枝構造ベクトルデータ構造、枝構造ベクトルデータ編集装置、刺繍データ作成装置、枝構造ベクトルデータ編集プログラム、刺繍データ作成プログラム、枝構造ベクトルデータ編集プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、刺繍データ作成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、及び、枝構造ベクトルデータ編集プログラム及び刺繍データ作成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体
【課題】複数の糸色やループ形状の刺繍軌跡を扱える枝構造ベクトルデータ構造、枝構造ベクトルデータ編集装置、刺繍データ作成装置、枝構造ベクトルデータ編集プログラム、刺繍データ作成プログラム、前記プログラムを記録した記録媒体を提供する。
【解決手段】枝E11の糸色情報は緑なので枝E11の始点から終点へ走り縫いデータが作成される。当該走り縫いデータの刺繍終了点、枝E11の終点のリンク先は枝E12の終点であり、枝E12の糸色は緑であるので、枝E12の終点から始点へ走り縫いデータが作成される。当該走り縫いデータの刺繍終了点、枝E12の始点のリンク先はないので、枝E12の始点から終点へ本打ち縫製データが作成される。本打ち縫製データの刺繍終了点、枝E12の終点のループ情報がありなので、リンク先を辿らず、枝E12の終点のリンク元枝E11の終点が探索され、枝E11の終点から始点への本打ち縫製データが作成される。
【解決手段】枝E11の糸色情報は緑なので枝E11の始点から終点へ走り縫いデータが作成される。当該走り縫いデータの刺繍終了点、枝E11の終点のリンク先は枝E12の終点であり、枝E12の糸色は緑であるので、枝E12の終点から始点へ走り縫いデータが作成される。当該走り縫いデータの刺繍終了点、枝E12の始点のリンク先はないので、枝E12の始点から終点へ本打ち縫製データが作成される。本打ち縫製データの刺繍終了点、枝E12の終点のループ情報がありなので、リンク先を辿らず、枝E12の終点のリンク元枝E11の終点が探索され、枝E11の終点から始点への本打ち縫製データが作成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枝構造ベクトルデータ構造、枝構造ベクトルデータ編集装置、刺繍データ作成装置、枝構造ベクトルデータ編集プログラム、刺繍データ作成プログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものであり、詳細には、複数の糸色やループ形状の刺繍軌跡を扱える枝構造ベクトルデータ構造、枝構造ベクトルデータ編集装置、刺繍データ作成装置、枝構造ベクトルデータ編集プログラム、刺繍データ作成プログラム、枝構造ベクトルデータ編集プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、刺繍データ作成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、及び、枝構造ベクトルデータ編集プログラム及び刺繍データ作成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像データに表現されている画像を刺繍で表現するため、刺繍用ミシンでの針の制御を指示する刺繍データを作成する刺繍データ作成装置が提案されている。例えば、特許文献1に記載の発明の刺繍データ作成装置では、画像データから画像の閉領域を規定する境界線が抽出され、その境界線の細線化処理が行われ、その結果から刺繍の軌跡を木構造化した木構造データが作成され、この木構造データに基づいて下打ち縫製データ(特許請求の範囲に言う「走り縫いデータ」)及び本打ち縫製データが作成されている。なお、下打ち縫い(下打ち縫製データにより行われる縫製、特許請求の範囲にいう「走り縫い」)とは、なるべく糸を切ったり、離れた縫い位置へ飛ばしたりしなくてよいように、刺繍を一筆書きのように縫製を行うために、最終的な刺繍結果を形成する本打ち縫い(本打ち縫製データにより行われる縫製)の下(本打ち縫いで隠れる位置)に行われる縫いのことである。つまり、下打ち縫いされた上に本打ち縫いが行われて刺繍が完成される。そして、木構造データは、針運びの方向及び長さを示すベクトルの集合体である。
【0003】
従来、このような木構造データは糸色ごとに作成されており、例えば、赤色と緑色の糸で刺繍が行われる場合、赤色の枝の木構造データと緑色の枝の木構造データが作成される。また、画像データから作成された木構造データから直接、刺繍データを作成するのではなく、木構造データから生成される刺繍結果のイメージやベクトルを表示画面に表示し、ユーザからの指示入力によりベクトル(刺繍)を追加したり、削除したり、変更(縫い方の変更、ベクトルの端点(ノード)の移動、ノード間の経路の変更、太さの変更、拡大、縮小、糸色変更など)したりという編集が行われる場合がある。
【0004】
【特許文献1】特開平8−38756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、木構造データが色ごとに形成されていると、編集を行う際に異なる色のベクトルを編集する際に手間がかかるという問題点がある。例えば、図24に示すような木構造データを例に考える。図24に示す「H」の文字を形成する木構造データ999は赤色の木構造データであるとする。図24に示すように、木構造データ999は、ノードN200からノードN201へのベクトルE201、ノードN201からノードN202へのベクトルE202、ノードN201からノードN203へのベクトルE203、ノードN203からノードN204へのベクトルE204、ノードN203からノードN205へのベクトルE205で構成されている。このような木構造データから作成される刺繍データでは、ノードN200からノードN201へ(ベクトルE201)下打ち縫いが行われ、ノードN201からノードN202へ(ベクトルE202)下打ち縫いが行われ、ノードN202からノードN201へ(ベクトルE202)本打ち縫いが行われ、ノードN201からノードN203へ(ベクトルE203)下打ち縫いが行われ、ノードN203からノードN204へ(ベクトルE204)下打ち縫いが行われ、ノードN204からノードN203へ(ベクトルE204)本打ち縫いが行われ、ノードN203からノードN205へ(ベクトルE205)下打ち縫いが行われ、ノードN205からノードN203へ(ベクトルE205)本打ち縫いが行われ、ノードN203からノードN201へ(ベクトルE203)本打ち縫いが行われ、ノードN201からノードN200へ(ベクトルE201)本打ち縫いが行われる。
【0006】
ここで、ベクトルE204を緑色に変更することを考える。この場合には、まず木構造データ999からベクトルE204を切断する処理が行われ、次に、新たに緑色の木構造データが作成されることとなる。木構造データ999からベクトルE204を切断するには、ノードN201からノードN203へ(ベクトルE203)下打ち縫いの次には、ノードN203からノードN204へ(ベクトルE204)下打ち縫いでなく、ノードN203からノードN205へ(ベクトルE205)下打ち縫いを行うように木構造データ内の情報を変更する必要がある。そして、新たな緑色の木構造データとして、ノードN203からノードN204へ(ベクトルE204)下打ち縫いを行い、ノードN204からノードN203へ(ベクトルE204)本打ち縫いを行うデータが作成される。なお、すでに緑色の木構造データが存在する場合には、緑色の木構造データの適当な位置にベクトルE204の情報を追加する必要がある。この場合には、「適当な位置」の決定、その位置へ追加するためにすでに存在するベクトルの切断などの処理をする必要がある。つまり、糸の色を変更するだけの編集のために、木構造データの構成やベクトル間の繋がりを変更する手間があり、煩雑である。
【0007】
また、図25に示すような、3つの木構造データを考える。木構造データ998は白色の糸の木構造データであり、木構造データ997は黄色の糸の木構造データであり、木構造データ996は緑色の木構造データである。そして、この三色の糸の刺繍結果で花を現している。ここで、刺繍(花)全体を拡大したい場合を考えると、色糸ごとに木構造データ996,997,998が形成されている。そこで、色の異なるベクトル同士の繋がりがないため、ユーザは木構造データ996に対して拡大指示、木構造データ997に対して拡大指示、木構造データ998に対して拡大指示を行う必要がある。また、刺繍全体を移動させたい場合、各色を別々に移動させる必要がある。このように、木構造データが色別に作成されていると編集に手間がかかったり、装置での処理が煩雑であったりするという問題点があった。
【0008】
さらに、木構造でベクトルを現す場合には、1点から開始され、同一の点へ戻ってくる(ループ)ような刺繍を表現できないという問題点があった。例えば、円を表現する場合には、1点から開始され、同一の点へ戻ってくる形ではなく、第一の点から開始し、第二の点へ曲線として扱われ、第一の点の座標と第二の点の座標とを同じ座標として円を形成している。このような表現方法では、円を移動させると言う1つの動作のために、第一の点を移動させ、第二の点を移動させるという2つの操作が必要となっていた。このようにループ形状の刺繍を表現することができないと、編集に手間がかかってしまう。
【0009】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであり、複数の糸色やループ形状の刺繍軌跡を扱える枝構造ベクトルデータ構造、枝構造ベクトルデータ編集装置、刺繍データ作成装置、枝構造ベクトルデータ編集プログラム、刺繍データ作成プログラム、枝構造ベクトルデータ編集プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、刺繍データ作成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、及び、枝構造ベクトルデータ編集プログラム及び刺繍データ作成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明の枝構造ベクトルデータ構造では、刺繍図柄を構成する線画情報に基づいて作成され、刺繍ミシンの針の運びを示す刺繍データをコンピュータで作成する基となる枝構造ベクトルデータのデータ構造である枝構造ベクトルデータ構造であって、2つの端点を結んだ刺繍の経路である枝ごとに、当該枝を識別する識別情報と、当該枝の一方の端点である始点の位置と他方の端点である終点の位置とにより当該枝の方向を示すベクトルデータと、前記端点にリンクしている他の枝であるリンク先枝に関するリンク情報と、当該枝が刺繍される際の縫い方を示す縫い方情報と、当該枝が刺繍される際の縫い糸の色を示す糸色情報とを少なくとも備えた少なくとも1つの枝データで構成されており、前記識別情報は、前記枝を特定するために使用され、前記ベクトルデータは、走り縫いを行うことを示す前記刺繍データである走り縫いデータを作成する際、及び、走り縫いが行われた位置に前記縫い方情報に指定されている縫い方で本打ち縫いを行うことを示す前記刺繍データである本打ち縫製データを作成する際に縫い位置を特定するために使用され、前記リンク情報は、前記刺繍データを作成する際に次にデータを作成する枝を特定するために使用され、前記糸色情報は、前記リンク情報で指定されている枝の刺繍データを作成するか否かの判断に使用されることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に係る発明の枝構造ベクトルデータ構造では、刺繍図柄を構成する線画情報に基づいて作成され、刺繍ミシンの針の運びを示す刺繍データをコンピュータで作成する基となる枝構造ベクトルデータのデータ構造である枝構造ベクトルデータ構造であって、2つの端点を結んだ刺繍の経路である枝ごとに、当該枝を識別する識別情報と、当該枝の一方の端点である始点の位置と他方の端点である終点の位置とにより当該枝の方向を示すベクトルデータと、前記端点にリンクしている他の枝であるリンク先枝に関するリンク情報と、当該枝が刺繍される際の縫い方を示す縫い方情報と、前記端点のリンク先を辿ると当該端点に戻るループを発生させるものであるか否かを示すループ情報とを少なくとも備えた少なくとも1つの枝データで構成されており、前記識別情報は、前記枝を特定するために使用され、前記ベクトルデータは、走り縫いを行うことを示す前記刺繍データである走り縫いデータを作成する際、及び、走り縫いが行われた位置に前記縫い方情報に指定されている縫い方で本打ち縫いを行うことを示す前記刺繍データである本打ち縫製データを作成する際に縫い位置を特定するために使用され、前記リンク情報は、前記刺繍データを作成する際に次にデータを作成する枝を特定するために使用され、前記ループ情報は、前記リンク情報で指定されている枝の走り縫いデータを作成するか否かの判断に使用されることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3に係る発明の枝構造ベクトルデータ構造では、請求項2に記載の発明の構成に加えて、前記枝データは、前記枝が刺繍される際の縫い糸の色を示す糸色情報を備えており、前記糸色情報は、前記リンク情報で指定されている枝の刺繍データを作成するか否かの判断に使用されることを特徴とする。
【0013】
また、請求項4に係る発明の枝構造ベクトルデータ構造では、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明の構成に加えて、前記リンク情報は、2つの端点各々について、リンク先枝を識別するリンク先枝識別情報と、当該リンク先枝のリンク側の端点を示すリンク先枝端点情報とを備えていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項5に係る発明の枝構造ベクトルデータ編集装置では、刺繍図柄を構成する線画情報に基づいて作成された枝構造ベクトルデータを編集するベクトルデータ編集装置であって、画像を表示する表示手段と、2つの端点を結んだ刺繍の経路である枝ごとに、当該枝を識別する識別情報と、当該枝の一方の端点である始点の位置と他方の端点である終点の位置とにより当該枝の方向を示すベクトルデータと、前記端点にリンクしている他の枝であるリンク先枝に関するリンク情報と、当該枝が刺繍される際の縫い方を示す縫い方情報と、当該枝が刺繍される際の縫い糸の色を示す糸色情報とを少なくとも備えた少なくとも1つの枝データで構成されたデータ構造の枝構造ベクトルデータを記憶する枝構造ベクトルデータ記憶手段と、当該枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータの示す刺繍結果の模式図を前記表示手段に表示する表示制御手段と、前記刺繍結果を構成する枝に対して、枝の追加、枝の削除、枝の移動、枝の伸縮、枝の回転、枝の切断、他の枝への枝の接続、枝の色の変更、枝の縫い方の変更、枝の端点の移動、2つの端点を結ぶ刺繍の経路の変更、枝の複製のうちの少なくとも1つの編集作業を指示する編集指示手段と、当該編集指示手段の指示にしたがって前記枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータを編集する枝構造ベクトルデータ編集手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項6に係る発明の枝構造ベクトルデータ編集装置では、刺繍図柄を構成する線画情報に基づいて作成された枝構造ベクトルデータを編集するベクトルデータ編集装置であって、画像を表示する表示手段と、2つの端点を結んだ刺繍の経路である枝ごとに、当該枝を識別する識別情報と、当該枝の一方の端点である始点の位置と他方の端点である終点の位置とにより当該枝の方向を示すベクトルデータと、前記端点にリンクしている他の枝であるリンク先枝に関するリンク情報と、当該枝が刺繍される際の縫い方を示す縫い方情報と、前記端点のリンク先を辿ると当該端点に戻るループを発生させるものであるか否かを示すループ情報とを少なくとも備えた少なくとも1つの枝データで構成されたデータ構造の枝構造ベクトルデータを記憶する枝構造ベクトルデータ記憶手段と、当該枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータの示す刺繍結果の模式図を前記表示手段に表示する表示制御手段と、前記刺繍結果を構成する枝に対して、枝の追加、枝の削除、枝の移動、枝の伸縮、枝の回転、枝の切断、他の枝への枝の接続、枝の色の変更、枝の縫い方の変更、枝の端点の移動、2つの端点を結ぶ刺繍の経路の変更、枝の複製のうちの少なくとも1つの編集作業を指示する編集指示手段と、当該編集指示手段の指示にしたがって前記枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータを編集する枝構造ベクトルデータ編集手段とを備えたことを特徴とする。
【0016】
また、請求項7に係る発明の枝構造ベクトルデータ編集装置では、請求項6に記載の発明の構成に加えて、前記枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータの枝データは、前記枝が刺繍される際の縫い糸の色を示す糸色情報を備えていることを特徴とする。
【0017】
また、請求項8に係る発明の枝構造ベクトルデータ編集装置では、請求項5又は7に記載の発明の構成に加えて、前記編集指示手段は、前記枝を刺繍する糸の色を指定する色指定手段を備え、前記ベクトルデータ編集手段は、前記糸色情報に示す色を前記色指定手段により指定された色に変更する糸色情報変更手段を備え、前記色指定手段により糸の色が指定された際には、リンク情報の変更は行わないことを特徴とする。
【0018】
また、請求項9に係る発明の枝構造ベクトルデータ編集装置では、請求項6乃至8のいずれかに記載の発明の構成に加えて、前記編集指示手段は、前記枝を切断する切断枝を指定する切断枝指定手段を備え、前記ベクトルデータ編集手段は、当該切断枝指定手段により指定された切断枝の切断点を指定する切断点指定手段と、前記切断枝の枝データを、当該切断枝の始点の端点を始点の端点とし、切断点指定手段により指定された切断点の当該切断枝上の切断点を終点の端点とした第一の枝の枝データと、前記切断点を始点の端点とし、前記切断枝の終点の端点を終点の端点とした第二の枝の枝データとに分割する分割手段と、前記切断枝のループ情報がループの発生を示している場合に、いずれの枝データのいずれの端点のループ情報もループの発生を示さないものとする第一ループ情報制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0019】
また、請求項10に係る発明の枝構造ベクトルデータ編集装置では、請求項6乃至9のいずれかに記載の発明の構成に加えて、前記編集指示手段は、前記ベクトルデータに追加する追加枝を指定する追加枝指定手段と、当該追加枝指定手段により指定された追加枝を接続させる被接続枝を指定する被接続枝指定手段とを備え、前記ベクトルデータ編集手段は、前記被接続枝のループ情報がループの発生を示している場合、ループの発生を示すループ情報を持つ側の端点であるループ端点のリンク先端点を前記追加枝の接続側の端点である追加端点とし、当該追加端点のリンク先端点を前記被接続枝のループ端点でない側の端点とするループ接続手段と、前記ループ端点のループ情報をループの発生を示さないものとし、前記追加端点のループ情報をループの発生を示すものとする第二ループ情報制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0020】
また、請求項11に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項5、7乃至10のいずれかに記載の枝構造ベクトルデータ編集装置により編集され、前記枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータに基づいて、刺繍ミシンの針の運びを示す刺繍データを作成する刺繍データ作成手段を備えた刺繍データ作成装置であって、前記刺繍データ作成手段は、前記ベクトルデータの示す始点と終点との間に走り縫いを行うことを示す刺繍データである走り縫いデータを作成する走り縫いデータ作成手段と、リンク情報の示すリンク先枝の糸色情報の示す色が、現在作成している刺繍データの糸色と同じ色であるか否かを判断する色判断手段と、前記走り縫いデータの縫い終わり側の端点の示すリンク先枝の糸色情報の示す色が、前記色判断手段により現在作成している刺繍データの糸色と同じ色であると判断される枝が見つかるまで、前記リンク先枝を辿り、当該同じ色であると判断されたリンク先枝の走り縫いデータを前記走り縫いデータ作成手段により作成する走り縫いデータ作成制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0021】
また、請求項12に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項11に記載の発明の構成に加えて、前記刺繍データ作成手段は、前記走り縫いが行われた位置に前記縫い方情報に指定されている縫い方で本打ち縫いを行うことを示す刺繍データを作成する本打ち縫製データ作成手段と、前記走り縫いデータ作成手段により作成された走り縫いデータの縫い終わり側に対応した端点のリンク情報がリンク先枝を示していない場合に、縫い終わり側に対応した端点から他方の端点へ前記本打ち縫製データ作成手段により本打ち縫製データを作成する縫い方切替制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0022】
また、請求項13に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項11又は12に記載の発明の構成に加えて、前記刺繍データ作成手段は、前記本打ち縫製データの縫い終わり側に対応した端点をリンク先として指定しているリンク情報である元リンク情報を探索するリンク元探索手段と、前記リンク元探索手段により検索された元リンク情報を有する枝データの糸色情報の示す色が、前記色判断手段により現在作成している刺繍データの糸色と同じ色であると判断されるまで、前記元リンク情報を辿り、当該同じ色であると判断された枝の前記元リンク情報のリンク先枝識別情報の示す枝を当該元リンク情報のリンク先枝端点情報の示す端点から他方の端点へ縫い進める前記本打ち縫製データを前記本打ち縫製データ作成手段により作成する本打ち縫製データ作成制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0023】
また、請求項14に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項6乃至10のいずれかに記載の枝構造ベクトルデータ編集装置により編集され、前記枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータに基づいて、刺繍ミシンの針の運びを示す刺繍データを作成する刺繍データ作成手段を備えた刺繍データ作成装置であって、前記刺繍データ作成手段は、前記ベクトルデータの示す始点と終点との間に走り縫いを行うことを示す刺繍データである走り縫いデータを作成する走り縫いデータ作成手段と、前記走り縫いが行われた位置に前記縫い方情報に指定されている縫い方で本打ち縫いを行うことを示す刺繍データを作成する本打ち縫製データ作成手段と、前記走り縫いデータ又は前記本打ち縫製データの縫い終わり側に対応した端点のループ情報がループの発生を示す場合に、当該端点の前記リンク先枝の前記走り縫いデータを前記走り縫いデータ作成手段により作成せずに、前記走り縫いデータの終点の端点から他方の端点への本打ち縫製データを前記本打ち縫製データ作成手段により作成する折り返し制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0024】
また、請求項15に係る発明の枝構造ベクトルデータ編集プログラムでは、請求項5乃至10のいずれかに記載の枝構造ベクトルデータ編集装置の各種処理手段としてコンピュータを機能させる。
【0025】
また、請求項16に係る発明の刺繍データ作成プログラムでは、請求項11乃至14のいずれかに記載の刺繍データ作成装置の各種処理手段としてコンピュータを機能させる。
【0026】
また、請求項17に係る発明のコンピュータ読み取り可能な記録媒体では、請求項15に記載の枝構造ベクトルデータ編集プログラムを記録している。
【0027】
また、請求項18に係る発明のコンピュータ読み取り可能な記録媒体では、請求項16に記載の刺繍データ作成プログラムを記録している。
【0028】
また、請求項19に係る発明のコンピュータ読み取り可能な記録媒体では、請求項15に記載の枝構造ベクトルデータ編集プログラム及び請求項16に記載の刺繍データ作成プログラムを記録している。
【発明の効果】
【0029】
請求項1に係る発明の枝構造ベクトルデータ構造では、2つの端点を結んだ刺繍の経路である枝ごとに、枝を識別する識別情報と、枝の一方の端点である始点の位置と他方の端点である終点の位置とにより枝の方向を示すベクトルデータと、端点にリンクしている他の枝であるリンク先枝に関するリンク情報と、枝が刺繍される際の縫い方を示す縫い方情報と、枝が刺繍される際の縫い糸の色を示す糸色情報とを少なくとも備えた少なくとも1つの枝データで構成することができる。そして、識別情報を枝を特定するために使用し、ベクトルデータを走り縫いを行うことを示す刺繍データである走り縫いデータを作成する際、及び、走り縫いが行われた位置に縫い方情報に指定されている縫い方で本打ち縫いを行うことを示す刺繍データである本打ち縫製データを作成する際に縫い位置を特定するために使用し、リンク情報を刺繍データを作成する際に次にデータを作成する枝を特定するために使用し、糸色情報をリンク情報で指定されている枝の刺繍データを作成するか否かの判断に使用することができる。したがって、1つの枝構造ベクトルデータで複数の糸色の枝の情報を有することができるので、糸色ごとに枝構造ベクトルデータを持たなくてよい。よって、データが煩雑にならない。そして、ユーザの指示により枝構造ベクトルデータの編集を行う際に、異なる糸色の枝を容易にまとめて編集することができる。
【0030】
また、請求項2に係る発明の枝構造ベクトルデータ構造では、2つの端点を結んだ刺繍の経路である枝ごとに、枝を識別する識別情報と、枝の一方の端点である始点の位置と他方の端点である終点の位置とにより枝の方向を示すベクトルデータと、端点にリンクしている他の枝であるリンク先枝に関するリンク情報と、枝が刺繍される際の縫い方を示す縫い方情報と、端点のリンク先を辿ると端点に戻るループを発生させるものであるか否かを示すループ情報とを少なくとも備えた少なくとも1つの枝データで構成することができる。そして、識別情報を枝を特定するために使用し、ベクトルデータを走り縫いを行うことを示す刺繍データである走り縫いデータを作成する際、及び、走り縫いが行われた位置に縫い方情報に指定されている縫い方で本打ち縫いを行うことを示す刺繍データである本打ち縫製データを作成する際に縫い位置を特定するために使用し、リンク情報を刺繍データを作成する際に次にデータを作成する枝を特定するために使用し、ループ情報をリンク情報で指定されている枝の走り縫いデータを作成するか否かの判断に使用することができる。したがって、ループ情報によりある点から開始された刺繍がその点へまた戻ってくるようなループを表現することができるので、ループをなす枝とループをなさない枝とを同じ枝構造ベクトルデータで表現することができる。よって、ループ情報によりループをなす枝であるか否かの判別がつくので、枝の端点のリンク先を辿っていっても、無限ループに陥らないように枝データを処理することができる。したがって、ループをなす枝の編集と、ループをなさない枝の編集とを行う場合に、1つの枝構造ベクトルデータを編集するだけでよく、編集のための処理が容易となる。
【0031】
また、請求項3に係る発明の枝構造ベクトルデータ構造では、請求項2に記載の発明の効果に加えて、枝データは、枝が刺繍される際の縫い糸の色を示す糸色情報を備えており、糸色情報を、リンク情報で指定されている枝の刺繍データを作成するか否かの判断に使用することができる。したがって、1つの枝構造ベクトルデータで複数の糸色の情報を有し、さらにループも表現できるので、データが煩雑にならない。そして、糸色ごとに枝構造ベクトルデータを持たなくてよいので、ユーザの指示により枝構造ベクトルデータの編集を行う際に、異なる糸色の枝を容易にまとめて編集することができる。また、ループ情報により、ある点から開始された刺繍がその点へまた戻ってくるようなループを表現することができるので、ループをなす枝とループをなさない枝とを同じ枝構造ベクトルデータで表現することができる。したがって、ユーザの指示により枝構造ベクトルデータの編集を行う際に、異なる糸色の枝やループをなす枝も容易にまとめて編集することができる。
【0032】
また、請求項4に係る発明の枝構造ベクトルデータ構造では、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、リンク情報は、2つの端点各々について、リンク先枝を識別するリンク先枝識別情報と、リンク先枝のリンク側の端点を示すリンク先枝端点情報とすることができる。したがって、2つの端点各々について、リンク先枝識別情報でリンク先の枝を識別でき、さらにリンク先枝端点情報でリンク先枝のどちらの端点に接続しているのかを識別することができるので、各枝のどの端点とどの端点が接続して、枝がリンクしているのかを表現することができ、刺繍データを作成する際に、どの枝の刺繍データを作成するのかだけでなく、その枝のどちらの端点からどちらの端点へ刺繍を進めるのかを容易に決定することができる。
【0033】
また、請求項5に係る発明の枝構造ベクトルデータ編集装置では、表示手段は画像を表示し、枝構造ベクトルデータ記憶手段は、2つの端点を結んだ刺繍の経路である枝ごとに、枝を識別する識別情報と、枝の一方の端点である始点の位置と他方の端点である終点の位置とにより枝の方向を示すベクトルデータと、端点にリンクしている他の枝であるリンク先枝に関するリンク情報と、枝が刺繍される際の縫い方を示す縫い方情報と、枝が刺繍される際の縫い糸の色を示す糸色情報とを少なくとも備えた少なくとも1つの枝データで構成されたデータ構造の枝構造ベクトルデータを記憶することができる。そして、表示制御手段は、枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータの示す刺繍結果の模式図を表示手段に表示し、編集指示手段は、刺繍結果を構成する枝に対して、枝の追加、枝の削除、枝の移動、枝の伸縮、枝の回転、枝の切断、他の枝への枝の接続、枝の色の変更、枝の縫い方の変更、端点の移動、2つの端点を結ぶ刺繍の経路の変更、枝の複製のうちの少なくとも1つの編集作業を指示し、枝構造ベクトルデータ編集手段は、編集指示手段の指示にしたがって枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータを編集することができる。つまり、色ごとに複数の枝構造ベクトルデータが存在するのではなく、1つの枝構造ベクトルデータで複数の色の刺繍の枝データを構成することができる。よって、異なる色の枝を編集する際に、色ごとの複数の枝構造ベクトルデータを編集する必要がなく、1つの枝構造ベクトルデータを編集すればよいので、編集に際して行われる処理工程が簡略化できる。さらに、色ごとに複数の枝構造ベクトルデータが存在するよりも、枝構造ベクトルデータの管理が煩雑でなくなる。さらに、編集を指示するユーザは刺繍の色を意識することなく、編集の指示を行うことができる。
【0034】
また、請求項6に係る発明の枝構造ベクトルデータ編集装置では、表示手段は画像を表示し、枝構造ベクトルデータ記憶手段は、2つの端点を結んだ刺繍の経路である枝ごとに、枝を識別する識別情報と、枝の一方の端点である始点の位置と他方の端点である終点の位置とにより枝の方向を示すベクトルデータと、端点にリンクしている他の枝であるリンク先枝に関するリンク情報と、枝が刺繍される際の縫い方を示す縫い方情報と、端点のリンク先を辿ると端点に戻るループを発生させるものであるか否かを示すループ情報とを少なくとも備えた少なくとも1つの枝データで構成されたデータ構造の枝構造ベクトルデータを記憶し、表示制御手段は、枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータの示す刺繍結果の模式図を表示手段に表示し、編集指示手段は、刺繍結果を構成する枝に対して、枝の追加、枝の削除、枝の移動、枝の伸縮、枝の回転、枝の切断、他の枝への枝の接続、枝の色の変更、枝の縫い方の変更、端点の移動、2つの端点を結ぶ刺繍の経路の変更、枝の複製のうちの少なくとも1つの編集作業を指示し、枝構造ベクトルデータ編集手段は、編集指示手段の指示にしたがって枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータを編集することができる。したがって、ループ情報を有することによりある点から開始された刺繍がその点へまた戻ってくるようなループを枝構造ベクトルデータにおいて表現できるので、1つの枝構造ベクトルデータでループをなす枝とループをなさない枝との枝データを構成することができる。よって、ループ情報によりループをなす枝であるか否かの判別がつくので、枝の端点のリンク先を辿っていっても、無限ループに陥らないように枝データを処理することができる。したがって、ループをなす枝の編集と、ループをなさない枝の編集とを行う場合に、1つの枝構造ベクトルデータを編集するだけでよく、編集のための処理が容易となる。さらに、編集を指示するユーザはループをなす枝とループをなさない枝とを意識することなく、編集の指示を行うことができる。
【0035】
また、請求項7に係る発明の枝構造ベクトルデータ編集装置では、請求項6に記載の発明の効果に加えて、枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータの枝データは、枝が刺繍される際の縫い糸の色を示す糸色情報を有しているので、糸色情報を有し、かつ、ある点から開始された刺繍がその点へまた戻ってくるようなループを表現可能な枝構造ベクトルデータの編集を行うことができる。したがって、ユーザの指示により枝構造ベクトルデータの編集を行う際に、容易に異なる糸色の枝をまとめて編集することができる。さらに、異なる糸色の枝やループをなす枝も容易にまとめて編集することができる。さらに、編集を指示するユーザは刺繍の色やループをなす枝とループをなさない枝とを意識することなく、編集の指示を行うことができる。
【0036】
また、請求項8に係る発明の枝構造ベクトルデータ編集装置では、請求項5又は7に記載の発明の効果に加えて、編集指示手段の色指定手段は、枝を刺繍する糸の色を指定することができる。また、ベクトルデータ編集手段の糸色情報変更手段は、糸色情報に示す色を色指定手段により指定された色に変更することができる。そして、色指定手段により糸の色が指定された際には、リンク情報の変更は行われない。したがって、枝の糸色を変更する際には糸色情報を変更するだけでよく、枝同士の繋がりの関係を変更する必要がないので処理が煩雑でない。
【0037】
また、請求項9に係る発明の枝構造ベクトルデータ編集装置では、請求項6乃至8のいずれかに記載の発明の効果に加えて、編集指示手段の切断枝指定手段は、枝を切断する切断枝を指定することができる。また、ベクトルデータ編集手段の切断点指定手段は、切断枝指定手段により指定された切断枝の切断点を指定し、分割手段は、切断枝の枝データを、切断枝の始点の端点を始点の端点とし、切断点指定手段により指定された切断点の切断枝上の切断点を終点の端点とした第一の枝の枝データと、切断点を始点の端点とし、切断枝の終点の端点を終点の端点とした第二の枝の枝データとに分割し、第一ループ情報制御手段は、切断枝のループ情報がループの発生を示している場合に、いずれの枝データのいずれの端点のループ情報もループの発生を示さないものとすることができる。したがって、ループ形状の枝を切断しても、枝の接続が途切れたり、無限ループに陥ったりすることがない。
【0038】
また、請求項10に係る発明の枝構造ベクトルデータ編集装置では、請求項6乃至9のいずれかに記載の発明の効果に加えて、編集指示手段の追加枝指定手段は、ベクトルデータに追加する追加枝を指定し、被接続枝指定手段は、追加枝指定手段により指定された追加枝を接続させる被接続枝を指定することができる。また、ベクトルデータ編集手段のループ接続手段は、被接続枝のループ情報がループの発生を示している場合、ループの発生を示すループ情報を持つ側の端点であるループ端点のリンク先端点を追加枝の接続側の端点である追加端点とし、追加端点のリンク先端点を被接続枝のループ端点でない側の端点とし、第二ループ情報制御手段は、ループ端点のループ情報をループの発生を示さないものとし、追加端点のループ情報をループの発生を示すものとすることができる。したがって、ループ形状の枝に新たな枝を追加しても、枝の接続が途切れたり、無限ループに陥ったりすることがない。
【0039】
また、請求項11に係る発明の刺繍データ作成装置では、刺繍データ作成手段は、請求項5、7乃至10のいずれかに記載の枝構造ベクトルデータ編集装置により編集され、枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータに基づいて、刺繍ミシンの針の運びを示す刺繍データを作成することができる。そして、刺繍データ作成手段の走り縫いデータ作成手段は、ベクトルデータの示す始点と終点との間に走り縫いを行うことを示す刺繍データである走り縫いデータを作成し、色判断手段は、リンク情報の示すリンク先枝の糸色情報の示す色が、現在作成している刺繍データの糸色と同じ色であるか否かを判断し、走り縫いデータ作成制御手段は、走り縫いデータの縫い終わり側の端点の示すリンク先枝の糸色情報の示す色が、色判断手段により現在作成している刺繍データの糸色と同じ色であると判断される枝が見つかるまで、リンク先枝を辿り、同じ色であると判断されたリンク先枝の走り縫いデータを走り縫いデータ作成手段により作成することができる。したがって、複数の糸色の枝データで構成される枝構造ベクトルデータから、色ごとに、その色の糸で走り縫いを行うべき枝について走り縫いデータを作成することができる。
【0040】
また、請求項12に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項11に記載の発明の効果に加えて、刺繍データ作成手段の本打ち縫製データ作成手段は、走り縫いが行われた位置に縫い方情報に指定されている縫い方で本打ち縫いを行うことを示す刺繍データを作成し、縫い方切替制御手段は、走り縫いデータ作成手段により作成された走り縫いデータの縫い終わり側に対応した端点のリンク情報がリンク先枝を示していない場合に、縫い終わり側に対応した端点から他方の端点へ本打ち縫製データ作成手段により本打ち縫製データを作成することができる。したがって、走り縫いデータの作成から本打ち縫製データの作成への切り替えを行い、刺繍が途切れたり、無限ループに陥ったりすることのない走り縫いデータ及び本打ち縫製データを作成することができる。
【0041】
また、請求項13に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項11又は12に記載の発明の効果に加えて、刺繍データ作成手段のリンク元探索手段は、本打ち縫製データの縫い終わり側に対応した端点をリンク先として指定しているリンク情報である元リンク情報を探索し、本打ち縫製データ作成制御手段は、リンク元探索手段により検索された元リンク情報を有する枝データの糸色情報の示す色が、色判断手段により現在作成している刺繍データの糸色と同じ色であると判断されるまで、元リンク情報を辿り、同じ色であると判断された枝の元リンク情報のリンク先枝識別情報の示す枝を元リンク情報のリンク先枝端点情報の示す端点から他方の端点へ縫い進める本打ち縫製データを本打ち縫製データ作成手段により作成することができる。したがって、複数の糸色の枝データで構成される枝構造ベクトルデータから、色ごとにその色で本打ち縫いを行うべき枝について本打ち縫製データを作成することができる。
【0042】
また、請求項14に係る発明の刺繍データ作成装置では、刺繍データ作成手段は、請求項6乃至10のいずれかに記載の枝構造ベクトルデータ編集装置により編集され、枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータに基づいて、刺繍ミシンの針の運びを示す刺繍データを作成することができる。そして、刺繍データ作成手段の走り縫いデータ作成手段は、ベクトルデータの示す始点と終点との間に走り縫いを行うことを示す刺繍データである走り縫いデータを作成し、本打ち縫製データ作成手段は、走り縫いが行われた位置に縫い方情報に指定されている縫い方で本打ち縫いを行うことを示す刺繍データを作成し、折り返し制御手段は、走り縫いデータ又は前記本打ち縫製データの縫い終わり側に対応した端点のループ情報がループの発生を示す場合に、端点のリンク先枝の走り縫いデータを走り縫いデータ作成手段により作成せずに、走り縫いデータの終点の端点から他方の端点への本打ち縫製データを本打ち縫製データ作成手段により作成することができる。したがって、ある点から開始された刺繍がその点へまた戻ってくるようなループを表現可能な枝構造ベクトルデータから、ループの発生を示す枝について、刺繍が途切れたり、無限ループに陥ったりすることのない走り縫いデータ及び本打ち縫製データを作成することができる。
【0043】
また、請求項15に係る発明の枝構造ベクトルデータ編集プログラムでは、請求項5乃至10のいずれかに記載の枝構造ベクトルデータ編集装置の各種処理手段としてコンピュータを機能させることができる。したがって、枝構造ベクトルデータ編集プログラムをコンピュータで動作させることにより、請求項5乃至10のいずれかに記載の発明の効果と同様の効果を得ることができる。
【0044】
また、請求項16に係る発明の刺繍データ作成プログラムでは、請求項11乃至14のいずれかに記載の刺繍データ作成装置の各種処理手段としてコンピュータを機能させることができる。したがって、刺繍データ作成プログラムをコンピュータで動作させることにより、請求項11乃至14のいずれかに記載の発明の効果と同様の効果を得ることができる。
【0045】
また、請求項17に係る発明のコンピュータ読み取り可能な記録媒体では、請求項15に記載の枝構造ベクトルデータ編集プログラムを記録することができる。したがって、当該記録媒体に記録された枝構造ベクトルデータ編集プログラムをコンピュータに読み込ませ、動作させることにより、請求項5乃至10のいずれかに記載の発明の効果と同様の効果を得ることができる。
【0046】
また、請求項18に係る発明のコンピュータ読み取り可能な記録媒体では、請求項16に記載の刺繍データ作成プログラムを記録することができる。したがって、当該記録媒体に記録された刺繍データ作成プログラムをコンピュータに読み込ませ、動作させることにより、請求項11乃至請求項14のいずれかに記載の発明の効果と同様の効果を得ることができる。
【0047】
また、請求項19に係る発明のコンピュータ読み取り可能な記録媒体では、請求項15に記載の枝構造ベクトルデータ編集プログラム及び請求項16に記載の刺繍データ作成プログラムを記録することができる。したがって、当該記録媒体に記録された枝構造ベクトルデータ編集プログラム及び刺繍データ作成プログラムを読み込ませ、動作させることにより、請求項5乃至14のいずれかに記載の発明の効果と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、本発明に係る刺繍データ作成装置1の一実施の形態について、図面を参照して説明する。本実施の形態の刺繍データ作成装置1は、画像データに表された図柄を刺繍ミシン3による刺繍によって出力するための刺繍データを画像データに基づいて作成するものである。また、刺繍データ作成装置1では、画像データから刺繍データを作成する途中で利用する枝構造ベクトルデータを編集する「枝構造ベクトルデータ編集装置」としても機能している。まず、刺繍ミシン3について説明する。図1は、刺繍ミシン3の外観図である。
【0049】
図1に示すように、刺繍ミシン3は、ミシンベッド30上に配置された、刺繍を施そうとする加工布を保持する刺繍枠31を、Y方向駆動部32及び、本体ケース33内に収容されたX方向駆動機構によって装置固有のX・Y座標系で示される所定位置に移動させながら、縫い針34及び釜機構(図示外)による縫製動作を行うことにより、その加工布に所定の図柄の刺繍を施すようになっており、前記Y方向駆動部32、X方向駆動機構や針棒35等は、刺繍ミシン3に内蔵されたマイクロコンピュータ等から構成される制御装置により制御される。また、刺繍ミシン3の脚柱部36の側面にはメモリカードスロット37が搭載されており、刺繍データが記憶されたメモリカード115をメモリカードスロット37に装着することにより、刺繍データ作成装置1で作成された刺繍データが供給される。
【0050】
次に、刺繍データ作成装置1について図面を参照して説明する。図2は、刺繍データ作成装置1の物理的構成を示す全体構成図であり、図3は、刺繍データ作成装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【0051】
図2に示すように、この刺繍データ作成装置1は、所謂パーソナルコンピュータである装置本体10と、この装置本体10に接続されるマウス21、キーボード22、メモリカードコネクタ23、ディスプレイ24及びイメージスキャナ装置25から構成されている。なお、装置本体10、マウス21、キーボード22、メモリカードコネクタ23、ディスプレイ24、イメージスキャナ装置25の形状は図2に示すものに限らない。例えば、装置本体10はタワー型のものに限らず、横置きのものであってもよく、装置本体10とディスプレイ24とキーボード22とが一体化したノート型であってもよい。また、装置本体10は所謂パーソナルコンピュータでなく、専用機であってもよいことは言うまでもない。
【0052】
次に、図3のブロック図を参照して、刺繍データ作成装置1の電気的構成について説明する。図3に示すように、刺繍データ作成装置1には、刺繍データ作成装置1の制御を司るコントローラとしてのCPU101が設けられ、CPU101には、各種のデータを一時的に記憶するRAM102と、BIOS等を記憶したROM103と、データの受け渡しの仲介を行うI/Oインタフェイス104とが接続されている。I/Oインタフェイス104には、ハードディスク装置120が接続され、当該ハードディスク装置120には、画像データ記憶エリア121と、線画情報記憶エリア122と、枝構造ベクトルデータ記憶エリア123と、刺繍データ記憶エリア124と、プログラム記憶エリア125と、その他の情報記憶エリア126とが少なくとも設けられている。
【0053】
尚、画像データ記憶エリア121には、イメージスキャナ装置25により読み込まれた画像データ100(図4参照)が記憶され、線画情報記憶エリア122には、画像データ100から作成される線画情報200(図4参照)が記憶され、枝構造ベクトルデータ記憶エリア123には、線画情報200から作成される枝構造ベクトルデータ300(図4参照)が記憶され、刺繍データ記憶エリア124には、枝構造ベクトルデータ300から作成される刺繍データ400(図4参照)が記憶される。そして、プログラム記憶エリア125にはCPU101で実行される枝構造ベクトルデータ編集プログラム及び刺繍データ作成プログラムが記憶されている。その他の情報記憶エリア126には、刺繍データ作成装置1で使用されるその他の情報が記憶されている。なお、刺繍データ作成装置1がハードディスク装置120を備えていない専用機の場合は、ROMにプログラムが記憶される。
【0054】
また、I/Oインタフェイス104には、マウス21と、ビデオコントローラ106と、キーコントローラ107と、CD−ROMドライブ108と、メモリカードコネクタ23と、イメージスキャナ装置25とが接続されている。ビデオコントローラ106にはディスプレイ24が接続され、キーコントローラ107にはキーボード22が接続されている。なお、CD−ROMドライブ108に挿入されるCD−ROM114には、刺繍データ作成装置1の制御プログラムである枝構造ベクトルデータ編集プログラム及び刺繍データ作成プログラムが記憶されており、導入時には、制御プログラムは、CD−ROM114から、ハードディスク装置120にセットアップされてプログラム記憶エリア125に記憶される。また、メモリカードコネクタ23では、メモリカード115の読み取りや書き込みが可能となっている。
【0055】
次に、図4を参照して、本発明において刺繍データを作成する際に利用される情報とその関係について説明する。図4は情報関係図である。図4に示すように、イメージスキャナ装置25により取り込まれた画像データ100から刺繍を構成する軌跡の画像を示す線画情報200が作成される。そして、線画情報200から本発明の要部である枝構造ベクトルデータ300が作成される。そして、刺繍データ作成プログラムを動作させることにより、枝構造ベクトルデータ300から刺繍糸の糸色ごとに刺繍データ400が作成される。刺繍データ400は、黒色の刺繍データ401、赤色の刺繍データ402、緑色の刺繍データ403など、糸色ごとに作成される。なお、枝構造ベクトルデータ300は、枝構造ベクトルデータ編集プログラムによりディスプレイ24に表示され、マウス21やキーボード22から入力される編集指示に基づいて編集される。つまり、ユーザは、マウス21やキーボード22から編集指示を入力することにより、枝構造ベクトルデータ300を編集することができる。この枝構造ベクトルデータ300の編集とは、刺繍の軌跡である枝の追加、枝の削除、枝の移動、枝の伸縮、枝の回転、枝の切断、他の枝への枝の接続、枝の色の変更、枝の縫い方の変更、枝の端点の移動、2つの端点を結ぶ刺繍の経路の変更、枝の複製などである。
【0056】
なお、画像データ100はイメージスキャナ装置25により取り込まれたデータでなく、メモリカード115やCD−ROM114により読み込まれたデータや、作画ソフトにより作成されたデータであってもよい。
【0057】
次に、図5乃至図8を参照して、枝構造ベクトルデータ300の一例として枝構造ベクトルデータ310について説明する。図5は、枝構造ベクトルデータ310により作成される刺繍データ400により刺繍される刺繍結果319を示す刺繍結果図であり、図6は、枝構造ベクトルデータ310を図式化したベクトル図411であり、図7は、枝構造ベクトルデータ310の構成を示す模式図である。図8は、糸色が緑色の刺繍データ413の内容を示す模式図である。
【0058】
図5に示すように、刺繍結果319は3本の直線の刺繍軌跡K1,K2,K3で形成されている。このような刺繍結果319を構成する枝構造ベクトルデータ310を図式化したものが、図6のベクトル図411である。枝構造ベクトルデータ310では、1つの刺繍軌跡を1本の「枝」として捉える。図6に示す枝E1が図5に示す刺繍軌跡K1に該当し、図6に示す枝E2が図5に示す刺繍軌跡K2に該当し、図6に示す枝E3が図5に示す刺繍軌跡K3に該当する。
【0059】
そして、図7に示すように、枝構造ベクトルデータ310では、この枝ごとにレコードが作成されており、各枝についての種々の情報が記憶されている。なお、この枝ごとのレコードを「枝データ」と呼ぶこととする。そして、枝構造ベクトルデータ310には「枝データ番号欄」が設けられており、枝を識別する情報が記憶されている。図5に示す刺繍結果319を構成する枝構造ベクトルデータ310は、3つの枝データから構成されることとなる。
【0060】
また、この枝E1,E2,E3は、ベクトルとして捉えられている。図7に示すように、枝構造ベクトルデータ310には「ベクトルデータ欄」が設けられ、枝E1を現すベクトルを示す情報が記憶される。ベクトルデータ欄に記憶されるベクトルを示す情報とは、例えば、始点及び終点の座標、又は、始点の座標及び始点からの方向(角度)及びベクトルの長さである。図6に示すベクトル図411を参照すると、枝E1は点N0から点N1へ向けたベクトルとして表されており、枝E2は点N1から点N2へ向けたベクトルとして表されており、枝E3は点N3から点N1へ向けたベクトルとして表されている。つまり、枝E1,E2,E3は点N1を終点又は始点として共有しており、点N1で接続(リンク)している。
【0061】
ここで、枝E1,E2,E3のリンク関係についての枝構造ベクトルデータ310での表現について説明する。枝構造ベクトルデータ310には、「始点リンク情報欄」及び「終点リンク情報欄」が設けられている。始点リンク情報欄には枝の始点となる点がリンクしている他の枝(以下、「リンク先枝」という。)の端点についての情報として、「リンク先枝識別情報欄」及び「リンク先枝端点情報欄」が設けられている。リンク先枝識別情報欄には、リンク先枝を識別する情報が記憶され、リンク先枝端点情報欄には、リンク先枝のどちらの端点に接続するかを示す情報が記憶されている。以下、リンク先枝におけるリンクしている端点を「リンク先端点」という。さらに、始点リンク先情報欄には「ループ情報欄」が設けられている。このループ情報欄には、リンク先枝を辿ってゆくことにより、自身(当該枝データの始点)に戻ってくるという「ループ」を発生させるか否かを示す情報が記憶されている。
【0062】
そして、終点リンク情報欄には、始点リンク情報欄と同様に、当該枝データの枝の終点となる点のリンク先枝の情報及びループ情報が記憶されている。なお、このループについては、図13乃至図18を参照して後に詳述する。
【0063】
さらに、枝構造ベクトルデータ310には「縫い方情報欄」及び「糸色情報欄」が設けられている。縫い方情報欄には、当該枝を刺繍する際の縫い方が記憶され、糸色情報欄には、当該枝を刺繍する際の糸の色が記憶されている。
【0064】
ここで、図6及び図7を参照して、各枝のリンク関係を具体的に説明する。枝データ番号「E1」の枝データを参照すると、始点リンク情報欄にはリンク先枝の情報が記憶されていないので、枝E1の始点にはリンク先枝が存在しないことが判る。そして、終点リンク情報欄にはリンク先枝識別情報欄は「E2」、リンク先枝端点情報欄は「始点」を示しており、ループ情報欄は「ループなし」を示している。これにより、枝E1の終点が枝E2の始点とリンクし、ループは発生していないことが判る。そして、縫い方はジグザグ縫いであり、糸色は「緑」である。次いで、枝データ番号「E2」の枝データを参照すると、始点リンク情報欄のリンク先枝識別情報欄は「E3」、リンク先枝端点情報欄は「終点」を示しており、ループ情報欄は「ループなし」を示している。これにより、枝E2の始点が枝E3の終点とリンクし、ループは発生していないことが判る。そして、枝E2の終点リンク情報欄にはリンク先枝の情報が記憶されていないので、枝E2の終点にはリンク先枝が存在しないことが判る。そして、縫い方はジグザグ縫いであり、糸色は「緑」である。次いで、枝データ番号「E3」の枝データを参照すると、始点リンク情報欄及び終点リンク情報欄にはリンク先枝の情報が記憶されていないので、枝E3の始点及び終点にはリンク先枝が存在しないことが判る。そして、縫い方はジグザグ縫いであり、糸色は「緑」である。
【0065】
ここで、枝構造ベクトルデータ300から作成される刺繍データ400について説明する。刺繍データ400は、「走り縫いデータ」及び「本打ち縫製データ」により構成されている。「走り縫いデータ」は走り縫いを行うための刺繍データであり、「本打ち縫製データ」は本打ち縫いを行うための刺繍データである。本実施の形態の刺繍データでは、刺繍を中断させて、糸を切ったり、離れた点から刺繍を再開させたりしないように、一つの枝を2度縫うことにより刺繍結果を一筆描きで形成する。よって、1つの枝の1回目の縫いは、2回目の縫いにより隠されることとなる。この1回目の縫いが「走り縫い」であり、2回目の縫いが「本打ち縫い」である。
【0066】
次に、図6乃至図8を参照して、図7に示す枝構造ベクトルデータ310から、図8に示す緑色の刺繍データ413を作成する際の動作について説明する。この刺繍データ413の作成は、刺繍データ作成装置1において刺繍データ作成プログラムを動作させることにより実施される。まず、枝構造ベクトルデータ310から、刺繍を開始させる開始枝の開始点が探索される。これは、全枝からリンク先枝とされていない枝が探索され、その枝の任意の端点が開始点とされる。ここでは、枝E1の始点であるN0を開始点とする。
【0067】
枝E1の始点N0が開始点であるので、まず、枝E1の枝データが読み込まれる。そして、糸色情報が参照され、現在作成している刺繍データの糸色である「緑」であるか否かの判断が行われる(この処理を実施するCPU101が「色判断手段」に相当する)。枝E1の糸色情報は「緑」であるので、枝E1の始点N0から終点N1へ走り縫いをする走り縫いデータ4131が作成される(この走り縫いデータを作成するCPU101が「走り縫いデータ作成手段」に相当し、糸色情報が「緑」であるので走り縫いデータを作成する処理を実施するCPU101が「走り縫いデータ作成制御手段」に相当する)。そして、作成された走り縫いデータ4131の刺繍終了点である枝E1の終点N1のリンク先の情報が、枝E1の終点リンク情報から読み出される。図7に示すように、枝E1の終点N1のリンク先は、枝E2の始点N1である。そこで、枝E2の枝データが読み込まれる。
【0068】
そして、枝E2の糸色情報は「緑」であるので、枝E2の始点N1から終点N2への走り縫いデータ4132が作成される。そして、走り縫いデータ4132の刺繍終了点である枝E2の終点N2のリンク先の情報が、枝E2の終点リンク情報から読み出される。図7に示すように、枝E2の終点N2のリンク先はない。そこで、枝E2の終点N2から始点N1へ本打ち縫製データ4133が作成される(この本打ち縫製データを作成するCPU101が「本打ち縫製データ作成手段」に相当し、リンク先がないので本打ち縫製データを作成する処理を実施するCPU101が「縫い方切替制御手段」に相当する)。なお、この時の縫い方はジグザグ縫いである。
【0069】
そして、本打ち縫製データ4133の刺繍終了点である枝E2の始点N1のリンク先情報が、枝E2の始点リンク情報から読み出される。図7に示すように、枝E2の始点N1のリンク先は枝E3の終点N1である。そこで、枝E3の枝データが読み出される。この枝E3の走り縫いデータはまだ作成されておらず、糸色情報が「緑」であるので、枝E3の終点N1から始点N3へ走り縫いデータ4134が作成される。そして、作成された走り縫いデータ4134の刺繍終了点である枝E3の始点N3のリンク先の情報が、枝E3の始点リンク情報から読み出される。枝E3の始点N3のリンク先はないので、枝E3の始点N3から終点N1へ本打ち縫製データ4135が作成される(この処理を実施するCPU101が「縫い方切替制御手段」に相当する)。この時の縫い方はジグザグ縫いである。
【0070】
そして、本打ち縫製データ4135の刺繍終了点である枝E3の終点N1のリンク先情報が、枝E3の終点リンク情報から読み出される。図7に示すように、枝E3の終点N1のリンク先はない。そこで、枝E3の終点N1をリンク先としている始点リンク情報又は終点リンク情報(以下、「リンク元」という。)が探索される(この処理を行うCPU101が「リンク元探索手段」に相当する)。図7に示すように、枝E3の終点N1をリンク先としているのは、枝E2の始点リンク情報である。枝E2の糸色情報は「緑」であるが、すでに枝E2の本打ち縫製データは作成されているので(本打ち縫製データ4133)、作成する必要はない。そこで、枝E2の始点N1をリンク先としている始点リンク情報又は終点リンク情報がさらに探索される(この処理を行うCPU101が「リンク元探索手段」に相当する)。図7に示すように、枝E2の始点N1をリンク先としているのは、枝E1の終点リンク情報である。枝E1の糸色情報は「緑」なので、本打ち縫製データを作成する。そこで、枝E1の本打ち縫製データを作成するか否かの判断が行われる。枝E1の本打ち縫製データは作成されていないので、枝E1の終点N1から始点N0への本打ち縫製データ4136が作成される(このようにリンク元を探索し、糸色が作成中の刺繍データの糸色と同じであれば本打ち縫製データを作成する処理を実施するCPU101が「本打ち縫製データ作成制御手段」に相当する)。
【0071】
そして、枝E1の終点N1から始点N0への本打ち縫製データ4136が作成されたら、本打ち縫製データ4136の刺繍終了点である枝E1の始点N0から、さらに刺繍データを作成するか否かの判断が行われるが、この点は本刺繍データの開始点であるので、これ以上刺繍データは作成されない。このような処理により、枝E1,E2,E3のそれぞれについて、走り縫いデータが作成された後に本打ち縫製データが作成されることとなり、この刺繍データを刺繍ミシンに実行させることにより、一度も刺繍を中断することなく、図5に示すような刺繍結果を得ることができる。
【0072】
次に、図9乃至図12を参照して、複数の色の刺繍糸を用いた刺繍について説明する。ここでは、図5乃至図7に示した刺繍の枝E2の糸色が「赤」である場合を例に挙げる。図9は、枝構造ベクトルデータ320を図式化したベクトル図421であり、図10は、枝構造ベクトルデータ320の構成を示す模式図である。図11は、糸色が緑色の刺繍データ423の内容を示す模式図であり、図12は、糸色が赤色の刺繍データ422の内容を示す模式図である。なお、図9においては、赤色の糸で刺繍される枝のベクトルを点線で示している。また、図10に示すように、枝構造ベクトルデータ320の枝E2の枝データの糸色情報欄は「赤」を示している。
【0073】
ここで、この枝構造ベクトルデータ320から刺繍データ400を作成する際の動作について説明する。まず、緑色の刺繍糸の刺繍データ423を作成について説明する。この刺繍データ423の作成は、刺繍データ作成装置1において刺繍データ作成プログラムを動作させることにより実施される。まず、枝構造ベクトルデータ320から、刺繍を開始させる開始枝の開始点が探索される。これは、全枝からリンク先枝とされていない枝が探索され、その枝の任意の端点が開始点とされる。ここでは、枝E1の始点であるN0を開始点とする。
【0074】
枝E1の始点N0が開始点であるので、まず、枝E1の枝データが読み込まれる。そして、糸色情報が参照され、現在作成している刺繍データ423の糸色である「緑」であるか否かの判断が行われる(この処理を実施するCPU101が「色判断手段」に相当する)。枝E1の糸色情報は「緑」であるので、枝E1の始点N0から終点N1へ走り縫いをする走り縫いデータ4231が作成される。そして、作成された走り縫いデータ4231の刺繍終了点である枝E1の終点N1のリンク先の情報が、枝E1の終点リンク情報から読み出される。図10に示すように、枝E1の終点N1のリンク先は、枝E2の始点N1である。そこで、枝E2の枝データが読み込まれる。
【0075】
そして、糸色情報が参照され、現在作成している刺繍データ423の糸色である「緑」であるか否かの判断が行われる(この処理を実施するCPU101が「色判断手段」に相当する)。枝E2の糸色情報が「赤」であるので、枝E2の始点N1から終点N2への走り縫いデータは作成されない。
【0076】
そして、枝E2の始点N1のリンク先情報が、枝E2の始点リンク情報から読み出される。図10に示すように、枝E2の始点N1のリンク先は枝E3の終点N1である。そこで、枝E3の枝データが読み込まれる。糸色情報が参照され、現在作成している刺繍データ423の糸色である「緑」であるか否かの判断が行われる(この処理を実施するCPU101が「色判断手段」に相当する)。糸色情報が「緑」であり、この枝E3の走り縫いデータはまだ作成されていないので、枝E3の終点N1から始点N3へ走り縫いデータ4232が作成される(糸色情報が「緑」である枝データまでリンク先を辿り走り縫いデータを作成する処理を実施するCPU101が「走り縫いデータ作成制御手段」に相当する)。
【0077】
そして、作成された走り縫いデータ4232の刺繍終了点である枝E3の始点N3のリンク先の情報が、枝E3の始点リンク情報から読み出される。枝E3の始点N3のリンク先はないので、枝E3の始点N3から終点N1へ本打ち縫製データ4233が作成される。この時の縫い方はジグザグ縫いである。
【0078】
そして、本打ち縫製データ4233の刺繍終了点である枝E3の終点N1のリンク先情報が、枝E3の終点リンク情報から読み出される。図10に示すように、枝E3の終点N1のリンク先はない。そこで、枝E3の終点N1をリンク先としている始点リンク情報又は終点リンク情報(リンク元)が探索される(この処理を行うCPU101が「リンク元探索手段」に相当する)。図10に示すように、枝E3の終点N1をリンク先としているのは、枝E2の始点リンク情報である。枝E2の糸色情報は「赤」なので、本打ち縫製データを作成しない。そこで、枝E2の始点N1のリンク元がさらに探索される。図10に示すように、枝E2の始点N1をリンク先としているのは、枝E1の終点リンク情報である。そこで、枝E1の枝データが読み込まれ、糸色情報が参照され、現在作成している刺繍データ423の糸色である「緑」であるか否かの判断が行われる(この処理を実施するCPU101が「色判断手段」に相当する)。枝E1の糸色情報は「緑」なので、本打ち縫製データを作成してよい。また、枝E1の本打ち縫製データは作成されていないので、枝E1の終点N1から始点N0への本打ち縫製データ4234が作成される(このようにリンク元を探索し、糸色が作成中の刺繍データの糸色と同じ枝の本打ち縫製データを作成する処理を実施するCPU101が「本打ち縫製データ作成制御手段」に相当する)。
【0079】
そして、枝E1の終点N1から始点N0への本打ち縫製データ4234が作成されたら、本打ち縫製データ4234の刺繍終了点である枝E1の始点N0から、さらに刺繍データを作成するか否かの判断が行われるが、この点は当該刺繍データの開始点であるので、これ以上刺繍データは作成されない。このような処理により、糸色が「緑」の枝E1,E3のそれぞれについて、走り縫いデータが作成された後に本打ち縫製データが作成されることとなり、糸色が「赤」の枝E2の刺繍データは作成されない。
【0080】
次いで、赤色の刺繍糸の刺繍データ422の作成について説明する。枝E1の始点N0が開始点であるので、まず、枝E1の枝データが読み込まれる。そして、糸色情報が参照され、現在作成している刺繍データ422の糸色である「赤」であるか否かの判断が行われる(この処理を実施するCPU101が「色判断手段」に相当する)。枝E1の糸色情報は「緑」であるので、枝E1の始点N0から終点N1へ走り縫いをする走り縫いデータは作成されない。そこで、枝E1の終点N1のリンク先の情報が、枝E1の終点リンク情報から読み出される。図10に示すように、枝E1の終点N1のリンク先は、枝E2の始点N1である。そこで、枝E2の枝データが読み込まれる。
【0081】
そして、糸色情報が参照され、現在作成している刺繍データ422の糸色である「赤」であるか否かの判断が行われる(この処理を実施するCPU101が「色判断手段」に相当する)。枝E2の糸色情報は「赤」であるので、枝E2の始点N1から終点N2への走り縫いデータ4221が作成される(糸色情報が「赤」である枝データまでリンク先を辿り走り縫いデータを作成する処理を実施するCPU101が「走り縫いデータ作成制御手段」に相当する)。そして、走り縫いデータ4221の刺繍終了点である枝E2の終点N2のリンク先の情報が、枝E2の終点リンク情報から読み出される。図10に示すように、枝E2の終点N2のリンク先はないので、枝E2の終点N2から始点N1へ本打ち縫製データ4222が作成される(この処理を実施するCPU101が「縫い方切替制御手段」に相当する)。なお、この時の縫い方はジグザグ縫いである。
【0082】
そして、本打ち縫製データ4222の刺繍終了点である枝E2の始点N1のリンク先情報が、枝E2の始点リンク情報から読み出される。図10に示すように、枝E2の始点N1のリンク先は枝E3の終点N1である。この枝E3の糸色情報は「緑」なので、枝E3の終点N1から始点N3へ走り縫いデータは作成されない。そして、枝E3の終点N1のリンク先情報が、枝E3の終点リンク情報から読み出される。図10に示すように、枝E3の終点N1のリンク先はない。
【0083】
そこで、枝E3の終点N1のリンク元が探索される(この処理を行うCPU101が「リンク元探索手段」に相当する)。図10に示すように、枝E3の終点N1をリンク先としているのは、枝E2の始点リンク情報であり、枝E2の糸色情報は「赤」であるが、すでに枝E2の本打ち縫製データは作成されているので(本打ち縫製データ4222)、本打ち縫製データは作成されない。そこで、枝E2の始点N1のリンク元がさらに探索される(この処理を行うCPU101が「リンク元探索手段」に相当する)。図10に示すように、枝E2の始点N1をリンク先としているのは、枝E1の終点リンク情報であるが、枝E1の糸色情報は「緑」なので本打ち縫製データは作成されない。そして、枝E1の終点の反対側の端点である始点N0はデータの開始点であるので、これ以上刺繍データは作成されない。このような処理により、糸色が「赤」の枝E2についてのみ、走り縫いデータが作成された後に本打ち縫製データが作成されることとなり、糸色が「緑」の枝E1,3の刺繍データは作成されない。
【0084】
以上のようにして、糸色情報を用いることにより、複数の糸色の枝データから構成される枝構造ベクトルデータ320から各色の刺繍データ422,423を作成することができる。
【0085】
次に、図13及び図14を参照して、ループの発生する枝E11について説明する。図13は、ループの発生する枝E11を示したベクトル図436及びループの発生しない枝E12を示したベクトル図437であり、図14は枝E11の枝構造ベクトルデータ331の構成を示す模式図である。
【0086】
図13に示すように、枝E11は、点N10を始点として、略円形の軌跡をなして始点と同じ点N10を終点としている。つまり、点N10から点N10へ戻っている。このような枝E11の枝データは、図14の枝構造ベクトルデータ331に示すようになる。枝データ番号欄には「E11」が記憶されており、始点リンク情報欄には情報が記憶されておらず、終点リンク情報欄には、リンク先枝識別情報欄に「E11」、リンク先枝端点情報欄には「始点」、ループ情報には「あり」が記憶されている。なお、縫い方情報欄は「ジグザグ」、糸色情報欄は「緑」である。
【0087】
このようなループの発生する枝E11の刺繍データを作成することを考える。枝E11の始点N10を開始点とすると、まず、枝E11の始点N10から終点N10への走り縫いデータが作成される。そして、E11の終点リンク情報が読み出される。図14に示すように、E11の終点N10のリンク先は枝E11の始点N10である。ここで、E11の始点N10へ進み、E11の始点N10から終点N10への走り縫いデータを作成してしまうと無限ループに陥ってしまうこととなる。そこで、ループ情報欄が使用される。枝E11の始点N10から終点N10への走り縫いデータが作成され、次の処理を決定する際に、E11の終点N10のリンク先枝識別情報欄及びリンク先枝端点情報欄を参照する前に、E11の終点N10のループ情報欄が参照される。ここで、ループ情報欄にループの発生を示す値が記憶されている場合には、これ以上リンクを辿らずに、折り返して本打ち縫製データが作成される。図14の例の場合には、E11の終点N10から始点N10への本打ち縫製データが作成されることとなる。このように、ループ情報がループの発生を示している場合に、リンクを辿って走り縫いデータを作成するのではなく、折り返して本打ち縫製データを作成する処理を行うCPU101が「折り返し制御手段」に相当する。そして、E11の終点N10から始点N10への本打ち縫製データが作成された後には、E11の始点N10は当該刺繍データの開始点であるので、刺繍データの作成は終了される。
【0088】
以上のようにして、ある点から同じ点へ戻ってくるようなループを発生させる枝が存在しても、ループ情報を利用することにより、無限ループに陥ることなく走り縫いデータ及び本打ち縫製データを作成することができる。また、ループの発生する枝の始点及び終点を同一点N10として扱っているので、ループの発生する枝を移動させる編集を行う場合にも、始点を移動させて、終点を移動させるという2処理を行う必要がなく、点N10のみを移動させればよい。
【0089】
次に、枝の編集について説明する。枝の編集は、ユーザが刺繍データ作成装置1において、枝構造ベクトルデータ編集プログラムを起動させて、編集の指示をマウス21やキーボード22により入力する。刺繍データ作成装置1において枝構造ベクトルデータ編集プログラムが起動されると、枝構造ベクトルデータ300の各枝データで示される枝を図式化した画像を表示した編集画面がディスプレイ24に表示される。例えば、図5に示した刺繍結果319のような画像である。この編集画面に表示されている刺繍結果は枝ごとにマウス21やキーボード22の操作で選択可能となっており、ユーザは、ディスプレイ24に表示されている刺繍結果の中から編集を行う枝を選択し、編集の指示を与える。
【0090】
例えば、縫い方を変更する場合には、ユーザは、縫い方を変更する枝を選択し、縫い方変更の指示を行う。すると、縫い方を選択する画面が表示されるので、ユーザは変更する縫い方を選択する。すると、刺繍データ作成装置1のCPU101は枝構造ベクトルデータ編集プログラムにより、指定された枝の枝構造ベクトルデータ300の枝データの縫い方情報欄の値を、新しく選択された縫い方を示す値に変更する。なお、縫い方変更の指示は、キーボード22からコマンドを入力してもよいし、マウス21の操作やキーボード22の操作によりディスプレイ24にメニュー一覧を表示させて、その中から選択させてもよいし、予めメニュー一覧を表示させておき、そこから選択させてもよい。
【0091】
なお、このような編集画面をディスプレイ24に表示させる処理を行うCPU101、編集画面への入力を行うマウス21やキーボード22、及び、編集画面へのマウス21やキーボード22からの入力の受付処理を行うCPU101が「編集指示手段」に相当する。
【0092】
ここで、図13乃至図18を参照して、接続する枝にループが発生している場合の枝構造ベクトルデータ300の編集について説明する。図15は、枝E12の枝構造ベクトルデータ332の構成を示す模式図であり、図16は、枝E11,E12を接続した後のベクトル図441であり、図17は、枝E11,E12を接続した後の枝構造ベクトルデータ340の構成を示す模式図であり、図18は、枝構造ベクトルデータ340から作成される刺繍データ443の内容を示す模式図である。
【0093】
枝と枝との接続を行う場合には、ユーザは、枝と枝の接続の指示、接続する枝(追加枝)の選択、接続される枝(被接続枝)の選択、追加枝の被接続枝に接続させる点(接続点)の指定、被接続枝の追加枝に接続される点(被接続点)の指定を行う。追加枝の選択の入力を受け付けるための編集画面をディスプレイ24に表示させる処理を行うCPU101、編集画面への入力を行うマウス21やキーボード22、及び、編集画面へのマウス21やキーボード22からの入力の受付処理を行うCPU101が「追加枝指定手段」に相当する。そして、被接続枝の選択の入力を受け付けるための編集画面をディスプレイ24に表示させる処理を行うCPU101、編集画面への入力を行うマウス21やキーボード22、及び、編集画面へのマウス21やキーボード22からの入力の受付処理を行うCPU101が「被接続枝指定手段」に相当する。
【0094】
なお、接続点が枝の端点でなく、枝上の端点以外の点であった場合には、まず、その点にて枝を分断し、一方の枝が追加枝とされ、分断された側の端点が接続点とされる。この場合に枝構造ベクトルデータ300は、もともとの追加枝の枝データが2つの枝データに変更される。例えば、追加枝の枝データ番号がE100、その始点が点N100、終点がN101であり、接続点としてN100ともN101とも異なる枝E100上の点N109が指定されたとする。この場合には、枝構造ベクトルデータ300には、始点N100、終点N101の枝E1の枝データが存在する。これを、始点N100、終点N109の枝E1の枝データに変更し、さらに始点N109、終点N101の枝E101の枝データが作成される。そして、枝E100の終点N109のリンク先は枝E101の始点N109とされる。そして、追加枝はE101であり、接続点は終点N109とされる。なお、被追加枝において端点でない枝上の点を被接続点として指定された場合にも同様の処理が行われる。
【0095】
ここでは、図13に示す枝E11へ枝E12を接続させるという編集を考える。図13に示すように、枝E12は始点N11から終点N12へ向けたベクトルとして表されている。このような枝E12の枝データは、図15の枝構造ベクトルデータ332に示すようになる。枝データ番号欄には「E12」が記憶されており、始点リンク情報欄及び終点リンク情報欄には情報が記憶されておらず、縫い方情報欄は「Zigzag」、糸色情報欄は「緑」である。そして、枝E11は、前述したように点N10を始点として、略円形の軌跡をなして始点と同じ点N10を終点としている。枝E11の枝構造ベクトルデータ331については、ループの発生する枝構造ベクトルデータ300の例として前述しているので説明を省略する。
【0096】
ここでは、枝E11の始点N10に枝E12の終点N12を接続させるという編集を考えており、追加枝が枝E12、接続点が枝E12の終点N12、被接続枝がE11、被接続点が枝E11の始点N10であるとする。すると、接続後は図16に示すベクトル図441のようになり、N10において枝E11と枝E12とが接続している。
【0097】
この場合、枝構造ベクトルデータ331(図14参照)に枝構造ベクトルデータ332(図15参照)の枝E12の枝データが追加されることとなる。図14に示すように、被接続枝E11の終点リンク情報欄のリンク先枝識別情報欄には自身である「枝E11」、リンク先枝端点情報欄には「始点」が記憶され、ループ情報は「あり」が記憶されていたが、この被接続枝E11の終点のリンク情報欄のリンク先枝識別情報欄には追加枝である「枝E12」、リンク先端点情報欄には接続端点である「終点」を記憶する。そして、ループ情報欄は「なし」とする。そして、追加された枝E12の接続点である終点N12のリンク先としては、終点リンク情報欄のリンク先枝識別情報欄に被接続枝の「枝E11」、リンク先端点情報欄に被接続枝E11のループの発生を示していなかった側の端点である「始点」を記憶する。そして、ループ情報欄に「あり」を記憶する。
【0098】
このような枝構造ベクトルデータの編集が行われた後の枝構造ベクトルデータが図17に示す枝構造ベクトルデータ340である。図17に示すように、枝E11の始点リンク情報には何も記憶されておらず、終点リンク情報にはリンク先枝識別情報として「E12」、リンク先枝端点情報として「終点」が記憶されており、枝E11の終点N10が枝E12の終点N10にリンクすることを示している。そして、ループ情報には「なし」が記憶されている。そして、枝E12の始点リンク情報には何も記憶されておらず、終点リンク情報にはリンク先枝識別情報として「E11」、リンク先枝端点情報として「始点」が記憶されており、枝E12の終点N10が枝E11の始点N10にリンクすることを示している。そして、ループ情報には「あり」が記憶されているので、このままリンク先を辿るとループが発生することがわかる。
【0099】
なお、これらのリンク先枝識別情報欄及びリンク先枝端点情報欄の情報を変更する処理を行うCPU101が「ループ接続手段」に相当し、ループ情報欄の情報を変更する処理を行うCPU101が「第二ループ情報制御手段」に相当する。
【0100】
ここで、枝構造ベクトルデータ340から緑色の刺繍糸の刺繍データ443を作成する際の動作について説明する。この刺繍データ443の作成は、刺繍データ作成装置1において刺繍データ作成プログラムを動作させることにより実施される。まず、枝構造ベクトルデータ340から、刺繍を開始させる開始枝の開始点が探索される。これは、全枝からリンク先枝とされていない枝が探索され、その枝の任意の端点が開始点とされる。ここでは、枝E11の終点であるN10を開始点とする。
【0101】
枝E11の始点N10が開始点であるので、まず、枝E11の枝データが読み込まれる。そして、糸色情報が参照され、現在作成している刺繍データ443の糸色である「緑」であるか否かの判断が行われる(この処理を実施するCPU101が「色判断手段」に相当する)。枝E11の糸色情報は「緑」であるので、枝E11の始点N10から終点N10へ走り縫いをする走り縫いデータ4431が作成される(この処理を実施するCPU101が「走り縫いデータ作成制御手段」に相当する)。そして、作成された走り縫いデータ4431の刺繍終了点である枝E11の終点N10のリンク先の情報が、枝E11の終点リンク情報から読み出される。図17に示すように、枝E11の終点N10のリンク先は、枝E12の終点N10である。そこで、枝E12の枝データが読み込まれる。
【0102】
そして、糸色情報が参照され、現在作成している刺繍データ443の糸色である「緑」であるか否かの判断が行われる(この処理を実施するCPU101が「色判断手段」に相当する)。枝E12の糸色情報が「緑」であるので、枝E12の終点N10から始点N11へ走り縫いデータ4432が作成される(この処理を実施するCPU101が「走り縫いデータ作成制御手段」に相当する)。そして、作成された走り縫いデータ4432の刺繍終了点である枝E12の始点N11のリンク先の情報が、枝E12の始点リンク情報から読み出される。枝E12の始点N11のリンク先はないので、枝E12の始点N11から終点N10へ本打ち縫製データ4433が作成される(この処理を実施するCPU101が「縫い方切替制御手段」に相当する)。この時の縫い方はジグザグ縫いである。
【0103】
そして、本打ち縫製データ4433の刺繍終了点である枝E12の終点N10のリンク先情報が、枝E12の終点リンク情報から読み出される。図17に示すように、枝E12の終点N10のリンク先は、枝E11の始点N10であるが、ループ情報が「あり」であるので、このままリンクを辿るとループが発生する。そこで、リンク先の枝E11の始点N10を辿らずに、本打ち縫製データを作成する(この処理を行うCPU101が「折り返し制御手段」に相当する)。そこで、枝E12の終点N10のリンク元が探索される(この処理を行うCPU101が「リンク元探索手段」に相当する)。枝E12の終点N10のリンク元は、図17に示すように枝E11の終点N10である。そこで、枝E11の終点N10から始点N10への本打ち縫製データ4434が作成される。
【0104】
そして、枝E11の終点N10から始点N10への本打ち縫製データ4434が作成されたら、本打ち縫製データ4434の刺繍終了点である枝E11の始点N10から、さらに刺繍データを作成するか否かの判断が行われるが、この点は当該刺繍データの開始点であるので、これ以上刺繍データは作成されない。
【0105】
このような処理により、ループの発生する枝に他の枝が接続されて生成された枝構造ベクトルデータ340からも、無限ループが発生して破綻したり、走り縫いデータや本打ち縫製データが作成されない枝が発生したりすることなく、刺繍データ443を作成することができる。
【0106】
次に、図19乃至図23を参照して、ループの発生する枝を切断する場合の枝構造ベクトルデータ300の編集について説明する。図19は、図16に示したベクトル図441の枝E11上の切断点N13を示したベクトル図456であり、図20は、枝E11の切断後のベクトル図457であり、図21は、枝E11を切断した際の編集途中の枝構造ベクトルデータ351の構成を示す模式図であり、図22は、枝E11の切断後の枝構造ベクトルデータ352の構成を示す模式図であり、図23は、枝構造ベクトルデータ352から作成される刺繍データ453の内容を示す模式図である。
【0107】
枝の切断を行う場合には、ユーザは、枝の切断の指示、切断する枝の切断する点の指定を行う。ここでは、図19に示すように、図16に示したような枝E11及び枝E12で構成される枝構造ベクトルデータ340(図17参照)の枝E11を点N13で切断するという編集を行う場合を考える。なお、そして、枝の切断の指示の入力を受け付けるための編集画面をディスプレイ24に表示させる処理を行うCPU101、編集画面への入力を行うマウス21やキーボード22、及び、編集画面へのマウス21やキーボード22からの入力の受付処理を行うCPU101が「切断枝指定手段」に相当する。
【0108】
点N13で枝E11を切断すると、図20に示すように、枝E11は2つの枝に分割される。つまり、もともとの枝E11の始点N10を始点とし、切断点N13を終点とする新しい枝E11(第一の枝)と、切断点N13を始点とし、もともとの枝E11の終点N10を終点とする新しい枝E13(第二の枝)とに分割される。なお、図20においては、N13を二つの丸で表現しているが、これは枝E11の終点であるN13と、枝E13の始点であるN13とがリンクしていないことを明確にするための表現であり、枝E11の終点と枝E13の始点の実際の座標は同一である。
【0109】
具体的には、枝構造ベクトルデータ340に新しく枝E13の枝データが追加される。そして、枝E11の枝データのベクトルデータ欄において、その終点が切断点N13に変更される。そして、終点リンク情報欄の値はすべて「なし」とされる。そして、枝E13の枝データのベクトルデータ欄において、その始点は切断点N13、終点はもともとの枝E11の終点であるN10とされる。そして、終点リンク情報欄の値はもともとの枝E12の終点リンク情報欄の値が記憶されることとなる。
【0110】
この時点での枝構造ベクトルデータが図21に示す枝構造ベクトルデータ351である。図21に示すように、枝E11の枝データの始点リンク情報欄は、図17に示す枝構造ベクトルデータ340の枝E11の始点リンク情報欄と同様に何も記憶されておらず、終点リンク情報欄にも何も記憶されていない。そして、枝E12の枝データの情報は、図17に示す枝構造ベクトルデータ340の枝E12の内容と同じであり、始点リンク情報欄には何も記憶されておらず、終点リンク情報欄にはリンク先枝識別情報欄には「枝E11」、リンク先端点情報欄には「始点」が記憶されている。そして、ループ情報欄には「あり」が記憶されている。そして、枝E13の枝データの情報は、始点リンク情報欄には何も記憶されておらず、終点リンク情報欄には、図17に示す枝構造ベクトルデータ340の枝E11の終点リンク情報欄と同様、リンク先枝識別情報欄に「E12」、リンク先枝端点情報欄に「終点」が記憶されており、ループ情報欄には「なし」が記憶されている。
【0111】
なお、この新しい枝データを追加し、各枝データのリンク先の情報を記憶する処理を行うCPU101が「分割手段」に相当する。
【0112】
次に、各枝データのループ情報の調整が行われる。そこで、まず開始枝の探索が行われる。これは、全枝からリンク先枝とされていない枝が探索され、その枝の任意の端点が開始点とされる。ここでは、枝E13の始点であるN13を開始点とする。
【0113】
枝E13の始点リンク情報から枝E13の始点N13のリンク先はないことが判る。そこで、枝E13の終点リンク情報から枝E13の終点N10のリンク先を辿ると、図21に示すように、枝E12の終点N10である。そこで、枝E12の終点側リンク情報から枝E12の終点N10のリンク先を辿ると、枝E11の始点N10とされているがループ情報が「あり」であるので、リンク先は辿られない。そこで、枝E12の終点N10の反対側の端点である始点N11のリンク先を見ると、枝E12の始点側リンク情報からリンク先がないことが判り、リンクが途絶えたこととなる。つまり、枝E13からリンクを辿っても、枝E11へは接続していないことが判る。そこで、枝E12の終点側リンク情報欄のループ情報欄を「あり」から「なし」に変更する。この変更後の枝構造ベクトルデータが図22に示す枝構造ベクトルデータ352である。
【0114】
なお、このようなループ情報の調整を行うCPU101が「第一ループ情報制御手段」に相当する。
【0115】
ここで、枝構造ベクトルデータ352から緑色の刺繍糸の刺繍データ453を作成する際の動作について説明する。この刺繍データ453の作成は、刺繍データ作成装置1において刺繍データ作成プログラムを動作させることにより実施される。まず、枝構造ベクトルデータ352から、刺繍を開始させる開始枝の開始点が探索される。これは、全枝からリンク先枝とされていない枝が探索され、その枝の任意の端点が開始点とされる。ここでは、枝E13の始点N13を開始点とする。
【0116】
枝E13の始点N13が開始点であるので、まず、枝E13の枝データが読み込まれる。そして、糸色情報が参照され、現在作成している刺繍データ453の糸色である「緑」であるか否かの判断が行われる(この処理を実施するCPU101が「色判断手段」に相当する)。枝E13の糸色情報は「緑」であるので、枝E13の始点N13から終点N10へ走り縫いをする走り縫いデータ4531が作成される(この処理を実施するCPU101が「走り縫いデータ作成制御手段」に相当する)。そして、作成された走り縫いデータ4531の刺繍終了点である枝E13の終点N10のリンク先の情報が、枝E13の終点リンク情報から読み出される。図22に示すように、枝E13の終点N10のリンク先は、枝E12の終点N10である。そこで、枝E12の枝データが読み込まれる。
【0117】
そして、糸色情報が参照され、現在作成している刺繍データ453の糸色である「緑」であるか否かの判断が行われる(この処理を実施するCPU101が「色判断手段」に相当する)。枝E12の糸色情報が「緑」であるので、枝E12の終点N10から始点N11へ走り縫いデータ4532が作成される(この処理を実施するCPU101が「走り縫いデータ作成制御手段」に相当する)。そして、作成された走り縫いデータ4532の刺繍終了点である枝E12の始点N11のリンク先の情報が、枝E12の始点リンク情報から読み出される。枝E12の始点N11のリンク先はないので、枝E12の始点N11から終点N10へ本打ち縫製データ4533が作成される(この処理を実施するCPU101が「縫い方切替制御手段」に相当する)。この時の縫い方はジグザグ縫いである。
【0118】
そして、本打ち縫製データ4533の刺繍終了点である枝E12の終点N10のリンク先情報が、枝E12の終点リンク情報から読み出される。図22に示すように、枝E12の終点N10のリンク先は、枝E11の始点N10である。ここで、ループ情報は「なし」に変更されているので、リンクを辿ることができる。そこで、リンク先の枝E11の始点N10から終点N13への走り縫いデータ4534が作成される。
【0119】
そして、枝E11の終点N13のリンク先が、枝E11の終点リンク情報から読み出される。図22に示すように、枝E11の終点N13のリンク先はない。そこで、枝E11の終点N13から始点N10への本打ち縫製データ4535が作成される(この処理を実施するCPU101が「縫い方切替制御手段」に相当する)。そして、枝E11の始点N10のリンク元が探索される(この処理を行うCPU101が「リンク元探索手段」に相当する)。枝E11の始点N10のリンク元は、図22に示すように枝E12の終点N10であるが、枝E12の本打ち縫製データ4533はすでに作成されているので、さらに枝E12の終点N10のリンク元が探索される。枝E12の終点N10のリンク元は、図22に示すように枝E13の終点N10である。枝E13の本打ち縫製データはまだ作成されていないので、枝E13の終点N10から始点N13へ本打ち縫製データ4536が作成される(このようにリンク元を探索し、糸色が作成中の刺繍データの糸色と同じであれば本打ち縫製データを作成する処理を実施するCPU101が「本打ち縫製データ作成制御手段」に相当する)。
【0120】
そして、枝E13の終点N10から始点N13へ本打ち縫製データ4536が作成されたら、本打ち縫製データ4536の刺繍終了点である枝E13の始点N13から、さらに刺繍データを作成するか否かの判断が行われるが、この点は当該刺繍データの開始点であるので、これ以上刺繍データは作成されない。このような処理により、ループの発生する枝を切断した枝構造ベクトルデータ352からも、無限ループが発生して破綻したり、リンクが繋がらなくなったりすることがなく、走り縫いデータや本打ち縫製データが作成されない枝が発生することなく刺繍データ453を作成することができる。
【0121】
以上のように、糸色の異なる枝を1つの枝構造ベクトルデータ300で表現することができ、さらに、ループの発生する枝も同じ枝構造ベクトルデータ300で表現することができる。したがって、枝構造ベクトルデータ300で表現される枝をまとめて、移動させたり、縮小させたり、拡大させたりする編集を行う場合に、糸色の異なる枝を一度に処理することができ、ループの発生する枝も一度に処理することができる。
【0122】
なお、本発明の枝構造ベクトルデータ構造、枝構造ベクトルデータ編集装置、刺繍データ作成装置、枝構造ベクトルデータ編集プログラム、刺繍データ作成プログラム、枝構造ベクトルデータ編集プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、刺繍データ作成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、及び、枝構造ベクトルデータ編集プログラム及び刺繍データ作成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0123】
上記実施の形態では、枝構造ベクトルデータ300にループ情報も糸色情報も備え、糸色の異なる枝もループを発生する枝も1つの枝構造ベクトルデータ300で表現している。しかしながら、糸色情報は備えずにループ情報のみを備えて、ループの発生する枝とループの発生しない枝とを同じ枝構造ベクトルデータで表現可能とするのみで、糸色の異なる枝は別々の枝構造ベクトルデータで表現するようにしてもよい。また、ループ情報は備えずに糸色情報のみを備えて、異なる糸色の枝を同じ枝構造ベクトルデータで表現可能とするのみで、ループの発生を示す枝は表現しないようにしてもよい。
【0124】
また、上記実施の形態では、簡単のために糸色として「緑」、「赤」の色を用いる枝構造ベクトルデータ320を例に挙げたが、糸の色はその他「ピンク」、「黒」、「白」、「青」、「水色」、「黄」、「茶」など各種の色を用いてもよいことは言うまでもない。また、縫い方として「ジグザグ縫い」のみを例に挙げたが、その他飾り縫いや種々縫い目の長さの直線縫いなど種々の縫い方を用いてもよいことは言うまでもない。
【0125】
また、枝構造ベクトルデータ編集プログラム及び刺繍データ作成プログラムはCD−ROM114に記憶されているが、この記録媒体はCD−ROMに限らず、フレキシブルディスクやDVDなど他の記録媒体であってもよいことは言うまでもない。また、各々別の記録媒体に記録されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】刺繍ミシン3の外観図である。
【図2】刺繍データ作成装置1の物理的構成を示す全体構成図である。
【図3】刺繍データ作成装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】情報関係図である。
【図5】枝構造ベクトルデータ310により作成される刺繍データ400により刺繍される刺繍結果319を示す刺繍結果図である。
【図6】枝構造ベクトルデータ310を図式化したベクトル図411である。
【図7】枝構造ベクトルデータ310の構成を示す模式図である。
【図8】糸色が緑色の刺繍データ413の内容を示す模式図である。
【図9】枝構造ベクトルデータ320を図式化したベクトル図421である。
【図10】枝構造ベクトルデータ320の構成を示す模式図である。
【図11】糸色が緑色の刺繍データ423の内容を示す模式図である。
【図12】糸色が赤色の刺繍データ422の内容を示す模式図である。
【図13】枝E11を示したベクトル図436及び枝E12を示したベクトル図437である。
【図14】枝E11の枝構造ベクトルデータ331の構成を示す模式図である。
【図15】枝E12の枝構造ベクトルデータ332の構成を示す模式図である。
【図16】枝E11,E12を接続した後のベクトル図441である。
【図17】枝E11,E12を接続した後の枝構造ベクトルデータ340の構成を示す模式図である。
【図18】枝構造ベクトルデータ340から作成される刺繍データ443の内容を示す模式図である。
【図19】図16に示したベクトル図441の枝E11上の切断点N13を示したベクトル図456である。
【図20】枝E11の切断後のベクトル図457である。
【図21】枝E11を切断した際の編集途中の枝構造ベクトルデータ351の構成を示す模式図である。
【図22】枝E11の切断後の枝構造ベクトルデータ352の構成を示す模式図である。
【図23】枝構造ベクトルデータ352から作成される刺繍データ453の内容を示す模式図である。
【図24】従来の木構造データ999を図式化した図である。
【図25】従来の木構造データ996,997,996を図式化した図である。
【符号の説明】
【0127】
1 刺繍データ作成装置
3 刺繍ミシン
21 マウス
22 キーボード
24 ディスプレイ
34 縫い針
100 画像データ
101 CPU
120 ハードディスク装置
123 枝構造ベクトルデータ記憶エリア
124 刺繍データ記憶エリア
125 プログラム記憶エリア
300,310,320,331,332,340,351,352 枝構造ベクトルデータ
319 刺繍結果
400,413,422,423,443,453 刺繍データ
4131,4132,4134,4221,4231,4232,4431,4432,4531,4532,4534 走り縫いデータ
4133,4135,4136,4222,4233,4234,4433,4434,4533,4535,4536 本打ち縫製データ
E1,E2,E3,E11,E12,E13 枝
K1,K2,K3 刺繍軌跡
N0,N1,N2,N3,N10,N11,N12,N13 点
【技術分野】
【0001】
本発明は、枝構造ベクトルデータ構造、枝構造ベクトルデータ編集装置、刺繍データ作成装置、枝構造ベクトルデータ編集プログラム、刺繍データ作成プログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものであり、詳細には、複数の糸色やループ形状の刺繍軌跡を扱える枝構造ベクトルデータ構造、枝構造ベクトルデータ編集装置、刺繍データ作成装置、枝構造ベクトルデータ編集プログラム、刺繍データ作成プログラム、枝構造ベクトルデータ編集プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、刺繍データ作成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、及び、枝構造ベクトルデータ編集プログラム及び刺繍データ作成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像データに表現されている画像を刺繍で表現するため、刺繍用ミシンでの針の制御を指示する刺繍データを作成する刺繍データ作成装置が提案されている。例えば、特許文献1に記載の発明の刺繍データ作成装置では、画像データから画像の閉領域を規定する境界線が抽出され、その境界線の細線化処理が行われ、その結果から刺繍の軌跡を木構造化した木構造データが作成され、この木構造データに基づいて下打ち縫製データ(特許請求の範囲に言う「走り縫いデータ」)及び本打ち縫製データが作成されている。なお、下打ち縫い(下打ち縫製データにより行われる縫製、特許請求の範囲にいう「走り縫い」)とは、なるべく糸を切ったり、離れた縫い位置へ飛ばしたりしなくてよいように、刺繍を一筆書きのように縫製を行うために、最終的な刺繍結果を形成する本打ち縫い(本打ち縫製データにより行われる縫製)の下(本打ち縫いで隠れる位置)に行われる縫いのことである。つまり、下打ち縫いされた上に本打ち縫いが行われて刺繍が完成される。そして、木構造データは、針運びの方向及び長さを示すベクトルの集合体である。
【0003】
従来、このような木構造データは糸色ごとに作成されており、例えば、赤色と緑色の糸で刺繍が行われる場合、赤色の枝の木構造データと緑色の枝の木構造データが作成される。また、画像データから作成された木構造データから直接、刺繍データを作成するのではなく、木構造データから生成される刺繍結果のイメージやベクトルを表示画面に表示し、ユーザからの指示入力によりベクトル(刺繍)を追加したり、削除したり、変更(縫い方の変更、ベクトルの端点(ノード)の移動、ノード間の経路の変更、太さの変更、拡大、縮小、糸色変更など)したりという編集が行われる場合がある。
【0004】
【特許文献1】特開平8−38756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、木構造データが色ごとに形成されていると、編集を行う際に異なる色のベクトルを編集する際に手間がかかるという問題点がある。例えば、図24に示すような木構造データを例に考える。図24に示す「H」の文字を形成する木構造データ999は赤色の木構造データであるとする。図24に示すように、木構造データ999は、ノードN200からノードN201へのベクトルE201、ノードN201からノードN202へのベクトルE202、ノードN201からノードN203へのベクトルE203、ノードN203からノードN204へのベクトルE204、ノードN203からノードN205へのベクトルE205で構成されている。このような木構造データから作成される刺繍データでは、ノードN200からノードN201へ(ベクトルE201)下打ち縫いが行われ、ノードN201からノードN202へ(ベクトルE202)下打ち縫いが行われ、ノードN202からノードN201へ(ベクトルE202)本打ち縫いが行われ、ノードN201からノードN203へ(ベクトルE203)下打ち縫いが行われ、ノードN203からノードN204へ(ベクトルE204)下打ち縫いが行われ、ノードN204からノードN203へ(ベクトルE204)本打ち縫いが行われ、ノードN203からノードN205へ(ベクトルE205)下打ち縫いが行われ、ノードN205からノードN203へ(ベクトルE205)本打ち縫いが行われ、ノードN203からノードN201へ(ベクトルE203)本打ち縫いが行われ、ノードN201からノードN200へ(ベクトルE201)本打ち縫いが行われる。
【0006】
ここで、ベクトルE204を緑色に変更することを考える。この場合には、まず木構造データ999からベクトルE204を切断する処理が行われ、次に、新たに緑色の木構造データが作成されることとなる。木構造データ999からベクトルE204を切断するには、ノードN201からノードN203へ(ベクトルE203)下打ち縫いの次には、ノードN203からノードN204へ(ベクトルE204)下打ち縫いでなく、ノードN203からノードN205へ(ベクトルE205)下打ち縫いを行うように木構造データ内の情報を変更する必要がある。そして、新たな緑色の木構造データとして、ノードN203からノードN204へ(ベクトルE204)下打ち縫いを行い、ノードN204からノードN203へ(ベクトルE204)本打ち縫いを行うデータが作成される。なお、すでに緑色の木構造データが存在する場合には、緑色の木構造データの適当な位置にベクトルE204の情報を追加する必要がある。この場合には、「適当な位置」の決定、その位置へ追加するためにすでに存在するベクトルの切断などの処理をする必要がある。つまり、糸の色を変更するだけの編集のために、木構造データの構成やベクトル間の繋がりを変更する手間があり、煩雑である。
【0007】
また、図25に示すような、3つの木構造データを考える。木構造データ998は白色の糸の木構造データであり、木構造データ997は黄色の糸の木構造データであり、木構造データ996は緑色の木構造データである。そして、この三色の糸の刺繍結果で花を現している。ここで、刺繍(花)全体を拡大したい場合を考えると、色糸ごとに木構造データ996,997,998が形成されている。そこで、色の異なるベクトル同士の繋がりがないため、ユーザは木構造データ996に対して拡大指示、木構造データ997に対して拡大指示、木構造データ998に対して拡大指示を行う必要がある。また、刺繍全体を移動させたい場合、各色を別々に移動させる必要がある。このように、木構造データが色別に作成されていると編集に手間がかかったり、装置での処理が煩雑であったりするという問題点があった。
【0008】
さらに、木構造でベクトルを現す場合には、1点から開始され、同一の点へ戻ってくる(ループ)ような刺繍を表現できないという問題点があった。例えば、円を表現する場合には、1点から開始され、同一の点へ戻ってくる形ではなく、第一の点から開始し、第二の点へ曲線として扱われ、第一の点の座標と第二の点の座標とを同じ座標として円を形成している。このような表現方法では、円を移動させると言う1つの動作のために、第一の点を移動させ、第二の点を移動させるという2つの操作が必要となっていた。このようにループ形状の刺繍を表現することができないと、編集に手間がかかってしまう。
【0009】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであり、複数の糸色やループ形状の刺繍軌跡を扱える枝構造ベクトルデータ構造、枝構造ベクトルデータ編集装置、刺繍データ作成装置、枝構造ベクトルデータ編集プログラム、刺繍データ作成プログラム、枝構造ベクトルデータ編集プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、刺繍データ作成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、及び、枝構造ベクトルデータ編集プログラム及び刺繍データ作成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明の枝構造ベクトルデータ構造では、刺繍図柄を構成する線画情報に基づいて作成され、刺繍ミシンの針の運びを示す刺繍データをコンピュータで作成する基となる枝構造ベクトルデータのデータ構造である枝構造ベクトルデータ構造であって、2つの端点を結んだ刺繍の経路である枝ごとに、当該枝を識別する識別情報と、当該枝の一方の端点である始点の位置と他方の端点である終点の位置とにより当該枝の方向を示すベクトルデータと、前記端点にリンクしている他の枝であるリンク先枝に関するリンク情報と、当該枝が刺繍される際の縫い方を示す縫い方情報と、当該枝が刺繍される際の縫い糸の色を示す糸色情報とを少なくとも備えた少なくとも1つの枝データで構成されており、前記識別情報は、前記枝を特定するために使用され、前記ベクトルデータは、走り縫いを行うことを示す前記刺繍データである走り縫いデータを作成する際、及び、走り縫いが行われた位置に前記縫い方情報に指定されている縫い方で本打ち縫いを行うことを示す前記刺繍データである本打ち縫製データを作成する際に縫い位置を特定するために使用され、前記リンク情報は、前記刺繍データを作成する際に次にデータを作成する枝を特定するために使用され、前記糸色情報は、前記リンク情報で指定されている枝の刺繍データを作成するか否かの判断に使用されることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に係る発明の枝構造ベクトルデータ構造では、刺繍図柄を構成する線画情報に基づいて作成され、刺繍ミシンの針の運びを示す刺繍データをコンピュータで作成する基となる枝構造ベクトルデータのデータ構造である枝構造ベクトルデータ構造であって、2つの端点を結んだ刺繍の経路である枝ごとに、当該枝を識別する識別情報と、当該枝の一方の端点である始点の位置と他方の端点である終点の位置とにより当該枝の方向を示すベクトルデータと、前記端点にリンクしている他の枝であるリンク先枝に関するリンク情報と、当該枝が刺繍される際の縫い方を示す縫い方情報と、前記端点のリンク先を辿ると当該端点に戻るループを発生させるものであるか否かを示すループ情報とを少なくとも備えた少なくとも1つの枝データで構成されており、前記識別情報は、前記枝を特定するために使用され、前記ベクトルデータは、走り縫いを行うことを示す前記刺繍データである走り縫いデータを作成する際、及び、走り縫いが行われた位置に前記縫い方情報に指定されている縫い方で本打ち縫いを行うことを示す前記刺繍データである本打ち縫製データを作成する際に縫い位置を特定するために使用され、前記リンク情報は、前記刺繍データを作成する際に次にデータを作成する枝を特定するために使用され、前記ループ情報は、前記リンク情報で指定されている枝の走り縫いデータを作成するか否かの判断に使用されることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3に係る発明の枝構造ベクトルデータ構造では、請求項2に記載の発明の構成に加えて、前記枝データは、前記枝が刺繍される際の縫い糸の色を示す糸色情報を備えており、前記糸色情報は、前記リンク情報で指定されている枝の刺繍データを作成するか否かの判断に使用されることを特徴とする。
【0013】
また、請求項4に係る発明の枝構造ベクトルデータ構造では、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明の構成に加えて、前記リンク情報は、2つの端点各々について、リンク先枝を識別するリンク先枝識別情報と、当該リンク先枝のリンク側の端点を示すリンク先枝端点情報とを備えていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項5に係る発明の枝構造ベクトルデータ編集装置では、刺繍図柄を構成する線画情報に基づいて作成された枝構造ベクトルデータを編集するベクトルデータ編集装置であって、画像を表示する表示手段と、2つの端点を結んだ刺繍の経路である枝ごとに、当該枝を識別する識別情報と、当該枝の一方の端点である始点の位置と他方の端点である終点の位置とにより当該枝の方向を示すベクトルデータと、前記端点にリンクしている他の枝であるリンク先枝に関するリンク情報と、当該枝が刺繍される際の縫い方を示す縫い方情報と、当該枝が刺繍される際の縫い糸の色を示す糸色情報とを少なくとも備えた少なくとも1つの枝データで構成されたデータ構造の枝構造ベクトルデータを記憶する枝構造ベクトルデータ記憶手段と、当該枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータの示す刺繍結果の模式図を前記表示手段に表示する表示制御手段と、前記刺繍結果を構成する枝に対して、枝の追加、枝の削除、枝の移動、枝の伸縮、枝の回転、枝の切断、他の枝への枝の接続、枝の色の変更、枝の縫い方の変更、枝の端点の移動、2つの端点を結ぶ刺繍の経路の変更、枝の複製のうちの少なくとも1つの編集作業を指示する編集指示手段と、当該編集指示手段の指示にしたがって前記枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータを編集する枝構造ベクトルデータ編集手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項6に係る発明の枝構造ベクトルデータ編集装置では、刺繍図柄を構成する線画情報に基づいて作成された枝構造ベクトルデータを編集するベクトルデータ編集装置であって、画像を表示する表示手段と、2つの端点を結んだ刺繍の経路である枝ごとに、当該枝を識別する識別情報と、当該枝の一方の端点である始点の位置と他方の端点である終点の位置とにより当該枝の方向を示すベクトルデータと、前記端点にリンクしている他の枝であるリンク先枝に関するリンク情報と、当該枝が刺繍される際の縫い方を示す縫い方情報と、前記端点のリンク先を辿ると当該端点に戻るループを発生させるものであるか否かを示すループ情報とを少なくとも備えた少なくとも1つの枝データで構成されたデータ構造の枝構造ベクトルデータを記憶する枝構造ベクトルデータ記憶手段と、当該枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータの示す刺繍結果の模式図を前記表示手段に表示する表示制御手段と、前記刺繍結果を構成する枝に対して、枝の追加、枝の削除、枝の移動、枝の伸縮、枝の回転、枝の切断、他の枝への枝の接続、枝の色の変更、枝の縫い方の変更、枝の端点の移動、2つの端点を結ぶ刺繍の経路の変更、枝の複製のうちの少なくとも1つの編集作業を指示する編集指示手段と、当該編集指示手段の指示にしたがって前記枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータを編集する枝構造ベクトルデータ編集手段とを備えたことを特徴とする。
【0016】
また、請求項7に係る発明の枝構造ベクトルデータ編集装置では、請求項6に記載の発明の構成に加えて、前記枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータの枝データは、前記枝が刺繍される際の縫い糸の色を示す糸色情報を備えていることを特徴とする。
【0017】
また、請求項8に係る発明の枝構造ベクトルデータ編集装置では、請求項5又は7に記載の発明の構成に加えて、前記編集指示手段は、前記枝を刺繍する糸の色を指定する色指定手段を備え、前記ベクトルデータ編集手段は、前記糸色情報に示す色を前記色指定手段により指定された色に変更する糸色情報変更手段を備え、前記色指定手段により糸の色が指定された際には、リンク情報の変更は行わないことを特徴とする。
【0018】
また、請求項9に係る発明の枝構造ベクトルデータ編集装置では、請求項6乃至8のいずれかに記載の発明の構成に加えて、前記編集指示手段は、前記枝を切断する切断枝を指定する切断枝指定手段を備え、前記ベクトルデータ編集手段は、当該切断枝指定手段により指定された切断枝の切断点を指定する切断点指定手段と、前記切断枝の枝データを、当該切断枝の始点の端点を始点の端点とし、切断点指定手段により指定された切断点の当該切断枝上の切断点を終点の端点とした第一の枝の枝データと、前記切断点を始点の端点とし、前記切断枝の終点の端点を終点の端点とした第二の枝の枝データとに分割する分割手段と、前記切断枝のループ情報がループの発生を示している場合に、いずれの枝データのいずれの端点のループ情報もループの発生を示さないものとする第一ループ情報制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0019】
また、請求項10に係る発明の枝構造ベクトルデータ編集装置では、請求項6乃至9のいずれかに記載の発明の構成に加えて、前記編集指示手段は、前記ベクトルデータに追加する追加枝を指定する追加枝指定手段と、当該追加枝指定手段により指定された追加枝を接続させる被接続枝を指定する被接続枝指定手段とを備え、前記ベクトルデータ編集手段は、前記被接続枝のループ情報がループの発生を示している場合、ループの発生を示すループ情報を持つ側の端点であるループ端点のリンク先端点を前記追加枝の接続側の端点である追加端点とし、当該追加端点のリンク先端点を前記被接続枝のループ端点でない側の端点とするループ接続手段と、前記ループ端点のループ情報をループの発生を示さないものとし、前記追加端点のループ情報をループの発生を示すものとする第二ループ情報制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0020】
また、請求項11に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項5、7乃至10のいずれかに記載の枝構造ベクトルデータ編集装置により編集され、前記枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータに基づいて、刺繍ミシンの針の運びを示す刺繍データを作成する刺繍データ作成手段を備えた刺繍データ作成装置であって、前記刺繍データ作成手段は、前記ベクトルデータの示す始点と終点との間に走り縫いを行うことを示す刺繍データである走り縫いデータを作成する走り縫いデータ作成手段と、リンク情報の示すリンク先枝の糸色情報の示す色が、現在作成している刺繍データの糸色と同じ色であるか否かを判断する色判断手段と、前記走り縫いデータの縫い終わり側の端点の示すリンク先枝の糸色情報の示す色が、前記色判断手段により現在作成している刺繍データの糸色と同じ色であると判断される枝が見つかるまで、前記リンク先枝を辿り、当該同じ色であると判断されたリンク先枝の走り縫いデータを前記走り縫いデータ作成手段により作成する走り縫いデータ作成制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0021】
また、請求項12に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項11に記載の発明の構成に加えて、前記刺繍データ作成手段は、前記走り縫いが行われた位置に前記縫い方情報に指定されている縫い方で本打ち縫いを行うことを示す刺繍データを作成する本打ち縫製データ作成手段と、前記走り縫いデータ作成手段により作成された走り縫いデータの縫い終わり側に対応した端点のリンク情報がリンク先枝を示していない場合に、縫い終わり側に対応した端点から他方の端点へ前記本打ち縫製データ作成手段により本打ち縫製データを作成する縫い方切替制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0022】
また、請求項13に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項11又は12に記載の発明の構成に加えて、前記刺繍データ作成手段は、前記本打ち縫製データの縫い終わり側に対応した端点をリンク先として指定しているリンク情報である元リンク情報を探索するリンク元探索手段と、前記リンク元探索手段により検索された元リンク情報を有する枝データの糸色情報の示す色が、前記色判断手段により現在作成している刺繍データの糸色と同じ色であると判断されるまで、前記元リンク情報を辿り、当該同じ色であると判断された枝の前記元リンク情報のリンク先枝識別情報の示す枝を当該元リンク情報のリンク先枝端点情報の示す端点から他方の端点へ縫い進める前記本打ち縫製データを前記本打ち縫製データ作成手段により作成する本打ち縫製データ作成制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0023】
また、請求項14に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項6乃至10のいずれかに記載の枝構造ベクトルデータ編集装置により編集され、前記枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータに基づいて、刺繍ミシンの針の運びを示す刺繍データを作成する刺繍データ作成手段を備えた刺繍データ作成装置であって、前記刺繍データ作成手段は、前記ベクトルデータの示す始点と終点との間に走り縫いを行うことを示す刺繍データである走り縫いデータを作成する走り縫いデータ作成手段と、前記走り縫いが行われた位置に前記縫い方情報に指定されている縫い方で本打ち縫いを行うことを示す刺繍データを作成する本打ち縫製データ作成手段と、前記走り縫いデータ又は前記本打ち縫製データの縫い終わり側に対応した端点のループ情報がループの発生を示す場合に、当該端点の前記リンク先枝の前記走り縫いデータを前記走り縫いデータ作成手段により作成せずに、前記走り縫いデータの終点の端点から他方の端点への本打ち縫製データを前記本打ち縫製データ作成手段により作成する折り返し制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0024】
また、請求項15に係る発明の枝構造ベクトルデータ編集プログラムでは、請求項5乃至10のいずれかに記載の枝構造ベクトルデータ編集装置の各種処理手段としてコンピュータを機能させる。
【0025】
また、請求項16に係る発明の刺繍データ作成プログラムでは、請求項11乃至14のいずれかに記載の刺繍データ作成装置の各種処理手段としてコンピュータを機能させる。
【0026】
また、請求項17に係る発明のコンピュータ読み取り可能な記録媒体では、請求項15に記載の枝構造ベクトルデータ編集プログラムを記録している。
【0027】
また、請求項18に係る発明のコンピュータ読み取り可能な記録媒体では、請求項16に記載の刺繍データ作成プログラムを記録している。
【0028】
また、請求項19に係る発明のコンピュータ読み取り可能な記録媒体では、請求項15に記載の枝構造ベクトルデータ編集プログラム及び請求項16に記載の刺繍データ作成プログラムを記録している。
【発明の効果】
【0029】
請求項1に係る発明の枝構造ベクトルデータ構造では、2つの端点を結んだ刺繍の経路である枝ごとに、枝を識別する識別情報と、枝の一方の端点である始点の位置と他方の端点である終点の位置とにより枝の方向を示すベクトルデータと、端点にリンクしている他の枝であるリンク先枝に関するリンク情報と、枝が刺繍される際の縫い方を示す縫い方情報と、枝が刺繍される際の縫い糸の色を示す糸色情報とを少なくとも備えた少なくとも1つの枝データで構成することができる。そして、識別情報を枝を特定するために使用し、ベクトルデータを走り縫いを行うことを示す刺繍データである走り縫いデータを作成する際、及び、走り縫いが行われた位置に縫い方情報に指定されている縫い方で本打ち縫いを行うことを示す刺繍データである本打ち縫製データを作成する際に縫い位置を特定するために使用し、リンク情報を刺繍データを作成する際に次にデータを作成する枝を特定するために使用し、糸色情報をリンク情報で指定されている枝の刺繍データを作成するか否かの判断に使用することができる。したがって、1つの枝構造ベクトルデータで複数の糸色の枝の情報を有することができるので、糸色ごとに枝構造ベクトルデータを持たなくてよい。よって、データが煩雑にならない。そして、ユーザの指示により枝構造ベクトルデータの編集を行う際に、異なる糸色の枝を容易にまとめて編集することができる。
【0030】
また、請求項2に係る発明の枝構造ベクトルデータ構造では、2つの端点を結んだ刺繍の経路である枝ごとに、枝を識別する識別情報と、枝の一方の端点である始点の位置と他方の端点である終点の位置とにより枝の方向を示すベクトルデータと、端点にリンクしている他の枝であるリンク先枝に関するリンク情報と、枝が刺繍される際の縫い方を示す縫い方情報と、端点のリンク先を辿ると端点に戻るループを発生させるものであるか否かを示すループ情報とを少なくとも備えた少なくとも1つの枝データで構成することができる。そして、識別情報を枝を特定するために使用し、ベクトルデータを走り縫いを行うことを示す刺繍データである走り縫いデータを作成する際、及び、走り縫いが行われた位置に縫い方情報に指定されている縫い方で本打ち縫いを行うことを示す刺繍データである本打ち縫製データを作成する際に縫い位置を特定するために使用し、リンク情報を刺繍データを作成する際に次にデータを作成する枝を特定するために使用し、ループ情報をリンク情報で指定されている枝の走り縫いデータを作成するか否かの判断に使用することができる。したがって、ループ情報によりある点から開始された刺繍がその点へまた戻ってくるようなループを表現することができるので、ループをなす枝とループをなさない枝とを同じ枝構造ベクトルデータで表現することができる。よって、ループ情報によりループをなす枝であるか否かの判別がつくので、枝の端点のリンク先を辿っていっても、無限ループに陥らないように枝データを処理することができる。したがって、ループをなす枝の編集と、ループをなさない枝の編集とを行う場合に、1つの枝構造ベクトルデータを編集するだけでよく、編集のための処理が容易となる。
【0031】
また、請求項3に係る発明の枝構造ベクトルデータ構造では、請求項2に記載の発明の効果に加えて、枝データは、枝が刺繍される際の縫い糸の色を示す糸色情報を備えており、糸色情報を、リンク情報で指定されている枝の刺繍データを作成するか否かの判断に使用することができる。したがって、1つの枝構造ベクトルデータで複数の糸色の情報を有し、さらにループも表現できるので、データが煩雑にならない。そして、糸色ごとに枝構造ベクトルデータを持たなくてよいので、ユーザの指示により枝構造ベクトルデータの編集を行う際に、異なる糸色の枝を容易にまとめて編集することができる。また、ループ情報により、ある点から開始された刺繍がその点へまた戻ってくるようなループを表現することができるので、ループをなす枝とループをなさない枝とを同じ枝構造ベクトルデータで表現することができる。したがって、ユーザの指示により枝構造ベクトルデータの編集を行う際に、異なる糸色の枝やループをなす枝も容易にまとめて編集することができる。
【0032】
また、請求項4に係る発明の枝構造ベクトルデータ構造では、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、リンク情報は、2つの端点各々について、リンク先枝を識別するリンク先枝識別情報と、リンク先枝のリンク側の端点を示すリンク先枝端点情報とすることができる。したがって、2つの端点各々について、リンク先枝識別情報でリンク先の枝を識別でき、さらにリンク先枝端点情報でリンク先枝のどちらの端点に接続しているのかを識別することができるので、各枝のどの端点とどの端点が接続して、枝がリンクしているのかを表現することができ、刺繍データを作成する際に、どの枝の刺繍データを作成するのかだけでなく、その枝のどちらの端点からどちらの端点へ刺繍を進めるのかを容易に決定することができる。
【0033】
また、請求項5に係る発明の枝構造ベクトルデータ編集装置では、表示手段は画像を表示し、枝構造ベクトルデータ記憶手段は、2つの端点を結んだ刺繍の経路である枝ごとに、枝を識別する識別情報と、枝の一方の端点である始点の位置と他方の端点である終点の位置とにより枝の方向を示すベクトルデータと、端点にリンクしている他の枝であるリンク先枝に関するリンク情報と、枝が刺繍される際の縫い方を示す縫い方情報と、枝が刺繍される際の縫い糸の色を示す糸色情報とを少なくとも備えた少なくとも1つの枝データで構成されたデータ構造の枝構造ベクトルデータを記憶することができる。そして、表示制御手段は、枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータの示す刺繍結果の模式図を表示手段に表示し、編集指示手段は、刺繍結果を構成する枝に対して、枝の追加、枝の削除、枝の移動、枝の伸縮、枝の回転、枝の切断、他の枝への枝の接続、枝の色の変更、枝の縫い方の変更、端点の移動、2つの端点を結ぶ刺繍の経路の変更、枝の複製のうちの少なくとも1つの編集作業を指示し、枝構造ベクトルデータ編集手段は、編集指示手段の指示にしたがって枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータを編集することができる。つまり、色ごとに複数の枝構造ベクトルデータが存在するのではなく、1つの枝構造ベクトルデータで複数の色の刺繍の枝データを構成することができる。よって、異なる色の枝を編集する際に、色ごとの複数の枝構造ベクトルデータを編集する必要がなく、1つの枝構造ベクトルデータを編集すればよいので、編集に際して行われる処理工程が簡略化できる。さらに、色ごとに複数の枝構造ベクトルデータが存在するよりも、枝構造ベクトルデータの管理が煩雑でなくなる。さらに、編集を指示するユーザは刺繍の色を意識することなく、編集の指示を行うことができる。
【0034】
また、請求項6に係る発明の枝構造ベクトルデータ編集装置では、表示手段は画像を表示し、枝構造ベクトルデータ記憶手段は、2つの端点を結んだ刺繍の経路である枝ごとに、枝を識別する識別情報と、枝の一方の端点である始点の位置と他方の端点である終点の位置とにより枝の方向を示すベクトルデータと、端点にリンクしている他の枝であるリンク先枝に関するリンク情報と、枝が刺繍される際の縫い方を示す縫い方情報と、端点のリンク先を辿ると端点に戻るループを発生させるものであるか否かを示すループ情報とを少なくとも備えた少なくとも1つの枝データで構成されたデータ構造の枝構造ベクトルデータを記憶し、表示制御手段は、枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータの示す刺繍結果の模式図を表示手段に表示し、編集指示手段は、刺繍結果を構成する枝に対して、枝の追加、枝の削除、枝の移動、枝の伸縮、枝の回転、枝の切断、他の枝への枝の接続、枝の色の変更、枝の縫い方の変更、端点の移動、2つの端点を結ぶ刺繍の経路の変更、枝の複製のうちの少なくとも1つの編集作業を指示し、枝構造ベクトルデータ編集手段は、編集指示手段の指示にしたがって枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータを編集することができる。したがって、ループ情報を有することによりある点から開始された刺繍がその点へまた戻ってくるようなループを枝構造ベクトルデータにおいて表現できるので、1つの枝構造ベクトルデータでループをなす枝とループをなさない枝との枝データを構成することができる。よって、ループ情報によりループをなす枝であるか否かの判別がつくので、枝の端点のリンク先を辿っていっても、無限ループに陥らないように枝データを処理することができる。したがって、ループをなす枝の編集と、ループをなさない枝の編集とを行う場合に、1つの枝構造ベクトルデータを編集するだけでよく、編集のための処理が容易となる。さらに、編集を指示するユーザはループをなす枝とループをなさない枝とを意識することなく、編集の指示を行うことができる。
【0035】
また、請求項7に係る発明の枝構造ベクトルデータ編集装置では、請求項6に記載の発明の効果に加えて、枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータの枝データは、枝が刺繍される際の縫い糸の色を示す糸色情報を有しているので、糸色情報を有し、かつ、ある点から開始された刺繍がその点へまた戻ってくるようなループを表現可能な枝構造ベクトルデータの編集を行うことができる。したがって、ユーザの指示により枝構造ベクトルデータの編集を行う際に、容易に異なる糸色の枝をまとめて編集することができる。さらに、異なる糸色の枝やループをなす枝も容易にまとめて編集することができる。さらに、編集を指示するユーザは刺繍の色やループをなす枝とループをなさない枝とを意識することなく、編集の指示を行うことができる。
【0036】
また、請求項8に係る発明の枝構造ベクトルデータ編集装置では、請求項5又は7に記載の発明の効果に加えて、編集指示手段の色指定手段は、枝を刺繍する糸の色を指定することができる。また、ベクトルデータ編集手段の糸色情報変更手段は、糸色情報に示す色を色指定手段により指定された色に変更することができる。そして、色指定手段により糸の色が指定された際には、リンク情報の変更は行われない。したがって、枝の糸色を変更する際には糸色情報を変更するだけでよく、枝同士の繋がりの関係を変更する必要がないので処理が煩雑でない。
【0037】
また、請求項9に係る発明の枝構造ベクトルデータ編集装置では、請求項6乃至8のいずれかに記載の発明の効果に加えて、編集指示手段の切断枝指定手段は、枝を切断する切断枝を指定することができる。また、ベクトルデータ編集手段の切断点指定手段は、切断枝指定手段により指定された切断枝の切断点を指定し、分割手段は、切断枝の枝データを、切断枝の始点の端点を始点の端点とし、切断点指定手段により指定された切断点の切断枝上の切断点を終点の端点とした第一の枝の枝データと、切断点を始点の端点とし、切断枝の終点の端点を終点の端点とした第二の枝の枝データとに分割し、第一ループ情報制御手段は、切断枝のループ情報がループの発生を示している場合に、いずれの枝データのいずれの端点のループ情報もループの発生を示さないものとすることができる。したがって、ループ形状の枝を切断しても、枝の接続が途切れたり、無限ループに陥ったりすることがない。
【0038】
また、請求項10に係る発明の枝構造ベクトルデータ編集装置では、請求項6乃至9のいずれかに記載の発明の効果に加えて、編集指示手段の追加枝指定手段は、ベクトルデータに追加する追加枝を指定し、被接続枝指定手段は、追加枝指定手段により指定された追加枝を接続させる被接続枝を指定することができる。また、ベクトルデータ編集手段のループ接続手段は、被接続枝のループ情報がループの発生を示している場合、ループの発生を示すループ情報を持つ側の端点であるループ端点のリンク先端点を追加枝の接続側の端点である追加端点とし、追加端点のリンク先端点を被接続枝のループ端点でない側の端点とし、第二ループ情報制御手段は、ループ端点のループ情報をループの発生を示さないものとし、追加端点のループ情報をループの発生を示すものとすることができる。したがって、ループ形状の枝に新たな枝を追加しても、枝の接続が途切れたり、無限ループに陥ったりすることがない。
【0039】
また、請求項11に係る発明の刺繍データ作成装置では、刺繍データ作成手段は、請求項5、7乃至10のいずれかに記載の枝構造ベクトルデータ編集装置により編集され、枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータに基づいて、刺繍ミシンの針の運びを示す刺繍データを作成することができる。そして、刺繍データ作成手段の走り縫いデータ作成手段は、ベクトルデータの示す始点と終点との間に走り縫いを行うことを示す刺繍データである走り縫いデータを作成し、色判断手段は、リンク情報の示すリンク先枝の糸色情報の示す色が、現在作成している刺繍データの糸色と同じ色であるか否かを判断し、走り縫いデータ作成制御手段は、走り縫いデータの縫い終わり側の端点の示すリンク先枝の糸色情報の示す色が、色判断手段により現在作成している刺繍データの糸色と同じ色であると判断される枝が見つかるまで、リンク先枝を辿り、同じ色であると判断されたリンク先枝の走り縫いデータを走り縫いデータ作成手段により作成することができる。したがって、複数の糸色の枝データで構成される枝構造ベクトルデータから、色ごとに、その色の糸で走り縫いを行うべき枝について走り縫いデータを作成することができる。
【0040】
また、請求項12に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項11に記載の発明の効果に加えて、刺繍データ作成手段の本打ち縫製データ作成手段は、走り縫いが行われた位置に縫い方情報に指定されている縫い方で本打ち縫いを行うことを示す刺繍データを作成し、縫い方切替制御手段は、走り縫いデータ作成手段により作成された走り縫いデータの縫い終わり側に対応した端点のリンク情報がリンク先枝を示していない場合に、縫い終わり側に対応した端点から他方の端点へ本打ち縫製データ作成手段により本打ち縫製データを作成することができる。したがって、走り縫いデータの作成から本打ち縫製データの作成への切り替えを行い、刺繍が途切れたり、無限ループに陥ったりすることのない走り縫いデータ及び本打ち縫製データを作成することができる。
【0041】
また、請求項13に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項11又は12に記載の発明の効果に加えて、刺繍データ作成手段のリンク元探索手段は、本打ち縫製データの縫い終わり側に対応した端点をリンク先として指定しているリンク情報である元リンク情報を探索し、本打ち縫製データ作成制御手段は、リンク元探索手段により検索された元リンク情報を有する枝データの糸色情報の示す色が、色判断手段により現在作成している刺繍データの糸色と同じ色であると判断されるまで、元リンク情報を辿り、同じ色であると判断された枝の元リンク情報のリンク先枝識別情報の示す枝を元リンク情報のリンク先枝端点情報の示す端点から他方の端点へ縫い進める本打ち縫製データを本打ち縫製データ作成手段により作成することができる。したがって、複数の糸色の枝データで構成される枝構造ベクトルデータから、色ごとにその色で本打ち縫いを行うべき枝について本打ち縫製データを作成することができる。
【0042】
また、請求項14に係る発明の刺繍データ作成装置では、刺繍データ作成手段は、請求項6乃至10のいずれかに記載の枝構造ベクトルデータ編集装置により編集され、枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータに基づいて、刺繍ミシンの針の運びを示す刺繍データを作成することができる。そして、刺繍データ作成手段の走り縫いデータ作成手段は、ベクトルデータの示す始点と終点との間に走り縫いを行うことを示す刺繍データである走り縫いデータを作成し、本打ち縫製データ作成手段は、走り縫いが行われた位置に縫い方情報に指定されている縫い方で本打ち縫いを行うことを示す刺繍データを作成し、折り返し制御手段は、走り縫いデータ又は前記本打ち縫製データの縫い終わり側に対応した端点のループ情報がループの発生を示す場合に、端点のリンク先枝の走り縫いデータを走り縫いデータ作成手段により作成せずに、走り縫いデータの終点の端点から他方の端点への本打ち縫製データを本打ち縫製データ作成手段により作成することができる。したがって、ある点から開始された刺繍がその点へまた戻ってくるようなループを表現可能な枝構造ベクトルデータから、ループの発生を示す枝について、刺繍が途切れたり、無限ループに陥ったりすることのない走り縫いデータ及び本打ち縫製データを作成することができる。
【0043】
また、請求項15に係る発明の枝構造ベクトルデータ編集プログラムでは、請求項5乃至10のいずれかに記載の枝構造ベクトルデータ編集装置の各種処理手段としてコンピュータを機能させることができる。したがって、枝構造ベクトルデータ編集プログラムをコンピュータで動作させることにより、請求項5乃至10のいずれかに記載の発明の効果と同様の効果を得ることができる。
【0044】
また、請求項16に係る発明の刺繍データ作成プログラムでは、請求項11乃至14のいずれかに記載の刺繍データ作成装置の各種処理手段としてコンピュータを機能させることができる。したがって、刺繍データ作成プログラムをコンピュータで動作させることにより、請求項11乃至14のいずれかに記載の発明の効果と同様の効果を得ることができる。
【0045】
また、請求項17に係る発明のコンピュータ読み取り可能な記録媒体では、請求項15に記載の枝構造ベクトルデータ編集プログラムを記録することができる。したがって、当該記録媒体に記録された枝構造ベクトルデータ編集プログラムをコンピュータに読み込ませ、動作させることにより、請求項5乃至10のいずれかに記載の発明の効果と同様の効果を得ることができる。
【0046】
また、請求項18に係る発明のコンピュータ読み取り可能な記録媒体では、請求項16に記載の刺繍データ作成プログラムを記録することができる。したがって、当該記録媒体に記録された刺繍データ作成プログラムをコンピュータに読み込ませ、動作させることにより、請求項11乃至請求項14のいずれかに記載の発明の効果と同様の効果を得ることができる。
【0047】
また、請求項19に係る発明のコンピュータ読み取り可能な記録媒体では、請求項15に記載の枝構造ベクトルデータ編集プログラム及び請求項16に記載の刺繍データ作成プログラムを記録することができる。したがって、当該記録媒体に記録された枝構造ベクトルデータ編集プログラム及び刺繍データ作成プログラムを読み込ませ、動作させることにより、請求項5乃至14のいずれかに記載の発明の効果と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、本発明に係る刺繍データ作成装置1の一実施の形態について、図面を参照して説明する。本実施の形態の刺繍データ作成装置1は、画像データに表された図柄を刺繍ミシン3による刺繍によって出力するための刺繍データを画像データに基づいて作成するものである。また、刺繍データ作成装置1では、画像データから刺繍データを作成する途中で利用する枝構造ベクトルデータを編集する「枝構造ベクトルデータ編集装置」としても機能している。まず、刺繍ミシン3について説明する。図1は、刺繍ミシン3の外観図である。
【0049】
図1に示すように、刺繍ミシン3は、ミシンベッド30上に配置された、刺繍を施そうとする加工布を保持する刺繍枠31を、Y方向駆動部32及び、本体ケース33内に収容されたX方向駆動機構によって装置固有のX・Y座標系で示される所定位置に移動させながら、縫い針34及び釜機構(図示外)による縫製動作を行うことにより、その加工布に所定の図柄の刺繍を施すようになっており、前記Y方向駆動部32、X方向駆動機構や針棒35等は、刺繍ミシン3に内蔵されたマイクロコンピュータ等から構成される制御装置により制御される。また、刺繍ミシン3の脚柱部36の側面にはメモリカードスロット37が搭載されており、刺繍データが記憶されたメモリカード115をメモリカードスロット37に装着することにより、刺繍データ作成装置1で作成された刺繍データが供給される。
【0050】
次に、刺繍データ作成装置1について図面を参照して説明する。図2は、刺繍データ作成装置1の物理的構成を示す全体構成図であり、図3は、刺繍データ作成装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【0051】
図2に示すように、この刺繍データ作成装置1は、所謂パーソナルコンピュータである装置本体10と、この装置本体10に接続されるマウス21、キーボード22、メモリカードコネクタ23、ディスプレイ24及びイメージスキャナ装置25から構成されている。なお、装置本体10、マウス21、キーボード22、メモリカードコネクタ23、ディスプレイ24、イメージスキャナ装置25の形状は図2に示すものに限らない。例えば、装置本体10はタワー型のものに限らず、横置きのものであってもよく、装置本体10とディスプレイ24とキーボード22とが一体化したノート型であってもよい。また、装置本体10は所謂パーソナルコンピュータでなく、専用機であってもよいことは言うまでもない。
【0052】
次に、図3のブロック図を参照して、刺繍データ作成装置1の電気的構成について説明する。図3に示すように、刺繍データ作成装置1には、刺繍データ作成装置1の制御を司るコントローラとしてのCPU101が設けられ、CPU101には、各種のデータを一時的に記憶するRAM102と、BIOS等を記憶したROM103と、データの受け渡しの仲介を行うI/Oインタフェイス104とが接続されている。I/Oインタフェイス104には、ハードディスク装置120が接続され、当該ハードディスク装置120には、画像データ記憶エリア121と、線画情報記憶エリア122と、枝構造ベクトルデータ記憶エリア123と、刺繍データ記憶エリア124と、プログラム記憶エリア125と、その他の情報記憶エリア126とが少なくとも設けられている。
【0053】
尚、画像データ記憶エリア121には、イメージスキャナ装置25により読み込まれた画像データ100(図4参照)が記憶され、線画情報記憶エリア122には、画像データ100から作成される線画情報200(図4参照)が記憶され、枝構造ベクトルデータ記憶エリア123には、線画情報200から作成される枝構造ベクトルデータ300(図4参照)が記憶され、刺繍データ記憶エリア124には、枝構造ベクトルデータ300から作成される刺繍データ400(図4参照)が記憶される。そして、プログラム記憶エリア125にはCPU101で実行される枝構造ベクトルデータ編集プログラム及び刺繍データ作成プログラムが記憶されている。その他の情報記憶エリア126には、刺繍データ作成装置1で使用されるその他の情報が記憶されている。なお、刺繍データ作成装置1がハードディスク装置120を備えていない専用機の場合は、ROMにプログラムが記憶される。
【0054】
また、I/Oインタフェイス104には、マウス21と、ビデオコントローラ106と、キーコントローラ107と、CD−ROMドライブ108と、メモリカードコネクタ23と、イメージスキャナ装置25とが接続されている。ビデオコントローラ106にはディスプレイ24が接続され、キーコントローラ107にはキーボード22が接続されている。なお、CD−ROMドライブ108に挿入されるCD−ROM114には、刺繍データ作成装置1の制御プログラムである枝構造ベクトルデータ編集プログラム及び刺繍データ作成プログラムが記憶されており、導入時には、制御プログラムは、CD−ROM114から、ハードディスク装置120にセットアップされてプログラム記憶エリア125に記憶される。また、メモリカードコネクタ23では、メモリカード115の読み取りや書き込みが可能となっている。
【0055】
次に、図4を参照して、本発明において刺繍データを作成する際に利用される情報とその関係について説明する。図4は情報関係図である。図4に示すように、イメージスキャナ装置25により取り込まれた画像データ100から刺繍を構成する軌跡の画像を示す線画情報200が作成される。そして、線画情報200から本発明の要部である枝構造ベクトルデータ300が作成される。そして、刺繍データ作成プログラムを動作させることにより、枝構造ベクトルデータ300から刺繍糸の糸色ごとに刺繍データ400が作成される。刺繍データ400は、黒色の刺繍データ401、赤色の刺繍データ402、緑色の刺繍データ403など、糸色ごとに作成される。なお、枝構造ベクトルデータ300は、枝構造ベクトルデータ編集プログラムによりディスプレイ24に表示され、マウス21やキーボード22から入力される編集指示に基づいて編集される。つまり、ユーザは、マウス21やキーボード22から編集指示を入力することにより、枝構造ベクトルデータ300を編集することができる。この枝構造ベクトルデータ300の編集とは、刺繍の軌跡である枝の追加、枝の削除、枝の移動、枝の伸縮、枝の回転、枝の切断、他の枝への枝の接続、枝の色の変更、枝の縫い方の変更、枝の端点の移動、2つの端点を結ぶ刺繍の経路の変更、枝の複製などである。
【0056】
なお、画像データ100はイメージスキャナ装置25により取り込まれたデータでなく、メモリカード115やCD−ROM114により読み込まれたデータや、作画ソフトにより作成されたデータであってもよい。
【0057】
次に、図5乃至図8を参照して、枝構造ベクトルデータ300の一例として枝構造ベクトルデータ310について説明する。図5は、枝構造ベクトルデータ310により作成される刺繍データ400により刺繍される刺繍結果319を示す刺繍結果図であり、図6は、枝構造ベクトルデータ310を図式化したベクトル図411であり、図7は、枝構造ベクトルデータ310の構成を示す模式図である。図8は、糸色が緑色の刺繍データ413の内容を示す模式図である。
【0058】
図5に示すように、刺繍結果319は3本の直線の刺繍軌跡K1,K2,K3で形成されている。このような刺繍結果319を構成する枝構造ベクトルデータ310を図式化したものが、図6のベクトル図411である。枝構造ベクトルデータ310では、1つの刺繍軌跡を1本の「枝」として捉える。図6に示す枝E1が図5に示す刺繍軌跡K1に該当し、図6に示す枝E2が図5に示す刺繍軌跡K2に該当し、図6に示す枝E3が図5に示す刺繍軌跡K3に該当する。
【0059】
そして、図7に示すように、枝構造ベクトルデータ310では、この枝ごとにレコードが作成されており、各枝についての種々の情報が記憶されている。なお、この枝ごとのレコードを「枝データ」と呼ぶこととする。そして、枝構造ベクトルデータ310には「枝データ番号欄」が設けられており、枝を識別する情報が記憶されている。図5に示す刺繍結果319を構成する枝構造ベクトルデータ310は、3つの枝データから構成されることとなる。
【0060】
また、この枝E1,E2,E3は、ベクトルとして捉えられている。図7に示すように、枝構造ベクトルデータ310には「ベクトルデータ欄」が設けられ、枝E1を現すベクトルを示す情報が記憶される。ベクトルデータ欄に記憶されるベクトルを示す情報とは、例えば、始点及び終点の座標、又は、始点の座標及び始点からの方向(角度)及びベクトルの長さである。図6に示すベクトル図411を参照すると、枝E1は点N0から点N1へ向けたベクトルとして表されており、枝E2は点N1から点N2へ向けたベクトルとして表されており、枝E3は点N3から点N1へ向けたベクトルとして表されている。つまり、枝E1,E2,E3は点N1を終点又は始点として共有しており、点N1で接続(リンク)している。
【0061】
ここで、枝E1,E2,E3のリンク関係についての枝構造ベクトルデータ310での表現について説明する。枝構造ベクトルデータ310には、「始点リンク情報欄」及び「終点リンク情報欄」が設けられている。始点リンク情報欄には枝の始点となる点がリンクしている他の枝(以下、「リンク先枝」という。)の端点についての情報として、「リンク先枝識別情報欄」及び「リンク先枝端点情報欄」が設けられている。リンク先枝識別情報欄には、リンク先枝を識別する情報が記憶され、リンク先枝端点情報欄には、リンク先枝のどちらの端点に接続するかを示す情報が記憶されている。以下、リンク先枝におけるリンクしている端点を「リンク先端点」という。さらに、始点リンク先情報欄には「ループ情報欄」が設けられている。このループ情報欄には、リンク先枝を辿ってゆくことにより、自身(当該枝データの始点)に戻ってくるという「ループ」を発生させるか否かを示す情報が記憶されている。
【0062】
そして、終点リンク情報欄には、始点リンク情報欄と同様に、当該枝データの枝の終点となる点のリンク先枝の情報及びループ情報が記憶されている。なお、このループについては、図13乃至図18を参照して後に詳述する。
【0063】
さらに、枝構造ベクトルデータ310には「縫い方情報欄」及び「糸色情報欄」が設けられている。縫い方情報欄には、当該枝を刺繍する際の縫い方が記憶され、糸色情報欄には、当該枝を刺繍する際の糸の色が記憶されている。
【0064】
ここで、図6及び図7を参照して、各枝のリンク関係を具体的に説明する。枝データ番号「E1」の枝データを参照すると、始点リンク情報欄にはリンク先枝の情報が記憶されていないので、枝E1の始点にはリンク先枝が存在しないことが判る。そして、終点リンク情報欄にはリンク先枝識別情報欄は「E2」、リンク先枝端点情報欄は「始点」を示しており、ループ情報欄は「ループなし」を示している。これにより、枝E1の終点が枝E2の始点とリンクし、ループは発生していないことが判る。そして、縫い方はジグザグ縫いであり、糸色は「緑」である。次いで、枝データ番号「E2」の枝データを参照すると、始点リンク情報欄のリンク先枝識別情報欄は「E3」、リンク先枝端点情報欄は「終点」を示しており、ループ情報欄は「ループなし」を示している。これにより、枝E2の始点が枝E3の終点とリンクし、ループは発生していないことが判る。そして、枝E2の終点リンク情報欄にはリンク先枝の情報が記憶されていないので、枝E2の終点にはリンク先枝が存在しないことが判る。そして、縫い方はジグザグ縫いであり、糸色は「緑」である。次いで、枝データ番号「E3」の枝データを参照すると、始点リンク情報欄及び終点リンク情報欄にはリンク先枝の情報が記憶されていないので、枝E3の始点及び終点にはリンク先枝が存在しないことが判る。そして、縫い方はジグザグ縫いであり、糸色は「緑」である。
【0065】
ここで、枝構造ベクトルデータ300から作成される刺繍データ400について説明する。刺繍データ400は、「走り縫いデータ」及び「本打ち縫製データ」により構成されている。「走り縫いデータ」は走り縫いを行うための刺繍データであり、「本打ち縫製データ」は本打ち縫いを行うための刺繍データである。本実施の形態の刺繍データでは、刺繍を中断させて、糸を切ったり、離れた点から刺繍を再開させたりしないように、一つの枝を2度縫うことにより刺繍結果を一筆描きで形成する。よって、1つの枝の1回目の縫いは、2回目の縫いにより隠されることとなる。この1回目の縫いが「走り縫い」であり、2回目の縫いが「本打ち縫い」である。
【0066】
次に、図6乃至図8を参照して、図7に示す枝構造ベクトルデータ310から、図8に示す緑色の刺繍データ413を作成する際の動作について説明する。この刺繍データ413の作成は、刺繍データ作成装置1において刺繍データ作成プログラムを動作させることにより実施される。まず、枝構造ベクトルデータ310から、刺繍を開始させる開始枝の開始点が探索される。これは、全枝からリンク先枝とされていない枝が探索され、その枝の任意の端点が開始点とされる。ここでは、枝E1の始点であるN0を開始点とする。
【0067】
枝E1の始点N0が開始点であるので、まず、枝E1の枝データが読み込まれる。そして、糸色情報が参照され、現在作成している刺繍データの糸色である「緑」であるか否かの判断が行われる(この処理を実施するCPU101が「色判断手段」に相当する)。枝E1の糸色情報は「緑」であるので、枝E1の始点N0から終点N1へ走り縫いをする走り縫いデータ4131が作成される(この走り縫いデータを作成するCPU101が「走り縫いデータ作成手段」に相当し、糸色情報が「緑」であるので走り縫いデータを作成する処理を実施するCPU101が「走り縫いデータ作成制御手段」に相当する)。そして、作成された走り縫いデータ4131の刺繍終了点である枝E1の終点N1のリンク先の情報が、枝E1の終点リンク情報から読み出される。図7に示すように、枝E1の終点N1のリンク先は、枝E2の始点N1である。そこで、枝E2の枝データが読み込まれる。
【0068】
そして、枝E2の糸色情報は「緑」であるので、枝E2の始点N1から終点N2への走り縫いデータ4132が作成される。そして、走り縫いデータ4132の刺繍終了点である枝E2の終点N2のリンク先の情報が、枝E2の終点リンク情報から読み出される。図7に示すように、枝E2の終点N2のリンク先はない。そこで、枝E2の終点N2から始点N1へ本打ち縫製データ4133が作成される(この本打ち縫製データを作成するCPU101が「本打ち縫製データ作成手段」に相当し、リンク先がないので本打ち縫製データを作成する処理を実施するCPU101が「縫い方切替制御手段」に相当する)。なお、この時の縫い方はジグザグ縫いである。
【0069】
そして、本打ち縫製データ4133の刺繍終了点である枝E2の始点N1のリンク先情報が、枝E2の始点リンク情報から読み出される。図7に示すように、枝E2の始点N1のリンク先は枝E3の終点N1である。そこで、枝E3の枝データが読み出される。この枝E3の走り縫いデータはまだ作成されておらず、糸色情報が「緑」であるので、枝E3の終点N1から始点N3へ走り縫いデータ4134が作成される。そして、作成された走り縫いデータ4134の刺繍終了点である枝E3の始点N3のリンク先の情報が、枝E3の始点リンク情報から読み出される。枝E3の始点N3のリンク先はないので、枝E3の始点N3から終点N1へ本打ち縫製データ4135が作成される(この処理を実施するCPU101が「縫い方切替制御手段」に相当する)。この時の縫い方はジグザグ縫いである。
【0070】
そして、本打ち縫製データ4135の刺繍終了点である枝E3の終点N1のリンク先情報が、枝E3の終点リンク情報から読み出される。図7に示すように、枝E3の終点N1のリンク先はない。そこで、枝E3の終点N1をリンク先としている始点リンク情報又は終点リンク情報(以下、「リンク元」という。)が探索される(この処理を行うCPU101が「リンク元探索手段」に相当する)。図7に示すように、枝E3の終点N1をリンク先としているのは、枝E2の始点リンク情報である。枝E2の糸色情報は「緑」であるが、すでに枝E2の本打ち縫製データは作成されているので(本打ち縫製データ4133)、作成する必要はない。そこで、枝E2の始点N1をリンク先としている始点リンク情報又は終点リンク情報がさらに探索される(この処理を行うCPU101が「リンク元探索手段」に相当する)。図7に示すように、枝E2の始点N1をリンク先としているのは、枝E1の終点リンク情報である。枝E1の糸色情報は「緑」なので、本打ち縫製データを作成する。そこで、枝E1の本打ち縫製データを作成するか否かの判断が行われる。枝E1の本打ち縫製データは作成されていないので、枝E1の終点N1から始点N0への本打ち縫製データ4136が作成される(このようにリンク元を探索し、糸色が作成中の刺繍データの糸色と同じであれば本打ち縫製データを作成する処理を実施するCPU101が「本打ち縫製データ作成制御手段」に相当する)。
【0071】
そして、枝E1の終点N1から始点N0への本打ち縫製データ4136が作成されたら、本打ち縫製データ4136の刺繍終了点である枝E1の始点N0から、さらに刺繍データを作成するか否かの判断が行われるが、この点は本刺繍データの開始点であるので、これ以上刺繍データは作成されない。このような処理により、枝E1,E2,E3のそれぞれについて、走り縫いデータが作成された後に本打ち縫製データが作成されることとなり、この刺繍データを刺繍ミシンに実行させることにより、一度も刺繍を中断することなく、図5に示すような刺繍結果を得ることができる。
【0072】
次に、図9乃至図12を参照して、複数の色の刺繍糸を用いた刺繍について説明する。ここでは、図5乃至図7に示した刺繍の枝E2の糸色が「赤」である場合を例に挙げる。図9は、枝構造ベクトルデータ320を図式化したベクトル図421であり、図10は、枝構造ベクトルデータ320の構成を示す模式図である。図11は、糸色が緑色の刺繍データ423の内容を示す模式図であり、図12は、糸色が赤色の刺繍データ422の内容を示す模式図である。なお、図9においては、赤色の糸で刺繍される枝のベクトルを点線で示している。また、図10に示すように、枝構造ベクトルデータ320の枝E2の枝データの糸色情報欄は「赤」を示している。
【0073】
ここで、この枝構造ベクトルデータ320から刺繍データ400を作成する際の動作について説明する。まず、緑色の刺繍糸の刺繍データ423を作成について説明する。この刺繍データ423の作成は、刺繍データ作成装置1において刺繍データ作成プログラムを動作させることにより実施される。まず、枝構造ベクトルデータ320から、刺繍を開始させる開始枝の開始点が探索される。これは、全枝からリンク先枝とされていない枝が探索され、その枝の任意の端点が開始点とされる。ここでは、枝E1の始点であるN0を開始点とする。
【0074】
枝E1の始点N0が開始点であるので、まず、枝E1の枝データが読み込まれる。そして、糸色情報が参照され、現在作成している刺繍データ423の糸色である「緑」であるか否かの判断が行われる(この処理を実施するCPU101が「色判断手段」に相当する)。枝E1の糸色情報は「緑」であるので、枝E1の始点N0から終点N1へ走り縫いをする走り縫いデータ4231が作成される。そして、作成された走り縫いデータ4231の刺繍終了点である枝E1の終点N1のリンク先の情報が、枝E1の終点リンク情報から読み出される。図10に示すように、枝E1の終点N1のリンク先は、枝E2の始点N1である。そこで、枝E2の枝データが読み込まれる。
【0075】
そして、糸色情報が参照され、現在作成している刺繍データ423の糸色である「緑」であるか否かの判断が行われる(この処理を実施するCPU101が「色判断手段」に相当する)。枝E2の糸色情報が「赤」であるので、枝E2の始点N1から終点N2への走り縫いデータは作成されない。
【0076】
そして、枝E2の始点N1のリンク先情報が、枝E2の始点リンク情報から読み出される。図10に示すように、枝E2の始点N1のリンク先は枝E3の終点N1である。そこで、枝E3の枝データが読み込まれる。糸色情報が参照され、現在作成している刺繍データ423の糸色である「緑」であるか否かの判断が行われる(この処理を実施するCPU101が「色判断手段」に相当する)。糸色情報が「緑」であり、この枝E3の走り縫いデータはまだ作成されていないので、枝E3の終点N1から始点N3へ走り縫いデータ4232が作成される(糸色情報が「緑」である枝データまでリンク先を辿り走り縫いデータを作成する処理を実施するCPU101が「走り縫いデータ作成制御手段」に相当する)。
【0077】
そして、作成された走り縫いデータ4232の刺繍終了点である枝E3の始点N3のリンク先の情報が、枝E3の始点リンク情報から読み出される。枝E3の始点N3のリンク先はないので、枝E3の始点N3から終点N1へ本打ち縫製データ4233が作成される。この時の縫い方はジグザグ縫いである。
【0078】
そして、本打ち縫製データ4233の刺繍終了点である枝E3の終点N1のリンク先情報が、枝E3の終点リンク情報から読み出される。図10に示すように、枝E3の終点N1のリンク先はない。そこで、枝E3の終点N1をリンク先としている始点リンク情報又は終点リンク情報(リンク元)が探索される(この処理を行うCPU101が「リンク元探索手段」に相当する)。図10に示すように、枝E3の終点N1をリンク先としているのは、枝E2の始点リンク情報である。枝E2の糸色情報は「赤」なので、本打ち縫製データを作成しない。そこで、枝E2の始点N1のリンク元がさらに探索される。図10に示すように、枝E2の始点N1をリンク先としているのは、枝E1の終点リンク情報である。そこで、枝E1の枝データが読み込まれ、糸色情報が参照され、現在作成している刺繍データ423の糸色である「緑」であるか否かの判断が行われる(この処理を実施するCPU101が「色判断手段」に相当する)。枝E1の糸色情報は「緑」なので、本打ち縫製データを作成してよい。また、枝E1の本打ち縫製データは作成されていないので、枝E1の終点N1から始点N0への本打ち縫製データ4234が作成される(このようにリンク元を探索し、糸色が作成中の刺繍データの糸色と同じ枝の本打ち縫製データを作成する処理を実施するCPU101が「本打ち縫製データ作成制御手段」に相当する)。
【0079】
そして、枝E1の終点N1から始点N0への本打ち縫製データ4234が作成されたら、本打ち縫製データ4234の刺繍終了点である枝E1の始点N0から、さらに刺繍データを作成するか否かの判断が行われるが、この点は当該刺繍データの開始点であるので、これ以上刺繍データは作成されない。このような処理により、糸色が「緑」の枝E1,E3のそれぞれについて、走り縫いデータが作成された後に本打ち縫製データが作成されることとなり、糸色が「赤」の枝E2の刺繍データは作成されない。
【0080】
次いで、赤色の刺繍糸の刺繍データ422の作成について説明する。枝E1の始点N0が開始点であるので、まず、枝E1の枝データが読み込まれる。そして、糸色情報が参照され、現在作成している刺繍データ422の糸色である「赤」であるか否かの判断が行われる(この処理を実施するCPU101が「色判断手段」に相当する)。枝E1の糸色情報は「緑」であるので、枝E1の始点N0から終点N1へ走り縫いをする走り縫いデータは作成されない。そこで、枝E1の終点N1のリンク先の情報が、枝E1の終点リンク情報から読み出される。図10に示すように、枝E1の終点N1のリンク先は、枝E2の始点N1である。そこで、枝E2の枝データが読み込まれる。
【0081】
そして、糸色情報が参照され、現在作成している刺繍データ422の糸色である「赤」であるか否かの判断が行われる(この処理を実施するCPU101が「色判断手段」に相当する)。枝E2の糸色情報は「赤」であるので、枝E2の始点N1から終点N2への走り縫いデータ4221が作成される(糸色情報が「赤」である枝データまでリンク先を辿り走り縫いデータを作成する処理を実施するCPU101が「走り縫いデータ作成制御手段」に相当する)。そして、走り縫いデータ4221の刺繍終了点である枝E2の終点N2のリンク先の情報が、枝E2の終点リンク情報から読み出される。図10に示すように、枝E2の終点N2のリンク先はないので、枝E2の終点N2から始点N1へ本打ち縫製データ4222が作成される(この処理を実施するCPU101が「縫い方切替制御手段」に相当する)。なお、この時の縫い方はジグザグ縫いである。
【0082】
そして、本打ち縫製データ4222の刺繍終了点である枝E2の始点N1のリンク先情報が、枝E2の始点リンク情報から読み出される。図10に示すように、枝E2の始点N1のリンク先は枝E3の終点N1である。この枝E3の糸色情報は「緑」なので、枝E3の終点N1から始点N3へ走り縫いデータは作成されない。そして、枝E3の終点N1のリンク先情報が、枝E3の終点リンク情報から読み出される。図10に示すように、枝E3の終点N1のリンク先はない。
【0083】
そこで、枝E3の終点N1のリンク元が探索される(この処理を行うCPU101が「リンク元探索手段」に相当する)。図10に示すように、枝E3の終点N1をリンク先としているのは、枝E2の始点リンク情報であり、枝E2の糸色情報は「赤」であるが、すでに枝E2の本打ち縫製データは作成されているので(本打ち縫製データ4222)、本打ち縫製データは作成されない。そこで、枝E2の始点N1のリンク元がさらに探索される(この処理を行うCPU101が「リンク元探索手段」に相当する)。図10に示すように、枝E2の始点N1をリンク先としているのは、枝E1の終点リンク情報であるが、枝E1の糸色情報は「緑」なので本打ち縫製データは作成されない。そして、枝E1の終点の反対側の端点である始点N0はデータの開始点であるので、これ以上刺繍データは作成されない。このような処理により、糸色が「赤」の枝E2についてのみ、走り縫いデータが作成された後に本打ち縫製データが作成されることとなり、糸色が「緑」の枝E1,3の刺繍データは作成されない。
【0084】
以上のようにして、糸色情報を用いることにより、複数の糸色の枝データから構成される枝構造ベクトルデータ320から各色の刺繍データ422,423を作成することができる。
【0085】
次に、図13及び図14を参照して、ループの発生する枝E11について説明する。図13は、ループの発生する枝E11を示したベクトル図436及びループの発生しない枝E12を示したベクトル図437であり、図14は枝E11の枝構造ベクトルデータ331の構成を示す模式図である。
【0086】
図13に示すように、枝E11は、点N10を始点として、略円形の軌跡をなして始点と同じ点N10を終点としている。つまり、点N10から点N10へ戻っている。このような枝E11の枝データは、図14の枝構造ベクトルデータ331に示すようになる。枝データ番号欄には「E11」が記憶されており、始点リンク情報欄には情報が記憶されておらず、終点リンク情報欄には、リンク先枝識別情報欄に「E11」、リンク先枝端点情報欄には「始点」、ループ情報には「あり」が記憶されている。なお、縫い方情報欄は「ジグザグ」、糸色情報欄は「緑」である。
【0087】
このようなループの発生する枝E11の刺繍データを作成することを考える。枝E11の始点N10を開始点とすると、まず、枝E11の始点N10から終点N10への走り縫いデータが作成される。そして、E11の終点リンク情報が読み出される。図14に示すように、E11の終点N10のリンク先は枝E11の始点N10である。ここで、E11の始点N10へ進み、E11の始点N10から終点N10への走り縫いデータを作成してしまうと無限ループに陥ってしまうこととなる。そこで、ループ情報欄が使用される。枝E11の始点N10から終点N10への走り縫いデータが作成され、次の処理を決定する際に、E11の終点N10のリンク先枝識別情報欄及びリンク先枝端点情報欄を参照する前に、E11の終点N10のループ情報欄が参照される。ここで、ループ情報欄にループの発生を示す値が記憶されている場合には、これ以上リンクを辿らずに、折り返して本打ち縫製データが作成される。図14の例の場合には、E11の終点N10から始点N10への本打ち縫製データが作成されることとなる。このように、ループ情報がループの発生を示している場合に、リンクを辿って走り縫いデータを作成するのではなく、折り返して本打ち縫製データを作成する処理を行うCPU101が「折り返し制御手段」に相当する。そして、E11の終点N10から始点N10への本打ち縫製データが作成された後には、E11の始点N10は当該刺繍データの開始点であるので、刺繍データの作成は終了される。
【0088】
以上のようにして、ある点から同じ点へ戻ってくるようなループを発生させる枝が存在しても、ループ情報を利用することにより、無限ループに陥ることなく走り縫いデータ及び本打ち縫製データを作成することができる。また、ループの発生する枝の始点及び終点を同一点N10として扱っているので、ループの発生する枝を移動させる編集を行う場合にも、始点を移動させて、終点を移動させるという2処理を行う必要がなく、点N10のみを移動させればよい。
【0089】
次に、枝の編集について説明する。枝の編集は、ユーザが刺繍データ作成装置1において、枝構造ベクトルデータ編集プログラムを起動させて、編集の指示をマウス21やキーボード22により入力する。刺繍データ作成装置1において枝構造ベクトルデータ編集プログラムが起動されると、枝構造ベクトルデータ300の各枝データで示される枝を図式化した画像を表示した編集画面がディスプレイ24に表示される。例えば、図5に示した刺繍結果319のような画像である。この編集画面に表示されている刺繍結果は枝ごとにマウス21やキーボード22の操作で選択可能となっており、ユーザは、ディスプレイ24に表示されている刺繍結果の中から編集を行う枝を選択し、編集の指示を与える。
【0090】
例えば、縫い方を変更する場合には、ユーザは、縫い方を変更する枝を選択し、縫い方変更の指示を行う。すると、縫い方を選択する画面が表示されるので、ユーザは変更する縫い方を選択する。すると、刺繍データ作成装置1のCPU101は枝構造ベクトルデータ編集プログラムにより、指定された枝の枝構造ベクトルデータ300の枝データの縫い方情報欄の値を、新しく選択された縫い方を示す値に変更する。なお、縫い方変更の指示は、キーボード22からコマンドを入力してもよいし、マウス21の操作やキーボード22の操作によりディスプレイ24にメニュー一覧を表示させて、その中から選択させてもよいし、予めメニュー一覧を表示させておき、そこから選択させてもよい。
【0091】
なお、このような編集画面をディスプレイ24に表示させる処理を行うCPU101、編集画面への入力を行うマウス21やキーボード22、及び、編集画面へのマウス21やキーボード22からの入力の受付処理を行うCPU101が「編集指示手段」に相当する。
【0092】
ここで、図13乃至図18を参照して、接続する枝にループが発生している場合の枝構造ベクトルデータ300の編集について説明する。図15は、枝E12の枝構造ベクトルデータ332の構成を示す模式図であり、図16は、枝E11,E12を接続した後のベクトル図441であり、図17は、枝E11,E12を接続した後の枝構造ベクトルデータ340の構成を示す模式図であり、図18は、枝構造ベクトルデータ340から作成される刺繍データ443の内容を示す模式図である。
【0093】
枝と枝との接続を行う場合には、ユーザは、枝と枝の接続の指示、接続する枝(追加枝)の選択、接続される枝(被接続枝)の選択、追加枝の被接続枝に接続させる点(接続点)の指定、被接続枝の追加枝に接続される点(被接続点)の指定を行う。追加枝の選択の入力を受け付けるための編集画面をディスプレイ24に表示させる処理を行うCPU101、編集画面への入力を行うマウス21やキーボード22、及び、編集画面へのマウス21やキーボード22からの入力の受付処理を行うCPU101が「追加枝指定手段」に相当する。そして、被接続枝の選択の入力を受け付けるための編集画面をディスプレイ24に表示させる処理を行うCPU101、編集画面への入力を行うマウス21やキーボード22、及び、編集画面へのマウス21やキーボード22からの入力の受付処理を行うCPU101が「被接続枝指定手段」に相当する。
【0094】
なお、接続点が枝の端点でなく、枝上の端点以外の点であった場合には、まず、その点にて枝を分断し、一方の枝が追加枝とされ、分断された側の端点が接続点とされる。この場合に枝構造ベクトルデータ300は、もともとの追加枝の枝データが2つの枝データに変更される。例えば、追加枝の枝データ番号がE100、その始点が点N100、終点がN101であり、接続点としてN100ともN101とも異なる枝E100上の点N109が指定されたとする。この場合には、枝構造ベクトルデータ300には、始点N100、終点N101の枝E1の枝データが存在する。これを、始点N100、終点N109の枝E1の枝データに変更し、さらに始点N109、終点N101の枝E101の枝データが作成される。そして、枝E100の終点N109のリンク先は枝E101の始点N109とされる。そして、追加枝はE101であり、接続点は終点N109とされる。なお、被追加枝において端点でない枝上の点を被接続点として指定された場合にも同様の処理が行われる。
【0095】
ここでは、図13に示す枝E11へ枝E12を接続させるという編集を考える。図13に示すように、枝E12は始点N11から終点N12へ向けたベクトルとして表されている。このような枝E12の枝データは、図15の枝構造ベクトルデータ332に示すようになる。枝データ番号欄には「E12」が記憶されており、始点リンク情報欄及び終点リンク情報欄には情報が記憶されておらず、縫い方情報欄は「Zigzag」、糸色情報欄は「緑」である。そして、枝E11は、前述したように点N10を始点として、略円形の軌跡をなして始点と同じ点N10を終点としている。枝E11の枝構造ベクトルデータ331については、ループの発生する枝構造ベクトルデータ300の例として前述しているので説明を省略する。
【0096】
ここでは、枝E11の始点N10に枝E12の終点N12を接続させるという編集を考えており、追加枝が枝E12、接続点が枝E12の終点N12、被接続枝がE11、被接続点が枝E11の始点N10であるとする。すると、接続後は図16に示すベクトル図441のようになり、N10において枝E11と枝E12とが接続している。
【0097】
この場合、枝構造ベクトルデータ331(図14参照)に枝構造ベクトルデータ332(図15参照)の枝E12の枝データが追加されることとなる。図14に示すように、被接続枝E11の終点リンク情報欄のリンク先枝識別情報欄には自身である「枝E11」、リンク先枝端点情報欄には「始点」が記憶され、ループ情報は「あり」が記憶されていたが、この被接続枝E11の終点のリンク情報欄のリンク先枝識別情報欄には追加枝である「枝E12」、リンク先端点情報欄には接続端点である「終点」を記憶する。そして、ループ情報欄は「なし」とする。そして、追加された枝E12の接続点である終点N12のリンク先としては、終点リンク情報欄のリンク先枝識別情報欄に被接続枝の「枝E11」、リンク先端点情報欄に被接続枝E11のループの発生を示していなかった側の端点である「始点」を記憶する。そして、ループ情報欄に「あり」を記憶する。
【0098】
このような枝構造ベクトルデータの編集が行われた後の枝構造ベクトルデータが図17に示す枝構造ベクトルデータ340である。図17に示すように、枝E11の始点リンク情報には何も記憶されておらず、終点リンク情報にはリンク先枝識別情報として「E12」、リンク先枝端点情報として「終点」が記憶されており、枝E11の終点N10が枝E12の終点N10にリンクすることを示している。そして、ループ情報には「なし」が記憶されている。そして、枝E12の始点リンク情報には何も記憶されておらず、終点リンク情報にはリンク先枝識別情報として「E11」、リンク先枝端点情報として「始点」が記憶されており、枝E12の終点N10が枝E11の始点N10にリンクすることを示している。そして、ループ情報には「あり」が記憶されているので、このままリンク先を辿るとループが発生することがわかる。
【0099】
なお、これらのリンク先枝識別情報欄及びリンク先枝端点情報欄の情報を変更する処理を行うCPU101が「ループ接続手段」に相当し、ループ情報欄の情報を変更する処理を行うCPU101が「第二ループ情報制御手段」に相当する。
【0100】
ここで、枝構造ベクトルデータ340から緑色の刺繍糸の刺繍データ443を作成する際の動作について説明する。この刺繍データ443の作成は、刺繍データ作成装置1において刺繍データ作成プログラムを動作させることにより実施される。まず、枝構造ベクトルデータ340から、刺繍を開始させる開始枝の開始点が探索される。これは、全枝からリンク先枝とされていない枝が探索され、その枝の任意の端点が開始点とされる。ここでは、枝E11の終点であるN10を開始点とする。
【0101】
枝E11の始点N10が開始点であるので、まず、枝E11の枝データが読み込まれる。そして、糸色情報が参照され、現在作成している刺繍データ443の糸色である「緑」であるか否かの判断が行われる(この処理を実施するCPU101が「色判断手段」に相当する)。枝E11の糸色情報は「緑」であるので、枝E11の始点N10から終点N10へ走り縫いをする走り縫いデータ4431が作成される(この処理を実施するCPU101が「走り縫いデータ作成制御手段」に相当する)。そして、作成された走り縫いデータ4431の刺繍終了点である枝E11の終点N10のリンク先の情報が、枝E11の終点リンク情報から読み出される。図17に示すように、枝E11の終点N10のリンク先は、枝E12の終点N10である。そこで、枝E12の枝データが読み込まれる。
【0102】
そして、糸色情報が参照され、現在作成している刺繍データ443の糸色である「緑」であるか否かの判断が行われる(この処理を実施するCPU101が「色判断手段」に相当する)。枝E12の糸色情報が「緑」であるので、枝E12の終点N10から始点N11へ走り縫いデータ4432が作成される(この処理を実施するCPU101が「走り縫いデータ作成制御手段」に相当する)。そして、作成された走り縫いデータ4432の刺繍終了点である枝E12の始点N11のリンク先の情報が、枝E12の始点リンク情報から読み出される。枝E12の始点N11のリンク先はないので、枝E12の始点N11から終点N10へ本打ち縫製データ4433が作成される(この処理を実施するCPU101が「縫い方切替制御手段」に相当する)。この時の縫い方はジグザグ縫いである。
【0103】
そして、本打ち縫製データ4433の刺繍終了点である枝E12の終点N10のリンク先情報が、枝E12の終点リンク情報から読み出される。図17に示すように、枝E12の終点N10のリンク先は、枝E11の始点N10であるが、ループ情報が「あり」であるので、このままリンクを辿るとループが発生する。そこで、リンク先の枝E11の始点N10を辿らずに、本打ち縫製データを作成する(この処理を行うCPU101が「折り返し制御手段」に相当する)。そこで、枝E12の終点N10のリンク元が探索される(この処理を行うCPU101が「リンク元探索手段」に相当する)。枝E12の終点N10のリンク元は、図17に示すように枝E11の終点N10である。そこで、枝E11の終点N10から始点N10への本打ち縫製データ4434が作成される。
【0104】
そして、枝E11の終点N10から始点N10への本打ち縫製データ4434が作成されたら、本打ち縫製データ4434の刺繍終了点である枝E11の始点N10から、さらに刺繍データを作成するか否かの判断が行われるが、この点は当該刺繍データの開始点であるので、これ以上刺繍データは作成されない。
【0105】
このような処理により、ループの発生する枝に他の枝が接続されて生成された枝構造ベクトルデータ340からも、無限ループが発生して破綻したり、走り縫いデータや本打ち縫製データが作成されない枝が発生したりすることなく、刺繍データ443を作成することができる。
【0106】
次に、図19乃至図23を参照して、ループの発生する枝を切断する場合の枝構造ベクトルデータ300の編集について説明する。図19は、図16に示したベクトル図441の枝E11上の切断点N13を示したベクトル図456であり、図20は、枝E11の切断後のベクトル図457であり、図21は、枝E11を切断した際の編集途中の枝構造ベクトルデータ351の構成を示す模式図であり、図22は、枝E11の切断後の枝構造ベクトルデータ352の構成を示す模式図であり、図23は、枝構造ベクトルデータ352から作成される刺繍データ453の内容を示す模式図である。
【0107】
枝の切断を行う場合には、ユーザは、枝の切断の指示、切断する枝の切断する点の指定を行う。ここでは、図19に示すように、図16に示したような枝E11及び枝E12で構成される枝構造ベクトルデータ340(図17参照)の枝E11を点N13で切断するという編集を行う場合を考える。なお、そして、枝の切断の指示の入力を受け付けるための編集画面をディスプレイ24に表示させる処理を行うCPU101、編集画面への入力を行うマウス21やキーボード22、及び、編集画面へのマウス21やキーボード22からの入力の受付処理を行うCPU101が「切断枝指定手段」に相当する。
【0108】
点N13で枝E11を切断すると、図20に示すように、枝E11は2つの枝に分割される。つまり、もともとの枝E11の始点N10を始点とし、切断点N13を終点とする新しい枝E11(第一の枝)と、切断点N13を始点とし、もともとの枝E11の終点N10を終点とする新しい枝E13(第二の枝)とに分割される。なお、図20においては、N13を二つの丸で表現しているが、これは枝E11の終点であるN13と、枝E13の始点であるN13とがリンクしていないことを明確にするための表現であり、枝E11の終点と枝E13の始点の実際の座標は同一である。
【0109】
具体的には、枝構造ベクトルデータ340に新しく枝E13の枝データが追加される。そして、枝E11の枝データのベクトルデータ欄において、その終点が切断点N13に変更される。そして、終点リンク情報欄の値はすべて「なし」とされる。そして、枝E13の枝データのベクトルデータ欄において、その始点は切断点N13、終点はもともとの枝E11の終点であるN10とされる。そして、終点リンク情報欄の値はもともとの枝E12の終点リンク情報欄の値が記憶されることとなる。
【0110】
この時点での枝構造ベクトルデータが図21に示す枝構造ベクトルデータ351である。図21に示すように、枝E11の枝データの始点リンク情報欄は、図17に示す枝構造ベクトルデータ340の枝E11の始点リンク情報欄と同様に何も記憶されておらず、終点リンク情報欄にも何も記憶されていない。そして、枝E12の枝データの情報は、図17に示す枝構造ベクトルデータ340の枝E12の内容と同じであり、始点リンク情報欄には何も記憶されておらず、終点リンク情報欄にはリンク先枝識別情報欄には「枝E11」、リンク先端点情報欄には「始点」が記憶されている。そして、ループ情報欄には「あり」が記憶されている。そして、枝E13の枝データの情報は、始点リンク情報欄には何も記憶されておらず、終点リンク情報欄には、図17に示す枝構造ベクトルデータ340の枝E11の終点リンク情報欄と同様、リンク先枝識別情報欄に「E12」、リンク先枝端点情報欄に「終点」が記憶されており、ループ情報欄には「なし」が記憶されている。
【0111】
なお、この新しい枝データを追加し、各枝データのリンク先の情報を記憶する処理を行うCPU101が「分割手段」に相当する。
【0112】
次に、各枝データのループ情報の調整が行われる。そこで、まず開始枝の探索が行われる。これは、全枝からリンク先枝とされていない枝が探索され、その枝の任意の端点が開始点とされる。ここでは、枝E13の始点であるN13を開始点とする。
【0113】
枝E13の始点リンク情報から枝E13の始点N13のリンク先はないことが判る。そこで、枝E13の終点リンク情報から枝E13の終点N10のリンク先を辿ると、図21に示すように、枝E12の終点N10である。そこで、枝E12の終点側リンク情報から枝E12の終点N10のリンク先を辿ると、枝E11の始点N10とされているがループ情報が「あり」であるので、リンク先は辿られない。そこで、枝E12の終点N10の反対側の端点である始点N11のリンク先を見ると、枝E12の始点側リンク情報からリンク先がないことが判り、リンクが途絶えたこととなる。つまり、枝E13からリンクを辿っても、枝E11へは接続していないことが判る。そこで、枝E12の終点側リンク情報欄のループ情報欄を「あり」から「なし」に変更する。この変更後の枝構造ベクトルデータが図22に示す枝構造ベクトルデータ352である。
【0114】
なお、このようなループ情報の調整を行うCPU101が「第一ループ情報制御手段」に相当する。
【0115】
ここで、枝構造ベクトルデータ352から緑色の刺繍糸の刺繍データ453を作成する際の動作について説明する。この刺繍データ453の作成は、刺繍データ作成装置1において刺繍データ作成プログラムを動作させることにより実施される。まず、枝構造ベクトルデータ352から、刺繍を開始させる開始枝の開始点が探索される。これは、全枝からリンク先枝とされていない枝が探索され、その枝の任意の端点が開始点とされる。ここでは、枝E13の始点N13を開始点とする。
【0116】
枝E13の始点N13が開始点であるので、まず、枝E13の枝データが読み込まれる。そして、糸色情報が参照され、現在作成している刺繍データ453の糸色である「緑」であるか否かの判断が行われる(この処理を実施するCPU101が「色判断手段」に相当する)。枝E13の糸色情報は「緑」であるので、枝E13の始点N13から終点N10へ走り縫いをする走り縫いデータ4531が作成される(この処理を実施するCPU101が「走り縫いデータ作成制御手段」に相当する)。そして、作成された走り縫いデータ4531の刺繍終了点である枝E13の終点N10のリンク先の情報が、枝E13の終点リンク情報から読み出される。図22に示すように、枝E13の終点N10のリンク先は、枝E12の終点N10である。そこで、枝E12の枝データが読み込まれる。
【0117】
そして、糸色情報が参照され、現在作成している刺繍データ453の糸色である「緑」であるか否かの判断が行われる(この処理を実施するCPU101が「色判断手段」に相当する)。枝E12の糸色情報が「緑」であるので、枝E12の終点N10から始点N11へ走り縫いデータ4532が作成される(この処理を実施するCPU101が「走り縫いデータ作成制御手段」に相当する)。そして、作成された走り縫いデータ4532の刺繍終了点である枝E12の始点N11のリンク先の情報が、枝E12の始点リンク情報から読み出される。枝E12の始点N11のリンク先はないので、枝E12の始点N11から終点N10へ本打ち縫製データ4533が作成される(この処理を実施するCPU101が「縫い方切替制御手段」に相当する)。この時の縫い方はジグザグ縫いである。
【0118】
そして、本打ち縫製データ4533の刺繍終了点である枝E12の終点N10のリンク先情報が、枝E12の終点リンク情報から読み出される。図22に示すように、枝E12の終点N10のリンク先は、枝E11の始点N10である。ここで、ループ情報は「なし」に変更されているので、リンクを辿ることができる。そこで、リンク先の枝E11の始点N10から終点N13への走り縫いデータ4534が作成される。
【0119】
そして、枝E11の終点N13のリンク先が、枝E11の終点リンク情報から読み出される。図22に示すように、枝E11の終点N13のリンク先はない。そこで、枝E11の終点N13から始点N10への本打ち縫製データ4535が作成される(この処理を実施するCPU101が「縫い方切替制御手段」に相当する)。そして、枝E11の始点N10のリンク元が探索される(この処理を行うCPU101が「リンク元探索手段」に相当する)。枝E11の始点N10のリンク元は、図22に示すように枝E12の終点N10であるが、枝E12の本打ち縫製データ4533はすでに作成されているので、さらに枝E12の終点N10のリンク元が探索される。枝E12の終点N10のリンク元は、図22に示すように枝E13の終点N10である。枝E13の本打ち縫製データはまだ作成されていないので、枝E13の終点N10から始点N13へ本打ち縫製データ4536が作成される(このようにリンク元を探索し、糸色が作成中の刺繍データの糸色と同じであれば本打ち縫製データを作成する処理を実施するCPU101が「本打ち縫製データ作成制御手段」に相当する)。
【0120】
そして、枝E13の終点N10から始点N13へ本打ち縫製データ4536が作成されたら、本打ち縫製データ4536の刺繍終了点である枝E13の始点N13から、さらに刺繍データを作成するか否かの判断が行われるが、この点は当該刺繍データの開始点であるので、これ以上刺繍データは作成されない。このような処理により、ループの発生する枝を切断した枝構造ベクトルデータ352からも、無限ループが発生して破綻したり、リンクが繋がらなくなったりすることがなく、走り縫いデータや本打ち縫製データが作成されない枝が発生することなく刺繍データ453を作成することができる。
【0121】
以上のように、糸色の異なる枝を1つの枝構造ベクトルデータ300で表現することができ、さらに、ループの発生する枝も同じ枝構造ベクトルデータ300で表現することができる。したがって、枝構造ベクトルデータ300で表現される枝をまとめて、移動させたり、縮小させたり、拡大させたりする編集を行う場合に、糸色の異なる枝を一度に処理することができ、ループの発生する枝も一度に処理することができる。
【0122】
なお、本発明の枝構造ベクトルデータ構造、枝構造ベクトルデータ編集装置、刺繍データ作成装置、枝構造ベクトルデータ編集プログラム、刺繍データ作成プログラム、枝構造ベクトルデータ編集プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、刺繍データ作成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、及び、枝構造ベクトルデータ編集プログラム及び刺繍データ作成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0123】
上記実施の形態では、枝構造ベクトルデータ300にループ情報も糸色情報も備え、糸色の異なる枝もループを発生する枝も1つの枝構造ベクトルデータ300で表現している。しかしながら、糸色情報は備えずにループ情報のみを備えて、ループの発生する枝とループの発生しない枝とを同じ枝構造ベクトルデータで表現可能とするのみで、糸色の異なる枝は別々の枝構造ベクトルデータで表現するようにしてもよい。また、ループ情報は備えずに糸色情報のみを備えて、異なる糸色の枝を同じ枝構造ベクトルデータで表現可能とするのみで、ループの発生を示す枝は表現しないようにしてもよい。
【0124】
また、上記実施の形態では、簡単のために糸色として「緑」、「赤」の色を用いる枝構造ベクトルデータ320を例に挙げたが、糸の色はその他「ピンク」、「黒」、「白」、「青」、「水色」、「黄」、「茶」など各種の色を用いてもよいことは言うまでもない。また、縫い方として「ジグザグ縫い」のみを例に挙げたが、その他飾り縫いや種々縫い目の長さの直線縫いなど種々の縫い方を用いてもよいことは言うまでもない。
【0125】
また、枝構造ベクトルデータ編集プログラム及び刺繍データ作成プログラムはCD−ROM114に記憶されているが、この記録媒体はCD−ROMに限らず、フレキシブルディスクやDVDなど他の記録媒体であってもよいことは言うまでもない。また、各々別の記録媒体に記録されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】刺繍ミシン3の外観図である。
【図2】刺繍データ作成装置1の物理的構成を示す全体構成図である。
【図3】刺繍データ作成装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】情報関係図である。
【図5】枝構造ベクトルデータ310により作成される刺繍データ400により刺繍される刺繍結果319を示す刺繍結果図である。
【図6】枝構造ベクトルデータ310を図式化したベクトル図411である。
【図7】枝構造ベクトルデータ310の構成を示す模式図である。
【図8】糸色が緑色の刺繍データ413の内容を示す模式図である。
【図9】枝構造ベクトルデータ320を図式化したベクトル図421である。
【図10】枝構造ベクトルデータ320の構成を示す模式図である。
【図11】糸色が緑色の刺繍データ423の内容を示す模式図である。
【図12】糸色が赤色の刺繍データ422の内容を示す模式図である。
【図13】枝E11を示したベクトル図436及び枝E12を示したベクトル図437である。
【図14】枝E11の枝構造ベクトルデータ331の構成を示す模式図である。
【図15】枝E12の枝構造ベクトルデータ332の構成を示す模式図である。
【図16】枝E11,E12を接続した後のベクトル図441である。
【図17】枝E11,E12を接続した後の枝構造ベクトルデータ340の構成を示す模式図である。
【図18】枝構造ベクトルデータ340から作成される刺繍データ443の内容を示す模式図である。
【図19】図16に示したベクトル図441の枝E11上の切断点N13を示したベクトル図456である。
【図20】枝E11の切断後のベクトル図457である。
【図21】枝E11を切断した際の編集途中の枝構造ベクトルデータ351の構成を示す模式図である。
【図22】枝E11の切断後の枝構造ベクトルデータ352の構成を示す模式図である。
【図23】枝構造ベクトルデータ352から作成される刺繍データ453の内容を示す模式図である。
【図24】従来の木構造データ999を図式化した図である。
【図25】従来の木構造データ996,997,996を図式化した図である。
【符号の説明】
【0127】
1 刺繍データ作成装置
3 刺繍ミシン
21 マウス
22 キーボード
24 ディスプレイ
34 縫い針
100 画像データ
101 CPU
120 ハードディスク装置
123 枝構造ベクトルデータ記憶エリア
124 刺繍データ記憶エリア
125 プログラム記憶エリア
300,310,320,331,332,340,351,352 枝構造ベクトルデータ
319 刺繍結果
400,413,422,423,443,453 刺繍データ
4131,4132,4134,4221,4231,4232,4431,4432,4531,4532,4534 走り縫いデータ
4133,4135,4136,4222,4233,4234,4433,4434,4533,4535,4536 本打ち縫製データ
E1,E2,E3,E11,E12,E13 枝
K1,K2,K3 刺繍軌跡
N0,N1,N2,N3,N10,N11,N12,N13 点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刺繍図柄を構成する線画情報に基づいて作成され、刺繍ミシンの針の運びを示す刺繍データをコンピュータで作成する基となる枝構造ベクトルデータのデータ構造である枝構造ベクトルデータ構造であって、
2つの端点を結んだ刺繍の経路である枝ごとに、当該枝を識別する識別情報と、当該枝の一方の端点である始点の位置と他方の端点である終点の位置とにより当該枝の方向を示すベクトルデータと、前記端点にリンクしている他の枝であるリンク先枝に関するリンク情報と、当該枝が刺繍される際の縫い方を示す縫い方情報と、当該枝が刺繍される際の縫い糸の色を示す糸色情報とを少なくとも備えた少なくとも1つの枝データで構成されており、
前記識別情報は、前記枝を特定するために使用され、
前記ベクトルデータは、走り縫いを行うことを示す前記刺繍データである走り縫いデータを作成する際、及び、走り縫いが行われた位置に前記縫い方情報に指定されている縫い方で本打ち縫いを行うことを示す前記刺繍データである本打ち縫製データを作成する際に縫い位置を特定するために使用され、
前記リンク情報は、前記刺繍データを作成する際に次にデータを作成する枝を特定するために使用され、
前記糸色情報は、前記リンク情報で指定されている枝の刺繍データを作成するか否かの判断に使用されることを特徴とする枝構造ベクトルデータ構造。
【請求項2】
刺繍図柄を構成する線画情報に基づいて作成され、刺繍ミシンの針の運びを示す刺繍データをコンピュータで作成する基となる枝構造ベクトルデータのデータ構造である枝構造ベクトルデータ構造であって、
2つの端点を結んだ刺繍の経路である枝ごとに、当該枝を識別する識別情報と、当該枝の一方の端点である始点の位置と他方の端点である終点の位置とにより当該枝の方向を示すベクトルデータと、前記端点にリンクしている他の枝であるリンク先枝に関するリンク情報と、当該枝が刺繍される際の縫い方を示す縫い方情報と、前記端点のリンク先を辿ると当該端点に戻るループを発生させるものであるか否かを示すループ情報とを少なくとも備えた少なくとも1つの枝データで構成されており、
前記識別情報は、前記枝を特定するために使用され、
前記ベクトルデータは、走り縫いを行うことを示す前記刺繍データである走り縫いデータを作成する際、及び、走り縫いが行われた位置に前記縫い方情報に指定されている縫い方で本打ち縫いを行うことを示す前記刺繍データである本打ち縫製データを作成する際に縫い位置を特定するために使用され、
前記リンク情報は、前記刺繍データを作成する際に次にデータを作成する枝を特定するために使用され、
前記ループ情報は、前記リンク情報で指定されている枝の走り縫いデータを作成するか否かの判断に使用されることを特徴とする枝構造ベクトルデータ構造。
【請求項3】
前記枝データは、前記枝が刺繍される際の縫い糸の色を示す糸色情報を備えており、
前記糸色情報は、前記リンク情報で指定されている枝の刺繍データを作成するか否かの判断に使用されることを特徴とする請求項2に記載の枝構造ベクトルデータ構造。
【請求項4】
前記リンク情報は、2つの端点各々について、リンク先枝を識別するリンク先枝識別情報と、当該リンク先枝のリンク側の端点を示すリンク先枝端点情報とを備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の枝構造ベクトルデータ構造。
【請求項5】
刺繍図柄を構成する線画情報に基づいて作成された枝構造ベクトルデータを編集するベクトルデータ編集装置であって、
画像を表示する表示手段と、
2つの端点を結んだ刺繍の経路である枝ごとに、当該枝を識別する識別情報と、当該枝の一方の端点である始点の位置と他方の端点である終点の位置とにより当該枝の方向を示すベクトルデータと、前記端点にリンクしている他の枝であるリンク先枝に関するリンク情報と、当該枝が刺繍される際の縫い方を示す縫い方情報と、当該枝が刺繍される際の縫い糸の色を示す糸色情報とを少なくとも備えた少なくとも1つの枝データで構成されたデータ構造の枝構造ベクトルデータを記憶する枝構造ベクトルデータ記憶手段と、
当該枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータの示す刺繍結果の模式図を前記表示手段に表示する表示制御手段と、
前記刺繍結果を構成する枝に対して、枝の追加、枝の削除、枝の移動、枝の伸縮、枝の回転、枝の切断、他の枝への枝の接続、枝の色の変更、枝の縫い方の変更、枝の端点の移動、2つの端点を結ぶ刺繍の経路の変更、枝の複製のうちの少なくとも1つの編集作業を指示する編集指示手段と、
当該編集指示手段の指示にしたがって前記枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータを編集する枝構造ベクトルデータ編集手段と
を備えたことを特徴とする枝構造ベクトルデータ編集装置。
【請求項6】
刺繍図柄を構成する線画情報に基づいて作成された枝構造ベクトルデータを編集するベクトルデータ編集装置であって、
画像を表示する表示手段と、
2つの端点を結んだ刺繍の経路である枝ごとに、当該枝を識別する識別情報と、当該枝の一方の端点である始点の位置と他方の端点である終点の位置とにより当該枝の方向を示すベクトルデータと、前記端点にリンクしている他の枝であるリンク先枝に関するリンク情報と、当該枝が刺繍される際の縫い方を示す縫い方情報と、前記端点のリンク先を辿ると当該端点に戻るループを発生させるものであるか否かを示すループ情報とを少なくとも備えた少なくとも1つの枝データで構成されたデータ構造の枝構造ベクトルデータを記憶する枝構造ベクトルデータ記憶手段と、
当該枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータの示す刺繍結果の模式図を前記表示手段に表示する表示制御手段と、
前記刺繍結果を構成する枝に対して、枝の追加、枝の削除、枝の移動、枝の伸縮、枝の回転、枝の切断、他の枝への枝の接続、枝の色の変更、枝の縫い方の変更、枝の端点の移動、2つの端点を結ぶ刺繍の経路の変更、枝の複製のうちの少なくとも1つの編集作業を指示する編集指示手段と、
当該編集指示手段の指示にしたがって前記枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータを編集する枝構造ベクトルデータ編集手段と
を備えたことを特徴とする枝構造ベクトルデータ編集装置。
【請求項7】
前記枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータの枝データは、前記枝が刺繍される際の縫い糸の色を示す糸色情報を備えていることを特徴とする請求項6に記載の枝構造ベクトルデータ編集装置。
【請求項8】
前記編集指示手段は、
前記枝を刺繍する糸の色を指定する色指定手段を備え、
前記ベクトルデータ編集手段は、
前記糸色情報に示す色を前記色指定手段により指定された色に変更する糸色情報変更手段を備え、
前記色指定手段により糸の色が指定された際には、リンク情報の変更は行わないことを特徴とする請求項5又は7に記載の枝構造ベクトルデータ編集装置。
【請求項9】
前記編集指示手段は、
前記枝を切断する切断枝を指定する切断枝指定手段を備え、
前記ベクトルデータ編集手段は、
当該切断枝指定手段により指定された切断枝の切断点を指定する切断点指定手段と、
前記切断枝の枝データを、当該切断枝の始点の端点を始点の端点とし、切断点指定手段により指定された切断点の当該切断枝上の切断点を終点の端点とした第一の枝の枝データと、前記切断点を始点の端点とし、前記切断枝の終点の端点を終点の端点とした第二の枝の枝データとに分割する分割手段と、
前記切断枝のループ情報がループの発生を示している場合に、いずれの枝データのいずれの端点のループ情報もループの発生を示さないものとする第一ループ情報制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の枝構造ベクトルデータ編集装置。
【請求項10】
前記編集指示手段は、
前記ベクトルデータに追加する追加枝を指定する追加枝指定手段と、
当該追加枝指定手段により指定された追加枝を接続させる被接続枝を指定する被接続枝指定手段とを備え、
前記ベクトルデータ編集手段は、
前記被接続枝のループ情報がループの発生を示している場合、ループの発生を示すループ情報を持つ側の端点であるループ端点のリンク先端点を前記追加枝の接続側の端点である追加端点とし、当該追加端点のリンク先端点を前記被接続枝のループ端点でない側の端点とするループ接続手段と、
前記ループ端点のループ情報をループの発生を示さないものとし、前記追加端点のループ情報をループの発生を示すものとする第二ループ情報制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載の枝構造ベクトルデータ編集装置。
【請求項11】
請求項5、7乃至10のいずれかに記載の枝構造ベクトルデータ編集装置により編集され、前記枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータに基づいて、刺繍ミシンの針の運びを示す刺繍データを作成する刺繍データ作成手段を備えた刺繍データ作成装置であって、
前記刺繍データ作成手段は、
前記ベクトルデータの示す始点と終点との間に走り縫いを行うことを示す刺繍データである走り縫いデータを作成する走り縫いデータ作成手段と、
リンク情報の示すリンク先枝の糸色情報の示す色が、現在作成している刺繍データの糸色と同じ色であるか否かを判断する色判断手段と、
前記走り縫いデータの縫い終わり側の端点の示すリンク先枝の糸色情報の示す色が、前記色判断手段により現在作成している刺繍データの糸色と同じ色であると判断される枝が見つかるまで、前記リンク先枝を辿り、当該同じ色であると判断されたリンク先枝の走り縫いデータを前記走り縫いデータ作成手段により作成する走り縫いデータ作成制御手段と
を備えたことを特徴とする刺繍データ作成装置。
【請求項12】
前記刺繍データ作成手段は、
前記走り縫いが行われた位置に前記縫い方情報に指定されている縫い方で本打ち縫いを行うことを示す刺繍データを作成する本打ち縫製データ作成手段と、
前記走り縫いデータ作成手段により作成された走り縫いデータの縫い終わり側に対応した端点のリンク情報がリンク先枝を示していない場合に、縫い終わり側に対応した端点から他方の端点へ前記本打ち縫製データ作成手段により本打ち縫製データを作成する縫い方切替制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項11に記載の刺繍データ作成装置。
【請求項13】
前記刺繍データ作成手段は、
前記本打ち縫製データの縫い終わり側に対応した端点をリンク先として指定しているリンク情報である元リンク情報を探索するリンク元探索手段と、
前記リンク元探索手段により検索された元リンク情報を有する枝データの糸色情報の示す色が、前記色判断手段により現在作成している刺繍データの糸色と同じ色であると判断されるまで、前記元リンク情報を辿り、当該同じ色であると判断された枝の前記元リンク情報のリンク先枝識別情報の示す枝を当該元リンク情報のリンク先枝端点情報の示す端点から他方の端点へ縫い進める前記本打ち縫製データを前記本打ち縫製データ作成手段により作成する本打ち縫製データ作成制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項11又は12に記載の刺繍データ作成装置。
【請求項14】
請求項6乃至10のいずれかに記載の枝構造ベクトルデータ編集装置により編集され、前記枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータに基づいて、刺繍ミシンの針の運びを示す刺繍データを作成する刺繍データ作成手段を備えた刺繍データ作成装置であって、
前記刺繍データ作成手段は、
前記ベクトルデータの示す始点と終点との間に走り縫いを行うことを示す刺繍データである走り縫いデータを作成する走り縫いデータ作成手段と、
前記走り縫いが行われた位置に前記縫い方情報に指定されている縫い方で本打ち縫いを行うことを示す刺繍データを作成する本打ち縫製データ作成手段と、
前記走り縫いデータ又は前記本打ち縫製データの縫い終わり側に対応した端点のループ情報がループの発生を示す場合に、当該端点の前記リンク先枝の前記走り縫いデータを前記走り縫いデータ作成手段により作成せずに、前記走り縫いデータの終点の端点から他方の端点への本打ち縫製データを前記本打ち縫製データ作成手段により作成する折り返し制御手段と
を備えたことを特徴とする刺繍データ作成装置。
【請求項15】
請求項5乃至10のいずれかに記載の枝構造ベクトルデータ編集装置の各種処理手段としてコンピュータを機能させるための枝構造ベクトルデータ編集プログラム。
【請求項16】
請求項11乃至14のいずれかに記載の刺繍データ作成装置の各種処理手段としてコンピュータを機能させるための刺繍データ作成プログラム。
【請求項17】
請求項15に記載の枝構造ベクトルデータ編集プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項18】
請求項16に記載の刺繍データ作成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項19】
請求項15に記載の枝構造ベクトルデータ編集プログラム及び請求項16に記載の刺繍データ作成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項1】
刺繍図柄を構成する線画情報に基づいて作成され、刺繍ミシンの針の運びを示す刺繍データをコンピュータで作成する基となる枝構造ベクトルデータのデータ構造である枝構造ベクトルデータ構造であって、
2つの端点を結んだ刺繍の経路である枝ごとに、当該枝を識別する識別情報と、当該枝の一方の端点である始点の位置と他方の端点である終点の位置とにより当該枝の方向を示すベクトルデータと、前記端点にリンクしている他の枝であるリンク先枝に関するリンク情報と、当該枝が刺繍される際の縫い方を示す縫い方情報と、当該枝が刺繍される際の縫い糸の色を示す糸色情報とを少なくとも備えた少なくとも1つの枝データで構成されており、
前記識別情報は、前記枝を特定するために使用され、
前記ベクトルデータは、走り縫いを行うことを示す前記刺繍データである走り縫いデータを作成する際、及び、走り縫いが行われた位置に前記縫い方情報に指定されている縫い方で本打ち縫いを行うことを示す前記刺繍データである本打ち縫製データを作成する際に縫い位置を特定するために使用され、
前記リンク情報は、前記刺繍データを作成する際に次にデータを作成する枝を特定するために使用され、
前記糸色情報は、前記リンク情報で指定されている枝の刺繍データを作成するか否かの判断に使用されることを特徴とする枝構造ベクトルデータ構造。
【請求項2】
刺繍図柄を構成する線画情報に基づいて作成され、刺繍ミシンの針の運びを示す刺繍データをコンピュータで作成する基となる枝構造ベクトルデータのデータ構造である枝構造ベクトルデータ構造であって、
2つの端点を結んだ刺繍の経路である枝ごとに、当該枝を識別する識別情報と、当該枝の一方の端点である始点の位置と他方の端点である終点の位置とにより当該枝の方向を示すベクトルデータと、前記端点にリンクしている他の枝であるリンク先枝に関するリンク情報と、当該枝が刺繍される際の縫い方を示す縫い方情報と、前記端点のリンク先を辿ると当該端点に戻るループを発生させるものであるか否かを示すループ情報とを少なくとも備えた少なくとも1つの枝データで構成されており、
前記識別情報は、前記枝を特定するために使用され、
前記ベクトルデータは、走り縫いを行うことを示す前記刺繍データである走り縫いデータを作成する際、及び、走り縫いが行われた位置に前記縫い方情報に指定されている縫い方で本打ち縫いを行うことを示す前記刺繍データである本打ち縫製データを作成する際に縫い位置を特定するために使用され、
前記リンク情報は、前記刺繍データを作成する際に次にデータを作成する枝を特定するために使用され、
前記ループ情報は、前記リンク情報で指定されている枝の走り縫いデータを作成するか否かの判断に使用されることを特徴とする枝構造ベクトルデータ構造。
【請求項3】
前記枝データは、前記枝が刺繍される際の縫い糸の色を示す糸色情報を備えており、
前記糸色情報は、前記リンク情報で指定されている枝の刺繍データを作成するか否かの判断に使用されることを特徴とする請求項2に記載の枝構造ベクトルデータ構造。
【請求項4】
前記リンク情報は、2つの端点各々について、リンク先枝を識別するリンク先枝識別情報と、当該リンク先枝のリンク側の端点を示すリンク先枝端点情報とを備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の枝構造ベクトルデータ構造。
【請求項5】
刺繍図柄を構成する線画情報に基づいて作成された枝構造ベクトルデータを編集するベクトルデータ編集装置であって、
画像を表示する表示手段と、
2つの端点を結んだ刺繍の経路である枝ごとに、当該枝を識別する識別情報と、当該枝の一方の端点である始点の位置と他方の端点である終点の位置とにより当該枝の方向を示すベクトルデータと、前記端点にリンクしている他の枝であるリンク先枝に関するリンク情報と、当該枝が刺繍される際の縫い方を示す縫い方情報と、当該枝が刺繍される際の縫い糸の色を示す糸色情報とを少なくとも備えた少なくとも1つの枝データで構成されたデータ構造の枝構造ベクトルデータを記憶する枝構造ベクトルデータ記憶手段と、
当該枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータの示す刺繍結果の模式図を前記表示手段に表示する表示制御手段と、
前記刺繍結果を構成する枝に対して、枝の追加、枝の削除、枝の移動、枝の伸縮、枝の回転、枝の切断、他の枝への枝の接続、枝の色の変更、枝の縫い方の変更、枝の端点の移動、2つの端点を結ぶ刺繍の経路の変更、枝の複製のうちの少なくとも1つの編集作業を指示する編集指示手段と、
当該編集指示手段の指示にしたがって前記枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータを編集する枝構造ベクトルデータ編集手段と
を備えたことを特徴とする枝構造ベクトルデータ編集装置。
【請求項6】
刺繍図柄を構成する線画情報に基づいて作成された枝構造ベクトルデータを編集するベクトルデータ編集装置であって、
画像を表示する表示手段と、
2つの端点を結んだ刺繍の経路である枝ごとに、当該枝を識別する識別情報と、当該枝の一方の端点である始点の位置と他方の端点である終点の位置とにより当該枝の方向を示すベクトルデータと、前記端点にリンクしている他の枝であるリンク先枝に関するリンク情報と、当該枝が刺繍される際の縫い方を示す縫い方情報と、前記端点のリンク先を辿ると当該端点に戻るループを発生させるものであるか否かを示すループ情報とを少なくとも備えた少なくとも1つの枝データで構成されたデータ構造の枝構造ベクトルデータを記憶する枝構造ベクトルデータ記憶手段と、
当該枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータの示す刺繍結果の模式図を前記表示手段に表示する表示制御手段と、
前記刺繍結果を構成する枝に対して、枝の追加、枝の削除、枝の移動、枝の伸縮、枝の回転、枝の切断、他の枝への枝の接続、枝の色の変更、枝の縫い方の変更、枝の端点の移動、2つの端点を結ぶ刺繍の経路の変更、枝の複製のうちの少なくとも1つの編集作業を指示する編集指示手段と、
当該編集指示手段の指示にしたがって前記枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータを編集する枝構造ベクトルデータ編集手段と
を備えたことを特徴とする枝構造ベクトルデータ編集装置。
【請求項7】
前記枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータの枝データは、前記枝が刺繍される際の縫い糸の色を示す糸色情報を備えていることを特徴とする請求項6に記載の枝構造ベクトルデータ編集装置。
【請求項8】
前記編集指示手段は、
前記枝を刺繍する糸の色を指定する色指定手段を備え、
前記ベクトルデータ編集手段は、
前記糸色情報に示す色を前記色指定手段により指定された色に変更する糸色情報変更手段を備え、
前記色指定手段により糸の色が指定された際には、リンク情報の変更は行わないことを特徴とする請求項5又は7に記載の枝構造ベクトルデータ編集装置。
【請求項9】
前記編集指示手段は、
前記枝を切断する切断枝を指定する切断枝指定手段を備え、
前記ベクトルデータ編集手段は、
当該切断枝指定手段により指定された切断枝の切断点を指定する切断点指定手段と、
前記切断枝の枝データを、当該切断枝の始点の端点を始点の端点とし、切断点指定手段により指定された切断点の当該切断枝上の切断点を終点の端点とした第一の枝の枝データと、前記切断点を始点の端点とし、前記切断枝の終点の端点を終点の端点とした第二の枝の枝データとに分割する分割手段と、
前記切断枝のループ情報がループの発生を示している場合に、いずれの枝データのいずれの端点のループ情報もループの発生を示さないものとする第一ループ情報制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の枝構造ベクトルデータ編集装置。
【請求項10】
前記編集指示手段は、
前記ベクトルデータに追加する追加枝を指定する追加枝指定手段と、
当該追加枝指定手段により指定された追加枝を接続させる被接続枝を指定する被接続枝指定手段とを備え、
前記ベクトルデータ編集手段は、
前記被接続枝のループ情報がループの発生を示している場合、ループの発生を示すループ情報を持つ側の端点であるループ端点のリンク先端点を前記追加枝の接続側の端点である追加端点とし、当該追加端点のリンク先端点を前記被接続枝のループ端点でない側の端点とするループ接続手段と、
前記ループ端点のループ情報をループの発生を示さないものとし、前記追加端点のループ情報をループの発生を示すものとする第二ループ情報制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載の枝構造ベクトルデータ編集装置。
【請求項11】
請求項5、7乃至10のいずれかに記載の枝構造ベクトルデータ編集装置により編集され、前記枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータに基づいて、刺繍ミシンの針の運びを示す刺繍データを作成する刺繍データ作成手段を備えた刺繍データ作成装置であって、
前記刺繍データ作成手段は、
前記ベクトルデータの示す始点と終点との間に走り縫いを行うことを示す刺繍データである走り縫いデータを作成する走り縫いデータ作成手段と、
リンク情報の示すリンク先枝の糸色情報の示す色が、現在作成している刺繍データの糸色と同じ色であるか否かを判断する色判断手段と、
前記走り縫いデータの縫い終わり側の端点の示すリンク先枝の糸色情報の示す色が、前記色判断手段により現在作成している刺繍データの糸色と同じ色であると判断される枝が見つかるまで、前記リンク先枝を辿り、当該同じ色であると判断されたリンク先枝の走り縫いデータを前記走り縫いデータ作成手段により作成する走り縫いデータ作成制御手段と
を備えたことを特徴とする刺繍データ作成装置。
【請求項12】
前記刺繍データ作成手段は、
前記走り縫いが行われた位置に前記縫い方情報に指定されている縫い方で本打ち縫いを行うことを示す刺繍データを作成する本打ち縫製データ作成手段と、
前記走り縫いデータ作成手段により作成された走り縫いデータの縫い終わり側に対応した端点のリンク情報がリンク先枝を示していない場合に、縫い終わり側に対応した端点から他方の端点へ前記本打ち縫製データ作成手段により本打ち縫製データを作成する縫い方切替制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項11に記載の刺繍データ作成装置。
【請求項13】
前記刺繍データ作成手段は、
前記本打ち縫製データの縫い終わり側に対応した端点をリンク先として指定しているリンク情報である元リンク情報を探索するリンク元探索手段と、
前記リンク元探索手段により検索された元リンク情報を有する枝データの糸色情報の示す色が、前記色判断手段により現在作成している刺繍データの糸色と同じ色であると判断されるまで、前記元リンク情報を辿り、当該同じ色であると判断された枝の前記元リンク情報のリンク先枝識別情報の示す枝を当該元リンク情報のリンク先枝端点情報の示す端点から他方の端点へ縫い進める前記本打ち縫製データを前記本打ち縫製データ作成手段により作成する本打ち縫製データ作成制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項11又は12に記載の刺繍データ作成装置。
【請求項14】
請求項6乃至10のいずれかに記載の枝構造ベクトルデータ編集装置により編集され、前記枝構造ベクトルデータ記憶手段に記憶されている枝構造ベクトルデータに基づいて、刺繍ミシンの針の運びを示す刺繍データを作成する刺繍データ作成手段を備えた刺繍データ作成装置であって、
前記刺繍データ作成手段は、
前記ベクトルデータの示す始点と終点との間に走り縫いを行うことを示す刺繍データである走り縫いデータを作成する走り縫いデータ作成手段と、
前記走り縫いが行われた位置に前記縫い方情報に指定されている縫い方で本打ち縫いを行うことを示す刺繍データを作成する本打ち縫製データ作成手段と、
前記走り縫いデータ又は前記本打ち縫製データの縫い終わり側に対応した端点のループ情報がループの発生を示す場合に、当該端点の前記リンク先枝の前記走り縫いデータを前記走り縫いデータ作成手段により作成せずに、前記走り縫いデータの終点の端点から他方の端点への本打ち縫製データを前記本打ち縫製データ作成手段により作成する折り返し制御手段と
を備えたことを特徴とする刺繍データ作成装置。
【請求項15】
請求項5乃至10のいずれかに記載の枝構造ベクトルデータ編集装置の各種処理手段としてコンピュータを機能させるための枝構造ベクトルデータ編集プログラム。
【請求項16】
請求項11乃至14のいずれかに記載の刺繍データ作成装置の各種処理手段としてコンピュータを機能させるための刺繍データ作成プログラム。
【請求項17】
請求項15に記載の枝構造ベクトルデータ編集プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項18】
請求項16に記載の刺繍データ作成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項19】
請求項15に記載の枝構造ベクトルデータ編集プログラム及び請求項16に記載の刺繍データ作成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2007−259879(P2007−259879A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−84955(P2006−84955)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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