説明

杭穴掘削ヘッド、杭穴掘削ヘッドの掘削腕の位置確認方法

【課題】掘削腕20の揺動角度を測定することにより、掘削腕20の長さを考慮して、その深さでの杭穴径を、地上にてリアルタイムで把握し、全長に亘る正確な杭穴掘削を保証できる。
【解決手段】揺動軌跡に沿った第二センサー27A、28Aを有するヘッド本体1の水平軸19に、第一センサー27、28を有する掘削腕20、20を揺動自在に取り付けて掘削ヘッド30とする。掘削ロッド40を正回転すると、掘削刃25で径Dの杭穴軸部42を掘削し(a。小径掘削状態)、逆回転で径Dの拡底根固め部43を掘削する(b。大径掘削状態)。この際、第一センサー27が、小径掘削で第二センサー27Aの27Abに位置し、大径掘削で第二センサー27Aの27Abに位置するので、揺動角度データが地上に送られる。掘削ロッド40を回転しないと、第一センサー27は第二センサー27Aの27Aaに位置し、掘削角度無しのデータが送られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地盤に杭穴を掘削する際に使用する杭穴掘削ヘッドであって、小径の軸部に対して大径の拡大部を1台の掘削ヘッドで掘削できる杭穴掘削ヘッド、及びこの杭穴掘削ヘッドに使用する杭穴掘削ヘッドの掘削腕の位置確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、杭穴掘削して、杭穴内に鉄筋かごを納めてコンクリートを充填する現場造成杭や、杭穴掘削して杭穴内に既製杭を納める先掘工法、杭穴を掘削しながら既製杭を杭穴内に徐々に下降して納める中掘工法などが採用されている。このいずれの場合でも、杭穴の底等の径を杭穴の軸部より拡大する場合があった。
【0003】
この場合、1つの掘削ヘッドで杭穴軸部(小径)と杭穴拡底部(大径)の杭穴を掘削する場合に、軸部掘削用の掘削刃とは別に、拡大用の掘削刃を備え、油圧で掘削刃を開き(特許文献1)、または空気圧で拡大用の掘削刃を開く構造(特許文献2)が提案されていた。
【0004】
しかし、油圧や空気圧を使用する構造では(とりわけ油圧)、装置が大型化するので、簡易な構造で、小さな装置で大径の杭穴掘削ができる装置として、先端に掘削刃を設けた掘削腕を土圧で揺動させて、揺動方向で掘削径を変化させる掘削ヘッドが提案されている(特許文献3、4)。
【0005】
また、掘削ロッドへの各種センサーの適用については、オーガーの油圧モータの供給圧や回転数を感知して効率良い動力の供給(内燃機関に制御)を図る提案(特許文献5)、掘削ロッドの傾斜を感知して垂直を維持する提案(特許文献6)、また、杭の長さを検知して埋設杭の本数を管理する提案(特許文献7)がなされている。
【特許文献1】特開昭63−184612
【特許文献2】特開平3−221697
【特許文献3】特開平3−260279
【特許文献4】特開2005−307496
【特許文献5】特開2000−73680
【特許文献6】特開平11−148290
【特許文献7】特開平7−11643
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
杭穴内で使用される掘削ヘッドでは、地上から掘削ヘッドの状態(軸部掘削状態か拡大径掘削状態)を目視することができず、油圧・空気圧を使用する構造では、供給した媒体の量や圧力で推定していたが、操作は確実であるが装置が大型化し、通常10m程度のロッドを連結しながら50m以上を掘削する場合もあり、油圧管や空気圧管の圧力を維持して連結する必要があり、連結構造に工夫が必要であり、連結に時間を要し、工期の短縮の障害となるおそれがあった(特許文献1、2)。
【0007】
また、掘削ロッドの回転方向を変えて掘削腕を揺動させて土圧で開く構造の掘削ヘッドの場合には、簡易な構造であり、先端の掘削ヘッドで完結しているので、上下の連結が簡略化でき、回転方向を把握することで、掘削腕の状況を把握することができた。しかし、直接的に目視で掘削径の把握、即ち掘削腕の揺動状態を確認することはできなかった。
【0008】
また、掘削ヘッドの掘削径の把握に各種センサーを使用する提案はなされていない。従って、いずれの場合も、拡開したヘッドの様子を地上から把握することができず、より確実に開いていることを検証する手段が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
然るにこの発明は、ヘッド本体に揺動自在に掘削腕を取り付けた掘削ヘッドで、水平軸に角度センサーを設け、あるいは掘削腕に第一センサーを設け、ヘッド本体に第一センサーの相対位置を感知する第二センサーを設けたので、前記問題点を解決した。
【0010】
即ちこの発明は、上端部に掘削ロッドとの連結部を有するヘッド本体の両側に、水平軸を介して、下端部に掘削刃を有する掘削腕の上端部を、揺動自在に取り付けしてなる掘削ヘッドにおいて、前記ヘッド本体又は掘削腕に、前記水平軸に対する前記掘削腕の揺動角度を感知するセンサーを取り付けると共に、前記センサーから地上へのデータ送信手段を設けたことを特徴とする杭穴掘削ヘッドである。
【0011】
また、他の発明は、上端部に掘削ロッドとの連結部を有するヘッド本体の両側に、水平軸を介して、下端部に掘削刃を有する掘削腕の上端部を、揺動自在に取り付けしてなる掘削ヘッドにおいて、前記掘削腕のヘッド本体側の面に第一センサーを取り付け、前記掘削腕が揺動した際に前記第一センサーの軌道に合わせて、前記ヘッド本体に第二センサーを取り付けし、前記掘削ヘッド内又は地上に、位置確認手段、データ送信手段を設けてなり、前記位置確認手段は、前記第一センサー又は第二センサーは、第二センサーの軌道の長さ方向における第一センサーの相対位置を関知する機能を有し、前記データ送信手段は、その位置データの情報を地上に伝える機能を有することを特徴とする杭穴掘削ヘッドである。また、前記において、掘削腕の上端に上方突部を形成し、前記掘削腕で、水平軸の下方と前記上方突部に夫々第一センサーを取り付けし、ヘッド本体に、前記各第一センサーに対応させた第二センサーを夫々取り付けたことを特徴とする杭穴掘削ヘッドである。
【0012】
また、前記各発明において、ヘッド本体又は掘削腕に、各センサーの作動用電源を収容する杭穴掘削ヘッドである。また、水平軸に動力装置を連結してなり、該動力装置は掘削腕を一方の側又は両方の側に選択して強制的に揺動させることができる機能を有したことを特徴とする杭穴掘削ヘッドである。
【0013】
また、他の発明は、上端部に掘削ロッドとの連結部を有するヘッド本体の両側に、水平軸を介して、下端部に掘削刃を有する掘削腕の上端部を、揺動自在に取り付けしてなる掘削ヘッドにおいて、
(1) 前記掘削腕で前記ヘッド本体側の面に基準点を設定し、前記ヘッド本体に前記基準点の揺動軌跡に対応させて、揺動範囲を設定し、
(2) 前記基準点が、前記揺動範囲内のどこに位置するかの位置情報を取得することにより、
(3) 掘削腕の揺動角度を確認する。
ことを特徴とする杭穴掘削ヘッドの掘削腕の位置確認方法である。
【発明の効果】
【0014】
水平軸周りに揺動自在の掘削腕を有する掘削ヘッドで、掘削腕のヘッド本体側の面に第一センサーを取り付け、掘削腕が揺動した際に第一センサーの軌道に合わせた第二センサーを取り付けて掘削ヘッドを構成したので、第一センサーを基準点として、掘削腕の揺動に対応して、基準点である第一センサーが、第二センサーの揺動範囲のどこに位置しているかのデータを地上に送ることができ、掘削腕の揺動角度を地上で確認できる。また、水平軸に対する揺動腕の揺動角度を感知するセンサーを設けたので、掘削腕の揺動角度を地上で確認できる。
【0015】
従って、地上で、掘削腕の長さを適用すれば、現在掘削している深さにおける掘削径を目視により確認できる効果がある。従って、掘削電流値データや掘削ヘッドの深さデータ、N値データ等と合わせて処理すれば、正確な杭穴を築造できる効果がある。例えば、ある深さで掘削腕の揺動が少なく、杭穴径が小さくなった場合でも、その情報が瞬時に把握できるので、その深さを繰り返し掘削することで、所定の杭穴径に仕上げることができる。
【0016】
また、センサーを2箇所以上に設ければ、いずれか一方のセンサーに不都合が生じた場合であっても、他方のセンサーからの情報で、掘削径の把握ができる効果がある。
【0017】
また、センサー作動用の電源を掘削ヘッド内に内蔵すれば、地上からの電源供給を不要にできるので、地上への配線を簡略化できるので掘削ロッドの上下の連結部分の構造を簡略化できる。更に、無線での送信も可能であり、この場合には配線自体を省略できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
掘削ロッド40に連結するための連結部11を有するヘッド本体1に、水平軸19で揺動自在に掘削腕20、20を取り付けて、掘削ヘッド30を構成する(図1)。掘削ヘッド30は、掘削ロッド40掘削腕20の先端に掘削刃25を有し、掘削ロッド40を回転しない場合には、掘削腕20、20は下方に垂れた状態にあり(図1(a)。下垂れ状態)、掘削ロッド40を正回転することにより、一側に矢示31のように、掘削腕20が土圧で振れて、掘削刃25、25で径Dの杭穴軸部42を掘削できる(図2(a)。小径掘削状態)。また、掘削ロッド40を逆回転することにより、一側に矢示32のように、掘削腕20が土圧で振れて、掘削刃25、25で径Dの拡底根固め部43を掘削できる(図2(b)。大径掘削状態)。
【0019】
また、掘削ヘッド30の掘削腕20の中間部22に第一センサー(基準点)27を取り付け、上方突部26に第一センサー(基準点)28を取り付ける。ヘッド本体1の膨出部5の一側面6に、掘削腕20が揺動した際に、第一センサー27の揺動軌道に沿った形状の第二センサー(揺動範囲)27Aを取り付け、掘削腕20の上方突部26の面26aに、第二センサー(揺動範囲)28Aを取り付ける。
【0020】
従って、掘削腕20の下垂れ状態、小径掘削状態、大径掘削状態に応じて、センサー27、27A、28、28Aは以下のように作用する。
【0021】
(a) 第一センサー27と第二センサー27Aとの協働で、第一センサー27が、
・「第二センサー27Aの中央部27Aaに位置する」
(図1(a)。下垂れ状態)
・「第二センサー27Aの軸部掘削側27Abに位置する」
(図2(a)。小径掘削状態)
・「第二センサー27Aの拡大掘削側27cに位置する」
(図2(b)。大径掘削状態)
かのいずれかに位置しているか、あるいは27Aa、27Ab、27Acの中間に位置するかの情報が地上に送られる。
(b) 第一センサー28と第二センサー28Aとの協働で、第一センサー28が、
・「第二センサー28Aの中央部28Aaに位置する」
(図1(a)。下垂れ状態)
・「第二センサー28Aの軸部掘削側28Abに位置する」
(図2(a)。小径掘削状態)
・「第二センサー28Aの拡大掘削側28cに位置する」
(図2(b)。大径掘削状態)
かのいずれかに位置しているか、あるいは28Aa、28Ab、28Acの中間に位置するかの情報が地上に送られる。
【0022】
従って、これらにより、基準点27(28)が、揺動範囲27A(28A)内のどこに位置するかの位置情報が得られ、これにより、掘削腕20の揺動角度が把握され、掘削腕20の長さ(水平軸19から掘削刃25までの長さ)を考慮すれば、その深さでの掘削径がわかる。
【0023】
この際、第一センサー27(28)、第二センサー27A(28A)のデータを対応させて位置確認手段で位置情報を処理して、データ送信手段で必要ならば増幅して地上に送られる。データ送信手段は、通常は地上に至る配線と必要な回路から構成されるが、無線送信機をデータ送信手段とすれば、配線を省略できる。また、位置確認手段は、掘削ヘッド30内(ヘッド本体1又は掘削腕20内)に設けた電気回路又は地上に設置した電気回路から構成される。
【実施例1】
【0024】
図面に基づきこの発明の実施例を説明する。
【0025】
1.掘削ヘッド30の構成
【0026】
(1) ヘッド本体1は、四角柱状の基部2の上端2aに六角状の接続部11を連設し、基部2の下縁に連続して、扁平の膨出部5を形成してなる。基部2は、対向する一側面3、3と、一側面3に隣接して対向する他側面4、4とする。一側面3、3に水平軸19を取り付ける。
【0027】
基部2は下方に向けて一側面3、3が近づくように、両他側面4、4の幅が縮まるように寸法が設定されており、基部2の下端に連続して膨出部5に至っている。膨出部5は水平方向に膨出して、一側面3、3の幅が大きくなるように形成され、多側面3、4側の膨出部8も基部2に連続して下方に向けて一側面3、4が近づくように形成されている。
【0028】
膨出部8の下縁10は、掘削腕20の揺動軌道に沿った円弧に形成され、下端面7に下方に向けて、固定掘削刃9、9を取付ける。膨出部5の面で、基部2の一側面3に連続する面を一側面6とする。また、ヘッド本体1の他側面4、4に、撹拌翼17、18を傾斜して、かつ各他側面4、4で、取り付け高さを違えて(撹拌翼17が撹拌翼18より上方に位置している)、取り付ける。
【0029】
(2) ヘッド本体1の基部2の一側面3、3に水平軸19を突出して形成する。水平軸19は一側面3、4で軸が一致してあれば、一体の軸でも、分割された軸でもいずれでも可能である。水平軸19に掘削腕20の基端部21を揺動自在に取り付ける。また、水平軸19は掘削腕20を回動できる軸が形成されれば良いので、掘削腕20に水平軸19を設けて、ヘッド本体1に軸受けを設けても良い。
【0030】
(3) 掘削腕20は基端部21で、水平軸19の周りが大径に形成され、中間部22で幅が小さく、先端部23は幅広く形成される。掘削腕20は、ヘッド本体1の一側面3、3の表面形状の変形に沿って変形され、ヘッド本体1の基部2、膨出部5の形状変化(下方に向けて一側面3、3が近づくように形成されている)に併せて、両掘削腕20、20が近づくように屈曲して形成され、膨出部5の下部で逆に外側に向けた方向に(掘削腕20、20が離れるように)屈曲する。掘削腕20の先端部23に、外側に向けた方向に(掘削腕20、20が離れるように)、掘削刃25、25を突設する。
【0031】
また、前記掘削腕20の基部21の上端部(即ち掘削腕20の長さ方向で、水平軸19を挟んで、掘削刃25の反対側)に、上方突部26を形成する。上方突部26のヘッド本体1側の面26aは、後述するセンサー28、28Aの取り付け及び有効な作動を考慮して、ヘッド本体1の一側面3に近接した位置にある。
【0032】
(4) 掘削腕20のヘッド本体1に向いた面20aで、ヘッド本体1の膨出部5に位置する部分に、第一センサー272を取り付ける。ヘッド本体1の膨出部5の一側面6に、掘削腕20が揺動した際に、第一センサー27の軌道に沿った範囲で、円弧状の第二センサー27Aを取り付ける。
【0033】
また、掘削腕20の上方突部26の面26aに、第一センサー28を取り付ける。ヘッド本体1の基部2の上縁2aの近傍に、掘削腕20が揺動した際に、第一センサー28の軌道に沿った範囲で、円弧状の第二センサー28Aを取り付ける。
【0034】
第二センサー27Aは、第一センサー27が第二センサー27A上のどこに位置するかを感知できるように作用する。尚、第一センサー27の位置については、連続的に第二センサー27Aの何処に位置するか感知できることが望ましいが、少なくとも3位置、即ち
・第一センサー27が、第二センサー27Aの中央27Aa付近
(掘削ヘッド20が下垂れ状態)の位置(図1(a))、
・第一センサー27が、第二センサー27Aの右端27Ab付近
(掘削ヘッド20が小径掘削状態)の位置(図2(a))、
・第一センサー27が、第二センサー27Aの左端付27Ab付近
(掘削ヘッド20が大径掘削状態)の位置(図2(b))
のいずれの位置にあるかを把握できれば目的を達成する。
【0035】
また、第一センサー28と第二センサー28Aの関係も第一センサー27と第二センサー27Aとの関係と同様である。即ち、第二センサー27Aは、第一センサー28が第二センサー28A上のどこに位置するかを感知できるように対応し、第一センサー27の位置については、連続的に第二センサー27Aの何処に位置するか感知できることが望ましい。しかし、少なくとも3位置、即ち、
・第一センサー28が、第二センサー28Aの中央28Aa付近
(掘削ヘッド20が下垂れ状態)の位置(図1(a))、
・第一センサー28が、第二センサー28Aの右端28Ab付近
(掘削ヘッド20が小径掘削状態)の位置(図2(a))、
・第一センサー28が、第二センサー28Aの左端28Ac付近
(掘削ヘッド20が大径掘削)の位置(図2(b))
のいずれの位置にあるかを把握できれば目的を達成する。
【0036】
従って、第二センサー27A、28Aが連続的に作用しない構成とする場合には、3段階以上の5段階、7段階等の多段階で構成することもできる。また、各センサーは非接触型で、第一センサー27と第二センサー27Aとが接しなくとも、作用できるので、対応する第一第二センサー間に泥土が介在した場合でも支障無く作用する。
【0037】
また、掘削ヘッド40の使用目的上、掘削腕20が垂れた状態を把握する必要が無い工法の場合には、第二センサー27A、28Aの位置27Aa、28Aaの把握は不要であり、この場合には、位置27Ab、27Ac(28Ab、28Ac)の最低限2箇所のデータが取得できれば良い。
【0038】
(5) ヘッド本体1の一側面3、3に、掘削腕20、20が揺動して小径掘削をする際に、掘削腕20の最大揺動を規制するストッパー12、13を取付け、ストッパー12は掘削腕20の上方突部26が当設し、ストッパー13は掘削腕20の中間部22が当設する位置に夫々配置する。
【0039】
また、ヘッド本体1の膨出部5、5に、掘削腕20、20が揺動して大径掘削をする際に、掘削腕20の最大揺動を規制するストッパー14を夫々取付ける。また、ヘッド本体1の膨出部5、5に、掘削腕20、20が揺動して大径掘削をする際に、掘削腕20の最大揺動を規制するストッパー15、ストッパー16を夫々取付ける。ストッパー16はバネで出没する構造で、掘削腕20の本体側の面20aに、突出したストッパー16を受けるストッパー受け(凹部)16aを設ける。
【0040】
(6) ヘッド本体1内に、各センサー27、28、27A、28Aに電力を供給するバッテリー29を内蔵し(図1(a)(b))、バッテリー29と各センサー27、28、27A、28Aとを接続する配線を施す(図示していない)。
【0041】
また、各センサー27、28、27A、28Aの出力を地上に送る配線を施す(図示していない)。この場合、接続部11を通って掘削ロッド40の内壁又は外壁に沿ってに配置し、あるいは掘削ロッド40の壁面肉厚内に内蔵する。また、各掘削ロッド40、40を上下に連結する場合には、電気的なジョイントを設ける(図示していない)。尚、各センサー27、28、27A、28Aの出力を無線で送信できる付属装置を組み込めば、配線及び電気的なジョイントは不要である。
【0042】
以上のようにして、掘削ヘッド30を構成する(図1(a)〜(c))。
【0043】
2.掘削ヘッド30の使用
【0044】
続いて、この発明の掘削ヘッド30の使用について説明する。
【0045】
(1) 掘削機(図示していない)に掘削ロッド40を取り付け、掘削ロッド40の下端に掘削ヘッド30の接続部11を取り付けて、従来と同様に杭穴を掘削する。即ち、杭穴掘削位置で、掘削ロッド40を正回転させ、土圧により掘削腕20は、先端部23(掘削刃25)が矢示31方向に揺動して、ストッパー12、13で規制された揺動角度で、杭穴軸部を掘削できる(図2(a))。従って、この状態で、径Dの杭穴の軸部42を掘削できる。また、この際、撹拌翼17、18により、掘削土を破砕・撹拌しながら上方に移送できる。
【0046】
(2) この際、「第一センサー27が第二センサー27A上の位置27Abにある」「第一センサー28が第二センサー28A上の位置28Abにある」というデータが地上に送られ、掘削径Dが維持されていることが目視できる。また、掘削途中で、「第一センサー27が第二センサー27A上の位置27Abに位置せず、若干27Aa側に位置する」旨のデータが得られた場合には、掘削径が小さくなっていることを示す。従って、杭穴の品質に影響を与える程度に掘削径が小さくなっている場合には、掘削ヘッド30をその高さで上下させることで、杭穴壁を削り、正常の杭穴を築造できる。
【0047】
この場合、更に同時に記録しているオーガー(掘削機)のモータの電流値データで、負荷がかかっているデータがあれば、現在掘削している地層が、地中に砕石等の障害物が含まれた層であることが予想され、また、前記杭穴径のデータと合わせて、その大きさも推定できることから必要な処置をして対処できる。
【0048】
(3) 所定の深さまで、杭穴の軸部42を掘削したならば(根固め部形成深さで)、掘削ロッド40の回転を止め、続いて、掘削ロッド40を逆回転すれば、掘削腕20は、逆側に矢示32方向に揺動して、ストッパー14、ストッパー15に当設し、ストッパー16がストッパー受け16aに嵌合して、ストッパー14、15、16で規制された揺動角度で、杭穴の拡底部43を掘削できる(図2(b))。この状態で、径Dの杭穴の拡底根固め部43を掘削できる。また、撹拌翼17、18で掘削土を破砕・撹拌できる。
【0049】
(4) 所定の杭穴拡底根固め部43の掘削が完了したならば、従来と同様に、掘削ヘッド30のセメントミルク吐出口(膨出部8の下端面11)からセメントミルクを吐出して根固め部43内で撹拌して、根固め層を形成して、掘削ヘッド30を地上に引き上げる。この際、掘削ロッド40の回転を止めると掘削腕20が下方に垂れた状態となり、引き上げが容易となる(図1(b))。
【0050】
この際、「第一センサー27が第二センサー27Aの位置27aにある」「第一センサー28が第二センサー28Aの位置28aにある」データが地上に送られ、掘削腕20が開いていないことが地上で把握できる。
【0051】
とりわけ、中掘工法用の掘削ヘッドに使用した場合には、掘削腕20が閉じたことを確認できるので、中空杭の中空部を通して掘削ヘッドを引き上がる際に、掘削刃25、25が中空杭の内壁を傷つけることを防止できる(図示していない)。
【0052】
(5) 以上のように、掘削腕20が、小径掘削時の揺動範囲(第一位置)にあるか、大径掘削時の揺動範囲(第二位置)にあるか、あるいは下方に垂れた状態にあるかを、リアルタイムで把握できる。従って、掘削腕20の長さ(水平軸19から掘削刃25までの長さ)を考慮すれば、その深さにおける掘削径が把握されるので、掘削ヘッド30の深度データと合わせれば、掘削径がリアルタイムでかつ目視で把握できる。
【0053】
また、掘削径のデータを杭穴の全長に亘ってまとめれば、杭穴全体の形状を把握できるので、杭径も含めた基礎の形状を報告できる、品質保証及び確認が確実にできる効果がある。地震時など大きな荷重が作用する状況に対して有効である。
【0054】
3.他の実施例
【0055】
(1) 前記実施例において、「第一センサー27、第二センサー27A」(中間部22側)、「第一センサー28、第二センサー27A」(上方突部26側)の両方を取り付けたので、いずれか一方の側のセンサーが感知不能となっても、他方の側のセンサーから位置情報を取得できるので好ましいが、中間部22側又は上方突部26側のいずれか一方の組合せのみを設け、他方を省略することもできる(図示していない)。
【0056】
この場合、上方突部26に第一センサー28(第二センサー28A)のみを設ける場合は、第一センサー27(第二センサー27A)の場合に比べて、第一センサー28の揺動範囲が狭いので、第二センサー28Aの範囲が狭くて済み安価に構成できる。
【0057】
(2) また、前記実施例において、各センサーの電源をバッテリー29から提供したが、地上から供給することもでき、この場合には、バッテリー29を省略できる(図示していない)。
【0058】
(3) また、前記実施例において、掘削腕20の揺動を制限するストッパーの内、「ストッパー12、ストッパー13」のいずれか一方があれば軸部掘削径の規制ができ、また、「ストッパー14、ストッパー15、ストッパー16(ストッパー受け16a)」のいずれか一方があれば、拡底部掘削径の記載ができる(いずれも図示していない)。従って、他方を省略することもできる。
【0059】
(4) また、前記実施例において、掘削腕20の揺動を補助する動力装置を、ヘッド本体1又は掘削腕20に組み込むこともできる(図示していない)。この場合、動力装置の電源としてバッテリー29を使用することもできる。
【0060】
この掘削腕20、20の動力装置の消費電流Aは、地盤の抵抗が大きいほど電流が大きくなると考えられ、掘削機のオーガー(掘削ロッド40を回転させるモータ)の掘削電流値Bと比例して変動するものであるから、両電流値A、Bを同時に計測してデータ処理することで、N値データと比較すれば、掘削する地盤の性状を今まで以上に正確に把握することが可能となる。
【0061】

(5) また、前記実施例において、第一センサー27(28)と第二センサー27A(28A)とを組み合わせて、掘削腕20の揺動角度を把握したが、水平軸19と掘削腕20との間に、機械的又は電気的な角度センサーを取り付けて、掘削腕20の揺動角度を直接に測定することもできる(図示していない)。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】この発明の掘削ヘッドの実施例で(a)は正面図、(b)は右側面図である。
【図2】同じく使用状態の正面図で、(a)は杭穴軸部(小径)掘削時、(b)は杭穴拡底部(大径)掘削時を夫々表す。
【符号の説明】
【0063】
1 ヘッド本体
2 ヘッド本体の基部
5 ヘッド本体の膨出部
9 ヘッド本体の固定掘削刃
12、13、14、15、16 ストッパー
17、18 撹拌翼
19 水平軸
20 掘削腕
20a 掘削腕のヘッド本体側の面
21 掘削腕の基部
22 掘削腕の中間部
23 掘削腕の先端部
25 掘削腕の掘削刃
26 掘削腕の上方突部
26a 上方突部のヘッド本体側の面
27、28 第一センサー
27A、28A 第二センサー
27Aa、28Aa 第二センサーの下垂れ位置
27Ab、28Ab 第二センサーの小径掘削位置
27Ac、28Ac 第二センサーの大径掘削位置
29 バッテリー
30 掘削ヘッド
40 掘削ロッド
42 杭穴の軸部
43 杭穴の拡底部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部に掘削ロッドとの連結部を有するヘッド本体の両側に、水平軸を介して、下端部に掘削刃を有する掘削腕の上端部を、揺動自在に取り付けしてなる掘削ヘッドにおいて、
前記ヘッド本体又は掘削腕に、前記水平軸に対する前記掘削腕の揺動角度を感知するセンサーを取り付けると共に、前記センサーから地上へのデータ送信手段を設けたことを特徴とする杭穴掘削ヘッド。
【請求項2】
上端部に掘削ロッドとの連結部を有するヘッド本体の両側に、水平軸を介して、下端部に掘削刃を有する掘削腕の上端部を、揺動自在に取り付けしてなる掘削ヘッドにおいて、
前記掘削腕のヘッド本体側の面に第一センサーを取り付け、
前記掘削腕が揺動した際に前記第一センサーの軌道に合わせて、前記ヘッド本体に第二センサーを取り付けし、前記掘削ヘッド内又は地上に、位置確認手段、データ送信手段を設けてなり、
前記位置確認手段は、前記第一センサー又は第二センサーは、第二センサーの軌道の長さ方向における第一センサーの相対位置を関知する機能を有し、
前記データ送信手段は、その位置データの情報を地上に伝える機能を有することを特徴とする杭穴掘削ヘッド。
【請求項3】
掘削腕の上端に上方突部を形成し、前記掘削腕で、水平軸の下方と前記上方突部に夫々第一センサーを取り付けし、ヘッド本体に、前記各第一センサーに対応させた第二センサーを夫々取り付けたことを特徴とする請求項2記載の杭穴掘削ヘッド。
【請求項4】
ヘッド本体又は掘削腕に、各センサーの作動用電源を収容する請求項1又は2記載の穴掘削ヘッド。
【請求項5】
水平軸に動力装置を連結してなり、該動力装置は掘削腕を一方の側又は両方の側に選択して強制的に揺動させることができる機能を有したことを特徴とする請求項1又は2記載の杭穴掘削ヘッド。
【請求項6】
上端部に掘削ロッドとの連結部を有するヘッド本体の両側に、水平軸を介して、下端部に掘削刃を有する掘削腕の上端部を、揺動自在に取り付けしてなる掘削ヘッドにおいて、
(1) 前記掘削腕で前記ヘッド本体側の面に基準点を設定し、前記ヘッド本体に前記基準点の揺動軌跡に対応させて、揺動範囲を設定し、
(2) 前記基準点が、前記揺動範囲内のどこに位置するかの位置情報を取得することにより、
(3) 掘削腕の揺動角度を確認する。
ことを特徴とする杭穴掘削ヘッドの掘削腕の位置確認方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−150834(P2008−150834A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−338808(P2006−338808)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000176512)三谷セキサン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】