説明

暗色の亜鉛リッチプライマーおよび暗色の電着被覆による金属物品被覆

(a)暗色の亜鉛リッチプライマー被覆と、(b)亜鉛リッチプライマー被覆の少なくとも一部を覆って付着している暗色の電着被覆とを含む多成分複合被覆により、少なくとも部分的に被覆されている金属物品であって、上記物品は、亜鉛リッチプライマー及び電着被覆の乾燥膜厚を合わせた合計が38mm(1.5ミル)以下である場合、500時間の曝露後に腐食に対して耐性がある、金属物品。特定の態様において、本発明は、(a)暗色の金属粒子と、(b)下記:(1)チタン酸塩及び/又はその部分的水解物、(2)チタン酸塩及び/又はその部分的水解物のアルコキシ基と反応性がある官能基を有する多官能ポリマー、から形成されるハイブリッド有機−無機コポリマーを含む膜形成結合剤とを含む、暗色の被覆組成物を対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2006年5月2日に出願された「Coating Compositions Exhibiting Corrosion Resistance Properties, Related Coated Articles and Methods」と題された米国特許出願第11/415,582号の一部継続出願であり、そして、2006年12月13日に出願された「Coating Compositions Exhibiting Corrosion Resistance Properties, Related Coated Articles and Methods」と題された米国特許出願第11/610,069号の一部継続出願である。これらの2つの米国特許出願は、本明細書中で参考として援用される。
【0002】
本発明は、金属基材に防食性を提供するのに適しているプライマー組成物のような被覆組成物、並びに関連する被覆物品及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
金属を酸化(さび付き)、続く腐食から保護することは、多くの場合、例えばそのような金属が、自動車、航空宇宙、建設及び他の産業用構造物及び部品に組み込まれる構成要素に使用される場合に、極めて重要である。多様な方法が、多様な防食レベルを達成するために用いられてきた。
【0004】
幾つかの場合において、亜鉛めっきプロセスが、金属表面に防食性を付与するために使用される。このプロセスは、金属インゴットから金属膜を金属基材に溶融めっき又は電気めっき適用により付着することを伴う。金属膜の金属は、多くの場合、金属基材の金属よりも大きいイオン化傾向を有する。その結果、金属膜と基材の物理的な接触が維持される限り、膜は、理論的には優先的に酸化され、一方、金属膜から酸素へ電子を移動する電気導体として作用するその下の基材は、保護される。
【0005】
しかし、亜鉛めっきは、全ての場合において理想的というわけではない。例えば、溶融亜鉛めっきを利用する場合、金属膜の厚さを制御することは、不可能ではないとしても困難である。その結果、溶融亜鉛めっきは、防食性が、締結具、例えば、ナット、ボルトなどのような複雑な形状を有する比較的小さい金属物品に必要な場合には、通常適していない。一方、電気亜鉛めっきは、多くの場合、溶融亜鉛めっきに対して改善された膜厚制御を可能にするが、例えば「水素脆化」を防止する必要性のために、高価なプロセスとなる可能性がある。この現象は、めっきプロセスの際に生じることが知られており、水素が被覆金属物品に吸収され、閉じ込められる。その後、水素が破損を引き起こす可能性がある。その結果、多くの場合、追加的な費用のかかるプロセス工程が、水素脆化を最小限又は防止するために用いられる。
【0006】
幾つかの場合において、金属基材は、金属粒子、多くの場合に亜鉛を金属顔料として組み込んだ耐食性プライマー被覆の使用によって保護される。これらの被覆組成物は、亜鉛めっきによりもたらされる金属膜と同じ防食機構を利用する被覆を生成する。多くの場合に「亜鉛リッチプライマー」と呼ばれるそのような組成物は、多くの場合、亜鉛めっきより性能が優れており、慣用的にディップスピン手順により金属基材に適用される。これらの組成物は、多くの場合、金属顔料として亜鉛粒子を、多くの場合に亜鉛フレークを、エポキシ樹脂のような有機結合剤及び/又はケイ酸塩のような無機結合剤と組み合わせて組み込む。
【0007】
開発された「亜鉛リッチプライマー」は、今まで多くの用途において適しているが、幾つかの場合において欠陥となりうる特定の欠点を有する。例えば、有効であるためには、これらの組成物は、亜鉛のような金属顔料の連続層を金属基材に付着するべきであると考えられている。比較的安価である粉末が使用される場合、多くの場合、金属顔料の連続層を付着するのを確実にするため、比較的大きな膜厚、通常3ミル(76.2ミクロン)で組成物を適用することが重要である。そのような厚い膜の使用は、当然のことながら、費用の観点から望ましくない。防食性が、締結具、例えば、ナット、ボルトなどのような複雑な形状を有する比較的小さい金属物品に必要な場合には、そのような組成物の使用は実用的ではなくなる可能性もある。
【0008】
この認められる欠陥の結果として、亜鉛フレークのような金属フレークが、多くの場合、亜鉛リッチプライマー組成物における金属顔料として使用される。これらの薄い板状構造体の使用は、組成物が比較的低い膜厚で、1ミル(25.4ミクロン)未満でも付着する場合でさえも、金属顔料の連続膜の付着をもたらすことができる。しかしこれらの物質の性質は、多くの場合、得られた被覆が、金属基材、並びに続いて適用される被覆に対して不十分な接着を示す原因になる。したがって、溶媒系着色被覆組成物の4回までの浸漬適用が、多くの場合、プライマーに対して適用される(黒色が多くの場合に望ましい色である)。更に、腐食抑制被覆組成物としての使用が多くの場合に望ましい水性系の電着可能な被覆組成物は、多くの場合、市販の亜鉛フレークの使用が依存している亜鉛リッチプライマーに接着しない。
【0009】
亜鉛リッチプライマー組成物における無機結合剤の使用で観察されている不利な点は、これらは脆くなる傾向があり、したがって、得られた亜鉛リッチプライマー組成物は、粉末状になり、金属基材に対して不十分な接着を示す可能性がある。この欠陥は、バルクで扱われる締結具のような小さい部品を被覆しよう試みる場合に特に問題である。このプロセスでは、部品は多くの場合互いに接触している。その結果、脆く不十分に接着した膜が部品に適用されると、膜は、部品が被覆プロセスの際に互いに接触するときに容易に損傷を受ける。この損傷は、不十分な耐食性能をもたらす。
【0010】
その結果、比較的低い膜厚で適用されても、望ましい防食レベルを金属基材に付与することができる被覆組成物を提供することが望ましい。更に、柔軟で、金属基材に、また、続いて適用される水性の電着可能な被覆組成物に十分に接着するような被覆組成物を提供すること、所望の色及び望ましい防食レベルを、締結具、例えば、ナット、ボルトなどのような複雑な形状を有する小さい金属部品のような金属物品に提供すること、が望ましい。
【0011】
上述された通り、小さい金属部品(例えば、上述されたもの)はしばしば、被覆プロセス中にバルクで扱われる。言い換えると、多くの部品が、被覆装置で同時に被覆される。多くの例において、先に指摘した通り、被覆系および乾燥系を通過する間に、個々の部品が互いにとても接近または接触し、その結果、上記被覆が上記部品を覆って適用され、かつ、乾燥または硬化される場合に、2個以上の部品が、係合する点(しばしば「接触点」と呼ばれる)で一緒に接着され得る。次いで、これらの被覆された部品は、ある程度の力を加えて、お互いが分離されなければならず、上記ある程度の力は、典型的には、接触点で、または接触点周辺で各部品から被覆の少なくとも一部の除去をもたらす。(一般的である通り)明るい銀色の亜鉛リッチプライマーが、(一般的である通り)暗い、しばしば黒色電着被覆の下に付着された場合、暗い電着被覆が除去されると、明るい下塗りの存在が現れる。このことは、しばしば見苦しく、かつ、所望されない。結果として、亜鉛リッチ被覆が、その後適用される電着被覆の色と同様の色を呈するように、暗色(例えば、黒)の、上述された柔軟性および接着特性を有する亜鉛リッチ被覆を提供することが所望される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
特定の態様において、本発明は、(a)暗色の金属粒子と、(b)下記:(1)チタン酸塩及び/又はその部分的水解物、(2)チタン酸塩及び/又はその部分的水解物のアルコキシ基と反応性がある官能基を有する多官能ポリマー、から形成されるハイブリッド有機−無機コポリマーを含む膜形成結合剤とを含む、暗色の被覆組成物を対象とする。
【0013】
他の態様において、本発明は、(a)組成物の総固形分重量に基づいて少なくとも25重量%の暗色の亜鉛フレークと、(b)チタン酸塩から形成される結合剤とを含む暗色の亜鉛リッチ被覆組成物を対象とする。
【0014】
さらに他の態様において、本発明は、(a)暗色の亜鉛リッチプライマー被覆と、(b)亜鉛リッチプライマー被覆の少なくとも一部を覆って付着している暗色の電着被覆とを含む多成分複合被覆により、少なくとも部分的に被覆されている金属物品を対象とする。本発明のこれらの物品は、亜鉛リッチプライマー及び電着被覆の乾燥膜厚を合わせた合計が1.5ミル(38.1ミクロン)以下である場合、500時間の曝露後に腐食に対して耐性がある。
【0015】
本発明はまた、金属物品を被覆する方法を対象とする。これらの方法は、(a)暗色の亜鉛リッチプライマー被覆を上記物品の表面の少なくとも一部を覆って付着させること(ここで、(1)組成物の総固形分重量に基づいて少なくとも25重量%の暗色の亜鉛粒子と、(b)チタン酸塩から形成される結合剤とを含む組成物から亜鉛リッチプライマー被覆が付着される)、ならびに(b)亜鉛リッチプライマー被覆の少なくとも一部を覆って暗色の被覆を電着させることを包含する。一部の実施形態において、亜鉛リッチプライマー及び電着被覆の乾燥膜厚を合わせた合計が1.5ミル(38.1ミクロン)以下である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1a】図1aは、実施例15で調製された被覆基材の断面及び表面の走査電子顕微鏡写真(「SEM」)画像(およそ1000×倍率)である。
【図1b】図1bは、実施例15で調製された被覆基材の断面及び表面の走査電子顕微鏡写真(「SEM」)画像(およそ1000×倍率)である。
【図2a】図2aは、実施例16で調製された被覆基材の断面及び表面のSEM画像(およそ1000×倍率)である。
【図2b】図2bは、実施例16で調製された被覆基材の断面及び表面のSEM画像(およそ1000×倍率)である。
【図3a】図3aは、実施例17で調製された被覆基材の断面及び表面のSEM画像(およそ1000×倍率)である。
【図3b】図3bは、実施例17で調製された被覆基材の断面及び表面のSEM画像(およそ1000×倍率)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の詳細な記載の目的は、本発明が、異なる明白な特定がない限り、多様な代替的な変形及び工程シーケンスを想定しうることを理解するためである。更に、任意の操作実施例以外に、又は他に指示のない場合、例えば、明細書及び請求項で使用される成分の量を表す全ての数字は、全ての場合において用語「約」により修飾されていると理解されるべきである。したがって、特に指示のない限り、以下の明細書及び添付の請求項に記載されている数値パラメーターは、本発明により得られる望ましい特性に応じて変わりうる近似値である。最低限でも、そして請求項の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、それぞれの数値パラメーターは、少なくとも、報告されている有効数字の数字の観点から考慮され、通常の丸め技術を適用することによって考慮されるべきである。
【0018】
本発明の広い範囲を記載する数値範囲及びパラメーターは、近似値であるにも関わらず、特定の例において記載されている数値は、可能な限り正確に報告されている。しかし、あらゆる数値は、それぞれの試験測定において見出される標準偏差により必ずもたらされる特定の誤差を本質的に含有する。
【0019】
また、本明細書で記述されるあらゆる数値範囲は、それに包含される全ての下位範囲を含むことを意図することが理解されるべきである。例えば、「1〜10」の範囲は、記述された最低値1と記述された最大値10の間(及びそれらを含む)の全ての下位範囲を含むこと、すなわち、1以上の最低値及び10以下の最大値を有することが意図される。
【0020】
本明細書において、単数の使用は、特に記述のない限り、複数及び単数を包含する複数を含む。加えて、本明細書において、「又は」の使用は、特に記述されない限り、「及び/又は」を意味するが、それにもかかわらず、「及び/又は」は特定の場合において明示的に使用することができる。
【0021】
本発明の特定の実施態様は、金属粒子を含む被覆組成物を対象とする。本発明の被覆組成物に組み込まれる金属粒子は、組成物が適用される金属基材よりも大きいイオン化傾向を有するように選択される。したがって、大抵の場合、金属基材が鉄又はスチールのような鉄合金であるとき、金属粒子は、典型的には、亜鉛粒子、アルミニウム粒子、亜鉛アルミニウム合金粒子又はこれらの混合物を含む。幾つかの場合において、金属粒子の純度は、少なくとも94重量%、例えば少なくとも95重量%である。
【0022】
特定の実施態様において、本発明の被覆組成物は、亜鉛リッチプライマー組成物である。本明細書で使用されるとき、用語「亜鉛リッチプライマー組成物」は、重量%が組成物中の固形分の総量、すなわち組成物の乾燥重量に基づいて、少なくとも50重量%、多くの場合において、少なくとも70重量%、例えば70〜95重量%、又は幾つかの場合において、85〜95重量%の量で組成物に存在する、亜鉛粉、亜鉛末及び/又は亜鉛フレークのような亜鉛粒子を含む組成物を意味する。
【0023】
亜鉛粒子のような金属粒子の粒径は変えることができる。加えて、亜鉛粒子のような粒子の形状(又は形態)は、変えることができる。例えば、一般に球状の形態、また、立方体、板状又は針状(伸長い又は繊維状)である粒子を使用することができる。幾つかの場合において、金属粒子は「金属粉」を含み、これは、本明細書で使用されるとき、20ミクロン以下、例えば2〜16ミクロンの平均粒径を有する一般に球状の粒子を意味する。幾つかの場合において、金属粒子は「金属末」を含み、これは、本明細書で使用されるとき、2〜10ミクロンの平均粒径を有する、亜鉛粉のような金属粉を意味する。幾つかの場合において、金属粒子は、亜鉛フレークのような金属フレークを含み、これは、本明細書で使用されるとき、粉又は末と異なるアスペクト比を有し、(すなわち、一般に球状構造ではない)、100ミクロンまでの伸長寸法を有する粒子を意味する。幾つかの場合において、金属粉、金属末及び/又は金属フレークの混合物が使用される。
【0024】
特定の実施態様において、本発明の被覆組成物で利用される金属粒子は、亜鉛粉及び/又は亜鉛末を含む。特定の実施態様において、亜鉛粉は、被覆組成物中の金属粒子の総重量に基づいて、少なくとも25重量%、例えば、少なくとも50重量%、幾つかの場合において、少なくとも80重量%、なお他の場合において、少なくとも90重量%の量で存在する。
【0025】
更に、特定の実施態様において、本発明の被覆組成物は、亜鉛フレークを実質的に含有せず、幾つかの場合において完全に含有しない。本明細書で使用されるとき、「実質的に含有しない」は、考えられる物質が、あったとしても、偶発的な不純物として存在することを意味する。換言すると、この物質は、別の物質の特性に影響を与えない。本明細書で使用されるとき、用語「完全に含有しない」は、この物質が別の物質の中に全く存在しないことを意味する。
【0026】
特定の実施態様において、本発明の被覆組成物は、とりわけ、亜鉛/アルミニウム、及び/又は亜鉛/スズ合金のような亜鉛合金粒子を含む金属フレークを含む。本発明における使用に適しているそのような物質は、米国公開特許出願2004/0206266の〔0034〕から〔0036〕に記載されており、引用された部分は、参照として本明細書に組み込まれる。事実、発明者たちは、驚くべきことに、比較的少量、すなわち、組成物の固形分の総重量に基づいて10重量%以下の亜鉛スズ合金粒子の添加が、本明細書に記載されている特定の被覆の耐食性に有意な改善をもたらしうることを発見した。そのような物質は、例えば、STAPA 4 Zn Sn 15としてEckart−Werkeから市販されている。
【0027】
指摘したとおり、本発明の特定の実施形態は、「暗色(の)」被覆組成物を対象とする。本明細書中で使用される場合、「暗い」または「暗色(の)」は、黒い材料、ならびに、色合いが黒に近い色(例えば、ダークグレイ、濃青色、濃緑色、暗褐色などが挙げられる)を有する材料を意味する。本明細書中で使用される場合、「黒」は、全ての暗い色、光学的に黒い色を含む。用語「光学的に黒い」とは、本明細書中では、目視では黒く不透明に見える材料を意味する。特定の実施形態において、本発明の暗色の被覆組成物は光学的に黒い。
【0028】
特定の実施形態において、本発明の暗色の被覆組成物は、60以下、例えば、50以下、またはいくつかの場合においては40以下のCIELAB L*値を有する被覆を生成し得る。本発明の目的のために、材料のL*値は、X−Rite, Incorporated(Grandville, Mich)から入手可能なX−Rite MA−68を使用して、45°の角度で測定値として確認される。X−Rite MA−68装置は、L*a*b 色空間理論にしたがって測定する。L*a*b*色空間理論では、いずれの色も、「L」(垂直)軸上に明度および暗度、「a」(左右)軸上に赤と緑、ならびに「b」(前後)軸上に黄と青を有する三次元空間中にプロットされ得ると述べている。明度−暗度については、L*a*b*の座標のL*値を特に参照しながら測定がなされる。
【0029】
本発明の暗色の、時には光学的に黒い、被覆組成物は、暗色の金属粒子を含有する。本明細書中で使用される場合、用語「暗色の金属粒子」は、それ自体が先に定義された通りの暗色である、時には光学的に黒い金属粒子(例えば、先に記載された金属粒子)を意味する。特定の実施形態において、暗色の金属粒子それ自体は、60以下、例えば、50以下、またはいくつかの場合において、40以下のCIELAB L*値を有する。言い換えると、この金属粒子は、結果として生じる被覆組成物を、先に定義された通りの暗色の被覆組成物にするのに十分な量で存在する。
【0030】
特定の実施形態において、暗色の金属粒子は、黒色亜鉛フレーク(例えば、Benda−Lutz Corporation(Independence, Kentucky)からBlitz(登録商標)Z2031として市販されるもの)を含有する。実際には、驚くべきことに、そのような黒色亜鉛フレークの含有は、先に言及されたとおり、他の亜鉛フレークを用いる場合とはしばしば異なり、本発明の特定の被覆組成物が、その後に適用される水性ベース電着被覆組成物に接着する能力へ不利益に影響を与えないことが発見されてきた。そのような接着における特に著しい改良は、亜鉛リッチプライマーの乾燥膜厚が、少なくとも0.5ミル(12.7ミクロン)以上、より特定すると少なくとも0.7ミル(17.8ミクロン)以上である場合に見出されてきた。結果として、本発明の暗色の被覆組成物は、(a)暗色の亜鉛リッチプライマー被覆、と(b)亜鉛リッチプライマー被覆の少なくとも一部を覆って付着している暗色の電着被覆とを含む多成分複合被覆で少なくとも部分的に被覆された金属粒子を調製するのに適切であり、ここで、物品は、亜鉛リッチプライマー及び電着被覆の乾燥膜厚を合わせた合計が1.5ミル(38.1ミクロン)以下、そしていくつかの場合においては1ミル(25.4ミクロン)以下である場合に、500時間の曝露後に腐食に対して耐性がある。
【0031】
特定の実施形態において、暗色の金属粒子は、少なくとも25重量%、例えば、少なくとも50重量%、多くの場合において、少なくとも70重量%、例えば、70重量%〜95重量%、または、いくつかの場合においては少なくとも85重量%〜95重量%の量で存在し、上記重量%は組成物中の固形分の総重量、すなわち、組成物の乾燥重量に基づく。
【0032】
本発明の被覆組成物は、また、膜形成結合剤のような結合剤を含む。本明細書で使用されるとき、用語「結合剤」は、金属粒子が分布され、被覆組成物を金属基材のような裸の又は予め被覆された基材へ結合させるために役立つ物質を意味する。本明細書で使用されるとき、用語「膜形成結合剤」は、組成物に存在しうる希釈剤及び/又は担体を除去すると、基材の少なくとも水平面に自立した実質的に連続している膜を形成する結合剤を意味する。
【0033】
特定の実施態様において、本発明の組成物に存在する膜形成結合剤は、ハイブリッド有機−無機コポリマーを含む。本明細書で使用されるとき、用語「コポリマー」は、2つ以上の出発化合物の混合物を重合することによって作り出される物質を意味する。本明細書で使用されるとき、用語「ハイブリッド有機−無機コポリマー」は、無機反復単位と有機反復単位を有するコポリマーを意味する。本発明の目的において、用語「有機反復単位」は、炭素及び/又はケイ素(ケイ素は通常有機物質とは考慮されないにしても)に基づいた反復単位を含むことが意図され、一方、用語「無機反復単位」は、炭素又はケイ素以外の元素又は複数の元素に基づいた反復単位を意味することが意図される。
【0034】
特定の実施態様において、本発明の被覆組成物の特定の実施態様で利用される膜形成結合剤は、チタン酸塩及び/又はその部分的水解物から形成される。本明細書で使用されるとき、用語「チタン酸塩」は、4つのアルコキシ基を含む化合物を意味し、この化合物は、式:Ti(OR)により表され、式中、Rは、それぞれ独立して、基1つあたり、例えば1〜10個、例えば、1〜8個、幾つかの場合では2〜5個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルキレニル基、アリール基、アルカリール基、アラルキル基又はこれらの2つ以上の組み合わせであり、すなわち、Rはそれぞれ同一又は異なっていることができる。本発明における使用に適しているそのような物質は、米国特許第6,562,990号、第4欄63行目から第5欄9行目に記載されており、引用された部分は、参照として本明細書に組み込まれる。本発明における使用に適しているチタン酸塩の例である市販されている物質は、テトライソプロピルチタネートを意味するTYZOR TPT、テトラ−n−ブチルチタネートを意味するTYZOR TnBT及びテトラ−2−エチルヘキシルチタネートを意味するTYZOR TOTのような商標TYZOR(登録商標)でDuPontにより販売されている製品である。
【0035】
特定の実施態様において、本発明の被覆組成物の特定の実施態様で利用される膜形成結合剤の調製に使用されるチタン酸塩は、キレートチタン酸塩である。適切なキレートチタン酸塩には、TYZORの商標でDuPontから市販されている製品が含まれるが、これらに限定されない。適切なキレートチタン酸塩には、米国特許第2,680,108号及び同第6,562,990号(これらは参照として本明細書に組み込まれる)に記載されているキレートチタン酸塩も含まれるが、これらに限定されない。本発明の特定の実施態様において、ジカルボニル化合物を含むキレート剤の使用により形成されるキレートチタン酸塩が使用される。本発明の被覆組成物の特定の実施態様で結合剤として利用されるチタン酸塩キレートの調製における使用に適しているジカルボニル化合物には、米国特許第2,680,108号、第2欄13行目から16行目及び米国特許第6,562,990号、第2欄56行目から64行目に記載されている物質が含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
本発明の特定の実施態様において、膜形成結合剤は、前記記載のチタン酸塩及び/又はキレートチタン酸塩のいずれかのようなチタン酸塩及び/又はその水解物と、チタン酸塩及び/又はその部分的水解物のアルコキシ基と反応性のある官能基を含む多官能ポリマーとの反応により形成される。本明細書で使用されるとき、用語「ポリマー」は、オリゴマー及びホモポリマーとコポリマーの両方を含むことが意図される。適切なポリマーには、例えば、アクリルポリマー、ポリエステルポリマー、ポリウレタンポリマー、ポリエーテルポリマー及びケイ素ベースのポリマー、すなわち、主鎖に1つ以上の−SiO−単位を含むポリマーが含まれる。本明細書で使用されるとき、用語「多官能ポリマー」は、少なくとも2つの官能基を有するポリマーを意味することが意図される。本明細書で使用されるとき、語句「から形成される」は、開放の、例えば「含む」クレーム言語を示す。このように、記述された成分のリスト「から形成される」組成物又は物質は、少なくともこれらの記述された成分を含む組成物又は物質を意味し、他の記述されていない成分を、この組成物又は物質の形成の際に更に含むことができる。
【0037】
示されているように、本発明の被覆組成物の特定の実施態様の膜形成結合剤の調製に利用される多官能ポリマーは、チタン酸塩及び/又はその部分的水解物のアルコキシ基と反応性がある2つ以上の官能基を含む。そのような官能基の例は、ヒドロキシル基、チオール基、第一級アミン基、第二級アミン基及び酸(カルボン酸)基、並びにこれらの混合物である。
【0038】
特定の実施態様において、本発明の被覆組成物の特定の実施態様の膜形成結合剤の調製に利用される多官能ポリマーは、ポリヒドロキシ化合物、すなわちポリオールを含む。本明細書で使用されるとき、用語「ポリヒドロキシ化合物」及び「ポリオール」は、分子1つあたり平均2つ以上のヒドロキシル基を有する物質を意味する。適切なポリオールには、米国特許第4,046,729号、第7欄52行目から第10欄35行目に記載されているものが含まれるが、これらに限定されない(引用されている部分は、参照として組み込まれる)。
【0039】
本発明の特定の実施態様において、ポリオールは、(i)芳香族基を含むジオール(分子1つあたり2つのヒドロキシル基を有する物質)のようなポリオールと、(ii)アルキレンオキシドとを含む反応物から形成される。これらの実施態様において、ジオールのような芳香族基含有ポリオールは、1つ以上の芳香族環を含むことができ、1つを超える環が存在する場合は、環は、縮合又は非縮合であることができる。本発明における使用に適している芳香族基含有ジオールの例は、ビスフェノールA、F、E、M、P及びZのようなビスフェノールである。これらの実施態様において、ポリオールは、アルキレンオキシドとの反応によって鎖延長を受ける。アルキレンオキシドのアルキレン部分は、任意の数の炭素原子を有することができ、分岐鎖又は非分岐鎖であることができる。非限定的であるが適切なアルキレンオキシドの例は、1〜10個の炭素原子を有するもの、例えば2〜4個の炭素原子を有するものである。そのような化合物は、広く市販されている。
【0040】
これらの実施態様において、ポリオールは、アルキレンオキシドと、あらゆる適切なモル比で反応することができる。例えば、芳香族ジオールとアルキレンオキシドの比率は、1:1〜1:10、又はさらにそれ以上であることができる。標準的反応手順を使用して、アルキレンオキシドと、ポリオールの1つ以上のヒドロキシル基とを反応させ、更に、追加的な鎖延長のためにアルキレンオキシドを互いに結合させることができる。あるいは、適切な物質は、例えばBASFから一連のMACOL製品として市販されている。1つの適切な製品は、MACOL 98Bとして市販されている、6モルのエチレンオキシドが1モルのビスフェノールAと反応している物質である。
【0041】
結果として、前述の記載から明らかなように、本発明の被覆組成物の特定の実施態様で利用される膜形成結合剤は、下記の一般式:
【0042】
【化3】

【0043】
〔式中、Pは、多官能ポリマー、例えばポリオール、例えば芳香族基を含むポリオールとアルキレンオキシドとの反応により形成されるポリオールの残基であり、そしてnは、それぞれ1以上の値を有する整数、例えば1〜10であるか、又は幾つかの場合においてnは1であり、nは、それぞれ同一又は異なっていてもよい〕で表される構造を含む。理解されるように、nが1を超える前記記載の構造を得るために、水をチタン酸塩に加えて部分的水解物を形成することができる。このことは、多官能ポリマーの添加前、多官能ポリマーの添加と共に、又は多官能ポリマーの添加後に達成することができる。そうでなければ、TYZOR BTP(n−ブチルポリチタネート)のような市販の部分的水解物を使用することができる。
【0044】
本明細書の実施例は、本発明の被覆組成物の特定の実施態様において利用される膜形成結合剤を生成する適切な方法を説明する。特定の実施態様において、そのような結合剤は、チタン酸塩を多官能ポリマーと1〜6の重量比、例えば、得られた結合剤の理論的TiO含有量に基づいて測定した3〜5重量部のチタン酸塩と、1重量部の多官能ポリマーの重量比で反応させることによって生成される。事実、驚くべきことに、そのような反応により形成されたハイブリッド有機−無機コポリマーを含む膜形成結合剤の使用は、有機物質の量が最小限であるが、依然として、有機反復単位の存在に起因すると考えられる望ましい膜特性が得られる、亜鉛リッチプライマー組成物を生成できることが発見されている。有機種のこの最小化は、そのような種が亜鉛粒子間で絶縁体として作用し、それによって犠牲活性を低減しうるので、有益であると考えられる。また、本発明の組成物における有機種の最小化は、そのような組成物を、例えば自動車のマフラーなどのような、そのような有機種を、分解しうる比較的高温の用途での利用が意図される金属部品における使用に特に適切であるようにすることができると考えられる。
【0045】
特定の実施態様において、膜形成結合剤は、重量%が組成物中の固形分の総量、すなわち組成物の乾燥重量に基づいて、2〜10重量%、例えば3〜7重量%の量で、本発明の被覆組成物に存在する。
【0046】
本発明の被覆組成物は、望ましい場合は他の物質を含むことができる。例えば、特定の実施態様において、本発明の被覆組成物は、組成物が従来の被覆技術による適用に望ましい粘度を有するように、希釈剤を含む。適切な希釈剤には、エタノール及びイソプロパノールのような、約8個までの炭素原子を有するようなアルコール、1−メトキシ−2−プロパノールのようなグリコールのアルキルエーテル、並びにエチレングリコール、ジエチレングリコール及びプロピレングリコールのモノアルキルエーテル;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びイソホロンのようなケトン;2−エトキシエチルアセテート及び2−エトキシエタノールのようなエステル及びエーテル;ベンゼン、トルエン及びキシレンのような芳香族炭化水素;商標SOLVESSO(登録商標)で市販されているような石油から誘導される芳香族溶媒混合物が含まれるが、これらに限定されない。希釈剤の量は、被覆の方法、結合剤成分、金属粒子と結合剤の比率、及び下記に記述されているような任意の成分の存在に応じて変わる。
【0047】
上記に記載された成分に加えて、本発明の被覆組成物は、例えば、米国特許第4,544,581号、第3欄30行目から第4欄64行目(引用されている部分は参照として本明細書に組み込まれる)に記載されている物質を含む、第2樹脂、増粘剤、チキソトロープ剤、懸濁剤及び/又は吸湿剤を含有することができる。他の任意の物質には、増量剤(例えば酸化鉄及びリン化鉄)、流れ調整剤(例えば尿素ホルムアミド樹脂)、並びに/又はシリカ、石灰若しくはケイ酸アルミニウムナトリウムのような脱水剤が含まれる。
【0048】
特定の実施態様において、カーボンブラック、ケイ酸マグネシウム(タルク)及び酸化亜鉛のような他の顔料を組成物に含めることができる。特定の実施態様において、本発明の被覆組成物は、例えばアゾ化合物(モノアゾ、ジアゾ、β−ナフトール、ナフトールAS、アゾ顔料レーキ、ベンズイミダゾロン、ジアゾ縮合、金属錯体、イソインドリノン、イソインドリン)及び多環式(フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ペリノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、アントラキノン、インダントロン、アントラピリミジン、フラバントロン、ピラントロン、アンタントロン、ジオキサジン、トリアリールカルボニウム、キノフタロン)顔料、並びにこれらの混合物のような有機顔料も含む。
【0049】
本発明の被覆組成物は、実質的に、幾つかの場合には完全に、クロム及び鉛のような重金属を含まない。その結果、本発明の特定の実施態様は、「クロム無含有」被覆組成物、すなわち、クロム含有物質を含まない組成物を対象とする。
【0050】
本発明の被覆組成物の特定の実施態様の1つの利点は、多くの従来技術の亜鉛リッチプライマー組成物と異なり、単一成分、すなわち1パッケージ被覆組成物として包含できることである。その結果、本発明の特定の実施態様の被覆組成物を、容易に調製、保存及び輸送することができる。
【0051】
本発明の被覆組成物を、ディップドレイン及びディップスピン手順を含む浸漬(浸けた後、物品を遠心力によりあらゆる過剰被覆物質を振り払うために回転させる)、流し塗り、ロール塗り、はけ塗り又は噴霧技術のような多様な典型的な適用方法のいずれかにより基材に適用することができる。
【0052】
例えばセラミック又はプラスチックで構築されたもののような、あらゆる物品を、本発明の被覆組成物で被覆することができる。しかし、多くの場合において、物品は金属物品であり、その結果、被覆組成物は、これらの実施態様において、亜鉛又は鉄含有基材のような金属基材、例えばスチール基材に適用される。本明細書で使用されるとき、用語「亜鉛基材」は、亜鉛若しくは亜鉛合金の基材、又は亜鉛若しくは亜鉛合金で被覆されたスチールのような金属、並びに合金間混合物として亜鉛を含有する基材を意味する。同様に、鉄の基材は、合金又は合金間混合物の形態であることができる。
【0053】
特定の実施態様において、本発明の被覆組成物で被覆される金属物品は、「小さい部品」である。本明細書で使用されるとき、用語「小さい部品」は、(i)ナット、ボルト、スクリュー、ピン、くぎ、クリップ及びボタンのような締結具、(ii)小型打ち抜き加工品、(iii)鋳物、(iv)ワイヤ製品及び(v)金物を含むことが意図される。特定の実施態様において、小さい部品は、自動車及び/又は航空宇宙用途で使用される締結具である。
【0054】
特定の実施態様において、そのような金属基材は、裸の非被覆又は未処理表面を含む。しかし、他の場合では、本発明の被覆組成物は、例えばクロメート又はホスフェート処理により既に被覆されている金属基材に適用される。幾つかの場合において、基材を、例えば、50〜100mg/ftの量のリン酸鉄被覆又は200〜2,000mg/ftの量のリン酸亜鉛被覆を有するように前処理することができる。
【0055】
本発明の被覆組成物を、任意の所望の膜厚で基材に付着することができる。しかし、多くの場合において、比較的薄い膜、すなわち0.5ミル(12.7ミクロン)以下、幾つかの場合では、0.2ミル(5.1ミクロン)以下の乾燥膜厚が望ましい。本発明の目的において、被覆又は被覆の組み合わせの乾燥膜厚は、被覆基材の材料に適したプローブを使用し、例えば、Fisher Instrumentsにより製造されたFISHERSCOPE(登録商標)MMS膜厚計を使用して、渦電流原理(ASTM B244)によって測定される。
【0056】
特定の実施態様において、本発明の被覆組成物は、非球状金属粒子を含む亜鉛リッチ被覆のような多孔質被覆を生成するような方法で、作製及び付着される。驚くべきことに、そのような多孔質被覆が、前記に記載された裸金属基材又は前処理金属基材のいずれかの金属基材に付着される場合、その被覆の、下記に記載される電着被覆のような続いて適用される被覆に接着する能力は、著しく改善され、一方、耐食特性は、有害な影響を受けず、幾つかの場合では、実際に改善されうることが発見されている。特定の実施態様において、多孔質被覆の、続いて適用された被覆への接着は、得られた多成分複合被覆が、下記でより詳細に記載されるように、曝露の500時間後、又は幾つかの場合では曝露の700時間後、さらに他の場合では曝露の1000時間後、ASTM B117に従って試験したとき、腐食に対して耐性があるような程度に改善される。
【0057】
本明細書で使用されるとき、用語「多孔質被覆」は、多孔質被覆を覆って適用される電着被覆組成物のような別の被覆組成物に対して浸透性がある非連続表面を有する被覆を意味する。換言すると、多孔質被覆は、続いて適用される被覆組成物が多孔質被覆の外面の下に少なくとも部分的に浸透することを可能にするに十分な経路を含有する。特定の実施態様において、本明細書の実施例で説明しているように、そのような経路は、多孔質被覆の断面の走査電子顕微鏡写真(およそ1000×倍率)で視検したときに目に見える。
【0058】
そのような多孔質被覆は、(a)(i)一般に球状の金属粒子と、(ii)膜形成結合剤と、(iii)溶媒とを含む組成物を調製すること、及び(b)一般に球状の金属粒子の少なくとも幾つかを、好ましくは実質的に全てを、結合剤及び希釈剤の存在下で非球状粒子に変換することを含むプロセスで製造することができる。本明細書で使用されるとき、用語「実質的に全て」は、変換工程の後で組成物中に残っている一般に球状の粒子の量が、得られる多孔質被覆の性能に有害な影響を与えるほど十分ではないことを意味する。
【0059】
本明細書で使用されるとき、用語「非球状粒子」は、一般に球状ではない粒子、すなわちアスペクト比が1を超える粒子、幾つかの場合ではアスペクト比が2以上である粒子を意味する。いかなる理論にも束縛されるものではないが、本発明のプロセスは、組成物が、本明細書で記載された比較的薄い膜、すなわち0.5ミル以下で基材に付着したとき、実施例で見られるように多孔質被覆をもたらすことができるような多様なアスペクト比及びサイズを有する非球状金属粒子への、一般に球状の金属粒子の変換をもたらすと考えられる。逆に、実施例においても明らかなように、Eckart−Americaから入手可能な亜鉛8ペーストのような従来の亜鉛フレークが使用される場合、亜鉛フレーク粒子は、おそらく、そのような粒子により示される比較的均一で大きなアスペクト比に起因して、連続的で比較的平滑な外面を有する非多孔質被覆を形成するように配向する。
【0060】
本発明の前記記載のプロセスに従って、(i)一般に球状の金属粒子と、(ii)結合剤と、(iii)希釈剤とを含む組成物が調製される。特定の実施態様において、そのような組成物は、一般に球状の金属粒子が、前記に記載されたように、組成物が適用される金属基材よりも大きいイオン化傾向を有する金属を含み、結合剤が、前記に記載されたように、(a)チタン酸塩及び/又はその部分的水解物、(b)チタン酸塩及び/又はその部分的水解物のアルコキシ基と反応性がある官能基を有する多官能ポリマーから形成されるハイブリッド有機−無機コポリマーを含み、希釈剤が、前記に記載された1つ以上の希釈剤を含む、本明細書に記載されている本発明の組成物である。
【0061】
本発明のこれらのプロセスにおいて、少なくとも幾つかの、好ましくは実質的に全ての一般に球状の粒子が、結合剤及び希釈剤の存在下で非球状金属粒子に変換される。任意の適切な技術を使用して変換を達成することができるが、幾つかの実施態様では、実施例において記載されているような微粉砕プロセスが使用される。特定の実施態様において、この微粉砕は、直径が0.5〜3.0ミリメーターの(例えばジルコニウムセラミックで構成された)ボールを使用する媒体ミルで実施される。幾つかの場合において、ミルに、ミルの内部容量の50〜60%の量でボールを装填する媒体微粉砕プロセスが使用される。幾つかの場合において、一般に球状の金属粒子を含む組成物が、ミルの内部容量の50〜75%を占める媒体微粉砕プロセスが使用される。媒体ミルの内部温度を140°F以下、例えば110°F未満に維持するために、冷却を提供することができる。微粉砕時間は、使用されるミルの種類及び大きさに応じて変わるが、多くの場合、2〜15時間の範囲である。特定の実施態様において、微粉砕プロセスは、平面スチールパネルへのドローダウンの外観を以前の許容される物質から生じた標準と比較することによって完了したと考慮される。
【0062】
前述のプロセスに関して発見された別の利点は、微粉砕プロセスが、ステアリン酸及びオレイン酸を含む高級脂肪酸のような従来の潤滑剤の実質的な又は完全な不在下で実施できることである。あらゆる理論に束縛されるものではないが、そのような潤滑剤の存在は、得られる被覆の、続いて適用される被覆に接着する能力に有害な影響を与える可能性があると考えられる。その結果、特定の実施態様において、本発明のプロセスは、ミネラルスピリット、ステアリン酸及びオレイン酸のような長鎖脂肪酸、フルオロカーボン樹脂、アルミニウムホイルの小片及び/又はあらゆる他の従来の潤滑剤の実質的な不在下で、又は幾つかの場合では、完全な不在下で、一般に球状の金属粒子を非球状金属粒子に変換することを含む。
【0063】
特定の実施態様において、別の被覆が、前記記載の被覆の少なくとも一部を覆って付着される。特に、本発明の特定の実施態様において、電着被覆組成物が、電着プロセスによって、前記記載の被覆の少なくとも一部を覆って付着される。
【0064】
あらゆる適切な電着プロセス及び電着可能な被覆組成物を、本発明に従って使用することができる。当業者には明白であるが、電着可能な被覆組成物を適用するには、組成物の水性分散体を導電性陰極及び陽極と接触させる。陰極と陽極の間に電流を流すと、電着可能な組成物の接着膜は、組成物がアニオン的又はカチオン的に電着可能であるかに応じて、陰極又は陽極のいずれかの機能を果たす基材に実質的に連続的方法で付着する。
【0065】
特定の実施態様において、電着可能な被覆組成物は、水性媒質に分散された樹脂相を含む。樹脂相は、アニオン性膜形成有機成分又はカチオン性膜形成有機成分を含むことができる膜形成有機成分を含む。特定の実施態様において、電着可能な被覆組成物は、活性水素基含有イオン性樹脂と、イオン性樹脂の活性水素と反応性のある官能基を有する硬化剤とを含む。
【0066】
アニオン性の電着可能な被覆組成物の非限定例には、非ゲル化水分散性の電着可能なアニオン性膜形成樹脂を含むものが挙げられる。アニオン性の電着可能な被覆組成物における使用に適している膜形成樹脂の例は、塩基可溶性カルボン酸含有ポリマー、例えば、乾性油又は半乾性脂肪酸エステルとジカルボン酸又は無水物との反応生成物又は付加物、及び脂肪酸エステル、不飽和酸又は無水物と、ポリオールと更に反応している任意の追加的な不飽和改質物質との反応生成物である。また適しているものは、不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル、不飽和カルボン酸と少なくとも1つの他のエチレン性不飽和モノマーの、少なくとも部分的に中和されている共重合体である。なお別の適切な電着可能なアニオン性樹脂は、アルキドアミノプラストビヒクル、すなわち、アルキド樹脂及びアミンアルデヒド樹脂を含有するビヒクルを含む。なお別の電着可能な樹脂組成物は、樹脂ポリオールの混合エステルを含む。これらの組成物は、米国特許第3,749,657号、第9欄1行目から第10欄13行目に詳細に記載されている(引用されている部分は、参照として組み込まれる)。
【0067】
「非ゲル化」とは、ポリマーには実質的に架橋がなく、適切な溶媒に溶解されると固有粘度を有することを意味する。ポリマーの固有粘度は、分子量の指標である。ゲル化ポリマーは、本質的に無限に高分子量を持つので、測定するには高すぎる固有粘度を有する。
【0068】
多種多様なカチオン性ポリマーが既知であり、ポリマーが「水分散性」である限り、すなわち水に可溶する、分散する又は乳化するように適合している限り、本発明に使用することができる。水分散性樹脂は、性質的にカチオン性であり、すなわち、ポリマーは、正電荷を付与するカチオン性官能基を含有する。多くの場合、カチオン性樹脂は活性水素基も含有する。
【0069】
適切なカチオン性樹脂の非限定例は、第三級スルホニウム塩基含有樹脂及び第四級ホスホニウム塩基含有樹脂のようなオニウム塩基含有樹脂、例えば、米国特許第3,793,278号及び同第3,984,922号それぞれに記載されているものである。他の適切なオニウム塩基含有樹脂には、第四級アンモニウム塩基含有樹脂、例えば、米国特許第3,962,165号、同第3,975,346号及び同第4,001,101号に記載されているような、有機ポリエポキシドと第三級アミン塩とを反応させて形成されたものが含まれる。また、適しているものは、アミン塩基含有樹脂、例えばポリエポキシドと第一級又は第二級アミンとの酸可溶性反応生成物、例えば、米国特許第3,663,389号、同第3,984,299号、同第3,947,338号及び同第3,947,339号に記載されているものである。
【0070】
特定の実施態様において、上記記載の塩基含有樹脂は、ブロックトイソシアネート硬化剤と組み合わせて使用される。イソシアネートを、米国特許第3,984,299号に記載されているように完全にブロックすることができるか、又はイソシアネートを、米国特許第3,947,338号に記載されているように、部分的にブロックし、樹脂主鎖と反応させることができる。
【0071】
また、米国特許第4,134,866号及びDE−OS番号2,707,405に記載されている1成分組成物を、カチオン性樹脂として使用することができる。エポキシアミン反応生成物の他に、樹脂を、米国特許第3,455,806号及び同第3,928,157号に記載されているようなカチオン性アクリル樹脂から選択することもできる。また、欧州特許出願番号12463に記載されているような、エステル交換によって硬化するカチオン性樹脂を使用することができる。更に、米国特許第4,134,932号に記載されているような、マンニッヒ塩基から調製されるカチオン組成物を使用することができる。また、有用なものは、米国特許第3,663,389号、同第3,947,339号及び同第4,115,900号に記載されているような、第一級及び/又は第二級アミン基を含有する正電荷樹脂である。
【0072】
特定の実施態様において、カチオン性樹脂は、重量%が組成物の総重量に基づいて、1〜60重量%、例えば5〜25重量%の量で電着被覆組成物に存在する。
【0073】
前記で考察したように、本発明に有用な電着可能な被覆組成物は、多くの場合、イオン性樹脂の活性水素基と反応性がある官能基を含有する硬化剤を更に含む。アニオン性の電着可能な被覆組成物において多くの場合硬化剤として使用される適切なアミノプラスト樹脂は、商標CYMEL(登録商標)でAmerican Cyanamid Co.から及び商標RESIMENE(登録商標)でMonsanto Chemical Co.から市販されている。特定の実施態様において、アミノプラスト樹脂硬化剤は、活性水素を含有するアニオン性の電着可能な樹脂と共に、電着可能な被覆組成物の樹脂固形分の総重量に基づいて、5〜60重量%、例えば20〜40重量%の範囲の量で利用される。
【0074】
ブロックト有機ポリイソシアネートは、多くの場合、カチオン性の電着可能な硬化組成物において硬化剤として使用され、上記に記載されたように、完全にブロックされている又は部分的にブロックされていることができる。特定の例には、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、2,4−又は2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)(その混合物も含む)、p−フェニレンジイソシアネート、テトラメチレン及びヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、フェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートとポリメチレンポリフェニルイソシアネートの混合物のような脂環式ポリイソシアネートを含む芳香族及び脂肪族ポリイソシアネート、並びにトリイソシアネートのような高級ポリイソシアネート、ネオペンチルグリコール及びトリメチロールプロパンのようなポリオールとのイソシアネートプレポリマー、ポリカプロラクトンジオール及びトリオールのようなポリマーポリオールとのイソシアネートプレポリマー(NCO/OHの当量比は1を超える)が挙げられる。ポリイソシアネート硬化剤は、多くの場合、被覆組成物の総樹脂固形分の重量に基づいて、1〜65重量%、例えば5〜45重量%の範囲の量で、カチオン性樹脂と共に利用される。
【0075】
本発明で利用される電着可能な被覆組成物は、典型的には水性分散体の形態である。用語「分散体」は、樹脂が分散相にあり、水が連続相にある、2相透過被覆半透明又不透明樹脂系を意味する。樹脂相は、一般に1ミクロン未満、例えば0.5ミクロン未満、幾つかの場合では0.15ミクロン未満の平均粒径を有する。
【0076】
特定の実施態様において、水性媒質中の樹脂相の濃度は、水性分散体の総重量に基づいて、少なくとも1重量%、例えば2〜60重量%である。そのような組成物が樹脂濃縮物の形態である場合、多くの場合、水性分散体の重量に基づいて20〜60重量%の樹脂固形分を有する。
【0077】
加えて、水性媒質は、凝集溶剤を含有することができる。有用な凝集溶剤には、炭化水素、アルコール、エステル、エーテル及びケトンが含まれる。あるとすると、凝集溶剤の量は、一般に、水性媒質の総重量に基づいて、0.01〜25重量%、例えば0.05〜5重量%である。
【0078】
顔料組成物及び、望ましい場合、多様な添加剤、例えば界面活性剤、湿潤剤又は触媒を分散体に含めることができる。顔料組成物は、顔料、例えば酸化鉄、クロム酸ストロンチウム、カーボンブラック、炭塵、二酸化チタン、タルク、硫酸バリウム、並びにカドミウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローなどのような着色顔料を含む従来型のものであることができる。特定の実施形態において、電着可能な被覆組成物は、暗色の(例えば、光学的に黒い)電着可能な被覆組成物の生成をもたらす着色料を含有する。特定の実施形態において、暗色の電着可能な被覆組成物は、40以下、例えば、30以下、または、いくつかの場合のおいては20以下のCIELAB L*値を有する被覆を生成し得る。
【0079】
分散体の顔料含有量は、通常、顔料対樹脂比として表される。特定の実施態様において、顔料が用いられる場合、顔料対樹脂比は、通常、0.02〜1:1の範囲内である。上記に記述された他の添加剤は、多くの場合、組成物の樹脂固形分の重量に基づいて、0.01〜3重量%の量で分散体中に存在する。
【0080】
本発明の特定の実施態様において、電着可能な被覆組成物は、比較的薄い膜、すなわち、0.5ミル(12.7ミクロン)以下、幾つかの場合では0.2ミル(5.1ミクロン)以下の乾燥膜厚をもたらすように、基材に付着される。そのような組成物は、任意の適切な装置を使用して、例えば米国公開特許出願2006/0032751A1、2006/0032748A1、2006/0049062A1、2006/0051512A1及び2006/0051511A1の1つ以上に記載されている方法及び/又は装置の1つを使用して、金属基材に適用することができる。
【0081】
驚くべきことに、比較的低膜厚が使用されたとしても優れた接着及び耐食特性を示すことができる、(i)暗色の亜鉛リッチプライマー被覆と、(ii)亜鉛リッチプライマー被覆の少なくとも一部を覆って付着している暗色の電着被覆とを含む多成分複合被覆で被覆された金属物品を製造することが可能であることが発見されている。本明細書で使用されるとき、用語「暗色の亜鉛リッチプライマー被覆」は、暗色の亜鉛リッチプライマー組成物から付着された(deposited from)暗色の被覆を意味する。本明細書で使用されるとき、用語「暗色の電着被覆」は、水性の暗色の電着可能な組成物から、電着プロセスによって付着された暗色の被覆を意味する。本明細書で使用されるとき、被覆が別の被覆を「覆って付着している」と記述される場合、介在する被覆層が存在することなく被覆が他の被覆に直接適用される想定と、さらに、介在する被覆層が2つの被覆を離す状況とを包含することを意味する。しかし、特定の実施態様において、暗色の電着被覆は、介在する被覆層が存在することなく、暗色の亜鉛リッチプライマーの少なくとも一部を覆って直接付着している。
【0082】
したがって、特定の実施態様において、本発明は、(a)暗色の亜鉛リッチプライマー被覆と、(b)暗色の亜鉛リッチプライマー被覆の少なくとも一部を覆って付着している暗色の電着被覆とを含む多成分複合被覆で少なくとも部分的に被覆された金属物品を対象とし、特定の実施態様において、物品は、暗色の亜鉛リッチプライマーと暗色の電着被覆の乾燥膜厚を合わせた合計が、1.5ミル(38.1ミクロン)以下、幾つかの場合では1ミル(25.4ミクロン)以下である場合、曝露の500時間後、幾つかの場合では曝露の700時間後、又は、さらに他の場合では曝露の1000時間後、ASTM B117に従って試験したとき、腐食に対して耐性がある。本明細書で使用されるとき、物品が「腐食に対して耐性がある」と記述される場合、多成分複合被覆で被覆された物品の部分には、物品を一定温度に保持されたチャンバの中に置き、5%塩溶液の微細噴霧(霧)に曝露し、水ですすぎ、乾燥し、ASTM B117に従って特定の時間曝露した後、肉眼で見ることができる赤さびがないことを意味する。更に、本明細書において、物品が「500時間の曝露後」に腐食に対して耐性があると記述される場合、正確に500時間でそのように試験されたとき、物品が腐食に対して耐性があること、並びに500時間を超える選択された時間、例えば500から1000時間の間で選択された時間の後でそのように試験されたとき、物品が腐食に対して耐性があることを意味する。同様に、本明細書において、物品が「700時間の曝露後」又は「1000時間の曝露後」に腐食に対して耐性があると記述される場合、正確に700時間又は1000時間でそのように試験されたとき、物品が腐食に対して耐性があること、並びに700時間又は1000時間を超える選択された時間の後でそのように試験されたとき、物品が腐食に対して耐性があることを意味する。
【0083】
そのような多成分複合被覆が、互いに及び金属基材に接着することも見出されている。本発明の目的において、接着は、多重刃カッター(Paul N. Gardner Co., Inc.から市販されている)を使用して被覆基材に2回刻みを入れ(90°角)、刃が全ての被覆層を基材の中に切り込むことを確実にする、クロスハッチ接着試験を使用して測定される。被覆接着は、Nichiban L−24テープ(90°で4回の引っ張り)を使用して測定する。本発明の目的において、この試験後に少なくとも80%、幾つかの場合では90%以上の被覆が基材に接着している場合、被覆は「金属基材に接着している」と考慮した。
【0084】
暗色の電着被覆と組み合わせて暗色の亜鉛リッチプライマー被覆を上手く使用することにより(特定の実施形態において、亜鉛リッチプライマー被覆と電着被覆との間のL*値の差は、40単位以下、例えば、30単位以下、または、いくつかの場合においては25単位以下である。)、本発明は、多くの場合において、上述した見苦しい「接触点」に関連する問題を克服し得る。特に、「接触点」を有する被覆部分がお互いに分離され、その結果、暗色の電着被覆の少なくとも一部が接触点または接触点の周辺から取り除かれる場合、暗色である亜鉛リッチプライマー被覆は、特に目立たないかもしれず、(一般的である通り)明るい銀色の亜鉛リッチプライマー被覆が(一般的である通り)暗色の電着被覆の下に付着した場合とは異なる。
【0085】
理解されるように、本明細書に記載されている被覆物品は、前記記載の暗色の亜鉛リッチプライマー又は多成分複合被覆を覆って適用される装飾的及び/又は保護的仕上塗を含むこともできる。そのような仕上塗は、自動車用OEM組成物、自動車用再仕上げ組成物、工業用被覆、建築用被覆、電着、粉末被覆、コイル被覆及び航空宇宙用被覆用途において従来使用される種類の任意の組成物から付着することができる。そのような組成物には、典型的には、例えば米国特許第6,913,830号、第3欄15行目から第5欄8行目に記載されている物質のような(引用された部分は、参照として本明細書に組み込まれる)、膜形成樹脂が含まれる。そのような被覆組成物を、任意の従来の被覆技術を使用し、当業者によって容易に決定される条件を利用して、適用することができる。
【0086】
本発明は、また、500時間の曝露の後でASTM B117に従って試験したとき、腐食に対して耐性がある表面を含む金属物品を提供する方法を対象とする。これらの方法は、(a)暗色の亜鉛リッチプライマー被覆を表面の少なくとも一部を覆って付着すること〔ここで、(i)組成物の固形分の総重量に基づいて少なくとも25重量%の量で組成物中に存在する暗色の亜鉛フレークと、(ii)チタン酸塩から形成される結合剤とを含む暗色の亜鉛リッチ組成物から暗色の亜鉛リッチプライマー被覆が付着される〕、及び(b)暗色の亜鉛リッチプライマー被覆の少なくとも一部を覆って暗色の被覆を電着することを含み、暗色の亜鉛リッチプライマー及び暗色の電着被覆の乾燥膜厚を合わせた合計は、1.5ミル(38.1ミクロン)以下である。
【0087】
前述の記載からも明らかであるように、本発明は、(a)暗色の亜鉛リッチプライマー被覆と、(b)暗色の亜鉛リッチプライマー被覆の少なくとも一部を覆って付着している暗色の電着被覆とを含み、暗色の亜鉛リッチプライマー及び暗色の電着被覆の乾燥膜厚を合わせた合計が1.5ミル(38.1ミクロン)以下であり、物品が500時間の曝露後にASTM B117に従って試験する場合、腐食に対して耐性がある、多成分複合被覆で少なくとも部分的に被覆されている金属物品を対象とする。
【0088】
以下の実施例は本発明を説明し、本発明をその詳細まで制限するものとして考慮されるべきではない。実施例における、並びに明細書の全体を通して、全ての部及び百分率は、特に指示のない限り重量に基づく。
【実施例】
【0089】
実施例1
表1の仕込み2及び3を一緒に前混合し、次に、撹拌翼、冷却器、留出物トラップ及び連続窒素供給を備えた丸底フラスコ中の仕込み1に、撹拌しながら、5分間かけて加えた。30分後、温度を、蒸留が生じるまで上昇させた。24グラムの留出物を除去し、仕込み4を加えた。得られた物質は、琥珀色であり、室温で流し込みが可能であった。
【0090】
【表1】

【0091】
E.I. duPont de Nemours and Co.から市販されているテトラ−n−ブチルチタネート。
BASFから市販されているビス−フェノールA−エチレンオキシドジオール。
Exxon Chemicals Americaから市販されている。
【0092】
実施例2
表2の仕込み1を仕込み4及び半分の仕込み5と均質になるまでブレンドした。次に仕込み3を撹拌下で加えた。混合物を120°Fに加熱し、15分間保持した。仕込み2を、撹拌下で、十分に組み込まれ、塊がなくなるまでゆっくりと加えた。残りの仕込み5を加え、1時間混合した。
【0093】
【表2】

【0094】
U.S. Zincから市販されている、平均粒径2.5〜4.5ミクロンを有する亜鉛粉。
Elementis Specialties, Inc.から市販されているレオロジー添加剤。
Hercules Co.から市販されている。
【0095】
実施例3
表3の仕込み1を仕込み2とブレンドし、混合物が明澄になることによって反応の完了が明白になるまで、混合物を、撹拌下でブレンドした。仕込み5及び半分の仕込み6を加え、均質になり、仕込み5が完全に溶解するまでブレンドした。次に仕込み3を撹拌下で加えた。混合物を120°Fに加熱し、15分間保持した。仕込み4を、十分に組み込まれ、塊がなくなるまで、撹拌下でゆっくりと加えた。残りの仕込み5を加え、1時間混合した。
【0096】
【表3】

【0097】
E.I. duPont de Nemours and Co.から市販されているテトラ−2−エチルヘキシルチタネート。
【0098】
実施例4
表4の仕込み1を仕込み2とブレンドし、混合物が明澄になることによって反応の完了が明白になるまで、混合物を、撹拌下でブレンドした。仕込み3を加え、15分間撹拌した。仕込み4、次に仕込み5を、十分に組み込まれ、塊がなくなるまで、撹拌下でゆっくりと加えた。次に、仕込み6を加え、1時間混合した。
【0099】
【表4】

【0100】
BYK−Chemieから市販されているレオロジー添加剤。
Eckhart−Werkeから市販されている亜鉛/スズ合金フレークペースト
比較例C1
表5の仕込み1を仕込み2とブレンドし、混合物が明澄になることによって反応の完了が明白になるまで、混合物を、撹拌下でブレンドした。仕込み5及び半分の仕込み6を加え、均質になり、仕込み5が完全に溶解するまでブレンドした。次に仕込み3を撹拌下で加えた。混合物を120°Fに加熱し、15分間保持した。仕込み4を、十分に組み込まれ、塊がなくなるまで、撹拌下でゆっくりと加えた。残りの仕込み5を加え、1時間混合した。
【0101】
【表5】

【0102】
10Eckhart−Werkeから市販されている亜鉛/アルミニウム合金フレークペースト。
【0103】
実施例5〜11
表6の実施例5〜11において、チタン酸塩物質の有機改質又はハイブリッド形成の効果を実証する。実施例5〜11では、明澄で均質の生成物になることによって反応の完了が明白になるまで、物質を機械的撹拌により25℃でブレンドした。実施例7〜11では、混合物は、最初は混濁及び白濁していたが、およそ1時間の反応時間の後では明澄になった。全てのものは室温で流体であった。
【0104】
【表6】

【0105】
11E.I. DuPont de Nemours and Co.から市販されているn−ブチルポリチタネート。
12INVISTAから市販されているポリテトラメチレンエーテルグリコール。
【0106】
適用及び試験
実施例2、3、4及びC1の組成物を、清浄なサンドブラストボルトに、半径4cmのバスケットの中、ディップスピン法により350rpmの速度で15秒間適用した。次にボルトを200℃で20分間焼き付けた。加えて、組成物を清浄な冷間圧延スチールパネルにドローダウンバー法により適用し、200℃で20分間焼き付けた。得られた膜厚は、およそ8ミクロンであった。続いて、被覆ボルトに、上記に記載したFISHERSCOPE(登録商標)MMS膜厚計を使用し、ASTM B244に従って測定して、プライマー+仕上塗の総膜厚がおよそ16ミクロンとなるように、Powercron 6100XP(PPG Industries, Inc.から市販されている黒色カチオン性ビスフェノールAエポキシ系電着被覆)を用いる電着によって仕上塗りをした。同様に、それぞれのプライマー被覆スチールパネルに、その半分の面積を覆って電着被覆により仕上塗りをした。電着被覆を180℃で30分間焼き付けて硬化した。
【0107】
ボルトをプラスチックパネルの装着し、ASTM B117基準に準拠した塩噴霧キャビネットの中に置いた。これらは、それぞれの実施例において10個のボルトのセットで試験した。破損点は、あらゆる赤さびスポットが10個のボルトのセットのうち2個を超えて目に見えるように表れるのに必要な曝露時間として定義した。
【0108】
接着試験は、上記に記載したクロスハッチにより実施した。クロスハッチを、上記に記載した平面スチールパネル上で、プライマーのみ、並びにプライマー+電着仕上塗に対して試験した。
【0109】
実施例5〜11の生成物を、平面の清浄な冷間圧延スチールパネルに従来のドローダウン法により適用し、次に200℃で20分間焼き付けた。得られた乾燥膜厚は、およそ4〜5ミクロンであった。得られた膜を、膜結合性可視検査、親指爪引っ掻き、アセトン浸漬ラグによる摩擦、及び500×倍率で走査電子顕微鏡(SEM)により検査したときの膜の割れの程度についての可視査定によって評価した。
【0110】
結果を表7及び8に記載する。
【0111】
【表7】

【0112】
【表8】

【0113】
実施例12〜14
表9の実施例12〜14において、ケイ素ベースのポリマーによるチタン酸塩物質の改質又はハイブリッド形成の効果を実証する。実施例13及び14では、混合物が、反応し、明澄になるまでおよそ8時間を必要とした。全てのものは室温で流体であった。
【0114】
【表9】

【0115】
13Dow Corningから入手可能なシラノール官能シリコーン樹脂。
14Degussaから入手可能なポリエステルシリコーン樹脂。
【0116】
実施例12〜14の生成物を、平面の清浄な冷間圧延スチールパネルに従来のドローダウン法により適用し、次に200℃で20分間焼き付けた。得られた乾燥膜厚は、およそ4〜5ミクロンであった。得られた膜を、膜結合性可視検査、親指爪引っ掻き、アセトン浸漬ラグによる摩擦、及び500×倍率で走査電子顕微鏡(SEM)により検査したときの膜の割れの程度についての可視査定によって評価した。結果を表10に記載する。
【0117】
【表10】

【0118】

【0119】
実施例15〜17
実施例15及び17は、表11に記載した成分から調製した。
【0120】
【表11】

【0121】
15Eckart−Americaから入手可能なミネラルスピリット中の亜鉛フレークペースト。
【0122】
実施例15は、実施例3と同様な方法で調製した。表11の仕込み1を仕込み2とブレンドし、混合物が明澄になることによって反応の完了が明白になるまで、混合物を、撹拌下でブレンドした。仕込み6a及び半分の仕込み6を加え、均質になり、仕込み6aが完全に溶解するまでブレンドした。次に仕込み3を撹拌下で加えた。次に混合物を120°Fに加熱し、15分間保持した。仕込み4を、十分に組み込まれ、塊がなくなるまで、撹拌下でゆっくりと加えた。残りの仕込み6を加え、1時間混合した。
【0123】
実施例17は、実施例C1と同様な方法で調製した。表11の仕込み1を仕込み2とブレンドし、混合物が明澄になることによって反応の完了が明白になるまで、混合物を、撹拌下でブレンドした。次に、仕込み3を撹拌下で加え、続いて仕込み6、次に5、次に7、次に8を加えた。撹拌を30分間続けた。
【0124】
実施例16は、実施例15で調製した組成物1700グラムを、2400グラムの1.7〜2.4ミリメーターのセラミックジルコニウム媒体を投入した媒体ミル(Chicago Boiler L−3−J)で加工することによって調製した。これを90°Fで2400rpmにより3時間微粉砕した。物質は暗灰色から非常に銀色を帯びた色に変わり、非球状亜鉛粒子の形成を示した。
【0125】
実施例15〜17の適用及び試験
実施例15、16及び17の組成物を、平面の清浄なリン酸亜鉛冷間圧延スチールパネルに従来のドローダウン法により適用し、次に200℃で20分間焼き付けた。得られた乾燥膜厚は、およそ6〜8ミクロンであった。続いて、被覆パネルに、上記に記載したFISHERSCOPE(登録商標)MMS膜厚計を使用し、ASTM B244に従って測定して、プライマー+仕上塗の総膜厚がおよそ15〜17ミクロンとなるにように、Powercron XP(PPG Industries, Inc.から市販されている黒色カチオン性ビスフェノールAエポキシ系電着被覆)を製造者の説明書に従って用いて、電着により仕上塗りをした。同様に、それぞれのプライマー被覆スチールパネルに、その半分の面積を覆って電着被覆により仕上塗りをした。電着被覆を180℃で30分間焼き付けて硬化した。
【0126】
得られたパネルを、ASTM B117基準に準拠した塩噴霧キャビネットの中に置いた。接着試験は、上記に記載したクロスハッチにより実施した。クロスハッチをプライマーのみ、並びにプライマー+電着被覆に対して試験した。結果を表12に記載する。
【0127】
図1〜3のSEM画像は、実施例16で使用した微粉砕プロセスが実施例17の市販のフレークと有意に異なる形状を有する非球状粒子を生成することを示す。実施例16の組成物から生成される被覆は、実施例17の組成物から生成される被覆よりも多孔質な表面を有することも明らかである。
【0128】
【表12】

【0129】
実施例18〜20
実施例18および実施例19を、表13に示す成分から調製した。
【0130】
【表13】

【0131】
実施例18を、上記成分を順番に混合することにより、実施例15と同様の様式で調製した。次いで、1700グラムのこの組成物を、実施例16と同様の様式で加工した。
【0132】
実施例19を、上記成分を順番に混合して、1時間Cowles分散ブレード(dispersion blade)を用いて分散させることによって調製した。
【0133】
実施例20を、565.0重量部の実施例18の生成物と、550.0重量部の実施例19の生成物とを混合して、1時間Cowles分散ブレードを用いて分散させることによって調製した。
【0134】
(実施例18〜20の適用および試験)
実施例18、19、および20の組成物を、平面の清浄なリン酸亜鉛冷間圧延スチールパネルに従来のドローダウン法により適用し、次に200℃で20分間焼き付けた。厚さおよび色を測定後、この被覆パネルに、次いで、Powercron XP(PPG Industries, Inc.から市販されている黒色カチオン性ビスフェノールAエポキシ系電着被覆)を製造者の説明書に従って用いて、電着により仕上塗りをした。この電着被覆を180℃で30分間焼き付けて硬化した。
【0135】
得られたパネルを、ASTM B117基準に準拠した塩噴霧キャビネットの中に置いた。接着試験は、2mm間隔を有する5刃のクロスハッチ試験器を使用して実施し、続いて、テープ接着試験を実施した。結果を、表14に示し、仕上げ被覆の欠落パーセントとして表す。
【0136】
【表14】

【0137】
16 FISHERSCOPE(登録商標)MMS厚さ計を使用してASTM B244に従って測定した。
17 X−Rite MA−68(X−Rite,Incorporated(Grandville,Mich)から入手可能)を使用して、45°の角度で測定した。
【0138】
広範囲の本発明の概念から逸脱することなく、上記に記載された実施態様に変更を行えることが、当業者には理解される。したがって、本発明は、開示されている特定の実施態様に限定されず、添付の請求項に定義されている本発明の精神及び範囲内の修正を網羅することを意図することが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)暗色の亜鉛リッチプライマー被覆と、
(b)該亜鉛リッチプライマー被覆の少なくとも一部を覆って付着している暗色の電着被覆とを含み、
該亜鉛リッチプライマー及び該電着被覆の乾燥膜厚を合わせた合計が1.5ミル以下である場合、物品が500時間の曝露後に腐食に対して耐性がある
多成分複合被覆で少なくとも部分的に被覆された金属物品。
【請求項2】
前記亜鉛リッチプライマー被覆が黒色亜鉛フレークを含む組成物から付着される、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記黒色亜鉛フレークが、亜鉛粒子の総重量に基づいて少なくとも25重量%の量で存在する、請求項2に記載の物品。
【請求項4】
前記暗色の亜鉛リッチプライマー被覆が光学的に黒い、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記暗色の亜鉛リッチプライマーが60以下のCIELAB L*値を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記暗色の亜鉛リッチプライマーが40以下のCIELAB L*値を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記暗色の亜鉛リッチプライマー被覆が、チタン酸塩及び/又はその部分的水解物から形成される結合剤を含む組成物から付着される、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記結合剤が、下記:
(1)チタン酸塩及び/又はその部分的水解物、ならびに
(2)該チタン酸塩及び/又はその部分的水解物のアルコキシ基と反応性がある官能基を有する多官能ポリマー
から形成されるハイブリッド有機−無機コポリマーを含む、請求項7に記載の物品。
【請求項9】
前記多官能ポリマーがポリオールを含む、請求項8に記載の物品。
【請求項10】
前記ポリオールが、(i)芳香族基を含むポリオールと、(ii)アルキレンオキシドとを含む反応物から形成される、請求項9に記載の物品。
【請求項11】
前記結合剤が、前記組成物中の固形分の総重量に基づいて2〜10重量%の量で該組成物に存在する、請求項7に記載の物品。
【請求項12】
前記物品が小さい部品である、請求項1に記載の物品。
【請求項13】
前記暗色の亜鉛リッチプライマー及び前記暗色の電着被覆の乾燥膜厚を合わせた合計が少なくとも1ミルである、請求項1に記載の物品。
【請求項14】
前記暗色の電着被覆が40以下のCIELAB L*値を有する、請求項5に記載の物品。
【請求項15】
(a)暗色の金属粒子と、
(b)下記:
(i)チタン酸塩及び/又はその部分的水解物、ならびに
(ii)該チタン酸塩及び/又はその部分的水解物のアルコキシ基と反応性がある官能基を有する多官能ポリマー
から形成されるハイブリッド有機−無機コポリマーを含む膜形成結合剤と
を含む、被覆組成物。
【請求項16】
前記暗色の金属粒子が黒色亜鉛フレークを含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記亜鉛粉が、前記組成物の総固形分重量に基づいて少なくとも25重量%の量で該組成物に存在する、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
(a)組成物の総固形分重量に基づいて、少なくとも25重量%の暗色の亜鉛フレークと
(b)チタン酸塩から形成される結合剤
とを含む、暗色の亜鉛リッチ被覆組成物。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【公表番号】特表2011−523380(P2011−523380A)
【公表日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506421(P2011−506421)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/041404
【国際公開番号】WO2009/132102
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ, インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】