説明

曲面塗装装置

【課題】曲率が一定でない曲面の塗装面に対しても均一な厚みの塗膜が得られる曲面塗装装置を提供する。
【解決手段】曲面塗装装置100は、高速で塗料の吐出と吐出停止が切り替え可能で、且つ塗料の吐出時間と吐出停止時間の制御可能なノズル2と、ノズル2が取り付けられ、該ノズル2の塗料吐出口を被塗物1の塗装面に対向するように該ノズルの移動可能なロボットアーム4と、ロボットアーム4を制御するロボットコントローラ5と、ノズル2の塗料吐出時間と吐出停止時間の制御可能なノズル駆動回路7と、ロボットコントローラ5及びノズル駆動回路7を制御する主制御装置6とを備え、主制御装置6は、被塗物1の表面を仮想の三次元マトリクス面によって多数の微小塗面12に分解し、各微小塗面に対してノズル2の塗料吐出口が対向するようにロボットコントローラ5を制御すると共に、ノズル2が対向する微小塗面12の面積に応じた塗料の量を吐出するようにノズル駆動回路7を制御する。これにより、曲面の塗装面に対する塗膜の厚みを均一にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲面塗装装置に関し、さらに詳しくは、曲面を有する被塗物に均一な厚みの塗装を施すのに適した曲面塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工業製品等への塗装は、塗装用ロボットによって行われている。例えば、自動車の塗装工程ではラインの両側に塗装用ロボットを配設し、この塗装用ロボットと車体等とを相対移動させながら塗装用ロボットのアームの先端に取り付けられたノズルから塗料を噴霧することによりボディ等への塗装が行われている。塗装用のノズルは、例えば、塗装面に対して往復するように走査され、かつ、均一な厚みが得られるようにコンピュータ制御され、ノズルが被塗物の端部に到達すると噴霧した塗料が被塗物の端部から外れるまで噴霧、いわゆるオーバースプレーが行われる(特許文献1参照)。ところで、オーバースプレーは、噴射塗料が塗装に用いられないために塗料の無駄使いになる。そのため、被塗物の端部におけるスプレーパターンを他の場所のスプレーパターンより小さくし、折り返し部でのオーバースプレーによる廃棄塗料の量を削減できるようにした塗装方法が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−371252号公報
【特許文献2】特開2004−305874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の塗装装置や方法は、スプレーガンのノズルから一定量の塗料を連続に吐出しながら一定のスピード及び一定の幅でノズルを走査させているため、平面の塗装であれば問題ないが、曲面への塗装となると円筒や球状等の曲率が一定の特別な被塗物の場合を除き、ノズルを一定のスピード及び一定の幅で曲面上を走査させることは極めて困難であることから曲率の異なる曲面に対する均一な厚みの塗膜が得られないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑みなされたもので、円筒や球状等の曲率が一定の特別な曲面はもとより、曲率が一定でない曲面の塗装面に対しても均一な厚みの塗膜を形成することが可能な曲面塗装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、曲面を有する被塗物の表面にノズルから塗料を吐出して塗装を行う曲面塗装装置において、高速で塗料の吐出と吐出停止が切り替え可能で、且つ、塗料の吐出時間と吐出停止時間の制御可能なノズルと、ノズルが取り付けられ、ノズルの塗料吐出口を被塗物の塗装面に対向するようにノズルの移動可能なロボットアームと、ロボットアームを制御するロボットコントローラと、ノズルの塗料吐出時間と吐出停止時間の制御可能なノズル駆動回路と、ロボットコントローラ及びノズル駆動回路を制御する主制御装置とを備え、主制御装置は、被塗物の表面を仮想の三次元マトリクス面によって多数の微小塗面に分解し、各微小塗面に対してノズルの塗料吐出口が対向するようにロボットコントローラを制御すると共に、ノズルが対向する微小塗面の面積に応じた塗料の量を吐出するようにノズル駆動回路を制御することを特徴とする曲面塗装装置を提供する。
【0007】
本発明に係る曲面塗装装置によれば、曲率が一定でない曲面の塗装面に対しても均一な厚みの塗膜が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る曲面塗装装置の好ましい一実施形態を示す構成図である。
【図2】被塗物の三次元画像に対する微小塗面の設定を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[曲面塗装装置の構成]
以下、本発明に係る曲面塗装装置について、好ましい一実施形態に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る曲面塗装装置の実施形態を示すブロック図である。図示された曲面塗装装置100は、概略として、塗料が塗布される曲面状の被塗装面を有する被塗物1に対して塗料を吐出するノズル2と、先端部にノズル2が取り付けられたアーム3を備えたロボットアーム4と、ロボットアーム4を制御するロボットコントローラ5と、ノズル2の塗料吐出量を制御するノズル駆動回路7及びロボットコントローラ5とノズル駆動回路7を制御する主制御装置6と、被塗物1の画像データを取得する画像入力装置10とを備えて構成されている。
【0010】
画像入力装置10は、被塗物1の塗装面の曲面状をデータとして取り込むための装置であり、例えば、光学的に非接触で被塗物1の三次元の画像データを取得可能な3Dデジタイザや、3Dスキャナ等がある。また、デジタルカメラで撮影した画像から三次元の画像データを取得する装置も知られており、これを画像入力装置10として用いることもできる。さらには被塗物1の外形形状を特定可能なCADデータを利用することもできる。ここで、被塗物1は、曲面状の被塗装面を有する工業製品、例えば、自動車、携帯電話のケース等がある。勿論、これに限定されるものではなく、工業製品の全般を対象にすることができ、被塗装面が平面状であってもかまわない。
【0011】
ロボットアーム4は、例えば、6軸等の複数のアーム3を備えた多関節型ロボットであり、各アーム3に設けられているモータ(図示せず)をロボットコントローラ5で制御することにより、アーム3に取り付けられたノズル2の位置と姿勢を3次元に自由に駆動することができるようになっている。これにより、被塗物1の被塗装面が曲面状で、しかもこの被塗装面に凹凸等があっても、ノズル2を被塗装面に対する距離を一定に位置させると共に、曲面に対して塗料の吐出方向を対向させるように保持することが可能となる。そして、後述するように、被塗装面を細かく区分けした微小塗面12に対向してノズル2の塗料吐出口から塗料を吐出することで微小塗面12に塗料を確実にしかも無駄なく100%塗布することができ、塗布厚を正確に制御することができる。ここで、図1の符号20はノズル2から吐出された塗料を示している。尚、本実施形態ではロボットコントローラ5はロボットアーム4とは別に設けたが、ロボットアーム4と一体に構成してこれを後述する主制御装置6によって直接制御する構成とすることも可能である。
【0012】
ノズル2は、たとえば本出願人が取得した特許第4123897号公報に示されるインクジェットノズルを使用することができる。また、電磁ソレノイドを駆動することにより、高速、例えばマイクロ秒〜数百マイクロ秒で塗料の吐出と吐出停止を制御することができ、且つ、その吐出時間と吐出停止時間も正確に制御することができる。尚、電磁ソレノイドをピエゾ効果素子に代えることにより、さらに高速、且つ、正確に塗料の吐出を制御することも可能である。
【0013】
主制御装置6は、被塗物1の三次元曲面に対し、仮想の三次元マトリクス面によって多数の微小塗面12に分割する演算を実行する。微小塗面12のサイズは、曲面による影響をなくすためにはできるだけ小さい方がよいが、小さくすればするほど微小塗面12の数が増加するので演算処理の負担が増加することになる。そのため、例えば、被塗物1が携帯電話の筐体のような小型の工業製品の場合には0.2×0.2mm、自動車のような大型の工業製品の場合には2×2mm程度とすることが好ましい。もちろん微小塗面12のサイズは被塗物1の大きさ、形状、被塗装面の曲率等に応じて適宜変更することができる。
【0014】
主制御装置6は、ロボットコントローラ5に対しロボットアーム4に取り付けられたノズル2のノズル吐出口が各微小塗面12に対向するようにノズル2の位置と姿勢を保つように指令制御を行う。また、主制御装置6は、ノズル駆動回路7に対してノズル2の吐出時間を制御することによって対向する1つの微小塗面12にその面積に対応した量の塗料をノズル2から吐出させる。そして、これを各微小塗面12ごとに順次繰り返すことによって被塗物1の表面が均一な塗膜で塗装される。
【0015】
[実施形態の効果]
本実施形態に係る曲面塗装装置によれば、画像入力装置10によって被塗物1の塗装面の三次元画像を取得し、これに基づいて仮想的に上記塗装面を多数の微小塗面12に分割し、各微小塗面12の面積に対応した量の塗料をノズル2から吐出することによって塗布していくようにしたため、単位面積当たりの塗料の塗膜が一定になることによって、曲率が一定でない曲面の塗装面に対しても均一な厚みに塗膜を形成することができるという効果がある。
【0016】
また、ノズル2から塗料が吐出されて塗着する面積は微小塗面12の面積よりも広い面積に塗布されるようにすると1つの微小塗面に対して何層にも塗装が行われる結果、さらに均一な厚さの塗膜が得ることができる。
【0017】
また、ノズル2の塗料吐出口の向きを対向する微小塗面12に対し略垂直になるようにロボットアーム4を制御すれば、塗料が偏ることがなく塗着するので、より均一な厚さの塗膜を得ることができる。
【0018】
さらに、ノズル2からの塗料の吐出は、0.05mm〜5mm程度の小さな面積を単位として行うことで、被塗物1に対するオーバースプレーを極度に低減でき、これによって塗料の無駄使いを低減でき、ほぼ100%の塗着効率が得られるという効果がある。因みに、従来の塗装装置の塗着効率は70〜80%であった。
【0019】
以上のように、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形及び変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0020】
1 被塗物
2 ノズル
3 アーム
4 ロボットアーム
5 ロボットコントローラ
6 主制御装置
7 ノズル駆動回路
10 画像入力装置
11 三次元画像
12 微小塗面
20 塗料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面を有する被塗物の表面にノズルから塗料を吐出して塗装を行う曲面塗装装置において、
高速で塗料の吐出と吐出停止が切り替え可能で、且つ、塗料の吐出時間と吐出停止時間の制御可能なノズルと、
ノズルが取り付けられ、該ノズルの塗料吐出口を被塗物の塗装面に対向するように該ノズルの移動可能なロボットアームと、
前記ロボットアームを制御するロボットコントローラと、
前記ノズルの塗料吐出時間と吐出停止時間の制御可能なノズル駆動回路と、
前記ロボットコントローラ及び前記ノズル駆動回路を制御する主制御装置と、
を備え、
前記主制御装置は、前記被塗物の表面を仮想の三次元マトリクス面によって多数の微小塗面に分解し、各微小塗面に対して前記ノズルの塗料吐出口が対向するようにロボットコントローラを制御すると共に、前記ノズルが対向する微小塗面の面積に応じた塗料の量を吐出するようにノズル駆動回路を制御することを特徴とする曲面塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−101146(P2012−101146A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249476(P2010−249476)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000128371)株式会社エルエーシー (3)
【Fターム(参考)】