説明

易接着シート、太陽電池用保護シート、太陽電池用バックシート部材、太陽電池用バックシート及び太陽電池モジュール

【課題】湿熱環境下で経時させても封止材との密着力が良好な易接着シートの提供。
【解決手段】基材フィルムと、該基材フィルムの少なくとも片面側に配置されており、弾性率320MPa以下のオレフィン系であるバインダーを少なくとも1種、酸化チタン、カーボンブラック、チタンブラック、黒色の複合金属酸化物、シアニン系カラーおよびキナクドリン系カラーから選択される少なくとも1種の着色顔料ならびに架橋剤を含有するオレフィン系ポリマー層を有することを特徴とする易接着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易接着シート、太陽電池用保護シート、太陽電池用バックシート部材、太陽電池用バックシート及び太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
結晶シリコンまたはアモルファスシリコン等を太陽電池素子とする太陽電池モジュールは、一般に、太陽光が入射する側の透明性のフロント基板、光起電力素子としての太陽電池素子が封止材で封止された電池側基板、および、裏面保護シート層(太陽電池用バックシート)等の順に積層し、真空吸引して加熱圧着するラミネーション法等を利用して製造されている。太陽電池は、屋根の上等、太陽光が照りつけ、雨ざらしになる環境に長期間置かれることから、太陽電池モジュールを構成する各層は、湿熱環境下での耐久性を代表とする様々な機能性が求められている。
【0003】
従来、透明性のフロント基板または太陽電池用バックシートとしてはガラスが用いられることが多かったが、機能層を積層することで様々な機能性を追加でき、太陽電池モジュールの重さを減らせ、コスト低減をできるなどの観点から、フロント基板または太陽電池用バックシートとして、樹脂フィルムを主成分とする基材を用いた太陽電池用保護シートを利用することが近年求められている。
このような太陽電池用保護シートは上記のように各種機能層の積層体となっていることが多い。代表的な機能層としては、前記封止材と密着させるための接着剤層や、透明性のフロント基板と電池側基板を透過した太陽光の反射機能を付与して太陽電池素子の発現効率を上げるための白色層や、太陽電池用保護シートの最外層に好ましく設置される耐候性層などを挙げることができる。
【0004】
太陽電池用保護シートに求められる機能性は上述のとおり様々であるが、その中でも太陽電池モジュールの寿命に直結する湿熱環境下での耐久性が特に求められている。太陽電池モジュールの湿熱環境下での耐久性の観点からは、特に封止材と太陽電池用保護シートとが剥離して水分が電池側基板に入らないことが最も重要である。すなわち、太陽電池モジュールに使用される封止材との湿熱環境下での密着性が良好である太陽電池用保護シートが求められている。
【0005】
しかしながら、太陽電池用バックシートの、太陽電池モジュールに使用される封止材と接する最外層については、湿熱環境下での密着性どころか通常の環境下での密着性すら検討されていないことが多かった。例えば、特許文献1ではエチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAとも言う)からなる充填剤(封止材)に対して、単に太陽電池用バックシートを積層したと記載されており、どのように接着したかは記載されていない。また、封止材側の太陽電池用バックシートの最外層も様々な層の態様が記載されており、封止材との密着性にはいずれも言及されていない。また、特許文献2では、太陽電池用バックシートと太陽電池モジュールに使用される封止材を、樹脂組成物による押し出し樹脂層を介して積層して加熱圧着しているが、この押し出し樹脂層の組成や物性については記載がない。
【0006】
一方、太陽電池モジュールに使用される封止材と、封止材側の太陽電池用バックシートの最外層の間に、接着剤層を設ける例が記載されている。例えば、特許文献3には、基材フィルムの片面に無機酸化物の蒸着膜を設け、前記無機酸化物の蒸着膜を設けた基材フィルムの両面に白色化剤と紫外線吸収剤とを含む耐熱性のポリプロピレン系樹脂フィルムを積層した太陽電池用バックシートが記載されており、同文献の実施例では太陽電池用バックシートの最外層をアクリル系接着剤層によってEVAからなる封止材と積層させた態様が開示されている。
【0007】
一方、近年では、封止材側の太陽電池用バックシートの最外層の材料を検討し、太陽電池モジュールに使用される封止材と、封止材側の太陽電池用バックシートの最外層を直接貼り合わせることを検討した例も僅かながら知られている(特許文献4参照)。特許文献4では、耐候性基材フィルムを含む少なくとも2層以上で構成された太陽電池バックシートにおいて、該太陽電池バックシートの太陽電池モジュールを構成する充填剤と貼り合わさる最内面に、酸化チタンを主成分とする白色顔料で着色された接着性塗布層を有する態様が記載されている。特許文献4には、EVAに密着性を有する接着性塗布層の樹脂としては、アクリル系、エポキシ系、フェノール系、ポリエステル系、ウレタン系、スチレン系樹脂、シリコン系樹脂あるいはこれらの変性物が好ましく用いられ、中でもポリアクリル酸樹脂を含むことが好ましいと記載されている。また、同文献の実施例では、ポリエステル骨格を導入したアクリル樹脂とアクリル酸樹脂を含む接着性塗布層を用いた態様のみが開示されている。
特許文献5には、オレフィン系樹脂とオキサゾリン化合物と微粒子としてケイ素、スズ、ジルコニウム、アルミニウムを含む塗布液を、PETフィルム上に塗布したシートが開示されている。
特許文献6には、酸変性ポリオレフィン樹脂とオキサゾリン架橋剤を含む塗布液をPETフィルム上に塗布したシートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許2006−073793号公報
【特許文献2】特開2006−210557号公報
【特許文献3】特開2007−306006号公報
【特許文献4】特開2010−109240号公報
【特許文献5】特開2011−29397号公報
【特許文献6】特開2010−251679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本発明者らが特許文献3および4に記載されている方法で太陽電池モジュールを製造し、湿熱環境下で経時させたところ、依然として太陽電池モジュールの封止材と太陽電池用保護シートの間の湿熱環境下での密着性には不満が残るレベルであった。
また、特許文献6に記載のシートは高温高湿環境下などでの強度保持性に優れることが記載されており、同文献の実施例では三井化学ファブロ社製のSC−50B、即ち標準架橋EVAを使用しているが、近年生産効率向上が可能になるため、使用が増えている高速架橋EVAを使用した場合においては求められる密着力の水準には到達しておらず、湿熱環境下で経時させた後の密着性に不満が残ることがわかった。
以上より、本発明が解決しようとする課題は、湿熱環境下で経時させても封止材との密着力が良好な太陽電池用保護シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが上記課題を解決することを目的として鋭意検討した結果、特定の弾性率の範囲であり、特定の骨格のバインダーを用い、かつ、特定の着色顔料と架橋剤を添加した層を設けることで、105℃、相対湿度100%の環境条件下で48時間保持(湿熱経時)させたときの密着性を改善できることを見出すに至った。
特に、特定のバインダーと特定(チタンなど)の着色顔料を添加して架橋剤を添加していない層や、特定のバインダーと架橋剤を添加して特定の着色顔料(チタンなど)を添加していない層よりも、特定のバインダーと特定(チタンなど)の着色顔料と架橋剤の3者を添加した層は105℃、相対湿度100%の環境条件下で48時間保持(湿熱経時)させたときの密着性が大幅に改善することを見出した。
すなわち、前記課題を解決するための具体的手段である本発明の構成は以下の通りである。
【0011】
[1] 基材フィルムと、該基材フィルムの少なくとも片面側に配置されており、かつ、弾性率320MPa以下のオレフィン系であるバインダーを少なくとも1種、酸化チタン、カーボンブラック、チタンブラック、黒色の複合金属酸化物、シアニン系カラーおよびキナクドリン系カラーから選択される少なくとも1種の着色顔料ならびに架橋剤を含有するオレフィン系ポリマー層を有することを特徴とする易接着シート。
[2] [1]に記載の易接着シートは、前記オレフィン系バインダーが、酸変性されたオレフィン系バインダーであることが好ましい。
[3] [1]または[2]に記載の易接着シートは、前記酸変性が(メタ)アクリル酸であることが好ましい。
[4] [1]〜[3]のいずれか一項に記載の易接着シートは、前記オレフィン系バインダーにおけるオレフィンユニットと酸性ユニットの共重合比率(モル比)が99.9:0.1〜90:10の間にあることが好ましい。
[5] [1]〜[4]のいずれか一項に記載の易接着シートは、前記オレフィン系バインダーの融点が75℃以上であることが好ましい。
[6] [1]〜[5]のいずれか一項に記載の易接着シートは、前記オレフィン系バインダーの主鎖がエチレンユニットを含むことが好ましい。
[7] [1]〜[6]のいずれか一項に記載の易接着シートは、前記オレフィン系バインダーが(メタ)アクリル酸エステルユニットを含むことが好ましい。
[8] [1]〜[7]のいずれか一項に記載の易接着シートは、前記基材フィルムに対する前記着色顔料の塗設量が3g/m2〜20g/m2であることが好ましい。
[9] [1]〜[8]のいずれか一項に記載の易接着シートは、前記着色層において、全ての前記バインダー樹脂と架橋剤の合計に対する前記着色顔料の体積分率が20〜200%であることが好ましい。
[10] [1]〜[9]のいずれか一項に記載の易接着シートは、前記着色顔料が、酸化チタンであることが好ましい。
[11] [1]〜[10]のいずれか一項に記載の易接着シートは、前記架橋剤がオキサゾリン基をもつ化合物であることが好ましい。
[12] [11]に記載の易接着シートは、前記オキサゾリン基をもつ化合物の前記オレフィン系バインダーに対する質量割合が10%以上30%以下の範囲であることが好ましい。
[13] [11]または[12]に記載の易接着シートは、前記オキサゾリン基をもつ化合物が水溶性であることが好ましい。
[14] [11]〜[13]のいずれか一項に記載の易接着シートは、前記オキサゾリン基をもつ化合物が(メタ)アクリル酸エステルユニットを含む共重合体であることが好ましい。
[15] [1]〜[14]のいずれか一項に記載の易接着シートは、前記オレフィン系ポリマー層の厚みが30μm以下であることが好ましい。
[16] [1]〜[15]のいずれか一項に記載の易接着シートは、前記オレフィン系ポリマー層が、塗布により製膜されてなることが好ましい。
[17] [1]〜[16]のいずれか一項に記載の易接着シートは、前記オレフィン系ポリマー層中の溶剤残留率が0.05質量%以下であることが好ましい。
[18] [1]〜[17]のいずれか一項に記載の易接着シートは、前記オレフィン系ポリマー層と前記基材フィルムが直接接触していることが好ましい。
[19] [1]〜[17]のいずれか一項に記載の易接着シートは、前記オレフィン系ポリマー層と前記基材フィルムとの間に少なくとも1層のその他の層を含むことが好ましい。
[20] [19]に記載の易接着シートは、前記その他の層の厚みが2μm未満であることが好ましい。
[21] [19]または[20]に記載の易接着シートは、前記その他の層の主成分が、ポリエステル系樹脂であることが好ましい。
[22] [1]〜[21]のいずれか一項に記載の易接着シートは、前記基材フィルムの前記オレフィン系ポリマー層が配置されている側の面とは反対側の面に、フッ素系樹脂およびシリコーン−アクリル複合樹脂の少なくとも一方を含む耐候性層を有することが好ましい。
[23] [1]〜[22]のいずれか一項に記載の易接着シートは、前記基材フィルムの前記着色層が配置されている側の面は、波長550nmにおける光線反射率が65%以上であることが好ましい。
[24] [1]〜[23]のいずれか一項に記載の易接着シートを含むことを特徴とする太陽電池用保護シート。
[25] [1]〜[23]のいずれか一項に記載の易接着シートまたは[24]に記載の太陽電池用保護シートを含むことを特徴とする太陽電池用バックシート部材または太陽電池用バックシート。
[26] [1]〜[23]のいずれか一項に記載の易接着シートまたは[24]に記載の太陽電池用保護シートと、該易接着シートまたは太陽電池用保護シートの少なくとも前記オレフィン系ポリマー層側の面に直接接着されており、かつ、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含むポリマー層と、有することを特徴とする太陽電池用積層体。
[27] 太陽光が入射する側の透明性のフロント基板と、太陽電池素子と、前記太陽電池素子を封止する封止材と、前記封止材の前記フロント基板とは反対側に配置され、前記封止材と接着する太陽電池用バックシートとを有し、前記太陽電池用バックシートが[25]に記載の太陽電池用バックシート部材または太陽電池用バックシートを含み、かつ、前記太陽電池用バックシート部材または太陽電池用バックシートの前記オレフィン系ポリマー層が前記封止材と直接接着していることを特徴とする太陽電池モジュール。
[28] 太陽光が入射する側の透明性のフロント基板と、太陽電池素子と、前記太陽電池素子を封止する封止材と、前記封止材の前記フロント基板とは反対側に配置され、前記封止材と接着する太陽電池用バックシートとを有し、前記太陽電池用バックシートおよび前記封止材として[26]に記載の太陽電池用積層体を含むことを特徴とする太陽電池モジュール。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、湿熱環境下で経時させても封止材との密着力が良好な太陽電池用保護シートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の太陽電池モジュールの構成の一例を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、本発明の易接着シートやそれに用いる材料などについて詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0015】
[易接着シート]
本発明の易接着シート(後述の本発明の太陽電池用保護シートは、本発明の易接着シートを含むため、以下本明細書中において本発明の易接着シートを太陽電池用に用いる場合は、太陽電池用保護シートということもある)は、基材フィルムと、該基材フィルムの少なくとも片面側に配置されており、かつ、弾性率320MPa以下のオレフィン系であるバインダーを少なくとも1種、酸化チタン、カーボンブラック、チタンブラック、黒色の複合金属酸化物、シアニン系カラーおよびキナクドリン系カラーから選択される少なくとも1種の着色顔料ならびに架橋剤を含有するオレフィン系ポリマー層と、を有することを特徴とする。
このような構成により、本発明の太陽電池用保護シートは湿熱経時後の封止材との密着力が良好である。また、本発明の太陽電池用保護シートの上記特性により、本発明の太陽電池用保護シートを用いた太陽電池モジュールは、本発明の太陽電池用保護シートの良好な封止材との密着力により、湿熱環境下での経時で剥離等を起こすことなく、長期に亘って発電性能を安定して保つことが可能である。
以下、本発明の太陽電池用保護シートについて説明する。
【0016】
<易接着シートの構成>
図1に、本発明の易接着シート、この本発明の易接着シートを太陽電池用保護シートとして用いた太陽電池用バックシート部材、太陽電池用バックシート、太陽電池用積層体の説明と、本発明の太陽電池用保護シートを用いた太陽電池モジュールの構成の一例を示す。この太陽電池用保護シート31は、基材フィルム16の一方の面にオレフィン系ポリマー層14が設けられている。このような耐候性層なしの態様として本発明の太陽電池用保護シートを用いる場合、本発明の太陽電池用バックシート部材とも言う。さらに、基材フィルム16とオレフィン系ポリマー層14の間にその他の層17が設けられていてもよい。
基材フィルム16の他方の面には耐候性層が設けられていることが好ましい。基材フィルム16には、耐候性層第1層14と、耐候性層第2層12の2つの耐候性層が設けられていることが好ましい。このように耐候性層16を有していれば、本発明の太陽電池用保護シートは、そのまま太陽電池用バックシート32として用いることができる。
本発明の太陽電池用バックシートは、その前記オレフィン系ポリマー層14が、太陽電池モジュール10の太陽電池素子20を封止する封止材22との湿熱経時後の密着性が良好である。したがって、本発明の太陽電池用保護シートの前記オレフィン系ポリマー層14と、前記太陽電池モジュール10の封止材22の間には、湿熱経時後の密着性の観点からは接着剤層を設ける必要がない。
なお、本発明の太陽電池モジュール10は、前記封止材22の本発明の太陽電池用保護シートとは反対側に、透明性のフロント基板24を配置されていることが好ましい。
【0017】
<易接着シートの各構成部材>
以下、本発明の易接着シートを構成する各構成部材について好ましい態様を説明する。
【0018】
(基材フィルム)
本発明の易接着シートは、基材フィルムを有する。
前記基材フィルムの材質は、特に制限されず、例えば、PET、PEN、PBTなどのポリエステル;ポリフェニレンエーテル;ポリプロピレン、ポリエチレン、環状オレフィン共重合体などのポリオレフィン;セルロースアシレート;ポリカーボネート;アクリル;ポリスチレン;又はポリフッ化ビニルなどのフッ素系ポリマー等が挙げられる。前記ポリマー支持体は、フィルム状でもシート状でもよい。これらの中では、本発明の太陽電池モジュール用バックシートは、コストや機械強度などの点から、前記ポリマー支持体が、結晶性ポリマーを含むことが好ましい。前記結晶性ポリマーとしては、ポリエステル系結晶性ポリマーが好ましい。
本発明の太陽電池モジュール用バックシートに使用する、ポリマー支持体はコストや機械強度などの点から、ポリエステル支持体であることがより好ましい。
【0019】
前記ポリエステルは、芳香族二塩基酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体と、から合成される線状飽和ポリエステルであることが好ましい。
かかる線状飽和ポリエステルの具体例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−ナフタレートを挙げることができる。
このうち、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートが、力学的物性およびコストのバランスの点で特に好ましい。
【0020】
前記ポリエステルは、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。更に、前記ポリエステルに他の種類の樹脂、例えばポリイミド等を少量ブレンドしたものであってもよい。
【0021】
前記ポリエステル中のカルボキシル基含量は、前記ポリエステルに対して50当量/t以下が好ましく、より好ましくは35当量/t以下である。カルボキシル基含量が50当量/t以下であると、耐加水分解性を保持し、湿熱経時したときの強度低下を小さく抑制することができる。カルボキシル基含量の下限は、ポリエステルに形成される層(例えば白色層)との間の接着性を保持する点で、2当量/tが望ましい。
前記ポリエステル中のカルボキシル基含量は、重合触媒種、製膜条件(製膜温度や時間)により調整することが可能である。
【0022】
前記ポリエステルを重合する際の重合触媒としては、カルボキシル基含量を所定の範囲以下に抑える観点から、Sb系、Ge系、及びTi系の化合物を用いることが好ましいが、特にTi系化合物が好ましい。Ti系化合物を用いる場合、Ti系化合物を1ppm以上30ppm以下、より好ましくは3ppm以上15ppm以下の範囲で触媒として用いることにより重合する態様が好ましい。Ti系化合物の割合が前記範囲内であると、末端カルボキシル基を下記範囲に調整することが可能であり、ポリマー基材の耐加水分解性を低く保つことができる。
【0023】
Ti系化合物を用いたポリエステルの合成には、例えば、特公平8−301198号公報、特許第2543624、特許第3335683、特許第3717380、特許第3897756、特許第3962226、特許第3979866、特許第3996871、特許第4000867、特許第4053837、特許第4127119、特許第4134710、特許第4159154、特許第4269704、特許第4313538等に記載の方法を適用できる。
【0024】
前記ポリエステルは、重合後に固相重合されていることが好ましい。これにより、好ましいカルボキシル基含量を達成することができる。前記固相重合は、連続法(タワーの中に樹脂を充満させ、これを加熱しながらゆっくり所定の時間滞流させた後、送り出す方法)でもよいし、バッチ法(容器の中に樹脂を投入し、所定の時間加熱する方法)でもよい。具体的には、固層重合には、特許第2621563、特許第3121876、特許第3136774、特許第3603585、特許第3616522、特許第3617340、特許第3680523、特許第3717392、特許第4167159等に記載の方法を適用することができる。
【0025】
前記固相重合の温度は、170℃以上240℃以下が好ましく、より好ましくは180℃以上230℃以下であり、さらに好ましくは190℃以上220℃以下である。また、固相重合時間は、5時間以上100時間以下が好ましく、より好ましくは10時間以上75時間以下であり、さらに好ましくは15時間以上50時間以下である。固相重合は、真空中あるいは窒素雰囲気下で行なうことが好ましい。
【0026】
前記基材フィルムは、例えば、上記のポリエステルをフィルム状に溶融押出し、キャスティングドラムで冷却固化させて未延伸フィルムとし、この未延伸フィルムをガラス転移温度Tg℃〜(Tg+60)℃で長手方向に1回もしくは2回以上合計の倍率が3倍〜6倍になるよう延伸し、その後、Tg℃〜(Tg+60)℃で幅方向に倍率が3〜5倍になるように延伸した2軸延伸フィルムであることが好ましい。
さらに、必要に応じて180℃〜230℃で1秒間〜60秒間の熱処理を行ったものでもよい。
【0027】
前記基材フィルムの厚みは、25μm〜300μmであることが好ましく、120μm以上300μm以下であることがより好ましい。厚みが25μm以上であることで、十分な力学強度が得られ、300μm以下とすることで、コスト上、有利である。
特にポリエステル基材は、耐加水分解性を高めて湿熱環境下で長期使用に耐えられる傾向にあり、本発明において、前記基材フィルムは、厚みが120μm以上300μm以下であって、かつポリエステル中のカルボキシル基含量が2〜50当量/tである場合に、より湿熱耐久性の向上効果が奏される。
【0028】
(オレフィン系ポリマー層)
本発明の易接着シートは、前記基材フィルムの少なくとも片面側に配置されており、かつ、弾性率320MPa以下のオレフィン系であるバインダーを少なくとも1種含有するオレフィン系ポリマー層を有する。
【0029】
前記オレフィン系ポリマー層の膜厚は、30μm以下であることが好ましく、1μm〜20μmであることがより好ましく、1.5μm〜15μmであることが特に好ましく、2〜10μmであることがより特に好ましい。膜厚を1μm以上とすることで、装飾性や反射率を十分に発現することができ、30μm以下とすることで面状悪化を抑制し、湿熱経時後の封止材との密着性を改善することができる。
【0030】
−バインダー−
本発明では、前記オレフィン系ポリマー層のバインダーとして、弾性率320MPa以下のオレフィン系であるバインダーを少なくとも1種用いる。
【0031】
前記ポリオレフィン樹脂に用いられるオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、イソブチレンなどを重合したものなどを挙げることができ、その中でもエチレンが好ましい。すなわち、本発明の易接着シートは、前記オレフィン系ポリマー層に用いられる前記オレフィン系バインダーの主鎖がエチレンユニットを含むことが好ましい。
本発明の易接着シートは、前記オレフィン系ポリマー層に用いられる前記オレフィン系バインダーが、変性されたオレフィン系バインダーであることが好ましく、酸変性されたオレフィン系バインダーであることがより好ましい。本発明の易接着シートは、前記オレフィン系ポリマー層に用いられる前記ポリオレフィン樹脂に用いられる酸性ユニットとして、(メタ)アクリル酸ユニットを含むことが好ましく、アクリル酸ユニットを含むことが特に好ましい。また、本明細書中において、アクリル樹脂は、アクリレート骨格の樹脂とメタクリレート骨格の樹脂を含む。また、(メタ)アクリルはアクリルとメタクリルの総称を意味し、(メタ)アクリレートはアクリレートとメタアクリレートの総称を意味する。
前記ポリオレフィン樹脂の酸性ユニットの一部又は全部はカチオンにより中和していることが好ましい。カチオンとしては、ナトリウムイオン、亜鉛イオン、マグネシウムイオン、銅イオン、リチウムイオン、カリウムイオンなどの金属かアミン類又はアンモニアであることが好ましい。金属イオンとしてはナトリウムイオン、亜鉛イオンなどが好ましい。アミン類又はアンモニアとしては、トリエチルアミン、N、N´−ジメチルエタノールアミン、アンモニアなどが好ましい。
オレフィン系のバインダーの主鎖骨格の種類としては、例えば、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸(および/またはアクリル酸)共重合体、エチレン−プロピレン−無水マレイン酸(および/またはアクリル酸)共重合体、エチレン−ブテン−無水マレイン酸(および/またはアクリル酸)共重合体、プロピレン−ブテン−無水マレイン酸(および/またはアクリル酸)共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸(および/またはアクリル酸)共重合体、エチレン−ブテン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸(および/またはアクリル酸)共重合体、プロピレン−ブテン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸(および/またはアクリル酸)共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸(および/またはアクリル酸)共重合体などが挙げられる。
前記ポリオレフィン樹脂としては、例えば、エチレンとアクリル酸またはエチレンとメタクリル酸からなるポリマーが好ましい。
前記ポリオレフィン樹脂におけるオレフィンユニットと酸性ユニットの共重合比率(モル比)は99.7:0.3〜90:10であることが好ましく、99.5:0.5〜97:3であることがより好ましい。
【0032】
本発明の易接着シートは、前記オレフィン系ポリマー層に用いられる前記オレフィン系バインダーの融点が75℃以上であることが好ましく、85〜105℃であることがより好ましく、90〜95℃であることが特に好ましい。
【0033】
本発明に用いられる前記オレフィン系のバインダーの弾性率は320MPaであり、前記オレフィン系のバインダーの弾性率は10〜250MPaであることが好ましく、20〜150MPaであることがより好ましく、30〜100MPaであることが特に好ましく、30〜70MPaが最も好ましい。
【0034】
前記オレフィン系のバインダーの形状や使用態様についても、ポリマー層を形成できれば特に制限はない。例えば、水分散可能なオレフィン系の樹脂であっても、溶融可能なオレフィン系の樹脂であってもよい。また、結晶性のオレフィン系の樹脂であっても、非結晶性のオレフィン系の樹脂であってもよい。
本発明ではその中でも、溶媒に分散可能なオレフィン系のバインダーを用いることが、塗布により前記オレフィン系ポリマー層を形成でき、より封止材との湿熱経時後の密着性を改善できる観点から好ましい。前記オレフィン系のバインダーは、水に分散可能であることがより好ましい。
【0035】
前記オレフィン系のバインダーの入手方法についても特に制限はなく、商業的に入手してもよく、合成してもよい。また、添加剤を加えて本発明で求められる前記オレフィン系のバインダーの弾性率の範囲に制御してもよい。
【0036】
商業的に入手できる、本発明に用いられる前記オレフィン系のバインダーとしては、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体をアミン中和した水分散体であるアローベースSE−1010、ユニチカ(株)製、SE−1013N、SD−1010、プロピレン−アクリル酸共重合体をアミン中和した水分散体であるTC−4010、TD−4010、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体をアンモニア中和した水分散体であるハイテックS3148、S3121、S8512(東邦化学(株)製)、エチレン−アクリル酸共重合体のアイオノマーの水分散体であるケミパールS−120、S−75N、V100、EV210H(ともに三井化学(株)製)、などを挙げることができる。その中でも、本発明ではアローベースSE−1013N、ユニチカ(株)製を用いることが好ましい。なお、アローベースSE−1013Nの融点は約91℃であり、オレフィンユニットと酸性ユニットの共重合比率(モル比)は99:1である。
また、ハイテックS3121のオレフィンユニットと酸性ユニットの共重合比率(モル比)は95:5である。
【0037】
前記オレフィン系ポリマー層のバインダーとして用いられる、前記オレフィン系のバインダーは単独で用いてもよく、複数の前記オレフィン系のバインダーを混合して用いてもよい。
【0038】
前記オレフィン系ポリマー層のバインダーは、本発明の趣旨に反しない限り、前記オレフィン系のバインダー以外のその他のバインダーを含んでいてもよい。
前記その他のバインダーとしては、例えばポリウレタン系のバインダーを挙げることができる。前記ポリウレタン系のバインダーとしては、例えば、スーパーフレックス110、460、いずれも第一工業製薬(株)製などを挙げることができる。
前記オレフィン系のバインダーと前記その他のバインダーの割合(質量比)は50:50〜100:0であることが好ましく、80:20〜100:0であることがより好ましい。
【0039】
−着色顔料−
本発明の易接着シートでは、前記オレフィン系ポリマー層が酸化チタン、カーボンブラック、チタンブラック、黒色の複合金属酸化物、シアニン系カラーおよびキナクドリン系カラーから選択される少なくとも1種の着色顔料を含有する着色層である。
着色層の第一の機能は、入射光のうち太陽電池セルで発電に使われずにバックシートに到達した光を反射させて太陽電池セルに戻すことにより、太陽電池モジュールの発電効率を上げることである。第二の機能は太陽電池モジュールを表面側から見た場合の外観の装飾性を向上することである。一般に太陽電池モジュールを表面側から見ると、太陽電池セルの周囲にバックシートが見えており、バックシートに着色層を設けることにより装飾性を向上させて見栄えを改善することができる。
【0040】
前記オレフィン系ポリマー層に用いられる前記着色顔料は酸化チタン、カーボンブラック、チタンブラック、黒色の複合金属酸化物、シアニン系カラーおよびキナクドリン系カラーから選択される少なくとも1種を含有する以外は特に限定されず、要求される反射性、意匠性等に応じて選択すればよい。例えば、白色顔料である酸化チタンを好ましく用いることができる。
前記酸化チタン、カーボンブラック、チタンブラック、黒色の複合金属酸化物の中では、反射性、コスト等の観点から酸化チタンが好ましい。
ここで、前記黒色の複合金属酸化物としては、鉄、マンガン、コバルト、クロム、銅、ニッケルのうち少なくとも1種を含む複合金属酸化物が好ましく、コバルト、クロム、鉄、マンガンおよび銅、ニッケルのうち2種以上を含むことがより好ましく、カラーインデックスがPBk26、PBk27およびPBk28、PBr34から選ばれる少なくとも1つ以上の顔料がより特に好ましい。
なお、PBk26の顔料は、鉄、マンガン、銅の複合酸化物であり、PBk−27の顔料は鉄、コバルト、クロムの複合酸化物であり、PBk−28は銅、クロム、マンガンの複合酸化物であり、PBr34はニッケル、鉄の複合酸化物である。
前記シアニン系カラーおよびキナクドリン系カラーとしては、シアニングリーン、シアニンブルー、キナクドリンレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等が挙げられる。
【0041】
前記着色層は、前記着色顔料として例えば白色顔料を用いれば、太陽電池モジュールのオモテ面から入射した太陽光のうち、セルを素通りした光を乱反射して、セルに戻すことで発電効率を上げる機能を有する。
基材フィルムの、着色層が配置されている面(最外表面)の波長550nmにおける光反射率は、着色層中の着色顔料の含有量や層厚を前記または後述の数値範囲で制御することにより反射率を高める方向に調整することができる。
【0042】
前記着色顔料の体積平均粒径としては0.03μm〜0.8μmが好ましく、より好ましくは0.15μm〜0.5μmである。着色顔料の体積平均粒径をこの範囲とすることで、光の反射効率低下を抑制することができる。
前記着色顔料の体積平均粒径は、日機装社製、マイクロトラックFRAにより測定される値である。
【0043】
前記オレフィン系ポリマー層(着色層)における前記着色顔料の好ましい含有量は、用いる着色顔料の種類や平均粒径によって異なるが、前記着色層における着色顔料の含有量が少な過ぎなければ、反射性、意匠性が十分発揮でき、多過ぎなければ封止材との接着性の観点から好ましい。これらの機能を十分発揮させる観点から、本発明の太陽電池用保護シートでは、前記着色層における前記着色顔料の含有量は好ましくは3g/m2〜20g/m2、より好ましくは5g/m2〜17g/m2である。
本発明の太陽電池用保護シートでは、同様の観点から、前記着色層に含まれる全ての前記バインダーと架橋剤に対する前記着色顔料の体積分率は好ましくは15〜200%であり、より好ましくは20〜150%であり、特に好ましくは20〜50%である。
【0044】
−架橋剤−
前記オレフィン系ポリマー層は、架橋剤を含有する。前記架橋剤の詳細については、後述のオレフィン系ポリマー層形成用組成物の説明中にて説明する。
【0045】
−その他の添加剤−
前記オレフィン系ポリマー層は、さらに、界面活性剤、前記着色顔料以外の微粒子、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の種々の添加剤を含有することができ、特に、着色層を形成するための着色層形成用組成物は、着色顔料の分散安定性のため、界面活性剤を用いて調製することが好ましい。
【0046】
前記界面活性剤としては、例えば、アニオン系、カチオン系、ノニオン系等の公知の界面活性剤を利用することができ、具体的には、デモールEP〔花王(株)製〕、ナロアクティーCL95〔三洋化成工業(株)製〕等を挙げることができる。前記界面活性剤は、単独種を用いても複数種を用いてもよい。
【0047】
前記着色顔料以外の微粒子としては、シリカ、酸化マグネシウム、酸化錫等の無機酸化物フィラーが挙げられる。中でも、湿熱雰囲気に晒された時の接着性の低下が小さいことから、酸化錫またはシリカが好ましい。
前記無機酸化物フィラーの体積平均粒径は10nm〜700nmであることが好ましく、20nm〜300nmがより好ましい。平均粒径がこの範囲の無機酸化物フィラーを用いることにより、着色層と隣接する層との良好な易接着性を得ると共に、特に湿熱環境下(例えば、85℃、相対湿度85%)での隣接層(より特に好ましくは太陽電池モジュールの封止材、例えばEVAを含む封止材層)との密着性を発現することができる。なお、前記無機酸化物フィラーの体積平均粒径は、日機装社製マイクロトラックFRAにより測定された値である。
前記着色顔料以外の微粒子の形状は特に制限はなく、球形、不定形、針状形等のものを用いることができる。
【0048】
前記着色顔料以外の微粒子の着色層中の含有量は、着色層のバインダー樹脂の全質量に対して、5質量%〜400質量%であることが好ましく、50質量%〜300質量%であることがより好ましい。微粒子の含有量が5質量%以上であることで、湿熱雰囲気に晒された時の接着性および湿熱環境下で経時させたときの太陽電池モジュールの封止材との密着性が良好であり、400質量%以下であることで着色層の面状悪化を防止することができる。
なお、前記無機酸化物フィラー以外の微粒子として、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等を含んでもよい。
【0049】
−オレフィン系ポリマー層の形成−
前記オレフィン系ポリマー層は公知の方法で形成することができ、特に制限はない。例えば、前記基材フィルムを支持体として用いて溶液製膜または溶融製膜して積層してもよく、オレフィン系ポリマー層をあらかじめ他の支持体上で溶液製膜または溶融製膜しておいたものと前記基材フィルムとを接着剤などを介して積層してもよい。その中でも、本発明の太陽電池用保護シートは、前記基材フィルムを支持体として用いて溶液製膜することが好ましい。前記溶液製膜の方法としては特に制限はなく、流延製膜であっても塗布であってもよいが、本発明の易接着シートでは、前記オレフィン系ポリマー層が、塗布により製膜されてなることが好ましい。
前記オレフィン系ポリマー層は、基材フィルムの片面のみならず両面に設けられていてもよく、その場合も基材フィルムの両面に塗布することが好ましい。
また、前記オレフィン系ポリマー層は、前記基材フィルムとの間に後述するその他の層を有する場合は、前記オレフィン系ポリマー層を基材フィルム上に直接又は前記その他の層の上に、塗布して形成することができる。
前記オレフィン系ポリマー層を形成するための、オレフィン系ポリマー層形成用組成物は、少なくとも弾性率320MPa以下のオレフィン系であるバインダーを含み、さらに必要に応じて、着色顔料、その他のバインダー樹脂、無機酸化物フィラー、架橋剤、添加剤等を塗布溶媒と混合することで調製することができる。
【0050】
〔溶媒〕
塗布溶媒としては、前記オレフィン系ポリマー層を構成する各成分が分散又は溶解し、塗布後、除去することができることができれば特に限定されないが、水が好ましく用いられ、前記オレフィン系ポリマー層形成用組成物に含まれる溶媒中の60質量%以上が水であることが好ましい。このような水系組成物は、環境に負荷をかけにくい点で好ましく、また水の割合が60質量%以上であることにより、防爆性および安全性の点で有利である。前記オレフィン系ポリマー層形成用組成物中の水の割合は、環境負荷の観点からは、さらに多い方が望ましく、水が全溶媒の70質量%以上含まれる場合がより好ましい。本発明の易接着シートは、前記オレフィン系ポリマー層中の溶剤残留率が前記オレフィン系ポリマー層の質量(塗膜の質量)に対して0.05質量%以下であることが好ましく、0.025質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以下であることが特に好ましい。
【0051】
〔架橋剤〕
前記オレフィン系ポリマー層形成用組成物は、架橋剤を含有する。
前記オレフィン系ポリマー層形成用組成物が架橋剤を含有することで、前記オレフィン系ポリマー層形成用組成物に含まれるバインダー樹脂を架橋し、接着性及び強度のある着色層を形成することができ、好ましい。
前記架橋剤としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。太陽電池モジュールの封止材との湿熱経時後の密着性を確保する観点から、このなかで特にオキサゾリン系架橋剤(オキサゾリン基をもつ化合物)が好ましい。
【0052】
オキサゾリン系架橋剤としては、分子中に2個以上のオキサゾリン基を有するものであり低分子化合物であっても重合体であってもよいが、重合体の方が、接着性が良好であるため好ましい。
【0053】
前記オキサゾリン系架橋剤の具体例としては、低分子化合物のオキサゾリン系架橋剤としては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン、2,2’−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2、2’−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−(1,3−フェニレン)−ビス−(2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等がある。さらに、これらの化合物の(共)重合体も好ましく利用することができる。
これらは単独でも2種類以上を併用してもよい。
【0054】
重合体のオキサゾリン系架橋剤は、その構成成分として付加重合性オキサゾリンを必須とし、付加重合性オキサゾリンと共重合可能な単量体をも含むモノマー成分を重合させることにより得ることができる。
付加重合性オキサゾリンとしては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリンおよび2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどが好ましく挙げられ、これらは単独でも2種類以上を併用して使用してもよい。これらの中でも、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが入手の容易さや接着性を良好にするために好ましい。これら付加重合性オキサゾリンの使用量は、特に限定されないが、モノマー成分中5質量%以上とすることが好ましく、5〜90質量%がより好ましく、10〜60質量%がさらに好ましく、30〜60質量%が特に好ましい。
付加重合性オキサゾリンと共重合可能な単量体としては、オキサゾリン基と反応しないものから選ぶことが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコールとのモノエステル化物、(メタ)アクリル酸−2−アミノエチルおよびその塩、(メタ)アクリル酸のカプロラクトン変性物、(メタ)アクリル酸−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンおよび(メタ)アクリル酸−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウムおよび(メタ)アクリル酸アンモニウム等の(メタ)アクリル酸塩;アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル等の不飽和ニトリル;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドおよびN−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド;酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニル等のビニルエステル;メチルビニルエーテルおよびエチルビニルエーテル等のビニルエーテル;エチレンおよびプロピレン等のα−オレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデンおよびフッ化ビニル等のハロゲン含有・α,β−不飽和脂肪族炭化水素;スチレン、α−メチルスチレンおよびスチレンスルホン酸ナトリウム等のα,β−不飽和芳香族炭化水素などが挙げられ、これらは単独でも2種類以上を併用して使用してもよい。
本発明の易接着シートは、前記オキサゾリン系架橋剤、すなわち、前記オキサゾリン基をもつ化合物が(メタ)アクリル酸エステルユニットを含む共重合体であることが好ましい。
【0055】
前記オキサゾリン系架橋剤は、水溶性および/または水分散性などの水性であることが、酸変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体との混合安定性が優れる点から好ましく、水溶性であることがより好ましい。重合体のオキサゾリン系架橋剤の重合方法は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。例えば水性媒体中で溶液重合、乳化重合、懸濁重合または塊状重合させる方法などが挙げられ、これらの方法などで水溶液または水分散体などを得ることができる。これら重合体のオキサゾリン系架橋剤は、接着性や耐候性を良好にするために、不揮発性水性化助剤を実質的に含有していないことが好ましい。
【0056】
重合体のオキサゾリン系架橋剤の分子量は、数平均分子量で1000〜80000であることが好ましく、3000〜60000がより好ましく、5000〜40000がさらに好ましく、8000〜30000が特に好ましく、10000〜20000が最も好ましい。数平均分子量が1000未満の場合は、接着性や耐候性が低下する傾向にあり、80000を超えた場合は、重合体の製造が困難となる。
【0057】
また、オキサゾリン系架橋剤は、市販品を用いてもよく、例えば、水性分散体タイプのエポクロス「K−1010E」、「K−1020E」、「K−1030E」、K2010E、K2020E、K2030E、水溶液タイプのWS500、WS700〔いずれも日本触媒(株)製エポクロスシリーズ〕等を用いることができる。
【0058】
前記オレフィン系ポリマー層形成用組成物の全固形分質量に対する架橋剤の含有量は、水系バインダー全質量に対し5質量%〜50質量%であることが好ましく、10質量%〜40質量%であることがより好ましく、10%以上30%以下の範囲であることが特に好ましい。架橋剤含有量が5質量%以上であることで、充分な架橋効果が得られ、前記オレフィン系ポリマー層の強度低下や接着不良を抑制することができる。一方、50質量%以下であることで、前記オレフィン系ポリマー層形成用組成物のポットライフ低下を防止することができる。
【0059】
前記オレフィン系ポリマー層形成用組成物の基材フィルム上への塗布は、たとえばグラビアコーターやバーコーターなどの公知の方法を利用することができる。
前記オレフィン系ポリマー層形成用組成物が着色顔料を含む場合は、反射性能と膜強度の観点から、バインダー樹脂に対する着色顔料の体積分率が50%〜200%であり、該オレフィン系ポリマー層形成用組成物を、前記基材フィルム上に、塗布厚が1〜20μm以下となるように塗布することが好ましい。また、前記着色顔料の塗工量が3g/m2〜20g/m2となるように塗布することが好ましい。
【0060】
(その他の層)
本発明の太陽電池用保護シートは、基材フィルム上に前記オレフィン系ポリマー層を有するが、前記オレフィン系ポリマー層と前記基材フィルムとの間に少なくとも1層のその他の層を含んでもよい。
一方、前記オレフィン系ポリマー層と前記基材フィルムが直接接触している態様も、製造コスト低減の観点や、より薄膜化を目指す観点からは、好ましい。
前記基材フィルムと前記オレフィン系ポリマー層との間に前記その他の層を有することで、基材フィルムと前記オレフィン系ポリマー層との間の密着性をより高めることができる。
本発明の太陽電池用保護シートでは、前記その他の層が下塗り層であることが好ましく、すなわち、前記その他の層が塗布により形成されてなることが好ましい。
一方、本発明の太陽電池用保護シートでは、前記その他の層が、無機酸化物以外の無機物または有機物からなる層のみである態様も好ましい。すなわち、前記その他の層が無機酸化物を含まない態様も好ましい。例えば前記その他の層を無機酸化物の蒸着以外の方法、例えば塗布により形成することが好ましい。また、前記その他の層を塗布により形成する場合、無機酸化物微粒子などを含まない態様も好ましい。
以下、前記その他の層の好ましい態様である、本発明の太陽電池用保護シートが下塗り層を含む場合について説明する。
【0061】
前記下塗り層は、基材フィルム上に下塗り層形成用組成物を塗布して形成することができる。
前記下塗り層形成用組成物は、少なくとも水系バインダーを含有することが好ましい。
水系バインダーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリオレフィン等を用いることができる。本発明の太陽電池用保護シートでは、前記その他の層の主成分が、ポリエステル系樹脂であることが好ましい。
さらに、水系バインダー以外にエポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤、アニオン系やノニオン系等の界面活性剤、シリカ等のフィラーなどを含有していてもよい。これらの添加剤などの好ましい範囲は、前記オレフィン系ポリマー層におけるこれらの添加剤などの好ましい範囲と同様である。
前記下塗り層形成用組成物の全固形分質量に対する水系バインダーの含有量は、50質量%〜100質量%であることが好ましく、70質量%〜100質量%であることがより好ましい。
【0062】
前記下塗り層は、後述する無機酸化物フィラー及び無機酸化物フィラー以外の微粒子、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤等の種々の添加剤を含有していてもよい。
【0063】
前記下塗り層形成用水系組成物を塗布するための方法は、特に制限はない。
塗布方法としては、たとえばグラビアコーターやバーコーターを利用することができる。
前記下塗り層形成用水系組成物の塗布量は、接着性および面状の観点から、乾燥後の層厚が好ましくは10μm未満、より好ましくは0.05μm〜2μm、特に好ましくは0.1μm〜1.5μmとなるように、基材フィルムに塗布することが好ましい。
【0064】
前記下塗り層形成用水系組成物の塗布溶媒としては水が用いられ、下塗層形成用水系組成物に含まれる溶媒中の60質量%以上が水であることが好ましい。水系組成物は、環境に負荷かけにくい点で好ましく、また水の割合が60質量%以上であることにより、防爆性、および安全性の点で有利である。
前記下塗り層形成用水系組成物中の水の割合は、環境負荷の観点からは、さらに多い方が望ましく、水が全溶媒の70質量%以上含まれる場合がより好ましい。
【0065】
(耐候性層)
本発明の太陽電池用保護シートは、前記基材フィルムの、前記オレフィン系ポリマー層が配置されている面とは反対側の面に、さらに、フッ素系樹脂およびシリコーン−アクリル複合樹脂の少なくとも一方を含有する耐候性層を有することが好ましい。
【0066】
前記耐候性層を形成するための、耐候性層形成用組成物が含有するフッ素系樹脂としては、例えば、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体が挙げられる。中でも、溶解性、および耐候性の観点から、ビニル系化合物と共重合させたクロロトリフルオロエチレン・ビニルエーテル共重合体が好ましい。
【0067】
前記耐候性層形成用組成物が含有するフッ素系樹脂としては、オブリガートSW0011F〔AGCコーテック(株)製〕が挙げられる。
前記耐候性層形成用組成物の全固形分質量に対するフッ素系樹脂の含有量は、耐候性と膜強度の観点から、40質量%〜90質量%であることが好ましく、50質量%〜80質量%であることがより好ましい。
【0068】
前記耐候性層形成用組成物が含有するシリコーン−アクリル複合樹脂としては、セラネートWSA1060、WSA1070〔共にDIC(株)製〕とH7620、H7630、H7650〔共に旭化成ケミカルズ(株)製〕が挙げられる。
前記耐候性層形成用組成物全固形分質量に対するシリコーン−アクリル複合樹脂の含有量は、耐候性と膜強度の観点から、40質量%〜90質量%であることが好ましく、50質量%〜80質量%であることがより好ましい。
【0069】
前記耐候性層形成用組成物の塗布量は、耐候性および基材フィルムとの密着性の観点から、0.5g/m2〜15g/m2とすることが好ましく、3g/m2〜7g/m2とすることがより好ましい。
【0070】
前記耐候性層形成用組成物を形成するための方法は、特に制限はないが、塗布により形成することが好ましい。
塗布方法としては、たとえばグラビアコーターやバーコーターを利用することができる。
前記耐候性層形成用組成物の塗布溶媒としては好ましくは水が用いられ、耐候性層形成用組成物に含まれる溶媒中の60質量%以上が水であることが好ましい。水系組成物は、環境に負荷かけにくい点で好ましく、また水の割合が60質量%以上であることにより、防爆性、および安全性の点で有利である。
前記耐候性層形成用組成物中の水の割合は、環境負荷の観点からは、さらに多い方が望ましく、水が全溶媒の70質量%以上含まれる場合がより好ましい。
【0071】
前記耐候性層は、前記無機酸化物フィラー及び無機酸化物フィラー以外の微粒子、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤等の種々の添加剤を含有していてもよい。
【0072】
前記耐候性層の層厚は、0.5μm〜15μmであることが好ましく、3μm〜7μmであることがより好ましい。膜厚を0.5μm以上とすることで、耐候性を十分に発現することができ、15μm以下とすることで面状悪化を抑制することができる。
なお、前記耐候性層は、単層でもよいし、2層以上を積層した構成としてもよい。本発明の太陽電池用保護シートは、前記耐候性層を2層積層した構成であることが好ましい。
【0073】
<易接着シートおよび太陽電池用保護シートの特性>
(光反射率)
本発明の易接着シートおよび太陽電池用保護シートの前記オレフィン系ポリマー層が配置されている面(最外表面)は、波長550nmにおける光反射率が65%以上であることが好ましい。光反射率が65%以上であることで、太陽電池のセルを素通りした光を充分にセルに戻すことができ、発電効率を上げる上で好ましい。前記光反射率は70%以上であることがより好ましく、75%以上であることが特に好ましく、80%以上であることがより特に好ましい。
【0074】
[太陽電池用バックシート部材または太陽電池用バックシート]
本発明の太陽電池用バックシート部材または太陽電池用バックシートは、本発明の太陽電池用保護シートを含むことを特徴とする。また、本発明の太陽電池用バックシート部材または太陽電池用バックシートとして本発明の太陽電池用保護シートをそのまま用いてもよい。
【0075】
[太陽電池用積層体]
本発明の太陽電池用積層体は、太陽電池用保護シートと、該太陽電池用保護シートの少なくとも前記オレフィン系ポリマー層側の面に直接接着されており、かつ、エチレン−酢酸ビニル共重合体またはポリビニルブチラールを含むポリマー層と、を有することを特徴とする。
本発明の太陽電池用保護シートは、前記オレフィン系ポリマー層側の面が太陽電池モジュールに用いられる封止材(例えばEVA、PVB。特にEVA)との密着性が良好であるため、接着剤層などを介さずに、両者と貼りあわせることができる。また、このような太陽電池用保護シートの少なくとも前記オレフィン系ポリマー層側の面にチレン−酢酸ビニル共重合体などの封止材が直接接着されている太陽電池用積層体は、湿熱環境下で経時しても、両者の密着性が長期間にわたって良好である。
このような太陽電池積層体は、そのまま太陽電池素子を封止する封止材そのものとして用いてもよく、太陽電池モジュールの封止材の一部として用いてもよい。
【0076】
[太陽電池モジュール]
本発明の太陽電池用保護シートは、太陽電池モジュールの製造に好適である。
太陽電池モジュールは、例えば、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池素子を、太陽光が入射する透明性の基板と既述の本発明の太陽電池用バックシートとの間に配置し、該基板とバックシートとの間をエチレン−酢酸ビニル共重合体などの封止材で封止して構成される。
【0077】
太陽電池モジュール、太陽電池セル、バックシート以外の部材については、例えば、「太陽光発電システム構成材料」(杉本栄一監修、(株)工業調査会、2008年発行)に詳細に記載されている。
本発明の太陽電池モジュールの第一の態様は、太陽光が入射する側の透明性のフロント基板と、太陽電池素子と、前記太陽電池素子を封止する封止材と、前記封止材の前記フロント基板とは反対側に配置され、前記封止材と接着する太陽電池用バックシートとを有し、前記太陽電池用バックシートが本発明の太陽電池用バックシート部材または太陽電池用バックシートを含み、かつ、前記太陽電池用バックシート部材または太陽電池用バックシートの前記オレフィン系ポリマー層が前記封止材と直接接着していることを特徴とする。
本発明の太陽電池モジュールの第二の態様は、太陽光が入射する側の透明性のフロント基板と、太陽電池素子と、前記太陽電池素子を封止する封止材と、前記封止材の前記フロント基板とは反対側に配置され、前記封止材と接着する太陽電池用バックシートとを有し、前記太陽電池用バックシートおよび前記封止材として本発明の太陽電池用積層体を含むことを特徴とする。
好ましくは、太陽電池素子と、太陽電池素子を封止する封止材と、封止材と接着し、受光面側を保護する表面保護部材と、封止材と接着し、受光面とは反対側を保護する裏面保護部材とを有し、封止材がエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を含み、裏面保護部材が本発明の太陽電池用バックシートであって、該太陽電池用バックシートの着色層が封止材と直接接着した構成とすることができる。このような太陽電池モジュールであれば、太陽電池用バックシートがEVAと湿熱環境下であっても長期にわたって密着し、長寿命の太陽電池モジュールとすることができる。
【0078】
前記透明性のフロント基板は、太陽光が透過し得る光透過性を有していればよく、光を透過する基材から適宜選択することができる。発電効率の観点からは、光の透過率が高いものほど好ましく、このような基板として、例えば、ガラス基板、アクリル樹脂などの透明樹脂などを好適に用いることができる。
【0079】
前記太陽電池素子としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系、銅−インジウム−ガリウム−セレン、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルル、ガリウム−砒素などのIII−V族やII−VI族化合物半導体系など、各種公知の太陽電池素子を適用することができる。
【実施例】
【0080】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
なお、体積平均粒子径は、日機装社製、マイクロトラックFRAを用いて測定した。
【0081】
[実施例1]
<基材フィルムの作製>
−ポリエステルの合成−
高純度テレフタル酸(三井化学(株)製)100kgとエチレングリコール(日本触媒(株)製)45kgのスラリーを、予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約123kgが仕込まれ、温度250℃、圧力1.2×105Paに保持されたエステル化反応槽に、4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行なった。その後、得られたエステル化反応生成物123kgを重縮合反応槽に移送した。
【0082】
引き続いて、エステル化反応生成物が移送された重縮合反応槽に、エチレングリコールを、得られるポリマーに対して0.3質量%添加した。5分間撹拌した後、酢酸コバルト及び酢酸マンガンのエチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対してそれぞれ30ppm、15ppmとなるように加えた。更に5分間撹拌した後、チタンアルコキシド化合物の2質量%エチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対して5ppmとなるように添加した。その5分後、ジエチルホスホノ酢酸エチルの10質量%エチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対して5ppmとなるように添加した。その後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を250℃から285℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージし、常圧に戻し、重縮合反応を停止した。そして、冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングしてポリマーのペレット(直径約3mm、長さ約7mm)を作製した。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は3時間であった。
【0083】
但し、前記チタンアルコキシド化合物には、特開2005−340616号公報の段落番号[0083]の実施例1で合成しているチタンアルコキシド化合物(Ti含有量=4.44質量%)を用いた。
【0084】
−固相重合−
上記で得られたペレットを、40Paに保たれた真空容器中、220℃の温度で30時間保持して、固相重合を行なった。
【0085】
−ベース形成−
以上のように固相重合を経た後のペレットを、280℃で溶融して金属ドラムの上にキャストし、厚さ約3mmの未延伸ベースを作成した。その後、90℃で縦方向に3倍に延伸し、更に120℃で横方向に3.3倍に延伸した。こうして、厚み250μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、「PET基材フィルム」と称する。)を得た。
【0086】
<下塗り層及び着色層の形成>
−下塗り層用塗布液1の調製−
下記組成中の成分を混合し、下塗り層用塗布液1を調製した。
【0087】
(下塗り層用塗布液1の組成)
・ポリエステル樹脂水分散物 48質量部
〔バイロナール1245、東洋紡(株)製、固形分:30質量%〕
・PMMA樹脂微粒子 0.5質量部
〔MP−1000、綜研化学(株)製、固形分:100質量%〕
・オキサゾリン化合物 3質量部
〔エポクロスWS−700、日本触媒(株)製、固形分:25質量%〕
・カルボジイミド化合物 4.3質量部
〔カルボジライトV−02−L2、日清紡(株)製、固形分:40質量%〕
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル 0.15質量部
〔ナロアクティーCL−95、三洋化成工業(株)製、固形分:100質量%〕
・蒸留水 935質量部
【0088】
−白色無機微粒子分散物1の調製−
下記組成中の成分を混合し、その混合物をダイノミル型分散機により分散処理を施し、体積平均粒径0.42μmの白色無機微粒子分散物1を得た。
(白色無機微粒子分散物1の組成)
・二酸化チタン 765質量部
〔タイペークR−780−2、石原産業(株)製、固形分:100質量%;白色顔料〕
・ポリビニルアルコール(PVA−105)10%水溶液 383質量部
〔PVA−105、(株)クラレ製、固形分:100質量%〕
・界面活性剤 9.2質量部
〔デモールEP、花王(株)製、固形分:25質量%〕
・蒸留水 363質量部
【0089】
−シリカ分散液1の調製−
下記組成中の成分を混合し、その混合物をアルティマイザ分散機により分散処理を施し、シリカ分散液1(濃度:10%)を調製した。
・蒸留水 900質量部
・シリカ粒子
〔OX−50、日本アエロジル(株)製〕 100質量部
【0090】
−着色層用塗布液1の調製−
下記組成中の成分を混合し、着色層用塗布液1を調製した。
(着色層用塗布液1の組成)
・上記にて得られた白色無機微粒子分散物1 1520質量部
・ポリオレフィン樹脂水分散液《着色層バインダー》 823質量部
〔アローベースSE−1013N、ユニチカ(株)製、固形分:20.2質量%〕
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル 0.71質量部
〔ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:100質量%〕
・水溶性オキサゾリン化合物 84.62質量部
〔エポクロスWS−700、日本触媒(株)製、固形分:25質量%〕
・上記にて得られたシリカ分散液1 56.4質量部
・蒸留水 413質量部
【0091】
−下塗り層、及び着色層の形成−
PET基材フィルムの片面を、搬送速度80m/分で搬送し、730J/m2の条件でコロナ放電処理を行った後、上記下塗り層塗布液1をバーコート法により乾燥重量が124mg/m2となるように塗布した。そして、これを180℃で1分乾燥して下塗り層を形成した。続けて下塗り層の上に着色顔料(酸化チタン)が8g/m2となるように上記着色層用塗布液1をバーコート法により塗布した後、170℃で1分乾燥することにより、前記PET基材フィルムの片面に乾燥厚みが0.1μmの下塗り層と乾燥厚みが9μmの白色の着色層(オレフィン系ポリマー層)とがこの順で積層された白色PETフィルムを得た。
【0092】
−着色層(オレフィン系ポリマー層)のバインダーの弾性率の測定−
上記白色基材PETフィルムの着色層に用いたバインダーの弾性率を以下の方法で測定した。
セラピールHP2(東レフィルム加工(株)製)上にバインダー単独膜(膜厚:約100ミクロン)を形成し、バインダー単独膜のみを伸びないように静かに剥離した。得られたバインダー単独膜を5mm×50mmに裁断し、25℃50%環境下で、テンシロン[オリエンテック製RTM−50]にてチャック間距離20mmクロスヘッドスピード50mm/分条件で引っ張り試験を実施した。得られたデータを汎用試験用データ処理ソフトで解析し、応力−歪み曲線から弾性率を算出した。
得られた結果を、下記表1に記載した。
【0093】
<耐候性層の形成>
上記白色基材PETフィルムの白色の着色層が塗布された面とは反対面に、下記耐候性層第1層および下記耐候性層第1層をこの順で形成した。
【0094】
−白色無機微粒子分散物2の調製−
下記白色無機微粒子分散物2の組成に示す各成分を混合し、その混合物をダイノミル型分散機により1時間、分散処理を施し、体積平均粒子径0.42μmの微粒子分散物2を得た。
【0095】
(白色無機微粒子分散物2の組成)
・二酸化チタン(白色顔料、体積平均粒子径0.42μm) 7.98質量部
〔タイペークR−780−2、石原産業社製、固形分100%〕
・ポリビニルアルコール(PVA−105)10%水溶液 10質量部
〔PVA−105、(株)クラレ製、固形分:100質量%〕
・界面活性剤〔デモールEP、花王(株)製、固形分:25%〕 0.1質量部
・蒸留水 1.92質量部
【0096】
−耐候性層第1層形成用塗布液の調製−
下記耐候性層第1層形成用塗布液の組成に示す各成分を混合し、耐候性層第1層形成用塗布液を調製した。
【0097】
(耐候性層第1層形成用塗布液の組成)
・アクリル/シリコーン系バインダー(シリコーン系樹脂) 362.3質量部
〔セラネートWSA−1070、DIC社製、固形分:40%〕
・カルボジイミド化合物 48.3質量部
〔カルボジライトV−02−L2、日清紡績社製、固形分:40%〕
・界面活性剤 9.7質量部
〔ナロアクティーCL95、三洋化成工業社製、固形分:1%〕
・上記白色無機微粒子分散物2 157.0質量部
・蒸留水 422.7質量部
【0098】
−耐候性層第1層の形成−
上記白色PETフィルムの白色の着色層が塗布された面とは反対面を、搬送速度80m/分で搬送し、730J/m2の条件でコロナ放電処理を行った。このコロナ放電処理を行った側の表面に対して、その後、上記耐候性層第1層形成用塗布液を、シリコーン系樹脂の量が塗布量で3.0g/m2になるように塗布し、180℃で1分間乾燥させて、乾燥厚みが3μmの耐候性層第1層を形成した。
【0099】
−耐候性層第2層形成用塗布液の調製−
下記耐候性層第2層形成用塗布液の組成に示す各成分を混合し、耐候性層第2層形成用塗布液を調製した。
【0100】
(耐候性層第2層形成用塗布液の組成)
・アクリル/シリコーン系バインダー(シリコーン系樹脂) 362.3質量部
〔セラネートWSA−1070、DIC社製、固形分:40%〕
・カルボジイミド化合物(架橋剤) 24.2質量部
〔カルボジライトV−02−L2、日清紡績社製、固形分:40%〕
・界面活性剤 24.2質量部
〔ナロアクティーCL95、三洋化成工業社製、固形分:1%〕
・蒸留水 703.8質量部
【0101】
−耐候性層第2層の形成−
得られた耐候性層第2層形成用塗布液を、耐候性層第1層の上に、シリコーン系樹脂の量が塗布量で2.0g/m2になるように塗布し、180℃で1分間乾燥させて、乾燥厚み2.5μmの耐候性層第2層を形成した。
【0102】
こうして、PET基材フィルムの片面に、下塗り層、白色の着色層を設け、PET基材フィルムのその反対面に耐候性層第1層、耐候性層第2層を設けた太陽電池用保護シートを作成した。この太陽電池用保護シートを、実施例1の太陽電池用保護シートとした。
【0103】
<太陽電池用保護シートの評価>
この実施例1の太陽電池用保護シートの封止剤密着性、湿熱経時後の封止剤密着性、反射率、耐候性の評価を以下に示す方法により行なった。得られた結果を、下記表1に示す。
【0104】
−1.湿熱経時前の封止剤密着性−
上記のようにして作製した太陽電池用保護シートを20mm巾×150mmにカットして、試料片を2枚準備した。この2枚の試料片を、白色層同士が対面するように配置し、この間に20mm巾×100mm長にカットしたEVAシート(三井化学ファブロ(株)製のEVAシート:RC02B)を挟み、真空ラミネータ(日清紡(株)製の真空ラミネート機)を用いてホットプレスすることにより、EVAと接着させた。このときの接着条件は、以下の通りとした。
真空ラミネータを用いて、150℃で3分間の真空引き後、10分間加圧して接着した。このようにして、互いに接着した2枚のサンプル片の一端から50mmの部分はEVAと未接着で、残りの100mmの部分にEVAシートが接着された接着評価用試料を得た。
【0105】
得られた接着評価用試料のEVA未接着部分(試料片の一端から50mmの部分)を、テンシロン(ORIENTEC製 RTC−1210A)にて上下クリップに挟み、剥離角度180°、引っ張り速度300mm/分で引っ張り試験を行ない、接着力を測定した。
測定された接着力をもとに以下の評価基準にしたがってランク付けした。このうち、ランク4、5が実用上許容可能な範囲である。
(評価基準)
5:密着が特に優れていた (60N/20mm以上)
4:密着が非常に良好であった(30N/20mm以上60N/20mm未満)
3:密着は良好であった (20N/20mm以上30N/20mm未満)
2:密着不良が生じた (10N/20mm以上20N/20mm未満)
1:密着不良が顕著であった (10N/20mm未満)
【0106】
−2.湿熱経時後の封止剤密着性−
上記のようにして作製した太陽電池用保護シートを、105℃、相対湿度100%の環境条件下で48時間保持(湿熱経時)した後、前記湿熱経時前の封止剤密着性と同様の方法にて試料片を準備してEVAシートとの接着力を測定し、同じ評価基準にしたがってランク付けした。なお、湿熱経時後の封止剤密着性については、ランク3以上が実用上許容可能な範囲であり、ランク4、5が実用上より好ましい範囲である。
【0107】
−3.反射率−
上記のようにして作製した太陽電池用保護シートについて、分光光度計UV−3100((株)島津製作所製)にて550nmの光に対する反射率を測定した。リファレンスとして硫酸バリウム標準板の反射率を測定し、これを100%として太陽電池用保護シートの反射率を算出した。
【0108】
−4.耐侯性−
上記のようにして作製した太陽電池用保護シートについて、低温サイクルキセノンウェザーメーターXL75(スガ試験機(株)製)にてBPT温度35℃、相対湿度50%、放射照度390W/m2条件で着色層の反対面から光を14日間照射した。
照射前後のb値をコニカミノルタ製スペクトロフォトメーターCM3700dで測定し、Δbが1以上を△、1以下を○とした。
【0109】
−5.総合評価−
上記のようにして作製した太陽電池用保護シートを、下記の評価基準に従って総合評価した。このうち、ランク3以上が実用上許容可能な範囲であり、ランク4、5が実用上より好ましい範囲である。
(評価基準)
6:反射率75%以上 EVA密着評価5
5:反射率75%未満 EVA密着評価5
4:EVA密着評価4
3:EVA密着評価3
2:EVA密着評価2
1:EVA密着評価1
【0110】
[実施例2〜24、比較例1〜6、10〜12]
上記着色層塗布液1中のポリオレフィン樹脂水分散液〔アローベースSE−1013N、ユニチカ(株)製、固形分:20.2質量%;着色層のバインダー〕を、固形分が同様になるように下記に示すバインダーに変更し、さらに下塗り液有無、耐侯層有無、顔料種類、顔料塗布量、顔料比率、架橋剤種類を下記表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜24および比較例1〜6、10〜12の太陽電池用保護シートを作製し、評価を行った。
【0111】
(各実施例および比較例で用いたバインダーの種類と主鎖構造)
B1:アローベースSE−1013N、ユニチカ(株)製、固形分:20.2質量%、オレフィン系;
B2:ケミパールS75N、三井化学(株)製、固形分24%、オレフィン系;
B3:ハイテックS3148、東邦化学(株)製、固形分25%、オレフィン系;
B4:ハイテックS3121、東邦化学(株)製、固形分25%、オレフィン系;
B5:ケミパールS120、三井化学(株)製、固形分27%、オレフィン系;
B6:ジョンクリルPDX7341、BASF(株)製、固形分49%、アクリル系;
B7:スーパーフレックス460、第一工業製薬(株)製、固形分38.1%、ウレタン系;
B8:ビニブランGV681、日信化学(株)製、固形分50%、塩化ビニル系;
B9:バイロナールMD−1200、東洋紡(株)製、固形分34%、ポリエステル系;
B10商品名:アローベースSD−1010、ユニチカ(株)製、固形分20%、オレフィン系;
B11:商品名アローベースSB−1010、ユニチカ(株)製、固形分25%、オレフィン系;
B12:商品名ケミパールEV210H、三井化学(株)製、固形分40%、酢酸ビニルユニット含有のオレフィン系;
B13:商品名アローベースTD−4010、ユニチカ(株)製、固形分25%、主鎖がポリプロピレンであるオレフィン系;
なお、実施例14のB1、B7重量比は8:2とした。
【0112】
(各実施例および比較例で用いた顔料の種類と添加割合)
実施例19では着色顔料として上記の酸化チタンと上記のカーボンブラックを塗布乾燥後の質量比が3:1となるように用いた。
実施例20では着色顔料として上記の酸化チタンとチタンブラック(商品名TB分散液13M、三菱マテリアル(株)製)を塗布乾燥後の質量比が1:1となるように用いた。
実施例21では着色顔料として上記の酸化チタンと複合酸化物ブラック(C.I.Pigmet Black 26、鉄、マンガン、銅 複合酸化物、大日精化工業(株)製、MF−5533Black、固形分61.5%)を質量比が3:1となるように用いた。
実施例22では着色顔料として上記の酸化チタンとシアニングリーン(商品名AFグリーンE−1、大日精化(株)製)とシアニンブルー(商品名AFブルーE−2B、
大日精化(株)製)とキナクドリンレッド(商品名AFレッドE−17、大日精化(株)製)を塗布乾燥後の質量比が8:1:0.5:2となるように用いた。
【0113】
(各実施例および比較例で用いた架橋剤の種類)
下記表1の実施例17に記載した水溶性カルボジイミド化合物は、商品名カルボジライトV−02−L2、日清紡(株)製、固形分40%であり、下記表1の実施例18に記載した水分散性(水不溶性)オキサゾリン(ラテックス型オキサゾリン)化合物は、商品名エポクロスK−2030E、日本触媒(株)製、固形分40%である。なお、塗布量は実施例1に使用したWS700と反応サイト当量数が同じになるように添加した。
各実施例および比較例で得られた評価結果を、下記表1に示した。
【0114】
[比較例7および8]
比較例7および8では実施例1のて基材フィルムに、以下の着色顔料含有ポリエチレンをコートハンガーダイから溶融樹脂温度320℃で押し出し、基材フィルムへラミネートし、基材フィルムと着色層の積層体を製造した。その後、実施例1と同様にして、耐候性層を積層し、比較例7および8の太陽電池用保護シートとし、評価を行なった。各比較例で得られた評価結果を、下記表1に示した。
(顔料含有マスターバッチAの作製)
着色顔料(A250、石原産業(株)製;酸化チタン) 40部
低密度ポリエチレン(LC607K 日本ポリエチレン(株)製) 60部
(着色顔料含有ポリエチレンの作製)
顔料含有マスターバッチA 35部
低密度ポリエチレン(スミカセンL405H住友化学(株)製) 15部
【0115】
[比較例9]
比較例9では比較例7と同様に製造した積層体から着色層を伸びないように静かに剥離した。下記接着剤を実施例1の基材フィルムに固形分5g/mとなるように塗設し、100℃2分で乾燥した。その後着色層を積層し、80℃に加熱した真空ラミネーターで真空引き3分後5分加圧し、基材フィルムと貼り合わせ、さらに70℃のオーブン中で24時間エージングした。
(接着剤)
DUX−1070(大日精化(株)製、高耐久無黄変型ポリウレタン系接着主剤 固形分50%)
・・・30質量部
C−99(大日精化(株)製、脂肪族無黄変型ポリイソシアネート硬化剤 固形分100%)
・・・1質量部
酢酸エチル ・・・21質量部
その後、実施例1と同様にして、耐候性層を積層し、比較例9の太陽電池用保護シートとし、評価を行なった。
比較例9で得られた評価結果を、下記表1に示した。なお、比較例9の太陽電池用保護シートの着色層と接着剤層の合計厚みを下記表1中の着色層層厚欄に記載した。
【0116】
【表1】

【0117】
上記表1から、本発明の太陽電池用保護シートは比較例の太陽電池用保護シートに比べて、特に湿熱経時後の封止材密着性に優れていることがわかった。さらに、本発明の太陽電池用保護シートは、湿熱経時前の封止材密着性、反射率および耐候性についても良好であることもわかった。すなわち、本発明の太陽電池用保護シートは、総合評価すると太陽電池用バックシート部材としても太陽電池用バックシートとしても優れた性能であることがわかった。
一方、比較例1の太陽電池用保護シートは、着色層のバインダーとして弾性率が本発明で規定する範囲を超えるオレフィン系のバインダーを用いた態様であり、特に湿熱経時後の封止材密着性に劣り、総合評価すると太陽電池用バックシートとして性能が劣るものであった。
比較例2および3の太陽電池用保護シートは、着色層のバインダーとしてそれぞれアクリル系のバインダーとウレタン系のバインダーを用いた態様であり、いずれも特に湿熱経時後の封止材密着性に劣り、総合評価すると太陽電池用バックシートとして性能が劣るものであった。
比較例4および5の太陽電池用保護シートは、着色層のバインダーとしてそれぞれ弾性率が本発明で規定する範囲を大幅に超える、塩化ビニル系のバインダーとポリエステル系のバインダーを用いた態様であり、いずれも特に湿熱経時後の封止材密着性に劣り、総合評価すると太陽電池用バックシートとして性能が劣るものであった。
比較例6の太陽電池用保護シートは、本発明で用いる特定の着色顔料(チタンなど)を添加せずに着色層を形成した態様であり、特に湿熱経時後の封止材密着性に劣り、総合評価すると太陽電池用バックシートとして性能が劣るものであった。
比較例7〜9の太陽電池用保護シートは、架橋剤を添加せずに着色層を溶融製膜によって形成した態様であり、特に湿熱経時後の封止材密着性に劣り、総合評価すると太陽電池用バックシートとして性能が劣るものであった。
比較例10の太陽電池用保護シートは、着色層のバインダーとして弾性率が本発明で規定する範囲を超え、酢酸ビニルユニットを含むオレフィン系バインダーを用いた態様であり、特に湿熱経時後の封止材密着性に劣り、総合評価すると太陽電池用バックシートとして性能が劣るものであった。
比較例11の太陽電池用保護シートは、架橋剤を添加せずに着色層を形成した態様であり、特に湿熱経時後の封止材密着性に劣り、総合評価すると太陽電池用バックシートとして性能が劣るものであった。
比較例12の太陽電池用保護シートは、特定の着色顔料(チタンなど)も架橋剤も添加せずに着色層を形成した態様であり、特に湿熱経時後の封止材密着性に劣り、総合評価すると太陽電池用バックシートとして性能が劣るものであった。
【0118】
なお、本発明の易接着シートである各実施例の太陽電池用保護シートは、前記オレフィン系ポリマー層中の溶剤残留率が前記オレフィン系ポリマー層の質量(塗膜の質量)に対して0.01質量%以下であったことを確認した。
【0119】
[実施例101]
<太陽電池モジュールの作製と評価>
厚さ3mmの強化ガラスと、EVAシート(三井化学ファブロ(株)製のRC02B)と、結晶系太陽電池セルと、EVAシート(三井化学ファブロ(株)製のRC02B)と、各実施例で作製した太陽電池用保護シートとをこの順に重ね合わせ、真空ラミネータ(日清紡(株)製、真空ラミネート機)を用いてホットプレスすることにより、EVAと各部材を接着させた。このとき、各実施例の太陽電池用保護シートはその着色層がEVAシートと接触するように配置した。また、接着方法は、下記の通りである。
真空ラミネータを用いて、150℃で3分間の真空引き後、10分間加圧して接着した。
【0120】
このようにして、結晶系の太陽電池モジュールを作製した。得られた太陽電池モジュールを用いて発電運転したところ、いずれも太陽電池として良好な発電性能を示し、長期間に亘って安定運転した。
【0121】
[実施例201〜224]
さらに、実施例1〜24においてシリカ分散液1を用いずに着色用塗布液1を調製した以外は同様にして太陽電池用保護シートを製造したところ、実施例1〜24と同じ結果が得られた。
【符号の説明】
【0122】
10 太陽電池モジュール
12 耐候性層第2層
14 耐候性層第1層
16 基材フィルム
17 その他の層(下塗り層)
18 オレフィン系ポリマー層
20 太陽電池素子
22 封止材
24 透明性のフロント基板
31 太陽電池用バックシート部材(易接着シートの一態様)
32 太陽電池用バックシート(易接着シートの別の一態様)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、
該基材フィルムの少なくとも片面側に配置されており、かつ、弾性率320MPa以下のオレフィン系であるバインダーを少なくとも1種、酸化チタン、カーボンブラック、チタンブラック、黒色の複合金属酸化物、シアニン系カラーおよびキナクドリン系カラーから選択される少なくとも1種の着色顔料ならびに架橋剤を含有する、オレフィン系ポリマー層を有することを特徴とする易接着シート。
【請求項2】
前記オレフィン系バインダーが、酸変性されたオレフィン系バインダーであることを特徴とする請求項1に記載の易接着シート。
【請求項3】
前記酸変性が(メタ)アクリル酸であることを特徴とする請求項1または2に記載の易接着シート。
【請求項4】
前記オレフィン系バインダーにおけるオレフィンユニットと酸性ユニットの共重合比率(モル比)が99.9:0.1〜90:10の間にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の易接着シート。
【請求項5】
前記オレフィン系バインダーの融点が75℃以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の易接着シート。
【請求項6】
前記オレフィン系バインダーの主鎖がエチレンユニットを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の易接着シート。
【請求項7】
前記オレフィン系バインダーが(メタ)アクリル酸エステルユニットを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の易接着シート。
【請求項8】
前記基材フィルムに対する前記着色顔料の塗設量が3g/m2〜20g/m2であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の易接着シート。
【請求項9】
前記着色層において、全ての前記バインダー樹脂と架橋剤の体積合計に対する前記着色顔料の体積分率が20〜200%であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の易接着シート。
【請求項10】
前記着色顔料が、酸化チタンであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の易接着シート。
【請求項11】
前記架橋剤がオキサゾリン基をもつ化合物であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の易接着シート。
【請求項12】
前記オキサゾリン基をもつ化合物の前記オレフィン系バインダーに対する質量割合が10%以上30%以下の範囲であることを特徴とする請求項11に記載の易接着シート。
【請求項13】
前記オキサゾリン基をもつ化合物が水溶性であることを特徴とする請求項11または12に記載の易接着シート。
【請求項14】
前記オキサゾリン基をもつ化合物が(メタ)アクリル酸エステルユニットを含む共重合体であることを特徴とする請求項11〜13のいずれか一項に記載の易接着シート。
【請求項15】
前記オレフィン系ポリマー層の厚みが30μm以下であることを特徴とする請求項1〜請求項14のいずれか一項に記載の易接着シート。
【請求項16】
前記オレフィン系ポリマー層が、塗布により製膜されてなることを特徴とする請求項1〜請求項15のいずれか一項に記載の易接着シート。
【請求項17】
前記オレフィン系ポリマー層中の溶剤残留率が0.05質量%以下であることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の易接着シート。
【請求項18】
前記オレフィン系ポリマー層と前記基材フィルムが直接接触していることを特徴とする請求項1〜請求項17のいずれか一項に記載の易接着シート。
【請求項19】
前記オレフィン系ポリマー層と前記基材フィルムとの間に少なくとも1層のその他の層を含むことを特徴とする請求項1〜請求項17のいずれか一項に記載の易接着シート。
【請求項20】
前記その他の層の厚みが2μm未満であることを特徴とする請求項19に記載の易接着シート。
【請求項21】
前記その他の層の主成分が、ポリエステル系樹脂であることを特徴とする請求項19または請求項20に記載の易接着シート。
【請求項22】
前記基材フィルムの前記オレフィン系ポリマー層が配置されている側の面とは反対側の面に、フッ素系樹脂およびシリコーン−アクリル複合樹脂の少なくとも一方を含む耐候性層を有することを特徴とする請求項1〜請求項21のいずれか一項に記載の易接着シート。
【請求項23】
前記基材フィルムの前記着色層が配置されている側の面は、波長550nmにおける光線反射率が65%以上であることを特徴とする請求項1〜22のいずれか一項に記載の易接着シート。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか一項に記載の易接着シートを含むことを特徴とする太陽電池用保護シート。
【請求項25】
請求項1〜23のいずれか一項に記載の易接着シートまたは請求項24に記載の太陽電池用保護シートを含むことを特徴とする太陽電池用バックシート部材または太陽電池用バックシート。
【請求項26】
請求項1〜23のいずれか一項に記載の易接着シートまたは請求項24に記載の太陽電池用保護シートと、
該易接着シートまたは太陽電池用保護シートの少なくとも前記オレフィン系ポリマー層側の面に直接接着されており、かつ、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含むポリマー層と、
を有することを特徴とする太陽電池用積層体。
【請求項27】
太陽光が入射する側の透明性のフロント基板と、
太陽電池素子と、
前記太陽電池素子を封止する封止材と、
前記封止材の前記フロント基板とは反対側に配置され、前記封止材と接着する太陽電池用バックシートとを有し、
前記太陽電池用バックシートが請求項25に記載の太陽電池用バックシート部材または太陽電池用バックシートを含み、かつ、前記太陽電池用バックシート部材または太陽電池用バックシートの前記オレフィン系ポリマー層が前記封止材と直接接着していることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項28】
太陽光が入射する側の透明性のフロント基板と、
太陽電池素子と、
前記太陽電池素子を封止する封止材と、
前記封止材の前記フロント基板とは反対側に配置され、前記封止材と接着する太陽電池用バックシートとを有し、
前記太陽電池用バックシートおよび前記封止材として請求項26に記載の太陽電池用積層体を含むことを特徴とする太陽電池モジュール。

【図1】
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【公開番号】特開2012−197435(P2012−197435A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−50096(P2012−50096)
【出願日】平成24年3月7日(2012.3.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】