説明

板状物の加工方法及びレーザー加工装置

【課題】分割予定ラインの内部に改質層を形成すること。
【解決手段】複屈折性結晶材料から構成されたワーク1の光学軸の方向を検出し、検出された光学軸の方向と分割予定ライン11の延伸方向とに基づいて、常光線、異常光線、及び常光線と異常光線との複合光線のうちのいずれか1つを分割予定ライン11に照射するレーザー光線として選択し、選択されたレーザー光線を分割予定ライン11に照射して走査する。これにより、分割予定ライン11の内部に改質層を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複屈折性結晶材料から構成された板状物の加工面にレーザー光線を照射して走査することによって、分割予定ラインの内部に改質層を形成して板状物を分割する切っ掛けを形成する板状物の加工方法及びレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等の板状物を分割予定ラインに沿って分割する方法として、分割予定ラインの内部に集光点を合わせて板状物に対し透過性を有する波長のレーザー光線を照射するレーザー加工方法が提案されている(特許文献1参照)。このレーザー加工方法では、分割予定ラインの内部に集光点を合わせて板状物に対し透過性を有する波長のレーザー光線を照射し、分割予定ラインに沿って板状物の内部に改質層を連続的に形成する。なお、本明細書中において、改質層とは、密度、屈折率、機械的強度等の物理的特性が周囲の物理的特性とは異なった状態になっている領域を意味し、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、これらの領域が混在している領域等を例示することができる。そして、改質層が形成されることによって強度が低下した分割予定ラインに沿って板状物に外力を加えることにより、分割予定ラインに沿って板状物を分割することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3408805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明の発明者は、鋭意研究を重ねてきた結果、従来のレーザー加工方法を用いて複屈折性結晶材料から構成された板状物を分割した場合、分割面に大きな凹凸が形成される、分割予定ラインに沿って分割できない等の不具合が発生し、板状物を品質高く分割できないことを知見した。そして、本願発明の発明者は、板状物を品質高く分割できない原因の1つとして、分割予定ラインの内部に改質層が形成されていないことを知見した。複屈折性結晶材料から構成された板状物は、変調器や圧電素子等の電子機器への利用が期待されている。このため、分割予定ラインの内部に改質層を形成可能な板状物の加工方法及びレーザー加工装置の提供が急務となっている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、分割予定ラインの内部に改質層を形成可能な板状物の加工方法及びレーザー加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る板状物の加工方法は、複屈折性結晶材料から構成された板状物の加工面にレーザー光線を照射して走査することによって、分割予定ラインの内部に改質層を形成して板状物を分割する切っ掛けを形成する板状物の加工方法であって、前記複屈折性結晶材料の光学軸の方向を検出する検出工程と、前記検出工程によって検出された光学軸の方向と前記分割予定ラインの延伸方向とに基づいて、常光線、異常光線、及び常光線と異常光線との複合光線のうちのいずれか1つを前記分割予定ラインに照射するレーザー光線として選択する選択工程と、前記選択工程によって選択されたレーザー光線を前記分割予定ラインに照射して走査することによって、分割予定ラインの内部に改質層を形成する改質層形成工程と、を含む。
【0007】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るレーザー加工装置は、複屈折性結晶材料から構成された板状物を保持する保持手段と、前記板状物を透過する波長を有するレーザー光線を発振する発振器と、前記保持手段に保持された板状物の内部に集光点を位置付けて該発振器が発振したレーザー光線を集光する集光部と、を有するレーザー加工手段と、前記板状物の光学軸の方向と前記分割予定ラインの延伸方向とに基づいて、前記レーザー光線の直線偏光方向を設定する偏光方向設定手段と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る板状物の加工方法及びレーザー加工装置によれば、板状物の光学軸の方向と分割予定ラインの延伸方向とに基づいて板状物に照射するレーザー光線の直線偏光方向を設定するので、分割予定ラインの内部に改質層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本実施の一実施形態であるレーザー加工装置の構成を示す概略斜視図である。
【図2】図2は、図1に示すレーザー照射機構の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、屈折率が光の進行方向や偏光状態によらず一定である媒質中における光の伝播の様子を説明するための模式図である。
【図4】図4は、複屈折性結晶材料中における光の伝播の様子を説明するための模式図である。
【図5】図5は、ワークの表面に対し傾きを有する光学軸の方向を説明するための模式図であり、図5(a)はワークの平面図であり、図5(b)はワークの側面図である。
【図6】図6は、レーザー光線がy軸方向に振動する直線偏光成分Eyのみを有する場合における改質層の形成位置を説明するための模式図である。
【図7】図7は、レーザー光線がx軸方向に振動する直線偏光成分Exのみを有する場合における改質層の形成位置を説明するための模式図である。
【図8】図8は、レーザー光線がx軸方向に振動する直線偏光成分Exとy軸方向に振動する直線偏光成分Eyとを有する場合における改質層の形成位置を説明するための模式図である。
【図9】図9は、本発明の一実施形態であるレーザー加工処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】図10は、ワークの光学軸が、分割予定ラインとワークに照射されるレーザー光線の光軸とが形成する平面内に存在するが、ワークに照射されるレーザー光線の光軸と垂直に交わらない場合におけるワークの光学軸及び分割予定ラインの方向を説明するための模式図であり、図10(a)はワークの平面図であり、図10(b)はワークの側面図である。
【図11】図11は、分割予定ラインにおけるワークの断面図であり、図10(a)に示すワークのA−A線断面図である。
【図12】図12は、ワークの光学軸がワークに照射されるレーザー光線の光軸と垂直に交わる場合におけるワークの光学軸及び分割予定ラインの方向を説明するための模式図であり、図12(a)はワークの平面図であり、図12(b)はワークの側面図である。
【図13】図13は、分割予定ラインにおけるワークの断面図であり、図12(a)に示すワークのA−A線断面図である。
【図14】図14は、光学軸に対して垂直な直線偏光成分のみを有するレーザー光線を用いたレーザー加工方法を説明するための模式図であり、図14(a)はワークの平面図であり、図14(b)はワークの側面図である。
【図15】図15は、光学軸に対して平行な直線偏光成分のみを有するレーザー光線を用いたレーザー加工方法を説明するための模式図であり、図15(a)はワークの平面図であり、図15(b)はワークの側面図である。
【図16】図16は、ワークが0°回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウムによって形成されている場合におけるレーザー加工方法を説明するための模式図であり、図16(a)はワークの平面図であり、図16(b)はワークの側面図である。
【図17】図17は、図16に示すレーザー加工方法を用いて分割されたワークを示す写真図である。
【図18】図18は、ワークが128°回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウムによって形成されている場合におけるレーザー加工方法を説明するための模式図であり、図18(a)はワークの平面図であり、図18(b)はワークの側面図である。
【図19】図19は、図18に示すレーザー加工方法を用いて分割されたワークを示す写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態であるレーザー加工装置について説明する。
【0011】
〔レーザー加工装置の構成〕
始めに、図1を参照して、本発明の一実施形態であるレーザー加工装置の構成について説明する。
【0012】
図1は、本実施の一実施形態であるレーザー加工装置の構成を示す概略斜視図である。図1に示すように、本発明の一実施形態であるレーザー加工装置は、ワーク1を保持するための保持機構2と、保持機構2を加工送り方向であるX軸方向及び割り出し送り方向であるY軸方向に移動させるためのXY駆動機構4と、保持機構2によって保持されたワーク1にレーザー光線を照射するためのレーザー照射機構5と、レーザー加工装置を構成する各部の動作を制御してレーザー加工装置を統括的に制御する制御装置6とを備える。
【0013】
ワーク1は、略円板形状の板状物により構成されている。ワーク1の表面側は互いに直交する分割予定ライン11によって格子状に区画され、区画された領域内にはデバイスが形成されている。ワーク1を形成する材料としては、特に限定はされないが、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、サファイア(Al)、炭酸カルシウム(CaCO)を主成分とするカルサイト等の複屈折性結晶材料を例示することができる。
【0014】
保持機構2は、ワーク1に応じた大きさのチャックテーブルを主体とするものであり、図示しない吸引手段によって上面である保持面21上に載置されたワーク1を吸引保持する。ワーク1は、図示しない搬送手段によって例えば表面側を上にして保持機構2に搬入され、保持面21上に吸引保持される。このようにワーク1を保持面21上で保持する保持機構2は、円筒部材22の上端に設けられ、円筒部材22内に配設された図示しないパルスモータによって鉛直軸を軸中心として回転自在な構成となっている。保持機構2は、本発明に係る保持手段として機能する。
【0015】
XY駆動機構4は、2段の滑動ブロック41,42を備える。保持機構2は、円筒部材22を介して2段の滑動ブロック41,42の上に搭載されている。XY駆動機構4は、ボールネジ431やパルスモータ432等によって構成された加工送り機構43を備え、滑動ブロック41は、この加工送り機構43によってX軸方向への移動が自在である。そして、加工送り機構43が駆動して滑動ブロック41が移動し、レーザー照射機構5に対して保持機構2がX軸方向に移動することによって、滑動ブロック41に搭載された保持機構2とレーザー照射機構5とをX軸方向に沿って相対的に移動させる。なお、以下の説明において、加工送り方向であるX軸方向について、図1中で矢印が指し示す方向を正の方向、その逆方向を負の方向と呼ぶ。
【0016】
XY駆動機構4は、ボールネジ441やパルスモータ442等で構成された割り出し送り機構44を備え、滑動ブロック42は、割り出し送り機構44によってY軸方向への移動が自在である。そして、割り出し送り機構44が駆動して滑動ブロック42が移動し、レーザー照射機構5に対して保持機構2がY軸方向に移動することによって、滑動ブロック42に搭載された保持機構2とレーザー照射機構5とをY軸方向に沿って相対的に移動させる。
【0017】
本実施形態では、保持機構2をX軸方向及びY軸方向に移動させることによって保持機構2とレーザー照射機構5とを相対的に移動させる構成とした。これに対して、保持機構2を移動させずにレーザー照射機構5をX軸方向及びY軸方向に移動させる構成としてもよい。また、保持機構2及びレーザー照射機構5の双方をX軸方向に沿って逆方向に移動させ、保持機構2及びレーザー照射機構5の双方をY軸方向に沿って逆方向に移動させてこれらを相対移動させる構成としてもよい。
【0018】
加工送り機構43に対しては、保持機構2の加工送り量を検出するための加工送り量検出手段45が付設されている。加工送り量検出手段45は、X軸方向に沿って配設されたリニアスケールや、滑動ブロック41に配設されて滑動ブロック41と共に移動することによってリニアスケールを読み取る読み取りヘッド等で構成される。同様に、割り出し送り機構44に対しては、保持機構2の割り出し送り量を検出するための割り出し送り量検出手段46が付設されている。割り出し送り量検出手段46は、Y軸方向に沿って配設されたリニアスケールや、滑動ブロック42に配設されて滑動ブロック42と共に移動することによってリニアスケールを読み取る読み取りヘッド等によって構成される。
【0019】
レーザー照射機構5は、保持面21上に吸引保持されたワーク1にレーザー光線を照射し、ワーク1の加工すべき位置に沿ってレーザー加工を施すためのものである。レーザー照射機構5は、本発明に係るレーザー加工手段として機能する。制御装置6は、レーザー加工装置の動作に必要な各種データを保持するメモリを内蔵したマイクロコンピュータ等によって構成される。
【0020】
〔レーザー照射機構の構成〕
次に、図2を参照して、レーザー照射機構5の構成について説明する。
【0021】
図2は、図1に示すレーザー照射機構の構成を示すブロック図である。図2に示すように、レーザー照射機構5は、発振器51と、強度調整部(アッテネータ)52と、偏光方向設定部53と、ミラー素子54と、集光レンズ55とを備える。発振器51は、所定波長のレーザー光線を発振するためのものであり、例えばYAGレーザー発振器やYVO4レーザー発振器等からなるレーザー光線発振器、1064nm等の赤外線波長域のレーザー光線を発振する発振器等によって構成される。強度調整部52は、1/2波長板521と、モータ522と、偏光ビームスプリッタ523と、アブソーバ524とを備える。
【0022】
1/2波長板521は、モータ522によって回動可能な状態で発振器51の後段に配設されている。1/2波長板521は、その回動角度に応じて発振器51が発振したレーザー光線LBの直線偏光方向を変化させる。偏光ビームスプリッタ523は、1/2波長板521を通過したレーザー光線のうち、所定の直線偏光方向を有するレーザー光線を偏光方向設定部53に向けて透過すると共に、所定の直線偏光方向以外の直線偏光方向を有するレーザー光線をアブソーバ524側に分岐する。アブソーバ524は、偏光ビームスプリッタ523によって分岐されたレーザー光線を吸収するためのものであり、レーザー光線を良好に吸収すべく例えばつや消し黒色系金属によって構成するとよい。
【0023】
偏光方向設定部53は、1/2波長板531と、モータ532とを備える。1/2波長板531は、モータ532によって回動可能な状態で偏光ビームスプリッタ523の後段に配設されている。1/2波長板531は、その回動角度に応じて偏光ビームスプリッタ523を透過したレーザー光線の直線偏光方向を変化させる。偏光方向設定部53は、本発明に係る偏光方向設定手段として機能する。ミラー素子54は、1/2波長板531を通過したレーザー光線を集光レンズ55側に向けて反射させるためのものである。集光レンズ55は、ワーク1と対向するように配設され、ワーク1の内部に集光点を位置付けてミラー素子54によって反射されたレーザー光線を集光するものである。集光レンズ55は、本発明に係る集光部として機能する。但し、集光レンズ55によって集光されるレーザー光線の少なくとも中央光が、本発明が規定するレーザー光線の要件を満たしていればよい。
【0024】
このような構成を有するレーザー加工装置は、以下のように動作することによってワーク1の加工面に対してレーザー加工処理を施す。すなわち、始めに、保持機構2にワーク1を搬入し、保持面21上でワーク1を吸引保持する。その後、円筒部材22内に配設された図示しないパルスモータを駆動し、保持面21上のワーク1の向きを、その表面の互いに直交するうちの一方の分割予定ライン11がX軸方向に沿う向きに調整する。続いて、XY駆動機構4を駆動し、保持機構2をXY平面内で移動させて保持面21上のワーク1を図示しない撮像ユニットの鉛直下方に位置付ける。そして、図示しない撮像ユニットによって保持面21上のワーク1を撮像することでアライメントを実施し、直交するうちの一方の分割予定ライン11の1つである加工対象の分割予定ライン11の一端部を集光レンズ55の鉛直下方に位置付ける。
【0025】
そして、このようにして加工対象の分割予定ライン11の一端部を集光レンズ55の鉛直下方に位置付けた後、保持機構2を加工送り方向であるX軸方向に往復移動させながらレーザー照射機構5によってレーザー光線を照射し、一方の分割予定ライン11のそれぞれに沿ってレーザー加工を施す。例えば、最初に加工対象とする分割予定ライン11に沿ったレーザー加工では、保持機構2を正のX軸方向に加工送りしながら往路加工を行い、加工対象の分割予定ライン11の一端部から他端部までレーザービームを照射する。このように他端部までレーザー光線を照射したならば、保持機構2をY軸方向に移動させて隣接するレーザー光線の他端部を集光レンズ541の鉛直下方に位置付け、加工対象を移す。そして、保持機構2を負のX軸方向に加工送りしながら復路加工を行い、加工対象のレーザー光線の他端部から一端部までレーザー光線を照射する。
【0026】
その後は、保持機構2をY軸方向に移動させて順次隣接するレーザー光線を集光レンズ55の鉛直下方に位置付け、加工対象を移しながら往路加工と復路加工とを順番に行う。そして、直交する一方の分割予定ライン11の全てに対して往路加工又は復路加工を行ったならば、保持機構2を90度回転させることで直交する他方の分割予定ライン11がX軸方向に沿うようにワーク1の姿勢を変更する。そして、一方の分割予定ライン11に対する動作と同様にアライメントを行った後、順次他方の分割予定ライン11を集光レンズ55の鉛直下方に位置付けて加工対象を移しながら往路加工と復路加工とを順番に行い、この他方の分割予定ライン11のそれぞれに沿って往路加工又は復路加工を行う。
【0027】
〔複屈折性結晶材料のレーザー加工方法〕
本願発明の発明者は、鋭意研究を重ねてきた結果、レーザー加工装置を用いて複屈折性結晶材料から構成されたワーク1に対しレーザー加工処理を施した場合、分割面に大きな凹凸が形成される、分割予定ラインに沿って分割できない等の不具合が発生し、ワーク1を分割予定ラインに沿って品質高く分割できないことを知見した。そして、本願発明の発明者は、ワーク1を品質高く分割できない原因の1つとして、分割予定ラインの内部に改質層が形成されていないことを知見した。そこで、ワーク1が複屈折性結晶材料によって構成されている場合には、以下のようにしてワーク1に対しレーザー加工処理を施す。以下、ワーク1が複屈折性結晶材料によって構成されている場合におけるレーザー加工方法について説明する。
【0028】
〔複屈折性結晶材料の物性〕
始めに、図3乃至図8を参照して、複屈折性結晶材料の物性について説明する。
【0029】
空気やガラスのように分子が無秩序に分布する媒質中では、媒質の屈折率は光の進行方向や偏光状態によらず一定である。このため、媒質中において、光は、ホイヘンスの原理に従って図3に示すように伝播する。すなわち、図3に示すように、光は、光の波面上の点P1〜P4の各点において発生した円形形状の二次波W1〜W4及び二次波W1’〜W4’の包絡面を新たな光の波面WP及び波面WP’とすることによって媒質中を進行する。しかしながら、複屈折性結晶材料中では、屈折率は光の進行方向や偏光状態によって異なる。このため、光は図4に示すように進行する。
【0030】
すなわち、図4に示すように、複屈折性結晶材料であるワーク1の加工面1aに対し垂直な方向(z軸方向)から光が入射した場合、光学軸OAの延伸方向と光学軸OAの延伸方向に対し垂直な方向とでは光の屈折率が異なるために、加工面1a上の点P1〜P4の各点において発生する二次波W1〜W4及び二次波W1’〜W4’の形状は回転楕円体になる。このため、二次波W1〜W4及び二次波W1’〜W4’の包絡面である新たな光の波面WP及び波面WP’は、加工面1aに対して垂直な方向(z軸方向)に対し角度を有して進行する。
【0031】
これにより、複屈折性結晶材料に光が入射した場合、入射光線は常光線(Ordinary Wave,O線)と異常光線(Extraordinary Wave,E線)との2つの光線に分離される。ここで、常光線とは、光学軸OAと入射光線の光軸とで形成される平面に対し直交するように振動する直線偏光成分を有する光線であり、光学軸OAの影響を受けずに複屈折性結晶材料内で入射光線の光軸と同一直線上を進行する。一方、異常光線とは、光学軸OAと入射光線の光軸とで形成される平面に対し平行になるように振動する直線偏光成分を有する光線であり、光学軸OAの影響を受けて複屈折性結晶材料内で常光線と分離して進行する。
【0032】
このため、複屈折性結晶材料にレーザー光線を照射した場合には、常光線に由来する改質層と異常光線に由来する改質層とが形成される。具体例として、図5(a),(b)に示すように、ワーク1の表面(加工面,xy平面)に対し傾き角度を有する光学軸OAを有する複屈折性材料によって形成されたワーク1にレーザー光線を照射する場合を考える。この場合、図6に示すように、レーザー光線がy軸方向に振動する直線偏光成分Ey、すなわち光学軸OAとレーザー光線の光軸とで形成される平面に対し直交する直線偏光成分Eyのみを有する場合には、異常光線は発生せずに常光線のみが発生する。これにより、改質層はレーザー光線の照射位置P1の下方に形成される。
【0033】
一方、図7に示すように、レーザー光線がx軸方向に振動する直線偏光成分Ey、すなわち光学軸OAと入射光線の光軸とで形成される平面に対し平行な直線偏光成分Exのみを有する場合には、常光線は発生せずに異常光線のみが発生する。これにより、改質層は、レーザー光線の照射位置P1からx軸方向にずれた表面位置P2の下方に形成される。また、図8に示すように、レーザー光線の直線偏光成分Eがx軸及びy軸に対して傾きを有する場合には、レーザー光線の直線偏光成分Eをx軸方向成分Exとy軸方向成分Eyとに分解することによって、各成分について図6及び図7に示す場合と同様に考えることができる。すなわち、レーザー光線の直線偏光成分Eがx軸及びy軸に対して傾きを有する場合には、図8に示すように、常光線に由来する改質層と異常光線に由来する改質層とがx軸方向に並んで形成される。
【0034】
〔レーザー加工処理〕
以上のように、ワーク1が複屈折性結晶材料により形成されている場合には、レーザー光線の偏光方向及び複屈折性結晶材料の光学軸OAの方向に応じて、常光線に由来する改質層、異常光線に由来する改質層、及び常光線に由来する改質層と異常光線に由来する改質層とが形成される。そこで、ワーク1が複屈折性結晶材料によって構成されている場合には、以下に示すレーザー加工処理を実行する。以下、図9を参照して、ワーク1が複屈折性結晶材料によって構成されている場合におけるレーザー加工処理の流れについて説明する。
【0035】
図9は、ワーク1が複屈折性結晶材料によって構成されている場合におけるレーザー加工処理の流れを示すフローチャートである。図9に示すように、ワーク1が複屈折性結晶材料によって形成されている場合には、始めに、複屈折性結晶材料の光学軸OAの方向を検出する(検出工程、ステップS1)。具体的には、複屈折性結晶材料の光学軸OAの方向は、複屈折性結晶材料に照射されたレーザー光線が常光線と異常光線とに分離される現象を検出する、若しくは、ワーク1の製造工程から検出することができる。
【0036】
次に、ステップS1の検出工程によって検出された複屈折性結晶材料の光学軸OAの方向と分割予定ライン11の延伸方向とに基づいて、常光線、異常光線、及び常光線と異常光線との複合光線のうちのいずれか1つを分割予定ライン11に照射するレーザー光線として選択する(選択工程、ステップS2)。選択工程の詳細については後述する。次に、ステップS2の選択工程によって選択されたレーザー光線を分割予定ライン11に照射して走査することによって、分割予定ライン11に沿ってワーク1の内部に改質層を連続的に形成する(改質層形成工程、ステップS3)。これにより、一連のレーザー加工処理は完了する。以後、分割予定ライン11に沿ってワーク1に外力を加えることにより、分割予定ライン11に沿ってワーク1を分割することができる。
【0037】
〔選択工程〕
次に、図10乃至図15を参照して、(1)ワーク1の光学軸OAが、分割予定ライン11とワーク1に照射されるレーザー光線の光軸とが形成する平面内に存在するが、ワーク1に照射されるレーザー光線の光軸と垂直に交わらない場合、(2)ワーク1の光学軸OAがワーク1に照射されるレーザー光線の光軸と垂直に交わる場合、及び(3)ワーク1の光学軸OAが分割予定ライン11とワーク1に照射されるレーザー光線の光軸とが形成する平面内に存在せず、ワーク1に照射されるレーザー光線の光軸と垂直に交わらない場合における、上記ステップS2の選択工程について詳しく説明する。
【0038】
〔ワークの光学軸が、分割予定ラインとワークに照射されるレーザー光線の光軸とが形成する平面内に存在するが、ワークに照射されるレーザー光線の光軸と垂直に交わらない場合〕
始めに、図10及び図11を参照して、ワーク1の光学軸OAが、分割予定ライン11とワーク1に照射されるレーザー光線の光軸とが形成する平面内に存在するが、ワーク1に照射されるレーザー光線の光軸と垂直に交わらない場合における選択工程について説明する。図10は、ワークの光学軸及び分割予定ラインの方向を説明するための模式図であり、図10(a)はワークの平面図であり、図10(b)はワークの側面図である。図11は、分割予定ラインにおけるワークの断面図であり、図10(a)に示すワークのA−A線断面図である。
【0039】
図10(a),(b)に示すように、ワーク1の光学軸OAが、分割予定ライン11とワーク1に照射されるレーザー光線の光軸とが形成する平面内に存在するが、ワーク1に照射されるレーザー光線の光軸と垂直に交わらない場合には、図5乃至図8を用いた議論から明らかなように、異常光線は分割予定ライン11の延伸方向に沿って発生する。このため、異常光線が発生したとしても、異常光線に由来する改質層は分割予定ライン11の下方に形成され、図11に示すように、異常光線に由来する改質層の形成位置P2’は分割予定ライン11の延伸方向に沿って常光線に由来する改質層の形成位置P1’に隣接する。従って、ワーク1の光学軸OAが、分割予定ライン11とワーク1に照射されるレーザー光線の光軸とが形成する平面内に存在するが、ワーク1に照射されるレーザー光線の光軸と垂直に交わらない場合、制御装置6は、分割予定ライン11に照射するレーザー光線として常光線、異常光線、及び常光線と異常光線との複合光線のいずれが選択されるように、偏光方向設定部53を制御することによってレーザー光線の直線偏光方向を調整する。
【0040】
〔ワークの光学軸がワークに照射されるレーザー光線の光軸と垂直に交わる場合〕
次に、図12及び図13を参照して、ワーク1の光学軸OAがワーク1に照射されるレーザー光線の光軸と垂直に交わる場合における選択工程について説明する。図12は、ワークの光学軸及び分割予定ラインの方向を説明するための模式図であり、図12(a)はワークの平面図であり、図12(b)はワークの側面図である。図13は、分割予定ラインにおけるワークの断面図であり、図12(a)に示すワークのA−A線断面図である。
【0041】
図12(a),(b)に示すように、ワーク1の光学軸OAがワーク1に照射されるレーザー光線の光軸と垂直に交わる場合には、図5乃至図8を用いた議論から明らかなように、異常光線は分割予定ライン11の延伸方向に沿って発生する。このため、異常光線が発生したとしても、異常光線によって由来する改質層は分割予定ライン11の下方に形成され、図13に示すように、異常光線に由来する改質層は、常光線に由来する改質層の形成位置P1’とは異なる深さ位置P2’に形成される。従って、ワーク1の光学軸OAがワーク1に照射されるレーザー光線の光軸と垂直に交わる場合、制御装置6は、分割予定ライン11に照射するレーザー光線として常光線、異常光線、及び常光線と異常光線との複合光線のいずれが選択されるように、偏光方向設定部53を制御することによってレーザー光線の直線偏光方向を調整する。
【0042】
〔ワークの光学軸が分割予定ラインとワークに照射されるレーザー光線の光軸とが形成する平面内に存在せず、ワークに照射されるレーザー光線の光軸と垂直に交わらない場合〕
次に、図14及び図15を参照して、ワーク1の光学軸OAが分割予定ライン11とワーク1に照射されるレーザー光線の光軸とが形成する平面内に存在せず、ワーク1に照射されるレーザー光線の光軸と垂直に交わらない場合における選択工程について説明する。図14は、光学軸に対して垂直な直線偏光成分を有するレーザー光線を用いたレーザー加工方法を説明するための模式図であり、図14(a)はワークの平面図であり、図14(b)はワークの側面図である。図15は、光学軸に対して平行な直線偏光成分を有するレーザー光線を用いたレーザー加工方法を説明するための模式図であり、図15(a)はワークの平面図であり、図15(b)はワークの側面図である。
【0043】
図14(a),(b)に示すように、ワーク1の光学軸OAが分割予定ライン11とワーク1に照射されるレーザー光線の光軸とが形成する平面内に存在せず、ワーク1に照射されるレーザー光線の光軸と垂直に交わらない場合、常光線に由来する改質層と異常光線に由来する改質層とは分割予定ライン11に沿って形成されない。そこで、ワーク1の光学軸OAが分割予定ライン11とワーク1に照射されるレーザー光線の光軸とが形成する平面内に存在せず、ワーク1に照射されるレーザー光線の光軸と垂直に交わらない場合には、制御装置6は、分割予定ライン11に照射するレーザー光線として常光線又は異常光線が選択されるように、偏光方向設定部53を制御することによってレーザー光線の直線偏光方向を調整する。具体的には、分割予定ライン11に照射するレーザー光線として常光線を選択する場合、制御装置6は、図14(a)に示すように、分割予定ライン11a,11bに沿って光学軸OAに対して垂直な直線偏光成分のみを有するレーザー光線L1を照射する。なお、この場合、レーザー光線の直線偏光方向は、加工に悪影響を与えるほどの常光線が発生しない程度に調整されていればよい。一方、分割予定ライン11に照射するレーザー光線として異常光線を選択する場合には、制御装置6は、図15(b)に示すように、レーザー光線の光軸からの異常光線の光軸の分離幅dを考慮して、分割予定ライン11a,11bに対し所定間隔ΔLをあけてレーザー光線L2を照射する。なお、この場合、レーザー光線の直線偏光方向は、加工に悪影響を与えるほどの常光線が発生しない程度に調整されていればよい。
【0044】
ここで、レーザー光線の光軸からの異常光線の光軸の分離幅dは以下の数式1によって算出することができる。数式1中、パラメータtは改質層が形成される深さ位置を示し、パラメータθはレーザー光線の波面の法線と光学軸とがなす角度を示す。また、数式1中、パラメータn及びパラメータnはそれぞれ、常光線及び異常光線の屈折率を示す。常光線及び異常光線の屈折率は、材料とレーザー光線の波長(λ)によって決まり、例えばニオブ酸リチウムの場合、以下の数式2,3によって算出することができる。
【0045】
【数1】

【数2】

【数3】

【0046】
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態であるレーザー加工方法では、複屈折性結晶材料から構成されたワーク1の光学軸OAの方向を検出し、検出された光学軸OAの方向と分割予定ライン11の延伸方向とに基づいて、常光線、異常光線、及び常光線と異常光線との複合光線のうちのいずれか1つを分割予定ライン11に照射するレーザー光線として選択し、選択されたレーザー光線を分割予定ラインに照射して走査する。そして、このようなレーザー加工方法によれば、ワーク1の光学軸OAの方向と分割予定ライン11の延伸方向とに基づいてワーク1に照射するレーザー光線の直線偏光方向を設定するので、分割予定ライン11の内部に改質層を形成することができる。
【0047】
〔具体例〕
最後に、選択工程の幾つかの具体例について説明する。
【0048】
〔具体例1〕
始めに、図16及び図17を参照して、ワーク1が0°回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム(リチウムナイオベイト0°Y)によって形成されている場合について説明する。図16は、ワークが0°回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウムによって形成されている場合におけるレーザー加工方法を説明するための模式図であり、図16(a)はワークの平面図であり、図16(b)はワークの側面図である。図17は、図16に示すレーザー加工方法を用いて分割されたワークを示す写真図である。
【0049】
図16(a),(b)に示すように、ワーク1が0°回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウムによって形成されている場合、光学軸OAはx軸方向に沿ってワーク1の加工面が存在する平面内に存在している。そこで、光学軸OAの方向に対し平行な方向(x軸方向)に第1の分割予定ライン11aを設定すると共に、第1の分割予定ライン11aに直交する方向(y軸方向)に第2の分割予定ライン11bを設定する。そして、制御装置6は、偏光方向設定部53を制御することによって、第1の分割予定ライン11aに照射するレーザー光線LBの直線偏光方向を、光学軸OAとレーザー光線の光軸とが形成する面に直交する方向(y軸方向に振動する直線偏光成分Ey)に調整することにより、第1の分割予定ライン11aに照射するレーザー光線として常光線を選択する。また、制御装置6は、偏光方向設定部53を制御することによって、第2の分割予定ライン11bに照射するレーザー光線LBの直線偏光方向を、光学軸OAとレーザー光線の光軸とが形成する面に直交する方向(y軸方向に振動する直線偏光成分Ey)に調整することにより、第2の分割予定ライン11bに照射するレーザー光線として常光線を選択する。この結果、図17に示すように、分割予定ライン11a,11bに沿ってワーク1を分割することができた。
【0050】
なお、この場合、レーザー光線の直線偏光方向は、加工に悪影響を与えるほどの異常光線が発生しない程度に調整されていればよい。また、往路加工及び復路加工のために保持機構2を90度回転させる場合、第1の分割予定ライン11aを加工するときと第2の分割予定ライン11bを加工するときとでレーザー光線LBの直線偏光方向を90度変化させる必要がある。また、保持機構2を回転させないで保持機構2をXY方向に移動させて第1の分割予定ライン11a及び第2の分割予定ライン11bを加工する場合には、レーザー光線LBの直線偏光方向を変える必要はない。
【0051】
〔具体例2〕
次に、図18及び図19を参照して、ワーク1が128°回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム(リチウムナイオベイト128°Y)によって形成されている場合について説明する。図18は、ワークが128°回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウムによって形成されている場合におけるレーザー加工方法を説明するための模式図であり、図18(a)はワークの平面図であり、図18(b)はワークの側面図である。図19は、図18に示すレーザー加工方法を用いて分割されたワークを示す写真図である。
【0052】
図18(a),(b)に示すように、ワーク1が128°回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウムによって形成されている場合、光学軸OAはx軸方向に延伸すると共にワーク1の加工面に対し角度37.8°傾いている。そこで、光学軸OAとレーザー光線の光軸とが形成する面内に第1の分割予定ライン11aを設定すると共に、第1の分割予定ライン11aに直交する方向に第2の分割予定ライン11bを設定する。そして、制御装置6は、偏光方向設定部53を制御することによって、第1の分割予定ライン11aに照射するレーザー光線の直線偏光方向を、光学軸OAとレーザー光線の光軸とが形成する面に平行になる方向(x軸方向に振動する直線偏光成分Ex)に調整することにより、第1の分割予定ライン11aに照射するレーザー光線として異常光線を選択する。なお、この場合、レーザー光線の直線偏光方向は、加工に悪影響を与えるほどの常光線が発生しない程度に調整されていればよい。また、制御装置6は、偏光方向設定部53を制御することによって、第2の分割予定ライン11bに照射するレーザー光線の直線偏光方向を、光学軸OAとレーザー光線の光軸とが形成する面に直交する方向(y軸方向に振動する直線偏光成分Ey)に調整することにより、第2の分割予定ライン11bに照射するレーザー光線として常光線を選択する。この結果、図19に示すように、分割予定ライン11a,11bに沿ってワーク1を分割することができた。
【0053】
なお、この場合、レーザー光線の直線偏光方向は、加工に悪影響を与えるほどの異常光線が発生しない程度に調整されていればよい。また、往路加工及び復路加工のために保持機構2を90度回転させる場合、レーザー光線LBの直線偏光方向を変える必要はない。また、保持機構2を回転させないで保持機構2をXY方向に移動させて第1の分割予定ライン11a及び第2の分割予定ライン11bを加工する場合には、第1の分割予定ライン11aを加工するときと第2の分割予定ライン11bを加工するときとでレーザー光線LBの直線偏光方向を90度変化させる必要がある。
【0054】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、上記実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、上記実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例、及び運用技術等は、全て本発明の範疇に含まれる。
【0055】
最後に、上記実施形態から把握し得る請求項以外の技術思想を記載する。
(1)前記選択工程は、前記レーザー光線の直線偏光方向を、光学軸とレーザー光線の光軸とが形成する平面に直交する方向に調整することによって、前記分割予定ラインに照射するレーザー光線として常光線を選択する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の板状物の加工方法。
【0056】
(2)前記選択工程は、前記レーザー光線の直線偏光方向を、光学軸とレーザー光線の光軸とが形成する平面に平行になる方向に調整することによって、前記分割予定ラインに照射するレーザー光線として異常光線を選択する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の板状物の加工方法。
【符号の説明】
【0057】
1 ワーク
2 保持機構
4 XY駆動機構
5 レーザー照射機構
6 制御装置
11 分割予定ライン
21 保持面
22 円筒部材
41,42 滑動ブロック
43 加工送り機構
44 割り出し送り機構
45 加工送り量検出手段
46 割り出し送り量検出手段
51 発振器
52 強度調整部(アッテネータ)
53 偏光方向設定部
54 ミラー素子
55 集光レンズ
431,441 ボールネジ
432,442 パルスモータ
521,531 1/2波長板
522,532 モータ
523 偏光ビームスプリッタ
524 アブソーバ
OA 光学軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複屈折性結晶材料から構成された板状物の加工面にレーザー光線を照射して走査することによって、分割予定ラインの内部に改質層を形成して板状物を分割する切っ掛けを形成する板状物の加工方法であって、
前記複屈折性結晶材料の光学軸の方向を検出する検出工程と、
前記検出工程によって検出された光学軸の方向と前記分割予定ラインの延伸方向とに基づいて、常光線、異常光線、及び常光線と異常光線との複合光線のうちのいずれか1つを前記分割予定ラインに照射するレーザー光線として選択する選択工程と、
前記選択工程によって選択されたレーザー光線を前記分割予定ラインに照射して走査することによって、分割予定ラインの内部に改質層を形成する改質層形成工程と、
を含む板状物の加工方法。
【請求項2】
前記複屈折性結晶材料は、0°回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウムであり、
前記分割予定ラインは、前記光学軸の方向に対し平行な方向に設定された第1の分割予定ラインと、第1の分割予定ラインに直交する方向に設置された第2の分割予定ラインとを含み、
前記選択工程は、
前記第1の分割予定ラインに照射するレーザー光線の直線偏光方向を、前記光学軸と前記レーザー光線の光軸とが形成する平面に垂直な方向に調整することによって、第1の分割予定ラインに照射するレーザー光線として常光線を選択する工程と、
前記第2の分割予定ラインに照射するレーザー光線の直線偏光方向を、前記光学軸と前記レーザー光線の光軸とが形成する平面に垂直な方向に調整することによって、第2の分割予定ラインに照射するレーザー光線として常光線を選択する工程と、を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の板状物の加工方法。
【請求項3】
前記複屈折性結晶材料は、128°回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウムであり、
前記分割予定ラインは、前記光学軸と前記レーザー光線の光軸とが形成する平面内に設定された第1の分割予定ラインと、第1の分割予定ラインに直交する方向に設置された第2の分割予定ラインとを含み、
前記選択工程は、
前記第1の分割予定ラインに照射するレーザー光線の直線偏光方向を、前記光学軸と前記レーザー光線の光軸とが形成する平面に平行な方向に調整することによって、第1の分割予定ラインに照射するレーザー光線として異常光線を選択する工程と、
前記第2の分割予定ラインに照射するレーザー光線の直線偏光方向を、前記光学軸と前記レーザー光線の光軸とが形成する平面に垂直な方向に調整することによって、第1の分割予定ラインに照射するレーザー光線として常光線を選択する工程と、を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の板状物の加工方法。
【請求項4】
複屈折性結晶材料から構成された板状物を保持する保持手段と、
前記板状物を透過する波長を有するレーザー光線を発振する発振器と、前記保持手段に保持された板状物の内部に集光点を位置付けて該発振器が発振したレーザー光線を集光する集光部と、を有するレーザー加工手段と、
前記板状物の光学軸の方向と前記分割予定ラインの延伸方向とに基づいて、前記レーザー光線の直線偏光方向を設定する偏光方向設定手段と、
を備えることを特徴とするレーザー加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−248241(P2011−248241A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123338(P2010−123338)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】