説明

木製フェンスおよびこれに使用する横ビーム

【課題】 木製材料を容易に交換でき、安価に構築し得る木製フェンスの提供と、そのフェンスに使用する横ビームを提供する。
【解決手段】 フェンスFは、支柱20に支持される横ビーム10に、木製の縦材を連結したものあって、横ビームは、縦材の下端を支持する下側ビーム40と、縦材の上端に覆設される上側ビーム50とで構成され、下側ビームおよび上側ビームは、適宜間隔で縦材の嵌入を許容する嵌入部42,52を有する。横ビームは、断面四角形状の筒状に成形されたビーム本体を構成し、このビーム本体の任意の一面を縦材嵌入面41とし、この縦材嵌入面41に所定間隔で縦材嵌入部42を穿設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面の主たる構成部分を木製にしてなるフェンスおよびこのフェンスに使用する横ビームに関し、特に、間伐材を利用してなるものに関する。
【背景技術】
【0002】
道路の路側に設けられる防護用フェンスや丘陵地における小動物の侵入防止フェンスは、金属製の支柱に金網を張設するものが一般的であり、その強度や耐用期間を重点としたものであった。そして、高速道路においては、道路の両側にこれらのフェンスが連続して設けられることがあり、決して景観の良い環境ではなかった。また、コンクリート塀に色彩を加え、景観を良くする工夫がされている場合もあるが、いずれにしても無機質で人工的な印象が強くならざるを得なかった。
【0003】
そこで、最近では、木製ビームを使用する防護柵(特許文献1)や表面に木質材を被覆部材とする防護柵(特許文献2)などが開発されている。前者の技術は、道路の路側に沿って立設される支柱の内側にビーム支持用ブラケットが設けられ、かつ、このブラケットには相隣り合う支柱に向けて開口する筒状カバーが設けられており、各支柱からそれぞれ延伸された木材ビームの端部を相互に突き合わせた状態で上記筒状カバーが端部を覆うように連結する構成であって、木材ビームの先端が筒状カバーに嵌装された状態でボルトが挿通され、ナットとの締着によって固定されるものであった。また、後者の技術は、所定の間隔で配置された支柱の間に、上中下3段の横梁が連結され、この横梁のうち上下について縦桟が連結されて格子状に構成されているものであって、各部材(支柱、横梁および縦桟)の表面には、いずれも木質材が接着されているものである。
【0004】
他方、環境面においては、炭素固定による地球温暖化の防止や、再生産が可能な資源として循環型社会の形成へ貢献するために、木材の利用が注目されており、木材の利用が積極的に推奨されつつある。その一環として植林事業において間伐材の使用も優先され、公共事業においても優先的に利用する計画がなされるようになっている(非特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−100384号公報(4−5頁、図1−図3)
【特許文献2】特開平8−302631号公報(2−3頁、図1)
【非特許文献1】平成16年3月愛知県発行「あいち木づかいプラン−木材利用促進に向けた取組計画(平成16年度〜18年度)」(1頁・14−15頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術は、いずれも防護柵であるために十分な強度が要求され、その取付構造が複雑なものとならざるを得ないものであった。特に、前者の従来技術にあっては、木製ビームをボルトで貫通させるため、それぞれの木製ビームを取り外すためには、各貫通ボルトを離脱させなければならず、後者の従来技術にあっては、各部材に木質材が接着されているため、これらを除去することは、すなわち、各部材を交換することを意味し、横梁、縦桟のみならず支柱をも交換することは非常に煩瑣であった。従って、これらの防護柵は、木製部分の交換を予定したものではなかった。しかし、使用する材料が木製であるため、長期間の使用により腐食し、または虫食いにより荒廃するものであり、防虫効果や防腐効果を有する塗装を施したとしても、金属製部材ほどの長期間の耐用年数を得ることができず、結局のところ、これらを木製ビームまたは木質材を取り外すことは難しく、交換するとすれば、時間と労力を要するものとなっていた。そこで、交換を容易になし得る構造のフェンスが切望されている。
【0006】
また、上記従来技術は、いずれも防護柵としての利用が前提であることから、木製部材をビームまたは横梁として用いるものである。しかし、景観を良くするためには、縦材として使用することが好ましく、しかも、所定の高さのフェンスを構築する場合は、木製ビームや横梁の数を増加せざるを得ず、この場合の交換作業は一層の時間と労力を要するものとなっていた。
【0007】
なお、公共工事において間伐材が使用されている例の中には、眩光防止柵とするものがあったが、この場合、杭のように地中に打ち込む方法によるか、または、構築された基礎に固定的に立設される方法によるものと予想されるところ、その交換は容易ではなく、また、固定作業に長時間を要し、広範囲に設けることは難しいものであった。
【0008】
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、木製材料を容易に交換でき、安価に構築し得る木製フェンスの提供と、そのフェンスに使用する横ビームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、木製フェンスにかかる本発明は、所定の高さに配置される横ビームに木製の縦材を支持してなるフェンスであって、横ビームは、縦材の下端を支持する下側ビームと、縦材の上端に覆設される上側ビームとで構成され、下側ビームおよび上側ビームは、適宜間隔で縦材の嵌入を許容する嵌入部を有してなることを特徴とする木製フェンスを要旨とするものである。この発明によれば、下側ビームは、縦材の下端において、その縦材の重量を支えることができ、上側ビームは、縦材の上端において、その傾倒を防止して縦材の姿勢を安定させ得ることとなる。従って、固定金具を要せず横ビームにより縦材の支持が可能となるものである。
【0010】
上記発明において、下側ビームおよび上側ビームは、それぞれ断面四角形状の筒状に形成されるとともに、縦材の嵌入を許容する側の面に、長手方向に所定の間隔を有して嵌入部が穿設されてなる構成とすることができる。このような構成にすれば、縦材は、穿設された嵌入部に嵌入されることによって容易に位置決めでき、当該嵌入部が設けられる間隔に沿って規則的に縦材が支持されることから、構築現場におけるフェンスの組立が容易となる。
【0011】
また、上記発明において、下側ビームおよび上側ビームは、それぞれ断面U字形に形成されるとともに、長手方向に所定の間隔を有して側壁に切り込み部が設けられ、この切り込み部により縦材の嵌入部が構成されてなるものとすることができる。このような構成にすれば、切り込み部によって位置決めされる断面形状の縦材を使用することができ、フェンスの景観を変化させることができる。すなわち、両ビームのU字形の幅寸法よりも大きい肉厚の縦材を支持する場合、その一部を上記切り込み部から外方へ露出させるように支持でき、その縦材の断面形状が円形であっても多角形であっても支持し得ることとなるのである。
【0012】
そして、上記いずれかの発明において、下側ビームは、その底面に水抜き用の貫通孔が適宜間隔で穿設されてなる構成とすれば、降雨によって流下する雨水が、下側ビームの嵌入部から当該下側ビーム内に流入した場合に、この雨水を外部に排出することができることとなる。
【0013】
また、下側ビームおよび上側ビームは、金属製の板状部材を折曲して設けられており、嵌入部が形成されるべき部分を予め切り欠いてなる構成とすることができる。このような構成にすれば、断面四角形の筒状に形成される態様、または、断面U字形に成形する態様とする両ビームを設けることができる。
【0014】
一方、横ビームかかる本発明は、木製の縦材を使用してなる木製フェンスの横ビームにおいて、断面四角形状の筒状に成形されたビーム本体を構成し、このビーム本体の任意の一面を縦材嵌入面とし、この縦材嵌入面に所定間隔で縦材嵌入部を穿設してなることを特徴とする木製フェンスの横ビームを要旨としている。この発明によれば、当該横ビームを下側ビームとして使用する場合、この下側ビームを支持したうえで、縦材嵌入部に縦材を嵌入することによって、所定位置に縦材を立設させた状態で配置することができる。そして、当該横ビームを上側ビームとして使用する場合、上記のように立設された状態の縦材の上端を同時に被覆することが可能となる。
【0015】
上記発明において、ビーム本体は、縦材嵌入部が構成される任意の面に対向する面に、所定間隔で穿設された水抜き用孔を有してなるビーム本体とすることができる。このような構成にすれば、少なくとも当該横ビームを下側ビームとして使用する場合には、ビーム本体内部に流入する雨水の排出が可能となる。
【0016】
また、本発明は、木製の縦材を使用してなる木製フェンスの横ビームにおいて、断面U字形に成形されたビーム本体を構成し、このビーム本体の平行な面の双方に所定幅の係入溝を適宜間隔で設けてことを特徴とする木製フェンスの横ビームをも要旨としている。本発明によれば、当該横ビームを下側ビームとして使用する場合、縦材を係入溝に係入させることにより、当該縦材は所定の位置に立設された状態で配置されることとなり、また、当該横ビームを上側ビームとして使用する場合、上記のように立設された縦材の上端を同時に被覆することが可能となる。
【0017】
そして、上記発明において、ビーム本体は、断面U字形の底面に所定間隔で穿設された水抜き用孔を有してなるビーム本体とすることにより、少なくとも当該横ビームを下側ビームとして使用する場合には、ビーム本体内部に流入する雨水の排出が可能となる。
【0018】
また、上記いずれかの横ビームかかる発明において、ビーム本体は、金属製の板状部材を折曲して構成することができる。この場合、当該金属製の板状部材を所定の個所で折曲することによって、断面四角形の筒状のビーム本体、または、断面U字形状のビーム本体を容易に構成することができ、しかも、縦材嵌入部が構成されるべき部分を、折曲前に穿設または切欠くことによって、複雑な加工を回避することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上記のような構成であるから、木製フェンスにかかる発明では、縦材の上下端を支持する横ビームによってのみ支持されることとなり、容易かつ安価なフェンスを提供することができるものとなっている。そして、上側ビームを支柱から分離することによって、木製材料により構成された縦材を容易に取り外すことができ、この縦材の交換が容易となる。また、縦材を木製材料で構成することから、構築されるフェンスの景観が非常に良好となる。しかも、使用する木材を間伐材とすれば、一層安価なフェンスを提供することができ、さらに、縦材を間伐材で構成する場合、一度に大量の間伐材を有効に利用することができる。
【0020】
一方、横ビームにかかる本発明では、予め所定間隔で縦材嵌入部または係入溝が設けられていることから、この嵌入部または係入溝に沿って縦材を立設することによって、所定間隔の縦材を容易に支持することができるものとなっている。また、縦材は、横ビームに対してボルト等の連結金具が使用されることなく支持されることから、組み立て作業の効率を向上させることができる。さらに、金属製板材により構成する場合、一度に大量の横ビームを加工でき、フェンス全体の価格を低下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。木製フェンスにかかる実施形態の概略を図1に示している。この図に示すように、木製フェンスFは、横ビーム10が支柱20の間に平行に横架され、この横ビーム10に縦材20が支持されて構成されている。支柱30は、適宜間隔に地中に打ち込まれ、この間隔は、通常2mとされるが、設置条件等によって適宜変更することができる。各部材10,20,30は、いずれも木製で構成することができるが、強度および加工性の観点から、横ビーム10および支柱20を金属製とし、フェンスFの大部分を形成する縦材30のみを木製とすることができるものである。
【0022】
横ビーム10は、図2に示すように、下側ビーム40と、上側ビーム50とに大別される。両ビーム40,50は、いずれも断面四角形の筒状に形成されており、その四面のうち、任意の面41,51が縦材当接面とされ、縦材30の嵌入を許容する嵌入部42,52が適宜間隔で設けられている。この嵌入部42,52は、具体的には、縦材当接面41,51を貫通する貫通孔で構成されており、縦材30が嵌入されるとき、当該縦材30が上記嵌入部42,52を貫挿することとなり、縦材30の先端が両ビーム40,50の内部表面に当接することとなるのである。
【0023】
従って、この下側ビーム40では、縦材当接面41を上向きにして支持することにより、嵌入部42が所定間隔で上向きに開口することとなるのである。そして、この各嵌入部42の開口に順次縦材30を挿入することにより、それぞれの縦材30は、下側ビーム40から立設するように配置されることとなる。また、このように複数の縦材30が立設された状態において、縦材30の上端から上側ビーム50を載置するとき、当該上側ビーム50の嵌入部52に縦材30を嵌入させることにより、各縦材30の上端を同時に被覆することが可能となるのである。
【0024】
ここで、上記下側ビーム40および上側ビーム50を構成する横ビームは、金属製の板状部材を折曲して構成されている。このような横ビームを構成するためには、図3に示すように、一枚の長方形状の板状部材60において、嵌入部が設けられるべき位置を切り欠くことによって構成されているのである。すなわち、板状部材60は、観念的に4種の部位で構成され、底面構成部61と、その両側に連続する二つの側面構成部62,63と、さらに、一方の側面構成部63に連続する上面構成部64とで構成され、この上面構成部64には、嵌入部形成部65が切り欠いて構成されているのである。そして、各構成部61〜64の境界線に沿って、順次折曲することによって、全体的には断面四角形の筒状を構成することとなるとともに、上面構成部64においては、嵌入部形成部65が形成されている部分が側面構成部63から折曲する部位が存在せず、結果的に上面構成部64によって構成される縦材当接面41(図2)において貫通する嵌入部42が形成されることとなるのである。
【0025】
上記横ビームを構成する場合、少なくとも下側ビーム40を構成するときには、底面構成部61に適宜な大きさの貫通孔66が穿設される。この貫通孔66は、下側ビーム40として構成するとき、水抜き用孔43(図2)として機能するものである。そこで、この貫通孔66は、所定の位置で折曲したとき上面構成部64が存在する位置の直下に配置されるように、その位置が調整されている。すなわち、下側ビーム40として使用する場合、嵌入部42には縦材30が嵌入され、その下端面が底面構成部61に当接することとなることから、当該縦材30の下端面の当接する部分とは異なる位置に水抜き用孔43が構成されることによって、水抜き効果を円滑に発揮させることができるからである。
【0026】
本実施形態においては、上記のような構成であるから、図4に示すように、縦材30の両端は、下側ビーム40および上側ビーム50の内部に嵌入され、その上下方向に移動が制限される。また、それぞれのビーム40,50の嵌入部42,52は、縦材30の嵌入を許容した状態で前後左右方向への移動も制限することができるものである。従って、両ビーム40,50によって連結された縦材30は、固定的に支持されることとなるのである。このように、所定の間隔に縦材30が支持されることにより、当該縦材30は、両ビーム40,50に固定金具等を使用することなく連結されることとなる。
【0027】
このように、固定金具等を使用せず縦材が連結されることから、縦材30の連結作業(フェンスの組み立て作業)は、非常に簡単となり作業性を向上させるものとなる。そこで、フェンスの組み立て作業における手順を簡単に説明する。まず、所定間隔で支柱20を地上に立設する。この支柱20の立設は、杭打ち機等による打ち込み方式によることもできるが、所定の立坑に埋め戻す方式により埋設してなることも可能であり、また、コンクリート基礎によって支持するものであってもよい。次に、埋設された支柱20の中間に、下側ビーム40のみを横架するのである。このとき、下側ビーム40の縦材当接面41は上向きとして装着する。この状態で、縦材30を下側ビーム40のそれぞれの嵌入部42に嵌入して、所定の数の縦材30を立設する状態にするのである。この縦材30の立設は、縦材30の仮止めの状態である。下側ビーム40のすべての嵌入部42に縦材30の嵌入ができれば、次に、当該縦材30の上端に上側ビーム50を載置する。この上側ビーム50の載置は、縦材30の上端を嵌入部52に嵌入させつつ行われるものである。ここで、縦材30は、下側ビーム40によって、概ね均一な状態立設されているから、各縦材30の上端を同時に上側ビーム50の嵌入部52に嵌入させることは容易である。このようにして上側ビーム50を縦材30に被覆するのである。そして、上側ビーム50による被覆が完了した状態で、当該上側ビーム50を、両側の支柱20に固定することにより、下側ビーム40および上側ビーム50の間隔は固定的となり、縦材30を安定的に支持することとなるのであり、フェンスFの構築が完成するのである。
【0028】
上記のように、フェンスFの構築が容易となる結果、縦材30を交換する際にフェンスFを分解することもまた容易となる。すなわち、上記のように構築されたフェンスFの上側ビーム50のみを撤去することにより、縦材30は、下側ビームによって立設される状態となるから、この縦材30を下側ビーム40から抜き取れば、縦材30を容易に取り外すことができ、交換用の縦材30を再度下側ビーム40によって立設させたうえで、上側ビーム50を覆設することによって交換作業が終了するのである。このように、縦材30を交換する際の作業性を著しく向上させることとなる。
【0029】
次に、上記木製フェンスFに使用できる横ビームの他の実施形態について説明する。本実施形態では、図5に示すように、断面U字形状のビーム本体70が使用されるものである。このビーム本体70には、長手方向Xに所定の間隔を有して係入溝71が設けられている。この係入溝71は、二つの対向する面72,73に同じ間隔で設けられ、かつ、当該対向面72,73の上端縁から、底面74に至るまで高さ方向Yに沿って設けられている。また、この係入溝71は、所定の幅寸法W1に調整され、支持すべき縦材30の肉厚よりも小さなものとなっている。そして、ビーム本体70に縦材30を嵌入するとき、当該縦材30が係入溝71を通過して離脱できない程度にしているのである。なお、ビーム本体70は、断面形状がU字形であるから、一つの面が開放された形状となっており、この開放側を縦材30が嵌入される側とすることにより、縦材当接面は構成されない状態となる。
【0030】
このように構成された横ビームは、縦材30の嵌入が容易となるが、ビーム本体70の幅寸法W2は、縦材30の肉厚よりも僅かに小さくなるように設けられている。従って、係入溝71が設けられていない個所においては、縦材30がビーム本体70に嵌入することはできないのである。一方、係入溝71が設けられている個所においては、縦材30の一部が、係入溝71から外方に露出し、ビーム本体70の幅寸法W2に合致する肉厚部分が当該ビーム本体70の内側に嵌入できるものである。その結果、縦材30は、上記係入溝71によって位置決めがなされることとなり、しかも、係入溝71の内側端縁は、縦材30の表面に当接することとなり、当該縦材30の係入状態を安定させることができるのである。
【0031】
上記のような横ビームを構成する場合においても、金属製の板状部材を折曲して構成することができる。すなわち、図6に示すように、一枚の長方形状の板状部材80は、底面構成部81と、その両側に連続する二つの側面構成部82,83とが観念的に区分されて構成されており、この底面構成部81と側面構成部82,83との境界線に沿って折曲することで、断面U字形状の横ビームを形成するのである。ここで、係入溝71(図5)が形成される部分は、板状部材80において、予め切り欠かれてなる係入溝構成部84,85として構成されており、側面構成部82,83を折り曲げることにより、当然に係入溝71(図5)が形成されるようになっている。また、横ビームの底面に水抜き用孔を設ける場合には、板状部材80において、底面構成部81の所定個所に貫通孔86を穿設することにより、当該板状部材80を折曲するとき、横ビームの底面に水抜き用孔を形成させることができる。
【0032】
このように構成された本実施形態は、横ビームの幅寸法よりも肉厚の大きな縦材を連結する際に使用される。すなわち、図7に示すように、使用される縦材30は断面円形の柱状(丸太形状)であり、この縦材30の外径は、横ビーム90の幅寸法W2よりも大きいものである(図7(a)参照)。そこで、上記縦材30を横ビーム90に嵌入するとき、縦材30の本体部分は横ビーム90の内部に挿入することができるが、横ビーム90の幅寸法W2を超える部分が係入溝91から外方に露出することとなるのである。このとき、縦材30の外部表面は、部分的に係入溝91の両側端縁92,93,94,95に当接することとなり、縦材30の位置が決定するとともに、横ビーム90への嵌入状態が安定的に維持されるものである。
【0033】
縦材30を上記のように位置決めさせるためには、縦材30の外径(肉厚)を所定の大きさにする必要がある。すなわち、縦材30の表面が対向する二つの係入溝91,91の各両側端縁92,93,94,95に当接することで、当該縦材30の位置が決定することから、各端縁92,93,94,95の外接円をもって縦材の外周円とする必要がある。しかしながら、少なくとも上記外接円よりも小さく、かつ、横ビーム90の幅寸法W2よりも大きな外径を有する縦材であれば、係入溝91の設けられてない位置で挿入することができず、当該係入溝91が形成されている位置のみで挿入されることとなるから、縦材30の嵌入を所定個所で許容する機能を発揮させることができるものである。
【0034】
上記と同様の原理により、四角形その他の多角形断面を有する縦材30を嵌入することも可能である(図7(b)参照)。この場合、例えば四角形断面の縦材30を使用するとすれば、対向する二つの角部を係入溝91から外方に突出させるように配置するのである。そして、上記縦材30の四角形断面の一辺の長さ(肉厚)が横ビーム90の幅寸法W2よりも大きくすることによって、縦材30は係入溝91が設けられていない位置において嵌入することができないものとなるのである。このとき、縦材30の四角形断面を正方形とし、その一辺の長さをLとすると、係入溝91の幅寸法W1は、W1=L√2−W2の関係となるように調整されることにより、縦材30の四角形断面の各辺が係入溝91の両側端縁92,93,94,95にそれぞれ当接することとなる。そして、このような幅寸法W1で構成された係入溝91を設けた場合であっても、縦材30の四角形断面の一辺の長さ(肉厚)は、上記仮定寸法Lよりも小さく、横ビームW2の幅寸法W2よりも大きければ、当該縦材30は、係入溝30が設けられている位置においてのみ、その係入が許容されることとなるのである。
【0035】
本発明の実施形態は上記のとおりであるので、容易にフェンスFを組み立てることができ、また、縦材30を交換する場合においても、容易に分解させることが可能となり、設置の際の作業性のみならず、後日のメンテナンスの際の作業性を向上させることができるものである。
【0036】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることなく種々の形態をとることができる。そして、上記実施形態おいて、各種の横ビーム10,40,50,70,90を支柱に固定するための支持構造を具体的に示していないが、適宜固定手段を採用することができる。この場合、例えば、図1のフェンスFを例に説明すれば、図8に示すように、横ビーム10と支柱20との間にスペーサ11を介しつつ両者を当接させたうえで、上記横ビーム10、その中に嵌入される縦材30、上記スペーサ11および支柱20を同時に単一のボルト12を貫通させ、ナット13の締着によって固定する方法を採ることができる。縦材30を同時に固定することは、金属製の板状部材で構成した横ビーム40,50,70を使用する場合、ボルト12とナット13の締め付けによる上記横ビーム40,50,70の変形を防止することができるのである。従って、縦材30を同時に固定できない条件下においては、横ビーム内に嵌入できる大きさの木片等を使用することにより、上記変形の防止が可能となる。また、板状部材によらない横ビームを使用する場合や、変形の可能性のない材質よりなる横ビームを使用する場合は、縦材30と同時に固定する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】木製フェンスにかかる本発明の実施形態の概略を示す説明図である。
【図2】横ビームの構成を示す説明図である。
【図3】下側ビームの展開図である。
【図4】横ビームと縦材との関係を示す説明図である。
【図5】横ビームの他の実施形態を示す説明図である。
【図6】横ビームの他の実施形態の展開図である。
【図7】横ビームの他の実施形態の使用例を示す説明図である。
【図8】支柱と横ビームとの連結状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0038】
10 横ビーム
11 スペーサ
12 貫通ボルト
13 ナット
20 支柱
30 縦材
40 下側ビーム
41,51 縦材当接面
42,52 嵌入部
43 水抜き用孔
50 上側ビーム
60,80 板状部材
61,81 底面構成部
62,63,82,83 側面構成部
64 上面構成部
65 嵌入部形成部
66 貫通孔
70 ビーム本体
71 係入溝
72,73 対向面
74 底面
84,85 係入溝構成部
90 横ビーム
91 係入溝
92,93,94,95 係入溝両側端縁
F 木製フェンス
W1 係入溝幅寸法
W2 ビーム本体幅寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の高さに配置される横ビームに木製の縦材を支持してなるフェンスであって、横ビームは、縦材の下端を支持する下側ビームと、縦材の上端に覆設される上側ビームとで構成され、下側ビームおよび上側ビームは、適宜間隔で縦材の嵌入を許容する嵌入部を有してなることを特徴とする木製フェンス。
【請求項2】
前記下側ビームおよび上側ビームは、それぞれ断面四角形状の筒状に形成されるとともに、前記縦材の嵌入を許容する側の面に、長手方向に所定の間隔を有して嵌入部が穿設されてなる請求項1記載の木製フェンス。
【請求項3】
前記下側ビームおよび上側ビームは、それぞれ断面U字形に形成されるとともに、長手方向に所定の間隔を有して側壁に切り込み部が設けられ、該切り込み部により縦材の嵌入部が構成されてなる請求項1記載の木製フェンス。
【請求項4】
前記下側ビームは、その底面に水抜き用の貫通孔が適宜間隔で穿設されてなる請求項1ないし3のいずれかに記載の木製フェンス。
【請求項5】
前記下側ビームおよび上側ビームは、金属製の板状部材を折曲して設けられており、前記嵌入部が形成されるべき部分を予め切り欠いてなる請求項2ないし4のいずれかに記載の木製フェンス。
【請求項6】
木製の縦材を使用してなる木製フェンスの横ビームにおいて、断面四角形状の筒状に成形されたビーム本体を構成し、このビーム本体の任意の一面を縦材嵌入面とし、この縦材嵌入面に所定間隔で縦材嵌入部を穿設してなることを特徴とする木製フェンスの横ビーム。
【請求項7】
前記ビーム本体は、縦材嵌入部が構成される任意の面に対向する面に、所定間隔で穿設された水抜き用孔を有してなるビーム本体である請求項6記載の木製フェンスの横ビーム。
【請求項8】
木製の縦材を使用してなる木製フェンスの横ビームにおいて、断面U字形に成形されたビーム本体を構成し、このビーム本体の平行な面の双方に所定幅の係入溝を適宜間隔で設けてことを特徴とする木製フェンスの横ビーム。
【請求項9】
前記ビーム本体は、前記断面U字形の底面に所定間隔で穿設された水抜き用孔を有してなるビーム本体である請求項8記載の木製フェンスの横ビーム。
【請求項10】
前記ビーム本体は、金属製の板状部材を折曲して構成してなる請求項6ないし9のいずれかに記載の木製フェンスの横ビーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−28761(P2006−28761A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−205237(P2004−205237)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(504260737)有限会社創柵 (6)
【Fターム(参考)】