説明

有害物質洗浄装置及び有害物質洗浄方法

【課題】容器内に残留している有害物質を取り除くことができるようにする。
【解決手段】有害物質が付着している筒状の容器10内を洗浄するための洗浄本体部1を備えている。洗浄本体部1は、有害物質を吸収させる吸収材7を収容するタンク2と、タンク2に収容される吸収材7の上方に設けられ、容器10を下に開口した状態で配置させると共に、流体を上から下へ通過させ得る配置部3と、配置部3に配置された容器10内に挿入させ当該容器10の内周面に過熱水蒸気を吹き付ける噴出手段4とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に残留している有害物質を洗い流すことができる有害物質洗浄装置及び有害物質洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
古い柱上変圧器等のトランスには、ポリ塩化ビフェニル(以下、PCBという)を含む鉱油が絶縁油として使用されているものがある。PCBは、生体に対する毒性が強く、人体に影響を与えることから、PCBが使用されているトランスは、適切な方法によって処分される必要がある。
【0003】
PCBを処理することができる装置として、特許文献1に記載のものがある(特許文献1の段落[0042]参照)。この装置は、内部に有機性の廃棄物(PCBを含む廃棄物)を収容する密閉容器と、この廃棄物を炭化させるために密閉容器内に高温高圧の蒸気を噴出する噴出手段とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2006/126273号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PCBを含む鉱油が絶縁油として使用されているトランスを処分する方法は、トランスの蓋をあけ、トランスの容器から鉱油を抜き出し、この鉱油のPCBを前記特許文献1に記載の装置によって分解することにより行われる。これにより、PCB濃度を低下させることができる。しかし、トランスの容器には、未だPCB(PCBを含む鉱油)が残留している場合が多い。
このように、PCBが残留しているトランスの容器については、解体作業やリサイクル作業を行うのが困難であるので、数十年以上にわたって廃棄されることなく、厳重に管理された状態で保管する必要があった。
【0006】
そこで、本発明は、容器内に残留している有害物質を取り除くことができる有害物質洗浄装置及び有害物質洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、有機系の有害物質が付着している容器内を洗浄する有害物質洗浄装置であって、前記有害物質を吸収させる吸収材を収容するタンクと、前記タンクに収容される前記吸収材の上方に設けられ、前記容器を下に開口した状態で配置させると共に、流体を上から下へ通過させ得る配置部と、前記配置部に配置された前記容器内に挿入させ当該容器の内周面に過熱水蒸気を吹き付ける噴出手段とを有していることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、配置部に配置された容器内に噴出手段を挿入した状態で、当該噴出手段によって当該容器の内周面に過熱水蒸気を吹き付けることにより、容器内に付着している有害物質を洗い流すことができる。そして、洗い流された有害物質は配置部を通過して、当該配置部の下にあるタンクの吸収材に吸収される。このように、容器内に有害物質が残留していても、当該有害物質を容器内から取り除くことができる。
さらに、過熱水蒸気を容器の内周面に吹き付けるため、洗浄後、容器の内周面は迅速に乾いた状態となり、また、前記吸収材に吸収される水分量を少なくすることができる。このため、吸収材に多量の有害物質を吸収させることができる。
また、有害物質を吸収材に吸収させ、この吸収材を、タンクから取り出し、例えば有害物質の濃度を低下させる別の処理装置に投入することで、有害物質を簡単に処理する(例えば濃度の低下を行う)ことができる。
【0009】
また、前記過熱水蒸気は、通電したフラーレンの発熱によって加熱されて生成されたものであるのが好ましい。
通電したフラーレンの発熱によって水蒸気を加熱して過熱水蒸気を生成し、その加熱水蒸気を容器の内周面に吹き付けると、容器内に付着している有機系の有害物質をより効果的に加熱して分解することができる。すなわち、本願発明者は、鋭意研究の結果、通電したフラーレンの発熱によって加熱して生成した過熱水蒸気を、有機系の有害物質に与えると、当該有害物質をより効果的に分解処理することができるとの知見を得、かかる知見に基づいて本構成を完成したものである。
【0010】
また、有害物質洗浄装置は、前記噴出手段と前記容器とを上下方向の中心線回りに相対回転させる回転手段を備えているのが好ましい。この場合、少ない過熱水蒸気の量で容器の内周面を全周にわたって効果的に洗浄することができる。
【0011】
また、前記噴出手段は、前記容器の内周面に対して前記過熱水蒸気を噴出する噴出口が形成されているヘッド部と、前記ヘッド部へ前記過熱水蒸気を供給するための配管部と、上下方向の中心線回りに回転可能に前記ヘッド部を前記配管部に取り付けている回転取り付け部とを有しているのが好ましい。
この場合、容器に対して噴出手段のヘッド部が上下方向の中心線回りに回転する構成となり、ヘッド部が回転することで、より少ない過熱水蒸気量で容器の内周面を全周にわたって効果的に洗浄することができる。
【0012】
そして、前記噴出手段の前記配管部は、上下方向に伸縮可能となるように上下方向に相対移動可能に設けられた径方向内側の内管及び径方向外側の外管を有する二重管構造を有しているのが好ましい。
この場合、配管部が上下方向に伸縮することで、噴出口が形成されているヘッド部が上下に移動可能となり、配管部の全高を高くすることなく、容器の内周面に対して、上下方向の広い範囲で過熱水蒸気を吹き付けることができる。
【0013】
また、前記噴出手段の前記ヘッド部には、単一の噴出口が形成されているのが好ましい。この場合、噴出口が多数設けられる場合と比較して、噴出口における過熱水蒸気の噴出圧力を高くすることができ、流速の速い過熱水蒸気を容器の内周面に吹き付けることができる。この結果、容器の内周面をより効果的に洗浄することができる。
【0014】
また、前記吸収材が、流体を吸収可能な木片又はおが屑とするのが好ましく、この場合、有害物質を吸収材に吸収させることができる。
【0015】
また、本発明は、有害物質が付着している筒状の容器内を洗浄する有害物質洗浄方法であって、前記容器を下に開口させた状態として配置し、前記容器の内周面に過熱水蒸気を吹き付け、当該容器から流れ落ちた前記有害物質を当該容器の下に設けられている吸収材に吸収させることを特徴とする。
本発明によれば、容器内に付着している有害物質を洗い落とすことができる。そして、洗い落とされた有害物質は、その下に設けられている吸収材に吸収される。このように、容器内に有害物質が残留していても、当該有害物質を容器内から取り除くことができる。
さらに、過熱水蒸気を容器の内周面に吹き付けるため、洗浄後、容器の内周面は迅速に乾いた状態となり、また、前記吸収材に吸収される水分量を少なくすることができる。このため、吸収材に多量の有害物質を吸収させることができる。
また、有害物質を吸収材に吸収させ、この吸収材を例えば有害物質の濃度を低下させる処理装置に投入することで、有害物質を簡単に処理することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、容器内に有害物質が残留していても、当該有害物質を容器内から取り除くことができ、例えば、従来では有害物質が容器の内周面に残留していることで、当該容器の解体作業やリサイクル作業が困難であったが、有害物質がきれいに除去されることで、容器の解体作業やリサイクル作業が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の有害物質洗浄装置の実施の一形態を示す縦断面図である。
【図2】図1のA矢視における断面図である。
【図3】洗浄処理前の状態にある噴出手段及びその周囲を示している説明図である。
【図4】洗浄処理中の状態にある噴出手段及びその周囲を示している説明図である。
【図5】処理装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の有害物質洗浄装置の実施の一形態を示す縦断面図である。図2は、図1のA矢視における断面図である。本発明の有害物質洗浄装置は、有機性の有害物質が付着している筒状の容器10内を洗浄するための洗浄本体部1と、加熱装置36(図2参照)とを備えている。
なお、本実施形態では、洗浄本体部1が、密閉型の箱形荷室31を有する被牽引車両32の当該箱形荷室31内に設けられている場合として説明する。つまり、荷室31が、容器10を洗浄する処理室となる。この被牽引車両32は、荷室31の左右両側に扉33が設けられており、各扉33を上下に回動させることで室内を開閉するウイング車である。
【0019】
洗浄の対象となる容器10は、例えば、古い柱上変圧器等のトランスの容器であり、このトランスは、PCBを含む鉱油が絶縁油として使用されていたものである。このようなトランスを解体処理する方法は、トランスの蓋を開け、トランスの容器10からPCBを含む鉱油を抜き出し、鉱油に含まれているPCBを、例えば、図5に示している処理装置11によって分解することで行われる。これにより、PCB濃度を低下させることができる。処理装置11については後に説明する。
【0020】
しかし、容器10には、未だPCB(PCBを含む鉱油)が残留している場合が多い。そこで、洗浄本体部1により、容器10の内周面に残留しているPCBを洗浄する。
また、本実施形態では、容器10は、筒部及び底部を有する有底の筒状構造であり、底部が上に向けられた状態、つまり下に開口させた状態で、荷室31内に配置される。
【0021】
洗浄本体部1は、PCBを吸収させる吸収材7を収容するタンク2と、容器10を複数配置可能である配置部3と、配置部3に配置した容器10内に過熱水蒸気を吹き付ける複数の噴出手段4とを有している。
前記タンク2は、荷室31の下側部分からなり、荷室31の底部から所定の高さhまで、吸収材7を蓄積させる。吸収材7は、液体を吸収可能なおが屑又は木片であり、この吸収材7に、PCBを吸収させることができる。PCBを吸収した吸収材7は、扉33(図2参照)を開けることにより、外部へ排出することができ、さらに、新しい吸収材7を投入することができる。
【0022】
前記配置部3は、タンク2に収容されている吸収材7の上方に設けられ、容器10を下に開口した状態で配置させる。つまり、荷室31の床から柱34(図1参照)を複数設け、柱34間に梁35aを設け、その上に桁35bを設けることにより、格子状(井桁形状)の配置部3を構成する。配置部3を格子状とすることで、配置部3には、上下方向に貫通している複数の開口部5が形成され(図2参照)、PCB(PCBを含む水)を上から下へと通過させることができる。また、後に説明するが、上下に移動する噴出手段4が開口部5を通過することができ、さらに、様々な大きさの容器10を配置部3に載置させることが可能となる。
【0023】
前記噴出手段4は、図2に示しているように、配置部3に配置された容器10内に挿入状態となって、容器10の内周面に過熱水蒸気を吹き付けることができる。
このために、洗浄本体部1は、加熱装置36と接続する接続部37を有している。加熱装置36は、水を溜めるタンク38、ボイラ36a、及び、過熱水蒸気生成部36bを有し、タンク38の水から過熱水蒸気を生成する。また、加熱装置36はポンプ39を有し、生成した過熱水蒸気は、ポンプ39によって接続部37へ供給される。
そして、接続部37に供給された過熱水蒸気は、噴出手段4へ送られ、さらに、噴出手段4から噴出され、この過熱水蒸気によって容器10の内周面が洗浄される。
【0024】
洗浄に用いられる過熱水蒸気は、フラーレンに通電することによって発熱するヒータにより、水又は飽和水蒸気が加熱されて生成されたものである。このために、加熱装置36は、水蒸気(飽和水蒸気)を生成する前記ボイラ36aと、ボイラ36aで生成した水蒸気をさらに加熱して過熱水蒸気を生成する前記過熱水蒸気生成部36bとを有している。
過熱水蒸気生成部36bが有するヒータは、セラミックスからなる板状の支持体の表面にフラーレン層が形成された積層体を、所定の隙間を設けて複数列並べた構成である。
フラーレンを構成するフラーレンとしては、C60フラーレン、C70フラーレンなどである。フラーレン層は、例えば、バインダーによって固められた状態で支持体に焼き付けすることにより接合されている。
このヒータは、フラーレン層を支持する支持体が耐熱性に優れるセラミックにより構成されているので、熱に対して優れた耐久性を有する。ただし、支持体としては、セラミック製のものに代えて、耐食性などに優れたステンレス鋼(例えば、SUS304)製のものを用いることもできる。
過熱水蒸気生成部36bが有するヒータのフラーレン層は、通電することにより発熱する。過熱水蒸気生成部36bの内部に導入された水蒸気は、このフラーレン層を通過することによって、例えば、350〜1200℃に加熱されて、無酸素状態の過熱水蒸気を生成する。そして、この過熱水蒸気が、配管を通じて、前記噴出手段4へと導入される。
【0025】
また、本実施形態では、洗浄本体部1は、噴出手段4と容器10とを上下方向の中心線回りに相対回転させる回転手段を備えている。回転手段は、例えば、配置部3に設けられたターンテーブルとすることができ、この場合、ターンテーブル上に容器10を載せる。そして、モータの回転によって、容器10を載せたターンテーブルが、噴出手段4の回りを回転し、この際、噴出手段から過熱水蒸気を噴出させればよい。
【0026】
ターンテーブルを用いる場合、噴出手段4に対して容器10を回転させるが、噴出手段4側の構成部品を回転させてもよい。
このための構成を備えた噴出手段4について説明する。
噴出手段4は、荷室(処理室)31内に複数配置されている。図2において、噴出手段4は、過熱水蒸気を噴出するヘッド部21と、このヘッド部21へ過熱水蒸気を供給するための上下方向に長い配管部22と、ヘッド部21を配管部22の上部に取り付けている回転取り付け部23とを有している。
図3は、洗浄処理前(洗浄処理後)の状態にある噴出手段4及びその周囲を示している説明図であり、図4は、洗浄処理中の状態にある説明図である。
図4において、ヘッド部21は、容器10の内周面に対して過熱水蒸気を噴出する噴出口24を有している。噴出口24は斜め上方に向かって加熱水蒸気を噴出する方向に開口している。
そして、回転取り付け部23は、ヘッド部21を、上下方向の中心線回りに回転可能で、かつ、軸方向に移動不能として配管部22に取り付けている。これにより、ヘッド部21の噴出口24が上下方向の中心線回りに回転可能となる。
【0027】
ヘッド部21は、回転しながら過熱水蒸気を噴出することができる。その構成は、スプリンクラーと同様であり、例えば、噴出手段4は、アーム(図示せず)を有しており、供給された過熱水蒸気の一部が吐出され、その吐出した過熱水蒸気をアームに当て、アームに生じた反力を利用してヘッド部21を回転させるインパクト式とすることができる。なお、ヘッド部21を回転させる構成はこのようなインパクト式以外であってもよい。また、ヘッド部21をモータなどの駆動源を用いて回転させる構成であってもよい。このような、アームやモータ等を有する構成と、回転取り付け部23とによって、前記回転手段が構成される。
【0028】
図3及び図4に示しているように、配管部22は、上下方向に伸縮可能となる構成である。このために、配管部22は、上下方向に相対移動可能に設けられた径方向内側の内管25及び径方向外側の外管26とを有する二重管構造である。
外管26は、上部以外が吸収材7に埋設された状態にあり、内管25の上端部にヘッド部21が取り付けられている。本実施形態では、外管26は荷室(処理室)31内に固定された状態にあり、この外管26に対して内管25が上下移動可能な構成である。
【0029】
配管部22に供給された過熱水蒸気の内圧を、当該配管部22を上下伸縮させる力として用いてもよいが、本実施形態では、流体シリンダー15等の駆動源を用いて内管25を上下移動させる構成である。流体シリンダー15は油圧(又は水圧)シリンダーとすることができる。また、図示しないが、洗浄本体部は、作動流体を吐出するポンプや各種バルブを備えた流体圧ユニットと、このユニットの動作を制御する制御装置とを有している。制御装置の機能により、流体圧ユニットを動作させ、流体シリンダー15を伸縮動作させることができる。
【0030】
すなわち、図3の配管部22が短縮している状態から、流体圧ユニットが第一ポート41に作動流体を供給することで、流体シリンダー15が伸張し、内筒25が上に押し上げられ、内筒25は上昇する(図4参照)。図4に示している上昇状態で、ヘッド部21の噴出口24が、容器10の内周面に対向する状態となる。
そして、図4の配管部22が伸張している状態から、第二ポート42に作動流体を供給し、第一ポート41から作動流体を排出することで、流体シリンダー15は短縮し、内筒25は降下する(図3参照)。図3に示している降下状態では、ヘッド部21が配置部3の上面よりも低い位置に存在する。
制御装置には所定のプログラムに設定されており、制御装置は、流体圧ユニットを制御して、ヘッド部21に所定の上下動作を実行させる。
【0031】
図2において、加熱装置36を接続させる前記接続部37には、加熱装置36と接続される入口ポートと複数の出口ポートとを有する切り換えバルブが設けられている。各出口ポートには、配管を介して、各噴出手段4の配管部22が接続されている。切り換えバルブにおいて、過熱水蒸気を供給する噴出手段4と繋がっている出口ポートを開状態とすることにより、当該噴出手段4に過熱水蒸気を供給することができる。つまり、使用する噴出手段4の選択が可能となり、また、複数の出口ポートを開状態とすることで、複数の噴出手段4を同時に選択する(使用可能とする)ことができる。
【0032】
前記制御装置が流体圧ユニットを制御し、伸縮シリンダー15が伸張し、さらに、加熱装置36から過熱水蒸気が接続部37を介して、噴出手段4に供給される。すると、配置部3に配置された容器10内に噴出手段4(ヘッド部21)が挿入した状態となり、噴出手段4のヘッド部21から、容器10の内周面に過熱水蒸気を吹き付けることができる。これにより、容器10内に付着している有害物質を洗い流すことができる。
さらに、本実施形態では、過熱水蒸気を用いているため、容器10の内周面に過熱水蒸気を吹き付けて洗浄した後、迅速に容器10の内周面は乾いた状態となる。
【0033】
そして、洗い流された有害物質は、配置部3の開口部5を下へ通過して、下にある吸収材7に吸収される。このように、容器10内に有機系の有害物質が残留していても、当該有害物質を容器10から取り除くことができる。そして、本実施形態では、前記有害物質は、ポリ塩化ビフェニル(PCB)であることから、容器10に残留しているPCBを洗い流すことができ、PCBを吸収材7に吸収させることができる。なお、PCBを吸収させた吸収材7は、後に説明する処理装置11(図5参照)に投入され、PCBは処理される。
【0034】
また、ヘッド部21の噴出口24は、上下方向の中心線回りに回転することができることから、容器10の内周面を全周にわたって洗浄することができる。さらに、配管部22は二重管構造を有しており上下方向に伸縮するので、ヘッド部21が上下に移動可能となり、容器10の内周面に対して、上下方向の広い範囲で過熱水蒸気を吹き付けることも可能となる。
そして、ヘッド部21を上下方向に移動させながら、回転する噴出口24から過熱水蒸気を噴出させた場合には、噴出口24は、螺旋状の軌道に沿って移動することも可能となり、この噴出口24から過熱水蒸気が噴出され、容器10の内周面を広い範囲で洗浄することができる。
【0035】
また、ヘッド部21には、複数の噴出口24を形成してもよいが、本実施形態では、ヘッド部21には、単一の噴出口24が形成されている。このため、噴出口が多数設けられている場合に比較して、噴出口24における過熱水蒸気の噴出圧力を高くすることができ、流速の速い過熱水蒸気を容器10の内周面に吹き付けることができる。これにより、容器10の内周面を効果的に洗浄することが可能となる。
【0036】
以上のように構成された有害物質洗浄装置によれば、PCBが付着している筒状の容器10を下に開口させた状態として配置し、容器10の内周面に過熱水蒸気を吹き付け、容器10から流れ落ちたPCBを、前記過熱水蒸気から液化した水と共に、容器10の下に設けられている吸収材7に吸収させることができる。
【0037】
また、図2に示しているように、荷室(処理室)31の底部、つまり、吸収材7を収容しているタンク2の底部に、流体を排出するドレン部6を更に備えている。このドレン部6で排出される対象は、容器10内を過熱水蒸気によって洗浄して配置部3及び吸収材7を下に通り抜け、タンク2の底部に達した水である。なお、この水には、PCBが含まれている。
ドレン部6は、荷室(処理室)31の床に形成され、荷室31の内外を貫通する孔28、及び、開閉バルブ29を有している。容器10内を洗浄して配置部3及び吸収材7を下に通り抜けた液体を、タンク10の底部において回収してドレン部6から外部へ排出することが可能となる。
【0038】
そして、ドレン部6から排出された液体を、再利用することが可能である。すなわち、ドレン部6から排出される流体は、過熱水蒸気から液化した水となるが、この水は高温状態である。したがって、洗浄本体部1とは別に設けられた処理装置11(図5参照)において、この高温の水を再利用することができる。
【0039】
図5は処理装置11の構成を示す概略図である。この処理装置11は、前記のとおり、PCBを吸収させた吸収材7が投入され、PCBを処理する(濃度を低下させる)装置である。そして、ドレン部6から排出された高温である流体(過熱水蒸気から液化した水)を、処理装置11が備えているボイラ12に投入し、再利用することができる。
【0040】
処理装置11は、水蒸気を生成するボイラ12と、ボイラ12からの水蒸気を更に過熱して過熱水蒸気を生成する過熱水蒸気生成部13と、PCBが吸収された吸収材7(廃棄物)を処理する密閉容器17を備えた処理部14とを有している。生成された過熱水蒸気は、過熱水蒸気搬送流路15を通過し、噴出部16から密閉容器17内に噴出される。
密閉容器17内には、回転する羽付き撹拌部材18が設けられており、PCBが吸収された吸収材7を撹拌しながらPCBを分解処理することができる。
なお、この処理装置11で用いられる過熱水蒸気も、フラーレンに通電することによって発熱するヒータにより、水又は飽和水蒸気が過熱されて生成されたものである。つまり、過熱水蒸気生成部13が有するヒータは、セラミックスからなる板状の支持体の表面にフラーレン層が形成された積層体を、所定の隙間を設けて複数列並べた構成である。
【0041】
以上より、従来ではPCBが容器10の内周面に残留していることで、容器10の解体作業やリサイクル作業が困難であったが、前記本実施形態のように構成された洗浄本体部1を備えた有害物質洗浄装置によれば、残留しているPCBを容器10から取り除くことができ、PCBがきれいに除去されることで、解体作業やリサイクル作業が容易となる。
また、本実施形態では、図1に示しているように、洗浄本体部1が、荷室31を有する被牽引車両32の当該荷室31に設けられていることから、PCBが付着している容器(トランス)10が保管されている場所に、洗浄本体部1を運ぶことが容易となり、容器(トランス)10の解体作業を促進させることが可能となる。
【0042】
また、洗浄に用いる過熱水蒸気は、通電したフラーレンの発熱によって加熱されて生成されたものであるため、その加熱水蒸気を容器10の内周面に吹き付けると、容器10内に付着しているPCBを、洗い落とすことができると共に、加熱して分解することができる。
そして、洗い落とされたPCBを吸収材7に吸収させ、この吸収材7を例えば図5の処理装置11に投入することで、PCBを簡単に処理する(PCBの濃度を低下させる)ことができる。
【0043】
また、本発明は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。例えば、前記実施形態では、洗浄本体部1が車両32に設けられている場合として説明したが、洗浄本体部1は、地上に固定された構造であってもよく、処理施設の屋内に設けられていてもよい。
洗浄本体部1を備えている有害物質洗浄装置は、処理装置11(図5参照)を、更に備えていてもよい。そして、洗浄本体部1、加熱装置36及び処理装置11を集約して設置してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 洗浄本体部
2 タンク
3 配置部
4 噴出手段
5 開口部
6 ドレン部
7:吸収材
10:容器
21:ヘッド部
22:配管部
23:回転取り付け部
24:噴出口
25:内管
26:外管
31:箱形荷室
32:被牽引車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機系の有害物質が付着している容器内を洗浄する有害物質洗浄装置であって、
前記有害物質を吸収させる吸収材を収容するタンクと、
前記タンクに収容される前記吸収材の上方に設けられ、前記容器を下に開口した状態で配置させると共に、流体を上から下へ通過させ得る配置部と、
前記配置部に配置された前記容器内に挿入させ当該容器の内周面に過熱水蒸気を吹き付ける噴出手段と、
を有していることを特徴とする有害物質洗浄装置。
【請求項2】
前記過熱水蒸気は、通電したフラーレンの発熱によって加熱されて生成されたものである請求項1に記載の有害物質洗浄装置。
【請求項3】
前記噴出手段と前記容器とを上下方向の中心線回りに相対回転させる回転手段を備えている請求項1又は2に記載の有害物質洗浄装置。
【請求項4】
前記噴出手段は、前記容器の内周面に対して前記過熱水蒸気を噴出する噴出口が形成されているヘッド部と、前記ヘッド部へ前記過熱水蒸気を供給するための配管部と、上下方向の中心線回りに回転可能に前記ヘッド部を前記配管部に取り付けている回転取り付け部と、を有している請求項1〜3のいずれか一項に記載の有害物質洗浄装置。
【請求項5】
前記配管部は、上下方向に伸縮可能となるように上下方向に相対移動可能に設けられた径方向内側の内管及び径方向外側の外管を有する二重管構造を有している請求項4に記載の有害物質洗浄装置。
【請求項6】
前記ヘッド部には、単一の噴出口が形成されている請求項4又は5に記載の有害物質洗浄装置。
【請求項7】
前記吸収材は、流体を吸収可能な木片又はおが屑である請求項1〜6のいずれか一項に記載の有害物質洗浄装置。
【請求項8】
有害物質が付着している筒状の容器内を洗浄する有害物質洗浄方法であって、
前記容器を下に開口させた状態として配置し、
前記容器の内周面に過熱水蒸気を吹き付け、当該容器から流れ落ちた前記有害物質を当該容器の下に設けられている吸収材に吸収させることを特徴とする有害物質洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−156467(P2011−156467A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18869(P2010−18869)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【特許番号】特許第4598152号(P4598152)
【特許公報発行日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(507415222)
【Fターム(参考)】