説明

樹脂ペースト組成物及びそれを用いた半導体装置

【課題】硬化温度を低くしても(125℃以下)接着強度に優れ、粘度安定性にも優れる樹脂ペースト組成物、及びそれを用いて製造される低反り性の半導体装置を提供すること。
【解決手段】アクリル酸エステル化合物又はメタクリル酸エステル化合物、下記一般式(I)で表され、且つ10時間半減期温度が60〜80℃ある過酸化物、可とう化材、及び充填材を含む樹脂ペースト組成物。


(Rは炭素数1〜10のアルキル基又はアシル基を有する有機基を、Rは炭素数3〜10のアルキル基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はIC、LSI等の半導体素子をリードフレーム、ガラスエポキシ配線板等に接着するのに好適な樹脂ペースト組成物及びこれを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体のダイボンディング材としては、Au−Si共晶、半田、樹脂ペースト組成物等が知られているが、作業性及びコストの点から樹脂ペースト組成物が広く使用されている。
【0003】
従来のダイボンディング用樹脂ペースト組成物は、硬化温度が150〜200℃の範囲で使用されている(例えば、特許文献1参照)。一方、半導体パッケージは、薄型化の要求が強くなってきており、近年、半導体素子(チップ)自体も、薄型化が進んでいる。その結果、従来の硬化温度である150〜200℃の範囲では、樹脂ペースト硬化後に半導体素子の反りが大きくなり、半導体素子にクラックが生じる場合がある。また、半導体素子以外に基板の厚さに関しても薄型化が進んでおり、そのため従来の硬化温度では樹脂ペースト硬化後に組立てた半導体パッケージの反りが大きくなってしまい、その後のワイヤーボンディング工程、封止工程で組立て作業性に問題が起こる。この問題は、特に半導体素子や半導体パッケージが大きいBGAパッケージ、さらにMAPタイプで組立てが行われる場合において深刻な問題になる。その理由としては、半導体素子が大きくなるほど、半導体素子は反りが大きくなり、耐リフロー性評価後の樹脂ペースト硬化膜にクラックが発生し易くなる。また、基板が薄くなるほど樹脂ペーストの硬化工程による収縮の影響を受け易くなるため、半導体素子の反りの原因となる。さらに、MAPタイプでは複数のパッケージが1枚の基板に存在するために、基板面積は大きくなり、半導体素子の反りに関して影響を受け易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−168933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、樹脂ペースト組成物の硬化温度を低くしても(125℃以下)接着強度(以下ダイシェア強度という場合もある)に優れ、且つ樹脂ペーストの粘度安定性にも優れる樹脂ペースト組成物を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、樹脂ペースト組成物の硬化温度を低くするこができるため、半導体素子と基板の硬化時の熱による膨張を従来のものよりも小さくすることができ、その結果、半導体素子および基板の反りを小さくすることができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、(A)アクリル酸エステル化合物及びメタクリル酸エステル化合物から選択される化合物、(B)下記一般式(I)で表され、且つ10時間半減期温度が60〜80度である過酸化物、(C)可とう化材、(D)充填材を含む樹脂ペースト組成物に関する。また、本発明は、この樹脂ペースト組成物を用いて半導体素子を支持部材に接着した後、封止してなる半導体装置に関する。
【化1】

【0008】
(式(I)中、Rは炭素数1〜10のアルキル基、又は下記一般式(II)で表される有機基を示し、Rは炭素数3〜10のアルキル基を示す。)
【化2】

【0009】
(式(II)中、Rは炭素数1〜6のアルキレン基を示し、Rは炭素数3〜10のアルキル基を示す。)
樹脂ペースト組成物は、エポキシ樹脂、及びエポキシ樹脂硬化剤を含むことが好ましい。また、樹脂ペースト組成物は、カップリング剤を含むことが好ましい。(C)成分は、液状ゴム又は熱可塑性樹脂が好ましい。(B)成分の含有量は、(A)成分100重量部に対して0.5〜15重量部であることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明の一態様は、樹脂ペースト組成物を用いて半導体素子を支持部材に接着した後、封止してなる半導体装置に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂ペースト組成物は、硬化温度を低くしても(125℃以下)接着強度に優れ、且つ樹脂ペースト組成物の粘度安定性にも優れる。また、本発明の樹脂ペースト組成物は、硬化時のアウトガス量の発生の抑制、及び耐リフロー性評価後の樹脂ペースト硬化膜のクラック発生を抑制できる。更に、本発明の樹脂ペースト組成物をダイボディング材として使用した場合、半導体素子及び基板の反りを低減できるので、半導体装置としての信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一態様は、(A)アクリル酸エステル化合物及びメタクリル酸エステル化合物から選択される化合物、(B)下記一般式(I)で表され、且つ10時間半減期温度が60〜80度である過酸化物、(C)可とう化材、(D)充填材を含む樹脂ペースト組成物に関する。
【0013】
本発明に用いられる(A)成分のアクリル酸エステル化合物及びメタクリル酸エステル化合物から選択される化合物は、1分子中に1個以上のアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有していれば特に限定されない。
【0014】
(A1)1分子中に1個のアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有する化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルアクリレート、2−(トリシクロ)[5.2.1.02,6]デカ−3−エン−8又は9−イルオキシエチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、イソステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルメタクリレート、2−(トリシクロ)[5.2.1.02,6]デカ−3−エン−8又は9−イルオキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ダイマージオールモノアクリレート等のアクリレート化合物、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ダイマージオールモノメタクリレート、ジエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、フェノキシジエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタクリレート、ベンジルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、グリシジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−ト、ジシクロペンタニルアクリレ−ト、ジシクロペンテニルアクリレ−ト、テトラヒドロピラニルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジニルアクリレート、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルアクリレート、アクリロキシエチルホスフェート、アクリロキシエチルフェニルアシッドホスフェート、β−アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β−アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート等のアクリレート化合物、ベンジルメタクリレート、2−シアノエチルメタクリレート、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、テトラヒドロピラニルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジニルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルメタクリレート、メタクリロキシエチルホスフェート、メタクリロキシエチルフェニルアシッドホスフェート等のメタクリレート、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート等が挙げられる。
【0015】
これらの1分子中に1個のアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有するアクリル酸エステル化合物及びメタクリル酸エステル化合物から選択される化合物の中でも特に、ダイシェア強度をより向上できる観点からは、下記一般式(III)で表される化合物を用いることが好ましい。
【化3】

【0016】
(式(III)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは脂環式基又は複素環式基を示し、Xは炭素数1〜5のアルキレン基を示し、nは0〜10の整数を示す。)
前記脂環式基又は複素環式基としては、例えば、下記一般式(IV)で表されるものが挙げられる。
【化4】

【0017】
(上記式(IV)中、R〜R13はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。)
一般式(III)で表される化合物としては、例えば、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルアクリレート、2−(トリシクロ)[5.2.1.02,6]デカ−3−エン−8又は9−イルオキシエチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルメタクリレート、2−(トリシクロ)[5.2.1.02,6]デカ−3−エン−8又は9−イルオキシエチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−ト、ジシクロペンタニルアクリレ−ト、ジシクロペンテニルアクリレ−ト、テトラヒドロピラニルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジニルアクリレート、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルアクリレート等が挙げられる。
【0018】
また、本発明の(A)成分として、熱時ダイシェア強度を向上できる観点から(A2)1分子中に2個のアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有する化合物を含むことが好ましい。
【0019】
1分子中に2個のアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ダイマージオールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート等のジアクリレート化合物、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ダイマージオールジメタクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート等のジアクリレート化合物、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート;ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールAD1モルとグリシジルアクリレート2モルとの反応物;ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールAD1モルとグリシジルメタクリレート2モルとの反応物;ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリエチレンオキサイド付加物のジアクリレート;ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリプロピレンオキサイド付加物のジアクリレート;ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリエチレンオキサイド付加物のジメタクリレート;ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリプロピレンオキサイド付加物のジメタクリレート;ビス(アクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アクリロキシプロピル)メチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー、ビス(メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、ビス(メタクリロキシプロピル)メチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー等が挙げられる。
【0020】
これらの1分子中に2個のアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有するアクリル酸エステル化合物及びメタクリル酸エステル化合物から選択される化合物の中でも特に、熱時ダイシェア強度をより向上できる観点からは、下記一般式(V)で表される化合物を用いることが好ましい。
【化5】

【0021】
(式(V)中、R14〜R15はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Y及びYはそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキレン基を示し、p及びqはそれぞれ独立に1〜20の整数を示す。)
また、本発明の(A)成分として、(A3)1分子中に3個以上のアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有する化合物を用いることができる。
【0022】
1分子中に3個以上のアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有する化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキシド・プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレンオキシド・プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等が挙げられる。
【0023】
(A)成分としては、上記の化合物を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
本発明に用いられる(B)成分の過酸化物は、下記一般式(I)で表される。
【化6】

【0025】
(式(I)中、Rは炭素数1〜10のアルキル基、又は下記一般式(II)で表される有機基を示し、Rは炭素数3〜10のアルキル基を示す。)
【化7】

【0026】
(式(II)中、Rは炭素数1〜6のアルキレン基を示し、Rは炭素数3〜10のアルキル基を示す。)
このような過酸化物としては樹脂ペースト組成物の硬化性、ダイシェア強度及び粘度安定性の観点から、10時間半減期温度が60〜80℃であるが、60〜75℃であることが好ましく、65〜75℃であることが特に好ましい。
【0027】
半減期は、一定温度における有機過酸化物が分解して、その活性酸素量が1/2になるまでに要する時間によって示される。
【0028】
半減期の測定は、例えば、以下のようにして測定することができる。
【0029】
まず、ラジカルに対して比較的不活性な溶液、例えばベンゼンを主として使用して、0.1mol/l濃度の有機過酸化物溶液を調整し、窒素置換を行ったガラス管中に密閉する。さらに所定温度にセットした恒温槽に浸し、熱分解させる。
【0030】
一般的に有機過酸化物の分解は近似的に一次反応として取り扱うことができるので、t時間後までに分解した有機過酸化物の濃度x、分解速度定数k、時間t、初期有機過酸化物濃度aとすると、
dx/dt=k(a−x) (i)
(i)式を変形すると(ii)になる。
【0031】
ln a/(a−x)=kt (ii)
半減期は、分解により有機過酸化物濃度が初期の半分に減ずるまでの時間であるので、半減期をt1/2で示し、(ii)式のxにa/2を代入して、
kt1/2=ln2 (iii)
したがって、ある一定温度で熱分解させ、得られた直線の傾きからkを求め、(iii)式からその温度における半減期(t1/2)を求めることができる。
【0032】
(B)成分の過酸化物としては、例えば、パーブチルO(t−ブチルパーオキシ2エチルヘキサノエート)、パーヘキシルO(t−ヘキシルパーオキシ2エチルヘキサノエート)、パーヘキサ25O(2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)へキサン等がある。これらの過酸化物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
(B)成分の含有量は、(A)成分の総量100重量部に対して0.5〜15重量部が好ましく、1〜10重量部がより好ましく、1.5〜8重量部が特に好ましい。この配合割合が0.5重量部以上であると、硬化性が優れ、15重量部以下であると、揮発分が少なく、硬化物中にボイドと呼ばれる空隙が生じにくい。
【0034】
また、本発明は、上記(B)成分と(B)成分以外の過酸化物を併用して用いることができる。(B)成分以外の過酸化物としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド及びシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド、2,4,4−トリメチルペンチル−1−2−ハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド及びt−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、2,4−ジシクロベンゾイルパーオキサイド、o−シクロベンゾイルパーオキサイド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド及びp−シクロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルパーオキサイド及びトリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジン等のジアルキルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)へキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブタン、4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレリックアシッド−n−ブチルエステル及び2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール、ジ−3−メトキシパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−tブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン及びジエチレングリコール−ビス(t−ブチルパーオキシカーボネート)等のパーカーボネート、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチル−ブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオン−アミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオン−アミド]、2,2’アゾビス(2−メチル−プロピオナミド)ジハイドレート、アゾジ−t−オクタン及び2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド等のアゾ化合物が挙げられる。
【0035】
本発明の樹脂ペースト組成物に用いられる(C)成分の可とう化材に特に制限はないが、液状ゴム又は熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。前記液状ゴムとしては、例えば、ポリブタジエン、エポキシ化ポリブタジエン、マレイン化ポリブタジエン、アクリロニトリルブタジエンゴム、カルボキシ基を有するアクリロニトリルブタジエンゴム、アミノ末端アクリロニトリルブタジエンゴム、ビニル末端アクリロニトリルブタジエンゴム、及びスチレンブタジエンゴム等の液状ゴム等のポリブタジエン骨格を有する樹脂が挙げられる。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸アルキル等のアクリル樹脂、ε−カプロラクトン変性ポリエステル、フェノキシ樹脂及びポリイミド等の熱可塑性樹脂などが挙げられる
樹脂ペースト組成物に(G)可とう化材を添加することによって、熱膨張又は収縮に対して応力緩和することができる。
【0036】
これらの可とう化材の中でも、樹脂ペースト硬化物の弾性率をより低減できる観点からは、エポキシ化ポリブタジエン、又はカルボキシ基を有するアクリロニトリルブタジエンゴムが好ましい。
【0037】
前記エポキシ化ポリブタジエンは、一般に市販されているポリブタジエンを過酸化水素水、過酸類によりエポキシ化することによって容易に得られる。
【0038】
前記エポキシ化ポリブタジエンとしては、例えば、B−1000、B−3000、G−1000、G−3000(以上日本曹達(株)製)、B−1000、B−2000、B−3000、B−4000(以上日本石油(株)製)、R−15HT、R−45HT、R−45M(以上出光石油(株)製)、エポリードPB−3600、エポリードPB−4700(以上ダイセル化学工業(株)製)などが市販品として入手可能である。
【0039】
エポキシ化ポリブタジエンのオキシラン酸素濃度としては、3%から18%であることが好ましく、5%から15%であることがより好ましい。
【0040】
また、ダイシェア強度をより向上できる観点からは、カルボキシ基を有するアクリロニトリルブタジエンゴムがより好ましい。カルボキシ基を有するアクリロニトリルブタジエンゴムとしては、一般式(VI)で表される化合物が特に好ましい。
【化8】

【0041】
〔一般式(VI)中、x/yは95/5〜50/50であり、nは5〜50の整数である。〕
前記一般式(VI)で表されるカルボキシル基を有するブタジエン−アクリロニトリル共重合体としては、たとえば、Hycar CTBN−2009×162,CTBN−1300×31,CTBN−1300×8、CTBN−1300×13、CTBN−1009SP−S、CTBNX−1300×9(いずれも宇部興産株式会社製)が市販品として入手可能である。
【0042】
作業性及び接着強度の観点からは、エポキシ化ポリブタジエン及びカルボキシ基を有するアクリロニトリルブタジエンゴムを併用することが好ましい。
【0043】
液状ゴムとしては、数平均分子量が500〜10,000のものが好ましく、1,000〜5,000のものがより好ましい。数平均分子量が500以上だと可とう化効果に優れ、10,000以下だと樹脂ペースト組成物の粘度の上昇が少なく作業性に優れる。数平均分子量は蒸気圧浸透法で測定した値又はGPC法により測定した値である。熱可塑性樹脂としては、数平均分子量が10,000〜300,000のものが好ましく、20,000〜200,000のものがより好ましい。数平均分子量が10,000以上だと可とう化効果に優れ、300,000以下だと、樹脂ペースト組成物の粘度が上昇せずに作業性に優れる。また可とう化材の含有量としては、(A)成分100重量部に対して10〜100重量部であることが好ましく、20〜80重量部であることがより好ましく、30〜60重量部であることが特に好ましい。この含有量が10重量部以上であると可とう化効果に優れ、100重量部以下だと、粘度が増大せず、樹脂ペースト組成物の作業性に優れる。
【0044】
本発明に用いられる(D)成分の充填材としては、特に制限はなく、各種のものが用いられるが、無機フィラーが好ましい。無機フィラーとしては、例えば酸化ケイ素、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素等の粉体が挙げられる。また、導電性フィラーも使用でき、例えば金、銀、銅、ニッケル、鉄、アルミニウム、ステンレスなどが挙げられる。これらの充填材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
充填材の好ましい平均粒径は、樹脂ペースト組成物の均一性及び各種物性を考慮すると10μm以下であり、より好ましくは0.001〜5μmであり、0.01〜3μmであることが特に好ましい。形状としては、鱗片状、球状、塊状、樹枝状、板状等が挙げられるが、鱗片状、球状が好ましい。
【0046】
(D)成分の含有量は、無機フィラーを用いる場合、樹脂ペースト組成物総量に対して5〜60重量%が好ましく、8〜50重量%がより好ましく、10〜40重量%が特に好ましい。この配合量が5重量%以上であると、熱時ダイシェア強度が優れ、60重量%以下だと粘度が増大することなく、作製時の作業性及び使用時の塗布作業性が優れる。
【0047】
また、導電性フィラーを用いる場合、樹脂ペースト組成物総量に対して20〜90重量%が好ましく、40〜85重量%がより好ましく、50〜80重量%がさらに好ましい。この含有量が20重量%以上であると、熱時ダイシェア強度が優れ、90重量%以下だと粘度が増大することなく、作製時の作業性及び使用時の塗布作業性が優れる。
【0048】
本発明の樹脂ペースト組成物にはエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤を添加することができる。エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば特に制限はないが、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂[AER−X8501(旭化成工業(株)、商品名)、R−301(油化シェルエポキシ(株)、商品名)、YL−980(油化シェルエポキシ(株)、商品名)]、ビスフェノールF型エポキシ樹脂[YDF−170(東都化成(株)、商品名)]、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂[R−1710(三井化学工業(株)、商品名)]、フェノールノボラック型エポキシ樹脂[N−730S(大日本インキ化学工業(株)、商品名)、Quatrex−2010(ダウ・ケミカル社、商品名)]、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂[YDCN−702S(東都化成(株)、商品名)、EOCN−100(日本化薬(株)、商品名)]、多官能エポキシ樹脂[EPPN−501(日本化薬(株)、商品名)、TACTIX−742(ダウ・ケミカル社、商品名)、VG−3010(三井化学(株)、商品名)、1032S(油化シェルエポキシ(株)、商品名)]、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂[HP−4032(大日本インキ化学工業(株)、商品名)]、脂環式エポキシ樹脂[CELー3000(ダイセル化学工業(株)、商品名)]、E−1000−6.5(日本石油化学(株)、商品名)]、アミン型エポキシ樹脂[ELM−100(住友化学工業(株)、商品名)、YH−434L(東都化成(株)、商品名)]、レゾルシン型エポキシ樹脂[デナコールEX−201(ナガセ化成工業(株)、商品名)]、ネオペンチルグリコール型エポキシ樹脂[デナコールEX−211(ナガセ化成工業(株)、商品名)]、ヘキサンディネルグリコール型エポキシ樹脂[デナコールEX−212(ナガセ化成工業(株)、商品名)]、エチレン・プロピレングリコール型エポキシ樹脂[デナコールEX−810、811、850、851、821、830、832、841、861(ナガセ化成工業(株)、商品名)]、下記一般式(VII)で表されるエポキシ樹脂[E−XL−24、E−XL−3L(三井化学(株)、商品名)]
【化9】

【0049】
〔式VII中、vは0〜5の整数を表す。〕などが挙げられる。なかでも、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン、ノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。これらのエポキシ樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
エポキシ樹脂としては、数平均分子量が160〜3000のものが好ましい。数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより標準ポリスチレンの検量線を利用して測定(以下、GPC法という)した値である。また、エポキシ当量が80〜1000であることが好ましく、100〜500であることがより好ましい。また、エポキシ樹脂の含有量は、ダイシェア強度の観点から、(A)成分の総量100重量部に対して1〜100重量部であることが好ましく、2〜30重量部であることがより好ましく、5〜20重量部であることが特に好ましい。
【0051】
また、エポキシ樹脂として、1分子中に1個のエポキシ基を有する化合物[単官能エポキシ化合物]を含んでいてもよい。このような単官能エポキシ化合物の市販品としては、PGE(日本化薬(株)、商品名、フェニルグリシジルエーテル)、PP−101(東都化成(株)、商品名、アルキルフェノールモノグリシジルエーテル)、ED−502(旭電化工業(株)、商品名、脂肪族モノグリシジルエーテル)、ED−509(旭電化工業(株)、商品名、アルキルフェノールモノグリシジルエーテル)、YED−122(油化シェルエポキシ(株)、商品名、アルキルフェノールモノグリシジルエーテル)、KBM−403(信越化学工業(株)、商品名、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、TSL−8350、TSL−8355、TSL−9905(東芝シリコーン(株)、商品名、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、1−(3−グリシドキシプロピル)−1,1,3,3,3−ペンタメチルジシロキサン)などが挙げられる。単官能エポキシ化合物は、本発明の樹脂ペースト組成物の特性を阻害しない範囲で使用されるが、エポキシ樹脂全量100重量部に対して10重量部以下で使用されることが好ましく、1〜5重量部で使用されることが好ましい。
【0052】
エポキシ樹脂硬化剤としては、特に制限はないが、ジシアンジアミド、下記一般式(VIII)
【化10】

【0053】
(式VIII中、R18はm−フェニレン基、p−フェニレン基等の2価の芳香族基、炭素数2〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示す)で表される二塩基酸ジヒドラジド[ADH、PDH、SDH(いずれも日本ヒドラジン工業(株)、商品名)]、エポキシ樹脂とアミン化合物の反応物からなるマイクロカプセル型硬化剤[ノバキュア(旭化成工業(株)、商品名)]等が挙げられる。また、これらのエポキシ樹脂硬化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。エポキシ樹脂硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部が好ましく、1〜20重量部がより好ましい。エポキシ樹脂硬化剤の配合量が0.1重量部以上であると硬化性に優れ、50重量部以下だと樹脂組成物の安定性に優れる。
【0054】
さらに、本発明の樹脂ペースト組成物には必要に応じて硬化促進剤を添加することができる。硬化促進剤としては、有機ボロン塩化合物[EMZ・K、TPPK(北興化学工業(株)製、商品名)等]、三級アミン類又はその塩[DBU、U−CAT102、106、830、840、5002(いずれもサンアプロ社商品名)等]、イミダゾール類[キュアゾール、2P4MHZ、C17Z、2PZ−OK(いずれも四国化成(株)商品名)等]などが挙げられる。硬化促進剤の含有量は、通常、エポキシ樹脂100重量部に対して20重量部以下の量とされることが好ましい。必要に応じて添加される硬化促進剤は、1種を単独で用いてもよく、複数種の硬化促進剤を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0055】
本発明の樹脂ペースト組成物にはカップリング剤を添加することができる。本発明に用いられるカップリング剤としては特に制限はなく、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコネート系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤等の各種のものが用いられる。
【0056】
カップリング剤の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリ(メタクリロキシエトキシ)シラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−(4,5−ジヒドロイミダゾリル)プロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン、メチルトリグリシドキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、トリメチルシリルイソシアネート、ジメチルシリルイソシアネート、フェニルシリルトリイソシアネート、テトライソシアネートシラン、メチルシリルトリイソシアネート、ビニルシリルトリイソシアネート、エトキシシラントリイソシアネート等のシランカップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピル(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等のチタネート系カップリング剤、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピオネート等のアルミニウム系カップリング剤、テトラプロピルジルコネート、テトラブチルジルコネート、テトラ(トリエタノールアミン)ジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、ジルコニウムアセチルアセトネートアセチルアセトンジルコニウムブチレート、ステアリン酸ジルコニウムブチレート等のジルコネート系カップリング剤等がある。これらのカップリング剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
カップリング剤の含有量は、(A)成分の総量100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、0.5〜5重量部が特に好ましい。この配合割合が0.1重量部以上であると、接着強度の向上効果が得られ、10重量部以下だと、揮発分が少ないので、硬化物中にボイドが生しにくい。
【0058】
本発明になる樹脂ペースト組成物には、さらに必要に応じて酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の吸湿剤、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、高級脂肪酸等の濡れ向上剤、シリコーン油等の消泡剤、無機イオン交換体等のイオントラップ剤等、粘度調整のための溶剤を単独又は数種類を組み合わせて、適宜添加することができる。なお、溶剤を添加する場合、ボイド発生を防ぐ観点から3重量%以下とすることが好ましい。
【0059】
本発明になる樹脂ペースト組成物を製造するには、(A)アクリル酸エステル化合物及びメタクリル酸エステル化合物から選択される化合物、(B)一般式(I)で表され、且つ10時間半減期温度が60〜80度である過酸化物、(C)可とう化材、(D)充填材を、必要に応じて用いられる各種添加剤とともに、一括又は分割して撹拌器、ライカイ器、3本ロール、プラネタリーミキサー等の分散・溶解装置を適宜組み合わせた装置に投入し、必要に応じて加熱して混合、溶解、解粒混練又は分散して均一なペースト状とすれば良い。
【0060】
本発明においては、さらに上記のようにして製造した樹脂ペースト組成物を用いて半導体素子を支持部材に接着した後、封止することにより半導体装置とすることができる。
【0061】
支持部材としては、例えば、42アロイリードフレーム、銅リードフレーム等のリードフレーム、ガラスエポキシ基板(ガラス繊維強化エポキシ樹脂からなる基板)、BT基板(シアネートモノマー及びそのオリゴマーとビスマレイミドからなるBTレジン使用基板)等の有機基板が挙げられる。
【0062】
本発明の樹脂ペースト組成物を用いて半導体素子をリードフレーム等の支持部材に接着させるには、まず支持部材上に樹脂ペースト組成物をディスペンス法、スクリーン印刷法、スタンピング法等により塗布した後、半導体素子を圧着し、その後オーブン又はヒートブロック等の加熱装置を用いて加熱硬化することにより行うことができる。さらに、ワイヤボンド工程を経た後、通常の方法により封止することにより完成された半導体装置とすることができる。
【0063】
また、通常、有機基板を使用する場合は水分を吸湿しており、乾燥なしではこれが樹脂系ペーストの硬化の熱により蒸発して樹脂ペースト層のボイドの原因になるため、組立て前に基板の乾燥が必要となる。しかし、本発明は低温で樹脂系ペーストの硬化反応が始まるため、基板の乾燥なしでもボイドを発生させずに高信頼性の半導体装置を組立てられることができる。
【0064】
上記加熱硬化は温度80〜150℃、好ましくは100〜125℃で、5分〜3時間、好ましくは15分〜1.5時間行うことが好ましい。
【実施例】
【0065】
次に、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれによって制限されるものではない。
【0066】
比較例及び実施例で用いた化合物を以下に例示する。
【0067】
(1)アクリル酸エステル化合物及びメタクリル酸エステル化合物
・FA−512A(日立化成工業(株)製アクリレートの商品名、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−ト)
・NKエステルLA(新中村化学工業(株)製アクリレートの商品名、ラウリルアクリレート)
・R−551(日本化薬(株)製ジアクリレートの商品名、ビスフェノールAポリエチレングリコールジアクリレート、一般式(V)中、R14=H、R15=H、R16=CH、R17=CH、Y=エチレン、Y=エチレン、p+qの平均が4である化合物)
(2)過酸化物
・パーブチルO(下記構造で示される日本油脂(株)製過酸化物の商品名、t−ブチルパーオキシ2エチルヘキサノエート、10時間半減期温度;73℃)、
【化11】

【0068】
・パーヘキシルO(下記構造で示される日本油脂(株)製過酸化物の商品名、t−ヘキシルパーオキシ2エチルヘキサノエート、10時間半減期温度;70℃)、
【化12】

【0069】
・パーヘキサ25O(下記構造で示される日本油脂(株)製過酸化物の商品名、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)へキサン、10時間半減期温度;66℃)
【化13】

【0070】
・パーヘキサ25B(下記構造で示される日本油脂(株)製過酸化物の商品名、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)へキサン、10時間半減期温度;118℃)、
【化14】

【0071】
・パーヘキサC(下記構造で示される日本油脂(株)製過酸化物の商品名、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、10時間半減期温度;91℃)、
【化15】

【0072】
・パーオクタND(下記構造で示される日本油脂(株)製過酸化物の商品名、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、10時間半減期温度;42℃)
【化16】

【0073】
・パークミルD(下記構造で示される日本油脂(株)製過酸化物の商品名、ジクミルパーオキサイド、10時間半減期温度;115℃)
【化17】

【0074】
(3)可とう化材
・CTBN1300×31(宇部興産(株)製、カルボキシ基含有アクリロニトリルブタジエン共重合体の商品名、数平均分子量:3,500)
・PB−4700(ダイセル化学工業(株)製エポキシ化ポリブタジエンの商品名、数平均分子量:3,500)
(4)エポキシ樹脂
YDCN−700−7(東都化成(株)製クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の商品名)
(5)エポキシ樹脂硬化剤
ジシアンジアミド(商品名:jERキュアDICY7、ジャパンエポキシレジン(株)製)
(6)カップリング剤
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−403、信越化学工業(株)製)
(7)充填材
・R−972(日本アエロジル(株)製のシリカの商品名、形状:球状、平均粒径=16nm)
・HP−P1H (水島合金鉄(株)製窒化ホウ素の商品名)
表1に示す配合割合で、各材料を混合し、ライカイ機を用いて混練した後、666.61Pa(5トル(Torr))以下で30分間脱泡処理を行い、樹脂ペースト組成物を得た。この樹脂ペースト組成物の特性(粘度、ダイシェア強度、アウトガス量、耐リフロー性)を下記に示す方法で調べた。その結果を表1に示す。
【0075】
(1)粘度:EHD型回転粘度計(東京計器社製)、3°cone rotorを用いて0.5rpmにて、樹脂ペースト組成物の混合直後(初期)の25℃における粘度(Pa・s)、及び23℃で3日間保管した後の25℃における粘度(Pa.s)を測定した。
【0076】
(2)ダイシェア強度:実施例1〜6及び比較例1〜4の樹脂ペースト組成物をソルダーレジスト(AUS308)付きガラスエポキシ基板上に約0.4mg塗布し、この上に3mm×3mmのSiチップ(厚さ約0.4mm)を圧着し、さらにオーブンで100℃まで30分で昇温し100℃で1時間硬化させた。これを、自動接着力試験装置(BT4000、Dage社製)を用い、室温(25℃)および熱時(260℃で20秒保持後)の剪断接着強度(N/チップ)を測定してダイシェア強度とした。なおダイシェア強度の測定は20個の試験片について行い、その平均値を算出した。
【0077】
(3)アウトガス量(樹脂ペースト硬化膜の重量減少量):ワイヤーボンド時のアウトガス量を、硬化後の樹脂ペーストアウトガス量により確認するため、120℃で60分硬化後の実施例1〜6及び比較例1〜4の樹脂ペースト硬化膜の重量減少量の測定をTG−DTA(セイコー電子工業(株)製EXSTAR TG/DTA6000)を使用して、昇温5分(25℃〜240℃)+240℃/20分の条件)により行った。樹脂ペースト硬化膜の重量減少量が大きい程、アウトガス量が多いことを意味する。
【0078】
(4)チップ反り:ディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製)を用いて、下記支持部材上に、マウント厚が20±5μmになるように樹脂ペースト組成物を塗布し、下記サイズのSiチップ(厚さ約0.4mm)を圧着後、下記硬化条件で試験片を作製した。マイクロメータにより硬化後の試験片の厚みを測定し、チップ及びフレームの厚みを差し引いた値をマウント厚(樹脂ペースト厚)とした。これを表面粗さ計(sloan社製、Dektuk3030)を用い、両対角線を距離10mmでスキャンし、高低差の平均値をチップ反り(μm)とした。チップ反りは小さい程良好であり、10μm以下であることが好ましい。
【0079】
Siチップサイズ:8mm×8mm
支持部材:ソルダーレジスト(AUS308)付きガラスエポキシ基板
硬化条件:100℃まで30分で昇温、100℃で1時間硬化
(5)耐リフロー性評価後のクラック発生数:実施例1〜6及び比較例1〜4の樹脂ペースト組成物を用い、下記支持部材とSiチップを、下記の硬化条件により硬化し接着した。その後日立化成工業(株)製エポキシ封止材(商品名CEL−9200)により封止し、半田リフロー試験用半導体パッケージを得た。半田リフロー試験用半導体パッケージを温度及び湿度がそれぞれ85℃、85%の条件に設定された恒温高湿槽中で96時間吸湿させた。その後260℃/10秒のリフロー条件で半田リフローを行い、半導体パッケージの内部クラックの発生数を走査型超音波顕微鏡で観察した。8個のサンプルについてクラックの発生したサンプル数を示す。
【0080】
Siチップサイズ:5mm×5mm
パッケージサイズ:8mm×8mm×2mm
支持部材:ソルダーレジスト(AUS308)付きガラスエポキシ基板
硬化条件:100℃まで30分で昇温、100℃で1時間硬化
【表1】

【0081】
表1の結果から、本発明の樹脂ペースト組成物(実施例1〜6)は従来の高温硬化が必要な樹脂ペースト組成物(比較例1〜4)と比較して低温で硬化しても硬化後のダイシェア強度が強く、樹脂ペースト組成物硬化後の重量減少量も少ない。また、比較例3と比較して、粘度安定性にも優れる。このことから、本発明の樹脂ペースト組成物によれば、低温硬化が可能となり、その結果として半導体素子および基板の反りを低減でき、半導体素子や基板の反りを低減できる。さらに、本発明の樹脂ペースト組成物(実施例1〜6)は低温硬化を行った場合でも耐リフロー性評価後のクラック発生を抑制できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アクリル酸エステル化合物及びメタクリル酸エステル化合物から選択される化合物、(B)下記一般式(1)で表され、且つ10時間半減期温度が60〜80℃ある過酸化物、(C)可とう化材、及び(D)充填材を含む樹脂ペースト組成物。
【化1】

(式(I)中、Rは炭素数1〜10のアルキル基、又は下記一般式(II)で表される有機基を示し、Rは炭素数3〜10のアルキル基を示す。)
【化2】

(式(II)中、Rは炭素数1〜6のアルキレン基を示し、Rは炭素数3〜10のアルキル基を示す。)
【請求項2】
さらにエポキシ樹脂、及びエポキシ樹脂硬化剤を含む請求項1に記載の樹脂ペースト組成物。
【請求項3】
さらにカップリング剤を含む請求項1又は2に記載の樹脂ペースト組成物。
【請求項4】
前記(C)成分が、液状ゴム又は熱可塑性樹脂である請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂ペースト組成物。
【請求項5】
前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分100重量部に対して0.5〜15重量部である請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂ペースト組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂ペースト組成物を用いて半導体素子を支持部材に接着した後、封止してなる半導体装置。

【公開番号】特開2010−215786(P2010−215786A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64347(P2009−64347)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】