説明

果実の容器詰め装置

【課題】出荷パック内に見栄え良くイチゴを整列する。
【解決手段】制御部は、マシンビジョン62が取得した収穫箱70に収容されたイチゴの画像に基づいてイチゴの吸着位置を検出し、イチゴ搬送装置10に、収穫箱70に収容されたイチゴを吸着保持させるとともに、中継コンベア40上にイチゴを一旦載置させる処理と、マシンビジョンが取得した中継コンベアに載置されたイチゴの画像に基づいてイチゴの向き及び吸着位置を検出し、イチゴ搬送装置に、中継コンベアに載置されたイチゴを吸着位置にて吸着保持させるとともに、イチゴの向きに基づいて出荷パック52A〜52Dにイチゴを搬送させる処理とを実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果実の容器詰め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国のイチゴ生産は、多くの労働時間(面積10aに約2000時間)を必要とするため、省力化を図る必要がある。そのなかでも選別パック詰め作業は、全労働時間の3割弱を占めているため、労働時間の長時間化の一因となっている。
【0003】
しかるに、イチゴのような軟弱果実は損傷しやすく、扱いが難しい。このため、ミカン、リンゴ、トマト等の損傷が生じにくい果実の箱詰め装置は広く普及している一方で、イチゴのような軟弱果実の自動パック詰め技術はほとんど普及していないのが現状である。
【0004】
一方、近年におけるイチゴ等の軟弱果実の箱詰め技術の研究成果としては、特許文献1に記載の青果物保持装置および青果物移送装置や、特許文献2に記載のイチゴ自動選別充填システムや、特許文献3に記載の箱詰め機などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−052487号公報
【特許文献2】特開2003−266024号公報
【特許文献3】特開2005−231710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2の技術では、専用の収穫箱に向きを揃えて整列した状態の果実をハンドリングする必要がある。このため、収穫箱にランダムな置き方で収容された果実を扱うことができず、収穫箱に人手により整列して収容する必要があり、手間がかかる。一方、特許文献3に記載の技術は、果実を損傷なくハンドリングすべく、フィンガにより物理的に把持するものであるが、非常に複雑な構成となっている。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、果実を第1容器から第2容器に整列した状態で収容することが可能な果実の容器詰め装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の果実の容器詰め装置は、果実がランダムに収容された第1容器が載置される第1容器載置部と、前記果実を整列した状態で収容する第2容器が載置される第2容器載置部と、前記第1容器載置部及び前記第2容器載置部とは異なる位置に配置された、前記果実を載置可能な載置部と、前記果実を吸着保持可能で、前記第1容器、前記第2容器及び前記載置部間の前記果実の搬送を行う果実搬送機構と、前記第1容器に収容された果実の画像、及び前記載置部に載置された果実の画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部が取得した前記第1容器に収容された果実の画像に基づいて、前記果実の吸着位置を検出し、前記果実搬送機構に、前記第1容器に収容された果実を吸着保持させるとともに、前記載置部上に前記果実を一旦載置させる第1処理と、前記画像取得部が取得した前記載置部に載置された果実の画像に基づいて、前記果実の向き及び吸着位置を検出し、前記果実搬送機構に、前記載置部に載置された果実を前記吸着位置にて吸着保持させるとともに、前記果実の向きに基づいて、前記第2容器に前記果実を搬送させる第2処理とを実行する制御部と、を備える果実の容器詰め装置である。
【0009】
これによれば、ランダムに果実が収容された第1容器から取り出されて、1つ1つの果実の大きさや姿勢を認識しやすくなった状態(載置部に載置された状態)で取得される画像から果実の向き及び吸着位置を検出するので、果実の向きや吸着位置を高精度に取得することができる。また、高精度に検出された果実の向きや吸着位置に基づいて、果実搬送機構が第2容器内に果実を搬送することで、第2容器内に見栄え良く果実を整列することが可能となる。
【0010】
この場合において、前記載置部は、当該載置部に載置された果実を、最初に載置された位置とは異なる位置まで移動する移動機構を有し、前記画像取得部は、前記異なる位置まで移動した果実の画像を取得することとすることができる。かかる場合には、果実の画像を取得するに際して、果実搬送機構が果実近傍から退避する動作を行う必要がなくなる。これにより、果実搬送機構の動作を簡素化することができる。
【0011】
この場合、前記移動機構は、ベルトコンベアであってもよく、前記ベルトコンベアの前記果実が載置される載置面に緩衝材が設けられていてもよい。かかる場合には、緩衝材の作用により、載置面上に搬送される果実の損傷を抑制することができる。
【0012】
本発明の果実の容器詰め装置では、前記果実搬送機構は、筒状の吸着管と、前記吸着管を上下動自在な状態で保持する保持部と、前記吸着管の下端部と前記果実が接触した状態で、前記吸着管の内部を負圧にする負圧発生機構と、前記吸着管が前記保持部に対して上下動する範囲のうち最下端よりも上の所定位置に位置したことを検出する検出部と、前記吸着管を保持する前記保持部を移動する移動部と、を有しており、前記制御部は、前記移動部を介して前記吸着管の下端部を前記果実の吸着位置に接近及び接触させ、前記吸着管が前記所定位置に位置したことを前記検出部が検出した時点で、前記移動部による動作を停止するとともに、前記負圧発生機構による動作を開始することで、前記果実搬送機構による吸着保持動作を行うこととしてもよい。かかる場合には、果実に対して、吸着管の自重のみが掛かった状態から、果実搬送機構による吸着保持動作を行うことができるので、果実に過度な負担を掛けることがなく、吸着保持動作における果実の損傷を抑制することが可能となる。
【0013】
また、本発明の果実容器詰め装置では、前記果実搬送機構が前記果実を吸着保持するときの前記吸着管下端部の高さ位置を検出する高さ位置検出部を更に備え、前記制御部は、前記高さ位置検出部の検出結果に基づいて、前記果実の大きさに関する値を算出し、当該果実の大きさに関する値に基づいて、前記果実の吸着保持を解除するときの前記果実搬送機構の高さ位置を決定することとしてもよい。かかる場合には、果実の大きさに関する値に基づいて果実の吸着保持を解除するときの果実搬送機構の高さ位置を決定するので、果実を載置する面と果実との距離を、果実が損傷しない程度に調整した状態で、果実の吸着保持を解除することができる。これにより、果実の損傷を抑制することができる。
【0014】
また、前記第2容器には、前記果実が、列方向及び当該列方向に垂直な行方向に沿って順に配列され、前記制御部は、前記果実を前記第2容器の所定の搬送位置まで搬送する方向を、前記列方向及び前記行方向に交差し、前記第2容器に既に配列されている果実と干渉しない方向とすることができる。かかる場合には、果実を第2容器内に搬送する際の、他の果実との接触による果実の損傷を抑制することができる。
【0015】
また、前記制御部は、前記画像取得部で取得された画像から前記果実の向きを算出できない場合には、前記果実搬送機構を、前記向きを算出できない果実に接触させ、当該接触後に前記画像取得部で取得される画像から前記果実の向きを算出することとしてもよい。かかる場合には、果実の状態が、画像取得部で取得された画像から果実の向きを算出できない状態になっている場合(例えば果実が蔕部分を下にして直立している場合)に、当該状態を果実搬送機構の接触により解消することで、果実の向きを算出することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の果実の容器詰め装置は、果実を第1容器から第2容器に整列した状態で収容することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】イチゴのパック詰めシステムを示す斜視図である。
【図2】イチゴ搬送装置を取り出して拡大して示す図である。
【図3】エンドエフェクタを取り出して拡大した状態を示す図である。
【図4】図4(a)、図4(b)は、エンドエフェクタ20の断面図である。
【図5】イチゴのパック詰めシステムの制御系を示すブロック図である。
【図6】パック詰めシステムの一連の処理を示すフローチャートである。
【図7】図6の処理を説明するための図である。
【図8】図6のステップS16の具体的処理を示すフローチャートである。
【図9】図6のステップS26の具体的処理を示すフローチャートである。
【図10】出荷パックにイチゴを搬送する際の搬送方向を示す図である。
【図11】ステップS24においてイチゴの等階級の判別や、イチゴの向き及び吸着位置の計算ができなかった場合の対処法について示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の果実の容器詰め装置の一実施形態を図1〜図11に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1には、果実の容器詰め装置としてのイチゴのパック詰めシステム100が斜視図にて示されている。図1に示すように、パック詰めシステム100は、イチゴ搬送機構としてのイチゴ搬送装置10と、第1容器載置部としての収穫箱用コンベア60と、載置部としての中継コンベア40と、第2容器載置部としての出荷パック用コンベア50A〜50Dと、画像取得部としてのマシンビジョン62と、これら各部を保持するフレーム80と、を備える。なお、図1では、収穫箱用コンベア60及び中継コンベア40の長手方向をY軸方向、出荷パック用コンベア50A〜50Dの長手方向(Y軸方向に直交する方向)をX軸方向、これらY軸方向及びX軸方向に直交する方向をZ軸方向として示している。
【0020】
図2には、イチゴ搬送装置10を取り出して拡大した状態が示されている。イチゴ搬送装置10は、図2に示すように、エンドエフェクタ20と、エンドエフェクタ20をXY面内2次元方向及びZ軸方向、並びにZ軸回りの回転方向に移動する移動部(マニュピレータ)90と、を備える。
【0021】
図3には、エンドエフェクタ20のみを取り出して拡大した状態が示されている。図3に示すように、エンドエフェクタ20は、吸着管22と、保持部24と、を有する。
【0022】
吸着管22は、エンドエフェクタ20の断面図である図4(a)、図4(b)に示すように、Z軸方向に延び、内部が中空の略円筒状の部材から成る。吸着管22の一側(図4(a)の−Z側)の端部は、イチゴが接触する接触部22aとされている。なお、接触部22aには、イチゴと接触した際のイチゴの損傷を抑制するための緩衝材を設けることとしてもよい。また、吸着管22の+Z端部近傍には、長円状のスライド孔22bが形成されている。
【0023】
保持部24は、図4(a)、図4(b)に示すように、内部に空間24aを有している。また、保持部24は、図4(a)、図4(b)のY軸方向(紙面直交方向)に延びるピン25を有し、当該ピン25を吸着管22のスライド孔22bに挿通させた状態で、吸着管22を吊り下げ保持している。これにより、吸着管22は、保持部24に対してZ軸方向にスライド自在な状態となっている。
【0024】
また、保持部24の外周部には、送光部82aと、受光部82bとを有する検出部としての透過型の光電センサ82(図5参照)が設けられている。送光部82aから出射した検出光は、保持部24に形成された開口24b、24cを介して受光部82bに入射する。なお、吸着管22と保持部24との位置関係が、図4(a)に示すような状態にある場合には、受光部82bが検出光を受光することが可能であるが、図4(b)に示すような状態にある場合には、検出光が吸着管22に当たるため、受光部82bは、検出光を受光することができなくなる。受光部82aの受光結果は、図5の制御部99に送信される。
【0025】
また、図4(a)、図4(b)に示すように、保持部24内部の空間24a内には、気圧センサ92が設けられている。気圧センサ92は、空間24a内の気圧を検出し、当該検出結果を図5の制御部99に送信する。なお、図3、図4では図示が省略されているが、保持部24には、空間24a内及び吸着管22内を負圧にするための、負圧発生機構94(図5参照)が接続されている。負圧発生機構94は、図4(b)に示すように吸着管22の接触部22aにイチゴが接触した状態で空間24a及び吸着管22の内部を負圧にすることで、吸着管22にイチゴを吸着保持させるものである。
【0026】
図2に戻り、移動部90は、Y軸方向に延びるYガイド12と、X軸方向に延び、Yガイド12に沿ってY軸方向に移動するXガイド14と、Xガイド14に沿ってX軸方向に移動するZガイド16と、Zガイド16に沿ってZ軸方向に移動するZ可動部18と、を有する。
【0027】
Xガイド14は、直進駆動装置(例えば、ボールネジ、リニアモータなど)の駆動力を受けて、Yガイド12に沿ってY軸方向に移動する。また、Zガイド16は、直進駆動装置の駆動力を受けて、Xガイド14に沿ってX軸方向に移動する。また、Z可動部18は、直進駆動装置の駆動力を受けて、Zガイド16に沿ってZ軸方向に移動する。これにより、Z可動部18は、X、Y、Z軸方向の3軸方向に移動可能となっている。なお、各直進駆動装置については、便宜上、図示を省略している。
【0028】
更に、Z可動部18は、エンドエフェクタ20を回転可能に保持している。エンドエフェクタ20は、回転駆動装置(不図示)の駆動力を受けて、Z軸回り(θz)に回転する。
【0029】
すなわち、本実施形態のエンドエフェクタ20は、移動部90により、X,Y,Z、及びθz方向の4自由度方向に移動可能となっている。なお、エンドエフェクタ20の位置、姿勢は、図5の位置検出部91(リニアエンコーダやロータリエンコーダなど)により計測することが可能であるものとする。
【0030】
収穫箱用コンベア60は、ベルトコンベアであり、収穫後のイチゴがランダムな姿勢で収容された第1容器としての収穫箱70を−Y方向から+Y方向に向けて搬送する。
【0031】
中継コンベア40は、収穫箱用コンベア60よりも小型のベルトコンベアであり、収穫箱70から搬送されてきたイチゴを、−Y方向から+Y方向に向けて搬送する。中継コンベア40のベルトのイチゴ載置面(図1の+Z側の面)には、緩衝材が貼付されている。
【0032】
出荷パック用コンベア50A〜50Dは、それぞれ、第2容器としての出荷パック52A〜52Dを−X方向から+X方向に向けて搬送する。ここで、出荷パック52A〜52Dは、等階級別に割り当てられているものとする。例えば、図1の例では、出荷パック52Aは最も等階級が高いイチゴがパック詰めされる出荷パックであり、出荷パック52Dは最も等階級が低いイチゴが詰められる出荷パックであるものとする。出荷パック用コンベア50A〜50Dは、イチゴの詰められ度合いに応じて、制御部99(図5参照)の指示の下、出荷パック52A〜52Dを+X方向に搬送する。
【0033】
マシンビジョン62は、図1において破線で示すように、収穫箱70内のイチゴの画像を取得するとともに、中継コンベア40上のイチゴの画像を取得し、制御部99(図5参照)に対して送信する。
【0034】
図5には、本実施形態のパック詰めシステム100の制御系がブロック図にて示されている。図5に示すように、パック詰めシステム100では、制御部99が、マシンビジョン62で取得された画像や、気圧センサ92、光電センサ82の検出結果に基づいて、移動部90、負圧発生機構94、コンベア60,40,50A〜50D等の動作を、統括的に制御する。
【0035】
次に、本実施形態のパック詰めシステム100における処理について、図6、図8、図9のフローチャートに沿って、その他図面を適宜参照しつつ、説明する。
【0036】
図6は、パック詰めシステム100の一連の処理を示すフローチャートである。図6の処理の前提として、出荷パック52A〜52Dが出荷パック用コンベア50A〜50D上にセットされるとともに、所定数の収穫箱70が収穫箱用コンベア60上にセットされているものとする。まず、ステップS10では、制御部99が、収穫箱用コンベア60を動作させて、収穫箱70を所定位置まで搬送する(図7の矢印A参照)。次いで、ステップS12では、制御部99が、マシンビジョン62から送信されてきた取得画像に基づいて、収穫箱70内にイチゴが存在しているか否かを判断する。ここでの判断が否定された場合には、ステップS10に戻り、次の収穫箱70が所定位置となるように、収穫箱用コンベア60を動作させて収穫箱70の搬送を行う。一方、ステップS12の判断が肯定された場合には、ステップS14に移行する。
【0037】
ステップS14では、制御部99が、マシンビジョン62から送信されてきた取得画像に基づいて、収穫箱70内のイチゴ(次の搬送対象のイチゴ)の吸着位置を計算する。この場合、制御部99は、取得画像からイチゴの赤道部(径が最も大きい部分)を検出し、当該赤道部を吸着位置とする。
【0038】
次いで、ステップS16では、制御部99が、エンドエフェクタ20によるイチゴの吸着処理を実行する。具体的には、制御部99は、図8のフローチャートに沿った処理を実行する。
【0039】
図8の処理では、まず、ステップS40において、制御部99が、移動部90を介して、イチゴの吸着位置上方にエンドエフェクタ20を移動する。次いで、ステップS42では、制御部99が、移動部90を介して、エンドエフェクタ20を下方に移動する。
【0040】
次いで、ステップS44では、制御部99が、光電センサ82(受光部82b)の検出光の検出が途絶えるまで待機する。ここでの判断が肯定される場合とは、図4(b)に示すように、エンドエフェクタ20が下降し、吸着管22の接触部22aがイチゴに接触して、吸着管22が保持部24に対して上方に移動した状態となっていることを意味する。この場合、吸着管22の接触部22aとイチゴとが密着していることになる。なお、図4(b)の状態では、エンドエフェクタ20の下降動作による力はイチゴに対して一切加わっておらず、吸着管22の自重のみが作用していることになる。
【0041】
図8に戻り、ステップS44の判断が肯定されると、ステップS46に移行し、制御部99は、エンドエフェクタ20の下方への移動を停止する。次いで、ステップS48では、制御部99は、負圧発生機構94の動作を開始する。すなわち、エンドエフェクタ20の吸着管22によるイチゴの吸着保持動作が開始されることになる。
【0042】
次いで、ステップS50では、制御部99は、気圧センサ92が検出する気圧が所定気圧になるまで待機する。ここで、所定気圧とは、イチゴを吸着保持可能な気圧を意味する。なお、制御部99は、マシンビジョン62の取得画像に基づいて、吸着保持対象のイチゴの大きさを検出しておき、当該イチゴの大きさに合わせて所定気圧を適切な値(イチゴを損傷せずに吸着保持できる値)に変更することとしてもよい。
【0043】
ステップS50の判断が肯定された場合、ステップS52に移行し、制御部99は、上述した所定気圧を維持するように、負圧発生機構94を制御する。これにより、エンドエフェクタ20がイチゴを吸着保持した状態を維持することができる。その後は、図6のステップS18に移行する。
【0044】
図6のステップS18では、制御部99は、収穫箱70からイチゴを取り出し、中継コンベア40の所定位置に静置する(図7の矢印B参照)。この場合、中継コンベア40のベルトの上面(イチゴ載置面)には、前述したように緩衝材が貼付されているので、イチゴがある一定の高さにある状態で、制御部99が負圧発生機構94の動作を停止して、吸着管22によるイチゴの吸着保持を解除することとすれば、イチゴが損傷することはほとんどない。
【0045】
次いで、ステップS20では、制御部99が、中継コンベア40を所定量移動する(図7の矢印C参照)。次いで、ステップS22では、制御部99が、中継コンベアのイチゴの画像を取得できたか否かを判断する。ここでの判断が否定された場合、すなわち、中継コンベア40に静置したイチゴが未だマシンビジョン62により撮影されていない場合には、ステップS12に戻り、上述した収穫箱70から中継コンベア40へのイチゴの搬送処理を実行する。そして、ステップS22の判断が肯定された段階(図7に示すように、中継コンベア40上のイチゴが撮影された段階)で、ステップS24に移行する。
【0046】
ステップS24では、制御部99は、マシンビジョン62により取得された画像に基づいて、イチゴの等階級の判別を行うとともに、イチゴの向き、吸着位置を計算する。イチゴの向きは、蔕部(緑色部分)の重心と、果実部(赤色部分)の重心とを結ぶ直線の向きとすることができる。また、吸着位置は、ステップS14と同様、イチゴの赤道部の位置とすることができる。
【0047】
次いで、ステップS26では、制御部99がエンドエフェクタによるイチゴ吸着処理を実行する。具体的には、制御部99は、図9のフローチャートに沿った処理を実行する。
【0048】
図9の処理では、ステップS40〜S46まで、図8(ステップS16)と同様の処理を実行する。具体的には、制御部99は、ステップS40において、移動部90を介して、中継コンベア40上のイチゴ(等階級判別等の処理が行われたイチゴ)の吸着位置上方にエンドエフェクタ20を移動するとともに、ステップS42において、移動部90を介して、エンドエフェクタ20を下方に移動する。また、制御部99は、ステップS44において光電センサ82の検出光の検出が途絶えた後に、ステップS46においてエンドエフェクタ20の下降移動を停止する。
【0049】
次いで、ステップS47では、制御部99が、エンドエフェクタ20のZ位置(高さ位置)を図5の位置検出部91から取得し、当該Z位置に基づいて、イチゴの短果径(高さ)を算出する。すなわち、位置検出部91は、高さ位置検出部として機能している。
【0050】
その後は、ステップS48〜S52まで、図8(ステップS16)と同様の処理を実行する。具体的には、制御部99は、ステップS48において、負圧発生機構94の動作を開始し、ステップS50で気圧センサ92が検出する気圧が所定気圧になった後は、ステップS52において、所定気圧を維持するように、負圧発生機構94を制御する。これにより、エンドエフェクタ20がイチゴを吸着保持した状態を維持することができる。以上の処理が終了すると、図6のステップS28に移行する。
【0051】
図6のステップS28では、制御部99は、出荷パック52A〜52Dのいずれかに、向きを揃えて静置する(図7の矢印D参照)。具体的には、制御部99は、ステップS24で判別されたイチゴの等階級に基づいて、エンドエフェクタ20が吸着保持しているイチゴを、出荷パック52A〜52Dのいずれに対して搬入するかを判断する。制御部99は、搬入すべき出荷パックの、イチゴ搬入位置(制御部99が記憶しているイチゴの搬入状況から決められる)に対して、図10に示すように斜め方向、すなわち、イチゴが整列されているX軸方向(行方向)及びY軸方向(列方向)に交差する方向で、かつ既にパック詰めされているイチゴと干渉しない方向から、接近する。なお、制御部99は、イチゴ搬入位置に位置する前に、イチゴの向きが所定方向となるように、ステップS24で算出されたイチゴの向きに基づいて、移動部90を介してエンドエフェクタ20のθz方向の姿勢を調整するものとする。
【0052】
更に、イチゴを出荷パックに搬入する際には、制御部99は、ステップS47で算出されたイチゴの短果径(高さ)に基づいて、エンドエフェクタ20の高さ位置を位置検出部91の検出値に基づいて調整し、イチゴと出荷パックとの間の距離がほぼ0の状態とする。そして、当該状態で、制御部99は、負圧発生機構94の動作を停止して、エンドエフェクタ20によるイチゴの吸着保持を解除し、イチゴを出荷パックのイチゴ搬入位置に静置するようにする。
【0053】
次いで、ステップS30では、制御部99は、出荷パックに対するイチゴの搬入状況(制御部99がモニタしている)に基づいて、ステップS28でイチゴを搬入した出荷パックが満杯になったか否かを判断する。ステップS30の判断が否定された場合には、ステップS34に移行する。一方、ステップS30の判断が肯定された場合には、ステップS32において、制御部99が、満杯になった出荷パックを搬送する出荷パック用コンベアを図8の矢印E方向に移動した後、ステップS34に移行する。
【0054】
ステップS34に移行した場合、制御部99は、終了か否かを判断する。このステップS34の判断が否定された場合には、ステップS12に戻るが、ステップS34の判断が肯定された場合には、図6の全処理を終了する。
【0055】
なお、ステップS24において、イチゴの画像が取得できたにも関わらず、等階級の判別や、イチゴの向き及び吸着位置の計算ができない場合がある。この場合、イチゴが、図11に破線にて示すように、上向きの状態で中継コンベア40上に載置されている可能性が高い。このような場合には、制御部99は、図11に示すように、エンドエフェクタ20(吸着管22)を中継コンベア40の上方に移動するとともに、上向きの状態となっている可能性の高いイチゴに吸着管22を接触させることで、イチゴを傾倒させるようにしても良い。この場合、傾倒したイチゴの画像を再度取得した後、ステップS24の処理を再試行することができる。
【0056】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によると、制御部99は、マシンビジョン62が取得した収穫箱70に収容されたイチゴの画像に基づいて、イチゴの吸着位置(赤道部)を検出し、イチゴ搬送装置10に、収穫箱70に収容されたイチゴを吸着位置にて吸着保持させるとともに、中継コンベア40上にイチゴを一旦載置させる処理(S14〜S18)と、マシンビジョン62が取得した中継コンベア40に載置されたイチゴの画像に基づいて、イチゴの向き及び吸着位置(赤道部)を検出し、イチゴ搬送装置10に、中継コンベア40に載置されたイチゴを吸着位置にて吸着保持させるとともに、イチゴの向きに基づいて、出荷パック52A〜52Dにイチゴを搬送させる処理(S24〜S28)とを実行させる。このように、本実施形態では、ランダムにイチゴが収容された収穫箱70から取り出されて、1つ1つのイチゴの大きさや姿勢を認識しやすくなった状態(中継コンベア40に載置された状態)で取得される画像からイチゴの向き及び吸着位置を検出するので、イチゴの向きや吸着位置を高精度に取得することができる。また、高精度に検出されたイチゴの向きや吸着位置に基づいて、イチゴ搬送装置10が出荷パック52A〜52D内にイチゴを搬送することで、出荷パック52A〜52D内に見栄え良くイチゴを整列することができる。また、本実施形態では、中継コンベア40上のイチゴの画像に基づいて、イチゴの等階級判別を行うこととしているので、等階級判別の結果に基づき、対応する等階級の出荷パック(52A〜52Dのいずれか)に見栄え良く向きを揃えて並べることが可能である。
【0057】
また、中継コンベア40は、当該中継コンベア40に載置されたイチゴを、イチゴ搬送装置10により最初に載置された位置とは異なる位置まで移動し、マシンビジョン62は、異なる位置まで移動したイチゴの画像を取得するので、イチゴの画像を取得するに際して、イチゴ搬送装置10がイチゴ近傍から退避する動作を行う必要がない。これにより、イチゴ搬送装置10の動作を簡素化することができる。
【0058】
また、中継コンベア40の上面(イチゴが載置される載置面)には緩衝材が設けられているので、緩衝材の作用により、載置面上に搬送されるイチゴの損傷を抑制することができる。
【0059】
また、制御部99は、移動部90を介して吸着管22の下端部(接触部22a)をイチゴの吸着位置に接近及び接触させ、吸着管22が所定位置に位置したことを光電センサ82が検出した時点(ステップS44の判断が肯定された時点)で、移動部90による動作を停止するとともに(ステップS46)、負圧発生機構64による動作を開始する(ステップS48)ことで、イチゴ搬送装置10による吸着保持動作を行う。したがって、イチゴに対して、吸着管の自重のみが掛かった状態から、イチゴ搬送装置10による吸着保持動作を行うことができるので、イチゴに過度な負担を掛けることがなく、吸着保持動作におけるイチゴの損傷を抑制することが可能となる。この場合、イチゴ搬送装置10(エンドエフェクタ20)における吸着力の調整、吸着管22の軽量化により、イチゴに作用する力は、最大1N、作用時間は吸着位置1箇所につき最長3s程度とすることができる。また、この程度の力であれば、イチゴの予冷や、吸着管22の下端部(接触部22a)に設ける緩衝材の材質選択等の対応により、イチゴの損傷をほぼゼロに抑えることができる。
【0060】
また、制御部99は、位置検出部91の検出結果に基づいて、イチゴの大きさに関する値(短果径)を算出し、当該イチゴの大きさに関する値(短果径)に基づいて、イチゴの吸着保持を解除するときのイチゴ搬送装置10の高さ位置を決定するので、イチゴを載置する面とイチゴとの距離を、イチゴが損傷しない程度に調整した状態で、イチゴの吸着保持を解除することができる。これにより、イチゴの損傷を抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態では、制御部99は、出荷パック52A〜52Dのイチゴ搬送位置までイチゴを搬送する方向を、列方向(X軸方向)及び行方向(Y軸方向)に交差し、出荷パック52A〜52Dに既に配列されているイチゴと干渉しない方向とするので、イチゴを出荷パック52A〜52Dに搬送する際の、他のイチゴとの接触によるイチゴの損傷を抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態では、制御部99は、イチゴの状態が、マシンビジョン62で取得された画像からイチゴの向きを算出できない状態になっている場合(例えばイチゴが蔕部分を下にして直立している場合)に、当該状態をエンドエフェクタ20の接触により解消するので、イチゴの向きを確実に算出することができる。
【0063】
また、本実施形態では、収穫箱70内又は中継コンベア40上の吸着対象のイチゴに対し、エンドエフェクタ20が上方から近づくので、他のイチゴとエンドエフェクタ20との干渉を考慮する必要がない。すなわち、収穫箱70内にイチゴを所定間隔を隔てて整列させたりする必要がなくなる。また、本実施形態によれば、収穫箱70からイチゴを取り出す作業と出荷パック52A〜52Dへの搬入作業を1台の装置(イチゴ搬送装置10)で行うことができるので、複数代の装置を必要とする場合に比べ、低コスト化を図ることができる。
【0064】
なお、上記実施形態では、載置部としての中継コンベア40、第1容器載置部としての収穫箱用コンベア60、及び第2容器載置部としての出荷パック用コンベア50A〜50Dが、それぞれベルトコンベアである場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、各コンベアに代えて単なる載置台を採用してもよい。また、ベルトコンベアに限らず、その他の装置、例えばローラコンベアなどを採用してもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、中継コンベア40上のイチゴの画像から等階級を判別する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、収穫箱70内に収容されたイチゴが、既に等階級別に仕分けされているような場合には、等階級判別を省略してもよい。
【0066】
なお、上記実施形態では、図6のステップS22において、中継コンベア40上のイチゴの画像が取得できるまで、収穫箱70内のイチゴの中継コンベア40上への搬送を繰り返す場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、制御部99は、イチゴの画像が取得できるまで待機することとしてもよい。この場合、図7のように中継コンベア40上にイチゴが複数載置されることはなく、中継コンベア40上には1つのイチゴが載置されるのみである。
【0067】
なお、上記実施形態では、果実が、イチゴである場合について説明したが、これに限られるものではない。果実としては、イチゴ以外の軟弱果実、例えばビワ、イチジクなどであってもよい。
【0068】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0069】
10 イチゴ搬送装置(イチゴ搬送機構)
22 吸着管
24 保持部
40 中継コンベア(載置部、ベルトコンベア)
50A〜50D 出荷パック用コンベア(第2容器載置部)
52A〜52D 出荷パック(第2容器)
60 収穫箱用コンベア(第1容器載置部)
62 マシンビジョン(画像取得部)
70 収穫箱(第1容器)
82 光電センサ(検出部)
90 移動部
91 位置検出部(高さ位置検出部)
94 負圧発生機構
99 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
果実がランダムに収容された第1容器が載置される第1容器載置部と、
前記果実を整列した状態で収容する第2容器が載置される第2容器載置部と、
前記第1容器載置部及び前記第2容器載置部とは異なる位置に配置された、前記果実を載置可能な載置部と、
前記果実を吸着保持可能で、前記第1容器、前記第2容器及び前記載置部間の前記果実の搬送を行う果実搬送機構と、
前記第1容器に収容された果実の画像、及び前記載置部に載置された果実の画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部が取得した前記第1容器に収容された果実の画像に基づいて、前記果実の吸着位置を検出し、前記果実搬送機構に、前記第1容器に収容された果実を吸着保持させるとともに、前記載置部上に前記果実を一旦載置させる第1処理と、前記画像取得部が取得した前記載置部に載置された果実の画像に基づいて、前記果実の向き及び吸着位置を検出し、前記果実搬送機構に、前記載置部に載置された果実を前記吸着位置にて吸着保持させるとともに、前記果実の向きに基づいて、前記第2容器に前記果実を搬送させる第2処理とを実行する制御部と、
を備える果実の容器詰め装置。
【請求項2】
前記載置部は、当該載置部に載置された果実を、最初に載置された位置とは異なる位置まで移動する移動機構を有し、
前記画像取得部は、前記異なる位置まで移動した果実の画像を取得することを特徴とする請求項1に記載の果実の容器詰め装置。
【請求項3】
前記移動機構は、ベルトコンベアであり、
前記ベルトコンベアの前記果実が載置される載置面には、緩衝材が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の果実の容器詰め装置。
【請求項4】
前記果実搬送機構は、
筒状の吸着管と、
前記吸着管を上下動自在な状態で保持する保持部と、
前記吸着管の下端部と前記果実が接触した状態で、前記吸着管の内部を負圧にする負圧発生機構と、
前記吸着管が前記保持部に対して上下動する範囲のうち最下端よりも上の所定位置に位置したことを検出する検出部と、
前記吸着管を保持する前記保持部を移動する移動部と、を有し、
前記制御部は、前記移動部を介して前記吸着管の下端部を前記果実の吸着位置に接近及び接触させ、前記吸着管が前記所定位置に位置したことを前記検出部が検出した時点で、前記移動部による動作を停止するとともに、前記負圧発生機構による動作を開始することで、前記果実搬送機構による吸着保持動作を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の果実の容器詰め装置。
【請求項5】
前記果実搬送機構が前記果実を吸着保持するときの前記吸着管下端部の高さ位置を検出する高さ位置検出部を更に備え、
前記制御部は、前記高さ位置検出部の検出結果に基づいて、前記果実の大きさに関する値を算出し、当該果実の大きさに関する値に基づいて、前記果実の吸着保持を解除するときの前記果実搬送機構の高さ位置を決定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の果実の容器詰め装置。
【請求項6】
前記第2容器には、前記果実が、列方向及び当該列方向に垂直な行方向に沿って順に配列され、
前記制御部は、前記果実を前記第2容器の所定の搬送位置まで搬送する方向を、前記列方向及び前記行方向に交差し、前記第2容器に既に配列されている果実と干渉しない方向とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の果実の容器詰め装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記画像取得部で取得された画像から前記果実の向きを算出できない場合には、前記果実搬送機構を、前記向きを算出できない果実に接触させ、当該接触後に前記画像取得部で取得される画像から前記果実の向きを算出することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の果実の容器詰め装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−171664(P2012−171664A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36432(P2011−36432)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、農林水産省、「超省力施設園芸生産技術の開発」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】