説明

曲がりやすいプレートを有する流体分配マニホールド

流体分配マニホールドは第1プレート及び第2プレートを有する。前記第1プレートは、長さ次元、幅次元、並びに、前記第1プレートの長さ次元及び幅次元のうちの少なくとも1つにわたって前記第1プレートを変形可能にする厚さを有する。前記第2プレートは、長さ次元、幅次元、並びに、前記第2プレートの長さ次元及び幅次元のうちの少なくとも1つにわたって前記第2プレートを変形可能にする厚さを有する。少なくとも前記第1プレート及び前記第2プレートの少なくとも一部は、流体流を導く流路を画定する凹凸パターンを画定する。前記第1プレート及び前記第2プレートは1つとなって、前記長さ次元と前記幅次元のうちの少なくとも1つに沿った高さ次元において非平面形状を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、特に薄膜材料の堆積中での気体又は液体物質の拡散流に関する。より詳細には本発明は、複数の気体流を同時に基板へ案内する分配又は供給ヘッドを用いて前記基板上に原子層を堆積する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜堆積用に広く用いられている手法は、反応チャンバ内で反応する化学反応性の分子を利用して、基板上に所望の膜を堆積する化学気相成長(CVD)である。CVD堆積にとって有用な分子前駆体は、堆積される膜の元素(原子)構成物を有し、一般的には他の元素をも有する。CVD前駆体は、基板で反応させることで該基板上に薄膜を形成するため、気体状態でチャンバへ供給される揮発性分子である。化学反応は、所望の膜厚を有する薄膜を堆積する。
【0003】
十分に制御された1種類以上の分子前駆体の流束をCVD反応装置へ流入させる必要があることは、大抵のCVDにとって共通する。これらの分子前駆体間での化学反応を促進すると同時に効率的に副生成物が除去されるように、基板は、制御された圧力条件下において十分制御された温度に維持される。最適なCVD性能を得るには、プロセス全体を通じた気体流、温度、及び圧力の定常状態の条件を実現並びに維持する能力と、過渡状態を最小限に抑制又は排除する能力が必要とされる。
【0004】
特に半導体、集積回路、及び他の電子デバイスの分野においては、従来のCVD法が到達可能な限界を超える、優れたコンフォーマルコーティング特性を備える−特に高品質で密な−薄膜で、特に低温での製造が可能な薄膜が求められている。
【0005】
原子層堆積(ALD)は、従来のCVDと比較して、厚さ分解能及びコンフォーマル能を改善しうる別な膜堆積手法である。ALDプロセスは、従来のCVDに係る従来の薄膜堆積プロセスを、1層の原子層を堆積する複数の工程に分ける。有利となるように、ALD工程は、自己終端で、かつ、自己終端曝露時間まで又はそれを超えて実行されるときに、1層の原子層を堆積することができる。原子層は典型的には、約0.1〜約0.5分子層の範囲である。典型的な寸法は数Å未満のオーダーである。ALDでは、原子層の堆積は、反応性分子前駆体と基板との化学反応の結果である。各独立したALD反応−堆積工程では、正味の反応は、所望の原子層を堆積し、かつ、分子前駆体に本来含まれる「余計な」原子を実質的に排除する。最も純粋な形式では、ALDは、反応に係る他の(複数の)前駆体が存在しない状態での各前駆体の吸着及び反応を有する。実際には、任意の系において、少量の化学気相成長反応となってしまう様々な前駆体の直接的な反応を回避することは難しい。ALDを実行する任意の系の目標は、少量のCVD反応が許容されると認められる一方で、ALDシステムと相応するデバイスの性能及び属性を得ることである。
【0006】
ALD堆積においては、典型的な2種類の分子前駆体が、別個の段階でALD反応装置内に導入される。たとえば、金属前駆体MLxは、原子又は分子リガンドLと結合する金属元素Mを有する。たとえばMは、Al、W、Ta、Si、Zn等であってよいが、これらに限定されない。金属前駆体は、基板表面が分子前駆体と直接反応するように準備されるときに、基板と反応する。たとえば基板表面は典型的には、金属前駆体と反応するAH等の水素含有リガンドを含むように準備される。硫黄(S)、酸素(O)、及び窒素(N)は典型的なAの元素である。気相金属前駆体分子は、基板表面上のすべてのリガンドと実効的に反応する結果、次式で表される金属の単原子層が堆積される。
基板−AH+MLx→基板−AMLx-1+HL (1)
ここでHLは反応副生成物である。反応中、初期の表面リガンドAHが消費され、金属前駆体MLxとはさらなる反応をしないリガンドLで表面は覆われるようになる。従って、表面上のすべての初期リガンドAHがすべてAMLx-1に置き換わるとき、反応は自己終端する。反応段階には典型的に、第2の反応物質である気相前駆体物質を独立して導入する前に、チャンバから余剰の金属前駆体を除去する不活性ガスパージ段階が続く。
【0007】
続いて第2分子前駆体は、金属前駆体に対する基板の表面反応性を元に戻すのに用いられる。これはたとえば、リガンドLを除去して、リガンドAHを再堆積することによって行われる。この場合、第2前駆体は典型的に、所望(典型的には非金属)の元素A(つまりO,N,S)及び水素(つまりH2O,NH3,H2S)を有する。続く反応は以下である。
基板−A-ML+AHy→基板−A-M-AH+HL (2)
これは、表面をAHで覆われた状態に変換する(ここでは簡明を期すため、化学反応は平衡ではないものとする)。所望の他の元素Aは膜中に取り込まれる。意図しないリガンドLは揮発性副生成物として除去される。再度、反応は、反応サイト(この場合、L個の終端したサイト)を消費し、基板上の反応サイトが完全に使い果たされたときに自己終端する。続いて第2分子前駆体は、第2パージ段階において、不活性パージガスを流すことによって、堆積チャンバから除去される。
【0008】
まとめると、基本的なALDプロセスは、化学物質の流束を交互に基板へ流すことを必要とする。代表的なALDプロセスは、上述したように、4つの異なる動作段階を有するサイクルである。前記4つの異なる動作段階とは、1.MLxの反応、2.MLxのパージ、3.AHyの反応、4.AHyのパージ、続いて段階1に戻る。
【0009】
このような、途中にパージ動作を行いながら、表面反応と、基板表面を初期の反応状態に戻す前駆体除去を交互に繰り返すシーケンスは典型的なALD堆積サイクルである。ALD動作の重要な特徴は、基板を初期の表面化学状態に戻すことである。このような繰り返される工程の組を利用することで、膜は基板上で層を形成してよい。そのようにして形成された複数の層は、化学反応速度、サイクル当たりの堆積、組成、及び厚さが一様な等しいサイズとなる。
【0010】
ALDは、多数の種類の、半導体デバイスを含む薄膜電子デバイス及び支持用電子部品−たとえばレジスタ、キャパシタ、絶縁体、バスライン、及び他の伝導性構造−を形成する製造工程として用いられてよい。ALDは、電子デバイスの部品中に金属酸化物の薄膜を形成するのに特に適している。ALDによって堆積可能な機能材料の一般的な分類は、導体、誘電体、又は絶縁体、及び半導体を有する。
【0011】
導体は任意の有用な伝導性材料であってよい。たとえば導体は透明材料−たとえばインジウムスズ酸化物(ITO)、ドーピングされたZnO、SnO2、又はIn2O3−を有してよい。導体の厚さは変化してよい。特別な例によると、導体の厚さは、約50nm〜約1000nmの範囲で変化してよい。
【0012】
有用な半導体材料の例は化合物半導体−たとえばGaAs、GaN、CdS、真性ZnO、及びZnS−である。
【0013】
誘電材料は、パターニングされた回路の様々な部分を電気的に絶縁する。誘電層は絶縁体又は絶縁層とも指称されてよい。誘電体として有用な材料の具体例は、ストロンチウム酸塩、タンタル酸塩、チタン酸塩、ジルコニウム酸塩、アルミニウム酸化物、シリコン酸化物、タンタル酸化物、ハフニウム酸化物、チタン酸化物、セレン化亜鉛、及び硫黄化セレンを含む。それに加えて、これらの例の混晶、混合物、及び多層体も誘電体として用いられてよい。これらの材料のうち、アルミニウム酸化物が好ましい。
【0014】
誘電構造層は、異なる誘電率を有する2層以上の層を有してよい。そのような絶縁体は特許文献1と2で論じられている。誘電材料は典型的には、約5eVよりも大きなバンドギャップを示す。有用な誘電材料の厚さは変化してよい。特別な例によると、有用な誘電材料の厚さは約10nm〜約300nmの範囲であってよい。
【0015】
多数のデバイス構造が、上述の機能層によって作製されて良い。レジスタは、中程度〜不十分な伝導度を有する伝導性材料を選ぶことによって作製されてよい。キャパシタは、2つの導体間に誘電体を設けることによって作製されてよい。ダイオードは、2つの伝導性電極間に相補的なキャリア型の2つの半導体を設けることによって作製されてよい。また、相補的なキャリア型の2つの半導体の間に真性の半導体領域が設けられてもよい。このことは、その領域には、自由荷電担体の数が少ないことを意味する。ダイオードはまた、2つの導体間に1つの半導体を設けることによって構築されてもよい。ここで、複数の導体/半導体界面のうちの1つは、一方向に強く流れる電流に抗するショットキーバリアを生成する。トランジスタは、導体(ゲート)上に、絶縁層を設け、それに続いて半導体層を設けることによって作製されてよい。2層以上の他の伝導性電極(ソース及びドレイン)が、間隔を空けて上部半導体層と接する場合、トランジスタが形成されてよい。上述した任意のデバイスは、必要な界面が生成される限り、様々な構成をとるように形成されてよい。
【0016】
薄膜トランジスタの典型的な用途では、デバイスを流れる電流を制御することのできるスイッチが必要となる。そのため、スイッチがオン状態となるときに、高電流がデバイスを流れることが可能なことが望ましい。電流の大きさは、半導体の荷電担体の移動度に関連する。デバイスがオン状態となるときに、電流が非常に小さくなることが望ましい。これは荷電担体密度に関連する。さらに、可視光は、薄膜トランジスタの応答に(ほとんど)影響しないことが一般的には好ましい。このことを真とするため、半導体のバンドギャップは、可視光への曝露がバンド間遷移を生じさせないように、十分大きく(>3eV)なければならない。高移動度、低キャリア密度、及び高バンドギャップを得ることができる材料はZnOである。さらに運動するウエブ上で大容量製造を行うには、プロセスに用いられる化学物質は、安価で低毒性であることが非常に望ましい。このことは、ZnO及びその前駆体の多くを用いることによって満足されうる。
【0017】
バリア層は、ALD堆積プロセスが十分に適する他の用途を代表する。バリア層は典型的には、他の材料への不純物の通過を減少、遅延、またさらには防止する材料の薄膜である。典型的な不純物は空気、酸素、及び水を含む。バリア層が、不純物の通過を減少、遅延、またさらには防止する任意の材料を有してよい一方で、この用途に特に十分適した材料は、たとえばアルミニウム酸化物のような絶縁体、及び、様々な酸化物を含む層構造を有する。
【0018】
自己飽和表面反応は、設計許容度及び流れシステムの制約又は表面の幾何学構造(つまり3次元の高アスペクト比の構造)に関連する制約により、表面の均一性を阻害する恐れのある不均一な輸送の影響を受けにくくなる。一般的な規則として、反応プロセスにおける化学物質の流束が不均一である結果、一般的に、表面領域の各異なる部分にわたって完了時間がそれぞれ異なってしまう。しかしALDによると、各反応は、基板表面全体で完了することが可能となる。よって完了する反応時間の差異は、均一性に不利益を与えない。これは、最初に完了する領域が反応を自己終端させ、他の領域は、十分処理された表面が意図した反応を起こすまで継続することができるからである。
【0019】
典型的には、ALDプロセスは、1回のALDサイクル(1回のサイクルは、先に列挙した1〜4の番号が付された工程を有する)で、約0.1〜約0.2nmの膜を堆積する。多くの又はほとんどの半導体の用途については、約3nm〜30nmの範囲の均一な膜厚を供し、かつ他の用途についてはさらに厚い膜を供するため、有用で経済的にも実現可能なサイクル時間が実現されなければならない。産業界のスループットの基準によると、基板は2分〜3分以内で処理されることが好ましい。このことは、ALDサイクル時間が、約0.6秒〜約6分の範囲でなければならないことを意味する。
【0020】
ALDは、制御されたレベルの高均一薄膜堆積を実現することをかなりの確かさで保証する。しかしALD固有の技術的能力と利点にもかかわらず、多数の技術的な課題が依然として残されている。一の重要な問題は必要なサイクル数に関する。反応サイクルとパージサイクルとを繰り返すので、ALDを有効利用するには、迅速にパージサイクルを実行しながら、化学物質の流束をMLxからAHyへ急峻に変化させることが可能な装置が必要となる。従来のALDシステムは、必要とされるシーケンスにおいて基板上へ様々な気体物質を迅速に循環させるように設計されている。しかし、必要な速度で意図しない混合を生じさせることなく、必要とされる一連の気相組成物をチャンバへ導入する信頼性のある方法を得ることは難しい。さらにALD装置は、多くの基板を費用対効果よくコーティングすることを可能にするため、多くのサイクルを効率的かつ高い信頼性でこのような迅速な一連の処理を実行できなければならない。
【0021】
ALD反応が自己終端に到達する必要のある時間を最小限にするための努力では、任意の所与の反応温度にて、一の方法は、所謂「パルス生成」システムを用いることによって、ALD反応装置へ流入する化学物質の流束を最大化した。ALD反応装置へ流入する化学物質の流束を最大化するため、不活性ガスの希釈を最小にして、かつ高圧力で、ALD反応装置へ分子前駆体を導入することが有利である。しかしこれらの手法は、短いサイクル時間及びALD反応装置からのこれらの分子前駆体の迅速な除去を実現する必要性とは反対に作用する。よって迅速な除去は、ALD反応装置内でのガス滞在時間を最小限に抑制しようとする。ガス滞在時間τは、反応装置の容積V、ALD反応装置内での圧力P、及び流れQの逆数に比例する。つまり、
τ=VP/Q (3)
となる。
【0022】
典型的なALDチャンバでは、容積(V)及び圧力(P)は、機械的制約及び排気制約によってそれぞれ独立して影響を受けることで、滞在時間を低い値に厳密に制御することが困難となる。従って、ALD反応装置内での圧力(P)を下げることで、ガス滞在時間が低下し、かつ、ALD反応装置から化学前駆体の除去(パージ)速度が増大する。対照的に、ALD反応時間を最小限に抑制するには、ALD反応装置内部での高い圧力を利用することによって、ALD反応装置へ流入する化学前駆体の流束を最大化する必要がある。それに加えて、ガス滞在時間と化学物質の利用効率のいずれも流れに反比例する。よって流れを低下させることで効率が増大しうる一方で、ガス滞在時間も増大させてしまう。
【0023】
既存のALD手法は、化学物質の利用効率を改善しながら反応時間を短くする必要性と、他方で、パージガス滞在時間と化学物質除去時間を最小限に抑制する必要性との間でのトレードオフで妥協してきた。気体物質の「パルス状の」供給の固有の限界を克服するための一の手法は、各反応ガスを連続的に供し、かつ、各ガスに連続して通り抜けるように基板を移動させることである。たとえば特許文献3は、前駆体及びパージガス用の分離したガスポートを有し、各ガスポート間の真空ポンプポートによって変更する、真空下での処理チャンバについて記載している。各ガスポートは、ガスの流れを、基板へ向かって下方へ案内する。各独立するガス流は、壁又は間仕切りによって分離される。各ガス流の両側にはガスを排気するための真空ポンプが備えられている。各間仕切りの下部は、基板に近づく−たとえば基板表面から約0.5mmよりも近づく−ように延在する。このようにして、間仕切りの下部は、ガス流が基板表面と反応した後に、そのガス流が前記下部の周辺から真空ポートまで流れることを可能にするのに十分な距離だけ、基板表面から隔離される。
【0024】
1つ以上の基板ウエハを保持するため、回転台又は他の輸送装置が供される。この装置により、基板が様々なガス流の付近で往復されることで、ALD堆積は有効となる。一の実施例では、基板は、チャンバを貫通する直線経路に従って動かされる。前記基板は、前記チャンバ内で何度も前後に移動する。
【0025】
連続ガス流を用いた他の装置は特許文献4に示されている。ガス流のアレイには、ソースガス開口部、キャリアガス開口部、及び真空排出開口部が交互に配置されたものが供される。アレイ全体にわたる基板の往復運動は、繰り返しになるが、パルス動作を必要とすることなく、ALD堆積を有効にする。図13及び図14の実施例では、特に、基板表面と反応性気体との間での連続する相互作用が、ソース開口部の固定されたアレイ全体にわたる基板の往復運動によってなされる。拡散バリアは、排出開口部間にキャリアガス開口部を有することによって形成される。特許文献4は、係る実施例の動作は大気圧でも可能であると述べている。ただしプロセスの詳細すなわち実施例はほとんど与えられていない。
【0026】
たとえば特許文献3と4に記載されたシステムが、パルスガス法に固有の困難の一部を回避できる一方で、これらのシステムは他の課題を有する。特許文献3のガス流供給ユニットと特許文献4のガス流アレイのいずれも、約0.5mmよりも基板に近づけて用いることができない。特許文献3に開示されたガス流供給装置も特許文献4に開示されたガス流供給装置も、運動するウエブ表面−たとえば電子回路、光センサ、又はディスプレイを形成する可撓性基板として用いるようなもの−と併用可能なようには構成されていない。特許文献3のガス流供給ユニットと特許文献4のガス流供給ユニットが複雑な構成−各々はガス流と真空を供する−であることで、これらの解決法は、実装困難で、拡張に費用を要し、かつ、その潜在的な利用可能性を、限られた寸法の動く基板への堆積用途に限定してしまう。しかもアレイ中の様々な地点で均一の真空度を維持すること、及び、相補的な圧力で同期したガス流と真空とを維持することは非常に難しいため、基板表面へ供されるガス流束の均一性を妥協することになる。
【0027】
特許文献5は、大気圧での原子層化学気相成長法について開示している。特許文献5は、反応速度の異常な増大が、動作圧力を大気圧にまで変化させることによって得られることを開示している。これには、反応物の濃度が桁で増大することで、表面反応速度も改善されることも含まれる。特許文献5の実施例は、プロセスの各段階用に各独立したチャンバを有する。とはいえ特許文献5の図10は、チャンバ壁が除去された実施例を図示している。一連の各独立した注入装置は、回転する環状基板ホルダトラックの周囲で間隔を空けて設けられている。各注入装置は、操作される反応物、パージ、及び排出マニホールドと制御装置を各独立に内蔵し、プロセスを経る各基板についての一の完全な単層堆積及び反応物パージサイクルとして機能する。特許文献5にはガス注入装置の詳細は(ほとんど)記載されていない。ただし特許文献5は、注入装置の間隔は、隣接する注入装置からの汚染が、パージガス流と各注入装置に内蔵される排出マニホールドによって防止されるように選ばれると述べている。
【0028】
相互に反応するALDガスを分離するための特に有用な方法は、特許文献6に記載されたガスベアリングALD装置である。相対的に高い圧力が、堆積ヘッドと基板との間のギャップ内に生成され、そのためガスは、ソース領域から明確に画定された経路を通って、堆積される基板付近の排出領域へ強制的に流される。それにより、この装置の効率が向上する。
【0029】
ALD堆積プロセスが様々な用途について様々な産業での利用に適しているので、特に空間依存ALDと広く指称されているALDの領域において、ALD堆積プロセス、システム、及び装置を改良する努力が現在もなお続けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】米国特許第5981970号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/021454号明細書
【特許文献3】米国特許第6821563号明細書
【特許文献4】米国特許第4413022号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0084610号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2008/0166880号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2009/0130858号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2007/0228470号明細書
【非特許文献】
【0031】
【非特許文献1】"Flow Measurement" by Bela G. Liptak (CRC Press, 1993 ISBN 080198386X, 9780801983863).
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明の一の態様によると、流体分配マニホールドは第1プレート及び第2プレートを有する。前記第1プレートは、長さ次元、幅次元、並びに、前記第1プレートの長さ次元及び幅次元のうちの少なくとも1つにわたって前記第1プレートを変形可能にする厚さを有する。前記第2プレートは、長さ次元、幅次元、並びに、前記第2プレートの長さ次元及び幅次元のうちの少なくとも1つにわたって前記第2プレートを変形可能にする厚さを有する。少なくとも前記第1プレート及び前記第2プレートの少なくとも一部は、流体流を導く流路を画定する凹凸パターンを画定する。前記第1プレート及び前記第2プレートは1つとなって、前記長さ次元と前記幅次元のうちの少なくとも1つに沿った高さ次元において非平面形状を形成する。
【0033】
本発明の他の態様によると、基板上に薄膜材料を堆積する方法は:基板を供する工程;流体分配マニホールドを供する工程であって、前記流体分配マニホールドは第1プレート及び第2プレートを有し、前記第1プレートは、長さ次元、幅次元、並びに、前記第1プレートの長さ次元及び幅次元のうちの少なくとも1つにわたって前記第1プレートを変形可能にする厚さを有し、前記第2プレートは、長さ次元、幅次元、並びに、前記第2プレートの長さ次元及び幅次元のうちの少なくとも1つにわたって前記第2プレートを変形可能にする厚さを有し、少なくとも前記第1プレート及び前記第2プレートの少なくとも一部は、流体流を導く流路を画定する凹凸パターンを画定し、前記第1プレート及び前記第2プレートは1つとなって、前記長さ次元と前記幅次元のうちの少なくとも1つに沿った高さ次元において非平面形状を形成する、工程;並びに、前記凹凸パターンにより画定された流体流を導く流路を気体物質に貫流させた後に、前記気体物質を前記流体分配マニホールドから前記基板へ向かうように流す工程を有する。
【0034】
本発明の他の態様によると、流体分配マニホールドを製造する方法は:第1プレートを供する工程であって、前記第1プレートは、長さ次元、幅次元、並びに、前記第1プレートの長さ次元及び幅次元のうちの少なくとも1つにわたって前記第1プレートを変形可能にする厚さを有する、工程;第2プレートを供する工程であって、前記第2プレートは、長さ次元、幅次元、並びに、前記第2プレートの長さ次元及び幅次元のうちの少なくとも1つにわたって前記第2プレートを変形可能にする厚さを有し、少なくとも前記第1プレート及び前記第2プレートの少なくとも一部は、流体流を導く流路を画定する凹凸パターンを画定する、工程;並びに、前記長さ次元と前記幅次元のうちの少なくとも1つに沿った高さ次元において非平面形状を形成する治具を用いることによって、前記第1プレート及び前記第2プレートを1つに結合する工程を有する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】A-Dは、マイクロチャネル拡散素子を形成する凹凸パターンを含むプレートの集合体を概略的に表している。
【図2】複数の典型的な拡散装置の凹凸パターン及び可変凹凸パターンの可能性を表している。
【図3】本発明による原子層堆積用の供給装置の一実施例の断面図である。
【図4】薄膜堆積が行われる基板へ供される気体物質の一の典型的な構成を示す供給装置の一実施例の断面図である。
【図5】AとBは、供給装置の一実施例の断面図である。それぞれの堆積操作も概略的に示されている。
【図6】一の実施例による堆積システム内の供給装置の斜視分解図である。図中、任意の拡散装置も含まれている。
【図7A】図6の供給装置の接続プレートの斜視図である。
【図7B】図6の供給装置のガスチャンバプレートの平面図である。
【図7C】図6の供給装置のガス分配プレートの平面図である。
【図7D】図6の供給装置の底部プレートの平面図である。
【図8】単一材料部材から加工された供給装置の一実施例の供給部の斜視図である。前記供給部上には、本発明の拡散装置を直接取り付けられてよい。
【図9】一実施例における供給装置用の2つのプレート拡散装置を示す斜視図である。
【図10A】水平プレート拡散装置組立体の一実施例における2つのプレートのうちの一のプレートの平面図である。
【図10B】水平プレート拡散装置組立体の一実施例における2つのプレートのうちの一のプレートの斜視図である。
【図11A】水平プレート拡散装置組立体の一実施例における2つのプレートのうちの図9のプレートとは別のプレートの平面図である。
【図11B】水平プレート拡散装置組立体の一実施例における2つのプレートのうちの図9のプレートとは別のプレートの斜視図である。
【図12A】2つのプレートで組み立てられた拡散装置組立体の断面を表している。
【図12B】2つのプレートで組み立てられた拡散装置組立体の拡大断面を表している。
【図13】本発明の実施の結果として生成された出力面に対して垂直な面を利用する一実施例による堆積システムの供給装置の斜視分解図である。
【図14】垂直なプレート配向設計において用いられる凹凸パターンを含まないスペーサプレートの平面図を表している。
【図15A】垂直なプレート配向設計において用いられる凹凸パターンを含むソースプレートの平面図を表している。
【図15B】垂直なプレート配向設計において用いられる凹凸パターンを含むソースプレートの斜視図を表している。
【図15C】垂直なプレート配向設計において用いられる凹凸パターンを含むソースプレートの部分斜視図を表している。
【図16A】垂直なプレート配向設計において用いられる粗い凹凸パターンを含むソースプレートの平面図を表している。
【図16B】垂直なプレート配向設計において用いられる粗い凹凸パターンを含むソースプレートの斜視図を表している。
【図16C】垂直なプレート配向設計において用いられる粗い凹凸パターンを含むソースプレートの部分斜視図を表している。
【図17】AとBは、拡散装置を飛び出す気体が、基板に直接衝突するのを防止するための偏向体を有する封止プレートを備える凹凸を含むプレートを表している。
【図18】本発明の供給装置を組み立てる方法のフロー図を表している。
【図19】供給ヘッドの側面図である。図中、当該供給ヘッドの距離の長さと力の方向も示されている。
【図20】基板搬送システムと併用される分配ヘッドを表す斜視図である。
【図21】本発明の供給ヘッドを用いた堆積システムを表す斜視図である。
【図22】運動するウエブに用いられる堆積システムの一の実施例を表す斜視図である。
【図23】運動するウエブに用いられる堆積システムの他の実施例を表す斜視図である。
【図24】曲率を有する出力面を備える供給ヘッドの一実施例の断面図である。
【図25】気体クッションを利用して基板から供給ヘッドを分離する実施例の斜視図である。
【図26】運動する基板と併用するための気体流体ベアリングを有する堆積システムに係る実施例を表す側面図である。
【図27】一の実施例による気体拡散ユニットの分解図である。
【図28A】図27の気体拡散ユニットのノズルプレートの平面図である。
【図28B】図27の気体拡散ユニットの気体拡散プレートの平面図である。
【図28C】図27の気体拡散ユニットの保護プレートの平面図である。
【図28D】図27の気体拡散ユニット内部で混合する気体の斜視図である。
【図28E】図27の気体拡散ユニットを用いた気体の換気路の斜視図である。
【図29A】2つのプレートで組み立てられた拡散装置組立体の斜視断面図である。
【図29B】2つのプレートで組み立てられた拡散装置組立体の斜視断面図である。
【図29C】2つのプレートで組み立てられた気体流チャネルの斜視断面図である。
【図30】鏡面仕上げされた表面が存在する1つ以上の位置を示す2つのプレートで組み立てられた拡散装置組立体の斜視断面分解図である。
【図31A】第2流体源と流体をやり取りするように接続する1次チャンバを有する流体分配マニホールドの断面図である。
【図31B】第2流体源と流体をやり取りするように接続する1次チャンバを有する流体分配マニホールドの断面図である。
【図31C】第2流体源と流体をやり取りするように接続する1次チャンバを有する流体分配マニホールドの断面図である。
【図31D】第2流体源と流体をやり取りするように接続する1次チャンバを有する流体分配マニホールドの断面図である。
【図32A】ソーススロットと排出スロットの構成を示す流体分配マニホールドの出力面の典型的実施例の概略的上面図である。
【図32B】ソーススロットと排出スロットの構成を示す流体分配マニホールドの出力面の典型的実施例の概略的上面図である。
【図32C】ソーススロットと排出スロットの構成を示す流体分配マニホールドの出力面の典型的実施例の概略的上面図である。
【図32D】ソーススロットと排出スロットの構成を示す流体分配マニホールドの出力面の典型的実施例の概略的上面図である。
【図33A】平坦ではない出力面を有する流体分配マニホールドの典型的実施例の概略的側面図である。
【図33B】平坦ではない出力面を有する流体分配マニホールドの典型的実施例の概略的側面図である。
【図33C】平坦ではない出力面を有する流体分配マニホールドの典型的実施例の概略的側面図である。
【図34】コーティングされた基板の2つの面に力を与える流体運搬システムの典型的実施例の概略的側面図である。
【図35】本発明によって実現された気体パラメータ検知能力を有する流体運搬システムの典型的実施例の斜視図である。
【図36】固定基板搬送システムを有する流体運搬システムの典型的実施例の概略的側面図である。
【図37】可動基板搬送システムを有する流体運搬システムの典型的実施例の概略的側面図である。
【図38】平坦ではない外形を有する基板搬送サブシステムを有する流体運搬システムの典型的実施例の概略的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は特に、基板表面に気体物質を供給する改善された分配装置を用い、大きなウエブを基礎とする基板上での堆積に適合可能で、かつ、改善された処理速度で高均一薄膜の堆積を実現することが可能なALD−一般的には空間依存ALDと呼ばれる−に適用可能である。本発明の装置及び方法は、連続的な(パルス状とは対照的)気体物質の分配を利用する。本発明の装置は、真空下のみならず大気圧(付近)での動作も可能で、かつ、非密封すなわち大気開放環境での動作も可能である。
【0037】
図3を参照すると、本発明による、基板20上に原子層堆積を行う供給ヘッド10の一実施例の断面図が表されている。これは一般的に、「浮遊ヘッド」設計と呼ばれている。その理由は、供給ヘッドと基板との間の相対的な分離が、その供給ヘッドから基板へ流れる1種類以上の気体流によって発生する気体圧力によって実現及び維持されるからである。この種類の供給ヘッドは、特許文献7でより詳細に記載されている。
【0038】
供給ヘッド10は、第1気体物質を受け入れるために導管14と接続する気体流入ポート、第2気体物質を受け入れるために導管16と接続する気体流入ポート、及び、第3気体物質を受け入れるために導管18と接続する気体流入ポートを有する。これらの気体は、出力チャネル12を介して、後述する構造を有する出力面36で放出される。図3及び続く図4-5Bの破線は、供給ヘッド10から基板20への気体の供給を表している。図3では、破線の矢印Xもまた、導管24と接続する排出ポートと連通する、気体排出経路(図中では上方へ向かうように表されている)及び排出チャネル22を表す。
【0039】
説明の簡明を期すため、図4-5Bでは、気体排出は表されていない。排出気体は依然として未反応前駆体を含み得るので、一の反応物質を主として含む排出流と、他の反応物質を主として含む排出流との混合を許してしまうことは望ましくないと考えられる。そのため、供給ヘッド10は、複数の独立した排出ポートを有してよいことがわかる。
【0040】
一の実施例では、気体流入導管14と16は、基板表面上で順次反応してALD堆積を実現する第1気体と第2気体を受け入れるように備えられ、かつ、気体流入導管18は、第1気体と第2気体に対して不活性なパージガスを受け入れる。供給ヘッド10は、基板20から距離Dだけ離れている。基板20は、以降で詳述するように、基板支持体上に供されて酔い。基板20と供給ヘッド10の間での往復運動は、基板20及び/又は供給ヘッド10の運動によって行われてよい。図3に図示された特別な実施例では、基板20は、基板支持体96により、出力面36にわたって、矢印Aと図3の基板20の左右の外形の残像で示されているような往復運動を行う。往復運動は、供給ヘッド10を用いた薄膜堆積にとって必ず必要というわけではないことに留意して欲しい。他の種類の基板20と供給ヘッド10との間での相対運動−たとえば基板20又は供給ヘッド10のいずれかが1つ以上の方向に移動するような(以降で詳述する)−が行われてもよい。
【0041】
図4の断面像は、(上述したように省略した排出路を備える)供給ヘッド10の出力面36の一部にわたって放出される気体流を表している。この特別な構成では、各出力チャネル12は、図3に図示された気体流入導管14,16,18のうちの1つと気体をやり取りするように連通する。各出力チャネル12は典型的には、第1反応気体物質O、第2反応気体物質M、又は第3反応気体物質Iを供給する。
【0042】
図4は、比較的基本的なすなわち単純な気体の構成を表している。複数の非金属堆積前駆体(たとえば物質O)の流れ又は複数の金属含有前駆体物質(たとえば物質M)の流れが、1回の薄膜堆積における様々なポートで順次供給されてよい。あるいはその代わりに、複合薄膜材料−たとえば複数の金属層を交互に有するような材料又は金属酸化物材料中に少量のドーパントが混入した材料−を作るときには、反応気体の混合物−たとえば金属前駆体物質の混合物又は金属前駆体と非金属前駆体の混合物−が、1つの出力チャネルで堆積されてよい。重要なこととして、不活性ガス用にIのラベルが付された、気体流とそれに続く気体流との間に流れる別な気体流−パージガスとも呼ばれる−が、内部で前記気体流とそれに続く気体流が互いに反応しやすい反応物チャネル同士を分離する。第1反応気体物質Oと第2反応気体物質Mは、互いに反応することで、ALD堆積を実現する。しかし第1反応気体物質Oと第2反応気体物質Mのいずれも、不活性気体物質Iとは反応しない。図4及びそれ以降で用いられる用語は、典型的な種類の反応気体を表す。たとえば、第1反応気体物質Oは酸化気体物質であってよく、第2反応気体物質Mは金属含有化合物−たとえば亜鉛含有物質−であってよい。不活性気体物質Iは、窒素、アルゴン、ヘリウム、又はALDシステムにおいてパージガスとして広く用いられている他の気体であってよい。不活性気体物質Iは、第1反応気体物質O及び第2反応気体物質Mに対して不活性である。一の実施例では、第1反応気体物質Oと第2反応気体物質Mとの反応は、半導体に用いられる金属酸化物又は他の2元化合物−たとえばZnO又はZnS−を生成する。3種類以上の気体物質の反応は、3元化合物−たとえばZnAlO−を生成することができる。
【0043】
図5Aと図5Bの断面像は、反応気体物質OとMを供給するときに、基板20が供給ヘッド10の出力面36に沿って通過することで実行されるALDコーティング操作を、開略化された形態で表している。図5Aでは、基板20の表面は最初に、第1反応気体物質Oを供給するように指定された出力チャネル12から連続的に放出される酸化物質を受け取る。ここで基板表面は、物質Oが部分的に反応した物質−これは物質Mとの反応を起こしやすい−を有する。続いて、基板20が、第2反応気体物質Mの金属化合物の経路を通過することで、Mとの反応が生じ、2種類の反応気体物質から生成可能な金属酸化物又は他の薄膜物質が生成される。従来の解決法とは異なり、所与の基板又はその一部については、図5Aと図5Bに示された堆積手順は堆積中、パルス状ではなく連続的である。つまり物質OとMは、基板20が供給ヘッド10の表面を通過する際、逆に、供給ヘッド10が基板20の表面を通過する際、連続的に放出される。
【0044】
図5Aと図5Bが図示しているように、不活性気体物質Iは、第1反応気体物質Oと第2反応気体物質Mとの間で交互に配置される出力チャネル12に供される。明らかに、図3にも図示されていたような、排出チャネル22が存在する。供給ヘッド10から放出されて処理に用いられた使用済み気体を大気開放するのに、少量しか排出しない排出チャネル22しか必要とされない。
【0045】
一の実施例では、特許文献7において詳述したように、基板20に抗する気体圧力が与えられることで、分離間隔Dが、少なくとも部分的には、印加される圧力によって維持される。出力面36と基板20の表面との間でのある大きさの気体の圧力を維持することによって、本発明の装置は、供給ヘッド10自体又は基板20に、空気ベアリング−より適切には気体流ベアリング−の少なくとも一部を供してよい。この構成は、供給ヘッド10の搬送機構を簡略化する。供給装置が気体圧力に支持されるように、前記供給装置を基板に接近させることを可能にすることで、気体流同士の分離が促進される。圧力場が、反応流領域とパージ流領域内に発生することで、気体は、他の気体流と(ほとんど)混合することなく流入口から流出口へ導かれる。係る実施例の一では、分離間隔Dが相対的に小さいため、間隔Dの小さな変化(たとえば100μm)でさえも、流速の大きな変化、ひいては分離間隔Dを与える気体圧力の大きな変化を伴うことになりうる。たとえば一の実施例では、分離間隔Dを2倍にする−これには1mm未満の変化も含まれる−ことで、分離間隔Dを与える気体の流速を、2倍よりも大きく−好適には4倍−変化させうる。あるいはその代わりに、エアベアリング効果が、基板20の表面から供給ヘッド10を少なくとも部分的に分離するのに用いられうる一方で、本発明の装置は、供給ヘッド10の出力面36から基板20を持ち上げるすなわち浮かせるのに用いられうる。
【0046】
本発明は浮遊ヘッドシステムを必要としない。しかし供給装置と基板は、従来のシステムのように、一定の間隔Dに位置しうる。たとえば、供給装置と基板は、互いに分離間隔で機械的に固定されてよい。このとき、ヘッドは、流速が変化しても基板に対して垂直方向に動かず、かつ、基板は垂直方向に固定された基板支持体上に存在する。あるいはその代わりに、他の種類の基板ホルダ−たとえばプラテン−が用いられてもよい。
【0047】
本発明の一実施例では、供給装置は、基板上に薄膜材料を堆積する気体物質を供するための出力面を有する。供給装置は複数の流入ポート−たとえば第1気体物質、第2気体物質、及び第3気体物質用の共通の供給部を受け取ることが可能な少なくとも第1流入ポート、第2流入ポート、及び第3流入ポート−を有する。供給ヘッドはまた、第1複数の細長い放出チャネル、第2複数の細長い放出チャネル、及び、第3複数の細長い放出チャネルをも有する。前記第1複数の細長い放出チャネル、第2複数の細長い放出チャネル、及び、第3複数の細長い放出チャネルの各々は、気体流が、第1流入ポート、第2流入ポート、及び第3流入ポートのうちの対応する流入ポートとやり取りすることを可能にする。供給装置は、複数の開口部を有するプレートとして形成され、出力面に対して実質的に平行となるように設けられ、かつ、供給チャンバと、第1気体物質、第2気体物質、及び第3気体物質の各々を、対応する流入ポートから、対応する複数の細長い放出チャネルへ送る案内チャネルとで構成されるネットワークを画定するように設置される。
【0048】
第1複数の細長い放出チャネル、第2複数の細長い放出チャネル、及び、第3複数の細長い放出チャネルの各々は、長さ方向に延び、かつ互いに実質的に平行である。第1複数の細長い放出チャネルの各々は、各細長い側部で、第3複数の細長い放出チャネルの1つによって、最近接する第2複数の細長い放出チャネルの1つから隔てられる。第1複数の細長い放出チャネルの各々と第2複数の細長い放出チャネルの各々は、第3複数の細長い放出チャネルの間に位置する。
【0049】
第1複数の細長い放出チャネル、第2複数の細長い放出チャネル、及び、第3複数の細長い放出チャネルのうちの少なくとも1種類の細長い放出チャネルの各々は、供給装置の出力面に対して実質的に直交する、第1気体物質、第2気体物質、及び第3気体物質のうちの少なくとも1つの気体流を案内することが可能である。気体物質の流れは、細長い放出チャネルの各々から直接的又は間接的に、基板表面に対して実質的に直交するように供され得る。
【0050】
図6の分解図は、一の実施例に組立体全体の一部について、どのようにして供給ヘッド10が、1組の開口部を有するプレートから構築されうるのかを示し、かつ、複数の種類の気体のうちの1種類の気体の一部についての典型的な気体流路を示している。供給ヘッド10の接続プレート100は、供給ヘッド10の上流であって図6には図示されていない気体供給部と接続するための一連の入力ポート104を有する。各入力ポート104は、受け取った気体を気体チャンバプレート110へ案内する案内チャンバ102と気体をやり取りするように連通する。気体チャンバプレート110は、気体案内プレート120上の個々の案内チャネル122と気体をやり取りするように連通する供給チャンバ112を有する。案内チャネル122から、気体の流れは、底部プレート130上の特定の細長い排出チャネル134へ進行する。ガス拡散ユニット140は、該ガス拡散ユニットの出力面36で入力気体を拡散させ、かつ最終的に供給する。拡散システムは、上述の浮遊ヘッドシステムによって特に有利である。その理由は、拡散システムは、ヘッドの浮遊を補助する供給装置内部の背圧を供することができるからである。典型的な気体流F1は、供給ヘッド10の組立部品の各々を通り抜けて進む。
【0051】
図6の例に示されているように、供給ヘッド10の供給組立体150は、開口部を有するプレートが重ね合わせられた装置として形成される。つまり接続プレート100、気体チャンバプレート110、気体案内プレート120、及び底部プレート130が重ね合わせられている。これらのプレートは、この「水平な」実施例において、出力面36に対して実質的に平行に設けられている。
【0052】
ガス拡散ユニット140は、後述するように、重ね合わせられた開口部を有するプレートから形成される。図6に図示された任意のプレートは、重ね合わせられたプレートからなる積層体から作製されうることは明らかである。たとえば、適切に1つに結合される開口部を有するプレート4つ又は5つからなる積層体から接続プレート100を形成することは有利となりうる。この種類の装置の構成は、案内チャンバ102及び入力ポート104を形成する加工又は鋳型成型方法よりも複雑さが緩和されうる。
【0053】
図7A〜図7Dは、図6の実施例において供給ヘッド10を形成するために結合される主要部品の各々を表している。図7Aは、複数の案内チャンバ102と入力ポート104を表す接続プレート100の斜視図である。図7Bは、気体チャンバプレート110の平面図である。供給チャンバ113は、一の実施例において、供給ヘッド10用のパージガスすなわち不活性ガス(定常動作中での同一分子種間での分子基盤に基づく混合物も含む)のために用いられる。一の実施例では、供給チャンバ115は、前駆体気体(O)の混合物を供する。排出チャンバ116は、この反応気体の排出路を供する。同様に、供給チャンバ112は、他の必要な反応気体と第2反応気体物質(M)を供する。排出チャンバ114は、この気体の排出路を供する。
【0054】
図7Cは、この実施例での供給ヘッド10の気体案内プレート120の平面図である。第2反応気体物質(M)を供する複数の案内チャネル122が、適切な供給チャンバ112(この図では示されていない)を底部プレート130と接続するようなパターンを構成するように配置されている。対応する排出案内チャネル123は、案内チャネル122の付近に設けられる。案内チャネル90は第1反応気体物質(O)を供する。案内チャネル92はパージガス(I)を供する。
【0055】
図7Dは、水平プレートから形成される底部プレート130を表す平面図である。任意で底部プレート130は入力ポート104(図7Dには図示されていない)を有してよい。図7Dの平面図は、底部プレート130の外側表面を出力面から見た図を表している。底部プレート130の外側表面は細長い放出チャネル132と細長い排出チャネル134を有する。図6を参照すると、図7Dの図は、ガス拡散ユニット140に対向する面から見た図である。繰り返すが、図6及び図7A-図7Dは一の典型的な実施例を示しているのであり、他に多数の実施例が可能であることに留意して欲しい。
【0056】
図27の分解図は、図6の実施例及び後述する他の実施例において用いられるように、任意のガス拡散ユニット140の一実施例を形成するのに用いられる部品の基本構成を表している。これらは、図28Aの平面図に示されているノズルプレート142を有する。図6、図27、及び図28Aに図示されているように、ノズルプレート142は、底部プレート130の反対側に載置され、かつ、細長い放出チャネル132からの気体流を得る。図示された実施例では、気体の導管143が、必要な気体物質を供する。後述するように、連続する第1排出スロット180が、排出路に供される。
【0057】
図28Bを参照すると、プレート142及び146と連携して(図27参照)拡散させる気体拡散プレート146が、ノズルプレート142の反対に載置されている。ノズルプレート142、気体拡散プレート146、及び出力面プレート148上の様々な経路の配置は、必要な量の気体拡散を与え、同時に、基板20の表面領域から排出気体を遠ざけるように効率的に案内するように最適化される。スロット182は排出ポートを供する。図示された実施例では、気体供給スロットを構成する出力路147と排出スロット182は、気体拡散プレート146内で交互に配置されている。
【0058】
図28Cに図示されているように出力面プレート148は、基板20に対向する。繰り返しになるが、気体を供する出力路149と排出スロット184は、この実施例でも交互に配置されている。出力路149は一般的に細長い放出スロットと呼ばれる、その理由は、出力路149は、拡散ユニット140が含まれるときには、供給ヘッド10の出力チャネル12として機能するからである。
【0059】
図28Dは、ガス拡散ユニット140を貫通する気体供給路に焦点を当てている一方で、図28Eは、気体排出路を対応させて図示している。図28Dを参照すると、一の実施例において気体ポートの典型的な組についての、出力流F2の反応気体の貫通する拡散に用いられる全体の構成が図示されている。底部プレート130(図6)からの気体は、ノズルプレート142上の気体の導管143を介するように供される。その気体は、下方に位置する気体拡散プレート146上の出力路147へ向かう。図28Dに図示されているように、一の実施例では、背圧を生成することで、より均一な流れにする、導管143と気体路147との間の垂直オフセットが存在してもよい(つまり図27に図示された水平プレート構成を用いる。垂直とは水平プレートの面の法線である)。続いて気体は、出力チャネル12を供する出力面プレート148の出力路149へ向かってさらに下方に進む。導管143及び出力路147と149は、空間的にオフセットされているだけではなく、混合を最適化する様々な幾何学形状を有しうる。
【0060】
任意の拡散ユニットが存在しないため、底部プレート内の細長い放出チャネル132は、出力路149の代わりに供給ヘッド10の出力チャネル12として機能する。出力路149は一般的に、細長い放出スロットと呼ばれている。その理由は、出力路149は、拡散ユニット140が含まれるときには、供給ヘッド10の出力チャネル12として機能するからである。
【0061】
図28Eは、同様の実施例において、換気用気体のために供された排出路を象徴的に表している。ここでの下流方向は、供給気体の下流方向とは反対である。流れF3は、第3排出スロット184、第2排出スロット182、及び第1排出スロット180の順に通過する換気気体の経路を表す。気体供給用のより環状の混合流路F2とは異なり、図28Eに図示された換気装置は、表面から使用済み気体を迅速に移動させることを意図している。よって流れF3は、比較的直接、基板表面から遠ざかる方向に大気開放される気体である。
【0062】
再び図6を参照すると、接続プレート100、気体チャンバプレート110、来たい案内プレート120、及び底部プレート130として図示されている部品の組み合わせは、供給組立体150を供するように1つにまとめられてよい。後述するように供給組立体150の代替実施例も可能である。その代替実施例には、図6の座標系を用いた、開口部を有する、水平ではなく垂直なプレートから形成される供給組立体150が含まれる。
【0063】
図6の実施例の供給ヘッドの素子は、正しい位置に存在する気体を拡散装置へ供給するのに必要な気体の流路を実現するため、複数の重なりあうプレートで構成される。この方法は有用である。その理由は、非常に複雑な内部経路が、開口部を有するプレートの単純な重ね合わせにより形成可能となるからである。あるいはその代わりに、拡散装置と接続するのに適切な内部経路を含めるようにするのは、単純なブロック材料を加工する現在の加工方法又は原型形成方法でも可能である。たとえば図8は、単純加工されたブロック300の実施例を表している。このブロック内には、供給ライン305が、そのブロックをチャネルで貫通させることによって形成される。これらのラインは、図示されているように両端で飛び出してよいし、又は、一端で封止若しくはキャップされてもよい。動作時には、これらのチャネルは、両端で供給されてもよいし、又は、全体のシステムに設けられる後続のブロックへの供給溝として機能してもよい。これらの供給ラインから、小さなチャネル310が、細長い出力面開口部へ通じる様々なチャネルを供給するため、拡散プレート組立体140まで拡張する。
【0064】
供給ヘッドの他の領域では制御された背圧を生成することが望ましい。図1Aを参照すると、2つの完全に平坦なプレート200が1つになるように組み立てられる場合、これらのプレートは、組み立てられたプレートユニット215を形成するように互いに封止しあう。図面に垂直な方向に気体を流そうとする場合、組み立てられたプレートユニット215は、気体を通過させない。
【0065】
あるいはその代わりに、プレートの一方又は両方は、小さな又は微視的な高さ変動を有する領域を有してもよい。ここで最大高さは、プレートの主要な高さ又は本来の高さのレベルである。高さが変化する領域は凹凸パターンと呼ばれる。プレート組立体が、凹凸パターンを有するプレートを用いて作製されるとき、マイクロチャネルが形成される。そのマイクロチャネルが形成される結果、供給ヘッドの他の領域での制御された背圧を生成するように流れが制限される。
【0066】
たとえば図1Bでは、1つの平坦なプレート200が、表面の一部に凹凸パターンを有するプレート220と合わせられてよい。これら2つのプレートが、組み立てられたプレートユニット225を形成するように一つとなるとき、制限された開口部が、プレートの接触によって形成される。図1C及び図1Dはそれぞれ、凹凸パターンを有する2つのプレート200又は両面に凹凸パターンを有するプレート230が、様々な拡散装置のパターン−たとえば組み立てられたプレートユニット235と245−を生成するように組み立てられる様子を表している。
【0067】
概略すると、凹凸パターンは、組み立てられるときに、所望の流れの制限を与える任意の構造を有する。一例には、プレートの選ばれた領域を単純に粗くすることが含まれる。これらは、非指向性の粗くする方法−たとえば粗く仕上げを実現するように設計された紙やすり、砂吹き、又はエッチング処理−によって行われてよい。
【0068】
あるいはその代わりに、マイクロチャネルの領域は、明確に定められた又は事前に定められた構造を生成するプロセスによって生成されてもよい。係るプロセスは、エンボス加工又は刻印によるパターニングを有する。好適なパターニング方法は、フォトレジストパターンが付与されうる部分を保護する工程、及び、続いて前記フォトレジストが存在しない領域内の金属をエッチングする工程を有する。このプロセスは、大きな金属シートから1つの部分を分割するのみならず、様々な深さのパターンを供するため、1つの部分上で複数回行われてよい。
【0069】
その部分は、基板上へ材料を堆積することによって行われてもよい。そのような構造では、最初の平坦基板は任意の適切な材料から作られてよい。続いてパターンは、パターンを有するような材料の堆積によって、このプレート上に構築されてよい。材料の堆積は、任意のパターニング方法−たとえばフォトレジストのような感光性材料の均一なコーティングを塗布して、続いて光に基づいた方法を利用した現像でのパターニング−によって行われてよい。凹凸構造のための材料が、付加印刷法−たとえばインクジェット、グラビア、又はスクリーン印刷−によって堆積されてよい。
【0070】
その部品の直接的鋳型成型も実現されうる。この手法は、高分子材料に特に適している。この手法では、所望のプレートの鋳型成型が作製可能で、かつ、部品は、任意の高分子の鋳型成型の周知方法を用いることによって生成されてよい。
【0071】
典型的には、プレートは、約0.001インチ〜0.5インチまで厚さが変化する、実質的に平坦な構造である。そのプレートの片面又は両面には凹凸パターンが存在する。(複数の)凹凸パターンが(複数の)チャネルを形成するとき、そのチャネルは、気体流を適切に拡散させるように直線形の領域にわたって流れの背圧を均一にする流れの制限を生じさせるため、非常に小さな流れに対して利用可能な開口断面を有しなければならない。適切な背圧を供するため、流れについての開口断面は典型的には、100000μm2未満−好適には10000μm2未満−の開口部を有する。
【0072】
典型的なプレート構造の斜視像が図2に図示されている。軸の方向は図に示されている。金属プレートの表面は、z方向において最も高い領域250を有する。拡散装置から飛び出す気体の場合、その気体は、相対的に深い凹部255へ到達する。その凹部255は、その気体が、y方向において拡散装置の領域260を通過する前に、横方向であるx方向に流れることを許容する。例示目的で、複数の異なるパターンが拡散装置の領域260内に図示されている。複数の異なるパターンは、円筒柱265、正方形柱270、及び任意の形状275を含む。構造265、270、及び275のz方向の高さとは典型的には、構造265、270、及び275の上面が、プレート表面250の比較的平坦な領域の上面と同じになるようでなければならず、かつ、平坦プレートが図2のプレート上に重ね合わせられるとき、コンタクトが柱構造の上部に作製されることで、気体にその柱構造間に残された領域内のみを進行させるようなものでなければならない。パターン265、270、及び275は典型例であり、必要な背圧を与える任意の適切なパターンが選ばれてよい。
【0073】
図2は、1つのプレート構造上の様々な拡散装置のパターンを表している。特定の気体排出パターンを生成するため、1つの拡散装置チャネル上に複数の異なる拡散装置構造を有することが望ましいと考えられる。あるいはその代わりに、所望の均一な流れを生成する場合には、1つのパターンのみを有することも望ましいと考えられる。さらに、構造のサイズ又は密度が、拡散装置組立体内での位置に依存して変化する1つのパターンが用いられてよい。
【0074】
図9〜図12Bは、水平に堆積されたガス拡散プレート組立体140の構成の詳細を表している。拡散装置プレート組立体140は、図9の斜視分解図において示されているように、2つのプレート315と320で構成されることが好ましい。この組立体の上面315は、図10A(平面図)及び図10B(斜視図)でより詳細に表される。斜視図は、線10B-10Bの断面として取られた。拡散装置パターンの領域325が図示されている。この組立体の底面320は、図11A(平面図)及び図11B(斜視図)でより詳細に表される。斜視図は、線11B-11Bの断面として取られた。
【0075】
これらのプレートを組み合わせる操作が、図12Aと図12Bに図示されている。図12Aと図12Bはそれぞれ、組み立てられた構造と複数のチャネルのうちの1つを拡大したものを表している。組み立てられたプレート構造では、供給される気体330が、プレートへ入り込み、プレート315とプレート320とが組み立てられることで、微細チャネルで構成される拡散装置領域325を貫流するように強制される。拡散装置を通過した後、拡散した気体335は出力面を飛び出す。
【0076】
再度図6を参照すると、接続プレート100、気体チャンバプレート110、気体案内プレート120、及び底部プレート130として図示されている部品を組み合わせることで、供給組立体150を供するように一つになりうる。その代替実施例には、図6の座標系を用いた、開口部を有する、水平ではなく垂直なプレートから形成される供給組立体150が含まれる。
【0077】
図13を参照すると、係る代替実施例を底面図(つまり気体放出面から見た図)が表されている。係る代替実施例は、供給ヘッドの出力面に対して垂直に設けられた開口部を有する複数のプレートが重ね合わせられることで構成される供給組立体に用いられてよい。
【0078】
拡散装置領域の存在しない典型的なプレートの外形365が図14に図示されている。供給穴360は、一連のプレートが重ね合わせられるときに、供給チャネルを形成する。
【0079】
再度図13を参照すると、2つの任意の端部プレート350が、この構造の端部に位置している。この典型的な構造の特別な素子は、拡散装置を介して供給ライン#2と出力面とを接続するプレート370、拡散装置を介して供給ライン#5と出力面とを接続するプレート375、拡散装置を介して供給ライン#4と出力面とを接続するプレート380、拡散装置を介して供給ライン#10と出力面とを接続するプレート385、拡散装置を介して供給ライン#7と出力面とを接続するプレート390、及び、拡散装置を介して供給ライン#8と出力面とを接続するプレート395である。プレートの種類及びその順序を変化させることによって、任意の組み合わせ及び出力面位置への入力チャネルの順序が実現されうる。
【0080】
図13の特別な実施例では、プレートは、1つの面内でのみエッチングされたパターンを有し、背面(見えない)は、供給ラインと組立体にとって必要な穴、すなわち固定の必要性のための穴(ねじ穴、位置合わせ穴)を除いては滑らかである。シーケンスにおける任意の2つのプレートについて検討すると、z方向における次の面の背面は、先のプレートに対する平坦な封止として機能し、かつ、z方向における前方を向く面では、出力面内での次の細長い開口部のチャネル及び拡散装置として機能する。
【0081】
あるいはその代わりに、両面にエッチングされたパターンを備える複数のプレートを有し、かつ、封止機構を供するために、前記複数のプレート間にスペーサプレートを用いることは可能である。
【0082】
図15A-図15Cは、垂直プレート組立体に用いられる典型的なプレートの詳細な図を表している。この場合、プレートは、8番目の供給穴を拡散領域の出力面に接続する。図15Aは平面図を表し、図15Bは斜視図を表し、かつ、図15Cは、図15Bの線15C-15Cでの斜視断面図を表す。
【0083】
図15Cでは、プレートの拡大図は、指定された供給ライン360から気体を取り込んで、その気体を、たとえば先の図2で説明したような凹凸パターン(図示されていない)を有する拡散領域410へ供給する供給チャネル405を表している。
【0084】
拡散チャネルを備える別な種類のプレートが図16A-図16Cに図示されている。この実施例では、プレートは、主として隆起領域420と孤立した凹部430で構成される孤立した拡散パターンを介して、5番目の供給チャネルを出力領域へ接続する。主として隆起領域420と分離した凹部430で構成される分離した拡散パターンは凹凸パターンを形成し、前記凹凸パターンを介して、気体は組立体構造内を通過しうる。この場合、プレートが他のプレートに対向するように組み立てられ、かつ、気体が分離した凹部を流れるとき、隆起構造420は流れを阻止する。このとき、凹部のパターニングは、拡散チャネルの個々の流入領域が交差しないように行われる。他の実施例では、実質的に連続な流路のネットワークが、図2に図示されているように拡散チャネル260内に形成される。拡散チャネル260内では、柱、他の突起、又は微小阻止領域が、気体物質の流れを許容するマイクロチャネルを分離する。
【0085】
この拡散装置に用いられるALD堆積装置は、出力面上の隣接する細長い開口部を有する。複数の開口部の中には、気体を出力面へ供給するものもあれば、気体を引き込むものもある。拡散装置は両方向で機能する。差異は、気体が、出力面へ向けられるか、又はそこから引き込まれるかである。
【0086】
拡散チャネルの出力は、出力面とわずかに接する視線内であってよい。あるいはその代わりに、凹凸パターンを有する面に対して封止プレートを接触させることによって生成される拡散装置から飛び出す気体をさらに拡散させる必要があることも考えられる。図17Aと図17Bは、凹凸パターン含有プレート450が封止プレート455と接する設計を表している。封止プレート455は、拡散領域465を飛び出す気体を、出力面36へ到達する前に偏向させる別な構造460を有する。
【0087】
図13を参照すると、組立体350は任意の順序の複数のプレートを表している。簡明を期すため、各種の開口部を有するプレートにはアルファベットが与えられてよい。パージ用はPで、反応用はRで、排出用はEである。典型的なALD堆積にとって必要なパージガスと排出チャネルと共に2種類の反応気体を供する微細な供給組立体350が、完全な略字のシーケンスP-E1-R1-E1-P-E2-R2-E2-P-E1-Rl-E1-P-E2-R2-E2-P-E1-R1-E1-Pを用いて表されてよい。ここでR1とR2は、用いられる2つの異なる反応気体についての、各異なる配向での反応面を表し、E1とE2はそれに対応して、各異なる配向での排出プレートを表す。
【0088】
ここで再度図3を参照すると、細長い排出チャネル154は、従来の感覚では真空ポートである必要はないが、対応する出力チャネル12からの流れを排出させることで、そのチャネル内部で均一な流れのパターンを生成するように供されてよい。負の引き込み−隣接する細長い放出チャネルでの気体圧力が反対側でわずかに低い値となっている−秩序ある流れを促進しうる。負の引き込みはたとえば、発生源(たとえば真空ポンプ)での引き込み圧力が0.2〜1.0気圧の状態で動作しうる一方で、典型的な真空はたとえば0.1気圧未満である。
【0089】
供給ヘッド10により供される流れのパターンを利用することで、気体を堆積チャンバへパルス状に個別的に供給する従来手法−たとえば背景技術で述べたような手法−と比較して、多数の利点が供される。堆積チャンバの移動度が改善され、本発明の装置は、基板の寸法が堆積ヘッドのサイズを超えるような大容量堆積用途に適する。流れの動力学特性も、前述の手法と比較して改善される。
【0090】
本発明で用いられる流れの装置は、図3で図示されているように、供給ヘッド10と基板20との間の距離Dを非常に短く−好適には1mm未満に−することを可能にする。出力面36は、基板表面に対して非常に近接して−約0.025mmの範囲内に−設けられてよい。比較すると、従来手法−たとえば特許文献3に記載されているような手法−は、基板表面への距離が0.5mm以上に制限されたが、本発明の実施例は、0.5mm未満−たとえば0.45mm未満−で実施可能である。実際、供給ヘッド10を基板表面に近接させることは、本発明においては好ましい。特別に好適な実施例では、基板表面からの距離Dは、0.20mm以下で、好適には100μm未満であってよい。
【0091】
一の実施例では、本発明の供給ヘッド10は、浮遊システムを用いることによって、出力面36と基板20の表面との間で適切な分離間隔D(図3)で維持されてよい。
【0092】
1つ以上の出力チャネル12からの放出気体の圧力は力を生じさせる。この力が、供給ヘッド10に有効なクッション効果すなわち「空気」ベアリング(気体ベアリング)効果を与えるためには、十分な着地面積−つまり基板と近接しうる出力面36に沿って連続する表面積−が存在しなければならない。着地面積の割合は、直下で気体圧力が発生しうる出力面36の連続する面積の相対的な大きさに相当する。最も単純な形式では、着地面積は、出力面36の全面積から、出力チャネル12と排出チャネル22の合計表面積を減じた値として計算されてよい。このことは、合計表面積−幅w1を有する出力チャネル12の気体流面積と、幅w2を有する排出チャネル22の気体流面積を除く−が可能な限り最大化されるべきであることを意味する。一の実施例では、95%の着地面積が供される。他の実施例は、たとえば85%又は75%のような小さな着地面積を利用してもよい。気体流速の調節は、分離力すなわちクッション力、ひいては間隔Dを変化させるために利用されてよい。
【0093】
供給ヘッド10が、基板20の上方で間隔Dの位置に実質的に維持されるように気体ベアリングを供することには利点があることに留意して欲しい。これにより、任意の適切な型の搬送機構を用いることによって基本的に摩擦のない供給ヘッド10の運動が可能となる。よって供給ヘッド10は、チャネルを前後する際に、基板20の表面上方で「浮かぶ」ことで、材料の堆積中に基板20の表面にわたって掃引する。
【0094】
堆積ヘッドは、プロセス中に組み立てられた一連のプレートを有する。プレートは、水平に設けられてもよいし、垂直に設けられてもよいし、垂直方向と水平方向と結合方向に設けられてもよい。
【0095】
組立プロセスの一例が図18に図示されている。基本的には、基板上に薄膜材料を堆積する供給ヘッドを組み立てる方法は、一連のプレートを作製する工程であって、前記一連のプレートの一部は拡散素子を形成する凹凸パターンを含む工程、及び、1つ以上の拡散素子と接続する供給ラインを形成するように、前記プレートを互いに順序通りに取り付ける工程を有する。係るプロセスは任意で、各々は凹凸パターンを含む少なくとも1対のプレート間に、凹凸パターンを含まないスペーサプレートを設ける工程を有する。
【0096】
一の実施例では、組立順序は複数の流路を形成する。出力面内の第1気体物質の複数の細長い出力開口部の各々は、出力面内の第3気体物質の複数の細長い開口部のうちの少なくとも1つによって、出力面内の第2気体物質の複数の細長い開口部のうちの少なくとも1つから分離される。他の実施例では、組立順序は複数の流路を形成する。出力面内の第1気体物質の複数の細長い出力開口部の各々は、出力面内の少なくとも1つの細長い排出開口部によって、出力面内の第2気体物質の複数の細長い開口部のうちの少なくとも1つから分離される。前記複数の細長い開口部は、堆積中、出力面の領域から気体物質を引き出すため、排出ポートと接続する。
【0097】
プレートは最初に、適切な手段によって作製されてよい。前記適切な手段には、押印、エンボス加工、鋳型成型、エッチング、フォトエッチング、又は研磨が含まれるが、これらに限定される訳ではない。
【0098】
複数のプレートを1つにするように取り付けるため、その複数のプレートの表面に密封材又は接合材が塗布されてよい(図18の工程502)。これらのプレートは微細パターニング領域を含むので、接合材を塗布する工程では、組立中にヘッドの重要な領域を阻止する恐れのある余剰の接合材を塗布しないことが重要となる。あるいはその代わりに、接合材は、十分な接合によって機械的安定性を可能にする一方で、内部構造の重要領域を妨害しないようにパターン状に塗布されてよい。接合材はまた、複数の処理工程のうちの1つの副生成物−たとえばエッチングプロセス後のプレート表面上の残留フォトレジスト−であってもよい。
【0099】
接合材又は密封材は、たとえばエポキシを主成分とする接合材、シリコーンを主成分とする接合材、アクリラートを主成分とする接合材、又はグリースなどの類の多くの既知材料から選ばれてよい。
【0100】
パターニングされたプレートは、出力面の細長い開口部に流入口が望ましい状態で関連付けられるように適切な順序に配置されてよい。プレートは典型的には、ある種の位置合わせ構造上で組み立てられる(工程504)。この位置合わせ構造は、任意の制御された表面(の組)であってよい。その表面(の組)に抗するようにプレートの表面の一部は存在することにより、その組み立てられたプレートは、既に優れた位置合わせ状態となっている。好適位置合わせ構造は、位置合わせピンを備える底部を有することである。前記ピンは、すべてのプレート上の特別な位置に存在する穴を妨害することを意味する。2つの位置合わせピンが存在することが好ましい。これらの位置合わせピンのうちの一が環状である一方で、これらの位置合わせピンのうちの他は、組立中に部品を過度に制約しないスロットであることが好ましい。
【0101】
一旦全ての部品及びその接合材が、位置合わせ構造上で組み立てられると、圧力プレートがその構造に設けられ、かつ、その構造を硬化させるように圧力及び/又は熱が加えられる(工程506)。
【0102】
上述したピンからの位置合わせが既に、その位置合わせ構造の優れた位置合わせを実現させているとしても、プレートの製造プロセスが変化する結果、出力面の表面が、適切な用途にとって十分平坦でなくなってもよい。そのような場合、完全なユニットとして、又は、所望の表面仕上げを得るために、出力面を研磨することが有用であり得る(工程508)。最終的には、汚染を引き起こすことなく堆積ヘッドを動作させることを可能にするため、洗浄工程が望ましいと考えられる(工程600)。
【0103】
当業者には理解されているように、たとえば本明細書に記載された流れ拡散装置は、気体を基板上に分配するのに用いられる様々な装置において有用であり得る。典型的には、流れ拡散装置は第1プレートと第2プレートを有する。前記第1プレートと第2プレートのうちの少なくとも1つは、凹凸パターン部を有する。前記第1プレートと第2プレートは、凹凸パターン部によって画定される、気体(液体)物質の流れを拡散させることが可能な流れ拡散部を備える細長い出力開口部を形成するように組み立てられる。気体(又は液体)物質の流れの拡散は、第1プレートと第2プレートを組み立てることによって形成される凹凸パターン部によって画定される流れ拡散部に、気体(又は液体)物質を通過させることによって実現される。凹凸パターン部は典型的には、対向するプレート間に設けられ、かつ、気体(又は液体)物質流のための細長い流入口及び細長い流出口又は出力開口部と接続する。
【0104】
積層された開口部を有するプレートを用いる方法が、供給ヘッドを構築する有用な方法であるとしても、他の実施例において有用となりうる構造を構築する他の方法は多数存在する。たとえば当該装置は、金属ブロックを直接加工することにより、又は複数の金属ブロックを1つに接合することにより構築されてよい。さらに当業者に知られているように、内部鋳型成型構造を有する鋳型成型方法が用いられてもよい。当該装置はまた、多数の3次元リソグラフィ法のうちの任意の手法を用いて構築されてもよい。
【0105】
本発明の供給ヘッド10によって供される一の利点は、出力面36と基板20の表面との間で適切な分離間隔D(図3に図示されている)を維持することに関する。図19は、供給ヘッド10から放出される気体流の圧力を用いて間隔Dを維持するのに重要な考慮すべき事項を表している。
【0106】
図19では、代表的な数の出力チャネル12と排出チャネル22が図示されている。1つ以上の出力チャネル12からの放出気体の圧力は、この図の下向き矢印によって表されているような力を発生させる。この力が、供給ヘッド10に有用なクッション又は「空気」ベアリング(気体ベアリング)効果を与えるため、十分な着地面積−つまり基板と近接しうる出力面36に沿って連続する表面積−が存在しなければならない。着地面積の割合は、直下で気体圧力が発生しうる出力面36の連続する面積の相対的な大きさに相当する。最も単純な形式では、着地面積は、出力面36の全面積から、出力チャネル12と排出チャネル22の合計表面積を減じた値として計算されてよい。このことは、合計表面積−幅w1を有する出力チャネル12の気体流面積と、幅w2を有する排出チャネル22の気体流面積を除く−が可能な限り最大化されるべきであることを意味する。一の実施例では、95%の着地面積が供される。他の実施例は、たとえば85%又は75%のような小さな着地面積を利用してもよい。気体流速の調節は、分離力すなわちクッション力、ひいては間隔Dを変化させるために利用されてよい。
【0107】
供給ヘッド10が、基板20の上方で間隔Dの位置に実質的に維持されるように気体ベアリングを供することには利点があることに留意して欲しい。これにより、任意の適切な型の搬送機構を用いることによって基本的に摩擦のない供給ヘッド10の運動が可能となる。よって供給ヘッド10は、チャネルを前後する際に、基板20の表面上方で「浮かぶ」ことで、材料の堆積中に基板20の表面にわたって掃引する。
【0108】
図19に図示されているように、供給ヘッド10は重すぎるので、下方の気体の力は、必要な分離を維持するのに十分ではない。そのような場合、補助的な運搬部品−たとえばバネ170、磁石、又は他の装置−が、運搬力を補助するのに用いられてよい。他の場合では、気体流は、反対の問題を引き起こすのに十分な大きさでありうる。そのため、供給ヘッド10は、追加の力が加えられない場合には、間隔が広くなりすぎることで、基板20の表面から引き離される恐れがある。そのような場合には、バネ170は、(図19の装置に対して下方で)間隔Dを維持するために必要な追加の力を供する圧縮バネとなりうる。あるいはその代わりに、バネ170は、磁石、エラストマーバネ、又は下方を向く力を補助する他の装置であってよい。
【0109】
あるいはその代わりに、供給ヘッド10は、基板20に対して他の配向で設けられてもよい。たとえば基板20は、空気ベアリング効果によって重力に対抗するように支持されることで、基板20は、堆積中、供給ヘッド10に沿って移動してよい。基板20上に堆積するために空気ベアリング効果を利用する一の実施例が図25に図示されている。図中、基板20は、供給ヘッド10の上方でクッションにより支持されている。供給ヘッド10の出力面36にわたる基板20の運動は、図示された2重矢印に沿った方向である。
【0110】
図26の代替実施例は、供給ヘッド10と気体ベアリング98との間を方向Kに移動する基板支持体74−たとえばウエブ支持体又はローラ−上の基板20を表している。この実施例では、供給ヘッド10は、空気ベアリング効果−より適切には気体ベアリング効果−を有し、かつ、出力面36と基板20との間で所望の間隔Dを維持するため、気体ベアリング98と協働する。気体ベアリング98は、不活性ガス、若しくは空気、又は他の気体物質の流れF4を用いて圧力を定めてよい。本発明の堆積システムでは、基板支持体すなわちホルダは堆積中、基板と接触し、前記基板支持体は、基板運搬手段−たとえばローラ−であってよいことに留意して欲しい。よって基板が処理される際にその基板を断熱することは、本発明の要件ではない。
【0111】
図5Aと図5Bを参照しながら特別に説明されているように、供給ヘッド10は、堆積機能を実行するため、基板20の表面に対する運動を取り入れている。この相対運動は、多数の方法−供給ヘッド10及び/又は基板20の運動(たとえば基板を支持する装置の運動)を含む−によって得られてよい。運動は、堆積サイクルが何回必要であるのかに依存して、振動若しくは往復運動であってよいし、又は連続運動であってもよい。基板の回転もまた、特にバッチプロセスにおいて用いられてもよい。とはいえ連続プロセスも好ましい。アクチュエータが、供給ヘッドの本体と結合−たとえば機械的に接続−してよい。交互に変化する力−たとえば変化する磁場の力−が代わりに用いられてもよい。
【0112】
典型的にはALDは、複数の堆積サイクルを有する。各サイクルで制御された膜の深さが構築される。先に与えられたように気体物質の種類についての用語を用いると、1回のサイクルは、たとえば単純な設計では、第1反応気体物質Oを1回堆積して、第2反応気体物質Mを1回堆積する。
【0113】
反応気体物質Oについての出力チャネルと反応気体物質Mについての出力チャネルとの間の間隔は、各サイクルを完了させる往復運動に必要な間隔を決定する。図6の典型的な供給ヘッド10は、反応気体チャネル流出口と隣接するパージチャネル流出口との間で2.54mmの公称チャネル幅を有してよい。従って、(本明細書で用いられているy軸に沿った)往復運動によって、同一表面の全領域が、全ALDサイクルを受けられるようにするためには、少なくとも10.2mmのストロークが必要になると思われる。この例では、この距離にわたる運動によって、基板20の領域は、第1反応気体物質Oと第2反応気体物質Mの両方に曝露されてよい。あるいはその代わりに、供給ヘッドは、そのストロークよりもはるかに長い距離−さらには基板の一端から他端まで−を移動してもよい。この場合では、成長する膜は、その成長周期の間、周辺環境に曝露されてよい。それによっても、多くの使用状況においても有害な影響は生じない。場合によっては、均一性について考慮することは、たとえば往復運動の両極端に沿った端部効果又は集結を緩和するため、各サイクルでの往復運動の大きさに対してある程度のランダムさを導入する必要があり得る。
【0114】
供給ヘッド10は、1回のサイクルを供するのに十分な出力チャネル12のみしか有しなくてよい。あるいはその代わりに、供給ヘッド10は、多サイクルの構成を有してよい。それにより、大きな堆積領域を網羅することが可能となり、又は、往復運動距離の1回の走査で2回以上の堆積サイクルを行うこと可能にする距離にわたる往復運動を可能にする。
【0115】
たとえば一の特別な用途では、各O-Mサイクルが、被処理表面の約1/4にわたって1原子層を形成したことが分かった。よって4サイクルは、この場合では、被処理表面にわたって均一な1原子直径の層を形成するのに必要である。同様に、10原子直径の均一な層を形成するためには、この場合、40サイクルが必要となる。
【0116】
本発明の供給ヘッド10に用いられる往復運動の利点は、出力面36の面積を超える基板20上での堆積が可能なことである。図20は、矢印Aで示されるy軸に沿った往復運動と、その往復運動に対して直交するすなわち垂直なx軸に関する運動を用いることによって、この広範な面積の被覆がどのようにして実現可能なのかを概略的に表している。繰り返しになるが、図20に図示されているように、x方向又はy方向ので運動は、供給ヘッド10の運動及び/又は基板支持体74によって供される基板20の運動によって実現されてよい。
【0117】
図20では、供給ヘッドと基板の相対運動方向は互いに垂直である。この相対運動を平行にすることも可能である。この場合、相対運動は、振動を表す周波数成分はゼロでは半句、基板の変位を表す成分はゼロである必要がある。この組み合わせは、固定された基板にわたる供給ヘッドの変位と組み合わせられる振動、固定された供給ヘッドに対する基板の変位と組み合わせられる振動、又は、振動と一定の運動が供給ヘッドと基板の両方の運動によって供される任意の組み合わせ、によって実現されてよい。
【0118】
有利となるように、供給ヘッド10は、多くの種類の堆積ヘッドにとって可能な小さいサイズで作製されて良い。たとえば一の実施例では、出力チャネル12は、約0.127mmの幅w1を有し、かつ、約75mmの長さに延びている。
【0119】
好適実施例では、ALDは、大気圧(付近)で、かつ、広範囲の周辺温度及び基板温度−好適には300℃未満の温度−にわたって実行されてよい。好適には、汚染の危険性を最小限に抑制するため、相対的に清浄な環境が必要である。しかし、本発明の装置の好適実施例を用いるときに受容可能な性能を得るために、完全な「クリーンルーム」条件又は不活性ガスが充填された筐体は必要ない。
【0120】
図21は、相対的に十分制御され、かつ汚染のない環境を供するチャンバ50を有する原子層堆積(ALD)システム60を図示している。気体供給部28a、28b、及び28cは、第1、第2、及び第3気体物質を、供給ライン32を介して、供給ヘッド10へ供する。可撓性供給ライン32を任意で利用することで、供給ヘッド10の運動が容易になる。簡明を期すため、任意の真空気相回復装置及び他の支持部材は図21には図示されていないが、用いられてもよい。搬送サブシステム54は、供給ヘッド10の出力面36に沿って基板20を運搬する基板支持体を供することで、本願において用いられている座標系を用いたx座標方向での運動を供する。運動の制御並びにバルブ及び他の支持部材の全体的な制御は、制御論理プロセッサ56−たとえばコンピュータ又は専用のマイクロプロセッサ集合体−によって供されてよい。図21の装置では、制御論理プロセッサ56は、往復運動を供給ヘッド10に供するアクチュエータ30を制御し、搬送サブシステム54の搬送モータ52をも制御する。アクチュエータ30は、運動する基板20(又は静止する基板20)に沿って供給ヘッド10を前後に運動させるのに適した多数の装置のうちのいずれであってもよい。
【0121】
図21は、ウエブ基板66上に薄膜を堆積する原子層堆積(ALD)システム70の代替実施例を図示している。ウエブ基板66は、基板支持体として機能するウエブココンベア62に沿って、供給ヘッド10を通過して運搬される。ウエブ自体は、基板であってもよいし、又は、他の基板を支持してもよい。供給ヘッド搬送部64は、供給ヘッド10を、ウエブ表面66全体にわたって、ウエブの進行方向を横切る方向に運搬する。一の実施例では、供給ヘッド10は、ウエブ表面66表面にわたって前後に動かされる。このとき完全な分離力が気体圧力によって供される。他の実施例では、供給ヘッド搬送部64は、ウエブ基板66の幅を横切る主ねじ又は同様の機構を利用する。他の実施例では、複数の供給ヘッド10が、ウエブ62に沿った適切な位置で用いられる。
【0122】
図23は、流れのパターンが図22の構成とは直交するように配向する静止供給ヘッド10を用いた、ウエブ装置内の別な原子層堆積(ALD)システム70を図示している。この装置では、ウエブコンベア62自体の運動は、ALD堆積に必要な運動を供する。往復運動もまたこの環境において用いられてよい。図24を参照すると、供給ヘッド10の一部の実施例が表されている。図中、出力面36がある程度の曲率を有し、その曲率は、一部のウエブコーティング用途にとって有利となりうる。凹面を有する曲率が供されてもよいし、又は凸面を有する曲率が供されてもよい。
【0123】
ウエブの製造にとって特に有用となりうる他の実施例では、ALDシステム70は、複数の供給ヘッド10又はデュアル供給ヘッド10を有してよい。このとき基板66の各面には1つの供給ヘッド10が設けられる。可撓性供給ヘッド10が代わりに供されてもよい。これにより、堆積表面に対して少なくともある程度の一致を示す堆積装置が供される。
【0124】
他の実施例では、供給ヘッド10の1つ以上の出力チャネル12は、特許文献8に開示される横方向気体流の構成を用いてよい。係る実施例では、供給ヘッド10と基板20との間の分離を支援する気体圧力は、ある数の出力チャネル12−たとえばパージガスを放出するチャネル(図4-図5BにおいてIのラベルが付されたチャネル)−によって維持されてよい。よって横方向の流れは、反応気体を放出する1つ以上の出力チャネル12(図4-図5BにおいてO又はMのラベルが付されたチャネル)に用いられてよい。
【0125】
本発明は、広範囲の温度−実施例によっては室温(付近)も含まれる−及び堆積環境にわたって、様々な異なる種類の基板上での堆積を実行する能力を有するので有利である。本発明は、真空環境でも動作可能だが、大気圧(付近)での動作に特に適している。本発明は、大気圧に対して開放されている−非密閉環境で実施可能な−大気圧条件での低温プロセスにおいて用いられてよい。本発明はまた、大面積基板上での堆積を含む、ウエブ又は他の運動する基板上での堆積にも適用可能である。
【0126】
たとえば本発明により作製された半導体膜を有する薄膜トランジスタは、0.01cm2/Vsよりも大きく、好適には0.1cm2/Vsよりも大きく、より0.2cm2/Vsよりも大きい電界効果による電子移動度を示しうる。それに加えて、本発明により作製された半導体膜を有するnチャネル薄膜トランジスタは、少なくとも104で、有利となるには105のオン/オフ比を供することができる。オン/オフ比は、ゲート電圧が、一の値から、ディスプレイのゲートライン上に用いられ得る適切な電圧を表す他の値へ掃引される際の、ドレイン電流の最大/最小として測定される。典型的な値の組は-10V〜40Vで、このときドレイン電圧は30Vに維持されている。
【0127】
図29Aと図29Bを参照し、さらに再度図6〜18を参照すると、図29Cは、図29Aと図29Bに図示された2つのプレートからなる拡散装置組立体と同様にして作製される、2つのプレートからなる拡散装置組立体の斜視断面図を表している。
【0128】
供給ヘッド10−流体分配マニホールドとも呼ばれる−は、第1プレート315と第2プレート320を有する。少なくとも第1プレート315と第2プレート320の少なくとも一部は、少なくとも図1A-図2を参照しながら上述した凹凸パターンを画定する。金属結合材318は、第1プレート315と第2プレート320の間に設けられる。それにより第1プレート315と第2プレート320は、結合して1つになった後に、凹凸パターンによって画定される流体流を案内するパターンを形成する。
【0129】
金属結合材318は、加熱又は加圧の条件下で第1プレート315と第2プレート320(典型的には2つの金属基板)の間の結合材として機能する、金属を主成分とする任意の材料であってよい。金属による結合を含む典型的なプロセスは、はんだ付け及び真鍮ろう付けである。いずれのプロセスでも、2つの金属は、結合される金属部品間で溶融充填金属を溶融させることによって、又は、結合される金属部品間に溶融充填金属を与えることによって、結合される。はんだ付けと真鍮ろう付けとは、はんだ付け充填金属が低温−通常は約204℃よりも低い温度−で溶融する一方で、真鍮ろう付け金属は高い温度−通常は約204℃よりも高温−で溶融する点で、任意に区別される。
【0130】
一般的な低温すなわちはんだ付け結合金属は、純粋金属、又は、Pb、Sn、Cu、Zn、Ag、In若しくはSbを含む合金である。一般的な高温すなわち真鍮ろう付け結合金属は、純粋金属、又は、Al、Si、Cu、P、Zn、Au、Ag、若しくはNiを含む合金である。一般的には、受容可能な温度での融解し、かつ、結合される部分の表面を濡らしうる純粋金属又は金属の混合物が可能である。
【0131】
通常、結合金属が結合する表面に対して十分接合することを保証するため、追加の成分には金属結合材318が供される。一のそのような成分はフラックスであり、結合する表面を洗浄及び準備する目的で与えられる金属結合材と併用される任意の材料である。様々な代替金属の薄い層が、充填金属の接合を促進するように、金属部分の表面に堆積される必要があることも考えられ得る。一例は、ステンレス鋼上にニッケルの薄い層を堆積して、Agの接合を促進することである。
【0132】
結合金属は、結合プロセス中に所望の品質の結合金属が得られるように、任意の方法で堆積されてよい。結合金属は、部品間に設けられる薄い金属の別個のシートとして堆積されてよい。結合金属は、結合する部品に堆積される塗布される溶液又はペーストの状態で供される。この溶液又はペーストは通常、結合材、溶媒、又は、金属を結合させるプロセス前又はその間に除去されうる結合材と溶媒の媒介物を含む。
【0133】
あるいはその代わりに、金属結合材318は、部品上への従来の堆積法により供給されてよい。そのような堆積法の例は、スパッタリング、蒸着、及び電気メッキである。堆積法は、純粋金属、合金、又は様々な金属を含む層構造を堆積してよい。
【0134】
結合プロセスは、部品同士を組み立てて、少なくとも熱及び/又は圧力を加えることによって結合させる工程を有する。熱は、抵抗加熱、誘導加熱、対流加熱、放射加熱、又は炎による加熱によって加えられてよい。通常は、結合プロセスの大気圧を制御することで、金属部品の酸化を緩和することが望ましい。プロセスは、大気圧よりも高圧の任意の圧力から高真空の範囲で行われてよい。結合する材料と接する組成物は、酸素がほとんどない状態でなければならず、かつ、有利となるように、窒素、水素、アルゴン、又は他の不活性ガス若しくは還元ガスを含んでよい。
【0135】
流れを案内するパターンは、金属結合材が残っていない凹凸パターンによって画定されてよい。金属結合材318が、結合する金属プレートに対して均一に堆積されてよい一方で、その結果、組み立てられた分配マニホールドの全内部表面に結合材が存在することで、化学的な相性の問題が生じうる。さらに、組立中に余剰結合金属が存在することで、高温組立プロセス中に結合材が流れる際に、分配マニホールド内の内部流路を塞いでしまう恐れがある。
【0136】
組立前に、金属結合材318は、結合する表面上のみに選択的に存在して、凹凸パターン内に存在できない。これは、プレートの結合表面を反映するようにパターニングされた結合金属の別個のシートを用いることによって実現されてよい。あるいはその代わりに、金属の結合が液体前駆体として塗布される場合、その塗布は、ローラプリントのような手法を用いてよい。ローラプリントでは、プリントローラのパターン及び/又はプレートの凹凸が、必要な場合にのみ結合材を塗布可能にする。
【0137】
凹凸パターンがエッチングプロセスによって形成されるとき、特に好適な方法は、エッチングプロセス前に、膜としての結合材318を、金属プレート上に堆積することである。結合材がプレート315又は320に堆積された後、適切なマスクが、金属結合材全体にわたって供される。よって適切なエッチャントは、金属プレートと重ね合わせられた結合材の両方を、たとえば1回のエッチングプロセスでエッチングする。その結果、結合材の非常に厳密なパターンが、金属プレートの凹凸パターンがエッチングされたのと同じように得ることができる。あるいはその代わりに、金属結合材318と、該金属結合材318が堆積されるプレートは、同一のマスクを用いてそれぞれ別個のプロセスでエッチングされてよい。これによっても、結合材の非常に厳密なパターンが得られる。
【0138】
第1プレート315と第2プレート320の相対位置と形状は、想定される特定の用途に非常に依存しうる。たとえば、第2プレートは、図29A〜図29Cに図示されているように、第1プレートの凹凸部に対向して設けられる凹凸部を有してよい。この場合、流体流を案内するパターンが、プレート315と320の各々での凹凸パターンと、結合金属318を用いてプレート315と320の端部で凹凸パターンを封止する効果とを組み合わせることによって形成される。
【0139】
あるいはその代わりに、第2プレートは、図29Bに図示されているように、第1プレートの凹凸部からオフセットされるように設けられた凹凸部を有してよい。図29Bに図示されているように、第1プレート315の凹凸パターンの一部は、第2プレート内の非凹凸部と対向する。たとえ第2プレート320内に凹凸パターンが存在しないとしても、結合材の存在しない第1プレート315又は第2プレート320のいずれかの領域は、完全な封止を生成せず、時として望ましい、流れに対する非常に高い抵抗を与えてよい。よって、流体流を案内するパターン322は、凹凸パターンを有していないが、結合金属のパターンを有する(複数の)プレートによって形成されてよい。この場合、結合金属は、上述した任意の方法によってパターニングされてよい。それに加えて、結合金属は、結合金属を侵襲するが、下地のプレート材料を侵襲しないエッチャントによるエッチングプロセスによってパターニングされてよい。
【0140】
流体分配マニホールドとも呼ばれる供給ヘッド10の組立中、凹凸を含む複数のプレート間に設けられた結合金属は、凹凸部位間の領域を封止しなければならない。十分な結合金属が凹凸部位を封止するのに堆積されなければならない一方で、過剰な結合金属は、意図せずマニホールドの他の部分に流れることで、塞ぐ又は表面反応を起こりにくくする恐れがある。さらに流体分配マニホールドの出力面は十分平坦で、流体分配マニホールドの構築後には、(ほとんど)擦れ合わないことが好ましい。
【0141】
図30を参照すると、十分な封止及び出力面の平坦さを支援するため、流体分配マニホールドは第1プレート315と第2プレート320を有する。ここで、少なくとも第1プレート315と第2プレート320の少なくとも一部は凹凸パターンを画定する。第1プレート315と第2プレート320のうちの少なくとも1つは、鏡面仕上げされた表面(参照番号327で指定されている)を有する。結合材は第1プレートと第2プレートの間に設けられている。それにより第1プレートと第2プレートは、凹凸パターンにより画定される流体を案内するパターンを形成する。
【0142】
本明細書で用いられているように、鏡面仕上げされた表面とは、装置の組立前後で最小限の研磨しか必要としない表面仕上げを含む表面である。表面仕上げは、Raで表され、ASME B46.1-2002において、「評価されたプロファイルの算術平均偏差」として定義され、かつ、ISO4287-1997によって定義される。表面のRaは、表面の微視的プロファイルを測定することによって得られる。そのプロファイルから、平均表面高さが決定される。Raは、平均表面高さからの平均絶対偏差である。
【0143】
流体分配マニホールドは、鏡面仕上げされた内部表面又は外部表面を有する。その鏡面仕上げされた内部表面又は外部表面は、好適には0.406μm未満のRa、より好適には0.203μm未満のRa、最も好適には0.102μm以下のRaを含む。たとえ0.102μmの最も好適であるとしても、想定される特定の用途に依存して、0.406μm又は0.203μmの表面仕上げが通常は用いられている。その理由は、0.406μm又は0.203μmの表面仕上げは、妥当な費用で適切な性能を示すことができるからである。
【0144】
流体分配マニホールドは、出力面を含むプレート315又は320を有してよい。ここで前記出力面は、鏡面仕上げされた表面を有する。出力面の平坦さは重要である。その理由は、基板の浮遊高さは平坦さの減少と共に減少し、かつ、堆積プロセスにおいて用いられる化学物質を保持するか、若しくは気体が混合する通路を生成する粗さ又は切り欠きが存在する場合には意図しない気体の混合が増大するからである。平坦さは従来、組立後に出力面を研磨することによって実現されてよい。不幸なことに、これは、費用の増大を招き、かつ、薄い上部プレートを有する大きなマニホールドでは困難である。その理由は、研磨プロセスは、これらのプレートを、構造的に故障する地点まで薄くする恐れがあるからである。流体分配マニホールドが、鏡面仕上げされた出力面を表す表面を既に含むプレート315又は320によって組み立てられる場合、すべての組立後の研磨のうちの大半は回避されうる。
【0145】
結合凹凸プレートを有する流体分配マニホールドの組立では、プレート315と320との間での接触領域328は、互いに接し又は組立中に結合材によって接続される複数のプレートの間の領域である。最小量の結合金属を有することが望ましい。結合金属の使用を少なくするためには、上述の最小閾値を超える表面仕上げ品質を有することで、一貫して最小量の結合金属を堆積することを困難にするプレート間のギャップ及びプレート上の粗い構造を回避することが望ましい。従って流体分配マニホールドは、接触領域328を有する第1プレート315と第2プレート320を有してよい。接触領域328では、結合材が、接触領域328内の鏡面仕上げされた表面327を含む第1プレート315と第2プレート320のうちの少なくとも1つに設けられている。
【0146】
あるいはその代わりに、流体分配マニホールドは、複数の結合したプレートを有してよい。鏡面仕上げされた表面が、接触領域又は出力面のいずれかの上に存在してよい。2つのプレート間に接触領域が存在する場合、鏡面仕上げされた表面は、接触表面の一方又は両方の上に存在してよい。
【0147】
図31A-図31D及び再度図1〜図28Eを参照すると、供給ヘッド10−流体分配マニホールドとも呼ばれる−は、流体−たとえば気体−を、供給ヘッド10の出力面での細長いスロット−出力路149とも呼ばれる−にわたって均一に供給する。流体を均一に供給する典型的な方法は、細長い出力面スロット(出力路149とも呼ばれる)を、別個の1次チャンバ610−たとえば細長い放出チャネル132又は案内チャネル凹部255−と流体をやり取りするように連通させることである。1次チャンバ610は典型的に、略スロット149の長さにわたる。1次チャンバ610は、流れを制限するチャネル−たとえば拡散装置140−を介してスロット149と接続し、かつ、同時にそのチャネルの長さに沿って低い流れの抵抗を有する。その結果、流体は、1次チャンバ610の圧力がそのチャンバに沿って略一定となるまで、1次チャンバ610内を流れ、続いて、流れを制限するチャネルを介して均一となるように、スロット149へ流入する。一般的には、1次チャンバ610内部での横方向の流れにおける制限は、1次チャンバ610の断面形状と断面積の関数である。典型的には、1次チャンバ610内での横方向の流れの制限が存在することは、不均一な流れが、スロット149を介して排出されるので望ましくない。
【0148】
通常、流体分配マニホールドの構成における制限は、1次チャンバの断面寸法を制限する。よってこのことは、1次チャンバが出力面スロット149を供給しうる長さを制限する。この効果を最小限に抑制するため、薄膜材料堆積用の流体運搬装置−ALDシステム60とも呼ばれる−は、1次チャンバ610と流体をやり取りするように連通する出力面36を有する流体分配マニホールド−供給ヘッド10とも呼ばれる−を有する。第2流体源620は、複数の運搬ポート630を介して1次チャンバ610と流体をやり取りするように連通する。第2流体源620−たとえば第2チャンバ622−は、第1チャンバ610と似たように動作する。つまり、第2チャンバ622に沿って低抵抗の横方向流体流を可能にする一方で、1次チャンバ610への均一な流体流を供給する。これは、上述した1次チャンバ610から、横方向の流れの制限の効果を取り除くように機能する。そのため、運搬ポート630は、第2チャンバ622と1次チャンバ610との間での搬送を可能にする任意の流体導管であってよい。この運搬ポート630は、任意の断面(の組み合わせ)を有してもよい。運搬ポート630が名目上低い流れの抵抗を有しなければならない一方で、2次流体源620から1次チャンバ610への流れを変調させるため、特定の抵抗を有するように運搬ポート630を設計することは有用となりうる。
【0149】
図31A-図31Cに図示されているように、1次チャンバ610は、2次流体源620の複数の運搬ポート630のうちの少なくとも一部に対して共通するチャンバを有する。これらの実施例では、流体分配マニホールドは、2次チャンバ622からの2つ以上の流入口によって供給される相対的に長い1次チャンバ610を有する。そのため、たとえ1次チャンバ610が、スロット149の全長を供給するために十分低い流れの抵抗を供しないとしても、十分低い流れの抵抗は、2次チャンバ622から局所的に供されてよい。それに加えて、1次チャンバ610に沿って残留圧力差が存在する場合、1次チャンバ610が連続であることで、流体流の一部が、1次チャンバ610内での圧力を等しくすることを可能にする。
【0150】
あるいはその代わりに、図31Bを参照すると、1次チャンバ610は複数の別個の1次チャンバ612を有してよい。複数の別個の1次チャンバ612の各々は、2次流体源620の複数の運搬ポート630のうちの少なくとも1つと流体をやり取りするように連通する。
【0151】
2次流体源620は、流体分配マニホールド(供給ヘッド10)に固定されたモノリシック構造の流体チャンバを有してよい。流体分配マニホールドが略長方形の断面を有するとき、2次チャンバ620は、同様の断面で、かつ出力面以外の分配マニホールドの表面に直接設けられた任意の素子であってよい。2次チャンバ620は、流体分配マニホールド内の開口部と一致する開口部を有してよく、かつ、従来の封止手法を用いることによって供給ヘッド10に恒久的又は一時的に取り付けられてよい。たとえば封止体は、ゴム、油、ワックス、硬化可能な化合物、又は結合金属から作られてよい。
【0152】
それに加えて、2次チャンバは、図31Aと図31Bに図示されているように、モノリシック構造で、かつ、流体分配マニホールドと一体化するように形成されてよい。よって分配マニホールドが、複数の凹凸パターンを有するプレートの組立体を有するとき、2次チャンバは、分配マニホールドに追加された1つ以上の凹凸プレートから生成される1つ以上の案内チャネルで構成される。これらの凹凸プレートは、1次チャンバと出力面を生成する凹凸プレートと同様に作製及び組み立てられる。あるいはその代わりに、2次チャンバと1次チャンバとを比較すると、それらの寸法は互いに異なるので、それぞれ異なる組立法が用いられてもよい。2次チャンバと1次チャンバをそれぞれ異なるように組み立てる別の機械的理由又は費用上の理由も存在しうる。
【0153】
あるいはその代わりに、図31Cを参照すると、2次流体源620は、複数の別個の運搬チャネル630を介して流体分配マニホールド10と流体をやり取りするように連通する流体チャンバ624を有してよい。別個の運搬チャネル630は、流体をこの環境中に供給するのに適した任意の導管であってよい。たとえばこれらの導管は、流入口と分配マニホールドとを一時的(取り外し可能なように)又は恒久的に接続するように組み立てられた任意の有用な断面サイズ及び形状の管であってよい。取り外し可能なコネクタは、従来の調整及びフランジを有する。恒久的な接続は、溶接、真鍮ろう付け、接合、又は押圧フィッティングを有する。2次チャンバの導管の一部はまた、バルク材料の鋳型成型又は加工によって構築されてもよい。
【0154】
図31Dを参照すると、少なくとも1つの運搬ポート630が、その少なくとも1つの運搬ポート630を流れる流体流を制御するように構成された装置640を有してよい。流体分配マニホールドが、2つ以上の1次チャンバ612と流体をやり取りするように連通する2次チャンバ624を有するとき、1次チャンバ612のうちの一へ流入する流体の流れを、他へ流入する流体の流れに対して変調させるのは有用になりうる。複数の1次チャンバ612のうちの一へ供給される流体組成物と、複数の1次チャンバ612のうちの他へ供給される流体組成物とを異なったものにすることも望ましいと考えられる。よって以下のようなシステムの能力が可能となる。(1)所与の分配マニホールドが、複数の異なる幅の基板をコーティングすることを意図している場合、その分配マニホールドの一部は、現在の基板の幅のみが活性の流体を受け取るように、オフ状態にされうる。(2)大きな基板の一部をコーティングする必要がない場合、分配マニホールドの一部は、堆積が望ましくない領域についてオフ状態となりうる。(3)基板の一部が、他の部分で他の堆積化学物質を受け取るように意図されている場合、その分配マニホールドの一部は、他の流体化学物質を基板へ供してよい。
【0155】
1つ以上の1次チャンバ612への流れを変調させるため、2次チャンバ620と1次チャンバ610との間に設けられたバルブシステム640が用いられてよい。バルブ640は、流体流を変調させるのに用いられる標準的な型のバルブであってよい。2次チャンバ620が分配マニホールドに一体化されるとき、バルブ640は、前記マニホールドの一体化した部分であり、かつ、そのマニホールドの構成に含まれる可動素子を利用することによって形成されてよい。バルブ640は、手動で制御されてよいし、又は、遠隔アクチュエータ−ニューマチックアクチュエータ、電気アクチュエータ、電気ニューマチックアクチュエータを含む−により制御されてもよい。
【0156】
図32A-図32Dを参照し、再度図1〜図28Eを参照すると、上述した典型的な実施例では、分配マニホールド10の出力面36と148の設計は細長い流体源スロット149を有し、かつ、細長い排出スロット184は典型的には、スロットの多数が、堆積を有効にするため、基板の運動に対して垂直な構成となるように存在している。さらにスロットは、出力面36と148の端部に存在し、かつ、運動する基板の横方向端部付近で複数の種類の気体を分離する基板搬送部と平行であってよい。
【0157】
図32A-図32Dを参照すると、薄膜堆積用の流体運搬装置(ALD堆積システム60)は、基板20,66をある方向に進行させる基板搬送機構を有してよい。流体分配マニホールド10は、複数の細長いスロット149,184又はその組み合わせを有する出力面36,148を有する。複数の細長いスロット149,184又はその組み合わせのうちの少なくとも1つは、基板20,66の進行方向に対して垂直でも平行でもない部分を有する。
【0158】
たとえば再度図21を参照すると、基板20,66が方向xに移動するとき、基板の運動に対して垂直な細長いスロットは、x方向に対して90°の角度をなす一方で、基板の運動に対して平行な細長いスロットは、x方向に対して0°の角度をなす。よって「垂直ではない」とは、基板の運動xに対してなす角度であって85°未満のものと定義されてよく、「平行ではない」とは、基板の運動xに対してなす角度であって5°よりも大きいものと定義されてよい。従って、スロット149,184又はこれらの組み合わせが直線形であるとき、そのスロットは、基板の運動方向に対して5°よりも大きくて85°よりも小さい角をなすように設けられる。非直線形のスロットもまた、十分なき曲率が存在するときには、この条件を満足する。
【0159】
本発明の分配マニホールドで可撓性基板をコーティングするとき、流体源にわたって流れる流体によって及ぼされる力は、排出スロットにわたって流れる流体によって及ぼされる力とは異なる。これは、流体源から排出スロットへ流体を駆動するように流体圧力が設定されることの当然の結果である。その結果として生じる基板への効果は、その基板は、ヘッドから排出スロットへよりも、ヘッドから流体源スロットへより大きく力が加えられることである。よってこれにより基板が変形する。基板の変形は、浮遊高さは不均一となるので、流体の混合及び基板と出力面との接触の可能性が生じるため望ましくない。
【0160】
可撓性基板は、直線形状にわたって曲がりが生じるとき、つまり、曲がりの軸が1次元でのみ生じるときに最も簡単に曲がりうる。よって一連の直線形の平行スロットについて、基板の本質的なビーム強度が、スロット間の力の差異に抵抗するので、結果として顕著な基板の変形が起こる。
【0161】
あるいはその代わりに、基板を非直線形状−2次元に拡張する形状−にわたって曲げようとするとき、基板の実効ビーム強度ははるかに増大する。この理由は、2次元の曲がりを実現するためには、基板が、非直線形状にわたって直接曲がるだけではなく、非直線形状に曲げようとすることで、基板の隣接する領域に圧縮と引っ張りが生じるからである。基板は圧縮力又は引っ張り力に対してかなりの耐性を有しうるので、結果として、実効ビーム強度は顕著に増大する。よって、非直線形状のスロットを用いることで、意図しない気体の混合又は出力面と基板との接触を起こすことなく、高可撓性の基板の処理が可能となる。従って、長さにわたって非直線形状であるスロット149,184又はこれらの組み合わせは、分配マニホールドでの使用において特に望ましくなりうる。
【0162】
そのため、運搬システム60の流体分配マニホールド10は、図32Aに図示されているように、曲率半径を有する1つの細長いスロットの少なくとも一部を有してよい。ある程度の非線形性は、実効ビーム強度の増大を実現するのに有用となりうる。曲率半径は、有利な効果を生じさせるため、最大10mであってよい。中心線650が、基板の運動方向xに延びる出力面36の中心を貫通するように描かれている場合、この線上の正の位置は、出力面36から基板の進行方向xへ向かう位置として定義されてよい一方で、負の位置は、出力面36から基板の進行方向xとは反対方向へ向かう位置として定義されてよい。半径は、出力面36の中心に対して負又は正の位置に設けられる中心点を有してよい。中心点はまた、細長いスロットが出力面36上で対称な位置に設けられないように、基板の進行方向x以外の方向でオフセットされてもよい。
【0163】
実効的なビーム強度を大きく増加させる必要のある可撓性基板については、小さな曲率半径が望ましいと考えられる。半径の下限では、基板に対するスロットの角度があまりに大きく変化しうるので、曲率半径がそのスロットの長さに沿って可変であることが求められる。そのため、運搬システム60の流体分配マニホールド10は、複数の方向(経路)変化を含む1つの細長いスロットの少なくとも一部を含んでよい。これは、スロットに沿った方向変化の任意のパターンの形態又は曲率半径の周期的変化を有するスロットの形態をとってよい。周期的パターンは、正弦波(図32B)、鋸歯(図32C)、又は方形波(図32C)の周期性を有してよい。出力面36が多くのスロット149,184又はこれらの組み合わせを有するので、スロットの形状は、隣接するスロットの対称像すなわち鏡像であるスロットの利用を含む上記の形状のうちの任意の組み合わせであってよい。スロットはまた、流体源スロット149又は排出スロット184としての機能に依存して、又は、供給する気体組成物の種類に基づいて、様々な形状を有してもよい。
【0164】
細長いスロットの垂直でも平行でもない部分は、35°以上である基板の進行方向に対する最大角を有してよい。スロット149又は184は、基板の運動に対して斜めに設けられているので、基板の運動に対してある程度非垂直であることで、有利な効果を得ることができる。しかしスロットは基板の運動に対して平行となろうとすることで、基板が堆積マニホールドにわたって移動する際に、所与のマニホールド長及び所与のスロット間隔については、その基板が受けるALDサイクル数が減少する。従って、スロット149と184が斜めに設けられているときには、基板の運動方向に対して35°よりも大きな角をなし、より好適には45°以上の角をなすようにスロットを設けることが望ましい。
【0165】
図33A〜図33Cを参照し、再度図6〜図18を参照すると、一部の典型的実施例では、平坦ではない出力面を有することが望ましい。図6に図示されているように、出力面36は、x方向とy方向に延びて、z方向では変化しない。図6では、x方向は基板の運動方向に対して垂直である一方、y方向は基板の運動方向に対して平行である。図33A-図33Cに図示された典型的な実施例では、出力面36はz方向における変化を有する。
【0166】
曲率を有する出力面を利用することで、意図しない気体の混合又は基板の出力面との接触を起こすことなく高可撓性基板をコーティングすることが可能となる。曲がった出力面36はx方向及び/又はy方向に延びてよい。
【0167】
本発明の分配マニホールドで可撓性基板をコーティングするとき、流体源にわたって流れる流体によって及ぼされる力は、排出スロットにわたって流れる流体によって及ぼされる力とは異なる。これは、流体源から排出スロットへ流体を駆動するように流体圧力が設定されることの当然の結果である。その結果として生じる基板への効果は、その基板は、ヘッドから排出スロットへよりも、ヘッドから流体源スロットへより大きく力が加えられることである。よってこれにより基板が変形する。基板の変形は、浮遊高さは不均一となるので、流体の混合及び基板と出力面との接触の可能性が生じるため望ましくない。
【0168】
可撓性基板は、直線形状にわたって曲がりが生じるとき、つまり、曲がりの軸が1次元でのみ生じるときに最も簡単に曲がりうる。よって一連の直線形の平行スロットについて、基板の本質的なビーム強度が、スロット間の力の差異に抵抗するので、結果として顕著な基板の変形が起こる。
【0169】
x方向に沿って出力面36が曲がることで、コーティングされた基板20は、2次元(幅と高さ)に曲げられることを可能にすることで、基板20の実効ビーム強度が増大する。基板20での2次元の曲がりを生成するため、基板20の隣接領域内に圧縮と引っ張りが生じるように、基板20は出力面36の非直線の曲がった形状にわたって直接的に曲げられる。基板20は圧縮又は引っ張り力に対してかなりの耐性を有しうるので、この結果、基板20内での実効ビーム強度は顕著に増大する。
【0170】
y方向に沿って出力面36が曲がることで、分配マニホールド10の出力面36上での基板20の下向きの力を容易に制御することが可能となる。曲がりが出力面36のy方向に延びるとき、基板20の引っ張りが、出力面36に対する基板20の下向きの力を制御するのに用いられてよい。対照的に、出力面36がz方向での変化を有していないとき、基板20の下向きの力は、基板20の重さ又は基板20に作用する力を供する他の素子のいずれかのみを用いることによって制御されてよい。
【0171】
出力面36を曲げる一の従来方法は、z方向において変化を有するように分配マニホールド10のプレートを加工することである。しかしこれは、提案されたように高さが変化するプロファイルを実現するようにマニホールドを設計及び構築しなければならない。そのため分配マニホールドの製造費用が増大する。
【0172】
分配マニホールド10が、パターニングされた凹凸を有するプレートの組立体を有するとき、z方向におけるプレートの厚さが、組立プロセス中にそのプレートが所望のプロファイルに変形可能な厚さであれば、これらの増大する費用は、減少するか、又は、回避さえされうる。この方法では、同様の凹凸を有するプレートの組が、単純にそのプレートの組を適切な鋳型成型素子内で組み合わせることによって、z方向において複数の分配マニホールドの高さプロファイルを生成するのに用いられてよい。
【0173】
再度図33A-図33Cを参照すると、流体分配マニホールド10は第1プレート315と第2プレート320を有する。第1プレート315は、y方向に延びる長さ次元とx方向に延びる幅次元を有する。第1プレート315はまた、第1プレート315がy方向に延びる長さ次元及びx方向に延びる幅次元のうちの少なくとも1つにわたって変形可能(変形しやすい(compliant)とも呼ばれる)となるような厚さ660をも有する。それに加えて、第2プレート320は、y方向に延びる長さ次元とx方向に延びる幅次元を有する。第2プレート320はまた、第2プレート320がy方向に延びる長さ次元及びx方向に延びる幅次元のうちの少なくとも1つにわたって変形可能(変形しやすい(compliant)とも呼ばれる)となるような厚さ670をも有する。第1プレート315と第2プレート320のうちの少なくとも1つは、流体流を案内する流路を画定する凹凸を有するパターン(たとえば図12Aと図12Bを参照しながら図示及び説明した凹凸を有するパターン)を画定する。第1プレート315と第2プレート320は、プレート315,320の長さ次元及び幅次元のうちの少なくとも1つに沿って、z方向に延びる高さ次元において非平面の形状を形成するように1つに結合される。
【0174】
プレートが変形しやすくなるのに適した厚さは、具体的な用途について想定される構築物の材料と曲率半径に依存する。典型的には、組立プロセス−たとえばプレート結合法−が、プレートの一方又は両方に受容不可能な歪みも構造上の欠陥を生成しない限り、任意の厚さが用いられてよい。たとえば、プレート315,320が、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、ニッケル、又はチタンを含む金属で構成されるとき、一般的に、1.27cm未満で、より好適には0.508cm未満のプレート厚さが望ましい。有機材料−たとえばプラスチック及びゴム−については、2.54cm未満で、より好適には1.27cm未満のプレート厚さが望ましい。
【0175】
プレート315,320の非平面形状は曲率半径680を含んでよい。曲率は線の軸を有してよい。その線の軸は、曲率が円筒形の表面の一部を描いていることを示す軸は、x方向若しくはy方向、又はx方向とy方向の結合方向のいずれかであってよい。軸はまた、曲率を有する表面が出力面に沿って一定ではなくなるような、z方向の方向成分を有してもよい。曲率半径は最大10mであって、依然として有利な効果を奏しうる。軸は出力面よりも上になるか又は下になるかで、それぞれ、凸な曲率になるか、又は凹な曲率になる。
【0176】
あるいはその代わりに、曲率は、曲率が球面の一部を描くような地点の軸を有してよい。その地点の軸は出力面よりも上になるか又は下になるかで、それぞれ、凸な曲率になるか、又は凹な曲率になる。曲率半径最大10mであって、依然として有利な効果を奏しうる。
【0177】
分配マニホールドの出力面36は周期的な高さの変化を有してよい。これは、方向変化の任意のパターン又はz方向における曲率半径の周期的変化の形態をとりうる。周期的パターンは、正弦波であってよいし、又は、任意の周期的変化を生成することのできる複数の正弦波の結合であってもよい。曲率半径の変化はx方向とy方向の両方で同時に起こってよい。その結果、出力面36上での隆起又はモードとなる。
【0178】
分配マニホールド10は、第1プレート315と第2プレート320の高さ次元(z方向)において非平面形状を生成する治具を用いて、第1プレート315と第2プレート320を1つに結合することによって作製されてよい。たとえば第1プレート315と第2プレート320は、第1プレート315と第2プレート320を鋳型690内に保持する治具を用いて1つに結合されてよい。この治具の構成では、鋳型690は、第1の鋳型の片割れ690aと第2の鋳型の片割れ690bを有する。第1の鋳型の片割れ690aと第2の鋳型の片割れ690bは鋳型690のプロファイルにおける高さ変化を有する。この高さ変化プロファイルでは、第2の鋳型の片割れ690bは、第1の鋳型の片割れ690aとは実質的に逆の変化を有する。
【0179】
一連の凹凸を有するパターン315と320は、鋳型の片割れ690aと690bの間に設けられる。図33Bに図示されているように、鋳型の片割れ690aと690bは、凹凸を有するプレートを鋳型の片割れ690aと690bの形状に適合させるのに十分な圧力を印加するように閉じられる。続いて固定素子が、プレートを結合させるように設けられる。たとえば固定素子は、熱、圧力、音響エネルギー、若しくは、先にプレート間に設けられた接合剤若しくは結合材を活性化する他の力のうちのいずれか1つ又はこれらの組み合わせを有してよい。結合作用はまた、凹凸を有するプレートの本質的な特性に起因してもよい。たとえばプレートが鋳型内で押されて、そのプレートを貫通する現在流路が形成される場合、局所的な加熱は、他の結合材を必要とすることなく、プレート間を接合しうる。
【0180】
第1プレートと第2プレートの結合はまた、第1プレートと第2プレートに1組のローラを通過させる治具を用いることによって実現されてよい。たとえば非直線の経路に沿って設けられた一連のローラは、凹凸を有するプレート組立体がそのローラを通過する際に、そのプレート組立体を特定の曲率に適合させてよい。ローラは、熱、圧力、音響エネルギー、又は、プレートを結合させる他の固定力を同時に供するように構成されてよい。ローラは、手動、遠隔、又はコンピュータ制御装置によるヘッドの組立中に移動可能であることで、曲率半径における所望の変化が生成される。ローラはまた、仕上げされた分配マニホールドにおける高さ変化の周期的パターンを生成するパターニングされた表面プロファイルをも有してよい。
【0181】
上述したように、結合プロセスは、部品同士を組み立てて、少なくとも熱及び/又は圧力を加えることによって結合させる工程を有する。熱は、抵抗加熱、誘導加熱、対流加熱、放射加熱、又は炎による加熱によって加えられてよい。通常は、結合プロセスの大気圧を制御することで、金属部品の酸化を緩和することが望ましい。プロセスは、大気圧よりも高圧の任意の圧力から高真空の範囲で行われてよい。結合する材料と接する組成物は、酸素がほとんどない状態でなければならず、かつ、有利となるように、窒素、水素、アルゴン、又は他の不活性ガス若しくは還元ガスを含んでよい。
【0182】
分配マニホールドがどのようにして製造されたのかにかかわらず、本発明のこの典型的な実施例の一の利点は、個々のプレートは、この手法を用いて組み立てられるのに十分な可撓性を有しうる一方で、一旦結合すると、分配マニホールドの全体強度が、プレート同士の協働により増大することである。
【0183】
図36-図38を参照し、再度図3及び図6〜18を参照すると、上述したように、本発明の分配マニホールドで可撓性基板をコーティングするとき、流体源にわたって流れる流体によって及ぼされる力は、排出スロットにわたって流れる流体によって及ぼされる力とは異なる。これは、流体源から排出スロットへ流体を駆動するように流体圧力が設定されることの当然の結果である。その結果として生じる基板への効果は、その基板は、ヘッドから排出スロットへよりも、ヘッドから流体源スロットへより大きく力が加えられることである。よってこれにより基板が変形する。基板の変形は、浮遊高さは不均一となるので、流体の混合及び基板と出力面との接触の可能性が生じるため望ましくない。
【0184】
基板へのこの不均一な力の影響を緩和する一の有用な方法は、基板の反対面(供給ヘッドに対向していない基板の面)を支持することである。基板を支持することで十分な力が供される。それにより、基板の本質的なビーム強度は、上記の可能性を減らし、又は、特にz方向(高さ方向)において基板を顕著に変形させる−これは不十分な気体の分離、相互汚染、若しくは気体の混合、又は分配マニホールドの出力面と基板との接触を引き起こす恐れがある−のを防止しうる。
【0185】
本発明のこの典型的な実施例では、流体運搬システム60は、流体分配マニホールド10と基板搬送機構700を有する。上述したように、流体分配マニホールド10は、複数の細長いスロット149,184を有する出力面36を含む。流体分配マニホールド10の出力面36は、基板20の第1面42に対向して設けられる。それにより、細長いスロット149,184は、基板20の第1面に対向して、基板20の第1面付近に設けられる。基板搬送機構700は、基板20を、ある方向(たとえばy方向)へ進行させる。基板搬送機構700は、可撓性支持体704(図36に図示されている)又は706(図37,38に図示されている)。可撓性基板704,706は、流体分配マニホールド10の出力面36付近の領域内で基板20の第2面44を接続する。
【0186】
図36に図示されているように、可撓性支持体704は、1組の従来の支持用マウントに固定される。図37及び図38に図示されているように、可撓性支持体706は運動可能である。可撓性支持体706が運動可能であるとき、可撓性支持体706は、1組のローラ702の周りで駆動されるエンドレスベルトであってよい。1組のローラ702のうちの少なくとも1つは搬送モータ52を用いて駆動されてよい。
【0187】
可撓性支持体706もまた、輪郭を有した供給ヘッド10を収容するため、非平坦形状に適合可能である。支持体704も可撓性であるため、支持体704もまた輪郭を有してよい。可撓性支持体704は、所望の程度の可撓性を与える任意の適切な材料−たとえば金属又はプラスチック−から作られてよい。可撓性支持体706は典型的には、適切なベルト材料−たとえばポリイミド材料、金属材料−から作られるか、又は、可撓性支持体704,706の表面720と基板との接触を維持するのを補助するべとつく材料でコーティングされる。
【0188】
基板20はウエブ又はシートのいずれかであってよい。供給ヘッド10の出力面36と基板10との間での間隔の生成及び維持に加えて、基板搬送機構700は、供給ヘッド10に対する上流方向及び/又は下流方向に延び、かつ、追加の基板搬送機能をALDシステム60へ供してよい。
【0189】
任意で、可撓性支持体704,706は、基板20の第2面44へ力学的な圧力を供してもよい。たとえば流体圧力源730は、圧力下にある流体を、導管18を介して、基板20の第2面に作用する可撓性支持体704,706の領域へ供するように設けられてよい。圧力716,718が、流体分配マニホールド10の出力面36に対して基板20を設置するのに十分である限り、流体の圧力は正圧716又は負圧718のいずれでもよい。圧力716,718が可撓性支持体704,706によって供されるとき、圧力716,718は、正圧716又は負圧718を基板20の第2面44へ供する(印加する)開口部(穿孔部とも呼ばれる)を有してよい。他の構成も可能である。たとえば圧力716,718は、可撓性支持体704,706の周辺で与えられてよい。
【0190】
流体圧力源により供される圧力が正圧716であるとき、その圧力は、基板20を、流体分配マニホールド10の出力面36へ向かうように押す。流体圧力源により供される圧力が負圧718であるとき、その圧力は、基板20を、流体分配マニホールド10の出力面36から可撓性支持体704,706へ向かうように引き込む。いずれの構成でも、基板20と分配マニホールド10との間で相対的に一定の間隔を実現及び維持しうる。
【0191】
上述したように、複数の細長いスロット149,184の各々は、供給ヘッド10に係りスロット149,184に対応する流体源と流体をやり取りするように連通する。供給ヘッド10に係る第1の対応する流体源は、ある圧力で気体を供し、その圧力は、その気体が、細長いスロット149を通過して、出力面36と基板20の第1面42との間の領域へ流入するのに十分である。供給ヘッド10に係る第2の対応する流体源は、ある正の背圧で気体を供し、その正の背圧は、その気体が、細長いスロット149を通過して、出力面36と基板20の第1面42との間の領域を流出し、細長いスロット184へ流入するのに十分である。流体圧力源730によって供される圧力が正圧716であるとき、圧力716の大きさは一般的には、供給ヘッド10に係る第2の対応する流体源により供される正の背圧の大きさよりも大きい。
【0192】
可撓性支持体704,706により基板20の第2面44へ供されうる力学的圧力は、他の種類の力学的圧力を有してよい。たとえば力学的圧力は、負荷装置機構712を用いることによって、支持装置708を介してバネによる負荷を受ける可撓性支持体704,706を用いることによって、基板の第2面44へ供されてよい。負荷装置機構712はバネ及び負荷分配機構を有してよい。バネ及び負荷分配機構は、力学的な力を可撓性支持体704,706へ均等に負荷し、又は、十分なビーム強度を印加し、又は、可撓性支持体704,706のビーム強度を増大させる。あるいはその代わりに可撓性支持体704,706は、制約された位置に設けられてよい。それにより可撓性支持体704,706自体は、基板20の第2面44へバネの負荷による力を加えることで、供給ヘッド10の出力面36に対する一定の間隔を生成及び維持するのに必要なビーム強度を基板20に生成する。
【0193】
可撓性支持体704,706によって基板20の第2面44へ供されうる力学的圧力は、他の種類の力学的圧力を有してよい。たとえば搬送機構700は、静的な電気力を誘起する可撓性支持体704,706と基板20との間での静電荷の差を有してよい。その静電荷は、基板20を、流体分配マニホールド10の出力面36から可撓性支持体704,706へ向かうように引き込む。
【0194】
支持装置708はまた、可撓性支持体704,706へ熱を供して最終的には基板20を加熱するため、加熱されてもよい。基板20の加熱は、ALD堆積中、基板20の第2面44上又は基板20全体として、所望の温度に維持するのを補助する。あるいはその代わりに、支持装置708の加熱は、ALD堆積中、基板20の周辺の領域内で所望の温度を維持するのを補助してよい。
【0195】
図34を参照して、再度図3と、図6〜図18を参照すると、上述したように、本発明の分配マニホールドで可撓性基板をコーティングするとき、流体源にわたって流れる流体によって及ぼされる力は、排出スロットにわたって流れる流体によって及ぼされる力とは異なる。これは、流体源から排出スロットへ流体を駆動するように流体圧力が設定されることの当然の結果である。その結果として生じる基板への効果は、その基板は、ヘッドから排出スロットへよりも、ヘッドから流体源スロットへより大きく力が加えられることである。よってこれにより基板が変形する。基板の変形は、浮遊高さは不均一となるので、流体の混合及び基板と出力面との接触の可能性が生じるため望ましくない。
【0196】
基板へのこの不均一な力の影響を緩和する一の有用な方法は、基板の反対面に同じように不均一な力を印加ことである。基板の特定の領域に作用する正味の力がほんのわずかにしか残らないようにするため、反対の不均一な力は、流体分配マニホールドにより供される力と、大きさ及び空間位置が同様でなければならない。この残った力は十分に小さいので、基板の本質的なビーム強度は、上記の可能性を減らし、又は、特にz方向(高さ方向)において基板を顕著に変形させる−これは不十分な気体の分離、相互汚染、若しくは気体の混合、又は分配マニホールドの出力面と基板との接触を引き起こす恐れがある−のを防止しうる。
【0197】
再度図34を参照すると、本発明のこの態様の一の典型的実施例は、薄膜材料堆積用の流体運搬システム60を有する。薄膜材料堆積用の流体運搬システム60は、第1流体分配マニホールド10と第2流体分配マニホールド11を有する。分配マニホールド10は、複数の細長いスロット149,184を含む出力面36を有する。複数の細長いスロット149,184は、流体源スロット149と排出スロット184を有する。
【0198】
上述したように、大きさと方向が同様である反対の力を生成するため、第2流体分配マニホールド11は、出力面36に似た出力面37を有する。出力面37は複数の開口部38,40を有する。複数の開口部38,40は、流体源の開口部38と排出開口部40を有する。第2流体分配マニホールド11は、第1流体分配マニホールド10から間隔をあけ、かつ、第1流体分配マニホールド10と対向するように設けられる。それにより、第2流体分配マニホールド11の出力面37の流体源の開口部38は、第1流体分配マニホールド10の出力面36の流体源スロット149と鏡面対称となる。それに加えて、第2流体分配マニホールド11の出力面37の排出開口部40は、第1流体分配マニホールド10の出力面36の排出スロット184と鏡面対称となる。
【0199】
動作時では、基板20の第1面42は、第1流体分配マニホールド10の出力面36と近接する一方で、基板20の第2面44は、第2流体分配マニホールド11の出力面37と近接する。上述したように、出力面36のスロット149,184及び出力面37の開口部38,40は、流体源又は排出機能を供してよい。流体源の機能を供する出力面のスロット又は開口部は、出力面と対応する基板面との間の領域へ流体を流入させる。排出機能を供する出力面のスロット又は開口部は、出力面と対応する基板面との間の領域から流体を引き込む。
【0200】
マニホールド10とマニホールド11が鏡面対称となるように設置することは、第2流体分配マニホールド11の出力面37上の所与の開口部が、第1流体分配マニホールド10の第1出力面36上に設けられたスロットに対して略垂直の方向に設けられることを保証する助けとなる。動作時においては、出力面37と出力面36は一般的には互いに平行で、かつ、法線方向はz方向である。それに加えて、同一の所与の開口部は、その所与の開口部に対向する第1出力面36上に設けられたスロットの機能(流体源又は排出)と同じ機能を供する。出力面上の隣接するスロット間の間隔がdである場合、第1分配マニホールド10と第2分配マニホールド11との間での位置合わせの許容度は、dの50%未満でなければならず、好適には25%未満でなければならない。
【0201】
流体運搬システム60は、第1流体分配マニホールド10と第2流体分配マニホールド11との間を結ぶ方向に基板20を進行させる基板搬送機構−たとえばサブシステム54−を有してよい。基板搬送機構は、流体分配マニホールド10,11の出力面36,37に対して略平行な方向に基板20を移動させるように構成される。その移動は、一定速度又は可変速度で行われてもよいし、又は、往復運動を生成する方向において変化を有してもよい。移動は、たとえば自動化ローラ52を用いて実現されてもよい。
【0202】
基板20と第1流体分配マニホールド10との間の間隔D1は典型的には、基板20と第2流体分配マニホールド11との間の間隔D2と実質的に同一である。この意味において、間隔D1とD2は、両者が2倍の範囲内で、より好適には1.5培の範囲内であるときに、実質的に同一である。
【0203】
第2流体分配マニホールド11の複数の開口部38,40は様々な形状−たとえばスロット又は穴−を有してよい。第1流体分配マニホールド10は、出力面上の開口部用の細長いスロットを有することが確実と思われる。その理由は、これにより、出力面36に対して流入出する流体の供給が最も均一になるからである。第2流体分配マニホールド11内の対応する開口部もまた、流体源及び排出領域に対応するスロット構造をも有してよい。あるいはその代わりに、第2流体分配マニホールド11内の開口部は、任意の適切な形状の穴であってもよい。基板の第2面に適合する力を供する条件は厳密な条件ではないので、適合する力は、有害な基板の変形を防止するのに十分でありさえすればよい。従って、一連の穴−たとえば第1流体分配マニホールド10内のスロットと交差するように位置合わせされる第2流体分配マニホールド11内の−は、基板20上での力を十分に適合させるのに十分であると同時に、第2流体分配マニホールド11を単純かつ低費用で作製することを可能にする。
【0204】
上述したように、第1流体分配マニホールド10の出力面36上の細長いスロットは直線状であってもよいし、曲がっていてもよい。これらのスロットは、様々な形状−たとえば正弦波パターン、鋸歯パターン、又は方形波パターンのような周期的変化を含む−を有してよい。第2流体分配マニホールド11上の開口部は任意で、第1分配マニホールド10上の対応するスロットと相似する形状を有してよい。
【0205】
本発明のこの典型的な実施例では、運搬システム60の第1流体分配マニホールド10と第2流体分配マニホールド11はいずれも、ALD流体マニホールドであってよい。第2流体分配マニホールド11が、非反応気体を供する又は流すように動作する典型的な実施例では、この構成は、第2流体分配マニホールド11を起源とする力が、第1流体分配マニホールド10により供される力と十分適合することを保証する。他の典型的な実施例では、第2流体分配マニホールド11は、ALD堆積を可能にする1組の反応気体を供するように構成されてよい。この構成では、基板20の両面42,44は、同一又は異なる組成物の膜によって同時にコーティングされてよい。
【0206】
図35を参照して、再度図1〜28Eを参照すると、本発明の一部の典型的な実施例では、基板20へ供給される、又は基板20から除去される1種類以上の気体を監視することが望ましい。本発明のこの態様の一の典型的な実施例では、薄膜材料堆積用の流体運搬システム60は、流体分配マニホールド10、気体源−たとえば気体供給部28−、及び気体受容チャンバ29a又は29bを有する。上述したように流体分配マニホールド10は、複数の細長いスロット149,184を有する出力面36を有する。複数の細長いスロットは流体源スロット149と排出スロット184を有する。気体源28は、流体源スロット149と流体をやり取りするように連通し、かつ、分配マニホールド10の出力面36へ気体を供するように構成される。気体受容チャンバ29a又は29bは、排出スロット184と流体をやり取りするように連通し、かつ、排出スロット184を介して分配マニホールド10の出力面36へ供される気体を収集するように構成される。センサ46は、気体源28から気体受容チャンバ29へ進行する気体のパラメータを検知するように設けられる。制御装置56は、センサ46と電気的に接続し、かつセンサ46から受け取ったデータに基づいて運搬システム60の動作パラメータを修正するように構成される。
【0207】
気体源28を飛び出す気体は、外部導管を進行し、続いて流体源スロット149を介して出力面36へ到達する前に、流体分配マニホールド内部の内部導管を進行する。気体源28は、気体を出力面36へ供給するため、導管の圧力よりも高い圧力の任意の気体源であってよい。気体受容チャンバ29は、出力面36かた気体を除去するため、導管の圧力よりも低い圧力の任意の気体チャンバであってよい。
【0208】
センサ46は、システム60の様々な位置に設けられてよい。たとえばセンサ46は、図35の位置L1によって例示されているように、排出スロット184と気体受容チャンバ29との間に設けられてよい。この実施例では、センサ46は、分配マニホールド10、導管系34、気体受容チャンバ29、又はこれらの位置のうちの2つ以上の内部に含まれてよい。
【0209】
センサ46は、図35の位置L2によって例示されているように、流体源スロット149と気体源28との間に設けられてよい。この実施例では、センサ46は、分配マニホールド10、導管系32、気体受容チャンバ28、又はこれらの位置のうちの2つ以上の内部に含まれてよい。
【0210】
センサ46はまた、図35の位置L3によって例示されているように、分配マニホールド10の出力面36に設けられてもよい。この構成では、センサ46は、流体源スロット149と排出スロット184との間に設けられることが好ましい。
【0211】
センサ46は、気体の圧力、流速、化学特性、及び光学特性のうちの少なくとも1つを測定するものであってよい。センサ46が圧力を測定するとき、その圧力は、任意の圧力測定法を用いて測定されてよい。これらにはたとえば、容量性圧力検知装置、電磁的圧力検知装置、圧電性圧力検知装置、光学的な圧力検知装置、電位差測定による圧力検知装置、共振による圧力検知装置、又は熱的圧力検知装置が含まれる。流速は、たとえば非特許文献1に記載されているような任意の従来手法を用いて測定されてもよい。
【0212】
化学特性は、システム内の反応性前駆体、反応生成物、又は不純物を特定するために測定されてよい。化学的同一性及び特性を検知する任意の従来型センサが用いられてよい。検知走査の例には、出力面での反応物の過剰な混合を示す、所与の流体源チャネルから飛び出して他の流体源チャネルへ流入する前駆体の特定、出力面での反応物の過剰な混合を示す、排出チャネルへ流入する2つの異なる流体源の気体の反応生成物の特定、及び、出力面付近での空気混入を示す、排出チャネルでの過剰な不純物−たとえば酸素又は二酸化炭素−の存在が含まれる。
【0213】
気体の光学特性が用いられてよい。その理由は、光学測定は、非常に迅速で、実装が容易で、かつ、長センサ寿命を供することができるからである。光学特性−たとえば光の散乱又は減衰−は、出力面での過剰な成分の混合を示す粒状物質の生成を特定するのに用いられてよい。あるいはその代わりに、分光学的特性が、流れの中の元素の特定に用いられてもよい。これらは、紫外、可視、又は赤外放射線で検知されうる。
【0214】
上述したように、センサ46は制御装置56と接続する。制御装置56は、プロセス値(そのうちの少なくとも1つはセンサ出力である)を測定し、かつ、そのプロセス値の関数としての動作パラメータを制御する。制御装置は電子的なものでもよいし、又は機械的なものであってもよい。動作パラメータは典型的には、流体運搬システム60の動作への影響を有することが意図された流体運搬システム60への制御可能な入力であってよい。たとえば動作パラメータは、制御装置56によって調節可能な入力気体流を有してよい。
【0215】
センサ入力への応答は直接的でもよいし、又は逆動作であってもよい。たとえば圧力読み取り表示故障システムが動作する結果、反応性気体の放出又は大気開放を防止するため、気体流を減少又は遮断しうる。あるいはその代わりに、システムを制御状態に戻そうとするために気体流が増大することもあり得る。
【0216】
上述したように、システムは、流体分配マニホールド10に対してある方向に基板20を進行させる基板搬送機構−たとえばサブシステム54−を有してよい。制御装置56は、センサの読み取りに応答して、基板搬送機構54の動作パラメータを調節することによって基板20の運動を調節してよい。典型的には、これらの種類の動作パラメータは、基板速度、基板の引っ張り、及び、出力面に対する基板角度を含む。
【0217】
制御装置56はまた、システムの動作パラメータを調節することによって、基板搬送機構54と分配マニホールド10の相対位置をも調節してよい。この実施例では、基板搬送機構54と分配マニホールド10のうちの少なくとも1つが、z方向において、出力面36に対して実質的に垂直な方向での運動を可能にする機構を有してよい。この機構は、電気、ニューマチック、又は電気ニューマチック作動装置によって動作してよい。必要であれば、基板20と分配マニホールド10の相対位置の調節は、他のシステムパラメータの変化により実現されてよい。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1プレート及び第2プレートを有する流体分配マニホールドであって、
前記第1プレートは、長さ次元、幅次元、並びに、前記第1プレートの長さ次元及び幅次元のうちの少なくとも1つにわたって前記第1プレートを変形可能にする厚さを有し、
前記第2プレートは、長さ次元、幅次元、並びに、前記第2プレートの長さ次元及び幅次元のうちの少なくとも1つにわたって前記第2プレートを変形可能にする厚さを有し、
少なくとも前記第1プレート及び前記第2プレートの少なくとも一部は、流体流を導く流路を画定する凹凸パターンを画定し、
前記第1プレート及び前記第2プレートは1つとなって、前記長さ次元と前記幅次元のうちの少なくとも1つに沿った高さ次元において非平面形状を形成する、
流体分配マニホールド。
【請求項2】
前記非平面形状が曲率半径を有する、請求項1に記載の流体分配マニホールド。
【請求項3】
前記非平面形状が高さの周期的な変化を有する、請求項1に記載の流体分配マニホールド。
【請求項4】
基板上に薄膜材料を堆積する方法であって:
基板を供する工程;
流体分配マニホールドを供する工程であって、前記流体分配マニホールドは第1プレート及び第2プレートを有し、前記第1プレートは、長さ次元、幅次元、並びに、前記第1プレートの長さ次元及び幅次元のうちの少なくとも1つにわたって前記第1プレートを変形可能にする厚さを有し、前記第2プレートは、長さ次元、幅次元、並びに、前記第2プレートの長さ次元及び幅次元のうちの少なくとも1つにわたって前記第2プレートを変形可能にする厚さを有し、少なくとも前記第1プレート及び前記第2プレートの少なくとも一部は、流体流を導く流路を画定する凹凸パターンを画定し、前記第1プレート及び前記第2プレートは1つとなって、前記長さ次元と前記幅次元のうちの少なくとも1つに沿った高さ次元において非平面形状を形成する、工程;並びに、
前記凹凸パターンにより画定された流体流を導く流路を気体物質に貫流させた後に、前記気体物質を前記流体分配マニホールドから前記基板へ向かうように流す工程;
を有する方法。
【請求項5】
流体分配マニホールドを製造する方法はであって:
第1プレートを供する工程であって、前記第1プレートは、長さ次元、幅次元、並びに、前記第1プレートの長さ次元及び幅次元のうちの少なくとも1つにわたって前記第1プレートを変形可能にする厚さを有する、工程;
第2プレートを供する工程であって、前記第2プレートは、長さ次元、幅次元、並びに、前記第2プレートの長さ次元及び幅次元のうちの少なくとも1つにわたって前記第2プレートを変形可能にする厚さを有し、少なくとも前記第1プレート及び前記第2プレートの少なくとも一部は、流体流を導く流路を画定する凹凸パターンを画定する、工程;並びに、
前記長さ次元と前記幅次元のうちの少なくとも1つに沿った高さ次元において非平面形状を形成する治具を用いることによって、前記第1プレート及び前記第2プレートを1つに結合する工程;
を有する。
【請求項6】
前記治具を用いることによって、前記第1プレート及び前記第2プレートを1つに結合する工程が、前記第1プレート及び前記第2プレートに1組のローラを通過させる工程を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記治具を用いることによって、前記第1プレート及び前記第2プレートを1つに結合する工程が、前記第1プレート及び前記第2プレートを鋳型内に保持する工程を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記治具を用いることによって、前記第1プレート及び前記第2プレートを1つに結合する工程が、熱、音響エネルギー、及び圧力を前記第1プレート及び前記第2プレートに印加する工程を有する、請求項5に記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28A】
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【図28B】
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【図28C】
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【図28D】
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【図28E】
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【図29A】
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【図29B】
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【図29C】
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【図30】
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【図31A】
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【図31B】
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【図31C】
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【図31D】
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【図32A】
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【図32B】
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【図32C】
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【図32D】
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【図33A】
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【図33B】
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【図33C】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公表番号】特表2013−508561(P2013−508561A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536874(P2012−536874)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/053096
【国際公開番号】WO2011/056405
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】