説明

楕円状密封システム

【課題】回転機械を通る漏れを低減し、しかも過渡運転中、並びに定常運転状態中に適切な隙間を保持する回転機械の改良型密封システムであり、漏れの低減によって効率全体が高まり、しかも内部の部品への損傷が防止される。
【解決手段】回転機械のロータ120及びステータハウジングと共に使用される楕円状密封システム140を提供する。楕円状密封システム140は、摩耗性コーティング170を施した幾つかの密封セグメント260を備える。摩耗性コーティング170を施した密封セグメント260は、略楕円形の形状240を有する。幾つかのバイアス部材は、密封セグメント260及びステータハウジングと連絡する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、回転機械と共に使用されるシールに関し、より具体的には、回転圧縮機などの回転機械と共に使用される楕円形の形状を有する、規格に準拠する摩耗性のラビリンス密封システムに関する。
【背景技術】
【0002】
回転機械では、1つ又は複数のシールが一般に回転部品と静止部品との間の境界面に沿って延びている。例えば、圧縮機、タービンなどは、ケーシング又はベーン内に配置された一連の回転ブレード又はバケット間の境界面に、1つ又は複数のシールを有する。これらのシールは、回転部品の上流側と下流側との間の圧力差を保つことを意図している。一般に、シールにおける隙間寸法が小さいほど、回転機械全体にわたる漏れを制限することによってシールの性能と、回転機械全体の効率が高まる。
【0003】
しかし、シール及びその部品は、始動中及び別の種類の過渡運転中など、回転機械の様々な運転段階中に比較的高い温度、熱勾配、及び熱膨張及び収縮にさらされることがある。通常は、このような過渡運転中の回転部品と静止部品との接触及び損傷の可能性を低くするため、シールは余分の隙間寸法を含む。しかし、この余分の隙間寸法もシールでの漏れ流のため、シール及び回転機械全体の性能と効率を低下させることがある。ロータとケーシングの間の流体漏れは圧縮機の効率を低下させるため、燃料コストが増大することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0248452A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、圧縮機などの回転機械を通る漏れを低減し、しかも過渡運転中、並びに定常運転状態中に適切な隙間を保持する回転機械の改良型密封システムが望まれる。このような漏れの低減によって効率全体が高まり、しかも内部の部品への損傷が防止されよう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、本発明は、回転機械のロータ及びステータハウジングと共に使用される楕円状密封システムを提供する。楕円状密封システムは、摩耗性コーティングを有する幾つかの密封セグメントを含む。摩耗性コーティングを有する密封セグメントは、略楕円形の形状のものである。幾つかのバイアス部材が、密封セグメント及びステータハウジングと連絡する。
【0007】
本発明は更に、回転機械のロータ及びステータハウジングと共に使用される楕円状密封システムを提供する。楕円状密封システムは、摩耗性コーティングを有する一対の楕円状密封セグメントを含む。摩耗性コーティングを有する一対の楕円状密封セグメントをロータに向かって偏倚するために、幾つかのバイアス部材が楕円状密封セグメント及びステータハウジングと連絡する。
【0008】
本発明は更に、回転機械を提供する。回転機械はステータハウジングと、ロータと、両者の間に配置され、摩耗性コーティングを有する一対の楕円状密封セグメントと、摩耗性コーティングを有する一対の楕円状密封セグメントをロータへと偏倚させるために、一対の楕円状密封セグメント及びステータハウジングと連絡する幾つかのバイアス部材とを含む。
【0009】
幾つかの図面及び添付の請求項と共に以下の詳細な説明を検討すると、当業者には本発明の上記及びその他の特徴並びに改良が明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ガスタービンエンジンの概略図である。
【図2】回転機械内に配置された、本明細書に記載の楕円状密封システムの断面図である。
【図3】回転機械のロータの周囲に配置された、図2の楕円状密封システムの軸断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次いで、幾つかの図面を通して同様の数字が同様の要素を示す図面を参照すると、図1は、ガスタービンエンジン10などの回転機械の概略図を示す。ガスタービンエンジン10は圧縮機15を含む。圧縮機15は流入空気流20を圧縮する。圧縮機15は圧縮された空気流20を燃焼器25に給送する。燃焼器25は圧縮された空気流20を圧縮された燃料流30と混合し、混合気を点火して燃焼ガス流35を生成する。単一の燃焼器25しか図示していないが、ガスタービンエンジン10は任意の数の燃焼器25を含む。そして、燃焼ガス流35はタービン40に送られる。燃焼ガス流35は、タービン40を駆動して機械的作用を生成する。タービン40内で生成された機械的作用は、圧縮機15及び発電機などの外部負荷45を駆動する。
【0012】
ガスタービンエンジン10は、天然ガス、様々な種類の合成ガス、及び/又はその他の種類の燃料を使用する。ガスタービンエンジン10は、ニューヨーク州スケネクタディのゼネラルエレクトリック社などが販売する幾つかの異なるガスタービンエンジンの1つである。ガスタービンエンジン10は別の構成のものでもよく、別の種類の構成部品を使用してもよい。本明細書では別の種類のガスタービンエンジンを使用してもよい。本明細書では更に、複数のガスタービンエンジン10、別の種類のタービン、及び別の種類の発電装置を共に使用してもよい。本明細書では更に、別の種類の回転機械を使用してもよい。
【0013】
一般に、ガスタービンエンジン10の高圧領域から低圧領域へのガス流路からの、又はガス流路へのガス漏れは好ましくない。前述のように、圧縮機15内の、及び/又はタービン40内のガス流路漏れは、ガスタービンエンジン10全体の効率を低下させ、燃料コストの増大を招くことがある。従って、ガスタービンエンジン10は、圧縮機15及び/又はタービン40内に設けられる密封システム50を含む。密封システム50は、静止部品と回転部品との隙間を最小にすることに役立つ。その結果、これらの部品を通る流体漏れは最小限になり、効率全体を高める。
【0014】
図2は、本明細書で記載する回転機械100の一部を示す。この実施例では、回転機械100は、上記の圧縮機15と同様の圧縮機110を含む。一般に、圧縮機110は、ステータハウジング130内部に配置されたロータ120を含む。ロータ120は入力デバイスシャフト(図示せず)、その他に結合される。同様に、ステータハウジング130は、ロータ120及びその部品、その他と流体連通する幾つかの吸気口と排気口(図示せず)とを含む。ロータ120の回転中、流入する流体は吸気口を通して吸気され、圧縮された流体は排気口を通って排気される。本明細書では別の構成、及び別の部品を使用してもよい。
【0015】
楕円状密封システム140は、ロータ120とステータハウジング130との間に配置される。楕円状密封システム140は、その構成部品を損傷せずにシステムを通る流体漏れを制御するように構成される。本明細書では、圧縮機110との関連で記載されるが、蒸気タービン、ガスタービンなどを含むどの種類の回転機械100に楕円状密封システム140を使用してもよい。
【0016】
楕円状密封システム140は、ステータハウジング130のスロット160内に配置された出没式パッキンリング150を含む。パッキンリング150は略I字形であるが、本明細書では別の構成を用いる。パッキンリング150は、ロータ120に面する摩耗性コーティング170を含む。摩耗性コーティング170は、コバルト、ニッケル、クロム、アルミニウム、イットリウム、六方晶窒化ホウ素の合金、及びポリエステル、ポリイミドなどのポリマーを含む。あるいは、摩耗性コーティング170はニッケル、クロム、アルミニウム、及び粘度(ベントナイト)を含み得る。更に、摩耗性コーティング170は、ニッケル、黒鉛、及びステンレス鋼を含み得る。更に、摩耗性コーティング170は、ニッケル、クロム、鉄、アルミニウム、ホウ素、及び窒素を含み得る。更に、摩耗性コーティング170は、非金属材料(例えば静電粉体塗装プロセスで塗布されるポリテトラフルオロエチレン、又は機械装置によって塗着されるポリテトラフルオロエチレンを充填した合成雲母)を含み得る。摩耗性コーティング170は、所望の任意のサイズ、形状、及び/又は配向の所望の任意の材料を使用してよい。
【0017】
ばね190などの幾つかのバイアス部材180を、パッキンリング150とステータハウジング130との間に配置する。バイアス部材180は、板ばね、コイルばね、螺旋ばね、流体圧ばね、空気圧ばね、積層ワッシャなどを含む。バイアス部材180は、パッキンリング150をロータ120に向かって偏倚するように構成される。この実施例では、バイアス部材180は、概ね12時の位置と、概ね6時の位置に配置される。本明細書では別の位置に配置してもよい。本明細書では、任意の数又は種類のバイアス部材180を使用する。本明細書では、別の構成及び別の部品を使用してもよい。
【0018】
ロータ120は更に、楕円状密封システム140の方向に延びる幾つかの歯200を含む。歯200は、ロータ120上の幾つかのスロット220内に配置された幾つかの「J」形条片210の形態である。J条片210は、幾つかのワイヤ230又は別の種類の連結手段を介して、ロータスロット220内の所定位置に保持される。J条片210はステンレス鋼、又はその他の種類の実質的に剛性の材料から製造される。J条片210の一部又は全部は、ロータ120の摩耗性コーティング170と接触する。J条片210は、摩耗性コーティング170との接触によって損傷又は摩損した場合は、交換のためにロータ120から取外し可能である。本明細書では別の構成及び別の部品を使用してもよい。
【0019】
図3は、楕円状密封システム140の軸断面図である。図示のように、楕円状密封システム140は、概ね楕円形の形状240を有する。特に、摩耗性コーティング170を施したパッキンリング150は、概ね楕円形の形状240を形成する。「楕円形」という用語を用いることによって、様々な種類の双曲面形状、放物面形状、及びその他の種類の同類の形状も含まれる。本明細書では別の構成を使用してもよい。楕円状密封システム140は、ロータ120の周囲に配置されるものとして示されている。水平の矢印250は、ロータ120と延長した歯200、又はJ条片210との外径にほぼ等しいシールの主軸を示す。本明細書では別の構成を使用してもよい。
【0020】
楕円状密封システム140は、更に幾つかのセグメント260を有する。この実施例では、楕円状密封システム140は2つのセグメント260、すなわち第1半部270と第2半部280のみを有する。本明細書では任意の数のセグメント260を使用する。2つの半部270、280のみを使用することによって、楕円状密封システム140を通る追加の端部ギャップ漏れが生じることはない。同様に、(垂直の矢印290で示す)概ね12時の位置、及び概ね6時の位置にバイアス部材180を使用することで、一般に半部270、280は中心及びロータ120に向かって押し込まれてこれと接触する。動作圧も追加の密封力をもたらす。
【0021】
楕円形の形状240を用いることによって、楕円状密封システム140の摩耗性コーティング170とロータ120のJ条片210との間の干渉係合300が可能になる。特に、バイアス部材180によって概ね6時の位置と概ね12時の位置でより深い干渉係合300が可能になり、概ね3時の位置と概ね9時の位置での線上係合310がもたらされる。従って、密封システム140は径方向係合を向上させるホイールアイシールの役割を果たす。同様に、最小数のセグメント260、すなわち第1半部270と第2半部280とを使用すれば、楕円状密封システム140を通る追加の端部ギャップ漏れが生じることはない。このように漏れ流が低減することで、本明細書の楕円形の形状240、バイアス部材180、及び/又は摩耗性コーティング170の組み合わせにより、圧縮機と回転機械の全体的な効率が高まるであろう。
【0022】
上記の記述は本発明の特定の実施形態のみに関するものであり、以下の請求項及び等価物により定義される本発明の基本的な趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書には当業者によって多くの変更及び修正を加えてもよいことは明らかであろう。
【符号の説明】
【0023】
10 ガスタービンエンジン
15 圧縮機
20 空気流
25 燃焼器
30 燃料流
35 燃焼ガス流
40 タービン
45 負荷
50 密封システム
100 回転機械
110 圧縮機
120 ロータ
130 ステータハウジング
140 楕円状密封システム
150 パッキンリング
160 ステータスロット
170 摩耗性コーティング
180 バイアス部材
190 ばね
200 歯
210 J条片
220 ロータスロット
230 ワイヤ
240 楕円形の形状
250 水平の矢印
260 セグメント
270 第1半部
280 第2半部
290 垂直の矢印
300 干渉係合
310 線上係合

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機械(100)のロータ(120)及びステータハウジング(130)と共に使用される楕円状密封システム(140)であって、
各々が摩耗性コーティング(170)を含む複数の密封セグメント(260)を備え、
前記摩耗性コーティング(170)を有する前記複数の密封セグメント(260)が略楕円形の形状(240)を有し、
前記複数の密封セグメント(260)及び前記ステータハウジング(130)と連絡する複数のバイアス部材(180)を備える、楕円状密封システム(140)。
【請求項2】
前記複数の密封セグメント(260)がパッキンリング(150)を含む、請求項1に記載の楕円状密封システム(140)。
【請求項3】
前記複数の密封セグメント(260)が第1半部(270)と第2半部(280)とを含む、請求項1に記載の楕円状密封システム(140)。
【請求項4】
前記ロータ(120)が複数の歯(200)を含み、前記複数の歯(200)が前記複数の密封セグメント(260)の前記摩耗性コーティング(170)と係合する、請求項1に記載の楕円状密封システム(140)。
【請求項5】
前記複数の歯(200)が複数のJ条片(210)を含み、前記複数のJ条片(210)が前記複数の密封セグメント(260)の前記摩耗性コーティング(170)と係合する、請求項4に記載の楕円状密封システム(140)。
【請求項6】
前記複数のバイアス部材(180)が、概ね12時の位置及び概ね6時の位置に配置され、前記複数の密封セグメント(260)を前記ロータ(120)に向かって偏倚させる、請求項1に記載の楕円状密封システム(140)。
【請求項7】
前記複数のバイアス部材(180)が、前記複数の密封セグメント(260)を前記ロータ(120)に向かって偏倚させる複数のばね(190)を含む、請求項1に記載の楕円状密封システム(140)。
【請求項8】
前記摩耗性コーティング(170)を施した前記複数の密封セグメント(260)が、概ね12時の位置及び概ね6時の位置で前記ロータ(120)と干渉係合(300)する、請求項1に記載の楕円状密封システム(140)。
【請求項9】
前記摩耗性コーティング(170)を施した前記複数の密封セグメント(260)が、概ね3時の位置及び概ね9時の位置で前記ロータ(120)と線上係合(310)する、請求項1に記載の楕円状密封システム(140)。
【請求項10】
前記摩耗性コーティング(170)を施した前記複数の密封セグメント(260)が、前記ロータ(120)と前記複数の歯(200)との外径であるシール主軸(250)を含む、請求項1に記載の楕円状密封システム(140)。
【請求項11】
前記回転機械(100)が圧縮機(110)を含む、請求項1に記載の楕円状密封システム(140)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−145224(P2012−145224A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−1231(P2012−1231)
【出願日】平成24年1月6日(2012.1.6)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】