説明

望まれるミルクおよび/または組織プロファイルのための動物の選択

本発明は、DGAT1遺伝子内に変異を有する動物における有利なミルク、組織および/または成長速度プロファイルをもたらす該変異を対象とする。本発明はまた、改変されたミルク、組織および/または成長速度特性を有する動物の選択を容易にするために、該変異を有する動物を同定する方法を対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本国際特許出願は、2008年12月24日に出願されたニュージーランド仮特許出願第573950号に基づく優先権を主張するものであり、その内容は、引用により本明細書の一部とする。
【0002】
発明の分野
本発明は、ミルク産生、例えば、量、ならびにミルク中の脂肪およびタンパク質の組成と関連する新規遺伝学的変異に関する。新規遺伝学的変異はまた、該変異を含む動物の組織組成と関連する。本発明はまた、遺伝学的変異の存在の有無についてアッセイすることに基づく、動物、特にウシの選択に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
動物の脂肪およびミルク組成、特に、牛乳産生における遺伝学的基盤は、酪農業界において極めて重要である。動物脂肪およびミルク組成および量を調節する能力は、農業実践を変える可能性、および個々の要求に応じてそれに適合した製品を製造する可能性を有する。特に、動物、とりわけウシを遺伝学的に評価して、望まれる特性、例えば、望まれるミルクおよび肉組成を発現する動物を選択する方法は、有用であり得る。
【0004】
ミルクの組成における多様性、例えば、主要なミルクタンパク質の相対量についての遺伝学的な基盤、およびミルク産生特性およびミルク処理特性についてのこれらの多様性の効果については、かなりの研究、討論および参照の対象となっている。例えば、国際特許出願PCT/NZ01/00245 (WO02/36824として公開されている)は、ウシジアシルグリセロールO-アシルトランスフェラーゼホモログ1 (マウス) (DGAT1)遺伝子における多型が増加したミルク収量および改変されたミルク組成と関連しており、特に、DGAT1ポリペプチドにおける相対的に頻度の高いK232A多型の存在(DGAT1ポリペプチドの232位におけるアラニンアミノ酸の存在)は、乳脂肪割合、乳脂収量およびミルクタンパク質割合の減少を生じつつ、ミルク量およびミルクタンパク質収量を増加させることを報告している。K232A多型は、DGAT1酵素機能に影響を与えることが示されている(Grisart, B., et al., 2002, Genome Res. 12:222-231; Grisart B., et al., 2004, PNAS 101:2398-2403)。ウシDGAT1遺伝子における13個の多型は、WO 02/36824の表1において同定されており、そのうちの2個のみがエクソンで生じる。K232A多型は、第8エクソンにおいて同定されており、第4エクソンの5997塩基における同義の多型もまた同定されている。DGAT1は、トリグリセリド合成に関与しており、脂肪酸アシル-CoAとジアシルグリセロールを共有結合させることにより、グリセロール骨格の第3位への脂肪酸の結合を触媒する。DGAT酵素であるDGAT1およびDGAT2の一般的な参照は、Yen, et al., 2008, Journal of Lipid Research, 49:2283-2301において提供される。
【0005】
他の例において、国際特許出願PCT/NZ02/00157 (WO2003/104492として公開されている)は、ウシ成長ホルモン受容体(GHR)遺伝子における多型が増加したミルク量および改変されたミルク組成と関連しており、特に、F279Yアミノ酸多型の存在が増加したミルク収量、減少した乳脂およびミルクタンパク質割合、ならびに生体重の減少を生じることを報告している。ミルク組成の他の特性については、変異の基盤がはっきりしていない。
【0006】
特定の望まれる遺伝学的対立遺伝子を追跡する能力を提供するマーカー補助選択は、ある特性と関連する遺伝子もしくは遺伝子群を分離するか、またはそれを部分的に定義するDNA分子マーカーの同定を含む。DNAマーカーは、いくつかの利点を有する。それらは、測定することが比較的容易で、明白であり、DNAマーカーは、共優性(co-dominant)であるので、ヘテロ接合型およびホモ接合型動物を、区別して同定することができる。DNA含有サンプルが個々の動物(胚性、幼生(infant)または成体にかかわりなく)から回収された後、DNAマーカーは任意の時間点においてアッセイできるので、マーカー系がいったん確立されると、選択決定は極めて容易に行われ得る。
【0007】
本発明は、動物における有利なミルク、組織、初乳および成長特性と関連する新規変異を提供する。本発明はまた、変異の直接検出によるか、またはマーカー補助選択により、望まれる組織組成および/または望まれるミルクおよび/または初乳産生の質、例えば、量、ならびに脂肪およびタンパク質の組成を有する動物、特に、ウシを選択する方法を提供する。本発明はまた、本発明の方法を用いて選択される動物を提供する。さらに本発明は、選択された動物に由来する組織製品、例えば、肉、器官、毛皮、体液、例えば、血液および血清などを含み得るがこれらに限定されないものであって、一般に、減少した脂肪含量および/または減少した脂肪飽和(fat saturation)の程度を有する組織製品を提供する。またさらに、本発明は、選択された動物により産生されるミルク、およびそれから産生される乳製品を提供することにより、一般の消費者に現在市場に流通しているミルク、乳製品および組織製品の代替物を提供する。
【発明の概要】
【0008】
発明の要約
本発明のDGAT1遺伝子における変異の同定に関する。特に、本発明は、ウシDGAT1遺伝子の第16エクソンに相当するDGAT1遺伝子の領域内における変異の同定、該変異と関連するいくつかのマーカーの同定、ならびに該変異と該変異を含む動物により産生されるミルクおよび組織の質、特に、ミルクおよび組織の脂肪組成、および/または乳量との関連に関する。
【0009】
したがって、第1の局面において、本発明は、DGAT1タンパク質またはその一部をコードするDGAT1ヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、ウシDGAT1遺伝子の第16エクソンに相当するDGAT1ヌクレオチド配列の領域内に変異を有する、核酸分子を提供する。
【0010】
「変異」または「該変異」なる用語は、ウシDGAT1の第16エクソンに相当するDGAT1ヌクレオチド配列の領域内における任意の変異を意味する。該変異は、下記において「本発明の変異」または「本発明の該変異」として示される。
【0011】
1つの態様において、変異は、DGAT1タンパク質の機能を破壊する。
【0012】
さらなる態様において、変異は、全長DGAT1タンパク質の発現を破壊する。
【0013】
またさらなる態様において、変異は、DGAT1タンパク質の酵素活性を破壊する。
【0014】
ある態様において、変異は、DGAT1ヌクレオチド配列中のエクソンスプライシングモチーフを破壊する。
【0015】
ある態様において、DGAT1ヌクレオチド配列は、ウシDGAT1タンパク質をコードし得る。ウシDGAT1タンパク質は、ウシDGAT1遺伝子の第16エクソンによりコードされる1個またはそれ以上のアミノ酸を欠失していてもよい。あるいは、ウシDGAT1タンパク質は、ウシDGAT1遺伝子の第16エクソンによりコードされるすべてのアミノ酸を欠失していてもよい。
【0016】
ある態様において、変異は、GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるヌクレオチド置換である。例えば、変異は、GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるAからCへのヌクレオチド置換であってもよい。
【0017】
本発明はまた、配列番号2または44で示されるヌクレオチド配列を含む、本発明の第1の局面による核酸分子を提供する。
【0018】
第2の局面において、本発明は、配列番号2または44で示されるヌクレオチド配列からなる、単離核酸分子を提供する。
【0019】
第3の局面において、本発明は、DGAT1アミノ酸配列を含む単離ポリペプチドであって、ウシDGAT1遺伝子の第16エクソンによりコードされるアミノ酸に相当するDGAT1アミノ酸配列の領域内に変異を有する、ポリペプチドを提供する。
【0020】
本発明の該局面に関連して、「変異」または「該変異」なる用語は、ウシDGAT1遺伝子の第16エクソンによりコードされるアミノ酸に相当するDGAT1アミノ酸配列の領域内における任意の変異を意味する。該変異は、上記のとおり、本明細書において「本発明の変異」または「本発明の該変異」として示される。
【0021】
1つの態様において、変異は、該ポリペプチドの機能を破壊する。
【0022】
ある態様において、変異は、該ポリペプチドの酵素活性を破壊する。
【0023】
さらなる態様において、変異は、全長DGAT1ポリペプチドの発現を破壊する。
【0024】
ある態様において、ポリペプチドは、ウシDGAT1タンパク質である。例えば、1つの態様において、単離ポリペプチドは、配列番号4または46で示されるアミノ酸配列を含んでいてもよい。
【0025】
ある態様において、ウシDGAT1タンパク質は、ウシDGAT1遺伝子の第16エクソンによりコードされる1個またはそれ以上のアミノ酸を欠失していてもよい。あるいは、ウシDGAT1タンパク質は、ウシDGAT1遺伝子の第16エクソンによりコードされるすべてのアミノ酸を欠失していてもよい。例えば、1つの態様において、単離ポリペプチドは、配列番号47または48で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0026】
第4の局面において、本発明は、配列番号47または48で示されるアミノ酸配列からなる、単離ポリペプチドを提供する。
【0027】
本発明の変異を有する動物は、有利なミルクプロファイルを有するミルクを産生するか、または有利なミルクプロファイルを有するミルクを産生する子孫を生じることができ、該有利なミルクプロファイルは、全乳における全乳脂の割合の減少、全乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全乳脂肪酸含量における飽和脂肪酸の割合の減少、タンパク質収量の増加、全乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、例えば10℃で抽出された乳脂の減少した固体脂肪含量により示される脂肪硬度の減少、乳脂:タンパク質の比率の減少、産生される乳量の増加、およびラクトース収量の増加の1またはそれ以上から選択される。これらの特性の各々は、変異を有さない同じ品種の動物と比較した場合に、増加または減少する。本明細書で示される「有利なミルクプロファイル」は、少なくとも1個の上記特性を有するミルクを意味する。
【0028】
「乳脂」との関連において使用される「脂肪」なる用語は、当分野における通常の意味を有する。例えば、脂肪は、グリセロール骨格と結合した3個の脂肪酸を含むトリグリセリド(またはトリアシルグリセロール)を意味する。乳脂の場合には、トリグリセリドは、全脂肪含量の約98%までを占め、残りは、ホスホリピド、コレステロール、コレステロールエステル、ジグリセリド、モノグリセリド、遊離脂肪酸および脂肪可溶性ビタミンからなる。
【0029】
「脂肪酸」なる用語はまた、当分野において十分に理解されており、それは、鎖の一端においてメチル基を有し、もう一方の端においてカルボン酸を有する、種々の長さの非分岐または分岐炭化水素鎖を有するカルボン酸を意味する。炭素鎖中に単結合のみを有する脂肪酸は、飽和脂肪酸として知られている。対照的に、炭素鎖中に1個の二重結合を有する脂肪酸は、モノ不飽和脂肪酸として知られており、炭素鎖中に2個またはそれ以上の二重結合を有する脂肪酸は、ポリ不飽和脂肪酸として知られている。
【0030】
ある態様において、本発明の変異を有するウシは、ミルクを産生するか、またはミルクを産生する子孫を生じることができ、該ミルクは、約3%未満の全乳脂を有する。他の態様において、本発明の変異を有するウシは、ミルクを産生するか、またはミルクを産生する子孫を生じることができ、該ミルクは、ミルクの全乳脂肪酸含量中、少なくとも約27%の不飽和脂肪酸を有する。他の態様において、本発明の変異を有するウシは、ミルクを産生するか、またはミルクを産生する子孫を生じることができ、該ミルクは、ミルクの全乳脂肪酸含量中、約57%未満の飽和脂肪酸を有する。他の態様において、本発明の変異を有するウシは、ミルクを産生するか、またはミルクを産生する子孫を生じることができ、該ミルクは、ミルクの全乳脂肪酸含量中、少なくとも約1.2%のオメガ-3脂肪酸を有する。他の態様において、本発明の変異を有するウシは、標準的なニュージーランドの農業実施条件下(すなわち、乳牛は、ライグラス/白クローバー牧草を食べている)で、1シーズンに少なくとも6000リットルのミルクを産生するか、またはそれを産生する子孫を生じることができる。
【0031】
本明細書で使用される「約」なる用語は、およそ、またはほぼを意味し、本明細書で示される数値または範囲との関連において、列挙もしくは主張された数値または範囲の±10%を意味する。
【0032】
さらなる局面において、本発明は、本発明の変異を有する動物のミルクから生産される製品に関するものであり、該製品は、乳製品、例えば、クリーム、アイスクリーム、ヨーグルトおよびチーズ、乳飲料(例えば、ミルクシェイクを含む乳飲料、およびヨーグルト飲料)、粉乳、および乳製品に基づくスポーツ栄養補助食品、ならびにプロテインスプリンクルのような食品添加物を含む他の製品、および日々の栄養補助錠剤(daily supplement tablet)を含む栄養補助食品を含む。
【0033】
本発明の変異を有する動物はまた、一般に、それらが組織を産生するか、または組織を産生する子孫を生じることができるという点で有利な組織プロファイルを有し、該有利な組織プロファイルは、全量における全脂肪の割合の減少、全脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全脂肪酸含量における飽和脂肪酸の割合の減少、タンパク質収量の増加、全脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、例えば10℃で抽出された脂肪の減少した固体脂肪含量により示される脂肪硬度の減少、脂肪:タンパク質の比率の減少、および該動物の一般的な増加した成長速度により生じる肉量の増加から選択される1以上の特性を有する。上記のとおり、これらの特性の各々は、変異を有さない同じ品種の動物と比較した場合に、増加または減少する。本明細書で示される「有利な組織プロファイル」は、少なくとも1個の上記特性を有する組織を意味する。実際に、該動物は、脂肪合成を減少させ、その結果、組織、例えば、筋肉組織における脂肪減少を生じ、それにより、該動物は、低脂肪肉を産生することができる。該動物はまた、一般に、増加した成長速度を有する。
【0034】
さらなる局面において、本発明はまた、本発明の変異を有する動物に由来する組織または組織製品に関する。1つの態様において、組織または組織製品は、肉、器官、毛皮、体液、例えば、血液および血清などを含み得るがこれらに限定されない。これらの組織は、一般に、減少した脂肪含量および/または減少した脂肪飽和(fat saturation)の程度を有する。
【0035】
本発明の変異を有する動物はまた、一般に、それらが初乳を産生するか、または初乳を産生する子孫を生じることができるという点で有利な初乳プロファイルを有し、該有利な初乳プロファイルは、全初乳における全初乳脂肪の割合の減少、全初乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全初乳脂肪酸含量における飽和脂肪酸の割合の減少、タンパク質収量の増加、全初乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、初乳脂:タンパク質の比率の減少、および産生される乳量の増加から選択される1以上の特性を有する。これらの特性の各々は、変異を有さない同じ品種の動物と比較した場合に、増加または減少する。本明細書で示される「有利な初乳プロファイル」は、少なくとも1個の上記特性を有する初乳を意味する。
【0036】
ある態様において、本発明の変異を有する動物は、哺乳類、鳥類、および水産養殖種を含み得る。哺乳類は、飼育哺乳類、例えば、ウシ、ヒツジおよびヤギを含むがこれらに限定されない。鳥類は、家禽、例えば、ニワトリ、アヒル、シチメンチョウおよびガチョウを含むがこれらに限定されない。水産養殖種は、魚、例えば、サーモン、マス、キングフィッシュ、バラマンディおよび貝類を含むがこれらに限定されない。1つの態様において、動物は、ウシである。該動物は一般に、該変異を有さない同じ種および品種の動物と比較してより低脂肪の肉およびミルクを産生する。
【0037】
本発明におけるさらに多くの、かつ、別々の局面が存在する。
【0038】
1つのさらなる局面において、本発明は、ウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、ウシがDGAT1タンパク質またはその一部をコードするDGAT1ヌクレオチド配列を有し、かつ、該DGAT1ヌクレオチド配列の第16エクソン内に変異を有する核酸分子を含むか否かを決定することを含む、方法を提供する。
【0039】
またさらなる局面において、本発明は、有利なミルクプロファイルの観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、ウシがDGAT1タンパク質またはその一部をコードするDGAT1ヌクレオチド配列を有し、かつ、該DGAT1ヌクレオチド配列の第16エクソン内に変異を有する核酸分子を含むか否かを決定することを含む、方法を提供する。1つの態様において、有利なミルクプロファイルは、全乳脂含量の減少、全乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、乳脂:タンパク質の比率の減少、および産生される乳量の増加の1またはそれ以上から選択される。
【0040】
またさらなる局面において、本発明は、有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度の観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、ウシがDGAT1タンパク質またはその一部をコードするDGAT1ヌクレオチド配列を有し、かつ、該DGAT1ヌクレオチド配列の第16エクソン内に変異を有する核酸分子を含むか否かを決定することを含む、方法を提供する。1つの態様において、有利な組織プロファイルは、脂肪含量、より好ましくは、不飽和脂肪酸含量、および特には、オメガ-3脂肪酸含量に関する。好ましい態様において、組織は、肉である。
【0041】
ある態様において、ウシの遺伝学的利点は、ウシが本発明の第1の局面による核酸分子を含むか否かを決定することにより同定される。
【0042】
1つの局面において、本発明は、ウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、ウシがDGAT1の第16エクソンによりコードされる1個またはそれ以上のアミノ酸において変異を有するDGAT1アミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか否かを決定することを含む、方法を提供する。
【0043】
さらなる局面において、本発明は、有利なミルクプロファイルの観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、ウシがDGAT1の第16エクソンによりコードされる1個またはそれ以上のアミノ酸において変異を有するDGAT1アミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか否かを決定することを含む、方法を提供する。1つの態様において、有利なミルクプロファイルは、全乳脂含量の減少、全乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、乳脂:タンパク質の比率の減少、および産生される乳量の増加の1またはそれ以上から選択される。
【0044】
またさらなる局面において、本発明は、有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度の観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、ウシがDGAT1の第16エクソンによりコードされる1個またはそれ以上のアミノ酸において変異を有するDGAT1アミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか否かを決定することを含む、方法を提供する。
【0045】
ある態様において、該方法は、ウシが本発明の第3の局面によるポリペプチドを含むか否かを決定することを含む。
【0046】
ある態様において、該方法は、ポリペプチドの発現および/または活性を決定することを含む。
【0047】
またさらなる態様において、該方法はさらに、同定された遺伝学的利点に基づいてウシを選択することを含む。
【0048】
ある態様において、ウシの遺伝学的利点を評価する方法は、インビトロ法である。
【0049】
1つの局面において、本発明は、有利なミルクプロファイルを生じるウシ、または有利なミルクプロファイルを生じる子孫を産生することができるウシを選択するための方法であって、
(i) ウシがDGAT1タンパク質またはその一部をコードするDGAT1ヌクレオチド配列を有し、かつ、該DGAT1ヌクレオチド配列の第16エクソン内に変異を有する核酸分子を含むか否かを決定すること; および
(ii) 該決定に基づいてウシを選択すること
を含む、方法を提供する。1つの態様において、有利なミルクプロファイルは、全乳脂含量の減少、全乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、乳脂:タンパク質の比率の減少、および産生される乳量の増加の1またはそれ以上から選択される。
【0050】
さらなる局面において、本発明は、有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度を生じるウシ、または有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度を生じる子孫を産生することができるウシを選択するための方法であって、
(i) ウシがDGAT1タンパク質またはその一部をコードするDGAT1ヌクレオチド配列を有し、かつ、該DGAT1ヌクレオチド配列の第16エクソン内に変異を有する核酸分子を含むか否かを決定すること; および
(ii) 該決定に基づいてウシを選択すること
を含む、方法を提供する。好ましくは、組織は、肉である。
【0051】
ある態様において、選択法は、ウシが本発明の第1の局面による核酸分子を含むか否かを決定することを含む。
【0052】
1つの局面において、本発明は、有利なミルクプロファイルを生じるウシ、または有利なミルクプロファイルを生じる子孫を産生することができるウシを選択するための方法であって、
(i) ウシがDGAT1の第16エクソンによりコードされる1個またはそれ以上のアミノ酸において変異を有するDGAT1アミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか否かを決定すること; および
(ii) 該決定に基づいてウシを選択すること
を含む、方法を提供する。1つの態様において、有利なミルクプロファイルは、全乳脂含量の減少、全乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、乳脂:タンパク質の比率の減少、および産生される乳量の増加の1またはそれ以上から選択される。
【0053】
さらなる局面において、本発明は、有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度を生じるウシ、または有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度を生じる子孫を産生することができるウシを選択するための方法であって、
(i) ウシがDGAT1の第16エクソンによりコードされる1個またはそれ以上のアミノ酸において変異を有するDGAT1アミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか否かを決定すること; および
(ii) 該決定に基づいてウシを選択すること
を含む、方法を提供する。
【0054】
ある態様において、選択法は、ウシが本発明の第3の局面によるポリペプチドを含むか否かを決定することを含む。
【0055】
ある態様において、選択法は、ポリペプチドの発現および/または活性を決定することを含む。1つの態様において、ポリペプチドの発現は、該ポリペプチドをコードするRNAから決定される。RNAは、本発明の第1の局面による核酸分子から転写され得る。
【0056】
1つの態様において、ポリペプチドの発現および/または活性が、該ポリペプチドの量、該ポリペプチドの非存在、および/またはウシにより発現される野生型DGAT1ポリペプチドの量と比較した場合の該ポリペプチドの量を測定することにより決定される。
【0057】
ある態様において、ウシを選択するための方法は、インビトロ法である。
【0058】
1つの局面において、本発明は、有利なミルクプロファイルの観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、ウシのDGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルを決定することを含む、方法を提供する。
【0059】
1つの態様において、有利なミルクプロファイルは、全乳脂含量の減少、全乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、乳脂:タンパク質の比率の減少、および産生される乳量の増加の1またはそれ以上から選択される。
【0060】
さらなる局面において、本発明は、有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度の観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、ウシのDGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルを決定することを含む、方法を提供する。
【0061】
1つの態様において、DGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルは、該ウシから得られた核酸分子から決定される。1つの態様において、核酸分子は、DNAである。他の態様において、核酸分子は、RNA、例えば、mRNAまたはhnRNAである。ある態様において、該方法は、本発明の第1の局面による核酸分子の存在の有無を決定することを含む。
【0062】
1つの態様において、DGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルは、該ウシから得られたポリペプチドから決定される。1つの態様において、該方法は、本発明の第3の局面によるDGAT1ポリペプチドの存在の有無を決定することを含む。
【0063】
1つの態様において、DGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルは、DGAT1の第16エクソン対立遺伝子との連鎖または連鎖不均衡における多型を用いて決定される。1つの態様において、DGAT1の第16エクソン対立遺伝子との連鎖または連鎖不均衡における多型は、第14染色体上に存在し、ARS-BFGL-NGS-4939、Hapmap52798-ss46526455、Hapmap29758-BTC-003619、BFGL-NGS-18858、Hapmap24717-BTC-002824、およびHapmap24718-BTC-002945からなる群から選択される。
【0064】
さらなる態様において、該方法はさらに、有利なミルクプロファイルと関連する1個またはそれ以上のさらなる遺伝子座における該ウシの対立遺伝子プロファイルを決定することを含む。例えば、1つの態様において、遺伝子座は、乳量および/または含量と関連する1個またはそれ以上の遺伝子中の1個またはそれ以上の多型である。1つの態様において、1個またはそれ以上の遺伝子中の1個またはそれ以上の多型は、脂肪代謝と関連する。さらなる態様において、DGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルおよび1個またはそれ以上のさらなる遺伝子座における対立遺伝子プロファイルは、有利なミルクプロファイルを生じるのに相乗的に作用する。またさらなる態様において、1個またはそれ以上のさらなる遺伝子座は、DGAT1と同じ染色体上に存在する。例えば、多型は、ウシDGAT1タンパク質のアミノ酸232位におけるリシンからアラニンへの置換をコードし得る。あるいは、1個またはそれ以上のさらなる遺伝子座は、DGAT1との異なる染色体上に位置する。
【0065】
他の局面において、本発明は、有利なミルクプロファイルの観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、ウシが:
(i) 野生型DGAT1の生物学的活性を有するポリペプチド(A); または
(ii) DGAT1の第16エクソンによりコードされる1個またはそれ以上のアミノ酸中に変異を有するDGAT1アミノ酸配列を有するポリペプチド(B); または
(iii)ポリペプチドAおよびポリペプチドB
をコードする核酸分子を含むか否かを決定することを含み、ポリペプチドAをコードする核酸分子の非存在およびポリペプチドBをコードする核酸分子の存在、またはポリペプチドAをコードする核酸分子およびポリペプチドBをコードする核酸分子の両方の存在が、有利なミルクプロファイルを示す、方法を提供する。
【0066】
本明細書で使用される「野生型DGAT1」なる用語は、本発明の変異を含まないDGAT1核酸分子またはDGAT1ポリペプチドを意味する。例えば、1つの態様において、野生型DGAT1の生物学的活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子は、GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位にアデニンヌクレオチドを有し得る。そのような核酸分子は、配列番号1または43で示されるヌクレオチド配列を有し得る。したがって、野生型DGAT1の生物学的活性を有するコードされたポリペプチドは、GenBank登録AAL49962/GI:18642598により示されるウシDGAT1タンパク質の435位のアミノ酸においてメチオニンを有し得る。そのようなポリペプチドは、配列番号3または45で示されるアミノ酸配列を有し得る。
【0067】
1つの態様において、有利なミルクプロファイルは、全乳脂含量の減少、全乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、乳脂:タンパク質の比率の減少、および産生される乳量の増加の1またはそれ以上から選択される。
【0068】
他の局面において、本発明は、有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度の観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、ウシが:
(i) 野生型DGAT1の生物学的活性を有するポリペプチド(A); または
(ii) DGAT1の第16エクソンによりコードされる1個またはそれ以上のアミノ酸中に変異を有するDGAT1アミノ酸配列を有するポリペプチド(B); または
(iii)ポリペプチドAおよびポリペプチドB
をコードする核酸分子を含むか否かを決定することを含み、ポリペプチドAをコードする核酸分子の非存在およびポリペプチドBをコードする核酸分子の存在、またはポリペプチドAをコードする核酸分子およびポリペプチドBをコードする核酸分子の両方の存在が、有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度を示す、方法を提供する。
【0069】
1つの態様において、核酸分子は、DNAまたはRNAである。DNAは、本発明の第1の局面による核酸分子であってもよく、またはRNAは、該核酸分子から転写されてもよい。1つの態様において、遺伝学的利点を評価する方法はさらに、ポリペプチドBをコードするRNAの量を確認することを含む。
【0070】
1つの態様において、ポリペプチドAは、配列番号3または45で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0071】
1つの態様において、ポリペプチドBは、本発明の第3の局面によるポリペプチドである。
【0072】
他の局面において、本発明は、有利なミルクプロファイルの観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、ウシが:
(i) 野生型DGAT1の生物学的活性を有するポリペプチド(A); または
(ii) DGAT1の第16エクソンによりコードされる1個またはそれ以上のアミノ酸中に変異を有するDGAT1アミノ酸配列を有するポリペプチド(B); または
(iii)ポリペプチドAおよびポリペプチドB
を含むか否かを決定することを含み、ポリペプチドAの非存在およびポリペプチドBの存在、またはポリペプチドAおよびポリペプチドBの両方の存在が、有利なミルクプロファイルを示す、方法を提供する。
【0073】
1つの態様において、有利なミルクプロファイルは、全乳脂含量の減少、全乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、乳脂:タンパク質の比率の減少、および産生される乳量の増加の1またはそれ以上から選択される。
【0074】
他の局面において、本発明は、有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度の観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、ウシが:
(i) 野生型DGAT1の生物学的活性を有するポリペプチド(A); または
(ii) DGAT1の第16エクソンによりコードされる1個またはそれ以上のアミノ酸中に変異を有するDGAT1アミノ酸配列を有するポリペプチド(B); または
(iii)ポリペプチドAおよびポリペプチドB
を含むか否かを決定することを含み、ポリペプチドAの非存在およびポリペプチドBの存在、またはポリペプチドAおよびポリペプチドBの両方の存在が、有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度を示す、方法を提供する。
【0075】
1つの態様において、該方法はさらに、ポリペプチドBの量および/または活性を確認することを含む。
【0076】
1つの態様において、ポリペプチドAは、配列番号3または45で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0077】
1つの態様において、ポリペプチドBは、本発明の第3の局面によるポリペプチドである。
【0078】
他の局面において、本発明は、ウシのDGAT1遺伝子型を決定するための方法であて、ウシから得られた核酸分子が:
(i) 野生型DGAT1の生物学的活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子(A); または
(ii) DGAT1タンパク質をコードするDGAT1ヌクレオチド配列を有し、かつ、該DGAT1ヌクレオチド配列の第16エクソン内に変異を有する核酸分子(B)
であるか否かを決定することを含み、ウシから得られた核酸分子が異種核酸により汚染されていない、方法を提供する。
【0079】
1つの態様において、核酸分子Bは、本発明の第3の局面によるポリペプチドをコードする。
【0080】
1つの態様において、核酸分子Aは、配列番号1または43で示されるヌクレオチド配列を含み得る。
【0081】
1つの態様において、核酸分子Bは、本発明の第1の局面による核酸分子である。
【0082】
他の局面において、本発明は、ウシのDGAT1遺伝子型を決定するための方法であて、ウシから得られたポリペプチドが:
(i) 野生型DGAT1の生物学的活性を有するポリペプチド(A); または
(ii) DGAT1の第16エクソンによりコードされる1個またはそれ以上のアミノ酸中に変異を有するDGAT1アミノ酸配列を有するポリペプチド(B)
であるか否かを決定することを含み、ウシから得られたポリペプチドが異種ポリペプチドにより汚染されていない、方法を提供する。
【0083】
1つの態様において、該方法は、ポリペプチドの発現および/または活性を決定することを含む。
【0084】
他の態様において、該方法は、ポリペプチドまたはポリペプチド由来のペプチドの質量分析を含む。
【0085】
1つの態様において、ポリペプチドBは、本発明の第3の局面によるポリペプチドである。
【0086】
上記の方法のいくつかは、ウシとの関連において記載されているが、それらは、例えば、限定するものではないが、上記の他の動物において等しく適用され得ることが理解されるであろう。
【0087】
さらなる局面において、本発明は、核酸分子を含むプローブであって、ストリンジェントな条件下で本発明の第1の局面による核酸分子にハイブリダイズする、プローブを含む。本発明はまた、該プローブを含む診断キットに向けられる。
【0088】
本発明はまた、本発明の第1の局面による核酸分子を検出するためのプライマー組成物を含む。1つの態様において、プライマー組成物は、本発明の第1の局面による核酸分子またはその相補体の一部と実質的に相補的な1個またはそれ以上の核酸分子を含む。例えば、プライマー組成物は、配列番号5、6および7で示されるヌクレオチド配列を有する核酸分子を含み得る。該プライマー組成物を含む診断キットもまた想定される。
【0089】
本発明はさらに、本発明の第3の局面によるポリペプチドを検出するための抗体組成物を含む。使用のための指示書と共に該抗体組成物を含む診断キットもまた想定される。
【0090】
本発明はさらに、本発明の第1の局面による核酸分子を検出するための診断キットであって、核酸分子、またはその一部を増幅させるための第1および第2プライマーを含み、該プライマーが変異の上流および下流にある核酸分子のヌクレオチドと各々相補的である、キットを提供する。
【0091】
1つの態様において、診断キットの少なくとも一方のプライマーが、核酸分子の非コード領域と相補的なヌクレオチドを含む。診断キットはまた、変異と相補的な第3のプライマーを含み得る。
【0092】
1つの態様において、プライマーが結合する核酸分子は、本発明の第3の局面によるポリペプチドをコードする。
【0093】
さらなる局面において、本発明は、有利なミルクプロファイルの観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるAヌクレオチドの存在の有無を決定することを含む、方法を提供する。
【0094】
1つの態様において、有利なミルクプロファイルは、全乳脂含量の減少、全乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、乳脂:タンパク質の比率の減少、および産生される乳量の増加の1またはそれ以上から選択される。
【0095】
さらなる局面において、本発明は、有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度の観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるAヌクレオチドの存在の有無を決定することを含む、方法を提供する。
【0096】
さらなる局面において、本発明は、有利なミルクプロファイルの観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるCヌクレオチドの存在の有無を決定することを含む、方法を提供する。
【0097】
1つの態様において、有利なミルクプロファイルは、全乳脂含量の減少、全乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、乳脂:タンパク質の比率の減少、および産生される乳量の増加の1またはそれ以上から選択される。
【0098】
さらなる局面において、本発明は、有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度の観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるCヌクレオチドの存在の有無を決定することを含む、方法を提供する。
【0099】
さらなる局面において、本発明は、有利なミルクプロファイルの観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるCC遺伝子型の存在の有無を決定することを含む、方法を提供する。
【0100】
1つの態様において、有利なミルクプロファイルは、全乳脂含量の減少、全乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、乳脂:タンパク質の比率の減少、および産生される乳量の増加の1またはそれ以上から選択される。
【0101】
さらなる局面において、本発明は、有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度の観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるCC遺伝子型の存在の有無を決定することを含む、方法を提供する。
【0102】
さらなる局面において、本発明は、有利なミルクプロファイルの観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるAC遺伝子型の存在の有無を決定することを含む、方法を提供する。
【0103】
1つの態様において、有利なミルクプロファイルは、全乳脂含量の減少、全乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、乳脂:タンパク質の比率の減少、および産生される乳量の増加の1またはそれ以上から選択される。
【0104】
さらなる局面において、本発明は、有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度の観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるAC遺伝子型の存在の有無を決定することを含む、方法を提供する。
【0105】
他の局面において、本発明は、有利なミルクプロファイルを示す遺伝子型を有するウシを選択するための方法であって、
(i) 上記の局面において示されたとおりに、該ウシのDGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルを決定すること; および
(ii) 該決定に基づいてウシを選択すること
を含む、方法を提供する。例えば、有利なミルクプロファイルは、全乳脂含量の減少、全乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、乳脂:タンパク質の比率の減少、および産生される乳量の増加の1またはそれ以上から選択される。
【0106】
さらなる局面において、本発明は、有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度を示す遺伝子型を有するウシを選択するための方法であって、
(i) 上記の局面において示されたとおりに、該ウシのDGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルを決定すること; および
(ii) 該決定に基づいてウシを選択すること
を含む、方法を提供する。
【0107】
さらなる局面において、本発明は、有利なミルクプロファイルを示すDGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルを有するウシを選択するための方法であって、
(i) GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるCC遺伝子型の非存在を決定すること; および
(ii) 該決定に基づいてウシを選択すること
を含む、方法を提供する。
【0108】
さらなる局面において、本発明は、有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度を示すDGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルを有するウシを選択するための方法であって、
(i) GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるCC遺伝子型の非存在を決定すること; および
(ii) 該決定に基づいてウシを選択すること
を含む、方法を提供する。
【0109】
さらなる局面において、本発明は、有利なミルクプロファイルを示すDGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルを有するウシを選択するための方法であって、
(i) GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるAヌクレオチドの非存在を決定すること; および
(ii) 該決定に基づいてウシを選択すること
を含む、方法を提供する。
【0110】
さらなる局面において、本発明は、有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度を示す遺伝子型を有するウシを選択するための方法であって、
(i) GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるAヌクレオチドの非存在を決定すること; および
(ii) 該決定に基づいてウシを選択すること
を含む、方法を提供する。
【0111】
さらなる局面において、本発明は、有利なミルクプロファイルを示すDGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルを有するウシを選択するための方法であって、
(i) GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるCヌクレオチドの存在を決定すること; および
(ii) 該決定に基づいてウシを選択すること
を含む、方法を提供する。
【0112】
さらなる局面において、本発明は、有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度を示す遺伝子型を有するウシを選択するための方法であって、
(i) GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるCヌクレオチドの存在を決定すること; および
(ii) 該決定に基づいてウシを選択すること
を含む、方法を提供する。
【0113】
さらなる局面において、本発明は、有利なミルクプロファイルを示すDGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルを有するウシを選択するための方法であって、
(i) GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるCC遺伝子型の存在を決定すること; および
(ii) 該決定に基づいてウシを選択すること
を含む、方法を提供する。
【0114】
さらなる局面において、本発明は、有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度を示すDGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルを有するウシを選択するための方法であって、
(i) GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるCC遺伝子型の存在を決定すること; および
(ii) 該決定に基づいてウシを選択すること
を含む、方法を提供する。
【0115】
さらなる局面において、本発明は、有利なミルクプロファイルを示すDGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルを有するウシを選択するための方法であって、
(i) GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるAC遺伝子型の存在を決定すること; および
(ii) 該決定に基づいてウシを選択すること
を含む、方法を提供する。
【0116】
さらなる局面において、本発明は、有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度を示すDGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルを有するウシを選択するための方法であって、
(i) GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるAC遺伝子型の存在を決定すること; および
(ii) 該決定に基づいてウシを選択すること
を含む、方法を提供する。
【0117】
ある態様において、有利なミルクプロファイルは、全乳脂含量の減少、全乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、乳脂:タンパク質の比率の減少、および産生される乳量の増加の1またはそれ以上から選択される。
【0118】
ある態様において、Cヌクレオチド、CC遺伝子型またはAC遺伝子型の存在は、ウシから得られたゲノムDNAもしくはRNA、またはRNAから産生されるcDNAから確認される。
【0119】
ある態様において、Cヌクレオチド、CC遺伝子型またはAC遺伝子型の存在は、GenBank登録AAL49962/GI:18642598により示されるウシDGAT1タンパク質の435位のアミノ酸においてロイシンをコードするコドンの存在を検出することにより確認される。
【0120】
ある態様において、AC遺伝子型の存在は、GenBank登録AAL49962/GI:18642598により示されるウシDGAT1タンパク質の435位のアミノ酸においてメチオニンをコードするコドンの存在を検出することにより確認される。
【0121】
ある態様において、Cヌクレオチド、CC遺伝子型またはAC遺伝子型の存在は、ウシから得られたDGAT1核酸分子の配列決定により確認される。
【0122】
さらなる態様において、決定は、ウシから得られたゲノムDNAもしくはRNA、または該RNAから産生されるcDNAからDGAT1核酸分子を増幅させる工程を含む。
【0123】
1つの態様において、増幅は、PCRにより行われる。
【0124】
1つの態様において、増幅は、配列番号1、2、43および44のうちの1個で示されるヌクレオチド配列または天然で生じる隣接配列であるか、またはそれに相補的である、少なくとも約10個の連続するヌクレオチドを有する核酸分子を含むプライマーの使用により行われる。
【0125】
1つの態様において、少なくとも1個のプライマーは、配列番号5、6および7のうちの1個で示されるヌクレオチド配列を有する核酸分子を含む。
【0126】
ある態様において、決定は、ウシ由来のDGAT1核酸分子の制限酵素消化の工程を含む。該消化は、上記のPCR増幅の産物について行われ得る。
【0127】
ある態様において、Cヌクレオチド、CC遺伝子型またはAC遺伝子型の存在は、ウシから得られたDGAT1核酸分子の質量分析により確認される。
【0128】
ある態様において、Cヌクレオチド、CC遺伝子型またはAC遺伝子型の存在は、1個またはそれ以上のプローブのハイブリダイゼーションにより確認され、該1個またはそれ以上のプローブが配列番号1、2、43および44のうちの1個で示されるヌクレオチド配列の一部であるか、またはそれに相補的である、ヌクレオチド配列を有する核酸分子を含む。
【0129】
1つの態様において、1個またはそれ以上のプローブは、配列番号1、2、43および44のうちの1個で示されるヌクレオチド配列であるか、またはそれに相補的である、少なくとも約10個の連続するヌクレオチドを有する核酸分子を含む。
【0130】
ある態様において、1個またはそれ以上のプローブは、GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位に対応するAヌクレオチドまたはCヌクレオチドを有する核酸分子を含む。
【0131】
ある態様において、Cヌクレオチド、CC遺伝子型またはAC遺伝子型の存在は、ウシから得られたDGAT1ポリペプチドの解析により確認される。
【0132】
1つの態様において、AC遺伝子型の存在は、GenBank登録AAL49962/GI:18642598により示されるウシDGAT1タンパク質の435位のアミノ酸においてメチオニンの存在を検出することにより確認される。
【0133】
さらなる態様において、AC遺伝子型の存在は、GenBank登録AAL49962/GI:18642598により示されるウシDGAT1タンパク質の435位のアミノ酸においてロイシンの存在を検出することにより確認される。
【0134】
またさらなる局面において、本発明は、ウシの群を選択する方法であって、
(i) 本発明の上記の局面による方法を用いて複数のウシを選択すること; および
(ii) 選択されたウシを隔離および収集し、群を形成させること
を含む、方法を提供する。1つの態様において、本発明はさらに、該方法により選択されたウシ群を提供する。
【0135】
さらなる局面において、本発明は、DGAT1タンパク質またはその一部をコードするDGAT1ヌクレオチド配列を含む核酸分子を含むトランスジェニック非ヒト動物であって、該核酸分子がウシDGAT1遺伝子の第16エクソンに相当するDGAT1ヌクレオチド配列の領域内に変異を有する、動物を含み得る遺伝学的に修飾された動物を提供する。
【0136】
1つの態様において、トランスジェニック非ヒト動物は、本発明の第1の局面による核酸分子を含む。本発明はまた、非ヒト動物から産生されるクローンを提供する。トランスジェニック非ヒト動物を作製する技術ならびにトランスジェニック動物のクローニングおよび繁殖のための技術は、当該分野において既知であり、下記において詳述される。
【0137】
さらなる局面において、本発明は、DGAT1タンパク質またはその一部をコードするDGAT1ヌクレオチド配列を含む核酸分子を含むトランスジェニックウシであって、該核酸分子がウシDGAT1遺伝子の第16エクソンに相当するDGAT1ヌクレオチド配列の領域内に変異を有する、ウシを提供する。1つの態様において、トランスジェニックウシは、本発明の第1の局面による核酸分子を含む。
【0138】
1つの態様において、本発明は、上記のトランスジェニック動物またはトランスジェニックウシから産生されるクローンを提供する。
【0139】
さらなる局面において、本発明は、上記の選択法により選択されたウシまたはトランスジェニックウシを提供する。1つの態様において、本発明は、該ウシから産生されるクローンを提供する。
【0140】
ある態様において、トランスジェニック非ヒト動物、トランスジェニックウシまたは選択されたウシは、ミルクを産生するか、またはミルクを産生する子孫を生じることが可能であり、変異を有さない同じ品種の動物またはウシと比較した場合に、全乳における全乳脂の割合の減少、全乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全乳脂肪酸含量における飽和脂肪酸の割合の減少、タンパク質収量の増加、全乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、10℃で抽出された乳脂の減少した固体脂肪含量により示される脂肪硬度の減少、乳脂:タンパク質の比率の減少、産生される乳量の増加、およびラクトース収量の増加からなる群から選択される1個またはそれ以上の特性を有する。
【0141】
1つの態様において、ウシまたはトランスジェニックウシは、標準的なニュージーランドの農業実施条件下で(すなわち、乳牛は、ライグラス/白クローバー牧草を食べている)、1シーズンに少なくとも6000リットルのミルクを産生する。ある態様において、ウシまたはトランスジェニックウシは、約3%未満の全乳脂を有するミルクを産生する。ある態様において、ウシまたはトランスジェニックウシは、全乳脂肪酸含量中、少なくとも約27%の不飽和脂肪酸を有するミルクを産生する。ある態様において、ウシまたはトランスジェニックウシは、全乳脂肪酸含量中、約57%未満の飽和脂肪酸を有するミルクを産生する。ある態様において、ウシまたはトランスジェニックウシは、全乳脂肪酸含量中、少なくとも約1.2%のオメガ-3脂肪酸を有するミルクを産生する。
【0142】
さらなる局面において、本発明は、上記のトランスジェニック非ヒト動物、トランスジェニックウシまたはウシにより産生されるミルクを提供する。
【0143】
またさらなる局面において、本発明は、上記のミルクから生産される製品を提供する。例えば、該製品は、アイスクリーム、ヨーグルト、チーズ、乳飲料、ミルク飲料、ミルクシェイク、ヨーグルト飲料、粉乳、乳製品に基づくスポーツ栄養補助食品、食品添加物、プロテインスプリンクル(protein sprinkle)、栄養補助食品および日々の栄養補助錠剤(daily supplement tablet)からなる群から選択され得る。
【0144】
またさらなる局面において、本発明は、本発明の上記の局面によるトランスジェニック非ヒト動物、トランスジェニックウシまたはウシにより産生される精液または卵子を提供する。
【0145】
ある態様において、トランスジェニック非ヒト動物、トランスジェニックウシまたは選択されたウシは、組織を産生するか、または組織を産生する子孫を生じることが可能であり、変異を有さない同じ品種の動物またはウシと比較した場合に、全量における全脂肪の割合の減少、全脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全脂肪酸含量における飽和脂肪酸の割合の減少、タンパク質収量の増加、全脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、10℃で抽出された乳脂の減少した固体脂肪含量により示される脂肪硬度の減少、脂肪:タンパク質の比率の減少、および動物の一般的な増加した成長速度により生じる肉量の増加からなる群から選択される1個またはそれ以上の特性を有する。
【0146】
さらなる局面において、本発明は、上記のトランスジェニック非ヒト動物、トランスジェニックウシまたはウシに由来する組織または組織製品を提供する。1つの態様において、組織または組織製品は、肉、器官、毛皮、血液および血清からなる群から選択される。
【0147】
ある態様において、トランスジェニック非ヒト動物、トランスジェニックウシまたは選択されたウシは、初乳を産生するか、または初乳を産生する子孫を生じることが可能であり、全初乳における全初乳脂の割合の減少、全初乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全初乳脂肪酸含量における飽和脂肪酸の割合の減少、タンパク質収量の増加、全初乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、初乳脂:タンパク質の比率の減少、および産生される初乳脂肪含量の増加からなる群から選択される1個またはそれ以上の特性を有する。
【0148】
さらなる局面において、本発明は、トランスジェニック非ヒト動物を作製するためのDGAT1タンパク質またはその一部をコードするDGAT1ヌクレオチド配列を含む核酸分子の使用であって、該核酸分子がウシDGAT1遺伝子の第16エクソンに相当するDGAT1ヌクレオチド配列の領域内に変異を有する、使用を提供する。1つの態様において、該核酸分子は、本発明の第1の局面による核酸分子である。
【0149】
本明細書において使用される「〜を含む」なる用語は、「少なくとも一部は、〜からなる」を意味する。「含む」なる用語を包含する本明細書における各記載を解釈する場合に、該用語で始まる(prefaced)もの以外の特徴もまた存在し得る。「含む」および「ふくむ」のような関連する用語は、同様に解釈されるべきである。
【0150】
本明細書において特許明細書、他の外部文献、または他の情報源が参照される場合には、これは一般に、本発明の特徴を考察するための文脈を提供することを目的とするものである。他に特別な記載がなければ、該外部文献に対する参照は、あらゆる権限において該文献または該情報源が先行技術であるか、または当分野における通常の技術常識を部分的に形成することの了解として理解されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0151】
発明の詳細な説明
本発明は、部分的に、初めてウシDGAT1遺伝子の第16エクソンに相当する領域におけるジアシルグリセロールO-アシルトランスフェラーゼホモログ1 (マウス) (DGAT1)遺伝子中に変異を同定したことに基づくものである。したがって、本発明は、単離核酸分子であって、DGAT1タンパク質またはその一部をコードするDGAT1ヌクレオチド配列を含み、ウシDGAT1遺伝子の第16エクソンに相当するDGAT1ヌクレオチド配列の領域内に変異を有する核酸分子を提供する。
【0152】
該単離核酸分子は、DGAT1ヌクレオチド配列の全部または一部を含むゲノムDNAであり得る。例えば、該核酸分子は、関連する5'および3'非翻訳領域を含むか、または含まずに、DGAT1ヌクレオチド配列の全体のコード領域および非コード領域を含むゲノムDNAであり得る。あるいは、該核酸分子は、隣接イントロン配列を含むか、または含まずに、第16エクソンを含むDGAT1ヌクレオチド配列の一部のみを含むゲノムDNA、またはその同等体であり得る。
【0153】
該単離核酸分子はまた、DGAT1タンパク質の全部または一部をコードするRNA、例えば、mRNAもしくはhnRNAであり得る。当業者により理解されるとおり、該核酸分子はまた、mRNAから産生されるcDNAを含み得る。一般にSambrook J et al., (2001), Molecular cloning: a laboratory manual. Third Edition. (Cold Spring Harbour Laboratory Press, New York)において記載された当該分野で既知の標準的な技術は、mRNAからcDNAを産生するために使用され得る。これは、一般に、DGAT1 mRNAを含む核酸サンプルからの逆転写およびそれに続く逆転写産物のPCR増幅を含む。
【0154】
ある態様において、本発明の変異は、DGAT1タンパク質の機能および/または発現を破壊する。機能について、「破壊」なる用語は、タンパク質の機能レベルが、野生型DGAT1タンパク質の機能レベルと比較した場合に、減少または低下することを意味する。発現について、「破壊」なる用語は、全長変異タンパク質の発現レベルが、野生型DGAT1タンパク質の発現レベルと比較した場合に、減少または低下することを意味する。1つの態様において、変異は、DGAT1タンパク質の酵素活性を破壊する。
【0155】
DGAT1タンパク質の機能、発現および/または活性の破壊は、当該分野で既知の多くの方法により測定することができる。例えば、DGAT1は、ジアシルグリセロールが脂肪酸アシルCoAと共有結合し、脂肪の主要な構成要素としてトリグリセリドを形成する反応を触媒する酵素をコードする。したがって、DGAT1タンパク質の酵素活性の破壊は、オレオイル-CoA (脂肪酸アシルCoA)のトリグリセリド中への組み込みが減少または低下する程度を測定することにより決定され得る。
【0156】
本発明の変異は、配列番号1または43において示されるとおり、野生型DGAT1配列のヌクレオチド配列から該配列を変える第16エクソン内におけるヌクレオチド置換、ヌクレオチド欠失、ヌクレオチド挿入、または任意の他の変異を含み得る。1つの態様において、該変異は、DGAT1の第16エクソン内に存在するエクソンスプライシングモチーフを破壊するヌクレオチド置換である。例えば、本発明者等は、GenBank登録AY065621/GI:18642597(引用により本明細書の一部とする)により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるアデニン(A)からシトシン(C)へのヌクレオチド置換を見出した。これは、野生型ウシDGAT1遺伝子のコード配列の1303位のヌクレオチドに相当する。該変異の位置は、本明細書において、GenBank登録AY065621/GI:18642597のヌクレオチド配列について示される。したがって、該変異は、本明細書において「A8078C」または「8078C」として示され得る。
【0157】
A8078Cヌクレオチド置換は、転写の間に第16エクソンのスプライシングを増強することが予測される推定上のエクソンスプライシングモチーフ(ATGATG)を既定するDGAT1ヌクレオチド配列の部分において生じる。8078位におけるAヌクレオチドのCヌクレオチドでの置換は、該スプライシングモチーフのヌクレオチド組成をCTGATGに変えて、その結果、予測されるスプライシングエンハンサー機能を破壊する。実際に、第16エクソンは、転写の間にスプライスアウト(spliced out)され、その結果、DGAT1 mRNA核酸分子に組み込まれない。したがって、第16エクソンによりコードされる21個のアミノ酸を欠失したDGAT1ポリペプチドが翻訳される。
【0158】
コードされたDGAT1ポリペプチドの機能、活性および/または発現を破壊する第16エクソン内の他の変異(エクソンスプライシングモチーフにおける変異を含む)もまた本発明に包含されることが当業者により予測され、理解されるであろう。さらに、第16エクソンの外側に生じるが、第16エクソンの1個またはそれ以上のアミノ酸の欠失を生じ、コードされたDGAT1ポリペプチドの機能、活性および/または発現を破壊する他の変異もまた本発明に包含される。したがって、本発明は、本明細書において例示されたA8078Cヌクレオチド変異に限定されない。A8078Cヌクレオチド変異は、単に、DGAT1機能について第16エクソンによりコードされるアミノ酸の重要性を明らかにする。
【0159】
したがって、本発明は、DGAT1遺伝子の第16エクソンによりコードされる1個またはそれ以上のアミノ酸を欠失したDGAT1ポリペプチドをコードする単離核酸分子を包含する。A8078Cヌクレオチド変異について、単離核酸は、第16エクソンによりコードされる全21個のアミノ酸を欠失したDGAT1ポリペプチドをコードする。該核酸分子のヌクレオチド配列は、配列番号2または44で示される。
【0160】
RNAプロセッシングの間に第16エクソンが切除されない場合には、A8078Cヌクレオチド変異を有する核酸分子は、DGAT1の435位においてメチオニンからロイシンへのアミノ酸置換を有するDGAT1ポリペプチドをコードする。
【0161】
A8078C変異は、もともと、ホルスタイン(Holstein-Friesian)種であるウシおよび次代のその血統において検出された。本発明の該変異、またはその任意の他の変異が、ホルスタイン種または一般的なウシ種に限定されることが意図されないことは、当業者には明らかである。本発明の変異は、下記において詳述されるとおり、交雑技術によるか、またはトランスジェニクスのような他の方法により、他の動物または異なる種のウシにおいてさえも導入され得る。したがって、本発明の変異は、例えば、ジャージー(Jersey)、ガンジー(Guernsey)、ブラウンスイス(Brown Swiss)、ショートホーン(Milking Shorthorn)などのような他の乳牛においても有用であり得る。本発明の変異はまた、当分野において既知であるように、二重の目的(例えば、Brown Swissおよび肉用種、例えば、Bos taurus種の例として示されるAngus and Hereford、Bos indicus種の例として示されるBrahman and Zebu、および動物生産において用いられるBos genusの任意の他の種)において有用であり得る。
【0162】
本発明はまた、DGAT1アミノ酸配列を含む単離ポリペプチドであって、DGAT1遺伝子の第16エクソンによりコードされるアミノ酸に相当するDGAT1アミノ酸配列の領域内に変異を有する、ポリペプチドを提供する。DGAT1ポリペプチドにおける変異は、該ポリペプチドの機能、発現および/または酵素活性を破壊する。該文脈において「破壊」なる用語は、上記と同じ意味を有する。変異は、配列番号3または45において示されるとおり、野生型DGAT1配列のアミノ酸配列から該配列を変える第16エクソンによりコードされるアミノ酸内のアミノ酸置換、アミノ酸欠失、アミノ酸挿入、または任意の他の変異を含み得る。1つの態様において、変異は、GenBank登録AAL49962/GI:18642598DGAT1(引用により本明細書の一部とする)により示されるウシDGAT1タンパク質の435位におけるメチオニンをコードするコドン内にある。該コドンにおけるA8078Cヌクレオチド変異は、DGAT1ポリペプチドの435位においてメチオニン(M)からロイシン(L)へのアミノ酸置換を生じ、その結果、配列番号4または46で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドを生じることが予測される。該変異は、本明細書においてM435Lとして示される。しかしながら、上記のとおり、A8078Cヌクレオチド変異は、推定上のエクソンスプライシングモチーフを破壊し、その結果、多くの場合において第16エクソンがRNAプロセッシングの間にスプライスアウトされるので、第16エクソンによりコードされる全21個のアミノ酸は、対応するDGAT1ポリペプチドにおいて欠失している。したがって、本発明の1つの態様において、単離ポリペプチドは、配列番号47または48に示されたアミノ酸配列を含む。該変異は、本明細書においてΔ418-438またはΔ16として示される。
【0163】
本発明の核酸分子およびポリペプチドの単離方法は、当該分野において既知であり、一般に、Sambrook J et al., 2001 (上記)において記載されている。本発明の核酸分子およびポリペプチドは、一般に、動物から得られたサンプルから単離される。例えば、該サンプルは、動物のミルク、組織、血液、血清、血漿、脳脊髄液、尿、精液、毛髪または唾液から取得され得る。組織サンプルは、細胞スクレーピング(cell scrapings)および生検技術のような標準的な技術を用いて取得してもよい。
【0164】
ウシDGAT1遺伝子の多型、特に、DGAT1遺伝子の多型から生じるDGAT1におけるK232Aアミノ酸置換の存在は、以前に、増加したミルク収量および改変されたミルク組成と関連していた。多型は、DGAT1コード配列の694位および695位のヌクレオチドにおけるAAからGCへのジヌクレオチド置換である。該多型を含むウシは、減少した乳脂の割合を含むミルク、減少した乳脂収量およびミルクタンパク質割合、ならびに増加したミルク量およびミルクタンパク質収量を有するミルクを産生する(WO02/36824を参照のこと)。
【0165】
DGAT1は、トリグリセリド合成に関与しており、ウシにおけるトリグリセリド合成の変化は、ミルク中のトリグリセリドレベルならびに組織の脂肪含量および/または組成に影響を与えることが予期される(Wang JY et al., 2007, Lipids in Health and Disease 6:2-10; White SN et al., 2007, J. Anim. Sci. 85:1-10)。
【0166】
本発明の変異は、該変異を含む動物における有利なミルクプロファイルおよび/または有利な組織プロファイルおよび/または増加した成長速度と関連することが見出された。本明細書で使用される「動物」なる用語は、哺乳類、鳥類、および水産養殖種を含む。哺乳類は、飼育哺乳類、例えば、ウシ、ヒツジおよびヤギを含むがこれらに限定されない。鳥類は、家禽、例えば、ニワトリ、アヒル、シチメンチョウおよびガチョウを含むがこれらに限定されない。水産養殖種は、魚、例えば、サーモン、マス、キングフィッシュ、バラマンディおよび貝類を含むがこれらに限定されない。好ましい態様において、動物は、ウシである。
【0167】
本明細書において使用される「有利なミルクプロファイル」なる用語は、全乳における全乳脂の割合の減少、全乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全乳脂肪酸含量における飽和脂肪酸の割合の減少、タンパク質収量の増加、全乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、例えば10℃で抽出された乳脂の減少した固体脂肪含量により示される脂肪硬度の減少、乳脂:タンパク質の比率の減少、産生される乳量の増加、初乳収量の増加、およびラクトース収量の増加からなる群から選択される少なくとも1個またはそれ以上の特性を有する動物から得られるミルクを意味する。これらの特性の各々は、変異を有さない同じ品種の動物と比較した場合に、増加または減少する。
【0168】
本発明の変異は、脂肪酸とグリセロール骨格との結合を触媒する野生型DGAT1の機能を破壊することにより、例えばミルク中の遊離脂肪酸レベルに影響を与え得る。DGAT1は、脂肪酸のグリセロール骨格の第3位への結合を触媒する。C4:0は、一般に、トリグリセリドの第3位に結合し、したがって、通常、DGAT1により触媒される(コロンの前の数は、脂肪酸鎖中の炭素原子の数を示し、一方で、コロンの後の数は、鎖中の二重結合の数を示す)。C4:0がDGAT1により第3位に結合しない場合に、細胞プール中のC4:0のレベルは増大し、トリグリセリドの1位または2位に結合するC4:0の増加を生じ得る。
【0169】
ヒトミルクトリグリセリドは、主に、グリセロール骨格の2位にC16:0を含み、C16:0を含む2-モノグリセリドが1および3位から放出されたC16:0遊離脂肪酸よりも可溶性であるので、それは、1,3リパーゼによる脂肪分解についてより改良された溶解度を提供する。牛乳において、例えば、C16:0は、一般に、グリセロール骨格の1/3位と2位において約1:1の比率で見出される。本発明の変異を有するウシから生産される粉乳は、野生型DGAT1のみを有するウシから生産される粉乳よりも脂肪分解においてより可溶性であることが見出され得る。これは、おそらくグリセロール骨格の2位においてC16:0を有するトリグリセリドの増加のためである。2位においてC12:0およびC14:0を有するトリグリセリドの増加もまた予期される。グリセロール骨格の2位においてC16:0およびC14:0を有するトリグリセリドを含む牛乳は、よりヒトのミルクに近いものであり、したがって、ヒト乳児を含む消費者に有益であり得る。
【0170】
本発明の変異を有するウシを含む動物により産生されたミルクは、一般的な乳タンパク質組成を維持する。したがって、タンパク質ストリーム(protein stream)を加工するためのさらなる手順は必要とされない。
【0171】
本発明の変異を有するウシにより産生される全乳脂含量は減少するが、タンパク質含量は通常のまま維持されるので、乳脂:タンパク質比率の遷移、すなわち、本発明の変異を有する(例えば、A8078C変異を含む)ウシにおける乳脂:タンパク質の比率の実質的な減少が存在する。
【0172】
本発明の変異を有する動物に由来する乳脂はまた、増加した濃度の脂肪可溶化合物、例えば、ビタミンおよびフレーバーを有する。これは、脂肪:脂肪可溶性化合物のより低い比率が存在するので、より強力なフレーバーを生じ得る。興味深いことに、牧草を餌とするウシに由来するミルクの一般に不愉快なフレーバーは、本発明により包含されるA8078C変異を有するウシに由来するミルクにおいて希釈されている。
【0173】
本発明の変異を有する動物に由来する乳脂はまた、減少した脂肪硬度を有する。これは、10℃で抽出された乳脂の減少した固体脂肪含量により示される。
【0174】
本発明はまた、本発明の変異を有する動物のミルクから生産される製品に関する。該製品は、乳製品、例えば、アイスクリーム、ヨーグルトおよびチーズ、乳飲料、例えば、ミルクシェイクを含むミルク飲料、およびヨーグルト飲料、粉乳、乳製品に基づくスポーツ栄養補助食品、ならびに食品添加物、例えば、プロテインスプリンクルおよび日々の栄養補助錠剤(daily supplement tablet)を含む栄養補助食品を含むがこれらに限定されない。
【0175】
より柔らかい乳脂製品が、野生型DGAT1のみを有する動物と比較した場合に本発明の変異を有する動物から得られるミルクから生産され得る。乳脂のコンシステンシー(consistency)およびテクスチャーは、野生型DGAT1のみを有する動物に由来する乳脂よりも植物油のそれにより近い。
【0176】
本発明の変異を有する動物から得られた乳脂は、野生型DGAT1のみを有する動物に由来する乳脂よりも低い溶融温度を有する。本発明の変異を有する動物から得られた乳脂を、より高い溶融温度の脂肪と混合して、該より高い溶融温度からの溶融温度を低下させ得る(すなわち、中間の溶融温度まで)。脂肪のテクスチャーは、該脂肪自体のテクスチャーから改良(より柔軟に)される。
【0177】
本発明の変異を有する動物から得られるより柔らかい乳脂製品は、「乳(dairy)」フレーバーおよびそのテクスチャーを保持し、および/またはそれを増強する。技術的な方法または合成法により製造されたより柔らかい乳脂製品は、乳脂から直接製造された該製品の「乳製品」フレーバーおよびテクスチャーを失う傾向がある。より柔らかい乳脂製品は、例えば、コテッジチーズ、クリームチーズ、ソフトチーズ、およびホイップクリームを含む。例えば、8078C変異を有する動物から得られるミルクから製造されるバターは、野生型DGAT1のみを有するウシに由来するバターよりも低い温度でスプレッド可能であることが示されている。
【0178】
本発明の変異を有する動物から産生されるミルクから製造され得る製品は、変異を有する動物により産生されるミルク中の脂肪の割合の減少のために、一般に、野生型DGAT1のみを有する動物由来のミルクから製造される製品よりも低い脂肪含量を有し得る。したがって、低脂肪乳は、製造工程において乳脂を除去する工程を必要とすることなく生産され得る。同様に、他の低脂肪乳製品および/または低飽和脂肪製品もまた製造され得る。ヒトによる低脂肪および/または低飽和脂肪食品の消費は、高脂肪食と関連する健康状態、例えば、冠動脈性(または虚血性)心疾患を含む心臓血管疾患、脳血管疾患、高血圧、心不全およびリウマチ性心疾患を回避し得る。
【0179】
本発明の徒当然変異を有する動物から産生されるミルクの脂肪含量はさらに、動物に油含有餌、例えば、種子または牧草を含む餌を与えることにより低下し得る。これはまた、増加したレベルの不飽和脂肪酸を生じ得る。あるいは、またはさらに、乳脂合成および飽和を抑制するために、動物に共役リノール酸(CLA)が投与され得る。
【0180】
本発明の1つの態様において、製品(上記のとおり)は、本発明の変異を有し、DGAT1の同じ対立遺伝子内にK232Aアミノ酸置換を有する動物から得られるミルクから製造され得る。例えば、本発明のA8078C変異を有するウシおよび該ウシの低乳脂娘の1つの染色体は、第16エクソンによりコードされる21個のアミノ酸を欠失し、232A置換を含むDGAT1ポリペプチドをコードする対立遺伝子を有することが示されている。
【0181】
1つの態様において、A8078Cヌクレオチド変異を有するウシは、ミルクにおける約3%未満の全乳脂、ミルクの全乳脂肪酸含量における少なくとも約27%の不飽和脂肪酸、ミルクの全乳脂肪酸含量における少なくとも約57%の飽和脂肪酸、および/またはミルクの全乳脂肪酸含量における少なくとも約1.2%のオメガ-3脂肪酸を有するミルクを産生するか、または該ミルクを産生する子孫を生じることが可能である。またさらに、A8078Cヌクレオチド変異を有するウシは、ニュージーランドの牧草に基づく農業と同様の管理レジメン下(すなわち、乳牛は、ライグラス/白クローバー牧草を食べている)で、1シーズンに約6000リットルのミルクを産生するか、またはそれを産生する子孫を生じることができる。異なる農業システム下で飼育されたA8078Cヌクレオチド変異を有するウシにより、より高い生産量を達成することが可能である。
【0182】
本明細書で使用される「有利な組織プロファイル」なる用語は、全量における全脂肪の割合の減少、全脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全脂肪酸含量における飽和脂肪酸の割合の減少、タンパク質収量の増加、全脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、10℃で抽出された乳脂の減少した固体脂肪含量により示される脂肪硬度の減少、脂肪:タンパク質の比率の減少、および動物の一般的な増加した成長速度によりもたらされる肉量の増加からなる群から選択される1個またはそれ以上の特性を有する動物から得られる組織を意味する。
【0183】
本発明はまた、本発明の変異を有する動物に由来する組織および組織製品に関するものであり、肉、器官、毛皮、体液、例えば、血液および血清などを含むがこれらに限定されない。これらの組織は一般に、減少した脂肪含量および/または減少した脂肪飽和(fat saturation)の程度を有する。
【0184】
本明細書で使用される「増加した成長速度」なる用語は、経時的な体重またはサイズ増加の速度、規定の標的体重またはサイズに到達するのに必要とされる時間、および/または性的成熟に到達する時間を意味する。
【0185】
本発明はまた、本発明の核酸分子およびポリペプチドの変異型を包含する。本明細書で使用される「変異型」なる用語は、特定の同定された配列とは異なるが、それらの配列の機能的等価性を保存するヌクレオチドまたはアミノ酸配列をそれぞれ有する核酸分子またはポリペプチドを意味する。例えば、変異型核酸分子は、本発明の配列とは異なるが、遺伝学的コードの縮重の結果として、本発明の核酸分子によりコードされる変異体ポリペプチドと同様の活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子を包含し得る。ポリペプチドのアミノ酸配列を変化させないヌクレオチド配列変化は、「サイレント変異」である。ATG (メチオニン)およびTGG (トリプトファン)を除いて、同じアミノ酸についての他のコドンは、例えば特定の宿主生物におけるコドン発現を最適化するために、当分野において既知の技術により変更され得る。
【0186】
コードされたポリペプチド配列における1個またはそれ以上のアミノ酸の保存的置換を生じるヌクレオチド配列変化はまた、本発明に包含される。表現型においてサイレントなアミノ酸置換を作製する方法は、当業者に既知である(例えば、Bowie et al., 1990, Science 247: 1306を参照のこと)。
【0187】
本発明の変異の同定が、有利なミルクプロファイル(より特には、乳脂組成)、有利な組織プロファイルおよび/または増加した成長速度の観点で、動物、例えば、ウシの遺伝学的利点を評価する方法を可能にすることが理解されるであろう。
【0188】
本明細書で使用される「遺伝学的利点」は、特定の表現型特性についてのすべての陽性および陰性の遺伝学的効果の合計を意味する。推定の遺伝学的利点は、一般には、特定の表現型特性についての雌ウシまたは雄ウシの推定育種価として示される。
【0189】
本発明の変異の同定はまた、有利なミルクプロファイル、有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度を生じる動物、例えば、ウシを選択する方法を可能にする。次いで、これは、適当な乳製品の製造を目的とした望まれる乳脂組成を有するミルクの選択を可能にし得る。例えば、より低い割合の全乳脂およびより高い割合の不飽和脂肪酸を有するミルクを産生することについて選択されたウシにより産生されるミルクは、低脂肪ミルク製品、例えば、低脂肪ヨーグルトの製造に向けられ得る。より低い割合の飽和脂肪酸および/またはより高い割合の不飽和脂肪酸を有するミルクを産生することについて選択されたウシにより産生されるミルクはまた、伝統的に高脂肪であることが既知の製品、例えば、アイスクリームの製造に向けられ得て、より高い割合の飽和脂肪を有する製品に対するより健康的な代替物を提供し得る。
【0190】
本発明の変異の同定はまた、本発明の変異について動物のDGAT1遺伝子型を決定するための方法を可能にする。
【0191】
上記の方法は、ウシが、上記のとおり本発明の変異を有するDGAT1核酸分子またはポリペプチドを含むか否かを決定することを含む。あるいは、動物のDGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルが決定されてもよい。該方法を行うための手段は、当分野において既知である。下記の段落は、一部、ウシにおいて本発明者等により同定されたA8078C DGAT1ヌクレオチド変異に関して、例を提供する。
【0192】
1 本発明の変異を有する核酸分子およびポリペプチドの同定
動物が本発明の変異を有するDGAT1核酸分子またはポリペプチドを含むか否かを決定するための当分野において既知である多くの標準的な方法が存在する。例えば、該方法は、動物から得られた核酸分子(例えば、DNA)を配列決定する工程を含み得る。したがって、本発明の1つの態様において、動物が本発明の変異を有する核酸分子を含むか否かを決定する工程は、動物から得られた核酸分子を配列決定する工程を含む。ヌクレオチドの配列決定法は、当業者に既知である。
【0193】
特定の核酸分子が動物内に存在するか否かを決定するための他の標準的な方法の例は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR) (Mullis et al., Eds. 1994. The Polymerase Chain Reaction, Birkhauser)である。本発明の変異に隣接するか、および/またはそれを組み込んだオリゴヌクレオチドプライマーが、試験下の動物から得られたサンプル中の核酸分子を増幅させるために使用され得る。核酸分子は、ゲノムDNA、RNA (例えば、mRNAもしくはhnRNA)、またはmRNAから産生されるcDNAから選択され得る(一般的なcDNA作製法について上記されたSambrook J et al., 2001を参照のこと)。
【0194】
オリゴヌクレオチドプライマーは、DGAT1ヌクレオチド配列と十分に相補的であり、増幅されることが意図されるDGAT1核酸分子と選択的にハイブリダイズするのに十分の長さを有し、その結果、PCRにおいて通常使用されるインビトロ条件下においてDNA合成を誘導する。1つの態様において、PCR増幅工程において使用されるプライマーの1つは、DGAT1の変異配列のみを認識し、それに結合し得る。したがって、PCR産物の存在は、核酸分子がサンプル中に存在し、すなわち、該動物が変異を有することを示す。他の例において、PCR増幅工程は、変異に隣接するプライマーを用いてもよく、例えば、一方のプライマーは、DGAT1の第15エクソンにおける配列に結合し、他方は、第17エクソンにおける配列に結合し得る。次いで、cDNA (mRNAから産生される)からの増幅は、第16エクソンのオルタナティブスプライシングを生じる変異、例えば、本発明により包含されるA8078Cヌクレオチド変異を同定し得る。予測より小さいサイズのPCR産物は、DGAT1コード配列の欠失を示し、予測よりも大きいサイズのPCR産物は、挿入変異を示す。
【0195】
本発明のPCRに基づく方法における使用に適当なプライマーは、配列番号1、2、43および44のうちの1個で示されるヌクレオチド配列または天然で生じるその隣接配列であるか、またはそれに相補的である、少なくとも約10個の連続するヌクレオチドを含む。上記の方法のために使用され得るPCRプライマーの例は、本明細書において配列番号5、6および7として示される。
【0196】
他のPCRに基づく方法は、逆転写酵素PCRに基づく応用を含み、それは、DGAT1の転写を破壊し、すなわち、その発現を破壊する本発明の変異を検出するために使用され得る。例えば、mRNAの形態での核酸分子を試験動物から得て、逆転写させる定量的RT-PCRが使用され得る。次いで、リアルタイムPCRは、DGAT1および同じサンプル中で発現する他の(コントロール)遺伝子に特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いて行われ、DGAT1特異的転写産物のレベルが、コントロール遺伝子のレベルに対して標準化され、DGAT1の発現値が確立される。得られた値は、野生型DGAT1を発現する動物から得られる発現値と比較される。DGAT1の発現の減少は、DGAT1の転写を破壊する本発明の変異の存在を示す。当分野において周知の他の定量的増幅法もまた使用され得て、例えば、マイクロアレイ解析を含む。
【0197】
特定の核酸分子が動物内に存在するか否かを決定するための他の方法は、動物から得られた核酸分子サンプルの制限酵素消化の工程を含み得る。例えば、本発明の変異は、エンドヌクレアーゼ制限酵素部位を産生するか、または破壊し得る。したがって、当分野において周知の方法による消化された制限断片の分離および視覚化は、特定のヌクレオチド配列の有無についての診断テストを形成し得る。消化されたヌクレオチド配列は、上記のとおり増幅されたPCR産物であり得る。
【0198】
例えば、A8078C変異は、野生型配列内のNlaIII制限酵素部位を破壊し、同時に、変異配列内に新規HaeIII制限酵素部位を産生する。したがって、NlaIIIまたはHaeIIIを用いたA8078C変異を含むDGAT1 DNAの消化は、野生型DGAT1 DNAと比較して異なるサイズの制限断片を生じ得る。そのような異なる制限断片サイズは、当分野において既知の標準的な方法、例えば、アガロースゲル電気泳動および/またはサザンハイブリダイゼーションにより検出され得る。
【0199】
特定の核酸分子が動物内に存在するか否かを決定するためのまた他の方法は、動物から得られた核酸分子サンプルへのプローブのハイブリダイゼーションの工程を含み得る。該プローブは、十分な長さおよびDGAT1ヌクレオチド配列と十分に相補的な核酸分子を含み、高もしくは低ストリンジェンシー条件下で核酸分子サンプル中に含まれるDGAT1核酸分子に選択的に結合し、本発明の変異の有無の検出を容易にし得る。約100以上のヌクレオチド長を有するプローブについて、典型的なストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、ネイティブ二本鎖の溶融温度 (Tm)の25℃から30℃下(例えば、10℃)である(一般には、上記Sambrook J et al., 2001; Ausubel et al., 1987, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Incを参照のこと)。約100ヌクレオチド長以上の核酸分子についてのTmは、下記の式により計算され得る: Tm = 81. 5 + 0. 41% (G + C-log (Na+))。長さが100塩基以上のポリヌクレオチドについての典型的なストリンジェント条件は、6X SSC, 0.2% SDSの溶液での前洗浄; 65℃, 6X SSC, 0.2% SDSで一晩のハイブリダイズ; 65℃、1X SSC, 0.1% SDSでの2回の洗浄(各30分間)および65℃、0.2X SSC, 0.1% SDSでの2回の洗浄(各30分間)のようなハイブリダイゼーション条件であり得る。約100未満のヌクレオチド長を有するプローブについて、典型的なストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、一般に、Tmの5℃から10℃下である。平均して、100未満のヌクレオチド長の核酸分子のTmは、約(500/核酸分子長)℃で減少する。ペプチド核酸(PNA) (Nielsen et al., 1991, Science 254(5037):1497-500)として既知のDNA模倣体に関して、Tm値は、DNA-DNAまたはDNA-RNAハイブリッドについてのTm値よりも高く、Giesen et al., 1998 Nucleic Acids Res. 26(21):5004-5006に記載された式を用いて計算され得る。100塩基未満の長さを有するDNA-PNAハイブリッドについての典型的なストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、Tmの5℃から10℃下である。
【0200】
動物から得られる核酸分子サンプルは、ゲノムDNAまたはRNA (mRNAもしくはhnRNAを含む)であり得る。解析はまた、mRNAから産生されるcDNAについて行われ得る。
【0201】
上記のプローブは、一般に、配列番号1、2、43および44のうちの1個で示されるヌクレオチド配列または天然で生じるその隣接配列であるか、またはそれに相補的である、少なくとも約10個の連続するヌクレオチドを含み得る。したがって、プローブは、本発明の変異を含むヌクレオチド配列を含み得る。
【0202】
該プローブはさらに、核酸分子サンプルに結合した場合に該プローブの存在を検出するための方法を含み得る。プローブを標識する方法、例えば、放射性標識は、当分野において周知である(例えば、上記Sambrook J et al., 2001を参照のこと)。
【0203】
プローブに基づく検出アッセイの1つの例は、標的DGAT1 mRNAにハイブリダイズすることができるプローブを用いたノーザン解析である。当業者に明らかなとおり、ノーザン解析は、互いにサンプル濃度の標準化を必要とする定量的方法である。これは、一般に、内部コントロール、例えば、各サンプル中に存在するrRNAの量についてサンプルを標準化することにより達成される。
【0204】
本発明の上記方法は、遺伝学的情報、例えば、評価が望まれる特性と関連する多型、とりわけ、一塩基多型(SNP)の検出および同定のために適当な上記の方法を含む方法に由来する情報に依存する。便宜上、下記の議論はとりわけSNPについて言及されるが、当業者は、該議論が他の遺伝学的多型、例えば、トリプレット反復またはマイクロサテライトの検出および同定に適していることを理解するであろう。
【0205】
SNPは、個体間の遺伝学的な多様性を生じる一塩基の変化または点変異である。SNPは、哺乳類ゲノムにおいて100から300塩基毎に約1個の割合で生じると考えられており、コードまたは非コード領域に生じ得る。コード領域内のSNPは、遺伝学的コードの重複(redundancy)のために、タンパク質産物のアミノ酸配列を変化させたりさせなかったりする。非コード領域内のSNPは、例えば、プロモーターのような制御領域、転写因子結合部位、プロセッシング部位、リボソーム結合部位、mRNAの安定性を修飾することにより、例えば、遺伝子発現を変えることができ、遺伝子転写、プロセッシング、および翻訳に影響を与え得る。
【0206】
SNPは、大規模な相関遺伝学研究を促進することができ、最近では、SNPの発見および検出に大きな関心が寄せられている。SNPは、多くの表現型特性(潜在的な特性を含む)、例えば、疾患傾向および重篤度、健康傾向、薬剤応答性(例えば、副作用反応に対する感受性を含む)、および本明細書に記載された望まれる表現型特性との相関についてのマーカーとしての多大な可能性を示す。対象が特定のSNPを有するか否かについての知識と結合された、特定のSNPと表現型特性の相関についての知識は、診断、予防および治療適用の標的化を可能にし、より良い疾患管理を可能にし、疾患状態の理解を促進し、選択的な交配型を開発し、望まれる遺伝学的利点を有する対象を同定し得る。
【0207】
実際に、既知のSNPについての多くのデータベースが構築されており、該SNPのいくつかについては、生物学的な効果がSNPと関連している。当然のことながら、ヒト遺伝学について焦点が当てられている。例えば、NCBI SNPデータベース「dbSNP」は、NCBIのEntrezシステムに組み込まれて、他のEntrezデータベース、例えば、PubMedおよびGenBankと同じ方法を用いて問い合わせることができる。このデータベースは、ヒトゲノム配列上に位置する1.5百万個のSNPについての記録を有する。各々のdbSNPエントリーは、多型の配列内容(すなわち、周辺配列)、多型の出現頻度(集団または個体による)、ならびに変異をアッセイするために使用される実験方法、プロトコール、および条件を含み、SNPを特定の表現型特性と相関させる情報を含み得る。同様のデータベースは、商業的および科学的に関心のある多くの種について利用可能である。
【0208】
表現型特性と関連する新規SNPを容易かつ迅速に同定する方法の開発には多大な労力がさかれている。これは、少なくとも部分的に哺乳類ゲノムDNAの複雑性(例えば、半数体ヒトゲノムは3 x 109塩基対であるのに対して、半数体ウシゲノムのサイズの現在の概算は2.7 - 2.9 x 109 塩基対の範囲である)、ならびに関連する感受性および識別の必要性のために大問題である。
【0209】
SNPを検出するためのジェノタイピング法は、当分野において周知であり、一般には、上記されたものである。該方法は、DNA塩基配列決定法を含み、それは、プライマーまたはプローブの対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション、多型の近くに、または隣りに結合したプライマーに対するヌクレオチドの対立遺伝子特異的組み込み(しばしば、「一塩基伸長」または「ミニシークエンシング」と呼ばれる)、オリゴヌクレオチド(ライゲーション鎖反応もしくはライゲーションパドロック(padlock)プローブ)の対立遺伝子特異的ライゲーション(結合)、制限酵素(制限酵素断片長多型解析またはRFLP)または化学もしくは他の薬品によるオリゴヌクレオチドまたはPCR産物の対立遺伝子特異的切断、侵襲性構造特異的酵素を含む構造特異的酵素、または質量分析による、電気泳動またはクロマトグラフィー移動における対立遺伝子依存性差異の解明を必要とする方法である。アミノ酸変異の解析はまた、SNPがコード領域内に存在し、アミノ酸変化を生じる場合に可能である。
【0210】
DNA塩基配列決定法は、SNPの直接の決定および同定を可能にする。一般に、スクリーニング目的では、全ゲノムまたは標的化サブゲノム塩基配列決定に特有の困難性が、特異性および正確性における利点を上回る。
【0211】
ミニシークエンシングは、研究においてプライマーが試験サンプル上のSNP部位に隣接するDNA配列にハイブリダイズするのを可能にすることを含む。プライマーは、全4つの異なるタグ化蛍光ジデオキシヌクレオチド(A、C、G、またはT)、およびDNAポリメラーゼを用いて1個のヌクレオチドを伸長させる。4つのヌクレオチドのうちの1個のみ(ホモ接合型の場合)または4つのヌクレオチドのうちの2個(ヘテロ接合型の場合)が組み込まれる。組み込まれる塩基は、SNPの位置におけるヌクレオチドに相補的である。
【0212】
現在使用されているSNP検出のための多くの方法は、部位特異的および/または対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーションを含む。これらの方法は、主に、関心のあるSNPを含む標的配列へのオリゴヌクレオチドの識別的結合に依存する。Affymetrix (Santa Clara, Calif.)およびNanogen Inc. (San Diego, CA)の技術は、特によく知られており、一塩基ミスマッチを含むDNA二本鎖は、完全に塩基対を形成している二本鎖よりも極めて不安定であるという知見を利用している。一致した二本鎖の存在は、蛍光により検出される。
【0213】
部位特異的ハイブリダイゼーションによりSNPを検出もしくは同定するための多くの方法は、感受性および特異性を増加させるために、PCRのような方法による標的の増幅を必要とする(例えば、米国特許第5,679,524号、PCT国際公開WO 98/59066、PCT国際公開WO 95/12607を参照のこと)。米国特許出願20050059030 (その全体を引用により本明細書の一部とする)には、選択的に標的配列を増幅させるための事前の増幅または複雑性の減少なしに、および任意の酵素反応の助けなしに、全ヒトDNA中の単一ヌクレオチド多型を検出する方法が記載されている。該方法は、下記の2つのハイブリダイゼーションイベントを含む単一工程のハイブリダイゼーションを利用する: 標的配列の第1部分の捕捉プローブへのハイブリダイゼーション、および該標的配列の第2部分の検出プローブへのハイブリダイゼーション。両ハイブリダイゼーションイベントは、同じ反応で生じ、ハイブリダイゼーションが生じる順序は、重要ではない。
【0214】
米国特許出願20050042608 (その全体を引用により本明細書の一部とする)には、Thorp et al.の核酸ハイブリダイゼーションの電気化学的検出法(米国特許第5,871,918号)の変法が記載されている。簡潔には、捕捉プローブが設計され、その各々は、SNP塩基の各側上に異なるSNP塩基およびプローブ塩基の配列を有する。プローブ塩基は、SNP部位に隣接する対応標的配列に相補的である。各捕捉プローブは、基質の伝導性ワーキング(working)表面上に非伝導性外層を有する異なる電極に固定されている。各捕捉プローブと核酸標的との間のハイブリダイゼーションの程度は、遷移金属錯体を用いて、各電極における酸化-還元反応を検出することにより検出される。異なる電極におけるこれらの酸化速度の差異は、選択された核酸標的が選択されたSNP部位において単一ヌクレオチド多型を有するか否かを決定するために使用される。
【0215】
MEGATYPE(商標)技術を用いたLynx Therapeutics (Hayward, CA)の技術は、ゲノム材料の小さいもしくは大きいプールから同時に極めて多くのSNPをジェノタイピングすることができる。この技術は、蛍光標識化プローブを用いて2つの集団の収集されたゲノムを比較することにより、先のSNPマッピングまたは知識を必要とすることなく、2つの集団を区別するSNPにわたるDNA断片の検出および回収を可能にする。
【0216】
SNPを検出および同定するための多くの他の方法が存在する。これらは、例えばSNPにハイブリダイズするプローブを測定するための質量分析の使用を含む。この技術は、いかに迅速に行われ得るかという点で、質量コードタグを用いて、1日あたり数種のサンプルから1日あたり40,000個のSNPのハイスループットまで変化する。好ましい例は、例えばA8078C変異を含む本発明の変異を含む核酸分子の質量分析決定法の使用である。そのような質量分析法は、当業者に既知であり、本発明のジェノタイピング法は、本発明の多型の質量分析検出についての適用に適している。
【0217】
特定のSNPの存在はまた、ライゲーションビット(ligation-bit)解析により決定され得る。この解析は、プライマー間に1個のヌクレオチドギャップを有する標的にハイブリダイズする2個のプライマーを必要とする。4個のヌクレオチドの各々は、DNAポリメラーゼ、リガーゼ、標的DNAおよびプライマーを含む別々の反応混合物に加えられる。ポリメラーゼは、SNPに相補的である第1プライマーの3'末端にヌクレオチドを付加し、次いで、リガーゼが2つの隣接するプライマーを共に連結する。サンプルの加熱時に、ライゲーションが生じると、より大きなプライマーは、ハイブリダイゼーションしたまま残り、シグナル、例えば、蛍光が検出され得る。これらの方法の詳述は、米国特許第5,919,626号; 第5,945,283号; 第5,242,794号; および第5,952,174号において見出され得る。
【0218】
米国特許第6,821,733号(その全体を引用により本明細書の一部とする)には、下記の工程:
four-way複合体の形成および分岐移動を可能にする条件下で2つの核酸を接触させる工程;
検出分子が追跡分子またはfour-way複合体と結合可能な条件下、four-way複合体と追跡分子および検出分子を接触させる工程; および
four-way複合体への曝露前後において、追跡分子の検出分子への結合を決定する工程
を含む2つの核酸分子の配列における差異を検出する方法が記載されている。検出分子についてのfour-way複合体と追跡分子の競合は、2つの核酸分子間の差異を示す。
【0219】
SNPを検出するために開発されたさらに多くの方法は、核酸の立体配座可変性に依存する。例えば、Single Strand Conformational Polymorphism (SSCP) (Orita et al., 1989, PNAS 86:2766-2770)は、特定の条件下の溶液中で一本鎖核酸が二次構造を形成する能力に依存する方法である。二次構造は、塩基組成に依存し、単一のヌクレオチド置換により改変され、非変性条件下において電気泳動移動度の差異を生じ得る。さまざまな多型は、一般に、放射活性標識された場合のオートラジオグラフィー、バンドの銀染色、検出可能標識プローブ断片とのハイブリダイゼーションまたは蛍光PCRプライマーの使用(その後、例えば自動DNAシークエンサーにより検出される)により検出される。
【0220】
SSCPの修飾は、当分野において既知であり、異なるゲルランニング条件、例えば、異なる温度、または添加物の添加、および異なるゲルマトリクスの使用を含む。SSCPについての他の変形が当業者に既知であり、RNA-SSCP、制限酵素エンドヌクレアーゼフィンガープリント-SSCP、ジデオキシフィンガープリント(ジデオキシシークエンシングとSSCPとのハイブリッド)、双方向ジデオキシフィンガープリント(ここで、ジデオキシ終結反応は、2つの反対方向のプライマーを用いて同時に行われる)、および蛍光PCR-SSCP (ここで、PCR産物は、複数の蛍光染料で内部標識され、制限酵素で消化され得て、次いでSSCPが行われ、蛍光染料を検出可能な自動DNAシークエンサーで解析される)を含む。
【0221】
異なる核酸構造の種々の移動度を利用する他の方法は、Denaturing Gradient Gel Electrophoresis (DGGE)、Temperature Gradient Gel Electrophoresis (TGGE)、およびヘテロ二本鎖 Analysis (HET)を含む。ここで、二本鎖DNAの解離の変化(例えば、塩基対ミスマッチによる)は、電気泳動移動度の変化を生じる。これらの移動度シフトは、ヌクレオチド変異を検出するために使用される。
【0222】
またさらに、変性高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、SNPを検出するために用いられる方法であり、上記の分離法(例えば、ゲル電気泳動法)の代わりに当分野において既知のHPLC法を用いて、例えば異なる速度でHPLCカラムから溶出されるホモ二本鎖およびヘテロ二本鎖を検出し、その結果、ミスマッチヌクレオチド、すなわち、SNPの検出が可能となる。
【0223】
またSNPを検出するさらなる方法は、化学的切断剤および核酸分解酵素を含むさまざまな薬剤による切断に対する一本鎖および二本鎖核酸の異なる感受性に依存している。例えば、RNase AによるRNA:DNAヘテロ二本鎖内のミスマッチの切断、例えばバクテリオファージT4エンドヌクレアーゼYIIまたはT7エンドヌクレアーゼIによるヘテロ二本鎖の切断、クリバーゼI (cleavase I)による一本鎖DNAと二本鎖DNAとの間の接合部におけるヘアピンループの5'末端の切断、およびMaxam-Gilbert塩基配列決定化学法において通常用いられる化学薬品によるヘテロ二本鎖内の誤対合ヌクレオチドの修飾は、当分野において周知である。
【0224】
さらなる例は、翻訳の成熟前終結および減少したサイズのタンパク質産物を生じる変異により産生される停止コドンを解明するために使用されるProtein Translation Test (PTT)、およびミスマッチ結合タンパク質の使用を含む。変異は、例えばMutSタンパク質(Escherichia coli DNAミスマッチ修復系の構成要素)、またはヒトhMSH2およびGTBPタンパク質のミスマッチ塩基を含むDNAヘテロ二本鎖への結合により検出される。次いで、DNA二本鎖は、ミスマッチ結合タンパク質と共にインキュベートされ、移動度シフトアッセイにより変異が検出される。例えば、簡単なアッセイは、ミスマッチ結合タンパク質のヘテロ二本鎖への結合がエキソヌクレアーゼ分解からヘテロ二本鎖を保護するという事実に基づく。
【0225】
SNPを検出および同定するための上記方法は、本発明の変異を有する核酸分子の同定に適しており、したがって、本発明の方法において使用され得る。
【0226】
タンパク質およびプロテオミクスに基づく方法はまた、本発明の変異を含むポリペプチドの検出および解析のために適当である。発現したポリペプチドにおいて変異を生じるか、またはそれと関連する変異は、該ポリペプチドを解析することにより直接検出され得る。これは、一般に、例えばゲル電気泳動またはHPLCによる、試験される動物から得られるサンプル内のさまざまなタンパク質の分離、ならびに例えばNMRまたはタンパク質シークエンシング、例えば化学的シークエンシングまたはより一般的には質量分析による、該タンパク質またはそれに由来するペプチドの同定を必要とする。プロテオミクス法は、当分野において既知であり、自動化についての多大な可能性を有する。例えば、統合システム、例えば、Proteome SystemsからのProteomIQ(商標)システムは、サンプル調製、タンパク質分離、画像取得および解析、タンパク質処理、質量分析およびバイオインフォマティクス技術を結合して、プロテオーム解析についてのハイスループットプラットホームを提供する。
【0227】
タンパク質同定のための多数のプロテオミクス法は、イオントラップ質量分析、液体クロマトグラフィー(LC)およびLC/MS質量分析、ガスクロマトグラフィー(GC)質量分析、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FT-MS)、MALDI-TOF質量分析、およびESI質量分析、ならびにそれらの派生法を含む質量分析法を利用する。質量分析法はまた、タンパク質の翻訳後修飾、例えば、リン酸化またはグリコシル化の決定において有用であり、したがって、タンパク質の翻訳後修飾における変異を生じるか、またはそれと関連する変異を決定することにおいて利点を有する。
【0228】
関連技術もまた周知であり、例えば、圧電型プリント技術を含む「Chemical Inkjet Printer」のようなタンパク質処理装置を含み、それは、酵素学的もしくは化学的に、選択されたタンパク質スポットに直接噴射することにより、2-D PAGEゲルから膜に電気ブロットされたタンパク質サンプルの酵素学的もしくは化学的なインサイチュ消化を可能にする。タンパク質のインサイチュ消化およびインキュベーションの後、ペプチド解析のために、膜を質量分析器に直接かけることができる。
【0229】
他の適当なポリペプチドに基づく解析は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)、等電点電気泳動、2D PAGE、特定の抗体を用いたウエスタンブロッティング、免疫沈殿、およびペプチドフィンガープリンティングを含むがこれらに限定されない。
【0230】
上記のとおり、本発明の変異の同定は、動物の遺伝学的利点を決定するための方法、または有利なミルク、組織および/または成長速度特性を有する動物を選択するための方法を可能にする。そのような方法は、動物のDGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルおよび/または遺伝子型の決定に依存し得る。
【0231】
DGAT1の第16エクソンの対立遺伝子プロファイルは、DGAT1遺伝子の一方(ハプロタイプ)または両方(遺伝子型)の対立遺伝子のヌクレオチド組成を参照して決定され得る。例えば、DGAT1におけるA8078C変異に関して、野生型対立遺伝子は、8078位においてアデニンを含んでおり、したがって、本明細書において「A対立遺伝子」として示される。A対立遺伝子は、好ましくは、配列番号1または43で示されるヌクレオチド配列を含む。DGAT1の変異型対立遺伝子は、8078位においてシトシンを含んでおり、したがって、本明細書において「C対立遺伝子」として示される。C対立遺伝子は、好ましくは、配列番号2または44のヌクレオチド配列を含む。したがって、DGAT1の8078位における特定のヌクレオチドは、DGAT1の対立遺伝子プロファイル、特に、DGAT1の第16エクソンの対立遺伝子プロファイルを決定し得る。
【0232】
動物におけるエクソンの対立遺伝子プロファイルを決定するための、DGAT1の第16エクソンの特定のヌクレオチド組成の存在の同定(すなわち、本発明の変異の存在の同定)は、上記のとおり、多くの方法により達成され得る。例えば、A8078C変異を含む本発明の特定の変異の存在は、一本鎖高次構造多型解析(SSCP)などのような技術により決定され得る。本発明の変異の存在はまた、動物から得られた核酸分子を直接配列決定することにより決定され得る。あるいは、制限酵素消化が使用され得る。さらに、PCRおよび逆転写酵素PCRは、動物から取得されたDNAまたはmRNAのそれぞれを増幅させるために使用され得て、第16エクソンの対立遺伝子プロファイルを確立し得る。例えば、PCR増幅工程において使用されるプライマーの1つは、DGAT1の第16エクソンの野生型を認識して、それにのみ結合するか、またはDGAT1の第16エクソンの変異型配列を認識して、それにのみ結合し得る。したがって、PCR産物の有無は、対立遺伝子プロファイルを明らかにし得る。mRNA (またはmRNAから得られるcDNA)のPCR増幅は、第16エクソンの一方の側に結合するPCRプライマーが増幅反応において使用される場合に、欠失または挿入変異を同定し得る。例えば、一方のプライマーは、DGAT1の第15エクソンにおける配列に結合し、他方は、DGAT1の第17エクソンにおける配列に結合し得る。したがって、PCR増幅は、第16エクソンのオルタナティブスプライシングを生じる変異、例えば、本発明により包含されるA8078Cヌクレオチド変異を同定し得る。予測より小さいサイズのPCR産物は、DGAT1コード配列の欠失を示し、予測よりも大きいサイズのPCR産物は、挿入変異を示す。本発明の変異の存在を同定すること、したがって、DGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルを決定する他の方法は、当分野において既知であり、上記のとおりである。これらは、動物から得られた核酸分子(例えば、DNAもしくはmRNA)の質量分析、または第16エクソンにおける特定の対立遺伝子を認識し、結合するプローブを用いたDNAもしくはmRNAのサザン解析を含む。
【0233】
動物におけるエクソンの対立遺伝子プロファイルの決定はまた、動物から得られるポリペプチドサンプルの解析により達成され得て、該方法は、上記のとおりである。例えば、DGAT1のA対立遺伝子は、第16エクソンにおけるメチオニンアミノ酸をコードするコドンの一部である。メチオニンの存在は、動物から取得されるポリペプチドの配列を直接決定することにより決定され得る。
【0234】
本発明の変異と連鎖しているか、または連鎖不均衡である遺伝子座はまた、変異の存在を決定する(間接的に)ために使用され得て、それによりまた、DGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルを決定し得る。例えば、配列番号2で示される核酸分子と連鎖しているか、または連鎖不均衡であるいくつかのマーカーは、本発明者等により同定されており、例えば、ARS-BFGL-NGS-4939、Hapmap52798-ss46526455、Hapmap29758-BTC-003619、BFGL-NGS-18858、Hapmap24717-BTC-002824、およびHapmap24718-BTC-002945である。連鎖は、2個もしくはそれ以上の変異または多型が同じ染色体上に位置し、通常、共遺伝するのに十分な程近接しているという遺伝学における現象である。遺伝学的連鎖または連鎖不均衡は、2個もしくはそれ以上の変異または多型が遺伝学的に極めて近接しているために、それらが高頻度で共遺伝するという遺伝学における現象である。これは、ジェノタイピングにおいて、存在する1個の多型の検出が他の多型の存在を示唆することを意味する(Reich DE et al., 2001, Nature 411:199-204.)。
【0235】
さらに、動物は、本発明の変異および同じかもしくは異なる遺伝子における他の多型についてスクリーニングされ得て、それは、K232Aアミノ酸置換をコードするDGAT1における多型、およびGHR遺伝子におけるF279Yアミノ酸変異を含む。本発明の変異と1個またはそれ以上の他の多型との組み合わせは、相乗効果を提供し得る。本発明の変異は、1個またはそれ以上の他の多型として、同じもしくは異なる染色体上に存在し得る。動物は、本発明の変異についてホモ接合型またはヘテロ接合型であり、1個またはそれ以上の他の遺伝子における多型についてホモ接合型またはヘテロ接合型であり得る。
【0236】
本発明者等により同定された変異型DGAT1対立遺伝子は、配列番号2または44で示されるヌクレオチド配列を有する。配列番号2で示される配列は、DGAT1ポリペプチドの232位においてアラニン残基をコードし、一方で、配列番号44で示される配列は、DGAT1ポリペプチドの232位においてリシン残基をコードしている。上記のとおり、K232A多型は、DGAT1におけるジヌクレオチド置換により生じ、ここで、DGAT1のコード領域の694および695位(すなわち、GenBank登録AY065621/GI:18642597の6829および6830位)におけるAAヌクレオチドは、GCで置換される。232A多型とDGAT1の第16エクソンによりコードされる21個のアミノ酸の欠失の組み合わせは、有利なミルクプロファイルの観点で相乗効果を有することが予測される。したがって、相乗効果は、1個の変異型対立遺伝子、すなわち、配列番号2または44で示されるDGAT1対立遺伝子の1個のコピー、および野生型DGAT1ポリペプチドをコードする1個の対立遺伝子を含む遺伝子型を有する動物において達成され得る。この例において、少なくとも1個の変異型DGAT1対立遺伝子を有する動物は、下記のDGAT1遺伝子型のうちの1個を有し得る: 6829G 6830C/6829G 6830C、8078A/8078C; 6829G 6830C/6829A 6830A、8078C/8078A; 6829A 6830A/6829A 6830A、8078A/8078C; 6829G 6830C/6829G 6830C、8078C/8078C; 6829A 6830A/6829A 6830A、8078C/8078C。これらの遺伝子型を構成する対立遺伝子は、下記の表1で示されるヌクレオチドおよびアミノ酸配列を有する。
【0237】
表1
【表1】

【0238】
上記のとおり、本発明は、有利なミルク、組織または成長速度プロファイルの観点で、動物(例えば、ウシ)の遺伝学的利点を評価する方法、または遺伝子型を決定する方法を可能にする。1つの態様において、これらの方法は、動物が下記のポリペプチドを含むか、または該ポリペプチドをコードする核酸分子を含むか否かを決定することを含む: (i) 野生型DGAT1の生物学的活性を有するポリペプチド(すなわち、動物は、ポリペプチド(A)または核酸分子(A)を含む); (ii) DGAT1の第16エクソンによりコードされる1個またはそれ以上のアミノ酸において変異を有するDGAT1アミノ酸配列を有するポリペプチド(すなわち、動物は、ポリペプチド(B)または核酸分子(B)を含む); または(iii) (i)と(ii)の組み合わせを有するポリペプチド。この例において、上記表1を参照すると、核酸分子(A)は、配列番号1または43で示されるヌクレオチド配列を有し、一方で、核酸分子(B)は、配列番号2または44で示されるヌクレオチド配列を有し得る。さらに、ポリペプチド(A)は、配列番号3または45で示されるアミノ酸配列を有し、一方で、ポリペプチド(B)は、配列番号4、46、47および48のうちの1つで示されるアミノ酸配列を有し得る。動物がどのDGAT1核酸およびポリペプチドを含むかを決定するための方法は、上記されている。
【0239】
2 診断キット
本発明はさらに、上記のとおり、本発明の核酸分子を検出するために、例えば、試験下の動物の第16エクソンDGAT1対立遺伝子プロファイルおよび/または遺伝子型を決定するために、および本発明の他の方法における使用のために有用な診断キットを提供する。
【0240】
したがって、1つの態様において、本発明は、ウシを含む動物のDGAT1遺伝子型を決定するために使用され得る診断キットを提供する。診断キットは、動物から得られた核酸分子のサンプルからDGAT1を増幅させる一組のプライマーを含み得る。プライマーは、一般に、本発明の変異を含むDGAT1遺伝子の領域を増幅させるヌクレオチド配列を含み得る。例えば、実際のジェノタイピングは、本発明の特定の変異を標的とし、慣用的なハイブリダイゼーション、Taqmanアッセイ、OLEアッセイなどにおいて対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドとして機能し得るプライマーを用いて行われ得る。あるいは、プライマーは、ミクロ塩基配列決定によるジェノタイピングを可能にするように設計され得る。
【0241】
したがって、プライマーの1つのキットは、第1、第2および第3プライマー(各々、(a)、(b)および(c))を含み得る。プライマー(a)は、本発明のDGAT1変異を含む領域に相補的であり、したがって、それに結合する。プライマー(b)は、プライマー(a)により増幅される領域の上流または下流の領域に相補的であり、したがって、それに結合し、その結果、該変異を含む遺伝学的材料は、例えば該2個のプライマーの存在下、PCRにより増幅される。プライマー(c)は、プライマー(a)が結合する領域に対応する領域に相補的であり、その結果、該領域に結合するが、プライマー(c)は、該変異を欠失しており、すなわち、それは、野生型ヌクレオチドを含む。したがって、非変異領域を含む遺伝学的材料は、プライマー(b)および(c)の存在下で増幅され得る。したがって、野生型遺伝子についてホモ接合型である遺伝学的材料は、プライマー(b)および(c)の存在下で増幅産物を提供し得る。したがって、変異遺伝子についてホモ接合型である遺伝学的材料は、プライマー(a)および(b)の存在下で増幅産物を提供し得る。ヘテロ接合型遺伝学的材料は、両方の場合において増幅産物を提供し得る。
【0242】
1つの態様において、診断キットは、本発明の変異を含有するDGAT1遺伝子を含むDNAまたはDGAT1ポリペプチドをコードするDNAを検出することにおいて有用である。キットは、DNAを増幅させるための第1および第2プライマーを含み得て、該プライマーは、それぞれ、有利なミルク、組織および/または成長速度プロファイルを生じる変異の上流および下流のDNAのヌクレオチド配列に相補的である。1つの態様において、少なくとも1個のヌクレオチド配列は、DGAT1遺伝子の非コード領域に相補的であり、したがって、それにハイブリダイズするものが選択される。例えば、1つの態様において、キットは、配列番号5および6で示される配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーを含み得る。キットはまた、該変異に相補的であり、したがって、それに結合する第3プライマーを含んでいてもよい。
【0243】
好ましくは、キットは、例えば本発明の方法による使用のための指示書を含む。
【0244】
1つの態様において、診断キットは、配列番号1、2、43および44で示されるヌクレオチド配列に相補的であり、したがって、それに結合するヌクレオチドプローブを含む。例えば、プローブは、試験される動物から得られたDNAまたはmRNAにハイブリダイズし得る。キットは、サンプル中のmRNAと結合したヌクレオチドプローブを検出するための方法、例えば、当分野において既知の方法を含み得る。特定の局面において、本発明の該局面のキットは、配列番号1、2、43および44で示されるヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下で結合するのに十分に相補的な核酸分子を有するプローブを含む。「ストリンジェント」なハイブリダイゼーション条件は、当業者にとって共通の意味を有する。核酸ハイブリダイゼーションを促進するのに適当なストリンジェンシー条件は、プローブの長さに依存し、例えば、約45℃、6x 塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)である。適当な洗浄ストリンジェンシーは、プローブの相同性の程度および長さに依存する。プローブと標的配列の相同性が100%である場合には、高温(65℃から75℃)が使用され得る。しかしながら、プローブが短い(<100bp)場合には、100%の相同性を有するときでさえ低温が使用されなければならない。一般に、低温(37℃から40℃)で洗浄を開始し、バックグラウンドがオートラジオグラフィーを妨害しないように十分に低くなるまで、3-5℃の間隔で温度を上げる。診断キットはまた、該キットの使用のための指示マニュアルを含み得る。
【0245】
他の態様において、診断キットは、野生型DGAT1の有無および/または本発明の変異を含むポリペプチドの有無を検出するために有用な下記の抗体または抗体組成物を含む。
【0246】
3 抗体
本発明はまた、本発明のポリペプチドを検出する抗体およびその組成物を提供する。該抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラおよび一本鎖抗体を含むがこれらに限定されない。抗体の作製について、ウサギ、ラット、ヤギ、マウス、ヒトなどを含むさまざまな宿主を、免疫原性特性を有する本発明のポリペプチド、またはその任意の断片もしくはオリゴペプチドを用いた注射により免疫付与してもよい。免疫応答を増大させるために種々のアジュバントが使用され得て、それは、フロイント、ミネラルゲル、例えば、水酸化アルミニウム、および表面活性物質、例えば、リソレシチンを含むがこれらに限定されない。ヒトにおいて使用されるアジュバントは、BCG (bacilli Calmette-Guerin)およびCorynebacterium parvumを含む。抗体産生を誘導するために使用されるポリペプチド、またはその断片もしくはオリゴペプチドは、少なくとも5個のアミノ酸、より好ましくは、少なくとも10個のアミノ酸からなるアミノ酸配列を有することが好ましい。また、ポリペプチド、またはその断片もしくはオリゴペプチドは、天然タンパク質のアミノ酸配列の一部と同一であり、天然で生じる小さな分子の全アミノ酸配列を含むことが好ましい。DGAT1アミノ酸の短いストレッチを他のタンパク質、例えば、KLHの短いストレッチと融合させることができ、キメラ分子に対する抗体が産生され得る。
【0247】
本発明のポリペプチドに対するモノクローナル抗体は、細胞株の連続培養により抗体分子の産生を提供する任意の技術を用いて作製され得る。これらは、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、およびEBVハイブリドーマ技術を含むがこれらに限定されない(例えば、Kohler G and Milstein C, 1975, Nature 256:495-497; Kozbor D et al., 1985, J. Immunol. Methods 81:31-42; Cote RJ et al., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026-2030; Cole SP et al., 1984, Mol. Cell Biol. 62:109-120を参照のこと)。抗体はまた、文献に開示されたとおり、リンパ球集団におけるインビボ産生を誘導することによるか、または免疫グロブリンライブラリーもしくは高特異性結合試薬のパネルをスクリーニングすることにより作製され得る(例えば、Orlandi R et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:3833-3837; Winter G et al., 1991, Nature 349:293-299を参照のこと)。
【0248】
本発明のポリペプチドに特異的な結合部位を含む抗体断片もまた作製され得る。例えば、該断片は、抗体分子のペプシン消化により産生されるF(ab')2断片、およびF(ab')2断片のジスルフィド架橋を還元することにより産生されるFab断片を含む。あるいは、望まれる特性を有するモノクローナルFab断片の迅速かつ容易な同定を可能にするために、Fab発現ライブラリーが構築され得る(例えば、Huse WD et al., 1989, Science 246:1275-1281を参照のこと)。
【0249】
種々のイムノアッセイが、望まれる特異性を有する抗体を同定するためのスクリーニングについて使用され得る。確立された特異性を有するポリクローナルもしくはモノクローナル抗体を用いた競合的結合もしくは免疫放射定量測定法のための多くのプロトコールが、当分野において周知である。該イムノアッセイは、一般に、本発明のポリペプチドとその特異的抗体間の複合体形成の測定を含む。2個の非干渉DGAT1エピトープと反応するモノクローナル抗体を利用するツーサイト(two-site)モノクローナルに基づくイムノアッセイが好ましいが、競合結合アッセイもまた使用され得る。本発明のDGAT1ポリペプチドについての診断アッセイは、抗体および標識を利用して、体液、または細胞もしくは組織の抽出物中のポリペプチドを検出する方法を含む。修飾された、または修飾されていない抗体が使用され得て、レポーター分子の共有もしくは非共有結合によって標識され得る。
【0250】
4 サンプル調製
当業者に明らかなとおり、本発明の方法における使用のために適当なサンプルは、簡便なものとして組織または体液から取得され得て、その結果、該サンプルは、試験される部分を含む。例えば、核酸が解析される場合には、核酸を含む組織または体液が使用され得る。
【0251】
便利には、サンプルは、ミルク、組織、血液、血清、血漿、脳脊髄液、尿、精液、毛髪または唾液から取得され得る。組織サンプルは、細胞スクレーピングまたは生検技術のような標準的な技術を用いて取得され得る。例えば、細胞または組織サンプルは、動物から耳組織を回収する耳パンチを用いて取得され得る。同様に、血液サンプリングは、例えば病原体試験のために通常行われており、血液サンプルを採取する方法は、当分野において既知である。同様に、生物学的サンプルを保存および処理する方法は、当分野において既知である。例えば、組織サンプルは、所望により、試験まで凍結保存され得る。さらに、当業者は、いくらかの試験サンプルが分画または精製手順後に、例えば、全血の血清または血漿構成要素への分離後により容易に解析され得ることを認識し得る。
【0252】
上記のとおり、本発明の変異を検出するための上記方法は、個々のウシ、または実際にはウシ群を選択するために使用され得る。例えば、本発明の変異を含む個々のウシは、該変異を含まないウシから選択および分離される。次いで、選択されたウシは回収され、群を形成する。
【0253】
さらに本発明は、本発明の方法により選択された動物により産生される精液、卵子、および核に向けられる。精液、卵子、および核は、さらなる育種プログラムにおいて有用である。
【0254】
本発明はまた、本発明の方法により選択された動物により産生されるミルク、および該ミルクから製造される製品に向けられる。
【0255】
本発明はまた、本発明の変異を含む遺伝学的に修飾された動物(トランスジェニック動物を含み得る)の作製を提供する。遺伝学的に修飾された動物の作製法は、当分野において既知である。該方法は、動物のDGAT1遺伝子における本発明の特定の変異の作製、ジンクフィンガーヌクレアーゼ技術(Geurts et al., 2009, Science 325(5939):433)の使用、または相同組み換えによる変異体DGAT1遺伝子(ゲノムまたはcDNA構築体として)の動物への挿入を含むがこれらに限定されない。この点において、構築体は、Creリコンビナーゼのような酵素により認識され、組み換え過程を促進する組み換えエレメント(lox p部位)を含み得る。
【0256】
「トランスジェニック動物」なる用語は、動物の細胞(細胞のいくつかまたはすべて)内に本発明の変異を含むように改変された動物を意味する。トランスジェニック動物は、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、胚性幹細胞への遺伝子ターゲッティング、ならびに組み換えウイルスおよびレトロウイルス感染を含むさまざまな異なる方法により産生され得る(例えば、米国特許第4,736,866号; 第5,602,307号; Mullins et al., 1993 Hypertension 22(4):630-633; Brenin et al., 1997 Surg. Oncol. 6(2):99-110; Tuan (ed.), Recombinant Gene Expression Protocols, Methods in Molecular Biology No. 62, Humana Press (1997)を参照のこと)。例えば、トランスジェニック動物の作製にいおける使用のために適当なトランスジーン(すなわち、本発明の変異を含む核酸分子)を含む核酸構築体、すなわち、「トランスジェニック構築体」が最初に作製される。構築体は、本発明の変異体DGAT1ポリペプチドをコードするcDNA配列またはゲノム配列を含み得る。1つの態様において、ウシゲノムDGAT1コード配列は、野生型ウシDGAT1遺伝子において見出される関連するイントロンおよびエクソン配列を含むトランスジェニック構築体を作製するために使用される。本発明の変異体DGAT1ポリペプチドをコードするゲノム配列構築体を作製するために、DGAT1遺伝子を含む細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、P1人工染色体(PAC)または他の染色体DNA断片が使用され得る。望まれるDGAT1変異は、当分野において公開されているプロトコールに従うことによりDGAT1遺伝子に導入される(例えば、Gong S et al., 2002, Genome Research 12:1992-1998を参照のこと)。
【0257】
次いで、変異体DGAT1コード配列(ゲノム配列またはcDNA配列)を有するトランスジェニック構築体を、DGAT1の発現を誘導するプロモーターと操作可能に結合させる。トランスジェニック構築体はまた、他の転写および翻訳制御エレメントまたはヌクレオチド配列(例えば、シス作動アクチベーター/エンハンサーまたはサプレッサー)を含み得て、該配列は、変異体DGAT1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと操作可能に結合する。プロモーターならびに他の転写および翻訳制御エレメントまたはヌクレオチド配列は、天然でDGAT1の発現に関与している天然動物配列であるものを含むか、または異なる起源の配列を含み得る。例えば、DGAT1のゲノムコード領域を有するゲノムクローンは、天然のDGAT1 5'配列(天然プロモーター領域を含む)および3'配列を含み得る。あるいは、本発明の実施における使用のために適当な配列は、特異的もしくは非特異的な方法で、および/または誘導的(例えば、テトラサイクリン誘導性プロモーターまたはMMTVステロイド誘導性プロモーター)もしくは非誘導的な方法で、遺伝子の転写を刺激もしくは抑制する真核生物もしくはウイルス遺伝子、またはその誘導体の配列であり得る。本発明の実施において使用され得るプロモーターは、プリオンプロモーター、Thy-1プロモーター、PDGFプロモーター、チロシンヒドロキシラーゼプロモーター、ドーパミントランスポータープロモーター、カルシウム-カルモジュリンキナーゼIIプロモーター、ElAプロモーター、MLPプロモーター、CMVプロモーター、MMLVプロモーター、MMTVプロモーター、SV40プロモーター、レトロウイルスLTR、メタロチオネインプロモーター、RSVプロモーターなどを含むがこれらに限定されない。プロモーターは、普遍的な発現を誘導するか、または組織特異的な方法での発現、例えば、乳腺のみにおける発現を誘導するプロモーターであり得る。
【0258】
次いで、望まれるトランスジェニック核酸構築体は、トランスジェニック動物、例えば、トランスジェニックウシを作製するために使用され得る。これは、多くの方法により達成され得る。1つの方法において、前核段階の胚が雌から回収され、トランスジェニック構築体が胚にマイクロインジェクションされ、この場合において、トランスジェニック核酸は、胚のゲノムの染色体に組み込まれる。修飾された胚は、該胚の出産を可能にする偽妊娠雌動物に移植される。生じた成熟動物は、生殖細胞(精子もしくは卵子産生細胞)および体細胞の両方において遺伝学的修飾を含み得る。他の方法において、胚性幹(ES)細胞が動物から単離され、エレクトロポレーション、トランスフェクションまたはマイクロインジェクションにより、トランスジェニック構築体が細胞に導入される。トランスジェニック核酸は、非相同組み換えによりゲノムに組み込まれる。次いで、修飾されたES細胞は、胚盤胞(初期胚)に移植され、その後、雌動物の子宮に移植される。該胚盤胞から生まれる子孫は、キメラ動物、すなわち、修飾されたES細胞に由来する細胞および胚盤胞の修飾されていない細胞に由来する細胞を含む動物である。修飾された細胞から発生した精細胞を有する子孫を選択し、それらを異種交配することにより、それらの細胞のすべてにおいて遺伝学的修飾を含む子孫が取得され得る。前核マイクロインジェクション法は、大きなサイズのゲノム型トランスジェニック構築体、例えば、本発明の変異体DGAT1ポリペプチドをコードするゲノムポリヌクレオチドを有するBACを導入するために特に適当であり得る。
【0259】
子孫は、トランスジーン特異的プローブを用いた組織サンプルの解析により、トランスジーンの組み込みについて試験され得る。この点に関して、サザンブロット解析およびPCRが特に有用である。トランスジーンの発現はまた、適当なアッセイ、例えば、とりわけノーザンブロット解析およびウエスタンブロット解析を用いて、組織サンプル中のmRNAのレベルまたは変異体DGAT1ポリペプチドのレベルを解析することにより評価され得る。これらの解析のための組織サンプルは、乳腺から得られたサンプルを含み得る。
【0260】
上記のとおり、本発明の変異を有するトランスジェニック動物はまた、ジンクフィンガーヌクレアーゼを用いて産生され得る。この技術は、上記のGeurts et al., 2009に記載されており、胚性幹細胞の使用を必要としない。むしろ、標的化変異は、DNAおよびRNA分子の胚への標準的なマイクロインジェクションにより誘導される。DNAまたはRNA分子は、特定のジンクフィンガーヌクレアーゼをコードし、変異は、正確かつ効率的に、生殖細胞系列を介して伝えられる。
【0261】
本発明はまた、本発明のトランスジェニック動物または本発明の変異を有する任意の動物(トランスジェニックであってもなくてもよい)から産生されるクローンを提供する。これらのクローン化動物は、体細胞核移植のような方法により産生され得る。この技術は、生殖過程における卵母細胞と精子の受精後に生じる過程を行う必要がなく、単一の体細胞からの新規動物(クローン)の作製を可能にする。該技術を用いて作製されたクローン化胚は、発情同期化された代理母に移植され、新規動物が作製される。簡潔には、体細胞核移植工程において、未成熟卵母細胞を、さまざまなホルモンおよび増殖因子を補充した培地中で、24-72時間培養および増殖させると、減数分裂第2中期まで成熟し、それは、インビトロ成熟卵母細胞と呼ばれる。ホルモンを用いて過剰排卵により集められた卵母細胞は、インビボ成熟化卵母細胞として示される。この方法を用いて産生された成熟卵母細胞の半数体は、顕微操作器により除去され、クローン化される動物の体細胞が、除核卵母細胞の囲卵腔または細胞質に注入される。この後に、囲卵腔または細胞質に注入された体細胞は、電気刺激により除核卵母細胞と物理的に融合する。融合した卵母細胞は、電気刺激または化学物質により活性化される。次いで、産生されたクローン化胚を、外科的または非外科的手順により、代理母の卵管または子宮に移し、生きた子孫が産まれるのを可能にする。
【0262】
本発明を上記の例のみに限定することを意図しないことは理解されるであろう。当業者において容易に生じ得る多くの変形は、添付の特許請求の範囲に既定されたとおり、その範囲から逸脱することなく可能であり得る。
【0263】
本発明はまた、個々にまたは集合的に、本願の明細書中に言及または記載された部分、要素および特徴、ならびに任意の2個またはそれ以上の該部分、要素または特徴の任意またはすべての組み合わせに存することが広く言われ得て、ここで、本発明が関連する分野における既知の同等体を有する特定の整数は、本明細書において言及されており、該既知の同等体は、個々に説明されているかのように本明細書に組み込まれると考えられる。
【0264】
本発明はさらに、下記の実験例を参照することにより詳述される。該例は、例示目的のみについて提供されるものであり、他に記載がなければ、限定することを意図するものではない。したがって、本発明は、本明細書において提供される提示の結果として明らかになる任意のおよびすべての変形を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0265】
【図1】図1は、Cow 363の血統を示す。血統図において、有利なミルクプロファイルを有するミルクを産生するすべての動物、または有利なミルクプロファイルを有するミルクを産生する雄親となるウシ(siring cows)に陰影を付けて示している。雄を四角で示し、雌を丸で示す。
【図2】図2は、図1の血統図における低乳脂肪含量についてのマーカー連鎖地図を記述したグラフを示す。Cow 363の血統図における各マーカーと乳脂肪割合との相関についてのF値は、第14染色体pterから200万塩基対のヌクレオチド位置にわたる相対的に小さい断片上のマーカー位置の関数として示される。高F値は、マーカー周辺の染色体領域と有利なミルクプロファイル表現型に関与する変異の位置との高い程度の相関を示す。444 kb-446 kbヌクレオチド位置由来のDGAT1遺伝子の位置を長方形で示す。全3個の遺伝子型クラスを有し、5またはそれ以上のカウントを有するマーカーのみを示す。誤検出率(false discovery rate)に対応する20.188のF値を斜線で示す。
【図3】図3は、第16エクソンの3'末端近く(GenBank登録 AY065621/GI:18642597における8078位)におけるアデニン(A)からシトシン(C)へのヌクレオチド置換としてのCow 363における変異の図表を示す。該変異は、下記をコードする: (i) 435位におけるメチオニン残基がロイシンで置換されたDGAT1タンパク質(M435L)、および(ii) 第16エクソンによりコードされる21個のアミノ酸を欠失したDGAT1タンパク質(Δ418-438)。A: DGAT1遺伝子構造の図表概略。エクソンを長方形で示し、イントロンおよび遺伝子間領域を太線により示す。B: 8078位においてヘテロ接合型であるCow 363の第16エクソンから得られた配列クロマトグラム。CおよびD: Cow 363における該変異の周辺の部分的ヌクレオチドおよびアミノ酸配列。C: 野生型DGAT1遺伝子(上部)およびDGAT1タンパク質(下部)の部分配列。エクソン配列を大文字で示し、部分イントロン配列を小文字で示す。第16エクソンの3'末端近くにおけるエクソンスプライシングモチーフ(ATGATG)に下線を引いている。RNAプロセッシングの間に生じる第15および16イントロンに相当する配列の除去を、タンパク質配列内の横線で示す。D: Cow 363における変異型DGAT1遺伝子の部分配列(上部配列)、435位におけるメチオニン残基がロイシンで置換された変異型DGAT1タンパク質の部分配列(中間の配列; 横線は、RNAプロセッシングの間における第15イントロンおよび第16イントロンに対応する配列の除去を示す)、および第16エクソンによりコードされる21個のアミノ酸を欠失した変異体DGAT1タンパク質の部分配列(下部配列; 横線は、第15イントロン、第16エクソン、および第16イントロンに対応する配列の除去を示す)。DGAT1遺伝子の第16エクソンにおける変異型エクソンスプライシングモチーフ(CTGATG)に下線を引いている。E: エクソンスプライシングモチーフの変異は、mRNAプロセッシングの間における第16エクソンの切除を生じる。野生型DGAT1遺伝子のホモ接合型保有ウシ(cows 351および352)から得られた肝臓全RNAの逆転写PCRは、第16エクソンを含む予測される200塩基対の産物を示す。200塩基対の産物は、8078位における変異についてヘテロ接合型であるウシ(cows 346および353)由来のサンプルでは、あまり豊富には存在しない。8078位における変異についてヘテロ接合型であるウシ由来のサンプルはまた、137塩基対のさらなるPCR産物を産生し、それは、第16エクソンに対応するヌクレオチドを欠失している。346および353のレーンにおいて、約240塩基対で移動するバンドは、137と200塩基対産物のヘテロ二本鎖であることが示された。
【図4】図4は、Cow 363における変異に相当する領域でのDGAT1タンパク質の進化的保存を示す。Bos taurus (Bta, 登録NP_777118.2)、Bos indicus (Bin, ABR27822.1)、Bubalus bubalis (Bbu, ABB53651.2)、Homo sapiens (Hsa, NP_036211.2)、Pan troglodytes (Ptr, XP_520014.2)、Macaca mulatta (Mmu, XP_001090134.1)、Canis familiaris (Cfa, XP_539214.2)、Equus caballus (Eca, XP_001917097.1)、Capra hircus, (Chi, ABD59375.1)、Ovis aries (Oar, NP_001103634.1)、Sus scrofa (Ssc, NP_999216.1)、Monodelphis domestica (Mdo, XP_001371565.1)、Danio rerio (Dre, NP_956024.1)、Mus musculus (Mus, NP_034176.1)、およびRattus norvegicus (Rno, NP_445889.1)由来の部分アミノ酸配列を並べて、Cow 363の変異体対立遺伝子によりコードされる部分配列(M435LまたはΔ418-438)と比較して示す。破線は、第16エクソンをスキップした結果としてのΔ418-438変異体タンパク質における欠失した21個のアミノ酸を示す。最下行におけるアスタリスク表記は、比較された種における完全な保存を示す。
【図5】図5は、DGAT1タンパク質の酵素活性についてのCow 363におけるA8078C変異の効果を示す。内因性のジアシルグリセロールトランスフェラーゼ活性を欠失したパン酵母H1246株において、同程度のレベル(すなわち、±10%内)で対応するcDNAを発現させることにより得られた野生型および変異型DGAT1タンパク質を、[14C]オレオイル-CoAをジアシルグリセリドに転移するそれらの能力についてアッセイした。DGAT1-232A-Δ418-438 (配列番号47)は、Cow 363の変異体DGAT1遺伝子によりコードされており、すなわち、232位においてアラニン残基を含み、かつ、第16エクソンによりコードされる21個のアミノ酸を欠失している(すなわち、Δ16)。全長野生型タンパク質DGAT1-232A (配列番号3)およびDGAT1-232K (配列番号45)は、232位において、それぞれアラニンおよびリシン残基を含む。A: 各cDNA発現プラスミドの2個の独立した酵母形質転換体からのジアシルグリセロールトランスフェラーゼ反応、および挿入物なしの発現プラスミド(空ベクター)で形質転換された同じ宿主株からのジアシルグリセロールトランスフェラーゼ反応から得られた生成物の薄層クロマトグラム。[14C]オレオイル-CoA (反応基質)およびトリアシルグリセロール(反応生成物)の位置を矢印で示す。B: 組み換えDGAT1タンパク質およびコントロールにより合成されたトリアシルグリセリド収量であり、それは、TLCプレートのデンシトメトリー画像により定量され(パネルA)、各プラスミドの2個の独立した形質転換体からの領域あたりのカウントの平均(+ 標準誤差)として示される。すべての反応において、同等量の全細胞抽出物が用いられた。
【図6】図6は、A8078C変異についてヘテロ接合型であるウシの肝臓における、ジアシルグリセロールトランスフェラーゼ活性についての該変異の効果を示す。薄層クロマトグラフィーおよびシンチレーションカウンティングにより、野生型ウシ(n=11, AA)および保有ウシ(n=13, CA)から得られる肝臓生検から調製されたミクロソームタンパク質サンプルを、[14C]オレオイル-CoAをジアシルグリセリドに転移するそれらの能力についてアッセイした。[14C]オレオイル-CoAのトリグリセリドへの平均取り込みを秒あたりのカウント(CPM)として示し、それは、アステリックス(asterix)により示されたとおり、野生型ウシとヘテロ接合型保有ウシとの間でかなり異なっていた(AA vs. CA, p < 0.05)。
【実施例】
【0266】
実施例-有利なミルクプロファイル表現型についての遺伝学的基盤の解析
本実施例は、経済的に重要なミルク特性を制御する新規変異を見出すために実施されるプログラムを用いた、増加したミルク量、減少した乳脂肪含量、減少した飽和脂肪酸含量、増加した不飽和脂肪酸およびオメガ-3脂肪酸含量、ならびに減少した脂肪硬度を有するウシの同定、およびこれらの特性についての遺伝学的基盤の調査について記載する。
【0267】
材料および方法
1. 最高のミルク特性を有するウシの同定
ニュージーランドの乳牛群における数百万の動物を、標準的なニュージーランドの酪農実施下で、減少した脂肪割合を有する多量のミルクを産生するウシについてスクリーニングした。
【0268】
2. 固体脂肪含量および脂肪酸組成の解析
ミルクサンプルを午前および午後の搾乳からのピーク泌乳段階の間に回収し、合わせて、各動物について単一の複合サンプルを作製した。
【0269】
抽出された乳脂の固体脂肪含量(SFC)を、MacGibbon AKH and McLennan WD, 1987, NZ J. Dairy Science and Technology, 22:143-156に記載された手順にしたがって、Bruker Minispec NMS 120 NMR装置(Bruker Analytische Messtechnik GmbH, Rheinstetten, Germany)を用いたパルス核磁気共鳴(NMR)により決定した。SFCの結果は、固体脂肪割合として示される。乳脂サンプルを、上記のMacGibbon AKH and McLennan WD, 1987に記載された一連の方法を用いてテンパリングし、該方法は、60℃で30分間、脂肪を溶かし、溶けたサンプルを0℃で一晩結晶化させ、次いで40℃まで5℃の間隔で(45分間の平衡後)SFCを決定することを必要とする。比較において使用される一般値は、10℃でのSFCであった。
【0270】
脂肪酸メチルエステル(FAME)解析(MacGibbon AKH, 1988, NZ J. Dairy Science and Technology, 23:399-403を参照のこと)により、乳脂の脂肪酸含量を決定した。
【0271】
記載されたとおり(Mackle TT, et al., 1999, NZ J. Dairy Sci., 82:172-80)のHPLCおよびSDS-PAGEにより、ミルクサンプル中のカゼインおよびホエイタンパク質含量を決定した。
【0272】
3. 稀なミルク特性の遺伝率の解析
標準的なインビトロ受精技術および代理雌親への胚移植を用いて、Cow 363からの7頭の雌子孫と5頭の雄子孫を産生した。標準的なニュージーランド酪農実施にしたがって子ウシを育て、若い雌ウシを15ヶ月齢で受精させた。
【0273】
有利なミルクプロファイル表現型の世代間伝達を、フーリエ変換赤外分光法(http://www.foss.dk) (FTIR)による乳脂およびタンパク質含量の測定、固体脂肪含量、乳脂肪酸組成、およびミルクタンパク質組成により評価した。
【0274】
4. 変異マッピングについての血統の作製、および乳脂表現型の決定
Cow 363の5頭の息子から精液を回収し、それを用いて、商業的搾乳群における非関連ホルスタイン種を受精させた。若い雌ウシを標準的なニュージーランド酪農業実践下で育て、15ヶ月齢で受精させた。
【0275】
Cow 363の5頭の息子の101頭の泌乳娘の乳脂肪割合を早期およびピーク泌乳期の間にFTIRにより決定し、有利なミルクプロファイル表現型に関与する変異のマッピングについての表現型として使用した。
【0276】
Cow 363、その7頭の娘(Cows 273、351、346、352、353、354および357)、Cow 107 (346の娘)、Cows 108および307 (Cow 354の娘)、ならびに有利なミルクプロファイル表現型を伝えるCow 363の3頭の息子の50頭の泌乳娘の乳脂肪割合を、早期およびピーク泌乳期の間にFTIRにより決定し、それを、有利なミルクプロファイル表現型に関与する変異を有するゲノム領域を位置づけるための表現型として用いた。
【0277】
5. ジェノタイピング
Cow 363血統内の199頭の動物、すなわち、Cow 363、その雄親および祖父、5頭の息子、7頭の娘、ならびにCows 107、108、および307、5頭の息子が種牛となって産まれた101頭の孫娘、孫娘の79頭の雌親由来の全血からゲノムDNAを単離した。Illumina BovineSNP50 Genotyping BeadChip (Illumina Inc., San Diego, CA, U.S.A.)を用いて、サンプルをジェノタイピングした。全45,261個の有益なSNPマーカーを連鎖地図作製に使用した。
【0278】
ニュージーランド酪農業集団において人工授精のために頻繁に用いられる185頭の雄親、ならびにBoviQuest Friesian-Jersey交配群(Spelman RJ, et al., 2001, Proc. Assoc. Advmt. Anim. Breed. Genet. 14:393-396)を代表する80頭の雄親および1595乳牛由来の全血または精液からゲノムDNAを単離した。配列番号5および6で示されるPCRプライマー、ならびに配列番号7で示される伸長プライマーを用いて、カスタム設計iPLEX(商標) Goldアッセイ(SEQUENOM, San Diego, CA, USA)により、サンプルをA8078C変異についてジェノタイピングした。該変異についてヘテロ接合型であるCow 363血統からの8頭の動物由来のDNAをポジティブコントロールとして用いた。
【0279】
6. 連鎖地図作製
SAS 9.1版を用いて、Illumina遺伝子型を解析した。SNP名により、データをIlluminaにより提供された染色体位置データと統合させた。別々のデータセットを、各染色体について作製した。IlluminaサンプルIDにより、乳脂肪割合測定値をデータセットに組み込んだ。SNP対立遺伝子を統合し、変動遺伝子型(genotype variable)を作製した。解析目的のために、これらの遺伝子型をアルファベット順に、すなわち、A、AC、Cなどに並べた。次いで、これらをSASにおける使用のための数値に変換した(すなわち、A、AC、Cは、0、0.25および0.5などと一致する)。各遺伝子型対において、最も低いオーダーのアルファベット遺伝子型レベルを、GLMモデリングにおける参照/基底群として用いた。遺伝子型を下記の表2にコード化した。
【0280】
各染色体について別々に解析を行った。各SNPについて別々の一般化線形モデル検定を行った(すなわち、各染色体についてPHENOTYPE=遺伝子型)。一般化線形モデルについて、下記のモデルを用いた:
y=遺伝子型+e
(式中、y=乳脂肪含量(定量的変数)、遺伝子型=特定の染色体についてのSNPマーカー、およびe=誤差または残余)。線形回帰(ANOVAモデリング)により、各SNPマーカーについてのF値およびp値を計算した。全SNPマーカーについて、0、1、2遺伝子型コード化規約を採用することにより、同一の結果を得た。各マーカーについての参照群は、最も低いオーダーのホモ接合型群であり、それは、0により示された。ヘテロ接合型群は1で示され、最も高いオーダーのホモ接合型群は2で示された。
【0281】
表2
【表2】

【0282】
BenjaminおよびHochbergの手順を採用して、誤検出率(false discovery rate) (FDR)を決定した。全3個の遺伝子型クラスおよび5またはそれ以上のカウントを有するマーカーのみが、該計算に含まれていた。連鎖地図から回帰された各マーカーについてのp値を、最も低いp値で始まる大きさ(すなわち、最も有意なマーカー)で順序づけた。下記のとおりに閾値をとることにより、最大p値を同定した:
P(i) ≦ α/(m-(i)+1)
(式中、αは、0.05に設定され; mは、マーカーの全数であり、iは、連鎖地図からのp値の大きさの昇順である)。
【0283】
全10,096個のマーカーが基準を満たしており(全3個の遺伝子型クラスおよび5またはそれ以上のカウントを有するマーカー)、該計算に含まれていた。計算された閾値は、4.9549103x10-6であった。P(j) ≦ 4.9549103x10-6(ここで、jは、個々のマーカーである)を有するマーカーが拒絶された(were rejected)。閾値未満のp値を有するものとして、6個のマーカーを同定した。最大のp値を有する相関F値を取ることにより、下記のとおりのF値閾値/FDRを作製した:
P(i) ≦ α/(m-(i)+1)。
この場合において、回帰された最大p値は、1.1817496x10-6のp値を有するARS-BFGL-NGS-18858からのものであり; ANOVAモデリングから回帰された相関F値は、20.187953515であった。
【0284】
7. 候補遺伝子配列解析
有利なミルクプロファイル表現型についての候補遺伝子としてDGAT1を同定した。ヒト遺伝子配列との相同性により、およびウシDGAT1遺伝子(登録AY065621.1; GI:18642597)のGenBankアノテーションから、イントロン/エクソン境界を決定した。エクソン1を、配列番号8-11として示されたプライマーを用いてゲノムDNAから増幅させ、エクソン2を、配列番号12および配列番号13として示されたプライマーを用いて増幅させ、エクソン3を、配列番号14および配列番号15として示されたプライマーを用いて増幅させ、エクソン4から17にわたる染色体断片を、配列番号16および配列番号17として示されたプライマーを用いて増幅させた。配列番号18-35として示されるプライマーを用いて、エクソンおよびイントロン/エクソン境界配列を両方向において決定した。
【0285】
8. 生検サンプリング
ピークおよび中間泌乳の間、さまざまな時間点において、肝臓組織を針生検により回収した。生検手順および関連する動物処理プロトコールは、AgResearch Ruakura Animal Ethics Committee (Hamilton, New Zealand)により参照され、承認されていた。組織サンプルを液体窒素で即座に凍結させ(snap-frozen)、さらなる処理まで-85℃で保存した。
【0286】
9. DGAT1 cDNAクローニングおよび酵母発現ベクターの構築
野生型Cow 352および変異体Cow 354から得られた全肝臓RNAから、DGAT1 cDNAを増幅させた。配列番号36および37として示されるプライマーを用いて、最初の10回の増幅サイクルを行い、次いで、配列番号38および該配列と対になる下記のプライマーを用いて、20回の増幅サイクルを行った: (i) 配列番号39として示されるプライマー(DGAT1-232KをコードするcDNA); (ii) 配列番号37として示されるプライマー(DGAT1-232AをコードするcDNA); または(iii) 配列番号40として示されるプライマー(DGAT1-232A-Δ418-438をコードするcDNA)。Advantage GC Genomic LA Polymerase Mix (Clontech)を用いて、全30回の増幅サイクルを行った。
【0287】
TOPO TA Cloning kit (Invitrogen)を用いて、PCR産物をpCR2.1-TOPO (Invitrogen)にクローン化し、Escherichia coli TOP10 (Invitrogen)に形質転換した。組み換えコロニーからプラスミドDNAを調製し、標準的なプロトコールを用いて挿入物の配列を決定した。
【0288】
HindIII/NotI (DGAT1-232KおよびDGAT1-232A-Δ418-438)およびHindIII/EcoRI (DGAT1-232A)を用いて、DGAT1挿入物をpCR2.1-TOPOベクターから切り出し、Rapid DNA Ligation Kit (Roche)を用いて、酵母発現ベクターpYES2 (Invitrogen)のHindIIIとNotIまたはEcoRI部位にクローン化した。すべてのDNA修飾酵素をRocheから入手した。標準的なプロトコールを用いて、プラスミド挿入物およびそれらの隣接領域のヌクレオチド配列を確認した。
【0289】
記載されたとおり(上記Ausubel et al., 1987)のエレクトロポレーション法により、DGAT1発現プラスミドおよび非組み換えベクターpYES2をH1246株に導入した(Sandager L et al., 2002, J. Biol. Chem. 277:6478-6482)。唯一の発酵性炭素源としてグルコースを含むウラシル不含最少培地(SCD-ura)上で、30℃で3日間のインキュベーションにより、形質転換体を選択した。限界希釈による2回のクローニング後、DGAT1-232A、DGAT1-232K、およびDGAT1-232A-Δ418-438対立遺伝子について、各々、配列番号37と38、配列番号38と39、および配列番号38と40として示されるプライマーを用いたPCRにより、DGAT1発現プラスミドを有する形質転換体をスクリーニングした。標準的な方法により、PCR産物の配列を決定した。組み換え酵母株は、通常、SCD-uraプレート上で維持された。
【0290】
10. パン酵母におけるDGAT1タンパク質の異種発現
組み換え酵母株を、100mL SCD-ura中、OD600nm 0.4-0.6まで増殖させた。細胞を100mL滅菌水で1回洗浄し、唯一の炭素源として2% ガラクトースを含む100mLのウラシル不含合成完全培地に再懸濁し、回転シェーカー上で、30℃で12-16時間、インキュベートした。20 OD600nmの培養物を15 mL ガラス遠心管に回収し、mRNA定量のために1 OD600nmを保持した。細胞を4000 gで5分間沈殿させ、1水量で洗浄し、50 μLのガラスビーズ破壊緩衝液(20 mM Tris-HCl (pH 7.9)、10 mM MgCl2、1 mM EDTA、5% グリセロール、1 mM DTT、0.3M 硫酸アンモニウム、完全プロテアーゼ阻害カクテル(Roche)、0.8 mM Pefabloc SC PLUS (Roche))に再懸濁した。各管に600 mgのガラスビーズ(直径450-550 μm, Sigma)を加えて、4℃で5分間、激しくボルテックスすることにより細胞を破壊した。500 μLのガラスビーズ破壊緩衝液を各管に加えて、ピペッティングにより溶解物を回収した。溶解物を、12000g-1で10分間、遠心分離し、上清を保持した。DCタンパク質アッセイ(Bio-Rad)を用いて、取り出された(cleared)溶解物のタンパク質濃度を決定した。ジアシルグリセロールトランスフェラーゼ活性を決定するために即座に溶解物を使用するか、またはそれを-80℃で保存した。
【0291】
酵母形質転換体におけるDGAT1発現の定量化のために、1 OD600nmのガラクトース誘導酵母培養物を1.5 mL エッペンドルフチューブに回収し、4000 gで5分間、沈殿させた。Yeast Protein Extraction Buffer Kit (GE Healthcare)を用いて、スフェロプラストを調製した。RNeasy kit (Qiagen) を用いて、スフェロプラストRNAを抽出した。Superscript III First Strand Synthesis Kit (Invitrogen)を用いて、400ngの全RNAをcDNAに転写した。cDNA鋳型、2x Probes Master Mastermix (Roche)、および配列番号49および50として示されるプライマー対を用いた定量的PCR反応により、組み換えDGAT1 mRNAのレベルを決定した。増幅を検出するために用いられた蛍光プローブは、Universal Probe Library #98 (Roche)(5'-CTGTGCCT-3')であった。熱サイクル条件は、下記のとおりであった: 95℃で5分間のプレインキュベーション、次いで、95℃ (10秒)、60℃ (15秒)、および72℃ (1秒)の45サイクル。LightCycler 480装置(Roche)を用いて、熱サイクルおよび蛍光検出を行った。増幅効率を評価するために、希釈した一連のプールcDNAサンプルを用いて、標準曲線を作成した。すべてのサンプルおよびスタンダードを、トリプリケートで測定した。酵母GAPDHのmRNAレベルを決定するために、配列番号51および52として示されるプライマー、および蛍光検出プローブUniversal Probe Library #82 (Roche)(5'-CTCCTCTG-3')を用いて同一のアッセイを行った。サイクル条件は、DGAT1アッセイと同一であった。ウシDGAT1 mRNAについての平均クロッシングポイント値(crossing point value) (Cp)の、酵母GAPDH mRNAについての平均Cpに対する比率をコンピューターで計算することにより、DGAT1発現レベルを決定した。
【0292】
11. 組み換えDGAT1タンパク質のジアシルグリセロールトランスフェラーゼアッセイ
オレオイル-CoAのジアシルグリセロールへの転移を、250 mM スクロース、1 mM EDTA、20 mM MgCl2、100 mM Tris-HCl (pH 7.5)、25 μg 脂肪酸不含血清アルブミン(Sigma)、40 nmol 1,2-ジオレオイル-sn-グリセロール(Sigma)、および5 nmol [1-14C]オレオイル-CoA (特異的活性50-62mCi/mmol; GE Healthcare)からなる200 μLの溶液で定量した。50 μgのタンパク質を含む浄化した酵母細胞溶解物を各反応において使用した。反応物を、37℃で2分間、プレインキュベートした。ジアシルグリセロールおよびオレオイルCoAを加えて、反応混合物を、さらに37℃で8分間、インキュベートした。15 μg/ml トリオレインを含む800 μLのクロロホルム:メタノール(1:1)を加えて混合することにより、反応を止めた。600 μLのクロロホルムを各反応物に加えて、混合し、-20℃で一晩、インキュベートした。300 μLの酸性化H2O (17 mM NaCl, 1 mM H2SO4)を加えた後、有機層を回収し、窒素流下、乾燥させた。回収した物質を20 μL アセトンに溶解し、ヘキサン/酢酸エチル(9:1 vol/vol)を用いたシリカゲル60薄層クロマトグラフィープレート(Merck)により分離した。TLCプレートを乾燥させ、PhosphorImager screen (Kodak)に48時間曝露した。Pharos FX + スキャナー(Bio-Rad)でスキャンすることにより、TLC画像を得た。以前にトリアシルグリセリド(TAG)スタンダード(Sigma)で決定された保持係数(Rf; TAGの移動距離で割った溶媒の移動距離)により、TAGを同定した。
【0293】
12. 組織生検からのミクロソームの調製
300 mgの肝臓を、4 mlの氷冷均質化培地(0.25 M スクロース、1 mM EDTA(5 mM Trisを用いてpH 7.4に緩衝化されている)中で均質化させた。PolytronホモジナイザーPT1200を用いて、氷上で均質化を行った(5のスピード設定で、約10秒間を3回)。ホモジネートを、15,000gで、4℃で30分間、遠心分離した。上清を回収し、100,000gで、4℃で1時間、遠心分離した。上清を捨て、ペレット(ミクロソーム切片)を150 μLの均質化培地に再懸濁し、-80℃で保存した。Bio-Radタンパク質アッセイを用いて、タンパク質濃度を決定した。
【0294】
13. 組織ミクロソームのジアシルグリセロールトランスフェラーゼアッセイ
オレオイル-CoAのジアシルグリセロールへの転移を、0.1 M リン酸カリウム緩衝液(pH7.4)、10 mM MgCl2、1 mM 1,2-ジオレオイル-sn-グリセロール(Sigma)、および0.2 μCi [1-14C]オレオイル-CoA (American Radiolabeled Chemicals, Inc.)からなる100 μLの溶液で定量した。40 μg タンパク質を含むミクロソームサンプルを、各反応において使用した。反応混合物を、37℃で30分間、インキュベートした。750 μLのクロロホルム:メタノール(1:1)を加えて混合することにより、反応を止めた。375 μLの酸性化H2O (17 mM NaCl, 1 mM H2SO4)を加えた後、有機層を回収し、窒素流下、乾燥させた。回収した物質を20 μL ヘキサンに溶解し、ヘキサン:エチルエーテル:酢酸(80:20:1 vol:vol:vol)を用いたシリカゲル60薄層クロマトグラフィープレート(Merck)により分離した。AGスタンダード(Sigma)と比較することによりTAGに対応する領域を同定し、TLCプレートを掻き取り、1.5ml 遠心管に移した。500 μLのOptifase Hisafe 3 (Perkin Elmer)カクテルを該遠心管に加えて、Wallac 1409 Liquid Scintillation Counter (Perkin Elmer)により、1分間あたりのカウントとして[14C]ベータ放射を測定した。
【0295】
14. 第16エクソンスプライシングの解析
第16エクソンの有無を決定するために、製造者の指示にしたがって、Qiagen RNeasy Kit (Qiagen)を用いて、Cow 363血統からの4頭の変異体および4頭の野生型ウシから得られた乳腺および肝臓生検からRNAを抽出した。簡潔には、Fastprep装置(Qbiogene)を用いて、Fastprep Lysing matrix Dカラムにより、Qiagen緩衝液RLT中で組織生検をすりつぶすことにより均質化した。RNAをRNAse不含水に溶出し、260nmでの吸光度により定量化した。RNA 6000 nano labchipおよびBioAnalyzer装置(Agilent Technologies)を用いた電気泳動により、RNA完全性を証明した。製造者の指示にしたがって、オリゴdTプライマーおよびFirst Strand cDNA Kit (Invitrogen)を用いてcDNAを作製した。
【0296】
配列番号41および42として示されるプライマー、1μl 組織cDNA(Qiagen)、Taq DNAポリメラーゼ(Qiagen)、PCR緩衝液およびQ溶液(Qiagen)を用いて、GenBank登録 NM_174693.2; GI:110350684により示されるDGAT1のコード領域の1178位から1377位の領域を増幅させた。標準的なプロトコールにしたがって、30回の増幅サイクル[94℃を30秒、60℃を30秒、72℃を30秒]後、PCR産物を1.5%アガロースゲルに溶解した。1kb+ラダー(Invitrogen)との比較により、PCR産物のサイズを決定した。予測されるアンプリコンサイズは、第16エクソンを含むか、またはそれを欠失するmRNAについて、それぞれ200および137塩基対であった。
【0297】
15. スプライシング制御モチーフの同定
スプライシング制御活性を有する配列を同定するために、ウシDGAT1遺伝子配列をRESCUE-ESEウェブサーバー(http://genes.mit.edu/burgelab/rescue-ese/)に提出した。RESCUE-ESEは、クエリー配列と実験的に有効なエクソン制御活性を有するヘキサマー配列とを比較することによりスプライシングエンハンサーモチーフを同定する(Fairbrother WG, et al., 2002, Science 297:1007-13)。ウシDGAT1配列をヒト、マウス、およびゼブラフィッシュ(Danio rerio)モチーフと比較した(Yeo G, et al., 2004, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101:15700-5)。
【0298】
16. 食餌摂取測定
第2泌乳期にあるA8078C変異についてヘテロ接合型である15頭のウシおよび15頭の非変異体ウシ(ホモ接合型AA)を、中泌乳期(11月)に14日間、屋内で飼育し、カランゲート(calan gates)を用いて新鮮な牧草を与えた(ウシを用いた食餌摂取試験におけるカランゲートの使用は、Ferris et al., 2006, Irish Journal of Agricultural Research 45: 149-156に記載されている)。各ウシは、搾乳後、1日に2回、カットされた新鮮な牧草を与えられた(約0900および1600時間/日)。95℃で48時間、3つの150gのサンプルを乾燥させることにより、新鮮な食餌の乾物量を、トリプリケートで1日に2回(午前および午後)決定した。概算の食餌許容量は、25 kg DM/ウシ/日の新鮮な牧草であった。
【0299】
午前および午後の食餌の残渣の湿重量を各ウシについて毎日記録し、上記のとおり各ウシおよび食餌についてトリプリケートで乾物量を決定した。
【0300】
結果
1. Cow 363は、稀な脂肪組成を有する多量のミルクを産生する
標準的なニュージーランドの酪農実施下、減少した脂肪割合を有する多量のミルクを産生するウシとしてCow 363を同定した。Cow 363の血統を図1に示す。有利なミルクプロファイルを有するミルクを産生するすべての動物、または有利なミルクプロファイルを有するミルクを産生する雄親となるウシに陰影を付けて示している。雄を四角で示し、雌を丸で示す。図1から明らかなとおり、Cow 363の娘のうちの3頭(346、353および354)は、有利なミルクプロファイルを有するミルクを産生し、5頭の息子のうちの3頭は、有利なミルクプロファイルを有するミルクを産生するウシの雄親となった。
【0301】
Cow 363由来のミルクの平均脂肪含量は、2.81% (標準偏差0.1%)であり、それは、ホルスタイン種についてのニュージーランド平均である4.34%よりもかなり低かった。
【0302】
Cow 363の平均脂肪産生は、ニュージーランドホルスタイン種の平均162 kg (シーズンの長さは270日)と比較して、シーズンあたり175 kg(標準偏差は26 kg; シーズンの平均長は253日)であった。
【0303】
Cow 363の平均ミルク産生は、シーズンあたり6224リットル(標準偏差は924リットル; シーズンの平均長は253日)であり、それは、ホルスタイン種についてのニュージーランド平均(4604リットル; シーズンの長さは270日)よりもかなり高かった。
【0304】
2. Cow 363のミルク特性は、遺伝性である
図1に示される血統を拡大させるために、さらなる交配を行った。Cow 363の5頭の息子からの精子を用いて、101頭の泌乳雌子孫を産生した。それらのミルクの解析は、5頭の息子のうちの3頭が低脂肪ミルクを産生するウシの雄親となることを示し、これは、これらの雄ウシが有利なミルクプロファイル表現型に関与する遺伝子座を遺伝させることを示す。さらなる雌の子孫を、Cow 363の有利なミルクプロファイルを有する娘から得た。これらのウシの乳脂肪割合を下記の表3に要約する。
【0305】
表3
マッピング集団における動物の乳脂肪割合
【表3】

【0306】
表3に示されるとおり、初期およびピーク泌乳シーズンの間にフーリエ変換赤外分光法(http://www.foss.dk) (FTIR)により決定された平均乳脂肪割合を、創始Cow 363、その7頭の娘(Cows 273、351、352、353、354、346、および357)、Cow 107 (346の娘)、Cows 108および307 (354の娘)ならびに有利なミルクプロファイルを伝える363の3頭の息子の50頭の泌乳娘について示す。乳脂肪割合がいくつかの動物において、特に、泌乳の初期において減少することは、注目されるべきである。上記の表において示されるデータは、泌乳初期の間に複数の試験データから得られた個々の動物の平均である。したがって、いくつかの動物における乳脂肪割合は、泌乳過程としてさらに減少することが予期される。これは、特性遺伝子座の遺伝学的マッピングのために使用されるデータであった。
【0307】
表3に示されるとおり、Cow 363の娘346、353、および354は、それらの母ウシと同様の最高の特性を有するミルクを産生し、一方で、娘351、352、および357は、同じ集団における非関連コントロールウシ、およびホルスタイン種のウシのニュージーランド平均と同様のミルクを産生した。娘346、353、および354由来のミルクの平均脂肪割合は、2.62% (標準偏差0.09%)であり、一方で、娘351、352、および357の乳脂平均は、4.20% (標準偏差0.43%)であった。
【0308】
Cow 363から得られたミルクの脂肪酸組成(全脂肪酸の重量%として示す)を下記の表4に示す(それは、極めて独特であった)。
【0309】
表4
Cow 363由来の乳脂の脂肪酸含量
【表4】

【0310】
表4に示されるとおり、Cow 363から得られるミルクにおける飽和脂肪酸の割合は、全脂肪酸含量の55-60%まで有意に減少し、一方で、モノ不飽和およびポリ不飽和脂肪酸の割合は、ニュージーランドにおける牧草食餌管理システム下でのホルスタイン種と比較して(MacGibbon AKH and Taylor MW, 2006, Composition and Structure of Milk Lipids. Advanced Dairy Chemistry, Vol.2. Lipids, 3rd ed., 1-42. Fox, P.F., and McSweeney, P.L.H., eds. Springer, New York)、13-33%まで有意に増加する。さらに、n-3位における炭素-炭素二重結合により特徴づけられるオメガ-3脂肪酸はまた、Cow 363から得られたミルクにおいてかなり高かった。
【0311】
下記の表5は、Cow 363の血統におけるウシから得られたミルクの固体脂肪含量(SFC)を示す。全固体脂肪の割合として示された抽出乳脂の10℃でのSFCを、血統の創始(Cow 363)、その娘346、353、および354 (有利なミルクプロファイルを有するミルクを産生する娘)の平均および標準偏差、ならびに有利なミルクプロファイルを有するミルクを産生しない同じ群における3頭の非処理コントロールウシ(コントロールウシ)の平均および標準偏差について示す。
【0312】
表5
Cow 363血統のウシから得られたミルクの10℃での固体脂肪含量(SFC)
【表5】

【0313】
表5で示されるとおり、Cow 363由来のミルクは、10℃で43.9%の固体脂肪を含んでおり、これは、飼料に基づく食餌についての平均的なウシ(57.7%、標準偏差3.3%)よりもかなり少ない。さらに、娘346、353、および354からのミルクの10℃での平均固体脂肪含量は、42.2% (標準偏差2.8%)であり、一方で、同じ群における非処理コントロールウシの平均は、56.9% (標準偏差4.2%)であった。
【0314】
下記の表6は、Cow 363血統のウシから得られたミルクの脂肪酸組成を示す。脂肪酸メチルエステル解析により決定された個々の脂肪酸を分類し、全脂肪酸の重量%として示す。結果を、血統の創始(Cow 363)、その娘346、353、および354の平均および標準偏差、娘351、352、および357の平均および標準偏差、ならびに同じ群における3頭の非処理コントロールウシ(コントロールウシ)の平均および標準偏差について示す。脂肪酸群は、飽和脂肪酸: C4:0、C6:0、C8:0、C10:0、C12:0、C13:0、C14:0、C15:0、C16:0、C17:0、C18:0、C20:0、C22:0、およびC24:0; モノ不飽和脂肪酸(MUFA): C10:1、C12:1、C14:1、C16:1、C17:1、C18:1n-9、C20:1n-11、C20:1n-9、C22:1n-9、およびC24:1; ポリ不飽和脂肪酸(PUFA): C18:2n-6、C18:3n-6、C20:2n-6、C20:3n-6、C20:4n-6、C20:3n-3、C20:4n-3、C20:5n-3、C22:4n-6、C22:5n-6、C22:5n-3、およびC22:6n-3; 不飽和脂肪酸: MUFA + PUFA; オメガ-3脂肪酸: C18:3n-3、C20:5n-3、およびC22:6n-3から構成される。
【0315】
表6
Cow 363血統のウシから得られたミルクの脂肪酸組成
【表6】

【0316】
表6で示されるとおり、娘346、353、および354からのミルクは、平均して、54.25% 飽和脂肪酸(標準偏差2.08%)、30.09% モノ不飽和脂肪酸(標準偏差1.43%)、および3.22% ポリ不飽和脂肪酸(標準偏差0.14%)を含んでいた。オメガ-3脂肪酸含量は、1.33% (標準偏差0.11%)であった。娘351、352、および357からのミルクにおいて、これらの脂肪酸群は、同じ群における非処理コントロールウシおよび種平均と同様の割合で見出された。
【0317】
Cow 363およびその6頭の娘のカゼインおよびホエイタンパク質の割合および組成は、ニュージーランドの牧草に基づく管理システム下でのホルスタイン種の通常の多様性の範囲内であった。
【0318】
Cow 363の5頭の息子のうちの3頭は、Cow 363と類似する有利なミルクプロファイル表現型を有するミルクを産生する娘の雄親となった。
【0319】
3. 候補遺伝子としてのDGAT1の同定および新規変異の検出
ジェノタイピングおよび連鎖地図の結果を図2に示す。連鎖地図は、有利なミルクプロファイル表現型と強い相関を示す、300-1,400キロ塩基(kb)の領域内の第14染色体上におけるSNPマーカー、ARS-BFGL-NGS-4939、Hapmap52798-ss46526455、およびHapmap29758-BTC-003619を同定した。連鎖地図により同定された強い相関を示すさらなるマーカーは、BFGL-NGS-18858、Hapmap24717-BTC-002824、およびHapmap24718-BTC-002945である。これらのマーカーは、ウシゲノムアセンブリ(ftp://ftp.hgsc.bcm.tmc.edu/pub/data/Btaurus/fasta/Btau20070913-freeze/)における染色体に割り当てられなかったコンティング(contig) (Chr.Un.004.115)にマップされる。
【0320】
BLASTN解析(Altschul SF et al., 1990, J. Mol. Biol. 215:403-10)により、ウシ第14染色体上の1-1,400 kbにわたる領域がヒト第8染色体上のヌクレオチド位置142,200-146,200 kbにわたる領域と相同であることを同定した。しかしながら、ウシ第14染色体配列は、ヒトヌクレオチド143,960-144,144 kbに類似する配列を欠失していた。BLASTN比較により試験されると、種間アライメントにおけるこのギャップは、ウシコンティグ配列Chr.Un.004.209およびChr.Un.004.115により閉じられていた。したがって、これらのコンティグ、ならびにその結果としてのマーカーBFGL-NGS-18858、Hapmap24717-BTC-002824、およびHapmap24718-BTC-002945は、有利なミルクプロファイル表現型についての候補領域に位置づけられる。
【0321】
候補領域内に存在する遺伝子の解析は、第14染色体上の444-447 kb領域にわたるウシDGAT1遺伝子を同定した。DGAT1は、トリグリセリド合成(Cases S et al., 1998, PNAS 95:13018-23)における最終工程、すなわち、脂肪酸とグリセロール骨格の結合を触媒するジアシルグリセロールO-アシルトランスフェラーゼ1 (EC 2.3.1.20)をコードする。
【0322】
DGAT1遺伝子が観察された有利なミルクプロファイル表現型を説明する新規変異を含むか否かを決定するために、Cows 363および346 (低脂肪割合を含む有利なミルクプロファイル)におけるコード領域およびイントロン/エクソン境界領域の配列を決定し、GenBank (登録AY065621.1; GI:18642597)に登録されたDGAT1配列、ならびにCows 351および357 (通常の脂肪割合)から得られた配列と比較した。
【0323】
DGAT1遺伝子の第16エクソンにおけるアデニン(A)からシトシン(C)ヌクレオチドへの置換(GenBank登録 AY065621.1の8078位; GI:18642597)は、cows 363および346においてヘテロ接合型(AC)であり、cows 351および357においてホモ接合型AAであった(野生型および変異体コード領域について、各々、配列番号1および43、ならびに配列番号2および44を参照のこと)。図3Aは、ウシDGAT1遺伝子のイントロン/エクソン構造を示し、図3B、3Cおよび3Dは、AからCへのヌクレオチド置換の周辺の配列を示す。
【0324】
該変異がCow 363血統における有利なミルクプロファイル表現型と共に分離するか否かを決定するために、第16エクソンの配列を、Cow 363の雄親および祖父、その5頭の息子、4頭の残りの娘、Cows 107、108、および307、ならびに該表現型を伝える息子を雄親として産まれたすべての孫娘において決定した。A8078C変異は、有利なミルクプロファイル表現型を示すすべてのウシ、およびCow 363と同様のミルクを産生する娘の雄親となったCow 363の3頭の息子において見出された。A8078C変異は、Cow 363の雄親および祖父には存在しなかった。
【0325】
A8078C変異は、ニュージーランド酪農集団において人工授精のために頻繁に用いられる185頭の雄親、ならびにBoviQuest Friesian-Jersey交配群(上記Spelman et al., 2001)を代表する80頭の雄親および1595頭の乳牛には存在しかなった。
【0326】
A8078C変異を有する哺乳類DGAT1ヌクレオチド配列は、GenBankに登録されておらず、これは、Cow 363由来の配列が新規であることを示す。
【0327】
Cow 363の血統に限定されたA8078C変異の存在、その雄親および母方の祖父における該変異の非存在、およびCow 363の母ウシにおける有利なミルクプロファイル表現型の非存在は、A8078C置換がCow 363におけるデノボ変異であることを示す。
【0328】
A8078C変異についてヘテロ接合型であるウシの乳腺および肝臓由来のmRNAの解析は、第16エクソンによりコードされる63個のヌクレオチドを欠失したより短い新規のDGAT1転写産物がさらに存在することを明らかにした(図3E)。ヘテロ接合型のウシにおいて、約半分の乳腺および肝臓DGAT1転写産物が第16エクソンを欠失しており、これは、A8078C変異が第16エクソンのスプライシングを効率的に破壊することを示す(図3D)。野生型DGAT1対立遺伝子からの転写の補償的な増加は、ヘテロ接合型のウシにおいて検出されなかった(図3E)。第16エクソンを欠失した転写産物は、A8078C変異を有する動物においてのみ観察され、他のウシにおいて見出されなかった。
【0329】
第16エクソンは、変異体プレmRNA分子の小さなサブセットにおいて、正確にスプライスされることが可能である。生じた全長成熟mRNAは、変異体DGAT1タンパク質をコードし、ここで、435位における高度に保存されたメチオニンは、ロイシン残基で置換されている(図3および4)。この非同義的な変異は、おそらく、該酵素の触媒特性に影響を与える。
【0330】
ウシ第16エクソンに相同な領域を欠失しているか、または第16エクソンによりコードされる高度に保存された21個のアミノ酸を欠失している脊椎動物DGAT1 cDNA、EST、またはタンパク質配列は、GenBankに登録されていない(また図4を参照のこと)。
【0331】
野生型ウシDGAT1遺伝子の解析は、第16エクソンの3'末端の近辺に推定上のエクソンスプライシングエンハンサーモチーフ(ESE)を同定した。推定上のESEは、より高等な脊椎動物において保存されている(8078-ATGATG-8083) (図3および図4を参照のこと)。
【0332】
ESEモチーフは、イントロン-エクソン境界に隣接する、短く機能的なシス制御配列エレメントである。スプライシング制御因子のESEへの配列特異的集合は、プレmRNA転写産物からのイントロン除去の間にスプライセオソームによるエクソンの同定を補助する(Cartegni L et al., 2002, Nat. Rev. Genet. 3:285-298; Black DL, 2003, Annu. Rev. Biochem. 72:291-336)。ESEモチーフを破壊する変異は、エクソン同定を調節し、スプライシング効率を減少させ、成熟したmRNA転写産物からの全エクソンの排除を生じさせ得る(Pfarr N et al., 2005, J. Immunol. 174:4172-4177; Steiner B et al., 2004, Hum. Mutat. 24:120-129)。
【0333】
ウシDGAT1遺伝子の3'末端の近辺において同定された推定上のESEは、Cow 363におけるA8078C変異(8078-CTGATG-8083)により破壊される(図3)。
【0334】
同等のレベルのDGAT1 mRNAを発現する組み換え酵母株において、ジアシルグリセロールトランスフェラーゼ活性は、第16エクソンによりコードされる21個のアミノ酸を欠失した組み換え変異体ウシDGAT1タンパク質において検出されなかった。対照的に、全長野生型タンパク質が同一の条件下で発現された場合に、ジアシルグリセロールトランスフェラーゼ活性は、容易に検出可能であった(図5)。
【0335】
ヘテロ接合型変異体ウシ(n=13)由来の肝臓生検からのミクロソームタンパク質調製物は、ホモ接合体野生型ウシ(n=11)からの同等なミクロソーム調製物と比較した場合に、実質的に(20% ± 4.5% 平均±SEM)および統計学的に有意な(p<0.05) [14C]オレオイル-CoAのトリアシルグリセリドへの取り込みの減少を示した(図6)。これは、A8078C変異が変異体ウシの肝臓におけるジアシルグリセロールトランスフェラーゼ活性を減少させることを示す。
【0336】
ウシにおける乳脂合成の阻害は、ミルク量およびミルクタンパク質収量の増加を生じることが示されている。例えば、トランス-10、シス-12共役リノール酸を含む牧草餌(pasture diets)の補充により誘導される乳脂減少は、ミルク量およびミルクタンパク質収量の増加を伴う(Griinari JM and Bauman DE, 2003: Update on theories of diet-induced milk fat depression and potential applications. Pages 115-156 in Recent Advances in Animal Nutrition. P. C. Garnsworthy and J. Wiseman, ed. Nottingham University Press, Nottingham, UK; Back PJ and Lopez-Villalobos N, 2004, Proc. NZ Society of Animal Production 64:150-153)。乳脂合成におけるCLAの効果は、ウシ乳腺細胞のCLA処理が、インビトロにおけるDGAT1発現を変化させなかったが(Sorensen et al., 2008, Lipids 43:903-912)、DGAT活性および合成を阻害したので、DGAT1活性における影響を介したものであると考えられる。同様に、DGAT1 232A多型の保有ウシに由来するミルクの減少した脂肪割合は、ミルク量およびミルクタンパク質収量の増加と平行して生じる(Grisart B et al., 2004, PNAS 101:2398-2403)。
【0337】
これらの観察は、Cow 363における該変異の発見が予期せぬものであり、驚くべきものであることを示している。該変異は、成熟したDGAT1 mRNA転写産物分子の多くからの第16エクソンのの誤った排除を生じる。該変異体mRNAによりコードされるDGAT1タンパク質は、脊椎動物の進化を通して高度に保存された21個のアミノ酸を欠失しており、検出可能な脂肪酸アシルCoA:ジアシルグリセロールトランスフェラーゼ活性を有さない。結果として生じたトリグリセリド合成の減少は、該変異を有するウシにおいて観察される乳脂およびタンパク質表現型を容易に説明する。
【0338】
4. 変異体ウシの飼料要求量は、野生型ウシのものと類似している
野生型ウシ(8078位においてAAホモ接合型である)の14日間にわたる自発的な乾物摂取は、1日あたりの乾物16.3 ± 0.3 kg(平均 ± SEM)であった。同じ期間について、A8078C変異についてヘテロ接合型であるウシは、16.1 ± 0.3 kg DM/日(平均 ± SEM)を消費した。
【0339】
考察
本発明は、上記のとおり、DGAT1における変異が単独で、もしくは連鎖多型と共に、または連鎖不均衡多型と共に、有利なミルクプロファイル、有利な組織プロファイル、および/または増加した成長速度を有する動物、または有利なミルクプロファイル、有利な組織プロファイル、および/または増加した成長速度を有する子孫を産生可能な動物についての選択ツールとして有用であることを認識している。該戦略は、優れた組織製品、特に、肉、および最適化されたミルク組成からの優れた乳製品の産生を可能にするであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DGAT1タンパク質またはその一部をコードするDGAT1ヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、ウシDGAT1遺伝子の第16エクソンに相当するDGAT1ヌクレオチド配列の領域内に変異を有する、核酸分子。
【請求項2】
変異がDGAT1タンパク質の機能を破壊する、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
変異が全長DGAT1タンパク質の発現を破壊する、請求項1または2に記載の核酸分子。
【請求項4】
変異がDGAT1タンパク質の酵素活性を破壊する、請求項1から3のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項5】
変異がDGAT1ヌクレオチド配列中のエクソンスプライシングモチーフを破壊する、請求項1から4のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項6】
DGAT1ヌクレオチド配列がウシDGAT1タンパク質をコードする、請求項1から5のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項7】
ウシDGAT1タンパク質がウシDGAT1遺伝子の第16エクソンによりコードされる1個またはそれ以上のアミノ酸を欠失している、請求項6に記載の核酸分子。
【請求項8】
ウシDGAT1タンパク質がウシDGAT1遺伝子の第16エクソンによりコードされるすべてのアミノ酸を欠失している、請求項6または7に記載の核酸分子。
【請求項9】
変異がGenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるヌクレオチド置換である、請求項1から8のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項10】
変異がGenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるAからCへのヌクレオチド置換である、請求項1から9のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項11】
配列番号2または44で示されるヌクレオチド配列を含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項12】
配列番号2または44で示されるヌクレオチド配列からなる、単離核酸分子。
【請求項13】
DGAT1アミノ酸配列を含む単離ポリペプチドであって、ウシDGAT1遺伝子の第16エクソンによりコードされるアミノ酸に相当するDGAT1アミノ酸配列の領域内に変異を有する、ポリペプチド。
【請求項14】
変異が該ポリペプチドの機能を破壊する、請求項13に記載のポリペプチド。
【請求項15】
変異が該ポリペプチドの酵素活性を破壊する、請求項13または14に記載のポリペプチド。
【請求項16】
変異が全長DGAT1ポリペプチドの発現を破壊する、請求項13から15のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項17】
ポリペプチドがウシDGAT1タンパク質である、請求項13から16のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項18】
配列番号4または46で示されるアミノ酸配列を含む、請求項17に記載のポリペプチド。
【請求項19】
ウシDGAT1タンパク質がウシDGAT1遺伝子の第16エクソンによりコードされる1個またはそれ以上のアミノ酸を欠失している、請求項17に記載のポリペプチド。
【請求項20】
ウシDGAT1タンパク質がウシDGAT1遺伝子の第16エクソンによりコードされるすべてのアミノ酸を欠失している、請求項17または19に記載のポリペプチド。
【請求項21】
配列番号47または48で示されるアミノ酸配列を含む、請求項17、19または20のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項22】
配列番号47または48で示されるアミノ酸配列からなる、単離ポリペプチド。
【請求項23】
ウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、ウシがDGAT1タンパク質またはその一部をコードするDGAT1ヌクレオチド配列を有し、かつ、該DGAT1ヌクレオチド配列の第16エクソン内に変異を有する核酸分子を含むか否かを決定することを含む、方法。
【請求項24】
有利なミルクプロファイルの観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、ウシがDGAT1タンパク質またはその一部をコードするDGAT1ヌクレオチド配列を有し、かつ、該DGAT1ヌクレオチド配列の第16エクソン内に変異を有する核酸分子を含むか否かを決定することを含む、方法。
【請求項25】
有利なミルクプロファイルが、全乳脂含量の減少、全乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、乳脂:タンパク質の比率の減少、および産生される乳量の増加の1またはそれ以上から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度の観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、ウシがDGAT1タンパク質またはその一部をコードするDGAT1ヌクレオチド配列を有し、かつ、該DGAT1ヌクレオチド配列の第16エクソン内に変異を有する核酸分子を含むか否かを決定することを含む、方法。
【請求項27】
ウシが請求項2から12のいずれか1項に記載の核酸分子を含むか否かを決定することを含む、請求項23から26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
ウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、ウシがDGAT1の第16エクソンによりコードされる1個またはそれ以上のアミノ酸において変異を有するDGAT1アミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか否かを決定することを含む、方法。
【請求項29】
有利なミルクプロファイルの観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、ウシがDGAT1の第16エクソンによりコードされる1個またはそれ以上のアミノ酸において変異を有するDGAT1アミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか否かを決定することを含む、方法。
【請求項30】
有利なミルクプロファイルが、全乳脂含量の減少、全乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、乳脂:タンパク質の比率の減少、および産生される乳量の増加の1またはそれ以上から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度の観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、ウシがDGAT1の第16エクソンによりコードされる1個またはそれ以上のアミノ酸において変異を有するDGAT1アミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか否かを決定することを含む、方法。
【請求項32】
ウシが請求項14から22のいずれか1項に記載のポリペプチドを含むか否かを決定することを含む、請求項28から31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
方法がポリペプチドの発現および/または活性を決定することを含む、請求項28から32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
さらに決定に基づいてウシを選択することを含む、請求項23から33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
方法がインビトロ法である、請求項23から34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
有利なミルクプロファイルを生じるウシ、または有利なミルクプロファイルを生じる子孫を産生することができるウシを選択するための方法であって、
(i) ウシがDGAT1タンパク質またはその一部をコードするDGAT1ヌクレオチド配列を有し、かつ、該DGAT1ヌクレオチド配列の第16エクソン内に変異を有する核酸分子を含むか否かを決定すること; および
(ii) 該決定に基づいてウシを選択すること
を含む、方法。
【請求項37】
有利なミルクプロファイルが、全乳脂含量の減少、全乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、乳脂:タンパク質の比率の減少、および産生される乳量の増加の1またはそれ以上から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度を生じるウシ、または有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度を生じる子孫を産生することができるウシを選択するための方法であって、
(i) ウシがDGAT1タンパク質またはその一部をコードするDGAT1ヌクレオチド配列を有し、かつ、該DGAT1ヌクレオチド配列の第16エクソン内に変異を有する核酸分子を含むか否かを決定すること; および
(ii) 該決定に基づいてウシを選択すること
を含む、方法。
【請求項39】
ウシが請求項2から12のいずれか1項に記載の核酸分子を含むか否かを決定することを含む、請求項36から38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
有利なミルクプロファイルを生じるウシ、または有利なミルクプロファイルを生じる子孫を産生することができるウシを選択するための方法であって、
(i) ウシがDGAT1の第16エクソンによりコードされる1個またはそれ以上のアミノ酸において変異を有するDGAT1アミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか否かを決定すること; および
(ii) 該決定に基づいてウシを選択すること
を含む、方法。
【請求項41】
有利なミルクプロファイルが、全乳脂含量の減少、全乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、乳脂:タンパク質の比率の減少、および産生される乳量の増加の1またはそれ以上から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度を生じるウシ、または有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度を生じる子孫を産生することができるウシを選択するための方法であって、
(i) ウシがDGAT1の第16エクソンによりコードされる1個またはそれ以上のアミノ酸において変異を有するDGAT1アミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか否かを決定すること; および
(ii) 該決定に基づいてウシを選択すること
を含む、方法。
【請求項43】
ウシが請求項14から22のいずれか1項に記載のポリペプチドを含むか否かを決定することを含む、請求項40から42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
方法がポリペプチドの発現および/または活性を決定することを含む、請求項40から43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
ポリペプチドの発現が該ポリペプチドをコードするRNAから決定される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
RNAが請求項2から12のいずれか1項に記載の核酸分子から転写される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
ポリペプチドの発現および/または活性が、該ポリペプチドの量、該ポリペプチドの非存在、および/またはウシにより発現される野生型DGAT1ポリペプチドの量と比較した場合のポリペプチドの量を測定することにより決定される、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
方法がインビトロ法である、請求項36から47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
有利なミルクプロファイルの観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、ウシのDGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルを決定することを含む、方法。
【請求項50】
有利なミルクプロファイルが、全乳脂含量の減少、全乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、乳脂:タンパク質の比率の減少、および産生される乳量の増加の1またはそれ以上から選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度の観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、ウシのDGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルを決定することを含む、方法。
【請求項52】
DGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルが該ウシから得られた核酸分子から決定される、請求項49から51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
核酸分子がDNAまたはRNAである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
請求項1から12のいずれか1項に記載の核酸分子の存在の有無が決定される、請求項49から53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
DGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルが該ウシから得られたポリペプチドから決定される、請求項49から51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
請求項13から22のいずれか1項に記載のDGAT1ポリペプチドの存在の有無が決定される、請求項49から51および55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
DGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルが、DGAT1の第16エクソン対立遺伝子との連鎖または連鎖不均衡における多型を用いて決定される、請求項49から51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
DGAT1の第16エクソン対立遺伝子との連鎖または連鎖不均衡における多型が、ウシ第14染色体上に存在し、ARS-BFGL-NGS-4939、Hapmap52798-ss46526455、Hapmap29758-BTC-003619、BFGL-NGS-18858、Hapmap24717-BTC-002824、およびHapmap24718-BTC-002945からなる群から選択される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
さらに、有利なミルクプロファイルと関連する1個またはそれ以上のさらなる遺伝子座における該ウシの対立遺伝子プロファイルを決定することを含む、請求項49、50および52から58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
遺伝子座が、乳量および/または含有量と関連する1個またはそれ以上の遺伝子中の1個またはそれ以上の多型である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
1個またはそれ以上の遺伝子中の1個またはそれ以上の多型が脂肪代謝と関連する、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
DGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルおよび1個またはそれ以上のさらなる遺伝子座における対立遺伝子プロファイルが、有利なミルクプロファイルを生じるのに相乗的に作用する、請求項59から61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
1個またはそれ以上のさらなる遺伝子座がDGAT1と同じ染色体上に位置する、請求項59から62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
多型がウシDGAT1タンパク質のアミノ酸232位におけるリシンからアラニンへの置換をコードする、請求項60から63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
1個またはそれ以上のさらなる遺伝子座がDGAT1と異なる染色体上に位置する、請求項59から62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
有利なミルクプロファイルの観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、ウシが:
(i) 野生型DGAT1の生物学的活性を有するポリペプチド(A); または
(ii) DGAT1の第16エクソンによりコードされる1個またはそれ以上のアミノ酸中に変異を有するDGAT1アミノ酸配列を有するポリペプチド(B); または
(iii)ポリペプチドAおよびポリペプチドB
をコードする核酸分子を含むか否かを決定することを含み、ポリペプチドAをコードする核酸分子の非存在およびポリペプチドBをコードする核酸分子の存在、またはポリペプチドAをコードする核酸分子およびポリペプチドBをコードする核酸分子の両方の存在が、有利なミルクプロファイルを示す、方法。
【請求項67】
有利なミルクプロファイルが、全乳脂含量の減少、全乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、乳脂:タンパク質の比率の減少、および産生される乳量の増加の1またはそれ以上から選択される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度の観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、ウシが:
(i) 野生型DGAT1の生物学的活性を有するポリペプチド(A); または
(ii) DGAT1の第16エクソンによりコードされる1個またはそれ以上のアミノ酸中に変異を有するDGAT1アミノ酸配列を有するポリペプチド(B); または
(iii)ポリペプチドAおよびポリペプチドB
をコードする核酸分子を含むか否かを決定することを含み、ポリペプチドAをコードする核酸分子の非存在およびポリペプチドBをコードする核酸分子の存在、またはポリペプチドAをコードする核酸分子およびポリペプチドBをコードする核酸分子の両方の存在が、有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度を示す、方法。
【請求項69】
核酸分子がDNAまたはRNAである、請求項66から68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
DNAが請求項2から12のいずれか1項に記載の核酸分子であるか、またはRNAが該核酸分子から転写される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
さらにポリペプチドBをコードするRNAの量を確認することを含む、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
ポリペプチドAが配列番号3または45で示されるアミノ酸配列を含む、請求項66から71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
ポリペプチドBが請求項14から22のいずれか1項に記載のポリペプチドである、請求項66から72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
有利なミルクプロファイルの観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、ウシが:
(i) 野生型DGAT1の生物学的活性を有するポリペプチド(A); または
(ii) DGAT1の第16エクソンによりコードされる1個またはそれ以上のアミノ酸中に変異を有するDGAT1アミノ酸配列を有するポリペプチド(B); または
(iii)ポリペプチドAおよびポリペプチドB
を含むか否かを決定することを含み、ポリペプチドAの非存在およびポリペプチドBの存在、またはポリペプチドAおよびポリペプチドBの両方の存在が、有利なミルクプロファイルを示す、方法。
【請求項75】
有利なミルクプロファイルが、全乳脂含量の減少、全乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、乳脂:タンパク質の比率の減少、および産生される乳量の増加の1またはそれ以上から選択される、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度の観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、ウシが:
(i) 野生型DGAT1の生物学的活性を有するポリペプチド(A); または
(ii) DGAT1の第16エクソンによりコードされる1個またはそれ以上のアミノ酸中に変異を有するDGAT1アミノ酸配列を有するポリペプチド(B); または
(iii)ポリペプチドAおよびポリペプチドB
を含むか否かを決定することを含み、ポリペプチドAの非存在およびポリペプチドBの存在、またはポリペプチドAおよびポリペプチドBの両方の存在が、有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度を示す、方法。
【請求項77】
さらにポリペプチドBの量および/または活性を確認することを含む、請求項74から76のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
ポリペプチドAが配列番号3または45で示されるアミノ酸配列を含む、請求項74から77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
ポリペプチドBが請求項14から22のいずれか1項に記載のポリペプチドである、請求項74から78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
方法がインビトロ法である、請求項66から79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
ウシのDGAT1遺伝子型を決定するための方法であて、ウシから得られた核酸分子が:
(i) 野生型DGAT1の生物学的活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子(A); または
(ii) DGAT1タンパク質をコードするDGAT1ヌクレオチド配列を有し、かつ、該DGAT1ヌクレオチド配列の第16エクソン内に変異を有する核酸分子(B)
であるか否かを決定することを含み、ウシから得られた核酸分子が異種核酸により汚染されていない、方法。
【請求項82】
核酸分子Bが請求項14から22のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
核酸分子Aが配列番号1または43で示されるヌクレオチド配列を含む、請求項81または82に記載の方法。
【請求項84】
核酸分子Bが請求項2から12のいずれか1項に記載の核酸分子である、請求項81から83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
ウシのDGAT1遺伝子型を決定するための方法であて、ウシから得られたポリペプチドが:
(i) 野生型DGAT1の生物学的活性を有するポリペプチド(A); または
(ii) DGAT1の第16エクソンによりコードされる1個またはそれ以上のアミノ酸中に変異を有するDGAT1アミノ酸配列を有するポリペプチド(B)
であるか否かを決定することを含み、ウシから得られたポリペプチドが異種ポリペプチドにより汚染されていない、方法。
【請求項86】
方法がポリペプチドの発現および/または活性を決定することを含む、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
方法がポリペプチドまたはポリペプチド由来のペプチドの質量分析を含む、請求項85に記載の方法。
【請求項88】
ポリペプチドBが請求項14から22のいずれか1項に記載のポリペプチドである、請求項85から87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
核酸分子を含むプローブであって、ストリンジェントな条件下で請求項1から12のいずれか1項に記載の核酸分子またはその相補体にハイブリダイズする、プローブ。
【請求項90】
請求項89に記載のプローブを含む、診断キット。
【請求項91】
請求項1から12のいずれか1項に記載の核酸分子を検出するためのプライマー組成物。
【請求項92】
請求項1から12のいずれか1項に記載の核酸分子またはその相補体の一部と実質的に相補的な1個またはそれ以上の核酸分子を含む、請求項91に記載のプライマー組成物。
【請求項93】
配列番号5、6および7で示されるヌクレオチド配列を有する核酸分子を含む、請求項91または92に記載のプライマー組成物。
【請求項94】
請求項91から93のいずれか1項に記載のプライマー組成物を含む、診断キット。
【請求項95】
請求項13から22のいずれか1項に記載のポリペプチドを検出するための抗体組成物。
【請求項96】
使用のための指示書と共に請求項95に記載の抗体組成物を含む、診断キット。
【請求項97】
請求項1から12のいずれか1項に記載の核酸分子を検出するための診断キットであって、核酸分子、またはその一部を増幅させるための第1および第2プライマーを含み、該プライマーが変異の上流および下流にある核酸分子のヌクレオチドと各々相補的である、キット。
【請求項98】
少なくとも一方のプライマーが、核酸分子の非コード領域と相補的なヌクレオチドを含む、請求項97に記載の診断キット。
【請求項99】
さらに変異と相補的な第3のプライマーを含む、請求項97または98に記載の診断キット。
【請求項100】
核酸分子が請求項13から22のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする、請求項97から99のいずれか1項に記載の診断キット。
【請求項101】
有利なミルクプロファイルの観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるAヌクレオチドの存在の有無を決定することを含む、方法。
【請求項102】
有利なミルクプロファイルが、全乳脂含量の減少、全乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、乳脂:タンパク質の比率の減少、および産生される乳量の増加の1またはそれ以上から選択される、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度の観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるAヌクレオチドの存在の有無を決定することを含む、方法。
【請求項104】
有利なミルクプロファイルの観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるCヌクレオチドの存在の有無を決定することを含む、方法。
【請求項105】
有利なミルクプロファイルが、全乳脂含量の減少、全乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、乳脂:タンパク質の比率の減少、および産生される乳量の増加の1またはそれ以上から選択される、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度の観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるCヌクレオチドの存在の有無を決定することを含む、方法。
【請求項107】
有利なミルクプロファイルの観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるCC遺伝子型の存在の有無を決定することを含む、方法。
【請求項108】
有利なミルクプロファイルが、全乳脂含量の減少、全乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、乳脂:タンパク質の比率の減少、および産生される乳量の増加の1またはそれ以上から選択される、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度の観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるCC遺伝子型の存在の有無を決定することを含む、方法。
【請求項110】
有利なミルクプロファイルの観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるAC遺伝子型の存在の有無を決定することを含む、方法。
【請求項111】
有利なミルクプロファイルが、全乳脂含量の減少、全乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、乳脂:タンパク質の比率の減少、および産生される乳量の増加の1またはそれ以上から選択される、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度の観点でウシの遺伝学的利点を評価する方法であって、GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるAC遺伝子型の存在の有無を決定することを含む、方法。
【請求項113】
有利なミルクプロファイルを示す遺伝子型を有するウシを選択するための方法であって、
(i) 請求項49、50および52から58のいずれか1項に記載されたとおりに、該ウシのDGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルを決定すること; および
(ii) 該決定に基づいてウシを選択すること
を含む、方法。
【請求項114】
有利なミルクプロファイルが、全乳脂含量の減少、全乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、乳脂:タンパク質の比率の減少、および産生される乳量の増加の1またはそれ以上から選択される、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度を示す遺伝子型を有するウシを選択するための方法であって、
(i) 請求項51から58のいずれか1項に記載されたとおりに、該ウシのDGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルを決定すること; および
(ii) 該決定に基づいてウシを選択すること
を含む、方法。
【請求項116】
有利なミルクプロファイルを示すDGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルを有するウシを選択するための方法であって、
(i) GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるCC遺伝子型の非存在を決定すること; および
(ii) 該決定に基づいてウシを選択すること
を含む、方法。
【請求項117】
有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度を示すDGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルを有するウシを選択するための方法であって、
(i) GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるCC遺伝子型の非存在を決定すること; および
(ii) 該決定に基づいてウシを選択すること
を含む、方法。
【請求項118】
有利なミルクプロファイルを示すDGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルを有するウシを選択するための方法であって、
(i) GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるAヌクレオチドの非存在を決定すること; および
(ii) 該決定に基づいてウシを選択すること
を含む、方法。
【請求項119】
有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度を示す遺伝子型を有するウシを選択するための方法であって、
(i) GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるAヌクレオチドの非存在を決定すること; および
(ii) 該決定に基づいてウシを選択すること
を含む、方法。
【請求項120】
有利なミルクプロファイルを示すDGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルを有するウシを選択するための方法であって、
(i) GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるCヌクレオチドの存在を決定すること; および
(ii) 該決定に基づいてウシを選択すること
を含む、方法。
【請求項121】
有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度を示す遺伝子型を有するウシを選択するための方法であって、
(i) GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるCヌクレオチドの存在を決定すること; および
(ii) 該決定に基づいてウシを選択すること
を含む、方法。
【請求項122】
有利なミルクプロファイルを示すDGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルを有するウシを選択するための方法であって、
(i) GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるCC遺伝子型の存在を決定すること; および
(ii) 該決定に基づいてウシを選択すること
を含む、方法。
【請求項123】
有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度を示すDGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルを有するウシを選択するための方法であって、
(i) GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるCC遺伝子型の存在を決定すること; および
(ii) 該決定に基づいてウシを選択すること
を含む、方法。
【請求項124】
有利なミルクプロファイルを示すDGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルを有するウシを選択するための方法であって、
(i) GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるAC遺伝子型の存在を決定すること; および
(ii) 該決定に基づいてウシを選択すること
を含む、方法。
【請求項125】
有利な組織プロファイル、有利な初乳プロファイル、および/または増加した成長速度を示すDGAT1の第16エクソン対立遺伝子プロファイルを有するウシを選択するための方法であって、
(i) GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位におけるAC遺伝子型の存在を決定すること; および
(ii) 該決定に基づいてウシを選択すること
を含む、方法。
【請求項126】
有利なミルクプロファイルが、全乳脂含量の減少、全乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、乳脂:タンパク質の比率の減少、および産生される乳量の増加の1またはそれ以上から選択される、請求項116、118、120、122および124のいずれか1項に記載の方法。
【請求項127】
Cヌクレオチド、CC遺伝子型またはAC遺伝子型の存在が、ウシから得られたゲノムDNAもしくはRNA、またはRNAから産生されるcDNAから確認される、請求項120から126のいずれか1項に記載の方法。
【請求項128】
Cヌクレオチド、CC遺伝子型またはAC遺伝子型の存在が、GenBank登録AAL49962/GI:18642598により示されるウシDGAT1タンパク質の435位のアミノ酸においてロイシンをコードするコドンの存在を検出することにより確認される、請求項120から127のいずれか1項に記載の方法。
【請求項129】
AC遺伝子型の存在が、ウシDGAT1遺伝子の435位のアミノ酸においてメチオニンをコードするコドンの存在を検出することにより確認される、請求項124から126のいずれか1項に記載の方法。
【請求項130】
Cヌクレオチド、CC遺伝子型またはAC遺伝子型の存在が、ウシから得られたDGAT1核酸分子の配列決定により確認される、請求項120から129のいずれか1項に記載の方法。
【請求項131】
決定がウシから得られたゲノムDNAもしくはRNA、または該RNAから産生されるcDNAからDGAT1核酸分子を増幅させる工程を含む、請求項120から130のいずれか1項に記載の方法。
【請求項132】
増幅がPCRにより行われる、請求項131に記載の方法。
【請求項133】
増幅が、配列番号1、2、43および44のうちの1個で示されるヌクレオチド配列または天然で生じる隣接配列であるか、またはそれに相補的である、少なくとも約10個の連続するヌクレオチドを有する核酸分子を含むプライマーの使用により行われる、請求項131または132に記載の方法。
【請求項134】
少なくとも1個のプライマーが配列番号5、6および7のうちの1個で示されるヌクレオチド配列を有する核酸分子を含む、請求項133に記載の方法。
【請求項135】
決定がウシ由来のDGAT1核酸分子の制限酵素消化の工程を含む、請求項116から134のいずれか1項に記載の方法。
【請求項136】
Cヌクレオチド、CC遺伝子型またはAC遺伝子型の存在が、ウシから得られたDGAT1核酸分子の質量分析により確認される、請求項120から129のいずれか1項に記載の方法。
【請求項137】
Cヌクレオチド、CC遺伝子型またはAC遺伝子型の存在が、1個またはそれ以上のプローブのハイブリダイゼーションにより確認され、該1個またはそれ以上のプローブが配列番号1、2、43および44のうちの1個で示されるヌクレオチド配列の一部であるか、またはそれに相補的である、ヌクレオチド配列を有する核酸分子を含む、請求項120から129のいずれか1項に記載の方法。
【請求項138】
1個またはそれ以上のプローブが、配列番号1、2、43および44のうちの1個で示されるヌクレオチド配列であるか、またはそれに相補的である、少なくとも約10個の連続するヌクレオチドを有する核酸分子を含む、請求項137に記載の方法。
【請求項139】
1個またはそれ以上のプローブが、GenBank登録AY065621/GI:18642597により示されるウシDGAT1遺伝子の8078位に対応するAヌクレオチドまたはCヌクレオチドを有する核酸分子を含む、請求項137または138に記載の方法。
【請求項140】
Cヌクレオチド、CC遺伝子型またはAC遺伝子型の存在が、ウシから得られたDGAT1ポリペプチドの解析により確認される、請求項120から126のいずれか1項に記載の方法。
【請求項141】
AC遺伝子型の存在が、GenBank登録AAL49962/GI:18642598により示されるウシDGAT1タンパク質の435位のアミノ酸においてメチオニンの存在を検出することにより確認される、請求項140に記載の方法。
【請求項142】
AC遺伝子型の存在が、GenBank登録AAL49962/GI:18642598により示されるウシDGAT1タンパク質の435位のアミノ酸においてロイシンの存在を検出することにより確認される、請求項140または141に記載の方法。
【請求項143】
ウシ群を選択する方法であって、
(i) 請求項34、36から48および113から142のいずれか1項に記載の方法を用いて複数のウシを選択すること; および
(ii) 選択されたウシを隔離および収集し、群を形成させるすること
を含む、方法。
【請求項144】
請求項143に記載の方法により選択されたウシ群。
【請求項145】
DGAT1タンパク質またはその一部をコードするDGAT1ヌクレオチド配列を含む核酸分子を含むトランスジェニック非ヒト動物であって、該核酸分子がウシDGAT1遺伝子の第16エクソンに相当するDGAT1ヌクレオチド配列の領域内に変異を有する、動物。
【請求項146】
請求項2から12のいずれか1項に記載の核酸分子を含む、請求項162に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項147】
DGAT1タンパク質またはその一部をコードするDGAT1ヌクレオチド配列を含む核酸分子を含むトランスジェニックウシであって、該核酸分子がウシDGAT1遺伝子の第16エクソンに相当するDGAT1ヌクレオチド配列の領域内に変異を有する、ウシ。
【請求項148】
請求項2から12のいずれか1項に記載の核酸分子を含む、請求項147に記載のトランスジェニックウシ。
【請求項149】
請求項145から148のいずれか1項に記載のトランスジェニック動物またはトランスジェニックウシから産生されるクローン。
【請求項150】
請求項34、36から48および113から142のいずれか1項に記載の方法により選択されたウシ。
【請求項151】
請求項150に記載のウシから産生されるクローン。
【請求項152】
請求項145から148および150のいずれか1項に記載のトランスジェニック非ヒト動物またはウシであって、該動物またはウシが、ミルクを産生するか、またはミルクを産生する子孫を生じることが可能であり、変異を有さない同じ品種の動物またはウシと比較した場合に、全乳における全乳脂の割合の減少、全乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全乳脂肪酸含量における飽和脂肪酸の割合の減少、タンパク質収量の増加、全乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、10℃で抽出された乳脂の減少した固体脂肪含量により示される脂肪硬度の減少、乳脂:タンパク質の比率の減少、産生される乳量の増加、およびラクトース収量の増加からなる群から選択される1個またはそれ以上の特性を有する、動物またはウシ。
【請求項153】
1シーズンに少なくとも6000リットルのミルクを産生する、請求項152に記載のウシ。
【請求項154】
約3%未満の全乳脂を有するミルクを産生する、請求項152または153に記載のウシ。
【請求項155】
全乳脂肪酸含量中、少なくとも約27%の不飽和脂肪酸を有するミルクを産生する、請求項152から154のいずれか1項に記載のウシ。
【請求項156】
全乳脂肪酸含量中、約57%未満の飽和脂肪酸を有するミルクを産生する、請求項152から155のいずれか1項に記載のウシ。
【請求項157】
全乳脂肪酸含量中、少なくとも約1.2%のオメガ-3脂肪酸を有するミルクを産生する、請求項152から156のいずれか1項に記載のウシ。
【請求項158】
請求項145から148、150および152から157のいずれか1項に記載のトランスジェニック非ヒト動物またはウシにより産生されるミルク。
【請求項159】
請求項158に記載のミルクから生産される製品。
【請求項160】
アイスクリーム、ヨーグルト、チーズ、乳飲料、ミルク飲料、ミルクシェイク、ヨーグルト飲料、粉乳、乳製品に基づくスポーツ栄養補助食品、食品添加物、プロテインスプリンクル(protein sprinkle)、栄養補助食品および日々の栄養補助錠剤(daily supplement tablet)からなる群から選択される、請求項159に記載の製品。
【請求項161】
請求項145から148、150および152から157のいずれか1項に記載のトランスジェニック非ヒト動物またはウシにより産生される精液または卵子。
【請求項162】
請求項145から148および150のいずれか1項に記載のトランスジェニック非ヒト動物またはウシであって、該動物またはウシが、組織を産生するか、または組織を産生する子孫を生じることが可能であり、変異を有さない同じ品種の動物またはウシと比較した場合に、全量における全脂肪の割合の減少、全脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全脂肪酸含量における飽和脂肪酸の割合の減少、タンパク質収量の増加、全脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、10℃で抽出された乳脂の減少した固体脂肪含量により示される脂肪硬度の減少、脂肪:タンパク質の比率の減少、および動物の一般的な増加した成長速度による、産生される肉量の増加からなる群から選択される1個またはそれ以上の特性を有する、動物またはウシ。
【請求項163】
請求項162に記載のトランスジェニック非ヒト動物またはウシに由来する組織または組織製品。
【請求項164】
肉、器官、毛皮、血液および血清からなる群から選択される、請求項163に記載の組織または組織製品。
【請求項165】
請求項145から148および150のいずれか1項に記載のトランスジェニック非ヒト動物またはウシであって、該動物またはウシが、初乳を産生するか、または初乳を産生する子孫を生じることが可能であり、全初乳における全初乳脂の割合の減少、全初乳脂肪酸含量における不飽和脂肪酸の割合の増加、全初乳脂肪酸含量における飽和脂肪酸の割合の減少、タンパク質収量の増加、全初乳脂肪酸含量におけるオメガ-3脂肪酸の割合の増加、初乳脂:タンパク質の比率の減少、および産生される初乳脂肪含量の増加からなる群から選択される1個またはそれ以上の特性を有する、動物またはウシ。
【請求項166】
トランスジェニック非ヒト動物を作製するためのDGAT1タンパク質またはその一部をコードするDGAT1ヌクレオチド配列を含む核酸分子の使用であって、該核酸分子がウシDGAT1遺伝子の第16エクソンに相当するDGAT1ヌクレオチド配列の領域内に変異を有する、使用。
【請求項167】
核酸分子が請求項2から12のいずれか1項に記載の核酸分子である、請求項166に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−513754(P2012−513754A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543457(P2011−543457)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際出願番号】PCT/NZ2009/000296
【国際公開番号】WO2010/087725
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(507153759)フォンテラ コー−オペレイティブ グループ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】