説明

有機金属前駆体化合物

本発明は、式i−PrN=Ta(NR[式中、R及びRは、同じか又は異なり、1〜3個の炭素原子を有するアルキルであり、但し、(i)Rがエチルの場合、Rはエチル以外であり、(ii)Rがエチルの場合、Rはエチル以外である]により表される有機金属前駆体化合物、並びに前記有機金属前駆体化合物から被膜、コーティング又は粉末を製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式i−PrN=Ta(NR[式中、R及びRは、同じか又は異なり、1〜3個の炭素原子を有するアルキルであり、但し、(i)Rがエチルの場合、Rはエチル以外であり、(ii)Rがエチルの場合、Rはエチル以外である]により表される有機金属前駆体化合物、並びに前記有機金属前駆体化合物から被膜又はコーティングを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学蒸着法は、半導体の製造又は処理中に、ウェハなどの基板又はその他の表面上に材料の被膜を形成するために使用される。化学蒸着法では、化学蒸着化合物としても知られている化学蒸着前駆体は、熱的に、化学的に、光化学的に、又はプラズマ励起により分解されて、所望の組成を有する薄膜を形成する。例えば、気相化学蒸着前駆体を、この前駆体の分解温度より高い温度に加熱した基板に接触させて、基板上に金属含有被膜を形成することができる。好ましくは、化学蒸着前駆体は、揮発性、熱分解性であり、化学蒸着条件下で均一な被膜を製造することが可能である。
【0003】
現在のところ半導体業界は、種々の用途のための種々の金属薄膜の使用を検討している。多数の有機金属錯体が、これらの薄膜形成の可能性を持つ前駆体と評価されている。この業界には、新規化合物を開発し、被膜堆積の化学蒸着前駆体としてのその可能性を探索する必要性が存在する。
【0004】
窒化タンタル(TaN)材料は、銅拡散バリア及び電極を含む次世代デバイスのためのエレクトロニクス工業における多くの応用例が考えられる。薄膜のより高い均一性及びコンフォーマル性に対する要求の増大のため、当業界の物理蒸着法から化学蒸着法及び原子層堆積法への推移により、将来の半導体材料に適した前駆体に対する要求が生じている。
【0005】
銅配線と誘電体の間のTaN被膜は、誘電体中への銅の拡散を防止するバリアの役割を果たす。現在のところ、TaNバリアは物理蒸着(PVD)技術を用いて堆積される。しかし、形状サイズが65nm未満に縮小すると考えられる将来の世代のマイクロエレクトロニクスでは、PVD技術は、この課題に対応するコンフォーマル性超薄膜を堆積することは不可能であり得る。薄膜の堆積では、原子層堆積(ALD)技術はPVD技術より優れている。しかし、ALD技術の課題は、適当な前駆体の利用可能性である。ALD堆積法は、一連のステップを含む。このステップは、1)基板表面上への前駆体の吸着、2)気相中の前駆体分子を除去すること、3)反応物を導入して基板表面上の前駆体と反応させること、及び4)過剰な反応物を除去することを含む。
【0006】
ALD法では、前駆体は厳密な必要条件を満たすべきである。第1に、ALD前駆体は、堆積条件下で物理吸着或いは化学吸着により基板表面上に単層を形成することが可能であるべきである。第2に、この吸着した前駆体は、高度の不純物をもたらす、表面上の早すぎる分解を防止するために十分に安定であるべきである。第3に、この吸着した分子は、比較的低温で反応物と相互に作用して、表面上に望ましい物質の純粋な相を残すために十分に反応性でなければならない。
【0007】
従来技術のTaN ALD前駆体は、1つ又は複数の以下の欠点を有する:1)固体状態、2)低蒸気圧、3)堆積物質の不適切な相、及び4)被膜中への高い炭素の取込み。Ta(NMe(PDMAT)は、従来技術の候補の1つであるが、これは固体である。この前駆体は、所望のTaNの代わりにTaを形成する傾向も持つ。Taは、絶縁体であり、望ましくない相である。他の従来技術のTaN前駆体は、t−BuN=Ta(NEt(TBTDET)であり、これは低蒸気圧を有し、被膜中に高度の炭素不純物をしばしば生じさせる。
【0008】
3種類の従来技術のTaN前駆体、即ち、TaCl、Ta(NR、R−N=Ta(NRがある。TaClは、TaN前駆体中で最も安価である。しかし、TaClは固体であり、被膜中へのClの取込みは重大な問題である。塩素は腐食性であり、マイクロエレクトロニクスデバイスに機能不良を生じさせるはずである。PDMATは組成中に塩化物を含まない、したがってCl取込みの問題を有しない。しかし、PDMATも固体であり、誘電体でありバリア用途には望ましくない相であるTaを形成する傾向を有する。第3のタイプのTaN前駆体は、R−N=Ta(NRであり、その代表例はTBTDETである。TBTDETは、揮発性液体であり、TaN相を形成するのにより有利である。しかし、TBTDETは比較的低蒸気圧を有し、TBTDETから堆積される被膜は、しばしば高度の炭素不純物を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
化学蒸着法により薄膜を形成する方法の開発では、好ましくは、室温で液体であり、比較的高蒸気圧を有し、均一な被膜を形成することが可能な化学蒸着前駆体に対する必要性が存続する。したがって、新規な化合物を開発して、被膜堆積のための化学蒸着前駆体としてのその可能性を探索することの必要性が存続する。したがって、室温で液体であり、高蒸気圧を有し、均一な被膜を形成することが可能な化学蒸着前駆体を提供することは当技術分野おいて望ましいことになる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、次世代のデバイスのための化学蒸着及び原子層堆積前駆体、具体的には、好ましくは、室温で液体であり、比較的高い蒸気圧を有し、均一な被膜を形成することが可能なタンタル含有前駆体に関する。
【0011】
本発明は、一般に、式i−PrN=Ta(NR[式中、R及びRは、同じか又は異なり、1〜3個の炭素原子を有するアルキルであり、但し、(i)Rがエチルの場合、Rはエチル以外であり、(ii)Rがエチルの場合、Rはエチル以外である]により表される有機金属前駆体化合物に関する。代表的には、R及びRは、メチル、エチル、n−プロピル及びi−プロピルから選択される。
【0012】
好ましい有機金属前駆体化合物は、i−PrN=Ta(NMeEt)(IPTEMT)である。IPTEMTは、TBTDETと同じ揮発圧のクラスに属する。両化合物は、1つのTa=N結合及び3つのTa−N結合を含む。したがって、IPTEMTは、TBTDETの有利な固有の特性、例えば適切な窒化タンタル相、即ちTaNを形成する傾向などを有する。しかし、IPTEMTのリガンドはTBTDETのものとは異なる。イミノ窒素に接するアルキル基は、TBTDETのt−ブチルからIPTEMTのイソプロピルに変化している。イソプロピル基によるt−ブチル基の置換えにより、揮発性が増大し、炭素の取込みも減少し得る。これに加えて、エチルメチルアミドアニオンによるジエチルアミドアニオンの置換えにより、蒸気圧がさらに増大するはずである。IPTEMTの蒸気圧は、TBTDETより10倍の揮発性であり得ることが予想される。高度に揮発性の前駆体はCVD法/ALD法に望ましい。
【0013】
本発明はまた、式i−PrN=Ta(NR[式中、R及びRは、同じか又は異なり、1〜3個の炭素原子を有するアルキルである]により表される有機金属前駆体化合物を分解して、被膜、コーティング又は粉末を生成することにより、被膜、コーティング又は粉末を製造する方法に関する。代表的には、前記有機金属前駆体化合物の分解は、熱的、化学的、光化学的又はプラズマ励起的である。
【0014】
本発明はいくつかの利点を有する。例えば、本発明の方法は、広範な化学構造及び物理特性を有する有機金属化合物前駆体を生成するのに有用である。この有機金属化合物前駆体から生じる被膜は、短いインキュベーション時間で堆積することが可能であり、この有機金属化合物前駆体から堆積される被膜は、良好な平滑度を示す。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、有機金属前駆体化合物は、室温で液体であり、比較的高い蒸気圧を有する。ほとんどの場合、半導体プロセス集積化の容易さの観点から、液体は固体より好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
上記のように、本発明は、式i−PrN=Ta(NR[式中、R及びRは、同じか又は異なり、1〜3個の炭素原子を有するアルキルであり、但し、(i)Rがエチルの場合、Rはエチル以外であり、(ii)Rがエチルの場合、Rはエチル以外である]により表される有機金属前駆体化合物に関する。代表的には、R及びRは、メチル、エチル、n−プロピル及びi−プロピルから選択される。
【0017】
本発明の例示的な有機金属前駆体化合物としては、例えば、i−PrN=Ta(NMeEt)、i−PrN=Ta(NMePr)、i−PrN=Ta(NMeiPr)等[式中、Meはメチルであり、Etはエチルであり、Prはn−プロピルであり、iPrはi−プロピルである]がある。
【0018】
本発明の有機金属前駆体化合物は、例えば、Chiu,H.Tら、Polyhedron、17(1988)、2187〜2190、及び米国特許第6,552,209号(これらの開示を参照により本明細書に援用する)に記載の従来の方法により調製することができる。
【0019】
上記参考文献に記載の合成法により形成される有機金属化合物を特性決定するために使用することができる技法の例としては、これに限定されることなく、分析用ガスクロマトグラフィー、核磁気共鳴法、熱重量分析法、誘導結合プラズマ質量分析法、示差走査熱分析法、蒸気圧及び粘度の測定法がある。
【0020】
上記の有機金属化合物前駆体の相対蒸気圧、又は比揮発度は、当技術分野で既知の熱重量分析技法により測定することができる。また、平衡蒸気圧は、例えば、密閉容器からすべてのガスを排気し、その後この化合物の蒸気を容器に導入して、その圧力を当技術分野で知られているように測定することにより測定することができる。
【0021】
本明細書に記載の多くの有機金属化合物前駆体は、室温で液体であり、粉末及びコーティングをin−situで調製するのに十分に適している。例えば、液体有機金属化合物前駆体を基板上に適用し、次いでこの前駆体を分解するのに十分な温度に加熱し、これにより金属含有コーティングを基板上に形成することができる。液体前駆体の基板への適用は、塗装、スプレー、ディッピング又は当技術分野で既知のその他の技法によることができる。加熱は、当技術分野で知られているように、オーブン中で、ヒートガンにより、基板を電気的に加熱することにより、又は他の手段により実施することができる。層状のコーティングは、有機金属化合物前駆体を適用し、加熱してこれを分解することにより第1層を形成し、続いて、同じか又は異なる前駆体による少なくとも1層の他のコーティングを行い、加熱することにより得ることができる。
【0022】
上記に記載されたものなどの液体有機金属化合物前駆体を、噴霧化し、基板上にスプレーすることもできる。使用することができる噴霧化及びスプレー手段、例えば、ノズル、ネブライザ及びその他などは当技術分野で知られている。
【0023】
本発明の好ましい実施形態では、上記に記載のものなどの有機金属化合物は、粉末、被膜又はコーティングを形成するために気相成長技法に使用される。この化合物は、単一供給源前駆体として使用することができ、或いは1種又は複数の他の前駆体と、例えば、少なくとも1種の他の有機金属化合物又は金属錯体を加熱することにより生じる蒸気と一緒に使用することができる。上記に記載のものなどの2種以上の有機金属化合物前駆体も所定のプロセス中で使用することができる。
【0024】
堆積は、他の気相成分の存在下で実施することができる。本発明の実施形態では、被膜の堆積は少なくとも1種の非反応性キャリアガスの存在下で実施される。非反応性ガスの例としては、不活性ガス、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、並びにプロセス条件下で有機金属化合物前駆体と反応しない他のガスがある。他の実施形態では、被膜の堆積は少なくとも1種の反応性ガスの存在下で実施される。使用することができるいくつかの反応性ガスとしては、これに限定されることなく、ヒドラジン、酸素、水素、空気、酸素富化空気、オゾン(O)、亜酸化窒素(NO)、水蒸気、有機物蒸気、アンモニア及びその他がある。当技術分野で知られているように、酸化性ガス、例えば、空気、酸素、酸素富化空気、O、NO又は酸化性有機化合物の蒸気の存在は、金属酸化物被膜の形成に有利に働く。
【0025】
上記のように、本発明は、1つには、被膜、コーティング又は粉末を製造するための方法にも関する。この方法は、さらに以下に説明するように、少なくとも1種の有機金属化合物前駆体を分解して、これによりその被膜、コーティング又は粉末を生成するステップを含む。
【0026】
本明細書に記載の堆積法は、単一金属を含む被膜、粉末又はコーティング、或いは単一金属酸化物を含む被膜、粉末又はコーティングを形成するために実施することができる。混合された被膜、粉末又はコーティング、例えば混合金属酸化物被膜も堆積することができる。混合金属酸化物被膜は、例えば、少なくとも1種が上記の有機金属化合物から選択される、いくつかの有機金属前駆体を使用することにより形成することができる。
【0027】
気相被膜堆積法は、所望の厚さ、例えば約1nm〜1mmを超える範囲の被膜層を形成するために実施することができる。本明細書に記載の前駆体は、薄膜、例えば約10nm〜約100nmの範囲の厚さを有する被膜を生成するのに特に有用である。例えば、窒化タンタルの被膜は、金属電極を、特に論理回路中のn−チャネル金属電極として、DRAM用途のコンデンサ電極として、及び誘電体材料として製造するために検討することができる。
【0028】
この方法はまた、相又は組成が異なる少なくとも2種の層の層状被膜の調製にも適する。層状被膜の例としては、金属/絶縁体/半導体、及び金属/絶縁体/金属がある。
【0029】
一実施形態では、本発明は、上記の有機金属化合物前駆体の蒸気を、熱的に、化学的に、光化学的に、又はプラズマ励起により分解し、これにより基板上に被膜を形成するステップを含む方法を対象とする。例えば、この化合物により生じた蒸気は、この有機金属化合物を分解するに十分な温度を有する基板と接触されて、基板上に被膜を形成する。
【0030】
この有機金属化合物前駆体は、化学蒸着法に、又はより具体的には、当技術分野で知られている有機金属化学蒸着法に使用ことができる。例えば、上記の有機金属化合物前駆体は、常圧並びに低圧の化学蒸着法に使用することができる。この化合物は、ホットウオール型化学蒸着法(全体の反応室を加熱する方法)、並びにコールド又はウオームウオール型化学蒸着法(基板のみを加熱する技法)に使用することができる。
【0031】
上記の有機金属化合物前駆体は、プラズマ式又は光式化学蒸着法(化学蒸着前駆体を励起するために、プラズマ又は電磁エネルギーからのエネルギーがそれぞれ使用される)にも使用することができる。この化合物は、イオンビーム式、電子ビーム式化学蒸着法(化学蒸着前駆体を分解するエネルギーを供給するために、それぞれ、イオンビーム又は電子ビームが基板に当てられる)にも使用することができる。レーザ式化学蒸着法(化学蒸着前駆体の光分解反応に作用するために、レーザ光を基板に当てる)も使用することができる。
【0032】
本発明の方法は、当技術分野で既知の種々の化学蒸着反応器、例えば、ホットウオール又はコールドウオール反応器、プラズマ式、ビーム式又はレーザ式反応器中で実施することができる。
【0033】
本発明の方法を使用してコートすることができる基板の例としては、固体基板、例えば、金属基板、例えば、Al、Ni、Ti、Co、Pt、Ta;金属ケイ化物、例えば、TiSi、CoSi、NiSi;半導体材料、例えば、Si、SiGe、GaAs、InP、ダイアモンド、GaN、SiC;絶縁体、例えば、SiO、Si、HfO、Ta、Al、チタン酸バリウムストロンチウム(BST);バリア材料、例えば、TiN、TaN;或いは材料の組合せを含む基板がある。さらに、被膜又はコーティングは、ガラス、セラミックス、プラスチック、熱硬化性樹脂材料上、及び他のコーティング又は被膜層上に形成することができる。好ましい実施形態では、電子部品の製造又は処理に使用される基板上に被膜を堆積する。他の実施形態では、基板は、高温で酸化剤の存在下に安定な低固有抵抗導体堆積物又は光透過被膜を支持するために使用される。
【0034】
本発明の方法は、滑らかで平らな表面を有する被膜を基板上に堆積するために実施することができる。一実施形態では、この方法は、ウェハ製造又は処理に使用される基板上に被膜を堆積するために実施される。例えば、この方法は、機能、例えば、トレンチ、ホール又はビアなどを含むパターン化した基板上に被膜を堆積するために実施することができる。さらに、本発明の方法は、ウェハ製造又は処理におけるその他のステップ、例えば、マスキング、エッチング及びその他と一体化することもできる。
【0035】
化学蒸着被膜は、所望の厚さに堆積することができる。例えば、形成される被膜は、厚さ1ミクロン未満、好ましくは厚さ500ナノメートル未満、より好ましくは厚さ200ナノメートル未満にすることができる。厚さ50ナノメートル未満の被膜、例えば、約1と約20ナノメートルの間の厚さの被膜も製造することができる。
【0036】
上記の有機金属化合物前駆体はまた、本発明の方法に使用して、原子層堆積(ALD)又は原子層核形成(ALN)技法(この間に、基板が前駆体、酸化剤及び不活性ガスのストリームの交替パルスに暴露される)により被膜を形成することができる。逐次層堆積技法は、例えば、米国特許第6,287,965号及び米国特許第6,342,277号に記載されている。両特許の開示の全体を参照により本明細書に援用する。
【0037】
例えば、1つのADLサイクル中に、基板を逐次、a)不活性ガス;b)前駆体蒸気を担持する不活性ガス;c)不活性ガス;及びd)単独又は不活性ガスと一緒の酸化剤に暴露する。一般に、各ステップは、装置が許容する限りの短時間(例えばミリ秒)及びプロセスが必要なだけの長時間(例えば、数秒又は数分)とすることができる。1サイクルの所要時間は、ミリ秒もの短時間及び分もの長時間の場合がある。このサイクルを、数分〜数時間の範囲にあり得る時間にわたり反復する。生成された被膜は、数ナノメートルの薄さ又はより厚い、例えば1ミリメートル(mm)であり得る。
【0038】
本発明の方法は、超臨界流体を使用して実施することもできる。現在のところ当技術分野で既知の超臨界流体を使用する被膜堆積法の例には、化学流体堆積法;超臨界流体輸送化学堆積法;超臨界流体化学堆積法;及び超臨界浸漬堆積法がある。
【0039】
例えば、化学流体堆積法は、高純度被膜の製造、複雑な表面の被覆及び高アスペクト比の特徴の充填に十分に適する。化学流体堆積法は、例えば、米国特許第5,789,027号に記載されている。被膜を形成するための超臨界流体の使用はまた、米国特許第6,541,278B2号に記載されている。これらの2つの特許のその全体を参照により本明細書に援用する。
【0040】
本発明の一実施形態では、加熱したパターン化基板を、溶媒、例えば、臨界点近傍又は超臨界流体、例えば、臨界点近傍又は超臨界COの存在下で、1種又は複数の有機金属化合物前駆体に暴露する。COの場合、この溶媒流体を、約1000ポンド/平方インチゲージを超える圧力及び少なくとも約30℃の温度で供給する。
【0041】
この前駆体は分解して、基板上に金属被膜を形成する。この反応はまた、この前駆体から有機物質が生成する。この有機物質は溶媒流体により可溶化されて、基板から容易に除去される。例えば酸化ガスを使用することにより、金属酸化物被膜も形成することができる。
【0042】
一例において、1個又は複数の基板を収納する反応室中で堆積法を実施する。この基板を、例えば炉を使って室全体を加熱することにより所望の温度に加熱する。例えばこの室に真空を適用することにより、有機金属化合物の蒸気を生成することができる。低沸点化合物では、この化合物を蒸発させるためにこの室を十分熱くすることができる。この蒸気は、加熱された基板表面と接触すると分解して金属含有被膜を形成する。上記のように、有機金属化合物前駆体は、単独で又は1種又は複数の成分、例えば、他の有機金属前駆体、不活性キャリアガス又は反応性ガスなどと組み合わせて使用することができる。
【0043】
本発明の方法による被膜の製造に使用することができるシステムにおいて、原材料をガスブレンド用マニフォールドに送り出して、被膜の成長を実施する堆積反応器に供給するプロセスガスを生成することができる。原材料としては、これに限定されることなく、キャリアガス、反応性ガス、パージガス、前駆体、エッチング/洗浄ガス、その他がある。プロセスガスの組成の正確な制御は、当技術分野で既知の、マスフローコントローラ、バルブ、圧力変換器、及びその他の手段を用いて達成される。排気マニフォールドにより、堆積反応器から出てくるガス、並びにバイパスストリームを真空ポンプに搬送することができる。真空ポンプの下流の処理システムは、排気ガスからのいずれの有害物質も除去するために使用することができる。この堆積システムは、プロセスガスの組成の測定を可能にする残留ガス分析器を含む、in−situ分析システムを備えることができる。制御及びデータ収集システムにより、種々の工程パラメータ(例えば、温度、圧力、流量等)をモニターすることができる。
【0044】
上記の有機金属化合物前駆体は、単一金属を含む被膜又は単一金属酸化物を含む被膜を製造するために使用することができる。混合された被膜、例えば混合金属酸化物被膜も堆積することができる。このような被膜は、例えばいくつかの有機金属前駆体を使用することにより製造することができる。金属被膜は、例えば、キャリアガス、蒸気又は酸素の他の供給源を使用しないで形成することもできる。
【0045】
本明細書に記載の方法により形成される被膜は、当技術分野で既知の技法、例えば、X線回折法、オージェ分光法、X線光電子放出分光法、原子間力顕微鏡法、走査電子顕微鏡法、及び当技術分野で既知の他の技法により特性決定できる。この被膜の固有抵抗及び熱安定性も、当技術分野で既知の方法により測定することができる。
【0046】
本発明の種々の修正形態及び変形形態は、当業者には明らかなはずであり、このような修正形態及び変形形態は、本出願の範囲及び特許請求の範囲の精神及び範囲内に含まれるものであることを理解されたい。
【実施例】
【0047】
(実施例1)
i−PrN=TaClPyの合成
グローブボックス中で、TaCl 7.18グラム(20ミリモル)を500ミリリットルフラスコに入れ、トルエン200ミリリットルを添加した。攪拌下で、シリンジを用いてイソプロピルアミン(2.37グラム、40ミリモル)を徐々に添加した。この混合物を30分間攪拌した後、ピリジン(6.5ミリリットル)を添加した。混合物を6時間攪拌した。得られた固体をろ過により収集し、THF(100ミリリットル)と混合した。混合物を1時間攪拌し、ろ過した。真空下で、ろ液を濃縮して固体を得て、ろ過により収集した。重量:6.45グラム(12.8ミリモル)。
【0048】
i−PrN=Ta(NEtMe)(IPTEMT)の合成
グローブボックス中で、i−PrN=TaClPy(5.16グラム)を250ミリリットルフラスコに入れた。このフラスコに、ヘキサン約80ミリリットル及びTHF 40ミリリットルを添加した。攪拌下で、LiNEtMe(2.0グラム)を徐々に添加し、混合物を一晩攪拌した。すべての溶媒を除去してペーストを得て、ヘキサン50ミリリットルをペーストに添加した。2時間攪拌した後、固体をろ過して分けた。このろ液をフラスコに移し、濃縮して淡褐色液体を得た。減圧蒸留のために、このフラスコをグローブボックスの外に出した。この留出物を生成物として収集した(2.6グラム)。IPTEMT(トルエン−d)のH NMRスペクトル:1.15(三重線、18H)、1.29(二重線、6H)、3.43(五重線、12H)、4.34ppm(七重線、1H)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式i−PrN=Ta(NR[式中、R及びRは、同じか又は異なり、1〜3個の炭素原子を有するアルキルであり、但し、(i)Rがエチルの場合、Rはエチル以外であり、(ii)Rがエチルの場合、Rはエチル以外である]により表される有機金属前駆体化合物。
【請求項2】
及びRが、同じか又は異なり、メチル、エチル、n−プロピル又はi−プロピルである、請求項1に記載の有機金属前駆体化合物。
【請求項3】
がメチルであり、Rがエチルである、請求項1に記載の有機金属前駆体化合物。
【請求項4】
室温で液体である、請求項1に記載の有機金属前駆体化合物。
【請求項5】
請求項1に記載の有機金属前駆体化合物を分解して、被膜、コーティング又は粉末を生成することにより、被膜、コーティング又は粉末を製造する方法。
【請求項6】
前記有機金属前駆体化合物の前記分解が、熱的、化学的、光化学的又はプラズマ励起的である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記有機金属前駆体化合物を蒸発させ、基板を収納する堆積反応器中に蒸気を送り出す、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記基板が、金属、金属ケイ化物、半導体、絶縁体及びバリア材料からなる群から選択される材料からなる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記基板がパターン化したウェハである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記被膜、コーティング又は粉末が、気相成長法により生成される、請求項5に記載の方法。

【公表番号】特表2007−537357(P2007−537357A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513242(P2007−513242)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/016053
【国際公開番号】WO2005/112101
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(392032409)プラクスエア・テクノロジー・インコーポレイテッド (119)
【Fターム(参考)】