説明

有機の電子的な素子のためのカプセル封止、カプセル封止の製作法ならびにカプセル封止の使用法

本発明により初めて、例えばカプセルから基板への移行部のようなカプセル封止の弱部または電子的な素子全体を保護フィルムで被覆したために、カプセル封止のこれまで公知の技術を遙かに凌駕する高い密度を有するカプセル封止が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール性に関して改善された技術にしたがった、有機の電子的な素子のためのカプセル封止、カプセル封止の製作法ならびにカプセル封止の使用法に関する。
【0002】
有機の電子的な素子として、例えばポリマーチップ、有機光起電エレメントおよび/または有機発光ダイオードが知られている。これらすべての有機の電子的な素子は、少なくとも1つの有機のアクティブな層を有している。その際、そのような層の材料または層構造内に存在する別の材料は、一般に酸化および/または湿気に対して敏感である。その結果、電子的な素子は総じて、一般に環境影響から保護されなければならない。
【0003】
すべての有機の電子部品を経済的に使用するにあたり、有機のアクティブな層の安定性により規定される素子の寿命は、決定的な要因のうちの1つである。問題はその際、有機の素子の機能性が3年またはそれ以上の年月にわたって安定のままであるように、有機発光ダイオードを例えば環境影響から保護し得る技術がこれまで発見されていないことにある。
【0004】
目下、一般に有機の電子的な素子は、ガラスキャップまたは金属キャップが素子上に被せられ、基板上に固定されるようになっているカプセル封止(Verkapselung)により、空気および湿気から保護される。カプセル封止は素子を同時に機械的な損傷からも保護し、カプセルの内面には付加的に乾燥剤/抗酸化剤等が固定され得る。
【0005】
カプセル封止による方法の欠点はしかし、基板と、結合する接着剤と、カプセルとの間の材料境界で、空気湿分および酸素の拡散が起こり、そうするとやはり、構造のシール性に強い影響が及ぼされ、特に素子の寿命が著しく低下してしまう点にある。
【0006】
そのために新たに、例えば米国特許第2003/0143423号明細書に記載されているように、二重の接着を有するカプセル封止「リムコーティング(rim coating)」が提案される。この場合、第1の、有利には内側の接着は、カプセルをできるだけ良好に基板に固定し、第2の、有利には外側の接着は、湿気および酸素の侵入をできるだけ阻止する。このカプセル封止における欠点はやはり、拡散経路が、異なる材料(基板、接着剤、カプセル封止)の材料境界に沿って形成され、この拡散経路により、結局はやはりカプセル封止の最適なシール性は得られず、環境影響による素子の損傷が生じてしまう点にある。特にその際、全体構造のバリア作用は、材料境界に沿った拡散により規定されていることができ、それにより、接着剤の体積を通した拡散よりも高い。
【0007】
本発明の課題はそれゆえ、機械的な保護と、有害な環境影響、例えば空気湿分および/または酸素に対する最適なシール性とを提供する、有機の電子的な素子のためのカプセル封止を提案することである。
【0008】
本発明の対象はそれゆえ、カプセルにより封止された素子が少なくとも部分的に保護フィルムにより被覆されていることを特徴とする、有機の電子的な素子のためのカプセル封止である。さらに本発明の対象は、保護フィルムにより被覆されているカプセル封止を製作する方法、さらには、先立つ請求項のいずれか1項記載のカプセル封止を、有機の電子的な素子、例えば有機発光ダイオード、ポリマーチップおよび/または有機の光起電性および/またはエレクトロクロミック性のエレメントおよび/または有機ベースのディスプレイ用途を保護するために使用する方法である。
【0009】
カプセル封止により、素子が機械的な損傷から保護されることが達成され、しかも、保護フィルムによる少なくとも部分的な被覆により、湿気および酸素に対する高められたシール性が達成される。
【0010】
カプセル封止とは、有機の電子的な素子を覆う形状安定の被覆のことである。その際、完成体のカプセルとしての、例えば金属および/またはガラスから成る形状安定の被覆が素子に被せられ、基板上に一般に載置されるかまたは面一に閉鎖され、その後基板に接着される。架橋されたプラスチックから成るカプセルのバージョンも考えられる。その際、プラスチックは塑性変形可能な状態にもたらされ、その形状安定性を後続の硬化により達成する。カプセルがプラスチックから製作される場合、適当な充填材の添加により、種々異なる特性、例えば熱伝導性(発生した熱を導出するため)、吸収能等がカプセル内に加工されていることができる。
【0011】
カプセル封止はあらゆる事例で機械的に所定の限度内で安定であり、環境影響、例えば湿気および/または酸素に対して密な材料から成る。
【0012】
カプセル封止は有利には基板に少なくとも一度接着されるので、要するに、カプセルにより封止し終えた有機の電子的な素子を前提に、素子はその後、本発明により、例えばカプセルから基板への移行部のようなカプセル封止の弱部で、付加的に保護フィルムの被着により保護され、封止される。
【0013】
保護フィルムでの被覆による付加的な封止は、カプセル封止の弱部でのみ行われるか、または有利には素子のすべての外面で行われることができる。その結果、カプセルにより封止された素子はさらに完全にバリア薄膜保護フィルムにより被覆される。
【0014】
保護フィルムは有利には、封止のための技術から公知であるような「バリア薄膜(thin barrier film)」を有している。このフィルムはとりわけ、極端に低い透過率の点で優れており、それにより環境影響、例えば湿気および/または酸素の侵入を劇的に減じる。保護フィルムは有機または無機の材料から成ることができ、つまり材料は特定されていない。場合によっては保護フィルムに、カプセル封止の場合と似て、適当な充填材の添加により、所定の特性プロフィール(熱伝導性、色、吸収する特性等)が付与され得る。
【0015】
バリア薄膜のグループは無機の材料ならびに有機の材料を有している。バリア薄膜は、その階層に関して、薄い層(1mmを下回る層厚さ)としての構成時にも、低い透過率により特徴付けられる。
【0016】
これらのフィルムはただし、必ずしも複数の層を有していなくてもよい。
【0017】
無機の層の階層は、非排他的に、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、ケイ素化合物およびあらゆる別の形態のセラミック化合物の材料を有している。
【0018】
有機の材料の階層はこの意味で、ただし非排他的に、有機化合物、有利には高分子化合物、例えばとりわけパリレン、フッ化炭化水素、アクリレート、ポリエステル化合物およびこれに類するものを有している。
【0019】
保護フィルムが複数の層を有しているとき、有機および無機の層は任意の順序で配置されていることができる。有機および/または無機の層は公知の技術により重なり合わせに析出されるか、重なり合わせにラミネートされるか、または別の方法で、独立的なフィルムとして、コーティングしたい面上に被着されることができる。有利には、保護フィルムのために、少なくとも湿気および/または酸素に対して、従来慣用の接着剤(仮に接着剤に吸収剤が充填されていたとしても)がカプセル封止時に提供するよりも良好な絶縁作用を有する材料が使用される。
【0020】
保護フィルムの厚さは、約1nm〜500μmの間で変化することができる。有利には、保護フィルムの厚さが、無機のフィルムの場合、1nm〜10μm、特に5nm〜1μmの範囲にあり、有機のフィルムの場合、500nm〜100μm、特に1μm〜50μmの範囲にある。
【0021】
保護フィルムは様々な技術で被着または析出されることができ、例として以下の方法が挙げられる:化学蒸着(Chemical Vapor Deposition)、物理蒸着(Physical Vapor Deposition)、湿式化学的な析出、例えばスピンコーティング(spin−coating)、ディップコーティング(Dip−Coating)、ドロップコーティング(drop coating)、印刷法、例えばステンシル印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット法、スプレー法、プラズマコーティング法、プラズマ重合法、ラミネートプロセス、ヒートシール、転写法(例えば熱転写)、溶接法および射出成形。
【0022】
方法の一実施態様では、素子は析出中高真空チャンバ内にある。
【0023】
別の実施態様では、素子は析出中確かに減圧下にあるが、高真空中にはない。
【0024】
別の有利な実施態様では、バリア薄膜保護フィルムの材料は、化学蒸着を介して被着可能であるように選択される。化学蒸着時の分子の低い配向性のために、この方法により、いわば任意の形状の3次元の保護フィルム被覆を製作することが可能であり、つまり完全に、カプセルにより封止された被覆したい素子に適合させることも可能である。
【0025】
別の有利な方法は、素子の熱負荷を最小化することを目指している。そのために、保護フィルムの少なくとも1つの無機の層のための材料は、化学蒸着コーティングが、例えばプラズマに支援されて、300℃よりも低い、特に100℃よりも低い温度でも実施され得るように選択される。それにより、素子の機能性に影響が及ぼされることはなく、熱膨張の影響は最小化される。そのために適した材料は窒化ケイ素である。
【0026】
別の有利な方法では、バリア薄膜保護フィルムの層形成のための有機の材料は、化学蒸着コーティングまたはプラズマ重合が実施され得るように選択される。その際、特に有利には、フィルムは迅速に完成し、対象物の形状に合ったコーティングを提供する。そのために適した材料はパリレンである。パリレンのグループはとりわけパリレンの変性体、すなわちN、C、DおよびFである。これらすべては、両側でCH2基に結合されている六員環の炭素における置換基により区別される。Nには置換基が存在せず、Cは塩素を1つ有しており、Dは塩素を2つ有しており、Fはフッ素を1つ有している。特に、パリレンCによるコーティングは、公知の最良の湿気バリアに基づいて、特に有利である。
【0027】
本発明の別の構成では、カプセルにより封止された素子を被覆するバリア薄膜保護フィルムは、有機および/または無機の材料から成る少なくとも1つの層を有している。その際、例えば有機および無機の層は交互に被着されている。
【0028】
別の実施態様では、とりわけ有機の電子的な素子を外部の制御電子装置または読取電子装置またはその他の接続部(アース)にコンタクトさせる接続ケーブルとの素子のコンタクト形成を、バリア薄膜保護フィルムの被着前に実施する。
【0029】
以下に本発明についてさらに一実施例を参照しながら詳説する。
【0030】
図面には、カプセルにより封止され、本発明にしたがって保護フィルムにより被覆された有機の電子的な素子の横断面図が示されている。
【0031】
見て取れるのは、素子が配置されている基板1である。基板1上には、種々異なるアクティブな層を有する素子3と、接着剤4で基板1上に固定されているカプセル封止5とが見て取れる。カプセル封止5上には保護フィルム2が存在する。保護フィルム2はさらに基板1の部分をも覆っている。
【0032】
本発明により初めて、例えばカプセルから基板への移行部のようなカプセル封止の弱部または電子的な素子全体を保護フィルムで被覆したために、カプセル封止のこれまで公知の技術を遙かに凌駕する高い密度を有するカプセル封止が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】カプセルにより封止され、本発明にしたがって保護フィルムにより被覆された有機の電子的な素子の横断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機の電子的な素子のためのカプセル封止において、形状安定のカプセルにより封止された素子が少なくとも部分的に保護フィルムにより被覆されていることを特徴とする、有機の電子的な素子のためのカプセル封止。
【請求項2】
形状安定のカプセルが基板に接着されている、請求項1記載のカプセル封止。
【請求項3】
素子のすべての外面が保護フィルムにより被覆されている、請求項1または2記載のカプセル封止。
【請求項4】
保護フィルムが少なくとも1つのバリア薄膜を有している、請求項1から3までのいずれか1項記載のカプセル封止。
【請求項5】
保護フィルムが、窒化ケイ素から成る層を有している、請求項1から4までのいずれか1項記載のカプセル封止。
【請求項6】
保護フィルムが、パリレンCから成る層を有している、請求項1から5までのいずれか1項記載のカプセル封止。
【請求項7】
保護フィルムが、1nm〜500μmの範囲の厚さを有している、請求項1から6までのいずれか1項記載のカプセル封止。
【請求項8】
カプセル封止を製作する方法において、基板上に設けられた有機の電子的な素子をまずカプセルにより覆い、カプセルを次に基板上に固定し、その後カプセルにより封止された素子を少なくとも部分的に保護フィルムにより被覆することを特徴とする、カプセル封止の製作法。
【請求項9】
カプセルを基板上に接着する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
保護フィルムを、カプセルにより封止された素子上に、以下に挙げる方法のグループ、すなわち:
化学蒸着(Chemical Vapor Deposition)、物理蒸着(Physical Vapor Deposition)、湿式化学的な析出、例えばスピンコーティング(spin−coating)、ディップコーティング(Dip−Coating)、ドロップコーティング(drop coating)、印刷法、例えばステンシル印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット法、スプレー法、プラズマコーティング法、プラズマ重合法、ラミネートプロセス、ヒートシール、転写法(例えば熱転写)、溶接法および射出成形
から選択された方法により被着する、請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
保護フィルムの被着を少なくとも部分的に減圧下で実施する、請求項8から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
保護フィルムの被着を少なくとも部分的に高真空中で実施する、請求項8から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
保護フィルムの被着を少なくとも部分的に化学蒸着を介して実施する、請求項8から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
化学蒸着をプラズマの助成下で実施する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
とりわけ有機の電子的な素子を外部の制御電子装置または読取電子装置および/またはその他の接続部(アース)にコンタクトさせる接続ケーブルとの素子のコンタクト形成を、バリア薄膜保護フィルムの被着前に実施する、請求項8から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか1項記載のカプセル封止の使用法において、カプセル封止を、有機の電子的な素子、例えば有機発光ダイオード、ポリマーチップおよび/または有機の光起電性および/またはエレクトロクロミック性のエレメントおよび/または有機ベースのディスプレイ用途を保護するために使用することを特徴とする、カプセル封止の使用法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−535144(P2007−535144A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508899(P2007−508899)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【国際出願番号】PCT/EP2005/051623
【国際公開番号】WO2005/104259
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(599133716)オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (586)
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Wernerwerkstrasse 2, D−93049 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】