説明

有機導電膜

【課題】耐久性に優れる有機導電膜を提供する。
【解決手段】有機導電膜12aは、少なくとも導電性ポリマーを含有する導電性組成物を用いて形成された有機導電膜12aであって、その片面の最大高さ(Rz)が、平均膜厚に対して35%以上である。前記導電性ポリマーは、ポリチオフェン系導電性ポリマーであり、ドーパントとの複合体である。光学フィルム、包装材、透明電極フィルム、液晶表示セル等の構成部材として好適に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐久性に優れた有機導電膜、並びに、このような有機導電膜を有する光学フィルム、包装材、透明電極フィルム及び液晶表示セルに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ用途等に使用される透明導電膜(透明電極など)として、ITO等の無機系の透明導電材料からなるものが知られている。
しかしながら、ITOを用いた透明導電膜の形成は、一般的には、大がかりな真空装置を使うスパッタリング等の手法を用いて行われており、製造コストが高くなる傾向がある。また、ITOは、稀少金属(所謂、レアメタル)であるインジウムを含んでおり、資源の枯渇が懸念されている。
【0003】
そこで、近年、導電性ポリマーをITOの代替材料として使用する試みが盛んになされている。
有機導電材料である導電性ポリマーは、その製膜をロールコーター、印刷等のウェットプロセスによる簡便な方法で行うことが可能であり、また、導電性ポリマーは、有機物であることから資源として豊富に存在する点で無機系導電材料に比べて優位である。
【0004】
当該分野において、導電性ポリマーは既に様々な用途で使用され得ることが知られているが、導電性ポリマーを用いて製膜を行う場合、その膜厚は均一にすることが一般的である。一方で、導電性ポリマーを用いて形成した有機導電膜は、無機系導電材料からなる導電膜に比べて耐熱性、耐候性が低く、耐久性に劣るとの課題があった。例えば、導電性ポリマーとしてポリチオフェン系導電性ポリマー(例えば、PEDOT/PSS)が広く知られているが、その導電性は経時的に低下することが知られており、その劣化機構として空気中の酸素による酸化反応が提唱されている(例えば、非特許文献1)。
また、本発明者らの知見においても、ポリチオフェン系導電性ポリマーを用いて均一な膜を形成した場合において徐々にその導電性は失われ、長期にわたる使用に耐えられないことが明らかとなっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】工藤康夫編著、Electronic Journal Archives No.118、電子ジャーナル、2011年、133頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、耐久性に優れた有機導電膜、並びに、そのような有機導電膜を備えた光学フィルム、包装材、透明電極フィルム及び液晶表示セルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、有機導電膜の片面の最大高さ(Rz)を、平均膜厚に対して35%以上とすることにより、有機導電膜の耐久性が格別に向上することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明の有機導電膜は、少なくとも導電性ポリマーを含有する導電性組成物を用いて形成された有機導電膜であって、
その片面の最大高さ(Rz)が、平均膜厚に対して35%以上であることを特徴とする。
【0009】
本発明の有機導電膜において、上記導電性ポリマーは、ポリチオフェン系導電性ポリマーであることが好ましい。
また、上記ポリチオフェン系導電性ポリマーは、以下の式(I):
【化1】

(式中、RおよびRは相互に独立して水素原子またはC1−4のアルキル基を表すか、又は、一緒になって置換されていてもよいC1−4のアルキレン基を表す)の反復構造を有するポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)又はポリ(3,4−アルキレンジオキシチオフェン)と、ドーパントとの複合体であることが好ましい。
【0010】
本発明の光学フィルムは、本発明の有機導電膜を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の包装材は、本発明の有機導電膜を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の透明電極フィルムは、本発明の有機導電膜を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の液晶表示セルは、本発明の有機導電膜を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の有機導電膜は、その片面の最大高さ(Rz)が、平均膜厚に対して35%以上であるため、極めて耐久性に優れる。
また、このような有機導電膜を備えた光学フィルム、包装材、透明電極フィルム及び液晶表示セルのそれぞれもまた優れた耐久性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は、本発明の有機導電膜の一例を模式的に示す断面図であり、(b)〜(d)は、(a)に示した有機導電膜の劣化の経時変化を示す模式図である。
【図2】(a)は、従来の有機導電膜の一例を模式的に示す断面図であり、(b)〜(d)は、(a)に示した有機導電膜の劣化の経時変化を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、本発明の有機導電膜について説明する。
本発明の有機導電膜は、少なくとも導電性ポリマーを含有する導電性組成物を用いて形成された有機導電膜であって、
その片面の最大高さ(Rz)が、平均膜厚に対して35%以上であることを特徴とする。
ここで、最大高さ(Rz)は、JIS B 0601−2001に準拠して測定される値である。
また、平均膜厚とは、有機導電膜をその表面が平滑な膜に近似した際の厚さの平均値であり、導電性組成物を均一に塗布して乾燥した場合の膜厚を計算によって求めた値である。例えば、固形分1%の導電性組成物を9μmの膜厚で塗布して乾燥した場合、有機導電膜の平均膜厚は90nmとなる。
【0017】
上記有機導電膜は、その片面の最大高さ(Rz)が、平均膜厚に対して35%以上であるため、極めて耐久性に優れることとなる。
以下、その理由について、図面を参照しながら説明する。
図1(a)は、本発明の有機導電膜の一例を模式的に示す断面図であり、(b)〜(d)は、(a)に示した有機導電膜の劣化の経時変化を示す模式図である。
図2(a)は、従来の有機導電膜の一例を模式的に示す断面図であり、(b)〜(d)は、(a)に示した有機導電膜の劣化の経時変化を示す模式図である。
【0018】
一般的に、導電性ポリマーを含有する導電性組成物からなる有機導電膜は、光や空気中の酸素と接触することにより、導電性ポリマーの化学構造が変化したり、脱ドープしたりすることにより、導電性が低下することが知られている。
例えば、導電性ポリマーの代表例として広く知られているPEDOT/PSSについては、その劣化機構の一つとして、空気中の酸素による酸化反応が提唱されている(非特許文献1)。
従って、このような導電性ポリマーを含有する導電性組成物からなる有機導電膜では、空気と接触する膜の表面から劣化が始まり、膜の内部に向かって、劣化が進行していくことが予想される。
この劣化は、劣化のトリガーである酸素の膜中への浸透、拡散というプロセスで進行することが考えられる。しかしながら、本劣化反応は固体中での反応であることから、反応は、拡散律速となることが推測され、結果、その膜が厚いほど、膜の完全劣化に至るまでの時間が長くなることが予想される。
【0019】
ところで、導電性ポリマーを含有する導電性組成物を用いて形成された有機導電膜は、一般的には、図2(a)に示すように、厚さが均一な有機導電膜22aである(なお、図2中、21は基材である)。
そして、有機導電膜22aの劣化は、上述したプロセスで進行するため、劣化部分22bは均一な厚さで増大(劣化が厚さ方向に均一に進行)することとなる(図2(b)〜(d)参照)。そのため、膜全体が劣化するまでの時間が早くなる。
【0020】
一方、本発明の有機導電膜は、その片面の最大高さ(Rz)が平均膜厚に対して35%以上であり、図1(a)に示すように、有機導電膜12aは、その表面に凹凸を有している。そのため、有機導電膜12aにおいては、その膜の薄い部分は早く劣化してしまうものの、膜の厚い部位が数多く存在し、当該厚膜部分が完全に劣化するまでに要する時間は、同量の導電性組成物を塗布して形成した有機導電膜に比べて長くなる。
即ち、本発明の有機導電膜では、同量の導電性組成物を塗布して形成した有機導電膜に比べて、劣化しにくくなる(劣化していない部分が残ってくれる)ことから、結果として、膜全体の劣化速度が遅くなる。なお、図1中、11は基材であり、12bは劣化部分である。
【0021】
上記有機導電膜において、上記最大高さ(Rz)は、平均膜厚に対して35%以上である。その理由は、最大高さが35%未満の場合は、有機導電膜の耐久性(膜耐久性)が顕著に悪くなるからである。
上記最大高さ(Rz)は、膜耐久性の観点から、平均膜厚に対して50%以上であることが好ましく、100%以上であることがより好ましく、200%以上であることがさらに好ましく、250%以上であることが最も好ましい。
また、上記最大高さ(Rz)は、平均膜厚に対して600%以下であることが好ましい。その理由は、最大高さが600%を超えると表面での光の乱反射が顕著となり、光学特性が悪くなることがあるからである。また、光学特性の観点から、最大高さ(Rz)は、平均膜厚に対して500%以下であることがより好ましく、450%以下であることが最も好ましい。
【0022】
また、上記有機導電膜について、上記最大高さ(Rz)を複数の箇所で測定した場合、少なくとも1箇所において最大高さ(Rz)が250%以上であることが特に好ましい。優れた耐久性を確実に確保することができるからである。
【0023】
上記有機導電膜の平均膜厚は、60nm以上であることが好ましく、60〜400nmであることがより好ましく、60〜300nmであることがさらに好ましく、80〜200nmであることが特に好ましい。
上記平均膜厚が60nm未満の場合、有機導電膜の特性、例えば、膜の硬度や耐薬品性が悪くなる傾向にあり、一方、400nmを超えると光学特性が悪くなる傾向にあるためである。
【0024】
上記有機導電膜は、導電性ポリマーを含有するため導電性を有しているが、その表面低効率(SR)は、10〜1011Ω/□であることが好ましい。この範囲であれば、例えば、帯電防止層や透明電極としての要求特性を充分に満足するからである。
【0025】
このような有機導電膜は、導電性組成物を用いて形成される。
次に、上記導電性組成物の各成分について順に説明する。
【0026】
1.導電性ポリマー
上記導電性組成物は、導電性ポリマーを必須成分として含有する。
上記導電性ポリマーは、形成した有機導電膜に導電性(例えば、表面抵抗率、以下;SR)、を付与するための配合物である。
上記導電性ポリマーとしては、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリナフタレン、これらの誘導体、および、これらとドーパントとの複合体等が挙げられる。
これらのなかでは、ポリチオフェンとドーパントとの複合体からなるポリチオフェン系導電性ポリマーが好適であり、ポリチオフェン系導電性ポリマーとしては、ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)又はポリ(3,4−アルキレンジオキシチオフェン)とドーパントとの複合体がより好適である。
【0027】
上記ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)又はポリ(3,4−アルキレンジオキシチオフェン)としては、以下の式(I):
【化2】

で示される反復構造単位からなる陽イオン形態のポリチオフェンが好ましい。ここで、RおよびRは相互に独立して水素原子又はC1−4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって置換されていてもよいC1−4のアルキレン基を表す。
上記C1−4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
また、RおよびRが一緒になって形成される、置換されていてもよいC1−4のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1−メチル−1,2−エチレン基、1−エチル−1,2−エチレン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基等が挙げられる。好適には、メチレン基、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基であり、1,2−エチレン基が特に好適である。上記アルキレン基を持つポリチオフェンとして、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とドーパントとからなる複合体は、導電性や透明性に加えて化学的安定性に極めて優れており、導電性ポリマーとしてこの複合体を用いて形成した有機導電膜は、湿度に依存しない極めて安定した導電性と極めて高い透明性とを有している。さらには、導電性ポリマーとしてこの複合体を含有する導電性組成物は、低温短時間で被膜を形成することが可能であることから、大量生産が求められる有機導電膜の製造に極めて適した生産性も有している。
【0028】
上記ポリチオフェン系導電性ポリマーを構成するドーパントは、上述のポリチオフェンとイオン対をなすことにより複合体を形成し、ポリチオフェンを水中に安定に分散させることができる陰イオン形態のポリマーである。
このようなドーパントとしては、カルボン酸ポリマー類(例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリメタクリル酸等)、スルホン酸ポリマー類(例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸等)等が挙げられる。これらのカルボン酸ポリマー類およびスルホン酸ポリマー類はまた、ビニルカルボン酸類およびビニルスルホン酸類と他の重合可能なモノマー類、例えば、アクリレート類、スチレン、ビニルナフタレンなどの芳香族ビニル化合物との共重合体であっても良い。中でも、ポリスチレンスルホン酸が特に好ましい。
【0029】
上記ポリスチレンスルホン酸は、重量平均分子量が20000より大きく、500000以下であることが好ましい。より好ましくは40000〜200000である。分子量がこの範囲外のポリスチレンスルホン酸を使用すると、ポリチオフェン系導電性ポリマーの水に対する分散安定性が低下する場合がある。
尚、上記ポリマーの重量平均分子量はゲル透過クロマトグラフィー(GPC)にて測定した値である。測定にはウォーターズ社製ultrahydrogel500カラムを使用する。
【0030】
上記ポリチオフェン系導電性ポリマーは酸化剤を用いた水中での酸化重合によって得ることができる。当該酸化重合では2種類の酸化剤(第一酸化剤及び第二酸化剤)が使用される。
好適な第一酸化剤としては、例えば、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素、過マンガン酸カリウム、二クロム酸カリウム、過ホウ酸アルカリ塩、銅塩等が挙げられる。これらの第一酸化剤の中で、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、及び、ペルオキソ二硫酸が最も好適である。
上記第一酸化剤の使用量は、使用するチオフェン類モノマーに対して、1.5〜3.0mol当量が好ましく、2.0〜2.6mol当量がさらに好ましい。
【0031】
上記第二酸化剤は、例えば、金属イオン(例えば、鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン、バナジウムのイオン)を触媒量で添加することが好ましい。なかでも、鉄イオンが最も有効である。
上記金属イオンの添加量は、使用するチオフェン類モノマーに対して、0.005〜0.1mol当量が好ましく、0.01〜0.05mol当量がさらに好ましい。
【0032】
上記酸化重合では水を反応溶媒として用いる。水に加えて、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノールなどのアルコールや、アセトン、アセトニトリル等の水溶性溶媒を添加することもできる。
このような酸化重合によって導電性ポリマーの水分散体が得られる。
【0033】
上記導電性ポリマーの含有量は、限定されるものではないが、導電性組成物の固形分に対して、固形分として、1〜10重量%含まれることが好ましい。より好ましくは3〜6重量%である。1重量%より少ないと導電性が発現しにくく、10重量%より多いと、他成分との混合により沈殿が発生し、導電性組成物のポットライフが短くなる場合がある。
【0034】
上記導電性組成物は、上記導電性ポリマーに加えて、必要に応じて、以下の各成分を含有していてもよい。
【0035】
2.バインダー成分
本発明の導電性組成物は、バインダー成分を含有してもよい。
上記バインダー成分は、上記導電性組成物を用いて基材上で膜を形成するのを助ける。
上記バインダー成分としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性シロキサン等のシランカップリング剤、アルコキシシランオリゴマー、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミド等のホモポリマー;スチレン、塩化ビニリデン、塩化ビニル、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート等のモノマーを共重合して得られるコポリマー等の樹脂バインダーが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
また、本発明の導電性組成物をガラス基材に塗布する場合、上記バインダー成分として、少なくともアルコキシシランオリゴマーを含有することが好ましい。アルコキシシランオリゴマーを含有する場合、導電性ポリマーがその緻密構造の内部に分散性良く入り込むために、硬度及び耐薬品性が優れると共に、高い導電性を有する有機導電膜を得ることができる。
上記アルコキシシランオリゴマーとしては、例えば、以下の式(II)で示されるものが挙げられる。
【0037】
【化3】

【0038】
式中、R及びRは、同一又は異なって、炭素数1〜4のアルキル基を表す。R及びRは、同一又は異なって、H(水素原子)、水酸基、又は、炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。ただし、複数のR及びRのうち少なくとも1個はアルコキシ基である。
nは、2〜20の整数を表し、より好ましくは2〜14の整数を表す。
炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル等が挙げられる。
炭素数1〜4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ等が挙げられる。
本発明で使用するアルコキシシランオリゴマーは、上記一般式(II)により表される化合物1種類のみからなるものでもよいし、複種類の混合物であってもよい。
【0039】
また、上記バインダー成分として、分子内にあらかじめシロキサン結合を持つアルコキシシランオリゴマーを使用することで、シロキサン結合を持たないアルコキシシランモノマーやエポキシシラン等と比較して、導電性膜内に、より緻密な構造を形成しやすくなる。
この効果は、成膜温度がより低温になるほど顕著である。
また、バインダー成分として、アルコキシシランポリマー(アルコキシシランオリゴマーよりも縮合数nが大きいもの)を使用した場合には、立体反発が大きくなるため、反応性が悪くなり緻密な構造を形成しにくくなることで、その結果、膜硬度が弱くなると推定される。この傾向は分子量が大きくなるほど顕著である。
【0040】
上記アルコキシシランオリゴマーとは、アルコキシシランのモノマー同士が縮合することで形成される高分子量化されたアルコキシシランであり、シロキサン結合(Si−O−Si)を1分子内に1個以上有するオリゴマーのことをいう。
上記オリゴマーの重量平均分子量は特に限定されないが、152より大きく、4000以下であることが好ましい。より好ましくは、500〜1500程度が好ましい。
尚、上記オリゴマーの重量平均分子量はゲル透過クロマトグラフィー(GPC)にて測定した値である。測定にはウォーターズ社製ultrahydrogel500カラムを使用する。
【0041】
上記導電性組成物に含まれる全てのバインダー成分に対するアルコキシシランオリゴマーの配合量は97〜100重量%であることが好ましい。97重量%以上であると、アルコキシシランオリゴマーの配合による膜の緻密性が十分なレベルに達し、高い膜硬度及び優れた耐薬品性を示す導電膜の形成が可能となる。より好ましくは98.5重量%以上である。
【0042】
上記バインダー成分の総配合量は、上記導電性ポリマー100重量部に対して150〜10000重量部であることが好ましい。150重量部以上であると、バインダー成分の使用割合が十分となり、形成される有機導電膜に良好な硬度を付与することができる。10000重量部以下であると、導電性ポリマーが十分量含まれることになるため、高い導電性を有する有機導電膜を形成することが可能になる。より好ましくは300〜7000重量部である。
【0043】
3.導電性向上剤
本発明の導電性組成物は、導電性向上剤を含有していてもよい。
上記導電性向上剤は、形成した有機導電膜の導電性を更に向上させることができる。
上記導電性向上剤としては、例えば、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン等のアミド化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、カテコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のヒドロキシル基含有化合物;イソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、酢酸エチル、アセト酢酸エチル、オルト酢酸メチル、オルトギ酸エチル等のカルボニル基含有化合物;ジメチルスルホキシド等のスルホ基を有する化合物などが挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、2種以上併用してもよい。
これらの中では、塗布液のポットライフや低温での揮発性、形成した有機導電膜の導電性、基材への密着性などの観点から、アミド化合物が好ましく、N−メチルピロリドンとN−メチルホルムアミドが特に好ましい。
また、上記導電性向上剤の含有量に特に制限はないが、上記導電性組成物中に0.1〜60重量%の量で含有されることが好ましい。
【0044】
4.溶媒又は分散媒
上記溶媒又は分散媒としては、導電性組成物に含有される各成分を溶解又は分散させるものであれば特に制限されず、例えば、水、有機溶剤、これらの混和物等が挙げられる。
なお、本発明においては、導電性組成物に含まれる、溶媒又は分散媒以外の各成分が溶解している場合は溶媒と称し、導電性組成物を構成する少なくとも1成分が均一に分散している場合は分散媒と称する。
上記導電性組成物において、該導電性組成物が上記アルコキシシランオリゴマーを含有する場合、アルコキシシランオリゴマーが水に溶解しない場合があるため、溶媒又は分散媒として水と有機溶剤の混和物を使用することができる。さらに、水と有機溶剤の混和物を使用する場合、有機溶剤としては、少なくとも1種の水と混和する有機溶剤を含んでいることが好ましく、水と混和する有機溶剤を含んでいれば、さらに水と混和しない(疎水性の)有機溶剤を含んでいてもよい。溶媒又は分散媒として、沸点の低いアルコール系の有機溶剤と水の混合物を使用することによって揮発性が向上し、乾燥・熱硬化の際に有利となる場合がある。また、樹脂基材を使用する場合、アルコール系有機溶剤はレベリング性の向上にも寄与し得る。
【0045】
4−1.有機溶剤
上記有機溶剤としては、水に溶解し難いアルコキシシランオリゴマーなどの成分を均一に溶解又は分散させうるものが挙げられる。
水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のエチレングリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート類;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のプロピレングリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールエーテルアセテート類;テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、及び、これらの混和物等が挙げられる。
また、疎水性の有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル等のエステル類;ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ヘキサン、オクタン、石油エーテル等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及び、これらの混和物等が挙げられる。
これらの有機溶剤は単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0046】
上記導電性組成物が水系の組成物である場合、上記有機溶剤の含有量は、水100重量部に対して、20重量部以上であることが好ましい。20重量部未満になると、アルコキシシランオリゴマーなどの疎水性の成分が均一に溶解又は分散せず、被膜外観や基材への密着性、剥離力などの性能が発現しない場合がある。なお、上記導電性組成物が溶剤系の組成物である場合には、上記溶剤の含有量に制限はない。
なお、本発明においては、導電性組成物が水を含有する場合、その組成物を水系の組成物といい、導電性組成物が水を含有しない場合、その組成物を溶剤系の組成物ということとする。
【0047】
4−2.水
上記水系の導電性組成物に用いる水としては、例えば、蒸留水、イオン交換水及びイオン交換蒸留水等が挙げられる。また、上記水には、導電性ポリマーの水分散体及び他成分に含有される水分も含まれる。
上記水の含有量は、導電性組成物中に、1重量%以上であることが好ましい。
【0048】
上記導電性組成物が水系の組成物である場合、導電性組成物のpHは1〜14の範囲であることが好ましく、低温での硬化性や被膜の導電性を考慮すると、より好ましくは1〜7であり、1.5〜4であることが特に好ましい。導電性組成物のpHは、塩基等のpH調整剤により調整すればよい。
上記pH調整剤としては、例えば、アンモニア、エタノールアミン、イソプロパノールアミン等のアルカノールアミン類等が挙げられる。
ここで、塩基は酸と塩を形成するため、硬化触媒に作用することで、硬化触媒のアルコキシシランオリゴマーへの硬化促進効果を低下させることがあり、導電性組成物のpHが高くなるほど、低温での硬化性は低下するが、アルコキシシランオリゴマーの溶液中での自己架橋は抑制されるため、溶液の安定性や導電性組成物のポットライフが良くなる場合があることを考慮して、pH調整剤の添加量は適宜決定すればよい。なお、上記pH調整剤は、本発明の導電性組成物における任意成分である。
【0049】
5.その他添加剤
本発明の導電性組成物は、さらに、その他の添加剤を含有していてもよい。
その他の添加剤としては、例えば、レベリング剤、微粒子分散体、シランカップリング剤、増粘剤等が挙げられる。
【0050】
5−1.レベリング剤
上記レベリング剤は、導電性組成物を基材上に均一に塗工させるためのものであり、上記レベリング剤は、導電性組成物の基材への濡れ性を向上させ、有機導電膜を均一に形成させ得るものである。
【0051】
上記レベリング剤としては、例えば、フッ素含有化合物やシリコーン化合物、アクリル系化合物などが挙げられる。
フッ素含有化合物のレベリング剤としては、例えば、パーフルオロアルカン、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
シリコーン化合物のレベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性ポリジメチルシロキサン、ヒドロキシル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アクリル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アクリル基含有ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、シリコーン変性アクリル化合物などが挙げられる。
また、アクリル系化合物のレベリング剤としては、そのホモポリマー体やコポリマーなどが挙げられる。
これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
上記レベリング剤の含有量は特に限定されないが、その上限は導電性組成物の固形分に対して、固形分として、5〜25重量%含まれることが好ましく、7〜15重量%がより好ましい。
上記含有量が25重量%を超えると、有機導電膜の架橋密度が低下し、結果として基材への密着性や剥離力が低下する場合がある。逆に、上記レベリング剤の含有量が5重量%よりも少ないと、被膜外観が向上しないことがある。
【0053】
このような構成からなる導電性組成物を用いて形成された本発明の有機導電膜は、上述した通り、上記最大高さ(Rz)が平均膜厚に対して35%以上であるが、上記有機導電膜の表面状態(最大高さ(Rz))は、種々の方法で制御することができ、例えば、導電性組成物の組成や、後述する有機導電膜の形成方法により制御することができる。
より具体的には、例えば、スプレーコーティングにより有機導電膜を形成する場合、スプレー吐出量、液圧、単位面積当たりの塗布量、スプレーの移動速度等を制御することで、上記有機導電膜の表面状態(最大高さ(Rz))を制御することが出来る。
【0054】
次に、本発明の有機導電膜を製造する方法について説明する。
上記有機導電膜は、上記導電性組成物を用いて形成された被膜であり、上記導電性組成物を基材に塗布し、乾燥・熱硬化させることにより形成する。
上記導電性組成物の塗布方法としては特に制限はなく、公知の方法を用いることができ、例えば、スピンコーティング、グラビアコーティング、バーコーティング、ディップコート法、カーテンコーティング、ダイコーティング、スプレーコーティング等を用いることができる。また、スクリーン印刷、スプレー印刷、インクジェット印刷、凸版印刷、凹版印刷、平版印刷等の印刷法も適用できる。このとき、形成した有機導電膜の表面状態(最大高さ(Rz))が上記範囲となるように、塗布条件を適宜設定すればよい。
【0055】
上記導電性組成物の塗布方法としては、スプレーコーティングが好ましい。
上記スプレーコーティングは、例えば、タミヤ社製 バジャーエアーブラシや、GSIクレオス社製 プロスプレーMK−2等の装置を使用して行うことができ、上記装置によりガラス板等の基板上にスプレー塗布すればよい。この際、当該分野の技術常識に基づき、均一分散液濃度、吐出量、液圧等のパラメータを適宜設定し、塗布量を調整することによって、所望の表面状態(最大高さ(Rz))及び膜厚を有する有機導電膜を形成することができる。
また、上記導電性組成物を塗布する際には、上記導電性組成物を予めアルコール等で希釈した塗布液を調製し、この塗布液を塗布してもよい。
【0056】
上記導電性組成物の塗膜の乾燥・熱硬化には、通常の通風乾燥機、熱風乾燥機、赤外線乾燥機などの乾燥機などが用いられる。これらのうち加熱手段を有する乾燥機(熱風乾燥機、赤外線乾燥機など)を用いると、乾燥および加熱を同時に行うことが可能である。加熱手段としては、上記乾燥機の他、加熱機能を具備する加熱・加圧ロール、プレス機などを用いてもよい。
【0057】
ここで、乾燥・熱硬化の条件は、150℃以下(60〜130℃)の温度で30分以下であることが好ましく、120℃以下(80〜100℃)の温度で15分以下であることがさらに好ましい。上記導電性組成物は、上記条件で充分に有機導電膜を形成することができるが、上記条件は、当該技術分野において比較的、低温短時間な条件である。そのため、上記導電性組成物を用いて、上記有機導電膜を形成した場合、生産性にも優れる。
なお、この条件で硬化が不十分な場合等、必要に応じて、ロールコーティング後にロールフィルムの状態で、25℃〜60℃の乾燥機又は保管庫で、1時間〜数週間ポストキュアしてもよい。
【0058】
上記導電性組成物の調製方法に特に制限はないが、各成分をメカニカルスターラーやマグネティックスターラーなどの撹拌機で撹拌しながら混合して調製する。ここで、上記撹拌は約1〜60分間続けることが好ましい。
【0059】
本発明の有機導電膜は、光学フィルム、包装材、透明電極フィルム、液晶表示セル等の構成部材として好適に使用することができ、本発明の有機導電膜を備える光学フィルム、包装材、透明電極フィルム及び液晶表示セルは、耐久性に優れることとなる。
【0060】
上記光学フィルムとしては、例えば、透明樹脂フィルム上に上記有機導電膜が形成されたものが挙げられる。この場合、図1(a)に示した基材11として透明樹脂フィルムを使用し、その片面に有機導電膜12aを積層したものとなる。
【0061】
上記包装材としては、例えば、フィルムの片面に、上記有機導電膜を形成したものが挙げられる。
上記透明電極フィルムとしては、例えば、透明基材上に任意のパターンで上記有機導電膜が形成されたものが挙げられる。
【0062】
上記液晶表示セルとしては、例えば、液晶を封入したガラス基板の片面若しくは両面に、又は、液晶を封入する前のガラス基板の片面若しくは両面に、上記有機導電膜を形成したものが挙げられる。
上記光学フィルム、上記包装材、上記透明電極フィルム、及び、上記液晶表示セルのそれぞれもまた本発明の一つである。
【実施例】
【0063】
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0064】
(実施例1)
導電性ポリマーを含む水分散液Clevios PH500(ヘレウス社製)を100部(内、導電性ポリマーは1.1部含まれる)、アルコキシシランオリゴマーMS−51(三菱化学社製)24部、N−メチルホルムアミド(ナカライテスク社製、試薬)19部、エタノール(ナカライテスク社製、試薬)514部、イオン交換水48部を用いて均一分散液を作成した。
次いで、ガラス板に上記分散液を下記の方法で塗布し、オーブンにて130℃、30分間加熱して成膜した、100×100mmの有機導電膜を13個作製し(実施例1−1〜実施例1−13)、評価に供した。なお、塗布量は、均一分散液濃度との関係で、平均膜厚が80nm(実施例1−1、2、4、5、7〜13)、120nm(実施例1−3)、又は、60nm(実施例1−6)となるように調整した。
【0065】
(塗布方法)
タミヤ社製 バジャーエアーブラシを使用して、塗布量は、均一分散液濃度、吐出量及び液圧を調整して平均膜厚が80nm、120nm又は60nmとなるように調整した。
【0066】
(有機導電膜の形状評価)
各有機導電膜のそれぞれ10箇所について、下記の方法により、最大高さ(Rz)の最大値(MAX)、最小値(MIN)及び平均値(average)を算出し、更に、上記最大値及び最小値の平均膜厚(80nm、120nm又は60nm)に対する比率(%)を算出した。結果を表1に示した。
上記最大高さ(Rz)は、触針式表面形状測定器DEKTAK 6M(Veeco社製)を使用して、測定モードを3000μm、30秒、10mgの条件で表面を測定した。
【0067】
【表1】

【0068】
(比較例1)
実施例1と同様の方法で作成した均一分散液を、ガラス板に下記の方法で塗布し、熱風乾燥機にて130℃、30分間加熱して成膜した、100×100mmの有機導電膜を6個作製し(比較例1−1〜比較例1−6)、評価に供した。なお、塗布量は、均一分散液濃度との関係で、平均膜厚が80nmとなるように調整した。
【0069】
(塗布方法)
No.4のワイヤーバー(ウェット膜厚9μm)を使用して、均一に力を入れ、均一なスピードで塗布した。
【0070】
(有機導電膜の形状評価)
各有機導電膜のそれぞれ10箇所について、下記の方法により、最大高さ(Rz)の最大値(MAX)、最小値(MIN)及び平均値(average)を算出し、更に、上記最大値及び最小値の平均膜厚(80nm)に対する比率(%)を算出した。結果を表2に示した。
上記最大高さ(Rz)の測定方法は、実施例1と同様である。
【0071】
【表2】

【0072】
(耐久性試験)
実施例1で製造した有機導電膜(実施例1−1〜1−6、1−11〜1−13)、及び、比較例1で製造した有機導電膜(比較例1−1〜比較例1−6)について、下記耐久性試験(1)及び(2)のいずれかを行った。
耐久性試験(1):85℃で1100時間保持
耐久性試験(2):65℃、90%湿度で850時間保持
【0073】
具体的には、実施例1−1〜1−3、1−11及び1−12、並びに、比較例1−1〜1−3のそれぞれで作製した有機導電膜について、耐久性試験(1)を行い、試験前後に下記の方法で表面抵抗率/SR(Ω/□)を測定し、耐久性試験前後の表面抵抗率/SR(Ω/□)の上昇倍率を算出した。結果を表3に示した。
また、実施例1−4〜1−6及び1−13、並びに、比較例1−4〜1−6のそれぞれで作製した有機導電膜について、耐久性試験(2)を行い、試験前後に下記の方法で表面抵抗率/SR(Ω/□)を測定し、耐久性試験前後の表面抵抗率/SR(Ω/□)の上昇倍率を算出した。結果を表4に示した。
【0074】
上記表面抵抗率/SR(Ω/□)は、JIS K 7194に従い、三菱化学社製、ハイレスタUP(MCP−HT450型、商品名)のUAプローブを用いて10Vの印加電圧にて測定した。
【0075】
【表3】

【0076】
【表4】

【0077】
表3及び4の結果より、本発明の有機導電膜は耐久性に優れることが明らかとなった。
また、実施例1−7〜1−10についても、耐久性試験(1)を行ったところ、同様に耐久性に優れることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の有機導電膜は、耐久性に優れる導電性被膜であり、帯電防止膜や透明電極等として好適であり、光学フィルムや包装材、透明電極フィルム、液晶表示セル等に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0079】
11、21 基材
12a、22a 有機導電膜
12b、22b 劣化部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも導電性ポリマーを含有する導電性組成物を用いて形成された有機導電膜であって、
その片面の最大高さ(Rz)が、平均膜厚に対して35%以上であることを特徴とする有機導電膜。
【請求項2】
前記導電性ポリマーは、ポリチオフェン系導電性ポリマーである請求項1に記載の有機導電膜。
【請求項3】
前記ポリチオフェン系導電性ポリマーは、以下の式(I):
【化1】

(式中、RおよびRは相互に独立して水素原子またはC1−4のアルキル基を表すか、又は、一緒になって置換されていてもよいC1−4のアルキレン基を表す)の反復構造を有するポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)又はポリ(3,4−アルキレンジオキシチオフェン)と、ドーパントとの複合体である請求項2に記載の有機導電膜。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載の有機導電膜を有することを特徴とする光学フィルム。
【請求項5】
請求項1〜3いずれかに記載の有機導電膜を有することを特徴とする包装材。
【請求項6】
請求項1〜3いずれかに記載の有機導電膜を有することを特徴とする透明電極フィルム。
【請求項7】
請求項1〜3いずれかに記載の有機導電膜を有することを特徴とする液晶表示セル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−58470(P2013−58470A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−162930(P2012−162930)
【出願日】平成24年7月23日(2012.7.23)
【出願人】(000214250)ナガセケムテックス株式会社 (173)
【Fターム(参考)】