説明

検査装置

【課題】半導体装置内に存在する欠陥を、効率よく、高感度に検出する。
【解決手段】表面に回路が形成された半導体装置の裏面から、回路の形成面まで透過する波長の光13aを照射する照射部13と、光13aの入射により、半導体装置の裏面から発せられる光13bを検出する検出部15と、検出した光13bの強度を取得する取得部と、を有する検査装置10により、表面に回路が形成された半導体装置の裏面から、回路の形成面まで透過する波長の光13aが照射され、光13aの入射により、半導体装置の裏面から発せられる光13bが検出されて、検出された光13bの強度が取得される。これにより、ウェハスケールやチップスケールの半導体装置内に存在する欠陥を、効率よく、高感度に検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検査装置に関し、特に、半導体装置の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置を構成するトランジスタの微細化が進むにつれて、半導体装置の製造工程は、益々複雑になり、それに伴い、その工程数が世代を追う毎に増加している。そして、半導体装置の動作特性や信頼性を向上させるために、欠陥のサイズや密度の低減に対する要求は、益々厳しくなっている。
【0003】
ここで欠陥とは、半導体基板中、絶縁膜中または配線中に含まれる点欠陥、転位など、様々な格子欠陥を意味する。そして、このような欠陥については、故障モードや対象箇所に応じて、色々な解析手段が考案されている。
【0004】
例えば、その代表的なものに、電子、光などをプローブとして、欠陥を起因とする応答異常を検出するものがある。
電子をプローブとする解析手段の代表例として、最も一般的なものに、電子顕微鏡観察がある。この方法によれば、異常箇所を直接的に観察することができる。
【0005】
これに対し、光をプローブとする解析手段は、半導体装置内部に存在する欠陥を簡便に検出できる。例えば、その代表的なものに、OBIC(Optical Beam Induced Current)法やOBIRCH(Optical Beam Induced Resistivity CHange)法がある。
【0006】
OBIC法は、逆バイアスを印加させた半導体装置に光を照射し、当該光照射によって生じた電子・正孔の流れを観測するものである。そして、測定した電流値から、pn接合部の電圧分布を解析する。ここで、半導体装置内の絶縁膜に不良や、接合層に欠陥が存在すると、電圧分布が異常をきたすことが知られている。この電圧分布を測定することにより、半導体装置内の欠陥の有無を判断することができる(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
OBIRCH法は、OBIC法と同様に逆バイアスを印加させた半導体装置に光を照射し、当該光照射によって生じた電子・正孔の流れから抵抗の変化を観測するものである。こちらも半導体装置内の欠陥の有無を判断することができる(例えば、非特許文献2参照)。
【0008】
このように、OBIC法やOBIRCH法は、半導体装置内の微細な欠陥を検出するのに優れており、故障・不良解析の有効な手段として、利用されている。
【非特許文献1】Haraguchi Koshi., "Microscope Optical Beam Induced Current Measurements and their Application", HYPERLINK "http://ieeexplore.ieee.org/xpl/RecentCon.jsp?punumber=1120" Instrumentation and Measurement Technology Conference, 1994. Conference Proceedings 10th Anniversary Advanced Technologies in I & M., 1994, IEEE, P693-699
【非特許文献2】Phang J. C. H., et al., "A review of laser induced techniques for microelectronic failure analysis", Physical and Failure Analysis of Integrated Circuits, 2004, IPFA 2004. Proceedings of 11th International Symposium on the Volume, Issue, 5−8, July, 2004, p255−261
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記のOBIC法やOBIRCH法は、分析試料(被検体)に逆バイアスを印加する必要があるため、分析試料を個片化した後に、逆バイアス印加用の配線を配設する必要がある。このため、サンプル加工に手間がかかるという問題がある。また、現状のOBIC法やOBIRCH法は、局所的な領域の分析には有効ではあるが、分析領域に限界がある。従って、分析試料が広面積になると、全ての領域に渡り、効率よく、高感度に分析試料を評価できないという問題がある。
【0010】
特に、近年においては、ウェハ自体が大口径化している。これに伴い、ウェハプロセスによりウェハ上に形成される半導体装置の個数は益々増加している。従って、ウェハ状態にある多数の半導体装置の特性のばらつきや、歩留まりの相違などを、効率よく、高感度に分析できる方法が要求されている。
【0011】
また、チップ状の半導体装置においても、近年の半導体素子の微細化に伴い、1チップあたりに配設されているトランジスタなども膨大な数になっている。従って、チップ状態でのトランジスタなどの特性のばらつきや不良なども、簡便に分析できる方法が要求されている。
【0012】
このように、ウェハスケールやチップスケールで、半導体装置内に存在する欠陥を効率よく、高感度に分析する手法が要求されている。
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、ウェハスケールやチップスケールの半導体装置内に存在する欠陥を、効率よく、高感度に検出する検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明では上記課題を解決するために、図1に例示するように、表面に回路が形成された半導体装置の裏面から、回路の形成面まで透過する波長の光13aを照射する照射部13と、光13aの入射により、半導体装置の裏面から発せられる光13bを検出する検出部15と、検出した光13bの強度を取得する取得部と、を有することを特徴とする検査装置10が提供される。
【0014】
このような検査装置によれば、表面に回路が形成された半導体装置の裏面から、回路の形成面まで透過する波長の光が照射され、光の入射により、半導体装置の裏面から発せられる光が検出されて、検出された光の強度が取得されるようになる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、表面に回路が形成された半導体装置の裏面から、回路の形成面まで透過する波長の光を照射して、光の入射により、半導体装置の裏面から発せられる光を検出して、検出した光の強度を取得するようにした。これにより、ウェハスケールやチップスケールの半導体装置内に存在する欠陥を、効率よく、高感度に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
本実施の形態では、半導体装置中に含まれる欠陥を検出するために光を用いた検査装置について説明する。具体的には、第1の実施の形態では半導体装置の裏面から光を照射して分光検出したフォトルミネッセンスを利用し、第2の実施の形態では同様に分光検出した散乱光を利用し、第3の実施の形態では、同様に光を照射し、散乱光を直接観察して欠陥を検出する方法について説明する。
【0017】
まず、第1の実施の形態について説明する。
図1は、検査装置システムの要部模式図である。
検査装置10は、半導体基板11を支持する支持台12、半導体基板11にレーザによって光13aを照射する照射部13、半導体基板11から発せられる光13bを分光する分光部14、分光した光を検出する検出部15、および装置制御部16を備えている。
【0018】
半導体基板11は、例えば、半導体チップとして個片化する前のウェハ状態にある半導体装置であり、シリコン(Si)やガリウムヒ素(GaAs)で構成される半導体基板(ウェハ基板)に、トランジスタ、コンデンサ、多層配線などで構成される半導体素子が縦横に形成されている。そして、支持台12には、例えば、300mm口径の半導体基板11が設置されている。
【0019】
支持台12は、上述したように、被検体である半導体基板11を支持している。そして、支持台12は、光13aに対向する方向(図中のZ方向)と、当該Z方向に対し、垂直方向(X,Y方向)の3次元の範囲で移動できるようになっている。さらに、支持台12は、必要に応じて、X,Y,Z軸のいずれかを軸に回転し、光13aの半導体基板11に対する入射角度を可変できるように構成されている。また、支持台12は、ウェハ状態の半導体基板11のほか、個片化された半導体チップを支持することもできる。
【0020】
照射部13から出射する光13aを反射板17a,17bにより反射させた後、半導体基板11の裏面に照射する。なお、半導体基板11の一方の主面(表面側)には多数の金属配線が配設されており、半導体装置の表面側から光を照射したのでは、その光が半導体基板11を通過しないため欠陥の検出感度が低下する。従って、本実施の形態においては、半導体基板11の裏面から光照射を行うことを特徴としている。
【0021】
半導体基板11に光13aを照射すると、半導体基板11は、特有のフォトルミネッセンス(発光)、照射された光の散乱、照射された光の反射を発する。
ここで、半導体基板11から発生されるフォトルミネッセンス・散乱光・反射光について説明する。
【0022】
図2は、フォトルミネッセンスの原理を説明する要部断面模式図である。
半導体装置21aは、基板21と基板21上にトランジスタ、コンデンサ、多層配線など半導体素子が形成された素子層22とによって構成されている。さらに、素子層22中には、結晶成長中や素子加工処理中に導入された点欠陥や転位などの欠陥23が存在している。このような半導体装置21aの基板21の裏面20aへ光24a,26aを照射する場合について説明する。
【0023】
まず、照射された光24aは、基板21内に進入する。非特許文献2に示されるように、長波長のレーザを用いた場合、Si中の透過率が高いため、光24aは素子層22中の活性層(図示を省略)まで到達することができる。また、非特許文献2に示されているようにSi中へドーピングした不純物濃度とSiとの厚さによって透過率が変わる(詳細は図4にて後述する。)。この公知の透過率変化を参考にして照射する光の波長を選択することにより、Siへの光の進入をコントロールすることが可能である。その一例を以下に記載する。1.0×1015atom/cm3程度の不純物をドーピングしたSiへの光の進入長を透過率から求めると、約1μm(照射する光の波長は約500nm)、約100μm(照射する光の波長は約967nm)、約200μm(照射する光の波長は約1018nm)、約500μm(照射する光の波長は約1057nm)である。従って、半導体装置21aの厚さが様々であっても照射する光の波長を選択することによって、裏面20aに照射した光24aを、素子層22へ到達させることが可能である。照射する光24aの光源としては様々な波長の半導体レーザがあり、代表的なものの波長を列記すると約473nm、約532nm、約527nm、約648nm、約1047nm、約1053nm、約1064nmである。このうち、裏面20aに照射した光24aを素子層22へ到達させるに適切と思われるレーザは、進入長が長い波長である約1064nmのものである。波長が約1064nmのレーザとして、YAG(Yttrium Aluminum Garnet:イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザが知られている。そして、YAGレーザの光24aは、Siのエネルギーのバンドギャップ(約1150nmの波長に相当)より大きい。このような光24aが照射されると、価電子帯の電子が伝導帯へと励起される。この時、価電子帯には電子に対応する正孔が生成される。その後、このようにして生成された電子・正孔25が再結合し、再結合過程において発光し、Si結晶固有の波長を持つフォトルミネッセンスによる光24bが生じる。
【0024】
一方、同様にしてYAGレーザ光26aを照射した場合、上述のように電子・正孔25が生成されて、再結合が生じる。ところが、欠陥23が存在して、かつ、欠陥23がバンドギャップ中に固有の電子準位を形成するものであれば、電子・正孔25の再結合過程において、電子あるいは正孔のいずれか、もしくは、両方をトラップする。欠陥23による電子・正孔25のトラップにより電子・正孔25の密度が減少するため、Si結晶固有の波長を持つフォトルミネッセンスによる光24bの強度は減少する。また、欠陥23が電子・正孔25をトラップして電子・正孔25が消滅する際、Si結晶固有の発光とは異なるエネルギー(波長)の光26bを放出する場合がある。
【0025】
このように、フォトルミネッセンスによる光24b,26bを検出して、欠陥23の存在を検知することにより半導体装置21a内の品質を評価することが可能になる。
なお、図2を参照しながら、半導体装置21aからフォトルミネッセンスが生じることについて説明したが、実際には、照射部13による光によって、半導体装置21a内で反射や散乱した光も生じている。
【0026】
従って、再び図1を参照すると、YAGレーザの照射によって活性層内で発生し、半導体装置を透過したフォトルミネッセンスの光や、その他、反射や散乱した光が合わさった光13bが、半導体基板11の裏面から発生される。そして、光13bが反射板17cを介し分光部14を通過した後、検出部15によって検出される。
【0027】
このような方法で取得された半導体装置のフォトルミネッセンス・散乱光・反射光のデータは、装置制御部16内で処理され、フォトルミネッセンス・散乱光・反射光の特定波長の光強度の二次元分布などが画像表示として出力される。
【0028】
また、装置制御部16は、上記のようなデータ処理などを行うだけではなく、検査装置10全体を制御する。
例えば、装置制御部16内には、照射部13を制御する照射部制御手段16a、検出部15を制御する検出部制御手段16b、検出部15で検出された発光データを処理して欠陥を検出するデータ処理手段16c、データを記憶する記憶手段16d、およびユーザインターフェースとなる入出力手段16eとを備えている。
【0029】
次に、上記の検査装置10を用いた半導体装置の検査方法の基本原理について説明する。
図3は、検査方法のフローチャート図である。
【0030】
検査装置10は、フローチャート図20に沿って、半導体装置中の欠陥の検査を遂行する。以下、図1と合わせて図3を参照しながら説明する。
[ステップS21]検査装置10の装置制御部16に測定条件を入力する。
【0031】
[ステップS22]支持台12上に、例えば、ウェハ状態の半導体基板11を、その裏面側が支持台12から表出するように装着する。
[ステップS23]照射部制御手段16aによって、照射部13を制御して、YAGレーザによる光13aを照射部13から照射させ、当該光13aを半導体基板11の任意の位置に裏面側から照射させる。
【0032】
[ステップS24]検出部制御手段16bによって、検出部15を制御し、半導体装置から発せられ、分光部14で分光されたフォトルミネッセンスを検出部15によって検出する。なお、フォトルミネッセンスのほか、半導体基板11からの散乱光、または半導体装置の活性層からの反射光を検出してもよい。すなわち、この段階においては、フォトルミネッセンス、散乱光および反射光を分光検出する。
【0033】
[ステップS25]ステップS24で検出されたフォトルミネッセンスのデータを、データ処理手段16c並びに記憶手段16dによって処理する。
[ステップS26]入出力手段16eによって、検出結果として、例えば、発光スペクトルまたは画像表示を表示する。特に、画像表示において、分光検出した特定波長の光強度を二次元分布として画像表示する。
【0034】
このようなフローに従えば、半導体装置の裏面に光が照射され、光の照射により、半導体装置の裏面から発せられる光が分光検出され、分光検出により得られた特定波長の光強度が測定される。さらに、測定後、測定された光強度が二次元分布として画像表示される。
【0035】
このような検査装置10を利用して、半導体基板11内に形成されている半導体装置内に含まれる欠陥を実際に検出した結果について説明する。
図4は、シリコンウェハ基板の透過率の波長依存性であって、(A)はドープ量、(B)はシリコンウェハ基板の膜厚ごとのグラフ、図5は、第1の実施の形態における検出方法で検出した二次元分布の画像である。
【0036】
ところで、非特許文献2に記載されている図4は、横軸は波長(nm)を表し、縦軸は透過率(任意単位)を表している。これによれば、図4(A)に示すように、波長が800nm以下の光の透過率は、略0(%)を示している。しかし、800nm以上においては、ドープ量に応じて、透過率が変化している。例えば、最も低ドープ量(最も高抵抗)のシリコンウェハ基板については、透過率が、Siのバンドギャップに相当する約1150nm付近では増加し、その後は、略一定値を示している。また、高ドープ量(低抵抗)のシリコンウェハ基板ほど、約1150nm付近まで、一旦は透過率が増加し、最大値を示したが、その後は、透過率が減少する傾向にある。
【0037】
また、図4(B)に示すように、シリコンウェハ基板の膜厚を変化させると、膜厚が薄くなるほど、透過率が増加している。
これらのデータから、バンド端発光の波長(約1150nm)付近の光は、シリコンウェハ基板に対して透明であることが分かる。
【0038】
そして、上述のように、半導体装置の裏面へYAGレーザを照射し、半導体基板11の裏面からの発光を分光して、特定の波長の発光スペクトルを検出する。この時、図4の結果から半導体装置に対して透明であって、S/N比が高い約1150nmの波長を検出する。そして、装置制御部16により、それぞれの波長の光の強弱を二次元分布40としてマッピングし、画像表示した結果が図5である。
【0039】
二次元分布40の画像の一部に、矢印41で示す黒いコントラスト部が出現している。この二次元分布40の画像表示において、黒い部分は、検出した光において、その強度が低いところである。すなわち、これは活性層内に位置する欠陥である。他方、この半導体装置の特性を評価したところ、矢印41の箇所は特性不良であることが分かった。従って、検査装置10により、活性層内の欠陥を検出できる。
【0040】
このように、第1の実施の形態による検査装置10は、半導体基板11を支持する支持台12、半導体基板11にYAGレーザによって光13aを照射する照射部13、半導体基板11から発せられる光13bを分光する分光部14、分光した光を検出する検出部15、および装置制御部16を備えている。そして、この検査装置10では、半導体基板11上にウェハプロセスで形成させた半導体装置の活性領域付近の欠陥の検出にYAGレーザによるフォトルミネッセンスを用いており、容易に、効率よく、高感度に検出することができる。また、YAGレーザによって検出された光強度のデータから二次元分布として画像化することで、活性層内の欠陥を視覚的に捉えることができ、容易に半導体装置の分析を行うことができる。
【0041】
次に、第2の実施の形態について説明する。
第1の実施の形態では、フォトルミネッセンスから半導体装置の欠陥を検出した。一方、第2の実施の形態では、散乱光から半導体装置の欠陥を検出する。
【0042】
まず、欠陥を有するシリコンにYAGレーザを照射したときの発光スペクトルについて説明する。
図6は、YAGレーザが照射されたシリコンウェハ基板の発光スペクトルである。なお、横軸は発光波長(nm)を表しており、縦軸は発光強度(任意単位)を表している。
【0043】
YAGレーザの光をシリコンウェハ基板の裏面へ照射すると、裏面から照射された光は半導体装置の活性層まで達成することは上述の通りである。この時、第1の実施の形態では、電子・正孔が発生し、再結合過程におけるフォトルミネッセンスから欠陥を検出した。一方、第2の実施の形態では、裏面へ光を照射すると、光が微小粒子によって散乱されるレイリー散乱と呼ばれている現象が生じる。すなわち、照射された光が欠陥である微小粒子によって散乱される。従って、欠陥によって散乱された光を分光検出し、その強度を画像表示することによって活性層内の欠陥が検出できる。図6はこの時の散乱光、反射光のスペクトルであって、YAGレーザの波長(約1064nm)と等しい波長で大きなピークを確認することができる。
【0044】
それでは、以下にこの検出方法を用いた結果について説明する。
図7は、YAGレーザを半導体装置に照射した時の散乱光・反射光の強度分布について、(A)はその機構を示す断面模式図、(B)は(A)に基づく光の強度分布であって、図8は、第2の実施の形態における検出方法で検出した、(A)は処理前の、(B)は処理後の二次元分布の画像である。
【0045】
半導体装置50は、図7(A)に示すように、基板51と基板51上にトランジスタ、コンデンサ、多層配線など半導体素子が形成された素子層52とによって構成されている。なお、一般的に、半導体素子は周期的構造を有する。さらに、素子層52近傍に、結晶成長中や素子加工処理中に導入された点欠陥や転位などの欠陥53が存在している。このような基板51の裏面50aへYAGレーザの光54a,54cを照射する。そして、光54a,54cが素子層52の周期的構造および欠陥53でそれぞれ散乱された光54b,54dが裏面50aから発せられる。
【0046】
さらに、裏面50aから発せられた光54b,54dの強度分布を図7(B)に示す。なお、図7(B)では、強度分布を模擬的に示しており、横軸は半導体装置の位置を表し、縦軸は光強度(任意単位)を表している。基板51の裏面50aへYAGレーザの光54aを照射して素子層52へ到達した場合、素子層52における構造は光の散乱源となるため、図7(B)の素子層に起因する光の成分52aに示したように、素子の構造に応じた光の強弱が観測される。基板51の裏面50aへYAGレーザの光54cを照射して欠陥53へ到達した場合、図7(B)に示したように、素子層に起因する光の成分52aに欠陥に起因する光の成分53aが付加される。従って、非周期成分のみ着目する、もしくは、周期成分・非周期成分の識別が難しい時は周期成分の低強度成分を少しずつ除去することで非周期成分のみを顕在化させることができ、いずれかの方法をもって欠陥53のみに起因する光を顕在化し、欠陥53を認識することが可能となる。
【0047】
そして、図8では、裏面50aからの発光スペクトルから波長が約1064nmの波長を選択的に取り出して、それぞれの波長の光の強弱を、二次元分布としてマッピングし、画像表示した結果である。
【0048】
図8(A)において、画像の一部に白いコントラスト部を確認することができる。この画像表示において、白い部分は、検出した光において、その強度が高いところである。
ところが、図7(B)に示したように、図8(A)では、欠陥53の成分の他に素子層52の周期的な成分も検出されている。そこで、上述の通り、素子層52の周期的構造の低強度成分を少しずつ除去することで、欠陥53による強度のみを検出することができる。
【0049】
このような処理を行った結果、欠陥53のみに起因する光を顕在化して、図8(B)に示すように、二次元分布の中央の白い部分にそれを検出することができた。
このように、第2の実施の形態では、半導体基板上にウェハプロセスで形成させた半導体装置の活性領域付近の欠陥の検出にYAGレーザによる欠陥の散乱光を用いており、容易に、効率よく、高感度に検出することができる。また、YAGレーザによって検出された光強度のデータから二次元分布として画像化することで、活性層内の欠陥を視覚的に捉えることができ、容易に半導体装置の分析を行うことができる。
【0050】
次に、第3の実施の形態について説明する。
これまで第1および第2の実施の形態で説明してきたように、半導体基板にYAGレーザによる光を照射すると、フォトルミネッセンス、散乱光、反射光が発せられる。そして、この3種類の光のうち、強度が最も高いのは図6に示したように散乱光、反射光である。
【0051】
そこで第3の実施の形態では、分光検出を行わず、単に光の強度のみを検出して、その光強度を二次元分布として画像化する。その二次元分布は、ほぼ散乱光、反射光の強度によるものであると考えられる。
【0052】
図9は、第3の実施の形態における検査装置システムの要部模式図である。
検査装置60は、半導体基板61を支持する支持台62、半導体基板61にYAGレーザによって光63aを出射する照射部63、反射板67で反射された光63aが照射された半導体基板61からの光63bを検出する検出部65、および装置制御部66を備えている。すなわち、検査装置60は分光部を備えておらず、検査装置10において、分光部14以外は同様の構成をなしている。このため各構成要素の説明は省略する。
【0053】
これに伴って、上記の検査装置60を用いた半導体装置の検査方法でも、フローとしては、図3のフローチャート図20と同様である。しかし、第3の実施の形態では、フローチャート図20の[ステップS24]にて、分光せずに散乱光を検出するのみである。
【0054】
次に、検査装置60を使って、半導体基板61内に形成されている半導体装置内に含まれる欠陥を実際に検出した結果について説明する。
図10は、第3の実施の形態において、(A)は検出原理を示す要部断面模式図、(B)は検出した観察像である。なお、以下では図9とともに図10を参照しながら説明する。
【0055】
図9および図10(A)に示すように、半導体基板61の半導体装置72の裏面72aが露出するように支持台62に固定し、裏面72aにYAGレーザによる光63aを照射部63にて照射する。そして、半導体装置72の裏面72aから発せられる光63bを、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラなどの検出部65にて検出する。
【0056】
そして、図10(A)に示すように、光63aを半導体装置72の裏面72aに対して斜め上方から照射する。照射した光63aは、まず、裏面72aのA点で反射して光73bが裏面72aから出射する。一方、半導体装置72内へA点から屈折して光73cが進み、半導体装置72のB点で散乱して裏面72aから光73dが出射される。
【0057】
そして、裏面72aの上側からこれらの光73b,73dを検出部65で観察した像が図10(B)である。これによれば、A点からB点を直線で結んだときの直線上の点は、半導体装置72の裏面72aから表面までの深さ位置に相当する。従って、B点のみならず直線上の点を決めて二次元分布として画像化することにより、半導体装置72の任意の深さ位置の散乱光の二次元分布を取得することが可能である。
【0058】
図11は、第3の実施の形態における検出方法で検出した、(A)は処理前の、(B)は処理後の二次元分布の画像である。
図11は、図10におけるB点のみの光の強度を二次元分布として画像化した結果である。B点は半導体装置72の裏面72aからの散乱であり、その光強度を二次元分布として画像化しているため、図11はまさに半導体回路面における散乱光強度である。
【0059】
図11(A)に示すように、光の強度が局所的に強いポイントが観測された。ところが第2の実施の形態の図7で説明したようにトランジスタ、コンデンサ、多層配線など半導体素子が形成された素子層(図示を省略)は周期的構造を有しているために、図11(A)では、欠陥だけでなく、その周期的構造も合わさって観察されている。
【0060】
そこで、図7で説明した処理を行った結果を図11(B)に示す。この結果、欠陥のみに起因する散乱を顕在化することが可能となる。素子層の周期的構造に起因する散乱を除去してもなお輝点として存在し、散乱点すなわち欠陥が存在することが分かる。
【0061】
このように、第3の実施の形態では、半導体基板上にウェハプロセスで形成させた半導体装置の活性領域付近の欠陥の検出にYAGレーザによる欠陥の散乱光を直接観察することで、欠陥を検出しており、容易に、効率よく、高感度に検出することができる。また、YAGレーザによって検出された光強度のデータから二次元分布として画像化することで、活性層内の欠陥を視覚的に捉えることができ、容易に半導体装置の分析を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】検査装置システムの要部模式図である。
【図2】フォトルミネッセンスの原理を説明する要部断面模式図である。
【図3】検査方法のフローチャート図である。
【図4】シリコンウェハ基板の透過率の波長依存性であって、(A)はドープ量、(B)はシリコンウェハ基板の膜厚ごとのグラフである。
【図5】第1の実施の形態における検出方法で検出した二次元分布の画像である。
【図6】YAGレーザが照射されたシリコンウェハ基板の発光スペクトルである。
【図7】YAGレーザを半導体装置に照射した時の散乱光・反射光の強度分布について、(A)はその機構を示す断面模式図、(B)は(A)に基づく光の強度分布である。
【図8】第2の実施の形態における検出方法で検出した、(A)は処理前の、(B)は処理後の二次元分布の画像である。
【図9】第3の実施の形態における検査装置システムの要部模式図である。
【図10】第3の実施の形態において、(A)は検出原理を示す要部断面模式図、(B)は検出した観察像である。
【図11】第3の実施の形態における検出方法で検出した、(A)は処理前の、(B)は処理後の二次元分布の画像である。
【符号の説明】
【0063】
10 検査装置
11 半導体基板
12 支持台
13 照射部
13a,13b 光
14 分光部
15 検出部
16 装置制御部
16a 照射部制御手段
16b 検出部制御手段
16c データ処理手段
16d 記憶手段
16e 入出力手段
17a,17b,17c 反射板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に回路が形成された半導体装置の裏面から、前記回路の形成面まで透過する波長の光を照射する照射部と、
前記光の入射により、前記半導体装置の裏面から発せられる光を検出する検出部と、
前記検出した光の強度を取得する取得部と、
を有することを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記照射部は、YAGレーザにより前記光を照射することを特徴とする請求項1記載の検査装置。
【請求項3】
前記裏面から発せられる光は、前記半導体装置の活性領域からの散乱光であることを特徴とする請求項1または2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記取得部は、前記検出した光の特定波長の強度を取得することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記取得部により取得した光の強度分布を表示する表示部をさらに有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−99634(P2009−99634A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267329(P2007−267329)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】