説明

検出装置

【課題】 レーザ光を目標位置に照射して目標位置の状況を検出する検出装置において、対向車からのレーザ光を受光したような場合など、他の検出装置からのレーザ光を受光したような場合にも、これにより誤検出が生じないような検出装置を提供する。
【解決手段】 数種の変調パターンのうち目標位置毎に個別に設定した変調パターンにてパルスレーザ光を変調してレーザ出射部401から目標位置に出力する。DSP10は、レーザ出射部401から出力したパルスレーザ光の変調パターンとレーザ受光部402によって受光したパルスレーザ光の変調パターンがマッチングしたときのみ目標位置に障害物が存在するとして検出し、障害物との距離を測定する。これにより、誤って対向車等からパルスレーザ光を受光しても、これをもとに目標位置の状況を誤検出する惧れが抑制される。誤検出の可能性は、変調パターンの種類を増やす程、抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を目標位置に照射して目標位置の状況を検出する検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行時の安全性を高めるために、目標領域にレーザ光を照射して走行方向前方の障害物を検出する検出装置が家庭用乗用車等に搭載されている。かかる検出装置は、レーザ光をスキャン面内にてスキャンさせ、その反射光の有無からスキャン面内における障害物を検出するものである。通常走行時には、走行方向前方に設定されたスキャン面内をレーザ光がくまなくスキャンするようなスキャンパターンが設定される。そして、各スキャン位置(目標位置)においてパルス光を出力し、その反射光を光検出器が受光するかによって、そのスキャン位置における障害物の有無を検出する。このとき同時に、パルス光の出力タイミングから反射光の受光タイミングまでの時間をもとに障害物までの距離等が測定される。
【0003】
なお、以下の特許文献1には、反射光の強度に応じて出射レーザ光の強度を調整する技術が記載されている。
【特許文献1】特開平10−38511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、かかる検出装置が家庭用乗用車等に搭載された場合には、目標位置にレーザ光を照射したタイミングにおいて対向車からもレーザ光が照射され、これが光検出器によって受光されるといった事態が想定される。この場合、検出装置は誤検出を起こし、それに応じて、乗用車に不所望な運転制御が掛かってしまう惧れがある。この問題は、今後、かかる検出装置を搭載した乗用車が増加するに従って頻発するようになる。
【0005】
そこで、本発明は、かかる問題を解消し、対向車からのレーザ光を受光したような場合にも、これにより誤検出が生じないような検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑み本発明は、それぞれ以下の特徴を有する。
【0007】
請求項1の発明は、レーザ光を目標位置に照射して目標位置の状況を検出する検出装置において、前記レーザ光を前記目標位置に照射する照射手段と、前記目標位置からの反射光を受光する受光手段と、前記照射手段から照射されるレーザ光に変調を施す変調手段と、前記照射手段から照射されたレーザ光の変調状態と前記受光手段によって受光されたレーザ光の変調状態がマッチングするかを判別する判別手段と、前記判別手段によって前記両レーザ光がマッチングすると判別されたとき、前記受光手段における前記反射光の受光状態から前記目標位置の状況を検出する検出手段とを有することを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の検出装置において、前記変調手段は、前記目標位置毎にレーザ光の変調パターンを設定することを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の検出装置において、前記変調手段は、前記目標位置に照射するレーザ光の照射回数を設定することにより前記レーザ光に変調を施すことを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1または2に記載の検出装置において、前記変調手段は、前記目標位置に照射するレーザ光の照射期間を設定することにより前記レーザ光に変調を施すことを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1または2に記載の検出装置において、前記変調手段は、前記目標位置に複数回レーザ光を照射するとともに各回のレーザ光の照射強度を変調規則に応じて設定することにより前記レーザ光に変調を施すことを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1または2に記載の検出装置において、前記変調手段は、レーザパルス群によってレーザ光を識別できるよう変調を施すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、照射手段から照射されたレーザ光の変調状態と受光手段によって受光されたレーザ光の変調状態がマッチングしたときにのみ目標位置の状況を検出するようにしたので、誤って他の移動体(対向車等)からレーザ光を受光したとしても、これをもとに目標位置の状況を誤検出する惧れが抑制される。このとき、他の移動体からのレーザ光の変調状態が自己の発したレーザ光の変調状態にマッチングするような場合には、誤検出が誘起されるが、変調手段による変調パターンを多数準備しておけば、このようなマッチングが起こる可能性は極めて低くなる。さらに、請求項2のように目標位置毎にレーザ光の変調パターンを設定するようにすれば、このようなマッチングが起こる可能性はさらに小さく抑制される。
【0014】
なお、レーザ光の変調パターンは、請求項3ないし6に示すようにして設定することができる。ここで、請求項6のようにレーザパルス群にてレーザ光を識別するようにすれば、誤検出を効果的に抑制することができ、さらに、このレーザパルス群を検出器毎に変更すれば、他の検出装置によって出力されたレーザ光と自身のレーザ光が明確に区別され、理論上、他の移動体からのレーザ光を受光することによる誤検出は全く起こり得ないものとなる。
【0015】
なお、請求項3、4、5、6に示された変調方法は、それぞれ、以下の実施の形態では、図2(b)、図5(a)、図5(c)、図5(b)の変調パターンとして示されている。
【0016】
本発明の特徴は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明の一つの例示であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以下の実施の形態に記載されたものに制限されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1に実施の形態に係る検出装置の構成を示す。
【0018】
本実施の形態に係る検出装置は、DSP(Digital Signal Processor)10と、内部クロック発生回路20と、ADC(Analog-Digital Converter)30と、ビーム照射装置40を備えている。
【0019】
DSP10は、ADC30を介してレーザ出射部401およびレーザ受光部402から入力される照射光パルス信号および受光パルス信号を処理し、目標位置における障害物の有無を検出する。さらに、これら信号からパルスレーザ光の照射タイミングと受光タイミングの時間差を検出し、この時間差をもとに障害物までの距離を測定する。DSP10における処理の詳細は追って図4を参照して説明する。
【0020】
内部クロック発生回路20は、高周波の内部クロックを生成してDSP10、ADC30およびビーム照射装置40に出力する。ADC30は、レーザ出射部401およびレーザ受光部402から入力される照射光パルス信号および受光パルス信号をデジタル信号に変換してDSP10に出力する。
【0021】
ビーム照射装置40は、レーザ出射部401とレーザ受光部402を備え、DSP10からの制御信号に応じてレーザ出射部401から目標位置に向かってパルスレーザ光を出力し、目標位置からのパルスレーザ光を受光する。
【0022】
レーザ出射部401は、パルスレーザ光に変調を施すための変調パターンを保持しており、目標位置毎に変調パターンを変えながら、随時、パルスレーザ光を出力する。そして、出力したパルスレーザ光の波形信号を照射光パルス信号としてADC30に出力する。
【0023】
レーザ受光部402は、目標位置からのレーザ光を受光し、受光強度に応じた波形信号を受光パルス信号としてADC30に出力する。
【0024】
図2(b)に、レーザ出射部401におけるパルスレーザ光の変調パターンを示す。なお、同図(a)は、変調を施さないときのパルスレーザ光の出力パターン(従来例)を示すものである。
【0025】
図2(b)に示す如く、本実施の形態では、T1、T2、T3、T4(T1=T2=T3=T4)の期間に示す4つの変調パターンが準備されている。このうち、T1の変調パターンでは、taの時間幅を有するパルスレーザ光が一つだけ出力される。T2、T3、T4の変調パターンでは、それぞれ、taの時間幅の間に、2つ、3つ、4つのパルスレーザ光が出力される。
【0026】
レーザ出射部401は、たとえば、図3に示すスキャン面をレーザ光にてスキャンするとき、スキャン面内にマトリクス状に配置された目標位置毎にパルスレーザ光の変調パターンを設定する。たとえば、同図(b)に示すようにしてスキャンする場合、左上の目標位置からスキャン順に、図2(b)のT1、T2、T3、T4の4つの変調パターンをこの順番でサイクリックに設定する。この他、4つの変調パターンからランダムに変調パターンを選択して各目標位置に設定するようにしても良い。
【0027】
レーザ出射部401は、このようにして目標位置毎に変調パターンを変えながら、パルスレーザ光を出力し、同時に、出力したパルスレーザ光の波形信号を照射光パルス信号としてADC30に出力する。
【0028】
DSP10は、ADC30を介してレーザ出射部401から入力された照射光パルス信号と、ADC30を介してレーザ受光部402から入力された受光パルス信号をもとに、出力したパルスレーザ光の変調パターンと受光したパルスレーザ光の変調パターンがマッチングするかを判別する。そして、両者が一致するとき、その目標位置に障害物が存在することを検出し、さらに、これら信号からパルスレーザ光の照射タイミングと受光タイミングの時間差を検出して障害物までの距離を算出する。
【0029】
図4は、スキャン時の処理フローチャートである。
【0030】
処理が開始されると、スキャン面とその原点位置が設定された後(S101)、スキャン面上のスキャン座標(目標位置)が決定される(S102)。次に、上記4つの変調パターンの中から当該スキャン座標に設定すべき変調パターンが決定され(S103)、決定された変調パターンにて変調されたパルスレーザ光がスキャン座標に向けて出力される(S104)。そして、かかるレーザ光の出力後、一定期間、レーザ受光部402にてパルスレーザ光の受光が待機され、パルスレーザ光が受光されれば、その変調パターンと、S103にて決定された変調パターンのマッチングが随時判定される(S105)。
【0031】
かかる判定において、両パターン間にマッチングがあれば(S106:YES)、このスキャン座標(目標位置)に障害物が存在するとして検出され、さらに、パルスレーザ光の照射タイミングと、これにパターンマッチングするパルスレーザ光の受光タイミングの時間差をもとに障害物までの距離が算出される(S107)。
【0032】
他方、前記一定期間の間にレーザ受光部402にてパルスレーザ光が受光されず、あるいは、受光されたが、そのレーザ光の変調パターンとS103にて決定された変調パターンがマッチングしなければ(S106:NO)、このスキャン座標(目標位置)には障害物が存在しないとして、S107における測定処理はスキップされる。
【0033】
しかして、当該スキャン位置における処理が終了すると、さらにスキャンすべき位置が存在するかが判別され(S108)、存在すれば、S102に戻って、次のスキャン座標(目標位置)に対する処理が上記と同様にして行われる。かかる処理は、全てのスキャン位置に対する処理が終了するまで繰り返される。そして、全てのスキャン位置に対して処理が行われると(S108:YES)、当該スキャン動作が終了される。
【0034】
本実施の形態によれば、レーザ出射部401から出力されたパルスレーザ光の変調パターンとレーザ受光部402によって受光されたパルスレーザ光の変調パターンがマッチングしたときにのみ目標位置に障害物が存在するとして検出し、当該障害物との距離を測定するようにしたので、誤って対向車等からパルスレーザ光を受光したとしても、これをもとに目標位置の状況を誤検出する惧れが抑制される。この場合、図2(b)に示す変調パターンの種類をさらに増やせば、かかる誤検出の確率をさらに小さく抑えることができる。
【0035】
なお、変調パターンは、図2(b)に示すものの他、図5に示すような変調パターンとすることもできる。
【0036】
同図(a)は、パルスの時間幅を4段階に変えたものである。
【0037】
同図(b)は、時間幅taのパルスの前に、パルスレーザ光を識別するためのパルス群を付加したものである。同図では、T1、T2、T3、T4の変調パターンに対して、それぞれ、1個、2個、3個、4個のパルス群が付加されている。すなわち、パルス群に含まれるパルスの数によってパルスレーザ光が識別される。
【0038】
なお、バーコードのように、パルス期間と非パルス期間の長さに変化を持たせ、これによりパルス群に所定の識別コードを保持させるようにしても良い。この場合、検出装置毎に異なる識別コードを付与し、この識別コードをパルス群に持たせるようにすれば、他の検出装置によって出力されたパルスレーザ光と自身のパルスレーザ光とを明確に区別することができる。この場合、誤って対向車等からパルスレーザ光を受光したとしても、これをもとに目標位置の状況を誤検出する惧れはなくなる。
【0039】
上記実施の形態では、目標位置毎に変調パターンを設定するようにしたが、一定のスキャン期間毎に変調パターンを切り替えるようにしても良い。たとえば、図3(b)において、1ライン毎に変調パターンを切り替えるようにしても良い。さらに、スキャン面毎に変調パターンを切り替えるようにしても良い。ただし、この場合は、上記実施の形態の如くスキャン位置毎に変調パターンを変える場合に比べ、対向車等からのパルスレーザ光の変調パターンと自身のパルスレーザ光の変調パターンがマッチングする確率が大きくなり、その分、誤検出が生じる確率が増大する。
【0040】
本発明は、自動車用に限らず、船舶や飛行機等、他の移動体用の検出装置として用いることも勿論可能である。
【0041】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施の形態に係る検出装置の構成を示す図
【図2】実施の形態に係る変調パターンの一例を示す図
【図3】実施の形態に係るスキャン面、目標位置およびスキャン軌道例を示す図
【図4】実施の形態に係るスキャン動作時の処理フローチャートを示す図
【図5】実施の形態に係る変調パターンの変更例を示す図
【符号の説明】
【0043】
10 DSP
40 ビーム照射装置
401 レーザ出射部
402 レーザ受光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を目標位置に照射して目標位置の状況を検出する検出装置において、
前記レーザ光を前記目標位置に照射する照射手段と、
前記目標位置からの反射光を受光する受光手段と、
前記照射手段から照射されるレーザ光に変調を施す変調手段と、
前記照射手段から照射されたレーザ光の変調状態と前記受光手段によって受光されたレーザ光の変調状態がマッチングするかを判別する判別手段と、
前記判別手段によって前記両レーザ光がマッチングすると判別されたとき、前記受光手段における前記反射光の受光状態から前記目標位置の状況を検出する検出手段と、
を有することを特徴とする検出装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記変調手段は、前記目標位置毎にレーザ光の変調パターンを設定する、
ことを特徴とする検出装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記変調手段は、前記目標位置に照射するレーザ光の照射回数を設定することにより前記レーザ光に変調を施す、
ことを特徴とする検出装置。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記変調手段は、前記目標位置に照射するレーザ光の照射期間を設定することにより前記レーザ光に変調を施す、
ことを特徴とする検出装置。
【請求項5】
請求項1または2において、
前記変調手段は、前記目標位置に複数回レーザ光を照射するとともに各回のレーザ光の照射強度を変調規則に応じて設定することにより前記レーザ光に変調を施す、
ことを特徴とする検出装置。
【請求項6】
請求項1または2において、
前記変調手段は、レーザパルス群によってレーザ光を識別できるよう変調を施す、
ことを特徴とする検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−308482(P2006−308482A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132945(P2005−132945)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】