説明

有機エレクトロルミネッセンスパネルとその製造方法

【課題】高歩留まりあるいは高精細化に有効な有機エレクトロルミネッセンスパネルの構造と、それを実現するための適切なテンションを付与することができる蒸着マスクを使用した有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法を提供する。
【解決手段】枠体34と、間隔をあけて面状に並列された同じ幅の複数の線材38を有する第1サブマスク36と、少なくとも1つの開口44を有する第2サブマスク42と、を有する蒸着マスクを用意する。回路基板10に、蒸着マスクを使用した蒸着によって、有機材料からなる複数の発光層20を形成する。第1サブマスク36は、複数の線材38に長さ方向に張力が付与されるように枠体34に固定され、複数の線材38のみが張力の方向に一直線に切れ目なく連続し、複数の線材38が少なくとも1つの開口44と重なるように、第2サブマスク42の一方の面上に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンスパネルに係り、特に、高歩留まりあるいは高精細化に有効な有機エレクトロルミネッセンスパネルの構造とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法では、蒸着マスクに回路基板を乗せ、蒸着マスクの下方に設置した蒸発源で有機材料を蒸発させ、回路基板に有機膜を形成する。通常使用される蒸着マスク(特許文献1及び2参照)は、多数のスリットが並行しており、スリット間のリブの幅がきわめて微細であるため、歪みが生じやすい。歪みが生じると有機膜の高精細パターニングを行えない。そのため、蒸着マスクに均一にテンションを付与し、スリット(リブ)の歪みを矯正することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−69619号公報
【特許文献2】特開2003−332057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、蒸着用のメタルマスクが支持フレームに溶接されていることで構成された蒸着マスクが開示されている。メタルマスクは、多面取りに対応したパターンが形成されている。すなわち、メタルマスクは、複数の蒸着領域を有し、それぞれの蒸着領域には多数のスリットが形成されている。また、メタルマスクには、それぞれの蒸着領域を囲むように、スリット間のリブよりも幅の広い枠部がある。そのため、メタルマスクにテンションを付与すると、枠部にテンションが掛かるので、スリット間のリブに適切なテンションを付与することが難しい。
【0005】
特許文献2には、複数行複数列に並んだ開口を有する第一金属マスクと、第一金属マスクの各列に並ぶ複数の開口に対応するようにスリットが形成された第二金属マスクと、が重なった構造の蒸着マスクが開示されている。第二金属マスクは、周縁部(スリットが形成された領域の周囲)に幅の広い部分を有する。したがって、第二金属マスクにテンションを付与すると、その幅の広い部分にテンションが掛かるので、スリット間のリブに一様に適切なテンションを付与することが難しい。
【0006】
本発明は、高歩留まりあるいは高精細化に有効な有機エレクトロルミネッセンスパネルの構造を提供し、またそれを実現するために、適切なテンションを一様に付与することができる蒸着マスクを使用した有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明による有機エレクトロルミネッセンスパネルは、発光層が第1の電極と第2の電極により挟まれてなる有機エレクトロルミネッセンス素子を複数個配列され、前記発光層は、所定の方向に延びる第1側面と、該第1側面と交差する第2側面と、を含み、前記第1側面と前記第2側面のいずれか一方の側面が他方の側面よりも緩やかな角度で立ち上がるように形成されることを特徴とする。かかる構成により、前記第1側面を第2側面より緩やかにした場合には、高歩留まりで製造できることから低コストの有機エレクトロルミネッセンスパネルを、前記第1側面を第2側面より急峻にした場合には、高解像度の発光層パターン形成が可能になることから高精細の有機エレクトロルミネッセンスパネルを提供できる。
【0008】
(2)(1)に記載の有機エレクトロルミネッセンスパネルにおいて,前記第1側面の断面形状を前記第2側面より緩やかにすることを特徴とする。かかる構成にすることにより、周知のマスク蒸着法で前記発光層からなるパターンを形成する場合、蒸着マスクを非接触としながら発光層パターンが延伸する方向の側面(第1側面)を形成することができ、蒸着マスクの異物や衝撃の影響を抑制できる。このため、製造歩留まりを高くでき、有機エレクトロルミネッセンスパネルを低コストで提供できる。
【0009】
(3)(1)に記載の有機エレクトロルミネッセンスパネルにおいて,前記第1側面の断面形状を前記第2側面より急峻にすることを特徴とする。かかる構成によれば、高解像度の発光層パターン形成が可能になることから高精細の有機エレクトロルミネッセンスパネルを提供できる。
【0010】
(4)本発明に係る有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法は、枠体と、間隔をあけて面状に並列された複数の線材を有する第1サブマスクと、少なくとも1つの開口を有する第2サブマスクと、を有する蒸着マスクを用意する工程と、回路基板に、前記蒸着マスクを使用した蒸着によって、有機材料からなる複数の発光層を形成する工程と、を含み、前記第1サブマスクは、前記複数の線材に長さ方向に張力が付与されるように前記枠体に固定され、前記複数の線材のみが前記張力の方向に一直線に切れ目なく連続し、前記複数の線材が前記少なくとも1つの開口と重なるように、前記第2サブマスクの一方の面上に配置されていることを特徴とする。本発明によれば、複数の線材のみが張力の方向に一直線に切れ目なく連続するので、第1サブマスクに歪みが生じないように適切なテンションを付与することができる。
【0011】
(5)(4)に記載された有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法において、前記第2サブマスクの前記第1サブマスクとは反対側の面が前記回路基板に対向し、前記第2サブマスクと前記回路基板が接触し、前記第1サブマスクと前記回路基板が接触しないように、前記蒸着マスクを配置し、前記蒸着を行うことを特徴としてもよい。
【0012】
(6)(5)に記載された有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法において、前記少なくとも1つの開口の内側であって、隣同士の前記線材の間のスペースに、前記蒸着によってそれぞれの前記発光層を形成し、それぞれの前記発光層は、前記複数の線材に沿って延びる第1側面と、前記少なくとも1つの開口の縁に沿った第2側面と、を含み、前記第1側面は、前記第2側面よりも緩やかな角度で立ち上がるように形成されることを特徴としてもよい。
【0013】
(7)(4)に記載された有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法において、前記第1サブマスクの前記第2サブマスクとは反対側の面が前記回路基板に対向するように配置して、前記第1サブマスクと前記回路基板が接触し、前記第2サブマスクと前記回路基板が接触しないように、前記蒸着マスクを配置し、前記蒸着を行うことを特徴としてもよい。
【0014】
(8)(7)に記載された有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法において、前記少なくとも1つの開口の内側であって、隣同士の前記線材の間のスペースに、前記蒸着によってそれぞれの前記発光層を形成し、それぞれの前記発光層は、前記複数の線材に沿って延びる第1側面と、前記少なくとも1つの開口の縁に沿った第2側面と、を含み、前記第2側面は、前記第1側面よりも緩やかな角度で立ち上がるように形成されることを特徴としてもよい。
【0015】
(9)(4)から(8)のいずれか1項に記載された有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法において、前記第1サブマスクは、一対の保持部を有し、前記一対の保持部間に前記複数の線材が架け渡され、前記一対の保持部が前記枠体に固定されていることを特徴としてもよい。
【0016】
(10)(4)から(8)のいずれか1項に記載された有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法において、前記回路基板は、複数行複数列で並ぶ複数の凹部を区画するバンクを有し、前記複数の凹部は、各行に沿って一列に並び、各列に沿って一列に並び、それぞれの列に並ぶ1グループの前記凹部上に、少なくとも1つの前記発光層を形成することを特徴としてもよい。
【0017】
(11)(4)から(8)のいずれか1項に記載された有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法において、前記回路基板は、千鳥状に並ぶ複数の凹部を区画するバンクを有し、前記複数の凹部は、複数列であって各列では一列に並び、それぞれの列に並ぶ1グループの前記凹部上に、少なくとも1つの前記発光層を形成することを特徴としてもよい。
【0018】
(12)(4)から(8)のいずれか1項に記載された有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法において、前記第1サブマスクは、隣同士の線材を接続するリブを有し、前記リブを挟んで両側に前記線材の延びる方向にスリットが形成されていることを特徴としてもよい。
【0019】
(13)(12)に記載された有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法において、前記スリットの配列に対応して、2つ以上の前記発光層が一列に並ぶように形成されることを特徴としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る方法によって製造された有機エレクトロルミネッセンスパネルを説明する図である。
【図2】1つの製品の一部を拡大した平面図である。
【図3】図2に示す構造のIII−III線断面図である。
【図4】図2に示す構造のIV−IV線断面図である。
【図5】発光層の長さ方向に沿って延びる側部の断面(図2のIII−III線断面)の拡大図である。
【図6】発光層の長さ方向の端部の断面(図2のIV−IV線断面)の拡大図である。
【図7】蒸着マスクの分解斜視図である。
【図8】蒸着マスクを使用した有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法を説明する図である。
【図9】蒸着マスクと回路基板の配置を説明する図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造に使用する蒸着マスクの分解斜視図である。
【図11】第2の実施形態に係る方法で製造された有機エレクトロルミネッセンスパネルの一部を示す図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造に使用する蒸着マスクの分解斜視図である。
【図13】第3の実施形態に係る蒸着マスクと回路基板の配置を説明する図である。
【図14】本発明の第3の実施形態に係る方法で製造された有機エレクトロルミネッセンスパネルの一部を示す図である。
【図15】図14に示す構造のXV−XV線断面図である。
【図16】図14に示す構造のXVI−XVI線断面図である。
【図17】本発明の第4の実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造に使用する蒸着マスクの分解斜視図である。
【図18】第4の実施形態に係る方法で製造された有機エレクトロルミネッセンスパネルの一部を示す図である。
【図19】本発明の第5の実施形態に係る方法で製造された有機エレクトロルミネッセンスパネルの一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る方法によって製造された有機エレクトロルミネッセンスパネルを説明する図である。
【0023】
本実施形態では、多面取りの製造方法が想定されており、図1に示す有機エレクトロルミネッセンスパネルは、複数の製品が一体化されたマザーパネルである。このマザーパネルを切断して個々の製品が得られる。ただし、本発明は、このような多面取りの製造方法に限定されるものではなく、単品の製造方法も含む。
【0024】
図2は、1つの製品の一部を拡大した平面図である。図3は、図2に示す構造のIII−III線断面図である。図4は、図2に示す構造のIV−IV線断面図である。
【0025】
有機エレクトロルミネッセンスパネルは、回路基板10を有する。回路基板10には、図示しない配線及びスイッチング素子としての薄膜トランジスタを含む回路層12(図3及び図4参照)が形成されている。回路層12の上面は、図示しない平坦化層によって平坦になっている。回路層12上には複数の画素電極14が形成されている。
【0026】
それぞれの画素電極14は、バンク16によって区画されている。詳しくは、回路層12及び画素電極14上にバンク16が形成されており、バンク16によって形成される凹部18内に画素電極14が露出する。図2に示すように、複数の凹部18は、複数行複数列で並び、各行に沿って一列に並び、各列に沿って一列に並ぶ。複数の凹部18内に露出する複数の画素電極14の配置は、ストライプ配列である。
【0027】
複数の画素電極14の上方には、複数の発光層20が設けられている。複数の発光層20は、供給される電流によって光を発する有機材料からなる。異なる有機材料によって複数種類の発光層20が形成されており、複数色(例えば赤、緑及び青の3色)の発光が可能になっている。図2に示す複数の発光層20の配置は、ストライプ配列である。それぞれの発光層20は、線状に延びているが、平面形状は矩形(長方形)である。
【0028】
図2及び図3に示すように、隣同士の発光層20の間には隙間がある。また、図2及び図4に示すように、それぞれの発光層20は、一行又は一列に並ぶグループの画素電極14上に連続的に形成されている。なお、図4の左側には、1つの発光層20の長さ方向の端部が示されている。
【0029】
図3及び図4に示す例では、発光層20の下には正孔輸送層及び正孔注入層の少なくとも一方からなる下層22が配置され、発光層20の上には電子輸送層及び電子注入層の少なくとも一方からなる上層24が配置されている。下層22は、複数の画素電極14の全体を一体的に覆うように形成され、上層24は、複数の発光層20の全体を一体的に覆うように形成されている。
【0030】
発光層20の上方(例えば上層24の上)には共通電極26が形成されている。共通電極26の上方には、スペースを介して封止板28が配置されている。スペースには窒素などのガスが封入されており、封止板28によって、発光層20を湿気から遮断する。
【0031】
図5は、発光層20の長さ方向に沿って延びる側部の断面(図2のIII−III線断面)の拡大図である。図6は、発光層20の長さ方向の端部の断面(図2のIV−IV線断面)の拡大図である。発光層20は、側部において第1側面30を有し、端部において第2側面32を有する。第1側面30と回路基板10の表面に平行な面とのなす内角θ1は、第2側面32と回路基板10の表面に平行な面とのなす内角θ2よりも小さい。
【0032】
発光層20の厚みdf及び第1側面30の投影面での幅Δによって描かれる三角形において、
1/100≦tanθ≦1が成立する。
【0033】
本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンスパネルには、発光層20が画素電極14と共通電極26により挟まれてなる有機エレクトロルミネッセンス素子が複数個配列されている。発光層20は、所定の方向に延びる第1側面30と、第1側面30と交差する第2側面32と、を含む。第1側面30と第2側面32のいずれか一方の側面が他方の側面よりも緩やかな角度で立ち上がるように形成されている。
【0034】
図2に示す例では、第1側面30の断面形状が第2側面32より緩やかになっているので、周知のマスク蒸着法で発光層20からなるパターンを形成する場合、蒸着マスクを非接触としながら発光層20パターンが延伸する方向の側面(第1側面30)を形成することができ、蒸着マスクの異物や衝撃の影響を抑制できる。このため、製造歩留まりを高くでき、有機エレクトロルミネッセンスパネルを低コストで提供することができる。
【0035】
逆に、第1側面30の断面形状を第2側面32より急峻にした場合には、高解像度の発光層20パターン形成が可能になることから高精細の有機エレクトロルミネッセンスパネルを提供することができる。
【0036】
次に、本発明の実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法を説明する。本実施形態では、蒸着マスクを使用する。
【0037】
図7は、蒸着マスクの分解斜視図である。蒸着マスクは、枠体34を有する。枠体34は剛体である。枠体34の熱膨張率は、回路基板10の熱膨張率の±0.5ppm以内である。
【0038】
蒸着マスクは、第1サブマスク36を有する。第1サブマスク36は、間隔をあけて面状に並列された同じ幅の複数の線材38を有する。第1サブマスク36は、一対の保持部40を有している。一対の保持部40間に複数の線材38が架け渡されている。第1サブマスク36は、金属箔をエッチングして形成することができる。
【0039】
第1サブマスク36は、複数の線材38に長さ方向に張力が付与されるように枠体34に固定されている。すなわち、線材38には、一対の保持部40が相互に離れる方向に張力が付与されている。第1サブマスク36は、複数の線材38のみが張力の方向に一直線に切れ目なく連続している。例えば、線材38の外側に枠部材は存在しない。複数の線材38は、それぞれの幅が等しいので、均一に張力が分散される。したがって、第1サブマスク36に歪みが生じないように適切なテンションを付与することができる。線材38は、図示しない接着剤による接着又は溶接によって枠体34に固定されている。詳しくは、一対の保持部40を介して、線材38が枠体34に固定されている。
【0040】
蒸着マスクは、第2サブマスク42を有する。第2サブマスク42は、少なくとも1つ(図7の例では複数)の開口44を有する。複数の開口44が形成されている場合、製造される有機エレクトロルミネッセンスパネルは、複数の製品が一体化されたマザーパネルであり、1つの開口44は、1つの製品の表示領域を区画する。開口44と重なるように、複数の線材38が第2サブマスク42の一方の面上(図7では下面下)に配置されている。第2サブマスク42と枠体34との間に第1サブマスク36が介在する。
【0041】
開口44とその上又は下を通る線材38によって、複数のスリット46が形成される(図9参照)。スリット46は、長細い長方形である。スリット46の長方形の長さ方向に沿った側辺(長辺)が線材38によって区画され、長さ方向の両端(短辺)は、開口44の縁によって区画される。
【0042】
図8は、蒸着マスクを使用した有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法を説明する図である。本実施形態では、回路基板10に、蒸着マスクを使用した蒸着によって、有機材料からなる複数の発光層20を形成する。
【0043】
図9は、蒸着マスクと回路基板の配置を説明する図である。蒸着マスクは、第2サブマスク42の第1サブマスク36とは反対側の面が回路基板10に対向するように配置する。また、第2サブマスク42と回路基板10を接触させる。ただし、接触はしていても、微視的には第2サブマスク42と回路基板10の間にわずかに隙間が形成される。これに対して、第1サブマスク36(線材38)と回路基板10は接触しないようになっている。したがって、第1サブマスク36(線材38)と回路基板10の間に隙間が形成され、その隙間は、第2サブマスク42と回路基板10の間の隙間よりも大きい。
【0044】
蒸着によって、開口44の内側であって隣同士の線材38の間のスペースに、それぞれの発光層20を形成する。バンク16のそれぞれの列に並ぶ1グループの凹部18上に、少なくとも1つの発光層20を形成する(図2及び図3参照)。
【0045】
図9に示すように、複数の線材38と回路基板10との間には隙間があいている。したがって、線材38と回路基板10の間には、第2サブマスク42の開口44の縁と回路基板10との間よりも、蒸着材料が入り易い。蒸着材料が入り易い線材38と回路基板10の間には、蒸着材料が入り込む距離が長いことで、傾斜角度θ1(図5参照)が緩やかで幅の広い第1側面30が形成される。一方、蒸着材料が入り難い開口44の縁と回路基板10との間には、蒸着材料が入り込む距離が短いことで、θ1と比較して、傾斜角度θ2(図6参照)が急な第2側面32が形成される。発光層20は、複数の線材38に沿って延びる第1側面30と、開口44の縁に沿った第2側面32と、を含む。第1側面30は、第2側面32よりも緩やかな角度で立ち上がるように形成される。
【0046】
[第2の実施形態]
図10は、本発明の第2の実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造に使用する蒸着マスクの分解斜視図である。
【0047】
本実施形態では、第1サブマスク136は、隣同士の線材138を接続するリブ148を有する点で、第1の実施形態で説明した第1サブマスク36と異なる。そして、リブ148を挟んで両側に線材138の延びる方向にスリット146が形成される。この例であっても、複数の線材138のみが張力の方向に一直線に切れ目なく連続しているので、第1サブマスク136に歪みが生じないように適切なテンションを付与することができる。
【0048】
図11は、第2の実施形態に係る方法で製造された有機エレクトロルミネッセンスパネルの一部を示す図である。図2に示す例と比較すると、図11の例では、リブ148によって分割されたスリット146(図10参照)の配列に対応して、2つ以上の発光層120が間隔をあけて一列に並ぶように形成されている。詳しくは、2つ以上の発光層120が、間隔をあけて、長さ方向に沿って一列に並んでいる。その間隔は、隣同士の線材138を接続するリブ148によって蒸着がマスキングされることで形成される。その他の内容は、上述した第1の実施形態の内容が該当する。
【0049】
[第3の実施形態]
図12は、本発明の第3の実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造に使用する蒸着マスクの分解斜視図である。本実施形態に係る蒸着マスクは、第1サブマスク236と枠体234との間に第2サブマスク242が介在する点で、第1の実施形態で説明した蒸着マスク(図7参照)とは異なる。
【0050】
図13は、第3の実施形態に係る蒸着マスクと回路基板の配置を説明する図である。本実施形態では、第1サブマスク236の第2サブマスク242とは反対側の面が回路基板10に対向するように蒸着マスクを配置する。そして、第1サブマスク236と回路基板10を接触させる。また、第2サブマスク242と回路基板10は接触しないようにする。こうして、第2サブマスク242の少なくとも1つの開口244の縁と回路基板10との間には、複数の線材238と回路基板10との間よりも、蒸着材料が入り易くなるように、蒸着を行う。そして、開口244の内側であって、隣同士の線材238の間のスペース(スリット216)に、蒸着によってそれぞれの発光層220(図4参照)を形成する。その詳細は、第1の実施形態で説明した通りである。
【0051】
図14は、本発明の第3の実施形態に係る方法で製造された有機エレクトロルミネッセンスパネルの一部を示す図である。図15は、図14に示す構造のXV−XV線断面図である。図16は、図14に示す構造のXVI−XVI線断面図である。
【0052】
発光層220は、複数の線材238に沿って延びる第1側面230と、少なくとも1つの開口244の縁に沿った第2側面232と、を含む。第2側面232は、第1側面230よりも緩やかな角度で立ち上がるように形成される(図15及び図16参照)。このような形状になるのは次の理由からである。
【0053】
図13に示すように、第1サブマスク236(線材238)と回路基板10との間の隙間は小さいため、その隙間には蒸着材料が入り難い。したがって、蒸着材料が入り難い複数の線材238と回路基板10との間には、蒸着材料が入り込む距離が短いことで、傾斜角度が急な第1側面230が形成される(図15参照)。一方、第2サブマスク242の開口244の縁と回路基板10との間には、第1サブマスク236と回路基板10との隙間よりも大きな隙間があいている。したがって、第2サブマスク242と回路基板10の間には、第1サブマスク236と回路基板10との間よりも、蒸着材料が入り易い。蒸着材料が入り易い第2サブマスク242と回路基板10の間には、蒸着材料が入り込む距離が長いことで、傾斜角度が緩やかで幅の広い第2側面232が形成される(図16参照)。
【0054】
[第4の実施形態]
図17は、本発明の第4の実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造に使用する蒸着マスクの分解斜視図である。
【0055】
本実施形態では、第1サブマスク336は、隣同士の線材338を接続するリブ348を有する点で、第3の実施形態で説明した第1サブマスク236と異なる。そして、リブ348を挟んで両側に線材338の延びる方向にスリット346が形成される。この例であっても、複数の線材338のみが張力の方向に一直線に切れ目なく連続しているので、第1サブマスク336に歪みが生じないように適切なテンションを付与することができる。
【0056】
図18は、第4の実施形態に係る方法で製造された有機エレクトロルミネッセンスパネルの一部を示す図である。図14に示す例と比較すると、図18の例では、リブ348によって分割されたスリット346(図17参照)の配列に対応して、2つ以上の発光層320が間隔をあけて一列に並ぶように形成されている。詳しくは、2つ以上の発光層320が、間隔をあけて、長さ方向に沿って一列に並んでいる。その間隔は、隣同士の線材338を接続するリブ348によって蒸着がマスキングされることで形成される。その他の内容は、上述した第3の実施形態の内容が該当する。
【0057】
[第5の実施形態]
図19は、本発明の第5の実施形態に係る方法で製造された有機エレクトロルミネッセンスパネルの一部を示す図である。
【0058】
本実施形態では、回路基板410は、千鳥状に並ぶ複数の凹部418を区画するバンク416を有する。そのため、バンク416から露出する複数の画素電極414の配置はデルタ配列となっている。複数の凹部418は、複数列であって各列では一列に並ぶ。それぞれの列に並ぶ1グループの凹部418上に、少なくとも1つの発光層420を形成する。本実施形態の内容は、上述した第1〜第4の実施形態のいずれにも適用することができる。
【0059】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態で説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0060】
10 回路基板、12 回路層、14 画素電極、16 バンク、18 凹部、20 発光層、22 下層、24 上層、26 共通電極、28 封止板、30 第1側面、32 第2側面、34 枠体、36 第1サブマスク、38 線材、40 保持部、42 第2サブマスク、44 開口、46 スリット、120 発光層、136 第1サブマスク、138 線材、146 スリット、148 リブ、216 スリット、220 発光層、230 第1側面、232 第2側面、234 枠体、236 第1サブマスク、238 線材、242 第2サブマスク、244 開口、320 発光層、336 第1サブマスク、338 線材、346 スリット、348 リブ、410 回路基板、414 画素電極、416 バンク、418 凹部、420 発光層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光層が第1の電極と第2の電極により挟まれてなるエレクトロルミネッセンス素子を複数個配列された有機エレクトロルミネッセンスパネルであって、
前記発光層は、所定の方向に延びる第1側面と、該第1側面と交差する第2側面と、を含み、
前記第1側面と前記第2側面のいずれか一方の側面が他方の側面よりも緩やかな角度で立ち上がるように形成されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネル。
【請求項2】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンスパネルにおいて,前記第1側面の断面形状を前記第2側面より緩やかにすることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネル。
【請求項3】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンスパネルにおいて,前記第1側面の断面形状を前記第2側面より急峻にすることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネル。
【請求項4】
枠体と、間隔をあけて面状に並列された複数の線材を有する第1サブマスクと、少なくとも1つの開口を有する第2サブマスクと、を有する蒸着マスクを用意する工程と、
回路基板に、前記蒸着マスクを使用した蒸着によって、有機材料からなる複数の発光層を形成する工程と、
を含み、
前記第1サブマスクは、前記複数の線材に長さ方向に張力が付与されるように前記枠体に固定され、前記複数の線材のみが前記張力の方向に一直線に切れ目なく連続し、前記複数の線材が前記少なくとも1つの開口と重なるように、前記第2サブマスクの一方の面上に配置されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載された有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法において、
前記第2サブマスクの前記第1サブマスクとは反対側の面が前記回路基板に対向し、前記第2サブマスクと前記回路基板が接触し、前記第1サブマスクと前記回路基板が接触しないように、前記蒸着マスクを配置し、
前記蒸着を行うことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載された有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法において、
前記少なくとも1つの開口の内側であって、隣同士の前記線材の間のスペースに、前記蒸着によってそれぞれの前記発光層を形成し、
それぞれの前記発光層は、前記複数の線材に沿って延びる第1側面と、前記少なくとも1つの開口の縁に沿った第2側面と、を含み、
前記第1側面は、前記第2側面よりも緩やかな角度で立ち上がるように形成されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法。
【請求項7】
請求項4に記載された有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法において、
前記第1サブマスクの前記第2サブマスクとは反対側の面が前記回路基板に対向するように配置して、前記第1サブマスクと前記回路基板が接触し、前記第2サブマスクと前記回路基板が接触しないように、前記蒸着マスクを配置し、
前記蒸着を行うことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載された有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法において、
前記少なくとも1つの開口の内側であって、隣同士の前記線材の間のスペースに、前記蒸着によってそれぞれの前記発光層を形成し、
それぞれの前記発光層は、前記複数の線材に沿って延びる第1側面と、前記少なくとも1つの開口の縁に沿った第2側面と、を含み、
前記第2側面は、前記第1側面よりも緩やかな角度で立ち上がるように形成されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法。
【請求項9】
請求項4から8のいずれか1項に記載された有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法において、
前記第1サブマスクは、一対の保持部を有し、前記一対の保持部間に前記複数の線材が架け渡され、前記一対の保持部が前記枠体に固定されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法。
【請求項10】
請求項4から8のいずれか1項に記載された有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法において、
前記回路基板は、複数行複数列で並ぶ複数の凹部を区画するバンクを有し、
前記複数の凹部は、各行に沿って一列に並び、各列に沿って一列に並び、
それぞれの列に並ぶ1グループの前記凹部上に、少なくとも1つの前記発光層を形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法。
【請求項11】
請求項4から8のいずれか1項に記載された有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法において、
前記回路基板は、千鳥状に並ぶ複数の凹部を区画するバンクを有し、
前記複数の凹部は、複数列であって各列では一列に並び、
それぞれの列に並ぶ1グループの前記凹部上に、少なくとも1つの前記発光層を形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法。
【請求項12】
請求項4から8のいずれか1項に記載された有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法において、
前記第1サブマスクは、隣同士の線材を接続するリブを有し、前記リブを挟んで両側に前記線材の延びる方向にスリットが形成されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載された有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法において、
前記スリットの配列に対応して、2つ以上の前記発光層が一列に並ぶように形成されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−22932(P2012−22932A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160702(P2010−160702)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】