説明

木質柱状部材の連結構造及びこの連結構造を備えた木製防護柵

【課題】木材の収縮に影響を受けることなく、木質柱状部材同士の連結状態を長期間良好に維持できる連結構造及びこの連結構造を備えた木製防護柵を提供する。
【解決手段】軸方向に設けられたスリット部と、ボルト挿通孔24,35とを有する複数の木質の柱状部材同士が、連結部材4の嵌装部に設けられたボルト挿通孔41,42がボルト挿通孔24,35に一致するようにスリット部に嵌装させ、ボルト11,12を締め込む木質柱状部材の連結構造であって、ボルト挿通孔24,35は、木質柱状部材の外壁面側がボルト11,12の胴部の径より大径で、中央にボルトの胴部を挿通可能なボルト挿通孔61を備えた筒状ゴム弾性体60が、ボルト挿通孔24,35の大径になった部分に嵌め込まれているとともに、この筒状ゴム弾性体がボルト11,12の締め込みによって筒の軸方向に圧縮され、その周面がボルト挿通孔24,35の内壁面に圧接されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所謂センタービームタイプの木製防護柵に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の木製防護柵としては、間隔をおいて立設された複数本の木製の支柱と、隣接する支柱間に架け渡された木製のビーム(横架材)とを備え、各支柱に、その支柱を径方向に2分割する縦割り溝が、支柱上端面から所定の高さ位置まで軸方向に延在して形成され、この縦割り溝に、一方向に長い金属板材からなるブラケットが、その長手方向の両端部を支柱外周面から突出させた状態に挿嵌されるとともに、縦割り溝と略直交する方向に支柱及びブラケットを貫通する第1ボルトとナットとによって、ブラケットが傾斜角度調節可能に支柱に固定されており、各ビームの両端部には、少なくともビームの軸方向の端面に開口するブラケット挿入溝が形成され、このブラケット挿入溝に、前記支柱外周面から突出したブラケットの端部が挿入されるとともに、ブラケット挿入溝と略直交する方向にビーム及びブラケットの端部を貫通する第2ボルトとナットとによって、ブラケットとビームとが固定されている構成としたものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−356821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の木製防護柵は、支柱やビームに形成した貫通孔に直接ボルトを貫通させた後、ボルトの両端側からナットを締め込んで、木材を両側から圧縮・変形させることにより、支柱及びビームとブラケットとが強固に固定されているものであるので、経年変化等によって支柱やビームが乾燥して収縮してくると、ナットと支柱やビームの外周面との間や、支柱やビームに形成した貫通孔の内壁面とボルトの外周面との間に隙間が生じて、ボルトやナットが緩んでしまうという不具合がある。その結果、ビームのガタつきや、部品の脱落が発生し、利用者に不安感を与え、ひどい場合には、支柱とビームとの連結部分が破損するなどの不具合が生じる。
以上の不具合を防止するには、定期的に点検してナットを締め直すことや、支柱やビームに形成した貫通孔にパテを注入して、貫通させるボルトとの間に生じた隙間を埋めることにより対処できるが、点検の実施に伴う管理費や点検作業者の人件費等などにより、非常にコスト高になるという弊害が生じる。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであって、簡潔な構造でありながら、木材の収縮に影響を受けることなく、支柱とビームなどの木質柱状部材同士の連結状態を長期間良好に維持できる連結構造及びこの連結構造を備えた木製防護柵を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の木質柱状部材の連結構造は、その一部に軸方向に設けられたスリット部と、このスリット部に交差する方向にボルト挿通孔とを有する複数の木質の柱状部材同士が、
それぞれ1つの連結部材に設けられた嵌装部を、この嵌装部に設けられたボルト挿通孔が木質柱状部材のボルト挿通孔に一致するように前記スリット部に嵌装させ、木質柱状部材を貫通するように配置されたボルトを締め込むことによって、連結部材を介して連結されている木質柱状部材の連結構造であって、
前記木質柱状部材のボルト挿通孔は、少なくとも木質柱状部材の外壁面側がボルトの胴部の径より大径になっていて、
中央にボルトの胴部を挿通可能なボルト挿通孔を備えた筒状ゴム弾性体が、前記木質柱状部材のボルト挿通孔の大径になった部分に嵌め込まれているとともに、この筒状ゴム弾性体が前記ボルトの締め込みによって筒の軸方向に圧縮され、その周面が木質柱状部材のボルト挿通孔の内壁面に圧接されていることを特徴とするものである。
【0005】
なお、本発明の木質柱状部材の連結構造は、連結部材の嵌装部に設けられたボルト挿通孔が、連結される木質柱状部材の軸方向に長い長孔に形成されており、木質柱状部材に対する連結部材の取り付け位置を木質柱状部材の軸方向に変更可能であってもよい。
【0006】
また、本発明の木質柱状部材の連結構造は、連結部材の嵌装部に複数個のボルト挿通孔が設けられており、木質柱状部材に複数箇所で固定されていてもよい。
【0007】
さらに、本発明の木質柱状部材の連結構造は、中央にボルト挿通孔を有するワッシャ部と、ワッシャ部から立ち上がる側壁部とを備え、木質柱状部材のボルト挿通孔の大径になった部分に嵌合可能な嵌合部と、嵌合部の両側に配置され、前記木質柱状部材の外壁面のカーブに沿って当該外壁面に当接可能な壁面当接部とを備えた変形ワッシャが、筒状ゴム弾性体の外側から木質柱状部材のボルト挿通孔の大径になった部分に嵌め込まれて、ボルトの締め込みによって、壁面当接部が木質柱状部材に圧接されていてもよい。
【0008】
また、本発明の木製防護柵は、間隔をおいて立設される複数本の木質の支柱と、隣接する支柱間にブラケットを介して連結される複数本の木質のビームとを備えてなる木製防護柵であって、支柱は、支柱の一端部を径方向に2分割するスリット部と、このスリット部に交差するように配置されたボルト挿通孔とを備えており、ボルト挿通孔は、少なくとも支柱の外壁面側がボルトの胴部の径より大径に形成され、ビームは、ビームの両端部を径方向に2分割するスリット部と、このスリット部に交差するように配置されたボルト挿通孔とを備えており、ボルト挿通孔は、少なくともビームの外壁面側がボルトの胴部の径より大径に形成され、ブラケットは、支柱のスリット部とビームのスリット部とにそれぞれ嵌装される複数の嵌装部と、各嵌装部の一部に形成されるボルト挿通孔とを備えており、支柱とビームのスリット部には、ブラケットの各嵌装部が嵌装され、支柱のボルト挿通孔には、中央にボルトの胴部を挿通可能なボルト挿通孔を備えた筒状ゴム弾性体が嵌め込まれ、ブラケットのボルト挿通孔と筒状ゴム弾性体のボルト挿通孔とを貫通するボルトがナットで締め込まれることにより、筒状ゴム弾性体が筒の軸方向に圧縮され、その周面が支柱のボルト挿通孔の内壁面に圧接した状態で、ブラケットが支柱とビームのそれぞれに固定されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明に係る木質柱状部材の連結構造によれば、
木質柱状部材のボルト挿通孔が、少なくとも木質柱状部材の外壁面側がボルトの胴部の径より大径になっていて、中央にボルトの胴部を挿通可能なボルト挿通孔を備えた筒状ゴム弾性体が、前記木質柱状部材のボルト挿通孔の大径になった部分に嵌め込まれているとともに、この筒状ゴム弾性体が前記ボルトの締め込みによって筒の軸方向に圧縮され、その周面が木質柱状部材のボルト挿通孔の内壁面に圧接されているので、
木質柱状部材が、経年変化等によって乾燥して収縮して、木質柱状部材のボルト挿通孔の径が拡大した場合には、筒状ゴム弾性体にかかる圧縮力が低減して、ボルト挿通孔内において筒状ゴム弾性体が膨張するため、木質柱状部材のボルト挿通孔の内壁面と筒状ゴム弾性体の周面との密着状態を維持することができる。したがって、木質柱状部材に対するボルトの緩みが発生しにくく、安全性の高い連結構造を提供することができる。
【0010】
請求項2記載の発明に係る木質柱状部材の連結構造によれば、
連結部材の嵌装部に設けられたボルト挿通孔が、連結される木質柱状部材の軸方向に長い長孔に形成されており、木質柱状部材に対する連結部材の取り付け位置を木質柱状部材の軸方向に変更可能であるので、連結される木質柱状部材の軸方向の長さが過不足する場合であっても、木質柱状部材に対する連結部材の取り付け位置を微調整することにより、複数の木質柱状部材をスムーズに連結することができるので、施工性がよい。また、木質柱状部材に厳密な寸法精度が要求されないため、加工コストを低減できる。
【0011】
請求項3記載の発明に係る木質柱状部材の連結構造によれば、
連結部材の嵌装部に複数個のボルト挿通孔が設けられており、木質柱状部材に複数箇所で固定されているので、連結部材を木質柱状部材に確実に連結させることができる。
【0012】
請求項4記載の発明に係る木質柱状部材の連結構造によれば、
中央にボルト挿通孔を有するワッシャ部と、ワッシャ部から立ち上がる側壁部とを備え、木質柱状部材のボルト挿通孔の大径になった部分に嵌合可能な嵌合部と、嵌合部の両側に配置され、前記木質柱状部材の外壁面のカーブに沿って当該外壁面に当接可能な壁面当接部とを備えた変形ワッシャが、筒状ゴム弾性体の外側から木質柱状部材のボルト挿通孔の大径になった部分に嵌め込まれて、ボルトの締め込みによって、壁面当接部が木質柱状部材に圧接されているので、ボルトの緩み防止機能に加えて、経年変化等による木質柱状部材の径方向への変形を防止でき、長期間、木質柱状部材の美観を保つことができる。
【0013】
請求項5記載の発明に係る木製防護柵によれば、
支柱とビームのスリット部には、ブラケットの各嵌装部が嵌装され、支柱のボルト挿通孔には、中央にボルトの胴部を挿通可能なボルト挿通孔を備えた筒状ゴム弾性体が嵌め込まれ、ブラケットのボルト挿通孔と筒状ゴム弾性体のボルト挿通孔とを貫通するボルトがナットで締め込まれることにより、筒状ゴム弾性体が筒の軸方向に圧縮され、その周面が支柱のボルト挿通孔の内壁面に圧接した状態で、ブラケットが支柱とビームのそれぞれに固定されているので、
支柱やビームが、経年変化等によって乾燥して収縮して、支柱やビームのボルト挿通孔の径が拡大した場合には、筒状ゴム弾性体にかかる圧縮力が低減して、ボルト挿通孔内において筒状ゴム弾性体が膨張するため、支柱やビームのボルト挿通孔の内壁面と筒状ゴム弾性体の周面との密着状態を維持することができ、支柱やビームに対するボルトの緩みが発生しにくく、安全性の高い木製防護柵を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態にかかる木製防護柵を図面に基づいて説明する。図1〜図3は、この木製防護柵の設置状態を示しており、図4〜図9は、この木製防護柵の各構成要素を示している。なお、図1、図10以外の図においては、支柱及びビームの表面にあらわれる木目模様の図示を省略している。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の木製防護柵1は、主に、複数本の支柱2と、隣接する支柱2,2間に架け渡されるビーム3と、支柱2とビーム3とを連結するブラケット4と、支柱2の上端部に被せられる防水キャップ5とで構成されている。
【0016】
支柱2は、図4に示すように、例えば杉の間伐材等の木材を、直径120mm、長さ1200mmの円柱状に製材してなるものである。支柱2の上部には、支柱2をその径方向に2分割する縦割り溝23が形成されている。縦割り溝23は、支柱2の上端面22からその約340mm下方となる所定の高さ位置まで、支柱2の軸方向に延在して形成されており、その溝幅は3〜4mm程度である。また、支柱2の前記縦割り溝23が形成された部分には、後述する筒状ゴム弾性体6および第1ボルト11を挿通するための貫通孔24が、所定間隔(ここでは250mm)をおいて上下に2つ形成されている。両貫通孔24は、縦割り溝23の溝方向と直交する直径方向に支柱2を貫通して穿設されている。
【0017】
ビーム3は、図5に示すように、支柱2に用いたものと同様の木材を、直径100mm,長さ1840mmの円柱状に製材してなるものである。ビーム3の両端部には、ビーム3をその径方向に2分割するブラケット挿入溝34が形成されている。ブラケット挿入溝34は、ビーム3の両端面32から中央部に向かって約165mmとなる所定の位置まで、ビーム3の軸方向に延在して形成されている。なお、ブラケット挿入溝34の溝幅は縦割り溝23と同様に3〜4mm程度である。また、ビーム3におけるブラケット挿入溝34が形成された両端部には、後述する第2ボルトを挿通するための貫通孔35が形成されている。各貫通孔35は、ブラケット挿入溝34の溝方向と直交する直径方向にビーム3を貫通して穿設されている。
【0018】
ブラケット4は、厚さ3mmのステンレス鋼板製で、図6(a)(b)に示すように、略T字状に形成されており、ビーム3との連結方向に延びる幅40mm,長さ410mmの横アーム部401と、横アーム部401の中央から垂直下方に延びる幅40mm,長さ300mmの縦アーム部402とを備えている。縦アーム部402の上端部で横アーム部401の中央部となる位置と、縦アーム部402の下端部とには、後述する第1ボルトを挿通するための透孔41が穿設されている。また、横アーム部401の長手方向の両端部分には、後述する第2ボルトを挿通するための透孔42が所定間隔(ここでは55mm)をおいて片側に2つずつ穿設されている。なお、透孔42は、横アーム部401の長手方向に長い長孔に形成されている。
【0019】
次に、本実施形態の木製防護柵1を、図1〜図3を参照しつつ説明する。木製防護柵1は、図1に示すように、複数の支柱2が、下端部を地中に埋設した状態で、所定間隔をおいて地面Gに立設されている。そして、隣接する支柱2,2間に、上下2本のビーム3,3が所定間隔をおいて水平に架け渡されている。支柱2を介して左右に隣接するビーム3同士は、ブラケット4を介して連結されるとともに、そのブラケット4を介して支柱2に支持されている。
【0020】
すなわち、図2,図3に示すように、支柱2に対するブラケット2の取り付け構造としては、まず、支柱2の貫通孔24の両端開口側からそれぞれ筒状ゴム弾性体6が挿入され、支柱2の縦割り溝23内に筒状ゴム弾性体6の先端面62が突出しないように配置されている。次に、ブラケット4の縦アーム部402が、支柱2の縦割り溝23に挿嵌されるとともに、縦アーム部402に設けられた透孔41が支柱2の貫通孔24に連通させられ、この連通した貫通孔24及び透孔41に第1ボルト11が挿通されている。その後、筒状ゴム弾性体6の先端面62がブラケット4の側面部43に突き当てられた状態で、第1ボルト11の両端部側からワッシャ7が装着され、ナット8が螺合されている。この実施形態では、第1ボルト11として、全長90mmの棒状体の両端部に、長さ15mmの雄ネジが刻設された、ボルト頭部を有さない所謂「寸切ボルト」が使用されている。また、筒状ゴム弾性体6は、長さが30mmの円筒状で、軸中心部分に第1ボルト11を挿通するためのボルト挿通孔61が貫通形成されている。
【0021】
ビーム3に対するブラケット4の取り付け構造は、基本的には支柱2に対するブラケット4の取り付け構造と同様であって、ビーム3の貫通孔35の両端開口側からそれぞれ筒状ゴム弾性体60が挿入され、ビーム3のブラケット挿入溝34内に筒状ゴム弾性体60の先端面620が突出しないように配置されている。次に、ブラケット4の横アーム部401が、ビーム3のブラケット挿入溝34に挿嵌されるとともに、横アーム部401に設けられた透孔42がビーム3の貫通孔35に連通させられ、この連通した貫通孔35及び透孔42に第2ボルト12が挿通されている。その後、筒状ゴム弾性体60の先端面620がブラケット4の側面部43に突き当てられた状態で、第2ボルト12の両端部側からワッシャ70が装着され、ナット80が螺合されている。尚、第2ボルト12も第1ボルトと同様に、棒状体の両端部に雄ネジが刻設された、ボルト頭部を有さない所謂「寸切ボルト」が使用されている。
【0022】
そして、各支柱2及び各ビーム3の位置関係や傾きなどを微調節した後に、ナット8,80を締め込むことにより、支柱2にブラケット4が固定され、ブラケット4にビーム3がそれぞれ固定される。つまり、縦割り溝23の溝内面がブラケット4の側面に摺接している上、前記ナット8を締め込むと、向かい合う筒状ゴム弾性体6の先端面62が、縦割り溝23内のブラケット4の側面43に強く圧接されるとともに、筒状ゴム弾性体6が軸方向に圧縮され、胴部が径方向に膨出し、胴部の外周面63が、支柱2の貫通孔24の内壁面に圧接されるので、これにより生じる摩擦力によって支柱2とブラケット4とが強固に固定されるのである。ビーム3とブラケット4との取り付け状態についても同様であって、ブラケット挿入溝34の溝内面がブラケット4の側面43に摺接している上、前記ナット80を締め込むと、向かい合う筒状ゴム弾性体60の先端面620が、ブラケット挿入溝34内のブラケット4の側面に強く圧接されるとともに、筒状ゴム弾性体6が軸方向に圧縮され、胴部が径方向に膨出し、胴部の外周面630が、ビーム3の貫通孔35の内壁面に圧接されるので、これにより生じる摩擦力によって支柱2とブラケット4とが強固に固定されるのである。
【0023】
支柱2とビーム3の各貫通孔24,35は、図3に示すように、保護キャップ9,90で塞がれる。保護キャップ9,90は、貫通孔24,35の開口部を塞ぐ円弧状断面のキャップ部91,910と、キャップ部91,910の下面側に延設され、第1ボルト11または第2ボルト12の端部の雄ネジに螺合する雌ネジがその内壁面に刻設された円筒状の取り付け部92,920とを備えており、FRP等の耐候性及び防水性のある材料で一体成型して構成されている。そして、キャップ部91が支柱2の外周面21に、キャップ部910がビーム3の外周面31に、それぞれ密着するまで、取り付け部92,920を第1ボルト11または第2ボルト12の端部に螺合させて締め込むことによって、支柱2またはビーム3に固定されている。なお、保護キャップ9,90の形状は、本実施形態に限られない。例えば、キャップ部91,910に延設される円筒状の取り付け部が、支柱2とビーム3の各貫通孔24,35に挿入可能な外径を有し、その外周面に雄ネジが刻設され、各貫通孔24,35内にねじ込むことによって、支柱2またはビーム3に固定されていてもよい。
【0024】
防水キャップ5は、図2に示すように、支柱2の上端部を挿入可能な内径を有する円筒状の周壁部51と、この周壁部51の上端開口を塞ぐ円弧状断面の頂壁部52とを備えており、保護キャップ9,90と同様に、FRP等の耐候性及び防水性のある材料で一体成型して構成されている。防水キャップ5は、前記のようにブラケット4を取り付けた後に、支柱2の上端部22に外嵌され、周壁部51を貫通して支柱2に達する木ネジ53をねじ込むことによって、支柱2に固定されている。
【0025】
以上のように、本実施形態の木製防護柵1は、支柱2と第1ボルト11との間に筒状ゴム弾性体6を介在させるとともに、ビーム3と第2ボルト12との間に筒状ゴム弾性体60を介在させたので、ナット8,80の締め込みによって、筒状ゴム弾性体6,60の先端面62,620が、ブラケット4の側面43に強く圧接されるとともに、筒状ゴム弾性体6,60の胴部の外周面63,630が、支柱2またはビーム3の貫通孔24,35の内壁面に圧接され、これにより生じる摩擦力によって、支柱2とブラケット4との連結部分およびビーム3とブラケット4との連結部分とを、それぞれ強固に固定させることができる。
【0026】
そして、支柱2やビーム3が、経年変化等によって乾燥して収縮して、支柱2やビーム3の貫通孔24,35の径が拡大した場合には、筒状ゴム弾性体6,60にかかる圧縮力が低減して、支柱2やビーム3の貫通孔24,35内において筒状ゴム弾性体6,60が膨張するため、支柱2の貫通孔24の内壁面と筒状ゴム弾性体6の外周面63との密着状態およびビーム3の貫通孔35の内壁面と筒状ゴム弾性体60の外周面630との密着状態を維持することができ、第1ボルト11,第2ボルト12の緩みが発生しにくい。したがって、第1ボルト11,第2ボルト12は勿論のこと、ブラケット4やブラケット4に連結したビーム3のガタツキが発生しにくく、安全性の高い木製防護柵1を提供することができる。
【0027】
また、ブラケット4の横アーム部401にかかる透孔42の形状を長孔形状としたので、ビーム3の長さにばらつきがある場合でも、ビーム3の貫通孔35に対するブラケット4の透孔42の位置をずらせることにより、スムーズに連結することができるため、施工性がよい。また、ビーム3に厳密な寸法精度が要求されないため、加工コストを低減できる。
【0028】
また、ブラケット4の縦アーム部402の上下2箇所に透孔41を設けるとともに、ブラケット4の横アーム部401の軸方向2箇所に透孔42を設け、ブラケット4を支柱2およびビーム3のそれぞれに軸方向2箇所で固定するようにしたので、ブラケット4を支柱2およびビーム3のそれぞれに確実に固定することができ、ブラケット4やブラケット4に連結したビーム3のガタツキをより効果的に防止できる。
【0029】
さらに、ビーム3のブラケット挿入溝34を、ビーム3の両端部がその径方向に2分割されるように形成したので、ビーム3のブラケット挿入溝34を、支柱2に固定されたブラケット4の横アーム部401に嵌装させるときに、ブラケット4の上下いずれの方向からでもビーム3を取り付けることができるし、木製防護柵1を傾斜面に設置する場合など、支柱2に固定されたブラケット4の横アーム部401にビーム3を所定角度傾斜させて嵌装させる場合には、ビーム3の傾斜角度を自由に設定できるので、作業性・汎用性に優れる。
【0030】
なお、本発明にかかる木製防護柵が、前記説明したものに限定されないことは言うまでもなく、例えば支柱及びビームの直径・長さや、ブラケットの形状・寸法等は、前記で示したものに限られず,必要に応じて種々の設計変更が可能である。例えば、支柱2とブラケット4との取り付け箇所、ビーム3とブラケット4の取り付け箇所はそれぞれ2箇所に限られず、1箇所でもよいし3箇所以上であってもよい。さらに、ブラケットの形状は、例えば、図7(a)に示すように、縦アーム部402と、縦アーム部402の上下両端部に配置される横アーム部401とを備えた略エ字状のブラケット4aであってもよいし、図7(b)に示すように、縦アーム部402と、縦アーム部402の上端から一方向に延びる横アーム部401とを備えた略L字状のブラケット4bであってもよい。
【0031】
また、前記では、隣接する支柱2,2間に2本のビーム3,3が架け渡された「2段ビーム」の木製防護柵1を示したが、隣接する支柱2,2間に架け渡されるビーム3の数は1本でも3本以上であっても構わない。
【0032】
また、前記では、第1ボルト11,第2ボルト12としてボルト頭部を有しない寸切りボルトを用いたが、例えば六角ボルト等の頭部を有するボルトを使用しても構わない。さらに、前記では、第1ボルト11,第2ボルト12は、その両端部に雄ネジが刻設されているが、ボルトの全長に亘って雄ネジが刻設されていてもよい。
【0033】
また、前記では、ブラケット4の横アーム部401,縦アーム部402をそれぞれ支柱2及びビーム3への取り付けに使用したが、図10に示すように、支柱2及びビーム3に取り付けずに余ったアームを利用して、案内看板Pなどを保持させてもよい。
【0034】
また、支柱2とビーム3に形成されている貫通孔24,35は、縦割り溝23またはブラケット挿入溝34の溝方向と直交する直径方向に、筒状ゴム弾性体6,60と同一の径で穿設されているが、孔径はこれに限定されるものではなく、少なくとも支柱2とビーム3の外周面側が筒状ゴム弾性体6,60を挿入可能な内径であればよい。すなわち、支柱2とビーム3に形成されている貫通孔24,35は、筒状ゴム弾性体6を挿嵌可能な大径部と、第1ボルト11または第2ボルト12を挿入可能で、縦割り溝23またはブラケット挿入溝34に連通する小径部とを備えていてもよい。この場合でも、筒状ゴム弾性体6,60が貫通孔24,35の大径部の内壁面に対して圧接することによる摩擦力によってボルトの緩みを防止できる。
【0035】
なお、本実施形態では、本発明にかかる木質柱状部材の連結構造を有する構造物として、木製防護柵1を例に挙げて説明したが、構造物はこれに限られることはなく、複数の木質柱状部材を本発明の連結構造で連結するものであればよい。したがって、例えば、公園に設置される木製遊具や、フィールドアスレチック用の木製構造物であってもよいし、椅子やテーブルなどの木製家具等であってもよい。
【0036】
次に、筒状ゴム弾性体6,60とナット8,80との間に介装されるワッシャの別の実施形態を説明する。本実施形態のワッシャは、金属製の板材で形成されており、図8,図9に示すように、中央に第1ボルト11または第2ボルト12を挿通するためのボルト挿通孔14を有するワッシャ部150と、ワッシャ部150の両側から立ち上がる側壁部151とを備え、支柱2またはビーム3の貫通孔24,35に嵌合可能な断面視略コの字上の嵌合部15と、嵌合部15の両側に配置され、支柱2またはビーム3の外壁面のカーブに沿って当該外壁面に当接可能な壁面当接部16とを備えた変形ワッシャ7aである。
【0037】
そして、図8に示すように、変形ワッシャ7aの嵌合部15を筒状ゴム弾性体6,60の外側から支柱2またはビーム3の貫通孔24,35に嵌合させ、ワッシャ部150を筒状ゴム弾性体6,60の後端面に当接させるとともに、壁面当接部16を支柱2またはビーム3の外壁面21,31に当接させた後、変形ワッシャ7aのボルト挿通孔14と筒状ゴム弾性体6,60のボルト挿通孔61,610とに第1ボルト11,第2ボルト12を挿通させ、第1ボルト11,第2ボルト12の端部をナット8,80で締め込んで、変形ワッシャ7aを支柱2またはビーム3に固定する。
【0038】
ところで、支柱2とビーム3には、その端部を径方向に2分割する縦割り溝23とブラケット挿入溝34が形成されているが、経年変化等によって木材が乾燥し収縮すると、溝に対向する両側の半割部分が、径方向外向きに反り返り、木材が変形してしまう。
本実施形態の変形ワッシャ7aによれば、第1ボルト11,第2ボルト12の締め込みによって、ワッシャ部150が筒状ゴム弾性体6,60の後端面に圧接されているとともに、壁面当接部16が支柱2またはビーム3の外壁面21,31に圧接されているので、第1ボルト11,第2ボルト12の緩み防止機能に加えて、上述したような木材の変形を防止でき、長期間、支柱2とビーム3の美観を保つことができる。
【0039】
なお、上記の変形ワッシャ7aは、一実施形態であって、上記形状に限定されるものではない。すなわち、支柱2またはビーム3の貫通孔24,35に嵌合する嵌合部と、支柱2またはビーム3の外壁面に圧接される壁面当接部を備えていれば、他の形状であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係る木製防護柵の水平地への設置状態を示す正面図である。
【図2】一部を断面で示した図1の要部拡大正面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図4(a)は支柱の一部省略側面図であり、図4(b)は図4(a)のB−B線に沿う断面図である。
【図5】図5(a) はビームの軸方向の端面を示した側面図であり、図5(b)は図5(a)のC−C線に沿う一部省略断面図である。
【図6】図6(a)はブラケットの正面図であり、 図6(b)は図6(a)のD−D線に沿う断面図である。
【図7】図7(a)は別のブラケットの正面図であり、図7(b)はさらに別のブラケットの正面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る変形ワッシャの支柱またはビームへの取り付け状態を示す要部拡大断面図である。
【図9】本実施形態に係る変形ワッシャの斜視図である。
【図10】本発明の一実施形態に係るブラケットの他の使用状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 木製防護柵
2 支柱(木質柱状部材)
24 貫通孔(木質柱状部材に設けられたボルト挿通孔)
3 ビーム(木質柱状部材)
35 貫通孔(木質柱状部材に設けられたボルト挿通孔)
4 ブラケット(連結部材)
41,42 ボルト挿通孔(連結部材の嵌装部に設けられたボルト挿通孔)
6,60 筒状ゴム弾性体
61,610 ボルト挿通孔(筒状ゴム弾性体の中央部に設けられたボルト挿通孔)
7a 変形ワッシャ
11 第1ボルト(ボルト)
12 第2ボルト(ボルト)
14 ボルト挿通孔(変形ワッシャ7aに設けられたボルト挿通孔)
15 嵌合部
150 ワッシャ部
151 側壁部
16 壁面当接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その一部に軸方向に設けられたスリット部と、このスリット部に交差する方向にボルト挿通孔とを有する複数の木質の柱状部材同士が、
それぞれ1つの連結部材に設けられた嵌装部を、この嵌装部に設けられたボルト挿通孔が木質柱状部材のボルト挿通孔に一致するように前記スリット部に嵌装させ、木質柱状部材を貫通するように配置されたボルトを締め込むことによって、連結部材を介して連結されている木質柱状部材の連結構造であって、
前記木質柱状部材のボルト挿通孔は、少なくとも木質柱状部材の外壁面側がボルトの胴部の径より大径になっていて、
中央にボルトの胴部を挿通可能なボルト挿通孔を備えた筒状ゴム弾性体が、前記木質柱状部材のボルト挿通孔の大径になった部分に嵌め込まれているとともに、この筒状ゴム弾性体が前記ボルトの締め込みによって筒の軸方向に圧縮され、その周面が木質柱状部材のボルト挿通孔の内壁面に圧接されていることを特徴とする木質柱状部材の連結構造。
【請求項2】
連結部材の嵌装部に設けられたボルト挿通孔が、連結される木質柱状部材の軸方向に長い長孔に形成されており、木質柱状部材に対する連結部材の取り付け位置を木質柱状部材の軸方向に変更可能であることを特徴とする請求項1記載の木質柱状部材の連結構造。
【請求項3】
連結部材の嵌装部に複数個のボルト挿通孔が設けられており、木質柱状部材に複数箇所で固定されていることを特徴とする請求項1または2記載の木質柱状部材の連結構造。
【請求項4】
中央にボルト挿通孔を有するワッシャ部と、ワッシャ部から立ち上がる側壁部とを備え、木質柱状部材のボルト挿通孔の大径になった部分に嵌合可能な嵌合部と、嵌合部の両側に配置され、前記木質柱状部材の外壁面のカーブに沿って当該外壁面に当接可能な壁面当接部とを備えた変形ワッシャが、筒状ゴム弾性体の外側から木質柱状部材のボルト挿通孔の大径になった部分に嵌め込まれて、ボルトの締め込みによって、壁面当接部が木質柱状部材に圧接されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の木質柱状部材の連結構造。
【請求項5】
間隔をおいて立設される複数本の木質の支柱と、隣接する支柱間にブラケットを介して連結される複数本の木質のビームとを備えてなる木製防護柵であって、
支柱は、支柱の一端部を径方向に2分割するスリット部と、このスリット部に交差するように配置されたボルト挿通孔とを備えており、ボルト挿通孔は、少なくとも支柱の外壁面側がボルトの胴部の径より大径に形成され、
ビームは、ビームの両端部を径方向に2分割するスリット部と、このスリット部に交差するように配置されたボルト挿通孔とを備えており、ボルト挿通孔は、少なくともビームの外壁面側がボルトの胴部の径より大径に形成され、
ブラケットは、支柱のスリット部とビームのスリット部とにそれぞれ嵌装される複数の嵌装部と、各嵌装部の一部に形成されるボルト挿通孔とを備えており、
支柱とビームのスリット部には、ブラケットの各嵌装部が嵌装され、支柱のボルト挿通孔には、中央にボルトの胴部を挿通可能なボルト挿通孔を備えた筒状ゴム弾性体が嵌め込まれ、ブラケットのボルト挿通孔と筒状ゴム弾性体のボルト挿通孔とを貫通するボルトがナットで締め込まれることにより、筒状ゴム弾性体が筒の軸方向に圧縮され、その周面が支柱のボルト挿通孔の内壁面に圧接した状態で、ブラケットが支柱とビームのそれぞれに固定されていることを特徴とする木製防護柵。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−57301(P2006−57301A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−239196(P2004−239196)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(595092477)岡田産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】