヘキシトールのピーク面積比が1:1となった。このことから、非還元末端側の分岐構造が平均してグルコシル基2残基からなると推定された。
【0143】
製造例6:分岐メガロ糖の製造(6)
30%(w/w)DE6.5コーンスターチ液化液を温度53℃、pH6.0に調整し、これにバチルス コアギュランスのシクロデキストリン生成酵素を対固形分1g当たり1単位、マイロイデス オドラータスのイソアミラーゼを対固形分1g当たり100単位、プルラナーゼ「アマノ」3を対固形分当たり0.01%、アクレモニウム エスピーのα−グルコシダーゼを対固形分1g当たり0.65単位添加して60時間糖化した。以後の操作を製造例1と同様に行い、固形分75%の分岐メガロ糖含有シラップを対固形分当たり約90%の収率で得た。なお、本品はメガロ糖を対固形分当たり77.5%含有しており、分岐メガロ糖を対固形分当たり51.2%含有していた。
【0144】
製造例7:分岐メガロ糖の製造(7)
30%(w/w)DE6.5コーンスターチ液化液を温度53℃、pH6.0に調整し、これにバチルス ステアロサーモフィルスのシクロデキストリン生成酵素を対固形分1g当たり1単位、マイロイデス オドラータスのイソアミラーゼを対固形分1g当たり100単位、プルラナーゼ「アマノ」3を対固形分当たり0.01%、アクレモニウム エスピーのα−グルコシダーゼを対固形分1g当たり0.65単位添加して60時間糖化した。以後の操作を製造例1と同様に行い、固形分75%の分岐メガロ糖含有シラップを対固形分当たり約90%の収率で得た。なお、本品はメガロ糖を対固形分当たり66.2%含有しており、分岐メガロ糖を対固形分当たり54.8%含有していた。
【0145】
製造例8:分岐メガロ糖の製造(8)
30%(w/w)DE6.5コーンスターチ液化液を温度53℃、pH6.0に調整し、これにバチルス マゼランスのシクロデキストリン生成酵素を対固形分1g当たり1単位、マイロイデス オドラータスのイソアミラーゼを対固形分1g当たり100単位、プルラナーゼ「アマノ」3を対固形分当たり0.01%、アクレモニウム エスピーのα−グルコシダーゼを対固形分1g当たり0.65単位添加して60時間糖化した。以後の操作を製造例1と同様に行い、固形分75%の分岐メガロ糖含有シラップを対固形分当たり約90%の収率で得た。なお、本品はメガロ糖を対固形分当たり54.0%含有しており、分岐メガロ糖を対固形分当たり47.7%含有していた。
【0146】
製造例9:分岐メガロ糖の製造(9)
30%(w/w)DE6.5コーンスターチ液化液を温度53℃、pH6.0に調整し、これにパエニバシルス エスピーのシクロデキストリン生成酵素を対固形分1g当たり2単位、シュードモナス アミロデラモサのイソアミラーゼを対固形分1g当たり200単位、プルラナーゼ「アマノ」3を対固形分当たり0.02%、アスペルギルス ニガーのα−グルコシダーゼを対固形分1g当たり3.75単位添加して60時間糖化した。以後の操作を製造例1と同様に行い、固形分75%の分岐メガロ糖含有シラップを対固形分当たり約90%の収率で得た。なお、本品はメガロ糖を対固形分当たり16.9%含有しており、分岐メガロ糖を対固形分当たり16.4%含有していた。
【0147】
製造例10:分岐メガロ糖の製造(10)
30%(w/w)DE6.5コーンスターチ液化液を温度53℃、pH6.0に調整し、これにパエニバシルス エスピーのシクロデキストリン生成酵素を対固形分1g当たり1単位、シュードモナス アミロデラモサのイソアミラーゼを対固形分1g当たり100単位、プルラナーゼ「アマノ」3を対固形分当たり0.01%、アクレモニウム エスピーのα−グルコシダーゼを対固形分1g当たり0.65単位添加して60時間糖化した。以後の操作を製造例1と同様に行い、固形分75%の分岐メガロ糖含有シラップを対固形分当たり約90%の収率で得た。なお、本品はメガロ糖を対固形分当たり53.4%含有しており、分岐メガロ糖を対固形分当たり50.8%含有していた。
【0148】
製造例11:分岐メガロ糖の製造(11)
30%(w/w)DE6.5コーンスターチ液化液を温度53℃、pH6.0に調整し、これにパエニバシルス エスピーのシクロデキストリン生成酵素を対固形分1g当たり1単位、プルラナーゼ「アマノ」3を対固形分当たり0.01%、アスペルギルス ニガーのα−グルコシダーゼを対固形分1g当たり3.75単位添加して60時間糖化した。以後の操作を製造例1と同様に行い、固形分75%の分岐メガロ糖含有シラップを対固形分当たり約90%の収率で得た。なお、本品はメガロ糖を対固形分当たり16.0%含有しており、分岐メガロ糖を対固形分当たり11.7%含有していた。
【0149】
製造例12:分岐メガロ糖の製造(12)
30%(w/w)DE6.5コーンスターチ液化液を温度53℃、pH6.0に調整し、これにパエニバシルス エスピーのシクロデキストリン生成酵素を対固形分1g当たり1単位、プルラナーゼ「アマノ」3を対固形分当たり0.01%、アクレモニウム エスピーのα−グルコシダーゼを対固形分1g当たり0.65単位添加して60時間糖化した。以後の操作を製造例1と同様に行い、固形分75%の分岐メガロ糖含有シラップを対固形分当たり約90%の収率で得た。なお、本品はメガロ糖を対固形分当たり37.9%含有しており、分岐メガロ糖を対固形分当たり33.3%含有していた。
【0150】
製造例13:分岐メガロ糖の製造(13)
30%(w/w)DE6.5コーンスターチ液化液を温度53℃、pH6.0に調整し、これにパエニバシルス エスピーのシクロデキストリン生成酵素を対固形分1g当たり1単位、アスペルギルス ニガーのα−グルコシダーゼを対固形分1g当たり3.75単位添加して60時間糖化した。以後の操作を製造例1と同様に行い、固形分75%の分岐メガロ糖含有シラップを対固形分当たり約90%の収率で得た。なお、本品はメガロ糖を対固形分当たり17.3%含有しており、分岐メガロ糖を対固形分当たり17.0%含有していた。
【0151】
製造例14:分岐メガロ糖の製造(14)
30%(w/w)DE6.5コーンスターチ液化液を温度53℃、pH6.0に調整し、これにパエニバシルス エスピーのシクロデキストリン生成酵素を対固形分1g当たり1単位、アクレモニウム エスピーのα−グルコシダーゼを対固形分1g当たり0.65単位添加して60時間糖化した。以後の操作を製造例1と同様に行い、固形分75%の分岐メガロ糖含有シラップを対固形分当たり約90%の収率で得た。なお、本品はメガロ糖を対固形分当たり32.6%含有しており、分岐メガロ糖を対固形分当たり29.2%含有していた。
【0152】
製造例15:分岐メガロ糖含有粉飴の製造(1)
製造例1により得られた糖液をL−12型スプレードライヤー(アトマイザー式:大河原化工機)を使用して粉末化した。スプレードライヤーの入口設定温度を160℃、出口設定温度を120℃とし、アトマイザー回転数を10,000rpm、サイクロン差圧を70mmHg程度、給液量を5L/hとして運転した。この操作により、回収率約95%で粉末状の分岐メガロ糖含有粉飴を得た。
【0153】
製造例16:分岐メガロ糖含有粉飴の製造(2)
製造例5により得られた糖液をL−12型スプレードライヤーを用いて製造例15と同様に噴霧乾燥した。この操作により、回収率約95%で粉末状の分岐メガロ糖含有粉飴を得た。
【0154】
製造例17:分岐メガロ糖分画品の製造
製造例1の分岐メガロ糖含有シラップをBrix 50程度に調製し、60℃に加温したゲルろ過カラム(TOYOPEARL HW−40S,φ5.0cm x 87cm,
1700ml)に供し、精製水を用い、流速を34〜48ml/hに設定して溶出を行なった。溶出液の糖組成を高速液体クロマトグラフィーにより分析し、四糖以下の分岐糖含量が0.5%未満の画分(高分子画分)と0.5%以上の画分(低分子含有画分)をそれぞれ回収した。回収した画分を減圧乾燥によりBrix 30程度まで濃縮した。以上の操作を11回繰り返すことにより、固形分換算で高分子画分を23g、低分子含有画分を39g得た。
【0155】
製造例18:分岐メガロ糖還元物の製造
分岐メガロ糖還元物をNaBHを用いて調製した。すなわち、Bx10に調整した分岐メガロ糖(製造例5)水溶液5mlを氷中で10分間冷却後、約20mgずつNaBHを10回添加して溶解した。この溶液にアンモニア水を2滴加え、pH10以上とした後、室温にて3時間還元反応を行った。反応後、残存するNaBHをAmberlite MB−4(オルガノ)を水素の発生と樹脂の色調変化がなくなるまで添加して分解した。この液層を樹脂を水洗しながら回収し、ロータリーエバポレーターを用いて乾燥させた。これに1mlメタノールを添加して溶解し、再度乾固させた。この操作を5回繰り返した。最後に精製水に溶解したものを還元物溶液とした。
【0156】
得られた還元物のDEをソモギー変法(澱粉糖関連工業分析法(株式会社食品化学新聞社)(平成3年11月1日発行)11〜13頁参照)に従って測定したところ、DEは0であった。還元前のDEは10.2であり、還元反応により還元末端が完全に還元されたことが確認できた。また、還元反応の前後で重合度組成にも変化がなく、グルコシド結合の切断などは認められなかった(データ省略)。
【0157】
配合例1:緑茶飲料
表4に示す配合(全体を100とした場合の質量比率)にて緑茶飲料を製造した。分岐メガロ糖シラップは製造例5のシラップを用いた。セルデックスSL−20、セルデックスB−100、フジオリゴG67は、日本食品化工社製のものを用いた(以下、同様)。セルデックスSL−20とはシクロデキストリンを20%含む液状または粉末状の製品であり、セルデックスB−100は結晶β―シクロデキストリンである。フジオリゴG67は、マルトヘキサオースおよびマルトヘプタオースを主成分とするシラップである。なお、シラップ状原料の添加比率は、固形分の質量に基づいて計算した(以下、同様)。
【表4】

【0158】
配合した分岐メガロ糖シラップとフジオリゴG67の糖組成と甘味度は表5の通りであった。糖組成の分析は、HPLCを用いて分析した。分析条件は、試験例2と同様とした。甘味度の測定は、試験例5に記載の方法で行った。
【表5】

【0159】
10人のパネラーにて、作製した緑茶飲料の官能評価を行い、苦味・渋味および味のバランスについて評価を行った。評価結果を表6に示す。
【表6】

【0160】
表中の苦味・渋味低減効果については、非常に効果あり(◎)、効果あり(○)、ほとんど効果なし(△)、効果なし(×)の評価結果で示し、甘味については甘味が強い(◎)、すこし甘い(○)、甘くない(×)、旨味については旨味あり(◎)、旨味が少しあり(○)、旨味が少ない(△)、旨味が弱い(×)、総合評価については、非常に良い(◎)、良い(○)、あまり良くない(△)、悪い(×)の評価結果で示した。
【0161】
表6に示すように、従来使用されているシクロデキストリンやシクロデキストリン混合物を使用した場合、公知のように苦味・渋味の低減が認められたが、旨味も弱くなったために全体の味のバランスが悪くなった。フジオリゴG67を使用することで、その甘味によりポリフェノールの苦味・渋味が低減されが、甘味は緑茶にはそぐわないために総合評価は悪くなった。
【0162】
一方、本発明による分岐メガロ糖シラップを使用するとポリフェノールの苦味・渋味を抑制することが可能であった。さらに旨味の付与も可能であり、甘味も呈さないので全体の味のバランスを損なうこともなく高い評価を得られた。
【0163】
配合例2:高濃度ポリフェノール類含有緑茶飲料
表7に示す配合(全体を100とした場合の質量比率)にて高濃度ポリフェノール類含有緑茶飲料を製造した。分岐メガロ糖シラップは製造例5のシラップを用いた。ポリフェノンCHは三井農林社製のものを用いた(以下、同様)。
【表7】

【0164】
10人のパネラーにて、作製した茶飲料の官能評価を行い、苦味・渋味および味のバランスについて評価を行った。評価結果を表8に示す。
【表8】

【0165】
表中の苦味・渋味低減効果については、非常に効果あり(◎)、効果あり(○)、ほとんど効果なし(△)、効果なし(×)の評価結果で示し、甘味については甘味が強い(◎)、すこし甘い(○)、甘くない(×)、旨味については旨味あり(◎)、旨味が少しあり(○)、旨味が少ない(△)、旨味が弱い(×)、総合評価については、非常に良い(◎)、良い(○)、あまり良くない(△)、悪い(×)の評価結果で示した。
【0166】
表8に示すように、先の試験と同様、フジオリゴG67やセルデックスSL−20やセルデックスB−100を使用することで、ポリフェノールの苦味・渋味が低減された。しかしながら、フジオリゴG67は甘味を呈し、セルデックスSL−20やセルデックスB−100は旨味も低減してしまい全体の味のバランスが悪くなった。
【0167】
一方、本発明による分岐メガロ糖シラップを使用するとポリフェノール類の苦味・渋味が低減可能であり、かつ旨味の付与も可能であった。さらにこれらの効果は茶の味のバランスを崩すことなく得られた。
【0168】
配合例3:紅茶飲料
表9に示す配合(全体を100とした場合の質量比率)にて紅茶飲料を製造した。紅茶は、紅茶葉2gに対して200mlの湯(95℃)を加え2分間抽出を行い、抽出後、吸引ろ過を行い得られた清澄な紅茶抽出液を用いた。分岐メガロ糖シラップは製造例5のシラップを用いた。
【表9】

【0169】
10人のパネラーにて、作製した紅茶飲料の官能評価を行い、苦味・渋味および味のバランスについて評価を行った。評価結果を表10に示す。
【表10】

【0170】
表中の苦味・渋味低減効果については、非常に効果あり(◎)、効果あり(○)、ほとんど効果なし(△)、効果なし(×)の評価結果で示し、味のバランスについては、非常に良い(◎)、良い(○)、あまり良くない(△)、悪い(×)の評価結果で示した。
【0171】
表10に示すように、フジオリゴG67やセルデックスSL−20やセルデックスB−100を使用することで、ポリフェノールの苦味・渋味が低減された。しかしながら、フジオリゴG67は甘味が感じられるため、全体的な味のバランスが悪くなった。また、セルデックスSL−20やセルデックスB−100は紅茶の風味や旨味も低減してしまい、同様に全体の味のバランスが悪くなった。
【0172】
一方、本発明による分岐メガロ糖シラップを使用するとまろやかになることが明らかとなり、全体の味のバランスを損ねることなくポリフェノールの苦味・渋味を抑制することが可能であった。
【0173】
配合例4:緑茶ゼリー
表11に示す配合(全体を100とした場合の質量比率)で緑茶ゼリーを常法にて製造した。分岐メガロ糖シラップは製造例5のシラップを用いた。
【表11】

【0174】
10人のパネラーにて、作製した緑茶ゼリーの官能評価を行い、苦味・渋味および味のバランスについて評価を行った。評価結果を表12に示す。
【表12】

【0175】
表中の苦味・渋味低減効果については、非常に効果あり(◎)、効果あり(○)、ほとんど効果なし(△)、効果なし(×)の評価結果で示し、コクについてはコクがあり(○)、コクがない(×)、味のバランスについては、非常に良い(◎)、良い(○)、あまり良くない(△)、悪い(×)の評価結果で示した。
【0176】
表12に示すように、フジオリゴG67やセルデックスSL−20やセルデックスB−100を使用することで、ポリフェノールの苦味・渋味が低減された。しかしながら、フジオリゴG67の低減効果はメガロ糖に比べて弱いものであった。また、セルデックスSL−20やセルデックスB−100はメガロ糖と同等以上に苦味・渋味を低減したものの、緑茶の風味が感じにくくなった。
【0177】
一方、本発明による分岐メガロ糖シラップを使用するとポリフェノールの苦味・渋味を抑制することが可能であった。かつ緑茶の味がまろやかに感じられ、さらに全体の味のバランスを損ねることもなかった。
【0178】
配合例5:緑茶飲料
表13に示す配合(全体を100とした場合の質量比率)にて緑茶飲料を製造した。分岐メガロ糖シラップは製造例17で製造した分岐メガロ糖シラップ分画品を用いた。
【表13】

【0179】
配合した分岐メガロ糖シラップ分画品とフジオリゴG67の糖組成の分析結果は以下の通りであった。糖組成の分析は、HPLCを用いて分析した。分析条件は、試験例2と同様とした。
【表14】

【0180】
23人のパネラーにて、作製した緑茶飲料の官能評価を行い、苦味・渋味および味のバランスについて評価を行った。評価結果を表15に示す。
【表15】

【0181】
表中の苦味・渋味低減効果については、非常に効果あり(◎)、効果あり(○)、ほとんど効果なし(△)、効果なし(×)の評価結果で示し、甘味については甘味が強い(◎)、すこし甘い(○)、甘くない(×)、旨味については旨味あり(◎)、旨味が少しあり(○)、旨味が少ない(△)、旨味がない(×)、味のバランスについては、非常に良い(◎)、良い(○)、あまり良くない(△)、悪い(×)の評価結果で示した。
【0182】
表15に示すように、従来使用されているシクロデキストリン混合物を使用した場合、公知のように苦味・渋味の低減が認められたが、旨味も弱くなったために全体の味のバランスが悪くなった。フジオリゴG67にも苦味・渋味低減効果が見られたが、甘味を呈したため茶飲料としては好まれない結果となった。
【0183】
一方、本発明による分岐メガロ糖シラップ分画品を使用すると全体の味のバランスを悪くすること無くポリフェノールの苦味・渋味を抑制することが可能であった。特開2006−280254号公報では分岐構造を有する3〜4糖類を有効成分としカテキンの苦味・渋味を抑制する方法が開示されているが、3〜4糖類をほとんど含まない本発明による分岐メガロ糖シラップ分画品を使用した場合においても、苦味・渋味低減効果は認められた。また、3〜4糖類をほとんど含まない本発明による分岐メガロ糖シラップを使用することで高い旨味の付与効果が得られた。
【0184】
配合例6:高濃度ポリフェノール類含有緑茶飲料
表16に示す配合(全体を100とした場合の質量比率)にて高濃度ポリフェノール類含有緑茶飲料を製造した。分岐メガロ糖シラップは製造例17で製造した分岐メガロ糖シラップ分画品を用いた。
【表16】

【0185】
9人のパネラーにて、作製した茶飲料の官能評価を行い、苦味・渋味および味のバランスについて評価を行った。評価結果を表17に示す。
【表17】

【0186】
表中の苦味・渋味低減効果については、非常に効果あり(◎)、効果あり(○)、ほとんど効果なし(△)、効果なし(×)の評価結果で示し、味のバランスについては、非常に良い(◎)、良い(○)、あまり良くない(△)、悪い(×)の評価結果で示した。
【0187】
表17に示すように、先の試験と同様、フジオリゴG67やセルデックスSL−20を使用することで、ポリフェノールの苦味・渋味が低減された。しかしながら、フジオリゴG67は甘味を呈し、セルデックスSL−20は旨味も低減してしまい全体の味のバランスが悪くなった。
【0188】
一方、本発明による分岐メガロ糖シラップ分画品を使用すると全体の味のバランスを損ねることなくポリフェノールの苦味・渋味を抑制することが可能であった。さらに配合例5と同様に、3〜4糖類をほとんど含まない本発明による分岐メガロ糖シラップを使用した場合においても、苦味・渋味低減効果は認められた。
【0189】
配合例7:紅茶飲料
表18に示す配合(全体を100とした場合の質量比率)にて紅茶飲料を製造した。紅茶は、紅茶葉2gに対して200mlの湯(95℃)を加え2分間抽出を行い、抽出後、吸引ろ過を行い得られた清澄な紅茶抽出液を用いた。分岐メガロ糖シラップは製造例17で製造した分岐メガロ糖シラップ分画品を用いた。
【表18】

【0190】
10人のパネラーにて、作製した紅茶飲料の官能評価を行い、苦味・渋味および味のバランスについて評価を行った。評価結果を表19に示す。
【表19】

【0191】
表中の苦味・渋味低減効果については、非常に効果あり(◎)、効果あり(○)、ほとんど効果なし(△)、効果なし(×)の評価結果で示し、味のバランスについては、非常に良い(◎)、良い(○)、あまり良くない(△)、悪い(×)の評価結果で示した。
【0192】
表19に示すように、フジオリゴG67やセルデックスSL−20やセルデックスB−100を使用することで、ポリフェノールの苦味・渋味が低減された。しかしながら、フジオリゴG67は甘味が感じられるとの評価を受け、結果として全体的な味のバランスが悪くなった。また、セルデックスSL−20やセルデックスB−100は紅茶の風味や旨味も低減してしまい、同様に全体の味のバランスが悪くなった。
【0193】
一方、本発明による分岐メガロ糖シラップ分画品を使用すると全体の味のバランスを損ねることなくポリフェノールの苦味・渋味を抑制することが可能であった。また、評価コメントにあるように味をまろやかにする効果が認められた。
【0194】
配合例8:緑茶ゼリー
表20に示す配合(全体を100とした場合の質量比率)で緑茶ゼリーを常法にて製造した。分岐メガロ糖シラップは製造例17で製造した分岐メガロ糖シラップ分画品を用いた。
【表20】

【0195】
10人のパネラーにて、作製した緑茶ゼリーの官能評価を行い、苦味・渋味および味のバランスについて評価を行った。評価結果を表21に示す。
【表21】

【0196】
表中の苦味・渋味低減効果については、非常に効果あり(◎)、効果あり(○)、ほとんど効果なし(△)、効果なし(×)の評価結果で示し、コクの付与は効果あり(○)、効果なし(×)、味のバランスについては、非常に良い(◎)、良い(○)、あまり良くない(△)、悪い(×)の評価結果で示した。
【0197】
表21に示すように、フジオリゴG67やセルデックスSL−20やセルデックスB−100を使用することで、ポリフェノールの苦味・渋味が低減された。しかしながら、フジオリゴG67の低減効果は分岐糖類に比べて弱いものであった。また、セルデックスSL−20やセルデックスB−100は分岐メガロ糖シラップと同等以上に苦味・渋味を低減したものの、緑茶の風味が感じにくくなった。
【0198】
一方、本発明による分岐メガロ糖シラップ分画品を使用するとポリフェノール類の苦味・渋味を抑制することが可能であった。かつコクの付与も可能であり、本発明による分岐メガロ糖シラップ分画品の使用は全体の味のバランスを損ねることもなかった。
【0199】
配合例9:果汁飲料
市販低果汁飲料に対し、製造例1で調製した分岐メガロ糖シラップを1%(w/w)(固形分換算)配合した果汁飲料を調製した。その結果、未添加区と比較して分岐メガロ糖添加区ではコク味が増し、果汁飲料に深みを与えることが可能であった。分岐メガロ糖は低果汁飲料などにおいても、コク味増強剤として有利に使用することができる。
【0200】
配合例10:高甘味度甘味料含有飲料
アセスルファムK0.05%(w/w)もしくはアスパルテーム0.03%(w/w)含有飲料に対し、製造例1で調製した分岐メガロ糖シラップを1%(w/w)(固形分換算)配合した飲料を調製した。分岐メガロ糖の後味のほのかな甘さが効果的に働き、高甘味度甘味料の後味の苦味を改善し、飲み心地の良い飲料とすることが可能であった。このように本発明による分岐メガロ糖は高甘味度甘味料の味質改善剤として有利に使用することができる。
【0201】
配合例11:冷凍卵焼き
全卵100質量部に対し、製造例1にて調製した分岐メガロ糖シラップ7質量部(固形分換算)、加工デンプン1.5質量部、出し汁30質量部を混合し、常法にて卵焼きを作製した。急速凍結機で凍結させ、2週間後に室温にて解凍した。本品は耐老化性に優れる分岐メガロ糖を含有していることから、冷凍解凍後であるにも関わらず、みずみずしさを保っていた。すなわち、本発明による分岐メガロ糖は、冷凍解凍後のみずみずしさを維持できる効果を有していることが確認された。
【0202】
配合例12:パン
強力粉100質量部に対し、各対粉イースト2.2質量部、イーストフード0.1質量部、砂糖2質量部、製造例1にて調製した分岐メガロ糖シラップ3質量部(固形分換算)、食塩2質量部、脱脂粉乳2質量部、油脂6質量部、水67質量部を使用し、中種法にて食パンを作製した。本品は耐老化性に優れる分岐メガロ糖を含有していることから、ふんわりとした食感の食パンが得られた。すなわち、本発明による分岐メガロ糖は、食品にふんわりとした食感を付与できる効果を有していることが確認された。
【0203】
配合例13:ソフトクッキー
油脂対粉17質量部に、製造例1にて調製した分岐メガロ糖シラップ(固形分換算)対粉50質量部、砂糖対粉60質量部、全卵対粉50質量部を順次添加し混合した。バニラオイルを対粉0.2質量部加えた後、脱脂粉乳対粉40質量部および予め篩っておいた小麦粉100およびベーキングパウダー対粉0.9質量部を混合した。上火195℃、下火170℃で13分焼成した。本品は耐老化性に優れる分岐メガロ糖を含有していることから、長期間しっとりした食感を保持可能であった。すなわち、本発明による分岐メガロ糖は、食品にしっとりした食感を付与できる効果を有していることが確認された。
【0204】
配合例14:氷の均一性向上・促進効果
製造例5にて調製した分岐メガロ糖シラップを4%(w/w)(固形分換算)、砂糖を5%(w/w)、色素を0.4%(w/w)(サンレッドNo.5F(三栄源エフ・エフ・アイ社製))それぞれ添加して混合水溶液を調製した。これを−30℃の冷凍庫にて一晩凍結させた。室温にて融解時に経時的にサンプリングし、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分岐メガロ糖および砂糖の溶出状態を確認した。HPLCの条件としてはカラムにUltron PS−80N・L(Φ8.0mm×500mm、信和化工社製)を用い、移動相を超純水とし、カラム温度50℃、流速0.9ml/分とした。分析では3〜5倍希釈液を2μl程度供した。その結果、本発明による分岐メガロ糖を使用することで無添加区と比較して砂糖の溶出が緩やかになることが明らかとなった。
【0205】
配合例15:酢飲料
りんご酢8%(w/w)、果糖ぶどう糖液糖(日本食品化工社製)8%(w/w)(固形分換算)および製造例1で調製した分岐メガロ糖シラップ1%(w/w)(固形分換算)を配合した酢飲料を評価した。本品は酸味低減効果に優れる分岐メガロ糖を含有していることから、酸味が和らぎ、飲み心地を向上させることが可能であった。すなわち、本発明による分岐メガロ糖は酸味の低減効果を有していることが確認された。
【0206】
配合例16:無菌米飯
米100質量部に水154.5質量部、グルコノデルタラクトン0.75質量部および製造例1で調製した分岐メガロ糖シラップ2質量部(固形分換算)を混合し、炊飯した。酸臭抑制効果に優れる分岐メガロ糖を含有していることから、炊飯後もしくは再加熱時のグルコノデルタラクトン由来の酸臭を低減した。すなわち、本発明による分岐メガロ糖は、酸臭を低減する効果を有しており、保存剤の酸臭低減剤として使用可能である。
【0207】
配合例17:アルコール飲料
ニコライウォッカ(キリンシーグラム社)を用いてアルコール濃度6%(v/v)となるように、果糖ぶどう糖液糖4%(w/v)(固形分換算)および製造例5で調製した分岐メガロ糖シラップ1%(w/v)(固形分換算)を配合したアルコール飲料を評価した。本品はアルコール感緩和に優れる分岐メガロ糖を含有していることから、アルコールの嫌味が低減され飲み心地が向上した。すなわち、本発明による分岐メガロ糖は、アルコール飲料の味質改善剤として有利に使用することができる。
【0208】
配合例18:乳飲料
牛乳30%(w/w)に果糖ぶどう糖液糖4%(w/w)(固形分換算)および製造例5で調製した分岐メガロ糖シラップ1%(w/w)(固形分換算)を混合し、乳飲料を調製した。本品は無添加区と比較して乳味感が向上しており、コクのある飲料となった。すなわち、本発明による分岐メガロ糖は、乳味感の向上を目的として、乳を含有する飲食品に使用することができる。
【0209】
配合例19:ゼリー
デキストリン(TK−16(松谷化学工業製))20%(w/w)、果糖ぶどう糖液糖8%(固形分換算)(日本食品化工製)、クールアガー(新田ゼラチン製)2%(w/w)、クエン酸三Na 0.1%(w/w)、クエン酸0.17%(w/w)および製造例5で調製した分岐メガロ糖シラップ5%(w/w)(固形分換算)を使用し、ゼリーを調製した。TK−16とはDE16〜19程度の粉末状デキストリンである。本品はデキストリンの粉臭低減効果に優れる分岐メガロ糖を含有していることから、本試験区のように多量のデキストリンを使用したゼリーにおいてもデキストリン臭が緩和された。すなわち、本発明による分岐メガロ糖は飲食品にデキストリンを多量に含有させた場合でも有利に使用することができる。
【0210】
配合例20:照り焼きのタレ
表22に示す配合(水を200とした場合の質量比率)にて照り焼きのタレを調製した。分岐メガロ糖シラップは製造例1のシラップを用いた。フジオリゴG67は、マルトヘキサオースおよびマルトヘプタオースを主成分とするシラップである。鶏のモモ肉を使用し、肉の重量の30%(w/w)となる量のタレに一晩浸漬した。この鶏肉を中心温度70℃に達するまで蒸気加熱し、タレに再度どぶづけした後、180℃のホットプレートにて片面1.5分ずつ焼成した。
【表22】

【0211】
10人のパネラーにて作製した照り焼きチキンの官能評価を行い、照り・つやの評価を行った。評価結果を表23に示す。
【表23】

【0212】
表中の照り・つやについては、効果あり(○)、若干効果有り(△)、効果なし(×)の評価結果で示した。
【0213】
表23に示すように照り・つや向上効果を有するとされているフジオリゴG67を使用した場合、照り・つや向上が認められた。一方、本発明による分岐メガロ糖シラップを使用した場合には、フジオリゴG67以上に照り・つやを向上させることが確認された。
【0214】
配合例21:乳タンパク質を含む飲料(1)
表24に示す配合(全体を40とした場合の質量比率)にて乳タンパク質含有飲料を下記の手順にて製造した。すなわち、表24に示す糖またはデキストリンと脱脂粉乳を溶解し、混合撹拌した。次いで、クエン酸、クエン酸三Na、アスコルビン酸を用いてpHを6.4に調整した。この水溶液を50ml容のファルコンチューブに充填し、密閉して121℃・1.2kgf/cmで達温のレトルト殺菌(トミー精工社製HIGH−PRESSURE STEAM STERILIZER/BS−325を使用)を行った。
【表24】

【0215】
分岐メガロ糖シラップは製造例5で得られたシラップを用いた。デキストリンはパインデックス#2(DE約11 松谷化学工業製)、パインデックス#100(DE約2〜5 松谷化学工業製)、フジスター5V(DE約5 日本食品化工製)、フジスター12V(DE約12 日本食品化工製)、パインデックス#4(DE約19 松谷化学工業製)、TK−16(DE約16〜19 松谷化学工業製)、クラスター デキストリン(DE約2 日本食品化工製)を使用した。
【0216】
上記のようにして作製した飲料の乳タンパク質の凝集状態を目視にて確認し、安定性試験とした。その結果を表25に示す。表中のタンパク質安定性については、安定(○)、少し安定(△)、不安定(×)の評価結果で示した。
【表25】

【0217】
その結果、表25に示すように、比較例39、41、43〜45では水溶液が完全に透明とはならないものの、タンパク質が凝集し沈澱が見られた。また、比較例40、42では水溶液が完全に透明になり、タンパク質の凝集沈澱が見られた。一方、本発明による分岐メガロ糖シラップを使用した実施例16ではタンパク質の凝集や沈殿物は見られず、水溶液が白濁したまま安定であった。
【0218】
配合例22:乳タンパク質を含む飲料(2)
表26に示す配合(全体を200とした場合の質量比率)にて乳タンパク質含有飲料を下記の手順にて製造した。すなわち、表26に示す糖またはデキストリンと脱脂粉乳を溶解し、混合撹拌した。次いで、クエン酸、クエン酸三Na、アスコルビン酸を用いてpHを6.4に調整した。この水溶液を100ml容のショット瓶に充填し、密閉して121℃・1.2kgf/cmで達温のレトルト殺菌(トミー精工社製HIGH−PRESSURE STEAM STERILIZER/BS−325を使用)を行った。
【表26】

【0219】
分岐メガロ糖シラップは製造例5のシラップを使用し、デキストリンはパインデックス#2(DE約11 松谷化学工業製)を使用した。フジオリゴG67は、マルトヘキサオースおよびマルトヘプタオースを主成分とするシラップである。
【0220】
上記のようにして作製した飲料の乳タンパク質の凝集状態を目視にて確認し、安定性試験とした。また、使用した糖またはデキストリンの10%(w/w)水溶液を調整し、Osmometer(Fiske Mark3)にて浸透圧を測定した。その結果を表27に示す。表中のタンパク質安定性については、安定(○)、不安定(×)の評価結果で示した。
【表27】

【0221】
その結果、表27に示すように、比較例46では乳タンパク質は安定して存在していたが、比較例47では乳タンパク質の凝集が認められた。しかしながら、比較例46に使用した糖質はデキストリンである比較例47と比較して2倍以上の高浸透圧であった。一方、本発明によるメガロ糖シラップを使用すると乳タンパク質は安定して存在した。
【0222】
本発明による分岐メガロ糖は単糖類や二糖類、オリゴ糖と比較して低浸透圧に調整容易であり、胃腸への負担が少ない。また、デキストリンを使用したときのような乳タンパク質の不安定化も見られないため、浸透圧の調整が必要な経腸栄養剤や経口栄養剤に有利に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合度11〜35のグルカンであって、少なくとも非還元末端に分岐構造を有するグルカン、またはその還元物。
【請求項2】
α−1,4−グルコシド結合により構成されたグルカンと、その非還元末端に結合した分岐構造とからなる、請求項1に記載のグルカンまたはその還元物。
【請求項3】
分岐構造が、α−1,4−グルコシド結合以外のグルコシド結合により非還元末端に結合した1個以上のグルコース残基により構成される、請求項2に記載のグルカンまたはその還元物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のグルカンまたはその還元物を固形分当たり10〜60質量%含有する液糖または粉糖。
【請求項5】
シクロデキストリン生成酵素と糖転移作用を有する酵素とを、デンプン原料に作用させる工程を含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または請求項4に記載の液糖もしくは粉糖の製造法。
【請求項6】
シクロデキストリン生成酵素と糖転移作用を有する酵素に加えて、枝切り酵素を更に作用させる、請求項5に記載の製造法。
【請求項7】
シクロデキストリン生成酵素が、パエニバチルス エスピー (Paenibacillus sp.)、バチルス コアギュランス (Bacillus coagulans)、バチルス ステアロサーモフィルス (Bacillus stearothermophilus)、またはバチルス マゼランス (Bacillus macelans) 由来のものである、請求項5または6に記載の製造法。
【請求項8】
糖転移作用を有する酵素が、α−グルコシダーゼ、6−α−グルコシルトランスフェラーゼ、デキストリンデキストラナーゼ、または環状マルトシルマルトース生成酵素である、請求項5または6に記載の製造法。
【請求項9】
α-グルコシダーゼが、アスペルギルス ニガー (Aspergillus niger) またはアクレモニウム エスピー (Acremonium sp.) 由来のものである請求項8に記載の製造法。
【請求項10】
枝切り酵素が、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項6に記載の製造法。
【請求項11】
枝切り酵素が、マイロイデス オドラータス (Myroides odoratus)由来イソアミラーゼ、シュードモナス アミロデラモサ (Pseudomonas amyloderamosa) 由来イソアミラーゼ、およびクレブシエラ プネウモニアエ(Klebsiella pneumoniae)由来プルラナーゼ、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項6に記載の製造法。
【請求項12】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または請求項4に記載の液糖もしくは粉糖を含んでなる、食品添加剤または製剤用添加剤。
【請求項13】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または請求項4に記載の液糖もしくは粉糖を含んでなる、食品用風味改善剤または製剤用マスキング剤。
【請求項14】
風味改善が、苦味および/または渋味の低減、酸味の低減、エグ味および/または嫌味の低減、コク味の増強、不快臭の低減、またはアルコール感の低減である、請求項13に記載の風味改善剤。
【請求項15】
風味改善が、苦味および/または渋味の低減である、請求項14に記載の風味改善剤。
【請求項16】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または請求項4に記載の液糖もしくは粉糖を含んでなる、食感改善剤。
【請求項17】
食感改善が、パサパサ感の抑制、しっとり感の付与、またはふんわりした食感の維持である、請求項16に記載の食感改善剤。
【請求項18】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または請求項4に記載の液糖もしくは粉糖を含んでなる、氷の均一的凍結剤。
【請求項19】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または請求項4に記載の液糖もしくは粉糖を含んでなる、食品の照りおよび/またはつや向上剤。
【請求項20】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または請求項4に記載の液糖もしくは粉糖を食品に添加することを含んでなる、風味が改善された食品の製造方法。
【請求項21】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または請求項4に記載の液糖もしくは粉糖を、苦味および/または渋味を有する食品に添加することを含んでなる、苦味および/または渋味が低減された食品の製造方法。
【請求項22】
苦味および/または渋味を有する食品が、ポリフェノール類含有食品である、請求項21に記載の苦味および/または渋味が低減された食品の製造方法。
【請求項23】
ポリフェノール類含有食品が、茶系飲料、果実飲料、炭酸飲料、野菜飲料、スポーツ飲料、乳性飲料、アルコール飲料、その他の飲料、アイスクリーム、ゼリー、ムース、飴菓子、ガム、フィリング、健康食品、またはサプリメントである、請求項22に記載の苦味および/または渋味が低減された食品の製造方法。
【請求項24】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または請求項4に記載の液糖もしくは粉糖を、医薬品に添加することを含んでなる、不快な味がマスキングされた医薬品の製造方法。
【請求項25】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または請求項4に記載の液糖もしくは粉糖を食品に添加することを含んでなる、食感が改善された食品の製造方法。
【請求項26】
添加物が均一に溶解または分散した水に、請求項1〜3のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または請求項4に記載の液糖もしくは粉糖を添加して凍結させることを含んでなる、均一的に凍結した氷の製造方法。
【請求項27】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または請求項4に記載の液糖もしくは粉糖を食品に添加することを含んでなる、照りおよび/またはつやが向上した食品の製造方法。
【請求項28】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または請求項4に記載の液糖もしくは粉糖を、乳タンパク質含有飲料に添加することを含んでなる、乳タンパク質の凝集および/または沈殿が抑制された乳タンパク質含有飲料の製造方法。
【請求項29】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または請求項4に記載の液糖もしくは粉糖を含んでなる、食品。
【請求項30】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または請求項4に記載の液糖もしくは粉糖を含んでなる、ポリフェノール類含有食品。
【請求項31】
ポリフェノール類0.13質量%に対して、請求項1〜3のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物を1.6〜50質量%含有する、請求項30に記載のポリフェノール類含有食品。
【請求項32】
ポリフェノール類含有食品が、茶系飲料、果実飲料、炭酸飲料、野菜飲料、スポーツ飲料、乳性飲料、アルコール飲料、その他の飲料、アイスクリーム、ゼリー、ムース、飴菓子、ガム、フィリング、健康食品、またはサプリメントである、請求項31に記載のポリフェノール類含有食品。
【請求項33】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または請求項4に記載の液糖もしくは粉糖を含んでなる氷、またはそれを含有してなる食品。
【請求項34】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または請求項4に記載の液糖もしくは粉糖を含んでなる、医薬品。
【請求項35】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のグルカンもしくはその還元物または請求項4に記載の液糖もしくは粉糖を含んでなる、乳タンパク質含有飲料。
【請求項36】
経腸栄養剤または経口栄養剤である、請求項35に記載の乳タンパク質含有飲料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−95701(P2010−95701A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99117(P2009−99117)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【特許番号】特許第4397965号(P4397965)
【特許公報発行日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000231453)日本食品化工株式会社 (68)
【Fターム(参考)】