説明

柔軟な半導体デバイス及び識別ラベル

集積回路(5)と、その集積回路(5)の相互接続構造に組み込まれ、又は直接結合されるアンテナ(6)とを備える柔軟なデバイス(100)が与えられる。相互接続構造は、アクティブ領域の外側に広がる。電気的に絶縁する又は誘電性のある層(4)がアンテナ(6)と集積回路(5)との両方に対する支持層として存在する。基板(10)は、集積回路(5)のアクティブ領域(10A)の外側の非シリコン領域(10B)で除去される。この除去は、単結晶シリコンの基板の使用に結び付けられることができる。柔軟なデバイスは、識別ラベル及びセキュリティペーパへの一体化にとても適しており、一時的に付けられたキャリア基板を用いて製造されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板と、半導体基板の表面に規定され、相互接続構造における所望のパターンに従って相互接続される複数の半導体素子を備える集積回路とを有する柔軟な半導体デバイスに関する。
【0002】
本発明は、また、柔軟な半導体デバイスを有するセキュリティペーパ(security paper)、及びキャリアと柔軟な半導体デバイスとを有する識別ラベルに関する。
【0003】
本発明は、更に、リーダ(reader:読み取り機)と少なくとも1つの柔軟な半導体デバイスとの間の通信方法に関する。
【0004】
本発明は、更に、柔軟な半導体デバイスの製造方法に関し、それは、
基板と、相互接続構造における所望のパターンに従い相互接続される複数の半導体素子と共に与えられる集積回路を有する半導体デバイスであって、そのデバイスは第1の面と、反対にある第2の面とを持ち、第1の面に相互接続構造が存在し、第2の面に基板が存在する、その半導体デバイスを少なくとも1つ与えるステップと、
そのデバイスを柔軟にするために、デバイスの第2の面から基板を薄くするステップとを有する。
【背景技術】
【0005】
このような柔軟なデバイス、このようなラベル、及びこのような製造方法は、特許文献1により知られている。知られているデバイスは、いわゆるシリコン・オン・インシュレータ(SOI)基板に規定される集積回路である。SOI基板は、その一番上にある絶縁層とシリコン層とだけが維持されるようにするため、集積回路の規定の後薄くされる。結果として、デバイスはとても薄いものとなり、例えば5から10マイクロメートルとなり、そして柔軟にされる。その後、柔軟な接着剤により、それがカード基板の間にあるような構成で接着される。集積回路は、その中にボンドパッドを用いて与えられ、導電インクによりカード基板上の配線に接続される。この導電インクは、カード基板上に集積回路を組み立てた後、その1つにプリントされる。配線は、例えば、データ及びエネルギーの送受信に使用されるコイルを有する。
【特許文献1】米国特許番号6,291,877 A号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
その知られているデバイスの不利な点は、結果として生じる識別ラベルが、低周波数での使用に限定されるということである。導電インクは、高インピーダンスの軌道(track)を形成し、それは高周波数においては特に不利になる。その軌道は、導電インクを用いて得られるプリンティングにおける解像度の限界から、簡単には短くすることができない。原理上は、ゾルゲル法を用いた金属のプリンティングが代替手段である。しかしながら、このような金属へのゾルゲル前駆体の転換温度(conversion temperature)は、カード基板の選択を狭めてしまう。
【0007】
こうして、本発明の最初の目的は、冒頭に述べたような種類の、つまり、配線及び接続技術が、データ及びエネルギーの送受信用の周波数を限定することのない柔軟なデバイスを提供することにある。
【0008】
本発明の第2の目的は、このような柔軟なデバイスを有する識別ラベルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
最初の目的は、半導体基板がアクティブ領域において横方向に拡張し;電気的に絶縁する物質の支持層とアンテナとが存在することにより達成される。アンテナは、その支持層に隣接する電気的に導電性のある層において、アクティブ領域の外側に横方向に規定され、電気的に相互接続構造に接続される。半導体基板は、アンテナと集積回路との間の非基板領域にはない。
【0010】
第2の目的は、この柔軟なデバイスを実装することにより識別ラベルにおいて達成される。組み込みアンテナを提供することは、カード基板への接続の必要性を取り去る。こうして、導電インクは全く必要とされない。
【0011】
本発明の識別ラベルの有利な点は、組み立てコストが実質的に減少することである。知られているラベルは、特定の組み立て方法を必要とする少なくとも2つの処理ステップを用いて製造されている:最初に、集積回路をカード基板の特定の位置に与えること;次に、プリンティングにより導電軌道を与えることである。本発明のラベルの組み立てにおいては、このような特定の位置及び特定の接着は全く必要とされない。
【0012】
更に有利な点は、そのラベルは、2つではなく、1つのカード基板のみを有すればよいことである。柔軟なデバイスは、ラミネーション処理において、それに付けられ又はそこに一体化されることができる。これは、ラベルの柔軟性を増し、部品及びそのコストを減らす。
【0013】
別の有利な点は、集積回路がすべての機能を有する点である。もしそれが民生装置又は商品のポリマ包装に使用されることが意図される場合、このような装置又は包装の製造者は、プリンティング又はアンテナに対するいずれの知識も必要とされることはない。
【0014】
更に、組み込みアンテナは一般的にサイズに限界がある。カード基板における配線及び導電インク軌道と比べると、組み込みアンテナを備える柔軟なデバイスの視認性はこうして悪くなる。これは、明らかに多くのセキュリティ用途においては有利になる。それは、あらゆる人間がそのセキュリティ機能を直ちに理解してしまう状況が好ましくないからである。それに加え、いかなる接続も存在しないという点から、ラベルの信頼性が改善される。
【0015】
電気的に絶縁する物質の支持層により、アンテナの共振作用が改善される。更に、支持層は、デバイスが切り離される前に追加的な支持基板を除去することも許容する。知られたデバイスにおいては、支持基板が使用され、それは柔軟なデバイスがカード基板に付けられた後にのみ除去される。
【0016】
支持層は、半導体基板がアクティブ領域とアンテナとの間から完全になくなる状態も許容する。この態様において、アンテナと集積回路との相互作用は、かなり減じられ、よいアンテナ性能をもたらす。好ましくは、半導体基板は、アクティブ領域の外側のいずれにも存在しない。これは、柔軟性を改善する。基板のアクティブ領域は、好ましくはメサ(mesa)の形状をしており、その形状は、堅牢で、かつ従来のエッチング技術によりなされることができる。
【0017】
独国特許発明第196 01 358 C2(DE 196 01 358 C2)号によれば、同様のデバイスが知られている。しかしながら、このデバイスでは、アンテナが集積回路の表面に与えられる。基板はある領域にて除去されず、いかなる支持層も与えられない。本発明のデバイスは、少なくとも2つ有利な点を持つ:本発明のアンテナは、より大きなサイズを持つことができ、そのことが送信周波数をより低くし、距離及び電力送信を増加させることをもたらす点;アンテナと集積回路との間の相互作用が実質的に減じられる点である。
【0018】
支持層は、例えば、ポリマ素材を有する。例えば、ポリアミド、ポリカーボネイト、フッ化ポリマ、ポリスルホン酸、エポキシド、ポリエステル等である。ポリアミドの使用が好ましい。アンテナの性能を改善するために、支持層に磁気粒子が存在することもできる。適切な磁気粒子はフェライト粒子であり、平均直径は好ましくは0.5から1.0マイクロメートルである。このような支持層の更なる利点は、水分、ほこり及び汚れに対する保護として作用することが可能な点である。先行技術においては、このような連続的な支持層は、デバイスからアンテナへの接触が適用される必要があり実現されることができない。
【0019】
本発明のデバイスの集積回路は、種々の技術により提供されることができる。まず、シリコン・オン・インシュレータ基板の表面に規定されることができる。この技術は、よく知られている。第2に、III-IV族物質の半導体基板の使用、又は他方で多結晶シリコンの使用がなされることができる。このような選択は、集積回路に所望する性能に依存する。好ましくは、単結晶の従来型半導体基板の使用がなされる。これは、SOI基板に比べ安く、それと同時に非柔軟な集積回路に対して従来使用されるデザインが適用されることができるという有利な点をもつ。更に、単結晶シリコンの使用は、標準的な半導体工場の使用を許可する。メサ構造は、デバイスの柔軟性を良くすることを可能にする。
【0020】
本発明の柔軟なデバイスは、有利には、一時的なサポート(support:支持層)を用いる基板転送法を用いて製造されることができる。
【0021】
例えば、静電結合に基づくアンテナ、ダイポールアンテナ、及びマルチポールアンテナといった種々のアンテナが実現されることができる。しかしながら、アンテナは無線通信に適したインダクタであることが好ましい。利用可能な周波数範囲は、大まかに1から3GHzである。最小値は、コイルサイズによって決定される。最大値は、集積回路における整流器のストレングス(strength:強さ)によって決定される。1.5 * 1.5mmの表面領域を備え、ターン(turn:巻き)を持つインダクタは、周波数2.4GHzに適している。このようなアンテナは、2V、100mAで、3から4mWを与えるために、3mmの距離を越える送信のために使用されることができる。
【0022】
アンテナの質は、第1の面の反対側の第2の面に追加的なインダクタ・ワインディング(inductor winding)が与えられると、更に改善されることができる。第2の面は、基板が除去されるときも追加的なワインディング用に利用可能である。ワインディング間での接触は、相互接続構造を介してなされることができる。追加的なワインディングは、第1のワインディングと同じ直径及び同じ形状を持っても、持たなくてもよい。しかしながら、代案として、両方の面でのワインディング、又は一般的にアンテナ構造が、相補的であることがありうる。また、第2の面におけるインダクタは、らせん状ということもありうる。更に、1つ以上のアンテナが種々の目的で使用される場合もある:1つは、半導体デバイスへのエネルギーの送信用に比較的大きなアンテナ、そしてもう1つは、信号の送信用に比較的小さなアンテナである。
【0023】
更なる適した実施形態においては、集積回路が、インダクタ内に横方向に設置される。利用可能な表面領域の最適な使用は、こうして実現される。更に、集積回路がインダクタに関して中心対称的に位置している場合に特に、回路におけるインダクタの影響が限定される。
【0024】
集積回路は、相互に間隔をあけて離れているが、相互接続構造を介して相互接続される複数の回路ブロックにさらに分割されることが特に好ましい。これは、インダクタの結果として生じる集積回路内での渦電流の大きさを減らす。本書では、半導体素子が、半導体基板の表面に規定され;そして、デバイスが回路ブロックに対応してアクティブ領域と、アクティブ領域間及びこれらの領域の周囲に横方向に規定される非基板領域とを有し、その半導体基板が非基板領域にないことが更に好ましい。
【0025】
別の実施形態において、電気的に導電性のある層のアンテナ上への集積回路の垂直投影が少なくとも実質的にアンテナと重なる。この実施形態は、特にサブミクロン(submicron:1マイクロメートル未満の)単位の解像度を持つ進化したタイプの半導体素子との結び付きにおいて適している。この実施形態の利点は、何よりも、渦電流がとても小さいことである。それに加えて、アンテナが集積回路に対する機械的な保護を形成することができる。
【0026】
更なる実施形態において、集積回路は、原理上、紫外線、可視光線、又は赤外線のいずれかに対して透過的ではない層であるセキュリティコーティング(security coating)を伴い与えられる。その上、このようなコーティングは、エッチングを用いたとしても除去することが困難である。この態様において、回路デザインにアクセスし、それを変更したいとするハッカーに対するよい防御を提供する。このようなセキュリティコーティングは、好ましくは、粒子に満たされる層である。その層は、有機物質でも無機物質でもよい。コーティングの厚さと物質とは、完全な防御と柔軟さとの間で最適にされるであろう。セキュリティコーティングの適用は、本発明のデバイスにおいてはボンドパッドが不要である分、従来技術よりも簡単である。こうして、パターン化が施されていないコーティングを適用することが可能である。
【0027】
集積回路を備えるセキュリティペーパは、例えば、国際公開番第99/54842(WO-A 99/54842)号により知られている。ここでは、集積回路は、有機半導体物質を有する。これは、新規で、未試験の技術であるという不利な点を持つ。このようなセキュリティ用途に対しては、よく知られ、かつ裏付けのある技術が好ましいように見える。本発明のセキュリティペーパは、本発明の柔軟なデバイスが存在するという特徴を有する。これは、ラミネーティング技術が柔軟なデバイスの一体化に使用されることができるという重要な利点を持つ。結果として、デバイスは完全に紙の中に埋め込まれることができる。こうして、セキュリティペーパから柔軟なデバイスを除去することはより容易ではなくなる。更に、集積回路は、ある程度隠される。デバイスは、最適な保護のため、追加的にセキュリティコーティングが施されて与えられることもできる。
【0028】
この出願の内容において、用語「ペーパ(paper)」は、天然又は人工繊維から製造され、そして今日ではプラスチックフィルムからも生産される紙であって、セキュリティペーパとして使用することが知られている紙を意味するものと理解されたい。ペーパは、紙幣、パスポート、及び他の公式文書、チケットなどを含むさまざまな用途に対して使用されることができる。
【0029】
他のセキュリティ機能が、集積回路に追加されて存在することもできる。その一例は、基板に含まれる検出可能な蛍光性の、磁性の若しくは導電性のある粒子又は繊維の存在の他、導電セキュリティスレッド、ホログラム、光学動作素子(optically active element)である。
【0030】
セキュリティペーパ及び/又は柔軟なデバイスは、識別文書又は装置に一体化するのに、特に、そのカプセル化にとても適している。その柔軟性及びその薄さは、それをセキュリティペーパ等に一体化するのに、そして柔軟なデバイスが視認されることが好ましくない用途に適用するのにとても適したものにする。
【0031】
本発明は、無線通信において本発明の柔軟なデバイスを使用することにも関連する。このような無線通信において、エネルギーとデータとの両方がリーダ(reader:読み出し機)から柔軟なデバイスへ送信される。所望の操作が実行された後、データはリーダに戻される。所望の操作は、一般に、所定のパターンに従いメモリを読み出すことを含む。無線通信における機密性を改善するために暗号化技術が使用されることもできる。暗号化技術に関して知られている1つのとても適した態様は、ハッシュ関数を使用することである。この場合、柔軟なデバイスは、メモリを読み出す前に第1の信号をランダム化する。このランダム化は、不可逆関数で行われる。読み出しの後、第2のハッシュ関数が適用されることができる。結果として生じる第2の信号は、それからリーダ又はリーダに接続される中央データベースに格納される参照信号と比較される。この参照信号は、同じハッシュ関数を用いて得られたものである。第1の信号の候補は大量に存在するので、任意の読み出しが別の第1の信号を使用することができ、これにより無権限の人間によりメモリコードが取得される可能性を減らす。更なる実施形態においては、柔軟なデバイスは、セキュリティコーティングであって、その上に不均一に頒布された測定可能な特性を持つセキュリティコーティングと、その特性を測定する測定素子とを伴い与えられる。その特性は、好ましくは、種々の構成、サイズ及び密度を取る、埋め込まれた誘電粒子、導電粒子、抵抗粒子又は磁気粒子で実現される。測定素子は、その中でインピーダンスを測定する。これは、とてもよい保護を提供する。そして、特に、未公開出願である欧州特許出願第03101515.9号(EP03101515.9(PHNL030634))に述べられているように、ハッシュ関数と組み合わせて使用することに適している。
【0032】
好ましい実施形態においては、データ送信は、次のようにして行われる。つまり、リーダから半導体デバイスへ送信するのに使用された周波数とは別の周波数で、半導体デバイスからの信号がリーダに折り返し送信される。それにもかかわらず、つまり信号の受信用と送信用とに2つの別々の周波数があるにもかかわらず、多くの場合、1つのアンテナだけを与えることができる。こうして、両方の信号が簡単かつ安価に分離されることができる。
【0033】
折り返し送信される信号は、例えば、分配器を与えることを介して実現される低周波数を使用する。代わりに、この周波数は倍音周波数、好ましくは第3倍音とすることができる。信号は、リーダで測定され、1つ又は複数の倍音周波数における信号の大きさと比較される。実施形態は、いくつかの有利な点を持つ:何よりも、折り返し送信が同じアンテナにおける高周波数のおかげでより効率的である。更に、折り返される信号の無権限者による検出がより困難になる。これは、高周波数用のアンテナになればなるほどより従来型でなくなるからである。特に、半導体デバイスにおける非線形素子を含めることがこれに適している。このような非線形素子は、好ましくは、アンテナと直列に配置される。これは、結果として、倍音周波数の周囲で周波数のピークが生じることをもたらすであろう。倍音周波数が正確にわかると、このようなピークは簡単に発見されることができる。
【0034】
更なる実施形態において、変調器が半導体デバイスに追加される。これは、リーダからデバイスへの信号がコードを含むことを可能にする。非線形素子により、(いくらか広げられた時間期間で)ビットが短い信号の系列に変換されるであろう。それは、簡単に検出可能である。変調器の使用は、アンチコリジョン(anti-collision)の問題が解決されることができるという追加的な利点を持つ。この問題は、紙幣に対して特に重要である。それは、一度に大量の紙幣を読み出すことができるようすべきであるためである。この問題に対する特定の解決策が、2つあるように思われる。第1の解決策は、第1の半導体デバイスの識別の後、ある所定の期間は追加的な反応を何も送信しないようにするため、特定のコードがそのデバイスに送信されることである。第2のオプションは、第1のデバイスを識別した後、紙幣へ送信される信号が修正された変調を要求することである。受信機が別の周波数で信号を受信するか、又は、あるものが別の周波数で応答するので、必要な応答周波数で応答する紙幣の数が減るかのいずれかである。
【0035】
変調の使用と倍音の使用とは共に半導体デバイスが簡単な技術で製造されることができるという利点を持つ。その理由は、分配器が全く必要とされないためである。特に、単結晶シリコンの代わりに多結晶シリコンを使用することがなされると、チャネル長もよりクリティカルでなくなる。要約すると、本実施形態は、低コストと送信距離の短さとを必要とする、紙幣及び他のセキュリティペーパに含まれる半導体デバイスにとても適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明のこれら及び他の側面は、以下の図面を参照して更に説明される。
【0037】
図面は実物大では描かれておらず、同様の参照番号は同様の部分を参照する。
【0038】
図1Aは、第1の面1と第2の面2とを備える基板10を示す図である。基板10は、単結晶シリコンを有する。基板の一番上には、熱酸化物が存在し、その上に相互接続構造3が与えられる。相互接続構造は、一般的に、パターン化された誘電層で互いに分離される3から5個の導電層を有する。相互接続構造3は、基板10の第1の面に規定される半導体素子を相互接続する。半導体素子は、この場合、CMOSトランジスタ、及びそれに加えて、抵抗として使用されるダイオードである。また、相互接続構造3と半導体素子とは、集積回路5を規定する。集積回路に加えて、アンテナ6が存在する。この実施形態において、アンテナ6は、1つのターン(turn:巻き)を持つインダクタである。
【0039】
図1において、アンテナ6が相互接続構造3の一番上に存在していることが提案されているが、処理ステップの観点からは、アンテナ6が相互接続構造3の金属層の1つにおける一部として挿入されることが好ましい。図1において、相互接続構造3が完全な基板10の一面に広がることが示されているが、必ずしもそうである必要はない。実際、機械的な負荷を限定する理由から、相互接続構造の金属層と誘電層とは、それらが機能に貢献する領域にのみ挿入されることが好ましい。
【0040】
例えば、ダイオード、ショットキ・ダイオード、バイポーラ・トランジスタ、コンデンサ、抵抗、光電素子及びその他の追加的な素子が同様に存在してもよい。それらは所望の回路パターンにより相互接続され、それ自体は当業者に知られている。スイッチ素子及び他の素子を製造するために、処理が基板10において又は基板10の周辺で行われる。これらの処理は、例えば、酸化ステップ、フォトリソグラフィステップ、選択エッチングステップ、及び、例えば拡散又はイオン着床のような中間ドーピングステップを含む。これらはすべてそれ自体知られている。薄いフィルム又はCMOSトランジスタの場合、中間チャネル同様ソース及びドレイン電極は、ゲート酸化物層と、多結晶シリコン、金属、シリサイドのゲート電極とに覆われるアクティブ層に与えられる。相互接続目的の追加的な金属層が与えられることもできる。しかしながら、層の数を限られたものにしておくことが好ましい。
【0041】
図1Bは、コーティング4が与えられた後の基板10を示す図である。基板と相互接続構造とは、柔軟なコーティングで、好ましくはポリマーで覆われる。好ましくは、その層は、スピンコーティング、吹きつけ、又はフィルムの形成により与えられ、その後保存処理される。コーティング4の基板10及びその一番上にある積層への接着は、まず、発煙硝酸を用いたクリーニングステップが実行され、その後適切な下塗り剤で処理されることで強化される。それから、ポリアミド樹脂コーティング4が、ポリイミドの前駆体が適用される箇所に形成される。この物質の溶液(solution)をウェハ上にスピンコーティングした後、溶媒(solvent)は摂氏125度で蒸散される。その後、下塗り剤を有効にするために摂氏200度での加熱ステップが実行される。それから、HPR504のようなフォトレジストが適用され、露光される。
【0042】
図1Cは、いくつかの追加的なステップを施した後の結果を示す図である。最初に、コーティングがパターン化される。コーティングをパターン化するため、例えば、シクロペンタノンのような従来の開発溶液の使用がなされる。それから、アセトンとイソプロパノールとの混合液でレジストが除去(strip)される。ここで、コーティング4は、摂氏300度から400度で保存処理される。最後に、PECVD酸化物の0.5マイクロメータの厚さを持つ層が約摂氏300度で挿入される。この層は明確には示されない。
【0043】
そこで、柔軟なデバイスの領域の外側に横方向に規定される保護領域が、接着手段で処理される。この場合、シラン結合物質である。この処理は、いわゆる「エッジビートリムーバル」様式でなされる。代替手段として、保護領域がこのシラン下塗り剤の溶液に浸される。次に、UVグル・リリーサブル・グル層31とキャリア基板30とが与えられる。この態様において、基板10は、一時的にキャリア基板30にUVリリーサブル・グル層31で付けられる。キャリア基板30は、グル層がUV照射で離れるよう透過的である。
【0044】
図1Dは、約5から20マイクロメータの厚さdにまで基板10が薄くされた後の結果を示す図である。基板は、例えば、研磨により薄くされるが、代わりに又はそれに追加して、例えばKOH溶液を用いるエッチングが用いられることもできる。図1Eは、適切なハード・エッチング・マスク15が与えられ、集積回路5を保護するためにパターン化された後の結果を示す図である。ハード・エッチング・マスクは、当業者に知られているように、希望に応じて選択されることができる。
【0045】
図1Fは、基板10がハード・エッチング・マスク15により保護されていない領域で除去された後の結果を示す図である。この態様において、アクティブ領域10Aと非基板領域10Bとが作成される。
【0046】
図1Gと図2とは、キャリア基板30を除去した後のデバイス100を最終的に示す図である。最初にUV照射の使用がなされる。その後、基板は個々のデバイス100に分離される。これは、デバイス100の周囲に横方向に存在する酸化物層を切断することで行われる。切断操作は、例えば、レーザブレードで行われる。柔軟なデバイス100は、ここでは、1つのデバイスとして示されるが、これは複数のデバイス100を含むことが理解されるだろう。これらは、その後分離されることができる。また、分離ステップは、顧客により行われてもよい。この方法は、本書では参照として含まれる、未公開出願である欧州特許出願第02079697.5号(EP02079697.5(PHNL021153))で更に説明される。
【0047】
図3は、本発明によるデバイス100の第1のレイアウトを示す図である。ここでは、アンテナ6がインダクタであり、インダクタ6により境界を示される領域に集積回路5が与えられる。アンテナ6と集積回路とは、サポートとして機能する電気的に絶縁する物質の層4に存在する。より詳細には、集積回路5は、その集積回路におけるインダクタ6の悪影響を限定するため中心対称的に配置される。インダクタ6から集積回路5への相互接続は示されていないが、存在はしている。
【0048】
図4は、第2のレイアウトを示す図である。ここでは、集積回路5がいくつかの領域5A−5Dに分割されている。これは、集積回路5における渦電流を減少させることが推測される。領域5A−5Dは、互いに相互接続されているが、これは示されない。集積回路5は、整流器と、メモリと、例えば、シフトレジスタ又はマイクロコントローラのようなステートマシンと、クロック生成器と、いくつかの追加的な相互接続と、スイッチング及び/又は他の増幅目的のためのトランジスタとを有する。分割は、好ましくは、分割領域に各機能を割り当てる(put)ことにより実現される。
【0049】
図5は、第3のレイアウトを示す図である。ここで、集積回路5は、いくつかの領域5A−5Hに分割される。領域5A−5Hは、アンテナ6と実質的な重なりがあるように配置される。これは、更に、集積回路5におけるアンテナの渦電流及び他の影響を減少させるであろう。領域の数は、追加的なデザインに制約される。これにより、さらに、第1のターンの中にアンテナ6の第2のターンを与えることができる。また、必要ならば、実質的により大きな領域を用いることなく、インダクタ以外の他のアンテナデザイン、例えばダイポールを使用することもできる。
【0050】
図6は、いくつかの追加的な部品を備えるアンテナ6の電気的なダイアグラムを示す図である。ここに示されるのは、アンテナとして機能するインダクタ6、チューニング目的のコンデンサ61、電圧インデューサ(voltage inducer)62、サムレジスタンス(sum resistance:合成抵抗)63及び負荷抵抗64である。負荷抵抗64は、RF電圧をDC電圧に変換し、集積回路のアクティブ回路を含むことができる整流器回路とすることができる。合成抵抗63は、連続照射抵抗Rradと抵抗損失Rohmicとの和である。この照射抵抗Rradは、多数のターンを備えるインダクタに対して小さく、例えば、およそ
【数1】

に等しい。ここで、Sはアンテナの面積であり、
【数2】

は、波長であり、nはターンの数である。結果として、チップにおいて1ターン又は2ターンのインダクタの照射抵抗Rradは、周波数2.4GHzにおいて
【数3】

よりも小さい。高Q並列LC回路の組み込みは、照射抵抗Rradに誘起される比較的低い電圧が、LCタンクのQ要素に乗じられる。Q要素は、2.4GHzでおよそ60である。結果として、インダクタは、アクティブ領域の外側の、電気的に絶縁する物質の支持基板に存在する。このQは、短い範囲、例えば1から2mm越しの送信に関し、集積回路における数ボルトの電圧レベルと数mWの電源レベルとを達成するよう十分大きい。外部RFソースパワーは、2.4GHzで約0.5Wである。最適な電力効率は、タンクにおける負荷がタンクのインピーダンスに等しいとき達成されるであろう。それは例えば、およそQ2.合成抵抗に等しい。
【0051】
手短に言うと、集積回路と、集積回路の相互接続構造に組み込まれる又は直接結合されるアンテナとを持つ柔軟なデバイス100が与えられる。電気的に絶縁する又は誘電性のある層がアンテナと集積回路との両方に対する支持層として存在する。好ましくは、その基板は、集積回路のアクティブ領域の外側にある非基板領域において除去される。この除去は、単結晶シリコンの基板の使用と結び付けられることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1A】本発明の柔軟な半導体デバイスの製造時における種々の段階の一つを図式的に示す断面図である。
【図1B】本発明の柔軟な半導体デバイスの製造時における種々の段階の一つを図式的に示す断面図である。
【図1C】本発明の柔軟な半導体デバイスの製造時における種々の段階の一つを図式的に示す断面図である。
【図1D】本発明の柔軟な半導体デバイスの製造時における種々の段階の一つを図式的に示す断面図である。
【図1E】本発明の柔軟な半導体デバイスの製造時における種々の段階の一つを図式的に示す断面図である。
【図1F】本発明の柔軟な半導体デバイスの製造時における種々の段階の一つを図式的に示す断面図である。
【図1G】本発明の柔軟な半導体デバイスの製造時における種々の段階の一つを図式的に示す断面図である。
【図2】本発明における、結果として生じる柔軟なデバイスを示す図である。
【図3】本発明の柔軟なデバイスにおけるアンテナと集積回路との第1のレイアウトを示す図である。
【図4】第2のレイアウトを示す図である。
【図5】第3のレイアウトを示す図である。
【図6】アンテナを伴う回路の電気的なダイアグラムを示す図である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクティブ領域に横方向に広がる半導体基板と、
前記半導体基板の表面に規定される複数の半導体素子を備え、柔軟であるために適切な厚さで存在する集積回路であって、前記素子が相互接続構造における所望のパターンに従い相互接続される集積回路と、
電気的に絶縁する物質の支持層と、
前記支持層に隣接する電気的に導電性のある層における前記アクティブ領域の外側に横方向に規定され、前記相互接続構造に電気的に接続されるアンテナであって、前記半導体基板が該アンテナと前記集積回路との間の非基板領域に存在しないアンテナとを有し、
少なくとも1つの導体が、前記電気的相互接続を構成するため前記相互接続構造から前記アンテナへ横方向に広がることを特徴とする柔軟な半導体デバイス。
【請求項2】
前記集積回路が、いずれのボンドパッド構造をも持たない、請求項1に記載の柔軟な半導体デバイス。
【請求項3】
前記集積回路が、パシベーションと共に与えられ、前記相互接続構造は、前記パシベーションと前記半導体基板との間に挟まれ、
前記支持層が、前記集積回路の前記パシベーションの一部である、請求項1に記載の柔軟な半導体デバイス。
【請求項4】
前記基板の前記アクティブ領域が、メサ形状であることを特徴とする請求項1に記載の柔軟なデバイス。
【請求項5】
前記半導体基板が、前記アクティブ領域にのみ存在することを特徴とする請求項1又は2に記載の柔軟なデバイス。
【請求項6】
前記アンテナが、無線通信に適したインダクタであることを特徴とする請求項1に記載の柔軟なデバイス。
【請求項7】
前記集積回路が、前記インダクタ内に横方向に配置される、請求項6に記載の柔軟なデバイス。
【請求項8】
互いに間隔をあけて離れ、前記相互接続構造を介して相互接続される複数の回路ブロックに、前記集積回路が分割される、請求項7に記載の柔軟なデバイス。
【請求項9】
前記デバイスは、前記回路ブロックに対応するアクティブ領域を有し、非基板領域が前記アクティブ領域間及び前記アクティブ領域の周囲に横方向に規定され、前記半導体基板は前記非基板領域にはない、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記電気的に導電性のある層の前記アンテナ上への前記集積回路の垂直投影が、少なくとも実質的に該アンテナとの重なりを持つことを特徴とする請求項6に記載のデバイス。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の前記柔軟な半導体デバイスを有するセキュリティペーパ。
【請求項12】
キャリアと請求項1乃至10のいずれかに記載の前記柔軟な半導体デバイスとを有する識別ラベル。
【請求項13】
更に、無線エネルギー送信を改善するよう導電素子を有する請求項12に記載の識別ラベル。
【請求項14】
前記キャリアがセキュリティペーパを含み、該ペーパは前記柔軟なデバイスをカプセル化する、請求項12又は13に記載の識別ラベル。
【請求項15】
紙幣又はセキュリティペーパに適している、請求項14に記載の識別ラベル。
【請求項16】
請求項11に記載の前記セキュリティペーパを有する識別文書。
【請求項17】
請求項1乃至10のいずれかに記載の柔軟な半導体デバイス、又は請求項12、13若しくは14に記載の識別ラベルを有する装置。
【請求項18】
リーダと請求項1乃至10のいずれかに記載の柔軟な半導体デバイスの少なくとも1つとの間での通信の方法であって、
前記リーダから前記柔軟なデバイスの前記アンテナに第1の信号を与えるステップと、
前記第1の信号のエネルギーと情報とを用いて、前記柔軟なデバイスの前記メモリの少なくとも一部を読み出し、第2の信号を与えるステップと、
前記柔軟なデバイスから前記リーダに前記第2の信号を送信するステップとを有する方法。
【請求項19】
前記第2の信号は、前記柔軟なデバイスを一部に含む前記ラベル、文書又は装置の同一性を確認する又は真偽を検証するため前記リーダで比較される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
柔軟な半導体デバイスを製造する方法であって、
半導体基板の表面に規定される複数の半導体素子を持つ少なくとも1つの集積回路を備える本体であって、前記素子が、相互接続構造において所望のパターンに従い相互接続され、該相互接続構造はパシベーションと共に与えられる本体を与えるステップと、
前記本体の前記パシベーションに一時的なキャリアを付けるステップと、
前記半導体基板を少なくとも部分的に除去するステップと、
前記柔軟な半導体デバイスを得るために前記一時的なキャリアを除去するステップとを有し、
前記相互接続構造が、前記集積回路から横方向にずらされて規定されるアンテナへ第1の導体を伴い広がり、該アンテナは前記パシベーションに覆われ、
前記基板が、前記アンテナと前記集積回路との間の非基板領域において完全に除去されることを特徴とする方法。

【図2】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−519215(P2007−519215A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516786(P2006−516786)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【国際出願番号】PCT/IB2004/051080
【国際公開番号】WO2005/004049
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】