説明

有効な鎮痛剤および抗炎症剤2−ヘテロアリール−キナゾリンおよびキノリンのアミジン誘導体

本発明は、一般式(I)で示される2−ヘテロアリール−キナゾリンおよびキノリンの新規アミジン誘導体、その製造方法、その医薬組成物、ならびに疼痛および炎症性障害の処置のための、それら化合物、その塩およびその誘導体、ならびに対応する医薬組成物の使用に関する。本発明の化合物は、炎症性疼痛および神経因性疼痛の両方の処置に適した、極めて有効な鎮痛剤である。特に神経因性疼痛の処置について、本発明の化合物は、現在臨床で用いられている標準化合物と比較して非常に優れていることが分かった。これらの化合物は、COXおよびNOS酵素の阻害を介して作用するものではなく、炎症性の刺激による炎症性サイトカイン産生の阻害に有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−ヘテロアリール−キナゾリンおよびキノリンの新規アミジン、それらの製造方法、それらの医薬組成物、および疼痛および炎症性の関連する疾患の処置のためのそのような化合物およびそれらの医薬組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性的な疼痛の神経生物学的メカニズムについての研究開発にもかかわらず、現在もこの治療分野は、現状の薬物による対応が不十分な分野の1つである。世界の人口の3分の1を超える人が持続的なまたは反復性の疼痛に悩まされているが、疼痛は患者をさらなる疾患にかかりやすくする免疫抑制効果を有するため、処置されない疼痛は際限なくつづくこともある(C.L. Stuky, Mecha−nisms of Pain, PNAS, 2001, 98, 11845)。国際疼痛学会(IASP, Classification of chronic pain, 2nd Edition, IASP Press, 2002, 210)は、疼痛を「組織の実質的あるいは潜在的な傷害に関連する不快な感覚的および情動的な体験」であると定義している。疼痛は常に主観的なものであるが、その症例または症候群は、生理学的疼痛と病理学的または臨床的疼痛の2つに分類することができる。生理学的疼痛は、急性で、起こり得る組織損傷を警告するという保護的な役割を有している一方、病理学的疼痛はふつう慢性的なものである。病理学的疼痛は、主に、末梢組織の損傷/炎症に関連する炎症性の疼痛と神経因性の疼痛に分けられる。
【0003】
神経因性疼痛は、臨床的には、慢性疼痛症候群のグループを指す。これらの症候群は、最初の神経損傷に続き中枢神経系および末梢神経系における異常な感覚伝達が生じることによって引き起こされるという、共通の特徴を有する。神経因性疼痛状態は、数多くの疾患(例えば、糖尿病、癌、切断、多発性硬化症)の結果である。
【0004】
炎症性疼痛の人は世界で数億人いる。関節炎(慢性関節リウマチと変形性関節症が最も一般的な関節炎の形態である)は関節の炎症と定義されるが、病院にいる患者が示す第一の特徴は慢性疼痛である;関節炎は、慢性疼痛を引き起こす唯一の病状ではないが、この種の疼痛の共通したおよび非常に代表的なものである。
【0005】
末梢の感作および中枢の感作は、病理学的疼痛を生じる原因となっている2つの主要なメカニズムである。組織の損傷が起こると、炎症性の応答が進み神経系と免疫系の両方におけるメカニズムを引き起こす。これによって継続する疼痛状態がもたらされる。組織の傷害と炎症の間、向炎症性プロスタグランジン(PGE2)、5−HT、ブラジキニン、ヒスタミン、ATP、サイトカイン等の感作物質が炎症細胞と神経末端から放出される。これらのメディエーターは、末梢の侵害受容ニューロンの興奮を介する特定のイオンチャネルの活性化を引き起こし、細胞内キナーゼの活性化をもたらし、末梢感作を生じる。末梢の侵害受容器の活性化はまた、CNSにおける活性または使用依存性の神経可塑性をもたらす。この可塑性は、その後の末梢刺激に対する応答を増強し持続させることによって神経受容経路の能力を修飾する。脊髄、ならびに脳、におけるこれらの変化は、中枢の感作を意味する。中枢の感作は、痛覚感受性の増大の維持において主要な役割を担っており、通常は感じない低い閾値の求心性入力によって傷害後に生じた疼痛の原因である。疼痛状態の処置が満足のいく薬理学的解決手段を未だに見出せていないのは、疼痛の誘発や制御に関するこのように非常に複雑なメカニズムをみれば理解できる。
【0006】
モルヒネ等の鎮静剤は、強力な鎮痛作用を生じるその能力が、耐性、身体的依存性、呼吸抑制および便秘等の望ましくない副作用とともによく知られている。疼痛の臨床での管理のための新しい薬剤を同定するために、いくつかのアプローチがここ10年間に実行されており、例えばCOX−2阻害剤は、炎症性の疼痛の処置において良好な有効性を示すものの、神経因性疼痛の処置には有効ではなく、さらにCOX−2阻害剤について望ましくない生命に危険を及ぼすような副作用が最近取り上げられた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
神経因性疼痛の処置のための入手可能な鎮痛薬、例えば、三環式抗鬱薬(例えば、アミトリプチリン)やいくつかの抗てんかん薬(例えば、ガバペンチン、ラモトリジン、およびカルバマゼピン)が有効な患者もいるが、神経因性疼痛の処置のための有効な薬物が大いに必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の記載
本発明は、処置において有用な、特に慢性疼痛、神経因性疼痛、急性疼痛、癌疼痛、関節炎によって引き起こされる疼痛や内臓痛等の様々な疼痛状態の処置のための、新しいクラスの化合物、即ち、式(I)で示される2−ヘテロアリールキナゾリンおよびキノリンのアミジン誘導体に関するものである。
【0009】
本発明の化合物にはまた、PGE2やサイトカイン等の、いくつかの向炎症性メディエーターの発現および細胞内産生に対して作用する抗炎症特性を有し、したがって、関節炎、慢性関節リウマチおよび変形性関節症、腸炎(潰瘍性大腸炎およびクーロン病等)の処置に有用な薬理作用物質である。
【0010】
式(I)の化合物:
【化1】

[式中、
Xは、独立に炭素または窒素原子から選択され;
ZおよびYは、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、または以下の基:−SO2−、−CH2−、−CHR2−、−CH=、−CR2=、−NH−、−N=から独立に選択され;
Qは、独立に以下の基:−CH2−、CHR2−、−CH=、−CR2=、−CH2−CH2−、−CHR2−CH2−から選択され;
但し、Y、Z、Qの組み合わせは、ベンゾ縮合した6員または5員の複素環を形成し、好ましくは、1,3−ベンゾジオキソール、1,3−ベンゾジチオール、ベンゾフラン、2,3−ジヒドロベンゾフラン、ベンゾチオフェン、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン、2,3−ジヒドロベンゾチオフェンS,S−ジオキシド、インドール、2,3−ジヒドロインドール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、2H−3,4−ジヒドロベンゾピラン、2H−3,4−ジヒドロベンゾチオピラン、2H−3,4−ジヒドロベンゾチオピランS,S−ジオキシド、[1,4]−ベンゾジオキシン、2,3−ジヒドロ−[1,4]−ベンゾジオキシン(1,4−ベンゾジオキサン)、1,4−ベンゾチアジン、2,3−ジヒドロ−[1,4]−ベンゾチアジン、2,3−ジヒドロ−[1,4]−ベンゾチアジンS,S−ジオキシド、[1,4]−ベンゾオキサジンおよび2,3−ジヒドロ−[1,4]−ベンゾオキサジンから選択され;
1は、独立にC1−C4アルキルまたはC1−C4シクロアルキルから選択され;C1−C4アルキル基は、直鎖状または分岐鎖の、飽和または不飽和の、炭化水素鎖であり;C1−C4シクロアルキル基は環状のC1−C4炭化水素環であり、場合により2以下のメチルまたはエチル基で置換されていてもよく;
2は、独立にC1−C4アルキル、アルコキシ(−OR1)、フェニルまたは置換されたフェニル、ベンジルまたは置換されたベンジルから選択され;該置換されたフェニルは、好ましくは、フッ素、塩素、臭素、シアノ、ニトロ、メチル、トリフルオロメチルから選択される1または2の置換基を有するフェニルであり;該置換されたベンジルは、好ましくは、フェニルがフッ素、塩素、臭素、シアノ、ニトロ、メチル、トリフルオロメチルから独立に選択される1または2の置換基で置換されたベンジル基である]。
【0011】
本発明によれば、式(I)で示される化合物は、遊離塩基またはその製薬的に許容し得る塩、そのような塩の溶媒和物若しくは水和物の形態として用いることができる。
【0012】
式(I)で示される化合物の塩は、製薬的に許容し得る無機酸および有機酸との付加塩である。無機塩の代表例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫化水素塩および硫酸塩が挙げられるがこれに限定されない。有機塩の代表例としては、マレイン酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、コハク酸塩、アスコルビン酸塩、酒石酸塩が挙げられるがこれに限定されない。
【0013】
式(I)の化合物には互変異性体もあり得、本発明はこれらの化合物の可能なすべての互変異性体にも関する。
【0014】
更なる態様では、本発明は、式(I)で示される化合物の製造方法を提供する。
【0015】
更なる態様では、本発明は、上記の疼痛および炎症性障害の処置に有用な式(I)の化合物の医薬組成物を提供する。本発明の範囲において、医薬組成物(医薬品)なる用語は、有効量の少なくとも1つの活性医薬成分(薬物成分)、即ち式(I)の化合物、その塩または溶媒和物、および経口、非経口または局所投与のための以下に記載する製薬的に許容し得る担体、賦形剤または希釈剤を含有する、上記の病状の処置に適した任意の経口、非経口または局所的投与形態を意味する。
【0016】
式(I)の化合物の代表例としてはTable 1に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【表1】

【表2】

【0017】
本発明の化合物の製造
式(I)の化合物は、式IIで示される化合物と式IIIで示される化合物とを反応式1に示したように反応させることにより製造する。
反応式1:
【化2】

[X、Y、Z、Q、R1およびR2は、上記式(I)の化合物と同意義であり、Wはアルコキシ基(エトキシまたはメトキシ)またはアルキルチオ基(チオメチルまたは2−ナフチルチオメチルである]。
【0018】
式(II)で示される化合物と式(III)で示される化合物との反応は、エタノールまたはメタノール、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)またはテトラヒドロフラン(THF)等の適当な溶媒中、0℃から還流温度までの温度にて、アルコキシイミデート(J. Med. Chem., 1990, 33, 2108−2113)またはチオイミデート(Tetrahedron Letters 1997, 179−182)についての記載と同様にして行う。あるいは、式(I)の化合物を、乾燥した塩酸触媒下、適当なニトリル(R1−CN)と反応させることによって式(II)の化合物から得ることができ、アセトニトリルの場合はニトリル自身が反応溶媒であり得、他の場合には、ジ−クロロメタンまたはテトラヒドロフラン等の適当な不活性な溶媒を用いる。
【0019】
所望により、以下のステップにより、式(II)で示される化合物を式(I)で示される化合物への変換を完結することができる:
−存在する保護基を脱離する
−生成物を製薬的に許容し得る塩または溶媒輪物に変換する。
【0020】
特に、式(I)の化合物におけるZ−Q−Yの置換パターンが塩基性の窒素を含む複素環を形成する場合(典型例:2,3−ジヒドロインドール、2,3−ジヒドロ−[1,4]−ベンゾチアジン、2,3−ジヒドロ−[1,4]−ベンゾチアジンS,S−ジオキシド、2,3−ジヒドロ−[1,4]−ベンゾオキサジン)は、式(I)の化合物を製造する前にこの窒素の保護が必要である。この場合の適当な窒素保護基は、トリフルオロアセトアミド、tert−ブトキシカルボニルおよびベンジルオキシカルボニル基、より好ましくはベンジルオキシカルボニル保護基である。これらの場合には、保護基の脱離が式(I)の化合物の最終ステップになる。式(I)で示される化合物から、上記のいずれかの製薬的に許容し得る塩または溶媒和物若しくは水和物への変換は、当分野でよく知られた方法にしたがって容易に行うことができる。例えば、既知の方法によって、不活性な溶媒中で式(I)で示される化合物を適当な酸で処理し、析出させ、単離し、場合により再結晶することによって、酸付加塩またはその溶媒和物を得ることができる。
【0021】
式(II)で示される化合物は、反応式2に示すとおり、式(III)で示される化合物から得られる。ニトロ基の還元は、例えば水素およびPd/CまたはPtO2等の触媒を用い、適当な溶媒中、当分野においてよく知られた方法(P. Rylander, Catalytic Hydrogenation in Organic Synthesis, Academic Press, 1979)によって行うことができる;あるいは、塩化スズ等の還元剤を用いてニトロ基を還元することができる(Bellamy, Tetrahedron Letters, 1984, 839-842) or iron (Merlic, JOC, 1995, 33-65)。
反応式2:
【化3】

[式中、X、Y、Z、Qは上記式(I)の化合物と同意義である]
【0022】
別法として、反応式3に示すとおりに、式(II)で示される化合物を式(IIIa)で示される化合物から得ることができる。
反応式3:
【化4】

[式中、X、Y、Z、Qは上記式(I)の化合物と同意義であり、Tは、以下の基:PhCH2O−またはt−But−O−、CF3−、CH3−、Ph−から選択される]。
【0023】
保護基の脱離のための適当な条件は、使用する保護基、およびその分子に存在する他の保護基に依存して、当分野でよく知られた方法に従う(T.W. Green. and P. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 1991, J.W. & S.)。例えば、Z−Q−Yの置換パターンが塩基性窒素を含有する複素環を形成する場合(代表例:2,3−ジヒドロインドール、2,3−ジヒドロ−[1,4]−ベンゾチアジン、2,3−ジヒドロ−[1,4]−ベンゾチアジンS,S−ジオキシド、2,3−ジヒドロ−[1,4]−ベンゾオキサジン)、複素環の窒素の保護は、好ましくはベンジルオキシカルボニル基またはtert−ブトキシカルボニル基を用いて行い、Tは、好ましくは−CF3またはCH3基である。
【0024】
式(III)および(IIIa)の化合物がキノリン誘導体である場合は、式(III)および(IIIa)の化合物は、反応式4に示すように、式(IV)および式(IVa)の化合物を式(V)の化合物と反応させることにより製造することができる。
反応式4:
【化5】

【0025】
反応式4において、Y、Z、Qは、上記式(I)の化合物と同意義であり、Tは上記と同意義であり、式(IV)および式(IVa)のキノリン誘導体の2位の置換基は塩素原子である。式(V)の化合物において、置換基Mは、ホウ酸[−B(OH)2]、スタンナン[−Sn(Me)3または−Sn(nBut)3]、亜鉛(−ZnCl)等の金属を含有する基である。Mがホウ酸基である場合、式(IV)で示される化合物と式(V)で示される化合物とのカップリング反応は、当分野でよく知られているスズキジアリールカップリングによって行うことができる(D.G. Hall, Boronic acids, Wiley- VCH, 2005)。Mがスタンナンであるとき、カップリング反応は、Stille's反応を用いて行うことができる(JOC, 2000, 2802-2805またはBull. Chem. Soc. Jpn. 1983, 3855と同様に)。M基が亜鉛(−ZnCl)である場合、カップリング反応は、既知のアリール亜鉛ジアリールカップリング法を用いて得ることができる(JOC, 1997, 3158と同様に)。式(V)の化合物は商業的に入手可能であるか、商業的に入手可能な化合物から標準的な方法によって得ることができる。式(IV)および(IVa)で示される化合物は、文献の記載にしたがって製造される(Byoung, Heterocycles, 1998, 48,12, 65)。
【0026】
式(III)および(IIIa)の化合物は、それらがキナゾリン誘導体である場合は、反応式5に示すとおり、式(VI)および(VIa)の化合物を式(VII)の化合物と反応させることにより製造することができる。
反応式5
【化6】

【0027】
式(VI)および(VIa)で示される化合物と式(VII)のアシル塩化物との反応は、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、テトラヒドロフランおよびトルエン等の適当な不活性な溶媒中、有機の塩基(例えばトリエチルアミン)または無機の塩基(例えばK2CO3)の存在下で行い、対応するアミドを得、これを単離するかまたは対応する3,4−ジヒドロキナゾリンに直接環化することができる。環化は、アシル化媒体中で自然に起こり得るか、または適当な溶媒(即ち、トルエン)中、酸触媒(パラトルエンスルホン酸等)の存在下でアジドを加熱することによるか、アミドをトルエンまたはジメトキシエタン等の不活性な溶媒中でPOCl3と反応させる。中間体の3,4−ジヒドロキナゾリンから対応する式(III)および(IIIa)の化合物への酸化は、その物質に依存して、空気酸化により自然に行われるか、またはDDQ(2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノキノン)、TCQ(テトラシアノキノン)またはMnO2等の酸化剤を用いて行う。式(VI)の化合物は、ニトリル基を適当な還元剤(テトラヒドロフラン中のボラン、メタノールまたはエタノール中のホウ水素化ナトリウムと塩化ニッケルまたは塩化コバルト、エチルエーテルまたはテトラヒドロフラン中のホウ水素化ナトリウムと三フッ化ホウ素等)で還元することによって、商業的に入手可能な5−ニトロ−アントラニロニトリルから得ることができる。式(VIa)の化合物は、2−アニリン基の保護、5−ニトロ基の還元、5−アニリノ基の保護、次いで2−アミノ保護基の脱保護によって、商業的に入手可能な5−ニトロ−アントラニロニトリルから得ることができる。保護基は適当に選択する。例えば、トリフルオロアセトアミド基を2−アミノ基に最初に導入し、このニトロ基を還元した後、直交型(orthogonal)tert−ブトキシカルボニル保護基を5−アミノ基に導入することができる。メタノール中での炭酸カリウムによる処置により、トリフルオロアセトアミド基を選択的に脱離することができる。あるいは反応式6に示すように、式(VIII)の化合物を式(IX)の化合物と反応させることにより、式(III)のキナゾリンを製造することができる。
反応式6:
【化7】

【0028】
カップリング反応は、同様の基質について文献に報告されているように、標準的な方法により行うことができる(Woohdge, J. Med. Chem., 1975, 1117; Kotsuki Synlett, 1999, 1993)。式(VIII)の化合物は商業的に入手可能であり、式(IX)の化合物は、標準的な手順にしたがって商業的に入手可能な化合物から製造することができる。
【0029】
あるいは、反応式7に示すように、式(II)のキナゾリンは、式(XI)の4−クロロ−6−ニトロ−キナゾリンから得た式(X)のトシルヒドラゾンを還元することによって製造することができる。
反応式7:
【化8】

【0030】
式(X)で示される化合物から式(II)で示される化合物への変換は、例えば同様の基質について記載された標準的な手順に従い、水酸化ナトリウムの存在下で、THFおよびエタノール等の適当な溶媒中、水素およびPd/C等の還元剤を用いることによって行うことができる(Gomtsyan, J. Med. Chem., 2005, 744)。式(XI)の化合物は、対応するキナゾリノン(XII)を、SOCl2で、またはPOCl3またはPCl3で処理することによって得ることができる。式(XII)のキナゾリノンは、反応式8に示されるように、標準的な手順にしたがって水酸化カリウムで処理することにより、式(XIII)のビスアミドから得られる。
反応式8:
【化9】

【0031】
式(XIII)のアミドは、反応式9に示すとおり、式(VII)の適当な塩化アシルを用いて5−ニトロ−アントラニロニトリルを反応させることにより得た式(XIV)のアミドニトリルを、水酸化ナトリウム水溶液中、過酸化水素で酸化することにより得ることができる。
反応式9:
【化10】

【0032】
式(I)の化合物の製造の非限定的な代表例を以下に示す。
【0033】
実施例1:N−[2−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)キナゾリン−6−イル]アセトアミジン
【化11】

Tetrahedron Letters 38, 179−182 (1997)の記載にしたがって製造した6−アミノ−2−(3,4−メチレンジオキシ−フェニル)−キナゾリン(5g,0.019mol)およびS−2−ナフチルメチルチオアセトイミデートブロミドデート(5.63g,0.019mol)のエタノール(80ml)中の懸濁液を、室温にて24時間攪拌した。次いで、S−2−ナフチルメチルチオアセトイミデートブロミドレート(2.8g,0.010mol)を加え、混合物を室温にてさらに24時間攪拌した後、減圧下で濃縮した。残留物を酢酸エチルと水に分液した。水層をNa2CO3で塩基性にし、酢酸エチルで抽出した。生成物をHCl水溶液(0.001N)で3回抽出した。水層を集め、Na2CO3で塩基性にし、酢酸エチルで抽出した。有機層を水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、減圧下で濃縮した後、残留物をジエチルエーテルでトリチュレートした。黄色の固形物を濾過し、減圧乾燥して標題の化合物を得た(2.4g、収率42%)。
C17H14N4O2 ; MW: 306.33; mp 195.9−196.9℃; 1H NMR (DMSO−d6) 9.42 (s, 1H), 8.13 (d, 1H), 7.97 (s, 1H), 7.87 (d, 1H), 7.44 (s, 1H), 7.26 (s, 1H), 7.07 (d, 1H), 6.46 (s, 2H), 6.12 (s, 2H), 1.82−1.99 (m, 3H); IR (KBr) 3414, 1640, 1444, 1253; TLC (CHCl3:MeOH:H2O:NH3 85:25:2:1) Rf = 0.65
【0034】
6−アミノ−2−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−キナゾリン
【化12】

エタノール(500ml)中の6−ニトロ−2−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−キナゾリン(37g,0.126mol)およびSnCl22H2O(117.2g,0.504mol)の懸濁液を還流温度に1時間加熱した。室温に冷却した後、溶媒を減圧留去し、クロロホルムを加え、混合物をアンモニアで塩基性にした。沈殿を濾過し、クロロホルムで洗浄した。ろ液を集め、水で洗浄した後、Na2SO4で乾燥した。溶液を減圧下で濃縮した後、残留物をジイソプロピルエーテル/石油エーテルでトリチュレートした。黄色の固形物を濾過し、減圧乾燥した(21.2g、収率64%)。
C15H11N3O2, MW: 265.27; mp 191-192℃; 1H NMR (DMSO−d6) 9.24 (s, 1H), 8.05 (dd, 1H), 7.91 (d, 1H), 7.73 (d, 1H), 7.39 (dd, 1H), 7.03 (d, 1H), 6.90 (d, 1H), 6.11 (s, 2H), 5.93 (s, 2H); IR (KBr) 3319, 3203, 1631, 1500, 1446; TLC (CHCl3/MeOH 9/1) Rf = 0.3.
【0035】
6−ニトロ−2−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−キナゾリン
【化13】

5−ニトロ−2−アミノ−ベンジルアミン塩酸塩(31g,0.152mol)のジクロロメタン(DCM)(450ml)中の懸濁液に、0℃にてTEA(52.6ml,0.38mol)およびDCM(80mL)中のピペロニロイルクロリド(27.3g,0.16mol)の溶液を加えた。混合物を室温で2時間攪拌した。溶媒を減圧下で留去し、残留物をエタノール/水(1/9)次いでジイソプロピルエーテルでトリチュレートした。得られた固形物を減圧下で乾燥し、トルエン(900ml)およびPOCl3(670mL)中に懸濁した。混合物を還流温度に2時間加熱し、溶媒を留去した後、残留物を水/アンモニアでトリチュレートし、水で洗浄し、P25で乾燥した。得られた固形物とクロラニル(32.7g,0.129mol)のトルエン(500ml)溶液を還流温度に2時間加熱した。混合物を減圧下で濃縮し、残留物をNaOH(1M)でトリチュレートし、水およびメタノールで洗浄した。得られた固形物を減圧下で乾燥した(37g、収率83%)。
C15H9N3O4, MW= 295.26. mp: 220-222℃.
【0036】
5−ニトロ−2−アミノ−ベンジルアミンハイドロクロライド
【化14】

THF(1M,840ml)中のボランの溶液を、窒素下で0℃にてTHF(1.2L)中の5−ニトロ−アントラニロニトリル(120g,0.70mol)の懸濁液に加えた。混合物を室温で2時間攪拌した。0℃で冷却した後、無水エタノール(400ml)を加えた後、HClを45分間バブリングした。混合物を減圧下で濃縮し、残留物をエタノール、次いでジイソプロピルエーテルでトリチュレートした。得られた固形物を減圧下で乾燥して塩酸塩(140g,収率99%)を得た。C7H10N3O2Cl, MW: 203.63. TLC (CHCl3:MeOH:H2O:NH3 85:25:2:1) Rf = 0.3.
【0037】
実施例2:N−[2−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)キノリン−6−イル]アセトアミジン二塩酸塩
【化15】

6−アミノ−2−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−キノリン(1.0g,3.78mmol)をアセトニトリル(30ml)に溶解した。この溶液を0℃に冷却し、HClガスを30分間バブリングした。反応混合物を室温で12時間攪拌した。生成物を濾取し、アセトニトリルおよびイソプロピルエーテルで洗浄した。1.5gの黄色の固形物が得られた。
C18H17Cl2N3O2 , M.W. : 378.26; m.p: 261.4−265.5℃; 1H−NMR (d6−DMSO): 11.93 (s, 1H); 9.75 (s, 1H); 8.80 (s, 1H); 8.57 (d, 1H); 8.27−8.23 (m, 2H); 8.03 (s, 1H); 7.91 (d, 2H); 7.88 (d, 1H); 7.12 (d, 1H); 6.16 (s, 2H); 5.90 (m, 1H). IR(KBr): 3394, 2772, 1598, 1501, 1345, 1259 cm-1.

Rf (85/25/2/1クロロホルム/メタノール/アンモニア/水):0.65; HPLC: 保持時間 8.46 分
HPLC条件: Supelcosil LC−DP カラム; 150X46mm;溶離液 KH2PO4 10mMおよび25/27/48H3PO4/メタノール/アセトニトリル(pH=3.7);流速0.45 ml/分; 214.0nmの紫外線にて検出。
【0038】
6−アミノ−2−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−キノリン
【化16】

10%Pd/C(0.29g、0.27mmol)を、メタノール/THF(80ml/80ml)中の2−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−6−ニトロキノリン(2.0g,6.80mmol)に加えた。混合物を室温で2時間水素化した。触媒を濾取し、ろ液を濃縮して1.31g(73%)の標題化合物を得た。
C16H12N2O2 , M.W. : 264.29.1H−NMR (d6−DMSO): 8.00 (d, 1H); 7.83−7.63 (m, 4H); 7.20 (d, 1H); 7.16 (d, 1H); 6.84 (s, 1H); 6.07 (s, 2H); 5.65 (s, 2H). Rf (9/1クロロホルム/メタノール):0.50.
【0039】
2−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−6−ニトロキノリン
【化17】

2−クロロ−6−ニトロキノリン(5.2g、25mmol)(Byoung S.L. et al. Heterocycles. 1998, 48.12, 65にしたがって調製)、3,4−(メチレンジオキシ)フェニルボロン酸(5.0g,30mmol)、塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(350mg,0.5mmol)および水酸化バリウム八水和物(18.9g,60mmol)の無水THF(150mL)溶液を65℃にて20時間攪拌した。反応物の混合物を減圧下で留去し、残留物をシリカゲル(CH2Cl2)クロマトグラフィーにかけて2.0g(27%)の標題の生成物を得た。
C16H10N2O4, M.W: 294.27, 1H−NMR (d6−DMSO): 8.95 (s, 1H); 8.65 (s, 1H); 8.95 (d, 1H); 8.40 (dd, 1H); 8.19−8.11 (m, 2H); 7.87 (d, 2H); 7.05 (d, 1H); 6.10 (s, 2H). Rf (CH2Cl2): 0.50.
【0040】
実施例3:N−[2−(2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシン−6−イル)キナゾリン−6−イル]アセトアミジン
【化18】

この化合物を、N−[2−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)キナゾリン−6−イル]アセトアミジンの合成について実施例1に記載した手順と同様に合成した(収率46%)。
C18H16N4O2, MW: 320.35, mp 191.7−192.6℃; 1H NMR (DMSO−d6) 9.42 (s, 1H), 7.98−8.05 (m, 2H), 7.87 (d, 1H), 7.20−7.46 (m, 2H), 7.00 (d, 1H), 6.40 (s, 1H), 4.33 (s, 4H), 1.70−2.10 (m, 3H); IR (KBr) 3439, 1638, 1558, 1432, 1347; TLC (CHCl3:MeOH:H2O:NH3 85:25:2:1) Rf = 0.38.
【0041】
6−アミノ−2−(2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシン−6−イル)−キナゾリン
【化19】

この化合物を、6−アミノ−2−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−キナゾリンの合成について実施例1に記載した手順と同様に合成した(収率67%)。
C16H133O2, MW: 279.30, mp 179.4−181.6℃; 1H NMR (DMSO−d6) 9.24 (s, 1H), 7.92−7.98 (m, 2H), 7.72 (d, 1H), 7.38 (dd, 1H), 6.89−6.99 (m, 2H), 5.91 (s, 2H), 4.31 (s, 4H); IR (KBr) 1555, 1507, 1286; TLC (CHCl3/MeOH/NH3 95/5/0.5) Rf = 0.50.
【0042】
6−ニトロ−2−(2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシン−6−イル)−キナゾリン
【化20】

この化合物を、6−ニトロ−2−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−キナゾリンの合成について実施例1に記載の手順と同様に合成した(収率70%)。
C16H11N3O4, MW: 309.28. mp. 263−265℃ ;TLC (tol/AcOEt 7/3) Rf = 0.80.
【0043】
実施例4:N−[2−(2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−5−イル)キナゾリン−6−イル]アセトアミジン二塩酸塩半水和物
【化21】

MeCN(50ml)中の6−アミノ−2−(2,3−ジヒドロ−5−ベンゾフラニル)−キナゾリン(1.4g,0.0053mol)の懸濁液を0℃にてHClで飽和させ、室温で24時間攪拌した。沈殿を濾過し、アセトン/メタノールでトリチュレーションした。淡黄色の固形物を濾過し、40℃で減圧乾燥して標題の化合物を得た(1.3g,収率65%)。
C18H18N4OCl2, MW: 377.27. mp 186-192℃. 1H NMR (DMSO−d6) 11.93 (s, 1H), 9.80 (s, 1H), 9.70 (s, 1H), 8.84 (s, 1H), 8.38−8.46 (m, 2H), 8.10−8.15 (m, 2H), 7.89 (dd, 1H), 6.95 (d, 1H), 4.66 (t, 2H), 3.32 (t, 2H), 2.44 (s, 3H); IR (KBr) 3037, 1611, 1505, 1243; TLC (CHCl3:MeOH:H2O:NH3 85:25:2:1) Rf = 0.58.
【0044】
6−アミノ−2−(2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−5−イル)−キナゾリン
【化22】

この化合物を、6−アミノ−2−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−キナゾリンの合成について実施例1に記載した手順と同様に合成した(収率73%)。
C16H133O, MW: 263.30. TLC (CHCl3/MeOH 9/1) Rf = 0.65.
【0045】
6−ニトロ−2−(2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−5−イル)−キナゾリン
【化23】

この化合物を6−ニトロ−2−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−キナゾリンの合成について実施例1に記載の手順と同様に合成した(収率15%)。
C16H11N3O3, MW: 293.28.1H NMR (DMSO−d6) 9.91 (s, 1H), 9.17 (d, 1H), 8.66 (dd, 1H), 8.42−8.49 (m, 2H), 8.15 (d, 1H), 6.97 (d, 1H), 4.68 (t, 2H), 3.28 (t, 2H).
【0046】
実施例5:N−[2−(2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−5−イル)キナゾリン−6−イル]アセトアミジン二塩酸塩
【化24】

この化合物を、N−[2−(1,3−ベンゾジオキソール−イル)キナゾリン−6−イル]アセトアミジンについて実施例1に記載した手順と同様に合成した(収率19%)。この遊離塩基のメタノール懸濁液をイソプロピルエーテル/HClで処理し、得られた懸濁液を留去することにより、塩酸塩に変換した。固形物をアセトン中でトリチュレーションし、40℃にて減圧乾燥した。
mp 190−195℃; 1H NMR (DMSO−d6) 12.10 (s, 1H), 9.89 (s, 1H), 9.79 (s, 1H), 8.92 (d, 1H), 8.60 (dd, 1H), 8.11−8.22 (m, 3H), 7.94 (d, 1H), 7.79 (d, 1H), 7.16 (d, 1H), 5.26 (s, 2H), 2.47 (s, 3H); IR (KBr) 2802, 1678, 1610, 1503; TLC (CHCl3/ MeOH/H2O/NH3 85/25/2/1) Rf = 0.28.
【0047】
6−アミノ−2−(5−ベンゾフラン)−キナゾリン
【化25】

この化合物を、6−アミノ−2−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−キナゾリンの合成について実施例1に記載した手順と同様に合成した(収率59%)。
1H NMR (DMSO−d6) 9.31 (s, 1H), 8.77 (s, 1H), 8.48 (dd, 1H), 8.06 (d, 1H), 7.68−7.80 (m, 2H), 7.41 (dd, 1H), 7.10 (d, 1H), 6.93 (d, 1H); TLC (tol/AcOEt 7/3) Rf = 0.35
【0048】
6−ニトロ−2−(5−ベンゾフラン)−キナゾリンの合成
【化26】

この化合物を、6−ニトロ−2−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−キナゾリンの合成について実施例1に記載の手順と同様に合成した(収率76%)。TLC (tol/AcOEt 7/3) Rf = 0.80
【0049】
本発明の化合物の薬理学的評価
炎症性のまたは神経因性疼痛ならびに上記の障害に関連する炎症の処置について、式(I)で示される化合物の有効性をインビトロアッセイおよびインビボ動物モデルを用いて測定した。
【0050】
本発明の化合物は、COX−1またはCOX−2酵素阻害についての標準的なインビトロ試験において、10-5Mまでの濃度で有効でなかったので、シクロオキシゲナーゼ酵素(COX−1およびCOX−2)の阻害には有効でない。
【0051】
対照的に、本発明の化合物は、細胞内の系におけるIL−1βによるPGE2産生を、μモル濃度で阻害することが可能である。セレコキシブおよび他のCOX−2阻害剤について生じるような直接のCOX−2阻害に帰するのではなく、向炎症性メディエーターPGE2の産生に対するこの阻害効果は、細胞内の系において示されたように、サイトカインによるCOX−2発現の阻害に起因するものである。
【0052】
本発明の代表的な化合物について、軟骨細胞培養におけるIL−βにより誘導されるPGE2産生の阻害における有効性、ならびにIL−β誘導性のSW1353ヒト軟骨肉腫細胞系におけるCOX−2発現における阻害をTable 2に示す。
【表3】

【0053】
さらに、本発明の化合物は、iNOSおよびnNOS酵素阻害についての標準的なインビトロ試験において、高濃度でも有効でないことが示されたので、一酸化窒素シンターゼの阻害には有効でない。さらに、細胞内の系におけるIL−βによるNO産生の阻害に対しても活性がないことも分かった。また、IL−β刺激SW1353ヒト軟骨肉腫細胞系におけるiNOS発現の阻害についても効果がないことが分かった。
【0054】
本発明の化合物は、いくつかの細胞系におけるサイトカイン産生の阻害に有効であるjことが分かった。IL−1刺激ヒト軟骨肉腫細胞系におけるこの効果の代表的な例を、2つの代表的なサイトカインについて、Table 3に示す。
【表4】

【0055】
このサイトカインモジュレーター特性は、炎症および疼痛のインビボモデルにおいて本発明の化合物によって示された、完全にまたは部分的に顕著な抗炎症性のおよび鎮痛特性に帰することができる(M. Schafer, Cyto−kines and Peripheral Analgesia, Immune Mechanisms of Pain and Analgesia, pg. 41−50 Plenum Publishers, 2003)。
【0056】
炎症性疼痛のモデルとして、足底内注射によるザイモサン誘発機械的痛覚過敏(mechanical hyperalgesia)を用いた(Meller, Neuropharmacology, 1994, 33, 1471−1478)。このモデルでは、典型的に雄性のSprague-DawleyまたはWistarラット(200〜250g)の片方の後脚にザイモサン3mg/100μlを足底内注射した。この後脚に顕著な炎症が起きる。炎症性障害の30分前に、有効性の評価のために薬物を経口投与する。ザイモサン投与により誘導された痛覚過敏をRandall-Selitto法 (Arch. Int. Pharmacodyn., 1957, 111, 409)を用いて評価する。鎮痛効果の定量化は無痛覚計により行い、これは炎症を起こした後脚に付加した重量の増加(130〜140gから500gまで)と矛盾しない。基底値(通常230〜250g)と、炎症チャレンジの4時間後に測定した薬物で処置した動物が耐性を示す値との間の機械的疼痛の閾値との差異を機械的痛覚過敏と定義する。
【0057】
本発明についての機械的痛覚過敏をED50で示し、これは、対照動物群との比較で疼痛の閾値を50%増大することができる投与した化合物の用量である。用量−応答が直線関係にある場合、100%疼痛の閾値を減少することができる用量を示す、対応するED100をこれらの場合について計算することができる。本発明の化合物によって発揮されるインビボの抗炎症効果は、上記の同じザイモサン誘発炎症試験において、炎症剤によって誘発された浮腫の容積を測定することにより分析することができる。浮腫は、0〜2時間のザイモサンを注射した脚の容積の増加によって評価した。種々の脚の浮腫容積の測定値を、脚を浸けるための大きいキュベットと、これと連結した、置換された容積を測定値として記録することができる変換器を含む小さいキュベットの、界面活性剤液を入れた2つのプラスチックキュベットからなるハイドロプレチスモメーターを用いて記録した。脚を脛骨足根骨関節までキュベット内に浸した。置換された液体の容積は、炎症の程度と比例する。浮腫形成の阻止における本発明の化合物の有効性をED30(炎症チャレンジの2時間後に測定した、対照動物(動物をザイモサンで処置し、試験化合物の代わりに蒸留水のみで処置した動物)に対するザイモサンを投与した脚の容積増加を30%減少することができる用量を示す)として示す。用量−応答が直線関係にある場合は、それらのケースについて、ザイモサン投与した脚の容積増大を50%減少することができる用量を示す対応するED50を計算することができる。
【0058】
各試験化合物について、両実験において、1群あたり10匹の動物に対して少なくとも3種類の用量を用いた。本発明の化合物を10、20および40mg/kgにて試験した。
【0059】
上記の試験における、式(I)の代表的な化合物の能力を、鎮痛効果と抗炎症効果の両方についてTable 4に示す。本発明の化合物の活性を、よく知られた標準化合物の同じ試験における能力と比較する。
【0060】
本発明の代表的な化合物は、鎮痛効果および抗炎症効果の両試験において標準化合物に対して有効性が優れているまたは匹敵する。さらに、本発明の化合物は、試験した高い用量でも、ニメスリドによって示されるのと同様に潰瘍性の副作用は示さなかった。
【表5】

【0061】
式(I)で示される化合物の鎮痛活性を、慢性炎症性疼痛の動物モデルにおいてさらに評価することができる。臨床的に、何らかの炎症または末梢および中枢神経系における可塑性の神経の変化が長期間続いている場合には、炎症性疼痛は関節炎や慢性腰痛等の慢性状態と関連していることが最も多いので、炎症性の障害が中枢を介した変化を誘導する慢性的な動物の実例はより予測的なモデルを提供するであろう。慢性炎症疼痛の最初のモデルは、炎症メディエーター(アジュバント)をラットの尾の付け根に注射することに基づくものである。この処置の結果として、最初に強い炎症および痛覚過敏を含む多発性関節炎が注射した部位に起こる。但し、T細胞介在性の過敏性反応に起因して、2〜3週で疾患が発症し、複数の関節病変および続いて眼、耳、鼻および生殖器に病変がみられる。これらの全体的な影響は、慢性炎症疼痛によって特徴づけられる病状において共通して臨床的に観察されるものを反映するものではない。ごく最近では、適当なプロトコルの使用とともに、炎症応答の誘発剤としての完全フロイントアジュバント(CFA;Mycobacterium tuberculosis)の使用によって如何にして適当なモデルが提供されるかが示されている。CFA誘導による長期間の炎症は、慢性疼痛における神経可塑性の関与を調べるのにも適当であると考えられている (S. Naeini, Remodelling of spinal nociceptive mechanisms in an animal model of monoarthritis, Eur. J. Neuroscience, 2005, 22, 8, 2005−2015) ので、疼痛応答の行動試験において広く用いられている (K. Walker, Animal Models fまたはPain Research, Mol Med Today, 1999, 5,319-321)。
【0062】
実験は、文献の記載にしたがって行う(C.J. Woolf, Cytokine, Nerve Growth Factor and inflammatory Hyperalgesia: the Contribution of Tumor Necrosis Factor α, Br. J. of Pharmacology, 1997, 121, 417-424);各群8匹のラットを用い、各生成物を3種類の用量(3、10、30mg/kg)で試験し、足底内チャレンジの24時間後に、生成物を腹腔内投与し、チャレンジの24時間後から鎮痛活性の測定を開始した。Table 5に、知られている標準化合物であるピロキシカムと比較した式(I)の代表的化合物についてCFAモデルにおいて得られた結果を示す。Randall−Selittoモデルについて上記したのと同じ実験を用いて鎮痛効果を評価し、結果を薬物で処置した動物とビークルのみを投与した対照動物との間の痛覚閾値における差異の最大(%)で示す(重量の増加に対する脚投与量に起因して、CFA処置を受けた対照と比較した、侵害受容作用の減少)。100%の保護は、化合物とCFAで処置した動物が、CFA処置をしなかった対照動物と同じ刺激(重量)に耐えていることを意味する。100%よりも高いMPEは、化合物とCFAで処置した動物が、CFA処置しなかった対照動物(痛覚過敏)よりも高い刺激(重量)に耐えていることを意味する。
【表6】

【0063】
この試験においても、本発明の化合物は、顕著で長時間継続する鎮痛効果を10および30mg/kgの用量で示し、これは顕著な鎮痛効果で特徴付けられる最も高い用量である。この用量で、代表的な化合物は、参照標準化合物であるピロキシカムよりもはるかに有効である。
【0064】
痛みを伴う糖尿病性ニューロパシーは、ヒトのインスリン依存性糖尿病の最も一般的な合併症であり;特に、糖尿病は、古典的な鎮痛剤では処置することができない神経因性疼痛を伴う。
【0065】
ラットにおけるストレプトゾトシン(STZ)−誘発性糖尿病は、痛みを伴う糖尿病性ニューロパシーのモデルとして、有望な鎮痛剤の有効性を評価するために用いられることが多くなっている(C. Courteix, Pain 1993, 53, 81-8)。ラットにおけるSTZ−誘発性糖尿病に関連する機械的痛覚過敏を減少する効果について、文献に記載の実験モデルにしたがって本発明の化合物を試験した。
1回用量のSTZ(75 mg/kg i.p.)を注射して糖尿病を生じさせた。糖尿病の誘導後の4週間に動物に次第に現れた臨床的病状(体重、および皮膚体温、運動性、高血糖)を正確にモニターする。4週間後、種々の疼痛刺激(特に機械的刺激)に対して糖尿病ラットにおいて得られたスコアは、正常なラットのスコアよりも高く、痛覚過敏を示した。糖尿病によって誘導された痛覚過敏を、上記のRandall-Selitto法を用いて評価し、無痛覚計を用いて定量化した。またこのケースでは、基底値(通常230〜250g)と薬物で処置した動物が耐性を示す値との間の機械的疼痛の閾値の差を機械的痛覚過敏とする。本発明の化合物を種々の用量(溶液、Tween80、生理食塩水中10%)にて腹腔内投与し、機械的痛覚過敏を、薬物で処置した動物とビークルのみを投与した対照動物との間の痛覚閾値における差異を示す最大百分率効果(%)として、記載した時間で測定し、処置を受けなかった非糖尿病の対照ラットに課した重量と比較した。100%の保護は、化合物で処置した動物が、処置をしなかった非糖尿病の動物と同じ刺激(重量)に耐えていることを意味する。100%よりも高いMPEは、化合物で処置した動物が、対照の非糖尿病の動物(痛覚過敏)よりも高い刺激(重量)に耐えていることを意味する。
【0066】
Table 6に、神経因性疼痛の上記モデルにおける、式(I)の代表的化合物の性能を、この病状の臨床的処置に用いられるいくつかの既知の薬理学的標準化合物と比較する。
【表7】

【0067】
実施例1、2および4の化合物は、特に30mg/kgの用量で、非常に有効であると示された(即ち、100%を超える保護)。この例では、用いた標準化合物の効果はいずれもはるかに低かった。
【0068】
本発明の化合物が腹膜刺激により誘導された内臓疼痛に対する応答を阻害することが可能かどうかを評価するために、マウスにおける酢酸ライジングアッセイを用いて、痛覚抑制の程度を測定した。
【0069】
ライジング試験は、鎮痛剤および抗炎症剤の評価のためのスクリーニングツールとして長い間用いられている、炎症性疼痛のモデルである (HDJ Collier, B. J. Pharmacol Chemother., 1968, 32, 295-310)。試験は、1%酢酸(0.1mL/体重10g)を、腹腔内注射により侵害受容を誘導して行う。酢酸注射の30分前に試験化合物でマウスを前処置(皮下、皮下注射、3種類の用量:3、10、30mg/kg)し、対照の動物には同容量の生理食塩水溶液を注射した。マウスの群を、参照薬物としてパラセタモール(200 mg/kg, s.c.)で処置した。腹部の身もだえ(abdominal writhes)(両後脚の完全な伸張)の数を、酢酸注射20分後の間に5分ごとに累積的に計測した。痛覚抑制活性を、薬物で処置した動物とビークルのみを投与した動物との間の疼痛閾値の差を示す、腹部の身もだえの阻害の最大効果(%)(MPE)として示した。
【0070】
試験した化合物の非特異的な鎮痛作用または運動作用の可能性を調べるため、および鎮痛と薬物による運動の変化を区別するために、試験化合物を投与した動物の運動活性をビークルのみを投与したマウスと比較した。
【0071】
Table 7は、鎮痛および腹膜刺激による内臓痛の上記試験における、式(I)の代表的化合物の性能をパラセタモールと比較したものである。
【表8】

【0072】
本発明の化合物は、腹膜刺激による内臓痛の阻害について、標準化合物と比較してはるかに有効であることが分かった。有意の運動の変化を誘導した試験化合物はなく、このことは、これら化合物が非特異的な鎮静作用または刺激作用を生じずに、鎮痛をもたらしていることを示している。
【0073】
ホルマリン試験は、傷害による疼痛のモデルとして用いられることが多くなっている(FV. Abbott, Pain, 1995, 60, 91-102)。本発明の化合物の評価のために用いる手順は文献に記載されたものと同様であり(FV. Abbott, Pain, 1995, 60, 91-102)、マウスの右後脚の足底表面に、蒸留水に溶解した1%ホルマリン溶液20μLを注射した。直ぐに、マウスをそれぞれ観察チャンバーに入れた。マウスが注射した脚をリッキングする時間の合計を疼痛の指標とし、ホルマリン注射から30分間記録した。最初の侵害受容スコアはホルマリン注射から5分後(初期)および15〜30分後(後期)にピークとなり、両者はそれぞれ神経因性疼痛および炎症性疼痛応答を示す。
【0074】
ホルマリン注射の1時間前に、試験化合物の水溶液を腹腔内注射してマウスを処置した(用量:3、10、30mg/kg)。対照の動物にはビークルのみを投与した。
【0075】
Table 8に、式(I)の代表的な化合物がこの試験において示した鎮痛効果を、初期または後期についてのED50で示し、標準参照のパラセタモールの性能と比較した。
【表9】

【0076】
この試験において、本発明の代表的化合物である実施例1の化合物はまた、疼痛の初期と後期の両方において、パラセタモールと比較して非常に有効であることが示された。
【0077】
医薬組成物
式Iで示される化合物は疼痛および炎症性の関連障害の治療的処置のための適当な医薬の製造において用いることができる。特に、長期間の炎症が組織破壊を引き起こし広範な傷害をもたらす、多くの慢性炎症性疾患の有意の原因である慢性疼痛障害および免疫主導の炎症性イベントの処置のため。
【0078】
したがって、式(I)の化合物、それらの塩および溶媒和物の適当な医薬組成物は、炎症性疼痛および関連する痛覚過敏症および異痛、変形性関節症の痛み、術後疼痛、転移性の癌に関連する痛み、三叉神経痛、急性ヘルペスおよびヘルペス後の神経痛、神経因性疼痛、糖尿病性ニューロパシーが挙げられるがこれに限定されない、急性および慢性疼痛の処置に用いることができる。
【0079】
さらに、式(I)の化合物、それらの塩および溶媒和物の適当な医薬組成物は、関節炎、消化管の炎症性障害、炎症性の膀胱障害、呼吸器の炎症性の障害、炎症性の眼障害が挙げられるがこれに限定されない免疫主導の炎症性イベントの処置に用いることができる。
【0080】
本発明の化合物は、薬理学的に有効な量で経口、非経口または局所的に投与することができる。本明細書において用いられる非経口なる語は、静脈内、筋肉内、皮下、皮内および関節内を意味する。
【0081】
式(I)の化合物について本明細書において記載されたすべての処置の方法について、日用量の経口投与レジメは、好ましくは約0.1〜約20mg/kg(合計体重)である。さらに、当業者は、式(I)の化合物の個々の投与の最適な量および間隔は処置する状態の性質および程度によって決定されるものであるということを認識する。
【0082】
本発明はさらに、薬理学的に有効な量の式(I)で示される化合物、その塩、溶媒和物およびプロドラッグ、および製薬的に許容し得る担体または希釈剤を含有する、上記疾患の処置に適当な組成物に関する。
【0083】
式(I)で示される化合物を治療において使用するために、通常は、調剤学の慣用の方法および現在の指針および関連する医薬品の安全性試験実施基準および製造基準にしたがって、ある投与形態に製剤化される。
【0084】
本発明の化合物に好ましい投与経路は経口である。本発明の化合物は、カプセル、錠剤、丸剤、粉末および分散顆粒等の、幅広く様々な経口投与形態に製剤化することができる。適当な担体は、希釈剤、香料、可溶化剤、滑沢剤、懸濁剤、結合剤として作用し得る、1以上の物質であってよい。
【0085】
適当な担体としては、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ココアバターなどが挙げられるがこれに限定されない。
【0086】
経口製剤を製造するための技術は、慣用の、混合、造粒および圧縮またはカプセル封入である。経口投与に適当な他の剤型としては、乳剤、シロップ剤および水溶液が挙げられる。乳剤は乳化剤(例えばレシチン、プロピレングリコールまたはモノオレイン酸ソルビタン)を用いて製造することができる。活性成分を水に溶解し、適当な着色料、香料、安定化剤を添加することにより、水溶液剤を製造することができる。
【0087】
本発明の化合物は、水性ビークル溶液(即ち、生理食塩水、デキストロース)またはおよび/または油性乳剤を含む適当な担体とともに組成物として、非経口投与(例えば、注射または持続注入)用に製剤化することができる。この医薬品は、例えば、アンプルまたは予め充填された注射器の投与形態として製造してもよい。
【0088】
局所投与に適当な製剤としては、皮膚に浸透させるための液体または半液体の調製物(例えば、塗布薬、ローション、軟膏、クリームおよびペースト)や眼への投与のための点眼薬が挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
Xは独立に炭素または窒素原子から選択され;
YおよびZは、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)または以下の基:−SO2−、−CH2−、−CHR2−、−CH=、−CR2=、−NH−、−N=から独立に選択され;
Qは独立に以下の基:−CH2−、CHR2−、−CH=、−CR2=、−CH2−CH2−、−CHR2−CH2−から選択され;
但し、Y、Z、Qの組み合わせは、ベンゾ縮合した6員または5員の複素環を形成し、好ましくは、1,3−ベンゾジオキソール、1,3−ベンゾジチオール、ベンゾフラン、2,3−ジヒドロベンゾフラン、ベンゾチオフェン、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン、2,3−ジヒドロベンゾチオフェンS,S−ジオキシド、インドール、2,3−ジヒドロインドール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、2H−3,4−ジヒドロベンゾピラン、2H−3,4−ジヒドロベンゾチオピラン、2H−3,4−ジヒドロベンゾチオピランS,S−ジオキシド、[1,4]−ベンゾジオキシン、2,3−ジヒドロ−[1,4]−ベンゾジオキシン(1,4−ベンゾジオキサン)、1,4−ベンゾチアジン、2,3−ジヒドロ−[1,4]−ベンゾチアジン、2,3−ジヒドロ−[1,4]−ベンゾチアジンS,S−ジオキシド、[1,4]−ベンゾオキサジンおよび2,3−ジヒドロ−[1,4]−ベンゾオキサジンから選択され;
1は、独立にC1−C4アルキルまたはC1−C4シクロアルキルから選択され;C1−C4アルキル基は、直鎖状または分岐鎖の、飽和または不飽和の、炭化水素鎖であり;C1−C4シクロアルキル基は環状のC1−C4炭化水素環であり、場合により2以下のメチル基で置換されていてもよく;
2は、独立にC1−C4アルキル、アルコキシ(−OR1)、フェニルまたは置換されたフェニル、ベンジルまたは置換されたベンジルから選択され;該置換されたフェニルは、好ましくは、フッ素、塩素、臭素、シアノ、ニトロ、メチル、トリフルオロメチルから選択される1または2の置換基を有するフェニルであり;該置換されたベンジルは、好ましくは、フェニルがフッ素、塩素、臭素、シアノ、ニトロ、メチル、トリフルオロメチルから独立に選択される1または2の置換基で置換されたベンジル基である]
で示される、遊離塩基の形態の化合物またはその製薬的に許容し得る塩、水和物若しくは溶媒和物。
【請求項2】
Xが窒素原子であり、Z、QおよびYが一緒になって、1,3−ベンゾジオキソール、ベンゾフラン、2,3−ジヒドロベンゾフラン、2H−3,4−ジヒドロベンゾピラン、[1,4]−ベンゾジオキシン、2,3−ジヒドロ−[1,4]−ベンゾジオキシンから選択される複素環を形成する、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Xが炭素原子であり、Z、QおよびYが一緒になって、1,3−ベンゾジオキソール、ベンゾフラン、2,3−ジヒドロベンゾフラン、2H−3,4−ジヒドロベンゾピラン、[1,4]−ベンゾジオキシン、2,3−ジヒドロ−[1,4]−ベンゾジオキシンから選択される複素環を形成する、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
Xは窒素原子であり、Z、QおよびYは一緒になって、1,3−ベンゾジチオール、ベンゾチオフェン、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン、2,3−ジヒドロベンゾチオフェンS,S−ジオキシド、1,4−ベンゾチアジン、2,3−ジヒドロ−[1,4]−ベンゾチアジン、2,3−ジヒドロ−[1,4]−ベンゾチアジンS,S−ジオキシドから選択される複素環を形成する、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
Xは炭素原子であり、Z、QおよびYは一緒になって、1,3−ベンゾジチオール、ベンゾチオフェン、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン、2,3−ジヒドロベンゾチオフェンS,S−ジオキシド、1,4−ベンゾチアジン、2,3−ジヒドロ−[1,4]−ベンゾチアジン、2,3−ジヒドロ−[1,4]−ベンゾチアジンS,S−ジオキシドから選択される複素環を形成する、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
Xは窒素原子であり、Z、QおよびYは一緒になって、インドール、2,3−ジヒドロインドール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、1,4−ベンゾチアジン、2,3−ジヒドロ−[1,4]−ベンゾチアジン、2,3−ジヒドロ−[1,4]−ベンゾチアジンS,S−ジオキシド、[1,4]−ベンゾオキサジン、2,3−ジヒドロ−[1,4]−ベンゾオキサジンから選択される複素環を形成する、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
Xは炭素原子であり、Z、QおよびYは一緒になって、インドール、2,3−ジヒドロインドール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、1,4−ベンゾチアジン、2,3−ジヒドロ−[1,4]−ベンゾチアジン、2,3−ジヒドロ−[1,4]−ベンゾチアジンS,S−ジオキシド、[1,4]−ベンゾオキサジン、2,3−ジヒドロ−[1,4]−ベンゾオキサジンから選択される複素環を形成する、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
塩酸塩、臭化水素酸塩、硫化水素酸塩、硫酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、コハク酸塩、アスコルビン酸塩、酒石酸塩から選択される製薬的に許容し得る塩の形態の請求項1〜7のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
製薬的に許容し得る溶媒和物または水和物の形態の請求項1〜8のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
疼痛および炎症性の関連障害の薬理学的処置のための、請求項1〜9のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項11】
炎症性疼痛および関連する痛覚過敏症および異痛、変形性関節症の痛み、術後疼痛、転移性の癌に関連する痛み、三叉神経痛、急性ヘルペスおよびヘルペス後の神経痛、神経因性疼痛、糖尿病性ニューロパシー等の急性および慢性疼痛の薬理学的処置のための請求項1〜9のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項12】
関節炎、消化管の炎症性障害、炎症性の膀胱障害、呼吸器の炎症性障害、炎症性の眼障害等の免疫主導の炎症性イベントの薬理学的処置のための請求項1〜9のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項13】
活性成分(薬物成分)として少なくとも1つの請求項1〜9に記載の化合物、およびビークル、結合剤、香料、甘味料、崩壊剤、保存剤、湿潤剤およびそれらの混合物、または活性成分の経皮または筋肉の吸収を促進するもしくは長時間にわたる活性成分の制御された放出を可能にする成分からなる群から選択される製薬的に不活性な成分をさらに含有する医薬組成物(医薬品)。
【請求項14】
活性成分(薬物成分)として少なくとも1つの請求項1〜9に記載の化合物、および水性のビークル溶液(生理食塩水、デキストロース)および/または油性の乳剤を含むビークルからなる群から選択される製薬的に不活性な成分をさらに含有する、非経口(静脈内、筋肉内、皮下、経皮、関節内)での使用のための医薬組成物(医薬品)。
【請求項15】
炎症性疼痛および関連する痛覚過敏症および異痛、変形性関節症の痛み、術後疼痛、転移性の癌に関連する痛み、三叉神経痛、急性ヘルペスおよびヘルペス後の神経痛、神経因性疼痛、糖尿病性ニューロパシー等の急性および慢性疼痛に関連する病状の薬理学的処置において使用するための、請求項13または14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
関節炎、消化管の炎症性障害、炎症性の膀胱障害、呼吸器の炎症性の障害、炎症性の眼障害等の免疫主導の炎症性イベントの薬理学的処置において使用するための、請求項13または14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
請求項1〜9に記載の式(I)で示される化合物の製造方法であって、
式(II)で示される化合物を式(III)で示される化合物と反応させ:
【化2】

[式中、X、Y、Z、Q、R1およびR2は請求項1と同意義であり、Wは独立にメトキシ、エトキシ、チオメチルまたは2−ナフチルチオメチルから選択される]、
場合により、式(II)で示される化合物から式(I)で示される化合物への変換が存在する任意の保護基の脱離によって完結する、
ことからなる製造方法。

【公表番号】特表2009−545538(P2009−545538A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522101(P2009−522101)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【国際出願番号】PCT/EP2006/064841
【国際公開番号】WO2008/014815
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(598105824)ロッタファルム・ソシエタ・ペル・アチオニ (18)
【氏名又は名称原語表記】ROTTAPHARM S.p.A.
【Fターム(参考)】