時間分解分光解析装置
【課題】熱、ガス、圧力をパルス化し刺激として試料に与えることによって、これらの刺激に基づく反応中間体の時間分解分光解析を実現する。
【解決手段】時間分解分光解析装置は、測定のための試料(32)を保持する試料室(30)と、試料室(30)を加熱する高周波誘導加熱装置(34、36)と、試料室(30)を収容する冷媒タンク(38)と、試料に加熱によって形成された反応中間体検出のためのパルスレーザー光を照射する分析パルスレーザー装置(40)と、高周波誘導加熱装置における高周波周期と分析パルスレーザー装置におけるパルス発振周期とを時差を設けて同期させるための制御装置(44)と、分析パルスレーザー装置による試料からの放射光を受光し検出する検出器(42)と、を備え、検出器による検出は、分析パルスレーザー装置における複数のパルスの積算に基づいて行う。
【解決手段】時間分解分光解析装置は、測定のための試料(32)を保持する試料室(30)と、試料室(30)を加熱する高周波誘導加熱装置(34、36)と、試料室(30)を収容する冷媒タンク(38)と、試料に加熱によって形成された反応中間体検出のためのパルスレーザー光を照射する分析パルスレーザー装置(40)と、高周波誘導加熱装置における高周波周期と分析パルスレーザー装置におけるパルス発振周期とを時差を設けて同期させるための制御装置(44)と、分析パルスレーザー装置による試料からの放射光を受光し検出する検出器(42)と、を備え、検出器による検出は、分析パルスレーザー装置における複数のパルスの積算に基づいて行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質に種々の刺激を与えることによって発生する化学変化を、短い時間で分割して観察するための時間分解分光解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
時間分解分光解析装置では、物質に光、熱、ガス、圧力、電磁場などの刺激を与えることによって励起された中間体を観測するために、刺激を与えた一定時間後に試料に分析用のレーザー光を照射し、試料からの放射光の変化を分光分析している。このような励起中間体の寿命は通常、フェムト秒あるいはマイクロ秒のオーダーであり、従ってその検出のためには、パルス幅がマイクロ秒からフェムト秒程度のパルスレーザーによる分析が必要である。例えば、特許文献1および2に開示された時間分解分光解析装置では、フェムト秒パルスレーザーを用いて分析を行っている。
【0003】
パルスレーザーはエネルギー密度が高いものの、検出器での検出時間は通常、最短でも数ミリ秒程度であるため、分析用のレーザーパルスを1個用いただけでは検出が困難である。従って、検出感度向上のために、通常、物質に繰り返して刺激を与え、さらに分析用のレーザーパルスを繰り返して照射し、その結果を検出器により積算して測定を行っている。ところがこの場合、励起中間体の存在時間がランダムであるため、積算検出を行っても中間体ピークが平均化されてしまい、積算結果が意味を持たなくなる。このような事態を避けるためには、刺激をパルス的に与えることにより反応中間体をパルス的に発生させ、そのタイミングに分析用パルスレーザーのタイミングを同期させる必要がある。
【0004】
このような刺激のパルス化、および刺激パルスと分析用パルスレーザーとの同期は、刺激を、分析用パルスレーザーと同様のパルスレーザー光で形成した場合には可能であるが、現状ではその他の刺激、例えば熱、ガス、圧力等をパルス的に付与することは難しく、従って、光励起中間体以外の中間体に対する時間分解測定は実現されていない。
【0005】
【特許文献1】特開2004−226224
【特許文献2】特開2001−356095
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、物質の時間分解分光解析を実現するためには、刺激をパルス化して形成することが必要である。さらに、分析パルスレーザーとのタイミング制御の必要性から、刺激パルスを電気的に発生させなければならない。ところが、熱、ガス、圧力等を時間的、空間的にパルスとして閉じ込めることは難しく、これらの刺激のパルス化は実現されていない。
【0007】
本発明は、従来の時間分解分光解析装置におけるかかる問題点に関してなされたもので、熱、ガス、圧力によるパルス状の刺激を分析用パルスレーザー光と同期が可能な形で発生させて、これらの刺激による時間分解分光解析を行うことが可能な装置を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の時間分解分光解析装置は、測定のための試料を保持する試料室と、前記試料室を加熱する高周波誘導加熱装置と、前記試料室を収容する冷媒タンクと、前記試料に前記加熱によって形成された反応中間体検出のためのパルスレーザー光を照射する分析パルスレーザー装置と、前記高周波誘導加熱装置における高周波周期と前記分析パルスレーザー装置におけるパルス発振周期とを時差を設けて同期させるための制御装置と、前記分析パルスレーザー装置による前記試料からの放射光を受光し検出する検出器と、を備えて構成され、さらに、前記検出を前記分析パルスレーザー装置における複数のパルスの積算に基づいて行うことを特徴とする。
【0009】
上記第1の装置では、高周波誘導加熱によって試料を周期的に加熱している。通常、発生した熱は試料に蓄積され、従って、試料の温度上昇と下降を周期的に実現することはできない。ところが上記装置では、試料室を冷媒タンクに浸漬した状態で高周波誘導加熱するため、1回の誘導加熱によって発生した熱は、即座に冷媒に吸収される。この結果、試料をパルス的に加熱すること、即ち熱パルスの形成が可能となる。この熱パルスは電気的に生成されるものであり、熱パルスと分析パルスレーザーとの同期制御が容易である。その結果、本装置において、熱刺激によって励起された中間体の積算検出が可能となる。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第2の時間分解分光解析装置は、測定のための試料を保持しかつペルチエ素子で構成される試料台と、前記試料台に保持された前記試料に赤外線パルスレーザー光を照射し加熱するための赤外線パルスレーザー装置と、前記試料に前記加熱によって形成された反応中間体検出のためのパルスレーザー光を照射する分析パルスレーザー装置と、前記赤外線パルスレーザー装置におけるパルスの発振周期と前記分析パルスレーザー装置におけるパルスの発振周期とを時差を設けて同期させるための制御装置と、前記分析パルスレーザー装置による前記試料からの放射光を受光し検出する検出器と、を備えて構成され、さらに、前記検出を前記分析パルスレーザー装置における複数のパルスの積算に基づいて行うことを特徴とする。
【0011】
上記第2の装置では、赤外線パルスレーザー光を周期的に照射することにより、試料を周期的に加熱することが可能である。通常、発生した熱は試料に蓄積され、従って、試料の温度上昇と下降を周期的に実現することはできない。ところが上記装置では、試料をペルチエ素子で構成される試料台に設置しているため、発生した熱は、ペルチエ素子による冷却によって即座に吸収される。この結果、試料をパルス的に加熱すること、即ち熱パルスの形成が可能となる。この熱パルスは赤外線パルスレーザー装置を電気的に駆動することにより生成されるものであり、熱パルスと分析パルスレーザーとの同期制御が容易である。その結果、本装置において、熱刺激によって励起された中間体の積算検出が可能となる。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第3の装置は、少なくとも試料保持部周辺を透光性の材料で形成したキャピラリー管と、前記キャピラリー管にガスを導入するための装置と、前記ガスを前記試料保持部の上流でパルス化するための高速回転スリット板と、前記パルス化されたガスの噴射に基づく刺激によって前記試料に形成された反応中間体を検出するために、前記試料にパルスレーザー光を照射する分析パルスレーザー装置と、前記高速回転スリット板の回転と前記分析パルスレーザー装置によるパルスの発振周期とを時差を設けて同期させるための制御装置と、前記分析パルスレーザー装置による前記試料からの放射光を受光し検出する検出器と、を備えて構成され、さらに、前記検出を前記分析パルスレーザー装置における複数のパルスの積算に基づいて行うことを特徴とする。
【0013】
また、上記第3の装置において、さらに、前記試料保持部の上流で前記ガスに紫外線レーザー光を照射し前記ガスを解離させてラジカルを形成するための紫外線レーザー装置を備えていても良い。
【0014】
上記第3の装置では、キャピラリー管を流れるガス流を、高速回転スリット板を介してパルス化することができる。高速回転スリット板の回転制御は、通常、モータ等によって行われるため、ガスパルスの生成と分析パルスレーザーとの間の同期制御が容易である。その結果、本装置において、ガスパルスによる刺激によって励起された中間体の積算検出が可能となる。なお、ガス流あるいはパルス化されたガス流に紫外線を照射すると、ガスが解離されてラジカルが形成される。そのため、第3の装置では、ラジカルのパルス化が可能となる。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の第4の時間分解分光解析装置は、レーザー光透過用の窓を有しその側面の少なくとも一部を金属材料で構成しかつ内部にガスを充填した試料室と、前記試料室の前記金属材料で構成した側面に前記試料室外部から接触し前記金属材料を冷却するためのペルチエ素子と、前記試料室内の前記金属材料に前記窓を介して赤外線パルスレーザー光を照射することにより前記金属材料を周期的に膨張収縮させて、前記試料室内に圧力パルスを形成するための赤外線パルスレーザー装置と、前記圧力パルスに基づく刺激によって前記試料に形成された反応中間体を検出するために、前記試料にパルスレーザー光を照射する分析パルスレーザー装置と、前記赤外線パルスレーザー装置におけるパルスの発振周期と前記分析パルスレーザー装置におけるパルスの発振周期とを時差を設けて同期させるための制御装置と、前記分析パルスレーザー装置による前記試料からの放射光を受光し検出する検出器と、を備えて構成され、さらに、前記検出を前記分析パルスレーザー装置における複数のパルスの積算に基づいて行うことを特徴とする。
【0016】
上記第4の装置によれば、試料室の一部を構成する金属材料を赤外線パルスレーザーによって周期的に加熱するとともに、この金属材料をペルチエ素子で常時冷却する構成をとることによって、金属材料が加熱による膨張と冷却による収縮を周期的に繰り返す。その結果、試料室内部に周期的な圧力変化、即ち、圧力パルスが発生する。この圧力パルスの生成は、赤外線パルスレーザー装置の駆動に同期しているため、赤外線パルスレーザー装置と分析パルスレーザー装置とを同期して駆動させることが容易である。その結果、本装置において、圧力パルスによる刺激によって励起された中間体の積算検出が可能となる。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の第5の時間分解分光解析装置は、少なくとも一方をピエゾ材料で形成した2枚の基板を、スペーサを介して対向配置することにより形成した試料室と、前記ピエゾ材料の基板に高周波電圧を印加することによって前記ピエゾ材料の基板を周期的に膨張、収縮させて前記試料室内に圧力パルスを形成するための電源装置と、前記圧力パルスに基づく刺激によって前記試料に形成された反応中間体を検出するために、前記試料にパルスレーザー光を照射する分析パルスレーザー装置と、前記電源装置における周波数と前記分析パルスレーザー装置におけるパルスの発振周期とを時差を設けて同期させるための制御装置と、前記分析パルスレーザー装置による前記試料からの放射光を受光し検出する検出器と、を備えて構成され、さらに、前記検出を前記分析パルスレーザー装置における複数のパルスの積算に基づいて行うことを特徴とする。
【0018】
上記第5の装置によれば、試料室の一部をピエゾ材料で構成し、このピエゾ材料を電流方向が周期的に変化する電源によって駆動するようにしている。そのため、ピエゾ材料は周期的に膨張と収縮を繰り返す。この周期的な膨張、収縮によって、試料室内部に周期的な圧力変化、即ち、圧力パルスが発生する。この圧力パルスの生成は、ピエゾ材料を駆動する電源の変化に基づいているため、電源電圧の変動周波数と分析パルスレーザーとを同期させることが容易である。その結果、本装置において、圧力パルスによる刺激によって励起された中間体の積算検出が可能となる。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の第6の装置は、試料にピンポイントでガスを噴射するためのガス噴出ノズルと、前記噴射したガスを吸引し排出するためのガス吸引ノズルと、前記噴射されたガスに紫外線パルスレーザー光を照射し、前記ガスを解離することによってパルス状のラジカルを形成するための紫外線パルスレーザー装置と、前記ラジカルに基づく刺激によって前記試料に形成された反応中間体を検出するために、前記試料にパルスレーザー光を照射する分析パルスレーザー装置と、前記紫外線パルスレーザー装置におけるパルスの発振周期と前記分析パルスレーザー装置におけるパルスの発振周期とを時差を設けて同期させるための制御装置と、前記分析パルスレーザー装置による前記試料からの放射光を受光し検出する検出器と、を備えて構成され、さらに、前記検出を前記分析パルスレーザー装置における複数のパルスの積算に基づいて行うことを特徴とする。
【0020】
さらに、上記第6の装置において、前記ガス噴出ノズルを原子間力顕微鏡における探針で構成し、試料上を走査させるようにしても良い。
【0021】
上記第6の装置によれば、ガス噴射ノズルによってガスをピンポイントで試料上に噴射する構成であるので、試料の形状によらず、ピンポイントの測定が可能である。また、噴射されたガスに紫外線パルスレーザーを照射することによってガスを解離させ、パルス状のラジカルを形成することができる。そのため、紫外線パルスレーザーと分析パルスレーザーとを同期させることにより、ラジカルパルスによって励起された中間体の積算検出が可能となる。なお、ガス噴射ノズルを原子間力顕微鏡における探針で構成し、試料上を走査することによって、中間体生成域の分布像を得ることができる。
【0022】
なお、上記各装置において、前記分析パルスレーザー装置によって形成されるパルスレーザーは、マイクロ秒からフェムト秒のオーダーのパルス幅を有するようにしても良い。さらに、前記検出器は、前記反応中間体によるラマンシフトを検出するようにしても良い。
【発明の効果】
【0023】
以上に説明したように、本発明の時間分解分光解析装置では、熱、ガス、圧力等を、分析パルスレーザー装置と同期が可能なようにパルス化することができるので、これらの刺激に伴う励起中間体の積算分析が可能となる。その結果、種々の刺激に対して感度の高い時間分解分光解析を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明を、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面において、同じ符号は同一または類似の構成要素を示す。
【0025】
本発明の各実施形態の説明の前に、まず、時間分解分光解析において、刺激をパルス化しかつ刺激パルスの生成を分析パルスレーザーと同期化する必要性について説明する。
【0026】
図1は、何らかの刺激によって形成された反応中間体に対して、1個の分析パルスレーザーを用いて測定を行う場合の測定タイミングを示している。図において、2は、何らかの刺激によって生成された反応中間体の量を時間軸に対して示した図であり、4は測定試料に照射する分析パルスレーザーの波形を示す。有機化合物の光化学反応の場合など、励起された中間体の寿命はフェムト秒からマイクロ秒のオーダーである。従って、反応中間体を検出するためには、反応中間体の生成に同期してその寿命と同じようなパルス幅を有する分析パルスレーザーを測定試料に照射する必要がある。このとき、分析パルスレーザー4のパルス幅が時間分解能を決定する。
【0027】
図1において、6は検出器における検出時間を示している。この検出時間は通常、最短でも数ミリ秒程度であるため、分析パルスレーザーのエネルギー密度が高くても、1個のパルスレーザーのみでは検出器による検出が困難となる。そこで、図2に示すように、分析パルスレーザー4を繰り返して照射し、積算検出を行うことで検出感度を向上させることが考えられる。しかしながら、図示するように、中間体2の存在時間がランダムなため、分析パルスレーザーによる積算検出を行うことによって中間体のピークが平均化され、強いピーク値を得ることができない。その結果、中間体検出が困難となる。
【0028】
従って、図3に示すように、反応中間体2の生成と、分析パルスレーザー4の発振とを同期させる必要がある。反応中間体2は、物質に刺激を与えた後一定時間後に生成されるため、結果的に、パルス状の刺激8を、図示するような時差制御を伴って分析パルスレーザー4の発振と同期させることによって、反応中間体2の生成と分析パルスレーザー4の生成が同期して行われるようになる。そのために、刺激8をパルス状に、しかも分析パルスレーザー4の生成と同期して生成する必要がある。これを実現するためには、光、熱、ガス、圧力等の刺激を電気的に発生させる必要があるが、光以外の刺激についてこのような発生は実現されていない。これは、熱、ガス、圧力等を、時間的、空間的にパルスとして閉じ込めることが難しいためである。
【0029】
図4は、本発明にかかる時間分解分光解析を行う装置の基本的な概略構成を示す図である。図4において、10は測定試料12を収容するチャンバー(試料室)、14はパルス状の刺激を生成するための励起源、16は分析用のパルスレーザーを生成するためのレーザー装置、20は光電子増倍管あるいはCCDなどによる検出器を示す。さらに、22は電子制御部であって、刺激パルスを生成する励起源14とレーザー装置16とを時差制御するものである。
【0030】
図5は、刺激を与えることによる反応中間体の生成とその消滅過程を示す図であり、図6は、刺激を与える前後での測定結果、即ち時間分解ラマンスペクトルを示す。図5において、24はエネルギーレベルを示し、矢印の方向にエネルギーレベルが高くなっている。E(G)は、物質が基底状態にある時のエネルギーレベルを示し、E(Ex)は、物質に刺激パルスを与えた場合に発生する反応中間体のエネルギーレベルを示す。図示するように、刺激パルス8による励起によって、一旦反応中間体が形成される(26)が、その後エネルギーを放出して基底状態に戻る(28)ことによって、消滅する。反応中間体が励起状態、即ちエネルギーレベルE(Ex)に留まる時間、即ち反応中間体の寿命は、光化学反応の場合フェムト秒からマイクロ秒のオーダーであり、この時間に同期して分析パルスレーザー4を物質に照射することにより、反応中間体の観測、例えばラマンシフトが観測される。
【0031】
図6の(a)は、試料を励起する以前の状態で分析パルスレーザーを照射し、それによって得られた時間分解ラマンスペクトルを示す。図において、ピークaは、試料が基底状態にある場合のラマンシフトを示している。図6の(b)は、試料に刺激を与え、励起状態とした時点で分析パルスレーザーを照射して得た時間分解ラマンスペクトルを示している。図(b)のピークaは基底状態のラマンシフトを示し、ピークbは反応中間体によるラマンシフトを示している。従って、ピークbを観測することによって、反応中間体の検出を行うことができる。なお、ピークbは反応中間体の消滅によって検出されなくなる。
【0032】
以下に、分析パルスレーザーと同期可能な刺激パルスの生成装置を備える本発明の各種実施形態について説明する。なお、以下の各実施形態において、時差制御とは、図3に示すような、刺激パルスと反応中間体の生成および分析パルスレーザーとの間の関係を意味している。また、中間反応体の検出についても、一例として、図5及び6に示した経過を観測するものと考えることができる。
【0033】
(1)熱パルスの生成
第1の実施形態
図7は、高周波加熱・瞬時放熱方式を利用した熱パルスの生成装置を伴う、本発明の第1の実施形態にかかる時間分解分光解析装置の概略構成を示す図である。図において、30は石英フタ付きの磁性金属試料容器であり、容器内に試料32を収納する。試料容器30の材質は、Fe、Co、Ni等の磁性金属である。試料容器30の外側周囲には誘導加熱コイル34が巻きつけられ、コイル34は高周波電源36に接続されている。試料容器30および誘導加熱コイル34は、冷却媒タンク38内に収容されている。冷却媒としては、液体窒素、液体ヘリウム、水等が有効である。40は分析パルスレーザーの生成装置、42は検出器、44はパルスレーザー装置40と高周波電源36とを時差制御によって駆動するための制御装置を示す。パルスレーザー装置40および検出器42の構成および作用については、図4に示す装置と基本的に同じである。
【0034】
図7の装置において、電源36を駆動して高周波電圧をコイル34に印加することにより、試料容器30の内部のみが誘導磁場により加熱される。加熱のタイミングは、基本的に、高周波電源36の周波数と一致するが、通常は容器内に熱が蓄積される。熱の蓄積を防ぎ、高周波の周波数と一致したタイミングで試料室内に熱パルスを生成するために、タンク38内の多量の冷却媒により瞬時放熱を行う。これにより、熱のパルス化が実現する。この熱パルスは、電気高周波に基づくものであるため、制御装置44において、高周波の周期とパルスレーザー装置40を時差制御すれば、時間分解による中間体測定が実現する。
【0035】
なお、図8の(a)および(b)は、高周波電源36による電圧印加方向の周期的な変化を説明するための図である。
【0036】
第2の実施形態
図9は本発明の第2の実施形態にかかる時間分解分光解析装置の概略構成を示す図である。本実施形態の装置では、赤外線パルスレーザーによって加熱し、瞬時に放熱することにより熱パルスを形成している。瞬時の放熱はペルチエ冷却素子を用いて行う。
【0037】
図9において、50は赤外線パルスレーザー装置、52は分析パルスレーザー装置、54は時差制御のための制御装置を示す。さらに、56は検出器、58はペルチエ冷却素子、60は試料、62はペルチエ冷却素子58に電力を供給するための電源を示す。赤外線パルスレーザー装置50は、例えば、Nd−YAGレーザー、Nd−ガラスレーザー等であって、1064nm赤外レーザーパルスを発生するものを用いる。赤外線は物質に照射されると分子振動を促し、光エネルギーを熱振動に変換する。従って、赤外パルスレーザーにより、熱をパルス的に印加することができる。さらに、レーザー光は光学レンズにより絞ることが可能なため、熱パルスを試料60上にピンポイントで与えることができる。試料中では熱伝導が緩慢なため、熱の蓄積が生じる。これを回避するために、ペルチエ素子58により瞬時の放熱を図っている。
【0038】
なお、図9の装置において、赤外線パルスレーザー装置50に変えて可視光パルスレーザー装置を使用することも可能である。この場合、レーザーとして、例えば、Nd−YAGレーザー、Nd−ガラスレーザー等における第2高調波(532nm)、He-Neレーザー632nm、Arレーザー488nmが用いられる。可視光パルスの場合、赤外線ほどではないが、その高いエネルギー密度ゆえに、分子振動を促し、光エネルギーを熱振動に変換する。これにより、熱をパルス的に試料に印加できる。もちろん光学レンズにより集光可能で、熱パルスをピンポイントで与えることができる。可視光レーザーを用いるため、試料室の窓材として、ガラス、石英ガラス等の使用が可能となる。水や液体中の試料に対しても、パルス的加熱が可能であり、測定環境制御の自由度が拡大する。この場合も、試料中では熱伝導が緩慢なため、熱の蓄積が生じる。これを回避するため、ペルチエ素子により瞬時の放熱を図る。
【0039】
(2)ガスパルスの生成
第3の実施形態
図10は本発明の第3の実施形態にかかる時間分解分光解析装置の概略構成を示す図である。本実施形態の装置では、高速回転スリットを利用してガスパルスを形成する。図において、70a、70bはSiO2等を材料とする光透過性のキャピラリー管であり、接合部にスリット72aを有する高速回転スリット板72が配置されている。なお、キャピラリー管70a、70bのすべてが光透過性でなくともよく、少なくとも試料を設置した部分で光透過性であれば良い。74は分析パルスレーザー装置、76は検出器を示す。分析パルスレーザー装置74と高速スリット板72の回転制御は、制御装置78によって時差制御されている。試料80はキャピラリー管70bの内部、即ち高速回転スリット板72の下流側に配置される。
【0040】
図11に高速回転スリット板72の一例を示す。スリット72aの数は、回転数にもよるが、必要に応じて、円周に沿って100〜1000個程度が設けられている。従って、高速回転スリット72を高速で回転させることによって、ガスがパルス化されてキャピラリー70bより出力される。高速回転スリット72の両側ではガスの圧力差を設けることによって、ガスパルスの発生を容易にする。即ち、キャピラリー管70aのガス導入側ではガス圧を高くし、キャピラリー管70bの出力側ではガス圧を低くする。これによって、試料80にガスをパルス的に導入することができるとともに、スリット板72の回転を電気的に制御することにより、分析パルスレーザーの発生とガスパルスの発生を時差制御することが可能である。
【0041】
なお、図10の装置において、キャピラリー70a内のガスあるいはキャピラリー70aに導入される以前のガスに紫外線を照射するための、紫外線レーザー装置82を設ければ、ガスを紫外線レーザーにより解離してラジカルを形成することができる。即ち、ガスが紫外線を受光することにより励起されて解離し、ラジカルが生成される。その結果、高速回転スリット板72を通過することによってラジカルのパルスが形成され、これが試料80に導入される。ラジカルパルスを使用すれば、その影響を中間反応体の測定によって検出することが可能となる。
【0042】
(3)圧力パルスの生成
第4の実施形態
図12は本発明の第4の実施形態にかかる時間分解分光解析装置の概略構成を示す図である。本実施形態では、赤外線パルスレーザー装置を利用して圧力のパルス化を行っている。図において、90は赤外線パルスレーザー装置、92は分析パルスレーザー装置、94は、赤外線パルスレーザー装置90と分析パルスレーザー装置92間の時差制御を行うための制御装置を示す。96は、密閉可能な比較的小さな試料室であり、内部に例えば空気、不活性ガスなどのガス98が充填されている。試料室96は、熱膨張収縮金属板100と熱膨張係数の小さい材料で構成された平板102およびスペーサ104で構成されている。スペーサ104のレーザー装置側には、レーザー光を透過するための石英窓が設けられている。106は試料、108は熱膨張収縮金属板100を冷却するためのペルチエ素子、110はペルチエ素子108を駆動するための電源を示す。また、試料室96は、支持部材112によってその周囲を支持されている。
【0043】
赤外線パルスレーザー装置90は、レーザー光として、例えばNd−YAGレーザー、Nd−ガラスレーザーの、1064nm赤外光パルスを出力するものを用いる。熱膨張収縮金属板100は熱膨張収縮係数の大きい金属を使用する。
【0044】
本装置では、赤外線パルスレーザー装置90によって試料室96内の熱膨張収縮金属板100に赤外線をパルス照射すると、金属板が膨張しあるいは収縮するために、試料室内の空間体積が変化し、結果として、試料室96内にパルス的な圧力変動が生じる。金属板100が加熱されると、試料106中では熱伝導が緩慢なため、熱の蓄積が生じる。これを回避するため、ペルチエ素子108により金属板100を瞬時に冷却し、放熱を図る。
【0045】
図12の(a)は、赤外線照射によって熱膨張収縮金属板100が膨張した状態を示し、図12の(b)は赤外線パルスの停止時、ペルチエ素子108による急冷によって熱膨張収縮金属板100が収縮した状態を示している。なお、図12(b)ではパルスレーザー装置および電源等を省略して示している。
【0046】
第5の実施形態
図13は、本発明の第5の実施形態にかかる時間分解分光解析装置の概略構成を示す図である。本実施形態の装置では、ピエゾ素子への通電によって生じる素子体積の膨張、収縮によって、圧力のパルス化を図っている。図において、120は分析パルスレーザー装置、122は対向する2枚の平板124、126を樹脂製のスペーサ128を介して対向配置することにより形成した試料室である。試料室122内は空気、不活性ガスなどで充填されている。試料室122の一方の平板124はピエゾ素子で構成している。130は、試料室122内に設置した試料である。スペーサ128のレーザー装置側にはダイヤモンド窓あるいはガラス窓が挿入されている。スペーサ128はリング状のスペーサであり、その材料はフッ素樹脂、シリコーン樹脂等を用いている。なお、134は、試料室122を支持するための支持部材である。
【0047】
本装置では、ピエゾ素子で構成される平板124に通電することにより、これを電気的に膨張収縮させている。この膨張収縮により樹脂性スペーサ128が伸び縮みし、その結果、試料室122の体積が変化する。これによって、パルス状の圧力が試料130に印加されることとなる。ピエゾ素子124を駆動するための交流電源132と分析パルスレーザー装置120とを、制御装置136によって時差制御することにより、圧力パルスと分析パルスレーザーとを同期させることが可能である。
【0048】
なお、図13の(a)は、ピエゾ素子124が膨張し、試料室122内の圧力が上昇した状態を示し、図13の(b)はピエゾ素子124が収縮し、試料室122内の圧力が低下した状態を示している。なお、ピエゾ素子124の膨張、収縮は、電流の通電方向に依存し、従って、電源132として交流電源を使用することによって、周期的な膨張、収縮が可能である。図13(b)では、パルスレーザー装置および電源等を省略して示している。
【0049】
(4)その他の実施形態
図14に、本発明の第6の実施形態にかかる時間分解分光解析装置の概略構成を示す。本実施形態の装置は、ラジカルのパルス化における試料形態選択の自由度拡大を目的としている。図において、140はガス噴射用のノズル細管であり、ガラス製のキャピラリーで構成されている。142はガス吸引、排出用のノズル細管であり、同様にガラス製のキャピラリーで構成されている。144は試料、146は紫外線パルスレーザー装置、148は分析パルスレーザー装置であり、紫外線パルスレーザー装置146と分析用パルスレーザー装置148は、制御装置150により時差制御されている。152は検出器である。
【0050】
本装置では、ガス噴射用のノズル細管140により、ガスを試料144上の測定点にピンポイントで連続的に照射し、紫外線パルスレーザー装置146をパルス駆動して測定点に照射する。紫外線レーザーをガスに照射すると、ガスが解離されラジカルが形成される。これによって、試料144上の測定点にラジカルパルスが形成される。形成されたラジカルパルスは、試料144を刺激し、反応中間体を形成する。従って、刺激、即ち紫外線レーザーの照射に対して一定の時差をおいて分析パルスレーザー装置148を駆動することにより、反応中間体を効率よく検出することができる。時差制御は制御装置150によって行われる。
【0051】
図10に示した第3の実施形態の装置では、パルス状のガス、あるいはラジカルガスは試料80の全体に照射されるのに対して、本装置ではガスをノズル細管140によって試料上の測定点にピンポイントで照射することができる。そのため、試料形状の選択の自由度が拡大する。さらに、噴射用のノズル細管140をAFM(原子間力顕微鏡)探針として用い、試料144の表面を走査(154)することにより、特定反応中間体の生成域マッピングも可能となる。
【0052】
図15の(a)は、ノズル細管140をAFM探針として用いることによって得られた、試料表面のトポグラフ像を示し、図(b)はガスを噴射しながら紫外線パルスレーザー装置および分析パルスレーザー装置を同期して駆動することによって得た、AFM画像を示す。図(b)の画像では、中間体生成域の分布が明瞭に現れている。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、種々の材料の時間分解分光解析に適用することができる。例えば、排ガス触媒の反応メカニズムと浄化性能、2次電池イオン移動メカニズムと導電性能の関係、などの解析に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】シングルパルスによる時間分解測定を説明するための図。
【図2】積算パルスによる時間分解測定を説明するための図。
【図3】刺激パルスと分析パルスの時差制御を説明するための図。
【図4】本発明にかかる装置の基本構造を示す図。
【図5】反応中間体の生成と消滅を説明するための図。
【図6】反応中間体による時間分解ラマンスペクトルを示す図。
【図7】第1の実施形態にかかる時間分解分光解析装置の構造を示す図。
【図8】誘導加熱を説明するための図。
【図9】第2の実施形態にかかる時間分解分光解析装置の構造を示す図。
【図10】第3の実施形態にかかる時間分解分光解析装置の構造を示す図。
【図11】高速回転スリット板の構造を示す図。
【図12】第4の実施形態にかかる時間分解分光解析装置の構造を示す図。
【図13】第5の実施形態にかかる時間分解分光解析装置の構造を示す図。
【図14】第6の実施形態にかかる時間分解分光解析装置の構造を示す図。
【図15】図14の噴射ノズルをAFM探針として用いて得た中間体生成域分布像を示す図。
【符号の説明】
【0055】
30 試料容器
32 試料
34 誘導加熱コイル
36 高周波電源
38 冷媒タンク
40 分析パルスレーザー装置
42 検出器
44 制御装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質に種々の刺激を与えることによって発生する化学変化を、短い時間で分割して観察するための時間分解分光解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
時間分解分光解析装置では、物質に光、熱、ガス、圧力、電磁場などの刺激を与えることによって励起された中間体を観測するために、刺激を与えた一定時間後に試料に分析用のレーザー光を照射し、試料からの放射光の変化を分光分析している。このような励起中間体の寿命は通常、フェムト秒あるいはマイクロ秒のオーダーであり、従ってその検出のためには、パルス幅がマイクロ秒からフェムト秒程度のパルスレーザーによる分析が必要である。例えば、特許文献1および2に開示された時間分解分光解析装置では、フェムト秒パルスレーザーを用いて分析を行っている。
【0003】
パルスレーザーはエネルギー密度が高いものの、検出器での検出時間は通常、最短でも数ミリ秒程度であるため、分析用のレーザーパルスを1個用いただけでは検出が困難である。従って、検出感度向上のために、通常、物質に繰り返して刺激を与え、さらに分析用のレーザーパルスを繰り返して照射し、その結果を検出器により積算して測定を行っている。ところがこの場合、励起中間体の存在時間がランダムであるため、積算検出を行っても中間体ピークが平均化されてしまい、積算結果が意味を持たなくなる。このような事態を避けるためには、刺激をパルス的に与えることにより反応中間体をパルス的に発生させ、そのタイミングに分析用パルスレーザーのタイミングを同期させる必要がある。
【0004】
このような刺激のパルス化、および刺激パルスと分析用パルスレーザーとの同期は、刺激を、分析用パルスレーザーと同様のパルスレーザー光で形成した場合には可能であるが、現状ではその他の刺激、例えば熱、ガス、圧力等をパルス的に付与することは難しく、従って、光励起中間体以外の中間体に対する時間分解測定は実現されていない。
【0005】
【特許文献1】特開2004−226224
【特許文献2】特開2001−356095
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、物質の時間分解分光解析を実現するためには、刺激をパルス化して形成することが必要である。さらに、分析パルスレーザーとのタイミング制御の必要性から、刺激パルスを電気的に発生させなければならない。ところが、熱、ガス、圧力等を時間的、空間的にパルスとして閉じ込めることは難しく、これらの刺激のパルス化は実現されていない。
【0007】
本発明は、従来の時間分解分光解析装置におけるかかる問題点に関してなされたもので、熱、ガス、圧力によるパルス状の刺激を分析用パルスレーザー光と同期が可能な形で発生させて、これらの刺激による時間分解分光解析を行うことが可能な装置を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の時間分解分光解析装置は、測定のための試料を保持する試料室と、前記試料室を加熱する高周波誘導加熱装置と、前記試料室を収容する冷媒タンクと、前記試料に前記加熱によって形成された反応中間体検出のためのパルスレーザー光を照射する分析パルスレーザー装置と、前記高周波誘導加熱装置における高周波周期と前記分析パルスレーザー装置におけるパルス発振周期とを時差を設けて同期させるための制御装置と、前記分析パルスレーザー装置による前記試料からの放射光を受光し検出する検出器と、を備えて構成され、さらに、前記検出を前記分析パルスレーザー装置における複数のパルスの積算に基づいて行うことを特徴とする。
【0009】
上記第1の装置では、高周波誘導加熱によって試料を周期的に加熱している。通常、発生した熱は試料に蓄積され、従って、試料の温度上昇と下降を周期的に実現することはできない。ところが上記装置では、試料室を冷媒タンクに浸漬した状態で高周波誘導加熱するため、1回の誘導加熱によって発生した熱は、即座に冷媒に吸収される。この結果、試料をパルス的に加熱すること、即ち熱パルスの形成が可能となる。この熱パルスは電気的に生成されるものであり、熱パルスと分析パルスレーザーとの同期制御が容易である。その結果、本装置において、熱刺激によって励起された中間体の積算検出が可能となる。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第2の時間分解分光解析装置は、測定のための試料を保持しかつペルチエ素子で構成される試料台と、前記試料台に保持された前記試料に赤外線パルスレーザー光を照射し加熱するための赤外線パルスレーザー装置と、前記試料に前記加熱によって形成された反応中間体検出のためのパルスレーザー光を照射する分析パルスレーザー装置と、前記赤外線パルスレーザー装置におけるパルスの発振周期と前記分析パルスレーザー装置におけるパルスの発振周期とを時差を設けて同期させるための制御装置と、前記分析パルスレーザー装置による前記試料からの放射光を受光し検出する検出器と、を備えて構成され、さらに、前記検出を前記分析パルスレーザー装置における複数のパルスの積算に基づいて行うことを特徴とする。
【0011】
上記第2の装置では、赤外線パルスレーザー光を周期的に照射することにより、試料を周期的に加熱することが可能である。通常、発生した熱は試料に蓄積され、従って、試料の温度上昇と下降を周期的に実現することはできない。ところが上記装置では、試料をペルチエ素子で構成される試料台に設置しているため、発生した熱は、ペルチエ素子による冷却によって即座に吸収される。この結果、試料をパルス的に加熱すること、即ち熱パルスの形成が可能となる。この熱パルスは赤外線パルスレーザー装置を電気的に駆動することにより生成されるものであり、熱パルスと分析パルスレーザーとの同期制御が容易である。その結果、本装置において、熱刺激によって励起された中間体の積算検出が可能となる。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第3の装置は、少なくとも試料保持部周辺を透光性の材料で形成したキャピラリー管と、前記キャピラリー管にガスを導入するための装置と、前記ガスを前記試料保持部の上流でパルス化するための高速回転スリット板と、前記パルス化されたガスの噴射に基づく刺激によって前記試料に形成された反応中間体を検出するために、前記試料にパルスレーザー光を照射する分析パルスレーザー装置と、前記高速回転スリット板の回転と前記分析パルスレーザー装置によるパルスの発振周期とを時差を設けて同期させるための制御装置と、前記分析パルスレーザー装置による前記試料からの放射光を受光し検出する検出器と、を備えて構成され、さらに、前記検出を前記分析パルスレーザー装置における複数のパルスの積算に基づいて行うことを特徴とする。
【0013】
また、上記第3の装置において、さらに、前記試料保持部の上流で前記ガスに紫外線レーザー光を照射し前記ガスを解離させてラジカルを形成するための紫外線レーザー装置を備えていても良い。
【0014】
上記第3の装置では、キャピラリー管を流れるガス流を、高速回転スリット板を介してパルス化することができる。高速回転スリット板の回転制御は、通常、モータ等によって行われるため、ガスパルスの生成と分析パルスレーザーとの間の同期制御が容易である。その結果、本装置において、ガスパルスによる刺激によって励起された中間体の積算検出が可能となる。なお、ガス流あるいはパルス化されたガス流に紫外線を照射すると、ガスが解離されてラジカルが形成される。そのため、第3の装置では、ラジカルのパルス化が可能となる。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の第4の時間分解分光解析装置は、レーザー光透過用の窓を有しその側面の少なくとも一部を金属材料で構成しかつ内部にガスを充填した試料室と、前記試料室の前記金属材料で構成した側面に前記試料室外部から接触し前記金属材料を冷却するためのペルチエ素子と、前記試料室内の前記金属材料に前記窓を介して赤外線パルスレーザー光を照射することにより前記金属材料を周期的に膨張収縮させて、前記試料室内に圧力パルスを形成するための赤外線パルスレーザー装置と、前記圧力パルスに基づく刺激によって前記試料に形成された反応中間体を検出するために、前記試料にパルスレーザー光を照射する分析パルスレーザー装置と、前記赤外線パルスレーザー装置におけるパルスの発振周期と前記分析パルスレーザー装置におけるパルスの発振周期とを時差を設けて同期させるための制御装置と、前記分析パルスレーザー装置による前記試料からの放射光を受光し検出する検出器と、を備えて構成され、さらに、前記検出を前記分析パルスレーザー装置における複数のパルスの積算に基づいて行うことを特徴とする。
【0016】
上記第4の装置によれば、試料室の一部を構成する金属材料を赤外線パルスレーザーによって周期的に加熱するとともに、この金属材料をペルチエ素子で常時冷却する構成をとることによって、金属材料が加熱による膨張と冷却による収縮を周期的に繰り返す。その結果、試料室内部に周期的な圧力変化、即ち、圧力パルスが発生する。この圧力パルスの生成は、赤外線パルスレーザー装置の駆動に同期しているため、赤外線パルスレーザー装置と分析パルスレーザー装置とを同期して駆動させることが容易である。その結果、本装置において、圧力パルスによる刺激によって励起された中間体の積算検出が可能となる。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の第5の時間分解分光解析装置は、少なくとも一方をピエゾ材料で形成した2枚の基板を、スペーサを介して対向配置することにより形成した試料室と、前記ピエゾ材料の基板に高周波電圧を印加することによって前記ピエゾ材料の基板を周期的に膨張、収縮させて前記試料室内に圧力パルスを形成するための電源装置と、前記圧力パルスに基づく刺激によって前記試料に形成された反応中間体を検出するために、前記試料にパルスレーザー光を照射する分析パルスレーザー装置と、前記電源装置における周波数と前記分析パルスレーザー装置におけるパルスの発振周期とを時差を設けて同期させるための制御装置と、前記分析パルスレーザー装置による前記試料からの放射光を受光し検出する検出器と、を備えて構成され、さらに、前記検出を前記分析パルスレーザー装置における複数のパルスの積算に基づいて行うことを特徴とする。
【0018】
上記第5の装置によれば、試料室の一部をピエゾ材料で構成し、このピエゾ材料を電流方向が周期的に変化する電源によって駆動するようにしている。そのため、ピエゾ材料は周期的に膨張と収縮を繰り返す。この周期的な膨張、収縮によって、試料室内部に周期的な圧力変化、即ち、圧力パルスが発生する。この圧力パルスの生成は、ピエゾ材料を駆動する電源の変化に基づいているため、電源電圧の変動周波数と分析パルスレーザーとを同期させることが容易である。その結果、本装置において、圧力パルスによる刺激によって励起された中間体の積算検出が可能となる。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の第6の装置は、試料にピンポイントでガスを噴射するためのガス噴出ノズルと、前記噴射したガスを吸引し排出するためのガス吸引ノズルと、前記噴射されたガスに紫外線パルスレーザー光を照射し、前記ガスを解離することによってパルス状のラジカルを形成するための紫外線パルスレーザー装置と、前記ラジカルに基づく刺激によって前記試料に形成された反応中間体を検出するために、前記試料にパルスレーザー光を照射する分析パルスレーザー装置と、前記紫外線パルスレーザー装置におけるパルスの発振周期と前記分析パルスレーザー装置におけるパルスの発振周期とを時差を設けて同期させるための制御装置と、前記分析パルスレーザー装置による前記試料からの放射光を受光し検出する検出器と、を備えて構成され、さらに、前記検出を前記分析パルスレーザー装置における複数のパルスの積算に基づいて行うことを特徴とする。
【0020】
さらに、上記第6の装置において、前記ガス噴出ノズルを原子間力顕微鏡における探針で構成し、試料上を走査させるようにしても良い。
【0021】
上記第6の装置によれば、ガス噴射ノズルによってガスをピンポイントで試料上に噴射する構成であるので、試料の形状によらず、ピンポイントの測定が可能である。また、噴射されたガスに紫外線パルスレーザーを照射することによってガスを解離させ、パルス状のラジカルを形成することができる。そのため、紫外線パルスレーザーと分析パルスレーザーとを同期させることにより、ラジカルパルスによって励起された中間体の積算検出が可能となる。なお、ガス噴射ノズルを原子間力顕微鏡における探針で構成し、試料上を走査することによって、中間体生成域の分布像を得ることができる。
【0022】
なお、上記各装置において、前記分析パルスレーザー装置によって形成されるパルスレーザーは、マイクロ秒からフェムト秒のオーダーのパルス幅を有するようにしても良い。さらに、前記検出器は、前記反応中間体によるラマンシフトを検出するようにしても良い。
【発明の効果】
【0023】
以上に説明したように、本発明の時間分解分光解析装置では、熱、ガス、圧力等を、分析パルスレーザー装置と同期が可能なようにパルス化することができるので、これらの刺激に伴う励起中間体の積算分析が可能となる。その結果、種々の刺激に対して感度の高い時間分解分光解析を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明を、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面において、同じ符号は同一または類似の構成要素を示す。
【0025】
本発明の各実施形態の説明の前に、まず、時間分解分光解析において、刺激をパルス化しかつ刺激パルスの生成を分析パルスレーザーと同期化する必要性について説明する。
【0026】
図1は、何らかの刺激によって形成された反応中間体に対して、1個の分析パルスレーザーを用いて測定を行う場合の測定タイミングを示している。図において、2は、何らかの刺激によって生成された反応中間体の量を時間軸に対して示した図であり、4は測定試料に照射する分析パルスレーザーの波形を示す。有機化合物の光化学反応の場合など、励起された中間体の寿命はフェムト秒からマイクロ秒のオーダーである。従って、反応中間体を検出するためには、反応中間体の生成に同期してその寿命と同じようなパルス幅を有する分析パルスレーザーを測定試料に照射する必要がある。このとき、分析パルスレーザー4のパルス幅が時間分解能を決定する。
【0027】
図1において、6は検出器における検出時間を示している。この検出時間は通常、最短でも数ミリ秒程度であるため、分析パルスレーザーのエネルギー密度が高くても、1個のパルスレーザーのみでは検出器による検出が困難となる。そこで、図2に示すように、分析パルスレーザー4を繰り返して照射し、積算検出を行うことで検出感度を向上させることが考えられる。しかしながら、図示するように、中間体2の存在時間がランダムなため、分析パルスレーザーによる積算検出を行うことによって中間体のピークが平均化され、強いピーク値を得ることができない。その結果、中間体検出が困難となる。
【0028】
従って、図3に示すように、反応中間体2の生成と、分析パルスレーザー4の発振とを同期させる必要がある。反応中間体2は、物質に刺激を与えた後一定時間後に生成されるため、結果的に、パルス状の刺激8を、図示するような時差制御を伴って分析パルスレーザー4の発振と同期させることによって、反応中間体2の生成と分析パルスレーザー4の生成が同期して行われるようになる。そのために、刺激8をパルス状に、しかも分析パルスレーザー4の生成と同期して生成する必要がある。これを実現するためには、光、熱、ガス、圧力等の刺激を電気的に発生させる必要があるが、光以外の刺激についてこのような発生は実現されていない。これは、熱、ガス、圧力等を、時間的、空間的にパルスとして閉じ込めることが難しいためである。
【0029】
図4は、本発明にかかる時間分解分光解析を行う装置の基本的な概略構成を示す図である。図4において、10は測定試料12を収容するチャンバー(試料室)、14はパルス状の刺激を生成するための励起源、16は分析用のパルスレーザーを生成するためのレーザー装置、20は光電子増倍管あるいはCCDなどによる検出器を示す。さらに、22は電子制御部であって、刺激パルスを生成する励起源14とレーザー装置16とを時差制御するものである。
【0030】
図5は、刺激を与えることによる反応中間体の生成とその消滅過程を示す図であり、図6は、刺激を与える前後での測定結果、即ち時間分解ラマンスペクトルを示す。図5において、24はエネルギーレベルを示し、矢印の方向にエネルギーレベルが高くなっている。E(G)は、物質が基底状態にある時のエネルギーレベルを示し、E(Ex)は、物質に刺激パルスを与えた場合に発生する反応中間体のエネルギーレベルを示す。図示するように、刺激パルス8による励起によって、一旦反応中間体が形成される(26)が、その後エネルギーを放出して基底状態に戻る(28)ことによって、消滅する。反応中間体が励起状態、即ちエネルギーレベルE(Ex)に留まる時間、即ち反応中間体の寿命は、光化学反応の場合フェムト秒からマイクロ秒のオーダーであり、この時間に同期して分析パルスレーザー4を物質に照射することにより、反応中間体の観測、例えばラマンシフトが観測される。
【0031】
図6の(a)は、試料を励起する以前の状態で分析パルスレーザーを照射し、それによって得られた時間分解ラマンスペクトルを示す。図において、ピークaは、試料が基底状態にある場合のラマンシフトを示している。図6の(b)は、試料に刺激を与え、励起状態とした時点で分析パルスレーザーを照射して得た時間分解ラマンスペクトルを示している。図(b)のピークaは基底状態のラマンシフトを示し、ピークbは反応中間体によるラマンシフトを示している。従って、ピークbを観測することによって、反応中間体の検出を行うことができる。なお、ピークbは反応中間体の消滅によって検出されなくなる。
【0032】
以下に、分析パルスレーザーと同期可能な刺激パルスの生成装置を備える本発明の各種実施形態について説明する。なお、以下の各実施形態において、時差制御とは、図3に示すような、刺激パルスと反応中間体の生成および分析パルスレーザーとの間の関係を意味している。また、中間反応体の検出についても、一例として、図5及び6に示した経過を観測するものと考えることができる。
【0033】
(1)熱パルスの生成
第1の実施形態
図7は、高周波加熱・瞬時放熱方式を利用した熱パルスの生成装置を伴う、本発明の第1の実施形態にかかる時間分解分光解析装置の概略構成を示す図である。図において、30は石英フタ付きの磁性金属試料容器であり、容器内に試料32を収納する。試料容器30の材質は、Fe、Co、Ni等の磁性金属である。試料容器30の外側周囲には誘導加熱コイル34が巻きつけられ、コイル34は高周波電源36に接続されている。試料容器30および誘導加熱コイル34は、冷却媒タンク38内に収容されている。冷却媒としては、液体窒素、液体ヘリウム、水等が有効である。40は分析パルスレーザーの生成装置、42は検出器、44はパルスレーザー装置40と高周波電源36とを時差制御によって駆動するための制御装置を示す。パルスレーザー装置40および検出器42の構成および作用については、図4に示す装置と基本的に同じである。
【0034】
図7の装置において、電源36を駆動して高周波電圧をコイル34に印加することにより、試料容器30の内部のみが誘導磁場により加熱される。加熱のタイミングは、基本的に、高周波電源36の周波数と一致するが、通常は容器内に熱が蓄積される。熱の蓄積を防ぎ、高周波の周波数と一致したタイミングで試料室内に熱パルスを生成するために、タンク38内の多量の冷却媒により瞬時放熱を行う。これにより、熱のパルス化が実現する。この熱パルスは、電気高周波に基づくものであるため、制御装置44において、高周波の周期とパルスレーザー装置40を時差制御すれば、時間分解による中間体測定が実現する。
【0035】
なお、図8の(a)および(b)は、高周波電源36による電圧印加方向の周期的な変化を説明するための図である。
【0036】
第2の実施形態
図9は本発明の第2の実施形態にかかる時間分解分光解析装置の概略構成を示す図である。本実施形態の装置では、赤外線パルスレーザーによって加熱し、瞬時に放熱することにより熱パルスを形成している。瞬時の放熱はペルチエ冷却素子を用いて行う。
【0037】
図9において、50は赤外線パルスレーザー装置、52は分析パルスレーザー装置、54は時差制御のための制御装置を示す。さらに、56は検出器、58はペルチエ冷却素子、60は試料、62はペルチエ冷却素子58に電力を供給するための電源を示す。赤外線パルスレーザー装置50は、例えば、Nd−YAGレーザー、Nd−ガラスレーザー等であって、1064nm赤外レーザーパルスを発生するものを用いる。赤外線は物質に照射されると分子振動を促し、光エネルギーを熱振動に変換する。従って、赤外パルスレーザーにより、熱をパルス的に印加することができる。さらに、レーザー光は光学レンズにより絞ることが可能なため、熱パルスを試料60上にピンポイントで与えることができる。試料中では熱伝導が緩慢なため、熱の蓄積が生じる。これを回避するために、ペルチエ素子58により瞬時の放熱を図っている。
【0038】
なお、図9の装置において、赤外線パルスレーザー装置50に変えて可視光パルスレーザー装置を使用することも可能である。この場合、レーザーとして、例えば、Nd−YAGレーザー、Nd−ガラスレーザー等における第2高調波(532nm)、He-Neレーザー632nm、Arレーザー488nmが用いられる。可視光パルスの場合、赤外線ほどではないが、その高いエネルギー密度ゆえに、分子振動を促し、光エネルギーを熱振動に変換する。これにより、熱をパルス的に試料に印加できる。もちろん光学レンズにより集光可能で、熱パルスをピンポイントで与えることができる。可視光レーザーを用いるため、試料室の窓材として、ガラス、石英ガラス等の使用が可能となる。水や液体中の試料に対しても、パルス的加熱が可能であり、測定環境制御の自由度が拡大する。この場合も、試料中では熱伝導が緩慢なため、熱の蓄積が生じる。これを回避するため、ペルチエ素子により瞬時の放熱を図る。
【0039】
(2)ガスパルスの生成
第3の実施形態
図10は本発明の第3の実施形態にかかる時間分解分光解析装置の概略構成を示す図である。本実施形態の装置では、高速回転スリットを利用してガスパルスを形成する。図において、70a、70bはSiO2等を材料とする光透過性のキャピラリー管であり、接合部にスリット72aを有する高速回転スリット板72が配置されている。なお、キャピラリー管70a、70bのすべてが光透過性でなくともよく、少なくとも試料を設置した部分で光透過性であれば良い。74は分析パルスレーザー装置、76は検出器を示す。分析パルスレーザー装置74と高速スリット板72の回転制御は、制御装置78によって時差制御されている。試料80はキャピラリー管70bの内部、即ち高速回転スリット板72の下流側に配置される。
【0040】
図11に高速回転スリット板72の一例を示す。スリット72aの数は、回転数にもよるが、必要に応じて、円周に沿って100〜1000個程度が設けられている。従って、高速回転スリット72を高速で回転させることによって、ガスがパルス化されてキャピラリー70bより出力される。高速回転スリット72の両側ではガスの圧力差を設けることによって、ガスパルスの発生を容易にする。即ち、キャピラリー管70aのガス導入側ではガス圧を高くし、キャピラリー管70bの出力側ではガス圧を低くする。これによって、試料80にガスをパルス的に導入することができるとともに、スリット板72の回転を電気的に制御することにより、分析パルスレーザーの発生とガスパルスの発生を時差制御することが可能である。
【0041】
なお、図10の装置において、キャピラリー70a内のガスあるいはキャピラリー70aに導入される以前のガスに紫外線を照射するための、紫外線レーザー装置82を設ければ、ガスを紫外線レーザーにより解離してラジカルを形成することができる。即ち、ガスが紫外線を受光することにより励起されて解離し、ラジカルが生成される。その結果、高速回転スリット板72を通過することによってラジカルのパルスが形成され、これが試料80に導入される。ラジカルパルスを使用すれば、その影響を中間反応体の測定によって検出することが可能となる。
【0042】
(3)圧力パルスの生成
第4の実施形態
図12は本発明の第4の実施形態にかかる時間分解分光解析装置の概略構成を示す図である。本実施形態では、赤外線パルスレーザー装置を利用して圧力のパルス化を行っている。図において、90は赤外線パルスレーザー装置、92は分析パルスレーザー装置、94は、赤外線パルスレーザー装置90と分析パルスレーザー装置92間の時差制御を行うための制御装置を示す。96は、密閉可能な比較的小さな試料室であり、内部に例えば空気、不活性ガスなどのガス98が充填されている。試料室96は、熱膨張収縮金属板100と熱膨張係数の小さい材料で構成された平板102およびスペーサ104で構成されている。スペーサ104のレーザー装置側には、レーザー光を透過するための石英窓が設けられている。106は試料、108は熱膨張収縮金属板100を冷却するためのペルチエ素子、110はペルチエ素子108を駆動するための電源を示す。また、試料室96は、支持部材112によってその周囲を支持されている。
【0043】
赤外線パルスレーザー装置90は、レーザー光として、例えばNd−YAGレーザー、Nd−ガラスレーザーの、1064nm赤外光パルスを出力するものを用いる。熱膨張収縮金属板100は熱膨張収縮係数の大きい金属を使用する。
【0044】
本装置では、赤外線パルスレーザー装置90によって試料室96内の熱膨張収縮金属板100に赤外線をパルス照射すると、金属板が膨張しあるいは収縮するために、試料室内の空間体積が変化し、結果として、試料室96内にパルス的な圧力変動が生じる。金属板100が加熱されると、試料106中では熱伝導が緩慢なため、熱の蓄積が生じる。これを回避するため、ペルチエ素子108により金属板100を瞬時に冷却し、放熱を図る。
【0045】
図12の(a)は、赤外線照射によって熱膨張収縮金属板100が膨張した状態を示し、図12の(b)は赤外線パルスの停止時、ペルチエ素子108による急冷によって熱膨張収縮金属板100が収縮した状態を示している。なお、図12(b)ではパルスレーザー装置および電源等を省略して示している。
【0046】
第5の実施形態
図13は、本発明の第5の実施形態にかかる時間分解分光解析装置の概略構成を示す図である。本実施形態の装置では、ピエゾ素子への通電によって生じる素子体積の膨張、収縮によって、圧力のパルス化を図っている。図において、120は分析パルスレーザー装置、122は対向する2枚の平板124、126を樹脂製のスペーサ128を介して対向配置することにより形成した試料室である。試料室122内は空気、不活性ガスなどで充填されている。試料室122の一方の平板124はピエゾ素子で構成している。130は、試料室122内に設置した試料である。スペーサ128のレーザー装置側にはダイヤモンド窓あるいはガラス窓が挿入されている。スペーサ128はリング状のスペーサであり、その材料はフッ素樹脂、シリコーン樹脂等を用いている。なお、134は、試料室122を支持するための支持部材である。
【0047】
本装置では、ピエゾ素子で構成される平板124に通電することにより、これを電気的に膨張収縮させている。この膨張収縮により樹脂性スペーサ128が伸び縮みし、その結果、試料室122の体積が変化する。これによって、パルス状の圧力が試料130に印加されることとなる。ピエゾ素子124を駆動するための交流電源132と分析パルスレーザー装置120とを、制御装置136によって時差制御することにより、圧力パルスと分析パルスレーザーとを同期させることが可能である。
【0048】
なお、図13の(a)は、ピエゾ素子124が膨張し、試料室122内の圧力が上昇した状態を示し、図13の(b)はピエゾ素子124が収縮し、試料室122内の圧力が低下した状態を示している。なお、ピエゾ素子124の膨張、収縮は、電流の通電方向に依存し、従って、電源132として交流電源を使用することによって、周期的な膨張、収縮が可能である。図13(b)では、パルスレーザー装置および電源等を省略して示している。
【0049】
(4)その他の実施形態
図14に、本発明の第6の実施形態にかかる時間分解分光解析装置の概略構成を示す。本実施形態の装置は、ラジカルのパルス化における試料形態選択の自由度拡大を目的としている。図において、140はガス噴射用のノズル細管であり、ガラス製のキャピラリーで構成されている。142はガス吸引、排出用のノズル細管であり、同様にガラス製のキャピラリーで構成されている。144は試料、146は紫外線パルスレーザー装置、148は分析パルスレーザー装置であり、紫外線パルスレーザー装置146と分析用パルスレーザー装置148は、制御装置150により時差制御されている。152は検出器である。
【0050】
本装置では、ガス噴射用のノズル細管140により、ガスを試料144上の測定点にピンポイントで連続的に照射し、紫外線パルスレーザー装置146をパルス駆動して測定点に照射する。紫外線レーザーをガスに照射すると、ガスが解離されラジカルが形成される。これによって、試料144上の測定点にラジカルパルスが形成される。形成されたラジカルパルスは、試料144を刺激し、反応中間体を形成する。従って、刺激、即ち紫外線レーザーの照射に対して一定の時差をおいて分析パルスレーザー装置148を駆動することにより、反応中間体を効率よく検出することができる。時差制御は制御装置150によって行われる。
【0051】
図10に示した第3の実施形態の装置では、パルス状のガス、あるいはラジカルガスは試料80の全体に照射されるのに対して、本装置ではガスをノズル細管140によって試料上の測定点にピンポイントで照射することができる。そのため、試料形状の選択の自由度が拡大する。さらに、噴射用のノズル細管140をAFM(原子間力顕微鏡)探針として用い、試料144の表面を走査(154)することにより、特定反応中間体の生成域マッピングも可能となる。
【0052】
図15の(a)は、ノズル細管140をAFM探針として用いることによって得られた、試料表面のトポグラフ像を示し、図(b)はガスを噴射しながら紫外線パルスレーザー装置および分析パルスレーザー装置を同期して駆動することによって得た、AFM画像を示す。図(b)の画像では、中間体生成域の分布が明瞭に現れている。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、種々の材料の時間分解分光解析に適用することができる。例えば、排ガス触媒の反応メカニズムと浄化性能、2次電池イオン移動メカニズムと導電性能の関係、などの解析に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】シングルパルスによる時間分解測定を説明するための図。
【図2】積算パルスによる時間分解測定を説明するための図。
【図3】刺激パルスと分析パルスの時差制御を説明するための図。
【図4】本発明にかかる装置の基本構造を示す図。
【図5】反応中間体の生成と消滅を説明するための図。
【図6】反応中間体による時間分解ラマンスペクトルを示す図。
【図7】第1の実施形態にかかる時間分解分光解析装置の構造を示す図。
【図8】誘導加熱を説明するための図。
【図9】第2の実施形態にかかる時間分解分光解析装置の構造を示す図。
【図10】第3の実施形態にかかる時間分解分光解析装置の構造を示す図。
【図11】高速回転スリット板の構造を示す図。
【図12】第4の実施形態にかかる時間分解分光解析装置の構造を示す図。
【図13】第5の実施形態にかかる時間分解分光解析装置の構造を示す図。
【図14】第6の実施形態にかかる時間分解分光解析装置の構造を示す図。
【図15】図14の噴射ノズルをAFM探針として用いて得た中間体生成域分布像を示す図。
【符号の説明】
【0055】
30 試料容器
32 試料
34 誘導加熱コイル
36 高周波電源
38 冷媒タンク
40 分析パルスレーザー装置
42 検出器
44 制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定のための試料を保持する試料室と、
前記試料室を加熱する高周波誘導加熱装置と、
前記試料室を収容する冷媒タンクと、
前記試料に前記加熱によって形成された反応中間体検出のためのパルスレーザー光を照射する分析パルスレーザー装置と、
前記高周波誘導加熱装置における高周波周期と前記分析パルスレーザー装置におけるパルス発振周期とを時差を設けて同期させるための制御装置と、
前記分析パルスレーザー装置による前記試料からの放射光を受光し検出する検出器と、を備え、
前記検出は、前記分析パルスレーザー装置における複数のパルスの積算に基づいてなされることを特徴とする、時間分解分光解析装置。
【請求項2】
測定のための試料を保持しかつペルチエ素子で構成される試料台と、
前記試料台に保持された前記試料に赤外線パルスレーザー光を照射し加熱するための赤外線パルスレーザー装置と、
前記試料に前記加熱によって形成された反応中間体検出のためのパルスレーザー光を照射する分析パルスレーザー装置と、
前記赤外線パルスレーザー装置におけるパルスの発振周期と前記分析パルスレーザー装置におけるパルスの発振周期とを時差を設けて同期させるための制御装置と、
前記分析パルスレーザー装置による前記試料からの放射光を受光し検出する検出器と、を備え、
前記検出は、前記分析パルスレーザー装置における複数のパルスの積算に基づいてなされることを特徴とする、時間分解分光解析装置。
【請求項3】
少なくとも試料保持部周辺を透光性の材料で形成したキャピラリー管と、
前記キャピラリー管にガスを導入するための装置と、
前記ガスを前記試料保持部の上流でパルス化するための高速回転スリット板と、
前記パルス化されたガスの噴射に基づく刺激によって前記試料に形成された反応中間体を検出するために、前記試料にパルスレーザー光を照射する分析パルスレーザー装置と、
前記高速回転スリット板の回転と前記分析パルスレーザー装置によるパルスの発振周期とを時差を設けて同期させるための制御装置と、
前記分析パルスレーザー装置による前記試料からの放射光を受光し検出する検出器と、を備え、
前記検出は、前記分析パルスレーザー装置における複数のパルスの積算に基づいてなされることを特徴とする、時間分解分光解析装置。
【請求項4】
請求項3に記載の時間分解分光解析装置において、
さらに、前記試料保持部の上流で前記ガスに紫外線レーザー光を照射し前記ガスを解離させてラジカルを形成するための紫外線レーザー装置を備えることを特徴とする、時間分解分光解析装置。
【請求項5】
レーザー光透過用の窓を有しその側面の少なくとも一部を金属材料で構成しかつ内部にガスを充填した試料室と、
前記試料室の前記金属材料で構成した側面に前記試料室外部から接触し前記金属材料を冷却するためのペルチエ素子と、
前記試料室内の前記金属材料に前記窓を介して赤外線パルスレーザー光を照射することにより前記金属材料を周期的に膨張収縮させて、前記試料室内に圧力パルスを形成するための赤外線パルスレーザー装置と、
前記圧力パルスに基づく刺激によって前記試料に形成された反応中間体を検出するために、前記試料にパルスレーザー光を照射する分析パルスレーザー装置と、
前記赤外線パルスレーザー装置におけるパルスの発振周期と前記分析パルスレーザー装置におけるパルスの発振周期とを時差を設けて同期させるための制御装置と、
前記分析パルスレーザー装置による前記試料からの放射光を受光し検出する検出器と、を備え、
前記検出は、前記分析パルスレーザー装置における複数のパルスの積算に基づいてなされることを特徴とする、時間分解分光解析装置。
【請求項6】
少なくとも一方をピエゾ材料で形成した2枚の基板を、スペーサを介して対向配置することにより形成した試料室と、
前記ピエゾ材料の基板に高周波電圧を印加することによって前記ピエゾ材料の基板を周期的に膨張、収縮させて前記試料室内に圧力パルスを形成するための電源装置と、
前記圧力パルスに基づく刺激によって前記試料に形成された反応中間体を検出するために、前記試料にパルスレーザー光を照射する分析パルスレーザー装置と、
前記電源装置における周波数と前記分析パルスレーザー装置におけるパルスの発振周期とを時差を設けて同期させるための制御装置と、
前記分析パルスレーザー装置による前記試料からの放射光を受光し検出する検出器と、を備え、
前記検出は、前記分析パルスレーザー装置における複数のパルスの積算に基づいてなされることを特徴とする、時間分解分光解析装置。
【請求項7】
試料にピンポイントでガスを噴射するためのガス噴出ノズルと、
前記噴射したガスを吸引し排出するためのガス吸引ノズルと、
前記噴射されたガスに紫外線パルスレーザー光を照射し、前記ガスを解離することによってパルス状のラジカルを形成するための紫外線パルスレーザー装置と、
前記ラジカルに基づく刺激によって前記試料に形成された反応中間体を検出するために、前記試料にパルスレーザー光を照射する分析パルスレーザー装置と、
前記紫外線パルスレーザー装置におけるパルスの発振周期と前記分析パルスレーザー装置におけるパルスの発振周期とを時差を設けて同期させるための制御装置と、
前記分析パルスレーザー装置による前記試料からの放射光を受光し検出する検出器と、を備え、
前記検出は、前記分析パルスレーザー装置における複数のパルスの積算に基づいてなされることを特徴とする、時間分解分光解析装置。
【請求項8】
請求項7に記載の時間分解分光解析装置において、前記ガス噴出ノズルは原子間力顕微鏡における探針として使用され試料上を走査されることを特徴とする、時間分解分光解析装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の時間分解分光解析装置において、前記分析パルスレーザー装置によって形成されるパルスレーザーは、マイクロ秒からフェムト秒のオーダーのパルス幅を有することを特徴とする、時間分解分光解析装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の時間分解分光解析装置において、前記検出器は、前記反応中間体によるラマンシフトを検出することを特徴とする、時間分解分光解析装置。
【請求項1】
測定のための試料を保持する試料室と、
前記試料室を加熱する高周波誘導加熱装置と、
前記試料室を収容する冷媒タンクと、
前記試料に前記加熱によって形成された反応中間体検出のためのパルスレーザー光を照射する分析パルスレーザー装置と、
前記高周波誘導加熱装置における高周波周期と前記分析パルスレーザー装置におけるパルス発振周期とを時差を設けて同期させるための制御装置と、
前記分析パルスレーザー装置による前記試料からの放射光を受光し検出する検出器と、を備え、
前記検出は、前記分析パルスレーザー装置における複数のパルスの積算に基づいてなされることを特徴とする、時間分解分光解析装置。
【請求項2】
測定のための試料を保持しかつペルチエ素子で構成される試料台と、
前記試料台に保持された前記試料に赤外線パルスレーザー光を照射し加熱するための赤外線パルスレーザー装置と、
前記試料に前記加熱によって形成された反応中間体検出のためのパルスレーザー光を照射する分析パルスレーザー装置と、
前記赤外線パルスレーザー装置におけるパルスの発振周期と前記分析パルスレーザー装置におけるパルスの発振周期とを時差を設けて同期させるための制御装置と、
前記分析パルスレーザー装置による前記試料からの放射光を受光し検出する検出器と、を備え、
前記検出は、前記分析パルスレーザー装置における複数のパルスの積算に基づいてなされることを特徴とする、時間分解分光解析装置。
【請求項3】
少なくとも試料保持部周辺を透光性の材料で形成したキャピラリー管と、
前記キャピラリー管にガスを導入するための装置と、
前記ガスを前記試料保持部の上流でパルス化するための高速回転スリット板と、
前記パルス化されたガスの噴射に基づく刺激によって前記試料に形成された反応中間体を検出するために、前記試料にパルスレーザー光を照射する分析パルスレーザー装置と、
前記高速回転スリット板の回転と前記分析パルスレーザー装置によるパルスの発振周期とを時差を設けて同期させるための制御装置と、
前記分析パルスレーザー装置による前記試料からの放射光を受光し検出する検出器と、を備え、
前記検出は、前記分析パルスレーザー装置における複数のパルスの積算に基づいてなされることを特徴とする、時間分解分光解析装置。
【請求項4】
請求項3に記載の時間分解分光解析装置において、
さらに、前記試料保持部の上流で前記ガスに紫外線レーザー光を照射し前記ガスを解離させてラジカルを形成するための紫外線レーザー装置を備えることを特徴とする、時間分解分光解析装置。
【請求項5】
レーザー光透過用の窓を有しその側面の少なくとも一部を金属材料で構成しかつ内部にガスを充填した試料室と、
前記試料室の前記金属材料で構成した側面に前記試料室外部から接触し前記金属材料を冷却するためのペルチエ素子と、
前記試料室内の前記金属材料に前記窓を介して赤外線パルスレーザー光を照射することにより前記金属材料を周期的に膨張収縮させて、前記試料室内に圧力パルスを形成するための赤外線パルスレーザー装置と、
前記圧力パルスに基づく刺激によって前記試料に形成された反応中間体を検出するために、前記試料にパルスレーザー光を照射する分析パルスレーザー装置と、
前記赤外線パルスレーザー装置におけるパルスの発振周期と前記分析パルスレーザー装置におけるパルスの発振周期とを時差を設けて同期させるための制御装置と、
前記分析パルスレーザー装置による前記試料からの放射光を受光し検出する検出器と、を備え、
前記検出は、前記分析パルスレーザー装置における複数のパルスの積算に基づいてなされることを特徴とする、時間分解分光解析装置。
【請求項6】
少なくとも一方をピエゾ材料で形成した2枚の基板を、スペーサを介して対向配置することにより形成した試料室と、
前記ピエゾ材料の基板に高周波電圧を印加することによって前記ピエゾ材料の基板を周期的に膨張、収縮させて前記試料室内に圧力パルスを形成するための電源装置と、
前記圧力パルスに基づく刺激によって前記試料に形成された反応中間体を検出するために、前記試料にパルスレーザー光を照射する分析パルスレーザー装置と、
前記電源装置における周波数と前記分析パルスレーザー装置におけるパルスの発振周期とを時差を設けて同期させるための制御装置と、
前記分析パルスレーザー装置による前記試料からの放射光を受光し検出する検出器と、を備え、
前記検出は、前記分析パルスレーザー装置における複数のパルスの積算に基づいてなされることを特徴とする、時間分解分光解析装置。
【請求項7】
試料にピンポイントでガスを噴射するためのガス噴出ノズルと、
前記噴射したガスを吸引し排出するためのガス吸引ノズルと、
前記噴射されたガスに紫外線パルスレーザー光を照射し、前記ガスを解離することによってパルス状のラジカルを形成するための紫外線パルスレーザー装置と、
前記ラジカルに基づく刺激によって前記試料に形成された反応中間体を検出するために、前記試料にパルスレーザー光を照射する分析パルスレーザー装置と、
前記紫外線パルスレーザー装置におけるパルスの発振周期と前記分析パルスレーザー装置におけるパルスの発振周期とを時差を設けて同期させるための制御装置と、
前記分析パルスレーザー装置による前記試料からの放射光を受光し検出する検出器と、を備え、
前記検出は、前記分析パルスレーザー装置における複数のパルスの積算に基づいてなされることを特徴とする、時間分解分光解析装置。
【請求項8】
請求項7に記載の時間分解分光解析装置において、前記ガス噴出ノズルは原子間力顕微鏡における探針として使用され試料上を走査されることを特徴とする、時間分解分光解析装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の時間分解分光解析装置において、前記分析パルスレーザー装置によって形成されるパルスレーザーは、マイクロ秒からフェムト秒のオーダーのパルス幅を有することを特徴とする、時間分解分光解析装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の時間分解分光解析装置において、前記検出器は、前記反応中間体によるラマンシフトを検出することを特徴とする、時間分解分光解析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−170305(P2008−170305A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−4281(P2007−4281)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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